JP2009073751A - ジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネートを有するラジカル重合性化合物の製造方法 - Google Patents

ジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネートを有するラジカル重合性化合物の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高屈折率で透明性に優れ、かつ熱硬化反応時に安定で着色の少ない光学材料を安価に提供する。
【解決手段】一般式(1)
Figure 2009073751

で示される化合物とホスゲンとを反応させることを特徴とする、一般式(2)
Figure 2009073751

で示されるラジカル重合性化合物の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネートを有するラジカル重合性化合物の製造方法に関する。
従来から、有機ガラスは無機ガラスに比較して軽量であるために、PPG社製;CR−39(商品名)に代表されるジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)の重合体や、メタクリル酸メチルの重合体などが有機ガラスとして使用されている。ガラスの屈折率が高くなるほどレンズの薄肉化が可能となるが、これらの有機ガラスの屈折率は1.49〜1.50と無機ガラス(ホワイトクラウンガラスの場合1.523)に比較して低い。そのため、レンズを作製した場合に無機ガラスの場合よりも縁(コバ)が厚くなり、軽量化のメリットも損なわれる。さらに視力矯正用レンズとして用いた場合、度が強くなると見かけが悪くなるという欠点があった。このため、高屈折率の重合体を与える光学材料用樹脂が望まれていた。
有機ガラスの屈折率を高くする方法については、これまで様々な試みがなされている。例えば、特開昭63−46213号公報(特許文献1)では、高屈折率を与える光学用樹脂として、イソシアネート化合物とメルカプト化合物とを反応させて得られるチオウレタン系の樹脂が記載されている。しかし、チオウレタン系樹脂は、原料であるイソシアネート化合物に毒性があること、また、原料のチオール化合物の臭気が問題となっている。
さらに特開平3−217412号公報(特許文献2)には、硫黄原子を含有する(メタ)アクリレート化合物も高屈折率を与える材料として知られている。しかし、これらの材料は、高粘度となるものが多く、かつ高い反応性を有することからレンズ原料としての保存に多くのノウハウを必要とし、必ずしも扱いやすいものではなかった。
また、特開平2−261808号公報(特許文献3)、特開平10−175947号公報(特許文献4)及び特開平11−49744号公報(特許文献5)には、高屈折率化が可能となる含硫黄アリルカーボネート基を有するラジカル重合性化合物が提言されている。これらの化合物は屈折率が高い。しかし、スルフィド構造を有するため、光による硬化性は良好であるが、パーオキサイドを開始剤に用いた熱硬化による成形ではスルフィド部位の酸化が起こりやすいため、重合性のコントロールの点で必ずしも十分ではなかった。
特開昭63−46213号公報 特開平3−217412号公報 特開平2−261808号公報 特開平10−175947号公報 特開平11−49744号公報
本発明は、高屈折率で透明性に優れ、かつ熱硬化反応時に安定で着色の少ない光学材料であるジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネートを有するラジカル重合性化合物を安価に製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定のジチオカーボネート構造と含硫黄アリルカーボネート基を有するラジカル重合性化合物を製造するにあたり、高価なカルボニルジイミダゾールを使用せず、安価なホスゲンを使用することにより製造できること見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の1〜8のラジカル重合性化合物の製造方法に関する。
1. 一般式(1)
Figure 2009073751
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1〜10の分岐していてもよいアルキレン基、炭素数6〜15のアリーレン基及び炭素数4〜12のシクロアルキレン基よりなる群から選ばれる2価の基を表す。)で示される化合物とホスゲンとを反応させることを特徴とする、一般式(2)
Figure 2009073751
(式中、R及びXは一般式(1)と同じ意味を表す。)で示されるラジカル重合性化合物の製造方法。
2. 前記一般式(1)で示される化合物が、一般式(3)
Figure 2009073751
(式中、Xは前記1の一般式(1)と同じ意味を表す。)で示される化合物と一般式(4)
Figure 2009073751
(式中、Rは前記1の一般式(1)と同じ意味を表し、Zは塩素原子または臭素原子を表す。)で示される化合物とを反応させることにより得られるものである前記1に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
3. Xが炭素数1〜4のアルキレン基、または炭素数6〜10のシクロアルキレン基である前記1または2に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
4. Xがメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基である前記3に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
5. Xがエチレン基である前記4に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
6. Rが水素原子である前記1〜5のいずれかに記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
7. 有機塩基類及び無機塩基類から選択される塩基性物質の存在下で反応させる前記1に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
8. 反応溶媒としてトルエン、1,4−ジオキサン、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用する前記1に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
本発明は、ジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネートを有するラジカル重合性化合物を、高価なカルボニルジイミダゾールの代わりに安価なホスゲンを使用して効率的に製造する方法を提供したものである。本発明により得られるラジカル重合性化合物及び光学材料用組成物から得られた硬化物はすべて無色透明であり、屈折率も高く、光学材料として有用である。
以下、本発明についてより詳細に説明する。
[ジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネート基を有することを特徴とするラジカル重合性化合物]
本発明において製造されるラジカル重合性化合物は、下記一般式(2)で示される、ジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネート基を有する化合物(以下、ラジカル重合性化合物(2)ということがある。)である。
Figure 2009073751
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1〜10の分岐していてもよいアルキレン基、炭素数6〜15のアリーレン基及び炭素数4〜12のシクロアルキレン基よりなる群から選ばれる2価の基を表す。)
なお、本明細書においては、化学式と化合物名が一致しない場合は化学式を優先するものとする。
一般式(2)において、Rは水素原子またはメチル基を表す。このうち、重合物の屈折率を上げる観点から水素原子がより好ましい。
一般式(2)において、Xは炭素数1〜10の分岐していてもよいアルキレン基、炭素数6〜15のアリーレン基及び炭素数4〜12のシクロアルキレン基よりなる群から選ばれる2価の基を表す。
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、アミレン基、ヘキシレン基などが挙げられる。
アリーレン基としては、1,2−フェニレン基、1,3−フェニレン基、1,4−フェニレン基、トルイレン基、ナフタレニレン基、ビフェニレン基などが挙げられる。
シクロアルキレン基としては、1,3−シクロペンチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,1−シクロペンチレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,3−シクロヘキシレン基、1,2−シクロヘキシレン基、1,1−シクロヘキシレン基などが挙げられる。
これらの中でもXとしては、炭素数1〜4のアルキレン基、炭素数6〜10のシクロアルキレン基がより好ましく、屈折率とアッベ数を両立させる観点において、メチレン基、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
前記した従来技術の項に記載されている光学材料用ラジカル重合性化合物は、屈折率の向上のために硫黄原子を含むスルフィド骨格(−CH2−S−CH2−)を含有している。しかし、この構造は硫黄原子が酸化されやすいため、重合時や硬化反応時に着色が起こったり、重合開始剤の失活により硬化が不完全になるなど硬化させる際の安定性に問題があった。
一方、本発明の製造対象であるラジカル重合性化合物は、含硫黄基としてジチオカーボネート構造(−S−(C=O)−S−)及び含硫黄アリルカーボネート構造(CH2=CR−CH2−O−(C=O)−S−(Rは前記の通り))を含んでいる。この構造は、硫黄原子の隣に電子吸引性を有するカルボニルを配置することにより硫黄原子が酸化されにくくなるため、重合時や硬化反応時に着色が起こることがなく安定である。
[製造方法]
次に、本発明の一般式(2)で示されるジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネート基を有するラジカル重合性化合物の製造方法について説明する。
一般式(2)で示されるジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネート基を有するラジカル重合性化合物は、一般式(1)で示される化合物(「チオール化合物(1)」ということがある。)とホスゲンを反応させることにより製造することができる。ここで用いる一般式(1)で示される化合物は、下記の通り一般式(3)で示される化合物を一般式(4)で示される化合物と反応させることにより製造することができる。
1.一般式(3)で示される化合物と一般式(4)で示される化合物との反応
一般式(3)
Figure 2009073751
(式中、Xは一般式(1)と同じ意味を示す。)
で示されるジチオール化合物と一般式(4)
Figure 2009073751
(式中、Rは一般式(1)と同じ意味を表し、Zは塩素原子または臭素原子を表す。)
で示されるハロゲン化ギ酸(メタ)アリルを好ましくは塩基性物質の存在下で反応させることにより下記一般式(1)
Figure 2009073751
(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1〜10の分岐していてもよいアルキレン基、炭素数6〜15のアリーレン基及び炭素数4〜12のシクロアルキレン基よりなる群から選ばれる2価の基を表す。)
で示されるチオール化合物を得ることができる。
なお、本明細書においては、「(メタ)アリル」は「メタリル及び/またはアリル」を、「(メタ)アクリレート」は「メタクリレート及び/またはアクリレート」を意味する。
一般式(3)中のXは、目的とする一般式(1)で示される化合物中のXに対応している。一般式(4)中のZは、反応性と経済性を両立させる観点から塩素原子であることが好ましい。
一般式(3)で示されるジチオール化合物と一般式(4)で示されるハロゲン化ギ酸(メタ)アリルの反応においては、ジチオール化合物の一方のメルカプト基のみがハロゲン化ギ酸(メタ)アリルと反応し、もう一方のメルカプト基は未反応のままであることが求められる。そのため、ジチオール化合物とハロゲン化ギ酸(メタ)アリルとのモル比を適切な範囲に制御して反応させる必要がある。通常はジチオール化合物1モルに対してハロゲン化ギ酸(メタ)アリルを0.1〜1.0モル用いるのが好ましく、0.5〜1.0モルが特に好ましい。ハロゲン化ギ酸(メタ)アリルが0.1モル未満の場合はジチオール化合物に対する反応収率が低くなり、また、1.0モルを超えるとハロゲン化ギ酸(メタ)アリルが2モル付加した副生物の生成量が増える。ハロゲン化ギ酸(メタ)アリルが1.0モル未満の場合、未反応のジチオール化合物が残存するが、これは分離して再度反応原料として用いることができる。
前記の反応は、無触媒下で副生するハロゲン化水素を反応系外に除去しながら行う方法と、塩基性物質の存在下で行う方法のどちらも利用できるが、塩基性物質はハロゲン化水素捕集剤として作用すると共に反応をも促進するので後者の方法が好ましい。
塩基性物質としては、例えば、ピリジン、トリエチルアミン、ピコリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン等の有機塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基が挙げられる。
塩基性物質の使用量としては特に制限はないが、上記ジチオール化合物1モルに対して0.1〜1.5モルが好ましく、0.5〜1.1モルが特に好ましい。
また、反応は無溶媒で行ってもよいし、基質と反応しない溶媒を使用して行ってもよい。また、水共存下でも問題なく実施できる。溶媒としては、n−ヘキサン、トルエン、キシレン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル系溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドのような極性溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
反応温度に特に制限はないが、通常は−30〜100℃の範囲が好ましく、0〜50℃が特に好ましい。−30℃未満では極端に反応が遅くなり、100℃を超えると、中間体のチオール化合物がエン−チオール反応により重合するなどの副反応が起きやすくなる。
また、反応に関しては、反応中の重合を抑制するために重合禁止剤を加えることもできる。
重合禁止剤としては、p−ベンソキノン、ナフトキノン、2,5−ジフェニル−p−ベンゾキノン等のキノン類、ハイドロキノン、p−t−ブチルカテコール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン等の多価フェノール類、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ジ−t−ブチルパラクレゾール、α−ナフトールなどのフェノール類が挙げられる。
このようにして得られた一般式(1)で示されるチオール化合物(チオール化合物(1))は、蒸留や分液、再結晶、クロマトグラフィーや活性炭、活性白土、合成吸着剤等の処理により精製することができる。
2.チオール化合物(1)とホスゲンとの反応
次に、前記(1)の反応で生成した一般式(1)で示されるチオール化合物(1)をホスゲンと反応させて、一般式(2)で示されるラジカル重合性化合物を製造する本発明の方法について詳しく述べる。
本発明で用いるホスゲンは反応系中でホスゲンになっていればよく、その反応器への仕込み時の形態に特に限定はない。例えばジホスゲン(クロロギ酸トリクロロメチル)やトリホスゲン(ビス(トリクロロメチル)カーボネート)の形で反応器へ仕込んで、反応系内でホスゲンを発生させ反応させてもよい。
チオール化合物(1)とホスゲンの反応比率は特に制限されるものではない。通常はチオール化合物(1):1モルに対してホスゲンを0.1〜1.5モル用いるのが好ましく、0.3〜1.2モルが特に好ましい。ホスゲンが0.1モル未満の場合はチオール化合物(1)に対する反応収率が低くなり、また、1.5モルを超えると副生物の生成量が増える。
この反応は塩基性物質の存在下、非存在下のどちらの条件でも行うことができるが、収率向上の観点から塩基性物質の存在下で行うことが望ましい。
この反応を塩基性物質存在下で行う場合、用いる塩基性物質としては、メチルアミン、ジメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、アニリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、トルイジン、アニシジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)等の有機塩基、あるいは、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化マグネシウム等の無機塩基が例示され、中でも反応収率向上の観点からトリエチルアミン、水酸化ナトリウムが好ましい。
このような塩基の使用量としては特に制限はないが、チオール化合物1モルに対して0.1〜5モルが好ましく、0.5〜3モルがさらに好ましく、0.8〜1.6モルが特に好ましい。
反応は無溶媒、あるいは溶媒中で行うことができる。
溶媒としては、基質を十分に溶解し、反応に対して不活性であれば特に限定されるものではない。具体例としては、n−ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、水などが挙げられる。これらの溶媒は単独で使用してもよく、あるいは、2種類以上を併用してもよい。
反応温度には特に制限はなく、通常−78〜150℃の範囲が好ましく、−20〜120℃の範囲がさらに好ましく、−10〜70℃の範囲が特に好ましい。
上述したチオール化合物(1)とホスゲンとの反応は、一段階目のジチオールとハロゲン化ギ酸(メタ)アリルとの反応により生成した中間体であるチオール化合物(1)を一旦取り出した後、二段階目のカルボニル化反応を行う段階的な方法であってもよく、あるいは、該チオール化合物(1)を途中で取り出すことなく、一段階で次のカルボニル化反応を行ってもよい。
段階的な方法を採用する場合、一段階目の反応の中間体であるチオール化合物(1)は、さらに必要に応じて公知の方法(例えば、蒸留、再結晶、クロマトグラフィーあるいは活性炭処理など)により分離、精製して、より高純度の化合物として単離してもよい。
本発明においては、ラジカル重合性化合物(2)を製造中、中間体であるチオール化合物(1)がエン−チオール反応を起こして重合してしまうのを防止するために、重合禁止剤を使用してもよい。
使用することができる重合禁止剤としては、例えば、4−メトキシフェノール、2,6−ジ−tert−ブチルクレゾール、ハイドロキノン、フェノチアジン等の公知の各種化合物を挙げることができる。
これら重合禁止剤の使用量に特に制限はないが、反応系中の原料混合物あるいは反応生成物100質量部に対して、通常0.001〜5質量部が好ましく、0.05〜3質量部がさらに好ましく、0.01〜1質量部が特に好ましい。
反応終了後、生成物である一般式(2)で示されるラジカル重合性化合物は、公知の操作、処理方法(例えば、中和、溶媒抽出、水洗、分液、溶媒留去など)を用いる後処理に付して単離される。
[一般式(2)で示されるラジカル重合性化合物の重合体]
本発明の方法で得られる一般式(2)で示されるラジカル重合性化合物は、熱や紫外線、電子線等により容易にラジカル重合する。また、他のラジカル重合性化合物との共重合体とすることもできる。
一般式(2)で示されるラジカル重合性化合物は重合性二重結合が2個あるという意味で二官能性であり、単独重合(硬化反応)でも架橋構造を形成するが、単独重合体の物性、例えば、屈折率とアッベ数のバランスを改良する目的等で、他のラジカル重合性化合物と共重合させることもできる。共重合させるラジカル重合性化合物が多官能のラジカル重合性を有している場合には、より架橋密度の高い硬化物とすることも可能である。
また、重合体の粘度を下げ、成形性を改良する目的で単官能のラジカル重合性モノマーを反応性希釈剤として用いてもよい。
本発明においてラジカル重合性化合物(2)と共重合させるラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性化合物(2)と共重合する化合物であれば特に制限はない。その具体例としては、ジ(メタ)アリルフタレート、ジ(メタ)アリルイソフタレート、ジ(メタ)アリルテレフタレート、(メタ)アリルベンゾエート、α−ナフトエ酸(メタ)アリル、β−ナフトエ酸(メタ)アリル、2−フェニル安息香酸(メタ)アリル、3−フェニル安息香酸(メタ)アリル、4−フェニル安息香酸(メタ)アリル、o−クロロ安息香酸(メタ)アリル、m−クロロ安息香酸(メタ)アリル、p−クロロ安息香酸(メタ)アリル、o−ブロモ安息香酸(メタ)アリル、m−ブロモ安息香酸(メタ)アリル、p−ブロモ安息香酸(メタ)アリル、2,6−ジクロロ安息香酸(メタ)アリル、2,4−ジクロロ安息香酸(メタ)アリル、2,4,6−トリブロモ安息香酸(メタ)アリル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、1−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジ(メタ)アリル、3−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、4−メチル−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、エンディック酸ジ(メタ)アリル、クロレンド酸ジ(メタ)アリル、3,6−メチレン−1,2−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、トリメリット酸トリ(メタ)アリル、ピロメリット酸テトラ(メタ)アリル、ジフェン酸ジ(メタ)アリル、コハク酸ジ(メタ)アリル、アジピン酸ジ(メタ)アリルなどのアリルエステル類;ジベンジルマレート、ジベンジルフマレート、ジフェニルマレート、ジフェニルフマレート、ジブチルマレート、ジブチルフマレート、ジメトキエチルマレート、ジメトキシエチルフマレート等のマレイン酸ジエステル/フマル酸ジエステル、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレンジリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジメタクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、メトキシスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、カプロン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸のビニルエステル;シクロヘキサンカルボン酸ビニルエステル等の脂環式ビニルエステル;安息香酸ビニルエステル、t−ブチル安息香酸ビニルエステル等の芳香族ビニルエステル、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、PPG社製商品名CR−39に代表されるポリエチレングリコールビス(アリル)カーボネート樹脂等のアリルカーボネート化合物、末端に(メタ)アリルエステル基を有し、内部が多価カルボン酸と多価アルコールから誘導されたエステル構造からなるオリゴマー、分子内に反応性の異なる重合性二重結合を有する(メタ)アクリル酸(メタ)アリル、(メタ)アクリル酸ビニルやマレイン酸ジ(メタ)アリルなどの化合物、イソシアヌル酸トリアリルやシアヌル酸トリアリルなどの窒素含有多官能アリル化合物などが挙げられる。
但し、これらのラジカル重合性化合物はあくまで例示であり、上記に限定されるわけではない。また、これらのラジカル重合性化合物は、目的の物性を得るために2種以上併用してもよい。
これらのラジカル重合性化合物の中では、屈折率とアッベ数を両立する観点から、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジ(メタ)アリル、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アリルイソフタレート、ジ(メタ)アリルテレフタレート、トリメリット酸トリ(メタ)アリル、ピロメリット酸テトラ(メタ)アリル、末端に(メタ)アリルエステル基を有し、内部が多価カルボン酸と多価アルコールから誘導されたエステル構造からなるオリゴマーが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸(メタ)アリル、(メタ)アクリル酸ビニルやマレイン酸ジ(メタ)アリルなどの反応性の異なるラジカル重合性二重結合を分子内に有する化合物も好ましい。これらの化合物は、その反応性の差からラジカル重合による硬化成形の際の硬化度をコントロールする上で有用である。
本発明のラジカル重合性化合物(2)を重合させる際には、開始剤を使用せずに熱重合させてもよいが、ラジカル重合開始剤を用いることが好ましい。ラジカル重合開始剤としては、熱、紫外線、電子線、放射線等によってラジカルを生成するものであれば、いずれも使用できる。
熱ラジカル重合開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート等のアゾ系化合物、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、シクロヘキサノンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ベンゾイルパーオキシド、デカノイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジクミルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン等のパーオキシケタール類;t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーオキシエステル類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロプルカーボネート等のパーオキシカーボネート類等を例示することができるが、これらに限定されるわけではない。また、これらの熱ラジカル重合開始剤は2種以上併用してもよい。
紫外線、電子線、放射線によるラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4−トリメチルシリルベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルなどのベンゾイン誘導体、メチルフェニルグリオキシレート、ベンゾインジメチルケタール、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。また、これらの紫外線、電子線、放射線ラジカル重合開始剤は2種以上併用してもよい。
これらの重合開始剤の添加量は、硬化温度やラジカル重合性組成物の組成比、添加剤の種類、量によって異なるため一概に限定することはできないが、本発明により一般式(2)で示されるラジカル重合性化合物と、必要に応じて共重合させる他のラジカル重合性化合物との総量100質量部に対して0.01〜15質量部が好ましく、0.1〜10質量部が特に好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量が0.01質量部未満の場合は重合、硬化が不十分になる恐れがある。また、15質量部を超えて添加することは経済上好ましくない。
重合温度(硬化温度)は重合開始剤の種類に応じて適宜選択すればよい。紫外線等による重合であれば、室温でも可能である。熱重合の場合は開始剤の分解温度に対応して適宜決めることが望ましく、一般的には30〜130℃である。また、段階的に温度を変えて重合(硬化)させてもよい。重合の際には不活性溶媒を使用することもできる。
本発明の一般式(2)示されるラジカル重合性化合物の重合により得られる樹脂は透明性が高く、高屈折率の光学材料用樹脂としての用途が期待される。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。
実施例及び比較例で合成した物質の諸物性は、以下の通り測定した。
1.屈折率(nD)及びアッベ数
使用機種:アッベ屈折率計1T(アタゴ社製)
測定方法:9mm×16mm×4mmの試験片を作製し、「アッベ屈折率計1T」を用いて、25℃における屈折率(nD)及びアッベ数(νD)を測定した。接触液はジヨードメタンを使用した。
2.1H−NMR,13C−NMR
使用機種:JEOL EX−400(400MHz,日本電子社製)、
測定方法:重水素化クロロホルムに溶解し、内部標準物質にテトラメチルシランを使用して測定した。
実施例1:S,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(BADTCと略す。)の合成
Figure 2009073751
温度計、滴下漏斗、撹拌子を備えた三ツ口フラスコに水酸化ナトリウム(16.69g,0.417mol)を加え、純水167gで完全に溶解し、更にトルエン48.0mlを加えた。このフラスコを氷浴に浸し、系内の温度を10℃以下とし、撹拌しながらエタンジチオール(化学式(6),東京化成工業社製,35.00g,0.417mol)をゆっくり加えた。20分間撹拌後、クロロギ酸アリル(化学式(5),東京化成工業社製,50.30g,0.417mol)をトルエン49.0mlで希釈した溶液を滴下漏斗に仕込み、先程の液にこれを1時間かけて滴下した。滴下終了後、系内の温度を10℃以下に保ち1時間撹拌した。この反応液を分液漏斗に移し、分液操作を行い、更に水層のpHが7になるまでトルエン層を水洗した。得られたトルエン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過で硫酸ナトリウムを除去した後、トルエン60.0mlを加え希釈し、脱水した化学式(7)で示される化合物のトルエン溶液190.87gを得た。
別途、温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却管、撹拌用プロペラを備えた四ツ口フラスコを窒素置換し、これに、1,4−ジオキサン50gとトリエチルアミン(和光純薬社製,5.10g,0.0504mol)を仕込み、フラスコを氷浴に浸け、内容物の温度を10℃以下にした。先に得られたトルエン溶液29.0g(化学式(7)の化合物9.00g(0.0505mol)を含有)を滴下漏斗より15分かけて滴下した後、ホスゲン(化学式(8),昭和電工社製,2.5g,0.0253mol)を計量用容器からガス状にしてバブリングさせることにより45分かけて加えた。この時、反応器内の温度が20℃以上にならないようにした。未反応ホスゲンを含む可能性のある排気ガスは水酸化ナトリウム水溶液でホスゲンをトラップした。
その後、系内の温度を20℃以下に保ち2時間撹拌し、反応液に純水100mlを加え,分液漏斗に移し分液した。得られた有機層をさらに5%水酸化ナトリウム水溶液50ml,純水50ml,5%塩酸50mlで処理し、最後に水層が中性となるまで純水での洗浄を繰り返し行った。回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、ろ過操作により、硫酸ナトリウムを除去した。ついで、低沸点物を減圧下に留去して、粗生成物9.73gを得た。この粗生成物を液体クロマトグラフィーで分析した結果、化学式(7)の化合物の転化率94.5%、S,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(化学式(9))の選択率68.3%であった。なお、化学式(7)の化合物とホスゲンの1:1(モル比)反応物は生成しなかった。
実施例2:BADTCの合成
温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却管、撹拌用プロペラを備えた四ツ口フラスコを窒素置換し、これに、1,4−ジオキサン50gとトリエチルアミン(9.20g,0.0910mol)を仕込み、フラスコを氷浴に浸け、内容物の温度を10℃以下にした。実施例1で得られたトルエン溶液35.0g(化学式(7)の化合物11.55g(0.0648mol)を含有)を滴下漏斗より15分かけて滴下した後、ホスゲン(4.5g,0.0455mol)を計量用容器からガス状にしてバブリングさせることで50分かけて加えた。この時、反応器内の温度が20℃以上にならないようにした。
その後、実施例1と同様の操作を行い、粗生成物12.66gを得た。この粗生成物を液体クロマトグラフィーで分析した結果、化学式(7)の化合物の転化率100%、S,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(化学式(9))の選択率85.0%であった。なお、化学式(7)の化合物とホスゲンの1:1(モル比)反応物は生成しなかった。
実施例3:BADTCの合成
温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却管、撹拌用プロペラを備えた四ツ口フラスコを窒素置換し、これに、トルエン50gを仕込み、フラスコを氷浴に浸け、内容物の温度を10℃以下にした。このトルエン中にホスゲン(4.3g,0.0435mol)を計量用容器からガス状にしてバブリングさせ溶解させた。この溶液にトリエチルアミン(8.80g,0.0870mol)を15分かけて滴下した。更に、実施例1で得られたトルエン溶液33.5g(化学式(7)の化合物11.06g(0.0620mol)を含有)を滴下漏斗より1時間かけて滴下した。この時、反応器内の温度が20℃以上にならないようにした。
その後、実施例1と同様の操作を行い、粗生成物11.76gを得た。この粗生成物を液体クロマトグラフィーで分析した結果、化学式(7)の化合物の転化率89.9%、S,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(化学式(9))の選択率83.5%であった。なお、化学式(7)の化合物とホスゲンの1:1(モル比)反応物は生成しなかった。
実施例4:BADTCの合成
別途、温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却管、撹拌用プロペラを備えた四ツ口フラスコを窒素置換し、これに、トルエン236gとトリエチルアミン(17.40g,0.1721mol)を仕込み、フラスコを氷浴に浸け、内容物の温度を10℃以下にした。実施例1で得られたトルエン溶液63.0g(化学式(7)の化合物20.79g(0.1166mol)を含有)を滴下漏斗より15分かけて滴下した後、ホスゲン(8.5g,0.0859mol)を計量用容器からガス状にしてバブリングさせることで40分かけて加えた。この時、反応器内の温度が10℃以上にならないようにした。
その後、実施例1と同様の操作を行い、粗生成物22.43gを得た。この粗生成物を液体クロマトグラフィーで分析した結果、化学式(7)の化合物の転化率100%、S,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(化学式(9))の選択率82.9%であった。なお、化学式(7)の化合物とホスゲンの1:1(モル比)反応物は生成しなかった。更に、この粗生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、無色透明液体を得た(収量:12.11g,収率:54.3%)。
カラムクロマトグラフィー操作条件
カラム充填剤:富士シリシア社製 FL100D、
展開溶媒:n−ヘキサン:酢酸エチル=20:1(VOL)、
100ml毎に分取。
この液体の1H−NMR、13C−NMRを測定し、目的化合物であるS,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(化学式(9))であることを確認した。1H−NMR及び13C−NMRの結果をそれぞれ図1及び2に示す。
実施例5:BADTCの硬化反応
実施例4で得られたBADTC(2.500g)に、ラジカル重合開始剤である1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製,商品名:パーヘキサTMH,0.010g)を加え、2枚のガラス板とスペーサーとしてのシリコンチューブからなる厚さ4mmの型に流し込んだ。これをオーブンに入れ、70℃で7時間加熱し、次いで10時間かけて90℃に昇温し、更に3時間かけて120℃まで昇温し、そのまま120℃で2時間加熱するという硬化温度プログラムで熱硬化させ、無色透明の硬化物を得た。この硬化物の屈折率は1.6025、アッベ数は37.3であった。
比較例1:BADTCの合成
温度計、滴下漏斗、ジムロート冷却管、撹拌子を備えた三ツ口フラスコを窒素置換し、これに、実施例1で得られたトルエン溶液30.0g(化学式(7)の化合物9.90g(0.0555mol)を含有)を仕込んだ。その後、フラスコを氷浴に浸け、内容物の温度を10℃以下にし、N,N’−カルボニルジイミダゾール(CDI,保土谷化学工業社製,4.55g,0.0277mol)をN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)30.0mlに溶解させた溶液を滴下漏斗より1時間かけて滴下した。
その後、系内の温度を10℃以下に保ち3時間撹拌し、反応液に純水30mlを加え、分液漏斗に移し分液した。得られた有機層をさらに5%水酸化ナトリウム水溶液15ml、純水30ml、5%塩酸15mlで処理し、最後に水層が中性となるまで純水での洗浄を繰り返し行った。回収した有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過で硫酸ナトリウムを除去し、低沸点物を減圧下に留去して、粗生成物10.4gを得た。この粗生成物を液体クロマトグラフィーで分析した結果、化学式(7)の化合物の転化率100%、S,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナート(化学式(9))の選択率66.1%、化学式(7)の化合物とCDIの1:1(モル比)反応物の選択率5.2%であった。
以上述べた通り、本発明の製造方法によれば、目的のラジカル重合性化合物が高い選択率で得られる。本発明によるラジカル重合性化合物及び光学材料用組成物から得られた硬化物はすべて無色透明であり、屈折率も高く、光学材料として有用である。また、ホスゲンという安価な原料を用いるため、安価に製造することができる。
本発明によるジチオカーボネート構造及び含硫黄アリルカーボネート基を有するラジカル重合性化合物の製造方法は熱硬化反応時に安定で着色が少なく、高屈折率で透明性に優れた光学材料を安価に提供することを可能とする。
実施例4で得られたS,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナートの1H−NMRスペクトルである。 実施例4で得られたS,S’−ビス[2−(アリロキシカルボニルチオ)エチル]ジチオカーボナートの13C−NMRスペクトルである。

Claims (8)

  1. 一般式(1)
    Figure 2009073751
    (式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1〜10の分岐していてもよいアルキレン基、炭素数6〜15のアリーレン基及び炭素数4〜12のシクロアルキレン基よりなる群から選ばれる2価の基を表す。)で示される化合物とホスゲンとを反応させることを特徴とする、一般式(2)
    Figure 2009073751
    (式中、R及びXは一般式(1)と同じ意味を表す。)で示されるラジカル重合性化合物の製造方法。
  2. 前記一般式(1)で示される化合物が、一般式(3)
    Figure 2009073751
    (式中、Xは請求項1の一般式(1)と同じ意味を表す。)で示される化合物と一般式(4)
    Figure 2009073751
    (式中、Rは請求項1の一般式(1)と同じ意味を表し、Zは塩素原子または臭素原子を表す。)で示される化合物とを反応させることにより得られるものである請求項1に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
  3. Xが炭素数1〜4のアルキレン基、または炭素数6〜10のシクロアルキレン基である請求項1または2に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
  4. Xがメチレン基、エチレン基、またはプロピレン基である請求項3に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
  5. Xがエチレン基である請求項4に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
  6. Rが水素原子である請求項1〜5のいずれかに記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
  7. 有機塩基類及び無機塩基類から選択される塩基性物質の存在下で反応させる請求項1に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
  8. 反応溶媒としてトルエン、1,4−ジオキサン、及び水からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用する請求項1に記載のラジカル重合性化合物の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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