JP2009061898A - 電動式パワーステアリング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】電動モータ7の出力軸10からウォーム減速機のウォーム8にトルク伝達を行なわせるスプライン係合部の隙間を確保したまま、この隙間の存在に起因する、回転方向のがたつき(相対回転)に伴う異音(歯打ち音)の発生を防止する。
【解決手段】スプライン軸部12の先端面とスプライン孔11の奥端面との間に、軸方向寸法を拡縮自在な弾性を有する弾性部材15を、軸方向に圧縮した状態で設ける。そして、この弾性部材15により、上記スプライン軸部12を設けた上記出力軸10と上記スプライン孔11を設けた上記ウォーム軸6との間に、相対回転に対する抵抗力(捩り剛性)を付与する事により、上記スプライン係合部の回転方向のがたつき(バックラッシュ)に伴う異音の発生を抑える。
【選択図】図1
【解決手段】スプライン軸部12の先端面とスプライン孔11の奥端面との間に、軸方向寸法を拡縮自在な弾性を有する弾性部材15を、軸方向に圧縮した状態で設ける。そして、この弾性部材15により、上記スプライン軸部12を設けた上記出力軸10と上記スプライン孔11を設けた上記ウォーム軸6との間に、相対回転に対する抵抗力(捩り剛性)を付与する事により、上記スプライン係合部の回転方向のがたつき(バックラッシュ)に伴う異音の発生を抑える。
【選択図】図1
Description
この発明に係る電動式パワーステアリング装置は、自動車の操舵装置として利用するもので、電動モータを補助動力源として利用する事により、運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図るものである。本発明は、この様な電動式パワーステアリング装置を構成する減速機のウォーム軸の基端部と、上記電動モータの出力軸の先端部との接続部に設けるトルク継手部で、回転方向のがたつきに伴う異音の発生を抑えるべく発明したものである。
操舵輪(フォークリフト等の特殊車両を除き、通常は前輪)に舵角を付与する際に運転者がステアリングホイールを操作する為に要する力の軽減を図る為の装置として、パワーステアリング装置が広く使用されている。又、この様なパワーステアリング装置で、補助動力源として電動モータを使用する電動式パワーステアリング装置も、近年普及し始めている。この様な電動式パワーステアリング装置の構造は、各種知られているが、何れの構造の場合でも、ステアリングホイールの操作によって回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸に電動モータの補助動力を、減速機を介して付与する。この減速機として一般的には、ウォーム減速機が使用されている。ウォーム減速機を使用した電動式パワーステアリング装置の場合、上記電動モータにより回転駆動されるウォームと、上記回転軸と共に回転するウォームホイールとを噛合させて、上記電動モータの補助動力をこの回転軸に伝達自在とする。
例えば特許文献1には、図3〜4に示す様な電動式パワーステアリング装置が記載されている。ステアリングホイール1により所定方向に回転させられる、回転軸であるステアリングシャフト2の前端部は、ハウジング3の内側に回転自在に支持しており、この部分にウォームホイール4を固定している。このウォームホイール4と噛合するウォーム歯5をウォーム軸6の軸方向中間部に設け、電動モータ7により回転駆動されるウォーム8の両端部は、深溝型玉軸受等の1対の転がり軸受9a、9bにより、上記ハウジング3内に回転自在に支持されている。
上記ウォーム8を上記電動モータ7の出力軸10により回転駆動する為に、上記ウォーム軸6の基端部にスプライン孔11を、このウォーム軸6の基端面に開口する状態で形成している。又、上記出力軸10の先端部にスプライン軸部12を形成している。そして、このスプライン軸部12と上記スプライン孔11とをスプライン係合させる事で、上記出力軸12と上記ウォーム軸6とを、回転力の伝達を自在に結合している。尚、本明細書で用いる「スプライン」には、ピッチの細かい、所謂「セレーション」と呼ばれるものも含むものとする。
更に、図4に示した従来構造の場合、上記ウォームホイール4と上記ウォーム歯5との噛合部のバックラッシュをなくす為に、上記ウォーム軸6の先端部(図4の右端部)を上記ウォームホイール4に向け弾性的に押圧する様にしている。即ち、上記ウォーム軸6の先端部で先端側の転がり軸受9aよりも突出した部分に押圧駒13を外嵌し、この押圧駒13と上記ハウジング3との間にコイルばね14等の弾性部材を設けている。そして、このコイルばね14により、上記押圧駒13を介して、上記ウォーム歯5を上記ウォームホイール4に向け押圧している。この様な構成により、これらウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑え、上記電動モータ7の回転方向の変換時に、上記ウォームホイール4と上記ウォーム歯5との噛合部での歯打ち音の発生を抑えている。
ところで、上述の様な図4に示した構造の場合、前記出力軸10と前記ウォーム軸6とのトルク継手部、即ち、前記スプライン孔11と前記スプライン軸部12とのスプライン係合部で、これらスプライン孔11とスプライン軸部12とを円周方向の隙間なく(バックラッシュ無しで)スプライン係合させる事ができれば、このスプライン係合部(トルク継手部)で回転方向のがたつきは生じない。但し、実際の場合には、このスプライン係合部にはバックラッシュが存在する。このスプライン係合部のバックラッシュは、上記スプライン孔11とスプライン軸部12とをスプライン係合させる作業を容易に行なえる様にする為に必要である。
又、上記出力軸10の中心軸と上記ウォーム軸6の中心軸とが僅かにずれた程度では、上記スプライン係合部にコジリが発生しない様にして、上記出力軸10を回転させる為に要するトルクが上昇する事を防止する為にも、上記バックラッシュは必要である。特に、前記コイルばね14等の弾性部材により上記ウォーム軸6に設けたウォーム歯5を前記ウォームホイール4に向け押圧して、これらウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを解消する構造の場合には、上記スプライン係合部のバックラッシュを設ける事は必須となる。この様なバックラッシュ、即ち、円周方向の隙間は、トルク継手部として上記スプライン係合部に代え、例えば断面小判形の如き非円形嵌合部等の、他の機構のトルク継手部を採用した場合にも同様に必要になる。
ところが、上記スプライン係合部にバックラッシュ(円周方向の隙間)が存在すると、即ち、上記出力軸10と上記ウォーム軸6との間に回転方向のがたつきがあると(出力軸10とウォーム軸6とが微小に相対回転可能であると)、このがたつきに基づきスプライン係合部で異音が発生する可能性がある。即ち、例えば電動モータ7が起動し始める瞬間や、その回転方向が変換される瞬間に、上記スプライン軸部12の外周面に設けられた雄スプライン歯の円周方向側面と、上記スプライン孔11の内周面に設けられた雌スプライン歯の円周方向側面とが勢い良く衝突し、歯打ち音と呼ばれる異音が発生する可能性がある。
この様な歯打ち音は、上記スプライン係合部のバックラッシュ(がたつき、相対回転量)が大きくなる程著しくなるので、従来は、このバックラッシュを、このスプライン係合部の組立が可能な範囲で、更には、上記ウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを解消できる範囲で、小さく抑える様にしていた。但し、上記スプライン係合部のバックラッシュを小さくすると、その分、上記スプライン軸部12を上記スプライン孔11に挿入しにくくなり、組立作業性が低下し、電動式パワーステアリング装置の製造コスト上昇の原因となる。又、上記出力軸10と上記ウォーム軸6との組み付け精度を高くしないと、上記コジリによるトルク上昇の問題が発生し易くなるので、やはり電動式パワーステアリング装置の製造コスト上昇の原因となる。
一方、特許文献2には、上述の様な電動式パワーステアリング装置の作動時の動作を安定させるべく、電動モータの出力軸とウォーム軸とが軸方向にがたつくのを防止する為の構造が記載されている。即ち、この特許文献2に記載された構造の場合には、出力軸とウォーム軸との間にOリングを、弾性的に圧縮した状態で挟持する。そして、これら出力軸とウォーム軸とに互いに離れる方向の弾力を付与し、これら出力軸とウォーム軸とが軸方向にがたつく事を防止する。但し、この様な特許文献2に記載された構造の場合には、上述した様な回転方向のがたつき(バックラッシュ)に伴う異音(歯打ち音)の発生を防止する事を意図してはいない。
即ち、上記特許文献2に記載された構造の場合は、上述の様に出力軸とウォーム軸との間にOリングを軸方向に圧縮した状態で挟持し、このOリングにより軸方向の弾性力を付与する。この様にOリングを軸方向に圧縮した状態で挟持した構造の場合、回転方向の抵抗力は、殆ど得られないか、仮に得られたとしても、摩擦力に基づく不安定なものとなる。従って、上記特許文献2に記載された様な、Oリングを組み込んだ構造では、上述の様な回転方向のがたつき(バックラッシュ)に伴う異音(歯打ち音)の発生を、長期間に亙り安定して防止する事はできない。
本発明は、上述の様な事情に鑑み、電動モータの出力軸とウォーム減速機のウォームとの間でトルク伝達を行なう為のトルク継手部で、必要な隙間(バックラッシュ)を確保しつつ、この隙間の存在に起因する、回転方向のがたつき(相対回転)に伴う異音(歯打ち音)の発生を十分に防止できる構造を実現すべく発明したものである。
本発明の電動式パワーステアリング装置は、例えば前述した特許文献1、2等に記載されて従来から知られている電動式パワーステアリング装置と同様に、ハウジングと、回転軸と、ウォームホイールと、ウォームと、電動モータと、トルク継手部とを備える。
このうちのハウジングは、ステアリングコラム、ステアリングギヤユニットのケース等の固定の部分に支持されて、回転する事はない。
又、上記回転軸は、上記ハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する。この様な回転軸としては、上記固定の部分が上記ステアリングコラムの場合には、ステアリングシャフト若しくはこのステアリングシャフトと同軸に設けられたシャフトが、上記固定の部分がステアリングギヤユニットのケースである場合にはピニオン軸が、それぞれ相当する。
又、上記ウォームホイールは、上記ハウジングの内部で上記回転軸の一部に、この回転軸と同心に支持されて、この回転軸と共に回転する。
このうちのハウジングは、ステアリングコラム、ステアリングギヤユニットのケース等の固定の部分に支持されて、回転する事はない。
又、上記回転軸は、上記ハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する。この様な回転軸としては、上記固定の部分が上記ステアリングコラムの場合には、ステアリングシャフト若しくはこのステアリングシャフトと同軸に設けられたシャフトが、上記固定の部分がステアリングギヤユニットのケースである場合にはピニオン軸が、それぞれ相当する。
又、上記ウォームホイールは、上記ハウジングの内部で上記回転軸の一部に、この回転軸と同心に支持されて、この回転軸と共に回転する。
又、上記ウォームは、ウォーム軸の軸方向中間部にウォーム歯を設けて成り、このウォーム歯を上記ウォームホイールと噛合させた状態で、上記ウォーム軸の軸方向端部を転がり軸受により、上記ハウジングに対し回転自在に支持されている。
又、上記電動モータは、上記ウォームを回転駆動する為のものである。
又、上記トルク継手部は、上記電動モータの出力軸の先端部と上記ウォームの基端部との間に設けられて、この出力軸からこのウォームへのトルクの伝達を可能としたもので、継手受孔と継手軸部とにより構成される。
このうちの継手受孔は、上記出力軸と上記ウォームとのうちの一方の部材の軸方向端面に開口したもので、内周面の断面形状が非円形である。
又、上記継手軸部は、上記出力軸と上記ウォームとのうちの他方の部材の端部であって、上記継手受孔の内周面とトルク伝達を可能に継手係合すべく、外周面の断面形状が非円形である。
尚、これら継手受孔並びに継手軸部の断面形状は、欠円状、小判形、多角形等、非円形であれば、各種形状を採用できるが、好ましくは、これら継手受孔と継手軸部とをそれぞれ、スプライン孔とスプライン軸部とする。
又、上記電動モータは、上記ウォームを回転駆動する為のものである。
又、上記トルク継手部は、上記電動モータの出力軸の先端部と上記ウォームの基端部との間に設けられて、この出力軸からこのウォームへのトルクの伝達を可能としたもので、継手受孔と継手軸部とにより構成される。
このうちの継手受孔は、上記出力軸と上記ウォームとのうちの一方の部材の軸方向端面に開口したもので、内周面の断面形状が非円形である。
又、上記継手軸部は、上記出力軸と上記ウォームとのうちの他方の部材の端部であって、上記継手受孔の内周面とトルク伝達を可能に継手係合すべく、外周面の断面形状が非円形である。
尚、これら継手受孔並びに継手軸部の断面形状は、欠円状、小判形、多角形等、非円形であれば、各種形状を採用できるが、好ましくは、これら継手受孔と継手軸部とをそれぞれ、スプライン孔とスプライン軸部とする。
特に、本発明の電動式パワーステアリング装置に於いては、上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面との間に、例えばニトリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等のゴム、或いはポリウレタンの如きエラストマー、合成樹脂等の弾性材により造られた弾性部材を、軸方向に圧縮した状態で設ける。この為に、この弾性部材の自由状態での軸方向寸法は、組み付け状態での上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面と間隔よりも大きくする。そして、この様な弾性部材により、上記出力軸と上記ウォーム軸との間に相対回転に対する抵抗力(捩り剛性)を付与する事で、上記トルク継手部の回転方向のがたつき(隙間、バックラッシュ)に伴う異音の発生を抑える。
この様な本発明の電動式パワーステアリング装置を実施する場合に、好ましくは、請求項2に記載した様に、上記弾性部材を充実円柱状とし、この弾性部材の軸方向両側面を全体に亙り、上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面とにそれぞれ当接させる。即ち、上記弾性部材を充実体とする事により、回転方向の小さな弾性変形で大きな抵抗力(捩り剛性)を得られる様にする。又、必要に応じて、この弾性部材の軸方向寸法を小さくする事で、大きな抵抗力(捩り剛性)を得られる様する事もできる。何れにしても、上記弾性部材の側面を相手面に全体に亙り当接させて、この当接面積を大きくする事により、これら弾性部材の各側面と相手面とを互いに滑りにくくし、この滑りに伴う上記抵抗力(捩り剛性)の低減や喪失を防止する。
又、好ましくは、請求項3に記載した様に、上記継手軸部の軸方向端面と、上記継手受孔の奥端面と、これら各端面に当接する上記弾性部材の軸方向側面とのうちの少なくとも何れかの表面を、静止摩擦係数を大きくすべく粗くする。そして、この様に粗くする事により、上記弾性部材の各側面と相手面とを互いに滑りにくくし、この滑りに伴う上記抵抗力(捩り剛性)の低減や喪失を防止する。
又、好ましくは、請求項4に記載した様に、上記弾性部材の軸方向両側面を、上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面とのそれぞれに、回転方向の相対変位を阻止した状態で係合させる。この為に、例えばこれら弾性部材の側面と相手面とに互いに係合自在な凹部と凸部とをそれぞれ設け、これら凹部と凸部とを凹凸係合させる事で、上記回転方向の相対変位を阻止する事ができる。この様な凹凸係合により、上記弾性部材の軸方向各側面と上記継手軸部の軸方向端面並びに上記継手受孔の奥端面とが互いに回転方向に相対変位するのを阻止すれば、上記抵抗力(捩り剛性)の低減や喪失を防止できる。
尚、請求項5に記載した様に、上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面とのうちの少なくとも一方の面に、上記弾性部材を、例えば接着、焼き付き等により不離に接合する事もできる。この場合にも、上記抵抗力の低減や喪失を防止できる。
又、好ましくは、請求項4に記載した様に、上記弾性部材の軸方向両側面を、上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面とのそれぞれに、回転方向の相対変位を阻止した状態で係合させる。この為に、例えばこれら弾性部材の側面と相手面とに互いに係合自在な凹部と凸部とをそれぞれ設け、これら凹部と凸部とを凹凸係合させる事で、上記回転方向の相対変位を阻止する事ができる。この様な凹凸係合により、上記弾性部材の軸方向各側面と上記継手軸部の軸方向端面並びに上記継手受孔の奥端面とが互いに回転方向に相対変位するのを阻止すれば、上記抵抗力(捩り剛性)の低減や喪失を防止できる。
尚、請求項5に記載した様に、上記継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面とのうちの少なくとも一方の面に、上記弾性部材を、例えば接着、焼き付き等により不離に接合する事もできる。この場合にも、上記抵抗力の低減や喪失を防止できる。
上述の様に、本発明の電動式パワーステアリング装置の場合には、弾性部材により、電動モータの出力軸とウォーム軸との間に、互いに離れる方向の弾性力を付与できるだけでなく、回転方向のがたつきに伴う異音の発生を十分に抑える為に必要な抵抗力(捩り剛性)も付与できる。即ち、この抵抗力(捩り剛性)に基づいて、上記電動モータが起動し始めた瞬間や、その回転方向が変換される瞬間に、上記出力軸とウォーム軸との間のトルク継手部で、トルク伝達面同士が勢い良く衝突する事を防止できる(勢いを鈍らせる事ができる)。この為、上記トルク継手部で必要な隙間(バックラッシュ)を確保しつつ、この隙間の存在に起因する、回転方向のがたつき(相対回転)に伴う異音(歯打ち音)の発生を十分に防止できる。
[実施の形態の第1例]
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の電動式パワーステアリング装置の特徴は、ウォーム軸6の基端面に開口したスプライン孔11と電動モータ7の出力軸10の先端部に形成したスプライン軸部12とのスプライン係合部の隙間(バックラッシュ)を確保しつつ、この隙間の存在に起因する、回転方向のがたつき(相対回転)に伴う異音(歯打ち音)の発生を防止する為の構造にある。その他、電動式パワーステアリング装置全体の構造及び作用に就いては、前述した従来構造と同様であるから、この従来構造と同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、前述の図3〜4と図1とで、ハウジング3に対する電動モータ7の取付方向が異なっているが、この点は、設置する自動車に応じ適宜設計的に変更するものであって、本発明の特徴部分とは関係がない。
図1は、本発明の実施の形態の第1例を示している。尚、本例の電動式パワーステアリング装置の特徴は、ウォーム軸6の基端面に開口したスプライン孔11と電動モータ7の出力軸10の先端部に形成したスプライン軸部12とのスプライン係合部の隙間(バックラッシュ)を確保しつつ、この隙間の存在に起因する、回転方向のがたつき(相対回転)に伴う異音(歯打ち音)の発生を防止する為の構造にある。その他、電動式パワーステアリング装置全体の構造及び作用に就いては、前述した従来構造と同様であるから、この従来構造と同等部分に関する図示並びに説明は、省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。尚、前述の図3〜4と図1とで、ハウジング3に対する電動モータ7の取付方向が異なっているが、この点は、設置する自動車に応じ適宜設計的に変更するものであって、本発明の特徴部分とは関係がない。
上記ウォーム軸6の基端部に、特許請求の範囲に記載した継手受孔に相当するスプライン孔11を、このウォーム軸6の基端面に開口する状態で、このウォーム軸6と同心に形成している。又、電動モータ7の出力軸10の先端部に、特許請求の範囲に記載した継手軸部であるスプライン軸部12を、この出力軸10と同心に形成している。そして、このスプライン軸部12と上記スプライン孔11とを、特許請求の範囲に記載した継手係合であるスプライン係合させる事で、上記出力軸10と上記ウォーム軸6とを、回転力の伝達を可能に結合している。上記スプライン軸部12と上記スプライン孔11とのスプライン係合部には隙間(バックラッシュ)を介在させて、これらスプライン孔11とスプライン軸部12とをスプライン係合させる作業を容易に行なえる様にすると共に、上記出力軸10の中心軸に対し上記ウォーム軸6の中心軸が、多少傾斜する事を許容できる様にしている。
又、上記スプライン軸部12の先端面と上記スプライン孔11の奥端面との間に、弾性部材15を設けている。この弾性部材15は、例えばニトリルゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム等のゴム、或いはポリウレタンの如きエラストマー、合成樹脂等のうちから選択される、耐油性を有する弾性材製で、軸方向寸法を拡縮自在な弾性を有する。本例の場合、上記弾性部材15は、全体を充実円柱状に造られており、上記スプライン軸部12の軸方向端面と上記スプライン孔11の奥端面との間に、軸方向に圧縮した状態で挟持される。この為に、上記弾性部材15の自由状態での軸方向寸法を、組み付け状態での上記スプライン軸部12の先端面と上記スプライン孔11の奥端面との間隔よりも大きくしている。又、この様に組み付け状態で、上記弾性部材15の軸方向両側面は、全体に亙り、上記スプライン軸部12の軸方向端面と上記スプライン孔11の奥端面とに、それぞれ当接する様にしている。何れにしても、これらスプライン軸部12とスプライン孔11との関係が中立状態(回転方向両側に同大のバックラッシュが存在する状態)で、上記弾性部材15も中立状態(捩れていない状態)となる。そして、この様な弾性部材15により、上記スプライン軸部12を設けた上記出力軸10と上記スプライン孔11を設けた上記ウォーム軸6との間に、相対回転に対する抵抗力(捩り剛性)を付与する事により、上記スプライン係合部の回転方向のがたつき(バックラッシュ)に伴う異音の発生を抑えている。
尚、必要に応じて、上記スプライン軸部12の軸方向端面と、上記スプライン孔11の奥端面と、上記弾性部材15の軸方向側面とのうちの少なくとも何れかの表面を、静止摩擦係数を大きくすべく、粗くする。そして、この様に粗くする事により、上記弾性部材15の軸方向側面と相手面(スプライン軸部12の軸方向端面、スプライン孔11の奥端面)とを互いに滑りにくくし、この滑りに伴う上記抵抗力(捩り剛性)の低減や喪失を防止する。又、上記弾性部材15の軸方向両側面を、上記スプライン軸部12の軸方向端面と上記スプライン孔11の奥端面とのそれぞれに、回転方向の相対変位を阻止した状態で係合させる事もできる。この為に、例えばこれら弾性部材15の軸方向側面と相手面(スプライン軸部12の軸方向端面、スプライン孔11の奥端面)とに互いに係合自在な、非円形若しくは偏心等の凹部と凸部とをそれぞれ設け、これら凹部と凸部とを凹凸係合させる事で、上記回転方向の相対変位を阻止する事ができる。又、必要に応じて、上記スプライン軸部12の軸方向端面と上記スプライン孔11の奥端面とのうちの少なくとも一方の面に、上記弾性部材15を、例えば接着、焼き付き等により不離に接合する事もできる。
何れにしても、本例の電動式パワーステアリング装置の場合には、弾性部材15により、電動モータ7の出力軸10とウォーム軸6との間に、互いに離れる方向の弾性力を付与できるだけでなく、回転方向のがたつきに伴う異音の発生を十分に抑える為に必要な抵抗力(捩り剛性)も付与できる。即ち、この抵抗力(捩り剛性)に基づいて、上記電動モータ7が起動し始めた瞬間や、その回転方向が変換される瞬間に、上記出力軸10とウォーム軸6との間のスプライン係合部で、トルク伝達面同士(雄スプライン歯の円周方向側面と雌スプライン歯の円周方向側面と)が勢い良く衝突する事を防止できる(勢いを鈍らせる事ができる)。この為、上記出力軸10とウォーム軸6との間のスプライン係合部で、必要な隙間(バックラッシュ)を確保しつつ、この隙間の存在に起因する、回転方向のがたつき(相対回転)に伴う異音(歯打ち音)の発生を十分に防止できる。
[実施の形態の第2例]
図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、電動モータ7の出力軸10aの先端部に、特許請求の範囲に記載した継手受孔に相当するスプライン孔11aを、この出力軸10aの先端面に開口する状態で、この出力軸10aと同心に形成している。又、ウォーム8を構成するウォーム軸6aの基端部に、特許請求の範囲に記載した継手軸部であるスプライン軸部12aを、このウォーム軸6aと同心に形成している。そして、このスプライン軸部12aと上記スプライン孔11aとを、特許請求の範囲に記載した継手係合であるスプライン係合させる事で、上記出力軸10aと上記ウォーム軸6aとを、回転力の伝達を可能に結合している。又、本例の場合には、上記ウォーム軸6aの両端部を1対の転がり軸受9a、9bにより、回転のみ自在に支持している。従って、本例の構造は、ウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑える機能は持たない。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
図2は、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、電動モータ7の出力軸10aの先端部に、特許請求の範囲に記載した継手受孔に相当するスプライン孔11aを、この出力軸10aの先端面に開口する状態で、この出力軸10aと同心に形成している。又、ウォーム8を構成するウォーム軸6aの基端部に、特許請求の範囲に記載した継手軸部であるスプライン軸部12aを、このウォーム軸6aと同心に形成している。そして、このスプライン軸部12aと上記スプライン孔11aとを、特許請求の範囲に記載した継手係合であるスプライン係合させる事で、上記出力軸10aと上記ウォーム軸6aとを、回転力の伝達を可能に結合している。又、本例の場合には、上記ウォーム軸6aの両端部を1対の転がり軸受9a、9bにより、回転のみ自在に支持している。従って、本例の構造は、ウォーム歯5とウォームホイール4との間のバックラッシュを抑える機能は持たない。
その他の部分の構成及び作用は、上述した実施の形態の第1例と同様であるから、重複する図示並びに説明は省略する。
1 ステアリングホイール
2 ステアリングシャフト
3 ハウジング
4 ウォームホイール
5 ウォーム歯
6、6a ウォーム軸
7 電動モータ
8 ウォーム
9a、9b 転がり軸受
10、10a 出力軸
11、11a スプライン孔
12、12a スプライン軸部
13 押圧駒
14 コイルばね
15 弾性部材
2 ステアリングシャフト
3 ハウジング
4 ウォームホイール
5 ウォーム歯
6、6a ウォーム軸
7 電動モータ
8 ウォーム
9a、9b 転がり軸受
10、10a 出力軸
11、11a スプライン孔
12、12a スプライン軸部
13 押圧駒
14 コイルばね
15 弾性部材
Claims (5)
- 固定の部分に支持されて回転する事のないハウジングと、このハウジングに対し回転自在に設けられて、ステアリングホイールの操作により回転させられ、回転に伴って操舵輪に舵角を付与する回転軸と、上記ハウジングの内部でこの回転軸の一部に、この回転軸と同心に支持されて、この回転軸と共に回転するウォームホイールと、ウォーム軸の軸方向中間部にウォーム歯を設けて成り、このウォーム歯を上記ウォームホイールと噛合させた状態で、上記ウォーム軸の軸方向端部を転がり軸受により上記ハウジングに対し回転自在に支持されたウォームと、このウォームを回転駆動する為の電動モータと、この電動モータの出力軸の先端部とこのウォームの基端部との間に設けられて、この出力軸からこのウォームへのトルクの伝達を可能としたトルク継手部とを備え、このトルク継手部は、上記出力軸と上記ウォームとのうちの一方の部材の軸方向端面に開口した、内周面の断面形状が非円形である継手受孔と、上記出力軸と上記ウォームとのうちの他方の部材の端部であってこの継手受孔の内周面とトルク伝達を可能に継手係合する、外周面の断面形状が非円形である継手軸部とにより構成されるものである電動式パワーステアリング装置に於いて、この継手軸部の軸方向端面と上記継手受孔の奥端面との間に弾性部材を軸方向に圧縮した状態で設け、この弾性部材により、上記出力軸と上記ウォーム軸との間に相対回転に対する抵抗力を付与する事により、上記トルク継手部の回転方向のがたつきに伴う異音の発生を抑えた事を特徴とする電動式パワーステアリング装置。
- 弾性部材を充実円柱状とし、この弾性部材の軸方向両側面を全体に亙り、継手軸部の軸方向端面と継手受孔の奥端面とにそれぞれ当接させた、請求項1に記載した電動式パワーステアリング装置。
- 継手軸部の軸方向端面と、継手受孔の奥端面と、これら各端面に当接する弾性部材の軸方向側面とのうちの少なくとも何れかの表面を、静止摩擦係数を大きくすべく粗くした、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。
- 弾性部材の軸方向両側面を、継手軸部の軸方向端面と継手受孔の奥端面とのそれぞれに、回転方向の相対変位を阻止した状態で係合させた、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。
- 継手軸部の軸方向端面と継手受孔の奥端面とのうちの少なくとも一方の面に、弾性部材を不離に接合した、請求項1〜4のうちの何れか1項に記載した電動式パワーステアリング装置。
Priority Applications (1)
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JP2007231169A JP2009061898A (ja) | 2007-09-06 | 2007-09-06 | 電動式パワーステアリング装置 |
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JP2007231169A JP2009061898A (ja) | 2007-09-06 | 2007-09-06 | 電動式パワーステアリング装置 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2012173096A1 (ja) * | 2011-06-16 | 2012-12-20 | 日本精工株式会社 | 電動式パワーステアリング装置 |
-
2007
- 2007-09-06 JP JP2007231169A patent/JP2009061898A/ja active Pending
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WO2012173096A1 (ja) * | 2011-06-16 | 2012-12-20 | 日本精工株式会社 | 電動式パワーステアリング装置 |
JP5609977B2 (ja) * | 2011-06-16 | 2014-10-22 | 日本精工株式会社 | 電動式パワーステアリング装置 |
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US9102351B2 (en) | 2011-06-16 | 2015-08-11 | Nsk Ltd. | Electronic power-steering apparatus |
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