JP2009081189A - 積層型電子部品 - Google Patents
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Abstract
【課題】高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能であると共に、デラミネーションといった不具合発生の可能性を低減することが可能な積層型電子部品を提供する。
【解決手段】積層型電子部品L1は、直方体形状の素体1と素体1内に配されたコイル導体10〜16とからなるインダクタ部を備えている。素体1は積層体であって、複数の磁性体部4と、複数の非磁性体部5とで構成される。非磁性体部5の内部には、コイル導体11,13,15,16が配されている。磁性体部4はフェライトを含み、非磁性体部5は、ZnOと、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が磁性体部よりも低い金属酸化物と、を含んでいる。
【選択図】図2
【解決手段】積層型電子部品L1は、直方体形状の素体1と素体1内に配されたコイル導体10〜16とからなるインダクタ部を備えている。素体1は積層体であって、複数の磁性体部4と、複数の非磁性体部5とで構成される。非磁性体部5の内部には、コイル導体11,13,15,16が配されている。磁性体部4はフェライトを含み、非磁性体部5は、ZnOと、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が磁性体部よりも低い金属酸化物と、を含んでいる。
【選択図】図2
Description
本発明は、インダクタ部を備える積層型電子部品に関する。
積層型電子部品の一種としての積層型のコモンモードチョークコイル(コモンモードフィルタ)の中には、インダクタ部を構成するコイル導体回りを形成する非磁性体にCu−Zn系フェライトを用いるものがある。非磁性体としてCu−Zn系フェライトを用いると、比誘電率が14〜16と比較的高い値になり、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性が不十分であるという問題がある。この問題に対して、上記非磁性体としてセラミックやガラスを用いることが提案されている(下記特許文献1参照)。
特開2002−270451号公報
ところで、上記非磁性体として用いるセラミックは、いかなる種類のセラミックでも好適であるというわけではない。例えば、ある種のセラミックを用いると、必要とされる程度にはデファレンシャルモード特性が高周波帯域まで伸びない場合もある。また、ある種のセラミックを用いると、磁性体層と非磁性体層との間にいわゆるデラミネーションが発生する場合もある。
そこで本発明では、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能であると共に、デラミネーションといった不具合発生の可能性を低減することが可能な積層型電子部品を提供することを目的とする。
本発明に係る積層型電子部品は、インダクタ部を備えた積層型電子部品であって、インダクタ部が、磁性体部と、磁性体部に積層された非磁性体部と、非磁性体部の内部に配されたコイル導体と、を有し、非磁性体部が、ZnOと、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が磁性体部よりも低い金属酸化物と、を含むことを特徴とする。
本発明によれば、非磁性体部がZnOを含むことによって、非磁性体部から磁性体部にZn成分が拡散される。Zn成分の拡散により磁性体部と非磁性体部とのなじみがよくなり、これらの間における接合性が向上する。ただし、ZnOはその線膨張係数が小さいことから、ZnOを単独で非磁性体部に含めた場合には、クラック等が発生してしまうおそれがある。そこで本発明では、ZnOよりも大きな線膨張係数を有する金属酸化物を非磁性体部に含めることで、クラック等の発生を抑止している。非磁性体部と磁性体部との接合性が向上し且つクラック等が生じにくくなるため、デラミネーションが発生する可能性が低減された積層型電子部品を提供することができる。
また、ZnOは比誘電率が小さいため、コイル導体の浮遊容量を低減することができる。その結果、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能となる。ただし、非磁性体部に含める金属酸化物によっては、ZnOによる比誘電率低下の効果がかかる金属酸化物で打ち消されてしまい、非磁性体部の比誘電率が高くなってしまうおそれがある。そこで本発明では、比誘電率が磁性体部よりも低い金属酸化物を用いることにより、非磁性体部の比誘電率を低く維持できるようにしている。
また、本発明の積層型電子部品は、磁性体部がフェライトを含み、金属酸化物が、NiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つを含むことが好ましい。NiO、MgO、及びCaOは、フェライトに容易に拡散する。このような金属酸化物を非磁性体部に含めた場合には、金属酸化物が非磁性体部から磁性体部内に拡散され、これによって非磁性体部と磁性体部との接合強度が増すことになる。よって、デラミネーションの発生をより低減することができる。
また、本発明の積層型電子部品は、非磁性体部が、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方を含むことが好ましい。Bi2O3やホウ珪酸ガラスを含めることによって非磁性体部を低温で焼結することが可能となり、製品毎の焼結性のばらつきが抑えることができる。
また、本発明の積層型電子部品は、インダクタ部が、磁性体部とは異なる他の磁性体部を更に有し、当該他の磁性体部は、磁性体部とで非磁性体部を挟むように配置されることが好ましい。この場合、非磁性体部内に配されたコイル導体は、磁性体部と磁性体部との間に位置することとなる。したがって、コイルの磁気結合が向上されることとなり、より高周波の領域において高いインピーダンスが得られ、ノイズ成分の減衰特性を向上させることができる。
また、本発明の積層型電子部品は、インダクタ部が、コイル導体を複数有するコモンモードチョークコイルであることが好ましい。この場合、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能であると共に、デラミネーションといった不具合の発生を低減することが可能なコモンモードチョークコイルとして、積層型電子部品を提供することができる。
また、本発明の積層型電子部品は、電圧非直線特性を発現するバリスタ層と、当該バリスタ層を挟むように配された複数のバリスタ導体と、を有するバリスタ部を更に備えることが好ましい。この場合、バリスタ機能を更に備えた積層型電子部品を提供することができる。
また、本発明の積層型電子部品は、バリスタ層のうちバリスタ導体に挟まれた領域にはCu成分が含まれないことが好ましい。バリスタ特性(電圧非直線特性)は、バリスタ層のバリスタ導体に挟まれた領域で発現する。この領域にCu成分が含まれると、バリスタ特性が悪化し、所望のものとならない可能性が生じる。かかる領域にCu成分を含まないとすることで、バリスタ特性の悪化を抑制することができる。
また、本発明の積層型電子部品は、インダクタ部とバリスタ部とは中間部を介して積層され、中間部は、インダクタ部及びバリスタ部とは異なる組成を有すると共にCu成分を含有しないことが好ましい。インダクタ部とバリスタ部との間に、これらとは組成が異なる中間部を設けることにより、インダクタ部がバリスタ部から受ける影響、およびバリスタ部がインダクタ部から受ける影響を緩和することができる。また、この中間部はCu成分を含有していないので、Cu成分が拡散されることによるバリスタ特性の悪化をより確実に抑制できる。
また、本発明の積層型電子部品は、絶縁体層と、絶縁体層を挟むように配された複数のコンデンサ電極と、を有するコンデンサ部を更に備え、インダクタ部とコンデンサ部とがLCフィルタとして機能することが好ましい。この場合、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能であると共に、デラミネーションといった不具合の発生を低減することが可能なLCフィルタとして、積層型電子部品を提供することができる。
本発明によれば、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能であると共に、デラミネーションといった不具合発生の可能性を低減することが可能な積層型電子部品を提供することができる。
本発明の知見は、例示のみのために示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解することができる。引き続いて、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。また、説明中、「上」及び「下」なる語を使用することがあるが、これは各図の上方向及び下方向に対応したものである。
(第1の実施形態)
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る積層型電子部品の斜視図である。図2は、第1の実施形態に係る積層型電子部品の断面構成を説明するための模式図である。図3は、第1の実施形態に係る積層型電子部品に含まれる素体の分解斜視図である。
本実施形態に係る積層型電子部品L1は、図1〜図3に示されるように、直方体形状の素体1と素体1内に配されたコイル導体10〜16とからなるインダクタ部と、素体1の側面に形成された端子電極2,3とを備えている。
素体1は積層体であって、図2,3に示すように、複数(本実施形態においては、4つ)の磁性体部4と、磁性体部4に積層された複数(本実施形態においては、3つ)の非磁性体部5とにより構成される。磁性体部4及び非磁性体部5は、非磁性体部5を磁性体部4と磁性体部4との間に挟むようにして積層されている。磁性体部4は、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、14層)の磁性体層18a〜18nからなっており、非磁性体部5は、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、6層)の非磁性体層19a〜19fからなっている。磁性体層18a〜18n及び非磁性体層19a〜19fは、グリーンシートが焼成されることにより構成される。実際の積層型電子部品L1において、これらの層は、各層の間において境界が視認できない程度に一体化されている。
コイル導体10は、図3に示すように、導体パターンC1,C2が電気的に接続されることにより形成される。コイル導体11,13,15,16は、それぞれ導体パターンC3,C7,C11,C12により構成される。コイル導体12は、導体パターンC4〜C6が電気的に接続されることにより形成される。コイル導体14は、導体パターンC8〜C10が電気的に接続されることにより形成される。なお、各コイル導体11,13,15を構成する導体パターンC3,C7,C11は、各コイル導体10,12,14,16をそれぞれ電気的に接続する接続導体として機能する。
導体パターンC1は、コイル導体10の略1/2ターンに相当し、磁性体層18b上で略L字に形成されている。導体パターンC1の一端には、導出部C1aが一体的に形成されている。導体パターンC1の導出部C1aは、磁性体層18bの縁に引き出され、素体1の側面に露出している。このため、導出部C1aは、端子電極2に電気的に接続されることとなる。導体パターンC1の他端部には、磁性体層18bを厚み方向に貫通するスルーホールD1が形成されている。導体パターンC1は、その他端部においてスルーホールD1に電気的に接続されている。このため、導体パターンC1は、積層された状態で、スルーホールD1を介して、対応する導体パターンC2と電気的に接続される。
導体パターンC2,C12は、それぞれコイル導体10,16の略1ターンに相当し、各磁性体層18c,18m上でスパイラル状に巻回されている。各導体パターンC2,C12の一端部は、積層された状態でスルーホール各D1,D18と電気的に接続されている。各導体パターンC2,C12の他端部には、各磁性体層18c,18mを厚み方向に貫通するスルーホールD2,D12が形成されている。このため、各導体パターンC2,C12は、積層された状態で、スルーホールD2,D12を介して、対応する各導体パターンC13,C19とそれぞれ電気的に接続される。
導体パターンC3,C7,C11は、それぞれコイル導体11,13,15の略1ターンに相当し、各非磁性体層19b,19d,19f上でスパイラル状に巻回されている。各導体パターンC3,C7,C11の一端部は、積層された状態で各スルーホールD13,D15,D17と電気的に接続されている。各導体パターンC3,C7,C11の他端部には、各非磁性体層19b,19d,19fを厚み方向に貫通する各スルーホールD3,D7,D11が形成されている。このため、各導体パターンC3,C7,C11は、積層された状態で、各スルーホールD3,D7,D11を介して、対応する各導体パターンC14,C16,C18とそれぞれ電気的に接続される。
導体パターンC4〜C6は、それぞれコイル導体12の略1ターンに相当し、各磁性体層18e〜18g上でスパイラル状に巻回されている。各導体パターンC4〜C6の一端部は、積層された状態で各スルーホールD14,D4,D5と電気的に接続されている。各導体パターンC4〜C6の他端部には、各磁性体層18e〜18gを厚み方向に貫通する各スルーホールD4〜D6が形成されている。このため、各導体パターンC4〜C6は、積層された状態で、各スルーホールD4〜D6を介して、対応する各導体パターンC5,C6,C15とそれぞれ電気的に接続される。
導体パターンC8〜C10は、それぞれコイル導体14の略1ターンに相当し、各磁性体層18i〜18k上でスパイラル状に巻回されている。各導体パターンC8〜C10の一端部は、積層された状態で各スルーホールD16,D8,D9と電気的に接続されている。各導体パターンC8〜C10の他端部には、各磁性体層18i〜18kを厚み方向に貫通する各スルーホールD8〜D10が形成されている。このため、各導体パターンC8〜C10は、積層された状態で、各スルーホールD8〜D10を介して、対応する各導体パターンC9,C10,C17とそれぞれ電気的に接続される。
導体パターンC13,C15,C17は、各非磁性体層19a,19c,19e上で島状に形成されている。各導体パターンC13,C15,C17は、積層された状態で各スルーホール電極D2,D6,D10と電気的に接続されている。また、各導体パターンC13,C15,C17の中央には、各非磁性体層19a,19c,19eを厚み方向に貫通する各スルーホールD13,D15,D17が形成されている。このため、各導体パターンC13,C15,C17は、積層された状態で、各スルーホールD13,D15,D17を介して、対応する各導体パターンC3,C7,C11とそれぞれ電気的に接続される。
導体パターンC14,C16,C18は、各磁性体層18d,18h,18l上で島状に形成されている。各導体パターンC14,C16,C18は、積層された状態で、各スルーホールD3,D7,D11と電気的に接続されている。また、各導体パターンC14,C16,C18の中央には、各磁性体層18d,18h,18lを厚み方向に貫通する各スルーホールD14,D16,D18が形成されている。このため、各導体パターンC14,C16,C18は、積層された状態で、各スルーホールD14,D16,D18を介して、対応する各導体パターンC4,C8,C12とそれぞれ電気的に接続される。
導体パターンC19は、磁性体層18n上で略I字状に形成されている。導体パターンC19の一端部は、積層された状態で、スルーホールD12と電気的に接続されている。導体パターンC19の他端部には、導出部C19aが一体的に形成されている。導体パターンC19の導出部C19aは、磁性体層18nの縁に引き出され、素体1の側面(導体パターンC1が露出する側面に対向する側面)に露出している。このため、導出部C19aは、端子電極3と電気的に接続されることとなる。
非磁性体層19a〜19fは、ZnOと金属酸化物とを含んでいる。かかる金属酸化物としては、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が磁性体層18a〜18nよりも低いものが用いられ、本実施形態ではNiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つが用いられる。更に、非磁性体層19a〜19fは、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方を含んでいる。
磁性体層18a〜18nは、フェライト材料を含んでいる。本実施形態ではかかるフェライト材料としてNi−Cu−Zn系フェライトを用いるが、Ni−Zn系フェライトやNi−Zn−Mg系フェライトを用いるとしてもよい。
次に、図3を参照して、上述構成を有する積層型電子部品L1の製造方法について説明する。
まず、磁性体層18a〜18nとなる磁性体グリーンシートを用意する。磁性体グリーンシートは、フェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)を原料としたスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。磁性体グリーンシートの厚みは、例えば70μm程度である。
また、非磁性体層19a〜19fとなる非磁性体グリーンシートを用意する。非磁性体グリーンシートは、ZnOを主原料とし、NiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つと、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方と、を含有したスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。Bi2O3及びホウ珪酸ガラスをスラリーに含有させることにより、非磁性体部5を低温で焼結することが可能となり、積層型電子部品L1の焼結性のばらつきが抑えることができる。非磁性体グリーンシートの厚みは、例えば70μm程度である。
次に、磁性体層グリーンシート及び非磁性体グリーンシートの所定の位置、すなわちスルーホールD1〜D18を形成する予定位置に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。そして、磁性体層グリーンシート及び非磁性体グリーンシートの上に、各導体パターンC1〜C19をそれぞれ形成する。各導体パターンC1〜C19は、銀又はニッケルを主成分とするペーストをメタルマスク等にて印刷した後、乾燥することによって形成される。各スルーホールには、各導体パターンを形成する際に、導体ペーストが充填されることとなる。
続いて、磁性体グリーンシート及び非磁性体グリーンシートを順次積層して圧着し、チップ単位に切断した後に所定温度(例えば、840〜900度)にて焼成する。これにより、素体1が形成されることとなる。素体1は、例えば、焼成後における長手方向の長さが3.2mm、幅が2.5mm、高さが1.3mmとなるようにする。
続いて、この素体1に端子電極2,3を形成する。これにより、積層型電子部品L1が完成する。端子電極2,3は、素体1の表面にそれぞれ銀、ニッケル又は銅を主成分とする電極ペーストを塗布して、所定温度(例えば、680〜740℃程度)で焼付けを行い、さらに電気めっきを施すことにより形成される。この電気めっきとしては、Cu、Ni及びSn等を用いることができる。
以上のように、第1の実施形態では、非磁性体部5を構成する非磁性体層19a〜19fにZnOを含めることとしている。これによって、非磁性体層19a〜19fから磁性体層18a〜18nにZn成分が拡散され、非磁性体部5と磁性体部4とのなじみがよくなり、これらの間における接合性が向上する。ただし、ZnOはその線膨張係数が比較的小さいことから、ZnOを単独で非磁性体層19a〜19fに含めた場合にはクラック等が発生してしまうおそれがあるため、これを抑止する目的で、NiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つを非磁性体層19a〜19fに含めている。NiO、MgO、及びCaOはZnOよりも線膨張係数が大きいため、ZnOによるクラックの発生を抑えることができる。また、NiO、MgO、及びCaOはフェライトに拡散しやすいため、磁性体部4と非磁性体部5との接合強度が増すことになる。このように第1の実施形態によれば、磁性体部4と非磁性体部5との接合性が向上し、且つクラック等が生じにくくなるため、デラミネーションが発生する可能性を低減することができる。
また、ZnOは比誘電率が小さいため、コイル導体10〜16の浮遊容量を低減することができ、その結果、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能となる。非磁性体層19a〜19fに含める金属酸化物の種類によっては、ZnOによる比誘電率の低下がかかる金属酸化物で打ち消されてしまい、非磁性体層19a〜19fの比誘電率が高くなってしまうおそれがあるが、第1の実施形態では、比誘電率が磁性体層18a〜18nよりも低いNiO、MgO、CaOを用いるため、非磁性体層19a〜19fの比誘電率を低く維持することができる。よって、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を確実に向上させることができる。
第1の実施形態においては、コイル導体11,13,15,16がそれぞれ非磁性体部5の内部に設けられ、各非磁性体部5は各磁性体部4によって隔てられている。このため、素体1が全て磁性体によって形成されその内部にコイル導体が配されている場合と比べて、コイル導体10〜16に電流が流れることにより発生する磁界の大きさが小さくなる。この結果、各磁性体層部4において磁気飽和が抑制されることとなる。したがって、端子電極2,3を介して大きな電流を流した場合でもインダクタンス値の低下を抑えることができ、直流重畳特性の改善を図ることができることとなる。
また、第1の実施形態では、各コイル導体10,12,14,16となる導体パターンC1,C2,C4〜C6,C8〜C10,C12は、磁性体部内に位置している。つまり、コイル導体10,12,14,16は非磁性体部5に接しないようになっている。このため、この積層型電子部品L1に直流電流を流したときに各コイル導体10,12,14,16の周囲に発生する磁束Fが、非磁性体部5によって阻害されることがほとんどない(図2参照)。この結果、積層型電子部品L1の初期インダクタンス値を高くすることが可能となる。
(第2の実施形態)
図4は、第2の実施形態に係る積層型電子部品の斜視図である。図5は、第2の実施形態に係る積層型電子部品に含まれる素体の分解斜視図である。
本実施形態に係る積層型電子部品L2は、コモンモードチョークコイルの機能を備えるものである。積層型電子部品L2は、図4、図5に示されるように、直方体形状の素体21と素体21の内部に配されたコイル導体32,33とからなるインダクタ部と、素体21の側面に形成された端子電極23〜26とを備えている。コイル導体32とコイル導体33とは互いに磁気結合し、これによってインダクタ部はコモンモードチョークコイルをなす。
素体21は積層体であって、図5に示すように、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、2層)の磁性体層27a〜27bからなる磁性体部28と、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、2層)の磁性体層27c〜27dからなる磁性体部30と、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、5層)の非磁性体層29a〜29eからなる非磁性体部31と、を有している。磁性体部28,30、及び非磁性体部31は、磁性体部28と磁性体部30との間に非磁性体部31を挟むようにして積層されている。磁性体層27a〜27d及び非磁性体層29a〜29eは、グリーンシートが焼成されることにより構成される。実際の積層型電子部品L2において、これらの層は、各層の間において境界が視認できない程度に一体化されている。
コイル導体32,33は、素体21における非磁性体部31の内部に配されている。コイル導体32は、導体パターンE1,E2が電気的に接続されることにより形成される。コイル導体33は、導体パターンE3,E4が電気的に接続されることにより形成される。
導体パターンE1は、非磁性体層29b上でスパイラル状に形成されている。導体パターンE1の外側端部は、非磁性体層29bの縁に引き出され、素体21の側面に露出している。このため、導体パターンE1は、端子電極23に電気的に接続されることとなる。導体パターンE1の内側端部には、非磁性体層29bを厚み方向に貫通するスルーホールF1が形成されている。導体パターンE1は、その内側端部においてスルーホールF1と電気的に接続されている。このため、導体パターンE1は、積層された状態で、スルーホールF1を介して、対応する導体パターンE2と電気的に接続される。
導体パターンE2は、非磁性体層29c上で略L字に形成されている。導体パターンE2の一端部は、非磁性体層29cの縁に引き出され、素体21の側面(導体パターンE1が露出する側面に対向する側面)に露出している。このため、導体パターンE2は、端子電極24に電気的に接続されることとなる。導体パターンE2の他端部は、スルーホールF1が形成された位置、すなわち導体パターンE1の内側端部に対応する位置まで伸びており、積層された状態でスルーホールF1と電気的に接続される。これにより、導体パターンE1と導体パターンE2とは相互に電気的に接続され、コイル導体32を構成することとなる。
導体パターンE3は、非磁性体層29d上で略L字に形成されている。導体パターンE3の一端部は、非磁性体層29dの縁に引き出され、素体21の側面(導体パターンE1が露出する側面に対向する側面)に露出している。このため、導体パターンE3は、端子電極26に接続されることとなる。導体パターンE2の他端部には、非磁性体層29dを厚み方向に貫通するスルーホールF2が形成されている。導体パターンE3は、その他端部においてスルーホールF2に電気的に接続されている。このため、導体パターンE3は、積層された状態で、スルーホールF2を介して、対応する導体パターンE4と電気的に接続される。
導体パターンE4は、非磁性体層29e上でスパイラル状に形成されている。導体パターンE4の外側端部は、非磁性体層29eの縁に引き出され、素体21の側面(導体パターンE1が露出する側面)に露出している。このため、導体パターンE4は、端子電極25に電気的に接続されることとなる。導体パターンE4の内側端部は、スルーホールF2が形成された位置、すなわち導体パターンE3の他端部に対応する位置まで伸びており、積層された状態でスルーホールF2と電気的に接続される。これにより、導体パターンE3と導体パターンE4とは相互に電気的に接続され、コイル導体33を構成することとなる。
非磁性体層29a〜29eは、ZnOと金属酸化物とを含んでいる。かかる金属酸化物として、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が磁性体層27a〜27dよりも低いものが用いられ、本実施形態ではNiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つが用いられる。更に、非磁性体層29a〜29eは、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方を含んでいる。
磁性体層27a,27bからなる磁性体部28は、非磁性体層29aの上に位置しており、コイル導体32を保護するためのベース層として機能する。また、磁性体層27c,27dからなる磁性体部30は、非磁性体層29eの下に位置しており、コイル導体33を保護するためのベース層として機能する。磁性体層27a〜27dは、フェライト材料を含んでいる。本実施形態ではかかるフェライト材料としてNi−Cu−Zn系フェライトを用いるが、Ni−Zn系フェライトやNi−Zn−Mg系フェライトを用いるとしてもよい。なお、磁性体層27a,27bは、素体21の厚みを所定の寸法に調整するためのものでもある。したがって磁性体部28を構成する磁性体層の数は2層に限られるものではなく、これ以上であってもこれ以下であってもよい。磁性体部30を構成する磁性体層も同様であり、2層に限られるものではない。
次に、図5を参照して、上述構成を有する積層型電子部品L2の製造方法について説明する。
まず、磁性体層27a〜27dとなる磁性体グリーンシートを用意する。磁性体グリーンシートは、フェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)を原料としたスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。磁性体グリーンシートの厚みは、例えば20μm程度である。
また、非磁性体層29a〜29eとなる非磁性体グリーンシートを用意する。非磁性体グリーンシートは、ZnOを主原料とし、NiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つと、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方と、を含有したスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。Bi2O3及びホウ珪酸ガラスをスラリーに含有させることにより、非磁性体部31を低温で焼結することが可能となり、積層型電子部品L2の焼結性のばらつきが抑えることができる。非磁性体グリーンシートの厚みは、例えば20μm程度である。
次に、各非磁性体グリーンシートの所定の位置、すなわちスルーホールF1,F2を形成する予定位置に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。そして、各非磁性体グリーンシートの上に、各導体パターンE1〜E4をそれぞれ形成する。各導体パターンE1〜E4は、銀又はニッケルを主成分とするペーストをメタルマスク等にて印刷した後、乾燥することによって形成される。各スルーホールには、各導体パターンを形成する際に、導体ペーストが充填されることとなる。
続いて、磁性体グリーンシート及び非磁性体グリーンシートを順次積層して圧着し、チップ単位に切断した後に所定温度(例えば、840〜900度)にて焼成する。これにより、素体21が形成されることとなる。素体21は、例えば、焼成後における長手方向の長さが1.25mm、幅が1.0mm、高さが0.5mmとなるようにする。得られた素体21に端子電極23〜26を形成する。これにより、積層型電子部品L2が完成する。なお、端子電極23〜26の形成方法は、第1の実施形態における端子電極2,3の形成方法と同様である。
以上のように、第2の実施形態では、非磁性体層29a〜29eにZnOを含めることとしている。これによって、第1の実施形態と同様の理由により、デラミネーションが発生する可能性を低減することができるうえ、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を確実に向上させることができる。
第2の実施形態では、層27a〜27dを磁性体とし、層29a〜29eを非磁性体としている。そのため、コイル導体32,33は非磁性体に接することとなる。この場合、コイルの磁気結合が向上されることとなり、高周波の領域において高いインピーダンスが得られ、積層型電子部品L2を、より高周波領域におけるノイズ成分の減衰特性を向上させることが可能なコモンモードチョークコイルとして機能させることができる。
なお、層29aや層29eは磁性体であってもよい。この場合にもコイルの磁気結合が向上されることとなり、高周波の領域において高いインピーダンスが得られ、積層型電子部品L2は高周波数帯域に対応可能なコモンモードチョークコイルとして機能する。ただし、ノイズ成分の減衰特性をより高周波数帯域で向上させるという観点からすれば、層29a,29eは非磁性体とすることが好ましい。
(第3の実施形態)
(第3の実施形態)
図6は、第3の実施形態に係る積層型電子部品の斜視図である。図7は、第3の実施形態に係る積層型電子部品に含まれる素体の分解斜視図である。図8は、第3の実施形態に係る積層型電子部品の等価回路図である。
本実施形態に係る積層型電子部品L3は、コモンモードチョークコイルの機能とバリスタの機能とを備えるものである。積層型電子部品L3は、図6、図7に示すように、直方体形状の素体41と、素体41の内部に配されたコイル導体42,43と、素体41の内部に配されたグランド電極J1〜J5及びホット電極K1〜K4と、素体41の側面に形成された端子電極44,46,48,50,52とを備えている。また、回路構成としては、積層型電子部品L3は、図8に示すように、複数(本実施形態では2つ)のコイルI1,I2と、複数(本実施形態では4つ)のバリスタV2〜V5とを備えている。コイル導体I1,I2及びバリスタV2〜V5は、π型の回路を構成している。
素体41は積層体であって、図7に示すように、第1〜第3の焼結体53〜55からなっている。第1〜第3の焼結体53〜55は、境界が視認できない程度に一体化されている。
第1の焼結体53は、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、4層)の磁性体層57a〜57dからなる磁性体部58と、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、3層)の磁性体層57e〜57gからなる磁性体部59と、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、4層)の非磁性体層60a〜60dからなる非磁性体部61と、を有している。磁性体部58,59及び非磁性体部61は、磁性体部58と磁性体部59との間に非磁性体部61を挟むようにして積層されている。実際の積層型電子部品L3において、磁性体層57a〜57g及び非磁性体層60a〜60dは、各層の間において境界が視認できない程度に一体化されている。なお、本実施形態では層57dを磁性体層としているが、非磁性体層としてもよい。また、層60dを非磁性体層としているが、磁性体層としてもよい。
第1の焼結体53の非磁性体部61の内部には、コイル導体42,43が配されている。第1の焼結体53とコイル導体42,43とは、インダクタ部を構成している。コイル導体42とコイル導体43とは互いに磁気結合し、これによってインダクタ部はコモンモードチョークコイルをなす。
コイル導体42は、導体パターンG1,G2が電気的に接続されることにより形成される。導体パターンG1は、非磁性体層60a上でスパイラル状に形成されている。導体パターンG1の外側端部は、非磁性体層60aの縁に引き出され、素体41の側面に露出している。このため、導体パターンG1は、端子電極48に電気的に接続されることとなる。導体パターンG1の内側端部には、非磁性体層60aを厚み方向に貫通するスルーホールH1が形成されている。導体パターンG1は、その内側端部においてスルーホールH1と電気的に接続されている。このため、導体パターンG1は、積層された状態で、スルーホールH1を介して、対応する導体パターンG2と電気的に接続される。
導体パターンG2は、非磁性体層60b上でスパイラル状に形成されている。導体パターンG2の外側端部は、非磁性体層60bの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG1が露出する側面に対向する側面)に露出している。このため、導体パターンG2は、端子電極44に電気的に接続されることとなる。導体パターンG2の内側端部は、その位置が、スルーホールH1が形成された位置、すなわち導体パターンG1の内側端部に対応しており、積層された状態でスルーホールH1と電気的に接続される。これにより、導体パターンG1と導体パターンG2とは相互に電気的に接続され、コイル導体42がインダクタ部に構成される。コイル導体42は、図8に示すコイルI1に相当する。
コイル導体43は、導体パターンG3,G4が電気的に接続されることにより形成される。導体パターンG3は、非磁性体層60c上でスパイラル状に形成されている。導体パターンG3の外側端部は、非磁性体層60cの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG1が露出する側面に対向する側面)に露出している。このため、導体パターンG3は、端子電極46に電気的に接続されることとなる。導体パターンG3の内側端部には、非磁性体層60cを厚み方向に貫通するスルーホールH2が形成されている。導体パターンG3は、その内側端部においてスルーホールH2に電気的に接続されている。このため、導体パターンG3は、積層された状態で、スルーホールH2を介して、対応する導体パターンG4と電気的に接続される。
導体パターンG4は、非磁性体層60d上でスパイラル状に形成されている。導体パターンG4の外側端部は、非磁性体層60dの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG1が露出する側面)に露出している。このため、導体パターンG4は、端子電極50に電気的に接続されることとなる。導体パターンG4の内側端部は、その位置が、スルーホールH2が形成された位置、すなわち導体パターンG3の内側端部に対応しており、積層された状態でスルーホールH2と電気的に接続される。これにより、導体パターンG3と導体パターンG4とは相互に電気的に接続され、コイル導体43がインダクタ部に構成される。コイル導体43は、図8に示すコイルI2に相当する。
非磁性体層60a〜60dは、ZnOと金属酸化物とを含んでいる。かかる金属酸化物として、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が磁性体層57a〜57gよりも低いものが用いられ、本実施形態ではNiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つが用いられる。更に、非磁性体層60a〜60dは、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方を含んでいる。なお、非磁性体層60a〜60dはCu成分を含有していてもよい。
磁性体層57a〜57dからなる磁性体部58は、非磁性体層60aの上に位置しており、コイル導体42を保護するためのベース層として機能する。また、磁性体層57e〜57gからなる磁性体部59は、磁性体層60dの下に位置しており、コイル導体43を保護するためのベース層として機能する。磁性体層57a〜57gは、フェライト材料を含んでいる。本実施形態ではかかるフェライト材料としてNi−Cu−Zn系フェライトを用いるが、Ni−Zn系フェライトやNi−Zn−Mgを用いるとしてもよい。なお、磁性体層57a〜57gは、素体41の厚みを所定の寸法に調整するためのものでもある。したがって磁性体部58を構成する磁性体層の数は4層に限られるものではなく、これ以上であってもこれ以下であってもよい。磁性体部59を構成する磁性体層の数も同様であり、3層に限られるものではない。
第2の焼結体54(中間部)は、電気絶縁性を有する複数(本実施形態においては、2層)の中間層64a,64bからなっている。第2の焼結体54は、第1及び第3の焼結体53,55とは異なる組成を有している。より具体的には、第2の焼結体54の中間層64a,64bは、ZnO及びFe2O3を主成分としたセラミックス材料から構成されている。なお、中間層64a,64bはCu成分を含有しないこととする。なお、第2の焼結体54を構成する中間層の数は2層に限られるものではなく、これ以上であってもこれ以下であってもよい。
第3の焼結体55は、電圧非直線特性を発現する複数(本実施形態においては、10層)のバリスタ層66a〜66jが積層されてなる。第3の焼結体55の内部には、バリスタ層66b〜66jを挟むようにグランド電極J1〜J5(バリスタ導体)及びホット電極K1〜K4(バリスタ導体)が配されており、第3の焼結体55と、グランド電極J1〜J5と、ホット電極K1〜K4とがバリスタ部を構成している。バリスタ部と、第1の焼結体53とコイル導体42,43と有するインダクタ部とは、第2の焼結体54を介して積層されている。
バリスタ層66a〜66jはグリーンシートが焼成されることにより構成され、上からこの順で積層されている。なお、実際の積層型電子部品L3において、バリスタ層66a〜66jは、各層の間において境界が視認できない程度に一体化されている。
グランド電極J1〜J5は、バリスタ層66b,66d,66f,66h,66j上で略矩形状に形成されている。グランド電極J1〜J5はバリスタ層66b,66d,66f,66h,66jの縁に引き出され、素体41の一対の側面(導体パターンG1〜G4が露出する側面と交差する側面)に露出している。このため、グランド電極J1〜J5は、端子電極52に電気的に接続されることとなる。
ホット電極K1は、バリスタ層66c上で略矩形状に形成されている。ホット電極K1はバリスタ層66cの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG3が露出する側面)に露出している。このため、66cは、端子電極46に電気的に接続されることとなる。ホット電極K2は、バリスタ層66e上で略矩形状に形成されている。
ホット電極K2はバリスタ層66eの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG2が露出する側面)に露出している。このため、ホット電極K2は、端子電極44に電気的に接続されることとなる。
ホット電極K3は、バリスタ層66g上で略矩形状に形成されている。ホット電極K3はバリスタ層66gの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG4が露出する側面)に露出している。このため、ホット電極K3は、端子電極50に電気的に接続されることとなる。
ホット電極K4は、バリスタ層66i上で略矩形状に形成されている。ホット電極K4はバリスタ層66iの縁に引き出され、素体41の側面(導体パターンG1が露出する側面)に露出している。このため、ホット電極K4は、端子電極48に電気的に接続されることとなる。
ホット電極K1とグランド電極J1,J2とが積層方向から見たときにバリスタ層66b,66cを介して一部が重なりあい対向することで、図8に示すバリスタV4がバリスタ部に構成される。ホット電極K2とグランド電極J2,J3とが積層方向から見たときにバリスタ層66d,66eを介して一部が重なりあい対向することで、図8に示すバリスタV2がバリスタ部に構成される。ホット電極K3とグランド電極J3,J4とが積層方向から見たときにバリスタ層66f,66gを介して一部が重なりあい対向することで、図8に示すバリスタV5がバリスタ部に構成される。ホット電極K4とグランド電極J4,J5とが積層方向から見たときにバリスタ層66h,66iを介して一部が重なりあい対向することで、図8に示すバリスタV3がバリスタ部に構成される。
バリスタ層66a〜66jは、例えば、ZnOを主成分とするセラミックス材料から構成される。このセラミックス材料中には、添加成分としてPr、Bi、Co、Al等を含んでいても良い。Prに加えてCoを含むと、優れたバリスタ特性を有するものとなるほか、高い誘電率(ε)を有するものとなる。また、Alを更に含むと低抵抗となる。また、必要に応じて他の添加物、例えば、Cr、Ca、Si、K等の元素が含まれても良い。ただし、バリスタ層66a〜66jはCu成分を含有しないこととする。
グランド電極J1〜J5及びホット電極K1〜K4に用いる導電材料は、バリスタ層66a〜66jを構成するセラミックス材料と同時焼成できる金属材料を用いる。すなわち、バリスタセラミックスの焼成温度は通常800℃〜1400℃程度であるため、その温度で融解しない金属材料を用いる。例えば、Ag、Pdこれらの合金等を好適に使用することができる。
次に、図7を参照して、上述構成を有する積層型電子部品L3の製造方法について説明する。
まず、磁性体層57a〜57gとなる磁性体グリーンシートを用意する。磁性体グリーンシートは、フェライト(例えば、Ni−Cu−Zn系フェライト)を原料としたスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。なお、スラリーはCu成分を含有していてもよい。
また、非磁性体層60a〜60dとなる非磁性体グリーンシートを用意する。非磁性体グリーンシートは、ZnOを主原料とし、NiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つと、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方と、を含有したスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。Bi2O3及びホウ珪酸ガラスをスラリーに含有させることにより、非磁性体層を低温で焼結することが可能となり、積層型電子部品L2の焼結性のばらつきが抑えることができる。なお、スラリーはCu成分を含有していてもよい。
次に、各非磁性体グリーンシートの所定の位置、すなわちスルーホールH1,H2を形成する予定位置に、レーザー加工等によってスルーホールを形成する。そして、各非磁性体グリーンシートの上に、各導体パターンG1〜G4をそれぞれ形成する。各導体パターンG1〜G4は、銀又はニッケルを主成分とするペーストをメタルマスク等にて印刷した後、乾燥することによって形成される。各スルーホールには、各導体パターンを形成する際に、導体ペーストが充填されることとなる。
また、バリスタ層66a〜66jとなるバリスタグリーンシートを用意する。このバリスタグリーンシートは、例えば、ZnO、Pr6O11、CoO、Cr2O3、CaCO3、SiO2、K2CO3及びAl2O3の混合粉を原料としたスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。なお、スラリーの原料粉末は、一体焼成後に所定組成のバリスタとなるのであれば、その形態は特に限定するものではなく、所定組成のバリスタセラミックスを予め仮焼きして粉砕したバリスタ粉末を用いても良い。ただし、スラリーにはCu成分を含有しないこととする。
次に、スクリーン印刷法等によりバリスタグリーンシート上に導電ペーストを用いてグランド電極J1〜J5及びホット電極K1〜K4を形成する。導電ペーストは、Ag、Pd、これらの合金を主成分として含んでいるものを用いることができる。
また、中間層64a,64bとなる中間材グリーンシートを用意する。中間材グリーンシートは電気絶縁性を有する絶縁体であって、例えばZnO及びFe2O3を主成分とした混合紛を原料としたスラリーを、ドクターブレード法によりフィルム上に塗布することで形成される。なお、スラリーにはCu成分を含有しないこととする。
続いて、磁性体グリーンシート、非磁性体グリーンシート、バリスタグリーンシート、及び中間材グリーンシートを順次積層して圧着し、チップ単位に切断した後に所定温度(例えば、1100℃〜1200℃)にて焼成する。これにより、素体41が形成される。
続いて、この素体41に端子電極44〜52を形成する。これにより、積層型電子部品L3が完成する。端子電極44〜52は、素体41の表面に銀、ニッケル又は銅を主成分とする電極ペーストを塗布して、所定温度(例えば、680〜740℃程度)で焼付けを行い、さらに電気めっきを施すことにより形成される。この電気めっきとしては、Cu、Ni及びSn等を用いることができる。
以上のように、第3の実施形態における積層型電子部品L3は、コモンモードチョークコイルの機能とバリスタの機能とを備えたものであって、コモンモードチョークコイルを構成する非磁性体層60a〜60dにZnOを含めることとしている。したがって第1及び第2の実施形態と同様の理由により、デラミネーションが発生する可能性を低減することができるうえ、高周波帯域におけるノイズ成分の減衰特性を確実に向上させることができる。
ところで、バリスタ層66a〜66jのうちホット電極とグランド電極とに挟まれた領域はバリスタ特性を発現する領域であるが、この領域にCu成分が含まれると、バリスタ特性(例えばバリスタ部における減衰特性)が悪化して所望のものとならない可能性が生じる。第3の実施形態では、Cu成分を含有しないスラリーからバリスタ層66a〜66jを形成している。これにより、バリスタ層66a〜66jのうちホット電極とグランド電極とに挟まれた領域にCu成分が含まれる可能性が低くなるため、バリスタ特性の悪化を抑制することができる。また、第3の実施形態では、バリスタ部の第1の焼結体53とインダクタ部の第3の焼結体55とは第2の焼結体54を介して積層されている。この第2の焼結体54を構成する中間層64a,64bについてはCu成分を含まないとすることで、焼成時においてバリスタ層66a〜66jにCu成分が拡散される可能性をより確実に抑制することができる。その結果、バリスタ特性の悪化をより生じにくくすることができる。更に、第2の焼結体54は第1及び第3の焼結体53,55とは異なる組成を有しているため、インダクタ部がバリスタ部から受ける影響、およびバリスタ部がインダクタ部から受ける影響を緩和することができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしもこれらの実施形態に限定されるものではない。
例えば、磁性体層、非磁性体層、及びバリスタ層の数は、上述した第1〜第3の実施形態のものに限られない。また、コイル導体の数も上述したものに限られない。
また、上述した第3の実施形態では、コイル導体42,43は互いに磁気結合するとしたが、コイル導体は実質的に磁気結合しないとしてもよい。この場合、得られる積層型電子部品は、コモンモードチョークコイル機能ではなく、通常のインダクタ機能を有することとなる。
また、上述の第3の実施形態におけるバリスタ部をコンデンサ部に代えてもよい。より具体的には、バリスタ層66a〜66j、グランド電極J1〜J5、及びホット電極K1〜K4を、絶縁体層、接地用電極(コンデンサ電極)、及び信号用電極(コンデンサ電極)に代える。これにより、積層型電子部品を、インダクタ部と、かかるインダクタ部と共に共振回路を構成するコンデンサ部と、を備えるLCフィルタとして機能させることができる。なお、バリスタ部をコンデンサ部に代えた上で、2つのコイル導体を実質的に磁気結合しないものとした場合でも、積層型電子部品をLCフィルタとして機能させることができる。
10〜16,32,33,42,43…コイル導体、66a〜66j…コバリスタ層、18a〜18n,27a〜27d,57a〜57g…コ磁性体層、19a〜19f,29a〜29e,60a〜60d…コ非磁性体層、4,28,30,58,59…磁性体部
5,31,61…非磁性体部、54…第2の焼結体(中間部)、L1〜L3…積層型電子部品、V1〜V4…バリスタ。
5,31,61…非磁性体部、54…第2の焼結体(中間部)、L1〜L3…積層型電子部品、V1〜V4…バリスタ。
Claims (9)
- インダクタ部を備えた積層型電子部品であって、
前記インダクタ部が、磁性体部と、前記磁性体部に積層された非磁性体部と、前記非磁性体部の内部に配されたコイル導体と、を有し、
前記非磁性体部が、ZnOと、線膨張係数がZnOよりも大きく比誘電率が前記磁性体部よりも低い金属酸化物と、を含むことを特徴とする積層型電子部品。 - 前記磁性体部がフェライトを含み、前記金属酸化物が、NiO、MgO、及びCaOの少なくとも何れか一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の積層型電子部品。
- 前記非磁性体部が、Bi2O3及びホウ珪酸ガラスの少なくとも何れか一方を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の積層型電子部品。
- 前記インダクタ部が、前記磁性体部とは異なる他の磁性体部を更に有し、当該他の磁性体部は、前記磁性体部とで前記非磁性体部を挟むように配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記インダクタ部が、前記コイル導体を複数有するコモンモードチョークコイルであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 電圧非直線特性を発現するバリスタ層と、当該バリスタ層を挟むように配された複数のバリスタ導体と、を有するバリスタ部を更に備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
- 前記バリスタ層のうち前記バリスタ導体に挟まれた領域にはCu成分が含まれないことを特徴とする請求項6に記載の積層型電子部品。
- 前記インダクタ部と前記バリスタ部とは中間部を介して積層され、
前記中間部は、前記インダクタ部及び前記バリスタ部とは異なる組成を有すると共にCu成分を含有しないことを特徴とする請求項6又は7に記載の積層型電子部品。 - 絶縁体層と、前記絶縁体層を挟むように配された複数のコンデンサ電極と、を有するコンデンサ部を更に備え、
前記インダクタ部と前記コンデンサ部とがLCフィルタとして機能することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層型電子部品。
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