JP2009083247A - インクジェット記録媒体及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記インク受容層が、該支持体側から順に、ゼータ電位が+10mV以上である第一塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第一層と、ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第二塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第二層と、ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第三塗布液を用いて形成され、コロイダルシリカを含有する、前記支持体から最も離れた最上層と、を含む。
【選択図】なし
Description
例えば、記録画像の色の均一性に優れたインクジェット記録媒体として、支持体上に、少なくとも1層のインク受容層を有するインクジェット記録媒体の記録面のpH7における表面ゼータ電位を−5mVより大きく+5mV未満としたインクジェット記録媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、染料インク適性に優れ(具体的には、染料インクのにじみを抑制でき、染料インクによる印画濃度を向上でき)、光沢度に優れ、さらに顔料インク適性も優れたインクジェット記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
即ち、前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記インク受容層が、該支持体側から順に、ゼータ電位が+10mV以上である第一塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第一層と、ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第二塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第二層と、ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第三塗布液を用いて形成され、コロイダルシリカを含有する、前記支持体から最も離れた最上層と、を含むことを特徴とするインクジェット記録媒体である。
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、前記インク受容層が、該支持体側から順に、ゼータ電位が+10mV以上である第一塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第一層と、ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第二塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第二層と、ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第三塗布液を用いて形成され、コロイダルシリカを含有する、前記支持体から最も離れた最上層と、を含んで構成される。
インクジェット記録媒体を上記構成とすることにより、染料インク適性を向上でき(具体的には、染料インクのにじみを抑制でき、染料インクによる印画濃度を向上でき)、光沢度を向上でき、さらに顔料インク適性も向上できる。
前記本発明のインクジェット記録媒体を製造する方法については特に限定はないが、後述する本発明のインクジェット記録媒体の製造方法が好適である。
前記第二塗布液のゼータ電位は、顔料インク適性の観点より、−20mV以上−50mV以下が好ましく、−30mV以上−50mV以下がより好ましい。
前記第三塗布液のゼータ電位は、顔料インク適性と光沢性付与の観点より、−20mV以上−50mV以下が好ましく、−30mV以上−50mV以下がより好ましい。
本発明におけるインク受容層は、支持体側から順に、前記第一塗布液を用いて形成された第一層と、前記第二塗布液を用いて形成された第二層と、前記第三塗布液を用いて形成された最上層と、を少なくとも有する。本発明において、「最上層」は支持体から最も離れた層を指す。
前記インク受容層は、必要に応じ、その他の層を含んでいてもよい。光沢度及び染料インクによる印画濃度をさらに向上させる観点からは、前記第一層と前記第二層との間に、水溶性樹脂層を有することが好ましい。
形成されたインク受容層は、積層構造を明確に認識できる状態となっていてもよいし、層同士の界面が混ざり合って積層構造を明確に認識できない状態となっていてもよい。
インク受容層の総厚みとしては特に限定はないが、インク溶媒をより吸収する観点からは、10〜50μmが好ましく、25〜45μmがより好ましい。
以下、インク受容層中の各成分について説明する。
本発明におけるインク受容層中、前記第一層及び前記第二層は無機微粒子を少なくとも1種含有する。ここで、第一層中の無機微粒子と第二層中の無機微粒子とは、同一種であっても異なる種であってもよい。
無機微粒子は、必要に応じ、その他の層に含まれていてもよい。
更に、平均一次粒径が30nm以下のシリカ微粒子、平均一次粒径が30nm以下のコロイダルシリカ、平均一次粒径が20nm以下のアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2〜15nmの擬ベーマイトがより好ましく、特にシリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが好ましい。
本発明におけるインク受容層は(好ましくは第一層に)、硫黄系化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。
本発明における硫黄系化合物としては、チオエーテル系化合物、チオウレア系化合物、スルホキシド系化合物、チオシアン酸系化合物、スルフィン酸系化合物、ジスルフィド系化合物及び硫黄含有複素環式化合物から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
前記チオエーテル系化合物としては、下記一般式(A)で表される化合物が好ましく用いられる。
R1−(S−R3)m−S−R2 ・・・ 一般式(A)
本発明におけるインク受容層中の各層(第一層、第二層、最上層、及び、必要に応じて設けられる水溶性樹脂層)は、水溶性樹脂を少なくとも1種含有することが好ましい。
水溶性樹脂は、必要に応じ、その他の層に含まれていてもよい。
本発明におけるインク受容層は(好ましくは第一層に)、架橋剤の少なくとも一種を含有することが好ましい。
架橋剤を含有することにより、水溶性樹脂を架橋して硬膜することができる。
含ホウ素化合物としてはホウ酸、ホウ酸塩、及びホウ砂等があり、これらを1種または2種以上組みあわせることもできる。ホウ酸塩としては、オルトホウ酸塩、メタホウ酸塩、二ホウ酸塩、四ホウ酸塩、五ホウ酸塩等が挙げられる。
前記ホウ酸塩としては、前記で例示したホウ酸塩の可溶性塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)が好ましく、具体的には、Na2B4O7・10H2O、NaBO2・4H20、K2B4O7・5H2O、NH4HB4O7・3H2O、NH4BO2等が挙げられる。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、グルタールアルデヒド等のアルデヒド系化合物;ジアセチル、シクロペンタンジオン等のケトン系化合物;ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、2,4−ジクロロ−6−S−トリアジン・ナトリウム塩等の活性ハロゲン化合物;ジビニルスルホン酸、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノール、N,N’−エチレンビス(ビニルスルホニルアセタミド)、1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン等の活性ビニル化合物;ジメチロ−ル尿素、メチロールジメチルヒダントイン等のN−メチロール化合物;メラミン樹脂(例えば、メチロールメラミン、アルキル化メチロールメラミン);エポキシ樹脂;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物;米国特許第3017280号明細書、同第2983611号に記載のアジリジン系化合物;米国特許第3100704号明細書に記載のカルボキシイミド系化合物;グリセロールトリグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物;1,6−ヘキサメチレン−N,N’−ビスエチレン尿素等のエチレンイミノ系化合物;ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸等のハロゲン化カルボキシアルデヒド系化合物;2,3−ジヒドロキシジオキサン等のジオキサン系化合物;乳酸チタン、硫酸アルミ、クロム明ばん、カリ明ばん、酢酸ジルコニル、酢酸クロム等の金属含有化合物、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン化合物、アジピン酸ジヒドラジド等のヒドラジド化合物、オキサゾリン基を2個以上含有する低分子又はポリマー等である。
架橋剤のインク受容層中における総含有量としては、水溶性樹脂の総量100質量部に対して、5〜40質量部が好ましく、15〜35質量部がより好ましい。架橋剤の含有量が前記範囲であると、ひび割れ等の防止に有効である。
また、ホウ酸及び/又はその塩を用いる場合、ホウ酸及び/又はその塩の総量は、H3BO3換算でPVAに対して5〜40質量%が好ましく、より好ましくは15〜35質量%である。総量を前記範囲内にすることにより、調製する塗布液の粘度上昇を抑えつつ、成膜性及び耐水性を向上できる。
本発明のインク受容層は(好ましくは第一層に)、カチオン性化合物を少なくとも1種含有することが好ましい。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性金属化合物が挙げられる。
本発明に用いられるカチオン性化合物としては、例えばカチオン性ポリマーや水溶性金属化合物が挙げられる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000〜10万程度が好ましい。
[Al(OH)3]nAlCl3 ・・・ 式2
Aln(OH)mCl(3n−m)、0<m<3n ・・・ 式3
本発明におけるインク受容層の最上層は、コロイダルシリカを少なくとも1種含有する。最上層にコロイダルシリカを含有しない場合、光沢度が低下する。
コロイダルシリカは、必要に応じその他の層に含有されていてもよい。
本発明に用いられるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる二酸化ケイ素をコロイド状に水中に分散させたものである。本発明に用いられるコロイダルシリカは、白紙部光沢及びインク吸収性の観点から、平均一次粒径が20nm〜80nmのものが好ましく、更に20〜60nmのものが好ましい。
最上層中のコロイダルシリカの含有量としては、最上層中の全固形分に対して70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
本発明の支持体としては、プラスチック等の透明材料よりなる透明支持体、紙等の不透明材料からなる不透明支持体のいずれをも使用できる。インク受容層の透明性を生かす上では、透明支持体又は高光沢性の不透明支持体を用いることが好ましい。また、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスクを支持体として用いレーベル面側にインク受容層を付与することもできる。
上記透明支持体の厚みとしては、特に制限はないが、取り扱い易い点で、50〜200μmが好ましい。
白色顔料含有発泡ポリエステルフィルム(例えば、ポリオレフィン微粒子を含有させ、延伸により空隙を形成した発泡PET)も好適に挙げることができる。更に銀塩写真用印画紙に用いられるレジンコート紙等の樹脂被覆紙も好適である。
前記原紙の坪量は、質感の観点より、190〜230g/m2の範囲が好ましい。
原紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種類もしくは2種類以上混合して用いることができる。特に、写真印画紙用樹脂被覆紙支持体に用いられているような平滑な原紙を用いることが好ましい。
また、原紙には一般的な抄紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、アンカー剤、染料等の添加剤を適宜配合してもよい。基紙の抄造中にまたは抄造後に、カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどの表面平滑処理を施してもよい。
ポリオレフィン樹脂層表面の白色度としては、95%以上が好ましく、97%以上がより好ましい。白色度はISO−2470に基づいて、例えば、村上色彩科学(株)製のWMS−1で測定することができる。
蛍光増白剤は、ポリオレフィン樹脂と共に高温で溶融押し出しされるため高温に耐え得ることができ、かつ経時でブリード現象の起こり難いものが好ましい。このような蛍光増白剤として、ビス(ベンズオキサゾリル)スチルベン系、ビス(ベンズオキサゾリル)ナフタレン系の蛍光増白剤が好ましい。
また、インク受容層とは反対側のポリオレフィン樹脂層には、密度が0.950g/m3以上の高密度ポリエチレン樹脂を、全樹脂の30質量%以上(より好ましくは50質量%以上95質量%以下)含有させることが好ましい。
前記下塗り層は、インク受容層が塗設される前に、予めポリオレフィン樹脂層表面に塗布乾燥されたものであり、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。更に下引き層には、界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。
バックコート層中におけるポリウレタン樹脂の含有量としては、搬送精度の観点より、バックコート層の全固形分に対し、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に、少なくとも、無機微粒子を含有しゼータ電位が+10mV以上である第一塗布液と、無機微粒子を含有しゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第二塗布液と、コロイダルシリカを含有しゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第三塗布液と、を該支持体側からこの順(即ち、前記第一塗布液、前記第二塗布液、前記第三塗布液の順)となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含んで構成される。
上記製造方法では、他の塗布液を塗布してもよい。また、第三塗布液は支持体から最も離れた最上層として塗布することが好ましい。
上記製造方法中の各成分や各塗布液のゼータ電位等については、前述の「インクジェット記録媒体」の項で説明とおりであり、好ましい範囲も同様である。
前記第一塗布液は、無機微粒子を少なくとも1種含有する。
本発明による効果をより効果的に得る観点等からは、前記第一塗布液は、以下の形態が好ましい。
即ち、前記第一塗布液は、無機微粒子に加え、カチオン性分散剤及び水溶性樹脂を含むことが好ましい。
特に好ましくは、前記第一塗布液が、無機微粒子、カチオン性分散剤、水溶性樹脂、水溶性金属化合物、及び架橋剤を含む形態である。
また、前記第一塗布液のpHとしては、2〜5が好ましく、3〜4.5がより好ましい。
上記分散に用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的におこなうという点から、撹拌型分散機、コロイドミル分散機または高圧分散機が好ましい。
前記溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
前記第二塗布液は、無機微粒子を少なくとも1種含有する。
本発明による効果をより効果的に得る観点等からは、前記第二塗布液は、以下の形態が好ましい。
即ち、前記第二塗布液は、無機微粒子に加え、アニオン性分散剤及び水溶性樹脂を含むことが好ましい。
また、前記第二塗布液のpHとしては、7〜12が好ましく、8〜11.5がより好ましい。
分散に用いる分散機及び必要に応じて用いられる溶媒については前記第一塗布液と同様である。
前記第三塗布液は、コロイダルシリカを少なくとも1種含有する。第三塗布液は必要に応じ水溶性樹脂を含有してもよい。
また、前記第三塗布液のpHとしては、5〜11が好ましく、6〜10がより好ましい。
これらの塗布液は、含まれる成分を適宜前述の溶媒に添加し、撹拌、混合して調製することができる。
本発明において、第一塗布液、第二塗布液、及び第三塗布液(及び必要に応じ水溶性樹脂層用塗布液)の塗布は、これらの塗布液のうち少なくとも2つを同時重層塗布することにより行ってもよいし、各塗布液を逐次塗布することにより行ってもよいし、同時重層塗布と逐次塗布とを組み合わせて行ってもよい。
ここで、塗布は公知の塗布方式にて行うことができる。例えば、スライドビード方式、カーテン方式、エクストルージョン方式、エアナイフ方式、ロールコーティング方式、ケッドバーコーティング方式等が挙げられる。
一方、前記同時重層塗布は、第一塗布液、必要に応じ水溶性樹脂層用塗布液、第二塗布液、及び第三塗布液のうち少なくとも2つ(好ましくは全塗布液)を、乾燥工程を設けず同時に塗布する方法である。
上記のうち、各塗布液中の各成分の混合を抑制する観点や、生産効率の観点からは、全塗布液を同時重層塗布する形態が好ましく、中でも、スライドビード方式、カーテン方式等を用いた同時重層塗布がより好ましい。
第一塗布液の塗布量としては、50〜200ml/m2が好ましく、75〜150ml/m2がより好ましい。
第二塗布液の塗布量としては、50〜200ml/m2が好ましく、75〜150ml/m2がより好ましい。
第三塗布液の塗布量としては、1〜10ml/m2が好ましく、2〜5ml/m2がより好ましい。
水溶性樹脂層用塗布液を用いる場合、該塗布液の塗布量としては、1〜10ml/m2が好ましく、2〜6ml/m2がより好ましい。
前記塗布により形成された塗布膜(インク受容層)は、公知の方法により乾燥させることができる。
乾燥温度としては、支持体の耐熱性にも依存するが、10〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80℃である。
また、塗布後、インク受容層を充分に乾燥させた後、支持体に悪影響を与えない範囲で熱処理を行なうことにより、インク受容層の細孔容積を大きくできるので、インク吸収性が良好になり、さらにインク受容層の耐水性も向上させることができる。熱処理する温度は、支持体の耐熱性にも依存するが、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜60℃である。
<支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の基紙とした。抄造した基紙の一方の面に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出被覆し、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した(以下、この面を「オモテ面」ともいう)。もう一方の面には密度0.962g/cm3の高密度ポリエチレン樹脂70質量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30質量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した(以下、この面を「ウラ面」ともいう)。
以上により、ポリオレフィン樹脂被覆紙を得た。
以上により支持体を得た。
・ゼラチン ・・・ 100部
・スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 ・・・ 2部
・クロム明ばん ・・・ 8部
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)「シャロールDC−902P」と、(4)「ZA−30」と、(5)「30%メチオニンスルホキシド」と、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、分散液を45℃に加熱し20時間保持した。その後、分散液に(6)ホウ酸と、(7)ポリビニルアルコール溶解液と、(8)「スーパーフレックス650」と、を30℃で加え、第一塗布液(第一層用)を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(7))は、4.0:1であり、第一塗布液のpHは、3.8で酸性を示した。
得られた第一塗布液のゼータ電位を、大塚電子(株)製ゼータ電位・粒径システムELS-Z2を用いて測定したところ、表1に示す値であった。
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子) ・・・ 8.9部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 ・・・ 1.0部
(3)「シャロールDC−902P」(51.5%水溶液) ・・・0.78部
(分散剤、第一工業製薬(株)製)
(4)「ZA−30」 ・・・ 0.24部
(第一稀元素化学工業(株)製、酢酸ジルコニウム)
(5)30%メチオニンスルホキシド(硫黄系化合物) ・・・ 1.76部
(6)ホウ酸(架橋剤) ・・・ 0.4部
(7)ポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液 ・・・ 31.2部
〜溶解液の組成〜
・PVA235(鹸化度88%、重合度3500、(株)クラレ製)
・・・ 2.2部
・イオン交換水 ・・・ 28.2部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P)・・・ 0.7部
(協和発酵ケミカル(株))
・エマルゲン109P(界面活性剤、花王(株)製) ・・・ 0.1部
(8)「スーパーフレックス650」(カチオン性エマルション、第一工業製薬(株)製) ・・・ 3.1部
下記組成に示した、(1)気相法シリカ微粒子と、(2)イオン交換水と、(3)0.1Nアンモニア水と、を混合し、液液衝突型分散機(アルティマイザー、スギノマシン社製)を用いて分散させた後、(4)ポリビニルアルコール溶解液と、(5)ジエチレングリコールモノブチルエーテルと、(6)エマルゲン109Pと、を30℃で加え、第二塗布液(第二層用)を調製した。
シリカ微粒子と水溶性樹脂との質量比(PB比=(1):(4))は、4.5:1であり、第二塗布液のpHは、11でアルカリ性を示した。
得られた第二塗布液のゼータ電位を前記第一塗布液と同様にして測定したところ、表1に示す値であった。
(1)気相法シリカ微粒子(無機微粒子) ・・・ 10.0部
(AEROSIL300SF75、日本アエロジル(株)製)
(2)イオン交換水 ・・・ 630部
(3)0.1Nアンモニア水(関東化学(株)製) ・・・ 47.0部
(4)ポリビニルアルコール7%溶解液((株)クラレ製「PVA235」、鹸化度88%、重合度3500) ・・・ 318部
(5)ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P)(協和発酵ケミカル(株)) ・・・ 3.0部
(6)エマルゲン109P(界面活性剤、花王(株)製) ・・・ 10.0部
下記組成を混合し撹拌して、第三塗布液(最上層用)を調製した。
得られた第三塗布液のゼータ電位を前記第一塗布液と同様にして測定したところ、表1に示す値であった。
第三塗布液のpHは6.0であった。
〜 第三塗布液の組成 〜
(1)スノーテックス20L(日産化学(株)製コロイダルシリカ、平均一次粒子径45nm) ・・・ 2.5部
(2)イオン交換水 ・・・ 95.7部
(3)ポリビニルアルコール7%溶解液((株)クラレ製「PVA235」、鹸化度88%、重合度3500) ・・・ 1.8部
前記支持体の下塗り層上に、前記第一塗布液100ml/m2、水溶性樹脂層用塗布液(クラレ製の「PVA235」3%溶解液)5ml/m2、前記第二塗布液100ml/m2、及び前記第三塗布液4ml/m2を、該支持体側からこの順となるように、エクストルージョンダイコーターにて同時重層塗布して塗布膜を形成した。
得られた塗布膜を、0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却後、熱風乾燥機にて80℃(風速3〜8/秒)で乾燥させてインク受容層とした。
以上により、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体を得た。このインクジェット記録媒体は、最上層/第二層/水溶性樹脂層/第一層/支持体の積層構造となっている。
形成されたインク受容層(最上層/第二層/水溶性樹脂層/第一層)の総厚みは35μmであった。
上記で得られたインクジェット記録媒体について、以下の評価を行った。
(顔料インク適性)
純正インクセットを装填したインクジェットプリンター(エプソン(株)製の「PX−5500」)を用いて、各記録媒体上に黒のベタ画像をそれぞれ印画し、印画後の面状を確認した。さらに、面状確認結果を下記基準に従って評価した。評価結果を表1に示す。
A及びBであれば実用上許容範囲内である。
〜判定基準〜
A:大きな問題は観察されない。
B:ベタ画像の全面積に対し10%未満の領域に白濁がみられるが実用上許容範囲内である。
C:インク吸収不良により、ベタ画像の全面積に対し10%以上30%未満の領域に白濁がみられる。
D:インク吸収不良により、ベタ画像の全面積に対し30%以上60%未満の領域に白濁がみられる。
E:インク吸収不良により、ベタ画像の全面積に対し60%以上の領域に白濁がみられる。
印画前のインクジェット記録媒体のインク受容層表面における測定角度60度での光沢(度)を、デジタル変角光沢度計(UGV−50DP,スガ試験機(株)製)にて測定した。評価結果を表1に示す。
インクジェットプリンター(商品名:MP−950、キャノン(株)製)を用い、インクジェット記録媒体のインク受容層上にブラックインクを格子状の線状パターン(線幅0.28nm)に印画し、23℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に14日間保管の前後において、格子状の線状パターンを印画した領域の光学濃度(vis.)を測定し、この変動率を算出することにより経時にじみの評価指標とした。評価結果を表1に示す。
〜判定基準〜
A:10%未満
B:10〜30%
C:30〜50%
D:50〜70%
E:70%以上
上記インクジェットプリンタPMA−820を用いて、黒ベタの印画を行ない、得られた黒ベタ部の濃度を反射濃度計(Xrite938、Xrite社製)にて測定した。評価結果を表1に示す。
実施例1において、水溶性樹脂層用塗布液を塗布しなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2中、第二塗布液(第二層用)の調製において、アンモニアをトリエチルアミンに変更することにより、ゼータ電位を表1に示す値に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2中、第三塗布液(最上層用)の調製において、スノーテックス20LをスノーテックスOL(日産化学(株)製コロイダルシリカ、平均一次粒子径45nm)に変更することにより、ゼータ電位を表1に示す値に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2中、第一塗布液(第一層用)の調製において、「シャロールDC−902P」の添加量を0.52部に変更することにより、ゼータ電位を表1に示す値に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1において第一塗布液(第一層用)を塗布しなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1において第二塗布液(第二層用)を塗布しなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例1において第三塗布液(最上層用)を塗布しなかった以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
実施例2中、第二塗布液(第二層用)の調製において、0.1Nアンモニア水を添加しなかったことにより、ゼータ電位を表1に示す値に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を作製しようと試みたが、第二塗布液粘度が高く、インクジェット記録媒体は得られなかった。
第三塗布液(最上層用)の調製を、以下のように変更した以外は実施例1と同様にして作製した。
<第三塗布液(最上層用)>
実施例2中、第三塗布液(最上層用)の調製において、下記組成の液に変更することにより、ゼータ電位を表1に示す値に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を作製した。
(1)PL−3 ・・・ 2.5部
(扶桑化学(株)製コロイダルシリカ、平均一次粒子32nm)
(2)アルファイン83 ・・・ 0.1部
(大明化学工業株式会社製)
(3)イオン交換水 ・・・ 97.4部
実施例2中、第一塗布液(第一層用)の調製において、
「シャロールDC−902P」の添加量を0.18部に変更することにより、ゼータ電位を表1に示す値に変更した以外は実施例2と同様にしてインクジェット記録媒体を作製しようと試みたが、第一塗布液粘度が高く、インクジェット記録媒体は得られなかった。
Claims (3)
- 支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体であって、
前記インク受容層が、該支持体側から順に、
ゼータ電位が+10mV以上である第一塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第一層と、
ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第二塗布液を用いて形成され、無機微粒子を含有する第二層と、
ゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第三塗布液を用いて形成され、コロイダルシリカを含有する、前記支持体から最も離れた最上層と、
を含むことを特徴とするインクジェット記録媒体。 - 前記第一層と前記第二層との間に、水溶性樹脂層を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
- 支持体上に、少なくとも、
無機微粒子を含有しゼータ電位が+10mV以上である第一塗布液と、
無機微粒子を含有しゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第二塗布液と、
コロイダルシリカを含有しゼータ電位が−50mV以上−10mV以下である第三塗布液と、
を該支持体側からこの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含むことを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
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