JP2009051966A - 透光性フッ化カルシウム蛍光体の製造方法及びフッ化カルシウム蛍光体 - Google Patents
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Abstract
【課題】
青色又は赤色に発光する透光性蛍光体を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】
ユウロピウム(Eu)がドープされたフッ化カルシウム(CaF2)焼結体からなる青色発光蛍光体においては、ユウロピウムのモル比を0.001%以上1%以下とし、赤色発光蛍光体においては、ユウロピウムのモル比を8%以上10%以下とする。そして1000℃以上1300℃以下の温度及び500kg/cm2以上3000kg/cm2以下の圧力下で熱間等方圧加熱処理することにより透光性を付与する。
【選択図】なし
青色又は赤色に発光する透光性蛍光体を安定して製造する方法を提供する。
【解決手段】
ユウロピウム(Eu)がドープされたフッ化カルシウム(CaF2)焼結体からなる青色発光蛍光体においては、ユウロピウムのモル比を0.001%以上1%以下とし、赤色発光蛍光体においては、ユウロピウムのモル比を8%以上10%以下とする。そして1000℃以上1300℃以下の温度及び500kg/cm2以上3000kg/cm2以下の圧力下で熱間等方圧加熱処理することにより透光性を付与する。
【選択図】なし
Description
本発明は、セラミックスからなり、透光性を有し、青色又は赤色に発光する蛍光体及びその製造方法に関する。
フッ化カルシウム(CaF2)は屈折率が1.43と非常に低いため、空気との界面における反射率が低く、光学部材として用いたときに光の利用効率に優れているという特徴を有する。また、結晶格子間に希土類イオンを容易にドープできるため、蛍光体の母材としても優れており、さらにフッ化物結晶に共通する特徴としてフォノン振動が小さいため、レーザー発光媒体としても優れている。
特許文献1(特開2006−206359号公報)には、透光性フッ化カルシウムセラミックス及び、ユウロピウム(Eu)又はテルビウム(Tb)イオンをドープした蛍光体の製造方法が開示されている。
特開2006−206359号公報
本発明の目的は、青色又は赤色に発光する透光性蛍光体を安定して製造する方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明においては、フッ化カルシウムにドープするユウロピウムの濃度を、青色発光蛍光体については0.001モル%以上1モル%以下とし、赤色発光蛍光体については1モル%以上8モル%以下とする。
また、上記蛍光体に透光性を付与する方法として、本発明においては、1000℃以上1300℃以下の温度及び500kg/cm2以上3000kg/cm2以下の圧力下で熱間等方圧加熱処理することを特徴とする透光性蛍光体の製造方法を提供する。
本発明によれば、フッ化カルシウムからなる蛍光体において、ドープされたユウロピウムの価数を安定化することができ、青色に発光する蛍光体又は赤色に発光する蛍光体を安定して製造することができる。
また、本発明によれば、透光性を有する蛍光体を製造することができ、かかる蛍光体を用いれば、励起光を背後から照射して発光光を前方に取り出す透過光学系を実現することが可能となる。
この発明の実施の形態にかかる製造方法について説明すると、まず、図1に示すように、カルシウム化合物である酢酸カルシウムの水溶液と、フッ素化合物であるフッ化水素酸(フッ酸)の水溶液とを反応させる。
この反応には、酢酸カルシウムに対し、モル比で2を超えるフッ化水素酸を加えると共に、互いの溶液の中に直接注入し、しかも、カルシウム化合物の溶液又は、フッ素化合物の溶液を攪拌しながら互いの溶液を注入し、注入が終了してからも少なくとも10分以上攪拌を続ける。
そして、そのようにして得られたフッ化カルシウム微粒子が懸濁した溶液(スラリー)を密閉容器に入れて100℃以上300℃以下に加熱・加圧処理する。
次に、ユウロピウム化合物である酢酸ユウロピウムの水溶液を調製し、ドープ濃度に応じた所定量の酢酸ユウロピウム水溶液を、前記スラリー中によく攪拌しながら滴下した後、これを乾燥させて、所定量のユウロピウムがドープされたフッ化カルシウム粉末とする。
本発明において青色蛍光を発するフッ化カルシウム焼結体を製造する場合には、フッ化カルシウム(CaF2)に対し、ユウロピウムのドープ濃度がモル比で0.001%以上1%以下となるように、酢酸ユウロピウム水溶液の濃度及び添加量を調整する。また、赤色蛍光を発するフッ化カルシウム焼結体を製造する場合には、同様にユウロピウムのドープ濃度が8%以上10%以下となるように、酢酸ユウロピウム水溶液の濃度及び添加量を調整する。(以下、ドープ濃度の表示はモル%による)
本発明者が実験的に見出したところによれば、フッ化カルシウム焼結体中におけるユウロピウムの濃度が1%よりも高く8%よりも低い場合には、ユウロピウムイオンの価数が不安定となり、青色及び赤色の双方の蛍光を発する現象が認められる。この場合、各々の蛍光の強度比によって蛍光の色調が大きく変化するため、青色又は赤色の蛍光色を安定的に得るためには、ユウロピウムの濃度を0.001%以上1%以下の範囲、又は8%以上10%以下の範囲のいずれかとすることが必要である。
本発明者が実験的に見出したところによれば、フッ化カルシウム焼結体中におけるユウロピウムの濃度が1%よりも高く8%よりも低い場合には、ユウロピウムイオンの価数が不安定となり、青色及び赤色の双方の蛍光を発する現象が認められる。この場合、各々の蛍光の強度比によって蛍光の色調が大きく変化するため、青色又は赤色の蛍光色を安定的に得るためには、ユウロピウムの濃度を0.001%以上1%以下の範囲、又は8%以上10%以下の範囲のいずれかとすることが必要である。
以上の工程により所定量のユウロピウムをドープしたフッ化カルシウム粉末を700℃以上1300℃以下に加熱することにより、相対密度を95%以上とする焼結体を製造する。なお、焼結体の製造に際しては、焼結前に金型プレス等により粉末を成形することで、所望の形状を有する焼結体を製造することもできる。
次いで、その焼結体をアルゴン又は窒素などの不活性雰囲気中で、500kg/cm2以上3000kg/cm2以下の圧力をかけながら、1000℃以上1300℃以下の温度で熱間等方圧加熱処理することにより、焼結体の相対密度を99%以上として、透光性焼結体を製造する。
かかるフッ化カルシウム焼結体からなる透光性蛍光体は、その光透過率を50%以上とすることができる。
酢酸カルシウム水和物90.2g(0.512モル)に蒸留水320gを加えて完全に溶かし、酢酸カルシウム水溶液を調製した。濃度50%のフッ化水素酸81.9g(2.048モル)に蒸留水82gを加えてフッ酸水溶液を調製した。テフロン(登録商標)製羽根付き攪拌棒を300rpmで回転させ、酢酸カルシウム水溶液を攪拌しながらフッ酸水溶液をローラーポンプを用いて1時間かけてゆっくり注入した。フッ酸水溶液の注入が終了したらそのまま攪拌を6時間続け、凝集したフッ化カルシウム粒子を破壊してよく分散させた。
攪拌が終了したフッ化カルシウムスラリーはテフロン(登録商標)製オートクレーブに入れて密閉し、145℃で24時間加熱・加圧処理した。オートクレーブを室温まで冷却した後、沈殿したフッ化カルシウム粒子をよく攪拌してスラリーを完成させた。
このスラリーをテフロン(登録商標)製羽根付き攪拌棒により300rpmで攪拌しながら、酢酸ユウロピウム水和物に蒸留水を加えて調製した酢酸ユウロピウム水溶液を滴下して加えた。酢酸ユウロピウム水溶液の滴下量は、フッ化カルシウム(CaF2)に対するユウロピウム(Eu)のモル比が0.01%、0.1%、1%、3%、8%、10%となるように調整し、合計6種類の試料を作製した。
これらのスラリーを乾燥させてから乳鉢で粉砕し、それぞれ乾燥粉末とした。
乾燥粉末6gを直径30mmの金型を用いて一軸成形し、900℃で1時間焼結させると相対密度が約97%で白色の焼結体が得られた。
次に、熱間等方圧加圧(HIP)装置により、白色の焼結体をアルゴン雰囲気中で1500kg/cm2の等方圧をかけながら1100℃に加熱すると、焼結体内部に残留していた気孔が外部に押し出されて透明となり、透光性焼結体が得られた。
以上により作製したユウロピウム濃度の異なる6種類の試料について、日立ハイテクノロジーズ製分光蛍光光度計F−2500を用いて、蛍光スペクトル及び励起スペクトルを測定した。その結果、ユウロピウム濃度が0.01%、0.1%、1%の試料では、青色蛍光のみが認められ、3%の試料では青色及び赤色の双方の蛍光が認められ、8%及び10%の試料では赤色蛍光のみが認められた。
青色蛍光の発光強度は、ユウロピウム濃度が0.1%のときに最大となり、Eu2+のf−d遷移により高効率で発光した。一方、赤色蛍光の発光強度は、ユウロピウムのドープ量とともに増大する傾向があり、Eu3+のf−f遷移により発光した。
図1は、ユウロピウム濃度が0.1%の試料の発光スペクトル及び励起スペクトルである。365nmの励起光を試料に照射して発光スペクトルを測定したところ、中心波長が423nmの青色に発光した。また、励起光の波長を変化させて423nmの青色光について励起スペクトルを測定したところ、励起光の波長を340−370nmにすると効率よく発光した。
図2は、ユウロピウム濃度が8%の試料の発光スペクトル及び励起スペクトルである。365nmの励起光を試料に照射して発光スペクトルを測定したところ、中心波長が593nmの赤色に発光した。また、励起光の波長を変化させて593nmの赤色光について励起スペクトルを測定したところ、励起光の波長が400nm以下、特に395nmにおいて中心波長が593nmの赤色に効率よく発光した。
図3は、ユウロピウム濃度と、青色及び赤色の蛍光強度との関係を示すグラフである。青色蛍光の強度はユウロピウム濃度が0.1%で最大となり、これに対して赤色蛍光の強度はユウロピウム濃度が10%で最大となった。また、発光強度は青色蛍光の方が赤色蛍光よりも約45倍大きく、極めて高効率であった。
本実施例により製造したフッ化カルシウム焼結体からなる透光性蛍光体の透過率は、ユウロピウム濃度が0.1%のもので70%(厚さ3mm、波長550nm)、8%のもので82%(厚さ1.5mm、波長550nm)であり、可視光領域でほぼ透明であった。
Claims (3)
- モル比で0.001%以上1%以下のユウロピウム(Eu)がドープされたフッ化カルシウム(CaF2)焼結体からなることを特徴とする青色発光蛍光体。
- モル比で8%以上10%以下のユウロピウム(Eu)がドープされたフッ化カルシウム(CaF2)焼結体からなることを特徴とする赤色発光蛍光体。
- 請求項1又は請求項2に記載の蛍光体を、1000℃以上1300℃以下の温度及び500kg/cm2以上3000kg/cm2以下の圧力下で熱間等方圧加熱処理することにより透光性を付与することを特徴とする透光性蛍光体の製造方法。
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JP2007221085A JP2009051966A (ja) | 2007-08-28 | 2007-08-28 | 透光性フッ化カルシウム蛍光体の製造方法及びフッ化カルシウム蛍光体 |
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JP2011020917A (ja) * | 2009-06-17 | 2011-02-03 | Nikon Corp | Ca−Gd−F系透光性セラミックスの製造方法、Ca−Gd−F系透光性セラミックス、光学部材、光学系、及びセラミックス形成用組成物 |
WO2013073592A1 (ja) * | 2011-11-17 | 2013-05-23 | 株式会社ニコン | CaF2系透光性セラミックスおよびその製造方法 |
CN106520115A (zh) * | 2016-08-31 | 2017-03-22 | 佛山科学技术学院 | 一种水溶性稀土多孔纳米晶的制备方法 |
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2007
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