JP2009102710A - 積層構造型超硬合金とその製造方法および前記超硬合金により形成された工具 - Google Patents
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Abstract
【課題】超硬合金スクラップを活用しても、強度と靭性の両特性がバランスよく両立できる超硬合金とその製造方法およびそれで形成された工具を提供する。
【解決手段】表面層および内層の少なくとも二層のWC基超硬合金層が積層された積層構造型超硬合金であって、内層のZnとSnの合計含有率が表面層のZnとSnの合計含有率よりも高いことを特徴とする積層構造型超硬合金、それを用いた切削用工具、金型用工具などの工具、および超硬合金スクラップから得られる超硬のリサイクル粉末を用いて超硬合金を製造する方法である。
【選択図】なし
【解決手段】表面層および内層の少なくとも二層のWC基超硬合金層が積層された積層構造型超硬合金であって、内層のZnとSnの合計含有率が表面層のZnとSnの合計含有率よりも高いことを特徴とする積層構造型超硬合金、それを用いた切削用工具、金型用工具などの工具、および超硬合金スクラップから得られる超硬のリサイクル粉末を用いて超硬合金を製造する方法である。
【選択図】なし
Description
本発明は、強度および靭性が共に優れる積層構造型超硬合金とその製造方法および前記超硬合金により形成された工具に関する。
従来より、切削工具として、WC(炭化タングステン)を主成分とし、Co(コバルト)などの鉄族元素を結合相とした超硬合金および超硬合金の基材表面に被覆膜を具える被覆切削工具が開発されている。
超硬合金に求められる代表的な特性として、耐摩耗性(例えば、耐逃げ面摩耗性、耐クレーター摩耗性)、強度(例えば、耐欠損性、抗折力)、靭性(例えば、耐チッピング性、耐熱亀裂性)がある。
これらの特性のうち、強度を向上させる方法として、WC原料に微粒WCを用い、WC結晶粒を細かくする方法が知られている。また、靭性を向上させる方法として、WC原料に粗粒WCを用い、WCを粗くする方法が知られている。
しかしながら、これらの方法においては、強度と靭性がトレードオフの関係にあり、両特性を両立させることは難しい。強度及び靭性を両立させる方法として、粗粒に微粒を混合したWC粒子を有する超硬合金を用いる方法(たとえば、特許文献1)、平均粒径が異なるWC粒子を硬質相とするWC基超硬合金で表面層と内層とを構成し、二つの表面層で内層を挟む積層構造のWC基超硬合金を用いる方法(たとえば、特許文献2)が、提案されているが未だに充分な効果が得られていない。
一方、超硬合金中の硬質相であるWCは希少資源であり、産出国が限られているため、価格の高騰を招きやすく、地球環境の保護と相俟って超硬合金のリサイクルに対する要望が一段と高まっている。
超硬合金スクラップのリサイクル法には、超硬合金を酸やアルカリを用いて溶解し化学的にWやCoをリサイクルする湿式法と、亜鉛や錫を用いてWC粒子を溶解せずにリサイクルする亜鉛(錫)処理法がある。
前記の処理法のうち、湿式法では超硬合金は酸やアルカリを用いて溶解され、Wは何段階もの精製工程を経て一旦パラタングステン酸アンモニウム(APT)に精製されるため、鉱石から精錬されたものと同様に非常に高純度であり、高品質のWC粉末を製造することができる。
しかしながら、湿式法の場合、精製工程で酸やアルカリなどを用いるため高価な公害防止設備が必要であり、また大量のエネルギーを使用する上、大規模なプラントを用いて製造しないと製造コストを低減できないという問題がある。
しかしながら、湿式法の場合、精製工程で酸やアルカリなどを用いるため高価な公害防止設備が必要であり、また大量のエネルギーを使用する上、大規模なプラントを用いて製造しないと製造コストを低減できないという問題がある。
これに対し、亜鉛(錫)処理法では、亜鉛や錫と超硬合金の結合相金属であるCoを不活性ガスや窒素ガスの雰囲気中で850℃程度の高温で反応させてCo−Zn、Co−Snの共晶融液からなる液相を発生させた後、さらに高温に昇温し、減圧雰囲気にすることで蒸気圧の高い亜鉛、錫を蒸発させて結合相をスポンジ状にすることにより超硬合金を脆化させる。この脆化した超硬合金はボールミルなどで簡単に粉砕でき、スクラップの原料組成およびWC粒径そのままの超硬合金のリサイクル粉末が得られる。このように比較的シンプルな設備で簡便にCoを含んだWC粉末が低コストで得られる特徴を有する。
しかし、前記亜鉛(錫)処理法は低コストではあるが、精製工程を含まないために、リサイクルした粉末中にZnやSnが残存しやすく、このようなリサイクル粉末を利用した超硬合金は強度が低下したり、強度が不安定となる問題がある。このため、亜鉛(錫)処理法を用いた超硬合金のリサイクル粉末を活用する場合には、ZnやSnの悪影響が出ないように通常の原料粉末への投入比率を調整して使用するなどの制限が生じ、リサイクル粉末を活用する上で問題点となっている。
特開平6−220571号公報
特開平7−197265号公報
本発明は、上記事情を鑑みて成されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、強度と靭性が共に良好で、両特性が両立でき、さらに、超硬合金スクラップから亜鉛(錫)処理法によるスクラップ処理により得られるリサイクル粉末を有効に活用できる超硬合金とそれを用いた工具を提供することにある。
以下、各請求項の発明について説明する。
以下、各請求項の発明について説明する。
請求項1に記載の発明は、
表面層および内層の少なくとも二層のWC基超硬合金層が積層された積層構造型超硬合金であって、内層のZnとSnの合計含有率が表面層のZnとSnの合計含有率よりも高いことを特徴とする積層構造型超硬合金である。
表面層および内層の少なくとも二層のWC基超硬合金層が積層された積層構造型超硬合金であって、内層のZnとSnの合計含有率が表面層のZnとSnの合計含有率よりも高いことを特徴とする積層構造型超硬合金である。
本請求項1の発明によれば、前記課題である強度と靭性が共に良好で、両特性が両立でき、さらに、超硬合金スクラップから亜鉛(錫)処理法によるスクラップ処理により得られるリサイクル粉末を有効に活用できる超硬合金を提供することができる。
以下、詳細に説明する。
以下、詳細に説明する。
超硬原料粉末中にZnやSnが含まれていると、超硬合金の機械的強度が低下する原因となる。したがって、通常、超硬合金中にはZnやSnの量を極力少なくすることが求められる。
しかしながら、本発明者らは亜鉛(錫)処理法によるスクラップ処理によりリサイクルした超硬粉末の活用を検討していく中で、リサイクルした超硬粉末は、新粉WC粉末に比べて、機械的強度が低下したり、不安定になるという問題点を有するが、亀裂進展の起こりにくさを表わす破壊靭性値については優れており、新粉WC粉末と遜色がないことを見出した。そして、この点に着目し、超硬合金層を少なくとも二層にし、機械的応力が必要とされる表面層にはZnとSnの合計含有率が低い超硬合金を配置して強度を高め、亀裂の進展抑制が必要とされる内層にはZnとSnの合計含有率が高い超硬合金を配置して靭性を高めることにより、全体で強度と靭性がバランスよく両立できる超硬合金とすることができることを見出した。
そして、上記により従来ZnとSnの合計含有率が高くて、使用が非常に制約されていた超硬合金スクラップから亜鉛(錫)処理法によるスクラップ処理により得られるリサイクル粉末を有効に活用しながら、強度と靭性がバランスよく両立できる超硬合金を提供することができるようになった。
そして、リサイクル粉末として、湿式法よりも低コストの亜鉛(錫)処理法により製造された粉末を用いることができるため、上記の強度と靭性を両立させた超硬合金をより安価に提供することができ、地球環境の保護及びWCの供給リスクの回避に役立つ。
そして、リサイクル粉末として、湿式法よりも低コストの亜鉛(錫)処理法により製造された粉末を用いることができるため、上記の強度と靭性を両立させた超硬合金をより安価に提供することができ、地球環境の保護及びWCの供給リスクの回避に役立つ。
請求項1の発明における基材の構成としては、例えばZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層を表面層とし、ZnとSnの合計含有率の高いWC基超硬合金層を内層とする二層構造の積層構造型超硬合金や、ZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層でZnとSnの合計含有率の高いWC基超硬合金層を両側から挟んだ三層構造の積層構造型超硬合金とする。また、積層構造はサンドイッチ状であっても同心円状であっても良い。
そして、本発明の積層構造型超硬合金を切削工具に用いる場合には、すくい面にZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層が配される。金型用工具に用いる場合には、被加工材との接触面にZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層が配される。即ち、機械的応力が必要とされる側にZnとSnの合計含有率の低いWC基基超硬合金層が配される。そして、二層構造の場合、本発明ではこのように機械的応力が必要とされる側を表面層と呼称している。
そして、本発明の積層構造型超硬合金を切削工具に用いる場合には、すくい面にZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層が配される。金型用工具に用いる場合には、被加工材との接触面にZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層が配される。即ち、機械的応力が必要とされる側にZnとSnの合計含有率の低いWC基基超硬合金層が配される。そして、二層構造の場合、本発明ではこのように機械的応力が必要とされる側を表面層と呼称している。
次に、基材の組成は、WCを主成分とする硬質相と、CoやNi等の鉄族金属を主成分とする結合相とからなるWC基超硬合金で構成される。基材は、さらに、周期律表IVa、Va、VIa族の金属元素群から選択される1種以上の元素(a)や、同金属元素群から選択される1種以上の元素と炭素、窒素、酸素及び硼素からなる群から選択される1種以上の元素とからなる化合物(固溶体)(b)を含有していてもよい。
具体的には、(a)の元素としてはCr、Ta、V、Nb、Tiなど、(b)の化合物としては、(Ta,Nb)C、VC、Cr2C3、NbCなどが挙げられる。これらの元素や化合物は、焼結中においてWC粒子の粒の成長を抑制する働きをするものが多い。WC粒子が少な過ぎると、耐摩耗性や靭性が低下したり、焼結性が低下するため、WC粒子の含有量は70〜98質量%が好ましい。また、公知の組成の超硬合金を利用してもよく、表面層と内層におけるWC基超硬合金のZnとSnの合計含有率を除く組成は同じであっても異なっていてもよい。
請求項2に記載の発明は、
前記表面層と前記内層の各々に含まれる結合相量(体積%)が同量であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造型超硬合金である。
前記表面層と前記内層の各々に含まれる結合相量(体積%)が同量であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造型超硬合金である。
WC基超硬合金は、焼結中に液相を生成させて緻密化を行う。このため、表面層と内層において生成する液相量が相違すると、焼結中に液相となる両層の結合相量が均衡化しようとする作用により、結合相の物質移動が生じる。
そこで、請求項2の発明においては、表面層と内層に含まれる結合相量(体積%)を同量にすることにより、結合相の物質移動を防ぎ、表面層と内層の焼結後の硬度を、単体で焼結したときの硬度と同一の硬度とする。これにより、積層構造型超硬合金の各層の硬度を狙い通りのものとして、合金構造設計を容易にし、優れた合金特性が再現性よく発現することができる。
なお、ここで結合相量(体積%)が同量であるとは、両層の結合相量(体積%)の差を多い結合相量(体積%)に対する比率で表した時の値が10%以内であることを意味している。
また、互いの結合相量差(体積%)が上記範囲内にあると、液相が表面層と内層の間で移動した場合でも、焼結体硬度の変化に与える影響は小さいため、前記と同趣旨の目的を達成することができる。
また、互いの結合相量差(体積%)が上記範囲内にあると、液相が表面層と内層の間で移動した場合でも、焼結体硬度の変化に与える影響は小さいため、前記と同趣旨の目的を達成することができる。
請求項3に記載の発明は、
前記表面層中に含まれる結合相を構成するCo量(体積%)と前記内層中に含まれる結合層を構成するCo量(体積%)が同量であることを特徴とする請求項2に記載の積層構造型超硬合金である。
前記表面層中に含まれる結合相を構成するCo量(体積%)と前記内層中に含まれる結合層を構成するCo量(体積%)が同量であることを特徴とする請求項2に記載の積層構造型超硬合金である。
表面層と内層におけるCo量(体積%)が同量であると、Co中に固溶できるW量が、表面層と内層で同量となり、焼結時に生成した液相中のW溶質量が同等となり、溶質原子であるWの物質移動を抑制することができ好ましい。
請求項4に記載の発明は、
前記表面層の表面にさらにセラミック被覆膜を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金である。
前記表面層の表面にさらにセラミック被覆膜を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金である。
切削用工具は、一般的に100m/min〜500m/minの切削速度で使用され、特に鋼切削の場合、刃先温度は1000℃にも達するため、このような高温に耐える高い耐熱性が求められる。このような要求に対応する方法として切削用工具の表面にセラミック膜を被覆する方法を採用することにより、耐熱性、耐摩耗性を高めることができる。
また、本発明の積層構造型超硬合金を金型用工具に利用する場合にも、セラミック膜を被覆することにより、耐摩耗性向上、潤滑性向上、耐焼き付き性を向上させることができる。
また、本発明の積層構造型超硬合金を金型用工具に利用する場合にも、セラミック膜を被覆することにより、耐摩耗性向上、潤滑性向上、耐焼き付き性を向上させることができる。
被覆用のセラミック材料としては、例えばTiN、TiAlN、Al2O3、CrN、DLC等を使用することができ、厚すぎると耐欠損性が低下するため、被覆の厚さは、0.1〜20μmとすることが好ましい。また、被覆には通常用いられるPVD、CVD、めっき等の方法を使用することができる。
請求項5に記載の発明は、
前記内層のWC基超硬合金が、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末を用いて製造されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金である。
前記内層のWC基超硬合金が、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末を用いて製造されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金である。
請求項5の発明によれば、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法(亜鉛(錫)処理法)により製造した超硬粉末を内層に使用して超硬合金を製造しても、強度や靭性の品質が安定して優れた超硬合金とすることができる。
前記のように、超硬合金のスクラップの処理法として亜鉛(錫)処理法は湿式法よりも低コストではあるが、リサイクルした粉末中にZnやSnが不純物として残存しやすく、このリサイクル粉末を利用した超硬合金は強度が低下したり、不安定になるという問題があった。本発明の超硬合金は、このような欠点を有する亜鉛(錫)処理法により製造した超硬粉末をも有効に活用できるようになる。そして、地球環境保護、WC供給リスク回避の観点からも有益である。
請求項6に記載の発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金により形成されていることを特徴とする工具である。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金により形成されていることを特徴とする工具である。
請求項6の発明においては、前記各請求項に記載の積層構造型超硬合金により形成されているため、強度と靭性に優れた工具を提供することができる。
本発明の具体的工具としては、たとえば、切削チップ、ドリル、エンドミルなどの切削工具、金型やパンチ、ダイスなどの耐摩工具、ビットなどの鉱山土木、都市開発用工具、スリッターなどの切断工具、測定冶具などの精密工具などが挙げられる。
本発明の具体的工具としては、たとえば、切削チップ、ドリル、エンドミルなどの切削工具、金型やパンチ、ダイスなどの耐摩工具、ビットなどの鉱山土木、都市開発用工具、スリッターなどの切断工具、測定冶具などの精密工具などが挙げられる。
請求項7に記載の発明は、
前記工具が切削用工具であることを特徴とする請求項6に記載の工具である。
前記工具が切削用工具であることを特徴とする請求項6に記載の工具である。
工具の中でも、切削用工具に本発明の積層構造型超硬合金を用いた場合には、ZnとSnの合計含有率が高いWC基超硬合金が内層に存在しても、その影響は非常に小さい。これは、切削工具の場合、応力集中点は工具の表面近傍に存在するため、工具の強度は表面層のみで決まり、内層の超硬合金は硬さと靭性の機能を有することで、十分使用に耐えるからである。
このため、本発明の積層構造型超硬合金を切削用工具として有効に用いることができる。
このため、本発明の積層構造型超硬合金を切削用工具として有効に用いることができる。
請求項8に記載の発明は、
前記工具が金型用工具であることを特徴とする請求項6に記載の工具である。
前記工具が金型用工具であることを特徴とする請求項6に記載の工具である。
工具の中でも、金型用工具に本発明の積層構造型超硬合金を用いた場合には、ZnとSnの合計含有率が高いWC基超硬合金が内部に存在しても、その影響は非常に小さい。これは、金型用工具の場合、表面層の面粗さ、WC粒径、組成、硬さにその性能が大きく影響され、内層の超硬合金の強度特性の影響は非常に小さいためである。
このため、本発明の積層構造型超硬合金を金型用工具として有効に用いることができる。
このため、本発明の積層構造型超硬合金を金型用工具として有効に用いることができる。
請求項9に記載の発明は、
前記切削用工具の表面層の厚さが50μm以上1500μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の工具である。
前記切削用工具の表面層の厚さが50μm以上1500μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の工具である。
請求項9の発明においては、本発明の切削用工具の表面層の厚さが50μm以上1500μm以下であるため、切削加工時に欠損を引き起こしにくく、亀裂進展が起こりにくい切削用工具を提供することができる。
即ち、前記表面層の厚さが50μm未満であると、内層のZnとSnの合計含有率の高いWC基超硬合金の機械的強度が低いことが原因で生じる切削加工時の欠損を引き起こし易くなる。また、表面層の厚さが1500μmを超えると、内層のZnとSnの合計含有率が高いWC基超硬合金の特徴である優れた靭性を発揮することが困難になり易い。また、表面層の厚さが厚いため、内層の厚さが薄くなり、内層の体積が小さくなるため、リサイクル粉末を使用する量が少なく、コスト低減の効果が小さくなる。
熱亀裂の発生しやすいフライス加工や比較的弱い断続切削時には亀裂は緩やかに進展するため、亀裂長さは50μmから1500μmまで成長することがあり、この亀裂進展を抑制するためにZnとSnの合計含有率の高いWC基超硬合金を表面から50μm以上1500μm以下の位置に配置することが有効であり、より好ましい厚さは100μm以上1000μm以下である。
一方、表面層にはZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層を配置することで、強断続切削時の亀裂の発生を抑制できるため、亀裂が発生しにくく、亀裂進展の抑制効果に優れた切削用工具とすることができる。
即ち、前記表面層の厚さが50μm未満であると、内層のZnとSnの合計含有率の高いWC基超硬合金の機械的強度が低いことが原因で生じる切削加工時の欠損を引き起こし易くなる。また、表面層の厚さが1500μmを超えると、内層のZnとSnの合計含有率が高いWC基超硬合金の特徴である優れた靭性を発揮することが困難になり易い。また、表面層の厚さが厚いため、内層の厚さが薄くなり、内層の体積が小さくなるため、リサイクル粉末を使用する量が少なく、コスト低減の効果が小さくなる。
熱亀裂の発生しやすいフライス加工や比較的弱い断続切削時には亀裂は緩やかに進展するため、亀裂長さは50μmから1500μmまで成長することがあり、この亀裂進展を抑制するためにZnとSnの合計含有率の高いWC基超硬合金を表面から50μm以上1500μm以下の位置に配置することが有効であり、より好ましい厚さは100μm以上1000μm以下である。
一方、表面層にはZnとSnの合計含有率の低いWC基超硬合金層を配置することで、強断続切削時の亀裂の発生を抑制できるため、亀裂が発生しにくく、亀裂進展の抑制効果に優れた切削用工具とすることができる。
請求項10に記載の発明は、
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金の製造方法であって、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末と、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末の含有比率が0〜50vol%の超硬粉末を用いて、同時に積層プレス成形後、焼結して前記内層と表面層が積層されたWC基超硬合金を製造することを特徴とする積層構造型超硬合金の製造方法である。
請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金の製造方法であって、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末と、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末の含有比率が0〜50vol%の超硬粉末を用いて、同時に積層プレス成形後、焼結して前記内層と表面層が積層されたWC基超硬合金を製造することを特徴とする積層構造型超硬合金の製造方法である。
前記の通り、超硬合金スクラップを原料としてZnおよび/またはSnを用いたリサイクル法(亜鉛(錫)処理法)により製造された超硬粉末を内層に使用して超硬合金を製造しても、強度や靭性の品質が安定して優れた超硬合金とすることができ、さらに、環境面での負荷が小さくかつ安価にこのような超硬合金を提供することができる。
請求項11に記載の発明は、
前記表面層と前記内層を、結合相量(体積%)および/またはCo量(体積%)が同量である超硬粉末を用いて、同時に積層プレス成形することを特徴とする請求項10に記載の積層構造型超硬合金の製造方法である。
前記表面層と前記内層を、結合相量(体積%)および/またはCo量(体積%)が同量である超硬粉末を用いて、同時に積層プレス成形することを特徴とする請求項10に記載の積層構造型超硬合金の製造方法である。
請求項11の発明においては、前記表面層と前記内層に、結合相量(体積%)および/またはCo量(体積%)が同量である超硬粉末を用いるため、焼結に際して結合相やWの物質移動を抑制することができ、優れた合金特性が再現性良く発現する積層構造型超硬合金を提供することができる。また、表面層と内層を同時に積層プレス成形するため、積層構造型超硬合金を安価に提供することができる。
本発明によれば、強度と靭性が共に良好で、両特性が両立できる超硬合金とそれを用いた工具を提供することができる。また、超硬合金スクラップから得られる超硬のリサイクル粉末を有効に活用し、環境負荷を低減しつつ安価に優れた超硬合金を製造することができる。
以下、本発明を実施するための最良の実施の形態につき、以下に示す実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
本実施の形態は、超硬合金スクラップからリサイクル粉末を製造するに際して、Znを単独で用いた亜鉛処理法によりリサイクルを行った場合である。
実施例1、比較例
最初に、Znを単独で用いた亜鉛処理法により超硬合金スクラップから得られる超硬のリサイクル粉末に、造粒後のZnの含有率が5ppm未満となるように、所定量の新粉のWCおよびCo粉末を体積比でWC:Co=85:15となるように添加、混合して混合粉末を作製した。
次いで、前記混合粉末を、アルコールを溶媒として、ボールミルで72時間湿式混合した。混合終了後、スプレードライを用いて乾燥造粒を行い、(A)系統の合金混合粉末を得た。
一方、造粒後のZnの含有率が5ppm以上となるよう、新粉のWC基超硬合金粉末の添加量を調整した以外は、上記と同様にして、(B)系統の合金混合粉末を得た。
最初に、Znを単独で用いた亜鉛処理法により超硬合金スクラップから得られる超硬のリサイクル粉末に、造粒後のZnの含有率が5ppm未満となるように、所定量の新粉のWCおよびCo粉末を体積比でWC:Co=85:15となるように添加、混合して混合粉末を作製した。
次いで、前記混合粉末を、アルコールを溶媒として、ボールミルで72時間湿式混合した。混合終了後、スプレードライを用いて乾燥造粒を行い、(A)系統の合金混合粉末を得た。
一方、造粒後のZnの含有率が5ppm以上となるよう、新粉のWC基超硬合金粉末の添加量を調整した以外は、上記と同様にして、(B)系統の合金混合粉末を得た。
次に、特殊プレス機を用いて、焼結後の形状が、ISO型番CNGN120408用素材(内接円:13.1mm、厚み:5.0mm)となる表面層/内層/表面層の3層サンドイッチ構造となるようにプレス成形体を作製し、さらに1400℃で1時間保持して真空焼結を行った。なお、表面層には、前記(A)系統の混合粉末を、内層には、前記(B)系統の混合粉末を使用した。
また、比較例の合金の製造についても、前記(A)系統あるいは(B)系統合金混合粉末を用いて、前記と同様のプレス成形体を作製し、真空焼結を行った。
表1に、作製した各サンドイッチ構造焼結体の表面層厚み、製造に使用した混合粉末中のZn含有率を示した。なお、Zn含有量は、ICP(Inductively Coupled Plasma)法による発光分析により、測定した。
作製した焼結体に研削加工と刃先処理を施し、PVD法でTiAlN(3μm)/AlCrN(2μm)を被覆した。作製した試料の耐摩耗性、強度、靭性の評価を以下に記載の3つの切削試験により行った。
なお、強度試験の被削材としては図1に示す4溝材1、靱性試験の被削材としては図2に示す4V溝材2を用いた。
なお、強度試験の被削材としては図1に示す4溝材1、靱性試験の被削材としては図2に示す4V溝材2を用いた。
(耐摩耗性)
被削材 :SCM435
切削速度:180m/min
送り :0.2mm/rev
切込み :1.5mm
湿式、10分間
被削材 :SCM435
切削速度:180m/min
送り :0.2mm/rev
切込み :1.5mm
湿式、10分間
(強度)
被削材 :SCM435(4溝材)
切削速度:80m/min
切込み :2mm
乾式、30秒間
被削材 :SCM435(4溝材)
切削速度:80m/min
切込み :2mm
乾式、30秒間
(靭性)
被削材 :SCM435(4V溝材)
切削速度:120m/min
送り :0.3mm/rev
切込み :1.5mm
湿式
被削材 :SCM435(4V溝材)
切削速度:120m/min
送り :0.3mm/rev
切込み :1.5mm
湿式
耐摩耗性については摩耗量、強度については欠損が生じた送り量、靭性については欠損が生じるまでに切削できた時間を表1に示した。
実施例2
表面層厚みが異なる試料を実施例1と同様にして作製し、同様に切削試験を実施した。その結果を表2に示した。
表面層厚みが異なる試料を実施例1と同様にして作製し、同様に切削試験を実施した。その結果を表2に示した。
表1、2より、本発明の範囲内にある試料は、耐摩耗性、強度および靭性がバランスよく切削性能に優れており、切削工具として寿命の長いことが分かる。
上記の実施の形態は、Znのみが含有された焼結体に関する例であるが、Snのみが含有された焼結体や、ZnおよびSnが含有された焼結体についても、同様に、耐摩耗性、強度および靭性がバランス良く共に良好であり、切削工具用の材料として優れた材料であることを確認した。
1: 4溝材
2: 4V溝材
2: 4V溝材
Claims (11)
- 表面層および内層の少なくとも二層のWC基超硬合金層が積層された積層構造型超硬合金であって、内層のZnとSnの合計含有率が表面層のZnとSnの合計含有率よりも高いことを特徴とする積層構造型超硬合金。
- 前記表面層と前記内層の各々に含まれる結合相量(体積%)が同量であることを特徴とする請求項1に記載の積層構造型超硬合金。
- 前記表面層中に含まれる結合相を構成するCo量(体積%)と前記内層中に含まれる結合層を構成するCo量(体積%)が同量であることを特徴とする請求項2に記載の積層構造型超硬合金。
- 前記表面層の表面にさらにセラミック被覆膜を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金。
- 前記内層のWC基超硬合金が、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末を用いて製造されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金により形成されていることを特徴とする工具。
- 前記工具が切削用工具であることを特徴とする請求項6に記載の工具。
- 前記工具が金型用工具であることを特徴とする請求項6に記載の工具。
- 前記切削用工具の表面層の厚さが50μm以上1500μm以下であることを特徴とする請求項7に記載の工具。
- 請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の積層構造型超硬合金の製造方法であって、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末と、Znおよび/またはSnを用いたリサイクル法により製造された超硬粉末の含有比率が0〜50vol%の超硬粉末を用いて、同時に積層プレス成形後、焼結して前記内層と表面層が積層されたWC基超硬合金を製造することを特徴とする積層構造型超硬合金の製造方法。
- 前記表面層と前記内層を、結合相量(体積%)および/またはCo量(体積%)が同量である超硬粉末を用いて、同時に積層プレス成形することを特徴とする請求項10に記載の積層構造型超硬合金の製造方法。
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