JP2009079280A - 高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】素材コストおよび製造コストの増大を抑えながら、高強度化と一層の疲労寿命の向上を図った軽量化が求められる機械構造部材に適した鋼管を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下であり、必要に応じてさらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、析出炭化物の平均粒径が0.5μm以下、鋼管長手方向に垂直な断面における肉厚中心部の硬さが400HV以上である高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管。
【選択図】なし

Description

本発明は、焼入れおよび焼戻しの処理を施して得られる疲労特性に優れた鋼管であって、特に硬度を高めて高強度化を図るとともに微細な炭化物を析出させることで高疲労寿命化を図った、機械構造部材用焼入れ・焼戻し鋼管、およびその製造方法に関するものである。
自動車をはじめ、各種機械構造物においては、高強度と疲労特性が要求される部材に焼入れ・焼戻しの処理を施した「鋼管」を使用することが多々ある。
一般に鋼材の疲労特性を向上させるためには、表面を硬化する、あるいは平滑化することが有効であるとされる。
特許文献1には、窒化処理により表面を硬化させて疲労特性を向上させる技術が開示されている。特許文献2には、鋼管内面を研削して平滑化するとともに脱炭層を除去して鋼管の疲労特性を向上させる技術が開示されている。
特開平6−264177号公報 特開平7−215038号公報
昨今、機械構造物の各種部材には小型軽量化の要求が高まっている。鋼管で構成される高強度部材についても例外ではない。
鋼管部材を軽量化するには、肉厚の低減が最も有効である。しかし、薄肉化は強度や疲労寿命の面で不利となる。特に、鋼管は曲げ加工などにより所望の形状に加工される場合が多いが、曲げの外側では肉厚が薄くなり、耐久性の点で厳しい状況となる。したがって、薄肉化の要求に応えるには、鋼管自体の特性をレベルアップすること、すなわち、高強度を維持しながら疲労寿命を一層高レベルに引き上げることが望まれる。
このように、高強度鋼管の耐久性を維持しながら薄肉化を図ることは必ずしも容易ではない。この問題を解決する手段として、例えば特殊元素の添加により鋼材自体の強度・疲労特性レベルを向上させる手法が考えられる。しかし、多くの機械構造物において、そのような素材コストの増加を招く手法は許容されない。また、特許文献1のように表面を窒化させる方法や特許文献2のように内面を研削する方法は、疲労特性の向上には有効であるが、工程の増加を伴い、現状の鋼管製造プロセスをそのまま適用できるものではない。特許文献2の手法ではさらに歩留低下の問題も生じる。
このように、低廉な手法で高強度鋼管の高強度を維持しながら疲労寿命のレベルアップを図ることは容易ではなく、現状においてそのような手法は確立されていない。
本発明は、このような現状に鑑み、素材コストおよび製造コストを従来材と同等に抑えながら、高強度化と一層の疲労寿命の向上を図った鋼管であって、特に自動車用中空スタビライザーの薄肉化に適した鋼管を提供しようというものである。
発明者らは詳細な検討の結果、特殊な成分元素を添加したり、特殊な工程を採用したりしなくても、鋼管の高強度を維持しながら疲労寿命を顕著に改善することが可能であることを知見した。つまり、成分組成と焼入れ・焼戻し条件との組合せには、疲労寿命を顕著に向上させることのできる余地が残されていることがわかり、発明者らはそのような「解」を見出すことにより本発明を完成するに至った。
すなわち本発明では、質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.006%以下であり、必要に応じてさらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、析出炭化物の平均粒径が0.5μm以下、鋼管長手方向に垂直な断面における肉厚中心部の硬さが400HV以上である高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管が提供される。この場合、例えば肉厚tが1〜7mm、管の外径Dが10〜45mmであり、D/t≧4を満たすものが好適な対象となる。
また、このような鋼管の製造方法として、上記の成分組成を有する焼入れ前の素材鋼管に対して、900〜1100℃で10〜60秒保持した後急冷する焼入れ処理と、280〜380℃で10〜60分保持する焼戻し処理を施す高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管の製造方法が提供される。ここで、素材鋼板として板厚tが1〜7mmの焼鈍鋼板を用い、それを溶接造管することにより外径Dが10〜45mm、ただしD/t≧4を満たす素材鋼管とすることが望ましい。
本発明に従えば、従来材と同等の安価な鋼を用いて、各種機械構造部材に用いる高強度鋼管の疲労寿命を顕著に向上させることが可能になった。この特性向上により、自動車用中空スタビライザーその他の機械構造用鋼管において、更なる耐久性の向上、あるいは部材の薄肉化が実現できる。また、本発明の鋼管の製造に際しては特殊な工程を付加する必要もない。したがって本発明は、自動車をはじめとする機械構造部材の高耐久性化あるいは軽量化に寄与し得るものである。
本発明では各元素の含有量を以下のように調整した鋼を使用する。なお、合金元素含有量の「%」は「質量%」を意味する。
Cは、機械構造用鋼疲労寿命鋼管に望まれる強度とばね性を確保するために、0.1%以上の含有が必要である。ただし、多量に含有させると靭性低下による脆性破壊が生じやすくなるとともに、粒界強度の低下による疲労寿命の低下が懸念される。また、造管時の加工性や溶接部の健全性が劣化する。このためC含有量は0.4%以下の範囲に規定される。
Siは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高め、焼戻し後の強度を確保する上で有効な元素である。また、焼戻しの際にフィルム状の炭化物の生成を抑制し、平均粒径0.5μm以下の微細な炭化物を析出させることで粒界強度の低下を抑える作用を有する。高疲労寿命化には不可欠な元素であり、0.5%以上のSi含有が必要である。ただし、Si含有量が多すぎると粒界に粗大な炭化物が形成されやすくなり、逆に疲労寿命の低下を招く要因となる。このためSi含有量は1.5%以下の範囲に規制される。
Mnは、焼入れ性および強度を確保する上で有効な元素であり、その効果を十分に得るためには0.3%以上含有させる必要がある。しかし、過剰に添加すると、炭素当量も高くなり、加工性および溶接部の健全性に悪影響を及ぼす。このためMn含有量は2%以下の範囲に規定される。
Pは、焼入れ時にオーステナイト粒界に偏析し、粒界強度の低下により、疲労寿命を低下させる。このためP含有量は0.02%以下に制限される。
Sは、鋼中でMnSを形成し、これが亀裂の起点となって強度、靭性を低下させる要因になる。また、粒界に偏析し、疲労寿命低下に繋がる。このためS含有量は0.01%以下に制限される。
Crは、Mnと同様に焼入れ性の向上に有効であるとともに、焼戻し軟化抵抗を高めるため、少なくとも0.1%以上の含有が必要である。しかし、2%を超えると焼入れ・焼戻し後の組織が未溶解炭化物を多量に含むものとなり、この炭化物が亀裂を助長させる起点となって靭性や疲労寿命の低下を招く。このためCr含有量は0.1〜2%に規定される。
Tiは、鋼中のNをTiNとして固定することにより、焼入れ性向上に有効な固溶Bの確保に寄与する。また、焼入れ時に旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制し、疲労寿命を向上させる。これらの効果を十分に得るには0.01%以上のTi含有が必要となる。ただし、0.1%を超えてTiを添加しても旧オーステナイト粒径の粗大化抑制効果は飽和し、却って疲労破壊の起点となるTi系介在物が増加する。このためTi含有量は0.01〜0.1%に規定される。
Nbは、炭窒化物を形成し、旧オーステナイト結晶粒の粗大化を抑制して靭性を向上させるとともに疲労寿命を向上させる作用がある。これらの効果を十分に得るためには0.01%以上のNb含有が必要である。ただし、0.1%を超えると上記効果は飽和し、不経済となる。このためNb含有量は0.01〜0.1%に規定される。
Alは、脱酸に有効な元素であるが、焼入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制にも有効である。トータルAl(T.Al)として0.01%以上のAl含有量を確保することが望ましい。ただし、過剰のAl含有は電縫溶接部の靭性および疲労寿命に悪影響を及ぼす。したがってAl含有量(T.Al)は0.1%以下に制限され、0.05%以下とすることがより好ましい。
Bは、微量の添加で焼入れ性を高める作用がある。また、焼入れ・焼戻し後の旧オーステナイト粒界を強化して脆性破壊を抑制し、靭性を向上させる作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには0.0005%以上のB含有が必要である。ただし、0.01%を超えるとこれらの作用は飽和する。このためB含有量は0.0005〜0.01%に規定される。0.002〜0.01%の範囲とすることがより好ましい。
Nは、BNの形成によってBを消費し、前記のB添加の作用を引き出す上でマイナスの要因となる。このためN含有量はできるだけ低い方が望ましい。種々検討の結果、N含有量は0.01%まで許容されるが、0.006%以下とすることがより好ましい。
Niは、炭窒化物を形成し、焼入れ性、靭性および疲労寿命の向上に有効であるため、必要に応じて添加することができる。0.1%以上の含有量を確保することが一層効果的である。ただし、0.5%を超えると上記作用は飽和し、不経済となる。このためNiを添加する場合は0.5%以下の範囲で行う。
Caは、MnS系介在物の形態を球状化する作用があり、それによって鋼材の異方性が軽減される。このため、必要に応じてCaを添加することができ、その含有量を0.001%以上とすることが一層効果的である。しかし、多量に添加するとCa系介在物が増加して疲労特性に悪影響を及ぼすので、Caを添加する場合は0.02%以下の範囲で行う。
Moは、焼入れ性と焼戻し軟化抵抗の向上に有効な元素であり、Mn、Crの過剰な添加による靭性劣化を抑えるために補助的に添加することができる。Moを添加する場合は0.1%以上の含有量を確保することが一層効果的である。ただしMoは高価な元素であり多量添加は経済性を損なう。このため、Mo添加は0.5%以下の範囲で行う必要がある。
Vは、焼入れ時に結晶粒を微細化する作用があり、靭性向上に有効であるため、必要に応じて添加される。0.1%以上の含有量を確保することが一層効果的である。ただしVも高価な元素であり、多量添加は経済性を損なうので、Vを添加する場合は0.5%以下の範囲で行う。
以上の化学組成を有する素材鋼管に対して、本発明で規定する焼入れ処理と焼戻し処理を施すことによって、高強度を維持しながら疲労寿命を顕著に改善した鋼管を得ることができる。
鋼管を製造するには、ビレットからシームレス鋼管を得る方法を採用することもできるが、熱延鋼板あるいは冷延鋼板を焼鈍した「素材鋼板」を製造し、これを高周波溶接などにより溶接造管して鋼管とする方法が大量生産には適している。造管に供する「素材鋼板」は、造管時の変形および造管後に行われる曲げ加工に耐えられるよう、十分に軟化された焼鈍鋼板であることが望ましい。すなわち、焼きが入らないよう、Ac1点未満の温度域で軟化焼鈍された素材鋼板を用いて造管することが望ましい。なお、本発明の対象鋼の場合、焼鈍後の組織は概ね「フェライト+1.5〜6体積%炭化物」となる。
造管後の鋼管は、焼入れ処理に供する前の軟質な段階で必要に応じて所望形状の部材鋼管に成形加工される。ここでは、必要に応じて成形加工された、焼入れ処理前の鋼管を「素材鋼管」と呼んでいる。発明者らの研究の結果、上記の化学組成を有する素材鋼管に対して焼入れ処理および焼戻し処理を施す際、その焼戻し処理を低温域で行うことにより、疲労寿命の顕著な向上が実現できることがわかった。
具体的には、上記組成範囲の素材鋼管に「900〜1100℃×10〜60秒保持、急冷」の焼入れ処理を施し、次いで「280〜380℃×10〜60分保持」の焼戻し処理を施すことにより、鋼管長手方向に対して垂直な断面(以下「C断面」ということがある)における肉厚中心部の硬さが400HV以上の強度レベルを維持しながら、疲労寿命を顕著に改善することができる。焼入れ処理時の「急冷」は、マルテンサイト変態が起こるに足る冷却速度であるが、例えば水中に浸漬する「水冷」が採用できる。
高強度が要求される中空スタビライザー等の用途では、C断面における肉厚中心部の硬さが400HV以上の強度レベルのものを使用することが望ましいが、前記組成範囲の素材鋼管に、上記の焼入れ・焼戻し処理を施すことにより、このような高強度も同時に維持することができる。なお、硬さを評価するC断面としては、部材への成形加工(例えば曲げ加工)により断面形状が大きく変化した箇所以外の部分を選ぶ。具体的には、C断面内における肉厚の最大値をtmax、最小値をtminとするとき、(tmax−tmin)/tmaxの値が0.2以下である部分を選択して硬さを測定すればよい。
また、発明者らの詳細な検討によれば、鋼管部材において粗大な析出炭化物が存在すると、たとえ強度レベルが高くても、優れた疲労寿命を安定して実現することは難しいことがわかった。具体的には析出炭化物の平均粒径が0.5μm以下に抑えられていることが重要である。
本発明で対象とする鋼管のなかでも、肉厚tが1〜7mm好ましくは1〜5mm、管の外径Dが10〜45mm、D/tが4以上である鋼管は、中空スタビライザー用鋼管として適しており、同様の鋼種からなる従来の中空スタビライザーと同等以上の高強度・高疲労特性を、一層軽量化した鋼管において実現するものである。
表1に示す鋼を溶製し、スラブを1250℃で60分加熱したのち抽出して、熱間圧延(粗圧延および仕上げ圧延)を行い、530℃で巻き取った。熱間圧延後の板厚は5.6mmまたは8mmとした。得られた熱延鋼板を酸洗し、板厚5.6mmの熱延鋼板からは「熱延まま」の材料、および、その後、水素雰囲気中690℃×18時間保持の焼鈍を施した「熱延・焼鈍材」を得た。また板厚8mmの熱延鋼板からは、その後30%の冷間圧延と、水素雰囲気中690℃×18時間保持の焼鈍を施した板厚5.6mmの「冷延・焼鈍材」を得た。上記焼鈍温度は再結晶温度以上Ac1点以下に相当する。これら「熱延まま」の鋼板、「熱延・焼鈍材」、および「冷延・焼鈍材」を素材鋼板と呼ぶ。
Figure 2009079280
前記素材鋼板について、造管後に行われる焼入れ・焼戻し処理を模擬した熱処理を実施して、硬さ、炭化物の平均粒径、および疲労特性をシミュレートした。
焼入れ処理は「800〜1200℃×10〜60秒保持→水冷」の条件で行った。
焼戻し処理は「200〜420℃×10〜60分保持→空冷」の条件で行った。
硬さは、C断面(圧延方向に垂直な断面)の肉厚中心部についてマイクロビッカース硬度計を用いて測定した。
炭化物の平均粒径は、TEM(透過型電子顕微鏡)により観察される炭化物を観察視野内からランダムに合計30個選択して各炭化物の長径を測定し、その平均値を算出することによって求めた。
疲労特性は、JISZ2275に準拠して最大曲げ応力を750N・mm-2とする金属平板の平面曲げ疲れ試験を実施した。この試験による破断寿命が5万回以上であれば、従来の中空スタビライザー材と比較して疲労寿命が大幅に向上していると認められるので、ここでは、破断寿命が5万回以上のものを○(合格)、それ未満のものを×(不合格)と評価した。
結果を表2に示す。
Figure 2009079280
表2からわかるように、比較例であるNo.1(鋼A)、24(鋼P)、25(鋼Q)はそれぞれC、B、Mn含有量が本発明規定範囲より低いものである。これらは焼入れ性が低下したことにより焼戻し後の硬さが不十分となり、疲労寿命は改善されなかった。No.11(鋼E)はMn含有量が高すぎることにより残留オーステナイト相が増加して、焼入れ硬さの低下に伴って焼戻し後の硬さが低くなり、疲労寿命に劣った。また、No.28(鋼T)はSi含有量が低く、焼戻し硬さが不十分であるとともに、Nb無添加であったために、粒界に0.5μmを超える粗大な析出炭化物が形成され、その結果、粒界強度が低下して疲労寿命に劣った。No.2(鋼B)、3(鋼C)、15(鋼G)はそれぞれC、Si、Cr含有量が高過ぎるもの、またNo.18(鋼J)はTiおよびNbを添加していないものである。これらはいずれも粒界に0.5μmを超える粗大な析出炭化物が形成され、その結果、粒界強度が低下して疲労寿命に劣った。No.17(鋼I)はTi、Nbが本発明範囲を超えているものである。Ti、Nbの粗大な炭化物が生成し、それが疲労破壊の起点となって、疲労寿命が低下した。No.7〜10は本発明規定範囲の組成を有するD鋼を用いたものであるが、焼入れ・焼戻し条件が本発明の規定を外れたものである。すなわち、No.7は焼入れ温度が低過ぎたことにより溶体化が不十分となり、焼戻し後の硬さが低く、疲労寿命にも劣った。No.8は焼入れ温度が高過ぎたことにより粗大な析出炭化物が形成され、疲労寿命が短くなった。No.9は焼戻し温度が低過ぎ、またNo.10は焼戻し温度が高過ぎたことにより、これらはいずれも焼戻し後の硬さが本発明規定範囲となり、疲労寿命が短くなった。
これに対し、化学組成および焼入れ・焼戻し条件を本発明で規定する条件とした本発明例のものは、400HV以上の強度レベルを示すとともに、析出炭化物の平均粒径が0.5μm以下であり、疲労寿命は5万回を超えて極めて良好であった。ここでは、「板材」を用いて焼入れ・焼戻し後の特性を調べたが、「管材」においても高強度化および高疲労寿命化に及ぼす焼入れ・焼戻し条件の影響は同様の傾向となる。すなわち、本発明で規定する組成の素材鋼管に対して本発明で規定する焼入れ・焼戻し処理を採用すると、強度および疲労特性が顕著に向上し、中空スタビライザーをはじめとする種々の機械構造部材において疲労寿命の顕著な改善が可能になる。
次に、表1の鋼D、鋼E、鋼Gを用いて、実施例1と同様の工程で作った冷延焼鈍鋼板を素材鋼板として、高周波溶接にて造管し、外径30mmの3種類の鋼管a、b、cを製造した。ただし鋼管aおよびbは肉厚3mm、鋼管cは肉厚5mmとした。溶接造管後の鋼管(素材鋼管)を長さ1mに切断し、「950〜1050℃(表3に記載の温度)×30秒保持→水中へ急冷」の焼入れ処理と、「340℃×45分保持→空冷」の焼戻し処理を施した。その後、鋼管の外表面にショットピーニングを行った。焼入れ・焼戻し後の各鋼管(部材鋼管)について、C断面の肉厚中心部の硬さを実施例1と同様の要領で測定した。
また、上記鋼管から長さ1mの直管を切り出し、この鋼管の両端部100mmを掴み、円周方向にねじり応力を付与させる方法で疲労試験を行った。その際、各鋼管の長手方向中央位置の外表面に歪みゲージを貼付し、ねじり応力が700N・mm-2となる条件で疲労試験を実施した。この試験による破断寿命が7万回以上であれば、従来の中空スタビライザー材と比較して疲労寿命が大幅に向上していると認められるので、ここでは、破断寿命が7万回以上のものを○(合格)、それ未満のものを×(不合格)と評価した。
結果を表3に示す。
Figure 2009079280
表3からわかるように、本発明の鋼管aは400HV以上の高強度化が達成されるとともに、析出炭化物粒径の平均値も0.5μm以下であり、薄肉化されているにも関わらず、肉厚の厚い鋼管c(Crが高いもの)より優れた疲労特性を示した。鋼管b(Mnが高いもの)は薄肉化した状態では疲労特性の向上が不十分であった。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、析出炭化物の平均粒径が0.5μm以下、鋼管長手方向に垂直な断面における肉厚中心部の硬さが400HV以上である高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管。
  2. さらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載の高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管。
  3. 肉厚tが1〜7mm、管の外径Dが10〜45mmであり、D/t≧4を満たす請求項1または2に記載の高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管。
  4. 質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる焼入れ前の素材鋼管に対して、900〜1100℃で10〜60秒保持した後急冷する焼入れ処理と、280〜380℃で10〜60分保持する焼戻し処理を施す高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管の製造方法。
  5. 前記素材鋼管は、さらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有するものである請求項4に記載の高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管の製造方法。
  6. 前記素材鋼管は、板厚tが1〜7mmの鋼板を用いて、外径Dが10〜45mm、ただしD/t≧4を満たすように溶接造管されたものである請求項4または5に記載の高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管の製造方法。
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