JP2009074904A - プロテインチップ用基板、その製造方法、それを用いたプロテインチップ及びプロテインチップを含むプロテオーム解析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】タンパク質を高密度なアレイ状に配列して固定することが可能なプロテインチップを容易に形成しうるプロテインチップ用基板、その生産性の高い製造方法、タンパク質溶液を点着した場合、濡れ拡がりを抑制しうる高密度アレイ上にタンパク質が固定化されたプロテインチップ及び該プロテインチップを備えた、タンパク質解析技術に有用なプロテオーム解析装置を提供する。
【解決手段】基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類がアレイ状に配列されてなるプロテインチップ用基板。該プロテインチップ用基板は、タンパク質を固定化しうる官能基と基板上で生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有する多糖類(誘導体)を、基板に接触させ、パターン露光により、任意の領域に選択的に固定化することにより得られ、プロテインチップの作製に有用である。
【選択図】なし
【解決手段】基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類がアレイ状に配列されてなるプロテインチップ用基板。該プロテインチップ用基板は、タンパク質を固定化しうる官能基と基板上で生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有する多糖類(誘導体)を、基板に接触させ、パターン露光により、任意の領域に選択的に固定化することにより得られ、プロテインチップの作製に有用である。
【選択図】なし
Description
本発明は、タンパク質解析技術における、タンパク質の発現、機能解析、他の生化学分子との相互作用、タンパク質の同定や修飾等の研究に特に有効な、基板表面にタンパク質が固定されてなるプロテインチップを容易に作製しうるプロテインチップ用基板、その簡易な製造方法、該プロテインチップ用基板を用いて得られるプロテインチップ及び該プロテインチップを備えたプロテオーム解析装置に関する。
プロテオーム(ゲノムによって発現されたタンパク質の完全なセット)解析のため、タンパク質の性質に関する大規模な研究が行われている。タンパク質の発現量、翻訳後修飾や相互作用を解析し、健康状態や発病状態においてタンパク質発現レベルで発生している現象を明らかにすることが中心課題である。ヒトゲノムの解読により、ヒト遺伝子数は3〜4万個程度であり、培養細胞ではおよそ1万種のタンパク質が発現していると推定されているが、遺伝子発現・機能解析・SNPの解析により、各種遺伝病および多因子病の治療・予防と、テーラーメード医療の開発が可能になると期待されており、更にそのためには、各遺伝子がコードするタンパク質および該タンパク質の機能を単独で把握するだけでなく、タンパク質−タンパク質相互作用およびタンパク質−遺伝子相互作用を網羅的かつ包括的に解析するプロテオーム解析が重要となる。
プロテオーム解析の有力な手段として挙げられるのが、タンパク質を高感度で分析する質量分析法である。質量分析法では、電気泳動ゲルからスポットを切り出し、還元やトリプシン消化処理を行った後、分解されたタンパク質の分子量測定を行い、データベース検索を行うことによってタンパク質を同定する。上記の質量分析法の改良法として、MALDI−TOF MS(マトリクス支援イオン化−飛行時間型質量分析計:Koster,H.et al.,Nature Biotechnol.,14,1123−1128(1996).およびGriffin,T.J.et al.,Nature Biotechnol.,15,1368−1372(1997).)が知られている。MALDIとは、サンプルのイオン化を促進する試薬としてマトリクスを使用し、サンプルが備えられたマトリクス上にレーザー光を照射し、励起状態となったマトリクスからのエネルギーによってサンプルを蒸発させ、気相反応によってサンプルをイオン化する方法である。TOFは、サンプルプレート上でイオン化されたサンプルが高真空のフライトチューブ内で自由飛行後、サンプルプレートの反対側に設置されたディテクタに低分子量の分子から到達する性質を利用して、その到達時間を測定することによって分子量を決定するものである。
TOF型質量分析計とプロテインチップとを組み合わせたSELDI(Surface Enhanced Laser Desorption/Ionization)プロテインチップシステムは、プロテオーム解析の強力なツールである(米国特許第5、719、060号、米国特許第6、225、047号)。SELDIプロテインチップは、基板表面に化学修飾(陽イオン、陰イオン、疎水性、親水性、金属イオン等)あるいは生化学修飾(抗体、レセプター等)が施されたチップであり、SELDIに基づくチップおよび装置は、Ciphagen Biosystems、Inc.,から購入可能である。このシステムでは、チップ上でタンパク質、DNA、種々の低分子物質との固相反応を行い、解析物の分子量をTOF型質量分析計にて測定する。その結果、細胞によるタンパク質の発現の相違や特定のタンパク質と他の物質との相互作用の解析、試料中の極微量物質の定量、翻訳後修飾や酵素活性の測定などを行うことができる。この方法では、サンプルの標識の必要がなく、サンプルを1アットモル〜1フェムトモルのレベルまで検出可能である。
タンパク質と標的分子の相互作用検出のためには、表面プラズモン共鳴(SPR)を用いたセンサーも使用される(特許第2815120号)。この場合、表面がカルボキシメチルデキストランで被覆された金膜表面にタンパク質が固定されたセンサーチップが用いられる。タンパク質をセンサー表面に固定した後、カセット式のマイクロ流路系を介して標的分子をチップ表面に接触させ、タンパク質と標的分子との結合・解離に伴うチップ表面での質量変化を、表面プラズモン共鳴(SPR)シグナルとしてリアルタイムに検出する。この方法においてもサンプルを標識する必要はない。
このように、SELDIプロテインチップおよびSPRセンサーは、非標識で高感度検出が可能と言う点で、極めて優れたシステムである。しかし、SELDIプロテインチップおよびSPRセンサーは、多数のサンプルの短時間解析ができないため、網羅的検出を行うことは極めて困難であり、プロテオーム解析への適用は制限されてしまうという問題がある。
タンパク質と標的分子の相互作用を、短時間に並列的かつ大規模に検出するための効果的なツールとして、近年、プロテインチップが注目されている。プロテインチップとは、スライドガラス等の固体基板上に、多数のタンパク質分子を整列固定化したマイクロアレイであり、タンパク質と標的分子との相互作用検出を網羅的に解析するためのツールとして非常に有用である。しかし従来のタンパク質固定化技術は、タンパク質を2次元的に固定する場合が多く、タンパク質の固定量が少ないことによる検出感度不足という問題があった(非特許文献1)。
固体基板表面のタンパク質固定量を上げる方法として、超分子ヒドロゲルによる固定(非特許文献2)、バクテリアセルロースによる固定(特許文献1)等が提案されている。これらの手法によれば、タンパク質を3次元的に固定できるため、従来の2次元的な固定法と比較して、より多くのタンパク質を固定することが可能となるという特徴がある。しかしこれらの手法の場合、タンパク質の固定が非共有結合に基づいているため、洗浄等の操作による流失が懸念される。
共有結合を用いてタンパク質を3次元的に固定可能な方法も提案されている(特許文献2)。すなわち、ポリリジンのようなアミン化合物を基板に結合した後、架橋剤を用いてタンパク質を固定する方法が提案されている。この場合、前述した問題は部分的に解決されている。しかし本手法は、工程が多く操作が煩雑であり、高密度アレイを作製することが困難である。
また、これらの基板に共通した問題として、タンパク質溶液をスポットした場合に、タンパク質溶液が濡れ拡がってしまうという問題が挙げられる。このことは、高密度アレイの作製が、本質的に困難であることを意味している。
A.Mizabekov,et al,Curr.Opin.Chem.Biol.,6,70(2001). I.Hamachi,et al,Nature Materials,3,57(2004), 特開2004−271540号広報
特開2005−283351号広報
A.Mizabekov,et al,Curr.Opin.Chem.Biol.,6,70(2001). I.Hamachi,et al,Nature Materials,3,57(2004),
本発明は上記問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、タンパク質を高密度なアレイ状に配列して固定することが可能なプロテインチップを容易に形成しうるプロテインチップ用基板及びその生産性の高い製造方法を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、タンパク質溶液を点着した場合に、その濡れ拡がりを抑制しうる、高密度アレイ上にタンパク質が固定化されたプロテインチップ及び該プロテインチップを備えた、タンパク質解析技術に有用なプロテオーム解析装置を提供することにある。
本発明のさらなる目的は、タンパク質溶液を点着した場合に、その濡れ拡がりを抑制しうる、高密度アレイ上にタンパク質が固定化されたプロテインチップ及び該プロテインチップを備えた、タンパク質解析技術に有用なプロテオーム解析装置を提供することにある。
これらの問題点を解決するために、発明者らは鋭意検討した結果、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体がアレイ状に配列された基板を用いることにより、前述した問題を解決し得ることを見出し、本発明に到達した。
即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> 基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類がアレイ状に配列されてなるプロテインチップ用基板。
<2> タンパク質を固定可能な官能基が、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、エポキシ基、カルボン酸活性エステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、アセトアセチル基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする<1>に記載のプロテインチップ用基板。
<3> タンパク質を固定可能な官能基が、カルボン酸活性エステル基であることを特徴とする<1>に記載のプロテインチップ用基板。
<4> カルボン酸活性エステル基が、カルボキシメチル基を有する多糖類を活性化することにより得られることを特徴とする<3>に記載のプロテインチップ用基板。
即ち、本発明の構成は以下に示すとおりである。
<1> 基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類がアレイ状に配列されてなるプロテインチップ用基板。
<2> タンパク質を固定可能な官能基が、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、エポキシ基、カルボン酸活性エステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、アセトアセチル基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする<1>に記載のプロテインチップ用基板。
<3> タンパク質を固定可能な官能基が、カルボン酸活性エステル基であることを特徴とする<1>に記載のプロテインチップ用基板。
<4> カルボン酸活性エステル基が、カルボキシメチル基を有する多糖類を活性化することにより得られることを特徴とする<3>に記載のプロテインチップ用基板。
<5> <1>〜<4>のいずれか1項に記載のプロテインチップ用基板を製造する方法であって、基板上に、光ラジカル発生剤を結合させる工程と、該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面にタンパク質を固定可能な官能基を有するポリマーを接触させ、光照射することで、該ポリマーを基板表面に結合させる工程と、を有することを特徴とするプロテインチップ用基板の製造方法。
<6> タンパク質を固定可能な官能基を有するポリマーが、基板上に結合された光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有することを特徴とする<5>に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
<7> 共有結合を形成しうる官能基が、水素引き抜き可能なC−H結合、不飽和二重結合、エポキシ基、及び、オキセタン基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする<6>に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
<8> 共有結合を形成しうる官能基が、不飽和二重結合であることを特徴とする<6>に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
<9> <1>〜<4>のいずれか1項に記載のプロテインチップ用基板に、少なくとも1種のタンパク質が固定されたプロテインチップ。
<10> <9>に記載のプロテインチップを含むプロテオーム解析装置。
<6> タンパク質を固定可能な官能基を有するポリマーが、基板上に結合された光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有することを特徴とする<5>に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
<7> 共有結合を形成しうる官能基が、水素引き抜き可能なC−H結合、不飽和二重結合、エポキシ基、及び、オキセタン基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする<6>に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
<8> 共有結合を形成しうる官能基が、不飽和二重結合であることを特徴とする<6>に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
<9> <1>〜<4>のいずれか1項に記載のプロテインチップ用基板に、少なくとも1種のタンパク質が固定されたプロテインチップ。
<10> <9>に記載のプロテインチップを含むプロテオーム解析装置。
本発明によれば、タンパク質を高密度なアレイ状に配列して固定することが可能なプロテインチップを容易に形成しうるプロテインチップ用基板及びその生産性の高い製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明のプロテインチップ用基板を用いることで、タンパク質溶液をスポットした場合にもその濡れ拡がりを抑制しうる、高密度アレイ上にタンパク質が固定化されたプロテインチップ及び該プロテインチップを備えた、タンパク質解析技術に有用なプロテオーム解析装置を提供することができる。
また、本発明によれば、前記本発明のプロテインチップ用基板を用いることで、タンパク質溶液をスポットした場合にもその濡れ拡がりを抑制しうる、高密度アレイ上にタンパク質が固定化されたプロテインチップ及び該プロテインチップを備えた、タンパク質解析技術に有用なプロテオーム解析装置を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<プロテインチップ用基板及びその製造方法>
本発明のプロテインチップ用基板は、基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有し、該基板と直接結合した多糖類あるいは多糖類誘導体がアレイ状に配列されてなることを特徴とする。
ここで、「アレイ状」とは、均一の平面形状及び表面積を有する領域が、並列及び直列に均一な所定の間隔をおいて複数個形成されており、個々の領域が識別可能に配列されている状態を表す。即ち、本発明においては、グラフトポリマー形成領域が所定の間隔、即ち、所定のグラフトポリマー非形成領域を介して複数個均等に配列されて形成され、個々のグラフトポリマー形成領域が、並列、直列された位置により特定されうる状態であることを示す。
<プロテインチップ用基板及びその製造方法>
本発明のプロテインチップ用基板は、基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有し、該基板と直接結合した多糖類あるいは多糖類誘導体がアレイ状に配列されてなることを特徴とする。
ここで、「アレイ状」とは、均一の平面形状及び表面積を有する領域が、並列及び直列に均一な所定の間隔をおいて複数個形成されており、個々の領域が識別可能に配列されている状態を表す。即ち、本発明においては、グラフトポリマー形成領域が所定の間隔、即ち、所定のグラフトポリマー非形成領域を介して複数個均等に配列されて形成され、個々のグラフトポリマー形成領域が、並列、直列された位置により特定されうる状態であることを示す。
本願出願人は、既に、基板表面に光ラジカル発生剤を結合させ、その基板上にモノマー溶液を接触させ、光照射により基板表面に生じたラジカルを開始剤としてアクリル酸等のビニルモノマーの重合を行う手法により、片末端が基板に結合したポリアクリル酸等を用いたDNAチップを作製可能であることを報告している(特開2003−130878号公報)。この手法は、基板表面にポリカルボン酸を片末端で結合させる手法として非常に優れた手法である。しかし、本手法をDNAチップではなくプロテインチップに応用する場合、大きな問題が生じる。なぜならば、ポリアクリル酸等のアクリル系のポリマーは、「タンパク質の非特異的吸着」「タンパク質の変性」等の問題を有することが知られているからである。このためプロテインチップを作製する場合、「タンパク質の非特異的吸着」「タンパク質の変性」等の懸念が無い親水性ポリマーを用いることが重要となる。
タンパク質の非特異的吸着や変性を抑制する親水性ポリマーとしては、デキストランやアガロース等の多糖類が知られており、それらの誘導体は、電気泳動用ゲル、タンパク質精製用アフィニティカラム、バイオセンサー表面、等の素材として、バイオ分野において古くから実用されている。これらの事実は、プロテインチップ表面用の親水性ポリマーとして、アクリル酸の如きアクリル系ポリマーよりも、多糖類およびその誘導体が好ましいことを意味している。
多糖類を基板に結合する場合、基板表面にポリアクリル酸の片末端を結合する手法をそのまま適用しても、基板に多糖類を直接結合させることはできない。なぜならば上記手法は、光照射により基板表面に生成したラジカルから、アクリル酸の如き二重結合を有する反応性のモノマーが連鎖重合することによりポリマーを成長させることにより所定の鎖長を有する片末端が基板に結合したポリマーを生成させる手法であるが、多糖類は生合成、すなわち微生物や植物が酵素的に合成したものを抽出して用いており、基板表面からの連鎖重合で単糖類から多糖類を合成することが不可能であるためである。それゆえ多糖類あるいはその誘導体を基板表面に結合する場合、基板表面から単糖類を連鎖重合してゆくのではなく、多糖類あるいはその誘導体を、基板表面に直接結合することが必要となる。
このため、本発明においては、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類を用いることでこの問題を解決したものである。即ち、多糖類としてタンパク質を固定可能な官能基と、基板上に結合された光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基(以下、適宜、共有結合を形成しうる官能基と称する)と、を有するものを用い、それを光照射により基板表面に共有結合させて固定化する手法である。この手法は、フォトマスクを用いたアレイ化が容易であること、および、基板表面へのポリマーの結合量を、光照射量の変化により制御可能であること、などの利点を有するものである。
本発明の手法により得られたプロテインチップ用基板においては、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類(誘導体)は、該共有結合を形成しうる官能基により、基板に強固に結合するとともに、側鎖に存在する該共有結合を形成しうる官能基の存在に応じて多点で結合が形成されてなるタンパク質の固定化領域が形成される。
本発明の手法により得られたプロテインチップ用基板においては、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類(誘導体)は、該共有結合を形成しうる官能基により、基板に強固に結合するとともに、側鎖に存在する該共有結合を形成しうる官能基の存在に応じて多点で結合が形成されてなるタンパク質の固定化領域が形成される。
以下、本発明のプロテインチップ用基板及びそれを用いたプロテインチップを、その製造方法とともに順次説明する。
本発明のプロテインチップ用基板を作製するためには、基板上に、光ラジカル発生剤を結合させる工程と、該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面にタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を接触させ、光照射することで、該多糖類あるいは多糖類誘導体を基板表面に結合させる工程と、を要する。
さらに詳細には、(1)基板表面に光ラジカル発生剤を結合させ、光活性を有する基板を作製する工程、(2)該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面に、タンパク質を固定可能な官能基、及び、前記基板より生成される活性点において共有結合を形成しうる官能基、を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を接触させる工程、(3)前記基板にパターン状に光照射することで、光照射領域においてタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を結合させ、パターン状の多糖類あるいは多糖類誘導体固定化領域を形成する工程を必要とする。このようにして本発明のプロテインチップ用基板が得られ、ここで、(4)基板に結合した多糖類あるいは多糖類誘導体におけるタンパク質を固定可能な官能基に、タンパク質を結合することで、プロテインチップが得られる。以下にこの4工程を詳細に説明する。
本発明のプロテインチップ用基板を作製するためには、基板上に、光ラジカル発生剤を結合させる工程と、該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面にタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を接触させ、光照射することで、該多糖類あるいは多糖類誘導体を基板表面に結合させる工程と、を要する。
さらに詳細には、(1)基板表面に光ラジカル発生剤を結合させ、光活性を有する基板を作製する工程、(2)該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面に、タンパク質を固定可能な官能基、及び、前記基板より生成される活性点において共有結合を形成しうる官能基、を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を接触させる工程、(3)前記基板にパターン状に光照射することで、光照射領域においてタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を結合させ、パターン状の多糖類あるいは多糖類誘導体固定化領域を形成する工程を必要とする。このようにして本発明のプロテインチップ用基板が得られ、ここで、(4)基板に結合した多糖類あるいは多糖類誘導体におけるタンパク質を固定可能な官能基に、タンパク質を結合することで、プロテインチップが得られる。以下にこの4工程を詳細に説明する。
(基板)
本発明のプロテインチップの基板としては、ガラス、シリコンウェハ、金属等の無機化合物であってもよく、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、シクロオレフィン系ポリマー、ポリジメチルシロキサン等の有機化合物であってもよい。環境負荷低減の観点から、有機化合物として、ポリ乳酸がごとき生分解性ポリマーも好ましく用いることが可能である。無機化合物の基板は、その上に有機薄膜を備えたものであっても良く、また、有機化合物の基板は、その上に金属薄膜あるいは金属酸化物薄膜を備えたものであっても良い。
基板の厚さは特に限定されないが、板状である場合には、50〜10000μmであることが好ましい。
本発明のプロテインチップの基板としては、ガラス、シリコンウェハ、金属等の無機化合物であってもよく、ポリエチレンテレフタレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、シクロオレフィン系ポリマー、ポリジメチルシロキサン等の有機化合物であってもよい。環境負荷低減の観点から、有機化合物として、ポリ乳酸がごとき生分解性ポリマーも好ましく用いることが可能である。無機化合物の基板は、その上に有機薄膜を備えたものであっても良く、また、有機化合物の基板は、その上に金属薄膜あるいは金属酸化物薄膜を備えたものであっても良い。
基板の厚さは特に限定されないが、板状である場合には、50〜10000μmであることが好ましい。
(光ラジカル発生剤)
本発明の基板に結合される光ラジカル発生剤は、光により開裂する単結合を有する。この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリース転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。光により開裂する単結合を有する基としては、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
本発明の基板に結合される光ラジカル発生剤は、光により開裂する単結合を有する。この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリース転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応、などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。光により開裂する単結合を有する基としては、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基、などが挙げられる。
また、光ラジカル発生剤は、露光により分解し、ラジカルを発生する部位に加え、さらに、基板表面に存在する官能基と反応して結合しうる反応性基(基材結合基)を有することが好ましく、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基が挙げられる。
光により開裂する単結合を有する基と基材結合基とは直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及びイオウからなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基、等が挙げられる。また、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、等が挙げられる。
これらの光ラジカル発生剤は単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。光ラジカル発生剤の具体的な化合物骨格としては、特開2005−277225号公報の[化2]〜[化4]に記載されている以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
光照射により反応性基を生成する化合物としては、光アフィニティラベル化に用いられる化合物もまた、好ましく用いることが可能である。
光照射により光アフィニティラベル化合物から発生する活性種としては、ナイトレン、カルベン、ラジカル、イオンラジカル、ジラジカル、励起三重項、カルボカチオン等の炭素求電子試薬などが挙げられる。光照射によりこれらの活性種を発生する光アフィニティラベル化合物の例は、例えば1995年発行のテトラへドロン誌(Tetrahedron)第51巻、12479乃至12520ページのS.A.Flemigの著した総説、および1998年発行の有機合成協会誌、第56巻581乃至590ページの畑中保丸の著した総説に記載されている。
すなわち、ナイトレンを発生する化合物としては、芳香族アジド、アルキルアジド、ヘテロ環アジドなどのアジド基を有する化合物であり、カルベンを発生する化合物としてはジアゾ基またはジアジリン環を有する化合物であり、ラジカルを発生する化合物としてはベンゾフェノン類やエノン類のような共役ケトン類、芳香族ハロゲン化物類、オレフィン類などであり、炭素求核試薬を発生する化合物としては芳香族ジアゾニウム塩、ニトロベンゼン類、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩などである。
これらの光反応性化合物はそれぞれ特徴があるので、使用条件に応じて選択して用いることができるが、安定性が比較的高い点では、ジアジリン環を有する化合物が好ましい。
安定性と合成の容易さの点では、共役ケトン類、芳香族ハロゲン化物類、オレフィン類などが好ましい。
これらの光アフィニティラベル化合物は単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。光アフィニティラベル化合物の具体的な化合物骨格は、特開2004−301681号公報の[化3]に記載されている以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
光照射により光アフィニティラベル化合物から発生する活性種としては、ナイトレン、カルベン、ラジカル、イオンラジカル、ジラジカル、励起三重項、カルボカチオン等の炭素求電子試薬などが挙げられる。光照射によりこれらの活性種を発生する光アフィニティラベル化合物の例は、例えば1995年発行のテトラへドロン誌(Tetrahedron)第51巻、12479乃至12520ページのS.A.Flemigの著した総説、および1998年発行の有機合成協会誌、第56巻581乃至590ページの畑中保丸の著した総説に記載されている。
すなわち、ナイトレンを発生する化合物としては、芳香族アジド、アルキルアジド、ヘテロ環アジドなどのアジド基を有する化合物であり、カルベンを発生する化合物としてはジアゾ基またはジアジリン環を有する化合物であり、ラジカルを発生する化合物としてはベンゾフェノン類やエノン類のような共役ケトン類、芳香族ハロゲン化物類、オレフィン類などであり、炭素求核試薬を発生する化合物としては芳香族ジアゾニウム塩、ニトロベンゼン類、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩などである。
これらの光反応性化合物はそれぞれ特徴があるので、使用条件に応じて選択して用いることができるが、安定性が比較的高い点では、ジアジリン環を有する化合物が好ましい。
安定性と合成の容易さの点では、共役ケトン類、芳香族ハロゲン化物類、オレフィン類などが好ましい。
これらの光アフィニティラベル化合物は単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。光アフィニティラベル化合物の具体的な化合物骨格は、特開2004−301681号公報の[化3]に記載されている以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このような化合物は、露光により開裂してラジカルが発生すると、そのラジカル周辺に不飽和二重結合などの、活性点で反応して共有結合を形成しうる官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体が存在する場合には、このラジカルが多糖類あるいは多糖類誘導体の官能基と反応して共有結合を形成することで、多糖類あるいは多糖類誘導体が基板上に固定される。
(光ラジカル発生剤の基板への結合)
これらの光ラジカル発生剤を基材に結合させるには、基材結合部位、例えば、ガラスに代表される絶縁基板など、用いられる基板表面に存在する官能基と反応して結合しうる反応性基を有するものを用い、これにより基材に結合させることが好ましい。
光ラジカル発生剤を基材表面に存在する官能基に結合させる具体的な方法としては、光ラジカル発生剤を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基材表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などを適用すればよい。これらの方法により、光ラジカル発生剤が基材表面に結合し、導入される。
このとき、溶液中又は分散液の光ラジカル発生剤の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
また、このとき、光ラジカル発生剤とともに、増感剤などを共存させることもできる。
このようにして光ラジカル発生剤が結合してなる基板を得る。即ち、前記(1)工程である。
(光ラジカル発生剤の基板への結合)
これらの光ラジカル発生剤を基材に結合させるには、基材結合部位、例えば、ガラスに代表される絶縁基板など、用いられる基板表面に存在する官能基と反応して結合しうる反応性基を有するものを用い、これにより基材に結合させることが好ましい。
光ラジカル発生剤を基材表面に存在する官能基に結合させる具体的な方法としては、光ラジカル発生剤を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基材表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などを適用すればよい。これらの方法により、光ラジカル発生剤が基材表面に結合し、導入される。
このとき、溶液中又は分散液の光ラジカル発生剤の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
また、このとき、光ラジカル発生剤とともに、増感剤などを共存させることもできる。
このようにして光ラジカル発生剤が結合してなる基板を得る。即ち、前記(1)工程である。
(タンパク質を固定可能な官能基を有するポリマー)
本発明のプロテインチップ用基板に用いる多糖類あるいは多糖類誘導体は、タンパク質を固定可能な官能基に加え、後述するように、多糖類あるいは多糖類誘導体を基板表面に結合させる機能を有する、基板上に結合された前記光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体が好ましく用いられる。
ここで、多糖類あるいは多糖類誘導体が有する「タンパク質を固定可能な官能基」としては、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、エポキシ基、カルボン酸活性エステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、アセトアセチル基からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
これらの官能基のなかでも、反応性の高さの観点から、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、カルボン酸活性エステル基が好ましく、さらに、カルボン酸活性エステル基、が好ましい。
本発明のプロテインチップ用基板に用いる多糖類あるいは多糖類誘導体は、タンパク質を固定可能な官能基に加え、後述するように、多糖類あるいは多糖類誘導体を基板表面に結合させる機能を有する、基板上に結合された前記光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体が好ましく用いられる。
ここで、多糖類あるいは多糖類誘導体が有する「タンパク質を固定可能な官能基」としては、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、エポキシ基、カルボン酸活性エステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、アセトアセチル基からなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
これらの官能基のなかでも、反応性の高さの観点から、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、カルボン酸活性エステル基が好ましく、さらに、カルボン酸活性エステル基、が好ましい。
カルボン酸活性エステル基は、あらかじめ多糖類あるいは多糖類誘導体に導入されていても良く、また、カルボン酸を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を、タンパク質と反応させる直前に活性エステル化させてもよい。保存安定性の観点からは、カルボン酸を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を、タンパク質と反応させる直前に活性エステル化させることが好ましい。
本発明で用いるカルボキシル基含有多糖類は、天然植物からの抽出物、微生物発酵の生産物、酵素による合成物、または化学合成物の何れであってもよく、具体的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン酸硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セロウロン酸、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン等が挙げられる。好ましくはカルボキシメチルデキストランである。
カルボキシル基含有多糖類は、市販の化合物を用いることが可能であり、具体的には、カルボキシメチルデキストランであるCMD、CMD−L、CMD−D40(名糖産業社製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬社製)、アルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)、等を挙げることができる。
本発明で用いるカルボキシル基含有多糖類は、天然植物からの抽出物、微生物発酵の生産物、酵素による合成物、または化学合成物の何れであってもよく、具体的には、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デルマタン酸硫酸、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、セロウロン酸、カルボキシメチルキチン、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルデンプン等が挙げられる。好ましくはカルボキシメチルデキストランである。
カルボキシル基含有多糖類は、市販の化合物を用いることが可能であり、具体的には、カルボキシメチルデキストランであるCMD、CMD−L、CMD−D40(名糖産業社製)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬社製)、アルギン酸ナトリウム(和光純薬社製)、等を挙げることができる。
本発明に用いるタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体の分子量は特に制限されないが、重量平均分子量が1000〜5000000であることが好ましく、10000〜2000000であることがより好ましく、平均分子量が100000〜1000000であることがさらに好ましい。この範囲における重量平均分子量を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を用いることで、生理活性物質などのタンパク質の十分な固定量が達成され、且つ、適度な溶液粘度を有するために取り扱い性にも優れたものとなる。
本発明においてタンパク質を固定可能な官能基を、合成化学的手法を用いて多糖類に導入する場合、多糖類の水酸基、アミノ基、カルボキシル基のいずれかを修飾することにより、タンパク質を固定可能な官能基が導入される。
タンパク質を固定可能な官能基の導入量は、製造されるプロテインチップの使用目的により適宜、決定されるが、タンパク質を固定可能な官能基の導入率が高過ぎる場合、多糖類の親水性が低下する懸念があり、一方、多糖類に対するタンパク質の結合量は、タンパク質を固定可能な官能基の導入率に依存することから、タンパク質を固定可能な官能基の導入量が低過ぎる場合、基板表面に対するタンパク質結合量が低下する。これらを考慮すれば、タンパク質結合部位の導入率は、単糖あたり、0.01〜2.5個であることが好ましく、0.05〜2.0個であることがより好ましく、0.1〜1.0個であることが更に好ましい。
タンパク質を固定可能な官能基の導入量は、製造されるプロテインチップの使用目的により適宜、決定されるが、タンパク質を固定可能な官能基の導入率が高過ぎる場合、多糖類の親水性が低下する懸念があり、一方、多糖類に対するタンパク質の結合量は、タンパク質を固定可能な官能基の導入率に依存することから、タンパク質を固定可能な官能基の導入量が低過ぎる場合、基板表面に対するタンパク質結合量が低下する。これらを考慮すれば、タンパク質結合部位の導入率は、単糖あたり、0.01〜2.5個であることが好ましく、0.05〜2.0個であることがより好ましく、0.1〜1.0個であることが更に好ましい。
ガラス等の親水性基板にタンパク質溶液を点着する場合、タンパク質溶液が濡れ拡がってしまうため、超高密度化の達成は困難である。これに対し本発明は、疎水性領域の中に親水性領域の高密度アレイ化が容易であるという特徴を有する。このことは、プロテインチップの超高密度化にとって大きな意味を持つ。なぜならば、本発明において親水性表面は、アレイ状に区切られた微小領域として独立に存在しているため、適切な量のタンパク質溶液を親水性の微小領域に点着することで、タンパク質溶液を微小領域の面積以上に濡れ拡がらない状態に制御することが可能となる。このことは、連続した親水性表面に対してタンパク質を点着する場合と比較して、プロテインチップの超高密度化が容易であることを意味している。
タンパク質溶液の点着時に濡れ拡がらない表面として、疎水性表面を使用すること可能であるが、疎水性表面を用いた場合にはタンパク質の3次元固定が不可能となり、また、タンパク質の変性の問題も無視できなくなってしまう。このような観点から、本発明における多糖類あるいは多糖類誘導体が結合している領域においては、当該領域表面の水に対する接触角は0°〜40°であることが好ましく、0°〜20°であることが更に好ましく、0°〜10°であることが最も好ましい。
一方、点着したタンパク質溶液が、多糖類あるいは多糖類誘導体が結合した領域以外に濡れ拡がらないためには、多糖類あるいは多糖類誘導体が結合していない領域は疎水的であることが好ましい。従って、本発明における多糖類あるいは多糖類誘導体が結合していない領域、支持体となる基板自体は、その表面の水に対する接触角は40°〜150°であることが好ましく、50°〜120°であることが更に好ましく、60°〜110°であることが最も好ましい。
なお、これら接触角の測定は、液滴法、転落法、傾斜法等の公知の手法により可能であり、測定が容易かつ再現性が高いことから、液適法で測定することが好ましい。液適法で得られた液滴の画像をθ/2法を用いて解析することで、接触角の算出が可能となる。
なお、これら接触角の測定は、液滴法、転落法、傾斜法等の公知の手法により可能であり、測定が容易かつ再現性が高いことから、液適法で測定することが好ましい。液適法で得られた液滴の画像をθ/2法を用いて解析することで、接触角の算出が可能となる。
本発明においては、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体は、光照射により生成した活性点において共有結合を形成し、基板に直接結合される必要がある。このため、これらの多糖類あるいは多糖類誘導体には、さらに、基板上に結合された前記光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有する必要がある。以下、適宜、このような、タンパク質を固定可能な官能基と、基板表面において共有結合を形成しうる官能基とを有する多糖類あるいは多糖類誘導体を「特定多糖類(誘導体)」と称する。
共有結合を形成しうる官能基としては、例えば、水素引き抜き可能なC−H結合、不飽和二重結合、エポキシ基、オキセタン基などの官能基が挙げられ、これらが好ましく用いられる。
合成適性の観点からは、不飽和二重結合が好ましく、このような不飽和二重結合を前記したカルボキシル基を有するポリマーに導入するためには、カルボキシル基と反応可能な官能基と不飽和二重結合を併せ持つ化合物を、多糖類あるいは多糖類誘導体のカルボキシル基と反応させることで、ポリマー側鎖に不飽和二重結合を導入することが好ましい。カルボキシル基と反応可能な官能基と不飽和二重結合を併せ持つ化合物としては、アミノ基と不飽和二重結合を併せ持つ化合物が好ましく、2−アミノエチル(メタ)クリレートがより好ましい。
共有結合を形成しうる官能基としては、例えば、水素引き抜き可能なC−H結合、不飽和二重結合、エポキシ基、オキセタン基などの官能基が挙げられ、これらが好ましく用いられる。
合成適性の観点からは、不飽和二重結合が好ましく、このような不飽和二重結合を前記したカルボキシル基を有するポリマーに導入するためには、カルボキシル基と反応可能な官能基と不飽和二重結合を併せ持つ化合物を、多糖類あるいは多糖類誘導体のカルボキシル基と反応させることで、ポリマー側鎖に不飽和二重結合を導入することが好ましい。カルボキシル基と反応可能な官能基と不飽和二重結合を併せ持つ化合物としては、アミノ基と不飽和二重結合を併せ持つ化合物が好ましく、2−アミノエチル(メタ)クリレートがより好ましい。
(多糖類あるいは多糖類誘導体の基材への接触)
前記(2)工程では、該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面に、タンパク質を固定可能な官能基と、基板表面で共有結合を形成しうる官能基とを併せ持つ多糖類あるいは多糖類誘導体を接触させるが、このとき、接触は、タンパク質を固定可能な官能基と共有結合を形成しうる官能基とを併せ持つ多糖類あるいは多糖類誘導体、即ち、特定多糖類(誘導体)を溶液として基板と接触させてもよく、また、スピンコート等の手法を用いて基板上にポリマーを含む薄膜を形成させた状態を形成することで接触させてもよいが、基板上への前記特定多糖類(誘導体)の結合量の制御が容易である、との観点からは、前記特定多糖類(誘導体)を含む薄膜を基板上に形成させる方法が好ましい。
前記(2)工程では、該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面に、タンパク質を固定可能な官能基と、基板表面で共有結合を形成しうる官能基とを併せ持つ多糖類あるいは多糖類誘導体を接触させるが、このとき、接触は、タンパク質を固定可能な官能基と共有結合を形成しうる官能基とを併せ持つ多糖類あるいは多糖類誘導体、即ち、特定多糖類(誘導体)を溶液として基板と接触させてもよく、また、スピンコート等の手法を用いて基板上にポリマーを含む薄膜を形成させた状態を形成することで接触させてもよいが、基板上への前記特定多糖類(誘導体)の結合量の制御が容易である、との観点からは、前記特定多糖類(誘導体)を含む薄膜を基板上に形成させる方法が好ましい。
基板上にタンパク質を固定可能な官能基と共有結合を形成しうる官能基とを併せ持つ多糖類あるいは多糖類誘導体の薄膜を形成させる方法は、公知の方法を用いることが可能であるが、具体的には、エクストルージョンコート法、カーテンコート法、キャスティング法、スクリーン印刷法、スピンコート法、スプレーコート法、スライドビードコート法、スリットアンドスピン方式、スリットコート方式、ダイコート法、ディップコート法、ナイフコート法、ブレードコート法、フローコート法、ロールコート法、ワイヤバーコート方式、転写印刷法、等を公知の塗布法を用いることが可能である。
これらの薄膜形成法については、「コーティング技術の進歩」原崎勇次著、総合技術センター(1988)、「コーティング技術」技術情報協会(1999)、「水性コーティングの技術」シーエムシー(2001)、「進化する有機薄膜 成膜編」住べテクノリサーチ(2004)、「高分子表面加工学」岩森暁著、技報堂出版(2005)、等に説明されている。
なかでも、膜厚制御された塗布膜を簡便に形成可能であることから、本発明において基板上に本発明に係る特定多糖類(誘導体)薄膜を形成させる方法としては、スプレーコート法またはスピンコート法が好ましく、スピンコート法がさらに好ましい。
これらの薄膜形成法については、「コーティング技術の進歩」原崎勇次著、総合技術センター(1988)、「コーティング技術」技術情報協会(1999)、「水性コーティングの技術」シーエムシー(2001)、「進化する有機薄膜 成膜編」住べテクノリサーチ(2004)、「高分子表面加工学」岩森暁著、技報堂出版(2005)、等に説明されている。
なかでも、膜厚制御された塗布膜を簡便に形成可能であることから、本発明において基板上に本発明に係る特定多糖類(誘導体)薄膜を形成させる方法としては、スプレーコート法またはスピンコート法が好ましく、スピンコート法がさらに好ましい。
スプレーコート法とは、微細化されたポリマー溶液を基板に吹きつけた状態で、基板を移動させることで、基板上にポリマー溶液を均一塗布する方法である。スプレーガンの引き金を引くと空気バルブとニードルバルブが同時に開き、ノズルからポリマー溶液が霧状に噴出し、ノズル先端にある空気キャップから噴出する空気で霧状のポリマー溶液がさらに微細化される。微細化されたポリマー溶液による塗布膜を基板表面に形成させた後、溶媒を蒸発させることで、膜厚の制御されたポリマーフイルムが容易に作製される。ポリマー溶液濃度、基板の移動速度等により、ポリマー薄膜の膜厚制御が可能となる。
スピンコート法とは、水平に設置した基板上にポリマー溶液を滴下した後に高速回転させ、遠心力によって基板全体にポリマー溶液を均一塗布する方法である。遠心力によるポリマー溶液の飛散と溶媒の蒸発に伴い、膜厚の制御されたポリマーフイルムが容易に作製される。回転数、ポリマー溶液濃度、溶剤の蒸気圧等により、ポリマー薄膜の膜厚制御が可能となる。本発明においてスピンコート時の回転数は特に制限されないが、回転数が低すぎる場合には基板上に溶液が残存し、回転数が高すぎる場合には使用可能な装置が制限されてしまう。それゆえ本研究においてはスピンコート時の回転数は、500rpm〜10000rpmであることが好ましく、1000rpm〜7000rpmであることがさらに好ましい。
(多糖類あるいは多糖類誘導体の基板上への結合)
次に、このように特定のポリマーを接触させた基板を、パターン状に光照射することで、光照射領域においてタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を結合させ、パターン状の多糖類あるいは多糖類誘導体結合領域を形成する工程〔前記(3)工程〕を行ってパターン状にタンパク質を結合しうる領域が形成されたプロテインチップ用基板を得る。
パターン状の露光は、走査露光により行われてもよく、フォトマスクを介した露光により行われてもよい。
露光光源としては、基材表面に固定化された光ラジカル発生剤を活性化させ、ラジカルを発生させうるものであれば、特に制限はないが、具体的には、200nm〜600nmの波長の光源を用いることが好ましい。
走査露光は種々のレーザビームを走査して行うことができる。例えば、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザなどのレーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。さらに、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。
次に、このように特定のポリマーを接触させた基板を、パターン状に光照射することで、光照射領域においてタンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体を結合させ、パターン状の多糖類あるいは多糖類誘導体結合領域を形成する工程〔前記(3)工程〕を行ってパターン状にタンパク質を結合しうる領域が形成されたプロテインチップ用基板を得る。
パターン状の露光は、走査露光により行われてもよく、フォトマスクを介した露光により行われてもよい。
露光光源としては、基材表面に固定化された光ラジカル発生剤を活性化させ、ラジカルを発生させうるものであれば、特に制限はないが、具体的には、200nm〜600nmの波長の光源を用いることが好ましい。
走査露光は種々のレーザビームを走査して行うことができる。例えば、ガスレーザ、発光ダイオード、半導体レーザなどのレーザ、半導体レーザ又は半導体レーザを励起光源に用いた固体レーザと非線形光学結晶を組み合わせた第二高調波発光光源(SHG)、等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができる。さらに、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F2レーザ等も用いることができる。
フォトマスクを介した露光の光源としては、高圧水銀灯、高圧ナトリウムランプ、キセノンランプ等を用いることが可能である。また、フォトマスクとしては、ガラス基板上にパターン化されたクロム膜を有するものを用いることができる。これを用いた場合、クロム膜のない領域のみが露光され、マスクの形状に応じたパターンを作製することが可能である。
このようにして、基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体がアレイ状に配列されてなるプロテインチップ用基板を得ることができる。
このアレイ状の多糖類あるいは多糖類誘導体の結合領域の大きさや結合領域間の間隔などは露光の解像度に応じて任意に選択しうるため、種々の設計のプロテインチップに有用なプロテインチップ用基板を、容易に、生産性高く製造することができる。
本発明におけるプロテインチップ基板上で、アレイ状に分画された多糖類あるいは多糖類誘導体が結合した微小領域の数、すなわち異なるタンパク質を結合可能な微小領域の数に関しては特に制限は無いが、75mm×25mmの基板上で100個〜52万個であることが好ましく、1000個〜30万個であることが更に好ましく、1万個〜13万個であることが最も好ましい。
本プロテインチップ用基板においては、タンパク質を固定化しうる官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体が基板に共有結合により強固に結合され、且つ、水と接触した時の運動性に優れており、分子内に複数の「タンパク質を固定化しうる官能基」を有し、且つ、タンパク質との親和性に優れるため、単位面積あたりのタンパク質固定化量が飛躍的に高まると同時に、固定化されたタンパク質の変性が抑制される、という利点をも有する。
このアレイ状の多糖類あるいは多糖類誘導体の結合領域の大きさや結合領域間の間隔などは露光の解像度に応じて任意に選択しうるため、種々の設計のプロテインチップに有用なプロテインチップ用基板を、容易に、生産性高く製造することができる。
本発明におけるプロテインチップ基板上で、アレイ状に分画された多糖類あるいは多糖類誘導体が結合した微小領域の数、すなわち異なるタンパク質を結合可能な微小領域の数に関しては特に制限は無いが、75mm×25mmの基板上で100個〜52万個であることが好ましく、1000個〜30万個であることが更に好ましく、1万個〜13万個であることが最も好ましい。
本プロテインチップ用基板においては、タンパク質を固定化しうる官能基を有する多糖類あるいは多糖類誘導体が基板に共有結合により強固に結合され、且つ、水と接触した時の運動性に優れており、分子内に複数の「タンパク質を固定化しうる官能基」を有し、且つ、タンパク質との親和性に優れるため、単位面積あたりのタンパク質固定化量が飛躍的に高まると同時に、固定化されたタンパク質の変性が抑制される、という利点をも有する。
<プロテインチップ>
前記本発明のプロテインチップ用基板において、特定多糖類(誘導体)が有するタンパク質を結合可能な官能基にタンパク質を固定化させることで、基板表面に、等間隔でアレイ状にタンパク質を固定してなるプロテインチップを得ることができる。
本発明に用いられるタンパク質としては、細胞などの任意の生物材料から入手したタンパク質を適当な切断によって調製したタンパク質断片、人工的に合成したポリペプチドやオリゴペプチドを用いることができる。
前記本発明のプロテインチップ用基板において、特定多糖類(誘導体)が有するタンパク質を結合可能な官能基にタンパク質を固定化させることで、基板表面に、等間隔でアレイ状にタンパク質を固定してなるプロテインチップを得ることができる。
本発明に用いられるタンパク質としては、細胞などの任意の生物材料から入手したタンパク質を適当な切断によって調製したタンパク質断片、人工的に合成したポリペプチドやオリゴペプチドを用いることができる。
また、任意の生物材料から取り出したDNA断片を試験管内で他の生物のDNA分子に連結して組み換えDNA分子を作製し、その組み換えDNA分子を宿主細胞に移入後、その宿主細胞を培養すること(いわゆる組み換えDNA技術)によって産生されるタンパク質を用いることも好ましい。組み換えDNA技術は、特定の種類のタンパク質を発現あるいは増殖できる点で有効である。
任意の生物のDNA断片は、生物材料から取り出す方法によってだけでなく、人工合成する方法、PCR法により合成する方法、または生物材料からmRNAを取り出し、これを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNA(相補的DNA)を合成する方法によって調製したものを用いてもよい。
システイン残基が導入されたタンパク質は、システイン残基を有するDNA断片を組み換えDNA技術に供して産生されるタンパク質を使用することが好ましい。
任意の生物のDNA断片は、生物材料から取り出す方法によってだけでなく、人工合成する方法、PCR法により合成する方法、または生物材料からmRNAを取り出し、これを鋳型として逆転写酵素を用いてcDNA(相補的DNA)を合成する方法によって調製したものを用いてもよい。
システイン残基が導入されたタンパク質は、システイン残基を有するDNA断片を組み換えDNA技術に供して産生されるタンパク質を使用することが好ましい。
例えば、酵母のタンパク質合成における翻訳段階の特定の時期での粗回収物に含まれるタンパク質との相互作用を検出する場合には、酵母より取り出したオープン・リーディング・フレイム(ORF:終止コドンのない比較的長いDNA配列))を発現ベクターに組み込んで発現させたタンパク質を用いることが好ましい。
本発明においては、基板表面に結合している多糖類あるいは多糖類誘導体のカルボキシル基を活性化した後、タンパク質を含む水性液を点着することで、基板表面にタンパク質を固定する。カルボキシル基を含有する多糖類あるいは多糖類誘導体は、公知の方法、例えば、水溶性カルボジイミドである1−(3−Dimethylaminopropyl)−3 ethylcarbodiimide(EDC)とN−Hydroxysuccinimide(NHS)により活性化され、アミノ基を有する生理活性物質を固定化することが可能となる。カルボン酸を活性化する手法としては、特願2004−238396号に記載の方法(即ち、基板の表面に存在するカルボキシル基を特定の構造を有するウロニウム塩、ホスホニウム塩、又はトリアジン誘導体のいずれかの化合物を用いて活性化することによりカルボン酸アミド基を形成する方法)、並びに特願2004−275012号に記載の方法(即ち、基板の表面に存在するカルボキシル基を、カルボジイミド誘導体又はその塩で活性化し、水酸基を有する含窒素ヘテロ芳香族化合物、電子吸引性基を有するフェノール誘導体又はチオール基を有する芳香族化合物のいずれかの化合物でエステルとした後に、アミンと反応させることによりカルボン酸アミド基を形成する方法)を好ましく用いることもできる。
なお、上記した特願2004−238396号における特定の構造を有するウロニウム塩、ホスホニウム塩、又はトリアジン誘導体とは、下記一般式1で表されるウロニウム塩、下記一般式2で表されるホスホニウム塩、又は下記一般式3で表されるトリアジン誘導体を示す。
(一般式1において、R1とR2はそれぞれ独立に炭素数1から6のアルキル基を示すか、又は互いに一緒になって炭素数2から6のアルキレン基を形成してN原子と共に環を形成し、R3は炭素数6から20の芳香環基又は少なくとも1以上のヘテロ原子を含むヘテロ環基を示し、X−はアニオンを示す。一般式2において、R4とR5はそれぞれ独立に炭素数1から6のアルキル基を示すか、又は互いに一緒になって炭素数2から6のアルキレン基を形成してN原子と共に環を形成し、R6は炭素数6から20の芳香環基又は少なくとも1以上のヘテロ原子を含むヘテロ環基を示し、X−はアニオンを示す。一般式3において、R7はオニウム基を示し、R8及びR9はそれぞれ独立に電子供与基を示す。)
基板上の所定の位置に目的タンパク質を結合させるためには、スポッターあるいはアレイヤーと呼ばれるDNAチップ(スタンフォード型マイクロアレイ)作製装置を用いることが可能である。また、特開2000−60550に記載されている装置を用いることも可能である。DNAチップ作製装置は、スタンフォード大学のBrownらにより開発されたものであるが(米国特許5,807,522)、高精細度の高速ロボットスポッターにより、多種類のcDNA溶液 をガラス基板上の指定された位置に点着させ、高密度DNA チップを作製するための装置である。得られた高密度DNAチップを用いることで、遺伝子の発現解析や遺伝子変異の検出が可能となる(P.O.Brown,et al,Science,270,467(1995).)。本発明のプロテインチップを作製する場合、cDNA溶液の替わりにタンパク質溶液を用いることで、高密度プロテインチップを容易に作製することが可能となる。
タンパク質溶液を点着後、所定の温度(好ましくは、室温)でそのまま数時間放置することで、基板表面にタンパク質を固定することが可能となる。点着後、必要に応じてインキュベーションを行ってもよい。点着の条件は、使用する基板の種類や大きさ、点着するタンパク質の種類の数などによって異なる。点着後は、未固定のタンパク質を洗浄して除去することが好ましい。
本発明のプロテインチップは種々の利用が可能であるが、固定されたタンパク質と特異的な結合を形成する標的分子を検出するものであれば、何れの利用も可能であり、具体的な標的分子としては、タンパク質、核酸、糖鎖、低分子化合物が挙げられる。検出対象の試料タンパク質としては、タンパク質、ペプチド、糖、脂質、リン酸等によって修飾されてなる複合ペプチドや複合タンパク質を挙げることができる。実験系や臨床系から得られる未精製の生化学サンプルの抽出液、組織、白血球、体液(血液、血清、尿、精液、唾液等)、糞便などに含まれるタンパク質を精製せずに使用することも可能である。
以下に、本発明のプロテインチップの具体的な使用態様の例を示す。
以下に、本発明のプロテインチップの具体的な使用態様の例を示す。
〔使用態様1:遺伝子の同定〕
本発明のプロテインチップは、癌、炎症等の病気の原因となる遺伝子の同定、あるいは発生や細胞周期の各時期に機能する遺伝子の同定に利用することができる。例えば、全塩基配列が解明されている出芽酵母のORFを発現ベクターに組み込んで産生させたタンパク質を固定したプロテインチップを作製し、該タンパク質に対する、対数増殖期、定常期等の特定時期の酵母細胞から抽出されるタンパク質の相互作用を検出することによって、該時期の酵母タンパク質の発現量を解析することができる。また、酵母細胞として遺伝子破壊株や過剰発現株を用い、それらの株における発現量を解析することもできる。さらに、分離精製した発現タンパク質を試料とすれば、発現タンパク質の種類を特定することも可能である。
本発明のプロテインチップは、癌、炎症等の病気の原因となる遺伝子の同定、あるいは発生や細胞周期の各時期に機能する遺伝子の同定に利用することができる。例えば、全塩基配列が解明されている出芽酵母のORFを発現ベクターに組み込んで産生させたタンパク質を固定したプロテインチップを作製し、該タンパク質に対する、対数増殖期、定常期等の特定時期の酵母細胞から抽出されるタンパク質の相互作用を検出することによって、該時期の酵母タンパク質の発現量を解析することができる。また、酵母細胞として遺伝子破壊株や過剰発現株を用い、それらの株における発現量を解析することもできる。さらに、分離精製した発現タンパク質を試料とすれば、発現タンパク質の種類を特定することも可能である。
〔使用態様2:バイオセンサ〕
本発明のプロテインチップは、バイオセンサとしても利用することができる。例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼコンプレックス(PDC)に対する抗体を固定したプロテインチップに、PDCのサブユニットを含む細胞溶解液を接触させた後、条件を変えて洗浄することによって、サブユニットの相互作用の強さを検出することができる。
本発明のプロテインチップは、バイオセンサとしても利用することができる。例えば、ピルビン酸デヒドロゲナーゼコンプレックス(PDC)に対する抗体を固定したプロテインチップに、PDCのサブユニットを含む細胞溶解液を接触させた後、条件を変えて洗浄することによって、サブユニットの相互作用の強さを検出することができる。
〔使用態様3:タンパク質の精製〕
本発明のプロテインチップは、タンパク質の精製にも利用することができる。洗浄の条件を順次変えていくことによって、数種類のタンパク質を精製することも可能である。
本発明のプロテインチップは、タンパク質の精製にも利用することができる。洗浄の条件を順次変えていくことによって、数種類のタンパク質を精製することも可能である。
〔使用態様4:微量タンパク質の定量〕
具体例4:本発明のプロテインチップは、試料中の微量タンパク質の定量が可能である。例えば、ホスホチロシンペプチドを固定したプロテインチップに対して、濃度が異なるホスホチロシンを接触させて検量線を作製することが可能である。
具体例4:本発明のプロテインチップは、試料中の微量タンパク質の定量が可能である。例えば、ホスホチロシンペプチドを固定したプロテインチップに対して、濃度が異なるホスホチロシンを接触させて検量線を作製することが可能である。
〔使用態様5:抗原−抗体反応やリガンド−レセプターの結合の検出〕
本発明のプロテインチップは、一般的に強い相互作用を持つことが知られている抗原−抗体反応やリガンド−レセプターの結合の検出にも有用である。前者の例としては、モノクローナル抗体のスクリーニングを挙げることができる。後者の例としては、ヒト成長ホルモンレセプターを固定したプロテインチップに、天然型のヒト成長ホルモンおよびレセプターとの結合部位の一つのアミノ酸をアラニンに置換した変異型ホルモンをそれぞれ接触させることによって得られる相互作用の強さの相違から、医薬品リード化合物としての新規なヒト成長ホルモンを開発することも可能である。
本発明のプロテインチップは、一般的に強い相互作用を持つことが知られている抗原−抗体反応やリガンド−レセプターの結合の検出にも有用である。前者の例としては、モノクローナル抗体のスクリーニングを挙げることができる。後者の例としては、ヒト成長ホルモンレセプターを固定したプロテインチップに、天然型のヒト成長ホルモンおよびレセプターとの結合部位の一つのアミノ酸をアラニンに置換した変異型ホルモンをそれぞれ接触させることによって得られる相互作用の強さの相違から、医薬品リード化合物としての新規なヒト成長ホルモンを開発することも可能である。
<プロテオーム解析装置>
本発明のプロテオーム解析装置は、前記本発明のプロテインチップを備えることを特徴とする。本発明のプロテインチップを適用しうるプロテオーム解析装置には特に制限はなく、以下に示すごとき公知の装置に適用可能である。
プロテオーム解析装置、解析方法は、いくつか知られているが、表面プラズモンによる画像計測法は無標識法として望ましく、例えば特開2005−77247号公報に開示されている技術が好適である。同様の技術として、同文献に記載されている特開2001−255267号公報に開示されている技術も好ましい。蛍光標識した結合性タンパク質との相互作用を調べるのであれば、二次元蛍光像をフルオロイメージアナライザー(例えば、富士写真フイルム製のFLA−8000)を用いて解析することも可能である。
本発明のプロテオーム解析装置は、前記本発明のプロテインチップを備えることを特徴とする。本発明のプロテインチップを適用しうるプロテオーム解析装置には特に制限はなく、以下に示すごとき公知の装置に適用可能である。
プロテオーム解析装置、解析方法は、いくつか知られているが、表面プラズモンによる画像計測法は無標識法として望ましく、例えば特開2005−77247号公報に開示されている技術が好適である。同様の技術として、同文献に記載されている特開2001−255267号公報に開示されている技術も好ましい。蛍光標識した結合性タンパク質との相互作用を調べるのであれば、二次元蛍光像をフルオロイメージアナライザー(例えば、富士写真フイルム製のFLA−8000)を用いて解析することも可能である。
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
1.光ラジカル発生剤(化合物A)の合成
(1−1)中間体1の合成
4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル(4−Cyano−4’−hydroxybiphenyl)29.33g(0.150mol)と、N,N−ジメチルアセトアミド75mlとを、冷却管を設置した300ml容の三口フラスコに入れて撹拌し均一溶液とした。その溶液に22.81g(0.165mol)の炭酸カリウムを加えてオイルバスで80℃に加熱し、38.78g(0.166mol)の11−ブロモ−1−ウンデセンを徐々に滴下した。1.5時間後に反応液を100℃に昇温し、さらに1.5時間反応させた。原料の消失はTLCで確認した。反応終了後、反応液を水230mlに投入し、析出した白色固体を濾別および水で洗浄した。得られた固体をアセトニトリルで再結晶し、下記中間体1 43.11gを得た。収率は82.6%であった。
〔実施例1〕
1.光ラジカル発生剤(化合物A)の合成
(1−1)中間体1の合成
4−シアノ−4’−ヒドロキシビフェニル(4−Cyano−4’−hydroxybiphenyl)29.33g(0.150mol)と、N,N−ジメチルアセトアミド75mlとを、冷却管を設置した300ml容の三口フラスコに入れて撹拌し均一溶液とした。その溶液に22.81g(0.165mol)の炭酸カリウムを加えてオイルバスで80℃に加熱し、38.78g(0.166mol)の11−ブロモ−1−ウンデセンを徐々に滴下した。1.5時間後に反応液を100℃に昇温し、さらに1.5時間反応させた。原料の消失はTLCで確認した。反応終了後、反応液を水230mlに投入し、析出した白色固体を濾別および水で洗浄した。得られた固体をアセトニトリルで再結晶し、下記中間体1 43.11gを得た。収率は82.6%であった。
(1−2)中間体2の合成
塩化カルシウム管を設置した300ml容の三口フラスコに20.00g(57.56mmol)の中間体1を入れ、氷冷下で150g(1.0mol)のトリクロロアセトニトリルに溶かして均一溶液とした。その溶液に1.54g(5.76mmol)の臭化アルミニウムを加え、溶液を撹拌しながら塩酸ガスを4時間バブリングした。さらに4時間撹拌した後、一晩静置した。生成物を酢酸エチルで抽出し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により、下記中間体2を単離した。収量は36.44g、収率は99.5%であった。
塩化カルシウム管を設置した300ml容の三口フラスコに20.00g(57.56mmol)の中間体1を入れ、氷冷下で150g(1.0mol)のトリクロロアセトニトリルに溶かして均一溶液とした。その溶液に1.54g(5.76mmol)の臭化アルミニウムを加え、溶液を撹拌しながら塩酸ガスを4時間バブリングした。さらに4時間撹拌した後、一晩静置した。生成物を酢酸エチルで抽出し、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=3/1)により、下記中間体2を単離した。収量は36.44g、収率は99.5%であった。
(1−3)光ラジカル発生剤(化合物A)の合成
塩化カルシウム管を設置した50ml容の三口フラスコに2.01g(3.159mmol)の中間体2を入れ、3mlのテトラヒドロフランに溶かした。その溶液を0℃に冷却し、6mlのトリクロロシランを添加して撹拌した。さらに触媒としてSpeir catalyst(塩化白金(IV)酸六水和物/2−プロパノール 0.1M)を加えて室温で撹拌を続けた。5時間後、未反応のトリクロロシランを減圧留去し、光ラジカル発生剤(下記化合物A)を得た。
塩化カルシウム管を設置した50ml容の三口フラスコに2.01g(3.159mmol)の中間体2を入れ、3mlのテトラヒドロフランに溶かした。その溶液を0℃に冷却し、6mlのトリクロロシランを添加して撹拌した。さらに触媒としてSpeir catalyst(塩化白金(IV)酸六水和物/2−プロパノール 0.1M)を加えて室温で撹拌を続けた。5時間後、未反応のトリクロロシランを減圧留去し、光ラジカル発生剤(下記化合物A)を得た。
2.CMDへの二重結合の導入
カルボキシメチルデキストラン(略称:CMD−D40、名糖産業製,分子量4万) 5.0g(0.02mol/1ユニット、0.02mol/カルボン酸ナトリウム)と2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩(90%)3.7g(0.02mol)を蒸留水40gに溶かした。それをアイスバスで冷やし、蒸留水 12gに溶かした1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(略称:WSC、同仁化学研究所製)4.2g(0.022mol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応液をアセトン 500mlに投入し析出した固体を濾過して取り出した。その固体を、メタノールでリスラリーして乾燥し、4.1gの薄い褐色の粉末を得た。NMRで構造を確認したところ、CMD−D40に含まれるカルボン酸ナトリウムのうち約20mol%が2−アミノエチルメタクリレートと反応してアミド化したことが分った。このようにして、タンパク質を固定可能な官能基と、共有結合を形成しうる官能基とを有する特定多糖類(1)を得た。
カルボキシメチルデキストラン(略称:CMD−D40、名糖産業製,分子量4万) 5.0g(0.02mol/1ユニット、0.02mol/カルボン酸ナトリウム)と2−アミノエチルメタクリレート塩酸塩(90%)3.7g(0.02mol)を蒸留水40gに溶かした。それをアイスバスで冷やし、蒸留水 12gに溶かした1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(略称:WSC、同仁化学研究所製)4.2g(0.022mol)を添加した。室温で一晩撹拌した後、反応液をアセトン 500mlに投入し析出した固体を濾過して取り出した。その固体を、メタノールでリスラリーして乾燥し、4.1gの薄い褐色の粉末を得た。NMRで構造を確認したところ、CMD−D40に含まれるカルボン酸ナトリウムのうち約20mol%が2−アミノエチルメタクリレートと反応してアミド化したことが分った。このようにして、タンパク質を固定可能な官能基と、共有結合を形成しうる官能基とを有する特定多糖類(1)を得た。
3.光ラジカル発生剤Aの基板への結合
光開始剤1(模式図1記載のトリクロロトリアジン系開始剤)を脱水MEK(メチルエチルケトン)に溶かして0.5wt%の溶液とした。シリコンウェハ基板は、アセトンと水で洗浄した後、UVオゾンクリーナーで5分間処理した。このシリコンウェハに、光ラジカル発生剤(化合物A)の溶液をスピンコート(1000rpm、20sec)して乾燥(100℃、60分)した後、MEKを用いて表面を洗浄した。このようにして光ラジカル発生剤が結合された基板を得た。
光開始剤1(模式図1記載のトリクロロトリアジン系開始剤)を脱水MEK(メチルエチルケトン)に溶かして0.5wt%の溶液とした。シリコンウェハ基板は、アセトンと水で洗浄した後、UVオゾンクリーナーで5分間処理した。このシリコンウェハに、光ラジカル発生剤(化合物A)の溶液をスピンコート(1000rpm、20sec)して乾燥(100℃、60分)した後、MEKを用いて表面を洗浄した。このようにして光ラジカル発生剤が結合された基板を得た。
4.二重結合導入CMDの光固定
前記のようにして得られた特定多糖類(1)を0.4g取り、アセトニトリル 1.0gと水 2.0gに溶かして12質量%の溶液とし、シリンジ型のフィルターでろ過して不溶物を除いた。この溶液を、光ラジカル発生剤Aを固定化したシリコンウェハ(基板)にスピンコート(750rpm、20sec)して乾燥(80℃、2分)し、乾膜とした。その上に320nm以下の光をカットするためにガラス板を、さらにアレイ状に露光するために50μm×50μm間隔でパターン化されたフォトマスクを乗せた。UV露光装置UVX−02516S1LP01(高圧水銀灯、USHIO製)で30秒間露光し、水に5分間浸漬して現像した。その後、超音波洗浄機で5分間洗浄した。
シリコンウェハ表面は、アレイ状の露光領域のみが疎水性から親水性に変化した。このようにして、タンパク質を固定可能な官能基を有する特定多糖類がアレイ状に、基材表面に直接結合してなる実施例1のプロテインチップ用基板を得た。
特定多糖類固定化領域が親水化し、非形成領域が基板表面の疎水性を維持していることが、光学顕微鏡下で本基板に水を接触させ、その濡れ拡がり性を観察することにより確認された。
前記のようにして得られた特定多糖類(1)を0.4g取り、アセトニトリル 1.0gと水 2.0gに溶かして12質量%の溶液とし、シリンジ型のフィルターでろ過して不溶物を除いた。この溶液を、光ラジカル発生剤Aを固定化したシリコンウェハ(基板)にスピンコート(750rpm、20sec)して乾燥(80℃、2分)し、乾膜とした。その上に320nm以下の光をカットするためにガラス板を、さらにアレイ状に露光するために50μm×50μm間隔でパターン化されたフォトマスクを乗せた。UV露光装置UVX−02516S1LP01(高圧水銀灯、USHIO製)で30秒間露光し、水に5分間浸漬して現像した。その後、超音波洗浄機で5分間洗浄した。
シリコンウェハ表面は、アレイ状の露光領域のみが疎水性から親水性に変化した。このようにして、タンパク質を固定可能な官能基を有する特定多糖類がアレイ状に、基材表面に直接結合してなる実施例1のプロテインチップ用基板を得た。
特定多糖類固定化領域が親水化し、非形成領域が基板表面の疎水性を維持していることが、光学顕微鏡下で本基板に水を接触させ、その濡れ拡がり性を観察することにより確認された。
(実施例2)
1.プロテインチップ用基板上へのタンパク質の固定
蛍光ラベル化タンパクとして、Avidin−FITC(Sigma社)を用いて検討を行った。実施例1で得たプロテインチップ用基板表面を、0.4MのWSC〔1−(3−ジメチルアミドプロピル)−3−エチルカルボジイミド:1−(3−Dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide〕および0.1MのNHS〔N−ヒドロキシサクシンイミド:N−Hydroxysuccinimide〕の等量混合溶液を用いて5分間活性化させた後、0.25mg/mlのAvidin−FITC溶液(pH7.4)と接触させ5分間反応させた。この表面を、超純水で3回、10mMのNaOH水溶液で2回洗浄した。
このようにして実施例1で得たプロテインチップ用基板のグラフトポリマー形成領域に蛍光ラベル化タンパクを固定化して実施例2のプロテインチップを得た。
1.プロテインチップ用基板上へのタンパク質の固定
蛍光ラベル化タンパクとして、Avidin−FITC(Sigma社)を用いて検討を行った。実施例1で得たプロテインチップ用基板表面を、0.4MのWSC〔1−(3−ジメチルアミドプロピル)−3−エチルカルボジイミド:1−(3−Dimethylaminopropyl)−3−ethylcarbodiimide〕および0.1MのNHS〔N−ヒドロキシサクシンイミド:N−Hydroxysuccinimide〕の等量混合溶液を用いて5分間活性化させた後、0.25mg/mlのAvidin−FITC溶液(pH7.4)と接触させ5分間反応させた。この表面を、超純水で3回、10mMのNaOH水溶液で2回洗浄した。
このようにして実施例1で得たプロテインチップ用基板のグラフトポリマー形成領域に蛍光ラベル化タンパクを固定化して実施例2のプロテインチップを得た。
2.2次元蛍光像の観察
実施例2で作製したプロテインチップ表面の2次元蛍光像を、フルオロイメージアナライザー(富士写真フイルム製FLA−8000)を用いて測定した(励起波長463nm、測定波長530nm)。得られた画像を図1に示す。
図1は、フルオロイメージアナライザーで観察された2次元蛍光像を示す画像である。
図1により、50μm×50μmのマスクパターンに対応した、アレイ状の蛍光像が観察された。このことは、マスクパターンに対応して光照射された基板表面にのみ、カルボキシメチルデキストラン(タンパク質を固定可能な官能基を有するポリマー)が固定化され、結合していること、また、その部分にのみ蛍光タンパク質であるAvidin−FITCが固定化されていることを意味している。
実施例2で作製したプロテインチップ表面の2次元蛍光像を、フルオロイメージアナライザー(富士写真フイルム製FLA−8000)を用いて測定した(励起波長463nm、測定波長530nm)。得られた画像を図1に示す。
図1は、フルオロイメージアナライザーで観察された2次元蛍光像を示す画像である。
図1により、50μm×50μmのマスクパターンに対応した、アレイ状の蛍光像が観察された。このことは、マスクパターンに対応して光照射された基板表面にのみ、カルボキシメチルデキストラン(タンパク質を固定可能な官能基を有するポリマー)が固定化され、結合していること、また、その部分にのみ蛍光タンパク質であるAvidin−FITCが固定化されていることを意味している。
実施例1及び実施例2の結果より、本発明により得られたプロテインチップ用基板は、タンパク質をアレイ状に結合することが容易であり、プロテインチップ作製用基板として有用であることが証明された。
(実施例3)
実施例1の第4工程におけるUV露光条件を、30秒から1分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、プロテインチップ基板を得た。このプロテインチップ基板に、実施例2の第1工程と同様の操作で、蛍光ラベル化タンパク質でAvidin−FITCを結合し、実施例3のプロテインチップを得た。
実施例1の第4工程におけるUV露光条件を、30秒から1分に変更した以外は、実施例1と同様の方法で、プロテインチップ基板を得た。このプロテインチップ基板に、実施例2の第1工程と同様の操作で、蛍光ラベル化タンパク質でAvidin−FITCを結合し、実施例3のプロテインチップを得た。
(プロテインチップの評価)
実施例2で得られたプロテインチップと実施例3で得られたプロテインチップの単位面積あたりの蛍光強度を、フルオロイメージアナライザー(富士写真フイルム社製FLA−8000)を用いて測定した(励起波長463nm,発光波長530nm)。その結果、実施例2、および実施例3のプロテインチップの蛍光強度はそれぞれ、65および105(単位面積あたりの相対値)であった。このことから、露光時間の制御によりタンパク質結合量の異なるプロテインチック基板の作製が可能であり、露光時間の増大によりタンパク質結合能の大きなプロテインチップ基板が作製可能であることが証明された。
実施例2で得られたプロテインチップと実施例3で得られたプロテインチップの単位面積あたりの蛍光強度を、フルオロイメージアナライザー(富士写真フイルム社製FLA−8000)を用いて測定した(励起波長463nm,発光波長530nm)。その結果、実施例2、および実施例3のプロテインチップの蛍光強度はそれぞれ、65および105(単位面積あたりの相対値)であった。このことから、露光時間の制御によりタンパク質結合量の異なるプロテインチック基板の作製が可能であり、露光時間の増大によりタンパク質結合能の大きなプロテインチップ基板が作製可能であることが証明された。
Claims (10)
- 基板上に、タンパク質を固定可能な官能基を有する多糖類がアレイ状に配列されてなるプロテインチップ用基板。
- タンパク質を固定可能な官能基が、ビニルスルホン基およびその前駆体、ハロトリアジン基、エポキシ基、カルボン酸活性エステル基、アルデヒド基、イソシアネート基、アセトアセチル基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項1に記載のプロテインチップ用基板。
- タンパク質を固定可能な官能基が、カルボン酸活性エステル基であることを特徴とする請求項1に記載のプロテインチップ用基板。
- カルボン酸活性エステル基が、カルボキシメチル基を有する多糖類を活性化することにより得られることを特徴とする請求項3に記載のプロテインチップ用基板。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロテインチップ用基板を製造する方法であって、
基板上に、光ラジカル発生剤を結合させる工程と、該光ラジカル発生剤を固定化した基板表面にタンパク質を固定可能な官能基を有するポリマーを接触させ、光照射することで、該ポリマーを基板表面に結合させる工程と、を有することを特徴とするプロテインチップ用基板の製造方法。 - タンパク質を固定可能な官能基を有するポリマーが、基板上に結合された光ラジカル発生剤を光照射することで生じた活性点において共有結合を形成しうる官能基を有することを特徴とする請求項5に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
- 共有結合を形成しうる官能基が、水素引き抜き可能なC−H結合、不飽和二重結合、エポキシ基、及び、オキセタン基からなる群より選択される1種以上であることを特徴とする請求項6に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
- 共有結合を形成しうる官能基が、不飽和二重結合であることを特徴とする請求項6に記載のプロテインチップ用基板の製造方法。
- 請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロテインチップ用基板に、少なくとも1種のタンパク質が固定されたプロテインチップ。
- 請求項9に記載のプロテインチップを含むプロテオーム解析装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007243710A JP2009074904A (ja) | 2007-09-20 | 2007-09-20 | プロテインチップ用基板、その製造方法、それを用いたプロテインチップ及びプロテインチップを含むプロテオーム解析装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007243710A JP2009074904A (ja) | 2007-09-20 | 2007-09-20 | プロテインチップ用基板、その製造方法、それを用いたプロテインチップ及びプロテインチップを含むプロテオーム解析装置 |
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Publication Number | Publication Date |
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ID=40610024
Family Applications (1)
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Country | Link |
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JP (1) | JP2009074904A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP2233448A2 (en) | 2009-03-25 | 2010-09-29 | TDK Corporation | Dielectric Ceramic Composition and Electronic Component Using the Same |
CN109030815A (zh) * | 2018-06-26 | 2018-12-18 | 安徽医科大学 | 一种用于检测液相蛋白质交互作用的蛋白质芯片及其制备方法和应用 |
-
2007
- 2007-09-20 JP JP2007243710A patent/JP2009074904A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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EP2233448A2 (en) | 2009-03-25 | 2010-09-29 | TDK Corporation | Dielectric Ceramic Composition and Electronic Component Using the Same |
CN109030815A (zh) * | 2018-06-26 | 2018-12-18 | 安徽医科大学 | 一种用于检测液相蛋白质交互作用的蛋白质芯片及其制备方法和应用 |
CN109030815B (zh) * | 2018-06-26 | 2021-08-10 | 安徽医科大学 | 一种用于检测液相蛋白质交互作用的蛋白质芯片及其制备方法和应用 |
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