JP2009111792A - 電気音響変換器 - Google Patents

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Abstract

【課題】ボイスコイルが略矩形環状に巻回された動電型の電気音響変換器において、安価な構成により、その音響特性の向上を図るとともに耐衝撃性能を高める。
【解決手段】磁気回路ユニット18を構成する略箱形のベース32における底面壁32Aの上面に、その磁気間隙に沿って延びるとともに各コーナ部の切欠き部32aを経由するようにして帯板状に形成され、底面壁32Aに沿った方向に関してマグネット34を位置決めする位置決め部材40を設ける。これにより、各コーナ部の切欠き部32aの開口形状を小さくし、ダイアフラム12の背面空間の空気がベース32の外部空間へ容易に抜けてしまわないようにする。また、電気音響変換器10を搭載した外部機器の落下等の際の衝撃荷重により、ベース32の底面壁32Aとマグネット34との間の接着層が剥がれて、マグネット34がベース32から脱落してしまうのを未然に防止する。
【選択図】図1

Description

本願発明は、いわゆる動電型の電気音響変換器に関するものであり、特に、ボイスコイルが略矩形環状に巻回された電気音響変換器に関するものである。
一般に、動電型スピーカ等の動電型の電気音響変換器は、ダイアフラムと、このダイアフラムの下面に固定されたボイスコイルと、このボイスコイルの下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、この磁気回路ユニットとダイアフラムの外周縁部とを固定支持するフレームと、を備えた構成となっている。
「特許文献1」や「特許文献2」には、このような動電型の電気音響変換器において、そのボイスコイルとして略矩形環状に巻回されたものが記載されている。そして、これら各特許文献に記載された電気音響変換器においては、その磁気回路ユニットが、ボイスコイルを囲む略箱形のベース(「特許文献2」においては金属製ヨーク)と、このベースの底面壁の上面に接着固定されたマグネットと、このマグネットの上面に固定されたヨーク(「特許文献2」においてはプレート)とからなっている。
特開2007−60463号公報 特開2004−128822号公報
このようにボイスコイルが略矩形環状に巻回された電気音響変換器を採用すれば、その外形形状も略矩形に設定することができるので、この電気音響変換器を携帯電話機等の外部機器に搭載したときのスペース効率を高めることができる。
その際、上記「特許文献2」の図7に記載された電気音響変換器のように、その略箱形のベース(すなわち金属製ヨーク1)の構成を、底面壁および周面壁における各コーナ部に切欠き部がそれぞれ形成された構成とすれば、その周面壁における4つの直線状部分を曲げ加工により形成することが可能となる。そしてこれにより、略箱形のベースをプレス成形により形成するようにした場合に比して、これを安価にかつ寸法精度良く形成することが可能となる。
しかしながら、このような電気音響変換器においては、その略箱形のベースにおける各コーナ部の切欠き部を介して、ダイアフラムの下面側に位置する背面空間とベースの外部空間とが連通しているので、ダイアフラムの鳴動時、その背面空間の空気が各コーナ部の切欠き部からベースの外部空間へ容易に抜けてしまうこととなる。このため、電気音響変換器としては、最低共振周波数における音圧が大幅に上昇してしまい、十分な音響特性を確保することができない、という問題がある。
また、上記電気音響変換器においては、これを搭載した外部機器が床に落下した場合等には、その際の衝撃荷重により、ベースの底面壁とマグネットとの間の接着層(あるいはマグネットの表面に施されたメッキ層)が剥がれて、マグネットがベースから脱落してしまうおそれがある、という問題がある。
特に、略矩形環状に巻回されたボイスコイルを有する電気音響変換器においては、そのマグネットの外形形状も円形ではなく略矩形となるので、円環状に巻回されたボイスコイルを有する通常の電気音響変換器に比して、マグネットの脱落が発生しやすい、という問題がある。
しかも、近年の電気音響変換器においては、より高い音響特性が求められており、これを実現するため、マグネットをできるだけ大きくして、電気音響変換効率を高めるようにする傾向にある。このため、大型化したマグネットの慣性荷重により、接着層等が一層剥がれやすくなってしまう、という問題がある。
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、ボイスコイルが略矩形環状に巻回された動電型の電気音響変換器において、安価な構成により、その音響特性の向上を図るとともに耐衝撃性能を高めることができる電気音響変換器を提供することを目的とするものである。
本願発明は、ベースを曲げ加工により形成可能な構成とした上で、所定の位置決め部材を備えた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
すなわち、本願発明に係る電気音響変換器は、
ダイアフラムと、このダイアフラムの下面に固定されたボイスコイルと、このボイスコイルの下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、この磁気回路ユニットと上記ダイアフラムの外周縁部とを固定支持するフレームと、を備えてなる電気音響変換器において、
上記ボイスコイルが、略矩形環状に巻回されており、
上記磁気回路ユニットが、上記ボイスコイルを囲む略箱形のベースと、このベースの底面壁の上面に接着固定されたマグネットと、このマグネットの上面に固定されたヨークとを備えてなり、
上記ベースの底面壁および周面壁における各コーナ部に、切欠き部がそれぞれ形成されており、
上記ベースの底面壁の上面に、上記磁気間隙に沿って延びるとともに上記各コーナ部の切欠き部を経由するようにして帯板状に形成され、該ベースの底面壁に沿った方向に関して上記マグネットを位置決めする位置決め部材が設けられている、ことを特徴とするものである。
上記「切欠き部」は、ダイアフラムの背面空間とベースの外部空間とを連通させるようにして形成されたものであれば、その具体的な形状や大きさは特に限定されるものではない。
上記「位置決め部材」は、磁気間隙に沿って延びるとともに各コーナ部の切欠き部を経由するようにして帯板状に形成されたものであれば、単一の部材で構成されたものであってもよいし、複数の部材で構成されたものであってもよい。
また、上記「位置決め部材」の断面形状や材質等の具体的な構成は特に限定されるものではなく、その高さについても、ダイアフラムの振動により下方変位するボイスコイルに対して、その振動の最大振幅時においても干渉しない範囲内であれば、その具体的な値は特に限定されるものではない。
さらに、上記「位置決め部材」は、ベースの底面壁の上面に接着固定された構成となっていてもよいし、ベースの周面壁とマグネットとの間に圧入された構成となっていてもよい。
上記構成に示すように、本願発明に係る電気音響変換器は、動電型の電気音響変換器として構成されているが、そのボイスコイルが略矩形環状に巻回されているので、電気音響変換器の外形形状を略矩形に設定することが容易に可能となる。そしてこれにより、この電気音響変換器を携帯電話機等の外部機器に搭載したときのスペース効率を高めることができる。
また、本願発明に係る電気音響変換器は、その磁気回路ユニットが略箱形のベースを有しているが、このベースは、その底面壁および周面壁における各コーナ部に切欠き部がそれぞれ形成された構成となっているので、その周面壁における4つの直線状部分を曲げ加工により形成することが可能となる。このため、略箱形のベースをプレス成形により形成するようにした場合に比して、これを安価にかつ寸法精度良く形成することができる。
その上で、本願発明に係る電気音響変換器は、そのベースの底面壁の上面に、磁気回路ユニットの磁気間隙に沿って延びるとともに各コーナ部の切欠き部を経由するようにして帯板状に形成され、このベースの底面壁に沿った方向に関してマグネットを位置決めする位置決め部材が設けられているので、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、各コーナ部の切欠き部を経由するようにして配設された帯板状の位置決め部材により、ダイアフラムの背面空間とベースの外部空間とを連通させている各コーナ部の切欠き部の開口形状を小さくすることができ、これにより背面空間の空気がベースの外部空間へ容易に抜けてしまわないようにすることができる。したがって、電気音響変換器としては、最低共振周波数における音圧が大幅に上昇してしまうのを未然に防止することができ、これにより十分な音響特性を確保することができる。その際、最低共振周波数における音圧上昇の抑制量は、位置決め部材の厚さ等により適宜調整することが可能である。
また、ベースの底面壁の上面に設けられた位置決め部材により、その底面壁に沿った方向に関するマグネットの位置決めがなされているので、電気音響変換器を搭載した外部機器の落下等の際の衝撃荷重により、ベースの底面壁とマグネットとの間の接着層(あるいはマグネットの表面に施されたメッキ層)が剥がれて、マグネットがベースから脱落してしまうのを未然に防止することができる。
すなわち、ベースの底面壁とマグネットとの間の接着層等が最も剥がれやすいのは、ベースの底面壁に沿った方向の荷重が作用した場合であるが、本願発明に係る電気音響変換器は、その位置決め部材によりベースの底面壁に沿った方向に関するマグネットの位置決めがなされているので、このような荷重が作用した場合であっても、マグネットがベースから脱落してしまうのを未然に防止することができる。
このように本願発明によれば、略矩形の外形形状を有する動電型の電気音響変換器において、安価な構成により、その音響特性の向上を図るとともに耐衝撃性能を高めることができる。
また、本願発明に係る電気音響変換器においては、その磁気間隙に沿って位置決め部材が配設されていることにより、ベースの底面壁と直交する方向の衝撃荷重が作用したような場合においても、ボイスコイルと位置決め部材との当接作用により、ボイスコイルが過剰に変位してしまうのを阻止することができる。そしてこれにより、ボイスコイルとダイアフラムとの接着部分が剥離してしまうのを未然に防止することができる。
上記構成において「位置決め部材」の材質が特に限定されないことは、上述したとおりであるが、これを例えば合成樹脂やアルミニウム等の非磁性部材で構成すれば、位置決め部材を設けたことによって磁気回路ユニットに形成される磁気ループに悪影響が及んでしまうおそれをなくすことができる。
上記構成において「位置決め部材」を環状部材で構成すれば、本願発明の作用効果を得るために新たに必要となる部品の点数を最小限に抑えることができる。
一方、上記構成において「位置決め部材」を1対のU字状部材で構成すれば、これら各U字状部材やベース等の寸法精度が厳密に管理されていなくても、これら各U字状部材を磁気間隙に沿って延びるように配設することができる。
上記構成において、位置決め部材とベースの周面壁およびマグネットとの間に、それぞれ接着剤が充填された構成とすれば、位置決め部材の幅が磁気間隙の幅よりも多少小さい値に設定されていても、接着剤の介在により、ベースの底面壁に沿った方向に関するマグネットの位置決めを図ることができる。そしてこれにより、位置決め部材やベース等の寸法精度の管理を緩和することができる。
また、このように位置決め部材とベースの周面壁およびマグネットとの間に、それぞれ接着剤が充填された構成とすることにより、マグネットと他の部材との接着面積を増大させることができるので、ベースの底面壁と直交する方向に衝撃荷重が作用した場合におけるマグネットの脱落防止性能をも高めることができる。
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
図1は、本願発明の一実施形態に係る電気音響変換器10を、上向きに配置した状態で示す平面図である。また、図2は、図1のII-II 線断面図であり、図3は、図1のIII-III 線断面図であり、図4は、図1のIV-IV 線断面詳細図である。
これらの図に示すように、この電気音響変換器10は、小型の動電型スピーカであって、携帯電話機等の外部機器に搭載された状態で使用されるようになっている。この電気音響変換器10は、平面視において左右方向にやや長い略矩形状の外形形状を有しており、その長辺方向の幅は20mm程度、短辺方向の幅は15mm程度の値に設定されている。
この電気音響変換器10は、ダイアフラム12と、このダイアフラム12の下面に固定されたボイスコイル14と、ダイアフラム12の外周縁部を固定支持するフレーム16と、ボイスコイル14の下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニット18と、ダイアフラム12を上方側から覆うカバー20と、フレーム16に固定された1対の端子部材22とを備えてなっている。
ダイアフラム12は、電気音響変換器10の外形形状よりも僅かに小さい略矩形状の外形形状を有している。このダイアフラム12は、ポリエーテルイミド等の樹脂製部材で構成されている。このダイアフラム12は、平板状に形成されているが、その外周縁近傍部位は、上向き円弧状の断面形状で略矩形環状に延びる上方膨出部12aとして形成されている。
ボイスコイル14は、その巻回形状が略矩形状に設定されている。このボイスコイル14のダイアフラム12に対する固定は、その上方膨出部12aの内周側近傍において接着により行われている。そして、このボイスコイル14は、該ボイスコイル14から延出する1対のコイル端末(図示せず)を介して、1対の端子部材22に電気的に接続されている。
フレーム16は、平面視において略矩形状の外形形状を有する樹脂製部材からなり、その外周縁部には、ダイアフラム12の外周縁部を固定支持するためのダイアフラム支持部16aが形成されている。このフレーム16には、ボイスコイル14の巻回形状よりもやや大きい略矩形状の中央開口部16bが形成されており、この中央開口部16bに磁気回路ユニット18が接着固定により装着されるようになっている。
1対の端子部材22は、インサート成形によりフレーム16と一体で形成された1対のランド部22Aと、フレーム16から下方へ突出する1対のコイルスプリング22Bとからなっている。1対のランド部22Aは、フレーム16における一方の短辺部分の下面に露出するようにして形成されている。また、1対のコイルスプリング22Bは、フレーム16における一方の短辺部分側の2箇所のコーナ部に配置されており、これらを介して外部機器との電気的接続を図るようになっている。
カバー20は、略逆トレー状に形成された鋼板で構成されており、平面視において略矩形状の外形形状を有している。このカバー20には、その複数箇所に放音孔20aが形成されている。そして、このカバー20は、その外周縁部において、フレーム16のダイアフラム支持部16aに接着固定されたダイアフラム12の外周縁部に接着固定されている。
図5は、磁気回路ユニット18を位置決め部材40(これについて後述する)と共に示す斜視図であり、図6は、その平面図である。
これらの図にも示すように、磁気回路ユニット18は、内磁型の磁気回路ユニットであって、ボイスコイル14を囲む略箱形のベース32と、このベース32の底面壁32Aの上面に接着固定されたマグネット34と、このマグネット34の上面に接着固定されたヨーク36とを備えてなっている。そして、この磁気回路ユニット18においては、そのベース32の周面壁32Bの内面とヨーク36の外周面との間に、上記磁気間隙が形成されるようになっている。
ベース32は、鋼製であって、その底面壁32Aおよび周面壁32Bにおける各コーナ部には、切欠き部32aがそれぞれ形成されている。マグネット34は、比較的厚い略矩形板状に形成されており、その表面にはニッケルメッキが施されている。ヨーク36は、鋼製であって、比較的薄い略矩形板状に形成されており、マグネット34と略同じ外形形状を有している。
ベース32は、図6において2点鎖線で示すような、フープ材から繰り出されるウェブ鋼板2に対して、打ち抜き加工および曲げ加工を施した後、切断加工を施すことにより形成されるようになっている。
すなわち、ベース32の各周面壁32Bは、打ち抜き加工により形成された矩形張出し部2aを、曲げ加工により上方へ向けて直角に曲げ起こすことにより形成されるようになっている。そして、ウェブ鋼板2において、ベース32における各コーナ部の切欠き部32aから放射状に延び、ベース32とこれを囲むウェブ残部2bとを連結している4本の連結梁2cを、そのベース32側の端部で切断することにより、ベース32が形成されるようになっている。
このベース32の底面壁32Aの上面には、上記磁気間隙に沿って延びる位置決め部材40が設けられている。この位置決め部材40は、ベース32における各コーナ部の切欠き部32aを経由するようにして帯板状に形成されており、ベース32の底面壁32Aに沿った方向(すなわち水平方向)に関してマグネット34を位置決めするようになっている。
この位置決め部材40は、合成樹脂製(例えばポリエチレンテレフタレート(PET)製)の非磁性部材で構成されており、ボイスコイル14の巻回形状と略同じ形状で略矩形環状に延びるように形成されている。そして、この位置決め部材40は、その下面においてベース32の底面壁32Aの上面に接着剤Aで接着固定されている。
その際、この位置決め部材40は、その幅が、ベース32の周面壁32Bの内面とマグネット34の外周面との間の間隔(すなわち上記磁気間隙と略同じ間隔)よりも僅かに小さい値に設定されている。また、この位置決め部材40の高さは、その幅よりもやや小さい値に設定されている。そしてこれにより、ダイアフラム12の振動により下方変位するボイスコイル14に対して、その振動の最大振幅時においても位置決め部材40が干渉しないようになっている。
この位置決め部材40とベース32の周面壁32Bの内面およびマグネット34の外周面との間には、それぞれ接着剤Aが充填されている。この接着剤Aの充填は、位置決め部材40の下面をベース32の底面壁32Aの上面に接着固定する際の接着剤Aを位置決め部材40の両側面側へ回り込ませることにより行われるようになっている。
以上詳述したように、本実施形態に係る電気音響変換器10は、動電型スピーカとして構成されているが、そのボイスコイル14が略矩形環状に巻回されているので、電気音響変換器10の外形形状を略矩形に設定することが容易に可能となる。そしてこれにより、この電気音響変換器10を携帯電話機等の外部機器に搭載したときのスペース効率を高めることができる。
また、本実施形態に係る電気音響変換器10は、その磁気回路ユニット18が略箱形のベース32を有しているが、このベース32は、その底面壁32Aおよび周面壁32Bにおける各コーナ部に切欠き部32aがそれぞれ形成された構成となっているので、その周面壁32Bにおける4つの直線状部分を曲げ加工により形成することが可能となる。このため、略箱形のベース32をプレス成形により形成するようにした場合に比して、これを安価にかつ寸法精度良く形成することができる。
その上で、本実施形態に係る電気音響変換器10は、そのベース32の底面壁32Aの上面に、磁気回路ユニット18の磁気間隙に沿って延びるとともに各コーナ部の切欠き部32aを経由するようにして帯板状に形成され、このベース32の底面壁32Aに沿った方向に関してマグネット34を位置決めする位置決め部材40が設けられているので、次のような作用効果を得ることができる。
すなわち、各コーナ部の切欠き部32aを経由するようにして配設された帯板状の位置決め部材40により、ダイアフラム12の背面空間とベース32の外部空間とを連通させている各コーナ部の切欠き部32aの開口形状を小さくすることができ、これにより背面空間の空気がベース32の外部空間へ容易に抜けてしまわないようにすることができる。したがって、電気音響変換器10としては、最低共振周波数における音圧が大幅に上昇してしまうのを未然に防止することができ、これにより十分な音響特性を確保することができる。
その際、最低共振周波数における音圧上昇の抑制量は、位置決め部材40の厚さ等により適宜調整することが可能である。すなわち、この位置決め部材40を配設することにより、各コーナ部の切欠き部32aに形成された開口形状の上下幅を、図4に示すように、元の上下幅h0から、位置決め部材40の厚さ分だけ狭くした上下幅h1にすることができる。その際、位置決め部材40の厚さを増減させることにより、上下幅h1の値を調整することができる。
また、ベース32の底面壁32Aの上面に設けられた位置決め部材40により、その底面壁32Aに沿った方向に関するマグネット34の位置決めがなされているので、電気音響変換器10を搭載した外部機器の落下等の際の衝撃荷重により、ベース32の底面壁32Aとマグネット34との間の接着層(あるいはマグネット34の表面に施されたメッキ層)が剥がれて、マグネット34がベース32から脱落してしまうのを未然に防止することができる。
すなわち、ベース32の底面壁32Aとマグネット34との間の接着層等が最も剥がれやすいのは、ベース32の底面壁32Aに沿った方向の荷重が作用した場合であるが、本実施形態に係る電気音響変換器10は、その位置決め部材40によりベース32の底面壁32Aに沿った方向に関するマグネット34の位置決めがなされているので、このような荷重が作用した場合であっても、マグネット34がベース32から脱落してしまうのを未然に防止することができる。
このように本実施形態によれば、略矩形の外形形状を有する動電型の電気音響変換器10において、安価な構成により、その音響特性の向上を図るとともに耐衝撃性能を高めることができる。
また、本実施形態に係る電気音響変換器10においては、その磁気間隙に沿って位置決め部材40が配設されていることにより、ベース32の底面壁32Aと直交する方向の衝撃荷重が作用したような場合においても、ボイスコイル14と位置決め部材40との当接作用により、ボイスコイル14が過剰に変位してしまうのを阻止することができる。そしてこれにより、ボイスコイル14とダイアフラム12との接着部分が剥離してしまうのを未然に防止することができる。
しかも、本実施形態に係る電気音響変換器10においては、その位置決め部材40が合成樹脂製の非磁性部材で構成されているので、この位置決め部材40を設けたことによって磁気回路ユニット18に形成される磁気ループに悪影響が及んでしまうおそれをなくすことができる。また、この位置決め部材40は、環状部材で構成されているので、本実施形態の作用効果を得るために新たに必要となる部品の点数を最小限に抑えることができる。
さらに、本実施形態に係る電気音響変換器10においては、その位置決め部材40とベース32の周面壁32Bおよびマグネット34との間に、それぞれ接着剤Aが充填されているので、位置決め部材40の幅が磁気間隙の幅よりも多少小さい値に設定されていても、接着剤Aの介在により、ベース32の底面壁32Aに沿った方向に関するマグネット34の位置決めを図ることができる。そしてこれにより、位置決め部材40やマグネット34の寸法精度の管理を緩和することができる。
また、このように位置決め部材40とベース32の周面壁32Bおよびマグネット34との間に、それぞれ接着剤Aが充填された構成とすることにより、マグネット34と他の部材との接着面積を増大させることができるので、ベース32の底面壁32Aと直交する方向に衝撃荷重が作用した場合におけるマグネット34の脱落防止性能をも高めることができる。
なお、上記実施形態においては、位置決め部材40が環状部材で構成されているものとして説明したが、このような環状部材の代わりに、その一部が切り欠かれた略C字状の部材を用いることも可能であり、このようした場合においても上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
図7は、本変形例に係る電気音響変換器の要部を示す、図6と同様の図である。
同図(a)は、第1変形例に係る位置決め部材を磁気回路ユニット18と共に示す図であり、同図(b)は、第2変形例に係る位置決め部材を磁気回路ユニット18と共に示す図である。
同図(a)に示すように、第1変形例に係る位置決め部材は、1対のU字状部材140A、140Bで構成されており、これらは互いに同一の形状を有している。これら各U字状部材140A、140Bは、磁気回路ユニット18の磁気間隙に沿って、その短辺部分から長辺部分へ回り込むようにして延びており、その長辺部分中央には両者間に多少の隙間が形成されるようになっている。
なお、これら各U字状部材140A、140Bの材質および断面形状は、上記実施形態の位置決め部材40と同一である。また、これら各U字状部材140A、140Bが、その下面においてベース32の底面壁32Aの上面に接着剤Aで接着固定されるとともに、これら各U字状部材140A、140Bとベース32の周面壁32Bおよびマグネット34との間に、それぞれ接着剤Aが充填されている点についても、上記実施形態の場合と同様である。
本変形例の構成を採用することにより、各U字状部材140A、140Bの寸法精度が厳密に管理されていなくても、これらを磁気間隙に沿って延びるように配設することができる。
しかも、これら各U字状部材140A、140Bは、いずれも同一の形状を有しているので、誤組付けのおそれをなくすことができ、その配設を効率良く行うことができる。
なお、本変形例の構成を採用した場合においても、位置決め部材を構成する1対のU字状部材140A、140Bは、各コーナ部の切欠き部32aを経由するようにして延びているので、ダイアフラム12の背面空間の空気がベース32の外部空間へ容易に抜けてしまわないようにすることができる。
同図(b)に示すように、第2変形例に係る位置決め部材は、4つのL字状部材240A、240B、240C、240Dで構成されており、これらはいずれも同一の形状を有している。これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dは、磁気回路ユニット18の磁気間隙に沿って、そのコーナ部から短辺部分および長辺部分へ向けて所定長にわたって延びており、その短辺部分中央および長辺部分中央には各々の間に隙間が形成されるようになっている。その際、これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dの短辺部分および長辺部分への突出長さは、互いに同じ値に設定されている。
なお、これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dの材質および断面形状は、上記実施形態の位置決め部材40と同一である。また、これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dが、その下面においてベース32の底面壁32Aの上面に接着剤Aで接着固定されているとともに、これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dとベース32の周面壁32Bおよびマグネット34との間に、それぞれ接着剤Aが充填されている点についても、上記実施形態の場合と同様である。
本変形例の構成を採用した場合においても、各L字状部材240A、240B、240C、240Dの寸法精度が厳密に管理されていなくても、これらを磁気間隙に沿って延びるように配設することができる。
しかも、これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dは、いずれも同一の形状を有しておりかつその二方向の長さが同じ値に設定されているので、誤組付けのおそれをなくすことができ、その配設を効率良く行うことができる。もっとも、これら各L字状部材240A、240B、240C、240Dを配設したときに、互いに干渉しない範囲内であれば、これらを互いに異なる形状に設定することも可能である。
なお、本変形例の構成を採用した場合においても、その位置決め部材を構成する4つのL字状部材240A、240B、240C、240Dが、各コーナ部の切欠き部32aを経由するようにして延びているので、ダイアフラム12の背面空間の空気がベース32の外部空間へ容易に抜けてしまわないようにすることができる。
上記実施形態および各変形例においては、位置決め部材40、各U字状部材140A、140B、各L字状部材240A、240B、240C、240Dが、ベース32の底面壁32Aに接着固定されているものとして説明したが、これらがベース32の周面壁32Bの内面とマグネット34の外周面との間に圧入された構成とすることも可能である。
このような構成を採用することにより、これら位置決め部材40、各U字状部材140A、140B、各L字状部材240A、240B、240C、240Dと、ベース32の周面壁32Bおよびマグネット34との間に接着剤Aを充填しなくても、ベース32の底面壁32Aに沿った方向に関するマグネット34の位置決めを図ることができる。
特に、上記第1変形例においては、位置決め部材が1対のU字状部材140A、140Bに分割された構成となっているので、その圧入作業を容易に行うことが可能となり、また、上記第2変形例においては、位置決め部材が4つのL字状部材240A、240B、240C、240Dに分割された構成となっているので、その圧入作業を一層容易に行うことが可能となる。
なお、上記実施形態および各変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
上記実施形態および各変形例においては、電気音響変換器10がスピーカであるものとして説明したが、レシーバ等のようなスピーカ以外の電気音響変換器である場合においても、上記実施形態等と同様の構成を採用することにより上記実施形態等と同様の作用効果を得ることが可能である。
本願発明の一実施形態に係る電気音響変換器を、上向きに配置した状態で示す平面図 図1のII-II 線断面図 図1のIII-III 線断面図 図1のIV-IV 線断面詳細図 上記電気音響変換器の磁気回路ユニットを位置決め部材と共に示す斜視図 上記磁気回路ユニットを上記位置決め部材と共に示す平面図 上記実施形態の変形例に係る電気音響変換器の要部を示す、図6と同様の図
符号の説明
2 ウェブ鋼板
2a 矩形張出し部
2b ウェブ残部
2c 連結梁
10 電気音響変換器
12 ダイアフラム
12a 上方膨出部
14 ボイスコイル
16 フレーム
16a ダイアフラム支持部
16b 中央開口部
18 磁気回路ユニット
20 カバー
20a 放音孔
22 端子部材
22A ランド部
22B コイルスプリング
32 ベース
32A 底面壁
32B 周面壁
32a 切欠き部
34 マグネット
36 ヨーク
40 位置決め部材
140A、140B U字状部材(位置決め部材)
240A、240B、240C、240D L字状部材(位置決め部材)
A 接着剤

Claims (5)

  1. ダイアフラムと、このダイアフラムの下面に固定されたボイスコイルと、このボイスコイルの下端部を収容する磁気間隙が形成された磁気回路ユニットと、この磁気回路ユニットと上記ダイアフラムの外周縁部とを固定支持するフレームと、を備えてなる電気音響変換器において、
    上記ボイスコイルが、略矩形環状に巻回されており、
    上記磁気回路ユニットが、上記ボイスコイルを囲む略箱形のベースと、このベースの底面壁の上面に接着固定されたマグネットと、このマグネットの上面に固定されたヨークとを備えてなり、
    上記ベースの底面壁および周面壁における各コーナ部に、切欠き部がそれぞれ形成されており、
    上記ベースの底面壁の上面に、上記磁気間隙に沿って延びるとともに上記各コーナ部の切欠き部を経由するようにして帯板状に形成され、該ベースの底面壁に沿った方向に関して上記マグネットを位置決めする位置決め部材が設けられている、ことを特徴とする電気音響変換器。
  2. 上記位置決め部材が、非磁性部材で構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器。
  3. 上記位置決め部材が、環状部材で構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の電気音響変換器。
  4. 上記位置決め部材が、1対のU字状部材で構成されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の電気音響変換器。
  5. 上記位置決め部材と上記ベースの周面壁および上記マグネットの各々との間に、接着剤が充填されている、ことを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の電気音響変換器。
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