JP2009051758A - エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法 - Google Patents

エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ジシクロペンタジエン(DCP)を出発原料として、高純度であり、残留金属が少なく、半導体用途に用いることができるエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エキソ−THDC)を収率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】本エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エキソ−THDC)の製造方法は、[1]水素化触媒の存在下にDCPを水素化してエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エンド−THDC)を得る工程と、[2]得られたエンド−THDCを含フッ素超強酸触媒の存在下に異性化させて、エキソ−THDCを得る工程と、[3]水洗工程と、を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法に関する。更に詳しくは、ジシクロペンタジエンを水素化してエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエンを得た後、得られたエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエンを酸触媒の存在下に異性化させて、エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンを製造する方法に関する。
エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエン(以下、「エキソ−THDC」ともいう。)は、近年、電子部品、精密機械部品等の洗浄溶剤として注目されている。更には、その屈折率が高いことから光学液体への応用も期待されている。
従来、エキソ−THDCを製造する方法としては、ジシクロペンタジエン(以下、「DCP」ともいう。)を水素化触媒の存在下に水素化を行った後、得られたエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエン(以下、「エンド−THDC」ともいう。)を、無水塩化アルミニウム等のフリーデル・クラフツ型酸触媒の存在下に異性化させて、エキソ−THDCを得る方法が知られている(例えば、特許文献1〜4等参照)。そして、フリーデル・クラフツ型酸触媒の存在下に異性化させてエキソ−THDCを得る方法は、その後改善がなされ、高効率で高純度の製品が得られるようになっている(例えば、特許文献5〜7等参照)。
特開昭50−13370号公報 特開昭57−32232号公報 特開昭58−18324号公報 米国特許第4086284号 特開2002−255866号公報 特開2002−302460号公報 特開2003−128593号公報
しかしながら、これらの合成法では、触媒として用いられるAlが残留金属として多く残ること、反応系が固体/液体の2層分離系であり攪拌効率によって反応率がばらつくこと、反応後のAlClを廃棄物として処分する際に手間がかかり、環境負担の度合いが高いこと等の問題があった。
本発明はかかる実情の下でなされたものであって、ジシクロペンタジエンを出発原料として、高純度で残留金属の少ないエキソ−THDCを収率よく得ることができる製造方法を提供することを課題とする。
本発明者等は前記課題を解決すべく、ジシクロペンタジエンを水素化及び異性化させることにより、エキソ−THDCを得る反応について詳細に検討した。その結果、異性化反応において、金属を含まない含フッ素超強酸触媒を用いることで、高効率に異性化反応が進むことを発見し、本発明を完成するに至った。更には、水素化反応において、カーボンに担持されたパラジウム(Pd/C)を水素化触媒として用いた場合に、触媒使用量が少なく効率的であることを発見し、本発明を完成するに至った。
本発明は以下の通りである。
1.[1]ジシクロペンタジエンを水素化触媒の存在下に水素化してエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエンを得る工程と、[2]得られたエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエンを含フッ素超強酸触媒の存在下に異性化させて、エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンを得る工程と、[3]水洗工程と、を有することを特徴とするエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
2.前記含フッ素超強酸触媒が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である前記1.に記載のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
Figure 2009051758
Figure 2009051758
〔一般式(1)及び(2)において、Ra及びRbは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の炭化水素基、又は炭素数3〜20のフッ化炭化水素基を示し、該炭化水素基及び該フッ化炭化水素基は置換基を有してもよい。Rfは、各々独立に、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rf’は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。〕
3.前記水素化反応が、カーボンに担持された、パラジウム、白金及びルテニウムから選ばれる少なくとも1種を用いて行われる接触還元法である前記1.又は2.に記載のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
4.前記異性化反応後の残留金属量の合計が500ppm以下である前記1.乃至3.のいずれかに記載のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
本発明の製造方法によれば、ジシクロペンタジエンを出発原料として、高純度であり、且つ残留金属の少ないエキソ−THDCを収率よく得ることができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法は、[1]ジシクロペンタジエン(DCP)を水素化触媒の存在下に水素化してエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エンド−THDC)を得る工程(以下、「工程(1)」という)と、[2]得られたエンド−THDCを含フッ素超強酸触媒の存在下に異性化させて、エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エキソ−THDC)を得る工程(以下、「工程(2)」という)と、[3]水洗工程(以下、「工程(3)」という)と、を有することを特徴とする(下記反応式参照)。
Figure 2009051758
〔式中、「エンド」及び「エキソ」は、それぞれ、化合物の立体異性構造を表す。〕
[1]工程(1)
前記工程(1)では、ジシクロペンタジエンを水素化触媒の存在下に水素化することにより、エンド−THDCが得られる。
原料である前記「ジシクロペンタジエン(DCP)」は、沸点が約170℃、融点が約17℃の物質である。この物質は、シクロペンタジエンの2量体であり、シクロペンタジエンを室温で放置すると容易に2量化して、エンド形のDCPとなる。逆に、140〜160℃に加熱すると熱分解(解重合)して、シクロペンタジエンを与える。尚、DCPには、エンド体とエキソ体の2種類の立体異性体があるが、単にDCPと表現する場合には、エンド−DCPを意味する。
目的物であるエキソ−THDCを得るまでには、水素化反応(水添反応)と異性化反応の2つの合成工程を経るため、合成途中での副生成物が増すと、エキソ−THDCの純度が下がってしまう。そのため、出発原料であるDCPは、より高純度で不純物量が少ないものが好ましい。
高純度DCPは、低純度DCPを精製することにより得られる。この低純度DCPを精製する方法は特に限定されず、例えば、低純度DCPを蒸留法やカラムクロマトグラフィーにより精製する方法等を用いることができる。これらのなかでも、簡便性及び取扱い性の観点から蒸留法が好ましい。
前記高純度DCPを得る蒸留法としては、例えば、高段数の精留塔を取り付けた蒸留装置を用いて低純度DCPを精留する方法や、低純度DCPを加熱分解して蒸留することにより、高純度のシクロペンタジエンを得た後、再度2量化させてDCPとし、これを工業的に通常用いられる精留装置を用いて蒸留する方法が挙げられる。
DCPの純度は、90〜100質量%であることが好ましく、更に好ましくは95〜100質量%である。この純度が、90質量%未満の場合、水添反応及び異性化反応で不純物が増し、目的物の純度向上が困難となるおそれがある。
前記水素化反応は、水素化触媒を用いる公知の接触還元法により行うことができる。
前記「水素化触媒」としては、例えば、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム及びレニウム等から選ばれる少なくとも1種の金属を含むものが挙げられる。これらのなかでも、カーボンに担持されたパラジウム、カーボンに担持された白金、カーボンに担持されたルテニウム等が好ましく、特に、カーボンに担持されたパラジウムが、リサイクル使用、残留金属の観点から更に好ましい。これらの水素化触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水素化触媒の反応時の使用量は、前記DCP100質量部に対して、通常0.01〜50質量部であり、好ましくは0.05〜20質量部、より好ましくは0.1〜10質量部である。尚、水素化触媒の種類によっては、原料DCPを追加又は入れ替えすることで繰り返し使用することもできる。
水素化反応は、無溶媒又は不活性溶媒の存在下で行うことができる。この不活性溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−ノナン、n−デカン、n−ウンデカン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン等の環状脂肪族炭化水素等が挙げられる。尚、これらの不活性溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
水素化反応の方式としては、連続式及び回分式のいずれも採用することができる。特に、DCPの沸点が約170℃であることから、金属製又はガラス製のオートクレーブ等の反応容器に所定量のDCP、水素化触媒及び所望により不活性溶媒を入れ、反応容器内を窒素ガス等の不活性ガスで置換し、次いで完全に水素置換した後、密閉して、所定圧力の水素ガス雰囲気下に内容物の撹拌を行う回分式が好ましい。
このときの水素圧力は、通常0.1〜50MPaであり、好ましくは1〜40MPa、より好ましくは2MPa〜30MPaである。一般に高圧の方が、水添反応が効率よく進展するため好ましい。
また、水素化反応の反応温度は、通常10〜250℃であり、好ましくは50〜200℃、より好ましくは80〜180℃である。無溶媒で反応を行う場合、生成するエンド−THDCは常温で固体(融点77℃)であるため、反応温度をエンド−THDCの融点以上として、液相で水素化を行うのが好ましい。更に、水素化反応の反応時間は、通常0.5〜50時間である。
尚、水素化反応生成物は、公知の方法、例えば、反応液から水素化触媒を濾別し、得られる濾液から必要に応じて溶媒を蒸発留去させた後、残留物を蒸留する方法や、該残留物に低級脂肪族アルコール等を添加して目的物を沈殿させる方法等により単離することができる。
[2]工程(2)
前記工程(2)では、前述の工程(1)で得られたエンド−THDCを含フッ素超強酸触媒の存在下に異性化させることによって、エキソ−THDCが得られる。
前記「含フッ素超強酸触媒」(以下、単に「酸触媒」ともいう)としては、下記一般式(1)で表される化合物、下記一般式(2)で表される化合物等が好ましく用いられる。
Figure 2009051758
Figure 2009051758
〔一般式(1)及び(2)において、Ra及びRbは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の炭化水素基、又は炭素数3〜20のフッ化炭化水素基を示し、該炭化水素基及び該フッ化炭化水素基は置換基を有してもよい。Rfは、各々独立に、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rf’は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。〕
前記一般式(1)及び(2)における置換基Ra及びRbの炭素数1〜20のアルキル基は、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルへキシル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等が挙げられる。
また、置換基Ra及びRbの炭素数3〜20の炭化水素基は、脂環式炭化水素基であってもよいし、芳香環を含む炭化水素基であってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ベンジル基、ナフチル基等が挙げられる。
更に、置換基Ra及びRbの炭素数3〜20のフッ化炭化水素基は、脂環式フッ化炭化水素基であってもよいし、芳香環を含むフッ化炭化水素基であってもよい。具体的には、前記炭化水素基に結合している水素原子の少なくとも1つがフッ素原子に置換されたものが挙げられる。
このような酸触媒の具体例としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロ−n−ブタンスルホン酸、パーフルオロ−n−オクタンスルホン酸、2−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタスルホン酸、1,1,2,2−テトラフルオロ−2−(5(6)−ヒドロキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)エタンスルホン酸、2−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸、2−(9(10)−ヒドロキシ−3−テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカン−4−イル)−1,1,2,2−テトラフルオロエタンスルホン酸等が挙げられる。これらのなかでも、反応系が液層/液層の2層分離系となり、反応後の分離処理も容易なことから、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロ−n−ブタンスルホン酸、パーフルオロ−n−オクタンスルホン酸が好ましい。
尚、これらの酸触媒は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記酸触媒の使用量は、前記エンド−THDC100質量%に対して、通常0.5〜20質量%であり、好ましくは2〜10質量%であるが、異性化反応のプロセス運用によってはこの範囲に限らない場合がある。例えば、酸触媒の量が増すにつれて、異性化反応の速度は増す傾向にあり、酸触媒/エンド−THDC比を大きく設定して短時間に異性化させ、原料と生成物を入れ替えることで触媒を繰り返し連続使用するプロセスなどが可能である。
異性化反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。この反応溶媒としては、前記水素化反応で用いた不活性溶剤をそのまま適用することができる。具体的には、例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、イソヘプタン、n−オクタン、イソオクタン、n−ノナン、n−デカン、イソデカン、n−ウンデカン、n−トリデカン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、パラメンタン、ビシクロヘキシル等の環状脂肪族炭化水素等が挙げられる。尚、これらの溶剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
反応溶媒の使用量は特に限定されないが、前記エンド−THDC100質量%に対し、通常2〜100質量%であり、好ましくは5〜90質量%である。この使用量が過度に多い場合には経済的ではなく、過度に少ない場合には反応溶媒を用いる効果が乏しくなる。
異性化反応の反応温度は特に限定されないが、通常10〜150℃であり、好ましくは20〜130℃、より好ましくは40〜80℃である。この反応温度が低い方が反応速度は遅くなるが、副反応が少なく高純度のエキソ−THDCを得られる傾向にある。
また、反応時間は、酸触媒量や反応温度にもよるが、通常10分〜10時間であり、好ましくは20分〜8時間、より好ましくは30分〜3時間である。
異性化反応終了後は、反応液を氷冷水若しくは氷冷アルカリ水に注ぎ、油層を分離するか、反応液をそのまま静置して上澄み層を分離することで目的物を得ることができる。
前記氷冷水若しくは氷冷アルカリ水としては、イオン交換処理を施した水及びその水を用いた有機アルカリ水溶液などの脱メタル処理されたものが好ましい。
本発明のエキソ−THDCの製造方法によれば、反応時に金属化合物を全く用いずにエンド−THDCからの異性化が行えることから、反応終了時点における反応液(目的物を含む層)の金属含有量の総量を500ppm以下、更に好ましくは100ppm以下に抑えることができる。
[3]工程(3)
前記工程(3)では、前記工程(2)により得られる前記目的物(前記油層若しくは上澄み層)が水洗される。そして、この水洗により、目的物の金属含有量がより低減化され、エキソ体の純度がより高められる。
この水洗には、イオン交換処理を施した水及びその水を用いた有機アルカリ水溶液などの脱メタル処理された水を用いることが好ましい。
また、本発明においては、この工程(3)の後工程として、蒸留工程を備えていてもよい。この蒸留工程により精製することで、目的物の金属含有量を更に低減化することができ、且つエキソ体の純度を更に高めることができる。
このように金属含有量を少なく抑えることができるため、本発明の製造方法により得られるエキソ−THDCは、半導体用途に好適であり、レジスト溶剤、現像液溶剤、洗浄溶剤の他、液浸露光用の高屈折率液体として用いることも可能である。
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、この実施例に何ら限定されるものではない。尚、実施例の記載における「部」及び「%」は、特記しない限り質量基準である。
[1]エキソ−テトラヒドロジシシクロペンタジエンの製造
<実施例1>
純度約99%のジシクロペンタジエン(丸善石油(株)製)100部と5%バラジウムカーボン0.5部を仕込み、オートクレーブ内を窒素ガスで数回置換した後に、ヘプタン20部を加えて攪拌した。次いで、オートクレーブ内に水素ガスを数回置換した後、3MPa(ゲージ圧力)の水素ガスを加圧した。その後、内容物を撹拌しながら100℃で2時間水素添加反応を行った。反応終了後、系内の水素ガスを放出し、反応物を濾過して触媒を除いた。得られた濾液117部は、ガスクロマトグラフィー(GC)分析した結果、原料のジシクロペンタジエン(DCP)のピークは認められず、エンド−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エンド−THDC)が主成分であり、純度は99%であった(ヘプタンを除く)。
その後、得られたエンド−THDC溶液117部に、トリフルオロメタンスルホン酸5部を加えて80℃に加熱し、よく撹拌しながら同温度で6時間異性化反応を行った。反応終了後、反応液を放冷し、反応系内の不溶物を氷冷したイオン交換水に投入し、油層を分離した。次いで、この油層をイオン交換水で3回洗浄した後、GC分析した結果、エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエン(エキソ−THDC)の標品と完全にピークが一致し、純度は99.0%、副反応生成物であるアダマンタンが0.4%であり、残りの0.6%は異性化しなかったエンド−THDCであった。
また、異性化反応後における反応液(油層)中の金属含有量[Li、Na、K、Mg、Cu、Ca、Al、Fe、Mn、Sn、Zn、Ni及びCrの合計(以下同様)]は230ppmであった。一方、反応液(油層)をイオン交換水で洗浄すると金属含有量は低下し、3回洗浄後の金属含有量は70ppmであった。
尚、本実施例における、前記原料及び反応生成物の純度及び収率の分析は、下記条件のガスクロマトグラフィー(GC)分析で行った(以下同様)。
GC機器:6850(アジレントテクノロジー製)
カラム:HP1(30mキャピラリーカラム、内径0.32mm)
インジェクション温度:300℃
カラム昇温条件:100℃で10分保持→10℃/1分で250℃まで昇温→250℃で5分保持
キャリアーガス:ヘリウム
化合物中の金属含有量;灰化処理物のICP−MSにより定量
<実施例2>
実施例1と同様に水添反応を行い、エンド−THDC溶液を得た。得られたエンド−THDC溶液117部に、トリフルオロメタンスルホン酸20部を加えて40℃に加熱し、よく撹拌しながら同温度で1時間異性化反応を行った。反応終了後、反応液を放冷し、上層(油層)をサンプリングして、GC分析した結果、エキソ−THDCの標品と完全にピ−クが一致し、純度は99.7%であり、副反応生成物であるアダマンタンは全く検出されなかった。
次いで、この上澄み分を反応器から分離除去し、代わりにエンド−THDC溶液117部を加えて40℃で1時間反応させ、上澄み分をサンプリングしてGC分析するという操作を8回繰り返した。そして、得られたGC分析結果を表1に示す。
尚、8回目に得られた反応液上層の金属含有量は100ppmであった。
Figure 2009051758
更に、前記1〜8回目に得られた各反応液上層を、イオン交換水で3回洗浄した後、充填式精密蒸留装置(Helipack充填、理論段数=80段、東科精機株式会社製)にて精密蒸留すると、GC分析ではエキソ−THDC以外のピークは検出されず、純度は100%、金属含有量は1ppbまで精製することができた。
得られた高純度のエキソ−THDCは可視光域(589nm)での吸光度が0.003、紫外域(193nm)でも0.014であり、液体レンズ材料として極めて望ましい透明性を示した。
<比較例1>
攪拌機付きのオートクレーブに、日本ゼオン株式会社製の純度94%ジシクロペンタジエン100部、ヘプタン30部及び5%パラジウムカーボン1部を仕込んだ。次いで、オートクレーブ内を窒素ガスで置換した後、水素ガスで数回置換し、0.6MPa(ゲージ圧力)の水素ガスを加圧した。その後、内容物を攪拌しながら100℃で2時間水素添加反応を行った。反応終了後、水素ガスを放出し、内容物を濾過して触媒を除いた。得られた濾液130部は、GC分析した結果、原料のDCPのピークは認められず、エンド−THDCの純度は94.5%であった。
次いで、この濾液130部に、無水塩化アルミニウム15部を加えてよく攪拌しながら60℃で6時間反応させた。その後、反応物を1000部の純水に徐々に投入し、油層を回収した。油層のGC分析した結果、エンド−THDCが7%、エキソ−THDCが92%、アダマンタンが1%で、金属含有量はアルミニウムが800ppm含有しており、全金属量では1060ppmであった。
その後、この油層を、実施例2と同様に精密蒸留してみたが、純度は、エンド−THDCが0.27%、エキソ−THDCが99.8%、アダマンタンが0.01%であり、残留金属量も20ppmであり、半導体材料用途には不適であった。
<比較例2>
イオン交換水75部、ラネーニッケル(川研ファインケミカル社製、「NDHT−90M」)1.1部を投入し、オートクレーブ内を窒素ガスで数回置換した後に純度約99%のジシクロペンタジエン(丸善石油(株)製)150部、ヘプタン50部、及びモノエタノールアミン0.9部を加えて攪拌した。次いで、オートクレーブ内を0.6MPa(ゲージ圧力)となるように水素ガスで加圧した。その後、オートクレーブの内圧を水素で0.6MPaに保ちながら内容物を撹拌し、25℃で2時間水素添加反応を行った。反応終了後、系内の水素ガスを放出し、反応液を相分離した。次いで、油層をGC分析した結果、原料DCPが17%、エンド−THDCが82%、不明物が1%であった。
その後、この油層130部を実施例1と同様に異性化反応させたところ、反応液はタール状の粘ちょうなオイル状となり、GC分析の結果、エンド−THDCが7%、エキソ−THDCが73%、アダマンタンが1%、その他不明物が20%であった。
[2]実施例の効果
本実施例によれば、ジシクロペンタジエンを高活性で高効率な水素化触媒プロセスによって水素化し、次いで、特定の含フッ素超強酸触媒で異性化反応させる事により、高純度であり、且つ残留金属の少ないエキソ−THDCを収率よく得られることが分かった。また、低残留金属、及び高純度の特性を生かすことで、液体レンズ用途にも用いることができるほどの透明性有機材料を得られることが分かった。

Claims (4)

  1. [1]ジシクロペンタジエンを水素化触媒の存在下に水素化してエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエンを得る工程と、
    [2]得られたエンド−テトラヒドロジシクロペンタジエンを含フッ素超強酸触媒の存在下に異性化させて、エキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンを得る工程と、
    [3]水洗工程と、を有することを特徴とするエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
  2. 前記含フッ素超強酸触媒が、下記一般式(1)及び(2)で表される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
    Figure 2009051758
    Figure 2009051758
    〔一般式(1)及び(2)において、Ra及びRbは、各々独立に、水素原子、フッ素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20の炭化水素基、又は炭素数3〜20のフッ化炭化水素基を示し、該炭化水素基及び該フッ化炭化水素基は置換基を有してもよい。Rfは、各々独立に、フッ素原子、又はトリフルオロメチル基を示し、Rf’は水素原子、フッ素原子、メチル基、又はトリフルオロメチル基を示す。〕
  3. 前記水素化反応が、カーボンに担持された、パラジウム、白金及びルテニウムから選ばれる少なくとも1種を用いて行われる接触還元法である請求項1又は2に記載のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
  4. 前記異性化反応後の残留金属量の合計が500ppm以下である請求項1乃至3のいずれかに記載のエキソ−テトラヒドロジシクロペンタジエンの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101040969B1 (ko) * 2009-03-24 2011-06-16 국방과학연구소 고온 수소화 반응 촉매 및 엔도-테트라하이드로디(사이클로펜타디엔)의 제조 공정을 개선하기 위한 그 용도
CN111217663A (zh) * 2020-02-19 2020-06-02 濮阳市瑞森石油树脂有限公司 一种双环戊二烯制备四氢双环戊二烯的方法

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