以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
[1]
はじめに、本発明の実施の形態におけるオゾンガスの検知素子の構成例について説明する。図1Aは、本発明の実施の形態における検知素子102を用いたオゾンガス分析装置の構成例を示す構成図、図1Bは、一部断面図Bである。図1Aに示す分析装置は、発光部101、検知素子102、受光部103、変換増幅部104、A/D変換部105、及び出力検出部106を有する。発光部101は、例えば、中心波長が611nm程度の発光波長を有する橙色LEDである。また、受光部103は、例えば、フォトダイオードであり、例えば、190〜1000nmの波長に受光感度がある。また、発光部101と受光部103は、発光部分と受光部分とが対向して配置されている。
このような構成の分析装置においては、発光部101から出射された光を、検知素子102に照射し、検知素子102を透過した透過光を受光部103で受光する。検知素子102では、雰囲気に存在していたオゾンガスの濃度に比例して光の透過状態が変化しているので、この変化が、透過光の変化として受光部103により検出される。
受光された透過光は、受光部103において光電変換されて信号電流として出力される。出力された信号は、変換増幅部104において増幅されて電流−電圧変換される。電圧に変換された信号は、A/D変換部105においてデジタル信号に変換される。最後に、変換されたデジタル信号が、出力検出部106より検出結果として出力される。
次に、検知素子102について、より詳細に説明する。検知素子102は、図1Bの断面図に示すように、平均孔径が4nmの複数の微細な孔122を備えた多孔質ガラスである多孔体121と、孔122内に設けられた検知剤123と、多孔体121の表面を覆うように形成されたプラスチック被膜からなるガス選択透過膜124とから構成されたものである。多孔体121は、例えば、コーニング社製のバイコール7930を用いることができる。また、多孔体121は、8(mm)×8(mm)で厚さ1(mm)のチップサイズである。なお、多孔体121は、板状に限るものではなく、ファイバ状に形成するようにしてもよい。
検知剤123は、色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩と酢酸とを含むものである。このような構成とした検知素子102の孔122内にオゾン(オゾンガス)が進入してくると、進入したオゾンにより検知剤123に含まれるインジゴカルミン2ナトリウム塩のインジゴ環の炭素炭素の2重結合が壊され、可視領域の吸収スペクトルが変化する。従って、検知素子102の色が変化した状態となる。このように、オゾンの存在により検知剤123に含まれる色素が分解されることで、検知素子102を透過する透過光の状態が変化するので、この変化によりオゾンガスの測定が可能となる。
加えて、図1に示す検知素子102は、ガス選択透過膜124に覆われているようにしたので、孔122内部への二酸化窒素の進入が抑制されるようになり、より高い感度でオゾン濃度の測定が可能となる。この結果、図1に示す検知素子102によれば、二酸化窒素ガスが存在している状態でも、二酸化窒素ガスによる妨害を受けることなく、高感度でオゾンの測定が可能となる。
ガス選択透過膜124は、例えば、ポリアクリロニトリル,ポリメチルメタクリレートなどのビニル基を含む鎖状分子からなる化合物を単量体とした有機高分子から構成されたものであり、膜厚0.05μm〜1μm程度に形成されたものであればよい。1μmを超えてあまり厚くすると、オゾン(オゾンガス)が透過しにくくなる。一方、0.05μm以下に薄くしすぎると、膜の状態が維持しにくくなる。
なお、ガス選択透過膜124は、アクリル酸,アクリロニトリル,メタクリル酸,メタクリル酸メチル,塩化ビニル,塩化ビニリデンなどのビニル基を含む鎖状分子からなる化合物を単量体とする有機高分子やこれらを単量体とする共重合体(コポリマ)から構成されていてもよい。共重合体としては、例えば、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体などがある。また、ガス選択透過膜124は、350〜800nmの波長領域において所定値以上の高い透過率を有する材料から構成する。
多孔質ガラス(ほう珪酸ガラス)からなる多孔体121は、平均孔径が20nm未満であれば、波長200〜2000nmでの透過スペクトルの測定において、350〜800nmの範囲の可視光領域で光が透過する。しかしながら、平均孔径が20nmを超えると、可視領域における光透過率が急激に減少する。従って、多孔体121は、平均孔径が20nm未満とした方がよい。特に、波長350〜800nmの範囲で透明であればよい。なお、平均孔径は、以降に示す検知剤が入り込める以上の大きさである。ところで、多孔体121の比表面積は重量1g当たり100m2以上である。
次に、検知素子102の作製方法について説明する。色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩を水に溶解し、更に酢酸を添加し、インジゴカルミン2ナトリウム塩0.3%、酢酸1Nの水溶液(検知剤溶液)を作製する。次に、上記検知剤溶液を所定の容器に収容し、容器に収容された検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラスである多孔体121が浸漬された状態とする。浸漬された状態は、例えば、24時間保持する。このことにより、多孔体121の孔122内部に、検知剤溶液が含浸する。
24時間浸漬された状態とした後、検知剤溶液中より多孔体121を取り出して風乾する。ある程度に風乾された後、多孔体121を窒素ガス気流中に配置し、この状態を24時間以上保持して乾燥された状態とする。この結果、多孔体121の孔122内部に検知剤123が配置された状態が得られる。このようにして得られたオゾンガスの検知素子によれば、オゾンの存在により吸光度が変化し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である(特許文献1参照)。
次に、ポリアクリロニトリルが1%溶解したテトラヒドロフラン溶液に、乾燥した検知素子102が浸漬された状態とする。この状態を30秒間保持した後、テトラヒドロフラン溶液中より検知素子102を引き上げ、検知素子102が風乾された状態とする。この結果、多孔体121の表面がガス選択透過膜124で覆われた検知素子102が得られる。形成したガス選択透過膜124の膜厚は、0.3μmである(段差計の測定結果)。
次に、上述した方法により作製した検知素子102を用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、同様に作製した検知素子Aと、プラスチック被膜が形成されていない検知素子Bを用意する。検知素子Aは、検知素子102に同様である。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子A,検知素子Bの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子A,検知素子Bが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子A,検知素子Bの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子A,検知素子Bが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子A,検知素子Bの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図2に示す。図2にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Aの結果を示し、黒丸が、プラスチック被膜が形成されていない検知素子Bの結果を示している。
検知素子A,検知素子Bともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、プラスチック被膜で覆われている検知素子Aにおいても、被膜のない検知素子Bと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度の減小が大きく、どちらも蓄積的な使用(測定)が可能であることがわかる。
次に、新たな検知素子A及び検知素子Bを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子A,検知素子Bの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子A及び検知素子Bが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子A,検知素子Bの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子A,検知素子Bが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子A,検知素子Bの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図3に示す。図3にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Aの結果を示し、黒丸が、プラスチック被膜が形成されていない検知素子Bの結果を示している。
検知素子A,検知素子Bともにオゾンに晒すことにより吸光度が減少しているが、減少量はオゾン積算値250ppb×hourで、検知素子Aでは0.016、検知素子Bでは0.032となる。このように、検知素子Bでは、図2に示した結果に比較して吸光度の減少量が増加している。これは、同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものである。
これに対し、検知素子Aでは、上記減少量が図2に示した結果に比較して変化しておらず、二酸化窒素ガスの影響を受けずに高感度で測定されていることがわかる。以上に示したように、図1に示す検知素子Aによれば、測定対象雰囲気に存在する二酸化窒素が、ガス選択透過膜124により進入しなくなり、二酸化窒素の妨害が抑制された状態で、より高感度なオゾンの検出が可能となっている。
次に、検知素子102の他の作製方法について説明する。色素としてインジゴカルミン2ナトリウム塩、リン酸,及びリン酸2水素緩衝液を水に溶解した検知剤溶液を作製する。検知剤溶液におけるインジゴカルミン2ナトリウム塩の濃度は0.4%、リン酸及びリン酸二水素ナトリウムの濃度は50mmolとする。次に、上記検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラスである多孔体が浸漬された状態とする。浸漬された状態は、例えば、24時間保持する。このことにより、多孔体の孔内部に、検知剤溶液が含浸する。
24時間浸漬された状態とした後、検知剤溶液中より上記多孔体を取り出して風乾する。ある程度に風乾された後、多孔体を窒素ガス気流中に配置し、この状態を24時間以上保持して乾燥された状態とする。このようにして得られたオゾンガスの検知素子によれば、オゾンの存在により吸光度が変化し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。
次に、ポリアクリロニトリルが1%溶解したテトラヒドロフラン溶液に、乾燥した上記検知素子が浸漬された状態とする。この状態を30秒間保持した後、テトラヒドロフラン溶液中より検知素子を引き上げ、検知素子が風乾された状態とする。この結果、多孔体の表面がガス選択透過膜(プラスチック被膜)で覆われた検知素子Cが得られる。
次に、上述した方法により作製した検知素子Cを用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、検知素子Cとともに、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Dを用意する。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子C,検知素子Dの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子C,検知素子Dが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子C,検知素子Dの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子C,検知素子Dが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子C,検知素子Dの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図4に示す。図4にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Cの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Dの結果を示している。
検知素子C,検知素子Dともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.010減少している。このように、ガス選択透過膜で覆われている検知素子Cにおいても、被膜のない検知素子Dと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。
次に、新たな検知素子C及び検知素子Dを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子C,検知素子Dの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子C及び検知素子Dが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子C,検知素子Dの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子C,検知素子Dが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子C,検知素子Dの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図5に示す。図5にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Cの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Dの結果を示している。
検知素子C,検知素子Dともにオゾンに晒すことにより吸光度が減少しているが、減少量はオゾン積算値250ppb×hourで、検知素子Cでは0.010、検知素子Dでは0.020となる。このように、検知素子Dでは、図4に示した結果に比較して吸光度の減少量が増加している。これは、同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものである。
これに対し、検知素子Cでは、上記減少量が図4に示した結果に比較して変化しておらず、二酸化窒素ガスの影響を受けずにオゾンを高感度に測定していることがわかる。以上に示したように、検知素子Cによれば、測定対象雰囲気に存在する二酸化窒素が、多孔体を覆っているガス選択透過膜により進入しなくなり、二酸化窒素の妨害が抑制された状態で、より高感度なオゾンの検出が可能となっている。
[2]
次に、検知素子102の他の作製方法について説明する。以下では、ガス選択透過膜がポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリル樹脂から構成されている場合について説明する。まず、前述同様に、色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩を水に溶解し、更に酢酸を添加し、インジゴカルミン2ナトリウム塩0.3%、酢酸1Nの水溶液(検知剤溶液)を作製する。次に、この検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラスである多孔体が浸漬された状態とする。浸漬された状態は、例えば、24時間保持する。このことにより、多孔体の孔内部に、検知剤溶液が含浸する。
24時間浸漬された状態とした後、検知剤溶液中より上記多孔体を取り出して風乾する。ある程度に風乾された後、多孔体を窒素ガス気流中に配置し、この状態を24時間以上保持して乾燥された状態とする。このようにして得られた検知素子によれば、オゾンの存在により吸光度が変化し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。
次に、分子量15,000のPMMAが1%溶解した酢酸エチル溶液に、乾燥した上記検知素子が浸漬された状態とする。この状態を30秒間保持した後、酢酸エチル溶液中より検知素子を引き上げ、検知素子が風乾された状態とする。この結果、多孔体の表面が、PMMAからなるガス選択透過膜(プラスチック被膜)で覆われた検知素子Eが得られる。多孔体の表面を覆うガス選択透過膜は、膜厚0.25μm程度に形成される(段差計による測定結果)。
次に、上述した方法により作製した検知素子Eを用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、検知素子Eとともに、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Fを用意する。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子E,検知素子Fの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子E,検知素子Fが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子E,検知素子Fの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子E,検知素子Fが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子E,検知素子Fの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図6に示す。図6にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Eの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Fの結果を示している。
検知素子E,検知素子Fともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、ガス選択透過膜で覆われている検知素子Eにおいても、被膜のない検知素子Fと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度が小さく、蓄積的な使用(測定)が可能であることが示されている。
次に、新たな検知素子E及び検知素子Fを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子E,検知素子Fの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子E及び検知素子Fが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子E,検知素子Fの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子E,検知素子Fが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子E,検知素子Fの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図7に示す。図7にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Eの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Fの結果を示している。
どちらの検知素子E,検知素子Fともにオゾンに晒すことにより吸光度が減少しているが、減少量はオゾン積算値250ppb×hourで、検知素子Eでは0.024、検知素子Fでは0.032となる。このように、検知素子E及び検知素子Fは、図6に示した結果に比較して吸光度の減少量が増加し、特に検知素子Fの減少量が大きい。これは、同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものである。
ただし、検知素子Eでは、検知素子Fに比較して上記減少量が少なく、二酸化窒素ガスの影響が低減されていることがわかる。検知素子Fにおける二酸化窒素のオゾンに対する相対感度は0.25、検知素子Eにおける二酸化窒素のオゾンに対する相対感度は0.125となる。なお、相対感度は、ある濃度のオゾンに晒されたときの吸光度の減少量を1とし、同じ濃度の二酸化窒素に晒されたときの吸光度の減少量の相対値である。また、上述の場合、ガス選択透過膜がない素子の検出結果との比較により、二酸化窒素の侵入が、50%(=(0.024−0.016)÷(0.032−0.016)×100)に低減されていることがわかる。以上に示したように、検知素子Eによれば、測定対象雰囲気に存在する二酸化窒素が、多孔体を覆っているガス選択透過膜により進入しにくくなり、二酸化窒素の妨害が抑制された状態で、より高感度なオゾンの検出が可能となっている。
次に、PMMAからなるガス選択透過膜を用いた場合の他の検知素子について説明する。はじめに、素子の作製方法について説明すると、まず、前述同様に、色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩を水に溶解し、更に酢酸を添加し、インジゴカルミン2ナトリウム塩0.3%、酢酸1Nの水溶液(検知剤溶液)を作製する。次に、この検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラスである多孔体が浸漬された状態とする。浸漬された状態は、例えば、24時間保持する。このことにより、多孔体の孔内部に、検知剤溶液が含浸する。
24時間浸漬された状態とした後、検知剤溶液中より上記多孔体を取り出して風乾する。ある程度に風乾された後、多孔体を窒素ガス気流中に配置し、この状態を24時間以上保持して乾燥された状態とする。このようにして得られた検知素子によれば、オゾンの存在により吸光度が変化し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。
次に、分子量120,000のPMMAが1%溶解した酢酸エチル溶液に、乾燥した上記検知素子が浸漬された状態とする。この状態を30秒間保持した後、酢酸エチル溶液中より検知素子を引き上げ、検知素子が風乾された状態とする。この結果、多孔体の表面が、PMMAからなるガス選択透過膜(プラスチック被膜)で覆われた検知素子Gが得られる。多孔体の表面を覆うガス選択透過膜は、膜厚0.45μm程度に形成される(段差計による測定結果)。
次に、上述した方法により作製した検知素子Gを用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、検知素子Gとともに、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Hを用意する。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子G,検知素子Hの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子G,検知素子Hが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子G,検知素子Hの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子G,検知素子Hが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子G,検知素子Hの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図8に示す。図8にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Gの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Hの結果を示している。
検知素子G,検知素子Hともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、ガス選択透過膜で覆われている検知素子Gにおいても、被膜のない検知素子Hと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度が小さく、蓄積的な使用(測定)が可能であることが示されている。
次に、新たな検知素子G及び検知素子Hを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子G,検知素子Hの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子G及び検知素子Hが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子G,検知素子Hの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子G,検知素子Hが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子G,検知素子Hの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図9に示す。図9にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Gの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Hの結果を示している。
検知素子G,検知素子Hともにオゾンに晒すことにより吸光度が減少しているが、減少量はオゾン積算値250ppb×hourで、検知素子Gでは0.017、検知素子Hでは0.032となる。このように、検知素子G及び検知素子Hは、図8に示した結果に比較して吸光度の減少量が増加する。これは、同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものである。ただし、検知素子Gでは、図8の結果に比較して、わずかに減少量が増加しているにとどまるが、検知素子Hでは、図8の結果に比較して減少量が大きく増加している。
このように、検知素子Gでは、図8の場合と図9の場合とで変化が少なく、二酸化窒素ガスの影響が、検知素子Eと検知素子Fとの比較の場合に対し、より多く低減されていることがわかる。検知素子Hにおける二酸化窒素のオゾンに対する相対感度は0.25、検知素子Gにおける二酸化窒素のオゾンに対する相対感度は0.0156となる。また、この場合、ガス選択透過膜がない素子の検出結果との比較により、二酸化窒素の侵入が、約6%(≒(0.017−0.016)÷(0.032−0.016)×100)に低減されていることがわかる。以上に示したように、検知素子Gによれば、測定対象雰囲気に存在する二酸化窒素が、多孔体を覆っているガス選択透過膜により進入しにくくなり、二酸化窒素の妨害が抑制された状態で、より高感度なオゾンの検出が可能となっている。また、この効果が、検知素子Eの場合に比較して大きい。
次に、PMMAからなるガス選択透過膜を用いた場合の、更に他の検知素子について説明する。はじめに、素子の作製方法について説明すると、まず、前述同様に、色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩を水に溶解し、更に酢酸を添加し、インジゴカルミン2ナトリウム塩0.3%、酢酸1Nの水溶液(検知剤溶液)を作製する。次に、この検知剤溶液に、平均孔径4nmの多孔質ガラスである多孔体が浸漬された状態とする。浸漬された状態は、例えば、24時間保持する。このことにより、多孔体の孔内部に、検知剤溶液が含浸する。
24時間浸漬された状態とした後、検知剤溶液中より上記多孔体を取り出して風乾する。ある程度に風乾された後、多孔体を窒素ガス気流中に配置し、この状態を24時間以上保持して乾燥された状態とする。このようにして得られた検知素子によれば、オゾンの存在により吸光度が変化し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。
次に、分子量960,000のPMMAが1%溶解した酢酸エチル溶液に、乾燥した上記検知素子が浸漬された状態とする。この状態を30秒間保持した後、酢酸エチル溶液中より検知素子を引き上げ、検知素子が風乾された状態とする。この結果、多孔体の表面が、PMMAからなるガス選択透過膜(プラスチック被膜)で覆われた検知素子Iが得られる。多孔体の表面を覆うガス選択透過膜は、膜厚0.5μm程度に形成される(段差計による測定結果)。
次に、上述した方法により作製した検知素子Iを用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、検知素子Iとともに、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Jを用意する。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子I,検知素子Jの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子I,検知素子Jが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子I,検知素子Jの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子I,検知素子Jが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子I,検知素子Jの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図10に示す。図10にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Iの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Jの結果を示している。
検知素子I,検知素子Jともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、ガス選択透過膜で覆われている検知素子Iにおいても、被膜のない検知素子Jと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度が小さく、蓄積的な使用(測定)が可能であることが示されている。
次に、新たな検知素子I及び検知素子Jを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子I,検知素子Jの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子I及び検知素子Jが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子I,検知素子Jの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子I,検知素子Jが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子I,検知素子Jの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図11に示す。図11にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Iの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Jの結果を示している。
検知素子I,検知素子Jともにオゾンに晒すことにより吸光度が減少しているが、減少量はオゾン積算値250ppb×hourで、検知素子Iでは0.016、検知素子Jでは0.032となる。このように、検知素子Jでは、図10に示した結果に比較して吸光度の減少量が増加する。これは、同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものである。この場合の、二酸化窒素のオゾンに対する相対感度は0.25である。これに対し、検知素子Iでは、図10の場合と差がない。
このように、検知素子Iでは、二酸化窒素ガスの影響をほとんど受けていないことがわかる。以上に示したように、検知素子Iによれば、測定対象雰囲気に存在する二酸化窒素が、多孔体を覆っているガス選択透過膜により、ほぼ侵入しない状態となり、二酸化窒素の妨害が抑制された状態で、より高感度なオゾンの検出が可能となっている。以上に説明したように、PMMAからガス選択透過膜が構成されている場合、PMMAの分子量が大きいほど、二酸化窒素の妨害抑止効果が高いことがわかる。上述した、分子量15,000,分子量120,000,分子量960,000の各々の結果より、分子量120,000の場合に、二酸化窒素ガスの侵入が6%程度にまで抑制されていることから、分子量100,000以上であれば、二酸化窒素の侵入が93%以上抑制できることになる。
ところで、上述では、検知剤123を色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩から構成したが、これに限るものではない。色素として、インジゴ,インジゴカルミン2カリウム塩,インジゴレッドなどを用いるようにしてもよい。
次に、比較のために、多孔体121(図1)がポリスチレンからなるプラスチック被膜(ポリスチレン被膜)で覆われた検知素子について説明する。はじめに、ポリスチレン被膜で覆われた検知素子の作製について説明する。まず、前述と同様にして孔122内部に検知剤123が配置された多孔体121を用意する。
次に、ポリスチレンが1%溶解した酢酸エチル溶液に、乾燥した多孔体121が浸漬された状態とし、この状態を20秒間保持する。ついで、酢酸溶液中より多孔体121を引き上げ、検知素子102が風乾された状態とする。この結果、多孔体121の表面がポリスチレン被膜で覆われた検知素子が得られる。形成したポリスチレン被膜の膜厚は、0.25μmである(段差計の測定結果)。
次に、上述した方法により作製したポリスチレン膜が被覆された検知素子を用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、同様に作製した検知素子Kと、ポリスチレン被膜が形成されていない検知素子Lを用意する。検知素子Kは、検知素子に同様である。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子K,検知素子Lの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子K,検知素子Lが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子K,検知素子Lの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子K,検知素子Lが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子K,検知素子Lの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図12に示す。図12にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Kの結果を示し、黒丸が、ポリスチレン被膜が形成されていない検知素子Lの結果を示している。
検知素子K,検知素子Lともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、ポリスチレン被膜で覆われている検知素子Kにおいても、被膜のない検知素子Lと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度の減小が大きく、どちらも蓄積的な使用(測定)が可能であることがわかる。
次に、新たな検知素子K及び検知素子Lを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子K,検知素子Lの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子K及び検知素子Lが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子K,検知素子Lの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子K,検知素子Lが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子K,検知素子Lの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図13に示す。図13にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Kの結果を示し、黒丸が、ポリスチレン被膜が形成されていない検知素子Lの結果を示している。
検知素子K,検知素子Lともに、オゾンに晒すことにより吸光度が減少している。しかしながら、減少量はオゾン積算量250ppb×hourで、検知素子K,検知素子Lともに0.032と同一である。これは、測定対象の空気に含まれている二酸化窒素ガスの影響であり、検知素子K,検知素子Lともに二酸化窒素ガスの影響を受けている。このように、ポリスチレン被膜では、選択透過性の効果が得られない。
次に、ポリスチレンを用いた場合の他の比較について説明する。はじめに、ポリスチレン被膜で覆われた他の検知素子の作製について説明する。まず、前述と同様にして孔の内部に検知剤が配置された多孔体121を用意する。次に、分子量250,000のポリスチレンが1%溶解した酢酸エチル溶液に、乾燥した多孔体121が浸漬された状態とし、この状態を30秒間保持する。ついで、酢酸溶液中より多孔体121を引き上げ、検知素子102が風乾された状態とする。この結果、多孔体121の表面がポリスチレン被膜で覆われた検知素子が得られる。形成したポリスチレン被膜の膜厚は、0.45μmである(段差計の測定結果)。
次に、上述した方法により作製したポリスチレン膜が被覆された検知素子を用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、同様に作製した検知素子Mと、ポリスチレン被膜が形成されていない検知素子Nを用意する。検知素子Mは、検知素子に同様である。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子M,検知素子Nの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子M,検知素子Nが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子M,検知素子Nの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子M,検知素子Nが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子M,検知素子Nの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図14に示す。図14にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Mの結果を示し、黒丸が、ポリスチレン被膜が形成されていない検知素子Nの結果を示している。
検知素子M,検知素子Nともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、ポリスチレン被膜で覆われている検知素子Mにおいても、被膜のない検知素子Nと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度の減小が大きく、どちらも蓄積的な使用(測定)が可能であることがわかる。
次に、新たな検知素子M及び検知素子Nを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子M,検知素子Nの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子M及び検知素子Nが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子M,検知素子Nの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子M,検知素子Nが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子M,検知素子Nの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図15に示す。図15にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Mの結果を示し、黒丸が、ポリスチレン被膜が形成されていない検知素子Nの結果を示している。
検知素子M,検知素子Nともに、オゾンに晒すことにより吸光度が減少している。しかしながら、減少量はオゾン積算量250ppb×hourで、検知素子M,検知素子Nともに0.032と同一である。これは、測定対象の空気に含まれている二酸化窒素ガスの影響であり、検知素子M,検知素子Nともに二酸化窒素ガスの影響を受けている。このように、前述した比較の例と同様であり、ポリスチレン被膜では、選択透過性の効果が得られない。
次に、比較のために、多孔体121(図1)がポリビニルアルコールからなるプラスチック被膜(ポリビニルアルコール被膜)で覆われた検知素子について説明する。はじめに、ポリビニルアルコール被膜で覆われた検知素子の作製について説明する。まず、前述と同様にして孔122内部に検知剤123が配置された多孔体121を用意する。
次に、ポリビニルアルコールが1%溶解した温水に、乾燥した多孔体121が浸漬された状態とし、この状態を20秒間保持する。ついで、温水中より多孔体121を引き上げ、検知素子102が風乾された状態とする。この結果、多孔体121の表面がポリビニルアルコール被膜で覆われた検知素子が得られる。形成したポリビニルアルコール被膜の膜厚は、0.2μmである(段差計の測定結果)。
次に、上述した方法により作製したポリビニルアルコール膜が被覆された検知素子を用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、同様に作製した検知素子Oと、ポリビニルアルコール被膜が形成されていない検知素子Pを用意する。検知素子Oは、検知素子に同様である。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子O,検知素子Pの厚さ方向の吸光度を測定する。
次に、オゾンガスが25ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子O,検知素子Pが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子O,検知素子Pの厚さ方向の吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子O,検知素子Pが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子O,検知素子Pの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。
上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図16に示す。図16にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Oの結果を示し、黒丸が、ポリビニルアルコール被膜が形成されていない検知素子Pの結果を示している。
検知素子O,検知素子Pともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値250ppb×hourで吸光度が0.016減少している。このように、ポリビニルアルコール被膜で覆われている検知素子Oにおいても、被膜のない検知素子Pと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が吸光度の減小が大きく、どちらも蓄積的な使用(測定)が可能であることがわかる。
次に、新たな検知素子O及び検知素子Pを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子O,検知素子Pの厚さ方向の吸光度を測定する。ついで、25ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子O及び検知素子Pが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子O,検知素子Pの厚さ方向の吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子O,検知素子Pが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子O,検知素子Pの厚さ方向の吸光度を再々度測定する。上述した3回の吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図17に示す。図17にはインジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である600nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Oの結果を示し、黒丸が、ポリビニルアルコール被膜が形成されていない検知素子Pの結果を示している。
検知素子O,検知素子Pともに、オゾンに晒すことにより吸光度が減少している。しかしながら、減少量はオゾン積算量250ppb×hourで、検知素子O,検知素子Pともに0.032と同一である。これは、同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものと考えられる。このように、ポリビニルアルコール被膜では、オゾン(オゾンガス)と二酸化窒素(二酸化窒素ガス)との選択透過性の効果が得られない。
ところで、膜厚25μmのポリアクリロニトリル膜は、酸素の透過度が12ml/m2・24h/atmであり、二酸化炭素の透過度が25ml/m2・24h/atmであり、水蒸気(H2O)の透過度が82ml/m2・24h/atmと測定されている(プラスチック材料の各種特性の試験法と評価結果(5)、プラスチック Vol.51(6),119(2002))。また、膜厚50μmのPMMA膜は、酸素の透過度が150ml/m2・24h/atmであり、水蒸気(H2O)の透過度が41ml/m2・24h/atmと測定されている(プラスチック材料の各種特性の試験法と評価結果(5)、プラスチック Vol.51(6),119(2002))。
一方、膜厚25μmのポリスチレン膜は、酸素の透過度が8100ml/m2・24h/atmであり、二酸化炭素の透過度が37000ml/m2・24h/atmであり、水蒸気の透過度が120ml/m2・24h/atmと測定されている(プラスチック材料の各種特性の試験法と評価結果(5)、プラスチック Vol.51(6),119(2002))。また、膜厚25μmのポリビニルアルコール膜は、水蒸気の透過度が4400ml/m2・24h/atmと測定されている。また、膜厚25μmのポリ塩化ビニル膜は、酸素の透過度が125ml/m2・24h/atmであり、二酸化炭素の透過度が760ml/m2・24h/atmであり、水蒸気の透過度が45ml/m2・24h/atmと測定されている(プラスチック材料の各種特性の試験法と評価結果(5)、プラスチック Vol.51(6),119(2002))。
これらのプラスチック被膜の中で、前述したようにポリアクリロニトリル膜、ポリ塩化ビニル膜、及びPMMA膜は、図1に示すガス選択透過膜124として用いることが可能であり、孔122内部への二酸化窒素ガスの進入を抑制できる。これに対し、ポリスチレン膜及びポリビニルアルコール膜については、前述したように、二酸化窒素(二酸化窒素ガス)の進入を抑制する傾向が観察されていない。ポリスチレンは、環状構造を持ち、極性があまりないため、二酸化窒素が透過しやすいものと考えられる。また、ポリビニルアルコール膜では、この材料が水溶性を有しているため、オゾンガスと二酸化窒素ガスとの選択透過性が得られないものと考えられる。
[3]
次に、本発明の実施の形態における他の検知素子について説明する。図18は、本発明の実施の形態における検知素子202を用いたオゾンガス分析装置の構成例を示す構成図である。図18に示す分析装置は、発光部201、検知素子202、受光部203、変換増幅部204、A/D変換部205、及び出力検出部206を有する。発光部201は、例えば、中心波長が611nm程度の発光波長を有する橙色LEDである。また、受光部203は、例えば、フォトダイオードであり、例えば、190〜1000nmの波長に受光感度がある。また、受光部203は、検知素子202を反射した発光部201からの光源光が入射されるように配置され、発光部201と受光部203とは、検知素子202に対して同じ側に配置されている。
このような構成の分析装置においては、発光部201から出射された光を、検知素子202に照射し、検知素子202を反射した反射光を受光部203で受光する。検知素子202では、雰囲気に存在していたオゾンガスの濃度に比例して光の反射状態が変化しているので、この変化が、反射光の変化として受光部203により検出される。
受光された反射光は、受光部203において光電変換されて信号電流として出力される。出力された信号は、変換増幅部204において増幅されて電流−電圧変換される。電圧に変換された信号は、A/D変換部205においてデジタル信号に変換される。最後に、変換されたデジタル信号が、出力検出部206より検出結果として出力される。
次に、検知素子202について、より詳細に説明する。検知素子202は、例えば、セルロースなどの繊維より構成されたシート状の多孔体から構成されたものである。また、検知素子202は、一方の面に反射面が形成された検知素子102同様の多孔質ガラスより構成されていてもよい。また、検知素子202は、光透過性が抑制された多孔質ガラスから構成されていてもよい。検知素子202は、複数の孔内に担持された検知剤の色の変化が、反射により確認可能なものであればよい。検知素子202は、これらのように複数の孔を備えた多孔体を担体としてこの孔内に前述同様の検知剤が配置され、また、表面がガス選択透過膜221に覆われているものである。なお、上記検知剤は、例えば、色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩と酢酸とを含むものである。
このような構成とした検知素子202の孔の内部にオゾン(オゾンガス)が進入してくると、進入したオゾンにより検知剤に含まれるインジゴカルミン2ナトリウム塩のインジゴ環の炭素炭素の2重結合が壊され、可視領域の吸収スペクトルが変化する。従って、検知素子202の色が変化した状態となる。このように、オゾンの存在により検知剤に含まれる色素が分解されることで、検知素子202を反射する反射光の状態が変化するので、この変化によりオゾンガスの測定が可能となる。
加えて、図18に示す検知素子202は、ガス選択透過膜221に覆われているようにしたので、検知素子202の孔の内部への二酸化窒素の進入が抑制されるようになる。ガス選択透過膜221は、図1Bに示すガス選択透過膜124と同様である。この結果、図18に示す検知素子202によれば、図1に示す検知素子102と同様に、二酸化窒素ガスが存在している状態でも、二酸化窒素ガスによる妨害を受けることなく、オゾンの測定が可能となる。
次に、検知素子202の作製方法例について説明する。色素であるインジゴカルミン2ナトリウム塩を水に溶解し、更に酢酸を添加し、インジゴカルミン2ナトリウム塩0.1%、酢酸1Nの水溶液(検知剤溶液)を作製する。次に、上記検知剤溶液を所定の容器に収容し、容器に収容された検知剤溶液に、例えば、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)からなる多孔体が浸漬された状態とする。浸漬された状態は、例えば、1分間保持する。このことにより、上記多孔体の孔の内部に、検知剤溶液が含浸する。
1分間浸漬された状態とした後、検知剤溶液中より多孔体(濾紙)を取り出して風乾する。ある程度に風乾された後、多孔体を窒素ガス気流中に配置し、この状態を24時間以上保持して乾燥された状態とする。この結果、多孔体の孔内部に検知剤が配置された状態が得られる。このようにして得られた検知素子によれば、オゾンの存在により光の反射の状態が変化し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。
次に、分子量960,000のPMMAが10%溶解した酢酸エチル溶液に、乾燥した検知素子202が浸漬された状態とする。この状態を30秒間保持した後、酢酸エチル溶液中より検知素子202を引き上げ、検知素子202が風乾された状態とする。この結果、多孔体の表面がガス選択透過膜221で覆われた検知素子202が得られる。
次に、上述した方法により作製した検知素子Q(検知素子202)を用いたオゾンガスの測定例について説明する。まず、検知素子Qとともに、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Rを用意する。ついで、検出対象の空気に晒す前に、検知素子Q,検知素子Rの反射率を測定する。ここで、以降では、反射率のマイナスlogをとったものを、検知素子の反射吸光度と定義する。
次に、オゾンガスが50ppb存在し、二酸化窒素ガスがppb以下でしか存在しない検出対象の空気中に、検知素子Q,検知素子Rが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子Q,検知素子Rの反射吸光度を再度測定する。次に、10時間晒された検知素子Q,検知素子Rが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子Q,検知素子Rの反射吸光度を再々度測定する。
上述した3回の反射吸光度の測定の結果を図19に示す。図19には、インジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である610nmにおける吸光度の変化を示す。検知素子Q,検知素子Rの場合、検知剤の担体が紙であり、色の変化を反射で測定しているため、吸収極大波長が610nm程度となる。なお、図19においては、黒四角が、検知素子Qの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Rの結果を示している。
検知素子Q,検知素子Rともに、オゾンに晒すことによりオゾン積算値500ppb×hourで反射吸光度が0.022減少している。このように、ガス選択透過膜で覆われている検知素子Qにおいても、被膜のない検知素子Rと同様に、オゾンに反応して吸光度が減少し、大気レベルのオゾン(約10〜120ppb)の検出が可能である。また、2回目より3回目の方が反射吸光度が小さく、蓄積的な使用(測定)が可能であることが示されている。
次に、新たな検知素子Q及び検知素子Rを用意し、検出対象の空気に晒す前に、検知素子Q,検知素子Rの反射吸光度を測定する。ついで、50ppbの濃度のオゾンが存在し、かつ二酸化窒素が100ppb存在する検出対象の空気中に、検知素子Q及び検知素子Rが10時間晒された状態とする。検出対象の空気中に10時間晒した後、検知素子Q,検知素子Rの反射吸光度を再度測定する。
次に、10時間晒した検知素子Q,検知素子Rが、検出対象の空気中に更に10時間晒された状態とする。このように、検出対象の空気中に再度10時間晒した後、検知素子Q,検知素子Rの反射吸光度を再々度測定する。上述した3回の反射吸光度の測定(吸光光度分析)結果を図20に示す。図20には、インジゴカルミン2ナトリウム塩の可視領域における吸収極大の波長である610nmにおける吸光度の変化を示す。黒四角が、検知素子Qの結果を示し、黒丸が、ガス選択透過膜が形成されていない検知素子Rの結果を示している。
検知素子Q,検知素子Rともにオゾンに晒すことにより吸光度が減少しているが、減少量はオゾン積算値500ppb×hourで、検知素子Qでは0.022、検知素子Rでは0.026となる。このように、検知素子Rでは、図19に示した結果に比較して吸光度の減少量が増加する。これは、検出対象に同時に含まれている二酸化窒素ガスの影響によるものである。この場合の、二酸化窒素のオゾンに対する相対感度は0.1である。これに対し、検知素子Qでは、図19の場合と差がない。
このように、検知素子Qでは、二酸化窒素ガスの影響をほとんど受けていないことがわかる。以上に示したように、検知素子Qによれば、測定対象雰囲気に存在する二酸化窒素が、多孔体であるセルロース濾紙を覆っているガス選択透過膜により、ほぼ侵入しない状態となり、二酸化窒素の妨害が抑制された状態で、より高感度なオゾンの検出が可能となっている。
なお、上述では、セルロース濾紙を例に説明したが、これに限るものではない。例えば、ナイロンやポリエステルなどの他の繊維より構成されたシート状のもの(不織布など)であっても、多孔体として用いることが可能である。また、上述したように反射の状態の変化を見る場合、検知剤の単体となる多孔体は、白色であることが好適であるが、これに限るものではない。インジゴカルミンなどインジゴ環を有する色素で染色された状態の色の変化が確認可能であれば、他の色の状態であってもよい。
[4]
次に、オゾンガスの検知素子として、セルロースなどの繊維より構成されたシート状の多孔体から構成されオゾン検知シートについて説明する。
図21A〜図21Hは、本発明の実施の形態に係るオゾン検知シートの作製状況を説明する説明図である。図21A〜図21Hにおいて、2101は容器であり、容器2101内では、オゾンを検知するための後述する検知溶液(検知剤溶液)2102a,2102b,2102c,2102dが各々作製される。容器2101内の各検知溶液2102a,2102b,2102c,2102d中に後述のセルロース濾紙2103を所定時間浸すことにより、セルロース濾紙2103が、各々検知溶液2102a,2102b,2102c,2102dを含んだシート状のオゾン検知シート2103a,2103b,2103c,2103dとして作製される。
まず、図21Aのように、容器2101内に、0.1gのインジゴカルミンと、酸としての3.0gの酢酸と、保湿剤としての15gのグリセリンとを入れ、これらに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、検知溶液2102aを作製する。
検知溶液2102aに、アドバンテック製のセルロース濾紙(No.2)2103を1秒間含浸させて取り出した後、風乾させることにより、セルロース濾紙2103に含まれている水分を蒸発させる。これにより、図21Bに示す藍色のオゾン検知シート2103aが出来上がる。セルロース濾紙は、平均孔径が0.1〜1μm程度の複数の微細な孔を備えた多孔体である。
また、図21Cのように、容器2101内に、0.1gのインジゴカルミンと、酸としての7.5gの酒石酸と、保湿剤としての15gのグリセリンとを入れ、これらに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、検知溶液2102bを作製する。
溶液2102bに、アドバンテック製のセルロース濾紙2103を1秒間含浸させて取り出した後、風乾させることによりセルロース濾紙2103に含まれている水分を蒸発させる。これにより、図21Dに示す藍色のオゾン検知シート2103bが出来上がる。
また、図21Eのように、容器2101内に、0.1gのインジゴカルミンと、緩衝溶液としての0.556gの酢酸及び0.1gの酢酸ナトリウム三水和物と、保湿剤としての15gのグリセリンとを入れ、これらに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、検知溶液2102cを作製する。
なお、本実施の形態に係るオゾン検知シートでは、緩衝溶液として、pHの値を1から4の範囲、好ましくは2から4の範囲、更に好ましくは3から4の範囲に一定に保持する機能である緩衝作用を有する緩衝溶液を用いることが望ましい。ここで、前述の検知溶液2102cに含まれる緩衝溶液、すなわち、「0.556gの酢酸及び0.1gの酢酸ナトリウム三水和物」はpHの値を3.6に保つ緩衝作用を有し、また、後述の検知溶液2102dに含まれる緩衝溶液はpHの値を2.1に保つ緩衝作用を有する。更に、緩衝溶液として0.492gの酢酸と0.24gの酢酸ナトリウム三水和物を用いれば、この緩衝溶液はpHの値を4に保つ緩衝作用を有し、緩衝溶液として0.2mol/lの塩化カリウム12.5mlと0.2mol/lの塩酸33.5mlを用いれば、この緩衝溶液はpHの値を1に保つ緩衝作用を有する。なお、pH1からpH4に緩衝作用がある緩衝溶液として酒石酸と酒石酸ナトリウムを用いることも可能である。
こうしたpHの値を一定値3.6に保つ緩衝作用を有する緩衝溶液を含む検知溶液2102cに、アドバンテック製のセルロース濾紙2103を1秒間含浸させて取り出した後、風乾させることによりセルロース濾紙2103に含まれている水分を蒸発させる。これにより、図21Fに示す藍色のオゾン検知シート2103cが出来上がる。
また、図21Gのように、容器2101内に、0.1gのインジゴカルミンと、緩衝溶液としての0.119mlのリン酸及び0.27gのリン酸二水素ナトリウムと、保湿剤としての10gのグリセリンとを入れ、これらに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、検知溶液2102dを作製する。
pHの値を前述の一定値2.1に保つ緩衝作用を有する緩衝溶液を含む検知溶液2102dに、アドバンテック製のセルロース濾紙2103を1秒間含浸させて取り出した後、風乾させることにより、セルロース濾紙2103に含まれている水分を蒸発させる。これにより、図21Hに示す藍色のオゾン検知シート2103dが出来上がる。
ここで、比較例として、0.1gのインジゴカルミンに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、比較検知溶液No.1を作製する。
作製された比較検知溶液No.1に、アドバンテック製のセルロース濾紙を1秒間含浸させて取り出した後、風乾させることによりセルロース濾紙に含まれている水分を蒸発させる。これにより、藍色の比較オゾン検知シートNo.1が出来上がる。
このようにして作製したオゾン検知シート2103a〜2103d及び比較オゾン検知シートNo.1について、各々下記の表1に示す条件下でオゾンガスに晒し、変色性について肉眼で観察した。ここで、表1中の「○」は変色が容易に観察できる場合を示し、「×」は変色が容易に確認できない場合を示している。
表1の結果より、オゾン検知シート2103a〜2103dでは、オゾン濃度が0.035ppmと低い濃度であっても、確実に検知できることがわかる。更に、オゾン検知シート2103a〜2103dを0.035ppmと低い濃度のオゾン下に晒した時に、12時間晒した場合と24時間晒した場合とでは明らかに色の違いを見分けることができるため、個人がオゾン検知シート2103a〜2103dを1日間携帯した場合、色の様子からだいたいのオゾンの被爆量を推定することができる。
被検ガス中のオゾンは、オゾン検知シート2103a〜2103dのグリセリンが保持しているグリセリン(保湿剤)もしくはグリセリンが保持している水分に取り込まれ、その後、インジゴ環を有する色素のC=C2重結合を分解する反応を引き起こす。色素分子の構造と電子状態が変化して可視領域の600nm付近の吸収が変化し、オゾン検知シート2103a〜2103dの藍色は薄くなる(退色反応)。
一方、インジゴ色素の分解によって生じた分解生成物は可視領域の400nm付近に吸収を持つため、オゾン検知シート2103a〜2103dは黄色に変色し始める(発色反応)。
このように、図21A〜図21Hを用いて説明したオゾン検知シートによると、退色反応と発色反応とが同時に起こるため、目視による色の変化がより鮮明になる。
ここで、グリセリンが無い場合は、オゾンの取り込まれる量が極端に少なくなるため、目視では変色を観察できなくなる。ただし、この場合、反射の吸光光度法などの方法を用いると、退色の測定は可能であり、長時間、高濃度(ppmオーダ)のオゾンガスの検出には適用可能である。
なお、上述では、被検ガスを強制的に通過させなかったが、ポンプなどを用いて強制的に被検ガスを通過させることにより、更に短い時間におけるオゾンの積算量を測定することが可能であることは明らかである。また、使用したセルロース濾紙の裏側に接着剤を塗布することにより、オゾン検出シールとして用いることも可能である。このように、図21A〜図21Hを用いて説明したオゾン検知シートによれば、安価なセルロース濾紙を用いてオゾンガスの検出素子が実現できる。また、このオゾン検知シートにおいても、前述した選択透過膜を設け、二酸化窒素の侵入を防ぐようにしてもよい。また、選択透過膜を設けることで、オゾン検知シートからの検知剤の離脱が防げるようになる。例えば、オゾン検知シートが、水溶液などに接触すると、オゾン検知シートに担持されている検知剤が溶出してしまう。これに対し、選択透過膜を備えることで、オゾン検知シートが水溶液などの液体に接触することが防がれ、検知剤の溶出が防げるようになる。
[5]
次に、本発明の実施の形態に係る他のオゾン検知シートについて説明する。図22A〜図22Dは本発明の実施の形態に係る他のオゾン検知シートの作製状況を説明する説明図である。図22において、2201は容器であり、容器2201内では、オゾンを検知するための後述する検知溶液(検知剤溶液)2202aが作製される。容器2201内の各検知溶液2202a中に後述のセルロース濾紙2203を所定時間浸すことにより、セルロース濾紙2203が検知溶液2202aを含んだシート状のオゾン検知シート2203aとして作製される。
まず、図22Aのように、容器2201内に、0.06gのインジゴカルミンと、保湿剤としての10gのグリセリンとを入れ、これらに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、検知溶液2202aを作製する。
作製された検知溶液2202aに、アドバンテック製のセルロース濾紙(No.2)2203を10秒間含浸させて取り出した後、風乾させることにより、セルロース濾紙2203に含まれている水分を蒸発させる。これにより、図22Bに示す藍色のオゾン検知シート2203aが出来上がる。セルロース濾紙は、平均孔径が0.1〜1μm程度の複数の微細な孔を備えた多孔体である。
また、比較例として、図22Cのように、容器2201内に、0.06gのインジゴカルミンを入れ、このインジゴカルミンに水を加えて50mlとすることにより、インジゴカルミンを溶解させて調整し、検知溶液2002bを作製する。
作製された検知溶液2202bに、アドバンテック製のセルロース濾紙2203を10秒間含浸させて取り出した後、風乾させることにより、セルロース濾紙2203に含まれている水分を蒸発させる。これにより、図22Dに示す藍色のオゾン検知シート2203bが出来上がる。
このようにして作製したオゾン検知シート2203a,オゾン検知シート2203bについて、それぞれ下記の表2に示す条件下でオゾンガスに晒し、変色性について肉眼で観察した。ここで、表2中の「○」は変色が容易に観察できる場合を示し、「×」は変色が容易に確認できない場合を示している。
表2の結果より、オゾン検知シート2203aでは、オゾン濃度が0.035ppmと低い濃度であっても、確実に検知できることがわかる。更に、オゾン検知シート2203aを0.035ppmと低い濃度のオゾン下に晒した時に、12時間晒した場合と24時間晒した場合とでは明らかに色の違いを見分けることができるため、個人がオゾン検知シート2203aを1日間携帯した場合、色の様子からおおよそのオゾンの被爆量を推定することができる。
被検ガス中のオゾンは、オゾン検知シート2203aのグリセリン(保湿剤)もしくはグリセリンが保持している水分に取り込まれ、この後、インジゴ環を有する色素のC=C2重結合を分解する反応を引き起こす。この分解反応によってオゾン検知シート2203aの色素分子の構造と電子状態が変化し、可視領域である波長600nm付近の領域(藍色領域)において光吸収の度合いが減少し、オゾン検知シート2203aの藍色は薄くなる(退色反応)。
一方、インジゴ色素の分解によって生じた分解生成物は可視領域である400nm付近の領域(黄色領域)に光吸収領域を持つため、オゾン検知シート2203aは黄色に変色し始める(発色反応)。
このように、上述したオゾン検知シートによると、退色反応と発色反応とが同時に起こるため、目視による色の変化がより鮮明になる。
ここで、グリセリンが無い場合、すなわち、オゾン検知シート2203bの場合は、オゾンの取り込まれる量が極端に少なくなるため、目視では変色を観察できなくなる。ただし、この場合、反射の吸光光度法などの方法を用いると、退色の測定は可能であり、長時間、高濃度(ppmオーダ)のオゾンガスの検出(検知)には適用可能である。
なお、本実施の形態では、被検ガスを強制的に通過させなかったが、ポンプなどを用いて強制的に被検ガスを通過させることにより、更に短い時間におけるオゾンの積算量を測定することが可能であることは明らかである。
また、使用したセルロース濾紙2203の裏側に接着剤を塗布することにより、オゾン検出シールとして用いることも可能である。
このように、図22A〜図22Dを用いて説明したオゾン検知シートによれば、安価なセルロース濾紙を用いてオゾンガスの検知素子が実現できる。
[6]
次に、本発明の実施の形態に係る他のオゾン検知シートについて説明する。図23A〜図23Dは、本発明の実施の形態に係るオゾンガスの検知素子としてのオゾン検知シートの製造方法例について説明する工程図である。まず、図23Aに示すように、検知溶液(検知剤溶液)2301が収容された容器2302を用意する。検知溶液2301は、インジゴカルミン(C16H8N2Na2O8S2)からなる色素と、酢酸(C2H4O2)からなる酸と、グリセリン(C3H8O3)からなる保湿剤とが溶解した水溶液であり、保湿剤の重量%が10〜50%の範囲とされたものである。検知溶液2301は、例えば、0.06gのインジゴカルミンと、3.0gの酢酸と、10gのグリセリンとを水に溶解させ、全量を50mlとしたものである。インジゴカルミンは、青色2号と呼ばれる酸性染料であり、検知溶液2301は、青〜青紫色を呈した水溶液となる。検知溶液2301の色は、目視による確認が可能である。また、検知溶液2301は、酸の添加により酸性とされている。
次に、図23Bに示すように、所定の寸法のシート状担体2303を用意する。シート状担体2303は、セルロースなどの繊維より構成されたシートであり、例えば、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のセルロース濾紙(No.2)である。従って、シート状担体2303は、平均孔径が0.1〜1μm程度の複数の微細な孔を備えた多孔体である。シート状担体2303は、例えば白色であればよい。ついで、用意したシート状担体2303を検知溶液2301に浸漬し、例えば30秒間浸漬してシート状担体2303に検知溶液を含浸させ、図23Cに示すように、検知溶液2301が含浸した含浸シート2304が形成された状態とする。この状態は、含浸シート2304は、染料であるインジゴカルミンにより染色された状態であるといえる。この後、含浸シート2304を検知溶液2301より引き上げ、乾燥窒素中で乾燥させることで含浸シート2304に含浸されている水分を蒸発させて乾燥させ、図23Dに示すように、オゾン検知シート2305が形成された状態とする。従って、オゾン検知シート2305は、オゾンガスと反応して可視領域の吸収が変化する色素であるインジゴカルミンを含む検知剤が、多孔体であるシート状担体2303の孔内に配置されている状態となる。得られたオゾン検知シート2305は、藍色(青色)を呈した(藍色に染色された)状態となり、この色は、目視による確認が可能である。
このようにして製造されたオゾン検知シート2305は、オゾンが存在する環境に晒すことで、晒している時間とともに藍色の濃度が徐々に薄くなり、最終的に薄い黄色を呈する状態に変化する。例えば、オゾン濃度が0.035ppmの環境にオゾン検知シート2305を晒しておくと、16時間経過すると、薄い黄色を呈した状態となる。このように、オゾン検知シート2305によれば、色の変化によりオゾンの検知が可能であり、また、蓄積的な検出が可能である。この色の変化は、インジゴ環を有する色素であるインジゴカルミンの、オゾンにより分解に応じた退色と、インジゴカルミンが分解されたことにより生成される分解生成物による発色(薄い黄色)とによるものである。
ここで、色素としては、インジゴカルミンに限らず、インジゴ,インジゴカルミン2ナトリウム塩,インジゴカルミン3カリウム塩,インジゴレッドなどのインジゴ環を有する色素(染料)を用いることができる。いずれの染料を用いる場合においても、染色直後の色からの色の変化により、オゾンの検知が可能である。また、用いる酸としては、酢酸に限らず、リン酸,クエン酸,酒石酸などが適用可能である。この酸は、検知溶液のpHを2〜4の範囲に保持するために用いるものであり、酸とこの塩とよりなるpH緩衝剤を用いるようにしてもよい。例えば、酢酸と酢酸ナトリウム酸水和物とによるpH緩衝剤を用いるようにしてもよい。また、リン酸とリン酸ナトリウムとによるpH緩衝剤を用いるようにしてもよい。また、クエン酸とクエン酸ナトリウムとによるpH緩衝剤を用いるようにしてもよい。同様に、酒石酸と酒石酸ナトリウムとによるpH緩衝を用いるようにしてもよい。
次に、保湿剤について説明する。保湿剤としては、前述したグリセリンに限るものではなく、エチレングリコール,プロピレングリコール,トリメチレングリコールなどを用いることができる。また、前述した色素が溶解する他の保湿剤であってもよい。図23A〜図23Dに示した製造方法により形成されたオゾン検知シート2305では、保湿剤が含まれていることにより、オゾン検知シート2305における色素とオゾンとの反応が促進されるものと考えられる。オゾン検知シート2305が晒された空気に含まれているオゾンは、オゾン検知シート2305に担持されているグリセリンに取り込まれる。言い換えると、オゾン検知シート2305に担持されているグリセリンに、空気中に含まれているオゾンが溶解する。なお、グリセリンが保持している水分にもオゾンは取り込まれる。
このようにして取り込まれたオゾンは、このグリセリンに溶解しているインジゴカルミン(インジゴ環を有する色素)のC=C2重結合を分解する反応を引き起こす。この結果、色素分子の構造と電子状態が変化し、波長600nm付近の吸収が変化し、インジゴカルミンによる発色(藍色)が薄くなる。また、上記オゾンによる分解で生成された分解生成物は、波長400nm付近に吸収を持つため、色素が分解されたオゾン検知シート2305では、藍色が消滅し、薄い黄色を呈する状態に変化する。このように、オゾン検知シート2305によれば、オゾンによる色素の退色と、色素の分解による新たな色の発生とが起こるため、色の変化が目視により容易に視認可能となっている。なお、グリセリンが保持している水分中にもインジゴカルミン(色素)は溶解しているため、この色素とも、グリセリンが保持している水分に溶解したオゾンは、上記同様の反応を引き起こす。
また、図23A〜図23Dに示した製造方法によるオゾン検知シート2305によれば、重量%が10〜50%の範囲とされた保湿剤が含まれている検知溶液2301を含浸させて形成されていることにより、前述した、オゾンの存在による色の変化(オゾンの検知能力)が、より効果的に発現されるものとなる。この、保湿剤の量と、オゾンの存在によるオゾン検知シートの色の変化との関係について以下に説明する。以下では、検知溶液2301における保湿剤の量(含有量)を変えて作製した複数のサンプル(オゾン検知シート)による比較について説明する。
まず、インジゴカルミン0.06g,酢酸3.0g,グリセリン10g(20%)を水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Aを作製し、この検知溶液Aにより前述同様にオゾン検知シートAを作製する。オゾン検知シートAは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06g,酢酸3.0g,グリセリン25g(50%)を水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Bを作製し、この検知溶液Bにより前述同様にオゾン検知シートBを作製する。オゾン検知シートBは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06g,酢酸3.0g,グリセリン15g(30%)を水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Cを作製し、この検知溶液Cにより前述同様にオゾン検知シートCを作製する。オゾン検知シートCは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06g,クエン酸1水和物3.5g,グリセリン10g(20%)を水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Dを作製し、この検知溶液Dにより前述同様にオゾン検知シートDを作製する。オゾン検知シートDは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06g,酢酸0.556g及び酢酸ナトリウム3水和物0.1gからなるpH緩衝剤,グリセリン15g(30%)を水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Eを作製し、この検知溶液Eにより前述同様にオゾン検知シートEを作製する。オゾン検知シートEは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06gを水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Fを作製し、この検知溶液Fにより前述同様にオゾン検知シートFを作製する。これは、酸及び保湿剤が添加されていないサンプルである。オゾン検知シートFは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06g,酢酸3.0gを水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Gを作製し、この検知溶液Gにより前述同様にオゾン検知シートGを作製する。これは、保湿剤が添加されていないサンプルである。オゾン検知シートGは、藍色を呈した状態に形成される。
また、インジゴカルミン0.06g,酢酸3.0g,グリセリン5g(10%)を水に溶解させて全量を50gとした検知溶液Hを作製し、この検知溶液Hにより前述同様にオゾン検知シートHを作製する。これは、検知溶液における保湿剤の重量%が20%より小さい状態(10%)のサンプルである。オゾン検知シートHは、藍色を呈した状態に形成される。
上述した各サンプル(オゾン検知シートA,B,C,D,E,F,G,H)について、各々、以下の表3に示す条件において被検出対象の空気に晒し、各オゾン検知シートの色の変化を目視により観察する。色の変化の観察では、インジゴカルミンが光吸収を示す波長610nm付近の光吸収強度が、5段階に変化しているカラーチャートを用意し、このカラーチャートとの比較により、各オゾン検知シートにおける色の変化を、5段階で評価する。この評価では、評価結果「1」は、色の変化が観察されない場合を示す。また、評価結果「2」,「3」,「4」は、この順に、藍色の濃度が薄く観察された場合を示す。また、評価結果「5」は、変化後のオゾン検知シートの色が、カラーチャートのいずれとも一致せず、薄い黄色を呈している状態に観察された場合を示す。また、4段階のカラーチャートとの比較において、各段階の中間に観察される場合、例えば、「2」と「3」との中間に観察される場合は、評価結果を「2.5」とする。
表3に示す結果より、オゾン検知シートA,B,C,D,Eでは、オゾン濃度が0.03ppmと低くても、24時間晒すと、評価結果が「4」から「5」の範囲となり、オゾン検知シートの藍色の濃度がほぼなくなり、また薄い黄色になることが確認されている。また、オゾン検知シートA,B,C,D,Eでは、労働衛生許容濃度の8割に当たる0.08ppmのオゾン濃度において、4時間晒した状態でも、評価結果が「2.5」から「3」の範囲となっている。従って、オゾン濃度0.08ppmの状態を検知したオンオゾン検知シートの色の変化が、目視により識別可能であることがわかる。また、8時間晒した場合と4時間晒した場合とで、異なる評価結果となっており、8時間晒した場合と4時間晒した場合との違いも、目視で区別可能となっている。従って、オゾン検知シートを労働時間である8時間もしくは1日携帯した場合、オゾン検知シートの色の変化から、おおよそのオゾン暴露量が推定可能である。
これらオゾン検知シートA,B,C,D,Eによる結果に対し、グリセリン(保湿剤)を用いていないオゾン検知シートF,Gでは、表3の結果から明らかなように、オゾンが含まれている空気に晒しても、目視で確認可能な範囲では、オゾン検知シートの色の変化は観察されない。この結果からも明らかなように、保湿剤を用いていない場合は、オゾンの検知があまりできない。特に、目視によるオゾン検出は、保湿剤を用いていないオゾン検知シートでは行えない。これは、保持されている水(水分)に溶解している色素とオゾンとの反応より、保湿剤に溶解している色素とオゾンとの反応の方が、多いためと考えられる。
また、検知溶液におけるグリセリンの濃度が10%と低い場合のオゾン検知シートHでは、表3に示す範囲では、あまり色の変化が観察されていない。これは、保湿剤の量が少ないと保持される水分の量が少なく、オゾンの吸着も減少するためと考えられる。この状態では、変化の確認が、目視では容易ではない。ただし、オゾン検知シートHにおいても、反射の吸光光度計(分光光度計)により測定するなどの方法を用いれば、色の変化を検出することは容易であり、また、長時間、高濃度(数ppmオーダ)のオゾンガスの検出には適用可能である。
これに対し、表3に示した結果より、オゾン検知シートC及びオゾン検知シートEが、最も顕著に色の変化が観察されており、この結果から、グリセリンを保湿剤に用いる場合は、グリセリンの量は30%が最適であるものと考えられる。また、検知溶液における保湿剤の濃度が50%を超えると、シート状担体に対して検知溶液を均一に含浸させること、言い換えると、色素を均一に染色させることが困難となる。検知溶液が均一に含浸されていないオゾン検知シートでは、オゾンとの反応による色の変化がまだらとなり、目視による正確な認識が困難となる。また、保湿剤の濃度が高すぎると、相対的に色素の存在割合が低下するため、オゾン検出感度の低下を招くようになる。
以上のこととまとめると、オゾン検知シート2305を目視レベルで確認可能なオゾンの検知に用いる場合、検知溶液における保湿剤の割合が、20〜50%の範囲であればよいことがわかる。なお、これは、酢酸により酸性としている場合であり、以降に説明するように、クエン酸により酸性としている場合は、保湿剤の割合が10〜50%の範囲であればよい。また、保湿剤としてグリセリンを用いる場合、検知溶液における保湿剤の割合は、30%程度とすることが最も好適である。
ところで、文献4に提案されている多孔体ガラスをシート状担体の代わりの担体(多孔体)として用いた場合、グリセリンを用いることによる反応量の差は2倍以上観察されない。多孔体ガラスを用いる場合、孔内のガラス表面に水が存在し、この水を媒体とした色素とオゾンとの反応が支配的となるため、グリセリンなどの前述した保湿剤を用いることによる効果があまり得られないものと考えられる。
なお、上述では、オゾン検知シートに対して被検ガスを強制的に通過させてはいないが、ポンプなどを用いて強制的に被検ガスを通過させるようにしてもよい。このようにすることで、より短い時間でオゾンの積算量を測定することができる。また、オゾン検知シートのいずれの面に接着剤を塗布することで、オゾン検知シールとして用いることも可能である。
また、上述では、多孔体よりなるシート状担体として濾紙を用いるようにしたが、これに限るものではない。通常の紙などの、セルロースの繊維より構成されたシート状のものであれば、シート状担体として利用可能である。また、セルロースに限らず、ナイロンやポリエステルなどの他の繊維より構成されたシート状のもの(不織布など)であっても、シート状担体として利用可能である。また、シート状担体は、白色であることが好適であるが、これに限るものではない。インジゴカルミンなどインジゴ環を有する色素で染色された状態の色の変化が確認可能であれば、他の色の状態であってもよい。
[7]
次に、本発明の実施の形態に係る他のオゾン検知シートについて説明する。以下では、保湿剤の量によりオゾン検知シートの感度を調整することについて説明する。なお、以下では、図23A〜図23Dを用いて説明した製造方法によりオゾン検知シートを形成し、検知溶液における保湿剤の量(含有量)とオゾンの検知状態との関係、検知溶液に用いた酸とオゾンの検知状態との関係、及び用いた保湿剤とオゾンの検知状態との関係を調査した結果について示す。
調査の対象とした保湿剤は、グリセリン,エチレングリコール,及びプロピレングリコールである。また、用いた酸は、酢酸、クエン酸,酒石酸である。いずれの場合も、色素には、インジゴカルミンを用いる。形成されるオゾン検知シートは、薄い青を呈した状態に形成される。なお、作製直後のオゾン検知シートの色は、分光光度計(日立分光光度計U−4100型)により反射分光を測定すると、図24に示すような特性となる。また、検知対象としては、オゾンガスが80ppb存在する空気とし、この検知対象の空気中に作製したオゾン検知シートを4時間晒す。
まず、図25は、酸として酢酸を用い、保湿剤としてのグリセリンの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した6つのオゾン検知シートと、グリセリンを用いずに作製したオゾン検知シートとの結果である。また、図26は、酸としてクエン酸を用い、グリセリンの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した6つのオゾン検知シートと、グリセリンを用いずに作製したオゾン検知シートとの結果である。また、図27は、酸として酒石酸を用い、グリセリンの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した5つのオゾン検知シートと、グリセリンを用いずに作製したオゾン検知シートとの結果である。
次に、図28は、酸として酢酸を用い、保湿剤としてのエチレングリコールの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した6つのオゾン検知シートと、エチレングリコールを用いずに作製したオゾン検知シートとの結果である。また、図29は、酸としてクエン酸を用い、保湿剤としてのエチレングリコールの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した6つのオゾン検知シートと、エチレングリコールを用いずに作製したオゾン検知シートとの結果である。
次に、図30は、酸として酢酸を用い、保湿剤としてのプロピレングリコールの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した6つのオゾン検知シートとの結果である。また、図31は、酸としてクエンを用い、保湿剤としてのプロピレングリコールの含有量を変化させた検知溶液を用いて作製した6つのオゾン検知シートと、プロピレングリコールを用いずに作製したオゾン検知シートとの結果である。なお、図25〜図31のいずれも、分光光度計(日立分光光度計U−4100型)により反射分光を測定した結果であり、検知対象の空気中に晒す前と晒した後との波長610nmにおける吸光度の差を示している。
まず、図25〜図31の結果より、オゾン検知シートを作製するときに用いた検知溶液における保湿剤の量により、作製されたオゾン検知シートにおける単位時間あたりの変化が大きくなることがわかる。この中で、まず、保湿剤としてグリセリンを用いる場合、グリセリン含有量が〜30%の範囲で、グリセリンの含有量が増えるほど単位時間あたりの変化が大きくなる。また、保湿剤としてエチレングリコールを用いる場合、エチレングリコールの含有量が〜50%の範囲で、エチレングリコールの含有量が増えるほど単位時間あたりの変化が大きくなる。
また、保湿剤としてプロピレングリコールを用いる場合、酢酸の場合とクエン酸の場合とで変化が異なる。保湿剤としてプロピレングリコールを用いる場合、酢酸で酸性とすると、プロピレングリコールの含有量が〜50%の範囲で、プロピレングリコールの含有量が増えるほど単位時間あたりの変化が大きくなる。一方、保湿剤としてプロピレングリコールを用いる場合、クエン酸で酸性とすると、プロピレングリコールの含有量が〜40%の範囲で、プロピレングリコールの含有量が増えるほど単位時間あたりの変化が大きくなる。ただし、クエン酸を用いた場合の方が、変化が大きくなる。
以上に示したことから明らかなように、保湿剤の含有量を変化させることで、同量のオゾンが含まれている空気に晒した単位時間あたりの色の変化量を変化させることができる。単位時間あたりの色の変化が大きいほど、感度が高いといえ、単位時間あたりの色の変化が少ないほど感度が低いといえる。従って、利用用途に応じ、保湿剤の含有量を調整することで、オゾン検知シートの感度を調整することができる。また、図26に示す結果より、クエン酸を用いて酸性とした場合、グリセリンの含有量(重量%)が10%でも、目視レベルで十分可能な変化が得られていることがわかる。従って、クエン酸を用いれば、検知溶液における保湿剤の割合が10〜50%の範囲であれば、オゾン検知シートを目視レベルで確認可能なオゾンの検知に用いることが可能である。
[8]
次に、本発明の実施の形態に係る他のオゾンガスの検知素子について説明する。図32は、本発明の実施の形態における他のオゾンガスの検知素子の構成例を示す構成図である。図32では、断面を模式的に示している。図32に示すオゾンガスの検知素子は、図23A〜図23Dを用いて説明したオゾン検知シート2305と同様のオゾン検知シート3201と、この表面に配置されたガス量制限層3202とから構成されたものである。
ガス量制限層3202は、例えば、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のPTFEメンブレンフィルタなどの貫通する複数の孔を備えた透光性を有する多孔体膜である。図32に示すオゾンガスの検知素子によれば、ガス量制限層3202が配置されているため、検出対象の空気のオゾン検知シート3201に到達する量が制限されるようになる。この結果、測定環境において発生する風の影響を受けにくくなる。
例えば、大きな風速の風が発生している測定環境と、あまり風の発生していない測定環境では、同一のオゾン存在量であっても、単独のオゾン検知シート3201では、異なる検出結果となる。大きな風速の風が発生している測定環境(オゾンが存在している)では、オゾン検知シート3201がより短時間で変色する。これに対し、ガス量制限層3202を設けることで、存在しているオゾン量が一定であれば、風速の大小にかかわらず、オゾン検知シート3201の色の変化は同様となる。
以下、ガス量制限層3202の有無を比較した結果について説明する。
はじめにオゾン検知シートの作製について説明すると、まず、0.06gのインジゴカルミンと、3.0gの酢酸と、15gのグリセリン(保湿剤)とを水に溶解させ、全量を50mlとした検知溶液を用意する。次に、所定の寸法のシート状担体(セルロース濾紙)を用意し、用意したシート状担体を上記検知溶液に浸漬し、例えば30秒間浸漬してシート状担体に検知溶液を含浸させる。この後、シート状担体を検知溶液より引き上げ、乾燥窒素中で乾燥させることで含浸されている水分を蒸発させて乾燥させ、オゾン検知シート3201が形成された状態とする。
このようにして作製したオゾン検知シート3201の表面に、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のPTFEメンブレンフィルタ(平均孔径0.2μm,厚さ50μm)よりなるガス量制限層3202を配置し、サンプルAとする。
また、オゾン検知シート3201の表面に、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のPTFEメンブレンフィルタ(平均孔径0.8μm,厚さ75μm)よりなるガス量制限層3202を配置し、サンプルBとする。
また、オゾン検知シート3201の表面に、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のPTFEメンブレンフィルタ(平均孔径3.0μm,厚さ75μm)よりなるガス量制限層3202を配置し、サンプルCとする。
また、オゾン検知シート3201のみとしたものをサンプルDとする。
上述した各サンプルA〜Dについて、各々以下の表4に示す条件において被検出対象の空気に晒し、各サンプルの色の変化を目視により観察する。なお、表4において、「○」は、変色の程度が同等と観察された場合を示し、「×」は、変色の程度が同等とは観察されない場合を示している。
表4に示す結果より、サンプルA,B,Cでは、測定環境における風速が2m/secの場合と7m/secの場合とで、観察された色の変化は同等であった。これらに対し、サンプルDでは、測定環境における風速が7m/secの場合、変色の度合いが明らかに大きく、より多くのオゾンを検出している状態に観察された。これらの結果より、ガス量制限層3202を設けることで、測定環境における風速の影響が抑制できるようになる。なお、上述では、ガス量制限層3202を透光性のない多孔体膜から構成するようにし、裏面に透明プラスチックを用いて裏面から色の確認をするようにしたが、これに限るものではない。例えば、ガス量制限層3202とオゾン検知シート3201とが容易に着脱可能なものであればよい。ガス量制限層3202が着脱可能であれば、ガス量制限層3202を取り外すことで、オゾン検知シート3201の変色の状態が観察可能である。
[9]
次に、本発明の実施の形態に係る他のオゾンガスの検知素子について説明する。図33は、本発明の実施の形態における他のオゾンガスの検知素子の構成例を示す斜視図である。また、図34は、図33におけるXX’線における断面を示す断面図である。図33及び図34に示すオゾンガスの検知素子は、図23A〜図23Dを用いて説明したオゾン検知シート2305と同様のオゾン検知シート3301と、これを覆うように配置されたガス量制限カバー3302とから構成されたものである。オゾン検知シート3301は、基板3303の上に固定され、また、ガス量制限カバー3302も基板3303の上に固定されている。また、例えば、0.06gのインジゴカルミンと、3.0gの酢酸と、20gのグリセリンとを水に溶解させて全量を50mlとした検知溶液に、2cm×2cmとされたセルロース濾紙を浸漬して検知溶液をセルロース濾紙に含浸させ、かつ乾燥させることで、オゾン検知シート3301は形成されている。
ガス量制限カバー3302は、対向する側面3321,側面3322と、これらに隣接する面に配置された開口部3323,開口部3324と、基板3303の平面に平行な上面3325とから構成された略直方体の構造体である。例えば、ガス量制限カバー3302は、図34に示す横方向が2cm,これに直行する方向が5cmである。言い換えると、上面3325は、2cm×5cmの長方形である。また、ガス量制限カバー3302は、開口部3323,開口部3324の開口高さが1mmとされている。従って、オゾン検知シート3301と上面3325とは、おおよそ1mmの間隔となっている。
また、ガス量制限カバー3302は、例えばガラスや透明なプラスチックなどの透光性を有する材料から構成されている。従って、ガス量制限カバー3302に覆われているオゾン検知シート3301は、上面3325側の外部より視認可能な状態とされている。なお、ガス量制限カバー3302と基板3303とが、着脱可能に取り付けられている場合、ガス量制限カバー3302は、透光性を有する必要はない。
このように構成されたガス量制限カバー3302が配置されているため、図33,図34に示すオゾンガスの検知素子は、検知対象の空気が、開口部3323,開口部3324よりガス量制限カバー3302の内部に侵入し、オゾン検知シート3301に接触することになる。このため、検知対象の空気は、オゾン検知シート3301の開口部3323,開口部3324側の端部より接触する。従って、検知対象の空気にオゾンが含まれていれば、オゾン検知シート3301は、開口部3323,開口部3324の端部より、変色が起こることになる。
例えば、5ppmのオゾンが含まれている大気中に、図33及び図34に示すオゾンガスの検知素子を1時間配置された状態とすると、オゾン検知シート3301は、開口部3323,開口部3324の端部より2mmの範囲まで、変色(脱色)が確認される。また、10ppbのオゾンが含まれている大気中に、図33及び図34に示すオゾンガスの検知素子を2160時間配置された状態とすると、オゾン検知シート3301は、開口部3323,開口部3324の端部より8mmの範囲まで、変色(脱色)が確認される。このように、ガス量制限カバー3302を設けることで、オゾン検知シート3301変色した領域の変化により、オゾンの積算量の検出が行える。
また、図33,図34に示すオゾンガスの検知装置において、開口部3323,開口部3324が、例えば、アドバンテック(東洋濾紙株式会社)製のPTFEメンブレンフィルタなどの貫通する複数の孔を備えた多孔体膜(ガス透過膜)により閉塞された状態としてもよい。例えば、上記メンブレンフィルタは、平均孔径3.0μm,厚さ75μmである。このような多孔体膜によりなるガス透過膜で開口部が覆われているようにすることで、検知対象の雰囲気における風の影響を抑制することができる。
例えば、5ppmのオゾンが含まれて風速1.5m/sの風が発生している大気中に、開口部にガス透過膜を設けた図33及び図34に示すオゾンガスの検知素子を1時間配置された状態とすると、オゾン検知シート3301は、開口部3323,開口部3324の端部より2mmの範囲まで、変色(脱色)が確認される。また、10ppbのオゾンが含まれて風速1.5m/sの風が発生しているいる大気中に、開口部にガス透過膜を設けた図33及び図34に示すオゾンガスの検知素子を2160時間配置された状態とすると、オゾン検知シート3301は、開口部3323,開口部3324の端部より8mmの範囲まで、変色(脱色)が確認される。
これらの結果は、前述した結果と同様であり、ガス透過膜により風の影響が抑制されていることがわかる。また、開口部3323,開口部3324がガス透過膜により閉塞されている(蓋がされている)ようにすることで、ガス量制限カバー3302への水などの溶液(液体)の侵入が防げるようになり、オゾン検知シート3301に対する液体の接触が防げるようになる。特に、四フッ化エチレン樹脂などの撥水性を有するフッ素樹脂よりガス透過膜が構成されているようにすることで、水などの液体の侵入防止がより効果的に行える。ガス透過膜は、平均孔径が0.1〜2μm,厚さ35〜200μmの範囲であれば、オゾンは透過し液体の侵入は防げる。
ところで、上述では、ガス量制限カバーの側面に開口部を設けるようにしたが、これに限るものではない。例えば、図35及び図36に示すように、上面の中央部に開口部3521を備えたガス量制限カバー3502を用いるようにしてもよい。ガス量制限カバー3502は、すべての側面が塞がれている。このように構成されたガス量制限カバー3502によれば、検知対象の空気は、開口部3521よりガス量制限カバー3502の内部に侵入し、オゾン検知シート3301に接触することになる。このため、検知対象の空気は、オゾン検知シート3301の開口部3521下の中央部より接触する。従って、検知対象の空気にオゾンが含まれていれば、オゾン検知シート3301は、開口部3521の下の中央部より周囲に向けて、変色が起こることになる。また、本例においても、開口部3521が前述したガス透過膜により閉塞されて入れもよい。なお、上述では、オゾン検知シートは、検知溶液に含浸させることで作製したが、これに限るものではない。例えば、検知溶液の噴霧や、刷毛によるオゾン検知液の塗布、スクリーン印刷によるオゾン検知液の塗布などの方法によっても、前述同様のオゾン検知シートが容易に作成可能である。