JP2009085800A - 移動局測位システム - Google Patents
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Abstract
【課題】測位対象との距離を測定可能な基地局の数を減らすことにより測位システム全体に要する費用を低減しつつ、測位の精度を維持可能な移動局測位システムを提供する。
【解決手段】移動局位置候補算出部102により、2つの基地局12の受信時刻検出部46において検出された移動局10からの電波の受信時刻に基づいて、該2つの基地局12のそれぞれと前記移動局10との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間および前記2つの基地局12の位置に基づいて前記移動局10の位置の複数の候補が算出され、前記移動局位置候補選択部104により、該移動局位置候補算出部102によって算出された前記移動局10の位置の複数の候補のうち、実際の移動局10の位置であると判断される候補が選択され前記移動局10の位置とされるので、少なくとも2つの基地局12が存在すれば移動局10の位置の算出(測位)を行なうことができる。
【選択図】図1
【解決手段】移動局位置候補算出部102により、2つの基地局12の受信時刻検出部46において検出された移動局10からの電波の受信時刻に基づいて、該2つの基地局12のそれぞれと前記移動局10との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間および前記2つの基地局12の位置に基づいて前記移動局10の位置の複数の候補が算出され、前記移動局位置候補選択部104により、該移動局位置候補算出部102によって算出された前記移動局10の位置の複数の候補のうち、実際の移動局10の位置であると判断される候補が選択され前記移動局10の位置とされるので、少なくとも2つの基地局12が存在すれば移動局10の位置の算出(測位)を行なうことができる。
【選択図】図1
Description
本発明は、移動局が発信する電波を複数の基地局が受信し、その受信結果である受信時刻に基づいて移動局の位置の推定を行なう移動局測位システムに関するものであり、特に、移動局からの電波の受信時刻を検出することのできる基地局と、移動局からの電波の受信強度のみを検出することのできる簡易基地局とを併用する技術に関するものである。
移動局および基地局間において無線により信号の送受信を行い、この送受信の結果に基づいて移動局の位置の算出を行う技術が提案されている。この送受信の結果としては、例えば電波の送信時刻及び受信時刻から算出される電波の伝搬時間が用いられ、この電波の伝搬時間に基づいて移動局と基地局との距離が算出される。そして、3以上の基地局のそれぞれと基地局との距離がそれぞれ算出されると、三点測量の原理に基づいて前記3以上の基地局の位置に基づいて移動局の位置を算出することができる。
ところで、電波の受信時刻の算出の方法としては、例えば拡散符号を含んだ電波を送受信し、受信側で同期検出処理を行なう方法が用いられている。これは、送信側から拡散符号を含んだ電波を送信し、これを受信した受信側において、受信波に含まれる拡散符号と送信側が送信した拡散符号と同一の符号であるレプリカ符号との相関値の算出を前記受信波に含まれる拡散符号を所定の時間ずつずらしながら行い、相関値のピークを検出した時点を受信時刻とする方法である。かかる方法によれば、一定の精度により受信時刻を検出することが可能となるが、送信側においては拡散符号を送信するための設備が必要となり、また、受信側においても同期検出を行なうための設備が必要となるため、実装するに当たり機器が複雑となったり、費用が高くなる。
一方、簡易的に移動局と基地局との距離を算出する方法としては、移動局および基地局間において無線により信号の送受信を行い、この送受信の結果として受信側における受信波のRSSI値に基づく受信電力を用いる方法がある。これは例えば、送信側から所定の出力により電波を送信した際の、電波の伝搬距離と受信波における受信電力との関係を予め算出しておき、実際の受信側における受信電力に対応する伝搬距離を前記予め算出しておいた関係に基づいて算出するものである。かかる方法によれば、前述の拡散符号を用いた方法と異なり、拡散符号を含んだ電波を発信したりあるいは同期検出を行なうための設備が必要なく、設備が簡易となる。しかしながら、受信電力と伝搬距離との関係は、伝搬距離が長くなるほど誤差を生じやすく、そのため、前記拡散符号を用いた方法ほど正確な伝搬距離の算出を行なうことができない。
このように、伝搬距離の測定における正確さを求める場合には、移動局及び基地局の構成が複雑にならざるを得ず、そのため一定の精度による移動局測位システムを導入するためには高額な導入費用が必要であった。
本発明者等は、以上の課題を解決するために種々検討を重ねた結果、前記移動局の位置の算出を行なうために必要な基地局の数よりも少ない基地局によって移動局および基地局間の無線通信を行い、その受信時刻に基づいて各基地局と移動局との距離を算出することにより、移動局の位置の候補を複数算出することができ、他の基地局と移動局との間の無線通信による受信側における受信波の受信電力に基づいて、前記算出された複数の移動局の位置の候補のうち実際の移動局の位置であると判断される候補を選択すれば、選択された移動局の位置の候補は、前記移動局の位置の候補は前記受信時刻に基づいて算出されるものであるので、所定の精度を満たし、かつ、電波の受信時刻を検出するために必要な基地局の数は移動局の測位を行なうために必要な基地局よりも少ない基地局の数であって、他の基地局は電波の受信強度を測定するための設備のみを有すればよいことから、移動局測位システムとしての導入費用を低減することができるという点を見いだした。本発明はこのような知見に基づいてなされたものである。
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、移動局から発信される電波を受信し、その受信時刻を検出する機能を有する基地局を、前記移動局の位置を算出するのに十分な数よりも少ない数だけ有することにより、前記基地局によって得られる受信時刻に基づいて移動局の位置の候補を精度よく複数算出するとともに、移動局位置候補選択部を設け、算出された複数の移動局の位置の候補から実際の移動局の位置であると判断される候補を選択することにより、基地局の数を低減し、すなわち移動局測位システムとしての導入コストを低減する移動局測位システムを提供することにある。
なお、特許文献1においては、電波の相対伝播遅延差および受信強度を併用する技術が開示されているが、かかる特許文献1に開示の技術は前記相対伝播遅延差のみを用いた移動局の測位の信頼度を増すために、前記相対伝播遅延差による移動局の測位結果と前記受信強度に基づく移動局の測位結果を比較するものであり、かつ、各基地局は前記相対伝播遅延差を算出するための設備と前記受信強度を算出するための設備の両方を備えるものとされており、本発明とは目的や構成を異にするものである。
かかる課題を解決するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、(a)移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、該複数の基地局における受信結果に基づいて移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、(b)電波を発信する発信部を有する移動局と、(c)前記移動局から発信された電波を受信する受信部と、該受信部により発信された電波の受信時刻を検出する受信時刻検出部と、を有する複数の基地局と、(d)前記複数の基地局のうちの2つの基地局の該受信時刻検出部において検出された移動局からの電波の受信時刻に基づいて、該2つの基地局のそれぞれと前記移動局との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間および前記2つの基地局の位置に基づいて前記移動局位置の複数の候補を算出する移動局位置候補算出部と、(e)該移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、実際の移動局の位置であると判断される候補を、受信時刻以外の定常的に取得される移動局状態変数に基づいて選択し、前記移動局の位置とする移動局位置候補選択部とを有することを特徴とする。
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記移動局から発信された電波を受信し、その受信強度を測定する簡易基地局を有し、(b)前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記簡易基地局によって測定された移動局からの電波の受信強度に基づいて実際の移動局の位置であると判断される候補を選択することを特徴とする。
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部において用いる受信時刻を検出する2つの基地局を通る直線に沿って設けられた除外領域内に存在しない前記簡易基地局を用いて移動局の位置の候補を選択するものであることを特徴とする。
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置候補選択部は、前記簡易基地局が複数存在する場合には前記移動局から発信された電波の受信強度が最も高い簡易基地局を用いることを特徴とする。
また、請求項5にかかる発明の要旨とするところは、前記簡易基地局は、電波受信部と、該電波受信部における電波の受信強度を測定する受信強度測定部とを備えた無線LANアクセスポイントであることを特徴とする。
また、請求項6にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局が存在し得る領域内とされた候補を選択することを特徴とする。
また、請求項7にかかる発明の要旨とするところは、前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局の移動履歴に基づいて実際の移動局の位置であると判断される候補を選択することを特徴とする。
また、請求項8にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記基地局は、電波を発信する発信部を有し、(b)前記移動局は、前記基地局から発信された電波を受信する受信部と、該受信部により受信された電波に対応して返信のための電波を生成する返信部と、を有し、(c)前記移動局位置候補算出部は、前記基地局の発信部における移動局に向けた電波の発信時刻と、前記受信時刻検出部によって検出される移動局からの返信のための電波の受信時刻と、前記移動局の返信部において処理に要した時間とに基づいて、前記基地局と前記移動局との間の電波の往復に要する往復伝搬時間を算出し、該算出された往復伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との距離を算出し、該算出された距離に基づいて前記移動局位置の複数の候補を算出すること、を特徴とする。
請求項9にかかる発明の要旨とするところは、(a)前記移動局および複数の基地局はそれぞれその時刻が同期された時計を有し、(b)前記移動局位置候補算出部は、前記移動局の発信部における電波の発信時刻と前記複数の基地局のそれぞれにおける前記受信時刻検出部によって検出される移動局からの電波の受信時刻とに基づいて、前記移動局と前記基地局との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との距離を算出し、該算出された距離に基づいて前記移動局位置の複数の候補を算出すること、を特徴とする。
請求項1にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補算出部により、前記複数の基地局のうちの2つの基地局の該受信時刻検出部において検出された移動局からの電波の受信時刻に基づいて、該2つの基地局のそれぞれと前記移動局との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間および前記2つの基地局の位置に基づいて前記移動局位置の複数の候補が算出され、前記移動局位置候補選択部により、該移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、実際の移動局の位置であると判断される候補が、受信時刻以外の定常的に取得される移動局状態変数に基づいて選択され前記移動局の位置とされるので、少なくとも2つの基地局が存在すれば移動局の位置の算出(測位)を行なうことができる。
また、請求項2にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局から発信された電波を受信し、その受信強度を測定する簡易基地局を有し、前記移動局位置候補選択部により、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記簡易基地局によって測定された移動局からの電波の受信強度に基づいて実際の移動局の位置であると判断される候補が選択されるので、前記2つの基地局に加え、少なくとも受信した電波の受信強度を測定する機能を有する簡易基地局を備えればよいので、全ての基地局が前記電波の受信時刻検出部を有する場合と比べてその導入費用を低減できる。
また、請求項3にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部において用いる受信時刻を検出する2つの基地局を通る直線に沿って設けられた除外領域内に存在しない前記簡易基地局を用いて移動局の位置の候補を選択するので、前記移動局位置候補算出部によって算出された移動局位置の複数の候補から実際の移動局の位置であると判断される候補をより正確に選択することができる。
また、請求項4にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補選択部は、前記簡易基地局が複数存在する場合には前記移動局から発信された電波の受信強度が最も高い簡易基地局を用いるので、前記移動局位置候補算出部によって算出された移動局位置の複数の候補から実際の移動局の位置であると判断される候補をより正確に選択することができる。
また、請求項5にかかる移動局測位システムによれば、前記簡易基地局は、電波受信部と、該電波受信部における電波の受信強度を測定する受信強度測定部とを備えた無線LANアクセスポイントであり、無線LANアクセスポイントは例えば受信した電波の強度を256段階のRSSI値で出力することのできるIEEE802.11などの規格に適合していることから、移動局の発信する電波をこの無線LANの規格に合ったものとすることにより、既存の無線LANアクセスポイントを前記簡易基地局として用いることができる。
また、請求項6にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補選択部により、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局が存在し得る領域内とされた候補が選択されるので、予め移動局が存在し得る領域についての情報を得ておくことにより、容易に移動局位置の候補を選択することができる。また逆に、移動局位置候補算出部によって算出される移動局位置の複数の候補の1つのみが前記移動局が存在し得る領域内となるように基地局を配置することにより、前記移動局位置候補選択部により移動局の位置の候補を1つに絞り込むことができる。
また、請求項7にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補選択部により、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局の移動履歴に基づいて実際の移動局の位置であると判断される候補が選択されるので、前記移動局の移動履歴から予測される現在の移動局の位置に基づいて移動局位置の候補が選択される。
また、請求項8にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補算出部によって、前記基地局の発信部における移動局に向けた電波の発信時刻と、前記受信時刻検出部によって検出される移動局からの返信のための電波の受信時刻と、前記移動局の返信部において処理に要した時間とに基づいて、前記基地局と前記移動局との間の電波の往復に要する往復伝搬時間が算出され、該算出された往復伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との距離が算出され、該算出された距離に基づいて前記移動局位置の複数の候補が算出されるので、移動局は時計を有する必要がなく、また、各基地局がそれぞれ有する時計の時刻合わせが行なわれる必要がない。
また、請求項9にかかる移動局測位システムによれば、前記移動局位置候補算出部によって、前記移動局の発信部における電波の発信時刻と前記複数の基地局のそれぞれにおける前記受信時刻検出部によって検出される移動局からの電波の受信時刻とに基づいて、前記移動局と前記基地局との間の電波の伝搬時間が算出され、該算出された伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との距離が算出され、該算出された距離に基づいて前記移動局位置の複数の候補が算出されるので、より短い時間で移動局位置の候補の算出を行なうことができる。
以下、本発明の一実施例について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の移動局測位システム8の構成の一例を示した図である。図1に示すように、移動局測位システム8は、移動可能な移動局10、既知の位置に固定され、前記移動局10と無線による通信を行なう機能を有する第1基地局12A、および第2基地局12Bの2つの基地局12(以下、第1基地局12A、および第2基地局12Bを区別しない場合、基地局12という。)、前記移動局10から発信された電波を受信し、その受信電力の大きさを評価する機能を少なくとも有する第1簡易基地局13A、および第2簡易基地局13Bの2つの簡易基地局13(以下、第1簡易基地局13A、および第2簡易基地局13Bを区別しない場合、簡易基地局13という。)、および例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂コンピュータを含んで構成される測位サーバ14を含んで構成される。なお、移動局10の数は1個以上であればとくに限定されない。また、基地局12および簡易基地局13はそれぞれ、例えば通信ケーブル20によって測位サーバ14とEthernet(登録商標)等で接続されることにより通信可能とされている。
なお、移動局10が移動可能な領域(図1であれば平面)には例えば図1に示すような座標系が設定され、移動局10、基地局12および簡易基地局13の位置はこの座標系における座標によって表現することができる。
図2は基地局12の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。基地局12は、電波を送受信するためのアンテナ38、無線部30、信号処理部32、同期検出部46、伝搬時間算出部48、時計50、時計同期部51、記憶部52、制御部54、インタフェース部56等を有する。基地局12は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、基地局12の信号処理部32、同期検出部46、伝搬時間算出部48、制御部54などにおける処理を実行するようになっている。このうち、無線部30は、変調部34、発信部36、受信部42、復調部44などによって構成される。変調部34は、後述する信号処理部32によって生成された送信信号に基づいて、AM変調、FM変調などの処理やデジタル変調の処理を行う。また、発信部36は、いわゆる増幅器等を含んで構成され、前記変調部34によって行なわれる変調処理などによって生成された電波を所定の出力に増幅するなどして、発信に適した電波形式にし、アンテナ38を介して送信する。
一方、受信部42は、アンテナ38によって受信される電波を増幅するとともに、受信波のうち所定の周波数成分のみをとりだす。また、復調部44は、受信部42によって取りだされた信号波に対し、例えば検波器などにより電波の発信の際に行なわれた変調の方式に対応する復調処理を行なうことにより、信号波を取りだす。
信号処理部32は、基地局12から発信する電波に含まれる信号を生成する。例えばこの信号には、自己相関関数に高いピークを持ち、すなわち位相差がゼロである場合において自己相関が大きな値となる一方、位相差がゼロでない場合には自己相関が十分に小さく、かつ、異なる符号間における相関が全ての位相差において十分小さい、すなわち相互相関が小さいことという条件を満たす符号である拡散符号が用いられる。具体的には例えば、M系列符号や、GPSにおいても使用されているGold系列符号が用いられる。これらの符号は疑似雑音符号(pseudo−noise code;PN符号)とも呼ばれる。このような符号を利用すれば、ある特定の移動局と基地局との通信がある特定の拡散符号を用いて行なわれている場合に、同じ時刻および同じ周波数において他の移動局と基地局との通信が別の拡散符号を用いて行なわれる場合であっても、相互の通信が影響を受けることがない。また、前記自己相関関数に高いピークを持つという拡散符号の性質を利用して、後述する同期検出部46による同期検出において正確な同期検出を行なうことが可能となる。
同期検出部46は、復調部44によって受信波から取りだされた信号波に含まれる符号と、該符号と同一の内容を有する符号であるレプリカ符号との同期検出が行なわれる。具体的には、前記信号波に含まれる符号列と前記レプリカ符号との相関値を例えばマッチドフィルタを用いて順次算出し、前記相関値がピークを生じた時刻を受信時刻とする。すなわち、同期検出部46は受信時刻検出部でもある。
伝搬時間算出部48は、前記同期検出部46において検出された受信波の受信時刻と、受信波に含められている受信波の発信時刻についての情報とに基づいて、受信波の伝搬時間を算出する。具体的には例えば、移動局10はその信号処理部74によって生成された拡散符号と、その拡散符号の発信時刻に関する情報とが無線部60により発信し、この拡散符号と発信時刻に関する情報とを各基地局12が受信する。そして、各基地局12はその同期検出部46によって受信した前記拡散符号とそのレプリカ符号との相関値のピークを検出し、そのピークの検出時刻として前記拡散符号の受信時刻を検出する。このようにして得られた移動局10における拡散符号の発信時刻とその拡散符号の各基地局における受信時刻とに基づいて、例えば前記受信時刻から前記発信時刻を減ずることにより移動局10から各基地局への電波の伝搬時間ΔTi(本実施例においてはi=1,2)を算出する。なお、後述するように、各基地局12の時計同期部51および移動局10の時計同期部79により、各基地局の時計78の時刻および移動局10の時計50の時刻は同期させられているので、前述のように移動局10における前記拡散符号の発信時刻と各基地局12における受信時刻とに基づいて正確な電波の伝搬時間を算出することができる。
時計50は、基地局12における内部クロックに基づいて時刻を計測するものである。この時計50は、たとえば前記同期検出部46によって相関値がピークを生じた際に参照されて受信時刻が決定される他、信号処理部32によって電波の発信時に参照されて電波の発信時刻が決定される。
時計同期部51は、自局の時計50の時刻と、他の基地局12が有する時計50の時刻とを同期させる処理である時計合わせ処理を行なう。この時計同期部51は、時計合わせ処理の対象である前記他の基地局12の時計同期部51と協調して作動するものであって、例えば、自局から他の基地局12に対し電波を発信し、前記他の基地局における電波の受信時刻と自局における電波の発信時刻とに基づいて前記自局から他の基地局への電波の伝搬時間を算出するとともに、同様に、他の基地局12から自局に対し電波を発信し、他の基地局から自局への電波の伝搬時間を算出し、これらを比較することによって自局の時計50と他の基地局12の時計50との時刻のずれを算出し、算出された時刻のずれに基づいて自局の時計50あるいは他の基地局12の時計50の時刻を補正することによって、自局の時計50の時刻と、他の基地局12が有する時計50の時刻とを同期させる。より具体的には、自局の時計50の時刻が、他の基地局12の時計50の時刻よりもtd(秒)だけ進んでいる場合において、自局と他の基地局12との間の電波の伝搬時間の真値をt0(秒)とすると、自局から他の基地局12への電波の伝搬時間はt1=t0−tdとして算出され、他の基地局12から自局への電波の伝搬時間はt2=t0+tdとして算出される。したがって、これらより自局の時計50と他の基地局12の時計50との時刻のずれtdは、td=(t2−t1)/2として算出される。このように算出された時刻のずれtdだけ自局の時計50を遅らせるか、あるいは他の基地局12の時計50を進めることにより、自局の時計50の時刻と他の基地局12の時計50の時刻とは同期される。
記憶部52は、いわゆるメモリなどの記憶手段であり、例えば前記同期検出部46によって検出された受信波の受信時刻や、前記同期検出部46において同期検出に用いられるレプリカ符号など、必要な情報を記憶する。
インタフェース部56は、通信ケーブル20を介して接続された測位サーバ14との間で必要となる情報をEthernet等で送受信する。例えば、基地局12は、測位サーバ14に対して前記同期検出部46において検出された受信波の受信時刻や、前記発信部36によって電波が発信される発信時刻、伝搬時間算出部48において算出された電波の伝搬時間などについての情報をインタフェース部56を介して送信する。また、測位サーバ14から送信された、基地局12の作動を指令するコマンド等についての情報をインタフェース部56を介して受信する。
制御部54はいわゆるマイコンなどによって実装されるものであって、前記記憶部52に記憶された情報や、図示しないROMに記憶された情報などを参照しつつ前記無線部30、信号処理部32、同期検出部46、時計50、時計同期部51、インタフェース部56の作動を制御する。
図3は移動局10の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。移動局10は、電波を送受信するためのアンテナ62、無線部60、信号処理部74、同期検出部76、時計78、時計同期部79、記憶部80、制御部82等を有する。移動局10は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、移動局10の信号処理部74、同期検出部76、時計同期部79、制御部82などにおける処理を実行するようになっている。また、無線部60は、変調部70、発信部72、受信部64、復調部68などによって構成される。これらのアンテナ62、無線部60、信号処理部74、同期検出部76、時計78、記憶部80、制御部82、変調部70、発信部72、受信部64、復調部68はそれぞれ、前述の基地局12のアンテナ38、無線部30、信号処理部32、同期検出部46、時計50、記憶部52、制御部54、変調部34、発信部36、受信部42、復調部44と同様の機能を有するものであるので、その機能に関する説明は省略する。
また、移動局10の時計同期部79は、前記基地局12の時計同期部51と同様に、自局の時計78の時計の時刻といずれか1つの前記基地局12の時計50の時刻とを同期させる時計合わせ処理を行なうものであって、時計合わせ処理の対象である前記いずれか1つの前記基地局12の時計同期部51と協調して作動する。具体的な方法は、例えば前述の基地局12の時計同期部51が他の基地局12の時計同期部51との時計合わせ処理を行なったのと同様の手順により行なわれるので、説明を省略する。前述の基地局12の時計同期部51により各基地局12の時計50の時計合わせ処理を行い、また、移動局10の時刻同期部79といずれか1つの前記基地局12の時計同期部51により移動局10の時計78と前記いずれか1つの基地局12の時計50との時計合わせ処理を行なうことにより、移動局10の時計78と全ての基地局12の時計50とは同期され、同じ時刻を計測することができる。
図4は簡易基地局13の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。簡易基地局13は、電波を送受信するためのアンテナ90、無線部92、受信強度測定部94、インタフェース部96、制御部98等を少なくとも有して構成される。簡易基地局13は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、簡易基地局13の受信強度測定部94、制御部98などにおける処理を実行するようになっている。このうち、無線部92は、アンテナ90によって受信される電波を増幅するとともに、受信波のうち所定の周波数成分のみをとりだす。すなわち、無線部92は少なくとも電波の受信機能を有する受信部である。
受信強度測定部94は、アンテナ90を介して前記無線部92によって受信された受信波の受信強度を測定する。具体的には例えば、受信強度測定部94は、電力計等を用いて受信波を受信した際の受信電力(W)を測定し、この測定された受信電力を1mWを基準とするデシベル単位に変換し、受信電力Vr(dBm)を得る。あるいは、無線LANアクセスポイントを簡易基地局13として用いる場合は、受信電力に対応したRSSI値が制御部98に出力される。あらかじめ定められたRSSI値と受信電力の関係より、測位サーバ14にて、RSSI値を受信電力に変換することができる。
インタフェース部96は、通信ケーブル20を介して接続された測位サーバ14との間で必要となる情報をEthernet等で送受信する。例えば、簡易基地局13は、測位サーバ14に対して前記受信強度測定部94において測定された受信波のRSSI値などについての情報をインタフェース部96を介して送信する。また、測位サーバ14から送信された、簡易基地局13の作動を指令するコマンド等についての情報をインタフェース部96を介して受信する。
制御部98はいわゆるマイコンなどによって実装されるものであって、図示しないRAMやROMに記憶された情報などを参照しつつ前記無線部92、受信強度測定部94、インタフェース部96の作動を制御する。
なお、簡易基地局13は前述の無線部92、受信強度測定部94、インタフェース部96の機能を少なくとも有していればよく、逆に言えば、無線部92、受信強度測定部94、インタフェース部96の機能を有する機器を用いて簡易基地局13を実現することができる。例えば、パソコンなどの間で電波を用いてデータ通信を行なうコンピュータネットワークである無線LANにおける無線LANアクセスポイントは、電波を受信するためのアンテナ90および無線部92に相当する機能、他の機器と有線ケーブルを介して接続され、情報を交換するためのインタフェース部96に対応する機能を有する。また、前記無線LANアクセスポイントは、前記無線LANの規格、例えばIEEE802.11において、受信した電波信号の強さを256段階により数値化した指標であるRSSIを出力することが規定されているため、前記受信強度測定部94に対応する機能も有することとなる。したがって、前記移動局10、基地局12、および簡易基地局13が送受信する電波の周波数が、たとえば2.4GHz帯など、前記無線LANに用いられる周波数帯であり、IEEE802.11に則った通信が行われれば、前記アクセスポイントは好適に前記簡易基地局13として用いることができる。
図5は測位サーバ14の機能の要部を説明するための機能ブロック図である。測位サーバ14は、移動局位置候補算出部102、簡易基地局選択部112、移動局位置候補選択部104、記憶部120、インタフェース部100などを有して構成される。このうち、インタフェース部100は、通信ケーブル20を介して接続された基地局12、簡易基地局13との間で必要となる情報をEthernet等で送受信する。例えば、測位サーバ14は、基地局12や簡易基地局13の作動を指令するコマンド等についての情報をインタフェース部100を介して送信する。また、測位サーバ14は、基地局12において検出された受信波の受信時刻や、電波が発信される発信時刻などについての情報や、簡易基地局13において測定された電波の受信強度に関する情報をインタフェース部100を介して受信する。
移動局位置候補算出部102は、距離算出部103を有し、この距離算出部103によって算出された移動局10と2つの基地局12のそれぞれとの距離に基づいて、移動局10の存在する位置の候補である移動局位置候補を複数算出する。具体的には、移動局位置候補算出部102は、後述する距離算出部103によって算出される第1基地局12Aと移動局10との距離L1および第2基地局12Bと移動局10との距離L2と、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bの位置を表す座標とに基づいて、移動局位置候補を算出する。具体的には、例えば前記図1のように座標系が定義されている場合に、第1基地局12Aの位置座標を(X1,Y1)、第2基地局12Bの位置座標を(X2,Y2)、位置を算出しようとする移動局10の位置を(x,y)とすると、これらの関係は前記第1基地局12Aと移動局10との距離L1および第2基地局12Bと移動局10との距離L2とを用いて、
(X1−x)2+(Y1−y)2=L1
(X2−x)2+(Y2−y)2=L2 …(1)
と表される。前記式(1)の解(x,y)は、第1基地局12Aの位置座標である(X1,Y1)と第2基地局12Bの位置座標である(X2,Y2)とを結ぶ直線上に得られる場合を除き、2つの解が得られる。すなわち、このようにして得られた2つの解のいずれかが実際の移動局10の位置である。そこで、前記式(1)を解いて得られる2つの解を、移動局位置第1候補P1(x1,y1)、移動局位置第2候補P2(x2,y2)とよぶ(図6参照)。なお、図6において、曲線122Aおよび122Bはそれぞれ、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを中心とする距離L1および距離L2の円の弧の一部、すなわち、第1基地局12Aから距離L1および第2基地局12Bから距離L2である点の集まりを表した線である。この曲線122A上の点および曲線122B上の点はそれぞれ前記式(1)の第1式および第2式の解を表しており、従って、曲線122Aと曲線122Bとの交点が、前記式(1)の2式を同時に満たす解である。
(X1−x)2+(Y1−y)2=L1
(X2−x)2+(Y2−y)2=L2 …(1)
と表される。前記式(1)の解(x,y)は、第1基地局12Aの位置座標である(X1,Y1)と第2基地局12Bの位置座標である(X2,Y2)とを結ぶ直線上に得られる場合を除き、2つの解が得られる。すなわち、このようにして得られた2つの解のいずれかが実際の移動局10の位置である。そこで、前記式(1)を解いて得られる2つの解を、移動局位置第1候補P1(x1,y1)、移動局位置第2候補P2(x2,y2)とよぶ(図6参照)。なお、図6において、曲線122Aおよび122Bはそれぞれ、第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを中心とする距離L1および距離L2の円の弧の一部、すなわち、第1基地局12Aから距離L1および第2基地局12Bから距離L2である点の集まりを表した線である。この曲線122A上の点および曲線122B上の点はそれぞれ前記式(1)の第1式および第2式の解を表しており、従って、曲線122Aと曲線122Bとの交点が、前記式(1)の2式を同時に満たす解である。
距離算出部103は、前記移動局位置候補算出部102において移動局10の位置候補の算出に用いられる、前記第1基地局12Aと移動局10との距離L1および第2基地局12Bと移動局10との距離L2を、移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間に基づいて算出する。具体的には例えば、各基地局12の伝搬時間算出部48によって算出された移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間を各基地局は通信ケーブル20を介して測位サーバ14に送信する。距離算出部103は、このようにして得られた移動局から各基地局12への電波の伝搬時間ΔTi(本実施例においてはi=1,2)に電波の速度c(=2.997×108(m/s))を乗ずることにより、前記第1基地局12Aと移動局10との距離L1(=c×ΔT1)および第2基地局12Bと移動局10との距離L2(=c×ΔT2)を算出する。
移動局位置候補選択部104は、前記移動局位置候補算出部102によって算出された複数の移動局位置候補(本実施例においては移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2)から、最も移動局10の位置として適当なものを各基地局12における移動局10からの電波の受信時刻以外の定常的に取得される移動局状態変数、例えば簡易基地局13の受信強度測定部94において測定されるRSSI値に基づいて選択する。移動局位置候補選択部104は、後述する受信強度照合部106を含んで構成される。
受信強度照合部106は、後述する簡易基地局選択部112によって選択された簡易基地局13において測定された移動局10から発信された電波の受信強度に基づいて、前記簡易基地局13と移動局10との距離を推定するとともに、前記簡易基地局13と前記移動局位置候補算出部102によって算出された複数の移動局位置候補との距離のそれぞれと、前記推定された距離に最も近い距離とを照合する。そして、受信強度照合部106による照合の結果、前記移動局位置候補選択部104は、前記簡易基地局13と前記移動局位置候補算出部102によって算出された複数の移動局位置候補との距離のうち、前記推定された距離に最も近い距離となる前記移動局位置候補を移動局10の位置であるとして選択する。
具体的には、受信強度照合部は、まず、前記移動局位置候補算出部102によって算出された移動局位置第1候補P1の位置座標(x1,y1)、移動局位置第2候補P2の位置座標(x2,y2)、後述する簡易基地局選択部112によって選択された簡易基地局13の位置座標(Xa,Ya)とに基づいて、前記移動局位置第1候補P1と前記簡易基地局13との距離d1、前記移動局位置第2候補P2と前記簡易基地局13との距離d2をそれぞれ次式(2)のように算出する。
続いて、前記簡易基地局13の受信強度測定部94などにより測定された移動局10からの電波の受信強度である受信電力Vr(dBm)の値から、前記簡易基地局13と移動局10との推定距離D(m)を推定する。この推定は例えば、簡易基地局13の受信強度測定部94による受信電力Vrと簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとの関係式である次式(3)を用いて行なわれる。
Vr=−20log(4×π×D×f/c)+GTA+GRA+PT …(3)
ここで、fは移動局10と簡易基地局13の間で送受信される電波の周波数(Hz)、cは電波の速度(m/s)、GTAは移動局10のアンテナ62の送信アンテナゲイン(dBi)、GRAは簡易基地局13のアンテナ90の受信アンテナゲイン(dBi)、PTは移動局10の無線部60における送信電力(dBm)である。なお、図8は例えば、f=2.4(GHz)とし、また、移動局10のアンテナ62および簡易基地局13のアンテナ90を共にアイソトロピックアンテナ、すなわちGTA=GRA=0(dBi)、PT=0(dBm)とした場合の、前記式(3)で表される簡易基地局13の受信強度測定部94による受信電力Vrと簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとの関係を図示したものである。
Vr=−20log(4×π×D×f/c)+GTA+GRA+PT …(3)
ここで、fは移動局10と簡易基地局13の間で送受信される電波の周波数(Hz)、cは電波の速度(m/s)、GTAは移動局10のアンテナ62の送信アンテナゲイン(dBi)、GRAは簡易基地局13のアンテナ90の受信アンテナゲイン(dBi)、PTは移動局10の無線部60における送信電力(dBm)である。なお、図8は例えば、f=2.4(GHz)とし、また、移動局10のアンテナ62および簡易基地局13のアンテナ90を共にアイソトロピックアンテナ、すなわちGTA=GRA=0(dBi)、PT=0(dBm)とした場合の、前記式(3)で表される簡易基地局13の受信強度測定部94による受信電力Vrと簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとの関係を図示したものである。
続いて受信強度照合部106は、このようにして算出された前記移動局位置第1候補P1と前記簡易基地局13との距離d1および前記移動局位置第2候補P2と前記簡易基地局13との距離d2のそれぞれと、推定された前記簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとを照合する。そして、受信強度照合部106による照合の結果、前記移動局位置候補選択部104は、前記簡易基地局13と前記移動局位置候補算出部102によって算出された複数の移動局位置候補との距離のうち、前記推定された距離Dに最も近い距離となる前記移動局位置候補を移動局10の位置であるとして選択する。具体的には例えば、|d1−D|>|d2−D|である場合には、移動局位置候補選択部104は移動局位置第2候補P2を移動局10の位置であるとして選択する。
簡易基地局選択部112は、移動局測位システム8において複数の簡易基地局13が存在する場合において、前記移動局位置候補選択部104の受信強度照合部106において用いられる簡易基地局13を選択する。簡易基地局選択部112は、受信強度比較部114および基地局位置比較部116を含んで構成される。
このうち、受信強度比較部114は、移動局10が電波を発信した場合に、その電波を受信した複数の簡易基地局13において、それぞれの受信強度測定部94において測定された受信電力Vrを比較する。そして、前記簡易基地局選択部112は、最も大きい受信電力Vrを測定した簡易基地局13を選択する。前述のように、簡易基地局13における受信電力Vrおよび電波を発信した前記移動局10と受信した簡易基地局13との距離Dとの関係は、前記式(3)あるいは図8に示すものであり、受信電力Vrが高いほど受信電力Vrに対する距離Dの分解能が高くなっており、受信電力Vrが高い簡易基地局13を用いたほうが前記受信強度照合部106における移動局10と簡易基地局13との推定距離Dの推定を精度よく行なうことができるためである。
また、基地局位置比較部116は、前記簡易基地局選択部112が簡易基地局13を選択する際に、簡易基地局13の位置座標と、前記簡易基地局選択部112によって選択されるのに適さない簡易基地局13の位置の集合である除外領域124とを比較する。そして、前記簡易基地局選択部112は、選択しようとする簡易基地局13が前記比較の結果除外領域124に存在する場合には、その簡易基地局13を選択せず、他の簡易基地局13を選択する。
なお、図2乃至図5の機能ブロック図においては、本発明の移動局の測位に関する制御作動に直接関係のない機能についてはその記載が省略されている。例えば図2乃至図5に記載の基地局12、移動局10、簡易基地局13、および測位サーバ14においては、図示しない電源が設けられ、各ブロックに対応する機器に対して必要となる電力が供給されている。
図7は前記基地局位置比較部116において用いられる除外領域124の例を説明する図である。図7に示すように、除外領域124は、前記第1基地局12Aと前記第2基地局12Bとを結ぶ直線を中心として、2×σrの帯状の領域となっている。ここで、σrは、前記受信強度照合部106において移動局10と簡易基地局との推定距離Dが推定され、簡易基地局と2つの位置候補それぞれとの距離d1、d2と比較する際において、推定距離Dに生じうる誤差を表す値である。これは、次のような理由によるものである。前述のように簡易基地局13として無線LANアクセスポイントを用いる様な場合には、電波の受信強度は256段階で評価されるので、各段階はそれぞれ一定の幅の受信電力Vrに対応することとなる。例えば、受信電力VrがV2であると評価された場合には、実際の受信電力Vrは図8のV2を中心とする幅ΔVのいずれかの値である。このような場合には、前記受信強度照合部106は、前記移動局10と簡易基地局13との推定距離DはΔD2の範囲のいずれかの値であると推定する。かかる場合において、前記移動局位置第1候補P1と前記簡易基地局13との距離d1および前記移動局位置第2候補P2と前記簡易基地局13との距離d2との差が比較的小さい場合には、前記移動局位置第1候補P1と前記簡易基地局13との距離d1および前記移動局位置第2候補P2と前記簡易基地局13との距離d2のいずれもが、前記ΔD2の範囲に含まれ、移動局位置候補選択部104は適切に移動局位置候補の選択を行なうことができなくなる。そこで、前記基地局位置比較部116は、前記移動局位置第1候補P1と前記簡易基地局13との距離d1および前記移動局位置第2候補P2と前記簡易基地局13との距離d2との差が比較的小さくなる可能性のある、簡易基地局13の位置を前記除外領域124として規定する。そして、簡易基地局112は前記除外領域124内にある簡易基地局13を選択しないことにより、前記移動局位置候補選択部104および受信強度照合部106による移動局位置候補の選択が適切に行なえるようにする。なお、推定距離Dに生じうる誤差σrとは、受信電力Vrに生じうる誤差と、受信電力と距離の関係より算出されるものであって、例えば、測位範囲から定められる受信電力の最小値Vmin=V2であったとすると、受信電力に生じうる誤差ΔVに対して、距離Dに生じうる最大の誤差はΔD2となり、この値がσrとして使用される。
図5に戻って、記憶部120は、いわゆるメモリなどの記憶手段であり、前述の移動局位置候補算出部102、移動局位置候補選択部104、簡易基地局選択部112等を実行する際に必要となる情報や、インタフェース部100を介して基地局12や簡易基地局13などから得られた情報を読み出し可能に記憶する。例えば、基地局12や簡易基地局13の位置に関する情報や、簡易基地局13における電波の受信強度に関する情報、基地局12における移動局10からの電波の発信時刻および受信時刻などが記憶される。
図9は、本実施例における移動局測位システム8の制御作動の概要を説明するフローチャートである。まず移動局位置候補算出部102の距離算出部103などに対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、各基地局12と移動局10との間の電波の伝搬時間ΔTi(i=1,2,…)が算出されるための伝搬時間算出ルーチンが実行される。
図10は、この伝搬時間算出ルーチンを説明するためのフローチャートである。まずSB1においては、測位サーバ14から各基地局12に対し、各基地局12の時計50および移動局10の時計78の時計合わせを行なうように指示が行なわれる。また、SB2においては、SB1において時計合わせを行なうように指示が行なわれた基地局12は、その無線部30を通して、移動局10に対し基地局12の時計50および移動局10の時計78の時計合わせを行なうように無線により指示を行なう。これは、本実施例においては測位サーバ14は無線部を有していないことから、測位サーバ14から移動局10への制御作動の指令は測位サーバ14と通信ケーブル20で接続されたいずれかの基地局12の無線部30を介して行なわれるためである。
各基地局12の時計同期部51に対応するSB3においては、各基地局12の時計50の時計合わせが行なわれる。すなわち、各基地局12間において電波の送受信が行われ、その送信と受信とのそれぞれにおける電波の伝搬時間に基づいて、各基地局12の時計50のずれが算出され、算出されたずれに対応して前記各基地局12の時計50の時刻が補正されることにより、各基地局12の時計50の時刻は同期させられる。また、いずれか1つの基地局12の時計同期部51および移動局10の時計同期部79に対応するSB4においては、前記移動局10の時計78といずれか1つの基地局12の時計50との時計合わせが行なわれる。すなわち、前記移動局10と前記いずれか1つの基地局12との間において電波の送受信が行われ、その送信と受信とのそれぞれにおける電波の伝搬時間に基づいて、前記移動局10の時計78と基地局12の時計50とのずれが算出され、算出されたずれに対応して前記移動局10の時計78あるいは前記いずれか1つの基地局12の時計50の時刻が補正されることにより、前記移動局10の時計78および前記いずれか1の基地局12の時計50の時刻は同期させられる。
図11は、SB4において実行される移動局10と前記いずれか1つの基地局12との間で行なわれる時計合わせの一例を説明するフローチャートである。基地局12の信号処理部32および無線部30に対応するSC1においては、基地局12の無線部から所定の拡散符号が移動局10に向けて発信されるとともに、その発信時刻tbtが記憶される。一方、移動局10の無線部60および同期検出部76に対応するSC2においては、SC1で基地局12から発信された拡散符号が受信され、受信した拡散符号を同期検出処理することにより受信時刻tmrが検出される。
続いて移動局10の信号処理部74および通信部60に対応するSC3においては、移動局10における発信時刻tmt、およびSC2において検出された受信時刻tmrを含む拡散符号が移動局10から基地局12に対して発信される。一方、基地局12の無線部30および同期検出部46に対応するSC4においては、SC3で移動局10から発信された拡散符号が受信され、受信した拡散符号を同期検出処理することにより受信時刻tbrが検出される。検出された受信時刻tbrは、SC3で移動局10から発信されSC4で受信された移動局10における発信時刻tmt、および受信時刻tmrとともに記憶される。
続くSC5乃至SC7は基地局12の時計同期部51に対応する。まず、SC5においては、往路、すなわち基地局12から移動局10への電波の伝搬時間t1および、復路、すなわち移動局10から基地局12への電波の伝搬時間t2とを、t1=tmr−tbt、t2=tbr−tmtのように算出する。そして、SC6においては、SC5において算出された往路の電波伝搬時間t1および復路の電波伝搬時間t2とに基づいて、移動局10の時計78と基地局12の時計50との時刻のずれtdを、td=(t2−t1)/2として算出する。そして、SC7においては、SC6において算出された移動局10の時計78と基地局12の時計50との時刻のずれtdだけ基地局12の時計50の時計を進める。このようにして、移動局10の時計78の時刻と基地局12の時計50の時刻とは同期されたものとなる。
図10に戻って、SB5においては、これらのSB3およびSB4の実行が完了したこと、すなわち、全ての基地局12の時計50の時刻と移動局10の時計78の時刻との同期が行なわれたことが、いずれかの移動局12から測位サーバ14に通知される。
続くSB6においては、測位サーバ14から移動局10の測位を実行するための指示が行なわれる。具体的には、測位サーバ14により、移動局10に対しては測位のための電波を発信する指示が行なわれるとともに、各基地局12および各簡易基地局13に対しては移動局10から発信される電波を受信するための待機を行なう指示がなされる。
SB7は、各基地局12において行なわれる判断であって、前記SB6における測位サーバ14から移動局10に対し測位のための電波を発信する指令を移動局10に対し無線により送信する指示が行なわれたか否かが判断される。前述のように、本実施例においては、測位サーバ14は無線により信号を送受信する機能を有していないため移動局10の作動を制御するための指示はいずれか1つの基地局12の無線部30を介して行なわれるが、本ステップにおいては、各基地局12において、自局が前記移動局10に対して測位サーバ14からの指示を無線により伝達する基地局12とされているかが判断される。本ステップの判断が肯定される場合には、自局が前記移動局10に対して測位サーバ14からの指示を無線により伝達するとして、続くSB8が実行される。一方、本ステップの判断が否定される場合には、移動局10からの発信される測位のための電波を受信するための待機が行なわれる。
SB8においては、前記SB7の判断が肯定された基地局12から移動局10に対し、測位のための電波を発信するための指示が無線部30を介して送信される。また、移動局10に対する送信が行なわれた基地局12においては、他の基地局12と同様に移動局10からの発信される測位のための電波を受信するための待機が行なわれる。一方、移動局10の無線部60に対応するSB9においては、いずれかの基地局12からSB8において送信される測位のための電波を発信するための指示が受信されるのが待機されている。そして、測位のための電波を発信するための指示が受信されると本ステップの判断が肯定され、続くSB10が実行される。
移動局10の信号処理部74、無線部60などに対応するSB10においては、測位サーバ14から測位のための電波を発信する指示を前記いずれかの基地局12を介して受信した移動局10によって、測位のための電波が発信される。この電波には、電波の発信時刻Ttに関する情報が含まれ、各基地局12において受信波の受信時刻の検出である同期検出に用いられる拡散符号で送信される。
各基地局12の無線部30などに対応するSB11においては、SB10において移動局10により発信された電波が受信される。なお、移動局10からの電波が受信されない場合には、くり返し本ステップSB11が実行され、電波の受信が行なわれる。
各基地局12の同期検出部46に対応するSB12においては、SB11において受信された移動局10からの電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号のレプリカ符号とを用いて同期検出が行なわれ、各基地局12における電波の受信時刻Trが検出される。また、同じく各基地局12の同期検出部46に対応するSB13においては、拡散符号の種類、あるいは電波に含まれる各移動局10を識別するための情報である移動局IDに基づいてSB11において受信された移動局10からの電波が、測位の対象である移動局10からのものであるのかが確認される。SB11において受信された移動局10からの電波が、測位の対象である移動局10からのものである場合には本ステップの判断が肯定され、続くSB14が実行される。伝搬時間算出部48に対応するSB14においては、SB11において受信された移動局10からの電波に含まれる電波の発信時刻と、SB12において検出された受信時刻とに基づいて、移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間が算出される。一方、SB11において受信された移動局10からの電波が、測位の対象である移動局10からのものでない場合には、測位の対象である移動局10からの電波を受信するまで、SB11以降がくり返し実行される。
一方、簡易基地局13の無線部92に対応するSB15においては、SB10において移動局10によって発信された電波が各簡易基地局13によって受信される。なお、移動局10からの電波が受信されない場合には、くり返し本ステップSB15が実行され、電波の受信が行なわれる。
簡易基地局13の受信強度測定部94に対応するSB16においては、SB15において受信された電波の受信強度である受信電力Vrが測定される。このとき、前記無線LANアクセスポイントが簡易基地局13として用いられる場合には、受信電力Vrは、それに対応したRSSI値として、例えば256段階に区分された出力とされてもよい。
続くSB17においては、測位サーバ14から各基地局12および各簡易基地局13に対し、測定結果を送信する指示がなされる。これを受け、SB18においては、SB16において測定された各簡易基地局13における電波の受信電力Vrが各簡易基地局13から測位サーバ14に送信され、また、SB19においては、SB14において算出された移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間が各基地局12から測位サーバ14に送信され、送信された情報は測位サーバ14の記憶部120に記憶される。
なお、簡易基地局13の作動に関するSB15、SB16、SB18については、厳密に言えば移動局10と各基地局12との間の電波の伝搬時間に関する作動ではなく、後述するSA3における移動局位置候補の選択に関する作動の一部である。しかしながら、移動局10から発信される電波の受信電力Vrを測定する際の移動局10からの電波として、本図のフローチャートに示すように、移動局10が測位のために発信する(SB10)電波を用いることにより、移動局10は簡易基地局13における受信電力Vrの測定のために改めて電波を発信する必要がない。
図9に戻って、SA2は移動局10の存在位置の候補を算出する移動局位置候補算出ルーチンが実行される。図12はこの移動局位置候補算出ルーチンの例を説明するフローチャートである。
距離算出部103に対応するSD1においては、前記SA1において各基地局12から送信された移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間ΔTiに基づいて、移動局10と各基地局12との距離Liが算出される。具体的には、前記電波の伝搬時間ΔTiに電波の速度cを乗ずることによって算出される。
続いて、移動局位置候補算出部102に対応するSD2乃至SD3においては、SD1において算出された移動局10と各基地局12との距離Liと、既知である各基地局12の位置とに基づいて、移動局10の存在する位置の候補Piを算出する。まずSD2においては、SD1において算出された移動局10と各基地局12との距離Liに基づいて、既知である各基地局12の位置についての情報と移動局10の位置を表す関係式が算出される。続くSD3においては、SD2において算出された関係式が移動局10の位置について解かれ、その解として複数の移動局位置候補が得られる。具体的には、SD2においては、前述の図6の例で言えば、第1基地局12Aの位置座標を(X1,Y1)、第2基地局12Bの位置座標を(X2,Y2)、位置を算出しようとする移動局10の位置を(x,y)、SD1において算出された前記第1基地局12Aと移動局10との距離L1および第2基地局12Bと移動局10との距離L2とを用いて、
(X1−x)2+(Y1−y)2=L1
(X2−x)2+(Y2−y)2=L2 …(1)
で表される式が算出される。そして、SD3においては、前記SD2で算出された前記式(1)を(x,y)について解くことにより、移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2を得る。
(X1−x)2+(Y1−y)2=L1
(X2−x)2+(Y2−y)2=L2 …(1)
で表される式が算出される。そして、SD3においては、前記SD2で算出された前記式(1)を(x,y)について解くことにより、移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2を得る。
図9に戻って、続くSA3においては、SA2において得られた複数の移動局位置候補のうち、実際の移動局10の位置として適したものを選択するための移動局位置候補選択ルーチンが実行される。図13は、この移動局位置候補選択ルーチンの一例を示したフローチャートである。SE1及びSE2は簡易基地局選択部112に対応するステップである。このうち、受信強度比較部114に対応するSE1においては、前記図10のSB15において移動局10からの電波を受信した簡易基地局13のうち、SB16において測定された受信電力Vrがもっとも大きい簡易基地局13が選択される。
続く基地局位置比較部13に対応するSE2においては、SE1で選択された簡易基地局13が除外領域124内に位置していないかが判断される。そして、SE1で選択された簡易基地局13が除外領域124内に位置していない場合には本ステップの判断が肯定され、続くSE3以降が実行される。一方、SE1で選択された簡易基地局13が除外領域124内に位置している場合には、本ステップの判断が否定され、再度SE1が実行され、それまでに選択されていない簡易基地局13のうち最も受信電力Vrが大きい簡易基地局13が選択される。
続くSE3およびSE4は受信強度照合部106に対応する。このうち、SE3においては、SE1で選択された簡易基地局13の位置についての情報と、図9のSA2において得られた移動局位置候補のそれぞれとの距離diが算出される。具体的には、図6の例でいえば、既知である簡易基地局13の位置(Xa,Ya)と、SA2で得られた移動局位置第1候補P1(x1,y1)、移動局位置第2候補P2(x2,y2)とに基づいて、移動局位置第1候補P1と簡易基地局13との距離d1、移動局位置第2候補P2(x2,y2)と簡易基地局13との距離d2が前記式(2)に基づいて算出される。
また、SE4においては、図10のSB16において測定された受信電力Vrの値から前記簡易基地局13と移動局10との推定距離D(m)が推定される。具体的には例えば、簡易基地局13の受信強度測定部94による受信電力Vrと簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとの関係式である前述の式(3)を用いて行なわれる。
移動局位置候補選択部104に対応するSE5においては、SE3において算出された複数の移動局位置候補のそれぞれと簡易基地局13との距離diと、SE4において算出された簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとを比較することにより、前記複数の移動局位置候補のうち、移動局10の位置として最も適当なものを選択する。具体的には例えば、移動局位置第1候補P1と簡易基地局13との距離d1、移動局位置第2候補P2(x2,y2)と簡易基地局13との距離d2のそれぞれと、簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとを比較し、移動局位置候補Piと簡易基地局との距離diが簡易基地局13と移動局10との推定距離Dの値に最も近くなる移動局位置候補Piが実際の移動局10の位置として選択される。
前述の実施例によれば、前記移動局位置候補算出部102により、前記複数の基地局12のうちの2つの基地局12の該受信時刻検出部(同期検出部)46において検出された移動局10からの電波の受信時刻に基づいて、該2つの基地局12のそれぞれと前記移動局10との間の電波の伝搬時間ΔTi(i=1,2)を算出し(SA1)、該算出された伝搬時間ΔTiおよび前記2つの基地局12の位置(X1,Y1),(X2,Y2)に基づいて前記移動局10の位置(x,y)の複数の候補である移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2が算出され(SA2)、前記移動局位置候補選択部104により、該移動局位置候補算出部102によって算出された前記移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2のうち、実際の移動局10の位置であると判断される候補が選択され前記移動局10の位置とされるので(SA3)、少なくとも2つの基地局12が存在すれば移動局10の位置の算出(測位)をおこなうことができる。
また、前述の実施例によれば、移動局測位システム8は、前記移動局10から発信された電波を受信し、その受信強度を測定する簡易基地局13を有し、前記移動局位置候補選択部104により、前記移動局位置候補算出部102によって算出された移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2のうち、前記簡易基地局13の受信強度測定部94によって測定された移動局10からの電波の受信強度である受信電力Vrに基づいて実際の移動局10の位置であると判断される候補が選択されるので(SE3〜SE5)、前記2つの基地局12に加え、少なくとも受信した電波の受信強度を測定する機能である受信強度測定部94を有する簡易基地局13を備えればよいので、全ての基地局12が前記電波の受信時刻検出部46を有する場合と比べてその導入費用を低減できる。
また、前述の実施例によれば、前記移動局位置候補選択部104は、前記移動局位置候補算出部102において用いる受信時刻を検出する2つの基地局12を通る直線に沿って設けられる除外領域124内に存在しない前記簡易基地局13を用いて移動局10の位置の候補を選択するので(SE2)、前記移動局位置候補算出部102によって算出された移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2から実際の移動局10の位置であると判断される候補をより正確に選択することができる。
また、前述の実施例によれば、前記移動局位置候補選択部104は、前記簡易基地局13が複数存在する場合には前記移動局10から発信された電波の受信強度である受信電力Vrが最も高い簡易基地局13を用いるので(SE1)、前記移動局位置候補算出部102によって算出された移動局位置の複数の候補である移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2から実際の移動局10の位置であると判断される候補をより正確に選択することができる。
また、前述の実施例によれば、前記簡易基地局13は無線LANアクセスポイントである。無線LANアクセスポイントは例えば受信電力の強度を256段階のRSSI値で出力することのできるIEEE802.11の規格などの規格に適合していることから、移動局の発信する電波をこの無線LANの規格に合ったものとすることにより、既存の無線LANアクセスポイントを受信強度測定部94を有する前記簡易基地局として用いることができる。
また、前述の実施例によれば、前記移動局位置候補算出部102によって、前記移動局10の発信部72における電波の発信時刻と前記複数の基地局12のそれぞれにおける前記受信時刻検出部(同期検出部)46によって検出される移動局10からの電波の受信時刻とに基づいて、前記移動局10と前記基地局12との間の電波の伝搬時間ΔTiが算出され(SB14)、該算出された伝搬時間ΔTiに基づいて前記基地局12と前記移動局10との距離Liが算出され(SD1)、該算出された距離Liに基づいて前記移動局位置の複数の候補として移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2が算出されるので(SD2〜3)、より短い時間で移動局位置の候補の算出を行なうことができる。
続いて、本発明の別の実施例について説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
本実施例は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例を説明するものである。本実施例においては、図14に示すように、移動局10が移動可能な領域として存在可能領域126が設定されている。これは例えば、移動局10が壁などで仕切られた室内を移動する場合など、移動局10の移動が制限されている場合に移動局10が移動可能な領域を表している。また、本実施例においては、移動局位置候補選択部104の作動が前述の実施例1と異なる。すなわち、移動局位置候補選択部104は前述の実施例1においては受信強度照合部106を有していたのに代えて、存在可能領域照合部108を有する(図5参照)。
存在可能領域照合部108は、移動局位置候補算出部102により算出された移動局の位置の候補と、前記存在可能領域126とを照合する。そして、移動局位置候補選択部104は、前記存在可能領域照合部108による照合の結果、前記存在可能領域126内にある前記移動局の位置の候補を、各基地局12における移動局10からの電波の受信時刻以外の移動局状態変数である、前記存在可能領域126の位置についての情報に基づいて選択し、実際の移動局10の位置であるとして選択する。
具体的には、図14の例で言えば、前記移動局位置候補算出部102によって算出された移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2と存在可能領域126とが図14に示すように値する場合において、存在可能領域照合部108は移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2の位置と存在可能領域126の位置とを照合する。すなわち、移動局位置第1候補P1は存在可能領域126の外にあり、移動局位置第2候補P2の位置は存在可能領域126の内側にあると照合する。そして移動局位置候補選択部104は、この照合の結果に基づいて、前記存在可能領域126の内側にあるとされた移動局位置第2候補P2を実際の移動局10の位置であるとして選択する。
前述のように、移動局位置候補算出部102は前述の式(1)を解くことにより移動局位置候補を算出することから、移動局位置候補としては移動局の位置候補の算出に用いる2つの基地局12を結ぶ直線を対象とする1対の候補が得られる。そのため、特に図14に示すように、移動局位置候補算出部102が移動局位置の算出に用いる2つの基地局である第1基地局12Aおよび第2基地局12Bが存在可能領域126の境界と重なるように設けられる場合には、移動局位置候補算出部102が算出する2つの移動局位置候補である移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2は、その一方が前記存在可能領域126の内側に、他方が前記存在可能領域126の外側に位置することとなる。そのため、移動局位置候補選択部104は容易に移動局位置候補の選択を行なうことができる。
なお、本実施例においては、移動局測位システム8は、前記図1に示す図において簡易基地局13を含まない構成となる。また、その移動局測位システム8を構成する基地局12、移動局10の構成はそれぞれ図2および図3に示したものが共通して用いられる。一方、測位サーバ14については簡易基地局選択部112は必要とされない他は、図5に示す構成が用いられる。
また、本実施例における移動局測位システム8の移動局測位のための制御作動を説明するフローチャートとしては、前述の実施例同様、図9に示すものが用いられる。このうち、ステップSA1およびSA2については、前述の実施例1と同様の手順により行なわれる。ただし、SA1において実行される伝搬時間算出ルーチンである図10のフローチャートにおいて、簡易基地局13に相当するステップは実行される必要がない。
図9のSA3においては、SA2において得られた複数の移動局位置候補のうち、実際の移動局10の位置として適したものを選択するための移動局位置候補選択ルーチンが実行される。図15は、本実施例におけるこの移動局位置候補選択ルーチンの一例を示したフローチャートである。まず、SF1においては、予め例えば測位サーバ14の記憶部120などに記憶された存在可能領域126についての情報が読み出される。
移動局位置候補選択部104および存在可能領域照合部108に対応するSF2においては、SF1で読み出された存在可能領域126についての情報と、SA2において算出された移動局位置候補についての情報とが照合され、前記移動局位置候補のうち、前記存在可能領域126の内部に存在する移動局位置候補が実際の移動局10の位置であるとして選択される。
本実施例によれば、前記移動局位置候補選択部104により、前記移動局位置候補算出部102によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局10が存在し得る領域である存在可能領域126の内部とされた候補が選択されるので(SF2)、予め移動局10が存在し得る存在可能領域126についての情報を得ておくことにより、容易に移動局位置の候補を選択することができる。また逆に、移動局位置候補算出部104によって算出される移動局位置の複数の候補の1つのみが前記移動局10が存在し得る存在可能領域126内となるように基地局12を配置することにより、前記移動局位置候補選択部104により移動局の位置の候補を1つに絞り込むことができる。
本実施例は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例を説明するものである。本実施例は、本発明の移動局測位システム8により移動局10の測位が例えば所定の間隔で繰り返し行なわれる場合に用いられる。本実施例においては、移動局位置候補選択部104の作動が前述の実施例1と異なる。すなわち、移動局位置候補選択部104は前述の実施例1および実施例2においては受信強度照合部106および存在可能領域照合部108を有していたのに代えて、履歴情報照合部110を有する(図5参照)。
本発明において、測位サーバ14の記憶部120は、移動局測位システム8により移動局10の測位が例えば所定の間隔で繰り返し行なわれる場合において、過去に移動局位置候補選択部104により移動局10の位置であるとして選択された位置およびその測位の行なわれた時刻についての情報(以下「移動履歴情報」という)を所定の回数分だけ記憶する。
また、履歴情報照合部110は、前記記憶部120において記憶された前記移動履歴情報に基づいて、現在の移動局10の位置を予測する。そして、予測された現在の移動局10の予測位置と前記移動局位置候補算出部102によって算出された複数の移動局位置候補とを照合する。そして、移動局位置候補選択部104は、この照合の結果、前記移動局10の予測位置と最も近い位置にある移動局位置候補を現在の移動局10の位置であるとして選択する。すなわち、移動局位置候補選択部104は、移動局位置候補算出部102によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、実際の移動局10の位置であると判断される候補を各基地局12における移動局10からの電波の受信時刻以外の定常的に取得される移動局状態変数である、現在の移動局10の予測位置に基づいて選択する。
図16は、このときの履歴情報照合部110および移動局位置候補選択部104の作動を説明する図である。図16において、前記移動局位置候補算出部102によって第1算出された移動局位置の複数の候補は移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2である。一方、点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4はそれぞれ、現在より1回乃至4回前に行なわれた移動局10の測位における移動局10の位置であるとされた位置を表している。前記履歴情報照合部110は、前記点qt−1、点qt−2、点qt−3、点qt−4の位置に基づいて、現在の移動局10の予測位置qt(xe,ye)を予測する。そして、予測された移動局10の予測位置qtと移動局位置第1候補P1の距離de1、および移動局10の予測位置qtと移動局位置第2候補P2のそれぞれとの距離de2をそれぞれ算出する。移動局位置候補選択部104は算出された距離de1および距離de2を比較し、この距離がより小さくなる移動局位置候補を実際の移動局10の位置であるとして選択する。すなわち、図16の例であれば、de1>de2であるので、より小さい距離であるde2に対応する移動局位置である移動局位置第2候補P2を実際の移動局10の位置であるとして選択する。
具体的には、履歴情報照合部110は、例えば以下のようにして現在の移動局の予測位置qt(xe,ye)を予測する。現在の移動局の予測位置qtにおける移動局10の移動速度をvt、加速度をatとし、同様に、過去1回前の測位の際の移動局10の位置qt−1における移動局10の移動速度をvt−1、加速度をat−1、過去2回前の測位の際の移動局10の位置qt−2における移動局10の移動速度をvt−2、加速度をat−2、過去3回前の測位の際の移動局10の位置qt−3における移動局10の移動速度をvt−3、加速度をat−3、過去4回前の測位の際の移動局10の位置qt−4における移動局10の移動速度をvt−4、加速度をat−4とする。このとき、現在の加速度は過去2回における測位の際における移動局10の移動加速度の平均であるとすると、その関係は次式(4)で表される。
at=(at−1+at−2)/2 …(4)
で表される。このとき、移動局測位システム8による測位が微小時間で反復して行なわれている場合には、ある測位の際における移動局10の移動加速度atは、その測位の際における移動局10の移動速度vtと1回前の測位の際における移動局10の移動速度vt−1とを用いて、at=vt−vt−1と表され、またある測位の際における移動局10の移動速度vtは、その測位の際における移動局10の位置qtと1回前の測位の際における移動局10の位置qt−1とを用いて、vt=qt−qt−1と表されることから、前記式(4)は、
vt−vt−1=((vt−1−vt−2)+(vt−2−vt−3))/2
(qt−qt−1)−(qt−qt−1)
=(((qt−1−qt−2)+(qt−2−qt−3))+((qt−2−qt−3)+(qt−3−qt−4))/2
と順次書き換えられる。これをqtについて整理すると、
qt=(5qt−1−3qt−2−qt−3+qt−4)/2
となる。このようにして、現在の移動局10の予測位置qtを算出する。
at=(at−1+at−2)/2 …(4)
で表される。このとき、移動局測位システム8による測位が微小時間で反復して行なわれている場合には、ある測位の際における移動局10の移動加速度atは、その測位の際における移動局10の移動速度vtと1回前の測位の際における移動局10の移動速度vt−1とを用いて、at=vt−vt−1と表され、またある測位の際における移動局10の移動速度vtは、その測位の際における移動局10の位置qtと1回前の測位の際における移動局10の位置qt−1とを用いて、vt=qt−qt−1と表されることから、前記式(4)は、
vt−vt−1=((vt−1−vt−2)+(vt−2−vt−3))/2
(qt−qt−1)−(qt−qt−1)
=(((qt−1−qt−2)+(qt−2−qt−3))+((qt−2−qt−3)+(qt−3−qt−4))/2
と順次書き換えられる。これをqtについて整理すると、
qt=(5qt−1−3qt−2−qt−3+qt−4)/2
となる。このようにして、現在の移動局10の予測位置qtを算出する。
なお、本実施例においては、移動局測位システム8は、前記図1に示す図において簡易基地局13を含まない構成となる。また、その移動局測位システム8を構成する基地局12、移動局10の構成はそれぞれ図2および図3に示したものが共通して用いられる。一方、測位サーバ14については簡易基地局選択部112は必要とされない他は、図5に示す構成が用いられる。
また、本実施例における移動局測位システム8の移動局測位のための制御作動を説明するフローチャートとしては、前述の実施例同様、図9に示すものが用いられる。このうち、ステップSA1およびSA2については、前述の実施例1と同様の手順により行なわれる。ただし、SA1において実行される伝搬時間算出ルーチンである図10のフローチャートにおいて、簡易基地局13に相当するステップは実行される必要がない。
図9のSA3においては、SA2において得られた複数の移動局位置候補のうち、実際の移動局10の位置として適したものを選択するための移動局位置候補選択ルーチンが実行される。図17は、本実施例におけるこの移動局位置候補選択ルーチンの一例を示したフローチャートであって、履歴情報照合部110および移動局位置候補選択部104に対応するものである。まず、SG1においては、例えば測位サーバ14の記憶部120などに記憶された過去の移動局10の移動履歴情報に基づいて、現在の移動局10の位置が予測される。
続くSG2においては、SG1で予測された現在の移動局10の位置qtと、SA2において算出された移動局位置候補、例えば移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2についての情報とが参照され、これらの移動局位置候補P1、P2のそれぞれと、前記SG1で予測された現在の移動局10の位置qtとの距離が算出される。そして、SG3においては、算出された移動局位置候補P1、P2のそれぞれと、前記SG1で予測された現在の移動局10の位置qtとの距離が比較され、これらの距離のうちより短い距離を生ずる移動局位置候補が実際の移動局10の位置であるとして選択される。
前述の実施例によれば、前記移動局位置候補選択部104により、前記移動局位置候補算出部102によって算出された前記移動局10の位置の複数の候補である移動局位置第1候補P1および移動局位置第2候補P2のうち、前記移動局の移動履歴情報に基づいて実際の移動局10の位置qtであると判断される候補が選択されるので、前記移動局10の移動履歴から予測される現在の移動局の位置qtに基づいて移動局位置の候補が選択される。
本実施例は、本発明の移動局測位システム8の別の実施例を説明するものである。本実施例においては、移動局位置候補算出部102の距離算出部103において参照される移動局10と各基地局12との間の電波の伝搬時間の算出方法が前述の実施例1乃至3のものと異なる。すなわち、前述の実施例1乃至3においては、移動局10から各基地局12に対して電波を発信し、その電波の移動局10における発信時刻と各基地局12における受信時刻とに基づいて電波の伝搬時間を算出し、算出された電波の伝搬時間に基づいて移動局10と各基地局12との距離を算出した。このように移動局10における発信時刻と各基地局12における受信時刻とに基づいて電波の伝搬時間を算出する場合には、移動局10の時計78の時刻と各基地局12の時計50のそれぞれの時刻とが同期されている必要があり、前述の実施例1においては、例えば図11のフローチャートに示す手順を実行することにより移動局10の時計78の時刻と各基地局12の時計50のそれぞれの時刻とが同期される必要があった。
本実施例においては、移動局10の時計78と各基地局12の時計50のそれぞれとの時計合わせ処理を不要とするものである。図18は、本実施例における基地局12の機能の要部を説明するための機能ブロック図であって、図2に対応するものである。本図18に示された基地局12と図2に示された基地局12とを比較すると、本図18に示された基地局12は図2に示された基地局12が有していた時計同期部51を有さない点において異なる。これは、後述するように、本実施例においては、各基地局12は自局の発信部36による電波の発信時刻と自局の受信部42による電波の受信時刻とに基づいて電波の伝搬時間を算出することから、自局の時計50と他の基地局12の時計50とを時計合わせする必要がないためであり、また、後述するように本実施例においては移動局10は時計を有する必要がないため、移動局10の時計との時計合わせを行なう必要がないためである。
また、図2においては無線部30の発信部36および受信部42とが共通するアンテナ38を用いて電波の送受信を行なっていたのに対し、本図18においては発信部36は発信用アンテナ38aを、受信部42は受信用アンテナ38bをそれぞれ有する点において異なる。これは、本実施例、すなわち本図18において変調部34が変調し発信部36が発信する電波と受信部42が受信する電波とは、電波の特性、例えば周波数が異なるものとされるので、発信部36が発信する電波の特性および受信部42が受信する電波の特性のそれぞれに合致したアンテナとして発信用アンテナ38aおよび受信用アンテナ38bを用いるためである。
また、基地局12における伝搬時間算出部48は、前述の実施例においては、移動局10から各基地局12に発信される電波の移動局10における発信時刻と、その電波について各基地局12の同期検出部46によって検出される受信時刻とに基づいて移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間が算出されたが、本実施例においては、移動局10は後述するように受信した電波を電波の特性を変更して返信するものとされているので、各基地局12から移動局10に向けた電波の各基地局12における発信時刻と、移動局10から各基地局12に向けて返信される電波について各基地局12の同期検出部46によって検出される受信時刻、および予め既知とされている移動局10における返信のための処理に要する時間に基づいて電波の伝搬時間を算出する。具体的には、各基地局12から移動局10に向けた電波の各基地局12における発信時刻TTから移動局10から各基地局12に向けて発信される電波の移動局10における受信時刻TRまでの時間は、電波が各基地局12と移動局10との間を往復するのに要する時間(往復伝搬時間)と移動局10における返信のための処理に要する時間TPの合計であることから、伝搬時間ΔTは、ΔT=(TR−TT−TP)/2の関係にある。伝搬時間算出部48はこの関係に基づいて伝搬時間ΔTを算出する。その他のブロックについてはその作動の内容は図2に記載したものと同様であるので説明を省略する。
図19は、本実施例における移動局10の機能の要部を説明するための機能ブロック図であって、図3に対応するものである。本図19に示された移動局10と図3に示された移動局10とを比較すると、本図19に示された移動局10は、無線部60、受信用アンテナ62a、発信用アンテナ62bを有して構成されている。そして、この無線部60は、図3に示した移動局10と同様に受信部64、復調部68、変調部70、および発信部72を有する。これらのうち、受信部64、復調部68、および発信部72の機能は図3に示したものと同様であるので説明を省略する。一方、変調部70は、復調部68によって復調されることにより受信波から取りだされた信号波を、受信部64において受信する受信波とは電波の特性、例えば周波数が異なる搬送波を用いて変調し、送信波を生成する。このようにして移動局10の無線部60が構成されるので、移動局10の無線部は、所定の電波の特性、例えば周波数の受信波を受信すると、その受信波に含まれる信号波の内容を変更することなく、前記電波の特性、例えば周波数のみを変更した電波を返信する作動を行なう。そのため、移動局10の復調部68および変調部70を電波変換部66とよぶ。この電波変換部66が返信部に対応する。
また、前述のように、受信部64が受信する受信波と、発信部72が発信する発信波とはその電波の特性、例えば周波数が異なるものであるので、受信部64が受信に用いる受信用アンテナ62aと、発信部72が発信に用いる発信用アンテナ62bとは、その電波の特性に適したものが別個に設けられる。この点、受信部64と発信部72とが同一のアンテナを用いて電波の送受信を行なった前述の実施例(図3)とは異なる。
また、基地局12の発信部36が発信する電波の特性と、移動局10の受信部64が受信する電波の特性は同じものとされ、移動局10の発信部72が発信する電波の特性と、基地局12の受信部42が受信する電波の特性は同じものとされる。
本実施例においても、移動局測位システム8の制御作動の概要を説明するフローチャートとして、例えば図9のフローチャートが用いられる。このうち、まず移動局位置候補算出部102の距離算出部103などに対応するステップ(以下「ステップ」を省略する。)SA1においては、各基地局12と移動局10との間の電波の伝搬時間ΔTi(i=1,2,…)が算出されるための伝搬時間算出ルーチンが実行される。
図20は、本実施例における伝搬時間算出ルーチンを説明するためのフローチャートである。まずSH1においては、測位サーバ14から各基地局12に対し、電波の伝搬時間を測定するための指示が、また、各簡易基地局13に対しては移動局10から発信される電波の受信強度である受信電力Vrを測定するための指示が行なわれる。
基地局12の信号処理部32および無線部30などに対応するSH2においては、基地局12から移動局10に対して例えば予め定められた内容の拡散符号を含む電波を発信するとともに、その発信時刻TTが記憶される。移動局10の電波変換部66に対応するSH3およびSH4においては、まず、SH3において移動局10において受信された電波が自局に宛てて発信されたものであるかが確認される。自局に宛てたものである場合には、本ステップの判断が肯定され、SH4以降が実行される。一方、自局に宛てたものでなかった場合には、本ステップの判断が否定され、引き続き受信が行なわれる。
続くSH4においては、受信した電波に含まれていた信号波の内容が保持されたまま、受信波の電波の特性である周波数とは異なる周波数の搬送波からなる返信波が生成され、移動局10から基地局12に発信される。
各基地局12の無線部30などに対応するSH5においては、SH4において移動局10により発信された返信波が受信される。なお、移動局10からの電波が受信されない場合には、くり返し本ステップSH5が実行され、電波の受信が行なわれる。
各基地局12の同期検出部46に対応するSH6においては、SH5において受信された移動局10からの電波に含まれる拡散符号と、その拡散符号のレプリカ符号とを用いて同期検出が行なわれ、各基地局12における電波の受信時刻TRが検出される。また、同じく各基地局12の同期検出部46に対応するSH7においては、拡散符号の種類、あるいは電波に含まれる移動局IDに基づいてSH5において受信された移動局10からの電波が、測位の対象である移動局10からのものであるのかが確認される。SH5において受信された移動局10からの電波が、測位の対象である移動局10からのものである場合には本ステップの判断が肯定され、続くSH8が実行される。伝搬時間算出部48に対応するSH8においては、SH2において移動局10へ発信された電波の発信時刻TTと、SH6において検出された受信時刻TRと、例えば実験やシミュレーションなどにより予め得られているSH4における電波の変換に要する時間TPに基づいて、移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間ΔTが算出される。一方、SH5において受信された移動局10からの電波が、測位の対象である移動局10からのものでない場合には、測位の対象である移動局10からの電波を受信するまで、SH5以降がくり返し実行される。
このSH2乃至SH8のステップが基地局12の数だけ反復して行なわれることにより、各基地局12のそれぞれにおける各基地局12から移動局10へ発信される電波の発信時刻TT、および移動局10から各基地局12へ返信される返信波の各基地局12における受信時刻TRとが測定され、伝搬時間ΔTが算出される。
一方、簡易基地局13の無線部92に対応するSH9においては、SH4において移動局10によって発信された返信波が各簡易基地局13によって受信される。なお、移動局10からの電波が受信されない場合には、くり返し本ステップSH9が実行され、電波の受信が行なわれる。
簡易基地局13の受信強度測定部94に対応するSH10においては、SH9において受信された電波の受信強度である受信電力Vrが測定される。このとき、前記無線LANアクセスポイントが簡易基地局13として用いられる場合には、受信電力Vrは例えば256段階に区分された出力とされてもよい。
続くSH11においては、測位サーバ14から各基地局12および各簡易基地局13に対し、測定結果を送信する指示がなされる。これを受け、SH12においては、SH10において測定された各簡易基地局13における電波の受信電力Vrが各簡易基地局13から測位サーバ14に送信され、また、SH13においては、SH8において算出された移動局10から各基地局12への電波の伝搬時間が各基地局12から測位サーバ14に送信され、送信された情報は測位サーバ14の記憶部120に記憶される。そして、図9へ戻って、SA2以降が、前述の実施例1乃至3と同様にして実行される。
なお、前述のようにSH2乃至SH8のステップは基地局12の数だけ反復して行なわれるが、移動局10の発信部72の出力は一定とされていれば、簡易基地局13の作動に関するSH9、SH10、SH12については、反復されて行なわれるSH2乃至SH8のステップに含まれるいずれかのSH4において移動局10から発信される電波について行なえばよい。また、簡易基地局13の作動に関するSH9、SH10、SH12については、厳密に言えば移動局10と各基地局12との間の電波の伝搬時間に関する作動ではなく、前述したSA3における移動局位置候補の選択に関する作動の一部である。しかしながら、移動局10から発信される電波の受信電力Vrを測定する際の移動局10からの電波として、本図のフローチャートに示すように、移動局10が測位のために発信する(SH10)電波を用いることにより、移動局10は簡易基地局13における受信電力Vrの測定のために改めて電波を発信する必要がない。
本実施例によれば、前記移動局位置候補算出部102によって、前記基地局12の発信部36における移動局10に向けた電波の発信時刻TTと、前記受信時刻検出部46によって検出される移動局10からの返信のための電波の受信時刻TRと、前記移動局10の電波変換部66(返信部)において処理に要した時間TPとに基づいて、前記基地局12と前記移動局10との間の電波の往復に要する往復伝搬時間2×ΔTが算出され、該算出された往復伝搬時間2×ΔTに基づいて前記基地局12と前記移動局10との距離Lが各基地局12について算出され、該算出された距離Lに基づいて前記移動局10の位置の複数の候補が算出されるので、移動局10は時計を有する必要がなく、また各基地局12がそれぞれ有する時計50の時刻合わせが行なわれる必要がない。また、移動局は送受信部と電波変換部のみの簡易な構成とすることができる。これにより、例えば移動局の小型化や移動局コストの低減、バッテリー寿命の延長等の効果が実現できる。
なお、本実施例4の実施態様は、前述の実施例1における伝搬時間の算出方法を変更するものとして説明したが、前述の実施例2または実施例3に対してに適用されることも可能である。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例においては、移動局10は平面を移動するものとして説明がされたが、3次元空間を移動する場合においても、基地局12の数を1つ増やし、3つの基地局12とすることにより同様に適用可能である。
また、前述の実施例1乃至3においては、移動局位置候補選択部104の機能として、それぞれ受信強度照合部106、存在可能領域照合部108、および履歴情報照合部110を有する場合について説明したが、これらを組み合わせた実施態様としても良い。すなわち、移動局位置候補選択部104が受信強度照合部106、存在可能領域照合部108、および履歴情報照合部110の複数を有し、それぞれの照合結果を組み合わせて移動局位置候補の選択を行なってもよい。
また、前述の実施例1においては、簡易基地局選択部112は、受信強度比較部114によって比較される各簡易基地局13における受信電力Vrの大きさを比較し(SE1)、および基地局位置比較部116により選択された簡易基地局13の位置を除外領域124と比較することにより(SE2)、簡易基地局13を選択したが、このような態様に限られない。例えば、基地局位置比較部116による簡易基地局13の位置と除外領域124との比較をまず行い、この比較の結果、除外領域124の外側に存在する簡易基地局が1つであるような場合には受信強度比較部114による受信電力Vrの比較を行なうことなく簡易基地局112によって簡易基地局13が選択される。
また、前述の実施例においては、測位サーバ14が設けられ、移動局位置候補算出部102、移動局位置候補選択部104、および簡易基地局選択部112は測位サーバ14に設けられたが、このような態様に限られない。例えば、移動局位置候補算出部102の距離算出部103は各基地局12に設けられても良いし、また、移動局位置候補算出部102、移動局位置候補選択部104、および簡易基地局選択部112がいずれかの基地局12に設けられ、測位サーバ14が設けられなくてもよい。すなわち、測位サーバ14は必須の構成ではない。
前述の実施例において、移動局位置候補算出部102によって移動局10の位置の候補が算出される場合において、算出された移動局位置候補が算出に用いた第1基地局12Aおよび第2基地局12Bを結ぶ直線上にある場合には、移動局位置候補は1つしか算出されないので、移動局位置候補選択部104による選択を行なうことなく、実際の移動局10の位置として採用される。
また、前述の実施例においては、簡易基地局選択部112によって選択された1つの簡易基地局13を用いて、受信強度照合部106は、前記移動局位置第1候補P1と前記簡易基地局13との距離d1および前記移動局位置第2候補P2と前記簡易基地局13との距離d2のそれぞれと、前記簡易基地局13と移動局10との推定距離Dとを照合し、移動局位置候補選択部104は、前記簡易基地局13と前記移動局位置候補算出部102によって算出された複数の移動局位置候補との距離のうち、前記推定された距離Dに最も近い距離となる前記移動局位置候補を移動局10の位置であるとして選択したが、このような態様に限られず、以下のようにして、簡易基地局選択部112によって複数の簡易基地局13を選択し、選択された複数の簡易基地局13における受信電力Vrを考慮して移動局位置候補選択部104が移動局位置候補の選択を行なうことも可能である。
すなわち、簡易基地局選択部112によって選択された複数の簡易基地局13のそれぞれの簡易基地局13iについて、各簡易基地局13iにおける受信電力Vrに基づいて推定される移動局10と各簡易基地局13iとの推定距離Diと、前記移動局位置第1候補P1と各簡易基地局13iのそれぞれとの距離d1iおよび前記移動局位置第2候補P2と各簡易基地局13iとの距離d2iのそれぞれに基づいて、前記移動局位置第1候補P1が実際の移動局10の位置である確率p1iおよび前記移動局位置第2候補P2が実際の移動局10の位置である確率p2iとを算出する。ここで、前記移動局位置第1候補P1が実際の移動局10の位置である確率p1iおよび前記移動局位置第2候補P2が実際の移動局10の位置である確率p2i は、移動局10と各簡易基地局13iとの推定距離Diと前記移動局位置第1候補P1と各簡易基地局13iのそれぞれとの距離d1iの差の逆数、および移動局10と各簡易基地局13iとの推定距離Diと前記移動局位置第2候補P2と各簡易基地局13iのそれぞれとの距離d2iの差の逆数に比例するものであるので、次式(5)で表される。
p1i=(1/(|d1i−Di|))/((1/(|d1i−Di|))+(1/(|d2i−Di|)))=(|d2i−Di|)/((|d1i−Di|)+(|d2i−Di|))
p2i=(1/(|d2i−Di|))/((1/(|d1i−Di|))+(1/(|d2i−Di|)))=(|d1i−Di|)/((|d1i−Di|)+(|d2i−Di|)) …(5)
p1i=(1/(|d1i−Di|))/((1/(|d1i−Di|))+(1/(|d2i−Di|)))=(|d2i−Di|)/((|d1i−Di|)+(|d2i−Di|))
p2i=(1/(|d2i−Di|))/((1/(|d1i−Di|))+(1/(|d2i−Di|)))=(|d1i−Di|)/((|d1i−Di|)+(|d2i−Di|)) …(5)
このようにして、各簡易基地局13iごとに算出された前記移動局位置第1候補P1が実際の移動局10の位置である確率p1iおよび前記移動局位置第2候補P2が実際の移動局10の位置である確率p2i のそれぞれを、掛け合わせることによって、前記移動局位置第1候補P1が実際の移動局10の位置である確率を評価する確率評価値PE1および前記移動局位置第2候補P2が実際の移動局10の位置である確率を評価する確率評価値PE2 を算出する。すなわち、
PE1=Πip1i
PE2=Πip2i
である。そして、このようにして算出された前記移動局位置第1候補P1についての確率評価値PE1と前記移動局位置第2候補P2についての確率評価値PE2とを比較し、その確率評価値PEが大きくなる方の移動局位置候補を実際の移動局10の位置として選択する。例えば、PE1>PE2である場合には、移動局位置第1候補P1を実際の移動局10の位置として選択することもできる。
PE1=Πip1i
PE2=Πip2i
である。そして、このようにして算出された前記移動局位置第1候補P1についての確率評価値PE1と前記移動局位置第2候補P2についての確率評価値PE2とを比較し、その確率評価値PEが大きくなる方の移動局位置候補を実際の移動局10の位置として選択する。例えば、PE1>PE2である場合には、移動局位置第1候補P1を実際の移動局10の位置として選択することもできる。
また、前述の実施例においては、測位システム8が1つの移動局10を有する場合を説明したが、これに限られず、複数の移動局10が存在する場合においても、各移動局の測位をそれぞれ行なうことができる。この場合、測位の対象とする移動局ごとに異なる拡散符号を用いて移動局10と基地局12とが通信を行なうことにより、各移動局10を識別し得る(例えば、図10のSB9およびSB13を参照)。
また、前述の実施例においては、履歴情報照合部110は過去2回の測位の際における移動局の移動加速度に基づいて現在の移動局10の位置を予測したが、これに限られず、例えば、過去1回の測位の際における移動局10の速度と測位の実行間隔に基づいて予測してもよい。
また、前述の実施例においては、除外領域124は、電波の受信強度Vrから推定される推定距離Dに生じ得る誤差σrを用いて、2×σrの幅を有するものとされたが、これに限られない。例えば、簡易基地局13の受信強度測定部94による受信強度の測定において、その分解能が比較的劣る場合には、前記除外領域124の幅を大きくすることにより、前記移動局位置候補選択部104および受信強度照合部106による移動局位置候補の選択が適切に行なわれるようにすることができる。
また、前述の実施例4においては、移動局の復調部68および変調部70が電波変換部66を構成したが、このような態様に限られない。すなわち、電波変換部66は、受信波に含まれる信号波の内容を変更することなく電波の特性を変換し得る機能を有すればよく、例えば、周知の周波数変換器であってもよい。あるいは、基地局12から移動局10へ送信される電波と、移動局10から基地局12へ送信される電波とが、例えば垂直偏波と水平偏波、あるいは右旋偏波と左旋偏波などのように、異なる偏波特性を有するものとされてもよく、この場合、移動局10の例えば水平偏波を受信する受信用アンテナ62aと、前記水平偏波とは異なる偏波特性である例えば垂直偏波を発信する発信用アンテナ62bが実質的に電波変換部66を構成する。
8:移動局測位システム
10:移動局
12:基地局
13:簡易基地局(無線LANアクセスポイント)
36:(基地局の)発信部
42:(基地局の)受信部
46:基地局の受信時刻検出部(同期検出部)
48:伝搬時間算出部
50:(基地局の)時計
51:(基地局の)時計同期部
64:(移動局の)受信部
66:返信部(電波変換部)
72:(移動局の)発信部
78:(移動局の)時計
79:(移動局の)時計同期部
94:受信強度測定部
102:移動局位置候補算出部
104:移動局位置候補選択部
106:受信強度照合部
108:存在可能領域照合部
110:履歴情報照合部
124:除外領域
126:存在可能領域
10:移動局
12:基地局
13:簡易基地局(無線LANアクセスポイント)
36:(基地局の)発信部
42:(基地局の)受信部
46:基地局の受信時刻検出部(同期検出部)
48:伝搬時間算出部
50:(基地局の)時計
51:(基地局の)時計同期部
64:(移動局の)受信部
66:返信部(電波変換部)
72:(移動局の)発信部
78:(移動局の)時計
79:(移動局の)時計同期部
94:受信強度測定部
102:移動局位置候補算出部
104:移動局位置候補選択部
106:受信強度照合部
108:存在可能領域照合部
110:履歴情報照合部
124:除外領域
126:存在可能領域
Claims (9)
- 移動局が発信する電波を複数の基地局で受信し、該複数の基地局における受信結果に基づいて移動局の位置を算出する移動局測位システムであって、
電波を発信する発信部を有する移動局と、
前記移動局から発信された電波を受信する受信部と、該受信部により発信された電波の受信時刻を検出する受信時刻検出部とを、有する複数の基地局と、
前記複数の基地局のうちの2つの基地局の該受信時刻検出部において検出された移動局からの電波の受信時刻に基づいて、該2つの基地局のそれぞれと前記移動局との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間および前記2つの基地局の位置に基づいて前記移動局位置の複数の候補を算出する移動局位置候補算出部と、
該移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、実際の移動局の位置であると判断される候補を、受信時刻以外の定常的に取得される移動局状態変数に基づいて選択し、前記移動局の位置とする移動局位置候補選択部と
を、有することを特徴とする移動局測位システム。 - 前記移動局から発信された電波を受信し、その受信強度を測定する簡易基地局を有し、
前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記簡易基地局によって測定された移動局からの電波の受信強度に基づいて実際の移動局の位置であると判断される候補を選択すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。 - 前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部において用いる受信時刻を検出する2つの基地局を通る直線に沿って設けられた除外領域内に存在しない前記簡易基地局を用いて移動局の位置の候補を選択するものであること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。 - 前記移動局位置候補選択部は、前記簡易基地局が複数存在する場合には前記移動局から発信された電波の受信強度が最も高い簡易基地局を用いること
を特徴とする請求項2に記載の移動局測位システム。 - 前記簡易基地局は、電波受信部と、該電波受信部における電波の受信強度を測定する受信強度測定部とを備えた無線LANアクセスポイントであること
を特徴とする請求項2乃至4のいずれか1に記載の移動局測位システム。 - 前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局が存在し得る領域内とされた候補を選択すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。 - 前記移動局位置候補選択部は、前記移動局位置候補算出部によって算出された前記移動局位置の複数の候補のうち、前記移動局の移動履歴に基づいて実際の移動局の位置であると判断される候補を選択すること
を特徴とする請求項1に記載の移動局測位システム。 - 前記基地局は、電波を発信する発信部を有し、
前記移動局は、前記基地局から発信された電波を受信する受信部と、該受信部により受信された電波に対応して返信のための電波を生成する返信部とを、有し、
前記移動局位置候補算出部は、前記基地局の発信部における移動局に向けた電波の発信時刻と、前記受信時刻検出部によって検出される移動局からの返信のための電波の受信時刻と、前記移動局の返信部において処理に要した時間とに基づいて、前記基地局と前記移動局との間の電波の往復に要する往復伝搬時間を算出し、該算出された往復伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との距離を算出し、該算出された距離に基づいて前記移動局位置の複数の候補を算出すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の移動局測位システム。 - 前記移動局および複数の基地局はそれぞれその時刻が同期された時計を有し、
前記移動局位置候補算出部は、前記移動局の発信部における電波の発信時刻と前記複数の基地局のそれぞれにおける前記受信時刻検出部によって検出される移動局からの電波の受信時刻とに基づいて、前記移動局と前記基地局との間の電波の伝搬時間を算出し、該算出された伝搬時間に基づいて前記基地局と前記移動局との距離を算出し、該算出された距離に基づいて前記移動局位置の複数の候補を算出すること、
を特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の移動局測位システム。
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