JP2009050589A - Pfo閉鎖デバイス - Google Patents

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Abstract

【課題】血液を過剰に吸引することなく容易に卵円孔弁を吸引して引き寄せることができるPFO閉鎖デバイスを提供する。
【解決手段】PFO閉鎖デバイスにおいて、保持手段60により他方側から卵円孔弁M2を心房中隔M1側に押圧した状態で、吸引保持部1により卵円孔弁M2及び心房中隔M1を吸引して保持し、エネルギ供給手段20からエネルギを電極部2に供給し前記卵円孔弁M2と心房中隔M1とを相互に接合する。
【選択図】図2

Description

本発明は、生体に生じた欠損を閉鎖するPFO閉鎖デバイスに関する。
最近、脳卒中や偏頭痛の心原性要因として卵円孔開存症(以下、PFO:Patent Foramen Ovale)が挙げられている。PFOは、胎児期の心臓における血液を左右短絡させる卵円孔が成人になっても残っている症状であり、成人の20〜30%が保有していると言われている。
卵円孔は、心臓の二次中隔(Septum Secundum、以下、心房中隔)に生じ、通常時の心臓では、左房圧が右房圧を上回るので、一次中隔(Septum Primum、以下、卵円孔弁)により閉塞されているが、緊張時(例えば、咳をしたとき、踏ん張るとき)などに右房圧が左房圧を上回ると、卵円孔弁が左房側に開き、右房側(静脈側)から左房側(動脈側)に血液が流れ込むことになる。この血液中に血栓が含まれていると、血栓は、静脈側から動脈側に移ることになり、左房→左室→大動脈→脳へと流れ、脳卒中や偏頭痛などの要因になる。
このような疾患に対する処置として、薬物療法(アスピリン、ワーファリン)や経皮的カテーテル手技での卵円孔の閉鎖術、体外循環による開心術がある。薬物療法は、第一選択の処置であるが、投与量の管理が難しく、投与中は出血が止まりにくいという問題を抱えることになる。経皮的カテーテル手技及び開心術は侵襲が伴うが、根治術であるので、再発の心配はなくなる。現段階では、閉塞するという手技に関しては、開心術の方がより確実であるが、体外循環を行うことのリスクや皮膚切開の侵襲の大きさをも含めて考慮したとき、経皮的カテーテル手技による処置が、開心術と同じ効果が得られるならば、望ましい方法である。
経皮的カテーテルを用いた閉鎖術のデバイスは、先天性の心房中隔欠損症(ASD)、PFO、心室中隔欠損症(VSD)、動脈管開存症(PDA)といった欠損を閉鎖する場合にも使用できるが、従来のデバイスは、欠損を閉鎖するディスク状の膜やアンカー部材を使用して卵円孔弁と心房中隔を挟むものであり、これらは体内に留置される。
前記膜やアンカー部材は、体にとっては異物であり、しかも、血栓が付着しやすい。特に、左房側のディスク状膜などに血栓が付着すると、これが流れて脳卒中の原因となる可能性があり、肉厚の薄い卵円孔弁を破損する虞もある。また、これら部材は、挟み込んだ状態で位置固定されず、位置ズレを起こす可能性もある。
このため、最近では、下記特許文献1,2に記載されているようなPFO閉鎖デバイスが提案されている。
特許文献1に記載のPFO閉鎖デバイスは、カテーテルの先端部に吸引可能な吸引部を設け、この吸引部により右心房側から卵円孔弁を吸引して引き寄せて閉鎖し、電極部によりエネルギを加えることで組織を接合させるものである。
また、特許文献2に記載のPFO閉鎖デバイスは、カテーテルの先端部に膨張収縮が可能なバルーンを設けると共に、バルーンの先端側に吸引可能な吸引部を設け、バルーンで心房中隔を右心房側から保持しつつ吸引部により卵円孔弁を吸引して引き寄せて閉鎖し、電極部によりエネルギを加えることで組織を接合させるものである。
しかし、上記特許文献1,2のいずれの閉鎖デバイスにおいても、吸引する際に卵円孔弁が心房中隔から離れていると、卵円孔弁を吸引できずに血液を過剰に吸引してしまう虞がある。また、上記特許文献1,2のいずれの閉鎖デバイスも、卵円孔に挿通したガイドワイヤによってカテーテルの電極部を位置決めしているが、吸引部や電極部の中心が卵円孔の中心と必ずしも一致せず、エネルギを加えるのに望ましい部位に電極部を配置することが困難であるという不具合がある。
米国特許出願公開第2006/0271030号明細書 米国特許出願公開第2007/0093804号明細書
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、血液を過剰に吸引することなく容易に卵円孔弁を吸引して引き寄せることができ、かつエネルギを印加する電極部を卵円孔の中心に位置決めできるPFO閉鎖デバイスを提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明のPFO閉鎖デバイスは、カテーテルの先端部に設けられ、卵円孔弁及び心房中隔からなる生体組織を一方側から吸引して保持する吸引保持部と、前記吸引保持部の前記生体組織と接する側に設けられる電極部と、前記吸引部保持部に負圧を付与する負圧供給手段と、前記カテーテルの先端から突出し、進退動および屈曲を操作可能であり、卵円孔に挿通して前記卵円孔弁を他方側から押圧しつつ保持する保持手段と、前記電極部にエネルギを供給するエネルギ供給手段と、を有し、前記保持手段により他方側から前記卵円孔弁を心房中隔側に押圧した状態で、前記吸引保持部により前期卵円孔弁及び心房中隔を吸引して保持し、前記エネルギ供給手段からエネルギを前記電極部に供給し前記卵円孔弁と心房中隔とを相互に接合させることを特徴とする。
本発明は、卵円孔に挿通して卵円孔弁を他方側から押圧しつつ保持する保持手段が設けられているため、卵円孔弁及び心房中隔を保持手段により近接させた状態で、吸引保持部により吸引することができ、卵円孔弁を引き寄せて心房中隔と密着させることができる。したがって、例えば心房中隔と卵円孔弁の間の隙間が大きい場合でも、心房中隔と卵円孔弁を密着させて接合することが可能となる。また、心房中隔と卵円孔弁の間の隙間が小さくなるので、吸引保持部から血液が過剰に吸引されることを抑制することができる。
前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材をカテーテルの先端より突出し、当該操作部材を軸方向に進退操作することにより、前記保持手段を操作し得るようにすれば、手技の安全化、容易化を大幅に向上させ、手技を正確にかつ迅速に行うことができる。
前記保持手段が、前記カテーテル内で前記操作部材を、軸線を中心に回転可能とすれば、卵円孔の状態が種々変形していても、その形状状態如何に拘わらずデバイスの先端を卵円孔に挿通させることができ、手技を容易化するのみでなく、迅速に行うことができる。
前記保持手段が、前記吸引保持部および電極部を前記卵円孔に対し所定位置に位置させる位置決め手段をも備える位置決め保持手段であれば、吸引保持部を適切な位置に位置決めできるため、吸引の際に効率よく卵円孔弁を引き寄せることができ、さらに、電極部を適切な位置に位置決めでき、適切な位置を接合できる。
前記位置決め手段が、前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材を前記カテーテルの先端より突出し、当該操作部材を軸方向の進退操作により弾性部材を外方に変位させ、前記弾性部材の前記卵円孔の内縁に対する弾性的な当接により、前記吸引保持部および電極部を前記卵円孔の中央部に位置決させるようにすれば、弾性部材が卵円孔の内縁を略等しい弾性力で押圧し、吸引保持部および電極部を卵円孔に対して調心できる。
前記保持手段が、前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材を前記カテーテルの先端より突出し、当該操作部材を軸方向に進退操作することにより前記操作部材の先端部を湾曲させる湾曲機構を有するようにすれば、卵円孔に保持手段を挿通して湾曲機構を湾曲させることで、操作部材の先端部を吸引保持部に対向するように配置し、卵円孔弁を他方側から保持することができる。
前記位置決め保持手段が、前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材を前記カテーテルの先端より突出し、当該操作部材を軸方向に進退操作することにより前記操作部材の先端部を湾曲させる湾曲機構を有するようにすれば、操作部材の進退操作によって、容易かつ迅速に操作部材の先端部を吸引保持部に対向するように配置し、卵円孔弁を他方側から保持することができる。
前記湾曲機構が、前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に、中間スリーブ体及び先端スリーブ体を設ける一方、前記先端スリーブ体と前記中間スリーブ体とを弾性線材により連結し、前記操作部材の先端部に当該操作部材を牽引することにより前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、前記操作部材の進退操作により相互に当接した前記先端スリーブ体及び当り部材が前記弾性線材を湾曲させると共に、前記卵円孔弁を保持するように変位するようにすれば、より確実に位置決めと、卵円孔弁の保持ができ、手技の安全性、利便性、正確性、迅速性が向上する。
前記位置決め保持手段が、前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に、中間スリーブ体及び先端スリーブ体を設けると共に、前記操作部材の先端部に当該操作部材の牽引により前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、前記主管と中間スリーブ体とを第1弾性線材により連結すると共に、前記中間スリーブ体と先端スリーブ体とを、前記第1弾性線材よりも変形し難い第2弾性線材により連結し、前記操作部材の牽引による前記第1弾性線材の外方湾曲により、前記卵円孔の内縁に弾性的に当接する前記位置決め部とし、さらなる前記操作部材の牽引による前記第2弾性線材の湾曲により、前記先端スリーブ体及び当り部材により前記卵円孔弁を保持する保持部とすれば、より確実に位置決めと、卵円孔弁の保持ができ、手技の安全性、利便性、正確性、迅速性が向上する。
前記湾曲機構が、前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に先端スリーブ体を設ける一方、前記先端スリーブ体と前記主管とを弾性線材により連結し、前記操作部材の先端部に当該操作部材を牽引することにより前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、前記操作部材の進退操作により相互に当接した前記先端スリーブ体及び当り部材が前記弾性線材を湾曲させると共に、前記卵円孔弁を保持するように変位するようにすれば、より確実に位置決めと、卵円孔弁の保持ができ、手技の安全性、利便性、正確性、迅速性が向上する。
前記位置決め保持手段は、前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に先端スリーブ体を設けると共に、前記操作部材の先端部に当該操作部材の牽引により前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、前記主管と先端スリーブ体とを、第1弾性線材および第2弾性線材により連結し、前記操作部材の牽引による前記第1弾性線材の外方湾曲により、前記卵円孔の内縁に弾性的に当接する前記位置決め部とし、当該操作部材の牽引による前記第2弾性線材の湾曲により、前記先端スリーブ体及び当り部材により前記卵円孔弁を保持する保持部とすれば、より確実に位置決めと、卵円孔弁の保持ができ、手技の安全性、利便性、正確性、迅速性が向上する。
前記エネルギ供給手段が、前記電極部と、体外に設けられた対極板との間で通電する高周波モノポーラ方式であれば、電極部と対極板の間に位置する卵円孔弁及び心房中隔を、加熱して融着することができる。
前記電極部が、前記卵円孔弁と接する電極と、前記心房中隔と接する電極とを有し、前記エネルギ供給手段が、前記電極間で通電するバイポーラ方式であれば、接合したい部位の近傍にのみ通電することができるため、人体への影響を低減できる。
前記吸引保持部が、前記カテーテルの先端部に設けられ、カテーテルの基端部から流体を流入出させて膨張収縮可能な膨張部であり、当該膨張部の前記生体組織と接する側に前記負圧供給手段によって負圧が付与される吸引保持面が設けられ、当該吸引保持面に前記電極部が設けられるようにすれば、吸引保持面に生じる負圧により卵円孔弁を引き寄せて卵円孔弁と心房中隔を密着させることができ、卵円孔弁と心房中隔の接合を、より確実に行うことができる。
前記吸引保持部が、前記生体組織と接する側に前記負圧供給手段によって負圧が付与される開口部が形成され、当該開口部に、前記電極部が設けられるようにすれば、開口部に生じる負圧により卵円孔弁を引き寄せて卵円孔弁と心房中隔を密着させることができ、卵円孔弁と心房中隔の接合を、より確実に行うことができる。
前記保持手段が、前記電極部を貫通するようにすれば、電極部を、保持手段が挿通する卵円孔の近傍に電極部を位置決めできるため、適切な位置にエネルギを印加して接合することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は本発明の第1の実施形態に係るPFO閉鎖デバイスの使用状態を示す概略断面図、図2は同実施形態の要部拡大斜視図、図3は図2の3−3線に沿う断面図、図4は図3の4−4線に沿う平面図、図5は図2の5−5線に沿う断面図である。
まず、本実施形態のPFO閉鎖デバイスについて概説する。このデバイスは、図1に示すように、卵円孔弁M2及び心房中隔M1を吸引して保持する吸引保持部1と、吸引保持部1により吸引保持した生体組織M(M1,M2の総称)と接する電極部2と、吸引保持した卵円孔弁M2及び心房中隔M1を融着して接合させるエネルギを供給するエネルギ供給手段20とを有し、経皮的カテーテル30内に吸引保持部1がその先端から突出後退可能に組み込まれたものである。
このデバイスは、使用に当り、まず、カテーテル30先端に設けられた吸引保持部1全体をガイディングカテーテル31内に収納した状態で、例えば、大腿静脈Jから挿入する。先端が手技を行なう心臓の部位まで到達すれば、ガイディングカテーテル31の先端より吸引保持部1を突出し、卵円孔の欠損O(以下、単に卵円孔Oと称することもある)が生じている心臓の心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織を吸引保持する。この吸引保持状態で電極部2に電気エネルギを供給し、両組織を融着接合し、欠損Oを閉鎖する。なお、図中、「L」は左心房、「R」は右心房を示す。
このデバイスは、図1、2に示すように、基端側に設けられた手元操作部70と、手元操作部70に基端が取り付けられたガイディングカテーテル31と、ガイディングカテーテル31内に設けられたカテーテル30と、カテーテル30の先端部分に設けられた吸引保持部1とを有している。なお、以下の説明において、デバイスの手元操作部側を「基端側」、吸引保持部1あるいは卵円孔弁M2側を「先端側」と称す。
さらに詳述する。本実施形態の吸引保持部1は、図2〜4に示すように、吸引するために負圧が付与される開口部3が形成されたハウジング4を有している。ハウジング4は、基部がカテーテル30の先端に設けられており、カテーテル30から連通して形成される複数のルーメンL1〜L3を有している。
ハウジング4の開口部3の中央には、ルーメンL1からチューブ5が延びて形成されており、ハウジング4の内側面から延びる固定部6により固定されている。また、開口部3には、複数の補強梁8が設けられており、ハウジング4内部に負圧が付与された際に、ハウジング4が形状を保持できるようになっている。なお、ハウジング4外部に梁や板材等の補強部材を設けてもよい。
ハウジング4の開口部3の中央には、チューブ5を囲むように電極部2が設けられている。電極部2は、例えば波形状に構成された線材で形成される。これにより、線材の隙間からも吸引が可能であり、また生体組織Mの広い範囲に電極部2を接触させることができる。また、電極部2を線材とすることで、ハウジング4を弾性的に変形させてガイディングカテーテル31内に収容することが容易となる。なお、電極部2の形状は上述の形状に限定されず、直線形状の線材としたり、または面形状とすることもできる。電極部2の材質としては、SUS材であってもよいが、生体に悪影響を及ぼさないもの、例えば、金、銀、白金、タングステン、パラジウムまたはこれらの合金や、Ni-Ti合金、チタン合金等を使用することが好ましい。
また、本デバイスは、カテーテル30のルーメンL1を挿通する主管63や操作部材7aを備えた位置決め保持手段60(後に詳述する)を有しており、吸引保持部1を使用する前に位置決め保持手段60を使用して吸引保持部1および電極部2を位置決め保持するが、この場合、操作部材7aを予め卵円孔Oに挿通した状態で吸引保持部1により吸引する。つまり、吸引保持部1は、操作部材7aによりある程度規制された径路を通って卵円孔弁部分に接するようになっている。
ルーメンL2は、ハウジング4の内部に負圧を付与するために設けられており、カテーテル30の基端側において、負圧供給手段9と連通している。
ルーメンL3には、電極部2に接続される導線7bが挿通し、この導線7bは、後述の導電部材21、導線d1及び制御部22を介してエネルギ供給手段20と接続されている。また、エネルギ供給手段20には、電極部2と対をなす対極板23が、導線d2を介して接続されている。
なお、吸引保持部1は、カテーテル30と別部材として構成しているが、一体構造として構成してもよい。吸引保持部1を構成するものとしては、変形可能な弾性材料、例えば、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、PET、ナイロン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、シリコンなどを使用することができる。
エネルギ供給手段20は、電極部2に電気エネルギを供給するもので、公知のシステム構成のため詳述は避けるが、制御の容易性からすれば、直流電源や交流電源を問わず、電気的なものが好ましい。ただし、これのみでなく、吸引保持部1により吸引保持した卵円孔弁M2と心房中隔M1とを熱により溶融し、コラーゲンやエラスチンなどの接着因子で圧着させることが可能なエネルギを供給できるものであれば、どのようなものであってもよい。例えば、超音波、レーザー、マイクロ波あるいは高周波などを使用することもできる。
また、電気エネルギ供給方式としては、右心房R側の電極部2と背部に設けられた対極板23との間で通電するモノポーラ方式が適用されているが、右心房R側に、卵円孔弁M2と接する電極と心房中隔M1と接する電極の2つの対となる電極部を設ける構成とすれば、この2つの電極の間で通電するバイポーラ方式などを適用することもできる。すなわち、吸引保持部1の開口部3に、卵円孔弁M2と接する電極と心房中隔M1と接する電極とを配置し、エネルギ供給手段20によりこの電極間に通電することで、バイポーラ方式とすることができる。なお、電極が2本となるため、エネルギ供給手段20と電極を接続するための別途のルーメンが、ハウジング4およびカテーテル30に設けられる。もしくは、2つの電極と接続する導線がいずれも絶縁被膜で覆われて互いに絶縁されていれば、同一のルーメン内に配置することもできる。バイポーラ方式によれば、接合したい部位の近傍にのみ通電することができるため、人体への影響を低減できる。また、電極間のインピーダンスにより電流を制御することができるため、人により相違する卵円孔弁M2と心房中隔M1の組織の状態に応じて容易に対応することができ、安全性が得られる。
位置決め保持手段60は、図2に示すように、概して、吸引保持部1および電極部2を卵円孔Oに対し位置決めする位置決め部61(位置決め手段)と、吸引保持部1に保持された心房中隔M1に対し卵円孔弁M2を密着または近接させるように保持して押圧する保持部62(保持手段)とを有し、常時はガイディングカテーテル31内に収納されているが、使用時には操作部材7a及び主管63を操作することによりガイディングカテーテル31から押し出される。
さらに詳述すれば、中央のルーメンL1には、位置決め保持手段60をカテーテル30内に引き込み回収するためと、カテーテル30の補強を目的として設けられた主管63と、主管63内で軸方向に進退自在に設けられた操作部材7aが設けられている。
主管63の先端部には、操作部材7aの操作により拡開縮小作動され、主管63と中間スリーブ体64とを連結する一対の第1弾性線材66からなる位置決め部61と、操作部材7aの先端部に設けられた当り部材68、先端スリーブ体65、及び、中間スリーブ体64と先端スリーブ体65とを連結する一対の第2弾性線材67を有し、当り部材68及び先端スリーブ体65により卵円孔弁M2を保持する保持部62と、からなる位置決め保持手段60が設けられている。
位置決め部61は、操作部材7aを主管63の先端より突出し、操作部材7aを軸方向に進退する操作により第1弾性部材66を外方に変位させ、各第1弾性部材66が卵円孔Oの内縁を略等しい弾性力で押圧し、吸引保持部1および電極部2を卵円孔Oに対して調心する。つまり、両第1弾性部材66間に位置する吸引保持部1および電極部2を卵円孔Oの中央部に位置させる機能を発揮する。
保持部62は、操作部材7aを軸方向に進退操作することにより操作部材7aの先端部を湾曲させる湾曲機構Wを有している。湾曲機構Wは、保持部62を、吸引保持部1に対向するように湾曲させ、卵円孔弁M2を保持する機能を発揮する。ここに、湾曲機構Wは、中間スリーブ体64、先端スリーブ体65、両スリーブ体64,65を連結する第2弾性線材67、当り部材68から構成されている。
第1弾性線材66の基端は、主管63の先端に溶着され、先端側は、中間スリーブ体64に溶着されている。一方、第2弾性線材67の基端は、中間スリーブ体64の先端に溶着され、先端側は、先端スリーブ体65に溶着されている。
第1及び第2の弾性線材66,67の具体例としては、外径が、0.1mm〜0.5mm程度で、ステンレス鋼、ニッケル−チタン、超弾性合金(例えば、Ni−Ti合金)などの金属ワイヤーを使用することが好ましい。また、金属ワイヤーに樹脂(軟性)チューブを被覆することで組織の傷付きを防止させてもよい。
保持部62は、基端側の第1弾性線材66が、先端側の第2弾性線材67に先んじて湾曲し、穿刺部2の位置決めを行い、続いて操作部材7a自体が当り部材68及び先端スリーブ体65を伴って変形し、位置決め部61が穿刺部2を位置決めした後に卵円孔弁M2を保持する構成となっている。
この構成としては、例えば、材質的に第2弾性線材67の方が第1弾性線材66よりも高剛性のものを使用する方法、第1弾性線材66の一部を予め屈曲変形するなどの易変形部を形成し、牽引力が作用すると易変形部の変形により第1弾性線材66が第2弾性線材67より先に湾曲させる方法なども使用できる。
このようにすると、操作部材7aを後方に牽引するのみで、基端側の第1弾性線材66が卵円孔Oの内縁に当接し、穿刺部2の位置決めを行い、さらに牽引すると、先端側の第2弾性線材67が径方向外方に向って円弧状に突出変形し、卵円孔弁M2を吸引保持部1により吸引して引き寄せ易いように、卵円孔弁M2を心房中隔M1に密着またはより近くまで近接させることができる。
また、操作部材7aは、主管36内で軸線を中心に360度回転可能としている。操作部材7aが360度回転可能であれば、卵円孔Oの近傍まで操作部材7aの先端が挿入されたとき、操作部材7aを回転的に位置変位させることができ、卵円孔Oの状態が種々変形していても、その形状状態如何に拘わらずデバイスの先端を卵円孔Oに挿通させることができ、手技を容易化するのみでなく、迅速に行うことができる。
手元操作部70は、図2,図5に示すように、概して、カテーテル30の基端が連結部材71及びYコネクタ72を介して連結された第1操作体73と、第1操作体73の後端側から突出された一対のスライドレール74が挿通される通孔であるスライド溝75が開設され、スライドレール74に沿って摺動することにより第1操作体73に対し近接離間可能とされた第2操作体76とを有している。なお、図2では、紙面の都合上、手元操作部70のみを縮小して記載している。
主管63は、第1操作体73内を挿通し、後端が第2操作体76の先端に連結されている。したがって、第2操作体76を後方に牽引すると、カテーテル30の中央のルーメンL5内に位置決め保持手段60全体を回収することができる。なお、この主管63を構成するものとしては、変形可能な弾性材料、例えば、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、PET、ナイロン、フッ素樹脂、ポリプロピレンなどを使用することができる。また、手元操作部70は、金属パイプとして弾性材料の主管63と連結させてもよい。
操作部材7aは、基端が、第2操作体76の中央に形成されたスライド溝75内で往復摺動する把手78に取り付けられており、把手78をスライド溝75内で往復摺動すると、操作部材7a全体が主管63内で往復動する。
スライド溝75は、図5に示すように、前半部の幅A1が、後半部の幅A2より広くされ、これにより把手78がスライド溝75の前半に位置する場合は、把手78をスライド溝75の軸線に直交する方向に傾動させることができ、これにより操作部材7aをカテーテル30内で軸線を中心に回動させ、先端の位置を回転調節することができる。この結果、手元操作部70において把手78を操作し操作部材7aを操作するとき、前後方向の位置のみでなく回転位置までも調節でき、左心房に挿入する手技の利便性が大幅に向上する。
電極部2に接続された導線7bは、ルーメンL3に挿通されて、第1操作体73内の導電部材21、カプラー77、導線d1及び制御部22を介してエネルギ供給手段20と接続されている。
また、操作部材7aとしては、細い中空線材で、比較適合性を有するものであれば、どのようなものであってもよいが、例えば、ステンレス、Ni-Ti、チタンなどの細管を使用することが好ましい。
本実施形態のガイディングカテーテル31は、卵円孔弁M2と心房中隔M1との間の卵円孔Oに容易に挿入できるようにするため、先端が円弧状に緩やかに湾曲されている。卵円孔弁M2と心房中隔M1とは、人により相違するので、ガイディングカテーテル31の先端を湾曲させると、ガイディングカテーテル31自体を回動し、最も挿入し易い位置でガイディングカテーテル31を卵円孔Oに挿入でき、直状の場合よりも手技の安全性と利便性が向上する。
次に、本実施形態の作用を説明する。
図6は操作部材を卵円孔に挿入する断面概略図、図7は卵円孔弁を保持手段により保持した状態の断面概略図、図8は吸引保持部により卵円孔弁及び心房中隔を吸引保持した状態の断面概略図、図9は電極部により卵円孔弁及び心房中隔に電流を印加する状態の断面概略図、図10(A)〜図10(D)はPFO閉鎖デバイスの先端部の操作状態を示す概略図である。なお、図10(A)〜図10(D)において、第2弾性線材66の形状及び位置は、理解を容易にするために、図示の位置を90度変位した状態で示しており、実際の変形状態とは相違する。
まず、術者は、手元操作部70の第2操作体76を第1操作体73に対し後退し、ガイディングカテーテル31内に弾性的に変形させた吸引保持部1などを収納した状態とし、この状態で、常法によりガイドワイヤーをガイドとしてガイディングカテーテル31の先端を生体の所定位置から挿入し、右心房Rまで到達させる。なお、ガイディングカテーテル31のみを生体に挿入し、後にこれをガイドにカテーテル30を挿入してもよい。
次に、第1操作体73を操作し、カテーテル30の先端を、右心房Rから卵円孔Oを通って左心房Lに突出させた後、把手78を前進し、図10(A)、図6に示すように、操作部材7aの先端を先端スリーブ体65から突出し、左心房L内に挿入する。この突出状態は、当り部材68などにマーカーを設けていると、外部から視認することができるが、この突出により操作部材7aの先端が左心房Lの内壁などに当ると、視認が困難な場合であっても、感覚的に操作部材7aの先端が位置している場所を確認でき、利便性が向上する。なお、把手78をスライド溝75の幅広い前半部に位置し、これを傾動すると、感覚的に先端位置の確認が容易となる。
操作部材7aの先端位置の確認後、図10(B)に示すように、操作部材7aの当り部材68が先端スリーブ体65に当接するまで把手78を後退させる(後退量は図10Bの「δ1」)。そして、第1操作体73を操作し、第2弾性線材67、吸引保持部1を卵円孔弁M2の近傍に位置させ、保持部62全体を左心房L側に挿入する。
把手78をさらに後退させると(後退量は図10Cの「δ2」)、この後退させる操作力が、操作部材7aにより、当り部材68、先端スリーブ体65、第2弾性線材67及び中間スリーブ体64を介して、主管63の先端に固着された第1弾性線材66に伝達され、第1弾性線材66を、図10(C)に示すように、径方向外方に向って円弧状に突出変形させる。ただし、この時点では第2弾性線材67は変形していない。
この結果、第1弾性線材66は、卵円孔Oの口縁部分を押し広げつつ変形することになるので、第1弾性線材66の直近に設けられている電極部2および吸引保持部1を卵円孔Oに対して調心し、電極部2および吸引保持部1を卵円孔Oの中心に位置させる。
電極部2および吸引保持部1を卵円孔Oの中心に位置させた後、電極部2および吸引保持部1を心房中隔M1および卵円孔弁M2に密着させる。
この後、さらに、中間スリーブ体64の後端が主管63の先端に当接するまで把手78を後退操作させると、図10(D)に示すように、第1弾性線材66はあまり変形せず、先端側の第2弾性線材67が、前記操作力により径方向外方に向って円弧状に突出変形する。この結果、左心房L内において、当り部材68と先端スリーブ体65が吸引保持部1に近付くので、当り部材68と先端スリーブ体65は、図7に示すように、卵円孔弁M2の左心房側の面に当接して押圧し、卵円孔弁M2を心房中隔M1に近接させて保持する。
この状態で、負圧供給手段9を作動して吸引保持部1に負圧を生じさせ、卵円孔弁M2を吸引して引き寄せ、図8に示すように、心房中隔M1に密着させる。このとき、位置決め保持手段60によって卵円孔弁M2が心房中隔M1側に近接されているため、効率よく卵円孔弁M2を引き寄せることができる。すなわち、例えば心房中隔M1と卵円孔弁M2の間の隙間が大きい場合には、吸引保持部1から血液が吸引されるのみで卵円孔弁M2を引き寄せられない可能性があるが、卵円孔弁M2が既に心房中隔M1側に近接されているため、効率よく卵円孔弁M2を引き寄せることができ、血液の過剰な吸引も抑制できる。特に、心房中隔M1および卵円孔弁M2の形状は、個体差があるため、上述した心房中隔M1と卵円孔弁M2の間の隙間も様々であるが、本実施形態に係るデバイスによれば、個体差による隙間の変化にも対応できる。また、吸引保持部1が卵円孔Oの中心に位置されているため、吸引保持部1によって卵円孔Oを適切に覆うことができ、吸引による卵円孔弁M2の引き寄せをより効果的に行うことができる。
次に、この吸引状態を保持しつつ、第2操作体75を一旦戻し、図10(B)に示すような、第1弾性線材66と第2弾性線材67を直状にした後、第2操作体75を後退操作し、図9に示すように、主管63により位置決め保持手段60全体をカテーテル30のルーメンL1内に回収する。
この後、この吸引状態を保持しつつ、電気供給部20Aを制御し、所定の電流を電極部2および対極板23との間に流すと、この電気エネルギの供給により心房中隔M1と卵円孔弁M2が加熱される。融着温度を維持しつつ加熱を継続すると、心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織が溶融し、コラーゲンやエラスチンなどの接着因子により相互に融着される。相互に融着される。
電気エネルギは、制御部22で制御することで、電極部2の一部が血液中に露出していても、この段階では、電極部2に血栓が付着するのを防止することができる。ただし、電極部2の表面に血栓付着防止用のコーティングをすれば、血栓の付着は一層確実に防止されることになり、好ましい。
電気エネルギの印加の際には、電極部2が卵円孔Oの中心に位置されているため、適切な位置に電極部2を接触させることができ、効率よく融着することができる。
両組織が融着されると、通電を停止し、第1操作体75を後退し、位置決め保持手段60と共に、カテーテル30の先端にある吸引保持部1もガイディングカテーテル31内に収納し、ガイディングカテーテル31を生体から抜去する。
本実施形態によれば、心房中隔M1および卵円孔弁M2を吸引により保持するため穿刺する必要がなく、治療部への悪影響の発生を低減できる。
<第2実施形態>
図11は本発明の第2の実施形態に係るPFO閉鎖デバイスの使用状態を示す概略断面図、図12は同実施形態の要部拡大斜視図、図13は図12の13−13線に沿う断面図である。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する部位については同一の符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
第2実施形態に係るPFO閉鎖デバイスは、吸引保持部として、膨張収縮可能な膨張部40が設けられる。膨張部40は、例えばバルーン40であり、カテーテル30の先端部に設けられ、カテーテル30の基端側から流体を流入出させて膨張収縮が可能となっている。バルーン40に流入出する流体は、生理的食塩水であることが好ましく、造影剤を含ませてもよい。造影剤を入れることで、X線透視下の視認性が向上する。
このデバイスは、図1に示すように、卵円孔弁M2及び心房中隔M1を吸引して保持するバルーン40(吸引保持部)と、バルーン40により吸引保持した生体組織M(M1,M2の総称)と接する電極部41と、吸引保持した卵円孔弁M2及び心房中隔M1を融着乃至接合させるエネルギを供給するエネルギ供給手段20とを有し、経皮的カテーテル30内に、収縮した状態のバルーン40がその先端から突出後退可能に組み込まれたものである。
このデバイスは、使用に当り、まず、カテーテル30先端に設けられた収縮した状態のバルーン40をガイディングカテーテル31内に収納した状態で、例えば、大腿静脈Jから挿入する。先端が手技を行なう心臓の部位まで到達すれば、ガイディングカテーテル31の先端よりバルーン40を突出した後膨張させ、卵円孔の欠損O(以下、単に卵円孔Oと称することもある)が生じている心臓の心房中隔M1と卵円孔弁M2の組織を吸引保持する。この吸引保持状態で電極部41に電気エネルギを供給し、両組織を融着接合し、欠損Oを閉鎖する。
さらに詳述する。本実施形態のバルーン40は、図12,13に示すように、カテーテル30を中心とする周囲に形成され、その先端側に、生体組織Mと接する吸引保持面42が設けられる。なお、バルーン40の外部に梁や板材等の補強部材を設けてもよい。
カテーテル30には、ルーメンL4〜L7が形成されており、中心の大きなルーメンL4に、位置決め保持手段60が挿通される。
ルーメンL5は、吸引保持面42に負圧を付与するために設けられており、カテーテル30の基端側において、負圧供給手段9と連通している。
ルーメンL6には、電極部41に接続される導線7bが挿通し、この導線7bは、導電部材21、導線d1及び制御部22を介してエネルギ供給手段20と接続されている。また、エネルギ供給手段20には、電極部41と対をなす対極板23が、導線d2を介して接続されている。
ルーメンL7は、バルーン40の内部に連通し、基端部において流体供給手段43に連通している。流体供給手段43は、ルーメンL7を介してバルーン40内に流体を流入出させることで、バルーン40の膨張収縮を制御している。
吸引保持面42には、カテーテル30の先端に位置する電極部41が設けられる。電極部41は、本実施形態では円錐形状を有し、さらに、周方向に複数のスリット45が形成されている。このスリット45は、ルーメンL5と連通しており、吸引保持面42に負圧を付与する役割を果たしている。また、電極部41の中心には、カテーテル30のルーメンL4から連通する貫通孔が形成されており、この貫通孔を、位置決め保持手段60が挿通する。
なお、電極部41の形状は上述の形状に限定されず、例えば、第1実施形態のように線材としたり、または面形状とすることもできる。電極部41の材質としては、SUS材であってもよいが、生体に悪影響を及ぼさないもの、例えば、金、銀、白金、タングステン、パラジウムまたはこれらの合金や、Ni-Ti合金、チタン合金等を使用することが好ましい。
バルーン40を構成するものとしては、変形可能な弾性材料、例えば、ポリイミド樹脂、ポリウレタン、PET、ナイロン、フッ素樹脂、ポリプロピレン、シリコンなどを使用することができる。
電気エネルギ供給方式としては、右心房R側の電極部41と背部に設けられた対極板23との間で通電するモノポーラ方式が適用されるが、右心房R側に、卵円孔弁M2と接する電極と心房中隔M1と接する電極の2つの対となる電極部を設ける構成とすれば、この2つの電極の間で通電するバイポーラ方式などを適用することもできる。すなわち、バルーン40の吸引保持面42に、卵円孔弁M2と接する電極と心房中隔M1と接する電極とを配置し、エネルギ供給手段20によりこの電極間に通電することで、バイポーラ方式とすることができる。なお、電極が2本となるため、エネルギ供給手段20と電極を接続するための別途のルーメンが、カテーテル30に設けられる。もしくは、2つの電極と接続する導線がいずれも絶縁被膜で覆われて互いに絶縁されていれば、同一のルーメン内に配置することもできる。バイポーラ方式によれば、接合したい部位の近傍にのみ通電することができるため、人体への影響を低減できる。また、電極間のインピーダンスにより電流を制御することができるため、人により相違する卵円孔弁M2と心房中隔M1の組織の状態に応じて容易に対応することができ、安全性が得られる。
次に、本実施形態の作用を説明する。
図14は操作部材を卵円孔に挿入する断面概略図、図15は卵円孔弁を保持手段により保持した状態の断面概略図、図16はバルーンにより卵円孔弁及び心房中隔を吸引保持した状態の断面概略図、図17は電極部により卵円孔弁及び心房中隔に電流を印加する状態の断面概略図である。
まず、術者は、手元操作部70の第2操作体76を第1操作体73に対し後退し、ガイディングカテーテル31内に収縮したバルーン40などを収納した状態とし、この状態で、常法によりガイドワイヤーをガイドとしてガイディングカテーテル31の先端を生体の所定位置から挿入し、右心房Rまで到達させる。
次に、第1操作体73を操作し、カテーテル30の先端を、右心房Rから卵円孔Oを通って左心房Lに突出させた後、把手78を前進し、図10(A)、図14に示すように、操作部材7aの先端を先端スリーブ体65から突出し、左心房L内に挿入する。
操作部材7aの先端位置の確認後、図10(B)に示すように、操作部材7aの当り部材68が先端スリーブ体65に当接するまで把手78を後退させる(後退量は図10Bの「δ1」)。そして、第1操作体73を操作し、第2弾性線材67、バルーン40を卵円孔弁M2の近傍に位置させ、保持部62全体を左心房L側に挿入する。
把手78をさらに後退させると(後退量は図10Cの「δ2」)、この後退させる操作力が、操作部材7aにより、当り部材68、先端スリーブ体65、第2弾性線材67及び中間スリーブ体64を介して、主管63の先端に固着された第1弾性線材66に伝達され、第1弾性線材66を、図10(C)に示すように、径方向外方に向って円弧状に突出変形させる。ただし、この時点では第2弾性線材67は変形していない。
この結果、第1弾性線材66は、卵円孔Oの口縁部分を押し広げつつ変形することになるので、第1弾性線材66の直近に設けられている電極部41およびバルーン40を卵円孔Oに対して調心し、電極部41およびバルーン40を卵円孔Oの中心に位置させる。
電極部41およびバルーン40を卵円孔Oの中心に位置させた後、電極部41およびバルーン40を心房中隔M1および卵円孔弁M2に密着させる。
この後、さらに、中間スリーブ体64の後端が主管63の先端に当接するまで把手78を後退操作させると、図10(D)に示すように、第1弾性線材66はあまり変形せず、先端側の第2弾性線材67が、前記操作力により径方向外方に向って円弧状に突出変形する。この結果、左心房L内において、当り部材68と先端スリーブ体65がバルーン40に近付くので、当り部材68と先端スリーブ体65は、図15に示すように、卵円孔弁M2の左心房側の面に当接して押圧し、卵円孔弁M2を心房中隔M1に近接させて保持する。
この状態で、負圧供給源を作動してバルーン40の吸引保持面42に負圧を生じさせ、図16に示すように卵円孔弁M2を吸引して引き寄せ、心房中隔M1に密着させる。このとき、位置決め保持手段60によって卵円孔弁M2が心房中隔M1側に近接されているため、効率よく卵円孔弁M2を引き寄せることができる。すなわち、例えば心房中隔M1と卵円孔弁M2の間の隙間が大きい場合には、血液が吸引されるのみで卵円孔弁M2を引き寄せられない可能性があるが、卵円孔弁M2が既に心房中隔M1側に近接されているため、効率よく卵円孔弁M2を引き寄せることができ、血液の過剰な吸引も抑制できる。特に、心房中隔M1および卵円孔弁M2の形状は、個体差があるため、上述した心房中隔M1と卵円孔弁M2の間の隙間も様々であるが、本実施形態に係るデバイスによれば、個体差による隙間の変化にも対応できる。また、バルーン40が卵円孔Oの中心に位置されているため、バルーン40によって卵円孔Oを適切に覆うことができ、吸引による卵円孔弁M2の引き寄せをより効果的に行うことができる。
次に、この吸引状態を保持しつつ、第2操作体75を一旦戻し、図10(B)に示すような、第1弾性線材66と第2弾性線材67を直状にした後、第2操作体75を後退操作し、図17に示すように、主管63により位置決め保持手段60全体をカテーテル30のルーメンL1内に回収する。
この後、この吸引状態を保持しつつ、電気供給部20Aを制御し、所定の電流を電極部41および対極板23との間に流し、心房中隔M1と卵円孔弁M2を相互に融着する。
電気エネルギの印加の際には、電極部41が卵円孔Oの中心に位置されているため、適切な位置に電極部41を接触させることができ、効率よく融着することができる。
両組織が融着されると、通電を停止し、第1操作体75を後退し、位置決め保持手段60と共に、カテーテル30の先端にあるバルーン40もガイディングカテーテル31内に収納し、ガイディングカテーテル31を生体から抜去する。
本実施形態によれば、心房中隔M1および卵円孔弁M2を吸引して保持するため穿刺する必要がなく、治療部への悪影響の発生を低減できる。
なお、第1および第2実施形態における位置決め保持手段60は、上述した形態に限定されない。例えば、図18は位置決め保持手段の他の例を示す概略図であるが、(A)のように、前述の第1、第2実施形態において設けられる中間スリーブ体64は設けずに、先端スリーブ体65と主管63の先端の間に、第1弾性線材66および第2弾性線材67を設けてもよい。この形態においては、操作部材7aを後退させると、(B)のように、第1弾性線材66が径方向外方に向って円弧状に突出変形しつつ、第2弾性線材67が円弧状に屈曲変形する。すなわち、第1弾性線材66による吸引保持部や電極部の卵円孔Oの中心への位置決めと、第2弾性線材67によって屈曲した当り部材68と先端スリーブ体65による卵円孔弁M2の保持を、操作部材7aの後退による1動作で同時に行うこととなる。
本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。前述した実施形態では、PFOの欠損を閉鎖する治療に使用されるものについて説明したが、本発明は、これのみに限定されるものではなく、左心耳閉鎖デバイス(Left Atrial Appendage)といった通路状の欠損を閉鎖する場合や、あるいは所定の部位の生体組織を熱的に壊死させる場合にも使用可能である。
本発明は、PFOの欠損部を、簡単かつ安全に閉鎖可能なデバイスとして利用できる。
図1は本発明の第1の実施形態に係るPFO閉鎖デバイスの使用状態を示す概略断面図である。 同実施形態の要部拡大斜視図である。 図2の3−3線に沿う断面図である。 図3の4−4線に沿う平面図である。 図2の5−5線に沿う断面図である。 操作部材を卵円孔に挿入する断面概略図である。 卵円孔弁を保持手段により保持した状態の断面概略図である。 吸引保持部により卵円孔弁及び心房中隔を吸引保持した状態の断面概略図である。 電極部により卵円孔弁及び心房中隔に電流を印加する状態の断面概略図である。 (A)〜(D)はPFO閉鎖デバイスの先端部の操作状態を示す概略図である。 本発明の第2の実施形態に係るPFO閉鎖デバイスの使用状態を示す概略断面図である。 同実施形態の要部拡大斜視図である。 図12の13−13線に沿う断面図である。 操作部材を卵円孔に挿入する断面概略図である。 卵円孔弁を保持手段により保持した状態の断面概略図である。 バルーンにより卵円孔弁及び心房中隔を吸引保持した状態の断面概略図である。 電極部により卵円孔弁及び心房中隔に電流を印加する状態の断面概略図である。 位置決め保持手段の他の例を示す概略図であり、(A)は変形前、(B)は変形後を示す。
符号の説明
1…吸引保持部、
2,41…電極部、
3…開口部、
7a…操作部材、
9…負圧供給手段、
20…エネルギ供給手段、
23…対極板、
30…カテーテル、
31…ガイディングカテーテル、
40…バルーン(吸引保持部)、
42…吸引保持面、
43…流体供給手段、
70…手元操作部、
L1〜L7…ルーメン、
M…生体組織、
M1…心房中隔、
M2…卵円孔弁、
O…卵円孔。

Claims (15)

  1. カテーテルの先端部に設けられ、卵円孔弁及び心房中隔からなる生体組織を一方側から吸引して保持する吸引保持部と、
    前記吸引保持部の前記生体組織と接する側に設けられる電極部と、
    前記吸引部保持部に負圧を付与する負圧供給手段と、
    前記カテーテルの先端から突出し、進退動および屈曲を操作可能であり、卵円孔に挿通して前記卵円孔弁を他方側から押圧しつつ保持する保持手段と、
    前記電極部にエネルギを供給するエネルギ供給手段と、
    を有し、
    前記保持手段により他方側から前記卵円孔弁を心房中隔側に押圧した状態で、前記吸引保持部により前期卵円孔弁及び心房中隔を吸引して保持し、前記エネルギ供給手段からエネルギを前記電極部に供給し前記卵円孔弁と心房中隔とを相互に接合させることを特徴とするPFO閉鎖デバイス。
  2. 前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材をカテーテルの先端より突出し、当該操作部材を軸方向に進退操作することにより、前記保持手段を操作し得ることを特徴とする請求項1に記載のPFO閉鎖デバイス。
  3. 前記保持手段は、前記カテーテル内で前記操作部材を、軸線を中心に回転可能としたことを特徴とする請求項2に記載のPFO閉鎖デバイス。
  4. 前記保持手段は、前記吸引保持部および電極部を前記卵円孔に対し所定位置に位置させる位置決め保持手段をも備える位置決め保持手段であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のPFO閉鎖デバイス。
  5. 前記位置決め保持手段は、前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材を前記カテーテルの先端より突出し、当該操作部材の軸方向の進退操作により弾性部材を外方に変位させ、前記弾性部材の前記卵円孔の内縁に対する弾性的な当接により、前記吸引保持部および電極部を前記卵円孔の中央部に位置決させることを特徴とする請求項4に記載のPFO閉鎖デバイス。
  6. 前記位置決め保持手段は、前記カテーテルに進退可能に設けられた長尺な操作部材を前記カテーテルの先端より突出し、当該操作部材を軸方向に進退操作することにより前記操作部材の先端部を湾曲させる湾曲機構を有することを特徴とする請求項4または5に記載のPFO閉鎖デバイス。
  7. 前記湾曲機構は、
    前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に、中間スリーブ体及び先端スリーブ体を設ける一方、前記先端スリーブ体と前記中間スリーブ体とを弾性線材により連結し、前記操作部材の先端部に当該操作部材を牽引することにより前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、
    前記操作部材の進退操作により相互に当接した前記先端スリーブ体及び当り部材が前記弾性線材を湾曲させると共に、前記卵円孔弁を保持するように変位することを特徴とする請求項6に記載のPFO閉鎖デバイス。
  8. 前記位置決め保持手段は、
    前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に、中間スリーブ体及び先端スリーブ体を設けると共に、前記操作部材の先端部に当該操作部材の牽引により前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、
    前記主管と中間スリーブ体とを第1弾性線材により連結すると共に、前記中間スリーブ体と先端スリーブ体とを、前記第1弾性線材よりも変形し難い第2弾性線材により連結し、
    前記操作部材の牽引による前記第1弾性線材の外方湾曲により、前記卵円孔の内縁に弾性的に当接する前記位置決め部とし、
    さらなる前記操作部材の牽引による前記第2弾性線材の湾曲により、前記先端スリーブ体及び当り部材により前記卵円孔弁を保持する保持部としたことを特徴とする請求項4または5に記載のPFO閉鎖デバイス。
  9. 前記湾曲機構は、
    前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に先端スリーブ体を設ける一方、前記先端スリーブ体と前記主管とを弾性線材により連結し、前記操作部材の先端部に当該操作部材を牽引することにより前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、
    前記操作部材の進退操作により相互に当接した前記先端スリーブ体及び当り部材が前記弾性線材を湾曲させると共に、前記卵円孔弁を保持するように変位することを特徴とする請求項6に記載のPFO閉鎖デバイス。
  10. 前記位置決め保持手段は、
    前記カテーテルを挿通しかつ外部から操作しうる主管を有し、当該主管内に軸方向に進退自在に設けられた操作部材を、前記主管の先端から突出し、当該操作部材と同軸に先端スリーブ体を設けると共に、前記操作部材の先端部に当該操作部材の牽引により前記先端スリーブ体に当接する当り部材を設け、
    前記主管と先端スリーブ体とを、第1弾性線材および第2弾性線材により連結し、
    前記操作部材の牽引による前記第1弾性線材の外方湾曲により、前記卵円孔の内縁に弾性的に当接する前記位置決め部とし、
    当該操作部材の牽引による前記第2弾性線材の湾曲により、前記先端スリーブ体及び当り部材により前記卵円孔弁を保持する保持部としたことを特徴とする請求項4または5に記載のPFO閉鎖デバイス。
  11. 前記エネルギ供給手段は、前記電極部と、体外に設けられた対極板との間で通電するモノポーラ方式であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のPFO閉鎖デバイス。
  12. 前記電極部は、前記卵円孔弁と接する電極と、前記心房中隔と接する電極とを有し、前記エネルギ供給手段は、前記電極間で通電するバイポーラ方式であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載のPFO閉鎖デバイス。
  13. 前記吸引保持部は、前記カテーテルの先端部に設けられ、カテーテルの基端部から流体を流入出させて膨張収縮可能な膨張部であり、当該膨張部の前記生体組織と接する側に前記負圧供給手段によって負圧が付与される吸引保持面が設けられ、当該吸引保持面に前記電極部が設けられることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のPFO閉鎖デバイス。
  14. 前記吸引保持部は、前記生体組織と接する側に前記負圧供給手段によって負圧が付与される開口部が形成され、当該開口部に、前記電極部が設けられることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のPFO閉鎖デバイス。
  15. 前記保持手段は、前記電極部を貫通することを特徴とする請求項13または14に記載のPFO閉鎖デバイス。
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