JP2009095650A - 人工椎体 - Google Patents

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Abstract

【課題】自家骨と同等の微細構造(ナノコンポジット構造)と組成および立体構造を持ち、新生血管、骨原性細胞の侵入等の優れた特性をもつ人工椎体を提供する。
【解決手段】HAp/Col複合体からなるブロックにこのようなハバース管およびフォルクマン管状の穿孔を設けた構造を特徴とした人工椎体であり、HAp/Col複合体の特性とこのような構造によって、移植後に血管と骨原性細胞が人工椎体内部に侵入しやすくし、中心部に海綿骨(骨髄)、側方周囲を皮質骨(HAp/Col)が囲む本来の骨と同等の構造物が作られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、人工椎体、特に、脊椎前方固定術に必要とされ、椎体の骨欠損部に充填された後に自己組織化するヒドロキシアパタイトとコラーゲン(HAp/Col)複合体からなる材料を用いた骨髄再生機能を有する人工椎体およびそれを椎体に固定するために好適なポリ乳酸プレートからなる支持体に関する。
従来の技術
一般に、人工素材を骨の欠損部に埋入すると、材料は繊維性の膜で取り込まれ、周囲の組織から隔離される。これは、異物から自己を守る生体防御反応の結果である。しかし、ある種の材料は繊維性の皮膜を作ることなしに周囲の骨と直接結合することができる。その典型的な材料として、水酸化アパタイトCa10(PO4)6(OH)2やリン酸三カルシウムCa3(PO4)2が知られている。
そこで、このようなバイオセラミックスを基本とする有機・無機複合体からなる人工骨材が開発されつつある。例えば、特開平7−101708号公報には、結晶粒径が0.5μm以下のアパタイト粉体とコラーゲンなどの生体高分子有機物とを含有する組成物粉体に5〜40重量%の水分を含有させ、200℃以下0℃以上の温度に保って50MPa以上の圧力を加えて成型体としたヤング率を2GPa〜110MPaの範囲で調整できる人工骨、人工歯根などのインプラント材が記載されている。
本発明者等は、コラーゲンを含有するリン酸水溶液とカルシウム塩を含有する水溶液とを反応容器に同時に滴下してリン酸カルシウムとコラーゲンの共沈を行った後、得られた沈殿物を加圧成形するする方法によって、骨誘導および骨伝導能を有する生体骨置換型骨再建材などとして好適な曲げ強度、ヤング率、圧縮強度の優れたアパタイトとコラーゲンからなる配向性複合材料を開発した(特開平11−199209号公報、J BIOMEDICALS RESEARCH,54:445−453, Published online,4 December 2000)。
また、特開平8−336584号公報には、粒径2nm〜0.2μmのアパタイト結晶粒を30重量%以上とコラーゲンなどの有機物を含み、径10μm〜2mmの貫通孔が存在している人工骨髄用アパタイト多孔体が記載されている。また、特開平7−88174号公報には、バイオセラミックス材料支持体にrhBPMと担体からなる圧縮成形骨形成移植体を形成したものが開示されている。
さらに、従来、骨折部を固定、補助し整復するのに一般的に使用されている金属製の骨接合プレートやビスなどに代えてロッド状、プレート状、スクリュー状、ピン状などの生体内分解吸収性のポリ乳酸からなる溶融成形物や押し出し成型物が開発されている(特開平3−29663号公報、特開平5−168647号公報)。
椎体の骨欠損部を充填するための移植体はこれまで、主に自家骨採取が行われてきたが、金属製またはセラミック製の人工移植体も種々開発されている。人工移植体を用いる場合は、垂直荷重を受けるため、曲げ強さ、曲げ弾性、圧縮強度などの要件を十分に満たすとともに自家骨に代わる特性を備えていなければならない。
このため、例えば、特開平4−303444号公報(文献1)には、金属製またはセラミック製の多孔体の間にポリビニールアルコールハイドロゲルからなるブロック体を合体してなる種々のブロック形状の人工椎間板が開示されている。米国特許5702449号明細書・図面(文献2)には、側壁に多数の孔を有する円筒状金属スリーブからなる荷重支持部材を用いて、その内部にヒドロキシアパタイト/三リン酸カルシウムなどのバイオセラミックを備えた人工椎体が開示されている。
特開平10−33656号公報(文献3)には、骨伝導能を有する生体吸収性材料であるβ−リン酸三カルシウム(TCP)から多孔体と機械的強度を有する緻密体とを形成し、両者を複合させ、緻密体で初期強度を維持させ、多孔体で自家骨置換を進行させる種々のブロック形状の椎体固定部材が開示されている。
特表平11−513590号公報(文献4)には、不溶性のバイオポリマー繊維(原繊維コラーゲン)、バインダーおよび固定化リン酸カルシウム無機質(ヒドロキシアパタイト)の結合されたネットワークを含む骨置換のための多孔性で生体内分解性の脊椎固定、骨欠損の補填、骨折修復、歯周欠損移植用マトリックスが開示されており、コラーゲンのリン酸カルシウム無機質に対する重量比を8:2から1:1とするとよいこと、マトリックスをグルタールアルデヒドなどで架橋するとよいこと、さらに骨髄細胞、自家性骨、骨成長因子を含むとよいことなどが記載されている。
特表2000−507484号公報(文献5)には、荷重支持部材がバイオセラミックスマトリックスに骨成長成分を含浸させた骨移植片を含む脊柱スペーサが開示されている。
特表2000−508221号公報(文献6)には、細孔を有し、2〜40容量%のヒドロキシアパタイト(HAp)および98〜60容量%のリン酸三カルシウム(TCp)を有する二相リン酸カルシウムセラミックを含有するマトリックス本体とその内部に捕捉された骨成長誘導因子(TGF−β,BMP,プロスタグランディン他)を含んでなる円柱体状インプラントが開示されており、このセラミックは約200〜600μmの大きさの細孔を有し、多孔度が約60〜80%であることなどが記載されている。
特表2000−517221号公報(文献7)には、最高30容積%の気孔率を有し、その気孔が空気で充填されている孔径100μm未満の慣用のセラミック材料からなる角柱又は円筒形の椎間移植体が開示され、その圧縮強さが400〜600MPaであること、セラミックス材料がレントゲン線に対して透明であることなどが記載されている。
上記の文献1のものは、ブロックが皮質骨の中に埋め込まれるだけで、骨髄構造体を作らない。文献2のものでは、金属が残存し、本来の骨になり得ない、繰り返すストレスで骨−インプラント界面で破断を来す、TCPがすぐ吸収されてしまうため、中心部に残ったHAだけでは骨伝導性が弱く、インプラント自体が自己崩壊を生じる可能性がある、などの問題がある。
文献3のものは、β−リン酸三カルシウム(TCP)はほとんど強度がないためにこれに緻密体を複合化して強度を補うものにすぎない。文献4のものは、単なるコラーゲンとアパタイトの混合物であり、骨のナノコンポジット構造は持たず、自己組織化も起こらない。さらに、強度が不十分で、骨生成能も乏しい。
文献5のものは、マトリックス自体に骨髄を形成する能力がない。また、自家骨や金属を用いては採骨部の合併症、金属疲労などの従前からの問題点が解決されていない。また、同種骨移植は、エイズ、肝炎感染の危険が伴う。文献6のものは、TCP−HApの複合からなる多孔体であるが、自己組織化は起こさない。また、インプラント自体が直接BMPを吸着する担体ではない。文献7のものは、気孔率の大きな多孔体であるが、自家骨への置換は不十分で繰り返すストレスにより破断する恐れがあり、また、骨髄移植片を用いずに、椎体構造を生体に作らせることはできない。
上記のように、これまでに開発された人工椎体は、いずれも、骨髄形成能、自己組織化(骨組織再建)能のある生体吸収材料ではない。そこで、本発明は、自家骨と同等の微細構造(ナノコンポジット構造)と組成および立体構造を持ち、新生血管、骨原性細胞の侵入等の優れた特性をもつ人工椎体の開発を目的とする。
本発明者は、上記の特開平11−199209号公報、J BIOMEDICALS RESEARCH,54:445−453,Published online, 4 December 2000に開示しているように、骨伝導能に優れたHAp/Col複合体を先に開発し、この複合体について人工椎体への適用について鋭意研究開発を続け、HAp/Col複合体からなり、骨髄再生能を有する人工椎体の立体構造を見いだすとともに、この人工椎体と組み合わせて使用するのに好適な人工椎体固定用の生体内分解吸収性支持体を開発した。
本発明の人工椎体は、術後の早期加重可能な強度を有し、かつ骨伝導能に優れ、細胞分化や増殖能が高く、骨髄形成能、自己組織化(組織再建)能のある生体吸収材料であり、自家骨と同等の優れた特性を発揮するものである。
発明1の人工椎体は、HAp/Col複合体に、ハバース管状又はフォルクマン管状の穿孔が形成されてなることを特徴とする。
発明2は、発明1の人工椎体において、前記穿孔の直径が、0.4〜0.6mmであることを特徴とする。
発明3は、発明1又は2の人工椎体において、Col線維方向にHAp粒子のc軸が配向してなることを特徴とする。
本発明の人工椎体は、HAp/Col複合体からなるブロックにこのようなハバース管およびフォルクマン管状の穿孔を設けた構造を特徴として、HAp/Col複合体の特性とこのような構造によって、移植後に血管と骨原性細胞が人工椎体内部に侵入しやすくし、中心部に海綿骨(骨髄)、側方周囲を皮質骨(HAp/Col)が囲む本来の骨と同等の構造物が作られる。
ブロックの人体の正面から見て前後方向および左右方向に穿孔された複数のフォルクマン管状の孔は、骨膜から血管が侵入し、骨原性細胞がそれに伴われて入ってくる機能をするものであり、直径は0.4〜0.6mm程度とする。0.6mmより大きいと、クラックが発生しやすくなる。また、0.4mmより小さいと、新生骨の形成量が少なく、HAp/Col複合体の自己骨への置換が遅れる。
ブロックの長軸方向に穿孔されたハバース管の孔は、海綿骨から血管が侵入し、骨原性細胞がそれに伴われて入ってくる機能をするものであり、直径は0.4〜0.6mm程度とする。0.6mmより大きいと、クラックが発生しやすくなる。また、0.4mmより小さいと、新生骨の形成量が少なく、HAp/Col複合体の自己骨への置換が遅れる。
本発明の人工椎体の材料であるHAp/Col複合体はその内部にドリルなどで上記のような細い穿孔を開けることが可能な特性を有しており、このような孔を多数あけても人工椎体として必要な十分な曲げ応力、圧縮応力、ヤング率を維持できる。
本発明の人工椎体は、人工椎体が挿入されるように切削した椎骨間にブロックの上下面が椎骨に挟まれるように椎骨を上下に引っ張った状態で挿入する。これにより、上下方向の初期荷重を皮質骨の代わりにHAp/Col複合体だけで受けることができるだけでなく、穿孔された孔に血管、さらに骨原性細胞の侵入を誘導することができる。HAp/Col複合体にrhBMPを含浸させると、早期に化骨が形成され、術後の初期強度がさらに向上する。数年経つと、HAp/Col複合体は穿孔された孔に形成される新生骨(骨髄)から周辺に向かって自家骨へと置換される。
本発明の人工椎体は、以下のような効果を奏する。
1) 移植後に骨髄(穿孔されたハバース管およびフォルクマン管状の孔にできた新生骨)と皮質骨(HAp/Col複合体とこれに含浸させたBMPにより形成された骨)という実際の骨(椎体)と同じ構造をもたらすこと、
2) 皮質骨部分のHAp/Col複合体は、骨形態調整系(bone remodeling unit)を形成し、自家骨に置換されること、すなわち自己組織化すること、
3) 他の担体を必要とせず、直接HAp/Col複合体にBMPを吸着させることができること。
上記のとおり、本発明のHAp/Col複合材からなり自己組織化する機能を持つ構造の人工椎体は、骨形態調整系(bone remodeling unit)が観察され、同種骨と同等の骨伝導能を持つ生体材料である。また、BMP等骨形成因子の追加により、術後より一層の早期荷重により人工椎体全周で骨が形成され、新生骨の骨改変速度が加速される。
これまで、犬、猿のように垂直加重を受ける頚椎へ人工椎体を移植して骨癒合が得られたとの報告はなく、本発明の人工椎体は自家骨に置換し得る生体吸収材料を用いてヒト頚椎固定を行うことができるものであり、椎体の骨欠損の修復手術に多大な貢献をもたらすものである。
これまで、骨形態調整系(bone−remodeling unit)が観察された人工素材はなく、本発明の人工椎体は、同種骨と同等の骨伝導能を持つ初めての生体材料である。さらに、本発明の人工椎体の固定に用いる本発明のポリ乳酸(PLLA)プレートは、頚椎前方固定に適した力学特性と形態を持つ。
骨は、化学的には「コラーゲンというタンパク質」と「水酸化アパタイトに類似した無機結晶」からできている。その重量比はおよそ3対7である。2つの材料がナノ領域から整列しているのが特徴である。また、大きさは、コラーゲンが300nm、アパタイト結晶が50nmであるため、骨は典型的な有機/無機ナノコンポジットといえる。
骨は骨芽細胞によって再生され、破骨細胞によって吸収される。『細胞と局所空間』骨形成には、広く生体内のカルシウムとリンの代謝が関係している。しかし、局所的にみると骨芽細胞は、まずコラーゲンを合成しそれを細胞外に放出して有機物のスケルトンを作る。ついで、アパタイトの小さい結晶が形成され骨が作られていく。このように、骨は細胞外マトリックスであり、骨芽細胞の周りの局所空間でアパタイトとコラーゲンは自発的に複合化されていく。したがって、骨芽細胞の周囲の局所空間に似た化学環境を再現すれば、アパタイトとコラーゲンは自己組織化的に複合化すると予想される。
本発明の人工椎体の材料であるHAp/Col複合体は、水酸化カルシウムの懸濁液とコラーゲンを含んだリン酸水溶液を蒸留水に同時滴下し共沈させ、共沈物を加圧脱水して成形することにより合成されるものである。さらに、共沈と同時または共沈物を成形後にグルタールアルデヒド(GA)などを用いる化学架橋、その他の熱架橋、紫外線架橋などにより表面架橋することによって初期強度を向上させることができる。
この方法で合成したHAp/Col複合体は、HAp結晶がCol線維の廻りに複合化しコラーゲン線維のc軸方向に配向したナノコンポジットであり、骨類似の構造を持っている。このため、このHAp/Col複合体を生体内に移植した場合、自然界の骨と同じような経過をたどって自家骨に置換される。図4は、HAp/Col複合体のTEM像および電子線回折像である。コラーゲン線維に沿って配列したHAp結晶が見られる。矢印は電子線回折でHAp結晶のc軸配向を示している。
本発明の人工椎体の材料であるHAp/Col複合材は、術後の早期加重可能な圧縮強度を有し、バルク材であっても生体内で荷重下で表面から分解・吸収され、これを処理するためにマクロフアージが動員される。骨内ではマクロフアージが破骨細胞へ分化するとともに、この分解産物が破骨細胞を誘引するとともに破骨細胞が骨芽細胞を誘導し新生骨を形成する骨伝導能に優れている。このように、本発明の人工椎体の材料であるHAp/Col複合体は、ハイドロキシアパタイト、AWガラス、乳酸系高分子(PLLA)などとは異なり、生体内で骨そのものに変化する。
未架橋のHAp/Col複合体では、材料が破骨細胞様の多核巨細胞に吸収され、ハウシップ吸収窩(Howship’s lacunae)に類似した構造を呈する。その周囲では骨芽細胞が積極的に骨を形成している様子が観察される。このことから、本発明の人工椎体の材料であるHAp/Col複合体は、骨再生吸収の代謝(リモデリングサイクル)に組み込まれることにより新生骨を形成すると推察される。
架橋処理は、HAp/Col複合体の生体親和性に負の影響を及ぼさない。架橋処理によりHAp/Col複合体の生体吸収時間が延長する。また、架橋の程度が増大することにより細胞活性の減少が認められる。穿孔した孔への組織の侵入に関して、架橋処理は影響することなく良好な骨伝導性を示す。細胞活性の減少は、架橋によりコラゲナーゼ(コラーゲン分解酵素)による分解が進展せず、その結果、細胞による吸収が遅延するためであると考えられる。
また、コラーゲンとハイドロキシアパタイトは、ともにタンパクとの親和性が高く、かつ、HAp/Col複合体のハイドロキシアパタイトが微結晶であるため、タンパク吸着に有効な面積が、これまでのハイドロキシアパタイトを使用した材料と比較にならないほど大きく、本発明の人工椎体に用いるHAp/Col複合体は、rhBPM等骨形成因子の担体としても優れている。rhBMP等骨形成因子の含浸によって人工椎体全周で骨が形成されることにより術後一層の早期荷重が可能であり、生体と早期に一体化するため、本発明の人工椎体を用いれば、治療期間を短縮できる。
本発明のポリ乳酸(PLLA)プレートからなる人工椎体固定用支持体は、ポリ乳酸を溶融し、射出成型により平板を作製し、さらに、この平板を押し出し容器にセットし、容器を加熱し、圧力を掛けることでダイスから押し出すことにより製造することができる。
本発明の人工椎体の支持固定に使用する本発明のPLLAプレートは、生体内に埋め込み後少なくとも24週までそのままの形で残存する。PLLAプレートが生体内で分解、吸収されるときに周囲のpHが酸性に傾いて細胞を傷害することを避けるには、プレートが徐々に分解される必要があるが、本発明のPLLAプレートはこの観点からも好ましい材料である。
また、本発明のPLLAプレートは移植後に生じ得る人工椎体の脱転を予防するために十分な強度を持ち、人工椎体を移植床の骨へ強固に接合する。特に、ヒトのように垂直加重を受ける頚椎の前方固定では、頚椎へ移植された人工椎体を支持するために使用するプレートは高強度を要求されるが、本発明のPLLAプレートはそれに十分耐え得るものであり、同時に吸収期間を製造条件によってコントロールできる点で金属プレートよりも優れている。
本発明の人工椎体を皮下に移植すると、HAp/Col複合体の表面は貪食細胞の浸潤により分節化し、これは、移植後24週を経過しても続いている。このような貪食細胞の浸潤はコラーゲンスポンジやコラーゲン膜(collagensponge,membrane)移植後に生じる反応と同じものと考えられる。この反応は、顆粒球が動員されず、リンパ球も出現しない点で拒絶反応とは異なっている。
犬橈・尺骨に穿孔した骨孔へペグ(peg)を挿入した実験によれば、骨孔に移植したHAp/Col複合体のHE標本は、HAp/Col複合体が骨と直接結合し得ることを示唆している。また、ビラヌーバ(Villanueva)染色標本でHAp/Col複合体と新生骨の境界部に観察された移行帯は、HAp/Col複合体の表面にHApが沈着した部位と考えられる。
さらに、HAp/Col複合体の表面に形成されたハウシップ吸収窩(Howship’s lacunae)様構造内に破骨細胞が出現し、また、新生骨との境界領域に骨芽細胞が配列することを酵素組織化学で示すことができたことから、HAp/Col複合体は骨原性細胞を誘導し、骨形態調整系(bone remodeling unit)を形成する、優れた生体材料であることが示唆される。
本発明の人工椎体の材料であるHAp/Col複合体は、水酸化カルシウムの懸濁液とコラーゲンを含んだリン酸水溶液を用意し、この二つの溶液を、蒸留水の入った反応容器中にチューブポンプで同時に滴下し共沈させることにより合成する。次に、共沈物をフィルターで濾過・洗浄する。この段階で、含水率は5%〜50%程度であり、これを冷間静水圧成形(CIP)法により好ましくはpH8,温度40℃の温度範囲で200MPaにて加圧脱水する。これによりサブミクロンのオーダーの気孔径を有し、含水率に応じて気孔率10%〜68%程度のHAp/Col複合体が得られる。
得られるHAp/Col複合体のHApの一次粒子径(結晶子サイズに略等しい)は約50nmであり、また、二次次粒子径(複合体になった状態で、繊維状になったもの)の平均サイズは最大20μm程度の長さと0.5〜1μm程度の幅を持っている。複合体の三点曲げ強度は38〜45MPa程度、ヤング率は2〜3GPa程度とすることができる。生体骨のヤング率は部位によって異なり4〜30GPaの範囲で分布している。ヤング率は理想的には骨に近似すべきである。他のセラミックスはヤング率が非常に大きいため脆くて破断をきたすが、HAp/Col複合体は軟らかい生体骨から硬い生体骨と同程度のヤング率のものまで容易に製作することができる。ヤング率が大きいと脆く、小さいと軟らかくなる。
HAp/Col複合体の合成の際、共沈と同時にコラーゲンに架橋を導入する方法として化学架橋を行う場合は、次の方法が好ましい。なお、架橋方法は、化学架橋に限らず、熱架橋、紫外線架橋などでもよい。グルタールアルデヒド(GA)による架橋の場合は、まず、予め、Ca(OH)2懸濁液側にGAを添加する(コラーゲンに対して1wt%濃度)。GAを加えることにより試料は黄色化する。同時滴下法においては、コラーゲンとアパタイトとの自己組織化の安定構造が成立する以前に、コラーゲンに対してGAによる架橋反応が生じる。
すなわち、架橋点であるコラーゲン中のリジン残基とGAとの反応が優先されることにより、自己組織化構造の形成が阻害されると推察される。GAを添加しない場合は、脱灰処理したコラーゲンがリン酸水溶液中で分散する現象が認められる。GAを添加した場合は、脱灰後のコラーゲンはリン酸および塩酸水溶液中でも分散せず凝集状態を呈する。このことから、GAの添加により複合体中のコラーゲンに架橋が導入され、これが試料の着色を惹起する要因であると推察される。
GAを添加して合成したHAp/Col複合体のナノ構造の透過型電子顕微鏡像によると、巨視的には繊維状構造が確認されるが、微視的にはアパタイトとコラーゲンの複合化した短繊維がランダムに繋がり膜状構造を形成している。このことから、HAp/Col複合体の自己組織化が生じ易い条件においても、架橋処理はコラーゲン線維上へのアパタイト結晶の自己組織化構造の形成を抑制することが明らかである。
HAp/Col複合体中の水とコラーゲンの量は熱分析により求める。架橋処理したHAp/Col複合体の曲げ強度は最大60MPaであり、架橋処理によって曲げ強度が向上する。GAによる架橋処理により、HAp/Col複合体の完全乾燥による強度劣化、および水中におけるHAp/Col複合体表面の短時間での膨潤といった材料としての欠点が改善されることから、材料の安定性が高まり、手術時の人工椎体の操作性が向上する。
また、荷重部位に人工椎体を移植するため、早期の骨形成が要求される場合は、rhBPM−2を含浸する方法が有効であり、その場合は、400μg/ml以上の濃度が好ましい。
ヒト用人工椎体の形態は、例えば、人体の正面から見て長軸と直交方向断面が馬蹄形で、前方が彎曲したブロックの形態とする。錐体内に挿入される部分は骨との接触面積を増加させるために角柱状の平面とする事が望ましい。そのためには、HAp/Col複合体をコンピュータ制御ボール盤を用いて図1に示すように、成型加工すればよい。幅W1は15mm程度、奥行きDは10mm程度とし、長さL1は10〜40mmの範囲で5mmおきのものを製作する。
次に、長軸方向に直径0.5mm程度のハバース管状の穿孔された孔をドリルなどで開ける。断面で等間隔の孔を図1に示すように複数配列する。また、ブロックの前後方向および左右方向にも直径0.5mm程度のフォルクマン管状の穿孔された孔をドリルなどで開ける。複合体の強度に応じて孔の個数は多いほど望ましい。
ポリ乳酸(PLLA)を射出成型しただけの平板の機械的特性は、通常、曲げ強度77MPa、曲げ弾性率3.3Gpa、引張強度67MPa程度である。公表されている皮質骨の曲げ強度は100〜200MPaであり、生体内での加水分解による強度低下を考えると射出成型したPLLAプレートは人工椎体固定用の支持体としての機械的強度は十分でない。
射出成形した成型品を圧延により延伸加工することにより強度改善が見られるが、延伸倍率を上げることで成型品の径が細くなり、最終製品の加工が困難となる。射出成型した平板を、さらに押し出し成型し分子を一軸方向に配向結晶化させることにより、曲げ強度180MPa、曲げ弾性率6Gpa程度となり、約2倍に向上させることができる。なお、曲げ強度の試験はJISK−71717による。PLLAプレートには、椎体にねじ込むスクリューが緩んで抜けてこないように、4隅に穿孔するスクリュー挿入穴の方向を斜め向きに開けることが好ましい。
実験例1HAp/Col複合体の製造例199.1mmolの水酸化カルシウムを2dm3 の蒸留水に加えて攪拌し、均一な懸濁液を維持した。また、豚皮膚由来のアテロコラーゲン5gを含んだ59.7mMのリン酸水溶液を作製した。この二つの溶液を、蒸留水1dm3 の入った反応容器中にチューブポンプで同時に滴下した。この時、反応容器内をpHコントローラーでpH8に制御した。また、反応容器をウオーターバス中に入れ温度を40℃に制御した。沈澱物をガラスフィルターで濾過・洗浄後、CIP法により200MPaで15時間加圧脱水することによりHAp/Col複合体ブロックを作製した。
HAp/Col複合体ブロックは、水分約10%、気孔率約20%で、HApとコラーゲンの重量比は、80/20(wt%)であった。これを蒸留水に拡散後、コロジオン膜を張ったマイクログリッド上にすくいとり、透過型電顕(TEM)標本を作製した。電顕観察後、電子線回折を行った。合成時のpHと温度を制御することで、HApがコラーゲン線維の廻りに、数μmから10μmの長さまでコラーゲン線維方向にc軸が配向した、骨とよく似たナノコンポジットとなっていた。
HAp/Col複合体を20×5×3mm3のブロック に切り出し、クロスヘッドスピード0.5mm/min、スパン15mmで三点曲げ試験を行った。この結果、三点曲げ強度:39.5±0.88MPa、ヤング率:2.5±0.38GPaであった。
実験例1(HAp/Col複合体の生体適合性試験)
上記の製造例によって作製したHAp/Col複合体を4×4×1mm3 のブロックに採型し、15匹のウイスターラット背部に移植した。移植後2,4,8,12,24週でブロックを採取した。各試料は中央で半割し、一方をトルイジンブルー光顕標本とTEM標本に、他方を走査型電顕(SEM)標本にした。移植後2〜4週のHAp/Col複合体ブロック周囲には、多数の丸い核を持った細胞が浸潤していた。
4週後、HAp/Col複合体ブロック表面は分節化し、生じたクラックには線維組織が侵入していた。TEM観察により、これらの細胞はHAp/Col複合体ブロックのdebrisを貪食している貪食細胞であることが確認された。HAp/Col複合体ブロック周囲の線維芽細胞は少数であった。12週後にはHAp/Col複合体ブロック周囲に多数の新生血管が形成されていた。HAp/Col複合体ブロックは24週後もブロックとして残存し、貪食細胞数は移植後早期に比して減少したものの、依然として観察された。
実験2(HAp/Col複合体の骨伝導能評価)
HAp/Col複合体からなるペグ(peg)と呼ばれる弾丸状ブロック(5×5×10mm3 )の各面にφ0.5mmのドリル孔を4個ずつ穿ち、0μg/ml,200μg/ml,400μg/mlの−2溶液に浸漬し、15分間、陰圧ポンプで脱気して、溶液を完全に含浸させた。これらrhBMPの含浸量の異なる3種類のブロックを、5頭のビーグル犬を用いて両側の橈骨、あるいは尺骨に移植した。橈骨、尺骨にはφ6mmの骨孔を3個等間隔でドリルで穿った。もう1頭の橈骨、尺骨には3個のドリル孔のみを穿ち比較例とした。
比較例を含む3頭は、術後12週まで1週毎にレントゲン撮影を行い、ブロックが骨と癒合するのに要する期間を比較した。また、移植後8週で2頭から、12週で比較例を含む4頭からブロックを採取し、1)脱灰HE標本、2)ALP,TRAP酵素組織化学、3)非脱灰ビラヌーバ(Villanueva)標本を作製した。さらに、12週で作製したHE標本の光顕写真を撮影し、マッキントッシュ用コンピュータソフト(NIH image)によりドリル孔内に形成された新生骨の占有率(%bone area)を計測した。また、複合体表面に形成された新生骨の厚さを3点で計測し、平均値を求めた。
rhBMPを使用した群では、移植後2週までに全例で仮骨が形成された。rhBMPを用いない群では仮骨形成に乏しかったが、移植後4週には全ての群で仮骨形成が観察された。ペグ−骨境界部の透亮像が消失し、陰影が均質化した時点でX−P上骨癒合が得られたと判定した。400μg/ml群が0μg/ml群より有意に早く骨癒合が得られた。移植後8週で複合体は第2次骨単位(Haversian system)を持つ新生骨と直接結合しており、未石灰化領域が散在していた。
複合体の表面には吸収窩(lacunae)様の構造が形成され、複合体上に多核巨細胞が観察された。複合体−骨境界部には紡錘形の細胞が配列していた。ビラヌーバ染色により、新生骨−複合体間に移行帯の存在が示された。この移行帯の新生骨側に細胞が多数存在した。
ALP染色で紡錘形細胞が陽性に染まり、これらの細胞は骨芽細胞であることが示唆された。また、TRAP染色で第2次骨単位(Haversian system)に存在する吸収窩(lacunae)中の巨細胞だけでなく、移行帯に形成された吸収窩(lacunae)様構造中の巨細胞も陽性に染まり、これらの細胞は破骨細胞であることが示唆された。%骨占有率(bone area)は有意差がなかった。しかし、複合体表面には、BMP:400μg/ml群がBMP:0μg/ml群よりも有意に厚く新生骨が形成されていた。
HAp/Col複合体は、HAp結晶がコラーゲン線維のc軸方向に配向し、骨類似の構造を持っていた。皮下に移植されたHAp/Col複合体は、分節化し、これを貪食するためマクロファージが浸潤した。一方、骨孔に移植したHAp/Col複合体のHE標本は、HAp/Col複合体が骨と直接結合し得ることを示唆している。HAp/Col複合体の表面に形成されたハウシップ吸収窩(Howship’s lacunae)様構造内に破骨細胞が出現し、また、新生骨との境界領域に骨芽細胞が配列することを酵素組織化学で示すことができた。
骨孔にHAp/Col複合体を移植した実験では、400μg/ml群が0μg/ml群に比べて骨癒合に要する期間は有意に短く、また、HAp/Col複合体表面に新生骨が有意に厚く形成されていた。%骨占有率(bone area)も400μg/ml群が他群より大きい傾向を示している。しかし、0μg/ml群と200μg/ml群の間にはこれらいずれにおいても有意差はなかった。
実験3(荷重部位移植におけるBMP含浸の影響の評価)
HAp/Col複合体から採型した長管状骨の骨欠損部充填用インプラントを荷重部位に移植する場合、BMP含浸の有無が骨界面の結合、骨伝導・誘導に及ぼす影響を比較検討した。製造例1で製作したHAp/Col複合体にグルタールアルデヒドによる表面架橋処理を行い、脛骨用インプラントを作製した。架橋数を増やし、コラーゲンの配向性を改善して三点曲げ強度を60MPaに向上させたHAp/Col複合体でインプラントを作製した。
図5に示すように、直径W1=15mm、奥行きD=10mm、長さL1=20mmの円柱状インプラントIの長軸方向中央に直径d1=3mmのドリル孔H1を1個、周囲に放射状配列する直径d2=1mmのドリル孔H2を8個穿った。インプラントIの側方にも直径d3=1mmのドリル孔を12個穿った。これをビーグル犬3頭の右脛骨に移植した。また、BMP:400μg/mlを陰圧下に含浸させたインプラントをビーグル犬2項の右脛骨に移植した。インプラント周囲の骨膜は完全に切除してイリザロフ式創外固定器を用いて固定した。
12週後BMP(+)群、(−)群各1頭ずつより試料を採取した。BMP(+)群の2頭は12週で創外固定器を除去後に全加重させて24週で試料を採取した。BMP(−)群は創外固定下に加重させ、術後18、24週で試料を採取した。術後X−Pを撮影し、骨形成・癒合状態を判定した。また、移植前と採取時にDEXA法で骨密度を計測して、インプラント周囲の骨形成量を比較した。採取した試料より脱灰HE標本と、ビラヌーバ染色標本を作製し、インプラント−骨境界部における骨との結合状態を観察するとともにインプラント内部のドリル孔内に形成された骨量を測定した。
BMDの平均値は、移植前2.596±0.099g/cm2、BMP(−)群の12週が2.551g/cm2、BMP(+)群の12週が2.566g/cm2、BMP(−)群の24週が2.335g/cm2、BMP(+)群の24週が2.186g/cm2だった。
BMP(−)群は、X−P上、インプラント周囲の仮骨形成に乏しかったが、12週までにはインプラント−骨境界部で骨癒合が得られた。割断標本でも12週でインプラント−骨境界部は完全に癒合していた。しかし、インプラント中央部ではHAp/Col複合体が分節化して骨形成が認められるものと、移植時の形状がほとんどそのまま残存しているものがあった。HE、ビラヌーバ染色標本でHAp/Col複合体は新生骨と直接結合していた。インプラント内部まで吸収窩(lacunae)様構造が形成されていた。
インプラント−骨境界部に形成された吸収窩(lacunae)では多核巨細胞が複合体表面に観察され、また、紡錘型の細胞が骨表面に配列していた。これは、複合体を破骨細胞が吸収し骨芽細胞が新生骨を付加する、骨形態調整系(bone remodelling unit)類似の骨接合形式をHAp/Col複合体がとることを示している。部位によっては軟骨細胞柱が形成され、内軟骨性骨化と考えられる骨形成様式も観察された。
BMP(+)群は、X−P上、インプラント全周を包みこむように仮骨が形成された。12週後、HAp/Col複合体は完全に骨癒合し、骨髄腔も形成された。HAp/Col複合体は皮質骨の外側に島状に残存した。24週経過すると外化骨はむしろ減少し、皮質骨部分の硬化像が増強して、新生骨の成熟化が観察された。
割断標本でも、分節化したHAp/Col複合体が皮質骨内で島状に残存し、24週後にはインプラント全周だけでなく、内部にまで成熟骨が形成された。その中心部には骨髄腔様構造が観察された。組織標本で、HAp/Col複合体は骨と直接結合することが確認された。軟骨細胞柱の形成は一部に認められるにすぎなかった。
実験例4(犬頚椎への移植)
製造例1で製作したHAp/Col複合体を5×5×10mm3のブロックに採型した。未架橋の人工椎体に0μg/ml,400μg/ml(以下、順に0μg/ml群、400μg/ml群という)のBMPを陰圧下に含浸させた。人工椎体の脱転予防に用いるPLLAプレートはチタン製スクリューで固定した。プレートの遠位と近位に1個ずつドリル孔を穿ち、スクリューを斜め方向に挿入した。0μg/ml群8頭、400μg/ml群3頭のビーグル犬に人工椎体を移植した。
ビーグル犬の頚椎を前方より展開し、C3/4あるいはC4/5間にドリルで人工椎体よりやや大きめの骨溝を掘り、1椎間2椎体固定を行った。椎体前方の骨膜は完全に剥離した。移植後に実験1と同様にX−P写真と組織所見により術後成績を評価した。移植後12,16,24週で0μg/ml群は4,2,2頭から、また、400μg/ml群は1頭ずつから試料を採取した。術後、1ケ月毎にX−P撮影を行ない、人工椎体周囲の骨形成・癒合状態を評価した。採取した試料は、組織学的評価を行った。
その結果、BMP:0μg/ml群では仮骨形成に乏しかったが、12週までには人工椎体−骨境界部の骨癒合が得られた。Bmp:400μg/ml群では仮骨形成が顕著で術後2週より人工椎体前方に仮骨が出現し、移植後12週以降では人工椎体前方に厚い新生骨が形成されていた。
割断標本では、BMP:0μg/ml群の人工椎体−骨境界部は軟部組織の介在無く、複合体と新生骨が直接結合していた。PLLAプレートは吸収されずに、そのままの形で残存した。人工椎体は12週で吸収が進み、周囲の骨と判別困難だった。BMP:400μg/ml群は人工椎体前方に厚い皮質骨が形成されていた。
組織標本では、12週のHE標本で、人工椎体は新生骨と直接結合しており、基本的には脛骨への移植時に観察された所見と同様であった。人工椎体−骨境界部に形成された吸収窩(lacunae)では多核巨細胞が複合体表面に、また紡錘型の細胞が骨表面に配列し、骨形態調整系(bone remodeling unit)を形成していた。
実験例5(猿頚椎への移植)
実験例4と同様に、直径4mm×高さ5mmの円柱体状人工椎体を作製し、これにrhBMP−2(0mg/ml,1mg/ml)を脱泡吸引させ、ニホンザル8頭の頚椎C4/5に移植して実験例4と同様のPLLAプレートで固定した。術後X−P、CT撮影を行い、3ヶ月で試料を採取して、実験例4と同様に組織学的評価を行った。その結果、画像所見、組織像など全てが犬頚椎のBMP:0μg/ml群、400μg/ml群で得られた所見と同じだった。
実施例1製造例1で作製したHAp/Col複合体を用いて、ヒト用人工椎体を作製した。図1は、その形態を示す平面図(a)、側面図(b)である。図2は、図1に示す人工椎体を支持プレートで頚椎に固定した状態のヒト用人工椎体のモデルの正面像を示す平面図である。図3は、図1に示す人工椎体を支持プレートで頚椎に固定した状態のヒト用人工椎体のモデルの側面像を示す部分断面図である。
図1に示すように、奥行D=10mm、幅W1=15mm、長さL1=20mmの断面が馬蹄形をしたブロックからなる頚椎用人工椎体Iを作製した。人工椎体Iには、長軸方向に直径d1=0.5mmのドリル孔H1を6個、図1のように等間隔で穿った。ブロックの側方にも直径d2=0.5mm、直径d3=0.5mmのドリル孔H2とH3を図1のように前後方向に9個、左右方向に6個穿った。
また、人工椎体の支持固定用プレートは、射出成型後押し出し成型し、配向結晶化させた長さL2=25mm、幅W2=10mm、厚さT=2mmのポリ乳酸(PLLA)プレートPを用いた。PLLAプレートPには、図2、図3に示すように、プレートPの4隅にスクリューSの挿入用の直径4mmの孔H4を、スクリューSが緩み(loosening)を起こしにくいように斜め方向にあけて、この孔H4にチタン合金で作製したスクリューSを通して、図3に示すように、椎骨C3とC4にねじ込んで固定した。
図1は、本発明の実施例1のヒト用の人工椎体の形態を示す平面図(a)、正面図(b)、側面図(c)である。 図2は、図1に示す人工椎体を支持プレートでヒト頚椎に固定した状態の正面図である。 図3は、図1に示す人工椎体を支持プレートでヒト頚椎に固定した状態の側面図である。 図4は、HAp/Col複合材のTEM像(スケールバー:1μm)および電子線回折像を示す図面代用写真である。 図5は、実験例3の人工椎体の形態を示す平面図(a)、側面図(b)である。

Claims (3)

  1. HAp粒子とCol線維によるナノコンポジットのHAp/Col複合体からなる人工椎体であって、前記HAp/Col複合体には、ハバース管状又はフォルクマン管状の穿孔が形成されてなることを特徴とする人工椎体。
  2. 請求項1に記載の人工椎体において、前記穿孔の直径が、0.4〜0.6mmであることを特徴とする人工椎体。
  3. 請求項1又は2に記載の人工椎体において、Col線維方向にHAp粒子のc軸が配向してなることを特徴とする人工椎体。
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