JP2009066885A - 裁断屑を用いた成形体およびその製造方法 - Google Patents

裁断屑を用いた成形体およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑を、より簡便な方法で有効利用できる技術の提供。
【解決手段】 化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑11を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑11を加圧してフェルトマット13に成形するフェルトマット成形工程(S102)と、フェルトマット13に熱反応性の硬化剤15を含浸させる硬化剤含浸工程と、硬化剤15が含浸されたフェルトマット13を熱プレス成形によって成形品16を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、化学繊維(合成繊維も含む)を含む裁断屑を利用して成形した成形体及びその製造方法に関し、特に自動車などの座席表皮材の裁断屑を利用して成形した繊維質のボード成形体に関するものである。
自動車等の輸送車両に設けられる座席の表皮材は、例えばポリエステルなどの合成繊維の編物又は織物を表面生地にして、その下に厚さ5〜20mm程度の軟質スラブウレタンとポリエステル不織布との3層構造となるものが使用されている。そしてこの3層構造の表皮材シート原反を、座席のデザイン、形状に基づいて裁断、縫製して、座席の表皮材として提供されている。
上記した表皮材シート原反の裁断においては、相当数量の端材(「裁断屑」という)が発生するが、その有効利用を図れず、一部は小さく粉砕してウレタンチップに添加して利用されていたものの、大半は工場廃棄物として埋め立ての対象となっており資源リサイクルが十分行われていなかった。
上記問題に対し、座席表皮材の裁断屑の有効利用を図るために、裁断屑を主原料とした軟質な繊維質成形体の製造方法等が提案されている(特許文献1参照)。
特許第3022219号(特開平8−134228号公報)
特許文献1に記載の裁断屑利用は、裁断屑を解繊してウレタン発泡体の細粒を添加して攪拌することでウレタン発泡体の細粒が繊維内に入りこんで毛玉状の繊維をとき解し、軟質な成形体を製造可能としたものである。
上記の裁断屑利用技術は、本来が硬い裁断質を軟質な成形体とすることができる優れた技術であるが、裁断屑を繊維状に解した後に発泡ポリウレタン細粒を均一になるまで十分に攪拌混合してから成形するため、煩雑な手間が必要であった。
本発明は、化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑を、より簡便な方法で有効利用できる技術の提供を目的とする。
上記課題を解決するために本発明が提案するのは、化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑に熱反応性の硬化剤を含浸させる硬化剤含浸工程と、前記硬化剤が含浸された裁断屑を熱プレス成形によって成形体を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする裁断屑を用いた成形体の製造方法である。
このように化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕して、熱反応性の硬化剤を含浸させ、さらに熱プレスすれば所定の形状の成形体を容易に製造することができる。
裁断屑に含まれる化学繊維には、合成繊維も含まれるものであり、このような裁断屑としては、例えば自動車等の輸送車両の座席に使用される表皮の廃材が該当する。
自動車等の輸送車両の座席に使用される表皮は、例えばポリエステルなどの合成繊維の編物又は織物を表面生地にして、その下に厚さ5〜20mm程度の軟質スラブウレタンとポリエステル不織布との3層構造であり、この表皮の裁断屑を利用して軟質な成形品を製造するには煩雑な手間を要するが、本発明では粉砕後に熱反応性の硬化剤を含浸させて熱プレス成形するので、簡便に所定形状の成形品を製造することができる。
また本発明が提案するのは、化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑に熱反応性の硬化剤を含浸させる硬化剤含浸工程と、前記硬化剤が含浸された裁断屑を加圧してフェルト状のマットに成形するフェルトマット成形工程と、前記フェルト状のマットを熱プレス成形によって成形体を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする裁断屑を用いた成形体の製造方法である。
硬化剤が含浸された裁断屑を加圧してフェルト状のマットに成形するフェルトマット成形工程を、熱プレス成形工程の前に設けたものであり、フェルト状のマットにすることによって、粉砕された裁断屑のハンドリング性、密度の均一性を確保するためである。
また本発明が更に提案するのは、化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑を加圧してフェルト状のマットに成形するフェルトマット成形工程と、前記フェルト状のマットに熱反応性の硬化剤を含浸させる硬化剤含浸工程と、硬化剤が含浸された前記フェルト状のマットを熱プレス成形によって成形体を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする裁断屑を用いた成形体の製造方法である。
フェルト状のマットにした後に、熱反応性の硬化剤を含浸させるものであり、硬化剤が均一に含浸させるものである。
前記裁断屑粉砕工程においては、前記裁断屑に含まれる化学繊維の織物又は編物を解繊するとともに、該解繊された前記裁断屑にバインダー繊維を混入させることが好ましい。
なお上記バインダー繊維には、VOC(揮発性有機化合物)を含有していないものを使用する。例えばホルムアルデヒドのようなVOCが含有されていると、成形体の用途に制限が生じるからである。VOCを含有していないバインダーを使用することで、例えばシックハウス症候群等の対応品として自動車室内用部品にも使用できるからである。
粉砕工程としては、細かくカットする粉砕方法もあるが、化学繊維の生地を引っかき解繊する粉砕方法によれば、裁断屑の繊維質が長く残り、製造される成形品の強度を高めることができるからである。
また硬化剤が含浸された前記フェルト状のマットに、さらに成形型からの脱型を容易にするための離型剤が含浸させることが好ましい。
熱プレス成形の成形型からの離型を容易にし、成形品の形状破損を防止するためである。また成形型には成形時に発生するガスを排出するためのガス抜き穴が設けられており、これにより発生ガスによる成形品の破損を防止することができる。
また本発明が提案するものは、上記の裁断屑を用いた成形体の製造方法によって成形されてなる成形体である。
化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕し、この粉砕された裁断屑に熱反応性の硬化剤を含浸させ、この硬化剤が含浸された裁断屑を熱プレス成形によって所定形状に成形される成形体である。
本発明によれば、化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑を、複雑な装置や方法を要することなく、より簡便に有効利用することができ、リサイクル性に優れた技術の提供ができる。
例えば、上記裁断屑の一つとして自動車の座席表皮の裁断屑を利用して、自動車室内部品(内装ボード)等の成形品を製造することができる。
以下添付図面を参照して、本発明の実施例を説明する。図1は本発明の裁断屑を用いた成形体の製造方法に係る実施例1の工程図であり、図2は同じく実施例2の工程図、図3は同じく実施例3の工程図である。
図1に示すように、本実施例は主として工程順に、裁断屑粉砕工程(S101)と、フェルトマット成形工程(S102)と、硬化剤含浸工程(S103)と、熱プレス成形工程(S104)とを含んでなるものである。
原料である化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑11は、自動車シート(座席)の表皮の裁断屑11を使用する。表皮材シート原反の裁断において発生する裁断屑11の有効利用を図ること等が本発明の課題であるからである。
すなわち自動車シート用表皮の裁断屑11から抽出した解繊繊維に、バインダー繊維12を混入させてからフェルト状のマット13(「フェルトマット」という)に加工し、このフェルトマット13に硬化剤15を滲み込ませた後、ローラプレスにより余分な硬化剤15をフェルトマット13から搾り出し、最後にフェルトマット13を180℃に加熱した成形型にセットして熱プレスにより所定形状の成形体である成型品16を製造するものである。
(裁断屑粉砕工程:S101)
粉砕の方法としては、細かくカットする方法があるが、本実施例では裁断屑11に含まれる化学繊維の織物、編物である生地を引っかき解繊する方法を行う。生地を繊維の状態に解する、解繊により繊維質が長く残り最終製品である成形体の強度を確保することができるからである。
自動車シート用表皮材(ポリエステル繊維の生地、5mm厚みのスラブウレタン、15デニールのポリエステル不織布の3層で構成)の裁断屑11をブレーカー(池上機械(株)製)によって予備解繊する。
予備解繊された表皮材の裁断屑を解繊機(池上機械(株)製リサイクラー)に投入し、解繊繊維に加工する。このリサイクラー投入時に繊維状のバインダー繊維12を基材(裁断屑)に対し10%重量部となるように投入し、リサイクラーによる解繊及び基材の空送によって解繊表皮材とバインダー繊維の混合された解繊繊維を得ることができる。
上記バインダー繊維12(ユニチカ(株)製)は、ポリエステル繊維の表面をポリプロピレンでコーティングされた繊維である。
(フェルトマット成形工程:S102)
フェルトマット成形工程は、裁断屑粉砕工程(S101)で生成された解繊繊維をフェルトマット13に成形する工程である(S102)。この工程は省略することも可能であるが、細かくカットする粉砕や又は解繊による粉砕された表皮材のハンドリング性、密度の均一性を確保するために、このフェルトマット成形工程を行うことが望ましい。
具体的なフェルトマット成形工程は、上記解繊繊維を1kg/mになるように分散させマット状にしたものを厚さ3cmに圧縮し、100℃の加熱炉で8時間放置し、その後混合繊維を取り出しフェルトマット13に成形するものである。
なお混入されているバインダー繊維(ユニチカ(株)製、ポリエステル繊維の表面をポリプロピレンでコーティングされた繊維)が熱により溶けて解繊繊維間を溶着し、フェルトマット成形が容易になるものである。
(硬化剤含浸工程:S103)
硬化剤含浸工程は、フェルトマット13に熱反応性の硬化剤(特殊MDI溶液)15を吸着させる工程である。
硬化剤15の含浸方法には、スプレーいよる塗布、特殊MDI溶液を溶剤で溶解した溶液に浸した後、圧力で搾り取るなどの方法があるが、本実施例では硬化剤の溶液にフェルトマット13を浸けてから、余分な硬化剤を圧力で搾り取った。
具体的には、硬化剤13となる特殊MDI(三井化学ポリウレタン(株)製造)を9倍の水に希釈した溶液が入った容器(体積:1000mm×1000mm×100mm)にフェルトマット13(500mm×500mm×30mm)を浸けて、硬化剤15を充分浸透させる。
その後ローラプレスにより余分な硬化剤水溶液を絞り出した。これはフェルトマット13全体に確実に硬化剤を吸着、含浸させるための方法である。
搾り出した後の硬化剤水溶液は基材に対し等量の含浸量であり、結果的に基材に対し硬化剤が10%含浸されていることになる。
なお特殊MDI溶液には成型後の成型品(成形体)の脱型を容易にする目的で離型剤成分を含めることが可能である、さらに特殊MDI溶液にはその反応時間を短縮させる触媒成分を含めることも可能である。
(熱プレス成形工程:S104)
熱プレス成形工程は、熱反応性の硬化剤を含んだフェルトマット13を高温に加熱した形成型にセットし、熱プレスにより水分と硬化剤15とを反応硬化させて、成形品16(本実施例ではボード体)を成形する工程である。
具体的には、硬化剤水溶液が含浸、吸着されたフェルトマットを180℃に加熱した成形下型にセットする。成形型はあらかじめ目的とする形状に加工されたもので、電気ヒータが下型に組み込まれている。そして180℃に加熱された上型を閉じ、60秒間、20tでプレス成形した。
硬化剤15となる特殊MDIは加熱により反応が促進され、フェルトマット13に含まれる水分と反応して固化するが、この時硬化剤15に含まれる水分が気化して水蒸気になる。この水蒸気がフェルトマット13内に蓄積し高圧状態になると、その後プレス終了時に上型が上昇して大気圧下に置かれた際に、製品内外の圧力差から成形品16が破損し破損(パンク)する。この対策として、成形型には製品内が高圧状態になるのを防止するために3mmのガス抜き穴を適当量設けている。
このように本実施例によれば、原料である化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑11(例えば自動車用シート表皮の裁断屑)を利用して、強度的にも優れた成形体(例えば自動車内装品のボード)の製造方法の提供とその成形体の提供とが可能となるものである。
なお化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑11であれば、シート表皮の裁断屑11に限らず他のものを原料材にすることができ、またこれを利用した成形体も自動車内装品のボードに限定することなく適用できる。特にフェノール樹脂等のようにホルムアルデヒド等(VOC)を発生するものをバインダーに使用しないので、製造される成形体はシックハウス症候群対応品として利用できる。
次に本発明の実施例2について図2を参照して説明する。説明は実施例1と異なる部分を中心にし、実施例1と共通する部分は適宜省略する。
図2に示すように、本実施例は主として工程順に、裁断屑粉砕工程(S201)と、硬化剤含浸工程(S203)と、フェルトマット成形工程(S203)と、熱プレス成形工程(S204)とを含んでなるものである。
実施例1と異なり、フェルトマット成形工程(S203)の前に、硬化剤含浸工程(S203)を設け、この硬化剤含浸工程(S203)を効率的にしたものである。
裁断屑粉砕工程(S201)は、実施例1と同様に、化学繊維(合成繊維も含む)の織物又は編物を含む裁断屑11(例えば、自動車用シート表皮の端材)を解繊し、これにバインダー繊維12を混入する。
そしてこの解繊され、バインダー繊維12が混入された裁断屑11をタワー型装置に搬送し、タワー上部にて熱反応性の硬化剤15(特殊MDI液)を基材(裁断屑)に対し10%重量部となるように噴霧状にしてスプレー塗布する。
その後フェルトマット成形工程(S203)を経て、熱プレス成形工程(S204)によって所定の成形体であるボード等の成型品に成形される。
このように実施例2では、硬化剤をスプレー塗布するので、容器中に浸ける場合に比べて簡便かつ効率よく行うことができる。
次に本発明の実施例3について図3を参照して説明する。説明は実施例1と異なる部分を中心にし、実施例1と共通する部分は適宜省略する。
図3に示すように、本実施例は主として工程順に、裁断屑粉砕工程(S301)と、硬化剤含浸工程(S302)と、熱プレス成形工程(S303)とを含んでなるものである。
実施例1と異なり、フェルトマット成形工程(S203)を省略したものである。
そして裁断屑粉砕工程(S301)も実施例1と異なり、解繊を行わず裁断屑11を細かくカットして粉砕するものである。具体的には自動車シート用表皮の裁断屑11を粉砕機(ホーライ製BO−360スクリーンサイズ12mm)に投入して粉砕する。
そして粉砕した裁断屑11を攪拌機に投入し、熱反応性の硬化剤15(特殊MDI溶液)を基材に対し10%重量部をスプレー塗布した後、混合される(S302)。
硬化剤15が混合された裁断屑11は、フェルトマット13に成形されることなく、そのまま180℃に加熱した成形型にセットされ、20tでプレス成形されて所定の成型品となる。
このように実施例3では、裁断屑粉砕工程が解繊の代りに細かくカットして粉砕し、バインダー繊維12を投入せず、硬化剤15をスプレー塗布して攪拌混合し、フェルトマット成形工程を省略して熱プレス成形するので、実施例1と比較すると成形品16における素材の均一性等は劣るものの、製造工程は簡便で効率性に優れている。すなわち原料となる裁断屑の性状や、成形品の用途等に応じて各実施例を選択することが好ましい。
また熱プレス成形で製造される成形体は、自動車内装部品のボードのような成型品のほか、部材その他特に限定するものではない。
本発明の裁断屑を用いた成形体の製造方法に係る実施例1の工程図。 同じく実施例2の工程図。 同じく実施例3の工程図。
符号の説明
11 裁断屑
12 バインダー繊維
13 フェルトマット
15 硬化剤
16 成型品

Claims (6)

  1. 化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑に熱反応性の硬化剤を含浸させる硬化剤含浸工程と、前記硬化剤が含浸された裁断屑を熱プレス成形によって成形体を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする裁断屑を用いた成形体の製造方法。
  2. 化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑に熱反応性の硬化剤を含浸させる硬化剤含浸工程と、前記硬化剤が含浸された裁断屑を加圧してフェルト状のマットに成形するフェルトマット成形工程と、前記フェルト状のマットを熱プレス成形によって成形体を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする裁断屑を用いた成形体の製造方法。
  3. 化学繊維の織物又は編物を含む裁断屑を粉砕する裁断屑粉砕工程と、粉砕された裁断屑を加圧してフェルト状のマットに成形するフェルトマット成形工程と、前記フェルト状のマットに熱反応性の硬化剤を含浸させる硬化剤含浸工程と、硬化剤が含浸された前記フェルト状のマットを熱プレス成形によって成形体を形成する熱プレス成形工程とを備えてなることを特徴とする裁断屑を用いた成形体の製造方法。
  4. 前記裁断屑粉砕工程においては、前記裁断屑に含まれる化学繊維の織物又は編物を解繊するとともに、該解繊された前記裁断屑にバインダー繊維を混入させることを特徴する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の裁断屑を用いた成形体の製造方法。
  5. 硬化剤が含浸された前記フェルト状のマットに、さらに成形型からの脱型を容易にするための離型剤が含浸されることを特徴とする請求項2又は3に記載の裁断屑を用いた成形体の製造方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれか一項に記載の裁断屑を用いた成形体の製造方法によって成形されてなる成形体。
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