JP2009072202A - 農圃土壌の加熱装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、農圃などの土壌を加温することによる農作物の栽培・育成を効率よく行え、また夏期には太陽熱と併用して土壌の熱消毒を行える、蓄熱性に富み、放熱面積が大きく、傾斜地でも十分適用できる温熱管を採用した農圃土壌の加熱装置を提供する。
【解決手段】 農圃の土壌温度を上昇させる加熱装置であって、前記加熱装置が、土壌中に埋設され、かつ、電熱ヒータを取り囲んで砂鉄である蓄熱体を充填した温熱管から構成され、前記温熱管の直径が30〜150mmの範囲であること、また、前記温熱管内の所定位置の蓄熱体温度を設定温度範囲内に制御する電熱ヒータの加熱制御装置を備えたことを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、農圃などの土壌を加温することによって農作物の栽培・育成が効率よく行え、また、夏期には太陽熱と併用して土壌の熱消毒を行える農圃土壌の加熱装置に関するものである。
近年、わが国において、農作物の栽培可能面積は増加する傾向になく、食糧自給率の低下が懸念され、また、食の安全も求められてきており、この点で、栽培・育成耕地である農圃における農作物の生産性が、これまで以上に重要な事項となって来ている。
農作物の生産性を向上し、季節により栽培・育成する農作物の種類の制約を緩和するため、即ち栽培・育成環境を良好にするための一手段として、太陽熱を利用するハウス栽培が盛んに行われてきている。また、従来、農作物の栽培・育成を阻害する土壌中の病害虫を防除し、駆除するために農薬が使用されてきたが、環境破壊や他の生物への薬害の回避の点から、農薬の使用が禁止され、制約されるようになってきた。この農薬の代わりに、夏季の太陽熱を利用して土壌の温度を上昇させて病害虫の防除、駆除する方法が採用されるようになっている。
この太陽熱は夏季には利用できるが、冬季には十分利用できなく、また、太陽熱による土壌加温も表土には有効であるが、土壌の深い部分ではその加温が効きにくい問題があった。この問題に対して、有効な手段が先行技術として開示されている〔参考文献1〕
特開2003−35495公報(〔0030〜0035〕、〔図1〜3〕)
前記先行技術は、土壌中に埋設したヒートパイプの全長にわたり、土壌に適切な熱伝達を行うことができるが、このためには常に加熱状態を保っている必要があり、また、傾斜している場所ではヒートパイプの性格上適用しがたい問題があった。
本発明は、これらの問題を解決したものであって、農圃などの土壌を加温することによって農作物の栽培・育成を効率よく行え、また夏期には太陽熱と併用して土壌の熱消毒を行えることを目的とし、蓄熱性に富み、放熱面積が大きくとれ、しかも、傾斜地でも十分適用できる温熱管を採用した農圃土壌の加熱装置を提供するものである。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係る農圃土壌の加熱装置は、農圃の土壌温度を上昇させる加熱装置であって、前記加熱装置が、土壌中に埋設され、かつ、電熱ヒータを取り囲んで蓄熱体を充填した温熱管から構成されることを特徴とする。また、請求項2に係る農圃土壌の加熱装置は、前記蓄熱体が砂鉄からなることを特徴とする。また、請求項3に係る農圃土壌の加熱装置は、前記温熱管の直径が、30〜150mmの範囲であることを特徴とする。
これらの構成により、熱容量が大きく、かつ大径の温熱管から土壌中へ放熱するので、土壌を長時間にわたり、斑なく加温することができる。また、蓄熱体に用いる砂鉄は、入手が容易であるのと、粒度が0.2mm前後と小さいので、温熱管内に均一に充填し易いから、確実に充填することができる。また、比重が約4.5と砂の2.0と比べても倍以上あり、そして熱伝導率が砂(0.3W/m.K)や土壌(0.14W/m.K)に比べ、砂鉄は2−3W/m.Kと大きいから、蓄熱に際し、蓄熱量が大きくとれ、しかも温度上昇が均一で早いという特徴がある。そして放熱に際しても、その蓄熱量が十分生かされて、土壌への加温を良好に行うことができる。また、砂鉄は固体であるから、温熱管を水平の状態でも、傾斜の状態でも設置が可能であって、設置状態により、作用、効果が左右されない。また、温熱管は直径が、30〜150mmと、従来のヒートパイプや放熱パイプの10〜30mm径に比し大きくしているから、管表面の放熱面積が大きく、土壌中への放熱が効率よく行える。また、温熱管の熱源を電熱ヒータとしているので、所と場合によれば、温熱管を3〜5.5m長さを1ユニットとして、各温熱管を長さ方向に配列すると共に、電熱ヒータの電源線のみをジョイントすることで、全長の長い温熱管を組立てることが可能であるから、その適用の範囲を広げることができる。
また、請求項4に係る農圃土壌の加熱装置は、請求項1から3のいずれかに記載の農圃土壌の加熱装置において、前記温熱管の管体が合成樹脂製又は金属製であることを特徴とする。また、請求項5に係る農圃土壌の加熱装置は、請求項1から4のいずれかに記載の農圃土壌の加熱装置において、前記温熱管の下部内面に接して熱反射板と断熱材を備えたことを特徴とする。
前記温熱管は土壌中に埋設される放熱管でもあるから、熱伝達性がよく、また内部に充填物があるので、ある程度の強度でよい等の点から、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属製管を採用することができ、経済性を考慮すれば鋼製管が好ましい。また、合成樹脂製管でも、熱伝達性がよく、ある程度(60〜200℃)の耐熱性のある塩化ビニール、ポリエチレン又はグラス繊維入りポリエチレンテレフタレート(FRPET)製の管を用いることができる。また、請求項5の構成によれば、温熱管の底部に、詳しくは中心より60〜90°の円弧部分に、断熱材と熱反射板を重層して設けて、熱輻射と伝熱を遮断することにより、温熱管から土壌への放熱が、温熱管から底部方向には少なく、上部方向、次いで側部方向には多くすることができる。これにより栽培・育成に必要な土壌部分を重点的に効率よく加温することができる。
また、請求項6に係る農圃土壌の加熱装置は、請求項1から5のいずれかに記載の農圃土壌の加熱装置において、前記温熱管内の所定位置の蓄熱体温度を設定温度範囲内に制御する電熱ヒータの加熱制御装置を備えたことを特徴とする。
この構成により、温熱管に充填した蓄熱量の大きい砂鉄の蓄熱体の所定位置(例えば、蓄熱層の中間位置)の温度を、例えば、60℃から200℃の範囲で制御すると、蓄熱体への過熱と低熱が防止できることと、さらに、前述の過熱防止に伴い電熱ヒータへの通電を間歇的にすることができるので、例えば、需要量が少ない夜間電力の活用を図ることができ、ひいては、地球環境の改善にも寄与することができる。
本発明に係る請求項1から6に記載の農圃土壌の加熱装置によれば、蓄熱体として、入手が容易で、熱伝達性がよく、比重が大きくて、体積当たりの蓄熱量が大きくとれる砂鉄を用いた大径の温熱管であるので、前記温熱管から土壌への放熱作用が良好で、土壌の加温が効率よく均一に行うことができる。これにより、特に冬期において、農作物の栽培・育成において生産性が向上し、品質も維持改善を図ることができる。また、夏場において、土壌に寄生する病害虫に対する消毒・駆除を太陽熱と併用して効果的に実施できる。また、本装置は、温熱管が水平状態のみならず、傾斜状態でも設置して適用できると共に、3〜5.5m単位の温熱管をジョイントして全長の長いユニットとして使用できるから、装置の設置・適用が、場所に制約されることなく、容易に実施できる。また、温熱管の運転において、蓄熱・放熱をヒステリシスに運用することができるので、夜間電力を利用する間欠運転が可能であり、運転コストをセーブできる。ひいては、昼間電力をセーブして二酸化炭素の排出量を過剰にすることなく、地球環境の保全にも貢献することができる。また、本装置は、特殊な高価な部品がないので、設備費も適切なものであり、しかも、可動部分がほとんど無いので、保守保全が容易で、修理時間や修理費用をほとんど必要としない特徴がある。
本発明に係わる農圃土壌の加熱装置を実施するための最良の形態について図1,2,3,4を用いて説明する。図1は、本発明の実施するための最良の形態に係る農圃土壌の加熱装置であって、模式的全体斜視図である。また、図2は、本発明の実施するための最良の形態に係る農圃土壌の加熱装置を構成する温熱管であって、(a)は模式的全体斜視図、(b)はA矢視の縦断面図、(c)はB矢視の横断面図である。また、図3は、本発明に係る農圃土壌の加熱装置を用いたハウス栽培の模式的斜視図であり、図4は、本発明に係る農圃土壌の加熱装置を用いたコンテナ栽培の模式的斜視図である。
図1は、本発明に係る農圃土壌の加熱装置1の代表的な適用例を示す。加熱装置1は、主として、温熱管2を直列にジョイントしたユニットを畝B毎に埋設した3列の温熱管2のユニットと、該温熱管2のユニットに対して通電と測温を司る配線9と、これに接続された加熱制御装置8と、から構成される。前記温熱管2のユニットは、農圃を構成する畝Bの土壌20中に埋設されており、栽培・育成する作物にもよるが、地表面から約20〜50cmの深さにある。図2にも示しているが、ジョイント10は各温熱管2の電熱ヒータ3の電源配線9と温度制御のための測温配線9を接続するだけでよく、各温熱管2の本体は単独で独立している。加熱制御装置8は、温度制御を主としたもので、前記温熱管2内の蓄熱体4の所定位置での温度を温度センサ7で測定して、その温度が設定温度範囲内になるように制御するための電熱ヒータの通電量(電圧、電流)を調節する装置である。また、深夜電力を積極的に活用する通電プログラム制御を備えていることが好ましい。
また、図2に示すように、温熱管2は、直径30〜150mm径、長さ3〜5.5mの金属製又は耐熱の合成樹脂製の管本体2aと、中心部に蓄熱体4を加熱する電熱ヒータ3を設け、電熱ヒータ3を取り囲んで蓄熱体4が充填され、蓄熱体4の所定位置に温度センサ7を単数又は複数個設けており、また、特に、熱伝導性の高い材料の管本体2aの場合において、温熱管2の下部(加熱する方向の反対側)には、詳しくは、中心より60〜90°の円弧部分の管本体2aに接して、発泡スチロール板等の断熱材6とアルミ板等の熱反射板5を重ねて設け、蓄熱体4の熱が、加熱を必要としない土壌部分に対向している管本体2aの下部に、輻射と伝導による伝熱で逃げるのを防いだ構成にしている。また、前述の温熱管2の直径と長さは代表例であって、この数値に拘束されることはない。
蓄熱体4は、微粒の砂鉄を密充填して構成される。前記砂鉄は、国内各所の海や山で産出するもので、その入手は容易である。砂鉄は、粒度が0.2mm前後と小さく、比重が約4.5と砂の2.0と比べても倍以上ある。また、温熱管2内に均一に砂鉄を充填する場合には、温熱管2内に電熱ヒータ3を中心に設けた後に、温熱管2を垂直又は傾斜状態に置いて、管壁2aに振動を与えながら一端から砂鉄を充填すると、確実に充填することができる。また、熱伝導率が、砂(0.3W/m.K)や土壌(0.14W/m.K)に比べ、砂鉄は2−3W/m.Kと大きいから、蓄熱に際し、蓄熱体4の嵩比重が大きいこともあって、蓄熱量が大きくとれ、しかも、密充填にしているので、温度上昇が均一で早くできるという特徴が発揮できる。そして、放熱に際しても、その蓄熱量が十分生かされて、土壌への加温を良好に行うことができる。また、砂鉄は、主成分が磁鉄鉱、チタン鉄鉱から構成され、融点も1200℃前後と高く、例えば100〜500℃の使用温度域では性状が変化しない物質であり、蓄熱体4としては好適である。また、砂鉄は固体であるから、温熱管2が水平の状態でも、傾斜の状態でも設置が可能であって、設置状態により、その蓄熱、放熱の作用、効果に悪影響が出ない。
また、管本体2aの材質は、前記温熱管は土壌中に埋設される放熱管でもあるから、熱伝達性がよい材料を選択し、さらに、周囲を土壌から冷やされるとはいえ、材料によっては60〜200℃の耐熱性が求められる。また、内部に充填物があるので、管本体2aが径方向に座屈する危険性が少ないことから、ある程度の強度でよい。これらの点から、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム、銅等の金属製管を採用することができ、とりわけ経済性を考慮すれば、鋼製管が好ましい。また、合成樹脂製管でも、熱伝達性がよく、ある程度(60〜200℃)の耐熱性のある塩化ビニール、ポリエチレン又はグラス繊維入りポリエチレンテレフタレート(FRPET)製の管を用いることができる。
また、電熱ヒータ3は、発熱温度が500〜600℃程度でよく、また、蓄熱体4である砂鉄の中に埋没して設置されることから、シース付ニクロム線ヒータを使用するのが好ましい。また、前述したように、加熱装置1の加熱制御は、温度制御を主としたもので、前記温熱管2内の中間位置又は中間の2点の蓄熱体4の温度を温度センサ7で測定して、その温度又は平均温度が設定温度範囲内(例えば、下限60℃と上限200℃の間)をヒステリシスに制御するために、電熱ヒータ3の通電を間歇的に行うことで、通電量(電圧、電流)を調節することが好ましい。この上下限の設定温度は、土壌20の目標温度を、例えば40〜60℃と定めれば、それを目途に決めることができる。このヒステリシス加熱は、蓄熱体4に貯熱容量の大きい砂鉄を用いることで可能になる。また、通電が間歇的に行えるので、深夜電力を積極的に活用することも可能で、その際は通電プログラム制御を備えていることが好ましい。また、電熱ヒータ3を中心にして蜂の巣状(砂鉄の充填を妨げない)フィンを取り付けて蓄熱体4への熱伝達を向上することができる。また、電熱ヒータ3の温度制御を感熱線を用いて行うことも可能である。
本発明に係る農圃土壌の加熱装置1の代表的な適用例を図1,3,4に示す。図3に示すように、農圃Aは、複数列の畝Bよりなり、畝Bの土壌20中に作物21が栽培・育成される。そして、前記土壌20中には、本発明に係る農圃土壌の加熱装置1の温熱管2が約20〜50cmの深さで埋設され、土壌20を加熱している構成である。そして、通常、土壌20の加温や保温を効率よくするために、ハウスCやトンネルを畝Bの上に掛けている。
冬季には太陽熱が不足がちであるが、前記温熱管2からの放熱温度を40〜60℃にすれば、農作物21の育成を促進したり、育成期間を短縮することができる。特に、冷え込む夜間に通電して土壌20を加温し、昼間は通電を控えて、温熱管2の蓄熱体4が保有する熱量を利用して土壌20の加温を行うことが本発明の加熱制御装置8を用いることにより可能となる。また、前述の土壌加温は、図4に示す植栽用コンテナ4を用いた作物21の育成にも、小規模ではあるが、同様に、効果的に用いることができる。
また、土壌消毒であるが、本発明によれば、埋設した温熱管2からの強制的加熱ができるので、土壌20の温度を40〜60℃に上げて、土壌20中の害虫や病原菌などを死滅させることができ、十分な深さの土壌消毒が可能である。また、この温熱管2を農圃全体に効率よく配設することで、病害虫の駆除・予防を行うことができる。また、この土壌消毒法によれば、野菜等の農作物の栽培・育成に際し、苗を移植する前の休耕期間中に、前記温熱管2で土壌20を加熱して消毒し、その後苗を育成して病害虫から農作物を守ることができる。また、夏季の土壌消毒においては、太陽熱を併用するのも有効で、省エネルギーの方法である。
農業のみならず、一般産業界においても、深夜電力を利用したヒステリシス加熱ができる加熱装置として利用できる。これにより二酸化炭素の削減に寄与して地球環境の保全方法としても利用できる。
本発明の実施するための最良の形態に係る農圃土壌の加熱装置であって、模式的全体斜視図である。 本発明の実施するための最良の形態に係る農圃土壌の加熱装置を構成する温熱管であって、(a)は模式的全体斜視図、(b)はA矢視の縦断面図、(c)はB矢視の横断面図である。 本発明に係る農圃土壌の加熱装置を用いたハウス栽培の模式的斜視図である。 本発明に係る農圃土壌の加熱装置を用いたコンテナ栽培の模式的斜視図である。
符号の説明
1:加熱装置 2:温熱管 2a:管本体 3:電熱ヒータ
4:蓄熱体 5:熱反射板 6:断熱材 7:温度センサ
8:加熱制御装置 9:配線ケーブル 10:ジョイント
20:土壌 21:作物
A:農圃 B:畝 C:ハウス D:コンテナ

Claims (6)

  1. 農圃の土壌温度を上昇させる加熱装置であって、前記加熱装置が、土壌中に埋設され、かつ、電熱ヒータを取り囲んで蓄熱体を充填した温熱管から構成されることを特徴とする農圃土壌の加熱装置。
  2. 前記蓄熱体が砂鉄からなることを特徴とする請求項1記載の農圃土壌の加熱装置。
  3. 前記温熱管の直径が、30〜150mmの範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の農圃土壌の加熱装置。
  4. 前記温熱管の管体が合成樹脂製又は金属製であることを特徴とする請求項1又は2又は3に記載の農圃土壌の加熱装置。
  5. 前記温熱管の下部内面に接して熱反射板と断熱材を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の農圃土壌の加熱装置。
  6. 前記温熱管内の所定位置の蓄熱体温度を設定温度範囲内に制御する電熱ヒータの加熱制御装置を備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の農圃土壌の加熱装置。
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