JP2009106976A - 鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型 - Google Patents

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Abstract

【課題】亜鉛を不純物として含む溶鋼を鋳造する鋳型のメニスカス部損傷を防止する。
【解決手段】銅又は銅合金よりなる連続鋳造用鋳型において、鋳型内側表面の少なくとも鋳型上端から鋳型の深さ方向に300mmまでの範囲に、レニウムの含有量が50質量%以上であり、その残部がコバルト、ニッケル、鉄の1種または2種以上よりなるレニウム合金皮膜を形成する。銅又は銅合金の内側表面に設けるレニウム合金皮膜の下地層として、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属層を設けても良い。
【選択図】図2

Description

本発明は、鉄鋼材料製造に用いる連続鋳造用鋳型に関するものである。
鉄鋼材料製造に用いる連続鋳造用鋳型は、溶鋼から効率的に抜熱し、凝固させるために熱伝導特性が良好であることが要求され、基材には微量のCr、Zrなどを含有した銅合金が用いられる。しかし、銅合金自体は、耐熱性、耐摩耗性、耐食性などの特性が劣るため、連続鋳造用鋳型の溶鋼と接する内面には、種々のめっき層や溶射皮膜を形成している。これまで、鋳型表面の被覆には、主にNiめっき、Ni合金めっき、Coめっき、Co合金めっき、Crめっきなどが用いられてきた。
近年、連続鋳造用の溶鋼の原材料の一部にスクラップを使用する操業が一般的となっているが、スクラップの中には、亜鉛めっき鋼板などが含まれているため、溶鋼中に溶解した亜鉛が鋳型メニスカス部に濃縮し、鋳型表面を損傷させるという問題が発生している。亜鉛による連続鋳造用鋳型の具体的な損傷の形態は、メニスカス部に生じるえぐれであり、えぐれはメニスカス部に付着・濃縮した亜鉛へのめっき層の溶出により発生する。えぐれが深くなると、鋳造中に幅可変した際、短辺との隙間に溶鋼が差し込み、ブレークアウトを引き起こす危険がある。
また、連続鋳造用鋳型のメニスカス部には、湯面変動やチャージ間での鋳型の温度変化、即ち熱サイクルによりクラックが発生することがある。このクラックが成長し、鋳型表面に施しためっき層を貫通して基材の表面に到達すると、亜鉛がクラックに侵入してめっき層の剥離及び銅板割れを引き起こし、メニスカス部の損傷を加速させる。従って、連続鋳造用鋳型メニスカス部の亜鉛によるえぐれ及び熱サイクルによるクラックへの亜鉛の侵入は、操業上及び安全上の両面から非常に重大な問題であり、鋳型寿命を大きく制限してきた。
亜鉛による鋳型表面の損傷、特にメニスカス部の損傷に対し、Crめっきの特性を改善し、鋳型へ適用する技術が種々開示されている。一般的な工業用Crめっきは、硬度が高く、更にめっきのままで多数のクラックを内在していることから、早期に剥離が生じるという問題があり、連続鋳造用鋳型の耐亜鉛性向上という目的には使用できなかった。これに対し、例えば、特許文献1には、二層以上のCr系めっきを形成し、そのうち少なくとも一層は350MPa以上の圧縮残留応力を有している鋳型が開示されている。特許文献2には、ビッカース硬度が600HV0.01以下であり、クラック密度が5本/cm以下であるCrめっきを2層以上付与した鋳型が開示されている。特許文献3には、結晶子の平均直径が16.0nm以上であるとともに、X線回折法による{211}と{222}のピーク強度比を0.10以上とした電気Crめっきが開示されている。
Crめっき以外の技術として、特許文献4には、CoまたはCo合金の保護皮膜をもつ鋳型が開示されている。特許文献5には、皮膜表面部にMo及び/又はVを60at%以上含有する皮膜を有する鋳型が開示されている。特許文献6には、鉄−タングステン皮膜が開示されている。また、特許文献7には、銅鋳型の亜鉛および/または硫黄に対する拡散バリア層として、ルテニウム、レニウム、タンタル、ケイ素、ホウ素、タングステン、クロム、ニオビウムが、また、亜鉛だけに対する拡散バリア層として、モリブデン、チタン、ロジウム、テルルが、それぞれ有効であることが開示されている。
特開平10−156490号公報 特開2004−237315号公報 特開2006−307322号公報 特開昭59−189037号公報 特開平9−52152号公報 特開2006−212662号公報 特開2004−17162号公報
しかしながら、上記の特許文献1から特許文献3の発明には、使用中のCrめっきにクラック発生が発生し、十分な耐久性は得られないという問題があった。特許文献4の発明には、Coが亜鉛と反応することから、耐久性は不十分であるという問題があった。特許文献5の発明には、Mo及び/又はVを60at%以上含有する皮膜をめっき法により形成することは原理的に困難であるため、緻密な皮膜を形成するためには、減圧プラズマ溶射法やスパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD法などの気相めっき法を使わざるをえず、設備費やランニングコストが高いという問題があった。特許文献6の発明には、鉄−タングステン皮膜は、加熱すると硬化する性質があるため、熱履歴により徐々に硬化が進行し、クラックが発生しやすいという問題があった。特許文献7の発明には、拡散バリア層の具体的な記述がなく、拡散バリア層を形成する手段として使用されるCVD(化学蒸着)またはPVD(物理蒸着)プロセスは、鋳型を格納するための真空チャンバーが巨大であることから設備費が嵩み、ランニングコストが高いという問題があった。
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、亜鉛を不純物として含む溶鋼を鋳造する際に問題となるメニスカス部損傷を軽減し、鋳型寿命を延長させた、耐亜鉛性に優れた鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型を提供するものである。
本発明者は、耐亜鉛性に優れた銅または銅合金製の連続鋳造用鋳型を得るために、鋳型表面の必要な部分に施す皮膜として、レニウムの含有量が50質量%以上であり、残部が、コバルト、ニッケル、鉄の1種または2種以上よりなるレニウム合金皮膜が有効であることを見出した。
本発明は、このような知見によって得られたもので、その要旨は、次の通りである。
(1)銅又は銅合金よりなる鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型の内側表面の少なくとも前記鋳型の上端から前記鋳型の深さ方向に300mmまでの範囲に形成されたレニウム合金皮膜を有し、前記レニウム合金皮膜は、レニウムの含有量が50質量%以上であり、残部がコバルト、ニッケル及び鉄のうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする、鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型。
(2)前記レニウム合金皮膜の厚みが5μm以上0.1mm以下であることを特徴とする、(1)に記載の鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型。
(3)前記レニウム合金皮膜の下地層として、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属層を有することを特徴とする、(1)から(2)のいずれかに記載の鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型。
本発明によれば、亜鉛を不純物として含む溶鋼の製造を行った際に問題となる、亜鉛による銅板の侵食による損傷を防止でき、鋳型の寿命を延長することが可能であり、産業上の貢献が極めて大きい。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上述したような課題を解決するために鋭意研究を行った結果、鋳型表面の必要な部分に施す皮膜としてレニウム合金皮膜を使用すると、耐亜鉛性に優れた銅または銅合金製の連続鋳造用鋳型を得ることができることを見出した。そこで、本発明者らは、レニウム合金皮膜の耐亜鉛性を評価するための実験を行った。以下、当該実験について説明する。
ここでは、レニウムを含有する皮膜(以下、レニウム合金皮膜という)の形成方法として、電気めっき法を用いた。長さ15mm、幅15mm、高さ5mmの寸法に加工した板状の純銅試験片の15mm×15mmの面に、厚み0.05mmのレニウム合金皮膜を成膜した。レニウムに共析させる金属は、ニッケル、コバルトまたは鉄とした。レニウムおよび共析金属を含有するめっき皮膜を作製するための電解浴は、市販高純度レニウム金属粉末を過酸化水素水に酸化溶解し、溶液中のReO が0.025mol/Lとなる様にレニウムイオン濃度を調整した溶液に、ニッケルの場合は硫酸ニッケル試薬を、コバルトの場合は硫酸コバルト試薬を、また鉄の場合は硫酸鉄を所定量加え、さらに硫酸試薬で、pHを1.75から2の間に調整したものである。めっき皮膜に共析させる金属量を変化させるために、溶液中に添加する硫酸ニッケル試薬、硫酸コバルト試薬、または硫酸鉄試薬の添加量を調整し、電解浴中の共析金属のイオン量(Ni2+、Co2+、またはFe2+)が、0.0125mol/L〜0.8mol/Lとなるようにした。電解液の温度を50℃とし、陽極として白金電極を用い、電流密度が100A/mの条件で前記純銅試験片上にめっき皮膜を形成した。成膜前後の試験片の重量変化を測定することにより、めっき皮膜の析出量を算出した。また、皮膜中のレニウムおよび共析させた金属の含有量は、めっき皮膜を濃硝酸に溶解し、ICP発光分析装置を用いて定量した。めっきの析出量および皮膜組成から、めっきの電流効率を計算した。電流効率の計算の際、レニウムの価数は6とし、ニッケル、コバルト、または鉄の価数は2とした。
作製したレニウム合金皮膜の耐亜鉛性を評価するため、めっき皮膜の表面に、長さ10mm、幅10mm、高さ2mmの純度99.9%の亜鉛板を載置した。その試験片を雰囲気調整ができる電気炉内に設置し、アルゴン雰囲気に置換した後、450℃に昇温して5時間の熱処理を行った後、室温まで徐冷した。その後、試験片を幅方向の中央で、厚み方向に切断し、埋め込み研磨して断面を観察し、試験片材料と亜鉛との界面での反応層形成の有無の観察およびえぐれ深さの測定を行った。断面観察によるえぐれ深さの測定では、亜鉛板を載置しなかった試験片両端を結ぶ線を基準線として、亜鉛板を載置した中央部の亜鉛層と試験片との界面と、前記基準線との間の最大距離をえぐれ深さとした。亜鉛に対する耐久性がある皮膜では、図1(a)および図1(b)に示す試験後の断面の模式図の様に、それぞれ載置した亜鉛板3が溶融凝固しただけ、および亜鉛板3による試験片(基板2表面にめっき皮膜1が形成されたもの)表面のえぐれは僅か、である。一方、亜鉛に対する耐久性がない皮膜の場合では、図1(c)に示す試験後の断面の模式図の様に、溶融した亜鉛板3に大きく侵食されることによるえぐれ、および亜鉛板3とめっき金属との反応層4がみられる。
形成しためっき皮膜の組成、電流効率、亜鉛に対する反応の有無、および皮膜の亜鉛によるえぐれ深さを表1に示す。ケース1−1は、共析金属を加えず、レニウム単独のめっき例である。レニウム単独のめっき皮膜の耐亜鉛性は良好であるが、めっきの際の電流効率が非常に小さい。ケース1−2〜ケース1−8は、共析金属としてニッケルを用いた場合である。ケース1−2の10質量%のニッケルを共析させた皮膜においても、耐亜鉛性は良好であるが、めっきの際の電流効率はレニウム単独の皮膜と同様、非常に小さい。ケース1−3〜ケース1−5はレニウムの含有率が50質量%以上の皮膜で、耐亜鉛性は良好であり、めっきの際の電流効率も大きい。ケース1−6からケース1−8はレニウムの含有率が50質量%より小さい皮膜で、めっきの際の電流効率は大きいが、耐亜鉛性に劣る。ケース1−9〜ケース1−12およびケース1−13〜ケース1−15は、共析金属として、それぞれコバルトおよび鉄を用いた場合である。ここでも、共析金属としてニッケルを用いた場合と同様、レニウムの含有率が50質量%以上の皮膜において、耐亜鉛性が良好で、めっきの際の電流効率も大きい。また、ケース1−16は、共析金属として、コバルトとニッケルの合金を用いた場合であり、ここでも耐亜鉛性は良好である。
Figure 2009106976
表1の結果から、共析させる金属が、ニッケル、コバルト、鉄、またはこれらの合金の場合のいずれも、めっき皮膜の耐亜鉛性を確保するために、レニウム含有量が50質量%以上が必要であることが分かる。レニウム含有量の上限としては、特に制限はないが、レニウムの含有率が80質量%より大きい皮膜では、めっきの際の電流効率が小さく、めっき皮膜形成に長時間が必要であることから、80質量%程度までが好適である。
連続鋳造用鋳型に使用するレニウム合金皮膜の適切な厚みを検討するため、以下の試験を実施した。長さ50mm、幅50mm、高さ10mmの寸法に加工した板状の純鉄試験片の50mm×50mmの面に、上述した電気めっき法により、厚みの異なるRe−21質量%のレニウム合金皮膜を形成した。形成した皮膜厚みは、0.5μm、1μm、3μm、5μm、10μmおよび50μmの6種である。上記試験片のレニウム合金皮膜を形成した面を除くすべての面をシリコン樹脂で被覆した試験片を用意し、塩水噴霧試験(JIS Z2371に準拠)を行った。試験は、35℃に設定した試験槽内に、前記の皮膜厚みの異なる試験片を設置し、5%食塩水を噴霧し、48時間放置した。その後、試験槽から取り出し、表面を観察したところ、皮膜厚みが0.5μm、1μm、および3μmのレニウム合金皮膜に斑状に赤錆のスポットが多数観察された。これらの赤錆は、レニウム合金皮膜の厚みが小さいため、めっき皮膜にピンホール欠陥が残留し、そのピンホール欠陥から塩水が純鉄基材に浸入し、発生したものである。これに対し、皮膜厚みが0.005mm以上の試験片表面には、赤錆の発生は見られず、健全であった。以上の結果から、厚みが5μm未満であると、めっき皮膜にピンホールなどの欠陥が残留しやすく、この欠陥から亜鉛が侵入し、腐食させる危険性が高くなることから、連続鋳造用鋳型に付与するレニウム合金皮膜の厚みとしては、5μm以上が適当である。一方、厚みの上限としては、0.1mm程度が適当である。0.1mm以上の厚みにしても、耐亜鉛性の効果は飽和し、それ以上厚くしても意味が無いばかりでなく、メニスカス部に付与する皮膜が厚くなりすぎると溶鋼からの抜熱が低下し、溶融金属の凝固が遅れるためである。
レニウム合金皮膜を形成するための電解浴として、上では硫酸酸性浴を示したが、これに限られるものではなく、アンモニア性クエン酸塩浴、ホウフッ化浴など、前記めっき皮膜を形成できる浴であれば、どのような浴を用いても良い。
耐亜鉛性の金属皮膜は、亜鉛による鋳型損傷が問題となる、連続鋳造用鋳型のメニスカス高さに相当する部位に設けることが必要である。メニスカス高さは、通常、鋳型の上端から鋳型の深さ方向に80〜150mmの位置に設定されるが、湯面変動などの外乱により、上下に変動することがある。従って、耐亜鉛性の金属皮膜は、鋳型内側表面の少なくとも鋳型上端から鋳型の深さ方向に300mmまでの範囲に設けることが必要である。
本発明の鋳型の表面には、レニウム合金皮膜の形成前に、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属の下地層を形成することが好ましい。この理由は、銅および銅合金の熱膨張係数が約17×10−6/℃であるのに対し、レニウムを含有するめっき皮膜の熱膨張係数は約7×10−6/℃と小さく、その中間の熱膨張係数(12〜14×10−6/℃)を有する、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属の下地層を介在させることで、熱サイクル時の熱膨張差によるクラック発生及び剥離の危険性を低減させることができ、更に耐亜鉛性の金属皮膜が形成されていない部分、即ち鋳型の高さ方向での中間部及び下端部での耐摩耗性及び耐食性を付与することができるためである。ここで、Co−Ni合金におけるCoとNiの比率は、いかなる比率のものでも良い。
レニウム合金皮膜を形成する部分の、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属層の厚みは、0.05mm以上0.2mm以下が好ましい。Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属層の厚みを0.05mm以上としたのは、これより厚みが小さくなると、熱膨張差の緩和効果が小さくなり、レニウム合金皮膜の剥離の危険性が高まるからであり、また0.2mm以下としたのは、レニウム合金皮膜を形成する領域は、メニスカスを含む範囲であり、溶融金属からの抜熱を大きくしたい部分であることから、この部分に厚い下地層を設けることは、熱伝導率が低下し鋳片の凝固上好ましくないためである。
鋳型内面において、レニウム合金皮膜が形成されていない領域、即ち鋳型の高さ方向での中間部及び下端部については、耐摩耗性及び耐食性に劣る銅または銅合金の保護のため、0.5mm以上の厚みの、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属の皮膜を形成することが好ましく、また鋳型中間部から下端部にかけて、徐々に皮膜厚みが増加するテーパ構造は、更に好ましい。Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属層の形成方法には、特に制限はなく、硫酸浴、塩化物浴、スルファミン酸浴などを用いる通常の湿式めっき法を用いて良い。
次に、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。本実施例では、1チャージ当たり8トンの溶鋼を鋳造する連続鋳造機により、鋳型メニスカス部の損傷を評価した。Cr;1.2質量%、Zr;0.2質量%、Al;0.3質量%を含有し、残部が銅及び不可避的不純物からなる銅合金製の鋳型の寸法は、長辺の幅400mm、短辺の幅100mm、高さ900mmである。ここで使用した溶鋼は通常の溶銑に投入されるスクラップから混入するときより多めに亜鉛を添加し、Zn;0.05質量%とした。
長辺及び短辺の内面全面に、厚さ0.1mmのCo−10質量%Niめっきを設け、さらにその上に、上端から300mm位置(メニスカス位置は上端より80mm)までの全面に、厚さ0.05mmの、表2のケース2−1〜ケース2−8に示すような種々のレニウム合金皮膜を形成した鋳型を作製した。ケース2−1〜ケース2−3は、レニウムにニッケルを共析させた本発明例によるめっき皮膜、ケース2−4およびケース2−5は、レニウムにコバルトを共析させた本発明例によるめっき皮膜、ケース2−6およびケース2−7はレニウムに鉄を共析させた本発明例によるめっき皮膜である。また、ケース2−8は、下地層のCo−Niめっきを設けない例であり、上端から300mm位置までの範囲を除く全面にCo−10質量%Niめっきを設けた後、前記上端から300mm位置までの範囲全面の銅合金製の鋳型に直接Re−20質量%Niメッキを形成した。
比較例として、表2のケース2−9およびケース2−10に示すように、レニウムにニッケルまたはコバルトを共析させた厚さ0.05mmのめっき皮膜であるが、レニウムの含有量が50質量%未満のもの、さらに別の比較例として、表2のケース2−11には、鋳型の上端から300mmまでの位置にめっき皮膜を形成せず、予め設けたCo−10質量%Niめっきのみの例を示し、ケース2−12には、鋳型の上端から300mmまでの位置に、レニウム合金皮膜を形成する代わりに、厚み0.05mmのNiめっきを形成した例を示す。
表2に示す鋳型を用い、上記鋳造機にて、それぞれ20チャージの鋳造試験を実施した後、鋳型を解体し、メニスカス部の損傷状況調査を実施した。調査項目は、メニスカス部でのえぐれ深さの測定である。えぐれ深さは、鋳型の鋳造方向に平行にストレッチゲージを置き、ストレッチゲージの基準面と鋳型表面の距離をマイクロデプスゲージにより測定した。
Figure 2009106976
その結果、図2(b)に示すように、鋳型の銅版5の表面に下地層6が被覆され、その表面に比較例によるめっき皮膜7が被覆された比較例の鋳型では、溶鋼8中に含まれていた亜鉛9が、めっき皮膜7の表面の鋳型メニスカス部に付着し、付着した部分にえぐれが見られ、亜鉛による損傷が確認されたのに対し、図2(a)に示すように、鋳型の銅版5の表面に下地層6が被覆され、その表面に本発明例によるめっき皮膜7が被覆された本発明例による鋳型では、メニスカス部のえぐれは殆ど検出されず、耐亜鉛性が著しく改善されることがわかった。
前記本発明例の鋳型のうち、ケース2−1およびケース2−8について、再度鋳型を組み立て、さらに80チャージ(トータル100チャージ)の鋳造試験を継続した。その後、再び鋳型を解体し、メニスカス部の損傷状況調査を実施した。その結果、ケース2−8の鋳型については、メニスカス部のえぐれ深さは5μm以下であったが、倍率200のマイクロスコープによる観察で、軽微なクラックが観察された。一方、ケース2−1の鋳型では、メニスカス部のえぐれ深さは5μm以下であり、倍率200のマイクロスコープのよる観察でもクラックや剥離などの損傷は見られなかった。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明は、亜鉛を不純物として含む鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型に適用できる。
めっき皮膜の、亜鉛に対する耐久性を試験した結果を示す模式図であり、(a)および(b)は耐亜鉛性がある皮膜の例であり、(c)は耐亜鉛性がない皮膜の例である。 使用中の鋳型メニスカス部での亜鉛による損傷状況を示す模式図であり、(a)は本発明のめっき皮膜を付与した鋳型のメニスカス部の模式図であり、(b)は比較例の、耐亜鉛性がないめっき皮膜を付与した鋳型のメニスカス部の模式図である。
符号の説明
1・・・めっき皮膜
2・・・基板
3・・・亜鉛板
4・・・亜鉛とメッキ皮膜との反応相
5・・・鋳型の銅板
6・・・Co−Ni合金の下地層
7・・・めっき皮膜
8・・・溶鋼
9・・・鋳型メニスカス部に付着した亜鉛

Claims (3)

  1. 銅又は銅合金よりなる鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型の内側表面の少なくとも前記鋳型の上端から前記鋳型の深さ方向に300mmまでの範囲に形成されたレニウム合金皮膜を有し、前記レニウム合金皮膜は、レニウムの含有量が50質量%以上であり、残部がコバルト、ニッケル及び鉄のうちの1種または2種以上であることを特徴とする、鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型。
  2. 前記レニウム合金皮膜の厚みが5μm以上0.1mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載の鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型。
  3. 前記レニウム合金皮膜の下地層として、Co、NiまたはCo−Ni合金からなる金属層を有することを特徴とする、請求項1から2のいずれかに記載の鉄鋼材料の連続鋳造用鋳型。


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