JP2009054249A - 効率可変回折素子、光ピックアップ及び光ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、回折格子DPの回折効率を迅速に切り替えることができる。
【解決手段】効率可変回折素子30は、回折格子DPの周囲を撥水層38で囲んで形成された空洞AR内に電解水L1及びシリコンオイルL2を充填し、電圧の印加によって撥水層38に生じる静電エネルギーによって当該撥水層38のぬれ性を変化させる、いわゆるエレクトロウェッティング作用を利用し、非相溶でなる電解水L1及びシリコンオイルL2と、撥水層38との3相の界面エネルギーEの関係を変化させ、電圧の印加に応じて回折格子DPに対して接触する液体を電解水L1又はシリコンオイルL2に選択的にかつ迅速に切り替えることにより、回折格子DPに接触する領域の屈折率を電圧の印加に応じて変化させるようにした。
【選択図】図6
【解決手段】効率可変回折素子30は、回折格子DPの周囲を撥水層38で囲んで形成された空洞AR内に電解水L1及びシリコンオイルL2を充填し、電圧の印加によって撥水層38に生じる静電エネルギーによって当該撥水層38のぬれ性を変化させる、いわゆるエレクトロウェッティング作用を利用し、非相溶でなる電解水L1及びシリコンオイルL2と、撥水層38との3相の界面エネルギーEの関係を変化させ、電圧の印加に応じて回折格子DPに対して接触する液体を電解水L1又はシリコンオイルL2に選択的にかつ迅速に切り替えることにより、回折格子DPに接触する領域の屈折率を電圧の印加に応じて変化させるようにした。
【選択図】図6
Description
本発明は、効率可変回折素子、光ピックアップ及び光ディスク装置に関し、例えば光ディスクに対して再生及び記録の両方を行い得る光ディスク装置に適用して好適なものである。
従来、光ピックアップでは、レーザダイオードから発射される光ビームを光ディスクに照射することにより、光ディスクから情報を読み出す読出処理及び光ディスクに対して情報を記録する記録処理を実行する。一般的に光ピックアップでは、読出処理時と比較して大きい照射光量が求められる記録処理時に合わせてレーザダイオードの定格が選定される。
この光ピックアップでは、読出処理時には、既存の記録内容を破壊しないよう、レーザダイオードの出力を極めて低下させて使用する必要が生じる。ここで、一般的にレーザダイオードは、出力を小さくして使用すると、出射する光ビームの光量に対するノイズの割合が増大することが知られている。従って単にレーザダイオードの出力を小さくして使用することにより光ディスクに対する照射光量を小さくすると、光ビームにおけるノイズが増大してしまう。
そこで液晶を用いた光学素子によって、記録処理及び読出処理に応じて透過率を変化させることにより、読出処理時における光ビームのノイズを抑制するようになされた光ピックアップがある(例えば、特許文献1参照)。
この光ピックアップでは、記録処理時には光ビームの殆ど全てを透過させて大きな照射光量を確保しつつ、読出処理時にはレーザダイオードを高出力で使用しつつ光ビームの一部を遮断することにより光ビームの光量を小さくするようになされている。
特開2002−260272公報
ところで一般的に光ピックアップでは、情報を光ディスクに記録する際に、読出処理によって光ディスクからアドレス情報などを読み出しながら記録処理によって光ディスクに情報を記録するため、記録処理及び読出処理の切り替えを迅速に行う必要がある。
しかし上述した光学素子では、液晶を使用するため応答性が悪く、記録処理及び読出処理の切り替えに応じてその透過率を迅速に切り替えることができない。
ここで一般的に、回折格子を有する回折素子は、その回折格子に応じて光ビームの一部を回折光ビームとして回折させる一方、残りを0次光ビームとして透過させる。従って回折素子は、回折格子の形状によって0次光ビームの割合(すなわち回折効率)を調整することにより、回折素子を通過する光ビームの透過率を自由に設定することができる。
そこでこの回折素子における回折効率を切り替えることができれば、記録処理及び読出処理に応じて光ビームの透過率を切り替えられるとも考えられるが、この回折効率は回折格子の形状と当該回折格子と接する物質との屈折率差によって決定される固定値であるため、回折素子における回折効率を切り替えるといったことはできなかった。
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、回折効率を迅速に切り替えることができる効率可変回折素子、及び当該効率可変回折素子を用いた光ピックアップ及び光ディスク装置を提案しようとするものである。
かかる課題を解決するため本発明の効率可変回折素子においては、光ビームを回折させるための回折格子を有する回折面と、回折面と共に空洞を形成し、光ビームが通過しない非通過面と、空洞に充填され、導電性を有する第1の液体と、少なくとも回折面が有する凹凸を覆うだけの容積を有すると共に、回折面の少なくとも一部と接触するように空洞に充填され、第1の液体と非相溶かつ当該第1の液体とは異なる屈折率を有し、絶縁性でなる第2の液体と、第1の液体に通電する第1の電極と、非通過面において、光ビームを囲むように帯状に設けられた第2の電極と、第2の電極の上から非通過面を覆って当該非通過面の表面を構成し、第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では第1の液体に対する親和性が第1及び第2の液体間の親和性よりも低く、第1及び第2の電極に電圧が印加されると、第1の電極を介して通電した第1の液体と第2の電極とから電圧が加えられることにより第1の液体に対する親和性を第1及び第2の液体間の親和性よりも向上させる親和性変更層とを設け、第1の液体は、第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では親和性変更層との接触面積を減少させるために第2の液体との界面を中央が突出するよう湾曲させて回折面に接触する一方、第1及び第2の電極に電圧が印加されると、親和性変更層との接触面積を増大させるために界面における曲率を緩和して回折面と接触しないようにした。
これにより、電圧が印加されない状態では第1の液体を回折面に接触させ、電圧が印加された状態では第1の液体とは屈折率の異なる第2の液体を回折面に接触させることができるため、電圧の印加に応じて回折面と接触する領域の屈折率を変化させて回折効率を変化させることができる。
また本発明の光ピックアップにおいては、光ビームを出射する光源と、光ビームを回折させるための回折格子を有する回折面と、回折面と共に空洞を形成し、光ビームが通過しない非通過面と、空洞に充填され、導電性を有する第1の液体と、少なくとも回折面が有する凹凸を覆うだけの容積を有すると共に、回折面の少なくとも一部と接触するように空洞に充填され、第1の液体と非相溶かつ当該第1の液体とは異なる屈折率を有し、絶縁性でなる第2の液体と、第1の液体に通電する第1の電極と、非通過面において、光ビームを囲むように帯状に設けられた第2の電極と、第2の電極の上から非通過面を覆って当該非通過面の表面を構成し、第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では第1の液体に対する親和性が第1及び第2の液体間の親和性よりも低く、第1及び第2の電極に電圧が印加されると、第1の電極を介して通電した第1の液体と第2の電極とから電圧が加えられることにより第1の液体に対する親和性を第1及び第2の液体間の親和性よりも向上させる親和性変更層とを有し、第1の液体が、第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では親和性変更層との接触面積を減少させるために第2の液体との界面を中央が突出するよう湾曲させて回折面に接触する一方、第1及び第2の電極に電圧が印加されると、親和性変更層との接触面積を増大させるために界面における曲率を緩和して回折面と接触しない効率可変回折素子と、効率可変回折素子に対して電圧を印加する電圧印加部と、効率可変回折素子を通過した光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズとを設けるようにした。
これにより、電圧が印加されない状態では第1の液体を回折面に接触させ、電圧が印加された状態では第1の液体とは屈折率の異なる第2の液体を回折面に接触させることができるため、電圧の印加に応じて回折面と接触する領域の屈折率を変化させて回折効率を変化させることができる。
さらに本発明の光ディスク装置においては、 光ビームを出射する光源と、光ビームを回折させるための回折格子を有する回折面と、回折面と共に空洞を形成し、光ビームが通過しない非通過面と、空洞に充填され、導電性を有する第1の液体と、少なくとも回折面が有する凹凸を覆うだけの容積を有すると共に、回折面の少なくとも一部と接触するように空洞に充填され、第1の液体と非相溶かつ当該第1の液体とは異なる屈折率を有し、絶縁性でなる第2の液体と、第1の液体に通電する第1の電極と、非通過面において、光ビームを囲むように帯状に設けられた第2の電極と、第2の電極の上から非通過面を覆って当該非通過面の表面を構成し、第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では第1の液体に対する親和性が第1及び第2の液体間の親和性よりも低く、第1及び第2の電極に電圧が印加されると、第1の電極を介して通電した第1の液体と第2の電極とから電圧が加えられることにより第1の液体に対する親和性を第1及び第2の液体間の親和性よりも向上させる親和性変更層とを有し、第1の液体が、第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では親和性変更層との接触面積を減少させるために第2の液体との界面を中央が突出するよう湾曲させて回折面に接触する一方、第1及び第2の電極に電圧が印加されると、親和性変更層との接触面積を増大させるために界面における曲率を緩和して回折面と接触しない効率可変回折素子と、第1及び第2の電極に対して電圧を印加する電圧印加部と、効率可変回折素子を通過した光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズと、電圧印加部を制御する電圧制御部とを設けるようにした。
これにより、電圧が印加されない状態では第1の液体を回折面に接触させ、電圧が印加された状態では第1の液体とは屈折率の異なる第2の液体を回折面に接触させることができるため、電圧の印加に応じて回折面と接触する領域の屈折率を変化させて回折効率を変化させることができる。
本発明によれば、電圧が印加されない状態では第1の液体を回折面に接触させ、電圧が印加された状態では第1の液体とは屈折率の異なる第2の液体を回折面に接触させることができるため、電圧の印加に応じて回折面と接触する領域の屈折率を変化させて回折効率を変化させることができ、かくして回折効率を迅速に切り替えることができる効率可変回折素子、及び当該効率可変回折素子を用いた光ピックアップ及び光ディスク装置を実現できる。
以下、図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
(1)光ディスク装置の全体構成
図1において、1は全体として光ディスク装置を示しており、CPU(Central Processing Unit)と、各種プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを有する制御部2が光ディスク装置1の各部を制御するようになされている。
図1において、1は全体として光ディスク装置を示しており、CPU(Central Processing Unit)と、各種プログラムなどが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを有する制御部2が光ディスク装置1の各部を制御するようになされている。
制御部2は、例えばCD(Compact Disc)やDVD(Digital Versatile Disc)、BD(Blu-ray Disc、登録商標)でなる光ディスク100から情報を読み出す読出処理及び光ディスク100に対して情報を記録する記録処理を実行する。
ここで制御部2は、光ディスク100に記録された情報を読み出して再生する再生モード及び光ディスク100に対して情報を記録する記録モードを有しており、図示しない操作部を介したユーザの操作入力に応じて、再生モード及び記録モードを切り替えるようになされている。
制御部2は、再生モードにおいて光ディスク100に対して読出処理を実行する。一方制御部2は、記録モードにおいて、読出処理によって光ディスク100に記録されたアドレス情報を読み出すことにより光ディスク100における記録位置を逐次確認しながら光ディスク100に対する記録処理を実行する。すなわち制御部2は、記録モードにおいて光ディスク100に対する読出処理と記録処理を随時切り替えて実行するようになされている。
実際上、制御部2は、サーボ回路3を介してスピンドルモータ4を回転させ、ターンテーブル(図示せず)に載置された光ディスク100を回転駆動する。また制御部2は、サーボ回路3を介して送りモータ5を駆動させ、ガイド軸7に沿って光ピックアップ10を光ディスク100の半径方向であるトラッキング方向に移動させる。さらに制御部2は、光ピックアップ10を制御し、光ディスク100に対する読出処理及び記録処理を実行させる。
図2に示すように、光ピックアップ10のレーザダイオード11は、制御部2から供給される駆動電流に応じた光量で、光ディスク100の各方式に対応した波長を有するレーザ光を出射し、光ビーム40として1/2波長板12を介して回折素子13に入射させる。
回折素子13は、光ビーム40を光ディスク100に対する再生及び記録に使用されるメインビームと各種トラッキング制御信号を生成するためのサブビームとに分光し、このメインビーム及びサブビームを光ビーム40として効率可変回折素子30に入射する。詳しくは後述するが、効率可変回折素子30は、読出処理及び記録処理に応じて光ビーム40の光量を調整し、ビームスプリッタ17に入射する。
ビームスプリッタ17は、入射された光ビーム40の多くをそのまま透過させ、コリメータレンズ18に入射する。コリメータレンズ18は、発散光として入射された光ビーム40を平行光に変換し、1/4波長板19に入射する。
1/4波長板19は、S偏光でなる光ビーム40を円偏光へ変換し、対物レンズ20に入射する。そして対物レンズ20は、光ビーム40を集光し光ディスク100に照射する。
また対物レンズ20は、光ビーム40が光ディスク100によって反射されてなる反射光ビーム50を受光し、1/4波長板19に入射する。1/4波長板19は、円偏光でなる光ビーム40を直線偏光であるP偏光に変換し、コリメータレンズ18を介してビームスプリッタ17に入射させる。
ビームスプリッタ17は入射された反射光ビーム50を偏光面で反射し、その方向を90[°]変化させ、マルチレンズ21を介して光検出器22に入射する。そして、光検出器22は反射光ビーム50を光電変換して検出信号を生成し、信号処理部8(図1)へ供給する。
信号処理部8は、この検出信号から再生RF信号及び各種サーボ制御信号を生成する。制御部2は、信号処理部8から供給されるサーボ制御信号に基づいて駆動制御信号を生成し、光ビーム40を光ディスク100における所望のトラック上に正確に照射するように対物レンズ20をフォーカス方向及びトラッキング方向に駆動する。
さらにビームスプリッタ17(図2)は、その偏光面において光ビーム40からその一部を所定の光量比で反射させることによってその一部を分離し、APC(Auto Power Control)用レンズ15を介してAPC用光検出器16に入射する。APC用光検出器16は入射された光ビーム40の光量を検出し、当該光量に応じた電流値でなるAPC検出電流を生成して制御部2へ供給する。
制御部2は、このAPC検出電流が所定の電流値になるようにレーザダイオード11に供給する駆動電流を増減してレーザダイオード11の出力を調整することにより、レーザダイオード21から出射される光ビーム40の強度(以下、これを出射光強度と呼ぶ)を読出処理及び記録処理に応じた所定の値になるように制御する。
このとき、制御部2は、記録処理時の光ディスク100に対する照射光量が読出処理時の照射光量よりも大きくなるようにレーザダイオード11の出力を調整する。
このように光ディスク装置1は、光ディスク100に対する読出処理及び記録処理を実行するようになされている。
(2)効率可変回折素子の構成
次に、読出処理及び記録処理に応じて光ビーム40の光量を調整する効率可変回折素子30について説明する。
次に、読出処理及び記録処理に応じて光ビーム40の光量を調整する効率可変回折素子30について説明する。
図3(A)に示すように、効率可変回折素子30は、全体として扁平な円柱形状を有している。図3(B)に示すように、効率可変回折素子30は、円筒状の円筒部材31に対し、当該円筒部材31の内径とほぼ同一の直径でなる円板部材32及び33が嵌合することにより、その外観を構成する中空な円柱を形成する。
以下、円筒部材31の内面である内周面41において、円筒部材31に対して円板部材32及び33が嵌め込まれたときに当該円板部材32及び33と接触する部分をそれぞれ接触領域42及び43と呼ぶ。また内周面41において、円板部材32及び33が嵌め込まれたときに当該円板部材32及び33と接触せず、空洞ARを構成する部分を非接触領域44と呼ぶ。
円筒部材31、並びに円板部材32及び33は、いずれも光透過率の高いガラス材料が用いられ、その屈折率nGが約1.5の同一材料でなる。なお、円筒部材31、並びに円板部材32及び33の材料としてはそれぞれ別々の材料を用いるようにしても良く、また例えばポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料を用いても良い。さらに円筒部材31としては、光透過率の低い材料を用いるようにしても良い。
円板部材32は、円筒部材31の内部に面する内側面32Aには、バイナリ型の回折格子DPが形成されている。また円板部材33は、円筒部材31の内部に面する内側面33Aが平板状に形成されている。
図3(B)における円筒部材31の中心を通る断面図である図4(A)に示すように、円筒部材31の内周面41には、その上端部、接触領域42に当該内周面41を1周する細い帯状の第1電極35が形成されている。
第1電極35は、導電性を有する材料でなり、円筒部材31に対して円板部材33が嵌め込まれたときにその一部が表出するように、その上端部が円筒部材31の頂面31Bに延設されている。そして第1電極35は、この表出する部分において電源Vと接続される。また第1電極35は、円筒部材31に対して円板部材33が嵌め込まれたときに当該円板部材33の内側面33Aに沿うようにその下端部が延設されている。
円筒部材31の内周面41には、その中央部から下部にかけて当該内周面41を1周する太い帯状の第2電極36が形成されている。この第2電極36は、第1電極35と同様に導電性を有する材料でなり、円筒部材31に対して円板部材32が嵌め込まれたときにその一部が表出するように、円筒部材31の底面31Cに延設されている。そして第2電極36は、この表出する部分においてスイッチSWを介して電源Vと接続される。
この内周面41には、第2電極36のうち、非接触領域44に形成された部分を覆う誘電体層37が設けられている。この誘電体層37としては、例えば各種樹脂材料や無機酸化物、セラミック材料などの絶縁性を有する材料が用いられる。
さらに円筒部材31の内周面41には、撥水層38が設けられている。撥水層38は、第2電極36上に形成された誘電体層37の上から、当該誘電体層37の形成されていない部分をも含む非接触領域44のほぼ全面を覆うことにより、非接触領域44の表面の殆どを構成している。
この撥水層38は、例えばポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素化合物や絶縁破壊強度の大きいパレリン(poly-para-xylylen)、シリコン化合物などの疎水性を有する絶縁材料がコーティングなどによって薄膜状に形成されたものである。
また第1電極35は、撥水層38の厚みよりも長くその下端部が円板部材33の中心へ向かって延設されているため、第1電極35の端が撥水層38から突出するようになされている。
そして効率可変回折素子30は、円筒部材31に対して円板部材32が嵌め込まれた状態で、図4(B)に示す導電性液体である電解水L1及び非導電性液体であるシリコンオイルL2が充填された後、円板部材33が嵌め込まれて密封される。なお円板部材32及び33の周囲を囲むように、弾性を有するゴムなどでパッキングするようにしても良い。
この電解水L1及びシリコンオイルL2は、電解水L1の容積V1とシリコンオイルL2の容積V2とが合計で空洞ARとほぼ同一の体積Vtになるように充填され、空洞AR内に隙間が生じないようになされている。
またシリコンオイルL2の容積V2は、当該シリコンオイルL2を空洞ARに充填したときに、少なくとも回折格子DPの凸部分を覆うものの、電解水L1の容積V1よりも小さくなるように配合される。
電解水L1は、例えば食塩や塩化カリウムなどの電解質を溶解した電解質水溶液でなり、比重が約1.0、屈折率n1が約1.3でなり、導電性を有している。
この電解水L1は、低粘度(例えば25℃、60[rpm/min]で50[mP・s]以下、より好ましくは10[mP・s]以下)であり、高い流動性を有している。また電解水L1は、電解質の種類及び濃度を調整することにより、例えば−20℃などの低温下でも凍結することなく低粘度を維持し、高い流動性を付加することができる。
シリコンオイルL2は、比重が約1.0、屈折率n2が約1.5でなる。シリコンオイルL2としては、ジメチルシリコンオイルやメチルフェニルシリコンオイルなどの各種シリコンオイルを用いることができ、電気絶縁性能が高いものが用いられる。
このシリコンオイルL2は、低粘度(例えば25℃、60[rpm/min]で50[mP・s]以下、より好ましくは10[mP・s]以下)であり、高い流動性を有している。またシリコンオイルL2は耐寒性に優れており、−20℃などの低温下でも凍結することなく低粘度を維持し、高い流動性を有している。
このシリコンオイルL2は、疎水性が高く(すなわち電解水L1に対して親和性が低く)、当該シリコンオイルL2に対する電解水L1の接触角が90°以上である。従って電解水L1とシリコンオイルL2とは相溶することがなく、常に分離した状態となる。
なおシリコンオイルL2に対する電解水L1の接触角とは、固体表面に薄く付着させたシリコンオイルL2に対する電解水L1の接触角(JIS K2396、25℃で測定、以下、接触角は同様の測定方法によって測定された値を指す)を示している。
ここで上述したように、効率可変回折素子30の空洞ARは、円筒部材31の内周面41を覆う撥水層38と、円板部材32の内側面32Aと、円板部材の内側面33Aとによって構成されている。従って効率可変回折素子30内に充填された電解水L1及びシリコンオイルL2は、撥水層38並びに内側面32A及び33Aに接触することになる。
この撥水層38は疎水性が高く(すなわち電解水L1に対する親和性が低く)、当該撥水層38に対する電解水L1の接触角が90°以上、より好ましくは100°以上である。一方撥水層38は、疎水性を有するシリコンオイルL2との親和性が比較的高く、その接触角が90°未満、より好ましくは80°未満である。
また内側面32A及び33Aは、電解水L1及びシリコンオイルL2の双方に対して比較的親和性が高く、当該内側面32A及び33Aに対する電解水L1の接触角がいずれも90°未満、より好ましくは80°未満であり、さらに当該内側面32A及び33Aに対するシリコンオイルL2の接触角がいずれも90°未満、より好ましくは80°未満である。
ここで効率可変回折素子30では、電解水L1に対する撥水層38の親和性が、電解水L1に対するシリコンオイルL2の親和性よりも低くなるように電解水L1、シリコンオイルL2及び撥水層38の材料が選定されている。
ここで各相間における親和性に応じて変化する界面エネルギーEに着目すると、電解水L1と撥水層38との間の界面エネルギーEL1−38、電解水L1とシリコンオイルL2との界面エネルギーEL1−L2、シリコンオイルL2と撥水層38との間の界面エネルギーEL2−38の関係を以下のように表すことができる。
そして電解水L1及びシリコンオイルL2は、電解水L1、シリコンオイルL2及び撥水層38の3相間に生じる界面エネルギーE3を最小限にしようとする。
すなわち第1電極35及び第2電極36に電圧を印加しない状態において、電解水L1は、界面エネルギーEL1−L2よりも界面エネルギーEL1−38が大きいため、シリコンオイルL2との接触面積を増大させてでも撥水膜38との接触面積を減少させようと流動する。
この結果、図5(A)に示すように、電解水L1は、シリコンオイルL2との界面IFを光ビーム40の光軸BPが通る中心部を突出させるよう湾曲させ、界面IFを曲面にする。そして電解水L1は、界面IFの中心部が内側面32Aの中心部に到達することにより、内側面32Aに形成された回折格子DPに接触する。
因みに電解水L1は、円筒部材31が円筒形状を有しており、界面IFの中心部から撥水層38までの距離が均一となることから、シリコンオイルL2との界面IFに半球状の曲面を形成しようとして内側面32Aに接触する。このため界面IFは、半球状の曲面からその先端部分を切って取り除いたような周曲面を形成することになる。
因みにシリコンオイルL2は、その容積が電解水L1の容積と比して小さいため、小さい曲率でなる界面IFの中心部を内側面32Aに容易に到達させ、電解水L1を回折格子DPに容易に接触させ得るようになされている。
このとき電解水L1は、内側面32Aとの親和性がシリコンオイルL2と比して高く、内側面32Aに接触することにより、3相間だけでなく内側面32A及び33Aを含めた空洞AR内の界面エネルギーETOTALを減少させることができる。このため電解水L1は、界面IFの中心部から外側へ向けて内側面32Aとの接触面積を、光ビーム40を通過させるのに十分な面積にまで増大させることができる。
そして電解水L1及びシリコンオイルL2は、界面エネルギーETOTALが最小となる状態で安定化する。
この結果、効率可変回折素子30は、第1電極35及び第2電極36に電圧を印加しない状態において、内側面32Aに形成された回折格子DPと、電解水L1とを接触させることになる。
このとき効率可変回折素子30は、回折格子DPの屈折率(すなわち円板部材32の屈折率)nGが約1.5であり、電解水L1の屈折率n1が約1.3と異なっていることから、回折格子DPを回折格子として作用させることができる。
ここで、電解水L1が回折格子DPに接触している中央部分における回折格子DPの位相深さφ1は、光ビーム40の波長をλ、回折格子DPの格子深さをdとすると、次式によって表すことができる。
また、電解水L1が回折格子DPに接触している中央部分を光ビーム40が通過するときのm次の回折効率η1(m)は、次式のように表すことができる。
従って、効率可変回折素子30は、格子深さd、回折格子DPの屈折率nG及び電解水L1の屈折率n1を選定することにより、0次光ビームの回折効率η1(0)として表される光ビーム40の透過率を自由に設定することが可能となる。
一方、第1電極35及び第2電極36に電圧を印加すると、撥水層38及び誘電体膜37とが、第1電極35を介して通電する電解水L1と、第2電極36との間でキャパシタを形成する。このとき撥水層38は、蓄えた電気の静電エネルギー分だけ電解水L1との間の界面エネルギーEが小さくなる(すなわち電解水L1との親和性が向上する)。
効率可変回折素子30は、第1電極35及び第2電極36に電圧を印加しない状態において、例えば100〜110°であった電解水L1に対する撥水層38の接触角を、電圧を印加した状態では約60〜80°程度にまで低下させるようになされている。
言い換えると効率可変回折素子30は、電圧を印加しない状態において、電解水L1とシリコンオイルL2との間の界面エネルギーEL1−L2と比較して大きかった電解水L1と撥水層38と間の界面エネルギーL1−38を、電圧を印加することにより、界面エネルギーEL1−L2よりも小さくすることができる。
このときの電解水L1と、シリコンオイルL2と、撥水層38との間の界面エネルギーEの関係を以下に示す。なお、界面エネルギーEL2−38及びEL1−38は、いずれが大きくても、また同程度であっても良い。
このとき電解水L1は、界面エネルギーEL1−L2が界面エネルギーEL1−38よりも大きいことから、撥水層38との接触面積を増大させてでもシリコンオイルL2との接触面積を極力低減させようとして、界面IFの曲率をゼロまで緩和し、電解水L1及びシリコンオイルL2の界面IFを平面状にする。
この結果図5(B)に示すように、効率可変回折素子30は、内側面32Aに形成された回折格子DPに対してシリコンオイルL2を接触させることができる。
この電圧が印加された状態における回折格子DPの位相深さφ2は、光ビーム40の波長をλ、回折格子DPの格子深さをdとすると、次式によって表すことができる。
また、電解水L1が回折格子DPに接触している中央部分を光ビーム40が通過するときのm次の回折効率η2(m)は、次式のように表すことができる。
本実施の形態の場合、効率可変回折素子30は、回折格子DPの屈折率(すなわち円板部材32の屈折率)nGが約1.5であり、シリコンオイルL2の屈折率n1が約1.5とほぼ同一であることから、回折格子DPは見かけ上存在しないことになり、0次光ビームの回折効率η2(0)は、ほぼ100%となる。
また、効率可変回折素子30は、屈折率の異なる電解水L1及びシリコンオイルL2の界面IFが平面状でなることから、効率可変回折素子30総体として単なる平板として作用することができる。
このように効率可変回折素子30は、第1電極35及び第2電極36に対する電圧の印加の有無に応じて、当該効率可変回折素子30を通過する光ビーム40の回折効率ηを切り替えることができる。
従って図6(A)に示すように、光ディスク装置1の制御部2(図1)は、読出処理を開始する際、第1電極35及び第2電極36接続されたスイッチ素子SWに対し、スイッチを開放にする旨の開放コマンドCOを供給することにより、スイッチ素子SWを開放させ、効率可変回折素子30における第1電極35及び第2電極36に対して電圧を印加しないようにする。
このとき効率可変回折素子30は、電解水L1を回折格子DPに接触させることにより回折素子として作用し、ビームスプリッタ17から入射される光ビーム40を0次光ビームの回折効率に応じた所定の割合(例えば50%)で透過させ、光ビーム40の光量を減少させてコリメータレンズ18に入射する。
これにより、制御部2は、レーザダイオード11の出射光強度を効率可変回折素子30が配置されない場合よりも大きく(例えば2倍)設定させて、光ビーム40におけるS/N(Signal to Noise)比を大きくすることができる。
一方図6(B)に示すように、制御部2は、記録処理を開始する際、スイッチ素子SWに対してスイッチを閉じる旨の閉コマンドCCを供給することにより、スイッチ素子SWを閉じさせ、効率可変回折素子30における第1電極35及び第2電極36に対して電圧を印加する。
このとき効率可変回折素子30は、シリコンオイルL2を回折格子DPに接触させることにより単なる平板として作用し、ビームスプリッタ17から入射される光ビーム40の殆どを透過させ、コリメータレンズ18に入射する。
これにより、大きな照射光量を必要とする記録処理時において、光ピックアップ100は、効率可変回折素子30を通過させる際に光ビーム40の光量を殆ど減少させることがなく、十分な照射光量を確保することができる。
このとき効率可変回折素子30は、液晶と比して流動性の高い液体を電解水L1及びシリコンオイルL2として使用しているため、液晶と比較して電圧に対して迅速に応答し得ることが確認されている。
このようにして、効率可変回折素子30は、電圧の印加に応じて撥水層38の表面エネルギーが変化するいわゆるエレクトロウェッティング作用を利用して、その回折効率ηを切り替えるようにした。
これにより効率可変回折素子30は、迅速に効率可変回折素子30を通過する光ビーム40の透過率を切り替えることができるため、記録処理及び読出処理を迅速に切り替える必要のある記録モードにおいて、読出処理の際には光ビーム40の光量を減少させて高出力でレーザダイオード11を使用させつつ、記録処理の際には光ビーム40の光量を減少させることなく大きい照射光量を維持し得るようになされている。
(3)動作及び効果
以上の構成において、光ディスク装置1の光ピックアップ100は、効率可変回折素子30を有している。この効率可変回折素子30は、光ビーム40を回折させるための回折格子DPを有する内側面32Aと、光ビーム40が通過しない非接触領域44とによって空洞ARを形成する。
以上の構成において、光ディスク装置1の光ピックアップ100は、効率可変回折素子30を有している。この効率可変回折素子30は、光ビーム40を回折させるための回折格子DPを有する内側面32Aと、光ビーム40が通過しない非接触領域44とによって空洞ARを形成する。
この空洞ARには、第1の液体として、導電性を有する電解水L1が充填されると共に、内側面32Aが有する凹凸を覆うだけの容積を少なくとも有し、第2の液体として、電解水L1と非相溶かつ当該電解水L1の屈折率n1とは異なる屈折率n2を有し、絶縁性でなるシリコンオイルL2が、内側面32Aの少なくとも一部と接触するように充填される。
効率可変回折素子30は、電解水L1に通電する第1電極35を有している。また効率可変回折素子30は、非接触領域44において、光ビーム40を囲むように帯状の第2電極36が設けられ、さらに第2電極36の上から非接触領域44を覆って当該非接触領域44の表面を構成する撥水層38が設けられている。
撥水層38は、第1電極35及び第2電極36に電圧が印加されない状態では電解水L1に対する親和性が電解水L1及びシリコンオイルL2間の親和性よりも低く、第1電極35及び第2電極36に電圧が印加されると、第1電極35を介して通電した電解水L1と、第2電極L2とから加えられる電圧によって電解水L1に対する親和性を電解水L1及びシリコンオイルL2間の親和性よりも向上させる撥水層38を有している。
電解水L1は、第1電極35及び第2電極36に電圧が印加されない状態では親和性が低く、電解水L1、シリコンオイルL2及び撥水層38との3相間で最も高い界面エネルギーEL1−38を有する撥水層38との接触面積を減少させるためにシリコンオイルL2との界面IFの中央を突出させて内側面32Aに接触する。
一方電解水L1は、第1電極35及び第2電極36に電圧が印加されると、電解水L1と撥水層38との親和性が向上して界面エネルギーEL1−38が低下した撥水層38との接触面積を増大させ、3相間で最も高い界面エネルギーEL1−L2を有することになった電解水L1及びシリコンオイルL2の接触面積を減少させようとする。すなわち電解水L1は、シリコンオイルL2との界面IFを平面にして当該界面IFにおける曲率を緩和することにより、内側面32Aと接触しないようにする。
これにより効率可変回折素子30は、第1電極35及び第2電極36に対する電圧の印加に応じて、内側面32Aに形成された回折格子DPに対して接触させる液体を電解水L1又はシリコンオイルL2から選択的に切り替えることができ、回折格子DPに接触する領域の屈折率を切り替えることができる。
このとき効率可変回折素子30は、電解水L1及びシリコンオイルL2が液体を用いていることから、電解水L1及びシリコンオイルL2が第1電極35及び第2電極36に対する電圧の印加に応じて迅速に流動することができ、液体と比して流動性の低い液晶を用いた液晶素子よりも応答性を速くすることができる。
また効率可変回折素子30は、第1及び第2の液体として温度変化に対する粘度変化が少ない電解水L1及びシリコンオイルL2を用いているため、低温環境化で使用することが可能となる。
さらに効率可変回折素子30は、耐光性に優れている電解水L1及びシリコンオイルL2を用いていることから、効率可変回折素子30としての経時劣化を低減させることが可能となる。
また効率可変回折素子30は、第1の液体として電解質水溶液である電解水L1を用いている。一般的に水は様々な電解質を溶解させることができるため、抵抗値や低温下での流動性などの特性を自由に設計することが可能となる。
さらに水は他の液体と比してその極性が特異的に高いため、電解水L1と非相溶でなる第2の液体(シリコンオイルL2)や、電解水L1と親和性の低い撥水層38の選択の幅を広げることができると共に、シリコンオイルL2及び撥水層38との界面エネルギーEL1−L2及びEL1−38を大きくして、曲面状でなる電解水L1とシリコンオイルL2との界面IFの曲率を大きくすることができ、電解水L1を回折格子DPに対して容易に接触させることができる。
また非接触領域44が円筒形状でなることにより、角柱形状を有する場合と比較して、第2電極36、誘電体層37及び撥水層38を非接触領域44上に容易に形成させることができる。
さらに効率可変回折素子30は、第1電極35及び第2電極36に電圧が印加されると、電解水L1とシリコンオイルL2との界面IFの曲率をゼロに緩和して平面を形成することにより、効率可変回折素子30を通過する光ビーム40に収差を発生させないようにすることができる。
また効率可変回折素子30は、回折格子DPを有する内側面32Aとほぼ同一の屈折率でなるシリコンオイルL2を第2の液体として用いたことにより、シリコンオイルL2が回折格子DPと接触したときに回折格子DPが光ビーム40を回折させず、光ビーム40の殆どをそのまま通過させることができる。これにより効率可変回折素子30は、大きい照射光量を必要とする記録処理の際に光ビーム40の光量を減少させずに済む。
また効率可変回折素子30は、内側面32Aと対向し、当該内側面32A及び非接触領域44と共に空洞ARを密封する対向面としての内側面33Aを有することにより、液体である電解水L1及びシリコンオイルL2を密封することができる。
さらに効率可変回折素子30は、第2電極36を覆うように、撥水層38と第2電極36との間に誘電体層37を設けることにより誘電体層37の誘電率を自由に調整することができる。これにより効率可変回折素子30は、疎水性及び誘電体としての特性を両方備えるパリレンなどの材料を撥水層38及び誘電体層37として使用する方法と比較して、誘電率が最適になるような材料を誘電体層37として選定することができ、第1電極35及び第2電極36に小さい電圧を印加するだけで同様のエレクトロウェッティング作用を奏するように設計可能である。
また効率可変回折素子30は、ほぼ同一の比重を有する電解水L1及びシリコンオイルL2を用いることにより、重力の影響を避けることができ、当該効率可変回折素子30の体勢に応じて回折格子DPに接触する液体が変わったり、電解水L1が回折格子DPに接触する形状が変化することなどを防止することができる。
さらに効率可変回折素子30は、電解質水溶液でなるため粘度の小さい電解水L1と同等若しくは電解水L1よりも小さい粘度を有するシリコンオイルL2を用いることにより、シリコンオイルL2の流動性を高めることができ、電圧に対する応答性を向上させることができる。
また光ディスク装置1の制御部2は、光ディスク100に対する情報の記録処理又は読出処理に応じて、第1電極35及び第2電極36に対して電圧を印加するよう、電圧印下部であるスイッチング素子SWを制御する。
ここで光ディスク装置1は、記録モードにおいて記録処理及び読出処理を随時切り替えるため、光ビーム40の照射光量を高速で変化させる必要がある。光ディスク装置1では、応答性が速い効率可変回折素子30を用いてその回折効率を切り替えることにより、効率可変回折素子30を記録処理及び読出処理に応じて透過率を変化させるアッテネータとして使用することができる。
以上の構成によれば、効率可変回折素子30は、回折格子DPと撥水層38とによって囲んで形成された空洞AR内に電解水L1及びシリコンオイルL2を充填し、電圧の印加によって撥水層38に生じる静電エネルギーにより当該撥水層38のぬれ性を変化させる、いわゆるエレクトロウェッティング作用を利用し、非相溶でなる電解水L1及びシリコンオイルL2と、撥水層38との3相の界面エネルギーEの関係を変化させ、電圧の印加に応じて回折格子DPに対して接触する液体を電解水L1又はシリコンオイルL2に選択的にかつ迅速に切り替える。これにより効率可変回折素子30は、回折格子DPに接触する領域の屈折率を電圧の印加に応じて変化させることができ、かくして回折格子DPの回折効率を迅速に切り替えることができる効率可変回折素子、並びに当該効率可変回折素子を用いた光ピックアップ及び光ディスク装置を実現することができる。
(4)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、第1の液体として電解水L1を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の導電性を有する液体を用いることができる。
なお上述の実施の形態においては、第1の液体として電解水L1を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、種々の導電性を有する液体を用いることができる。
また上述の実施の形態においては、第2の液体としてシリコンオイルL2を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば各種オイルや有機溶剤又はこれらの混合物など、種々の液体を用いることができる。
さらに上述の実施の形態においては、親和性変更膜として第1の液体である電解水L1が低い撥水層38を用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、使用される第1の液体の種類に応じて、当該第1の液体と親和性の低い種々の化合物を用いることができる。
さらに上述の実施の形態においては、非通過面としての非接触領域44が円筒形状でなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば底面が正方形や長方形、八角形、楕円などでなる各種角柱形状や楕円柱形状でなるようにしても良い。この場合であっても上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
さらに上述の実施の形態においては、第1電極35及び第2電極36に電圧が印加されると、電解水L1及びシリコンオイルL2の界面IFの曲率をゼロに緩和するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば界面IFの曲率を所定の値に制御することにより当該界面IFをレンズとして作用させ、光ビーム40が有する収差を補正するようにすることができる。
さらに上述の実施の形態においては、シリコンオイルL2の屈折率n2が回折格子DPの屈折率nGとほぼ同一である場合について述べたが、本発明はこれに限らず、電解水L1の屈折率n1が回折格子DPの屈折率nGとほぼ同一であっても良い。この場合であっても上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。
また、電解水L1の屈折率n1及びシリコンオイルL2の屈折率n2のいずれもが回折格子DPの屈折率nGと異なっていても良い。この場合、第1電極35及び第2電極36に対して電圧を印加した場合、電圧を印加していない場合のいずれにおいても、回折格子DPの屈折率nGと、電解水L1の屈折率n1及びシリコンオイルL2の屈折率n2の差異に応じて回折格子DPが回折格子として作用することになる。
さらに上述の実施の形態においては、内側面33Aによって空洞ARを密封するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、必ずしも空洞ARを密封する必要はない。
さらに上述の実施の形態においては、非接触領域44に誘電体層37と撥水層38との両方を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばパリデンなどの誘電体でありかつ撥水性を有するような化合物を用いることにより、誘電体層37を省略することも可能である。
さらに上述の実施の形態においては、電解水L1の比重及びシリコンオイルL2の比重がほぼ同一でなるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、異なっていても良い。この場合であっても、例えば回折格子DPを有する内側面32を鉛直方向に載置することにより、重力の影響を受けずに効率可変回折素子30を使用することができる。
さらに上述の実施の形態においては、シリコンオイルL2の粘度が電解水L1の粘度と同等若しくはそれ以下であるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、シリコンオイルL2が効率可変回折素子30としての応答性に応じた十分な流動性を有していれば良い。また、電解水L1についても同様であり、その粘度に拘らず、効率可変回折素子30としての応答性に応じた十分な流動性を有していれば良い。
さらに上述の実施の形態においては、内側面32が直線状の回折格子DPを有するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば同心円状の回折格子やその他種々の形状でなる回折格子を有するようにしても良い。またバイナリ型ではなく、ブレーズ型などでなる回折格子を有するようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、光ピックアップ100において効率可変回折素子30をアッテネータとして用いるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば光ビーム40の波長に応じて回折効率を変化させるなど、種々の用途に用いることができる。
さらに上述の実施の形態においては、光ディスク装置1は、記録又は再生処理に応じて回折格子DPに接触する液体を電解水L1又はシリコンオイルL2に切り替え、大きな照射光量を必要とする記録処理時には光ビーム40の光量を殆ど減少させない一方、読出処理時において光ビーム40の光量を減少させるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば複数種類の光ディスク100に対応した光ディスク装置において、光ディスク100の種類に応じて回折格子DPに接触する液体を電解水L1又はシリコンオイルL2に切り替え、大きな照射光量を必要とする光ディスク100に対して光ビーム40の光量を殆ど減少させない一方、小さな照射光量を必要とする光ディスク100に対しては光ビーム40の光量を減少させるようにしても良い。
さらに上述の実施の形態においては、光源としてのレーザダイオード11と、回折面としての内側面32Aと、非通過面としての非接触領域44と、第1の液体としての電解水L1と、第2の液体としてのシリコンオイルL2と、第1の電極としての第1電極35と、第2の電極としての第2電極36と、親和性変更層としての撥水層38と、電圧印加部としての電源Vと、対物レンズとしての対物レンズ20と、電圧制御部としての制御部2とによって効率可変回折素子としての効率可変回折素子30を構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、その他種々の構成でなる光源と、回折面と、非通過面と、第1の液体と、第2の液体と、第1の電極と、第2の電極と、親和性変更層と、電圧印下部と、対物レンズと、電圧制御部とによって本発明の光ディスク装置を構成するようにしても良い。
本発明の光ピックアップは、例えば電子機器に搭載される各種方式でなる光ディスクドライブに利用することができる。
1……光ディスク装置、2……制御部、10……光ピックアップ、11……レーザダイオード、12……1/2波長板、13……回折素子、15……APC用レンズ、16……APC用光検出器、17……ビームスプリッタ、18……コリメータレンズ、19……1/4波長板、20……対物レンズ、30……効率可変回折素子、31……円筒部材、31A……円周面、32、33……円板部材、32A、33A……内側面、35……第1電極、36……第2電極、37……誘電体層、38……撥水層、44……非接触領域、50……反射光ビーム、100……光ディスク、AR……空洞、L1……電解水、L2……シリコンオイル、V……電源。
Claims (13)
- 光ビームを回折させるための回折格子を有する回折面と、
上記回折面と共に空洞を形成し、上記光ビームが通過しない非通過面と、
上記空洞に充填され、導電性を有する第1の液体と、
少なくとも上記回折面が有する凹凸を覆うだけの容積を有すると共に、上記回折面の少なくとも一部と接触するように上記空洞に充填され、上記第1の液体と非相溶かつ当該第1の液体とは異なる屈折率を有し、絶縁性でなる第2の液体と、
上記第1の液体に通電する第1の電極と、
上記非通過面において、上記光ビームを囲むように帯状に設けられた第2の電極と、
上記第2の電極の上から上記非通過面を覆って当該非通過面の表面を構成し、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では上記第1の液体に対する親和性が上記第1及び第2の液体間の親和性よりも低く、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記第1の電極を介して通電した上記第1の液体と上記第2の電極とから電圧が加えられることにより上記第1の液体に対する親和性を上記第1及び第2の液体間の親和性よりも向上させる親和性変更層と
を具え、
上記第1の液体は、
上記第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では上記親和性変更層との接触面積を減少させるために上記第2の液体との界面を中央が突出するよう湾曲させて上記回折面に接触する一方、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記親和性変更層との接触面積を増大させるために上記界面における曲率を緩和して上記回折面と接触しない
ことを特徴とする効率可変回折素子。 - 上記第1の液体は、
電解質水溶液である
ことを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記非通過面は、
円筒形状でなることにより、上記回折面の中心を通る上記光ビームの光軸から上記親和性変更層までの距離を等しくする
ことを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記第1の液体は、
上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記界面における曲率をゼロに緩和して平面を形成する
ことを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記第1の液体又は上記第2の液体は、
上記回折面とほぼ同一の屈折率でなる
ことを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記回折面は、
上記第1の液体に対する親和性が、上記第1及び第2の液体間の親和性よりも高い
ことを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記回折面と対向し、当該回折面及び上記非通過面と共に上記空洞を密封する対向面
を具えることを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記第2電極を覆うように、上記親和性変更層と上記第2電極との間に設けられた誘電体層
を具えることを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記第1の液体は、
上記第2の液体とほぼ同一の比重を有する
を具えることを特徴とする請求項1に記載の効率可変回折素子。 - 上記第2の液体は、
上記第1の液体と同等若しくは当該第1の液体よりも小さい粘度を有する
ことを特徴とする請求項2に記載の効率可変回折素子。 - 光ビームを出射する光源と、
上記光ビームを回折させるための回折格子を有する回折面と、上記回折面と共に空洞を形成し、上記光ビームが通過しない非通過面と、上記空洞に充填され、導電性を有する第1の液体と、少なくとも上記回折面が有する凹凸を覆うだけの容積を有すると共に、上記回折面の少なくとも一部と接触するように上記空洞に充填され、上記第1の液体と非相溶かつ当該第1の液体とは異なる屈折率を有し、絶縁性でなる第2の液体と、上記第1の液体に通電する第1の電極と、上記非通過面において、上記光ビームを囲むように帯状に設けられた第2の電極と、上記第2の電極の上から上記非通過面を覆って当該非通過面の表面を構成し、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では上記第1の液体に対する親和性が上記第1及び第2の液体間の親和性よりも低く、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記第1の電極を介して通電した上記第1の液体と上記第2の電極とから電圧が加えられることにより上記第1の液体に対する親和性を上記第1及び第2の液体間の親和性よりも向上させる親和性変更層とを有し、上記第1の液体が、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では上記親和性変更層との接触面積を減少させるために上記第2の液体との界面を中央が突出するよう湾曲させて上記回折面に接触する一方、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記親和性変更層との接触面積を増大させるために上記界面における曲率を緩和して上記回折面と接触しない効率可変回折素子と、
上記効率可変回折素子に対して電圧を印加する電圧印加部と、
上記効率可変回折素子を通過した上記光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズと
を具えることを特徴とする光ピックアップ。 - 光ビームを出射する光源と、
上記光ビームを回折させるための回折格子を有する回折面と、上記回折面と共に空洞を形成し、上記光ビームが通過しない非通過面と、上記空洞に充填され、導電性を有する第1の液体と、少なくとも上記回折面が有する凹凸を覆うだけの容積を有すると共に、上記回折面の少なくとも一部と接触するように上記空洞に充填され、上記第1の液体と非相溶かつ当該第1の液体とは異なる屈折率を有し、絶縁性でなる第2の液体と、上記第1の液体に通電する第1の電極と、上記非通過面において、上記光ビームを囲むように帯状に設けられた第2の電極と、上記第2の電極の上から上記非通過面を覆って当該非通過面の表面を構成し、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では上記第1の液体に対する親和性が上記第1及び第2の液体間の親和性よりも低く、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記第1の電極を介して通電した上記第1の液体と上記第2の電極とから電圧が加えられることにより上記第1の液体に対する親和性を上記第1及び第2の液体間の親和性よりも向上させる親和性変更層とを有し、上記第1の液体が、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されない状態では上記親和性変更層との接触面積を減少させるために上記第2の液体との界面を中央が突出するよう湾曲させて上記回折面に接触する一方、上記第1及び第2の電極に電圧が印加されると、上記親和性変更層との接触面積を増大させるために上記界面における曲率を緩和して上記回折面と接触しない効率可変回折素子と、
上記第1及び第2の電極に対して電圧を印加する電圧印加部と、
上記効率可変回折素子を通過した上記光ビームを集光して光ディスクに照射する対物レンズと、
上記電圧印加部を制御する電圧制御部と
を具えることを特徴とする光ディスク装置。 - 上記電圧制御部は、
上記光ディスクに対する情報の記録又は読出に応じて、上記効率回折素子に対して電圧を印加するように上記電圧印下部を制御する
ことを特徴とする請求項12に記載の光ディスク装置。
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JP2007221603A JP2009054249A (ja) | 2007-08-28 | 2007-08-28 | 効率可変回折素子、光ピックアップ及び光ディスク装置 |
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Cited By (3)
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---|---|---|---|---|
JP2014215518A (ja) * | 2013-04-26 | 2014-11-17 | 日本電信電話株式会社 | 性能可変回折格子 |
CN105467578A (zh) * | 2016-01-08 | 2016-04-06 | 深圳市国华光电科技有限公司 | 一种电润湿制备工艺过程中基板表面残留物的检测方法 |
CN114415275A (zh) * | 2020-10-28 | 2022-04-29 | 杭州海康威视数字技术股份有限公司 | 曝光设备及近眼显示设备 |
-
2007
- 2007-08-28 JP JP2007221603A patent/JP2009054249A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014215518A (ja) * | 2013-04-26 | 2014-11-17 | 日本電信電話株式会社 | 性能可変回折格子 |
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CN105467578B (zh) * | 2016-01-08 | 2018-03-02 | 深圳市国华光电科技有限公司 | 一种电润湿制备工艺过程中基板表面残留物的检测方法 |
CN114415275A (zh) * | 2020-10-28 | 2022-04-29 | 杭州海康威视数字技术股份有限公司 | 曝光设备及近眼显示设备 |
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