JP2009090615A - プラスチック薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】貫通孔を成形すると同時に上記残膜の発生を防止することができるプラスチック薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備えるプラスチック薄膜の製造方法であって、材料薄膜をこの材料薄膜より塑性変形能の低い樹脂材料から形成された対向基材に積層するとともに、これら積層体を少なくとも材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する加熱工程(S1)と、上記材料薄膜を、上記貫通孔を形成する押し型と上記対向基材との間で加圧して、上記押し型を上記材料薄膜に貫通させるとともに、上記対向基材に押し入れる加圧工程(S2)と、上記押し型を押し込んだ材料薄膜及び対向基材を冷却する冷却工程(S3)と、上記押し型を、上記材料薄膜及び上記対向基材から離脱させる脱型工程(S4)とを含んで構成される。
【選択図】図7
【解決手段】厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備えるプラスチック薄膜の製造方法であって、材料薄膜をこの材料薄膜より塑性変形能の低い樹脂材料から形成された対向基材に積層するとともに、これら積層体を少なくとも材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する加熱工程(S1)と、上記材料薄膜を、上記貫通孔を形成する押し型と上記対向基材との間で加圧して、上記押し型を上記材料薄膜に貫通させるとともに、上記対向基材に押し入れる加圧工程(S2)と、上記押し型を押し込んだ材料薄膜及び対向基材を冷却する冷却工程(S3)と、上記押し型を、上記材料薄膜及び上記対向基材から離脱させる脱型工程(S4)とを含んで構成される。
【選択図】図7
Description
本願発明は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備えるプラスチック薄膜の製造方法及び保護シート付きプラスチック薄膜に関する。詳しくは、多数の超微細貫通孔を備え、インクジェットプリンタ用ノズル、医療用ネブライザノズル等の高機能微細部品として利用できるプラスチック薄膜の製造方法及びこの製造方法によって製造された保護シート付きプラスチック薄膜に関する。
多数の微細貫通孔を備え、高機能微細部品として利用できるプラスチック薄膜を製造する方法として、レーザ加工、射出成形等が知られている。
上記レーザ加工を利用して微細な貫通孔をプラスチック薄膜に形成する場合、レーザ光の照射位置を精度高く位置決めしなければならない。このため、加工装置が高価になるとともに、レーザ光をプラスチック薄膜に順次照射して貫通孔を一つ一つを形成しなければならないため、多数の貫通孔を備える薄膜を製造する場合は生産性が低くなる。
一方、射出成形法では、貫通孔を一度に形成できるが、成形樹脂材料に高い流動性が要求されるため、薄膜を構成する材料に制限がある。また、口径の小さい貫通孔を狭ピッチで形成する場合、成形樹脂材料の流動抵抗が大きくなり、成形樹脂材料を成形型内に均一に注入することが困難である。
上記問題のない製造方法として、貫通孔に対応する複数の突起を備える押し型と対向基材との間で、プラスチック材料薄膜を塑性変形可能温度以上に加熱しつつ加圧して、上記プラスチック薄膜に複数の貫通孔を一度に形成する手法が提案されている。
上記特許文献1に記載されている加工方法は、プラスチック薄膜を、押し型と対向基材との間にセットする工程と、押し型と対向基材との間でプラスチック薄膜をプラスチックの流動開始温度以上に加熱する工程と、流動開始温度以上のプラスチック薄膜を、上記押し型と対向基材との間で加圧して貫通孔を形成する工程とを備えて構成される。
上記特許文献に記載されたプラスチック薄膜の製造方法においては、大きな力でプラスチック薄膜を加圧した場合であっても、上記押し型先端部と上記対向基材との間に、500nm程度のごく薄い残膜が残留してしまう。このため、成形後に上記残膜を分離する工程や装置が必要となり、製造工程が増加するといった問題が生じる。
また、上記残膜はプラスチック薄膜に一体的に繋がっているため、精度高く除去するのは困難であり、残膜を除去する際にプラスチック薄膜を傷めてしまう恐れもある。
さらに、上記残膜をプラスチック薄膜から分離できた場合であっても、残膜を遊離させると残膜が上記貫通孔等につまって、上記プラスチック薄膜の機能を害する恐れがある。このため、成形後に上記残膜を除去する必要がある。
本願発明は、貫通孔を成形すると同時に上記残膜の発生を防止することができるプラスチック薄膜の製造方法を提供することを課題としている。
本願発明の請求項1に記載した発明は、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備えるプラスチック薄膜の製造方法であって、材料薄膜をこの材料薄膜より塑性変形能の低い樹脂材料から形成された対向基材に積層するとともに、これら積層体を少なくとも材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する加熱工程と、上記材料薄膜を、上記貫通孔を形成する押し型と上記対向基材との間で加圧して、上記押し型を上記材料薄膜に貫通させるとともに、上記対向基材に押し入れる加圧工程と、上記押し型を押し込んだ材料薄膜及び対向基材を冷却する冷却工程と、上記押し型を、上記材料薄膜及び上記対向基材から離脱させる脱型工程とを含んで構成される。
上記押し型は、金属又はセラミックから形成することができる。また、上記押し型はビッカース硬度が400以上である材料で形成するのが好ましい。上記押し型の製造方法は特に限定されることはなく、たとえば、リソグラフィーを利用した電鋳法、ダイシング、切削加工法等により形成することができる。
上記材料薄膜は、加熱することにより塑性変形させることができれば、種々の樹脂から形成されたものを採用できる。たとえば、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルイミド等のプラスチック製薄膜を採用することができる。また、塑性変形可能であれば、種々のポリマーアロイから形成された薄膜を採用することもできる。上記材料薄膜の厚さも特に限定されることはなく、1μm〜10mmの厚さの材料薄膜を採用することができる。より好ましくは、5μm〜200μmの材料薄膜を採用することができる。
上記対向基材は、上記加熱工程における所定の加熱温度において上記材料薄膜より塑性変形能が低いものであれば種々の材料で形成されたものを採用できる。たとえば、請求項2に記載した発明のように、上記対向基材に、上記材料薄膜よりガラス転移温度が高いプラスチック材料を採用することができる。材料薄膜として、ガラス転移温度50〜200℃の高い塑性変形能ないし高い流動性を備える樹脂を採用する一方、上記対向基材として、ガラス転移温度150〜300℃の低い塑性変形能ないし低い流動性を備える樹脂材料を採用するのが好ましい。具体的には、上記材料薄膜にガラス転移温度が約150℃のポリカーボネートを採用する一方、上記対向基材としてガラス転移温度が約225℃のポリエーテルサルフォンを採用することができる。
また、上記材料薄膜と上記対向基材とを選択する基準として、ビカット軟化点あるいは荷重たわみ温度を採用することができる。ビカット軟化点あるいは荷重たわみ温度の低い材料で形成された材料薄膜を選択するとともに、上記温度の高い材料を対向基材として採用することにより、加圧工程において、これら部材に異なる塑性変形能を発現させることができる。特に、ガラス転移温度がはっきりしないポリマーアロイ等に対しては、ビカット軟化点あるいは荷重たわみ温度を基準として各部材を選択するのが好ましい。
上記加熱工程における加熱温度は、採用する材料薄膜及び対向基材によって異なるが、上記押し型を押し入れることによりこれら部材を塑性変形あるいは流動変形させて上記貫通孔を形成できる温度以上に設定すればよい。その場合、上記材料薄膜の塑性変形能が上記対向基材よりできるだけ大きくなる温度に設定するのが望ましい。
たとえば、熱可塑性樹脂の場合、請求項3に記載した発明のように、上記加熱工程における加熱温度を、上記対向基材のガラス転移温度より10℃〜50℃高い温度に設定することができる。対向基材のガラス転移温度より10℃以下の温度に設定すると、上記対向基材に所要の塑性変形を確保することができない。一方、50℃以上高い温度に設定すると、上記材料薄膜の塑性変形能が大きくなりすぎて加工困難になったり、上記材料薄膜と上記対向基材の塑性変形能の差が小さくなる恐れがある。上記温度範囲を選択することにより、上記材料薄膜の塑性変形能を上記対向基材の塑性変形能よりできるだけ大きく設定した状態で次の加圧工程を行うことができる。
上記加圧工程は、たとえば、上下の押圧部材を備えるプレス加工装置の上方の押圧部材に上記押し型を装着するとともに下方の押圧部材に上記対向基材及び上記材料薄膜を積層して載置し、これら部材を上記押し型と上記下方の押圧部材との間で挟圧して行うことができる。加える圧力は、採用する樹脂材料によって設定され、たとえば、0.5〜50MPaの圧力を、2〜200KPa/sの加圧速度で作用させることができる。また、上記加圧力の作用時間も特に限定されることはないが、生産効率を確保するためには、1200秒以内に設定するのが好ましい。上記次加圧工程を行うことにより、上記押し型先端部が上記材料薄膜及び上記対向基材内に押し込まれる。
従来の手法では、硬質の対向基材等に上記材料薄膜を積層して加圧工程が行われていたため、上記押し型の先端部と上記対向型部との間に、厚さ500nm程度のごく薄い残膜が残留した。
本願発明では、上記対向基材として、上記材料薄膜よりも塑性変形能の低い樹脂材料を採用し、上記押し型を上記材料薄膜に貫通させた後に上記対向基材に押し入れる。これにより、上記対向基材が上記材料薄膜と同様の態様で塑性変形させられ、上記押し型先端部において、上記残膜を排除する方向への樹脂の流れを生じさせることができる。特に、上記対向基材の塑性変形能が上記残膜より小さいため、上記樹脂の流れが生じる際の剪断力ないし摩擦力によって、上記残膜を上記押し型の下面から押し出すことが可能となる。このため、上記押し型先端部に残膜が生じなくなる。また、多少の残膜が残留したとしても、上記対向基材内に押し込まれるため、上記材料薄膜から分離された状態で保持される。これにより、残膜によりプラスチック薄膜の機能が害される恐れはなくなり、また、加工後に上記残膜を処理する必要もなくなるため、製造工程及び製造コストを低減させることができる。
また、上記対向基材として上記材料薄膜より塑性変形能の低い材料を採用することにより、上記押し型による加圧力に対するバックアップ力を確保することが可能となり、材料薄膜の変形等を防止することもできる。
上記押し型の上記対向基材に対する押し込み量は、上記対向基材の厚さの10〜50%に設定するのが好ましい。これにより、上記残膜を排除する方向への樹脂の流れを発生させて、残膜が残留するのを防止することが可能となる。また、上記残膜を完全に排除できない場合であっても、上記対向基材中に押し込むことにより、上記材料薄膜から分離させることができる。
上記冷却工程は、上記材料薄膜を所定温度以下に冷却して硬化させる工程である。上記冷却温度は、上記押し型を上記材料薄膜及び上記対向基材の積層体から脱型できる温度であればよい。たとえば、ガラス転移温度以下まで冷却することにより、材料薄膜及び対向基材が変形するのを防止して、上記押し型を容易に脱型させることができる。上記冷却工程は、加工装置に冷却装置を設けて行うこともできるし、自然冷却を採用することもできる。
その後、上記材料薄膜と上記対向基材との積層体から上記押し型を脱型させる脱型工程が行われる。本願発明では、請求項5に記載した発明のように、上記材料薄膜と上記対向基材とを一体的に積層した状態で上記押し型を離脱させる。上記対向基材と上記材料薄膜とを積層した状態で装置から取り出すことができるため、上記対向基材が保護シートとして機能し、上記製造装置から取り出す際やその後の搬送工程において、上記材料薄膜が傷むのを防止できる。
上記材料薄膜は、上記対向基材から剥離させて用いられる。このため、上記材料薄膜を上記対向基材に対して容易に剥離できる程度の強度で積層保持させるのが好ましい。一方、本願発明においては、上記材料薄膜と上記対向基材とが、これらの塑性変形温度以上に加熱して加圧される。このため、これら部材に採用される樹脂材料によっては、これら部材が積層境界面で溶着して、剥離させることができなくなる恐れもある。
請求項6に記載した発明は、上記不都合を回避するために案出されたものであり、上記材料薄膜と上記対向基材との間に、上記材料薄膜と上記対向基材とを所定の強度で積層付着させる境界面調整層を設けたものである。
上記境界面調整層は、上記材料薄膜を上記対向基材に剥離可能な強度で保持させるために設けられる。たとえば、上記加熱工程ないし上記加圧工程において、上記材料薄膜と上記対向基材とが剥離不可能に溶着する恐れがある場合には、上記溶着を防止するための離型剤を主成分とする境界面調整層を設けることができる。
一方、加工後に上記材料薄膜と上記対向基材とを積層状態に保持できない場合には、粘着剤を上記境界面調整層の主成分とすることができる。
上記境界面調整層は、上記対向基材の表面にあらかじめ設けておくことができる。上記材料薄膜を上記対向基材に剥離可能に保持させることができれば、境界面全体に均一に設ける必要はない。たとえば、離型剤等を上記境界面に所定密度のドットパターン等で塗着して、上記境界面調整層を設けることができる。
請求項4に記載した発明は、上記積層体を、少なくとも上記材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する第1の加熱工程と、上記第1の加熱工程における加熱温度において、上記押し型を上記材料薄膜に押し込む第1の加圧工程と、上記積層体を、少なくとも上記対向基材の塑性変形可能温度まで加熱する第2の加熱工程と、上記第2の加熱工程における加熱温度において、上記押し型を上記対向基材に押し込む第2の加圧工程とを含んで構成される。
上記第1の加熱工程では、積層体を少なくとも上記材料薄膜の塑性変形可能温度以上に加熱する。上記加熱温度は、上記材料薄膜に押し型を押し込んで貫通孔を形成できる一方、上記対向基材にある程度の硬度を確保できる温度に設定するのが好ましい。さらに、上記対向基材の塑性変形が阻止され、あるいは制限される温度に設定するのがより好ましい。
上記温度において第1の加熱工程を行うことにより、上記材料薄膜を塑性変形させて貫通孔を容易に形成できるとともに、上記対向基材に上記材料薄膜を確実に保持させ、上記材料薄膜の変形等を防止することが可能となる。上記第1の加圧工程は、上記押し型を上記対向基材の表面近傍まで押し込むことにより行われる。この場合、上記押し型先端部と上記対向基材との間に残膜が生じる。
次に、上記積層体をさらに加熱する第2の加熱工程が行われる。上記第2の加熱工程では、上記積層体を、少なくとも上記対向基材の塑性変形可能温度まで加熱する。さらに、上記押し型の先端部を上記対向基材に押し入れることにより、上記対向基材内部において、上記残膜を排除する方向への樹脂の流れが生じる温度に設定するのが好ましい。
上記第2の加圧工程において、上記残膜を排除する方向に樹脂の流れを生じさせることにより、上記貫通穴に上記残膜が残留するのを防止することができる。また、上記第2の加熱工程を行うことにより、上記残膜を排除するのに好適な温度に設定することが可能となる。
上記第2の加熱工程と上記第2の加圧工程とは、上記第1の加熱工程に連続して行うことができる。また、上記第1の加圧工程を行う間に、温度を上昇させて連続的に上記第2の加圧工程に移行させることもできる。
請求項7に記載した発明は、請求項1から請求項6に記載された製造方法によって形成されるプラスチック薄膜であって、材料薄膜と上記対向基材とが剥離可能に積層された保護シート付きプラスチック薄膜に関するものである。
本願発明に係るプラスチック薄膜は、インクジェットプリンタ用ノズル、医療用ネブライザノズル等の高機能微細部品として利用されるものである。一方、本願発明に係るプラスチック薄膜は、厚さは5〜200μmと非常に薄い。このため、プラスチック薄膜単独で搬送等の取り扱いを行うことは不可能である。
本願発明に係る対向基材を保護シートとして利用することにより、製造段階から保護シートを付属させることが可能となり、製造装置から取り外す際や搬送途中の破損や、汚染等を防止することも可能となる。このため、プラスチック薄膜の取扱性が格段に向上する。
また、別途保護シートを設ける工程を要することもなく、製造工程及び製造コストを削減することもできる。
本願発明によれば、材料薄膜の塑性を利用して、高精度で超微細な貫通孔を備えるプラスチック薄膜を、生産性高く安価に製造することができる。
以下、本願発明の実施形態を図に基づいて説明する。
本願発明に係るプラスチック薄膜の製造工程の断面図を、図1から図6に示す。また、上記製造工程における、加工圧力と温度の関係を図7に示す。
図1に示すように、本実施形態に係る製造装置1は、プレス装置の互いに近接離間させられる上型部2に押し型4を装着する一方、下型部に対向基材5をそれぞれ装着するとともに、上記対向基材5上に材料薄膜8を積層して構成される。
本実施形態に係る上記押し型4は、図8に示すように、金属又はセラミック材料で形成されており、基部6の片面に、貫通孔を形成する突起状の矩形型部7を所定間隔で多数配列形成して構成される。本実施形態では、上記各矩形型部7は、一辺T=0.03mm、高さH=0.1mm、隣接する型部との間隔P=0.05mmに設定されている。上記押し型4は、リソグラフィーを利用した電鋳法、ダイシング、切削加工等によって形成することができる。なお、上記押し型4の形態は、本実施形態に限定されることはなく、種々の形態の型部を備える押し型を採用することができる。
上記材料薄膜8として、比較的狭い範囲で溶融状態となって塑性変形でき、冷却すると急速に硬化するプラスチック材料を採用するのが好ましい。たとえば、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン、ポリエーテルイミド等のプラスチック薄膜を採用することができる。
材料薄膜の厚さも特に限定されることはなく、塑性変形させて上記押し型を押し込むことができれば、1〜10mmまでの材料薄膜を採用することができる。実施形態に係る装置では、5〜200μmの厚さの材料薄膜を採用するのが好ましい。
本実施形態においては、上記対向基材8として、上記材料薄膜8より塑性変形能の低い樹脂材料から形成されたシートが採用される。たとえば、上記材料薄膜8にガラス転移温度50〜200℃の樹脂薄膜を採用した場合、上記対向基材として、ガラス転移温度150〜300℃の樹脂シートを採用することができる。具体的例として、上記材料薄膜として、ガラス転移温度150℃のポリカーボネートを採用する一方、上記対向基材としてガラス転移温度225℃のポリエーテルサルフォンを採用することができる。上記対向基材8の厚さも特に限定されることはないが、上記材料薄膜8の厚さ以上のものを採用するのが好ましい。たとえば、本実施形態では、厚さ20μm〜1mmの対向基材を採用することができる。
次に、図1に示す状態で、図7に示す加熱工程(S1)が行われる。本実施形態では、上記下型部に3に設置した図示しないヒータによって、材料薄膜8及び対向基材5をこれらの塑性変形可能温度まで加熱する。上記加熱温度は、上記材料薄膜8及び対向基材5に採用した樹脂材料によって異なるが、上記押し型4の先端部を押し込んで塑性変形させることができる温度以上に加熱すればよい。
上記加熱温度は、上記対向基材5のガラス転移温度より10℃〜50℃高く設定するのが好ましく、たとえば、上記対向基材にポリエーテルサルフォンを採用した場合、235〜275℃に設定することができる。235℃以下であると、上記対向基材5に上記押し型を押し込むのが困難になる。一方、275℃以上では、対向基材5の流動性が大きくなり過ぎて、後に説明する残膜を排除する方向への樹脂の流動を生じさせることが困難になる。
上記の温度まで加熱された材料薄膜8及び対向基材5に対して、加圧工程(S2)が行われる。上記加圧工程は、図2に示すように、上記押し型4と上記下型部3とを近接させて、上記押し型4の矩形型部7を上記材料薄膜8及び上記対向基材5に押し入れることにより行われる。採用する材料薄膜8及び対向基材5の種類によって異なるが、2〜50MPaの圧力を作用させることができる。また、圧力の作用形態も特に限定されることはなく、2〜200kPa/sの加圧速度で上記圧力を作用させることができる。
図5及び図6に、上記加圧工程における、上記材料薄膜8及び対向基材5の変形の態様を示す。
図5に示すように、上記材料薄膜8に、上記押し型7を押し入れていく場合、対向基材5との境界面近傍において、上記押し型7の先端部と上記対向基材5の表面との間に500nm程度の残膜9が生成される。
上記状態から上記押し型7を、上記残膜9とともに上記対向基材5内に押し入れると、上記対向基材5内に図6において矢印で示す樹脂の流れが生じる。この流れは、上記押し型7の先端中央部から半径方向外方に向かう流れであるため、上記残膜9を上記押し型4の周囲に排除する作用をもつ。しかも、上記対向基材5は、上記材料薄膜8より塑性変形能あるいは流動性が低いため、上記押し型の先端部との間における上記流れの剪断力ないしは摩擦力も大きくなり、上記流れによって、上記残膜が上記押し型先端部から押し出される。このため、上記押し型の先端部に残膜9が残留するのを防止することができる。
なお、ごく少量の残膜が残ったとしても、上記押し型4を、対向基材5に押し入れる過程において、上記材料薄膜8から分離されるとともに、上記対向基材5内に押し込まれて固定される。このため、上記材料薄膜8に残膜が付属したり、遊離することはなくなる。
上記押し型4を上記対向基材5に押し込む深さも特に限定されることはないが、残膜9を排除する樹脂流動を生じさせるため、上記対向基材5の厚さの10〜50%の深さまで押し込むのが好ましい。
上記加圧工程(S2)における加圧時間は、生産効率上、1200s以下になるように設定するのが好ましい。たとえば、材料薄膜にポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートを採用した場合、2〜8MPaの圧力を、20〜80kPa/sで作用させて、60〜480sで加圧工程が終了するように設定することができる。
次に、上記押し型4を押し入れた材料薄膜8を冷却する冷却工程(図7におけるS3)を行う。上記冷却工程(S3)は、上記プレス装置1に別途冷却装置を設けて行うこともできるし、室温による自然冷却を利用することもできる。冷却温度は、上記押し型4を上記材料薄膜8と上記対向基材5の積層体から脱型させる温度で足りる。たとえば、採用する材料薄膜8のガラス転移温度以下の温度に設定することができる。ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートの場合、20〜70℃温度まで冷却すればよい。また、冷却速度を、2〜3℃/sに設定することができる。
その後、図4に示すように、上記上型部2と下型部3とが離間させられ、上記押し型4を、上記材料薄膜8と上記対向基材5の積層体から離脱させる脱型工程(S4)が行われる。これにより、上記材料薄膜8と上記対向基材5とが積層された状態で、加工装置から一体的に取り出される。
図10及び図12に示すように、上記押し型4を塑性変形可能温度以上に加熱された対向基材5の内部に押し込むことにより、上記材料薄膜8と上記対向基材5とが、仮止めされた積層体18が形成される。一方、図11に示すように、上記材料薄膜8を上記対向基材5から容易に剥離させて、図9に示すプラスチック薄膜を得ることができるように構成されている。このため、上記対向基材5をプラスチック薄膜8の保護シートとして利用することが可能となり、プラスチック薄膜の取扱性を向上させることもできる。
図13は、本願発明の第2の実施形態に係るものであり、第1の実施形態に係る図12に相当する断面図である。
第1の実施形態で説明したように、上記材料薄膜と上記対向基材とは、これらの塑性変形温度以上に加熱されて加圧工程S2が行われる。このため、採用する材料薄膜と対向基材によっては、上記加圧工程において積層面に溶着が生じて、これらを剥離させるのが困難になることも考えられる。一方、上記材料薄膜と上記対向基材との保持強度が低い場合には、これらが積層状態で一体的に保持されず、保護シートとしての機能を発揮させることができない場合も考えられる。
図13に示す実施形態は、材料薄膜28と対向基材25との境界面に、境界面調整層21を設けることにより、上記不都合を回避しようとするものである。すなわち、上記境界面調整層21は、上記材料薄膜28と保護シートとしての対向基材25との間の保持力を調整するために設けられる。
たとえば、上記加圧工程において、上記材料薄膜28と上記対向基材5とが、溶着して剥離が困難になる場合には、離型剤から構成される上記境界面調整層21を上記対向基材表面に形成しておくことができる。これにより、上記材料薄膜28と上記対向基材25の溶着を防止して、剥離可能な適度の保持力を発揮させることが可能となる。
一方、上記保持力を確保できない場合には、粘着剤等から上記境界面調整層21を構成することができる。これにより、対向基材25を上記材料薄膜28に付属させて、これを保護シートとして機能させることが可能となる。
なお、上記境界面調整層21は境界面の全域に設ける必要はなく、たとえば、境界面の一部に設けたり、境界面にドットパターン等により所定の密度で点在させることもできる。
図14に、本願発明の第3の実施形態を示す。この図は、第1の実施形態に係る図7に相当するものであり、加工工程における荷重及び温度と、時間との関係を示すものである。なお、各部材の構成は、第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
図14に示す第3の実施形態では、材料薄膜8と対向基材5とから構成される積層体を、少なくとも上記材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する第1の加熱工程(S1)と、上記第1の加熱工程の加熱温度において、上記押し型を上記対向基材の表面近傍まで押し込む第1の加圧工程(S2)と、上記積層体を、少なくとも上記対向基材の塑性変形可能温度まで加熱する第2の加熱工程(S1a)と、上記第2の加熱工程における加熱温度において、上記押し型4を上記対向基材5に押し込む第2の加圧工程(S2a)と、冷却工程(S3)と、上記押し型4を上記積層体から離間させる脱型工程(S4)とを含んで構成される。なお、上記冷却工程(S3)及び上記脱型工程(S4)は、第1の実施形態と同様の工程であるため、説明は省略する。
上記第1の加熱工程(S1)では、積層体が少なくとも上記材料薄膜8の塑性変形温度以上に加熱される。上記加熱温度は、上記材料薄膜8に押し型4を押し込んで貫通孔を形成できる一方、上記対向基材8にある程度の硬度を確保できる温度に設定するのが好ましい。
たとえば、材料薄膜8として、ポリカーボネートを採用するとともに、対向基材5としてポリエーテルサルフォンを採用する場合、上記第1の加熱工程において、上記積層体を200℃まで加熱する。上記温度は、ポリカーボネートのガラス転移温度(約150℃)を越えており、一方、上記ポリエーテルサルフォンのガラス転移温度(225℃)以下である。
上記温度において、上記押し型4を上記材料薄膜8に押し込んで第1の加圧工程を行うと、上記対向基材5の硬度を確保した状態で、上記材料薄膜8に上記押し型4を押し込むことができる。このため、材料薄膜8が対向基材にバックアップされて大きな変形が生じにくくなり、精度の高い貫通孔を形成することができる。また、上記押し型4を、上記対向基材8の境界面近傍まで押込むことが可能となって、生じる残膜の厚さを小さくすることができる。
次に、上記積層体をさらに加熱する第2の加熱工程が行われる。上記第2の加熱工程では、上記積層体を約250℃まで加熱する。上記温度は、上記ポリエーテルサルフォンのガラス転移温度(225℃)以上であり、上記対向基材5が塑性変形可能な状態となる。
上記加熱温度において、上記押し型4を対向基材5内に押し入れる第2の加圧工程が行われる。上記材料薄膜8には、既に貫通孔が形成されており、また、塑性変形能がより高くなっているため、大きな歪み等が生じることを防止できる。なお、上記第2の加熱工程における加熱温度は、上記押し型の先端部を上記対向基材に押し入れることにより、上記対向基材5の内部において、上記残膜を排除する方向への樹脂の流れが生じる温度に設定すればよい。
上記構成を採用することにより、より精度高い貫通孔を備えるプラスチック薄膜を製造することが可能となる。
本願発明は、上述の実施形態に限定されることはない。今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本願発明の範囲は、実施形態で説明した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本願発明によって、インクジェトプリンタ用ノズル、医療用ネブライザノズル、フィルタ等に利用できる超微細貫通孔を備えるプラスチック薄膜を、安価に製造することができる。
S1 加熱工程
S2 加圧工程
S3 冷却工程
S4 脱型工程
S2 加圧工程
S3 冷却工程
S4 脱型工程
Claims (7)
- 厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備えるプラスチック薄膜の製造方法であって、
材料薄膜をこの材料薄膜より塑性変形能の低い樹脂材料から形成された対向基材に積層するとともに、これら積層体を少なくとも材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する加熱工程と、
上記材料薄膜を、上記貫通孔を形成する押し型と上記対向基材との間で加圧して、上記押し型を上記材料薄膜に貫通させるとともに、上記対向基材に押し入れる加圧工程と、
上記押し型を押し込んだ上記材料薄膜及び上記対向基材を冷却する冷却工程と、
上記押し型を、上記材料薄膜及び上記対向基材から離脱させる脱型工程とを含む、プラスチック薄膜の製造方法。 - 上記対向基材に、上記材料薄膜よりガラス転移温度が高いプラスチック材料を採用した、請求項1に記載のプラスチック薄膜の製造方法。
- 上記加圧工程を、上記対向基材のガラス転移温度より10℃〜50℃高い温度で行う、請求項2に記載のプラスチック薄膜の製造方法。
- 上記積層体を、少なくとも上記材料薄膜の塑性変形可能温度まで加熱する第1の加熱工程と、
上記第1の加熱工程における加熱温度において、上記押し型を上記材料薄膜に押し込む第1の加圧工程と、
上記積層体を、少なくとも上記対向基材の塑性変形可能温度まで加熱する第2の加熱工程と、
上記第2の加熱工程における加熱温度において、上記押し型を上記対向基材に押し込む第2の加圧工程とを含む、請求項1又は請求項2のいずれかに記載のプラスチック薄膜の製造方法。 - 上記脱型工程において、上記材料薄膜と上記対向基材とを一体的に積層した状態で上記押し型を離脱させる、請求項1から請求項4のいずれかに記載のプラスチック薄膜の製造方法。
- 上記材料薄膜と上記対向基材との間に、上記材料薄膜と上記対向基材とを所定の強度で積層付着させる境界面調整層が設けられている、請求項1から請求項5のいずれかに記載のプラスチック薄膜の製造方法。
- 請求項1から請求項6に記載された製造方法によって形成されるプラスチック薄膜であって、
材料薄膜と上記対向基材とが剥離可能に積層された、保護シート付きプラスチック薄膜。
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---|---|---|---|
JP2007266148A JP2009090615A (ja) | 2007-10-12 | 2007-10-12 | プラスチック薄膜の製造方法 |
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WO2014171365A1 (ja) * | 2013-04-18 | 2014-10-23 | 東レ株式会社 | 熱可塑性フィルムの製造方法 |
-
2007
- 2007-10-12 JP JP2007266148A patent/JP2009090615A/ja active Pending
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WO2014171365A1 (ja) * | 2013-04-18 | 2014-10-23 | 東レ株式会社 | 熱可塑性フィルムの製造方法 |
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