JP2009051929A - グラウト - Google Patents

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Abstract

【課題】水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトを地盤に注入するに際し、確実に固結強度を得るための施工管理を容易としたグラウトを提供する。
【解決手段】水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトであって、水ガラス水溶液とグリオキザール液の混合直後におけるpHが11.4以下になるように調整したことを特徴とする。ゲルタイムの長短にかかわらず、グリオキザールが完全にゲル化反応を起こし、確実に固結強度を発揮することが可能となる。
【選択図】なし

Description

本発明は、軟弱地盤や硬質地盤(掘削時等)の止水並びに地盤強化のために用いるグラウトの技術分野に属し、詳しくは、水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトに関するものである。
従来より、軟弱地盤や硬質地盤の止水並びに地盤強化のためにグラウトを地盤に注入することが行われており、特に地盤への浸透性を重視する場合にあっては、水ガラス系の溶液型グラウト(ケミカルグラウト)が用いられている。この溶液型グラウトのうち、ゲルタイム(ゲル化時間)の調整が容易でしかも高い固結強度が得られるものとして有機系硬化剤が使用されており、この有機系硬化剤にグリオキザールを用いたグラウトが知られている。
特開2002−180046号公報
水ガラス系溶液型グラウトには、大別して無機系と有機系とがある。このうち無機系(代表的には重曹)は、安価であるが、硬化剤量の少しの違いでゲル化時間が大きく変化するので所謂ゲルタイムの調整が難しく、またゲル化能力が劣り、しかも固結強度が小さいため、長結グラウト(ゲルタイムが約5分以上)としては不適と言われている。
一方、有機系、特に上記のグリオキザールはゲルタイムの調整が容易で、しかも高強度が得られるという優れた性質を備えていることが知られている。しかし、ゲルタイムが約20分以上になると固結強度が極端に低下し、さらに約30分以上になると急激にゲル化能力が低下し、ゲルタイムが大幅に遅延し、ついにはゲル化しなくなるという現象のあることが明らかになっている(特許文献1の実施例参照)が、その原因については解明されていない。このため、20〜30分程度のゲルタイムを調整する場合、ごく僅かな条件の違いにより、グラウトの固結強度が極端に低下し、さらにはゲル化能力を失うという現象が発生していたが、その原因が判らないため現場での管理すべき必須条件が設定できないという問題を抱えていた。
水ガラスとグリオキザールは、次のように反応してゲル化する。まず、グリオキザールは、水ガラスのアルカリのもとに下記の式(1)の如く加水分解反応を起こしてグリコール酸を生成する。
(CHO)2 +H2 O → CH2 OH・COOH …(1)
次に、式(1)で生成したグリコール酸は、式(2)に示すように、水ガラスと反応してグリコール酸ソーダと不溶性の硅酸ゲルを生成する。
Na2 O・nSiO2 +2CH2 OH・COOH
→ 2CH2 OH・COONa+nSiO2 +H2 …(2)
しかし、水ガラス中のSiO2 、Na2 Oとグリオキザールが上記式(1)及び式(2)の反応において、どのような条件のもとにゲル化能力を損なうかについては今まで明らかにされていない。
一般には、水ガラスをゲル化させて固結する場合、ゲルタイムの調整の難易度、ゲル化能力の良し悪し、固結強度の大小等は、硬化剤(ゲル化剤)の種類によって大きく左右される。このうち、ゲルタイムの調整の難易度とゲル化能力の良し悪しをグリオキザール(特開2002−180046号公報)と無機系の重曹や水酸化カルシウム(特開平5−194953号公報、図3)について比較してみると、意外にもゲル化能力(長いゲルタイムでも)はグリオキザールよりも無機系の方が優れていることがわかる。
このことから、従来の定説では無機系より有機系のグリオキザールの方がゲル化能力が優れていると言われていたが、グリオキザールがある一定の条件が損なうと、むしろ劣るという致命的な弱点のあることが分かってきた。しかしながら、このような現象の起こる原因が分からないため、施工管理(特にグリオキザールの調整)が極めて困難であるという問題があった。さらに言えば、このような現象が起こること自体認識できていなかったというのが実情である。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトを地盤に注入するに際し、確実に固結強度を得るための施工管理を容易としたグラウトを提供することにある。
上記の目的を達成するため、本発明のグラウトは、水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトであって、水ガラス水溶液とグリオキザール液の混合直後におけるpHが11.4以下になるように調整したことを特徴としている。
水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトは、水ガラス及びグリオキザールの量や比、混合時間の長短、さらには液温等によりゲルタイムが大きく変化するため、施工現場においては、ゲルタイムを以てして、水ガラスとグリオキザールが確実にゲル化反応を起こし、高強度が得られたかどうかの判定を行うことはできないが、水ガラス水溶液とグリオキザール液の混合直後におけるpHが11.4以下になるように調整したグラウトを地盤に注入することによって、ゲルタイムの長短にかかわらず、グリオキザールが完全にゲル化反応を起こし、確実に固結強度を発揮することが可能となる。
本発明者は、水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトが一定の条件を損なうとゲル化能力が劣るという現象に対し、鋭意検討を行った結果、前述の式(1)から式(2)に移行するにはグラウト中の水ガラス(ここではSi−O−Naで示す)に起因する遊離アルカリ(水酸化ナトリウムイオン)の存在が大きく関わっていることを突き止め、この点を解明することで浸透性グラウトとしての性能を充分に満足できるグラウトを完成するに至ったものである。
すなわち、グラウトを調整する場合、グリオキザール液を加える前の水ガラス水溶液(原液に水を加えたもの)は、その一部が加水分解反応を起こして遊離アルカリを生成している。しかし、水ガラス水溶液中に含まれるSi−O−Naのうち、どの位のNaOHが生成しているかをNaイオンから定量的に求めることは現状では不可能である。そこで、本発明者は、水ガラス水溶液とグリオキザール液の混合直後におけるpHに注目した。なお、混合直後とは水ガラスとグリオキザールの混合を完了した時点から概ね2〜3分以内のことを言う。なぜなら測定作業に2〜3分を要するからである。
そして、多くの実験を行ったところ、混合直後におけるグラウトのpHが11.5付近になると急激にゲルタイムが遅延(ゲル化能力の低下)すると同時に固結強度が極端に低下し、さらにpHが11.6以上に上昇すると、ついにはゲル化しない(ゲル化能力を失う)ことを突き止めた。
その実験結果からすると、式(1)で生成したグリコール酸が式(2)に示す水ガラス中のSi−O−Naイオンと反応する前に、遊離アルカリのNaOHイオンの方が反応性が強いため、グリコール酸と次の式(3)の反応を起こすものと推定される。
CH2 O,COOH+NaOH → CH2 OH,COONa+H2 O …(3)
この式(3)の反応により、式(1)で生成したグリコール酸が消費され、水ガラスをゲル化させるのに充分なグリコール酸が不足するため、ゲル化しなくなることが実験例より確認できた。
なお、水ガラス水溶液の加水分解により生成する遊離アルカリは、水ガラスのモル比、グラウト中の水ガラス濃度(量)、水ガラス水溶液濃度、及び水ガラス原液に水を加えた後の経過時間等に大きく影響されるが、その度合いを定量的にはっきり解明することはできない。
多くの実験結果からはっきり特定できることは、水ガラス水溶液とグリオキザールの混合直後におけるpHが11.4以下になるように両者の混合条件を調整すれば、確実にゲル化し、高強度が得られるという事実である。逆に、pHが11.5付近になるとゲルタイムが急激に遅延し、固結強度が極端に低下し、さらに、pHがそれ以上になるとゲル化能力を失うことが判明したことで、グラウトを注入する際の現場での有効な施工管理指針が得られることになる。
なお、pHの測定装置は、多くの種類や型式があるが、本発明では施工現場で使用するため、できるだけ簡便でかつ目的の精度が得られるものを選択することが好ましい。
本発明で用いる水ガラスは、特に限定されないが、モル比2.8〜4.0のものが好ましい。
また、本発明で用いるグリオキザールは、市販されている40%濃度品を使用することが好ましい。
水ガラスとグリオキザールを混合する際に硬化助剤を併用してもよく、この硬化助剤としては、有機酸等の化合物、リン酸、硫酸、塩酸等の鉱酸、及びこれらの酸性塩類、重曹、中性塩が用いられる。そして、水ガラスとグリオキザールに加えて硬化助剤を併用した場合でも、これらを混合した直後のpHが11.4以下になるように調整することが絶対的条件である。
本発明のグラウトを使用したグラウト注入方法は、通常のグラウト注入方法と同様、地盤に注入するグラウトが、一液性のグラウト(調合槽で水ガラス水溶液とグリオキザール液を混合したグラウト)でもよいし、或いは、二液性のグラウト(水ガラス水溶液とグリオキザール水溶液を別々に圧送して注入口付近で合流混合して得られたグラウト)でもよい。いずれも単管または二重管を用いて地盤に注入することが好ましい。
以下に、本発明で使用するグラウトについて、実験結果を示して詳細に説明する。
ここで行った実験では、水ガラスとして表1に示すモル比の異なる4種類を用い、グリオキザールとして市販の40%濃度品(比重:1.28)を用いた。
Figure 2009051929
〔実験1〕
この実験1は、水ガラス2(JIS3号品相当)に水を加えた場合に、加水分解反応を起こして遊離アルカリ(NaOH)を生成するかどうかをpHを以て判定したもので、表2にその実験結果を示してある。なお、水ガラス原液に水を加えた水ガラス水溶液のpHの測定は、混合後2分以内で行った。
Figure 2009051929
表2の実験結果を見れば、水ガラス原液は多くの水で希釈するほど、また混合してから時間が経過するほどpHは高い値を示している。このpHが高い分に相当するだけ水ガラス(Si−O−Na)が加水分解を起こし、遊離アルカリ(NaOHイオン)を生成していることを意味している。また、実験例としては示していないが、モル比の異なる水ガラスについても表2と同様な傾向を示しており、その傾向はモル比が低いほど大きいことも確認された。
〔実験2〕
この実験2では、グラウト中のSiO2 とグリオキザールの量を一定にし、水ガラスのモル比を変化させた場合の混合直後におけるpH、ゲルタイム及びゲル化能力の有無を測定した。その結果は表3に示すようである。なお、pHの測定は、水ガラス原液に水を加えた水ガラス水溶液にグリオキザール液を加え良く混合した後、2分以内に行った。また、ゲルタイムの測定は、ビニール袋(径5cm、長さ30cm)内に水ガラス水溶液を入れ、その中にグリオキザール液を投入して良く混合した後、流動性を失うまでの時間とした。
Figure 2009051929
表3の実験結果を見れば、水ガラスのモル比が低くなるにしたがって混合直後のpHは少しずつ高くなり、pH11.6付近になると急激にゲル化能力を失うことが分かる。しかし、ゲルタイムは混合液のpHが11.4より低い場合は殆ど同じであった。このことから、pHが11.4以下であれば、Na2 O/グリオキザール比に関係なく、ゲル化能力及び固結強度を充分に発揮することが確認できた。
〔実験3〕
この実験3では、水ガラス2(JIS3号品相当)とグリオキザールの濃度を変化させた場合の混合直後のpH、ゲルタイム及び1日経過後のホモゲルの一軸圧縮強度を測定した。その結果は表4に示すようである。なお、ホモゲルの一軸圧縮強度は、ビニール袋(径5cm、長さ30cm)内に水ガラス水溶液を入れ、その中にグリオキザール液を投入して良く混合してグラウトとし、そのグラウトがゲル化する前に、径5cm、高さ10cmのモールドに投入してゲル化させた後、密封して1日が経過した後に測定した。
Figure 2009051929
表4の実験結果を見れば、グラウトのゲルタイムは、水ガラスの量が違っても大きな差なく、グリオキザールの量の多少により変化することが分かる。一方、一軸圧縮強度は水ガラスの量が多いほど高い値を示している。しかし、混合直後のpHが11.5付近(Na2 O/グリオキザール比が1.5以上)になると、ゲルタイムは急激に長くなり、同時に強度が極端に低下している(実験No.9、14、19)。さらに、pHが11.6以上(Na2 O/グリオキザール比が2以上)になると、ゲル化能力を失うという現象が確認された(実験No.8、13、18)。
以上の実験結果から、水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトは、水ガラス及びグリオキザールの量や比、混合時間の長短、さらには液温等によりゲルタイムが大きく変化するが、水ガラス水溶液とグリオキザール液の混合直後におけるpHが11.4以下になるように調整することにより、ゲルタイムの長短にかかわらず、グリオキザールが完全にゲル化反応を起こし、確実に固結強度を発揮することが分かる。

Claims (1)

  1. 水ガラスとグリオキザールを組み合わせたグラウトであって、水ガラス水溶液とグリオキザール液の混合直後におけるpHが11.4以下になるように調整したことを特徴とするグラウト。
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