JP2009084437A - 射出成形用硬化性組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】
本発明の課題は、射出成形可能な優れた作業性および良好な離型性を有するとともに、透明性に優れ、硬度が高く、線膨張が低いといった特徴をも有する硬化物を与えうる射出成形用硬化性組成物を提供することである。
【解決手段】
(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、および、(D)離型剤を必須成分として含有する硬化性組成物であって、前記硬化性組成物を硬化してなる硬化物はガラス転移点が70℃以上であり、かつ、硬化物(3mm厚)の波長400nmにおける光線透過率が60%以上である、射出成形用硬化性組成物。
【選択図】 なし

Description

本発明は、一般的な射出成形に適用可能な硬化性組成物に関するものである。さらに詳しくは、射出成形機および金型全般に適用可能な、優れた作業性を示し、かつ、良好な離型性を有する上に、透明性に優れ、耐熱変色性に優れ、硬度が高く、線膨張の低い硬化物を与えうる硬化性組成物に関する。
従来、LEDや受光素子等の光半導体に用いられるレンズ等の光学材料として、熱可塑性樹脂が使用され、熱可塑性樹脂を大量生産に向いた射出成形等の機械を用いて光学部品は製造されてきた。これらの光学部品を使用したモジュールを基板に実装する際にハンダを利用されることが多いが、近年の環境に対する配慮から、鉛フリーハンダの使用率が上昇してきている。そのため、製造された光学部品が高温にさらされるようになっている。しかし、熱可塑性樹脂ではハンダ実装時に対する耐熱性が不足するために、光学部品が変色したり、変形したりすることで、初期に設定された光学特性が維持できないという問題が生じている。
このため、熱硬化性樹脂を用いて光学部品を製造することが試みられている。近年、光学部品にあたる光の波長が短くなり、かつ、光の強度もますます強くなっているため、耐熱性に優れたシリコーン樹脂を用いて光学部品を製造することが提案されている。例えば、特許文献1では、脂肪族不飽和基含有直鎖状オルガノポリシロキサンあるいは三次元網状構造を有するシリコーン樹脂を主成分とする組成物が提案されているが、レンズとしての透明性や強度に関する記述がなかった。さらに、特許文献2では、網目構造を有するシリコーン樹脂を使用したレンズが提案されているが、ハンダ実装時の耐熱性に関する記述がなく、硬度のデータも軟質ゴム用のショアAによる測定値しか無かった。また、特許文献3では、ハンダ耐性のあるレンズ用組成物が紹介されている。
特開2006−324596 特開2000−231002 特開2004−294741
しかし、樹脂が接着性を示す場合、硬化物が金型から外れなくなることがある。そのため、金型に特殊な処理を施して離型性を確保する必要があるところ、特殊な処理を工夫し、施す必要があるという煩わしさがあり、生産性に劣る欠点がある。
そこで、本発明は、射出成形可能な優れた作業性および特殊な離型処理をしていない金型に対して良好な離型性を有するとともに、透明性に優れ、硬度が高く、線膨張が低いといった特徴をも有する硬化物を与えうる射出成形用硬化性組成物を提供することにある。
上記事情に鑑み、本発明者は鋭意検討した結果、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、および、特定のSiH基含有ケイ素化合物を硬化剤とする、ヒドロシリル化硬化系に、離型剤を添加することによっても、一般的な射出成形でおいても、優れた光学特性と離型性とを両立する硬化物を作製することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、(A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、(B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)離型剤を必須成分として含有する硬化性組成物であって、当該硬化性組成物を硬化してなる硬化物は、ガラス転移点が70℃以上であり、かつ、硬化物(3mm厚)の波長400nmにおける光線透過率が60%以上である、射出成形用硬化性組成物である。
上記(D)成分の組成比が(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して0.001〜10重量部であることが好ましい。上記(D)成分の離型剤としては、金属イオンを含まない有機化合物系離型剤が好ましく、モンタン酸系化合物、有機グリセリド系化合物、極性基を有するポリオレフィン化合物、および、シラトラン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種を使用するのがより好ましい。
上記(B)成分は、下記一般式(I)
Figure 2009084437
(式中、R1は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物由来の構造、または、下記一般式(II)
Figure 2009084437
(式中、R2は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物由来の構造を有することが好ましい。
上記硬化物は、硬化物(3mm厚)を大気中で280℃3分間熱処理した後の光線透過率が400nmの波長において60%以上あることが好ましい。
上記硬化物は、その硬度がショアDで30以上あり、その硬化物の30℃における線膨張係数が100ppm/Kであることが好ましい。
本発明の硬化物は上記射出成形用硬化性組成物を硬化させてなり、光学部材や半導体モジュールに好適である。
本発明の射出成形用硬化性組成物は、優れた作業性を有する上に、離型性にも優れ、射出成形機の機種、および、金型を問わず適用可能である。さらに、本発明の射出成形用硬化性組成物によれば、上記のような優れた射出成形性を有する上に、優れた透明性および耐熱変色性を有し、さらに線膨張係数の小さいという物性有する硬化物をも得られる。
以下に、本発明を実施するにあたって好ましい形態について説明する。
((A)成分)
(A)成分はSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物である。特に限定されないが、上記有機化合物としては、ポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素の90重量%以上がC、H、N、O、Sおよびハロゲンからなる群から選ばれるものが好ましい。シロキサン単位を含むものの場合は、ガス透過性やはじきの問題が生じる場合がある。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個有する有機化合物(A)は、有機骨格部分と、その有機骨格部分に共有結合するSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とからなるものが好ましい。上記SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は、有機骨格のどの部位に共有結合していてもよい。
まず、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合について述べる。(A)成分の有機化合物が有する炭素−炭素二重結合を有する基は、SiH基と反応性を有するものであれば特に制限されない。SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基とは、例えば、下記一般式(III):
Figure 2009084437
(式中R3は水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、反応性が高いことから好適である。
原料の入手の容易さからは、
Figure 2009084437
が特に好ましい。
硬化物の耐熱性が高いという点では、上記炭素−炭素二重結合を有する基としては、下記一般式(IV):
Figure 2009084437
(式中R4、R5は、同一又は異なって、水素原子又はメチル基を表す。)で示されるアルケニル基が、好適である。
また、原料の入手の容易さからは、
Figure 2009084437
が特に好ましい。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有する基は2価以上の官能基を介して、有機骨格部分に共有結合していても良い。
2価以上の官能基とは、炭素数0〜10の官能基である。特に制限はないが、このような官能基の例としては、
Figure 2009084437
Figure 2009084437
等が挙げられる。
また、これらのうち、2つ以上の官能基が共有結合によりつながって、より大きな単位で1つの2価以上の官能基を構成していてもよい。
上記炭素−炭素二重結合を有する基の具体例としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、アクリル基、メタクリル基、2−アリルフェニル基、3−アリルフェニル基、4−アリルフェニル基、2−(アリルオキシ)フェニル基、3−(アリルオキシ)フェニル基、4−(アリルオキシ)フェニル基、2−(アリルオキシ)エチル基、3−(アリルオキシ)プロピル基、2、2−ビス(アリルオキシメチル)ブチル基、3−アリルオキシ−2、2−ビス(アリルオキシメチル)プロピル基、
Figure 2009084437
が挙げられる。
次に、有機骨格部分について述べる。本願明細書及び特許請求の範囲において、有機骨格とは、主に炭素、水素、ニクトゲン原子、酸素を含むカルコゲン原子、ハロゲン原子から構成される骨格であり、上記元素からなるものであれば特に限定されない。例えば、飽和炭化水素系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリアクリル酸エステル系、ポリカーボネート系、ポリアリレート系、ポリアミド系、ポリイミド系、フェノール−ホルムアルデヒド系(フェノール樹脂系)等の有機重合体骨格や、フェノール系、ビスフェノール系、ベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭化水素系、脂肪族炭化水素系、脂肪族アルコール系、環状炭化水素系等及びこれらの2種以上からなる有機単量体骨格が挙げられる。
分子量についても特に限定はないが、取扱い性の観点から、分子量5万以下のものが好ましい。本特許において、分子量とは、GPCによるスチレン換算の数平均分子量を示す。
有機重合体骨格としては、例えば、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等のポリエーテル系重合体が挙げられる。さらに具体的な例を示すと、
Figure 2009084437
(式中、R6は炭素数1〜50の一価の炭化水素基、R7、R8は炭素数1〜200の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)等が挙げられる。なお、ここでいう有機基は、特に限定されないが、エーテル結合、エステル結合、アセタール結合、イミド結合、アミド結合、ハロゲン化合物を有していてもよい炭化水素系の官能基であることが好ましい。以下に挙げられる「有機基」についても同様である。
なお、R7、R8は好ましくは炭素数1からに200の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜200のアルキレン基である。
有機重合体骨格として用いられるその他の重合体としては、例えば、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸等の2塩基酸とエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール等のグリコールとの縮合またはラクトン類の開環重合で得られるポリエステル系重合体;エチレン−プロピレン系共重合体;ポリイソブチレン、イソブチレンとイソプレン等との共重合体;ポリクロロプレン;ポリイソプレン、イソプレンとブタジエン、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体;ポリブタジエン、ブタジエンとスチレン、アクリロニトリル等との共重合体;ポリイソプレンを水素添加して得られるポリオレフィン系(飽和炭化水素系)重合体、ポリブタジエンを水素添加して得られるポリオレフィン系重合体、イソプレンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系重合体、ブタジエンとアクリロニトリル、スチレン等との共重合体を水素添加して得られるポリオレフィン系重合体;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のモノマーをラジカル重合して得られるポリアクリル酸エステル;エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルと、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メチルメタクリレート、スチレン等とのアクリル酸エステル系共重合体;前記有機重合体中でビニルモノマーを重合して得られるグラフト重合体;ポリサルファイド系重合体;ε−カプロラクタムの開環重合によるナイロン6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の重縮合によるナイロン66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によるナイロン610、11−アミノウンデカン酸の重縮合によるナイロン11、ラウロラクタムの開環重合によるナイロン12、上記のナイロンのうち2成分以上の成分を有する共重合ナイロン等のポリアミド系重合体;ビスフェノールAと塩化カルボニルより重縮合して製造されたポリカーボネート系重合体;ジアリルフタレート系重合体;ノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アンモニアレゾール型フェノール樹脂、ベンジリックエーテル型フェノール樹脂等のフェノール系樹脂等が挙げられる。
さらに、上記の有機重合体骨格の側鎖又は末端にアルケニル基を導入した(A)成分の有機化合物の具体的な例としては、
Figure 2009084437
(式中、R9は水素原子又はメチル基、R10、R11は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
Figure 2009084437
(式中、R12は水素原子又はメチル基、R13、R14は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、nは1〜300の数を表す。)
Figure 2009084437
(式中、R15は水素原子又はメチル基、R16、R17は、同一又は異なって、炭素数1〜200の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、rはそれぞれ1〜300の数を表す。)
Figure 2009084437
(式中、R18は水素原子又はメチル基、R19、R20、R21は、同一又は異なって、炭素数1〜6の二価の有機基、X、Yは、同一又は異なって、直接結合又は炭素数1〜48の二価の有機基、p、q、r、sはそれぞれ1〜300の数を表す。)
等が挙げられる。
なお、R10、R11、R13、R14は、好ましくは炭素数1〜200の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜200のアルキレン基である。R16、R17、R19、R20、R21は、好ましくは炭素数1〜6の二価の炭化水素基、より好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。X、Yは、好ましくは直接結合又は炭素数1〜48の二価の炭化水素基、より好ましくは直接結合又は炭素数1〜48のアルキレン基である。
有機単量体の例としては、エタン、プロパン、イソブタンといった脂肪族鎖状化合物や、シクロペンタン、ジシクロペンタン、ノルボルナンといった脂肪族環状化合物、あるいは、エポキシ系、オキセタン系、フラン系、チオフェン系、ピロール系、オキサゾール系、イソオキサゾール系、チアゾール系、イミダゾール系、ピラゾール系、フラザン系、トリアゾール系、テトラゾール系、ピラン系、チイン系、ピリジン系、オキサジン系、チアジン系、ピリダジン系、ピリミジン系、ピラジン系、ピペラジン系、イソシアヌレート系といった複素環化合物がある。ここで、複素環とは、環状骨格中にヘテロ元素を有する環状の化合物であれば特に限定されない。ただし、環を形成する原子にSiが含まれるものは除かれる。また、環を形成する原子数は特に制限はなく、3以上であればよい。入手性からは、10以下であることが好ましい。
有機単量体からなる(A)成分の具体例として、ブタジエン、イソプレン、オクタジエン、デカジエン等の脂肪族鎖状ポリエン化合物系、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエン、ノルボルナジエン等の脂肪族環状ポリエン化合物系、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキセン等の置換脂肪族環状オレフィン化合物系等、ジアリルフタレート、トリアリルトリメリテート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、トリメチロールプロパンジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、1,1,2,2−テトラアリロキシエタン、ジアリリデンペンタエリスリット、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ジビニルベンゼン類(純度50〜100%のもの、好ましくは純度80〜100%のもの)、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、
Figure 2009084437
Figure 2009084437
等が挙げられる。
(A)成分としては、耐熱性をより向上し得るという観点からは、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を(A)成分1gあたり0.1mmol以上含有するものが好ましく、1gあたり0.5mmol以上含有するものがより好ましく、1mmol以上含有するものがさらに好ましい。
(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数は、平均して1分子当たり少なくとも2個あればよいが、力学強度をより向上したい場合には2を越えることが好ましく、3個以上であることがより好ましい。(A)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の数が1分子内当たり1個以下の場合は、(B)成分と反応してもグラフト構造となるのみで架橋構造とならない。
(A)成分としては反応性が良好であるという観点からは、1分子中にビニル基を1個以上含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を2個以上含有していることがより好ましい。また貯蔵安定性が良好となりやすいという観点からは、1分子中にビニル基を6個以下含有していることが好ましく、1分子中にビニル基を4個以下含有していることがより好ましい。
(A)成分としては、力学的耐熱性が高いという観点および原料液の糸引き性が少なく成形性、取扱い性、塗布性が良好であるという観点からは、100℃以下の温度において流動性があるものが好ましく、線状でも枝分かれ状でもよい。分子量の下限は50、上限は100,000の任意のものが使用できるが、好ましい下限は54、好ましい上限は70,000、さらに好ましい下限は68、さらに好ましい上限は50,000である。分子量が50より低いものは揮発性が大であり、分子量が100,000を越えるものでは一般に原料が高粘度となり作業性に劣るとともに、アルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が発現し難い。
(A)成分としては、他の成分との均一な混合、および良好な作業性を得るためには、粘度としては23℃において3000Pa・s未満のものが好ましく、2000Pa・s未満のものがより好ましく、1000Pa・s未満のものがさらに好ましい。粘度はE型粘度計によって測定することができる。
(A)成分としては、着色特に黄変の抑制の観点からはフェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物の含有量が少ないものが好ましく、フェノール性水酸基および/あるいはフェノール性水酸基の誘導体を有する化合物を含まないものが好ましい。本発明におけるフェノール性水酸基とはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等に例示される芳香族炭化水素核に直接結合した水酸基を示し、フェノール性水酸基の誘導体とは上述のフェノール性水酸基の水素原子をメチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、アセトキシ基等のアシル基等により置換された基を示す。
得られる硬化物の着色が少なく、耐光性が高いという観点からは、(A)成分としてはビニルシクロヘキセン、ジシクロペンタジエン、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが好ましく、トリアリルイソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのジアリルエーテル、1,2,4−トリビニルシクロヘキサンが特に好ましい。
(A)成分としてはその他の反応性基を有していてもよい。この場合の反応性基としては、エポキシ基、アミノ基、ラジカル重合性不飽和基、カルボキシル基、イソシアネート基、ヒドロキシル基、アルコキシシリル基等が挙げられる。これらの官能基を有している場合には得られる硬化性組成物の接着性が高くなりやすく、得られる硬化物の強度が高くなりやすい。接着性がより高くなりうるという点からは、これらの官能基のうちエポキシ基が好ましい。また、得られる硬化物の耐熱性が高くなりやすいという点においては、反応性基を平均して1分子中に1個以上有していることが好ましい。
特に(A)成分としては耐熱性・耐光性が高いという観点から上述した一般式(I)で表されるトリアリルイソシアヌレート及びその誘導体が特に好ましい。
Figure 2009084437
(式中R1は炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物が好ましい。
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜4の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、ビニル基、アリル基、グリシジル基、
Figure 2009084437
等が挙げられる。
上記一般式(I)のR1としては、得られる硬化物の各種材料との接着性が良好になりうるという観点からは、3つのR1のうち少なくとも1つがエポキシ基を一つ以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることが好ましく、
Figure 2009084437
で表されるエポキシ基を1個以上含む炭素数1〜50の一価の有機基であることがより好ましい。これらの好ましいR1の例としては、グリシジル基、
Figure 2009084437
等が挙げられる。
以上のような一般式(I)で表される有機化合物の好ましい具体例としては、トリアリルイソシアヌレート、
Figure 2009084437
等が挙げられる。
硬化物の樹脂強度向上と耐光性とを両立させるためにはトリアリルイソシアヌレートとジアリルモノグリシジルイソシアヌレートの混合物であることが好ましい。該混合物はイソシアヌル環骨格を有するため耐熱性の点からも有効である。混合比は任意に設定出来るが、上記目的達成のためにはトリアリルイソシアヌレート/アリルモノグリシジルイソシアヌレート(モル比)=99/1〜1/99が好ましく、95/5〜5/95がさらに好ましく、90/10〜10/90が特に好ましい。
特に(A)成分としては耐熱性・屈折率が高いという観点から下記一般式(II)で表されるジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル、1,3−ジイソプロペニルベンゼン、1,4−ジイソプロペニルベンゼン、およびそれらのオリゴマーや、ビスフェノールAジアリルエーテルや、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホン、フェノールノボラック樹脂等の芳香環含有エポキシ樹脂に結合するグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置換したものが好ましい。
Figure 2009084437
(式中、R2は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は異なっていても同一であってもよい。)
上記一般式(II)のR2としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、
Figure 2009084437
のように複数の芳香環をもつことが好ましい。
また、上記一般式(II)については、R2の結合位置はパラ位(1,4−置換)であることが好ましい。
(A)成分は、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((B)成分)
次に、(B)成分について説明する。
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物である。
(B)成分については1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば国際公開WO96/15194パンフレットに記載される化合物で、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有するもの等が使用できる。
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましい。
上記鎖状オルガノポリシロキサンの具体的な例としては、下記一般式(V)
Figure 2009084437
(式中、それぞれのR22、R23は、水素あるいは炭素数1〜50の一価の有機基を表し、それぞれのR22、R23は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは1〜1000の数を表す。)で表される化合物が挙げられる。
22、R23としては、得られる硬化物の耐熱性がより高くなりうるという観点からは、炭素数1〜20の一価の有機基であることが好ましく、炭素数1〜15の一価の有機基であることがより好ましく、炭素数1〜10の一価の有機基であることがさらに好ましい。これらの好ましいR22、R23の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、フェニル基、ベンジル基、フェネチル基、メトキシ基、エトキシ基、ビニル基、アリル基、グリシジル基等が挙げられる。
上記環状ポリオルガノシロキサンとしては、例えば、下記一般式(VI)
Figure 2009084437
(式中、R24は水素あるいは炭素数1〜6の有機基を表し、それぞれのR24は異なっていても同一であってもよいが、少なくとも2個は水素である。nは2〜10の数を表す。)で表される、1分子中に少なくとも2個のSiH基を有する環状ポリオルガノシロキサン等が挙げられる。なお、上記一般式(VI)におけるR24は、C、H、Oからなる群から選択して構成される炭素数1〜6の有機基であることが好ましく、炭素数1〜6の炭化水素基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基であることがさらに好ましい。また、nは3〜10の数であることが好ましい。
一般式(VI)で表される環状ポリオルガノシロキサンの好ましい具体例としては、1,3,5−トリメチルシクロトリシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7,9−ペンタメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。
(B)成分の分子量は特に制約はなく任意のものが好適に使用できるが、硬化性組成物の流動性をより制御しやすいという観点からは低分子量のものが好ましく用いられる。この場合、好ましい分子量の下限は50であり、好ましい分子量の上限は100,000、より好ましくは10,000、さらに好ましくは2,000である。
(A)成分と良好な相溶性を有するという観点、および(B)成分の揮発性が低くなり得られる組成物からのアウトガスの問題が生じ難いという観点からは、(B)成分は、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(α)と、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)とを、ヒドロシリル化反応して得ることができる化合物であることが好ましい。
((α)成分)
ここで(α)成分は、上記した(A)成分である、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機系化合物と同じもの(α1)も用いることができる。(α1)成分を用いると得られる硬化物の架橋密度が高くなり機械的強度の強い硬化物となりやすい。
その他、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α2)も用いることができる。(α2)成分を用いると得られる硬化物が低弾性となりやすい。
(α2)成分としては、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物であれば特に限定されないが、(B)成分が(A)成分と相溶性がよくなるという点においては、化合物としてはポリシロキサン−有機ブロックコポリマーやポリシロキサン−有機グラフトコポリマーのようなシロキサン単位(Si−O−Si)を含むものではなく、構成元素の90重量%以上がC、H、N、O、S、およびハロゲンからなる群から選択されるものであることが好ましい。
(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合の結合位置は特に限定されず、分子内のどこに存在してもよい。また、(α2)成分のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合としては特に限定されないが、(A)成分のところで説明した官能基が好ましい。
(α2)成分の化合物は、重合体系の化合物と単量体系化合物に分類でき、それぞれの骨格は(A)成分のところで説明した骨格が好ましい。
(α)成分として、耐熱性が高いという観点からは、上述した一般式(I)、
Figure 2009084437
(式中、R1は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。ただし、R1のうち、少なくとも一つはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有するものである。)、
あるいは、一般式(II)
Figure 2009084437
(式中、R2は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は異なっていても同一であってもよい。ただし、R2のうち、少なくとも一つはSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を有するものである。)
の骨格を有する化合物が好ましい。特に耐熱性が高いという観点からは、R1およびR2のうち、少なくとも2つはSiH基と反応性を有する炭素―炭素二重結合であることが好ましい。また、上記一般式(II)については、R2の結合位置はパラ位(1,4−置換)であることが好ましい。
(α)成分として、屈折率が高いという観点からは、上述した一般式(II)の骨格を有する化合物が好ましい。一般式(II)の骨格を有する化合物として、例えば、ジビニルベンゼン類、ジビニルビフェニル、およびそれらのオリゴマーや、ビスフェノールAジアリルエーテルや、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホン、フェノールノボラック樹脂等の芳香環含有エポキシ樹脂に結合するグリシジル基の一部あるいは全部をアリル基に置換したもの等が挙げられる。
((β)成分)
本発明に使用できる1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサンについては、特に制限がなく、例えば国際公開第96/15194号パンフレットに記載される化合物で、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するものが使用できる。
これらのうち、入手性の面からは、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する鎖状及び/又は環状及び/又は網目状ポリオルガノシロキサンが好ましい。また、(A)成分との相溶性の面からは、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有する環状のポリオルガノシロキサン、又は分子量が10000以下の直鎖状のポリオルガノシロキサンが好ましい。
また、上記記載の硬化剤を得るために用いる1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサンについて、単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
(予備反応)
上述した一般式(I)や(II)で表される化合物由来の骨格を有する1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物を含めた、SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(α)と、1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)とのヒドロシリル化反応物を得るための反応について説明する。
SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)とをヒドロシリル化反応させる場合の、(α)成分と(β)成分の混合比率は、1分子中に2個以上SiH基が残る範囲であれば、特に限定されない。
得られる硬化物の強度を考えた場合、(α)成分中のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合のモル数(X)と、(β)成分中のSiH基のモル数(Y)との比は、Y/X≧2であることが好ましく、Y/X≧3であることがより好ましい。
ヒドロシリル化させる場合には適当な触媒を用いてもよい。触媒としては、例えば後述する(C)成分を用いることができる。
触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるため好ましい添加量の下限は、SiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)成分のSiH基1モルに対して10-10モル、より好ましくは10-8モルであり、好ましい添加量の上限はSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)成分のSiH基1モルに対して10-1モル、より好ましくは10-3モルである。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能であり、例としてトリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物等が挙げられる。助触媒の添加量は特に限定されないが、ヒドロシリル化触媒1モルに対しての好ましい添加量の下限は、10-2モル、より好ましくは10-1モルであり、好ましい添加量の上限は102モル、より好ましくは10モルである。
反応時の触媒混合方法としては、各種方法をとることができるが、(α)成分にヒドロシリル化触媒(α3)を混合したものを、(β)成分に混合する方法が好ましい。(α)成分と(β)成分との混合物にヒドロシリル化触媒(α3)を混合する方法では反応の制御が困難な場合がある。また、(β)成分とヒドロシリル化触媒(α3)を混合したものに(α)成分を混合する方法では、ヒドロシリル化触媒(α3)の存在下(β)成分が混入している水分と反応性を有するため、変質することがある。
反応温度としては種々設定できるが、好ましい温度範囲の下限は30℃、より好ましくは50℃であり、好ましい温度範囲の上限は200℃、より好ましくは150℃である。反応温度が低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が高いと工業的に不利な場合がある。反応は一定の温度で行ってもよく、また必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。
反応時間、反応時の圧力も必要に応じ種々設定できる。反応時間については特に限定されない。経済的な面からは、好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。圧力も特に限定されないが、特殊な装置が必要になったり、操作が煩雑になったりする、という面から、好ましくは大気圧〜5MPa、さらに好ましくは大気圧〜2MPaである。
ヒドロシリル化反応の際に溶媒を使用してもよい。使用できる溶剤はヒドロシリル化反応を阻害しない限り特に限定されるものではなく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒を好適に用いることができる。溶媒は2種類以上の混合溶媒として用いることもできる。溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、クロロホルムが好ましい。使用する溶媒量も適宜設定できる。
溶媒の使用量は、特に限定されないが、反応を均一、かつ、促進させるためには、(α)成分を完全に溶解できる量が好ましい。(α)成分100重量部に対して20重量部以上500重量部以下が好ましく、50重量部以上300重量部以下がより好ましい。
その他、反応性を制御する目的等のために種々の添加剤を用いてもよい。
ヒドロシリル化反応後に、溶媒並びに/または未反応のSiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に1個以上含有する有機系化合物(α)と1分子中に少なくとも3個のSiH基を有するポリオルガノシロキサン(β)を除去することもできる。これらの揮発分を除去することにより、得られる硬化剤が揮発分を有さないため、硬化の場合に揮発分の揮発によるボイド、クラックの問題が生じにくい。除去する方法としては例えば、減圧脱揮の他、活性炭、ケイ酸アルミニウム、シリカゲル等による処理等が挙げられる。減圧脱揮する場合には低温で処理することが好ましい。この場合の好ましい温度の上限は120℃であり、より好ましくは100℃である。高温で処理すると増粘等の変質を伴いやすい。
以上のような、硬化剤の例としては、トリアリルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ジビニルベンゼンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物、ビスフェノールAジアリルエーテルと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物や、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホンと1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンの反応物がより好ましい。
本発明では、(B)成分は単独又は2種以上のものを混合して用いることが可能である。
((C)成分)
次に、(C)成分であるヒドロシリル化触媒について説明する。
ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化反応の触媒活性があれば特に限定されないが、例えば、白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;塩化白金酸;塩化白金酸とアルコール、アルデヒド、ケトン等との錯体;白金−オレフィン錯体(例えば、Pt(CH2=CH22(PPh32、Pt(CH2=CH22Cl2);白金−ビニルシロキサン錯体(例えば、Pt(ViMe2SiOSiMe2Vi)a、Pt[(MeViSiO)4b);白金−ホスフィン錯体(例えば、Pt(PPh34、Pt(PBu34);白金−ホスファイト錯体(例えば、Pt[P(OPh)34、Pt[P(OBu)34)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、a、bは、整数を示す。);ジカルボニルジクロロ白金;カールシュテト(Karstedt)触媒;アシュビー(Ashby)の米国特許第3159601号及び第3159662号明細書中に記載された白金−炭化水素複合体;ラモロー(Lamoreaux)の米国特許第3220972号明細書中に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。さらに、モディック(Modic)の米国特許第3516946号明細書中に記載された塩化白金−オレフィン複合体も本発明において有用である。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh)3、RhCl3、RhAl23、RuCl3、IrCl3、FeCl3、AlCl3、PdCl2・2H2O、NiCl2、TiCl4等が挙げられる。
これらの中では、触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体等が好ましい。また、これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
また、上記触媒には助触媒を併用することが可能である。助触媒の例としては、トリフェニルホスフィン等のリン系化合物、ジメチルマレート等の1、2−ジエステル系化合物、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−ブチン等のアセチレンアルコール系化合物、単体の硫黄等の硫黄系化合物、トリエチルアミン等のアミン系化合物、水等が挙げられる。
助触媒の添加量は特に限定されないが、上記ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-5モル、上限102モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限10-3モル、上限10モルの範囲である。
ヒドロシリル化触媒には助触媒を1種または2種以上を組み合わせて併用することができる。
((D)成分)
次に、(D)成分である離型剤について説明する。
離型剤としては、樹脂に混合し、硬化後に成形体を取り外し易くするものであり、硬化物の透明性を損なうものでなれば特に限定されない。離型剤には、有機化合物系(フッ素やシロキサン骨格を有さない)、シリコーン系、フッ素系、無機系等色々とあるが、樹脂との混合具合(相溶性)、硬化時の不良、硬化物の透明性からは、有機化合物系が好ましい。
周辺汚染の観点では、金属イオンを含まない離型剤が好ましい。これは、金属イオンの溶出等により、周辺部材を腐食してしまうことがあるためである。
耐熱性の観点では、有機系では脂肪酸やカルナバ、モンタン酸エステル系、有機酸グリセリド系のもの、極性基をもったポリオレフィン系離型剤やシラトラン系化合物が好ましい。ここで、極性基とは、炭化水素基にヘテロ原子やハロゲン原子といった電気陰性度の異なる原子からなる原子群が結合することにより電荷の偏りが生じている官能基を示す。特に制限されないが、本発明においては、イオンは除くものとする。極性基の具体例としては、−(A−エポキシ)基、−(A−アクリロイル)基、−(A−ヒドロキシル)基、−(A−アルコキシ)基、−(R−アミド)基及び−(A−カルボキシル)基(Aは直接結合、または炭素数1〜6の置換若しくは無置換のアルキレン基であってヘテロ原子を有していてもよい)などが挙げられる。
また、有機系の離型剤において、液性が酸性になっているものが多いが、アルカリ性を示す溶剤で中和されていてもよい。例えば、アルカリ性を示す溶剤として、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等のアミン系溶剤が挙げられる。
上記のような離型剤として、有機系では例えば、モンタン酸エステル系(クラリアント製LICOLUBU WE40、LICOWAX E、LICOWAX KST等)、脂肪酸系(理研ビタミン製:リケスターEW−200、リケスターEW−250、リケマールAZ−01、リケマールB−100、リケマール SL−800等)、有機酸グリセリド(理研ビタミン製:リケマールL−71−D、リケマールS−100、アクターM−1、アクターM−3等、AXEL製:モールドウィズINT−AM121、モールドウィズINT−1810)、シラトラン系化合物(メチルシラトラン、ビニルシラトラン、メタクリロキシプロピルシラトラン、ヒドロキシエトキシシラトラン、中京油脂製:セパール等)が挙げられる。
上記のなかでも、透明性と耐熱性との観点から、モンタン酸エステル系化合物、有機酸グリセリド系化合物、極性基を有するポリオレフィン化合物、シラトラン系化合物が好ましい。
(D)成分の離型剤の添加量は、(A)成分と(B)成分の総量100重量部に対して、0.001〜10重量部、好ましくは0.003〜8重量部、さらに好ましくは0.005〜5重量部である。10重量部以上いれると、硬化物表面に離型剤がブリードアウトしてきて表面に不純物が析出したり、表面に凹凸が生じたり、硬化物自体の耐熱変色性を低下させることがある。また、0.001重量部以上添加しないと、離型性を確保することができない場合がある。
本発明の射出成形用硬化性組成物では、(D)成分の離型剤を一種のみまたは2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(硬化性組成物)
本発明の射出成形用硬化性組成物中の(A)成分と(B)成分の比率としては、[硬化性組成物中の(A)成分のSiH基との反応性を有する炭素−炭素二重結合(アルケニル基)のモル数/硬化性組成物中の(B)成分のSiH基のモル数]の値が、下限0.05、上限10の範囲となる比率であることが好ましく、下限0.1、上限5の範囲となる比率であることがより好ましい。上記値が0.05より小さい場合はアルケニル基とSiH基との反応による架橋の効果が不十分になる傾向にあり、10より大きい場合は硬化物から未反応の(A)成分がブリードしてくる傾向にある。
本発明の射出成形用硬化性組成物中の(C)成分のヒドロシリル化触媒の添加量は特に限定されないが、十分な硬化性を有し、かつ硬化性組成物のコストを比較的低く抑えるために、(A)成分のSiH基1モルに対して、下限10-10モル、上限10-2モルの範囲が好ましく、より好ましくは、下限10-8モル、上限10-2モルの範囲である。
なお、当該触媒は、(B)成分合成時に使用して残存している量で十分な硬化性を示す場合は必ずしも添加する必要はないが、硬化性を調整するために上記の範囲で新たに添加することもできる。
(その他の添加物)
本発明の射出成形用硬化性組成物は、溶剤を添加して粘度を調整し、作業性を向上させることも可能である。使用できる溶剤としては、特に限定されるものではないが、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン等の炭化水素系溶剤;テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸n−ブチル、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤;クロロホルム、塩化メチレン、1, 2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶剤等を好適に用いることができる。また、当該溶剤は単独で使用してもよく、2種類以上の混合溶剤として用いることもできる。
使用する溶剤量は、[(A)成分+(B)成分]100重量部に対して、下限0.1重量部、上限100重量部の範囲で用いるのが好ましく、下限0.5重量部、上限50重量部の範囲で用いるのがより好ましく、下限1重量部、上限30重量部の範囲で用いるのがさらに好ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、低粘度化の効果が得られにくくなる傾向があり、使用量が100重量部より多いと、材料に溶剤が残留して耐熱性の低下等の問題となり易く、またコスト的にも不利になり易い傾向がある。
本発明の射出成形用硬化性組成物の保存安定性を改良する目的、又は、製造過程でのヒドロシリル化反応の反応性を調整する目的で、硬化遅延剤を使用することができる。硬化遅延剤としては、例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上併用してよい。
脂肪族不飽和結合を含有する化合物としては、プロパルギルアルコール類、エン−イン化合物類、マレイン酸エステル類等が例示される。有機リン化合物としては、トリオルガノフォスフィン類、ジオルガノフォスフィン類、オルガノフォスフォン類、トリオルガノフォスファイト類等が例示される。有機硫黄化合物としては、オルガノメルカプタン類、ジオルガノスルフィド類、硫化水素、ベンゾチアゾール、チアゾール、ベンゾチアゾールジサルファイド等が例示される。窒素含有化合物としては、アンモニア、1〜3級アルキルアミン類、アリールアミン類、尿素、ヒドラジン等が例示される。スズ系化合物としては、ハロゲン化第一スズ2水和物、カルボン酸第一スズ等が例示される。有機過酸化物としては、ジ−tert−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、過安息香酸tert−ブチル等が例示される。
これらの硬化遅延剤のうち、遅延活性が良好で原料入手性がよいという観点からは、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルマレート、3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブチン、1−エチニル−1−シクロヘキサノールが好ましい。
硬化遅延剤の添加量は、使用する(C)ヒドロシリル化触媒1モルに対して、下限10-1モル、上限103モルの範囲が好ましく、より好ましくは下限1モル、上限50モルの範囲である。
次に、本発明の射出成形用硬化性組成物の特性を改質する目的で添加することが可能な種々の樹脂について説明する。当該樹脂としては、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、エポキシ樹脂、シアナート樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明の射出成形用硬化性組成物には、必要に応じて無機フィラーを添加してもよい。無機フィラーを添加すると、材料の高強度化や難燃性向上などに効果がある。無機フィラーとしては、微粒子状のものが好ましく、アルミナ、水酸化アルミニウム、溶融シリカ、結晶性シリカ、超微粉無定型シリカ、疎水性超微粉シリカ、タルク、硫酸バリウム、蛍光体等を挙げることができる。
フィラーを添加する方法としては、例えば、アルコキシシラン、アシロキシシラン、ハロゲン化シラン等の加水分解性シランモノマー又はオリゴマーや、チタン、アルミニウム等の金属のアルコキシド、アシロキシド又はハロゲン化物等を、本発明の射出成形用硬化性組成物に添加して、組成物中あるいは組成物の部分反応物中で反応させ、組成物中で無機フィラーを生成させる方法等も挙げることができる。
本発明の射出成形用硬化性組成物には老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤としては、ヒンダートフェノール系等一般に用いられている老化防止剤の他、クエン酸やリン酸、硫黄系老化防止剤等が挙げられる。
ヒンダートフェノール系老化防止剤としては、チバスペシャリティーケミカルズ社から入手できるイルガノックス1010をはじめとして、各種のものが用いられる。
硫黄系老化防止剤としては、メルカプタン類、メルカプタンの塩類、スルフィドカルボン酸エステル類や、ヒンダードフェノール系スルフィド類を含むスルフィド類、ポリスルフィド類、ジチオカルボン酸塩類、チオウレア類、チオホスフェイト類、スルホニウム化合物、チオアルデヒド類、チオケトン類、メルカプタール類、メルカプトール類、モノチオ酸類、ポリチオ酸類、チオアミド類、スルホキシド類等が挙げられる。
また、これらの老化防止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の射出成形用硬化性組成物にはラジカル禁止剤を添加してもよい。ラジカル禁止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール(BHT)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス(メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン等のフェノール系ラジカル禁止剤や、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−第二ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン等のアミン系ラジカル禁止剤等が挙げられる。
また、これらのラジカル禁止剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の射出成形用硬化性組成物には紫外線吸収剤を添加してもよい。紫外線吸収剤としては、例えば2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジン)セバケート等が挙げられる。
また、これらの紫外線吸収剤は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
本発明の射出成形用硬化性組成物には、その他、難燃剤、界面活性剤、消泡剤、乳化剤、レベリング剤、はじき防止剤、アンチモン−ビスマス等のイオントラップ剤、チクソ性付与剤、粘着性付与剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、増粘剤、可塑剤、酸化防止剤、熱安定剤、加工安定剤、反応性希釈剤、帯電防止剤、放射線遮断剤、核剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、金属不活性化剤、接着性付与剤、物性調整剤等を、本発明の目的及び効果を損なわない範囲において添加することができる。
本発明の射出成形用硬化性組成物は、上記各成分を混合等することにより得られる。射出成形装置としては既存の射出成形装置を使用することができる。一般に硬化性組成物は二液タイプのものが広く使用されているが、貯蔵安定性を改善すれば、一液タイプも使用できる。液状樹脂を供給できるシステムが搭載されている射出成形装置であれば特に問題なく使用できる。
また、金型において、離型性を確保するために様々な処理をすることがある。一般には、シリコーン処理やNi−Pメッキ等が使用されているが、本発明の射出成形用硬化性組成物を使用すれば処理に依存することはない。
また、本発明の射出成形用硬化性組成物を硬化させる方法としては、特に限定されないが、各成分を単に混合するだけで反応させることもできるし、加熱して反応させることもできる。反応が速く、一般に耐熱性の高い材料が得られ易いという観点から、加熱して反応させる方法が好ましい。
反応温度としては種々設定できるが、下限25℃、上限300℃の温度範囲が好ましく、下限50℃、上限280℃がより好ましく、下限100℃、上限260℃がさらに好ましい。反応温度が25℃より低いと十分に反応させるための反応時間が長くなる傾向があり、反応温度が300℃より高いと製品の熱劣化が生じ易くなる傾向がある。
反応は一定の温度で行ってもよいが、必要に応じて多段階あるいは連続的に温度を変化させてもよい。一定の温度で行うより、多段階的あるいは連続的に温度を上昇させながら反応させた方が、歪のない均一な硬化物が得られ易いという点で好ましい。
反応時の圧力も必要に応じて種々設定でき、常圧、高圧又は減圧状態で反応させることもできる。
本発明の射出成形用組成物を硬化させて得られる硬化物は、ガラス転移点が70℃以上であり、80℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。ガラス転移点が70℃以上であれば、冷熱衝撃耐性が高いという利点がある。
本発明の射出成形用組成物を硬化させて得られる硬化物は、3mm厚のサンプルで波長400nmにおける光線透過率が60%以上である。耐ハンダリフロー性の観点からは、3mm厚の硬化物を大気中で280℃3分間熱処理しても、波長400nmにおける光線透過率が60%以上維持できることが好ましい。このような高い耐熱性により、光半導体やモジュール、光学部品の設計の自由度や応用先を増やすことができる。
本発明の射出成形用組成物を硬化させて得られる硬化物は、線膨張係数が30℃において100ppm/K以下であることが好ましく、より好ましくは90ppm/K以下である。このように線膨張係数を低くすることにより、光学部品の温度による焦点や収差のズレが小さく、部品を固定した際の熱履歴が懸かったときの熱衝撃を小さくすることができる。
本発明の射出成形用組成物を硬化させて得られる硬化物は、JIS K6253のタイプDデュロメータによる硬さ(ショアD)が30以上であることが好ましく、より好ましくは40以上、更に好ましくは60以上である。ショアDによる硬さが高いと、機械的強度があり、表面に傷がつき難く、また、ゴミが付着し難い。さらに、カッターやドリルといった機械的加工が可能であることから、光学部品成形後に複雑な形状を付与したり、補正したりすることができる。
本発明の射出成形用組成物から得られる硬化物は、光学材料や半導体モジュールに好適である。
本発明で言う光学部材とは、可視光、赤外線、紫外線、X線、レーザー等の光をその材料中を通過させる用途に用いる材料一般を示す。例えば、カメラ(スチールカメラ、デジタルカメラ、防犯カメラ、携帯電話用カメラ等)や光学計測機器、光メモリー機材等に使用される各種レンズやプリズムや光半導体の封止剤、導光板、プリズムシート、偏向板といった各種透明フィルムやシートといった用途が挙げられる。
以下に、本発明の実施例および比較例を示すが、本発明は以下によって限定されるものではない。
下記合成例におけて調製した部分反応物のSiH基価は下記の方法で定めた。
(NMR)
バリアン・テクノロジーズ・ジャパン・リミテッド製、300MHz NMR装置を用いた。反応生成物であるSiH基含有化合物(部分反応物)の官能基価は、1,2−ジブロモエタン換算でのSiH基価(mmol/g)を求めた。
(合成例1)
2Lオートクレーブにトルエン696g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン556gを加えて、内温が104℃になるように加熱した。そこに、トリアリルイソシアヌレート80g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、トルエン60gの混合物を滴下し、7時間加熱撹拌させた。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がトリアリルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物B1と称す、SiH価:9.4mmol/g)であることがわかった。生成物は混合物であるが、本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
Figure 2009084437
(合成例2)
2Lオートクレーブにトルエン525g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン570gを加えて、内温が105℃になるように加熱した。そこに、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート120g、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.05g、トルエン120gの混合物を滴下した。滴下中、内温が109℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエン、キシレンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がジアリルモノグリシジルイソシアヌレートと反応したもの(部分反応物B2と称す、SiH価:7.7mmol/g)であることがわかった。
本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
Figure 2009084437
(合成例3)
2Lオートクレーブにトルエン700g、1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサン470gを加えて、内温が105℃になるように加熱した。そこに、ビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホン52gと、白金ビニルシロキサン錯体のキシレン溶液(白金として3wt%含有)0.06g、トルエン15gの混合物を滴下した。滴下中、内温が110℃まで上昇した。未反応の1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンおよびトルエン、キシレンを減圧留去した。1H−NMRによりこのものは1、3、5、7−テトラメチルシクロテトラシロキサンのSiH基の一部がビス〔4−(2−アリルオキシ)フェニル〕スルホンと反応したもの(部分反応物B3と称す、SiH価:6.3mmol/g)であることがわかった。
本発明の(B)成分である下記のものを主成分として含有している。また、本発明の(C)成分である白金ビニルシロキサン錯体を含有している。
Figure 2009084437
(実施例1〜5および比較例1〜3)
下記表1に従い配合した。(A)成分としてトリアリルイソシアヌレートとジアリルモノグリシジルイソシアヌレートを用い、(B)成分として合成例1、2、3で得られた部分反応物B1〜3を用い、(C)成分として白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液(白金3重量%含有)を用い、(D)成分として金属イオンを含有していない有機系離型剤である、中京油脂製セパール441、クラリアント製LICOWAX KST、AXEL製モールドウィズINT−AM121を用い、表1に示した割合で配合し、配合物を攪拌、脱泡して硬化性組成物を作製した。この硬化性組成物を、2枚のガラス板に3mm厚みのシリコーンゴムシートをスペーサーとして挟み込んで作製したセルに流し込み、60℃6時間、70℃1時間、80℃1時間、100℃1時間、120℃1時間、150℃1時間、180℃30分間加熱し硬化物を得た。
得られた各硬化性組成物および各硬化物について、硬化性組成物のゲル化時間および貯蔵安定性、硬化物の透明性・耐熱性・ガラス転移温度・線膨張係数・硬さ試験・離型性を以下に述べる試験方法により測定した。
(ゲル化時間測定)
硬化性組成物を、120℃に熱したアルミ箔上で撹拌しながら硬化させたときにかかる時間を測定した。1分以内を◎、3分以内を○とした。
(貯蔵安定性試験)
硬化性組成物を作成し、25℃24時間後の粘度の上昇を調べた。(24時間後の粘度)/(作成後の粘度)が、1.3以下の場合を○、1.3より大きい場合を×とした。粘度は、東京計器製、E型粘度計を用いた。測定温度23℃EHD48φコーンで測定した。
(硬化物の透明性)
得られた硬化物(3mm厚)の400nmにおける光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
(耐熱性試験)
硬化物を280℃に熱したガラスに3分間挟みこんで耐熱性試験を行った。耐熱性試験後の硬化物について、400nmの光線透過率を分光光度計(U−3300、日立)で測定した。
(ガラス転移温度)
硬化物より30mm×5mm×3mmの試験片を切り出し、アイティー計測制御社製DVA−200を用いて、引張りモード、測定周波数10Hz、歪0.1%、静/動力比1.5、昇温側度5℃/分の条件にて動的粘弾性測定を行った。tanδのピーク温度を硬化物のガラス転移温度とした。
(線膨張係数)
硬化物より5mm×5mm×3mmの試験片を切り出し、リガク社製ThermoPlus TMA8310を用いて、圧縮モード、昇温側度10℃/分の条件にて熱機械分析測定を行った。20−40℃での膨張の割合から線膨張係数を求めた。
(硬さ試験)
硬化物を、青ガラスの上に乗せ、JIS K6253により、タイプDデュロ−メータによって硬さを測定した。
(離型性試験)
硬化性組成物を鉄製の軟膏缶、および、外部離型剤を塗布していないガラスセル(基材)に入れ、上記加熱条件で硬化させ、基材から硬化物を取り出せるか調べた。硬化後基材から剥がれているものを◎、力を掛けると基材から剥がれるものを〇、基材から剥がれないものを×とした。
上記の条件で測定したデータを表1に纏めて示す。
Figure 2009084437
(参考例)
比較例1の硬化性組成物を射出成形機(ソディックプラステック社製LS−40)とシリコーン系外部離型剤を塗布した金型を用いて硬化物を作製したところ(射出背圧:0.5MPa、温度:160℃、時間:30秒、アフターキュアー:180℃オーブンで30分間)成形体がえられた。
本発明の射出成形用硬化性組成物(実施例1〜5)は、表1に示されているように、離型剤を添加していない硬化性組成物の硬化物(比較例1〜3)と同等の、優れた光学的透明性、耐熱着色性、低線膨張係数を有することがわかる。さらに、金型全般への適用性を評価することを目的とした離型性試験においても、優れた離型性を示しており、特殊な離型処理をしていない金型にも適用することができることがわかる。また、表1に示されるとおり、本発明の硬化性組成物はゲル化時間が短く、貯蔵安定性にも優れており、射出成形性の基準となる物性を満たすことがわかる。さらに、参考例において、離型剤を添加していない硬化性組成物(比較例1)で射出成形により硬化物が作製できたことにも鑑みると、実施例1〜5の硬化性組成物が射出成形性を有することは明らかである。以上から、本発明の射出成形用硬化性組成物は、射出成形機の機種および金型の種類に依らず使用することが可能であるだけでなく、優れた光学的透明性、耐熱着色性、低線膨張係数を有する硬化物を与えうるものであることがわかる。

Claims (12)

  1. 下記の成分(A)、(B)、(C)および(D)を必須成分として含有する硬化性組成物であって、前記硬化性組成物を硬化してなる硬化物はガラス転移点が70℃以上であり、かつ、硬化物(3mm厚)の波長400nmにおける光線透過率が60%以上である、射出成形用硬化性組成物;
    (A)SiH基と反応性を有する炭素−炭素二重結合を1分子中に少なくとも2個含有する有機化合物、
    (B)1分子中に少なくとも2個のSiH基を含有する化合物、
    (C)ヒドロシリル化触媒、および
    (D)離型剤。
  2. 前記(D)成分の組成比が(A)成分と(B)成分との総量100重量部に対して0.001〜10重量部である、請求項1に記載の射出成形用硬化性組成物。
  3. 前記(D)成分が金属イオンを含まない有機化合物系離型剤である、請求項1または2に記載の射出成形用硬化性組成物。
  4. 前記(D)成分が、モンタン酸エステル系化合物、有機グリセリド系化合物、極性基を有するポリオレフィン化合物、および、シラトラン系化合物からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物。
  5. 前記(B)成分が下記一般式(I)
    Figure 2009084437
    (式中、R1は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR1は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物由来の構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物。
  6. 前記(B)成分が下記一般式(II)
    Figure 2009084437
    (式中、R2は炭素数1〜50の一価の酸素、窒素、硫黄、あるいはハロゲン原子で置換されていてもよい有機基を表し、それぞれのR2は異なっていても同一であってもよい。)で表される化合物由来の構造を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物。
  7. 前記硬化物は、硬化物(3mm厚)を大気中で280℃3分間熱処理した後の光線透過率が400nmの波長において60%以上である、請求項1〜6いずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物。
  8. 前記硬化物は、硬度がショアDで30以上ある、請求項1〜7いずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物。
  9. 前記硬化物は、30℃における線膨張係数が100ppm/Kである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれか一項に記載の射出成形用硬化性組成物を硬化してなる硬化物。
  11. 請求項10に記載の硬化物を使用した光学部材。
  12. 請求項10に記載の硬化物を使用した光半導体モジュール。
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