JP2009096261A - 衝撃エネルギー吸収部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】環状強化部と環状非強化部とが交互に設けられる筒形状の衝撃エネルギー吸収部材において、優れた衝撃エネルギー吸収性能が安定して得られるとともに、その衝撃エネルギーの吸収特性をきめ細かく調整できるようにする。
【解決手段】本体部(衝撃エネルギー吸収部材)20が角パイプ30を用いて構成されており、その角パイプ30に所定の間隔で焼入れが施されることによって環状強化部26が設けられているため、環状強化部26と環状非強化部28との間に十分な強度差を付与することが可能で、高い衝撃エネルギー吸収性能を得ることができるとともに、環状非強化部28が優先的に変形して蛇腹状に座屈する際の挙動が安定する。また、高い位置精度で環状強化部26を設けることが可能で、衝撃エネルギー吸収性能が一層安定するとともに、環状強化部26の形成パターン等の設定の自由度が高くなるため、衝撃エネルギーの吸収特性をきめ細かく調整できる。
【選択図】図1

Description

本発明は衝撃エネルギー吸収部材に係り、特に、優れた衝撃エネルギー吸収性能が安定して得られるとともにその衝撃エネルギーの吸収特性の調整が容易な衝撃エネルギー吸収部材に関するものである。
筒形状を成しているとともに環状強化部と環状非強化部とを軸方向に交互に備えており、その軸方向に圧縮衝撃荷重が加えられた際にその環状非強化部が優先的に変形させられることにより、全体として蛇腹状に繰り返し座屈させられて衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部材が、例えば車両の車体側部材とバンパー部材との間に配設されて衝突時の衝撃を吸収する場合などに使用されている。特許文献1に記載の装置はその一例で、歪時効特性を有する鋼板が用いられ、平坦な鋼板の状態で所定部位に歪を付与するとともに、筒形状に曲げ加工した後に歪時効処理(塗装時の焼付け処理など)を施して環状強化部を形成するようになっている。
特開2006−142905号公報
しかしながら、このように歪時効特性を有する鋼板を用いる場合、環状強化部における強度の増加量を十分に確保することが困難で、高い衝撃エネルギー吸収性能を得ることが難しいとともに、環状強化部と環状非強化部との強度差が小さいため、蛇腹状に繰り返し座屈する際の挙動が不安定で、所定の衝撃エネルギー吸収性能を安定して得ることが難しい。また、歪を付与した後に筒形状に曲げ加工し、その後に歪時効処理を施して環状強化部を形成するため、目的とする形成箇所に高い精度で環状強化部を設けることが困難で、この点でも衝撃エネルギー吸収性能がばらつき易いとともに、衝撃エネルギーの吸収特性をきめ細かく調整することができない。更に、歪を付与するための工程が複雑で製造コストが高くなるとともに、複数の環状強化部間で強度差を設ける場合には鋼板に付与する歪量を変更する必要があり、加工条件等の調整が面倒で複雑になるため、生産性が低下して製造コストが一層高くなる一方、歪の影響で最終的な製品形状が損なわれる可能性がある。
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、環状強化部と環状非強化部とが軸方向に交互に設けられる筒形状の衝撃エネルギー吸収部材において、優れた衝撃エネルギー吸収性能が安定して得られるとともにその衝撃エネルギーの吸収特性を容易にきめ細かく調整することができる一方、最終的な製品形状に対する強化処理の影響が小さく、しかも簡単且つ安価に製造できるようにすることにある。
かかる目的を達成するために、第1発明は、筒形状を成しているとともに環状強化部と環状非強化部とを軸方向に交互に備えており、その軸方向に圧縮衝撃荷重が加えられた際にその環状非強化部が優先的に変形させられることにより、全体として蛇腹状に繰り返し座屈させられて衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部材において、筒形状の鋼管を用いて構成されているとともに、その鋼管の軸方向に所定の間隔で焼入れが施されることにより前記環状強化部が設けられていることを特徴とする。
第2発明は、第1発明の衝撃エネルギー吸収部材において、前記軸方向が車両の前後方向となる姿勢で車体側部材とバンパー部材との間に配設されて使用される車両用の衝撃エネルギー吸収部材であることを特徴とする。
第3発明は、第1発明または第2発明の衝撃エネルギー吸収部材を好適に製造できる製造方法に関するもので、(a) 前記鋼管の全周を加熱する環状の加熱装置と、(b) その加熱装置に隣接して配設され、その加熱装置によって加熱された前記鋼管の全周に冷却液を噴射して急冷する環状の冷却装置と、(c) 前記加熱装置および前記冷却装置と前記鋼管とを、その鋼管の軸方向へ相対的に直線移動させる移動装置と、を有し、(d) 前記移動装置による直線移動および前記加熱装置による加熱を連動させて制御することにより、前記鋼管を軸方向において断続的に加熱するとともに、その加熱部分を前記冷却装置で急冷することによって焼入れを施し、その鋼管の軸方向に所定の間隔で前記環状強化部を形成することを特徴とする。
第1発明、第2発明の衝撃エネルギー吸収部材においては、筒形状の鋼管を用いて構成されており、その鋼管の軸方向に所定の間隔で焼入れが施されることによって環状強化部が設けられているため、環状強化部と環状非強化部との間に十分な強度差を付与することが可能で、高い衝撃エネルギー吸収性能を得ることができるとともに、環状非強化部が優先的に変形して蛇腹状に繰り返し座屈する際の挙動が安定し、所定の衝撃エネルギー吸収性能が安定して得られるようになる。
また、筒形状の鋼管に対して焼入れを施すことにより環状強化部を形成するため、高い位置精度で環状強化部を設けることが可能であり、衝撃エネルギー吸収性能が一層安定するとともに、環状強化部の形成箇所やパターン等の設定の自由度が高くなるため、衝撃エネルギーの吸収特性をきめ細かく調整することができる。特に、加熱深さ(加熱時間など)や冷却速度等の焼入れ条件を調整することにより、複数の環状強化部間に強度差を付与することが容易に可能で、衝撃エネルギーの吸収特性の設定の自由度が一層高くなる。
更に、歪を付与して環状強化部を設ける場合に比較して、最終的な製品形状に対する影響が小さく、所定形状の衝撃エネルギー吸収部材を安価に高い精度で製造することができる。
一方、第3発明の製造方法においては、実質的に第1発明、第2発明と同様の効果が得られるのに加えて、移動装置による直線移動および加熱装置による加熱を連動させて制御することにより、鋼管を軸方向において断続的に加熱するとともに、その加熱部分を冷却装置で急冷することによって焼入れを施し、軸方向に所定の間隔で環状強化部を形成するため、配管を軸方向へ連続的または間欠的に相対移動させながら複数の環状強化部を連続的に形成することが可能で、高い生産性が得られて製造コストが低減されるとともに、多数の加熱装置等を用いて多数の環状強化部を同時に焼入れ処理する場合に比較して装置が簡単且つ安価に構成される。
本発明の衝撃エネルギー吸収部材は、第2発明のように車両の車体側部材とバンパー部材との間に配設される車両用の衝撃エネルギー吸収部材に好適に適用されるが、車両の他の部位に配設される車両用衝撃エネルギー吸収部材や、車両用以外に用いられる衝撃エネルギー吸収部材にも適用され得る。
素材となる鋼管は、市販されている角形鋼管や丸形鋼管などをそのまま利用することもできるが、焼入れ用鋼板を使用し、断面が四角形や多角形等の角形、或いは円形や楕円形等の丸形の筒形状に曲げ加工して両側部を突き合わせ、或いは重ね合わせて、必要に応じて溶接等により一体的に接合したものを用いることもできる。この鋼管の材種としては、焼入れによって硬化する焼入れ性の高い種々の鋼材料を採用できる。例えば、焼入れ前の表面硬さが150〜250Hv程度で、焼入れ後の表面硬さが400Hv以上となるものが好適に用いられる。
環状強化部および環状非強化部は、それぞれ略同じ一定の幅寸法で軸方向に交互に設けることもできるが、両者の幅寸法を互いに異ならせることもできるし、両方或いは何れか一方の幅寸法を軸方向において徐々に増加または減少させることもできるなど、種々の態様が可能である。また、加熱深さや冷却速度等の焼入れ条件を調整することにより、複数の環状強化部毎に強度に差を与えることも可能である。
第3発明の製造方法はあくまでも一例で、例えば軸方向に設けられる環状強化部の数だけ加熱装置および冷却装置を所定の間隔で一列に配置した焼入れ装置を用いて、複数の環状強化部を同時に加熱するとともに冷却して焼入れ処理を行うこともできるなど、種々の態様が可能である。
第3発明において、移動装置による直線移動および加熱装置による加熱を連動させて制御することにより、鋼管を軸方向において断続的に加熱する方法としては、例えば移動装置により鋼管を所定の速度で連続的に相対移動させながら、加熱装置による加熱を所定の時間間隔でON(加熱)、OFF(加熱停止)するようにしても良いが、移動装置により鋼管を所定距離ずつ間欠的に相対移動させるとともに、その移動停止中に加熱装置で加熱するようにしても、鋼管を軸方向において断続的に加熱することができる。移動装置は、鋼管を軸方向へ移動させるものでも、加熱装置および冷却装置を一体的に移動させるものでも良い。
加熱装置としては、例えば高周波コイルによる誘導電流で加熱するものが適当であるが、レーザーや電子ビームなどを用いて加熱するものでも良いなど、種々の態様が可能である。高周波誘導加熱の場合、高周波電流や周波数、加熱時間によって加熱深さ、すなわち焼入れ深さを調整することができる。環状の加熱装置は、レーザーや電子ビーム等の加熱手段を環状のガイドに沿って回転させて鋼管の全周を加熱する場合を含む。
冷却装置は、例えば環状の冷却配管に設けられた多数の噴出穴から冷却水や冷却オイル等の冷却液を鋼管の外周面に向かって噴射するように構成される。この冷却液の噴射量や温度によって冷却速度、更には焼入れによる強度増大量などを調整することができる。
本発明の衝撃エネルギー吸収部材は、例えば軸方向の両端部に一対の取付プレートが一体的に固設され、その取付プレートを介して車両の車体側部材とバンパー部材との間などに一体的に取り付けられて使用される。
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例である衝撃エネルギー吸収部材を用いて構成されている車両用のクラッシュボックス14R、14Lを説明する図で、(a) は車両のフロント側のバンパービーム10の近傍を車両の上方から見た概略平面図であり、左右のサイドメンバー12R、12Lの前端部にはそれぞれクラッシュボックス14R、14Lが配設されているとともに、バンパービーム10は、その左右の両端部においてクラッシュボックス14R、14Lに固定されている。図1の(b) は、(a) における IB −IB断面すなわち右側の取付部付近の断面図で、クラッシュボックス14Rは、筒形状の本体部20と、その本体部20の軸方向の両端部にそれぞれ一体的に溶接固定された一対の取付プレート22、24とを備えており、それ等の取付プレート22、24を介して図示しないボルト等によりサイドメンバー12R、バンパービーム10に固定されるようになっている。バンパービーム10は、バンパーのリインフォースメント(補強部材)および取付部材として機能するもので、合成樹脂等から成るバンパー本体16が一体的に取り付けられるようになっている。バンパービーム10はバンパー部材に相当し、サイドメンバー12R、12Lは車体側部材に相当する。
図2は、上記クラッシュボックス14Rの本体部20を単独で示す斜視図で、この本体部20は、断面が四角形(長方形)の角筒形状を成しており、その長手方向すなわち長さ寸法Lで示す方向が車両の前後方向となり、断面の長辺すなわち高さ寸法Hで示す方向が車両の上下方向となる姿勢で、前記サイドメンバー12Rとバンパービーム10との間に配設される。この本体部20が衝撃エネルギー吸収部材に相当し、角筒形状の鋼管を用いて構成されているとともに、その鋼管の軸方向に所定の間隔で焼入れが施されることにより、その焼入れで硬化させられた環状強化部26と焼入れが施されていない環状非強化部28とが軸方向に交互に複数(例えば3組〜10組程度)設けられている。これ等の環状強化部26、環状非強化部28の幅寸法w1、w2は適宜設定され、例えば互いに相違させたり、本体部20の長手方向において漸増或いは漸減させたりすることもできるが、本実施例では互いに略同じ寸法で、且つ本体部20の全域において一定の寸法とされている。図1および図2において細かい斜線で示す領域は、環状強化部26を表している。
図3は、上記本体部20の製造工程を説明する図で、(a) は角パイプ準備工程、(b) は焼入れ工程である。(a) の角パイプ準備工程は、目的とする本体部20と略同一形状の角パイプ30を、筒形状の鋼管として用意する工程で、市販の角形鋼管をそのまま利用することもできるが、本実施例では焼入れ用鋼板をプレス加工により所定の大きさに切断し、プレス加工などで角筒形状に曲げ加工して両側部を突き合わせ、或いは重ね合わせて、必要に応じて溶接等により一体的に接合する。焼入れ用鋼板としては、例えば焼入れ前の表面硬さが約200Hvで、焼入れ後の表面硬さが約450Hv以上となる焼入れ性の高いものが用いられる。
図3(b) の焼入れ工程は、上記角パイプ30の軸方向に前記環状強化部26を所定の間隔で形成する工程で、焼入れ装置32を用いて行われる。焼入れ装置32は、(a) 前記角パイプ30の全周を加熱する環状の加熱装置34と、(b) その加熱装置34に隣接して配設され、加熱装置34によって加熱された前記角パイプ30の全周に冷却液を噴射して急冷する環状の冷却装置36と、(c) それ等の加熱装置34および冷却装置36を角パイプ30の軸方向の一方、すなわち加熱装置34側であって図3(b) における右方向へ一体的に直線移動させる移動装置42と、(d) それ等の加熱装置34、冷却装置36、移動装置42の各々の作動を制御する制御装置44とを有して構成されている。加熱装置34および冷却装置36は、移動装置42により電動モータおよび送りねじ等の直線移動機構によって水平方向へ直線移動させられるスライダ38上に位置固定に配設されており、支持台40によって略水平な一定の姿勢に保持されている角パイプ30に対して、その角パイプ30の軸方向へ相対的に直線移動させられる。
加熱装置34は、例えば角パイプ30を囲むように配設された環状の高周波コイルにより角パイプ30の外周面に誘導電流を発生させて加熱するように構成され、冷却装置36は、例えば角パイプ30を囲むように配設された環状の冷却液導管に設けられた多数の噴出穴から冷却水や冷却オイル等の冷却液を角パイプ30の外周面に向かって噴射するように構成される。
制御装置44は、各種の信号処理を行うマイクロコンピュータを有して構成されており、前記移動装置42による加熱装置34および冷却装置36の直線移動および加熱装置34による加熱を連動させて制御することにより、角パイプ30を軸方向において断続的に加熱するとともに、その加熱部分を冷却装置36で急冷することによって焼入れを施し、角パイプ30の軸方向に所定の間隔で前記環状強化部26を形成する。本実施例では、移動装置42により加熱装置34および冷却装置36を一定の速度で連続送りするとともに、加熱装置34による加熱を所定の時間間隔でON(加熱)、OFF(加熱停止)することにより、所定の間隔すなわち前記環状非強化部28の幅寸法w2を隔てて、前記環状強化部26の幅寸法w1の範囲で焼入れ処理が施されるようにする。これにより、一定の幅寸法w1の環状強化部26が、幅寸法w2の環状非強化部28を隔てて連続的に形成される。冷却装置36についても、加熱装置34のON、OFFに対応して冷却液の噴射をON(噴射)、OFF(噴射停止)するようにしても良いが、加熱装置34のON、OFFとは関係無く冷却液を連続噴射させるようにしても良い。加熱装置34の高周波電流やその周波数、加熱時間によって加熱深さすなわち焼入れによる硬化深さを調整することができるとともに、冷却装置36の冷却液の噴射量や温度によって冷却速度すなわち焼入れによる強度増大量(硬化の程度)を調整することができる。
そして、このようにして製造された本体部20を有するクラッシュボックス14Rは、車両前方から衝撃が加えられて圧縮衝撃荷重Fを受けると、環状非強化部28の部分が優先的に外側へくの字状に変形させられることにより、図1の(c) に示すように全体として蛇腹状に繰り返し座屈させられ、この時の変形で衝撃エネルギーを吸収し、サイドメンバー12R等の車両の構造部材に加えられる衝撃を緩和する。この蛇腹状の座屈は、通常はバンパービーム10側すなわち入力側から座屈が開始し、時間の経過と共に車体側へ進行する。なお、バンパービーム10は左右対称で、左側のクラッシュボックス14Lも上記クラッシュボックス14Rと実質的に同様に構成されており、同様の衝撃エネルギー吸収作用が得られる。
ここで、本実施例のクラッシュボックス14R、14Lにおいては、その本体部20が角パイプ30を用いて構成されており、その角パイプ30の軸方向に所定の間隔で焼入れが施されることによって環状強化部26が設けられているため、環状強化部26と環状非強化部28との間に十分な強度差を付与することが可能で、高い衝撃エネルギー吸収性能を得ることができるとともに、環状非強化部28が優先的に変形して蛇腹状に繰り返し座屈する際の挙動が安定し、所定の衝撃エネルギー吸収性能が安定して得られるようになる。
また、角パイプ30に対して焼入れを施すことにより環状強化部26を形成するため、高い位置精度で環状強化部26を設けることが可能であり、衝撃エネルギー吸収性能が一層安定するとともに、環状強化部26の形成箇所やパターン等の設定の自由度が高くなるため、衝撃エネルギーの吸収特性をきめ細かく調整することができる。特に、加熱深さや冷却速度等の焼入れ条件を調整することにより、複数の環状強化部26間に強度差を付与することが容易に可能で、衝撃エネルギーの吸収特性の設定の自由度が一層高くなる。
更に、歪を付与して環状強化部26を設ける場合に比較して、最終的な製品形状に対する影響が小さく、所定形状すなわちこの実施例では四角形の角筒形状の本体部20を安価に高い精度で製造することができる。
また、本実施例では焼入れ装置32を用いて環状強化部26が形成されるが、移動装置42による加熱装置34および冷却装置36の移動、および加熱装置34による加熱を連動させて制御することにより、角パイプ30を軸方向において断続的に加熱するとともに、その加熱部分を冷却装置36で急冷することによって焼入れを施し、軸方向に所定の間隔で環状強化部26を形成するため、加熱装置34および冷却装置36を連続的に移動させながら多数の環状強化部26を連続的に形成することができる。これにより、高い生産性が得られて製造コストが低減されるとともに、多数の加熱装置34等を用いて多数の環状強化部26を同時に焼入れ処理する場合に比較して装置が簡単且つ安価に構成される。
一方、図4に示す化学成分を有するとともに残りがFe(鉄)および不可避的不純物から成る焼入れ用鋼板を曲げ加工することにより、図2に示す高さ寸法H=70mm、横幅寸法W=50mm、板厚t=1.5mm、長さ寸法L=250mmの角パイプ30を用意し、そのままの比較品と、前記焼入れ装置32によって焼入れ処理を施すことにより前記幅寸法w1=w2=20mmの環状強化部26および環状非強化部28が軸方向に交互に設けられた本発明品とを用いて、以下の試験条件で自由落下による落錘試験を行い、衝突エネルギーの吸収性能を調べたところ、図5に示す結果が得られた。本発明品の環状強化部26の表面硬さは約450Hvで、環状非強化部28の表面硬さは約200Hvである。
《試験条件》
・錘体重量:430kg
・落錘高さ:5m
図5の実線は、本発明品に関する圧縮変位(ストローク)に対する荷重および吸収エネルギーの変化特性で、破線で示す比較品に比較して全体に荷重が高く、吸収エネルギーが最後まで滑らかに上昇する良好な衝撃エネルギー吸収性能が得られる。図5の(b) の吸収エネルギーは、(a) の荷重の積分値に相当する。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
本発明の一実施例である衝撃エネルギー吸収部材を用いて構成された車両用のクラッシュボックスを説明する図で、(a) は車両への配設態様の一例を示す概略平面図、(b) は(a) におけるIB−IB断面図、(c) は圧縮衝撃荷重Fにより衝撃エネルギー吸収部材が蛇腹状に座屈させられた状態を示す図である。 図1の車両用クラッシュボックスの本体部である衝撃エネルギー吸収部材を単独で示す斜視図である。 図2の衝撃エネルギー吸収部材の製造工程を説明する図である。 落錘試験を行って衝突エネルギーの吸収性能を調べる際に用いた衝撃エネルギー吸収部材の化学成分を示す図である。 落錘試験で得られた圧縮変位に対する荷重および吸収エネルギーの変化特性を、本発明品と焼入れ無しの比較品とを比較して示す図である。
符号の説明
10:バンパービーム(バンパー部材) 12R、12L:サイドメンバー(車体側部材) 14R、14L:クラッシュボックス 20:本体部(衝撃エネルギー吸収部材) 26:環状強化部 28:環状非強化部 30:角パイプ(筒形状の鋼管) 34:加熱装置 36:冷却装置 42:移動装置 F:圧縮衝撃荷重

Claims (3)

  1. 筒形状を成しているとともに環状強化部と環状非強化部とを軸方向に交互に備えており、該軸方向に圧縮衝撃荷重が加えられた際に該環状非強化部が優先的に変形させられることにより、全体として蛇腹状に繰り返し座屈させられて衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収部材において、
    筒形状の鋼管を用いて構成されているとともに、該鋼管の軸方向に所定の間隔で焼入れが施されることにより前記環状強化部が設けられている
    ことを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材。
  2. 前記軸方向が車両の前後方向となる姿勢で車体側部材とバンパー部材との間に配設されて使用される車両用の衝撃エネルギー吸収部材である
    ことを特徴とする請求項1に記載の衝撃エネルギー吸収部材。
  3. 請求項1または2に記載の衝撃エネルギー吸収部材の製造方法であって、
    前記鋼管の全周を加熱する環状の加熱装置と、
    該加熱装置に隣接して配設され、該加熱装置によって加熱された前記鋼管の全周に冷却液を噴射して急冷する環状の冷却装置と、
    前記加熱装置および前記冷却装置と前記鋼管とを、該鋼管の軸方向へ相対的に直線移動させる移動装置と、
    を有し、前記移動装置による直線移動および前記加熱装置による加熱を連動させて制御することにより、前記鋼管を軸方向において断続的に加熱するとともに、該加熱部分を前記冷却装置で急冷することによって焼入れを施し、該鋼管の軸方向に所定の間隔で前記環状強化部を形成する
    ことを特徴とする衝撃エネルギー吸収部材の製造方法。
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