JP2009055912A - 抗メチオニンおよび抗ホモシステイン化学療法におけるメチオニナーゼの使用 - Google Patents

抗メチオニンおよび抗ホモシステイン化学療法におけるメチオニナーゼの使用 Download PDF

Info

Publication number
JP2009055912A
JP2009055912A JP2008242636A JP2008242636A JP2009055912A JP 2009055912 A JP2009055912 A JP 2009055912A JP 2008242636 A JP2008242636 A JP 2008242636A JP 2008242636 A JP2008242636 A JP 2008242636A JP 2009055912 A JP2009055912 A JP 2009055912A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
methioninase
methionine
cells
cell
tumor
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2008242636A
Other languages
English (en)
Inventor
Yuying Tan
タン,ユイン
Valeryi Lishko
リシュコ,ヴァレリー
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Anticancer Inc
Original Assignee
Anticancer Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Priority claimed from US08/486,519 external-priority patent/US5715835A/en
Priority claimed from US08/642,541 external-priority patent/US5891704A/en
Application filed by Anticancer Inc filed Critical Anticancer Inc
Publication of JP2009055912A publication Critical patent/JP2009055912A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02ATECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE
    • Y02A50/00TECHNOLOGIES FOR ADAPTATION TO CLIMATE CHANGE in human health protection, e.g. against extreme weather
    • Y02A50/30Against vector-borne diseases, e.g. mosquito-borne, fly-borne, tick-borne or waterborne diseases whose impact is exacerbated by climate change

Abstract

【課題】 高いメチオニン枯渇活性、延長された半減期および低い免疫原性を有する化学的に改変されたメチオニナーゼの提供。
【解決手段】 天然の材料から、および組換え宿主から調製された高度に純粋な、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼをポリエチレングリコール等のポリマーと結合させた改変メチオニナーゼ。
【選択図】 なし

Description

本発明は、メチオニナーゼ(methioninase)組成物、メチオニナーゼの精製方法、メチオニナーゼとPEG等のポリマーとの結合方法、並びに抗メチオニンおよび抗ホモシステイン化学療法におけるメチオニナーゼの使用方法に関する。より具体的には、本発明の方法は癌療法、心臓血管療法、並びに腫瘍イメージングおよび診断におけるメチオニナーゼの使用を含む。本発明はさらに組換えDNA技術に関する。本発明は特にメチオニナーゼをコードする発現モジュール(module)を提供する。
治療剤に基づく癌の治療は、許容量を超えて正常な組織機能を損なわないようにしながら、癌細胞を選択的に阻害する、または殺す医薬の使用に向けられている。従来の化学療法における困難は、正常な組織に対する治療剤の毒性であった。
多くの腫瘍が、結腸、乳房前立腺、卵巣、腎臓、喉頭黒色腫、肉腫、肺、脳、胃および膀胱の腫瘍、並びに白血病およびリンパ腫を含む種々の細胞タイプおよび評価された癌組織において、メチオニンを絶対に必要とすることを示した。メチオニン依存性は、増殖培地中でメチオニンをホモシステインに置換した場合の腫瘍の増殖不能として規定された。例えば、Chelloら,Cancer Res., 33:1898-1904, 1973;およびHoffman, Anticancer Res., 5:1-30, 1985参照。
メチオニン枯渇は、メチオニン依存性腫瘍細胞を選択的に細胞周期のS/G2期末期に同調させる。Hoffmanら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:7306-7310, 1980。抗メチオニン化学療法と呼ばれる、メチオニンを剥奪し、その後、抗有糸分裂剤への暴露と組み合わせてメチオニンを充満させる方法を用いると、腫瘍細胞は正常細胞および腫瘍細胞の混合培養物から選択的に排除され、旺盛に増殖する正常細胞の培養物をもたらした。Sternら,J. Natl. Cancer Inst., 76:629-639, 1986。
しかし、メチオニン依存性化学療法をin vivoで実施するためには、循環メチオニンを血清から効果的に枯渇させる手段を持たなければならない。抗癌療法において効果を発揮するのに十分なだけ循環メチオニンのレベルをin vivoで低下させるメチオニン枯渇法は、これまで記述されていない。
メチオニンを分解する酵素であるメチオニナーゼが種々の細菌性の源から精製され、in vitroでの腫瘍細胞増殖速度を遅くすることが報告されている。Kreisら, Cancer Res., 33:1862-1865 および1866-1869, 1973; Tanakaら,FEBS Letters, 66:307-311, 1976; Itoら,J. Biochem. 79:1263-1272, 1976; およびNakayamaら,Agric. Biol. Chem. 48:2367-2369, 1984。
Kreisら, Cancer Res., 33:1866-1869, 1973は、マウスモデルに移植した癌肉腫細胞の増殖を阻止するための、スポロゲネス菌(Clostridium sporgenes)から単離した高度に不純なメチオニナーゼの用量1150単位/kg/日での使用を記述している。上記酵素は明らかに一次腫瘍細胞増殖を減少させたが、腫瘍直径のT/C(処理細胞vs対照細胞)比を50% 以下に下げたとも、転移について何らかの効果を有したとも報告されていない。著者らは、他の不特定の介在物の不在下でのメチオニナーゼの腫瘍特異性は期待できないとも指摘した。そして、不純な調製物中のエンドトキシンまたは他の成分が、観察された効果に関与しているかもしれない可能性については何らコメントしなかった。報告された唯一の毒性研究は、治療期間後に動物の体重減少がなかったこと、および毒性に関する消極的な肉眼検査であった。さらに、著者らは該酵素が4時間という血清半減期を有したと報告している。該酵素調製物は半精製の状態でしかなく、また重大な量のエンドトキシンを含んでいた。これらのことが結果の解釈を複雑にしている。
さらに、Kreisは血清メチオニンレベルを対照の約8%以下に低下させることができなかった。これは、上記クロストリジウム属(Clostridium) 酵素の高いKm値(約 90 mM) によるものと思われる。該メチオニナーゼ調製物は不安定で、精製の際、2%の回収(収率)しか達成できなかったと報告されている。
Kreisら, Cancer Res., 33:1866-1869, 1973はさらに、抗癌療法としてメチオニンを枯渇させる手段としてメチオニンを含まない食餌の使用を報告した。しかし、著者らは、該食餌の使用はメチオニナーゼの不純な調製物の使用ほど効果的に腫瘍増殖を遅らせなかったこと、そして実験動物の継続的な体重減少という望ましくない副作用をもたらしたこと、を報告している。著者らは、メチオニナーゼ治療と組み合わせたメチオニン欠乏食餌の使用を報告していない。また、細胞同調化(synchronization)を研究していない。
本発明の優先権出願は、有害な損傷を与えることなく有益な抗腫瘍効果をもたらすように効果的にメチオニンの量を減らすことに向けられた、メチオニナーゼを用いた腫瘍の効果的化学療法を開示する。本発明は、商業的に成立する量の高度に純粋な組換えメチオニナーゼを産生する供給源を提供することによって、開示した治療および診断法ならびに組成物を改良する。
メチオニナーゼは、PEGと結合した形態であれ、または高度に純粋な、エンドトキシンを含まない組み換え体として産生され精製されたものであれ、害を与えずに哺乳動物のメチオニンレベルを枯渇させることができ、腫瘍増殖を選択的に阻止するために効果的に使用することができ、さらにまた腫瘍細胞を選択的に阻止し、それによって該細胞を抗有糸分裂化学療法のために同調させることができる、ことが見いだされた。
また、幾つかの異なる方法を共働的に用いて有効メチオニンレベルを実質的に低下させる場合、メチオニン枯渇が最も効果的であることが見いだされた。これらの方法には、メチオニンを含まない食餌を用いるメチオニン飢餓、メチオニンを利用する酵素に対してメチオニンと競合するインヒビターの使用によるメチオニンの競合阻害、メチオニン枯渇により誘導される特異的腫瘍選択性細胞周期ブロックの利点を利用する化学治療剤、およびそれらの組み合わせが含まれる。
本発明の化学的に改変されたメチオニナーゼは、高いメチオニン枯渇活性、延長された半減期および低い免疫原性を有する。
本発明は、腫瘍細胞の集団を本明細書に規定する治療上有効量のメチオニナーゼに、該集団の細胞において細胞周期静止を誘導し、静的(static)腫瘍細胞を形成させるに十分な期間接触させることを含んでなる、腫瘍細胞の増殖を阻止する方法を記述する。「接触させる」という用語は、腫瘍阻止効果が観察されるように、本発明の治療組成物を標的腫瘍に十分近い所に配置すること、または、培地中のメチオニンレベルが培地中の腫瘍細胞増殖が阻止されるレベルまで低下するように、該治療組成物を培地(栄養培地または血液、等)中に配置すること、を意味する。「静的(static)」腫瘍細胞という用語は、増殖を阻止された腫瘍細胞を意味する。この方法はin vitroまたはin vivoで実施することができる。腫瘍細胞の接触は直接的である必要はなく、腫瘍細胞を含む栄養培地を接触させることによってin vitroまたはin vivoで行なうことができる。接触は循環血をメチオニナーゼと接触させることによっても達成できる。腫瘍は循環しない固形腫瘍である場合があるので、このような循環血は腫瘍を含むことも、含まないこともある。「腫瘍細胞増殖を阻止する」という表現は、本発明の化合物の投与が例えば大きさを測定した場合に、該化合物で処理されなかった腫瘍に較べ、腫瘍の増殖を10% から100%、より好ましくは34% から79%、そしてより好ましくは55% から68% 減少させることを意味する。
メチオニナーゼは、メチオニンを枯渇させて細胞分裂を遅くする、または停止させるための抗腫瘍試薬として使用される。この効果は、メチオニンの競合的インヒビターを用いて増強することができる。さらに、メチオニナーゼを抗有糸分裂剤および他の細胞周期特異的細胞毒性剤と組み合わせて用いて、細胞周期同調化を誘導することにより抗有糸分裂剤および他の細胞周期特異的細胞毒性剤の治療的効果を増大させることができる。
メチオニナーゼはまた、心臓血管性疾患の危険を減少させ、かつこの疾患を治療するためのホモシステイン枯渇化学療法にも使用される。メチオニナーゼはまた、[11C] メチオニンを充満させる前に、血液および腫瘍の[12C] メチオニンを枯渇させ、超高度分解能で身体内の腫瘍を検出し診断するためにも使用される。
1つの実施態様においては、腫瘍細胞はまずメチオニンレベルを低下させるためメチオニン飢餓工程にかけられる。場合により、正常細胞への毒性を減少させ、それによって療法の特異性を増大させるため、メチオニン飢餓はホモシステインを伴ってもよい。
本発明のもう1つの関連する局面は、腫瘍細胞を細胞周期のS/G期末期に引き止めるためのメチオニン枯渇法の使用と、それに続く同調的に細胞周期を開始させるための処理、および選択的かつ効果的に腫瘍細胞を殺すための抗有糸分裂剤等の細胞周期特異的細胞毒性剤の投与、を特徴とする。当業者は細胞周期の特定期にある細胞にたいして毒性な細胞周期特異的細胞毒性剤に精通している。この方法は以下の工程を含んでなる:
(a)上記のメチオニン枯渇工程によって生成した静的腫瘍細胞を、細胞周期誘導量のメチオニンと接触させて該静的腫瘍細胞の細胞周期を開始させ、細胞周期を進行する細胞(cycling cell)を形成し、そして
(b)該細胞周期を進行する細胞を、有糸分裂細胞の有糸分裂を阻止するに十分な量の細胞周期特異的細胞毒性剤と接触させ、これによって腫瘍細胞の増殖を阻止する。
1つの実施態様においては、この方法は以下の工程:
(a)上記のメチオニン枯渇工程によって生成した静的腫瘍細胞を、細胞周期誘導量のメチオニンと接触させて該静的腫瘍細胞の有糸分裂を開始させ、有糸分裂細胞を形成し、そして
(b)該有糸分裂細胞を、有糸分裂細胞の有糸分裂を阻止するに十分な量の抗有糸分裂剤と接触させ、これによって腫瘍細胞の増殖を阻止する、
を含んでなる。
本発明はまた、患者のホモシステインレベルを低下させて心臓血管性疾患の危険を減少させ、かつ該疾患を治療するためのメチオニナーゼの使用を特徴とする。
本発明は、腫瘍診断およびイメージングのための、メチオニナーゼの投与によるメチオニンの枯渇方法を提供する。
治療上有効量の、タンパク質1ミリグラムあたり少なくとも約10から約50単位メチオニナーゼ活性という比活性を有する実質的に単離されたメチオニナーゼ、およびタンパク質1ミリグラムあたり約1未満から約100 ngのエンドトキシンを含む、メチオニン枯渇療法のための治療組成物もまた特徴である。好ましい実施態様においては、該治療組成物はタンパク質1ミリグラムあたり10ナノグラム未満のエンドトキシンを、製薬上許容される担体と共に含む。
本発明の治療組成物は、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼをも包含する。1つに実施態様においては、メチオニナーゼは改良された発酵条件下で増殖させたシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida) から新規で効率的な方法を用いて調製される。この目的のため、本発明はP.プチダの改良された、高メチオニン産生株の単離方法をも提供する。別の実施態様においては、メチオニナーゼはメチオニナーゼをコードする発現モジュールを含む組換え宿主から産生される。
本発明のメチオニナーゼ組成物は、メチオニナーゼをポリエチレングリコール(PEG)等のポリマーと結合させることにより、化学的に改変された形でも提供される。本発明のPEG改変メチオニナーゼは高いメチオニン枯渇活性、延長された半減期、および低い免疫原性を示す。
本発明のメチオニナーゼ組成物は、本明細書中に規定される高発現ベクター等の発現ベクターを用いて産生された組換えタンパク質としても提供される。高発現系を用いて産生されたメチオニナーゼを、本明細書に記述する方法を用いて容易に精製して、エンドトキシンを含まず、かつ高度に純粋な、メチオニナーゼ1ミリグラムあたり約10から約50単位の比活性を有するメチオニナーゼ組成物を得ることができる。
本発明はさらに、予想されない高レベルのメチオニナーゼを発現する、核酸分子を含むベクターを提供する。このようなベクター、例えばT7 RNAポリメラーゼプロモーターを利用したベクターは、1リットルあたり約1〜約4グラムの割合で、粗ホモジネートの形で約2.6 〜5の比活性を有する、適切なインキュベーション条件下で全細胞性タンパク質の約10〜20% に相当するメチオニナーゼを産生するために使用された。
本発明はさらに、本明細書に開示する方法においてメチオニナーゼを含む組成物に代わりに用いることができるクローン化メチオニナーゼ遺伝子を利用する遺伝子治療の方法を提供する。治療的量のメチオニナーゼを患者の血清に供給する手段として、患者の体内でメチオニナーゼを発現するように細胞を変更することが可能である。
本発明の他の特徴、利点および関連する実施態様は、本明細書に含まれる開示に基づいて明らかであろう。
A.定義
「アミノ酸残基」とは、ポリペプチドの化学的消化(加水分解)の結果、そのペプチド結合に形成されたアミノ酸をいう。本明細書に記載するアミノ酸残基は、好ましくは「L」異性体形である。しかし、所望の機能特性がポリペプチドによって保持される限り、任意のL−アミノ酸残基に換えて「D」異性体形の残基を用いることができる。NHは、ポリペプチドのアミノ末端に存在する遊離のアミノ基をいう。COOHは、ポリペプチドのカルボキシ末端に存在する遊離のカルボキシ基をいう。標準的ポリペプチド命名法(J. Biol. Chem. 243:3552-59, 1969に記述され、37 C.F.R. 1.822(B)(2)に採用された)(本明細書中に参考として組み入れる)に従う。
本明細書中に式として表される全てのアミノ酸残基配列は、アミノ末端からカルボキシ末端へという通常の方向を、左から右へ向けて示すことに注意すべきである。さらに、「アミノ酸残基」という句は、Table of Correspondence に記載されたアミノ酸、並びに本明細書中に参考として組み入れる37 C.F.R. 1.822(B)(4) に記載されたもの等の修飾された及び通常のアミノ酸を包含して、広く定義される。さらに、アミノ酸残基配列の初めまたは終わりにあるダッシュ(−)は、1以上のアミノ酸残基からなる別の配列へのペプチド結合、またはNH、アセチル等のアミノ末端基への、またはCOOH等のカルボキシ末端基への共有結合を示す。
「組換えDNA(rDNA)分子」とは、2個のDNAセグメントを機能しうる形で連結することにより作製されたDNA分子をいう。したがって、組換えDNA分子とは、天然においては通常共に見いだされることのない少なくとも2つのヌクレオチド配列を含むハイブリッドDNA分子である。共通の生物的起源を持たない(すなわち、進化論的に異なる)rDNAは、「異種」("heterologous") であると言われる。
「ベクター」とは、細胞中で自律複製が可能なrDNA分子をいい、結合させたセグメントの複製をもたらすようにDNAセグメント(例えば遺伝子またはポリヌクレオチド)を機能しうる形でそこに連結することができる。1個以上のポリペプチドをコードする遺伝子の発現を引き出すことが可能なベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と呼ばれる。特に重要なベクターは、本発明のメチオニナーゼタンパク質の好都合な発現を可能とする。
B.抗腫瘍剤としてのメチオニナーゼの使用方法
I.メチオニン枯渇
本明細書中では、メチオニナーゼは腫瘍細胞、腫瘍組織または癌を有する哺乳動物の循環からメチオニンを実質的に枯渇させるために、またはメチオニンの枯渇が望ましいと考えられる場合にメチオニンを枯渇させるために、本明細書に記述する種々の様式で抗腫瘍剤として用いられる。
先行技術の方法はin vivoメチオニンレベルを約35マイクロモル(μM)まで低下させることができるが、安全に、容易に、かつ迅速にメチオニンレベルを実質的に約10μM 以下に下げることのできる方法は知られていない。「実質的に」とは、通常のメチオニン検出法を用いて、少なくとも検出可能な10μM 以下、好ましくは1 μM 未満、より好ましくは0.1 μM 未満、そして最も好ましくは検出不能レベルまで下げることを意味する。メチオニンは、血液、血漿および血清等の体液を含む溶液中で種々の方法により測定することができる。典型的な方法は、メチオニン標準品を用いた逆相FPLCである。
枯渇は、哺乳動物の循環中でin vivoで、または組織培養物または他の生物学的培地のメチオニン枯渇が望ましい場合はin vitroで、そして生物学的流体、細胞または組織が哺乳動物患者の身体外で操作され、後にその体内に戻される場合はex vivo(生体外)手順を用いて実施することができる。
循環、培養培地、生物学的流体、または細胞からのメチオニンの枯渇は、処理すべき物質に到達しうるメチオニンの量を減少させるために行なわれる。したがってメチオニン枯渇は、メチオニンを枯渇させるべき物質をメチオニンを枯渇させる量の本発明のメチオニナーゼと、接触させるべき物質の周囲のメチオニンを分解するようにメチオニン枯渇条件下で接触させることを含む。
腫瘍細胞はメチオニンについて栄養培地に依存するため、メチオニン枯渇を細胞の栄養源に向けて実施してもよく、必ずしも細胞そのものに向けなくてよい。したがって、本発明のin vivo適用においては、メチオニナーゼを腫瘍細胞集団の栄養培地と接触させることができる。この実施態様では、該培地はメチオニン枯渇が望まれる血液、リンパ液、脊髄液、等の体液でありうる。
メチオニンを枯渇させる量は、その使用法によって広範に変わりうる。そして、典型的には、上記物質中に存在するメチオニンの量、所望の枯渇率、およびメチオニナーゼへの暴露に対する該物質の耐性に依存する。物質中のメチオニンレベル、そして該物質からのメチオニンの枯渇率は、当分野で周知の種々の化学的および生化学的方法によって容易にモニターすることができる。典型的なメチオニン枯渇量を本明細書中に記述する。それらは、処理すべき物質1ミリリットル(ml)あたり、メチオニナーゼの0.001 から100 単位(U)、好ましくは約0.01から10 U、そしてより好ましくは約0.1 から5 U メチオニナーゼの範囲でありうる。
メチオニン枯渇条件とは、メチオニナーゼ酵素の生物活性と適合する緩衝液および温度の条件で、該酵素に適合する穏やかな温度、塩およびpH条件を含む。典型的条件は、生理的条件が好ましいが、約4 〜40℃、約0.05から0.2 M NaClに等価なイオン強度、および約5から9のpHを含む。
好ましい実施態様において、本発明はメチオニナーゼを抗腫瘍剤として使用する方法を意図し、それゆえ、腫瘍細胞の集団を治療上有効量のメチオニナーゼと、該集団の細胞において細胞周期静止を誘導し、静的腫瘍細胞を形成させるに十分な期間接触させることを含む。
本明細書に記述するように、腫瘍細胞を細胞周期静止状態に置くことは種々の理由から好ましい。これらの理由には、選択的に腫瘍増殖を遅くする、静止している細胞を細胞死をもたらすほどの長期間維持することにより腫瘍細胞を殺す、後で行なう化学療法的治療に先立って腫瘍細胞の集団を細胞周期同調化のために準備する、等がふくまれるが、それだけに限定されない。
メチオニナーゼとの接触によって細胞周期静止を誘導するのに必要な期間は、幾つかの因子に依存する。例えば、細胞または細胞を含む培地と接触させるメチオニナーゼの量、メチオニンの量、酵素の比活性、温度および反応速度に影響をおよぼす他の反応条件、等の実践者によって容易に制御可能なパラメーターである。典型的な期間は、10分から約30日、好ましくは約1時間から20日、そしてより好ましくは約1日から10日である。
細胞周期静止とは、細胞が分裂せず、それぞれG0、G1、G2およびS期と呼ばれる各期からなる完全な細胞周期を細胞が進行していかない状態である。メチオニン枯渇後、細胞は正常な休止細胞に較べDNAが蓄積していることから明らかなように、S/G期末期で進行を停止するものと思われる。細胞周期静止を同定する方法は、種々の組織学的方法によって決定することができ、また細胞培養物によって評価することができる。そして上記の方法は、細胞集団のDNA含有量を実施例に記載のように測定することを伴う。
本発明の治療法が有用な腫瘍は、固形腫瘍または血液学的腫瘍に見いだされるような任意の悪性細胞型を含む。典型的固形腫瘍は、以下のものを含みうるがそれらだけに限定されない。すなわち、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、首、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、前立腺および乳房からなる群から選択される器官の腫瘍である。典型的な血液学的腫瘍は、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性疾患、白血病、リンパ腫、芽腫、骨髄腫、等である。
1つの実施態様においては、in vivoにおける接触は、静脈内または腹腔内注入により、治療上有効量の、本発明のメチオニナーゼを含む生理的に許容される組成物を患者に投与することにより達成され、それによって患者に存在する腫瘍細胞の循環性メチオニン供給源を枯渇させる。メチオニナーゼの接触は、腫瘍細胞を含む組織にメチオニナーゼを投与することによっても達成することができる。
治療上有効量のメチオニナーゼとは、所望の効果を達成し(すなわち、腫瘍組織または患者の循環からメチオニンを枯渇させ)、それによって腫瘍細胞に分裂を停止させるために計算された、あらかじめ定められた量をいう。
したがって、本発明のメチオニナーゼ投与の用量範囲は、腫瘍細胞の分裂および細胞周期の進行という症状が減じる所望の効果を奏するのに十分な範囲である。用量は、好ましくない副作用、例えば高粘稠度、肺水腫、うっ血性心不全、等を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、用量は患者の年齢、状態、性別および疾患の程度によって変わり、当業者によって決定され得る。
何らかの合併症が生じた場合は、それぞれの医師が用量を調整することができる。
本発明のメチオニナーゼの治療上有効量は、典型的には、生理的に許容される組成物として投与した時に、1 mlあたり約0.001から約100単位(U) 、好ましくは約0.1 U以上、そしてより好ましくは1 Uメチオニナーゼという血管内(血漿)または局所的濃度を達成するのに十分な量である。典型的用量は体重に基づいて投与することができ、約1〜1000 U/kg/日、好ましくは約5〜100 U/kg/日、より好ましくは約10〜50 U/kg/日の範囲である。
好ましい方法においては、用いられるメチオニナーゼは本明細書中でさらに論じるように実質的にエンドトキシンを含まない。特に好ましいのは、実質的にエンドトキシンを含まない、組換えによって産生されたメチオニナーゼに使用である。
メチオニナーゼは、注射または時間をかけた徐々の注入によって、非経口的に投与することができる。メチオニナーゼは、静脈内、動脈内、腹腔内、経口、筋肉内、皮下、体腔内、経皮、皮膚に投与して、ぜん動性の手段によって送達するか、または腫瘍細胞を含む組織に直接注射するか、または潜在的バイオセンサーまたはメチオニンを含みうるカテーテルに連結したポンプによって投与することができる。
メチオニナーゼを含む治療組成物は、例えば単位用量の注射として静脈内に好都合に投与することができる。本発明の治療組成物に言及して使用する「単位用量」という用語は、患者への単位投薬として適する物理的に別個の単位を指し、各単位は所望の治療効果を奏するように計算された、あらかじめ定められた量の活性物質を希釈剤(すなわち、担体またはビヒクル)と共に含む。
これらの組成物は、投与剤形に適合する様式で、かつ治療上有効量を投与される。投与すべき量は、治療すべき患者、患者の系の活性成分を利用する能力、および望まれる治療効果の程度に依存する。投与を必要とされる活性成分の正確な量は医師の判断に依存し、各患者に特有のものである。しかし、全身的使用のための適切な用量範囲を本明細書に開示してあり、これは投与経路に依存する。最初の投与およびブースター投与の適切な方法もまた意図されており、これらは最初の投与とそれに続く、注射または他の手段によって行なわれる、1時間以上の間隔を置いた反復投与によって代表される。典型的な多重投与が本明細書中に記述され、それらはメチオニナーゼの高い血清および組織レベルおよび逆にメチオニンの低い血清および組織レベルを継続的に維持するのに特に好ましい。または、in vivo療法について特定した範囲の血中濃度を維持するに十分な継続的静脈内
注入もまた意図される。
II. メチオニン枯渇方法
本発明を実施する際、先に記述したようにメチオニン含有物質をメチオニナーゼに接触させることによるメチオニン枯渇は、1つ以上の補足的メチオニン枯渇工程を伴うことができる。さらに、本発明は本明細書にさらに記述するように、メチオニンの枯渇が望ましい場合の種々の治療方法を意図する。
a.メチオニン飢餓
例えば、メチオニンの周辺レベルを先ず低下させるために、メチオニン飢餓工程を用いてもよい。飢餓工程は、メチオニナーゼ接触工程に先立って、または該工程の間に実施される、腫瘍細胞をメチオニン飢餓期間の間メチオニンを含まない栄養分に接触させることを含む。メチオニン飢餓工程は、メチオニンを欠く培地(すなわち、低レベルのメチオニンを含む、またはメチオニンを全く含まない培地)のin vitro使用を含んでもよく、またはメチオニンを含まない食餌のin vivo使用を含んでもよい。メチオニンを含まない培地は組織培養技術において周知である。典型的な培地は、GIBCO等から入手可能な、非必須アミノ酸を含むイーグルの最少必須培地(メチオニンおよび塩化コリンを欠く)である。メチオニン欠乏アミノ酸ダイエット食品もまた市販されており、Teklad, Inc.から入手可能なダイエットTD 92077を含む。
メチオニン飢餓工程のための期間は、具体的な使用方法によって大幅に変わりうる。この期間は、メチオニンの細胞培養物、組織または血管濃度がより低いレベルに低下し、そしてそれ以上の実質的なレベル低下を停止するのに十分な期間である。典型的な期間は約6時間から約2か月でありうるが、好ましくは約1日から2週間である。
メチオニンは必須アミノ酸なので、本方法の多数の使用が正常細胞にとって幾らか毒性でありうることが理解されねばならない。しかし、本明細書に記述するように、正常細胞と腫瘍細胞はメチオニン前駆体ホモシステインを違った風に代謝するので、ホモシステインは腫瘍細胞のメチオニン依存性を救助しないが、正常細胞のメチオニン欠乏を補うことができる。
したがって、関連する実施態様において、本発明は、正常細胞によって必要な栄養補充をもたらすために使用されるホモシステインまたはその類似体等のメチオニン前駆体によって補充されうるメチオニン欠乏栄養物(培地または食餌)を用いる方法を意図する。ホモシステインを約5から約200μM、好ましくは約10から約100μMの濃度で栄養培地に添加することができる。
この実施態様において有用な好ましいメチオニン前駆体は、L-ホモシステイン-チオラクトン、ホモシステイン、および4-メチルチオ-2-オキソブタン酸を含む。
したがって、1つの実施態様においては、本発明はメチオニンの血管内濃度を枯渇させる期間にわたって哺乳動物にメチオニン欠乏食餌を与える工程を含む。該食餌は場合により、メチオニン補充物としてメチオニン前駆体を含んでもよい。または、メチオニン前駆体を注射または周知の他の経路により投与してもよい。食餌補充物としてのホモシステインの好ましい日用量は、1日につき哺乳動物体重1kgあたり約5から約1000 mgのホモシステインである。ホモシステインの投与経路は、典型的には添加すべきメチオニナーゼのそれと同じであり、該補充物を送達する標的組織に依存する。
b.メチオニンを利用する酵素の競合的インヒビター
実施例に記述する観察の後に、メチオニンを利用する酵素の競合的インヒビターが、本明細書に記載のメチオニン枯渇法の効果を相乗的に増大させるのに有用であることがさらに判明した。したがって、本発明は腫瘍細胞をある量のメチオニンのインヒビターに、メチオニンを利用する酵素によってメチオニン代謝を阻害するのに十分な期間接触させることをさらに含むメチオニン飢餓工程の使用を意図する。競合的インヒビターを引き出すのに有用なメチオニンを利用する酵素は、S-アデノシルメチオニンデカルボキシラーゼ、メチオニンt−RNAシンターゼおよびメチオニンアデノシルトランスフェラーゼを含む。
好ましくは、メチオニンを阻止するのに必要とされる期間は、メチオニン飢餓期間自体の継続期間である。
メチオニンの競合的インヒビターは、メチオニンを利用する酵素の基質としてメチオニンと競合し、それゆえ直接競合によって、内因性メチオニンが奏するかもしれない任意の正常な代謝効果を阻害するように作用する。すなわち、メチオニン代謝を阻害する。細胞がメチオニンおよび付随するメチオニン代謝を必要とする場合、競合的インヒビターはメチオニンの代謝を低下させるように作用し、これは高いメチオニン濃度をもたらし、インヒビターが存在しない場合に観察されるのと同じ効果を生じる。
メチオニンの競合的インヒビターは、古典的な競合的インヒビターとして機能する任意のメチオニン誘導体でありうる。典型的な競合的インヒビターは、メチオニンのアルキル誘導体(すなわち、アルキルチオニン類)を含み、これらの誘導体ではメチオニンのメチル基がエチル基(エチオニン)、プロピル基(プロチオニン)、ブチル基(ブチオニン)、またはペンチル基(ペンチオニン)によって置換されている。
シクロロイシンおよびハロゲン化メチオニンもまた有用なメチオニンの競合的インヒビターとして考えられる。典型的なハロゲン化メチオニンは、フルオロメチオニン、クロロメチオニン、ブロモメチオニンおよびヨードメチオニンからなる群より選択される。したがって、意図されるメチオニンの競合的インヒビターは、アルキルチオニン、シクロロイシン、およびハロゲン化メチオニンからなる群より選択され、ここでアルキルチオニンはメチオニンではない。
競合的にメチオニンを阻止するのに有効な、メチオニンの競合的インヒビターの量とは、メチオニンの有効濃度を低下させる量である。この量は、典型的には、実施例に示すように、存在するメチオニンに対してモル過剰である。典型的には、インヒビターのこの量はメチオニンが競合させられる培地中のメチオニン濃度に対して10から1000倍モル過剰であり、好ましくは少なくとも20倍モル過剰、そしてより好ましくは少なくとも50倍モル過剰である。インヒビターがin vivoで用いられる場合は、その用量は本明細書に示すように典型的には動物の体重1kgあたり約5〜30 mg、好ましくは約25 mg/kgである。
効果的であるために必要とされるインヒビターの量は、インヒビターが投与される時に存在する内在性メチオニンの量によって変わりうる。メチオニン濃度とインヒビターの有効濃度との関係は、実施例に示す用量滴定結果によって示される。そしてこの関係は、競合的インヒビターの古典的な反応速度論によって規定される。インヒビターの典型的な量は、約10μMから約1 mMである。
さらに、効果的インヒビターの量は、本明細書に記述するin vitro組織培養法によってあらかじめ定めて、まず特定の腫瘍組織における本明細書に記載の任意の方法によるメチオニン枯渇の効果的条件を確立し、次にインヒビターの有効濃度を決定することができる。
メチオニンの競合的インヒビターを用いることによるメチオニン代謝の阻害は、実施例に記載のインジケーター(indicator)を含む種々のインジケーターによりモニターすることができる。これらのインジケーターは、組織を培養して細胞周期阻止のインジケーターとしてDNA含有量を測定すること、およびメチオニンを含まない食餌を与えたマウスにおける腫瘍組織増殖の阻止の増大、を含む。当業者には他のインジケーターも明らかであろう。
c.多重メチオニン枯渇法を用いた相乗効果 - 抗メチオニン化学療法
1つの実施態様において、本発明は、2つ以上の異なるメチオニン枯渇法を用いた場合に起こる相乗作用を利用するために、一般に抗メチオニン化学療法と呼ばれるメチオニン枯渇のための多重法の使用を意図する。
本明細書に記述するメチオニン枯渇方法は、以下のものを含む。すなわち、(1)メチオニンを含まない培地(in vitro)または食餌(in vivo)を用いたメチオニン飢餓、(2)酵素的に内在性メチオニンレベルを枯渇させるためのメチオニナーゼへの暴露、(3)メチオニンレベルがすでに低下している場合は、特に(1)および(2)と組み合わせて、内在性メチオニンの有効レベルを低下させるメチオニンの競合的インヒビター、および(4)他の3つのメチオニン枯渇法の任意のものの腫瘍細胞に対する選択性を増大させる、本明細書に記載のホモシステイン等のメチオニン前駆体の使用である。
したがって、メチオニン枯渇のための本明細書に記載の抗メチオニン化学療法は、上記の方法の種々の組み合わせのいずれによっても実施することができる。これらの組み合わせは、(1)+(2)、(1)+(3)、(2)+(3)、(1)+(2)+(3)、およびこれら4つの組み合わせのいずれかプラス(4)を含む。
メチオニンの最大限枯渇および生じる代謝生成物の点から特に好ましいのは、メチオニンを含まないがメチオニン前駆体を含む食餌の使用、およびこれに加えて、メチオニンの競合的インヒビターおよびメチオニナーゼの使用である。
III. 抗有糸分裂腫瘍療法の増強
別の実施態様において、本発明は本明細書に記載のメチオニン枯渇法を、従来の化学療法の効力および選択性、好ましくは癌療法に使用される抗有糸分裂剤の選択性を増大させる(増強する)ための方法に使用することを意図する。
従来の抗有糸分裂療法と組み合わせてメチオニン枯渇工程を使用する重要な目的は、以下の事実を利用することである。すなわち、メチオニン枯渇は選択的かつ特異的に腫瘍細胞増殖を有糸分裂の前で停止させるので、細胞、組織、培地または血管系にメチオニンを充満させると、静的細胞は同調的に細胞周期を開始して有糸分裂に入り、細胞集団が一様に増殖するようになり、細胞周期特異的化学療法の効果を受けやすくなる、という事実である。腫瘍細胞に細胞周期静止を引き起こすために、任意の細胞周期毒性剤を使用することができる。そのような作用物質は当業者には周知である。好ましい実施態様においては、細胞周期毒性剤は抗有糸分裂剤である。
したがって、好ましい実施態様において、本発明は、静的腫瘍細胞を形成するための本明細書に記載のメチオニン枯渇法、およびそれに続く以下の付加的工程を含む抗腫瘍化学療法の方法を意図する:
(a)静止腫瘍細胞を細胞周期誘導量のメチオニンと接触させて静的腫瘍細胞の有糸分裂を開始させ、それによって有糸分裂細胞を形成し、そして
(b)該有糸分裂細胞を、該有糸分裂細胞の有糸分裂を阻止するに十分な量の抗有糸分裂剤に接触させ、それによって腫瘍細胞の増殖を阻止する。
メチオニン、メチオニン塩、および静的細胞の細胞周期を開始させるように機能するそれらの機能性等価物は、細胞周期誘導剤と呼ばれ、これらは組み合わせてまたは単独で、メチオニンを枯渇させた腫瘍細胞集団の1以上の静的細胞において細胞周期および有糸分裂を開始させるための試薬として用いることができる。
細胞周期誘導剤の細胞周期誘導量とは、メチオニンを枯渇させた腫瘍細胞集団の静的細胞の少なくとも少数(10%)、好ましくは大多数、そしてより好ましくは少なくとも90% において細胞周期を開始させる量である。細胞周期の開始および程度は、組織学的マーカーまたは代謝マーカーの使用により容易に測定することができる。メチオニンについては、細胞周期誘導量は典型的には約1 μMから約2.5 mM、好ましくは約10〜250μMである。S期特異的薬剤を同様に用いて、メチオニンを充満させた時にまだS期に留まっている腫瘍細胞を攻撃することができる。
細胞周期誘導剤の静的腫瘍細胞への接触(投与)経路はさまざまであるが、典型的にはメチオニナーゼまたは競合的インヒビターを投与するのに用いる本明細書に記載の経路と同じである。
静的腫瘍細胞を細胞周期誘導剤に接触させる時機および期間は、腫瘍および経験的(例えば、本明細書に記載の組織培養法によって)に決定することができる他の要件によって変わりうる。細胞周期誘導剤は、抗有糸分裂剤の前に、または実質的にこれと同時に添加することができる。特定の抗有糸分裂剤が迅速に作用し、また細胞周期の誘導が遅いことが分かっている場合は、誘導剤を抗有糸分裂剤の前に添加することが有利であろう。これらのパラメーターは、特定の腫瘍タイプ、組織の位置、抗有糸分裂剤の選択、等に依存しうる。さらに、時機、用量および薬剤選択等の変数の最適化を、治療組成物のin vivo投与に先立って、種々の方法により容易に実施することができる。好ましい最適化手順は、本明細書に記載の典型的組織培養アッセイ系の使用である。
抗有糸分裂剤を接触させる時機は、静的腫瘍細胞の細胞周期の誘導に依存する。
典型的には、抗有糸分裂剤は、細胞周期進行中の任意の時期、および細胞が有糸分裂を始めて直ぐに、有糸分裂細胞と接触させることができる。幾つかの腫瘍細胞集団においては、誘導剤の添加後にこの現象が迅速に起こり、静的腫瘍細胞への誘導剤および抗有糸分裂剤の同時またはほぼ同時の添加を可能とする。または、抗有糸分裂剤を誘導剤の約1時間から30日後に添加してもよいが、好ましくは誘導の1または2日以内に添加する。
本明細書に使用する抗有糸分裂剤または他の細胞周期特異的作用物質は、細胞増殖、有糸分裂または細胞周期に向けられた、細胞毒性に基づく作用機構を示す任意の作用物質でありうる。したがって、抗有糸分裂剤は代謝拮抗物質、または分裂中の(有糸分裂)細胞に異なった様式で毒性を示す種々の化合物の任意のもの含みうる。本発明の方法に用いる抗有糸分裂剤の好ましい臨床薬理学は、細胞有糸分裂活性の阻害、核酸合成の阻害、アルキル化剤、抗生物質、アルカロイド、およびそれらに類似した抗腫瘍剤である。薬理学の分野が絶え間なく進歩するかぎりにおいて、本発明は現在公知の抗有糸分裂剤および他の細胞周期特異的作用物質に限定されるものではなく、むしろ公知化合物、新規に発見された化合物、または開発された化合物の等価物、並びに必要な活性を示す類似の作用物質の使用を含むものであることが理解されねばならない。
典型的なアルキル化剤は、シクロホスファミド(CTX; cytoxan)、クロラムブシ
ル(CHL; leukeran)、シスプラチン(CisP; platinol)、ブスルファン(myleran)
、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、ストレプトゾトシン(streptozotocin)、トリエチレンメラミン(TEM)、マイトマイシンC、および類似のアルキル化剤である。
典型的な代謝拮抗物質は、メトトレキセート(MTX)、エトポシド(VP16; vepesid)、6-メルカプトプリン(6MP)、チオグアニン(6TG)、シタラビン(Ara-C)、5-フルオロウラシル(5FU)、ダカルバジン(DTIC)、および類似の代謝拮抗物質を含む。
典型的な抗生物質は、アクチノマイチンD、ドキソルビシン(DXR;アドリアマイシン)、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよび類似の抗生物質を含む。
典型的なアルカロイドは、ビンクリスチン(VCR)、ビンブラスチン等のビンカアルカロイド等を含む。
他の抗腫瘍剤は、タキソールおよびタキソール誘導体、デキサメタゾン(DEX;decadron)等の細胞増殖抑制剤グルココルチコイド、プレドニゾン等のコルチコステロイド、ヒドキシ尿素等のヌクレオシド酵素インヒビター、アスパラギナーゼ等のアミノ酸枯渇酵素、および類似の多様な抗腫瘍剤を含む。
上記の抗有糸分裂(細胞毒性)剤の合成および製剤は周知であり、種々の文献に記述されているので、本明細書では繰り返し記述しない。上記作用物質の合成および製剤のための典型的文献は、Physician's Desk Reference, Barnhart編、Medical Economics Company, Inc., Oradell, N.J., 1992; およびMerck Index, 第11版、Merck & Co., 1989を含む。
化学療法における上記の細胞毒性剤の使用は、癌治療技術において一般に良く特徴付けられており、本明細書におけるそれらの使用は、若干の調整を加えれば、耐性および効果をモニターし、また投与経路および用量をコントロールするために考慮すべき事柄は癌治療のそれらと同一である。例えば、細胞毒性剤の実際の用量は、本発明の組織培養法を用いて測定された、患者の培養細胞の応答によって変わりうる。一般に、本明細書の開示に示すように、同調化細胞周期の不在下で使用される量に較べ、用量は減らされる。
効果的細胞毒性剤の典型的な用量は、製造業者によって推奨される範囲内にありうる。そしてin vitro応答または動物モデルにおける応答によって表示される場合には、マグニチュード濃度または量の約1桁分まで用量を減らすことができる。したがって、実際の用量は医師の判断;患者の状態;および一次培養した悪性細胞または組織培養した組織サンプルのin vitro応答性、または適切な動物モデルにおいて観察された応答に基づく治療法の効果に依存する。
IV. 遺伝子療法
別の実施態様においては、本発明は、本発明のメチオニナーゼ接触法によって処理すべき組織または該組織周辺のリンパ球内でメチオニナーゼを発現させるために、rDNAの使用を意図する。この目的のため、調節可能なメチオニナーゼ発現遺伝子を発現させ、それによってメチオニナーゼ遺伝子産物を産生させることにより、メチオニナーゼを接触工程のために提示することが考えられる。
先に記述したように、使用することのできる、現在公知の非常に様々な、メチオニナーゼの発現に適切な発現ベクターが存在する。1つの実施態様においては、メチオニナーゼ遺伝子の発現は調節可能である。したがって、発現ベクターは、第1のメチオニナーゼをコードする配列に機能しうる形で連結された第2のヌクレオチド配列を有し、これはメチオニナーゼ遺伝子の発現を調節するための手段を規定する。典型的な手段は誘導性プロモーターで、好ましくは腫瘍特異的プロモーターである。その中でメチオニナーゼ遺伝子の発現が腫瘍特異的プロモーターによって制御される発現モジュールは、本明細書に記載の遺伝子療法に特に有用である。
誘導性プロモーターの1クラスは、培養培地に添加することができる、またはメチオニナーゼ遺伝子を発現するための該遺伝子を含む宿主細胞に容易に浸透できる成分に対し、応答性である。別のクラスは、上記の腫瘍特異的プロモーター、例えば癌胎児性抗原(CEA)である。
したがって、本発明はメチオニナーゼと腫瘍細胞集団との接触が以下の工程を含む、メチオニン枯渇法をも意図する:
(i) 発現ベクターを腫瘍細胞、もしくは腫瘍に浸潤しているリンパ細胞またはそれらの骨髄前駆体にin vivoまたはex vivoで導入し(ここで該発現ベクターはメチオニナーゼをコードし、メチオニナーゼの調節された発現が可能であるヌクレオチド配列を有し、かつメチオニナーゼの発現を調節する手段を提供するヌクレオチド配列を有する)、メチオニナーゼ遺伝子でトランスフェクトされた細胞を形成し;
(ii) 腫瘍細胞をin vivoで上記メチオニナーゼ遺伝子でトランスフェクトされた細胞に接触させ;そして
(iii) メチオニナーゼをコードするヌクレオチド配列を該トランスフェクトされた細胞中で発現させ、それによって該トランスフェクトされた細胞中でメチオニナーゼを産生させ、そしてそれによって腫瘍細胞を産生されたメチオニナーゼと接触させる。「導入する」とは、発現ベクターに含まれる遺伝子が標的細胞によって発現されるような様式で発現ベクターを標的細胞に挿入する、当業者に公知の任意の方法を意味する。この導入は、ex vivoまたはin vivoで実施することができる。このような「導入」は、例えばトランスフェクション、形質転換、またはウイルス感染によって実施することができる。
腫瘍細胞のトランスフェクションは、付着細胞であれ、浮遊細胞であれ、またはin vivoの細胞であれ、種々の公知のトランスフェクション法によって達成することができる。その後、トランスフェクトされた細胞(ex vivoトランスフェクションを用いた場合)を宿主中に再導入し、処置すべき組織の天然の、適切な近辺に位置させ、それによってトランスフェクトされた細胞を処置すべき腫瘍細胞と接触させる。トランスフェクトされる細胞へのメチオニナーゼの導入は種々の手段によって達成可能であるが、一般には選択マーカーの存在を必要とする。
1つの実施態様においては、遺伝子の発現を調節する手段は、培地に添加することのできる試薬に対して応答性の誘導性プロモーターである。この例はメタロチオネインプロモーターである。または、誘導性プロモーターは腫瘍特異的プロモーターでありうる。このようなプロモーターは、メチオニナーゼの発現を腫瘍細胞に向けるように作用する。
トランスフェクトされるべき細胞は、腫瘍細胞のサンプル、または腫瘍に浸潤している細胞等の正常な免疫細胞(例えば、腫瘍に浸潤しているリンパ球または、造血幹細胞、前駆細胞等の骨髄の骨髄前駆体)でありうる。上記細胞はin vivoまたはex vivoでありうる。
実施例9は、メチオニナーゼをコードする核酸分子の単離を記述する。この実施例はさらにメチオニナーゼを産生するためのバッチ発酵に用いる発現ベクターの作製を記述する。当業者は、例えばpAC-1 中に提供されるようなクローン化メチオニナーゼ遺伝子を容易に使用して、上記の遺伝子療法における使用に適した発現カセットを作製することができる。
C.治療組成物
別の実施態様においては、本発明は、治療上有効量の実質的に単離された、好ましくは遺伝子組換えにより産生されたメチオニナーゼを、製薬上許容される担体と共に含む治療組成物を意図する。
L−メチオニナーゼ(L−メチオニン−α−デアミノ−γ−メルカプトメタン−リアーゼまたはメチオニナーゼ)は、脱アミノ反応および脱チオメチル反応によりメチオニンを分解する酵素である。メチオニナーゼ活性は、少なくともメチオニンの開裂後に形成されるα−ケト酪酸の量を測定することにより測定することができる。メチオニナーゼの1単位(U)は、Itoら,J. Biochem., 79:1263-1272, 1976;およびSoda, Analyt. Biochem. 25:228-235, 1968に記述される標準的アッセイ条件下で、メチオニンから1分あたり1マイクロモルのα−ケト酪酸を生成する酵素の量と定義される。
メチオニナーゼは、実施例9および12に記述するような細菌培養物からの直接単離、またはメチオニナーゼタンパク質をコードする組換えDNA分子からの発現を含めて、種々の源から調製することができる。
メチオニナーゼの細菌性供給源は、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、シュードモナス・オバリス(Pseudomonas ovalis)およびアエロモナス種(Aeromonas sp.)、並びに他の任意の潜在的メチオニナーゼ供給源を含む。P.プチダ株はATCCから商業的に入手可能であり、それぞれ受託番号ATCC 8209およびATCC 7955を有する。他の細菌は、一般に学究的な研究機関から入手可能である。メチオニナーゼの精製は、種々の方法によって記述されている。例えば、Kreisら, Cancer Res., 33:1862-1865, 1973; Tanakaら, FEBS Letters 66:307-311, 1976; Itoら,J. Biochem., 79:1263-1272, 1976; Nakayamaら,Agric. Biol. Chem. 48:2367-2369, 1984;およびSoda, Analyt. Biochem. 25:228-235, 1968 参照。しかし、これらの方法はいずれも高度に純粋な、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼをもたらしていない。本発明は、メチオニナーゼが実質的にエンドトキシンを含まなくなるように精製するために用いた2つの方法を提供する。
好ましいメチオニナーゼは、タンパク質1 mgあたり約10〜約50単位(U)の比活性を有する。精製メチオニナーゼの典型的調製物は、約10〜約50 U/mgの比活性を有すると本明細書に記述されている。実施例12において、発現ベクターpAC-1を用いて調製したメチオニナーゼは、約20.1 U/mgの比活性を有していた。
好ましいメチオニナーゼは、好ましくは実質的に単離されている。実質的に単離されているとは、該酵素が重量を基準として少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも99%純粋であるか、または本質的にホモジニアスであることを意味する。好ましいタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)等の電気泳動媒体を用いて分析すると、本質的にホモジニアスである。PAGEにかけるとホモジニアスであるとは、検出可能なバンドが一本のみであることを意味する。
好ましいメチオニナーゼは、静脈内または腹腔内投与等によってエンドトキシンが生理的に哺乳動物体内で接触した場合のエンドトキシンに伴う望ましくない副作用ゆえに、細菌性リポ多糖等のエンドトキシンを実質的に含まない。実質的に含まないとは、メチオニナーゼタンパク質 1 mg あたり約10 ng未満のエンドトキシン、好ましくはメチオニナーゼ 1 mg あたり 1 ng未満のエンドトキシン、そしてより好ましくはメチオニナーゼ 1 mg あたり 0.1 ng未満のエンドトキシンを意味する。エンドトキシンのアッセイは治療技術の分野で周知であり、種々の方法のうち任意のものにより実施することができる。好ましい方法は実施例に記述されている。
好ましいメチオニナーゼは、その保存性および高温条件下で使用された場合(例えば動物の体内におけるin vivo使用)の効果を増大させるように、熱安定性である。熱安定性とは、酵素が60℃に10分間暴露されて、その比活性の80%、好ましくは90%、より好ましくは95%を保持できることを意味する。
好ましいメチオニナーゼは、少なくとも5時間、好ましくは6時間、より好ましくは少なくとも7時間の血清半減期を有する。
特に好ましいのは、P.プチダから調製されたメチオニナーゼ、またはP.プチダから単離されたメチオニナーゼをコードするDNA分子を含む発現ベクターを用いて調製したメチオニナーゼである。P.プチダメチオニナーゼは、PAGE−SDSで分析した場合、約43キロダルトンの見かけ分子量を有する。好ましいメチオニナーゼ精製法を実施例に記述する。
したがって、治療組成物は、生理的に許容される担体を、活性成分としてそこに溶解または懸濁させた実質的に単離されたメチオニナーゼと共に含む。好ましい実施態様においては、該治療組成物は治療上の目的でヒト患者に投与した場合、免疫原性でない。
本発明の1実施態様は、ポリマーに結合させたメチオニナーゼからなる、化学的に改変されたメチオニナーゼを特徴とする。好ましくは、上記メチオニナーゼは実質的に単離されており、かつ実質的にエンドトキシンを含まない。「化学的に改変された」とは、天然から精製されたメチオニナーゼと異なった形に変化させた、任意の形のメチオニナーゼを意味する。好ましくは、メチオニナーゼをポリエチレングリコール等のポリマーと結合させることにより化学的に改変する。
本明細書中に用いる「製薬上許容される」、「生理的に許容される」という用語およびそれらの文法的変形は、それらが組成物、担体、希釈剤および試薬に言及している場合、相互交換可能に使用され、そして該物質が望ましくない生理的効果(例えば、吐き気、めまい、胃のむかつき等)を生じることなく哺乳動物またはヒトの内部または上に投与可能であることを表す。
溶解または懸濁させた活性成分を含む医薬組成物の調製は、当分野でよく理解されている。典型的には、そのような組成物は、水性または非水性の液体溶液または懸濁物の形で無菌の注射剤として調製されるが、使用前に液体中に溶解または懸濁するのに適した固形製剤としても調製することができる。該調製物を乳化することもできる。特に好ましいのは、本明細書に記載のリン脂質およびリポソーム組成物である。さらに、治療量のメチオニナーゼを軟膏または拡散性パッチ(包帯等)中に存在させ、該作用物質の局所的送達をもたらすこともできる。
活性成分を、製薬上許容され、かつ該活性成分と適合し、本明細書に記載の治療法に使用するのに適切な量の賦形剤と混合することができる。適切な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセリン等およびそれらの組み合わせである。さらに、所望であれば、該組成物は少量の湿潤化剤、乳化剤、pH緩衝化剤、等の活性成分の効果を増強する補助的物質を含むことができる。
本発明の治療組成物は、活性成分の製薬上許容される塩を含むことができる。製薬上許容される塩は、無機酸(塩酸またはリン酸、等)または有機酸(酢酸、酒石酸、マンデル酸、等)によって形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離のアミノ基によって形成される)を含む。遊離のカルボキシル基によって形成される塩もまた、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化第二鉄等の無機塩基およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等の有機塩基から誘導することができる。
生理的に許容される担体は、当分野で周知である。典型的な液体担体は、活性成分および水以外は何も含まない、またはそれら以外に生理的pH値のリン酸ナトリウム等の緩衝液、リン酸緩衝化生理食塩水等の生理食塩水、またはその両方を含む、無菌の水性溶液である。さらに、水性担体は2以上の緩衝塩、並びに塩化ナトリウムおよび塩化カリウム等の塩、デキストロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、および他の溶質を含むことができる。
液体組成物は、水の他に、および水を除外して、本明細書に記載するように液相をも含むことができる。そのような付加的液相の典型的例は、グリセリン、綿実油等の植物油、オレイン酸エチル等の有機エステル、および水−油エマルジョン、特に先に記述したリポソーム組成物である。
治療組成物は有効量のメチオニナーゼを、典型的には治療組成物の全重量に対して少なくとも0.1 重量パーセントの活性タンパク質を、そして好ましくは少なくとも25重量パーセントの活性タンパク質を含む。重量パーセントとは、全組成物に対するメチオニナーゼタンパク質の重量比である。したがって、例えば、0.1 重量パーセントは全組成物100 gあたり0.1 g のメチオニナーゼである。
メチオニナーゼ組成物がin vivoで静脈内に用いることができる限り、1つの実施態様においてメチオニナーゼの制御された送達のための治療組成物を製剤し、そして場合により、メチオニナーゼタンパク質を分解、および投与されたメチオニナーゼの血清半減期を減少させるであろう他の現象から保護することが意図される。
したがって、1つの実施態様においては、本発明は送達ビヒクル、例えばポリマー、ポリマー性ビヒクル、粒子、ラテックス、コアセルベート、イオン交換樹脂、リポソーム、腸溶剤皮(enteric coating)、媒介物、バイオ接着剤、マイクロカプセル、ヒドロゲル等および類似のビヒクルを含む治療組成物を意図する。リポソームを含む典型的な薬物送達ビヒクルは、少なくともTarchaによって"Polymers For Controlled Drug Delivery", CRC Press, Boca Raton, 1990に記述されている。
本発明はさらに、他の公知の方法に較べてより優れた収率および純度をもたらすメチオニナーゼの詳細な精製方法を提供する。組換えメチオニナーゼ、特にメチオニナーゼをコードする高発現モジュールを含む形質転換宿主を用いて産生したメチオニナーゼの好ましい精製法は、以下の工程を含む:
a)水性緩衝液中にメチオニナーゼを含む、形質転換細胞の抽出物を約40〜60℃で約1〜10分間、好ましくは50℃で1 分間加熱し;
b)加熱した抽出物をGS−3ローター(Sorval Du Pont)を用いて約10kから20k rpmで約15分から1時間、好ましくは約13k rpm で約30分4 ℃で遠心し;
c)細孔径が約50Kから100Kのフィルター、好ましくはMillipore Pre/Scale:TTF PLHK 100 K 2.5 ftカートリッジを用いて、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 8.3)を用いて上清を限外濾過し;
d)低イオン強度(約10〜50 mM)のKClをpH約7.0〜7.6の10-20 mMのリン酸カリウム緩衝液中で用いて、DEAEイオン交換クロマトグラフィーを実施し(好ましくはDEAE-Sepharose FF カラムを用いる)、そして約40〜200 mMのKCl勾配を用いて溶出した、メチオニナーゼを含む画分を回収し;
e)中程度イオン強度(50〜100 mM)のKClをpH約8.0〜8.6の10-20 mMのリン酸カリウム緩衝液中で用いて第2のDEAEイオン交換クロマトグラフィーを実施し(好ましくはDEAE-Sepharose FF カラムを用いる)、そしてリン酸緩衝液(pH8.3)で緩衝化した100〜200 mM KClを用いて溶出した、メチオニナーゼを含む画分を回収し;そして
f)上記工程e)で回収した画分を、エンドトキシンを吸収することのできるクロマトグラフィー媒体と接触させ(好ましくは ActicleanTM Etoxカラムを使用する)、そして溶出液を回収し、これによって該溶出液からエンドトキシンを除去して、タンパク質 1 mgあたり少なくとも20単位の活性を有し、かつタンパク質 1 mgあたり約1〜100 ngのエンドトキシンを含む、実質的にエンドトキシンを含まないメチオニナーゼを形成する。
好ましくは、細胞抽出物は高レベル(全細胞性タンパク質の5〜75%)の組換えメチオニナーゼを発現するように変更された宿主細胞から調製される。または、本来メチオニナーゼを発現する生物を出発材料として用いることができる。細菌の細胞抽出物については、抽出物は一般にまず集菌し、そして細菌細胞培養物を洗浄して、集菌が遠心でなされたか又は中空糸濾過によってなされたかによって細胞ペースト/ペレットを形成することにより調製される。これらの方法は一般に周知である。
次に、通常の手段を用いて細胞を破砕する。好ましくは、キャビテーター(cavitator)型ホモジナイザー、例えばMicrofluidics Corp.モデル #HC8000等のホモジナイザーを用いて細胞を破砕する。
得られた懸濁物を加熱して、選択タンパク質および他の不溶性物質を沈殿させる。典型的加熱条件は、約45-60 ℃で1-10分間である。50℃1分間の加熱工程が好ましい。加熱した抽出物を遠心にかけて破砕物を除去し、上清を濾過して、上記のように2工程にしてDEAEイオン交換媒体に適用する。このましい吸着および溶出条件を実施例に記述する。これらの工程では、種々のDEAEイオン交換カラムクロマトグラフィー媒体の任意のものが使用でき、媒体の選択は限定的なものと解釈されるべきではない。商業的供給源は、Pharmacia Fine Chemicals、BioradおよびSigmaを含む。
その後、エンドトキシンを除去して、先に記述した許容されるレベルのエンドトキシンを含むタンパク質を調製する。エンドトキシン除去工程は、周知の種々の手段のうち任意のものを用いて実施でき、そして典型的には溶液中のタンパク質をエンドトキシンを吸着することのできるクロマトグラフィー媒体に接触させて、エンドトキシンを含まないタンパク質を含有するクロマトグラフィー媒体溶出液を得ることを包含する。エンドトキシンの除去に用いる好ましい市販の試薬は、Acticlean TM Etoxである。
D.化学的に改変されたメチオニナーゼ
メチオニナーゼの半減期を延長し、かつその免疫原性または抗原性を減少させるため、メチオニナーゼをポリマーと結合させることができる。
過敏な患者においてはアレルギー性応答の可能性がある。他方、抗メチオニナーゼ抗体はメチオニナーゼの半減期を短くする可能性がある。
ポリペプチドおよびタンパク質の抗原性の問題を解決しようと試みて、種々のアプローチが採用されてきた。ポリエチレングリコール等のポリマーをタンパク質と結合させることは、タンパク質の抗原性を減少させるアプローチの1つである。本発明は、新規でかつ効果的な方法によって産生されるメチオニナーゼの化学的改変に関する。この改変においては、精製メチオニナーゼはこの酵素の活性が維持される条件下でポリエチレングリコール(PEG)と結合される。本発明のPEG−メチオニナーゼは延長された半減期を有し、また明白な免疫原性を何ら有さない。
ポリエチレングリコールに結合した新規なメチオニナーゼ(「PEG−メチオニナーゼ」または「PEG化 (PEGylated)メチオニナーゼ」)は、高いメチオニン枯渇活性、延長された半減期、および低い免疫原性を示す。したがって、PEG化メチオニナーゼは、安定性を維持し、該酵素の血清半減期を延長し、免疫原性を低下させ、そして毒性を低下させる一方で、腫瘍増殖を阻止する新規な手段を提供する。
安定で、長い半減期を有してメチオニン枯渇に有効であり、そして非免疫原性であるPEG化メチオニナーゼの発明は、安全で効果的な多数回投与用の抗腫瘍剤として利用可能である。PEG−メチオニナーゼは、10 mM のリン酸ナトリウム(pH 7.2)に溶解した0.12 M塩化ナトリウム液体製剤中に -70℃、4 ℃および室温で活性を喪失することなく保存することができる。
重要なことに、本発明のPEG−メチオニナーゼは、メチオニナーゼに感受性であって反復投与を必要とする癌患者を治療するのに該メチオニナーゼを特に望ましいものとする非免疫原性である。当業者は、メチオニナーゼとして該PEG−メチオニナーゼが種々の剤形で提供され得ることを認識するであろう。
精製された、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼの好ましい剤形は、0.06 Mから0.2 M の濃度で、10 mMリン酸緩衝液(pH 7.2)に溶解した0.12 M塩化ナトリウム中にあることである。この活性は約10単位/mg である。
PEG化メチオニナーゼは、当業者に周知の手段によって試験することができる。例えば、in vivo試験を用いて、本発明の方法により作製したPEG−メチオニナーゼの薬理学、安全性および機能的特徴を確認することができる。
このような試験は、急性毒性の測定、PEG−メチオニナーゼの薬物動態、血清中のメチオニンの枯渇、およびPEG−メチオニナーゼの免疫原性の評価を含む。
精製された、エンドトキシンを含まないPEG−メチオニナーゼを、マウスの尾静脈に注射し、そして血液サンプルを2 時間ごとに採取する。メチオニナーゼのレベルを活性アッセイにより測定する。メチオニンのレベルを、メチオニン誘導体化後HPLCによって測定する。
急性毒性試験は、実施例5および15に記載するような任意の適切な実験動物を用いて実施することができる。マウスにおいては、1 〜10 mgあたり10〜100単位のPEG−メチオニナーゼを尾静脈に注射する。生死に関わる兆候および視覚的観察を記録する。血液サンプルは、注射前および注射後2 時間毎に採取する。メチオニナーゼ活性およびメチオニンレベルの両方を測定する。腎および肝機能の両方もまた測定する。肺、腎臓、肝臓および脳等の組織に及ぼす毒性効果の存在または不在を標準的技法により確認する。血液および骨髄も分析する。
別の実施態様においては、メチオニナーゼをポリマーに結合させて実質的に非免疫原性な組成物をもたらし、またin vivoにおけるメチオニナーゼ活性の半減期の増大をもたらす。
1つの実施態様においては、ポリマーに結合させることによりメチオニナーゼを化学的に改変する。
別の実施態様においては、ポリアルキレンオキシドに結合させることによりメチオニナーゼを化学的に改変する。ポリアルキレンオキシドの例は、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドのコポリマー、およびプロピレンオキシドのコポリマーを含むが、これらだけに限定されない。
好ましい実施態様においては、ポリエチレングリコールと結合させることによりメチオニナーゼを化学的に改変する。
別の好ましい実施態様においては、ポリエチレングリコールに結合させたメチオニナーゼはエンドトキシンを実質的に含まない。
本発明はまた、ポリマーと結合した治療上有効量のメチオニナーゼを含む医薬組成物を提供する。該ポリマーは例えばポリアルキレンオキシドであってよいが、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレンオキシドのコポリマー、およびプロピレンオキシドのコポリマーに限定されない。
好ましい実施態様においては、ポリエチレングリコールと結合した治療上有効量のメチオニナーゼを含む医薬組成物が提供される。別の好ましい実施態様においては、該医薬組成物は、実質的にエンドトキシンを含まず、かつポリエチレングリコールと結合した治療上有効量のメチオニナーゼを含む。このような組成物は、本来メチオニナーゼを産生する生物、または好ましくはメチオニナーゼを発現するように変更された宿主から単離した物質から調製することができる。
ポリマーと結合したエンドトキシンを含まないメチオニナーゼの作製方法もまた提供される。この方法は、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼをポリマーと結合させ、実質的に非免疫原性の、化学的に改変された、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼを形成することによる。
好ましい実施態様においては、該方法はメチオニナーゼをポリエチレングリコールと結合することを含む。
さらに好ましい実施態様においては、該結合はエンドトキシンを含まないメチオニナーゼをメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルカルボネートと反応させることにより実施される。
治療上有効量のメチオニナーゼを投与することを含む、腫瘍を有する患者の治療方法もまた提供される。
好ましい実施態様においては、該メチオニナーゼはエンドトキシンを実質的に含まない。
さらに好ましい実施態様においては、該メチオニナーゼはポリマーと結合している。
別の実施態様においては、該ポリマーはポリアルキレンオキシドである。
E.組換えメチオニナーゼの製剤
本発明はさらに、凍結乾燥形態または結晶形態のメチオニナーゼを提供する。詳細には、メチオニナーゼは当分野で公知の方法を用いて容易に凍結乾燥または結晶化できることが観察された。得られるメチオニナーゼ調製物(凍結乾燥形態または結晶形態)は、高度に安定で、容易に水和することができ、そして再水和の後でも高い活性を維持することが判明した。
当分野で公知の種々の方法を用いて、結晶化または凍結乾燥形態のメチオニナーゼを得ることができる。実施例においては、メチオニナーゼの凍結乾燥および結晶化はVerdis, Freeze mobile 24を 100ミリバールで -80℃で72時間用いて実施した。当業者は、凍結乾燥形態または結晶形態のメチオニナーゼを作製するのに用いるため、当分野で公知の他の手段を容易に適合させることができよう。
F.DNAセグメントおよびベクター
I.メチオニナーゼをコードするDNA分子
メチオニナーゼをコードする単離されたDNA分子をプロモーター、特にT7RNAポリメラーゼプロモーター等のRNAポリメラーゼプロモーターに機能しうる形で連結することにより、適切な宿主細胞に導入した場合、組換えメチオニナーゼが全細胞性タンパク質の約5〜75% のレベルで発現されうることが判明した。したがって、本発明は適切な条件下で宿主に導入すると高レベルの組換えメチオニナーゼを発現する高レベル発現モジュールを提供する。
本明細書に用いる「高レベル発現モジュール」または「本発明の発現モジュール」とは、メチオニナーゼをコードする機能しうる形で連結されたヌクレオチド配列の転写および翻訳を引き出す1つ以上の発現制御要素を含む核酸分子をいう。
この発現モジュールは、単離された核酸分子でありうる。またはベクター(下に記述する)中に存在することができる。
本発明の発現モジュールは、産生される組換えメチオニナーゼが全細胞性タンパク質の約5〜75% 、好ましくは全細胞性タンパク質の10% 以上に相当するようにメチオニナーゼの発現を引き出す制御要素を含んでいる。好ましい発現制御要素は、RNAポリメラーゼプロモーターであり、最も好ましいのはT7 RNAポリメラーゼプロモーターである。RNAポリメラーゼプロモーターの他の例は、TacおよびTrcプロモーターを含むが、これらだけに限定されない。
プロモーターとは、RNAポリメラーゼの結合を可能にし、転写を起こさせるDNA配列によって形成される発現制御要素である。特定の宿主系に適合性のプロモーター配列が当分野で公知であり、そして典型的には、1以上の好都合な制限部位を含むプラスミドベクター中に提供される。このようなプラスミドベクターの典型は、商業的供給者およびAmerican Type Culture Collection等の種々の供給源から入手可能なT7 RNAポリメラーゼプロモーター、pT7 およびpETを含むベクターである。
本発明の発現モジュールは、メチオニナーゼをコードする核酸配列をさらに含む。本明細書中では、ある核酸配列は、該配列を含む核酸分子の転写および翻訳がメチオニナーゼ活性を有するタンパク質の産生をもたらす場合、メチオニナーゼをコードするという。
L−メチオニナーゼ(L−メチオニン−α−デアミノ−γ−メルカプトメタン−リアーゼまたはメチオニナーゼ)は、脱アミノ反応および脱チオメチル反応によりメチオニンを分解する酵素である。メチオニナーゼ活性は、少なくともメチオニンの開裂後に形成されるα−ケト酪酸の量を測定することにより測定することができる。メチオニナーゼの1単位(U)は、Itoら,J. Biochem., 79:1263-1272, 1976;およびSoda, Analyt. Biochem. 25:228-235, 1968に記述される標準的アッセイ条件下で、メチオニンから1分あたり1マイクロモルのα−ケト酪酸を生成する酵素の量と定義される。
メチオニナーゼをコードする核酸配列は、本来メチオニナーゼを産生する生物から得た変更されていない配列からなることができる。または、本来メチオニナーゼを産生する生物から得た配列で、1つ以上の核酸またはアミノ酸置換、欠失または付加を含むように変更された配列からなることができる。
変更されたものであれ変更されていないものであれ、メチオニナーゼをコードする核酸分子はメチオニナーゼを本来産生する任意の生物から引き出すことができる。メチオニナーゼをコードする核酸分子の好ましい供給源は、シュードモナス・プチダである。実施例9は、P.プチダ由来のメチオニナーゼをコードする核酸分子の単離および配列決定を開示する。メチオニナーゼをコードする核酸分子の他の好ましい供給源は、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ニッポストロンジラス・ブラジリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)およびフゾバクテリウム属種(Fusobacterium sp.)を含むが、これらだけに限定されない。
メチオニナーゼの完全なコード配列は、種々の供給源、特に上記の供給源から種々の方法を用いて得ることができる。P.プチダ以外の生物からのメチオニナーゼをコードする核酸分子の単離は、図8に示すアミノ酸および核酸配列によって非常に容易となる。
特に、当業者は図8に示す核酸配列を用いて、メチオニナーゼ発現生物由来のメチオニナーゼをコード る核酸を選択的に増幅するポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)に用 るオリゴヌクレオチドプライマーの対を容易に作製できる。図8に示す配列に づく好ましいPCRプライマー対は:
である。
上記PCRプライマーを使用するための好ましいPCR変性/アニーリング/伸長サイクルは、以下の通りである。すなわち、95℃で10分間最初の変性;次に94℃で30秒間変性、60℃で30秒間アニーリング、そして72℃で2 分間伸長からなるサイクルを5回;次に94℃で30秒間変性、60℃で30秒間、そして72℃で1.5分間伸長からなるサイクルを25回;次に72℃で10分間最終伸長である。PCR増幅産物は2本のバンドで、このうち1365 bpのバンドを採取し、挿入ONCase−1 DNAとして精製した。
または、図8のヌクレオチド配列の断片をプローブとして用いて、シュードモナス・プチダ以外の生物からメチオニナーゼをコードするDNAを公知の方法で単離することができる。約18〜20個のヌクレオチドを含むオリゴマー(約6〜7個のアミノ酸の1続きをコードする)を調製し、これをプローブとして十分なストリンジェンシー条件下でゲノムDNAとハイブリダイズさせ、周知の手順を用いて誤った陽性物を除去する。(Sambrookら、Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Press 1989参照)。
プローブまたはポリメラーゼチェーンリアクション(PCR)の特異的プライマーとして使用されるDNA配列(すなわち、合成オリゴヌクレオチド)、およびメチオニナーゼをコードする遺伝子配列は化学的技法、例えばMatteucciら(J. Am. Chem. Soc. 03:3185-3191, 1981)のホスホトリエステル法によって、または自動合成法を用いて容易に合成することができる。さらに、周知の方法(例えば、DNAセグメントを規定する1群のオリゴヌクレオチドを合成し、次にオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションと連結を行い、完全なセグメントを構築する)によってより大きいDNAセグメントを容易に調製することができる。
PCRおよびDNAプローブに基づく方法に加えて、メチオニナーゼをコードするDNA分子は、ポリクローナル抗血清、または免疫原性であることが予測される図8のペプチド断片に対して産生させたモノクローナル抗体を用いて単離することができる。このような抗体は、特定の生物から作製された発現ライブラリー(λ gt11 ライブラリー等)を釣り上げて、P.プチダ以外の生物由来のメチオニナーゼをコードするDNA分子を得ることができる。
天然に存在する、メチオニナーゼをコードする核酸分子がいったん得られたならば、当業者はランダムまたは部位特異的突然変異誘発手順を採用して、メチオニナーゼをコードする配列を発現レベルを増大させるように、またはコードされたメチオニナーゼから1個以上のアミノ酸を置換、付加または削除するように変更することができる。
1つの実施態様においては、メチオニナーゼをコードする配列は、コードされたメチオニナーゼのアミノ酸配列を変えずに、特定の宿主細胞における組換えメチオニナーゼの発現レベルを増大させるように変更される。特定の宿主における組換えメチオニナーゼの発現増加は、核酸分子中に存在する1個以上のコドンを、得られるコドンが特定アミノ酸をコードするのに宿主生物によってより頻繁に使用されるものであるように変更することによって達成できる。好ましいコドンを含むように核酸配列を変更することは、部位特異的突然変異誘発等の公知の手順を用いて、または該好ましいコドンを含む核酸分子を合成することによって、達成できる。
発現に影響を及ぼす変更の他に、得られるタンパク質の精製を容易とするように、メチオニナーゼをコードする核酸を変更することができる。例えば、実施例に開示するように、組換えメチオニナーゼのアミノまたはカルボキシ末端にポリヒスチジンの1続きを加えるように変更することによって、Ni++ Sepharoseを用いて得られた融合タンパク質を精製することができる。
メチオニナーゼをコードする配列を変更して、コードされたメチオニナーゼのアミノ酸配列に1個以上のアミノ酸残基を付加、置換または削除するように変化を導入することも可能である。得られる組換えメチオニナーゼは、好ましくは、より良い生物学的および生理学的特性(例えば、増大した活性、低下したKm、低下した免疫原性、または増大した血清半減期、等)をもつ組換えメチオニナーゼをもたらす変更を含む。このような変更された形は、合理的に設計するか、またはランダムに生成される。
変更が最初のおよび最終的なタンパク質のアミノ酸配列並びに所望の生理学的特性に基づいて特異的に選択されている場合、その変更は合理的に設計されたと表現される。例えば、合理的に設計された変更の1タイプは、疎水性アミノ酸をより疎水性の低い残基と置換して溶解性を増大させるものである。合理的に設計された変更を創出する好ましい方法は、不適正(mismatched)PCRプライマー伸長法を用いた部位特異的突然変異誘発である。
変更が合理的に選択されない場合、その変更はランダムに生成されたと表現される。化学的突然変異誘発、PCRシャフリング(shuffling)およびリンカースキャニング突然変異誘発、等のランダム突然変異誘発技法は、特定のタンパク質コード配列において非常に多様なランダムで非特異的な変更を発生させる。このような方法は、メチオニナーゼをコードする核酸分子を徹底的に変更するのに用いることができる。
次に、この様式で創出された組換えメチオニナーゼの変更された形を、種々の公知方法を用いて所望の特性に関してスクリーニングする。用いる選択法の選択は、宿主、ベクターおよび採用された突然変異誘発法、並びに選択される特性に依存する。
本発明はさらに、本発明の発現モジュールを1以上含むベクターを提供する。ベクターとは、宿主内で自律複製が可能なDNA分子である。ベクターは天然に存在するプラスミド由来のエピソーム性複製起源、ゲノム性複製機転を含むことができる。または、ベクターはウイルスゲノムから引き出すことができる。本発明の発現モジュールを挿入すべきベクターの選択は、当分野で周知のように、所望の機能特性(例えば、タンパク質の発現)および形質転換すべき宿主細胞に直接依存する。
1つの実施態様においては、ベクターは原核生物のレプリコンを含む。Co1E1レプリコン等の原核生物のレプリコンは当分野で周知であり、本発明の発現モジュールと組み合わせて容易に採用することができる。さらに、ベクターは薬剤耐性等の選択マーカーをコードする遺伝子を含むことができる。
真核生物発現ベクターもまた本発明の発現ベクターと組み合わせて用いることができる。真核細胞発現ベクターは当分野で周知であり、幾つかの商業的供給源から入手可能である。そのようなベクターの典型的なものは、PSVL、pKSV-10 (Pharmacia)、pBPV-1/pML2d (International Biotechnologies, Inc.)、pTDT1 (ATCC, #31255)、本明細書に記述するベクターpCDM8、および類似の真核生物発現ベクターである。さらに、バキュロウイルスに基づくベクター系等の昆虫細胞発現系を用いて、高レベル発現ベクターを創出することができる。
一般には、メチオニナーゼをコードする高発現モジュールの創出は典型的に以下の工程を包含する:
第1に、メチオニナーゼをコードするDNAを得る。もしその配列がイントロンによって中断されていないならば(細菌由来のものに期待されるように)、それは任意の宿主における発現に適している。メチオニナーゼをコードする配列を挟む両側の領域に1以上の制限エンドヌクレアーゼ部位を挿入することにより、この配列を容易に切り出して回収できる形に変更することができる。
次に、切り出した、または回収したコード領域を、好ましくは複製可能な発現ベクター中で、高発現制御要素に機能しうる形で連結する。次に、発現モジュールまたはベクターを用いて適切な宿主を形質転換し、そして形質転換した宿主を組換えメチオニナーゼの産生をもたらす条件下で培養する。場合により、組換えメチオニナーゼを培地または細胞から単離する。若干の不純物が許容される幾つかの場合には、タンパク質の回収および精製は必要ないことがある。
上記の各工程は、種々の方法で実施することができる。例えば、所望のコード配列をゲノム断片から得て、適切な宿主中で直接使用することができる。種々の宿主中で機能できる発現ベクターの構築は、2つ以上の適切なレプリコンおよび制御要素を用いて行なうことができる。通常は利用可能でないにしても、適切な制限酵素部位をコード領域の両端に付加して、上記のベクターに挿入すべき切り出し可能な遺伝子を提供することができる。
II. 高レベルの組換えメチオニナーゼを発現する形質転換宿主細胞
本発明はさらに、全細胞性タンパク質の約5〜75% を、好ましくは約10% 以上を組換えメチオニナーゼとして産生するように、本発明の発現モジュールまたはベクターを用いて形質転換した宿主細胞を提供する。宿主細胞は原核生物または真核生物宿主でありうる。
任意の原核生物宿主を用いて、本発明の高レベルメチオニナーゼ発現モジュールを発現させることができる。好ましい原核生物宿主は大腸菌である。以下の実施例においては、大腸菌のDH5αおよびBL21(DE3)株を使用した。
好ましい真核宿主細胞は、昆虫細胞、酵母細胞および哺乳動物細胞を含み、好ましくはSP6等の昆虫細胞およびマウス、ラット、サル、またはヒト繊維芽細胞細胞系由来のもの等の脊椎動物細胞を含む。他の好ましい真核宿主細胞は、ATCCよりCCL61として入手可能なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ATCCよりCRL 1658として入手可能なNIHスイスマウス胚細胞NIH/3T3、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、および類似の真核生物組織培養細胞系である。
本発明の高レベル発現組換えモジュールを用いた適切な宿主の形質転換は、典型的には使用する宿主およびベクターのタイプに依存する周知の方法によって達成することができる。原核宿主細胞の形質転換に関しては、宿主細胞のエレクトロポレーションまたは塩処理が好ましい。例えば、Cohenら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 69:2110, 1972; およびManiatisら, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY (1982)参照。
真核宿主細胞の形質転換に関しては、エレクトロポレーションまたはカチオン性脂質の使用が好ましい。例えば、Grahamら,Virol. 52:456, 1973;およびWiglerら,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:1373-76, 1979 参照。
上首尾に形質転換された細胞、すなわち本発明の発現モジュールを含む細胞は、周知の技法により同定することができる。例えば、本発明の発現モジュールの導入によって得られた細胞をクローン化して単一コロニーを生成させることができる。これらのコロニー由来の細胞を集め、溶解し、Southern, J. Mol. Biol., 98:503, 1975 またはBerentら, Biotech. 3:208, 1985に記述されているような方法を用いて、それらのDNA含有量をrDNAの存在について検査することができる。しかし、以下に記述するように、本発明はさらに、高レベルの組換えメチオニナーゼを発現する形質転換体を同定するための迅速なスクリーニング方法をも提供する。
III. 高レベルの組換えメチオニナーゼを発現する宿主の同定
本発明はさらに、組換えメチオニナーゼを全細胞性タンパク質の約5〜75% のレベルで産生する形質転換宿主細胞を同定する方法を提供する。具体的には、全細胞性タンパク質の約5〜75% を組換えメチオニナーゼとして発現する形質転換宿主細胞は、明瞭で観察可能なピンク色を有することが観察された。これは大腸菌を宿主として使用した場合、特に顕著である。
高レベルの組換えメチオニナーゼを発現する形質転換体を同定するため、組換えメチオニナーゼが発現される条件下で、そして増殖細胞の視覚による検査が可能な条件下で、形質転換細胞を培地上または培地中で増殖させる。増殖細胞またはコロニーを検査し、ピンク色の表示に基づいて選択する。
本方法を用いた選択のため、種々の培養/増殖条件を採用して形質転換宿主細胞を増殖させることができる。増殖培地の成分は使用される宿主/ベクター系の栄養要求、および高レベルの組換えメチオニナーゼの発現に伴うピンク色を同定し、それによって高レベル発現クローンの単離を可能とするために用いられる検査系に依存する。好ましい培地は、その上に形質転換細胞を播いて、それぞれが単一の宿主に由来する単離された複数のコロニーとして増殖させることができる固体培地である。高レベル発現クローンを同定する好ましい方法は、増殖するコロニーの視覚による検査である。
IV. 高レベル発現モジュールを用いた組換えメチオニナーゼの産生
本発明はさらに組換えメチオニナーゼを産生する方法を提供する。具体的には、本発明の高レベル発現モジュールを1つ以上用いて形質転換した宿主を用いて、商業的に有意義なレベルで組換えメチオニナーゼを産生することが可能である。
そのような形質転換宿主は、全細胞性タンパク質の約5〜75% のレベルで組換えメチオニナーゼを発現するであろう。本発明の宿主を用いれば、当業者は公知の方法を用いた種々の診断および治療法に使用する組換えメチオニナーゼを容易に産生することができる。
メチオニナーゼをコードする高発現モジュールを含む形質転換宿主を用いて産生した組換えメチオニナーゼ、または本来メチオニナーゼを産生する宿主から産生されたメチオニナーゼの好ましい精製法は、以下の工程を含む:
a)水性緩衝液中にメチオニナーゼを含む、形質転換細胞の抽出物を約40〜60℃で約1〜10分間、好ましくは50℃で1 分間加熱し;
b)加熱した抽出物をGS−3ローター(Sorval Du Pont)を用いて約10kから20k rpmで約15分から1時間、好ましくは約13k rpm で約30分4 ℃で遠心し;
c)細孔径が約50Kから100Kのフィルター、好ましくはMillipore Pre/Scale:TTF PLHK 100 K 2.5 ftカートリッジを用いて、10 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 8.3)を用いて上清を限外濾過し;
d)低イオン強度(約10〜50 mM)のKClをpH約7.0〜7.6の10-20 mMのリン酸カリウム緩衝液中で用いて、DEAEイオン交換クロマトグラフィーを実施し(好ましくはDEAE-Sepharose FF カラムを用いる)、そして約40〜200 mMのKCl勾配を用いて溶出した、メチオニナーゼを含む画分を回収し;
e)中程度イオン強度(50〜100 mM)のKClをpH約8.0〜8.6の10-20 mMのリン酸カリウム緩衝液中で用いて第2のDEAEイオン交換クロマトグラフィーを実施し(好ましくはDEAE-Sepharose FF カラムを用いる)、そしてリン酸緩衝液(pH8.3)で緩衝化した100〜200 mM KClを用いて溶出した、メチオニナーゼを含む画分を回収し;そして
f)上記工程e)で回収した画分を、エンドトキシンを吸収することのできるクロマトグラフィー媒体と接触させ(好ましくは ActicleanTM Etoxカラムを使用する)、そして溶出液を回収し、これによって該溶出液からエンドトキシンを除去して、タンパク質 1 mgあたり少なくとも20単位のメチオニナーゼ活性を有し、かつタンパク質 1 mgあたり約1〜100 ngのエンドトキシンを含む、実質的にエンドトキシンを含まないメチオニナーゼを形成する。
好ましくは、細胞抽出物は高レベル(全細胞性タンパク質の5〜75%)の組換えメチオニナーゼを発現するように変更された宿主細胞から調製される。細菌の細胞抽出物については、抽出物は一般にまず集菌し、そして細菌細胞培養物を洗浄して、集菌が遠心でなされたか又は中空糸濾過によってなされたかによって細胞ペースト/ペレットを形成することにより調製される。これらの方法は一般に周知である。
次に、通常の手段を用いて細胞を破砕する。好ましくは、キャビテーター(cavitator)型ホモジナイザー、例えばMicrofluidics Corp.モデル #HC8000等のホモジナイザーを用いて細胞を破砕する。
得られた懸濁物を加熱して、選択タンパク質および他の不溶性物質を沈殿させる。典型的加熱条件は、約45-60 ℃で1-10分間である。50℃1分間の加熱工程が好ましい。
加熱した抽出物を遠心にかけて破砕物を除去し、上清を濾過して、上記のように2工程にしてDEAEイオン交換媒体に適用する。好ましい吸着および溶出条件を実施例に記述する。これらの工程では、種々のDEAEイオン交換カラムクロマトグラフィー媒体の任意のものが使用でき、媒体の選択は限定的なものと解釈されるべきではない。商業的供給源は、Pharmacia Fine Chemicals、BioradおよびSigmaを含む。
その後、エンドトキシンを除去して、先に記述した許容されるレベルのエンドトキシンを含むタンパク質を調製する。エンドトキシン除去工程は、周知の種々の手段のうち任意のものを用いて実施でき、そして典型的には溶液中のタンパク質をエンドトキシンを吸着することのできるクロマトグラフィー媒体に接触させて、エンドトキシンを含まないタンパク質を含有するクロマトグラフィー媒体溶出液を得ることを包含する。エンドトキシンの除去に用いる好ましい市販の試薬は、Acticlean TM Etoxである。
G.高ホモシステイン血症に関連する心臓血管性疾患の予防のためのメチオニナーゼの使用
本発明の別な側面は、ホモシステイン枯渇療法のためのメチオニナーゼの使用である。高ホモシステイン血症は種々のタイプの心臓血管性疾患と関連してきた。
これらの疾患と高ホモシステイン血症との最初の関連付けは McCullyによって1969年になされた(McCully, KS, Am. J. Pathol. 56:111-28, 1969)。McCully は、上昇した血漿ホモシステイン濃度と動脈硬化性疾患の間に連結(link)を見いだした。最近結論が出されたFramingham Heart Studyによる1,041人の研究は、血漿ホモシステイン濃度の上昇は、動脈硬化の危険の増大をもたらすことを見いだした(Selhub, J.ら,N. Engl. J. Med. 32:286-91, 1995)。他の研究は、穏やかな高ホモシステイン血症までも末梢血管性、脳血管性および冠状動脈性心臓疾患と結び付けた(Kang, S.ら,Annu. Rev. Nutr. 12:279-98, 1992)。例えば、血管性疾患を有する患者における絶食(fasting)ホモシステイン濃度は、正常な被験者における濃度よりも31% 高い。正常の上限よりも12% 高い血漿ホモシステイン濃度は、心筋梗塞の危険における3.4 倍の増加と連結している(Stampfer, M.ら,JAMA 268:877-81, 1992)。ホモシステイン代謝の研究は、2000人以上の被験者に関する20件の対照および横断的研究において、発作および他の心臓血管性疾患を有する患者は、心臓血管性疾患をもたはい被験者に較べ、ホモシステインのより高い血中レベルを示すことが見いだされた。これは、心筋梗塞を有する殆どの患者が正常なコレステロール値を示す事実と対照的である。Physicians Health Study において驚くべき結果が判明した。すなわち、心臓血管性疾患が診断される前に血液を採取したとところ、後に心筋梗塞を起こした271 人の男性は心筋梗塞を起こさなかった対照に較べ、有意に高いホモシステインの平均基線レベルを有したことが示された(Ueland, P.ら,Cardiovascular Disease Hemostatis and Endothelial Function, New York: Marcel Dekler; 183-236, 1992)。種々の条件がホモシステインレベルの上昇をもたらしうるが、根本にある代謝上の原因に関わりなく、高レベルのホモシステインと血管性疾患の関係は存在する。直接試験において、ヒヒに血管性病巣を誘導し、3ケ月間ホモシステインを注入した(Ueland, P.ら,前出)。メチオニンを経口投与し、その後患者のホモシステインレベルを測定すると、高ホモシステイン血症が診断されるであろう。この経口メチオニンチャレンジ後の異常なホモシステイン血漿濃度は、動脈硬化性疾患を有する患者においては正常な被験者に較べて12倍である(Ueland, P.ら,前出)。血漿ホモシステインレベルはHPLCアッセイにより容易にかつ迅速に測定することができる。複数の研究が、人口の40% が上昇したホモシステインレベルを有する可能性があり、心臓血管性疾患の危険があることを示唆している(Stampfer, M. およびMalinow, M., New Engl. J. Med. 332:326-329 1995)。高ホモシステイン血症は、動脈硬化性疾患を誘導して患者を心筋梗塞および脳血管性疾患の危険に陥れる急性作用をもつ場合がある。したがって、心臓血管性疾患の危険がある患者の多くの部分に対し、緊急の医学的介入が指示された。本発明のメチオニナーゼは、危険な患者のホモシステインレベルを直ちに低下させるための緊急介入の優れた療法として用いることができる。メチオニナーゼは2つの反応を触媒する。すなわち、メチオニンにおけるばかりでなく、ホモシステインにおいても、窒素−炭素結合およびγ−炭素−硫黄結合の両方の開裂である(Hoffman, Bioch. et Biophys. Acta, Reviews on Cancer, 738:49-87, 1984)。図7は、ホモシステインおよびメチオニン代謝の代謝サイクルを示す。ビタミンB-12、B-6 および葉酸は図に示すサイクルの「左側」に影響を及ぼし、そしてメチオニナーゼ治療後のある患者における正常なホモシステインレベルの維持を助ける。しかし、サイクルの「右側」は、これらビタミンのレベルに依存しない。サイクルの右側では、メチオニンの存在がトランスメチル化反応の増大を介して過剰なホモシステインレベルをもたらしうる。これは、癌および動脈硬化性疾患をもたらしうる。サイクルの右側に異常を有する患者は、ホモシステインの正常レベルを維持するためにメチオニナーゼの持続的使用および緊急使用が必要であろう。心臓血管性疾患にとっては、メチオニナーゼのメチオニナーゼおよびホモシステインの両方に対する基質特異性が重要である。メチオニナーゼはホモシステインの前駆体であるメチオニンのレベルを低下させ、またホモシステインレベルを直接低下させる。この領域における以前の研究は、高ホモシステイン血を低下させる療法としてビタミンB-12、B-6 および葉酸の使用を示唆するのみであった。図7に示すように、単にこれらのビタミンを供給することは、サイクルの右側に存在する異常をなんら矯正せず、またサイクルの右側に異常を有する患者のホモシステインレベルを低下させないであろう。本発明は、メチオニナーゼを用いてこのような心臓血管性疾患を有する患者を治療する方法を含む。
1つの側面において、治療上有効量のメチオニナーゼを患者に投与することを含む、心臓血管性疾患を有する患者の治療方法が提供される。
ホモシステイン枯渇のための治療上有効量のメチオニナーゼとは、例えば動脈硬化の危険を減少させるために、所望のホモシステインレベルを達成すべく計算された、あらかじめ定められた量をいう。
したがって、本発明のメチオニナーゼを投与するための用量範囲は、例えば動脈硬化の危険またはレベルが低下するという、所望の効果を奏するに十分大きい用量である。用量は、好ましくない副作用、例えば高粘稠度症候群、肺水腫、うっ血性心不全、等を引き起こすほど大きくてはならない。一般に、用量は患者の年齢、状態、性別および疾患の程度によって変わり、当業者によって決定され得る。
何らかの合併症が生じた場合は、それぞれの医師が用量を調整することができる。
本発明のメチオニナーゼの治療上有効量は、典型的には、生理的に許容される組成物として投与した時に、1 mlあたり約0.001から約100単位(U) 、好ましくは約0.1 U以上、そしてより好ましくは1 Uメチオニナーゼという血管内(血漿)または局所的濃度を達成するのに十分な量である。典型的用量は体重に基づいて投与することができ、約5〜1000 U/kg/日、好ましくは約10〜50 U/kg/日、より好ましくは約20〜40 U/kg/日の範囲である。
好ましい方法においては、用いられるメチオニナーゼは本明細書中で詳述したように実質的にエンドトキシンを含まない。特に好ましいのは、組換えによって産生された実質的にエンドトキシンを含まないメチオニナーゼに使用である。
当業者に公知の投与方法を使用することができ、それらは本明細書に記述されている。
本発明の別な側面においては、エンドトキシンを実質的に含まない、そしてポリマーに結合したメチオニナーゼの治療上有効量を投与することにより、心臓血管性疾患を有する患者を治療する。好ましい側面においては、該ポリマーはポリエチレングリコールである。別の好ましい側面においては、該心臓血管性疾患は動脈硬化である。本発明の別の側面において、メチオニナーゼは頭蓋外頸動脈狭窄、末梢血管性、脳血管性、冠状動脈性疾患および閉塞性血管疾患を有する患者に投与される。
本発明の別な側面においては、治療上有効量のメチオニナーゼを投与することによる、高ホモシステイン血症を有する患者の治療方法が提供される。該メチオニナーゼは実質的にエンドトキシンを含まないことが可能で、またポリエチレングリコール等のポリマーと結合していることが可能である。
本発明はまた、患者に治療上有効量のメチオニナーゼを投与する工程を含む、患者のホモシステインレベルを低下させる方法を提供し、該方法においてメチオニナーゼは実質的にエンドトキシンを含まない。本発明の別な側面においては、患者に治療上有効量のメチオニナーゼを投与する工程を含む、患者における心臓血管性疾患を予防する方法が提供される。好ましい側面においては、患者に投与されるメチオニナーゼは実質的にエンドトキシンを含まない。別の好ましい側面においては、該メチオニナーゼはポリマーと結合している。さらに別の好ましい側面においては、患者に治療上有効量の、エンドトキシンを実質的に含まない、そしてポリエチレングリコールと結合しているメチオニナーゼを投与する工程を含む、患者における心臓血管性疾患を予防する方法が提供される。実施例7はin vivoホモシステイン枯渇の1例を示す。
H.腫瘍イメージングのためのメチオニナーゼの使用
本発明の別な側面においては、以下の工程を含んでなる、患者の腫瘍を診断する方法が提供される。すなわち、患者にメチオニナーゼを投与することにより該患者の12Cメチオニンを枯渇させ、次に11Cメチオニンを該患者に投与することにより該患者にメチオニンを充満させ、そして最終的に該患者の腫瘍細胞における11Cメチオニンの存在を検出する。11Cメチル化は、例えば、陽電子放出断層撮影法(PET)走査を手段として検出することができる。ただし、手段はこれだけに限定されない。当業者は癌細胞による11C取り込みを検出する他の方法に精通している。そのような方法は、例えば、全て参考のために本明細書に組み入れている Lapelaら, J. Nucl. Med. 35:1618-23, 1994; Miyazawaら,J. Nucl. Med. 34:1886-91, 1993; Leskinen-Kallioら,J. Nucl. Med. 33:691-95, 1992; Shieldsら,J. Nucl. Med. 33:581-84, 1992; Huovinenら,Brit J. Cancer 67:787-91, 1993; Dethyら,J. Nucl. Med. 35:1162-66, 1994; Lindholmら,J. Nucl. Med. 34:1711-16, 1993; Leskinen-Kalliorら,J. Nucl. Med. 32:1211-18, 1991; およびMineuraら,J. Nucl. Med. 32:726-28, 1991 を参照されたい。
本発明の好ましい側面においては、投与されるメチオニナーゼは実質的にエンドトキシンを含まない。
本発明の別の好ましい側面においては、該メチオニナーゼをポリエチレングリコール等のポリマーに結合させていた。
本発明に関する以下の実施例は説明的なものであって、言うまでもなく本発明を具体的に限定するものと解釈されるべきではない。さらに、現在公知であるかまたは後になって開発される、当業者の理解範囲内にある本発明の変法は、本明細書に後に記述する請求の範囲に含まれると考えるべきである。
実施例1
メチオニナーゼの拡大生産
シュードモナス プチダ(Pseudomonas putida)の一株を修飾し、カナマイシン耐性及び下記のような高レベルのメチオニナーゼ発現に対して選別した。
シュードモナス プチダ ATCC 8209及びエシェリキア コリ(E. coli) ATCC 77100を1993年10月にATCCから購入した。ATCC 77100を50μg/mlカナマイシンを含むLB(Sambrook ら, 分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory manual) A.1, 1989) 中で増殖させた。シュードモナス プチダ(P.putida)及びエシェリキア コリのいずれにおいても複製可能なカナマイシン耐性遺伝子を含有するシャトルベクター、プラスミド pCN 51 (Niecoら, Gene 87: 145-149, 1990。これは、ここで参照することにより本明細書に含まれるものである。)をATCC 77100から単離し、トリトン(Triton)−リゾチーム法を用いて精製した(Sambrook ら, 分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory manual) 1.29-1.30, 1989) 。ATCC 8209 をLB培地中で増殖させ、例えば、Sambrookら, 分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory manual) 1.74-1.84, 1989に記載された手順と同様の標準的な形質転換の手順を用いてpCN 51で形質転換した。カナマイシン耐性株をLB培地中でカナマイシン(100μg/ml) を用いて選別し、 100μg/mlカナマイシンを含むLBプレート(Sambrook ら, 分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory manual) A.1-A.4, 1989) 中でさらに増殖させた。単独のコロニーを 100μg/mlカナマイシンを含むLB中で一晩増殖させ、次いで高メチオニナーゼ発現条件下(50μg/mlカナマイシンを含む、10%LB、 0.1%リン酸カリウム緩衝液(pH7.2) 、 0.1%尿素、 0.025%酵母抽出物、0.01%硫酸マグネシウム及び0.25%メチオニン中)に、24時間置いた。メチオニナーゼの発現を本明細書中に記載したような標準的なメチオニナーゼアッセイを用いて測定した。シュードモナス プチダのメチオニナーゼ過剰産生株を選別し、AC-1と名付けた。
次いで、シュードモナス プチダ AC-1 の拡大発酵方法を用いた。単独のコロニー AC-1 を50μg/mlカナマイシンを含むLBプレート中で増殖させた。選別したコロニーを50μg/mlカナマイシンを含むLB5ml中で、26℃にて 250rpm/分で振盪しながら18時間インキュベートした。細菌2mlを50μg/mlカナマイシンを含むLB 600ml中で、26℃にて 200rpm/分で振盪しながら6時間増幅させた。次に、細菌50mlを50μM/mlカナマイシンを含むLB2リットル中で、26℃にて 100rpm/分で振盪しながら一晩(18時間)インキュベートした。続いて、細菌2リットル(OD600 1.2〜1.6)を、40リットルタンク中の10%LB、 0.1%リン酸カリウム緩衝液(pH7.2) 、0.1 %グリセロール、 0.1%尿素、 0.025%酵母抽出物、0.01%硫酸マグネシウム及び0.25%メチオニンを含む特別な培地中で、高好気性条件下、26℃にて24時間増殖させた。OD600 は 1.2〜1.8 に達し、活性は20〜30単位/リットルに達した。採収に最適な細胞密度は、OD600 1.5〜1.8 である(2〜3mg/lのメチオニナーゼを含有)。これは、1kg湿細胞/400リットルに等しい。好ましくは、おおよその収量が約1kg湿細胞/10〜20リットルである完全装備の発酵槽が用いられる。細胞をAGTカラム(モデル UFP-500-E-55 カートリッジ、A/G Technology社)を用いて温度を4℃に保持しながら採収し、次いで自動低温遠心分離機(Sorvall超高速RC2-B)を用いて4℃、9krpmにて10分間遠心分離した。続いて細胞ペレットを採取した。
次に、細胞を抽出溶液(20mMリン酸カリウム、pH9.0)中に 500g湿細胞/リットルの密度で懸濁し、キャビテーターホモジナイザー(Microfluidics社モデル#HC 8000) による三つの通路(passage) を用いて粉砕した。細胞を破壊した後、ただちにホモジネートを−80℃で保存した。ホモジネート中のメチオニナーゼの比活性は0.08〜0.1 単位/mg(タンパク質)であった。
AC-1ホモジネートを抽出緩衝液(10mMリン酸カリウム(pH7.2) 、10μM リン酸ピリドキサール、0.01%β−メルカプトエタノール、1mM EDTA 及び20%エタノール)中に懸濁し、50℃で2分間加熱した。加熱工程は、メチオニナーゼ活性を維持する一方で感熱性の混入タンパク質を沈殿させるのに十分な時間をかけて行われ得る。懸濁液を12krpmで4℃にて30分間遠心分離した。上清を採取してミリポアPrep/Scale-TFF PLHK 100K 2.5ft2 カートリッジを用いて限外濾過した。次いでpHを 7.2に調節した。
タンパク質を合計約25〜35g含む抽出緩衝液(10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2) 、10μM リン酸ピリドキサール及び0.01%J−メルカプトエタノール)10Lからなる試料を、10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2)で予備平衡化したToyopearl DEAE-650M カラム10cm×50cm(Toso Haas Japan) に加えた。このカラムを、10μM リン酸ピリドキサール及び0.01%β−メルカプトエタノールを含有し、40mM塩化カリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.2) 20〜30Lを用いてOD280 が 0.1以下に低下するまで予備洗浄した。次に、抽出緩衝液中の塩化カリウムの濃度が40mMから出発して 300mMまで増大する、塩化カリウムの直線グラジェントによってこのカラムからの溶離を行った。 400mlの溶出画分を集めた。メチオニナーゼを含む画分を本明細書中に記載したようなメチオニナーゼ活性アッセイによって定量し、プールした。プールされた画分を同一濃度のリン酸ピリドキサール及びβ−メルカプトエタノール並びに 150mM塩化カリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.3) を用いて予備平衡化した。
DEAE-650M (5cm×20cm) カラムのメチオニナーゼピークから得られたタンパク質を合計約1〜2g含む、10mMリン酸カリウム(pH8.3) 、 150mM塩化カリウム、10μMrinnsanピリドキサール及び0.01%J−メルカプトエタノールを含有する緩衝液からなる試料をDEAE-Sephadex A50-カラムに加えた。10μM リン酸ピリドキサール及び0.01%β−メルカプトエタノールを含有する10mMリン酸カリウム緩衝液(pH8.3) 中の 150〜500mM KCl 直線グラジェントを用いて前記カラムからの溶離を行った。 150mlの溶出画分を集めた。本明細書中に記載したような活性アッセイによって定量したメチオニナーゼを含む画分をプールした。次いで、プールされたメチオニナーゼをさらに精製してエンドトキシンを除去した。この試料を0.12M塩化ナトリウム及び10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1) 中で透析することによって予備平衡化した。この試料を5cm×15cm Acticlean Etox 樹脂カラム(Sterogen Bioseparations、アルカディア(Arcadia) 、カリフォルニア(CA)) に加えた。次に、同様の緩衝液を用いてカラムからその酵素を溶離させ、メチオニナーゼ活性を有する溶出画分を集めて、続いてエンドトキシンの量を溶出した画分について定量した。表1にこの精製方法の結果を示す。
7.5%SDS-PAGEゲルにおける精製メチオニナーゼの分析では1本の43kdのタンパ
ク質のバンドが現れた。これは、第2のカラムから得られた活性画分をSDS-PAGEによって分析したときに観察された 172kdのタンパク質の一つのサブユニットを示すものである。この方法によって単離されたメチオニナーゼの純度をHPLC分析(これはただ一つのタンパク質のピークを示した。)を用いて調べたところ98.7%であった。
本明細書に記載した抽出方法によれば、実質的にエンドトキシンを含まない実質的に単離されたメチオニナーゼを調製することができる。当業者には、ここで記載された抽出方法に修正がなされ得、それらが本発明の範囲に含まれるということは理解されるであろう。
実施例2
ヒト腫瘍の高レベルメチオニン依存性
ヒト癌においてメチオニン依存性はしばしば生ずる。全主要器官系由来の20のNCIヒト腫瘍細胞系についてメチオニン依存性を試験した。20の全ての細胞系がメチオニン依存性であることがわかった。さらに、新鮮なヒト腫瘍標本を試験したところ、メチオニン依存性であることがわかった。正常なヒト細胞系はメチオニン依存性ではなかった。
図1には一つのそのような試験の結果を示す。図1では、正常細胞株及び腫瘍細胞系を、メチオニン含有、ホモシステインフリー(MET HCY ) ;メチオニンフリー、ホモシステイン含有(MET HCY ) ;又はメチオニンフリー、ホモシステインフリー(MET HCY ) のいずれかである10%透析血清を含むイーグルのMEM中で増殖させた。腎臓、結腸、肺及び前立腺癌細胞系、黒色腫、並びに正常線維芽細胞株を、メチオニン(MET)含有培地、METフリー培地、ホモシステイン(HCY)含有培地及びMETフリー培地、ホモシステイン(HCY)含有培地及びMETフリー、HCYフリー培地中でスクリーニングした。10%透析ウシ胎児血清、10μM ヒドロキソコバラミン及び 100μM 葉酸を補給したイーグルの最小必須培地(MEM培地)中で細胞を増殖させた。培地には、下記の方法でメチオニンを補給するか、又はメチオニンを補給しなかった:MEM+HCY:培地にホモシステインを含まない 100μM L−メチオニンを補給した。METHCY+:培地にメチオニンを含まない 200μM D,L-ホモシステインを補給した。METHCY:培地はメチオニンフリーであり、ホモシステインフリーであった。ウシ胎児血清をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で10回透析した(血清:PBS=1:12)。
細胞増殖を、 450nmにおける吸収によって測定されるような色素XTTの代謝的還元によって定量した。細胞を、48ウェル皿上で、1ウェル当たり5×10 乃至2×104 細胞を接種することによって増殖させた。XTT(2,3- ビス(2-メトキシ-4- ニトロ-5- スルホフェニル)-5-[(フェニルアミノ) カルボニル]-2H- テトラゾリウムヒドロキシド(これは生細胞中で水可溶性ホルマザン生成物に代謝的に還元される)を用いて細胞増殖を定量した。 450nmにおける還元生成物の吸光度を測定した。XTTを予め温めた(37℃)PBS中で1mg/mlに調製し、フェナジンメトスルフェート(PMS)をPBS中で5mMに調製した。新鮮なXTT溶液をPMS保存溶液と、1mlのXTT当たり5 mlのPMSの割合で混合した。各ウェルを培地1mlで満たした。混合したXTT 0.25ml を各ウェルに添加した。 450nmにおける還元XTTの吸光度を、3時間のインキュベーション後に日立U-2000分光光度計を用いて読んだ。XTTのODを、細胞を24時間初期培養した後、3日毎に測定した。包皮線維芽細胞株FS−3及びHS−68は、 METHCY 又は MET HCY 中で本質的に同等に増殖した。しかしながら、両方の線維芽細胞株はある程度まで増殖し、次いで少なくとも16日間MET HCY培地中にそれ自体を維持することができるという新たな所見をここに報告する。表2に20の腫瘍細胞系の細胞増殖アッセイの結果を示す。このアッセイにおいて、細胞懸濁液中の5×10 〜2×10 細胞/ウェルを48−ウェルプレートにて、10%ウシ胎児血清を含むMEM中で24時間培養した。細胞をハンクス塩基性塩類溶液(HBSS)で2回洗浄し、次いで3群に分けた。I群: MET HCY 培地で培養した細胞;II群: MET HCY 培地中で培養した細胞;III 群: METHCY 培地中で培養した細胞。細胞を95%空気/5%CO を供給したインキュベーター中で培養した。培地は2〜3日毎に交換した。表2には、細胞系の激しい増殖を+++で示し、少しの増殖を++で示し、わずかな増殖を+で示し、増殖無しを−で示した。腫瘍細胞系の約2分の1はMETフリーHCY含有培地中で増殖することができず、残りはいろいろな程度まで増殖する一方で、それと同じ培地中で正常細胞はMET含有培地における増殖と同じくらい十分に増殖することができる。METフリー、HCYフリー培地中では、正常細胞株はある程度まで増殖し、次いで2週間以上それを維持することができるが、試験された20の全腫瘍細胞系はかかる培地中で死滅し、これは潜在的に全ての癌をMET欠乏によって選択的に殺すことができるということを示唆するものである。本実施例は、メチオニン依存性が、特に治療薬としてのメチオニナーゼとともに癌の治療に対して万能で選択的なターゲットであり得るという証拠を提供するものである。
実施例3
マウス異種移植片モデルにおけるメチオニナーゼによるヒト腫瘍増殖の阻害
腫瘍増殖の低減におけるメチオニナーゼの効力を試験するために、マウス異種移植片モデルを用いた。ヒト肺癌腫瘍(H460)をヌードマウスの皮下組織に移植した。マウスを4匹ずつの4群に分けた。移植の4日後、A群には4時間毎に緩衝液(0.1
2M塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム(pH7.1)) 0.4ml を腹腔内注射によって投与し;B群には4時間毎にメチオニナーゼ(1単位/g)を腹腔内注射によって投与し;C群には4日毎に5−FU(60mg/kg)を腹腔内注射によって投与し;そしてD群には4日毎にビンクリスチン(VCR)(0.9mg/kg)を腹腔内注射によって投与した。腫瘍のサイズ及び体重を2日毎に測定した。
その結果を図2及び3に示す。それらの結果は、メチオニナーゼによる治療がヌードマウスにおけるH460ヒト非小細胞肺癌の増殖を大いに遅延させるということを示している。これらの実験において、マウスには通常のメチオニンが枯渇していない食餌を与えた。H460に対するメチオニナーゼの効力は、5-フルオロウラシル及びビンクリスチン治療(これらはかかる腫瘍に対しては不活性である)とは全く対照的であった。投与されたメチオニナーゼの活性は、40〜120
単位/日での10日間までの治療では体重減少を引き起こさず、これは低毒性の可能性を示すものである。それとは対照的に、ビンクリスチンは体重減少を引き起し、これは毒性を示すものである。このように、メチオニナーゼは最小毒性の新規腫瘍選択的作用機構を有する非常に有効な抗腫瘍剤であり、ヒト固形腫瘍に対する潜在的な臨床的有効性を示すものである。
実施例4
PEG−メチオニナーゼの調製
分子量5000のメトキシポリエチレングリコールスクシンイミジルカーボネート(M−SC 5000 PEG)を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.3)に2mM乃至20mMの濃度で溶かした。M−SC 5000 PEGとメチオニナーゼの比率は6:1と 240:1の間で変化させた。PEG化反応は反応緩衝液(25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.3)中で4℃又は20℃にて30分から60分間行った。0℃にて停止緩衝液(0.14Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5)を用いて反応を停止させた。次いで、未反応のM−SC 5000 PEGを本明細書中に記載したようなゲル濾過クロマトグラフィーによって除去した。得られたPEG−メチオニナーゼを0.12M塩化ナトリウム及び10mMリン酸ナトリウム(pH7.2)溶液中に30k Amicon Centriprep濃縮器を用いて配合した。次に、PEG−メチオニナーゼを 0.2μM ミクロン膜フィルターを用いて濾過することによって滅菌した。PEG−メチオニナーゼは−70℃にて6カ月まで活性を損失することなく保存し得る。
メチオニナーゼ活性を測定した。PEG−メチオニナーゼの活性は、非PEG化メチオニナーゼの活性の少なくとも60%に維持されていた。PEG−メチオニナーゼを、Laemmli 及びSambrook(Laemmli, Nature 227-680,1970; Sambrook ら, 分子クローニング:実験の手引き(Molecular Cloning: A Laboratory manual) 18.47-18.59, 1989) に記載されたような未変性及びSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析した。この電気泳動は下記のようにして修正を加えた:PEG−メチオニナーゼの電気泳動はSDSを含むか又はSDSを含まない 0.2Mトリス−グリシン緩衝液(pH8.3)中の 7.5%ポリアクリルアミドプレキャストゲル中で行った。ゲルをクーマシーブルーで染色し、40%メタノール10%酢酸を用いて脱色した。PEG−メチオニナーゼを未変性ゲルに加えた場合、非修飾メチオニナーゼのバンドは観察されなかったが、SDSゲル中では非常に小さいバンドが観察された。
次に、PEG−メチオニナーゼをHPLCゲル濾過カラムによって下記のようにして分析した:PEG−メチオニナーゼ(1〜2mg/mlで20 ml)を20μm ループを用いて 0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)中のProgel-TSK G3000 SW(Supelco)カラムに加えて、 0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)にて流量 1.0ml/分で溶離させた。タンパク質のピークはPEG−メチオニナーゼのピークが一つだけ検出され(未反応のPEGは含まれない);非PEG化メチオニナーゼのピークは検出されなかった。PEG−メチオニナーゼの純度は約 100%であった。
a)PEG化反応の経時進行研究
メチオニナーゼに対するポリエチレングリコールの結合の経時進行を下記のようにして測定した:メチオニナーゼ0.07mMを、M−SC 5000 PEG 0.4mMを含む 0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.3)と、4℃にて2時間までの様々な時間にわたって反応させた。 0.2Mリン酸ナトリウム(pH6.5)を用いて種々の時点で反応を停止させた。未反応PEGを30k Amicon centriprep 濃縮器を用いて除去した。その結果を表3に示す。
PEG−メチオニナーゼを本明細書中に記載したようにして未変性及びSDS−PAGEゲル上で分析した。高分子量のバンドの出現を観察し、表3に−、+−、+、又は++の記号で示す。−はPEG−メチオニナーゼ又はメチオニナーゼがないことを示し、+−は少量のPEG−メチオニナーゼ又はメチオニナーゼが存在することを示し、そして++は多量のPEG−メチオニナーゼ又はメチオニナーゼが存在することを示す。また、表3にPEG−メチオニナーゼ又はメチオニナーゼの活性も示す。
*M =メチオニナーゼ、**P=M−SC 5000 PEG

b)M−SC 5000 PEG を用いたメチオニナーゼPEG化の濃度依存性
0.07mMのメチオニナーゼを、種々の濃度(0.4mMから4.0mM)のM−SC 5000 PEGを含む 0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.3)と反応させた。モル比は1:6〜1:60であった。反応を実施例aと同様の条件で4℃にて60分間行った。
その結果を表4に示す。
c)PEG−メチオニナーゼの薬物速度論(Pharmokinetics)
M−SC 5000 PEGを有するメチオニナーゼとメチオニナーゼのPEG化のモル比は、それぞれ1:6(P1)及び1:12(P2)であった。反応は上記(b) と同じ条件で行った。精製されたP1及びP2並びに非修飾メチオニナーゼを、3つの異なる群のマウスの尾静脈にそれぞれ注射した。血液試料を0、1、2、3、4及び20時間後に集めた。メチオニナーゼ及びPEG−メチオニナーゼの活性アッセイ、並びにメチオニンの枯渇のレベルを測定した。その結果を表5に示す。
実施例5
モルモットにおけるPEG−メチオニナーゼを用いた抗原性実験
メチオニナーゼをM−SC 5000 PEGとそれぞれ1:60、1:120 及び1:240 のモル比で20℃にて30分間反応させた。その他の条件は上記(a) と同様である。PEG−メチオニナーゼをメチオニナーゼ活性アッセイ、電気泳動及びHPLCによって分析した。非修飾メチオニナーゼのバンド又はピークは検出不能であった。したがって、PEG−メチオニナーゼが唯一の酵素源であった。
2mgのメチオニナーゼ又はPEG−メチオニナーゼをモルモットに2日毎に合計3回腹腔内投与した。2週間後、4mgのメチオニナーゼ又はPEG−メチオニナーゼを静脈内投与した。この実験において、 0.2Mリン酸ナトリウム緩衝液及びBSAを、それぞれ陰性の対照及び陽性の対照として用いた。その結果を表6の基準にしたがって評価した。その結果を表7に示す。モルモットで試験されたように、メチオニナーゼのPEG化によって極端に低い抗原性の組成物が得られた。モルモットはヒトよりも抗原に対して感受性が強いということが知られている。
モルモットにおけるPEG−メチオニナーゼ抗原性研究の評価基準
0. 正常 1. 落ち着きなし(Restlessness)
2. 起毛 3. 震え
4. 鼻水(Running Nose) 5. くしゃみ
6. 咳 7. 過呼吸
8. 排尿 9. 瀉出
10. 流涙 11. 呼吸困難
12. 水泡音 13. チアノーゼ
14. 千鳥足(Staggering gait) 15. ひきつり(Jumping)
16. 喘ぎ及び身もだえ(writhing) 17. 痙攣
18. サイドポジション(Side position) 19. チェーン−ストークス呼吸
20. 死亡

評価基準
(−) 陰性:変化無し
(+) 軽度:1〜4
(++) 中度:1〜10
(+++) 重度:1〜19
(++++) 死亡:20
それらの結果は、PEG−メチオニナーゼは、ウシ血清アルブミン(B.S.A.)
及びメチオニナーゼとは対照的にモルモットにおいて抗原性を有さないということを示しており、このことは、PEG−メチオニナーゼを哺乳類に投与した場合、PEG−メチオニナーゼは非免疫原性であるということを示唆するものである。
実施例6
ヒト癌治療のためのメチオニナーゼの投与
メチオニナーゼの毒性、薬物速度論及び最大許容用量を測定するために、メチオニナーゼのI期用量漸増研究を開始した。 5,000単位(0.5g) 及び10,000単位(1.0g) のメチオニナーゼを含む注入液を進行した乳癌を有する患者2人に静脈内輸液によって2時間投与した。0〜24時間の間にたびたび血液試料及び尿試料を採取した。WHO格付け方式(grading system)にしたがって毒性評価を行った。
血清中のメチオニナーゼレベル及びメチオニンレベルから薬物速度論データが得られた。
あらゆる毒性基準を用いて測定しても最小グレード0を有しており急性の臨床的毒性は全く観察されなかった。患者1及び患者2におけるメチオニナーゼの半減期は、それぞれ2時間及び 3.2時間であった。血清メチオニンの枯渇は輸液開始後30分以内に始まり、輸液終了後4時間持続された。患者1及び患者2における血清メチオニンの最低レベルは、それぞれ治療前のレベルの35%及び19%であった。それらの結果を表8〜10及び図4〜6に示す。患者は下記のようにして治療した。
患者1:日付:1994年12月4日。診断:腋窩リンパ節及び肺転移を有する乳癌。
女性、46歳。抽出法(実施例1)にしたがって精製したメチオニナーゼ 5,000単位(0.4g)を静脈内注入液 200mlに加えて2時間投与した。治療前と、治療後20時間までの2時間毎に血液試料を採取した。メチオニン及びメチオニナーゼのレベルを測定し、相対レベルを計算した(図4)。
患者2:日付:1995年2月2日。診断:腋窩リンパ節転移を有する乳癌。女性、54歳。抽出法(実施例1)にしたがって精製したメチオニナーゼ10,000単位(0.8g)を静脈内注入液 400mlに加えて2時間投与した。治療前と、治療後20時間までの2時間毎に血液試料を採取した。メチオニン及びメチオニナーゼのレベルを測定し、相対レベルを計算した(図5)。
患者3:日付:1995年10月15日。診断:腋窩リンパ節転移を有する乳癌。女性、45歳。抽出法(実施例1)にしたがって精製したメチオニナーゼ20,000単位(1.6g)を静脈内注入液1000mlに加えて10時間投与した。治療前と、治療後20時間までの2時間毎に血液試料を採取した。メチオニン及びメチオニナーゼのレベルを測定し、相対レベルを計算した(図6)。
患者3は、輸液直後の6時間の間、最高レベルの50%の血清メチオニナーゼレベルを維持していた。メチオニンは輸液10時間後に23.1μM から 0.1μM と、 200倍以上激減した。あらゆる毒性基準で測定しても臨床的毒性は全く観察されなかった。
4分野:a. 病歴及び診断データ;b. 理学的検査;c. 検査室評価(Laboratory evaluation) ;及びd. 薬物速度論的評価(血清中のメチオニナーゼレベル及びメチオニンレベル)において、WHO毒性基準にしたがって毒性評価を行った。それらの結果を表8〜11及び図4〜6に示すが、本発明のメチオニナーゼは毒性がなく、ヒトにおけるメチオニンレベルの低減に使用し得ることが証明されている。
実施例7
ホモシステインのin vivo 枯渇
本発明によるホモシステインの枯渇における使用のためのメチオニナーゼのin vivo の効果を下記のようにマウスに該酵素を投与することによって立証した:実施例1の方法にしたがって精製したメチオニナーゼ4単位をマウスに腹腔内注射した。注射の約1時間後、メチオニン、ホモシステイン及びシステインの血中濃度を、マウス血清50μl をPITCによる誘導体化後、逆相FPLCによる分析にかけることによって定量した。そのクロマトグラフィー図をPITC誘導体化内標準メチオニン、ホモシステイン及びシステインのものと比較した。このアッセイの感度は約 0.5μM メチオニンであった。
表12に示したように、対照の未治療マウスにおけるホモシステイン及びシステインのレベルと比較すると、メチオニナーゼは、システインのin vivo レベルの有意な枯渇なしに有意なin vivo ホモシステイン枯渇活性を有していた。
実施例8
腫瘍イメージングのためのメチオニナーゼの使用
患者に本明細書中に記載したような精製メチオニナーゼを投与することによって[12C] メチオニンを枯渇させる。そのメチオニナーゼはエンドトキシンを含まないことが好ましい。メチオニナーゼ( 10,000〜20,000単位)を4〜8時間にわたって静脈内輸液によって投与した。次いで、約5〜50mCi の[11C] メチオニナーゼを投与した。次に、陽電子射出断層撮影(PET)イメージングを用いて、患者の細胞による[11C] トレーサーの取込みを検出する。トレーサー取込みは、当業者に知られた方法によって標準取込み値(S.U.V.)及び速度論的流出定数(kinetic influx constant, Ki) 値を計算することによって定量化される。細胞中の[11C] メチオニンのレベルの上昇は、かかる細胞が腫瘍細胞である可能性があることを示すものである。腫瘍細胞による[11C] メチオニンの優先的な取込みは、正常細胞の中の腫瘍細胞を選択的に検出する方法を与える。
上述の明細書は、特定の態様及び実施例を含むが、本発明を説明するものであり、限定的なものとして受け取られるものではない。多数のその他の変形及び修正が本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなくもたらされ得る。
実施例9
メチオニナーゼをコードする核酸分子の単離
メチオニナーゼ遺伝子クローンの挿入断片のPCR反応
ATCC8209由来の、シュードモナス プチダAC-1のゲノムDNAを鋳型として用いた:使用したプライマーは下記のとおりである:
PCR反応条件は下記のとおりである:まず、95℃で10分間変性させ、次いで94℃、30秒間の変性を5サイクル行い、60℃で30秒間アニーリングし、そして72℃で2分間伸長させる;次に、94℃にて30秒間、60℃にて30秒間、続いて72℃にての 1.5分間の変性を25サイクル行い;次いで最終的に72℃で10分間伸長させる。
PCR増幅産物のバンドが二つあり、その中の1365bpのバンドを採取して挿入断片ONCase-1 DNAとして精製した。
クローニング及び形質転換
ONCase-1 DNAをpT7Blue T-ベクター(Novagen) とEcoR V T- クローニング部位で連結した。標準的な手順によってpONCase-1 DNAでDH5-α細菌細胞を形質転換した。
DNA配列決定
T7 DNAポリメラーゼ及びジデオキシヌクレオチド停止反応を用いてDNA配列決定を行った。プライマー歩行法(primer walking method) を用いた。標識には [35S]dATPを用いた。6%ポリアクリルアミドウェッジ又は8M尿素を含む非ウェッジゲル上で配列決定反応を分析した。DNA試料をACGTの順に加えた。DNA配列をMacVector によって分析した。DNA配列及びそれに対応するアミノ酸配列を図8に示す。
実施例10
組換えメチオニナーゼの高発現クローン
メチオニナーゼ発現クローンの挿入断片のPCR反応
鋳型として pONCase-1 クローンを用いた。使用したプライマーは下記のとおりである:
PCR反応条件は下記のとおりである:まず、95℃で10分間変性させ、次いで94℃、1分間の変性を5サイクル行い、56℃で 1.5分間アニーリングし、そして72℃で2分間伸長させる;次に、94℃にて30秒間の変性、56℃にて30秒間の変性、続いて72℃にての 1.5分間の伸長を20サイクル行い;次いで最終的に72℃で10分間伸長させる。二つのPCR増幅産物、ONCase-2(1238bp)、ONCase-3(1220bp)のバンドを採取して精製した。
クローニング及び形質転換
ONCase-2 DNA及び ONCase-3 DNAをNdeI及びBamHI で消化してpT7.7 ベクターとNdeI及びBamHI クローニング部位で連結した。次いで、標準的な手順によってpONCase-2 及びpONCase-3 DNA配列でBL21(DE3) 細菌細胞を形質転換した。
pAC-1 及びpAC-2 クローンの選択
アンピシリン含有プレートから陽性クローンを選別した。4℃で24時間保存したところ、高レベルの組換えメチオニナーゼを発現した陽性クローンは、その同定及び選別を可能にするようなはっきりした桃色になっていた。陽性クローンのメチオニナーゼ発現レベルを活性アッセイによって定量した。二つの高発現クローンを、ONCase-3を含むpAC-1 クローン及びONCase-2を含むpAC-2 クローンとして選別した。
pAC-3 クローン及びpAC-4 クローンの構築
pBR322のAva I 及びCla I 部位からテトラサイクリン耐性遺伝子を得た。AvaI 末端を平滑末端でふさいで、BamH I及びCla I 制限酵素で消化したpAC-1 (このBamH I末端は平滑末端でふさいだ。)と連結した。4℃で24時間保存した後に桃色になった陽性クローンをテトラサイクリン含有プレートから選別した。高発現組換えメチオニナーゼクローンを活性アッセイによって測定し、pAC-3 クローンと名付けた。
また、pBR322のAva I 及びHind III部位からもテトラサイクリン耐性遺伝子を得た。Ava I 末端を平滑末端でふさいで、Hind III及びCla I 制限酵素で消化したpAC-1 (このCla I 末端は平滑末端でふさいだ。)と連結した。4℃で24時間保存した後に桃色になった陽性クローンをテトラサイクリン含有プレートから選別した。高発現組換えメチオニナーゼクローンを活性アッセイによって測定し、pAC-4 クローンと名付けた。種々の高レベルの発現クローンを表13及び図9に示す。
実施例11
組換えメチオニナーゼ発現クローンの発酵
組換えメチオニナーゼの発現クローンを、アンピシリン(100μg/ml) 又はテトラサイクリン (10μg)を含むTerrific Broth培地中で、28℃又は37℃にて、6−Lフラスコ又は発酵槽中で400rpmで振盪させながら増殖させた。
実施例12
組換えメチオニナーゼの精製
精製法の概要を図10及び11に示す。
(1) 試料の前カラム処理
4℃、 800×gで10分間遠心分離することによって細菌を採収した。次いで、細菌ペレットを抽出溶液(20mMリン酸カリウム(pH9.0)、10μM リン酸ピリドキサール及び0.01%β−メルカプトエタノール)中に懸濁して、キャビテーター型ホモジナイザー(Microfluidics社、モデル♯HC 8000)を用いて破砕した。次に、ホモジネートの加熱処理を50℃で1分間行った。この懸濁液を自動低温遠心分離機(SORVALL Superspeed RC 2-B) を用いて4℃、13k rpm にて30分間遠心分離した。続いて上清を採取した。この工程の後、ミリポアPrep/Scale-TFF PLHK 100k 2.5 ftカートリッジで緩衝液(10mMリン酸カリウム、pH8.3)とともに限外濾過した。限外濾過によってpHを 7.2に調節した。
(2) クロマトグラフィーの条件
第1のカラム:DEAE Sepharose FF
カラム:XK 100/60 、高さ:32cm、容積: 2.5L
溶液:
[A] 40mM塩化カリウム、10μM リン酸ピリドキサールを含む10mMリン酸カリウム(pH7.2) 及び0.01%β−メルカプトエタノール。
[B] 200mM塩化カリウム、10μM リン酸ピリドキサールを含む10mMリン酸カリウム(pH7.2) 及び0.01%β−メルカプトエタノール。
流量:5ml/分
試料:合計約 100〜200 g(10〜20mg/ml)のタンパク質を第1のカラムに加える。
グラジエント:
[1] OD280 が 0.1以下に下がるまで溶液A約10容で予備洗浄。
[2] グラジエント:溶液Bを20%〜100 %。
分画:溶出画分 200mlを回収する。rMETase を含む画分を活性アッセイによって確認し、プールする。
第2のカラム:DEAE Sepharose FF
カラム:XK 50/30、高さ:25cm、容積: 500ml
溶液:[A] 100mM塩化カリウム、10μM リン酸ピリドキサールを含む10mMリン酸カリウム(pH8.3) 及び0.01%β−メルカプトエタノール。
[B] 200mM塩化カリウム、10μM リン酸ピリドキサールを含む10mMリン酸カリウム(pH8.3) 及び0.01%β−メルカプトエタノール。
流量:5ml/分
試料:合計約10〜20g(2〜4mg/ml)のタンパク質を、 100mM塩化カリウム、10μM リン酸ピリドキサールを含む10mMリン酸カリウム(pH8.3) 中で24時間透析した後、第2のカラムに加える。
グラジエント:
[1] OD280 が0.05以下に下がるまで溶液A約5容で予備洗浄。
[2] グラジエント:溶液Bを0%〜60%。
分画:溶出画分 200mlを回収する。rMETase を含む画分を活性アッセイによって確認し、プールする。
第3のカラム:Sephacryl S-200 HR
カラム:HiPrep 26/60、容積: 320ml。
溶液:0.15M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム(pH7.2)
流量: 1.2ml/分
試料:約10mlの濃縮試料(0.15M塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム(pH7.2)中での12時間の透析後)、第3のカラムに加える。
分画:rMETase を含む20mlの溶出画分(黄色及び活性アッセイで確認する)を回収する。
第4のカラム:Acticlean R Etox
容量 100〜200ml の精製rMETase(10〜20mgタンパク質/ml)を 500mlの ActicleanR Etox カラムに加えて、エンドトキシンを排除するために溶離緩衝液(0.15
M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム、pH7.2)で溶出する。 ActicleanR Etox は再生可能であり、1M水酸化ナトリウムで清浄にしてオートクレーブ
で処理することができる。
最終溶離剤の濃度
最終溶離剤は30K Amicon Centriprep 濃縮器で濃縮する。精製rMETase 用の処方は、0.15M塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.2 である。
rMETase.ヒスチジンの精製:Ni++Sepharose カラム上のクロマトグラフィー前カラム処理後、細胞ホモジネートを結合緩衝液(5mMイミダゾール、 0.5M NaCl 、20mMトリス.HCl、pH7.9)に懸濁する。次に、カラムを結合緩衝液10容で洗浄した後、洗浄緩衝液(60mMイミダゾール、 0.5M塩化ナトリウム、20mMトリス.HCl、pH7.9)を用いて洗浄する。溶離緩衝液(1Mイミダゾール、 0.5M NaCl、20mMトリス.HCl、pH7.9)6容がカラムを通過した後、溶離が起こる。rMETase を含有する画分を黄色の着色によって確認し、回収する。
実施例13
HPLCによるrMETase の純度分析
カラム:SUPELCO 、8-08541 、Progel TM-TSK 、G 3000-SWXL 、30cm×7.8mm 。
溶離溶液:0.15M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2) 。
流量: 0.1ml/分。
試料:20μl (0.1〜1mg/ml)。
rMETase の製造例を図10及び11に示す。純度は図12に示す。
実施例14
組換えメチオニナーゼ、結晶化体及び凍結乾燥体を含む製剤
溶液製剤:
rMETase を0.15M塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)の溶液に10〜20mg/mlの濃度で配合した。rMETase の安定性を図13に示す。
結晶化体:
rMETase(10〜20mg/ml) を0.15M塩化ナトリウム及び10mMリン酸緩衝液(pH7.2) に加えた溶液をSephadex G-25(DNAグレード、超微細(superfine) 、Sigma)カラムを用いて脱塩した。この溶液をドライアイス及びアセトン浴にて凍結させ、次にVerdis Freeze Mobil 24を用いて 100milifar の真空度で、−80℃にて72時間結晶化を行った。
凍結乾燥体:
rMETase(10〜20mg/ml)を0.15M塩化ナトリウム及び10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2) に加えた溶液を、ドライアイス及びアセトン浴にて凍結させ、Verdis Freeze Mobil 24を用いて 100milifar の真空度で、−80℃にて72時間凍結乾燥を行った。
活性アッセイ:
このアッセイは10μM リン酸ピリドキサール及び10mMメチオニンを含有する50mMリン酸緩衝液(pH8.0) 1ml容中で酵素の量を変えながら37℃で10分間行った。 4.5%TCA 0.5mlを添加することによって反応を停止させた。懸濁液を15K rpm で2分間遠心分離した。上清 0.5mlを0.05%3-メチル-2- ベンゾチアゾリノンヒドラゾン 0.5mlとともに1M酢酸ナトリウム(pH5.2) 1mlに加えた溶液を50℃で30分間インキュベートした。そして、次にOD335 での分光光度測定によってα−ケトブチレートを測定した。Lowry Reagent Kit(Sigma)の手順にしたがってタンパク質の量を測定した。比活性を単位/mgタンパク質として計算した。
rMETase の活性を比較したところ、それらの結果は異なる剤形間で大きな相違はなかった。
実施例15
組換えメチオニナーゼの化学修飾
精製rMETase を0.15M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2) に 0.1M〜0.2 Mの濃度で配合した。その活性は約20単位/mgであった。
分子量5000のM−SC 5000 PEG( メトキシ-SC-PEG 、MW 5000 、Shearwater polymers 社)を20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH8.3) に2mM〜20mMの濃度で溶解した。M−SC 5000 PEGとrMETase のモル比は10:1〜 120:1で間で変動する。
反応緩衝液(25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH8.3)中、20℃で60分間PEG化反応を行った。停止緩衝液(0.14Mリン酸ナトリウム緩衝液、pH6.5)を用いて0℃で反応を停止させた。次いで、未反応のM−SC 5000 PEGを30 K Amicon
Centriprep濃縮器を用いて除去した。得られたPEG−メチオニナーゼを、30 K Amicon Centriprep濃縮器を用いて遠心分離しながら0.15M塩化ナトリウム及び10mMリン酸ナトリウム(pH7.2) に配合した。
PEG−rMETase のin vitro分析
PEG−rMETase を活性アッセイ、電気泳動及びHPLCによって分析した(図14〜16)。
活性アッセイ
PEG−rMETase の活性は非修飾rMETase の80%〜20%の間であった。
電気泳動
PEG−rMETase を未変性及びSDS−PAGEの両方に加えた。
HPLC分析:
PEG−rMETase をゲル濾過カラムに加えた。原料のrMETase のピークは検出されず、PEG−rMETase のピークのみが観察された。保持時間(RT)はPEGとrMETase のモル比が上昇するにつれて短くなった。
PEG−rMETase の薬物速度論:
精製したエンドドキシンフリーのPEG−rMETase をマウスの尾静脈に注射した。血液試料を2時間毎に採取した。rMETase のレベルを活性アッセイによって測定した(図16)。
実施例16
組換えメチオニナーゼの効力及び毒性
in vitroにおけるrMETase による細胞増殖阻害
KB3-1 細胞(ヒト扁平上皮癌)を10%FBSを補給したRPMI 1640 培地中で増殖させた。種々の濃度のrMETase を該培地に加えて、37℃、5%CO2 中でインキ
ュベートした。相対細胞数をOD570 で測定した。その結果は、rMETase が
効果的に細胞増殖を阻害するといことを証明している(図17)。
in vitroにおけるrMETase によるH460及びHT29の増殖阻害
ヒト肺癌細胞H460及びヒト結腸癌細胞HT29を、種々の濃度(0〜4単位/ml)のrMETase とともに4日間増殖させ、次に生細胞を計数した。この実験を3回繰り返した。これらの結果は、rMETase が効果的にH460と及びHT29の細胞増殖を阻害するということを証明している(図25)。
in vitroにおける正常細胞とヒト癌細胞とのrMETase に対する感受性の比較
正常ヒト包皮線維芽細胞HS−68及びヒトケラチノサイトを対照として用いて、ヒト結腸癌SW−620及びヒト肺ガン細胞H322mと比較した。それらの細胞を種々の濃度(0〜4単位/ml)のrMETase とともに3日間増殖させ、次いで生細胞を計数した。この実験を3回繰り返した。これらの結果は、SW−620とH322m細胞の両方が1単位/mlの濃度のrMETase で死滅し、正常ヒトHS−68細胞はその増殖率は減少したが依然として生存しているということを示すものである。また、正常ヒトケラチノサイトも癌細胞と比較してrMETase に対する感受性がかなり低かった(図26)。
ヌードマウスにおけるrMETase による細胞の増殖阻害
8群のマウス(Balb/c nu/nu 、雌) に2×10 細胞を注射した。対照:通常生理食塩水。I群:rMETase 30単位、II群:rMETase 100 単位;5日目〜14日目の間、1日2回腹腔内注射。腫瘍サイズ及び体重を測定した。血液を18日目に採取した。それらの結果から、rMETase が体重減少及び血液細胞産生における作用なしに効果的に腫瘍増殖を阻害するということが証明された(図18〜22) 。
ヌードマウスにおけるrMETase によるH460及びHT29細胞の増殖阻害
106 H460細胞及びHT29細胞をそれぞれ皮下移植し、2日目〜16日目の間、1日2回、rMETase 40単位又は 100単位を腹腔内注射によって投与した。対照群には通常生理食塩水 0.2mlを1日2回腹腔内注射した。16日目にマウスを殺した。それらの結果から、rMETase が体重減少及び血液細胞産生における作用なしに効果的に腫瘍増殖を阻害するということが証明された。
精製組換えMETaser のパイロットI期臨床試験
女性、50歳、リンパ節転移を伴った段階IVの乳癌を有する患者1に10,000単位(0.5g)のrMETase を10時間静脈内輸液した。
女性、48歳、リンパ節転移を伴った段階IVの乳癌を有する患者2に 5,000単位(0.25g) のrMETase を24時間静脈内輸液した。
女性、56歳、段階III の腎臓癌を有する患者3に10,000単位(0.5g)のrMETase
を24時間静脈内輸液した。表14。
理学的検査を記録し、治療前、治療中の2時間毎、及び輸液終了後48時間(示したとおりである)までの2時間毎において血液試料を採取した。WHO基準にしたがって、検査室測定を行った。
それらの結果は、全ての患者において輸液の開始直後にrMETase レベルが増大し、輸液中高レベルで維持されるということを示している。一人の患者においては、48時間後、メチオニナーゼレベルがベースラインまで下がっている。これらの結果は、輸液開始直後にrMETase レベルが増大し、10時間後に頂点に達したということを示している。輸液の終了後8時間で、そのレベルはピークの50%になり、輸液終了後16時間においても依然としてピークの20%を維持していた。検査室検査の結果を、WHO基準にしたがって評価したところ、患者1、2又は3において急性毒性は見られなかった。表15及び16並びに図23及び24。この結果は、rMETase が毒性を何ら引き起こさないということを示唆するものであった。
図1は、メチオニンを含まない、ホモシステインを含まない、またはメチオニンおよびホモシステインを含まない培地における癌細胞系の増殖を示す6つのグラフを集めたものである。 図2は、マウス異種移植片におけるヒト肺癌(H460)の増殖レベルを低下させるメチオニナーゼの効力を示すグラフである。5−FUおよびビンクリスチン処理の結果を合わせて示す。 図3は、ヒト肺癌(H460)を移植したマウスの体重に及ぼすメチオニナーゼ、5−FUおよびビンクリスチンの効果を示すグラフである。 図4は、メチオニナーゼを3人のヒト患者に投与した後のメチオニナーゼおよびメチオニンの薬物動態のグラフである。メチオニナーゼ活性の百分率は、実験開始時のメチオニナーゼ調製物の活性の相対百分率として測定されている。メチオニンの百分率は、メチオニナーゼ投与前のメチオニンに濃度の相対百分率として測定されている。 図5は、メチオニナーゼを3人のヒト患者に投与した後のメチオニナーゼおよびメチオニンの薬物動態のグラフである。メチオニナーゼ活性の百分率は、実験開始時のメチオニナーゼ調製物の活性の相対百分率として測定されている。メチオニンの百分率は、メチオニナーゼ投与前のメチオニンに濃度の相対百分率として測定されている。 図6は、メチオニナーゼを3人のヒト患者に投与した後のメチオニナーゼおよびメチオニンの薬物動態のグラフである。メチオニナーゼ活性の百分率は、実験開始時のメチオニナーゼ調製物の活性の相対百分率として測定されている。メチオニンの百分率は、メチオニナーゼ投与前のメチオニンに濃度の相対百分率として測定されている。 図7は、メチオニナーゼ−ホモシステイン代謝サイクルの説明図である。 図8は、P.プチダから単離されたメチオニナーゼをコードするDNA分子のヌクレオチド配列およびそれに対応するアミノ酸配列を示す。 図9は、ベクターに含まれる代表的な高発現モジュールの図を示す。 図10は、高度に純粋で、エンドトキシンを含まないメチオニナーゼを得るために用いられる精製工程の概要を示す。 図11は、本明細書に記述する精製法を用いたrMETaseの典型的純度および回収収率の概観を示す。 図12は、本発明の方法によって産生されたrMETaseの純度の例を示す。 図13は、異なるrMETase製剤の活性プロフィールを示す。 図14は、PEG−rMETaseのHPLC分析データを示す。 図15は、PEG−rMETaseのHPLC分析データを示す。 図16は、マウスにおけるPEG−rMETaseの薬物動態を示す。 図17は、rMETaseによってもたらされるKB3−1細胞のin vitro増殖阻止を示す。 図18は、ヌードマウスにおけるrMETaseのKB3−1細胞に対する効力を示す。 図19は、ヌードマウスの体重に及ぼすrMETaseの毒性を示す。 図20は、KB3−1細胞を有するヌードマウスの血液細胞に対するrMETaseの毒性を示す。 図21は、BALB/CマウスにおけるrMETaseの毒・BR>ォを示す。 図22は、BALB/CマウスにおけるrMETaseの毒性を示す。 図23は、ヒト患者におけるメチオニナーゼの毒性評価を示す。 図24は、ヒト患者におけるrMETaseの薬物動態評価を示す。 図25は、ヌードマウスにおけるrMETaseのH460およびHT29に対する増殖阻止を示すデータを提供する。 図26は、正常細胞とヒト癌細胞のin vitroにおけるrMETaseに対する感受性の比較を示す。図面は必ずしも一定の比例に応じて描かれているわけではなく、明確と簡潔を期して本発明のある特徴が寸法の上で誇張されて図示されている場合がある。

Claims (17)

  1. ポリエチレングリコールに結合させたメチオニナーゼを含む改変メチオニナーゼであって、非改変メチオニナーゼの高いメチオニン枯渇活性を維持する該改変メチオニナーゼ。
  2. メチオニナーゼが実質的にエンドトキシンを含まず、かつ組換えにより製造された請求項1に記載の改変メチオニナーゼ。
  3. 請求項1または2に記載の改変メチオニナーゼの治療上有効量を含む治療組成物。
  4. 治療のための医薬製造のための請求項1または2に記載の改変メチオニナーゼの使用。
  5. 該医薬が腫瘍、心臓血管疾患の治療のためである請求項4の使用。
  6. 腫瘍診断における使用のためである請求項1または2に記載の改変メチオニナーゼの使用。
  7. メチオニナーゼをコードする高レベル発現モジュールを含有する組換え宿主細胞であって、該モジュールはプロモーター配列に機能しうる形で連結された、メチオニナーゼをコードするヌクレオチド配列を含み、該プロモーター配列は該宿主細胞中でメチオニナーゼの発現が該宿主細胞によって産生される全タンパク質の5−75%となるようにメチオニナーゼの発現を引き出すことができる、該モジュール。
  8. 該メチオニナーゼをコードするヌクレオチド配列がシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)、膣トリコモナス(Trichomonas vaginalis)、ニッポストロンジラス・ブラジリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)およびフゾバクテリウム属種(Fusobacterium sp.)からなる群より選択された生物より単離される、請求項7記載の細胞。
  9. 細菌細胞である請求項7または8記載の細胞であって、該プロモーターがT7 RNAポリメラーゼプロモーターである該細胞。
  10. 大腸菌である、請求項8または9記載の宿主。
  11. 大腸菌BL21(DE3)である、請求項10記載の宿主。
  12. 免疫細胞である、請求項7または8記載の細胞。
  13. プロモータが腫瘍特異的プロモータである、請求項12記載の細胞。
  14. 高レベルのメチオニナーゼを製造するための方法であって、請求項8−13のいずれか1つに記載の細胞を培養し、そして場合によっては該細胞からメチオニナーゼを回収することを含む該方法。
  15. 高レベルのメチオニナーゼを発現する細胞を同定する方法であって、以下の工程を含んでなる該方法:
    メチオニナーゼが発現される条件下で該宿主細胞を培養し;そして色がピンク色である宿主細胞を高レベルのメチオニナーゼを産生するものとして同定する。
  16. 該細胞が固体培地上で培養される、請求項15記載の方法。
  17. 以下の工程を含んでなるメチオニナーゼの精製方法:
    a)メチオニナーゼが発現される条件下で請求項7−13のいずれか1つに記載の細胞を培養し;
    b)水性緩衝液中にメチオニナーゼを含む、形質転換細胞の抽出物を40〜60℃で1〜10分間加熱し;
    c)加熱した抽出物を約10kから20k rpmで15分から1時間遠心し;
    d)細孔径が50Kから100Kのフィルターを用いて上清を限外濾過し;
    e)低イオン強度(10〜50 mM)のKCl中pH7.0〜7.6で上清をDEAEイオン交換クロマトグラフィーにかけ、そして約40〜200 mMのKCl勾配を用いて溶出した、メチオニナーゼを含む画分を回収し;
    f)中程度イオン強度(100〜200 mM)のKCl中pH8.0〜8.6で該画分を第2のDEAEイオン交換クロマトグラフィーにかけ、そしてリン酸で緩衝化した0.1から0.2 MのKCl中で溶出した、メチオニナーゼを含む画分を回収し;
    g)上記工程e)で回収した該画分を、エンドトキシンを吸収することのできるクロマトグラフィー媒体と接触させ;そして
    h)メチオニナーゼを含む溶出液を回収する。
JP2008242636A 1995-06-07 2008-09-22 抗メチオニンおよび抗ホモシステイン化学療法におけるメチオニナーゼの使用 Pending JP2009055912A (ja)

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US08/486,519 US5715835A (en) 1992-11-19 1995-06-07 Methods for treating and reducing the potential for cardiovascular disease using methioninase compositions
US08/642,541 US5891704A (en) 1992-11-19 1996-05-03 Method to produce high levels of methioninase

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003180649A Division JP2004081209A (ja) 1995-06-07 2003-06-25 抗メチオニンおよび抗ホモシステイン化学療法におけるメチオニナーゼの使用

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010025365A Division JP2010099094A (ja) 1995-06-07 2010-02-08 メチオニナーゼの産生法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2009055912A true JP2009055912A (ja) 2009-03-19

Family

ID=35345951

Family Applications (2)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008242636A Pending JP2009055912A (ja) 1995-06-07 2008-09-22 抗メチオニンおよび抗ホモシステイン化学療法におけるメチオニナーゼの使用
JP2010025365A Pending JP2010099094A (ja) 1995-06-07 2010-02-08 メチオニナーゼの産生法

Family Applications After (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2010025365A Pending JP2010099094A (ja) 1995-06-07 2010-02-08 メチオニナーゼの産生法

Country Status (2)

Country Link
JP (2) JP2009055912A (ja)
CN (2) CN1879890A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014522243A (ja) * 2011-06-15 2014-09-04 アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル ブレビバクテリウム・オーランチアカム(Brevibacteriumaurantiacum)から単離されたポリペプチド及び癌の治療を目的とするその使用

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100992800B1 (ko) 2010-05-14 2010-11-08 주식회사 지씨에이치앤피 미량의 진세노사이드 성분이 증가된 신규한 가공인삼 또는 가공인삼추출물의 제조방법
CN103146626B (zh) * 2013-02-28 2014-12-31 南京华贞生物医药科技有限公司 一种治疗乳腺癌的基因工程菌及其构建方法和应用

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5891704A (en) * 1992-11-19 1999-04-06 Anticancer, Inc. Method to produce high levels of methioninase

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2014522243A (ja) * 2011-06-15 2014-09-04 アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル ブレビバクテリウム・オーランチアカム(Brevibacteriumaurantiacum)から単離されたポリペプチド及び癌の治療を目的とするその使用

Also Published As

Publication number Publication date
CN1879890A (zh) 2006-12-20
JP2010099094A (ja) 2010-05-06
CN1690193A (zh) 2005-11-02

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2221690C (en) Use of methioninase in anti-methionine and anti-homocysteine chemotherapy
EP0668933B1 (en) Use of methioninase as an antitumor agent in anti-methionine chemotherapy
JP7029316B2 (ja) 腫瘍の治療のための、キヌレニンを枯渇させる酵素の投与
JP7080053B2 (ja) 腫瘍の治療のための、キヌレニンを枯渇させる酵素の投与
JP6572212B2 (ja) 治療用の改変霊長類l−メチオニナーゼ
US5715835A (en) Methods for treating and reducing the potential for cardiovascular disease using methioninase compositions
DE60319083T2 (de) Pharmazeutische verbindung und methoden zur behandlung von menschlichen karzinomen mittels arginin-entzug
JP2010099094A (ja) メチオニナーゼの産生法
JPH08283296A (ja) ヒトアポリポプロテインeアナログ及びヒトスーパーオキシドジスムターゼアナログ
JP7016958B2 (ja) アデノシンおよび/またはメチルチオアデノシンの酵素媒介枯渇方法
JP3710709B2 (ja) メチオニナーゼをコードする配列の2つ以上のタンデムなコピーを含有する高発現モジュール
CN110305209B (zh) 用于治疗恶性肿瘤的多肽及其作为疫苗的用途
CN116057071B (zh) 重组灵芝免疫调节蛋白新突变体及其应用
US6461851B1 (en) High expression modules containing two or more tandem copies of a methioninase encoding sequence
Georgiou et al. Engineered primate L-methioninase for therapeutic purposes
CN102552933A (zh) 蛋氨酸酶在抗蛋氨酸和抗高半胱氨酸的化学治疗中的应用
KR20050024361A (ko) 아르기닌 결핍에 의한 인간 악성 종양의 치료제 및 치료방법

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20090609

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20090909

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20091006

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100208