JP2009045167A - 流体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】執刀医が把持する部位において駆動波形を切換えることが可能で、操作性がよい流体噴射装置を提供する。
【解決手段】流体噴射装置10は、流体室52の容積を変更し、液体を一定の休止時間Iを有して繰り返し脈動噴射する流体噴射装置であって、接続チューブ15から供給される液体を接続流路管60から脈動噴出させる脈動発生部30と、脈動発生部30と離間した位置に配設され、脈動発生部30に駆動信号を入力する駆動制御部110と、脈動発生部30に、駆動信号のON/OFF操作または駆動信号の駆動波形の切換え操作を行うスイッチ121、切換えスイッチ122が備えられている。スイッチ121及び切換えスイッチ122は、脈動発生部30のホルダ130に設けられている。駆動波形は、脈動発生部駆動電圧A、連続する出力パルス数n、休止時間Iのいずれか、またはそれらの組み合わせで切換えられる。
【選択図】図3

Description

本発明は、脈動発生部と、脈動発生部とは離間した位置に備えられる駆動制御部とを備え、脈動発生部に駆動制御部から出力される駆動信号を切換える操作部材が備えられる流体噴射装置に関する。
従来、生体組織を切開または切除する流体噴射装置として、ポンプ室の容積を変更して流体の吐出動作を行うマイクロポンプと、マイクロポンプの出口流路に一方の端部が接続され、他方の端部が出口流路の直径よりも縮小された開口部(ノズル)が設けられた接続流路と、接続流路が穿設されマイクロポンプから流動される流体の脈動を前記開口部に伝達し得る剛性を有する接続管とから構成されている流体噴射装置が知られている。(例えば、特許文献1)。
また、経内視鏡的に体腔内に導入されるチューブと、このチューブに液体を供給する液体供給源と、この液体供給源によって供給される液体の圧力を調整する制御部とを備える内視鏡用手術装置というものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
特開2005−152127号公報(第7,8,13,15頁、図1,6,7) 特開昭63−99853号公報(第2頁、図1)
このような特許文献1では、流体噴射装置は外部からの駆動信号に基づきマイクロポンプを駆動して液体を脈動噴射させる構造であり、流体噴射装置には駆動制御部や駆動波形を調整する操作部材を備えていない。
また、特許文献2では、内視鏡内を貫通するチューブに液体を供給する液体制御装置を備えている。液体制御装置には、供給タンクと加圧ポンプと、加圧ポンプの駆動を制御する操作部材としてのメインスイッチが設けられている。
従って、特許文献1及び特許文献2では、操作者、具体的には執刀医が把持する流体噴射装置や内視鏡には、手術中に、マイクロポンプあるいは加圧ポンプの駆動制御を行うための操作部材は備えておらず、予め、固定された駆動条件(駆動波形)を設定しておき手術を行うか、手術行為を中断して駆動条件を切換えるか、他者が駆動条件の切換えを行うことになり、執刀医が手術途中で自在に駆動条件を切換えることは困難である。
また、操作部材をフットスイッチで行うことも考えられるが、手と足とを使用することから微細な手術には熟練が要求されること、間違えて入力やすいことが予測される。
本発明の目的は、執刀医が把持する脈動発生部において駆動波形を切換えることが可能な操作性がよい手術用の流体噴射装置を提供することである。
本発明の流体噴射装置は、流体室の容積を変更し、流体を一定の休止時間を有して繰り返し脈動噴射する流体噴射装置であって、接続チューブから供給される流体を接続流路管から脈動噴出させる脈動発生部と、前記脈動発生部とは別体に設けられ、前記脈動発生部に駆動信号を入力する駆動制御部と、前記脈動発生部に、前記駆動信号のON/OFF入力操作または前記駆動信号の駆動波形の切換え操作の少なくとも一方を行う操作部材が備えられていることを特徴とする。
この発明の流体噴射装置は、執刀医が把持して操作する脈動発生部に操作部材を備えることで、執刀医自身が手術の状況を確認しながら、手元の操作部材により脈動発生部のON/OFF操作、つまり駆動開始または停止操作を行い、または手術部位の条件に合わせて最適な駆動波形に切換えることが可能となる。なお、手術部位の条件としては、例えば、手術部位の切除硬度や単位時間あたりの切除深さ等がある。
また、脈動発生部とは離間した位置に駆動制御部がある従来の構造では、駆動制御部または液体制御装置をONしたときから液体が直ちに噴出することになるが、本発明によれば、執刀医が把持する脈動発生部に設けられる操作部材を操作して脈動発生部のON操作ができることから、実際に手術を開始する直前に液体を噴出させることができる。
また、前記駆動波形の波高値、連続する出力パルス数及び前記連続する出力パルスの間に設けられる休止時間のうち少なくとも1つが前記操作部材によって切換えられることが好ましい。
ここで、駆動波形の波高値は、脈動発生部駆動電圧の振幅である。
本発明は流体室が容積可変型の脈動発生部を有する。このような脈動発生部は、駆動波形の波高値と、連続する出力パルス数と、連続する出力パルスの間の休止時間のいずれかにより噴射強度や単位時間あたりの流体量が変化する。従って、操作部材を用いて駆動波形を変更することにより、手術条件を把持する脈動発生部に設けられる操作部材により切換えることができる。
また、前記駆動制御部が、前記駆動波形の切換え操作に基づき所望の流体噴射条件に対応する最適駆動波形を導き出す最適駆動パラメタ演算装置を含むことが好ましい。
詳しくは実施の形態にて説明するが、脈動する流体の噴射による組織切除においては、脈動の強度が大きいと硬度が高い組織の切除が可能となる。具体的には、脈動発生部の駆動電圧を高くすることで実現できる。しかし、同時に単位時間あたりに噴射される流体量も増加し、その結果、単位時間あたりの切除深さも大きくなってしまう。そこで、執刀医の所望の操作条件、つまり切除組織の硬度に対応した最適駆動波形を最適駆動パラメタ演算装置にて設定して脈動発生部を駆動することで切除組織の硬度、単位時間あたりの切除深さを最適に設定することができる。そして、この最適駆動波形は、手術途中で切除組織の硬度に対応して執刀医の手元において操作部材を操作し切換えを所望のタイミングで行うことができる。
前記駆動制御部が、前記駆動波形の切換え操作に基づき所望の流体噴射条件に対応する最適駆動波形を表す最適駆動パラメタテーブルを含むことが好ましい。
ここで、最適駆動パラメタテーブルには、例えば、切除組織の硬度に対応した駆動波形の波高値(駆動電圧)と連続する出力パルス数と、連続する出力パルスの間に設けられる休止時間のいずれかの組み合わせが含まれる。
このように、手術途中で切除組織の硬度に対応した最適駆動パラメタテーブルから最適な組み合わせを選択することにより、手術部位の条件に対応した最適駆動波形を容易に設定することができる。
また、本発明では、前記操作部材によるON入力操作後から脈動発生部が駆動開始するまでの間に一定の時間間隔を有していることが望ましい。
本発明の流体噴射装置は執刀医の手元で操作部材を操作して脈動発生部のON/OFF操作を行うことができる。そこで、操作部材をON入力操作してから脈動発生部が駆動開始するまでに一定の時間間隔を設け、その時間間隔を執刀医の手術開始準備時間とし、正確な手術部位に流体噴射しやすくするという効果がある。
また、前記操作部材によるON入力操作後から徐々に前記駆動波形の波高値を大きくし、所定の波高値に達するまでに一定の時間間隔を設けていることが望ましい。
このようにすれば、駆動波形の波高値は組織切除の能力に影響する。そこで、駆動波形の波高値を小さいレベルから徐々に大きくしていくことで、いきなり組織切除可能な波高値にするよりも、波高値が小さい段階で噴射位置を調整して切除部位に対して正確な位置に流体を噴射することができる。
また、波高値を徐々に大きくしていく段階で、波高値が高すぎる場合あるいは低すぎる場合には直ちに適切な波高値に調整を行うことができる。
また、前記駆動制御部が、前記脈動発生部の駆動状態を報知する報知発生手段を備えていることが望ましい。
報知手段としては、例えば、音や光によるものが考えられる。
このように報知発生手段を備えることにより、前述した脈動発生部のON/OFFのタイミング、ONしてから流体噴出までの間、ONしてから所定の駆動波形の波高値に達するまでの間等における脈動発生部の駆動状態の変化を執刀医に報知し、執刀医の準備を促すことを可能にする。
さらに、前記脈動発生部がホルダを備え、前記操作部材が前記ホルダに設けられていることが望ましい。
このようにすれば、執刀医は脈動発生部を把持して手術するが、把持しやすい形状のホルダを備え、このホルダに操作部材を設けることにより、操作性を向上させることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5には実施形態1に係る流体噴射装置を示している。なお、以下の説明で参照する図は、図示の便宜上、部材ないし部分の縦横の縮尺は実際のものとは異なる模式図である。
また、本発明による流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、手術用メス等様々に採用可能であるが、以下に説明する実施の形態では、生体組織を切開または切除することに好適な流体噴射装置を例示して説明する。従って、実施の形態にて用いる流体は、水または生理食塩水等の液体である。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成を示す構成図である。図1において、流体噴射装置10は、液体を収容し、その液体を重力の作用によって送出する輸液バック20から重力により送出された液体を脈動に変化させる脈動発生部30と、脈動発生部30と輸液バック20とを接続する柔軟性を有する接続チューブ15と、脈動発生部30に駆動信号を入力する駆動制御部110と、から構成されている。駆動制御部110は、脈動発生部30とは離間した位置に配設されている。
脈動発生部30には、液体を噴射させるためのノズル62を先端部に有する接続流路管60が突設されている。脈動発生部30は、合成樹脂からなるホルダ130によって覆われ保持されている。そして、ホルダ130には、操作部材120が設けられており、操作部材120は、駆動信号のON/OFFを行うスイッチ121と駆動信号の駆動波形を切換える信号を入力する切換えスイッチ122とを備えている。
操作部材120と駆動制御部110とはリード線群76(リード線は複数あるが、図示は簡略化している)により接続され、圧電素子71(図2、参照)と駆動制御部110とはリード線群72(リード線は複数あるが、図示は簡略化している)により接続されている。
続いて、脈動発生部30の構造について説明する。
図2は、実施形態1に係る脈動発生部の概略構造の1例を示す断面図である。図2において、脈動発生部30は、機枠40と蓋機枠50とがそれぞれ対向する接合面においてダイアフラム70を介して密着固定され構成されている。機枠40は、鍔部を有する筒状部材であって、一方の端部は底板90で閉鎖されている。この機枠40の内部空間に圧電素子71が配設される。
圧電素子71は、積層型圧電素子であって柱状のアクチュエータを構成する。圧電素子71は、一方の端部が上板91を介してダイアフラム70に、他方の端部が底板90に固着されている。
ダイアフラム70は円盤状の金属薄板からなり、機枠40に密着固定されている。圧電素子71は、駆動制御部110から駆動信号を入力することで伸張、収縮を行いダイアフラム70により流体室52の容積を変更する。
蓋機枠50は、機枠40と対向する面の中心部に凹部が形成され、この凹部とダイアフラム70とから構成される空間が流体室52である。そして、流体室52には入口流路55が連通し、入口流路55は流入接続流路56に連通する。流入接続流路56は、蓋機枠50の側面に突設された接続管部57を貫通して、接続管部57に接続される接続チューブ15に連通されている。
なお、ダイアフラム70は、機枠40の接合面41と蓋機枠50の接合面51との間で密着固定される。こうして、機枠40と蓋機枠50とはダイアフラム70を介して一体化される。
また、流体室52の略中央部には出口流路54が穿設されている。出口流路54は、流体室52から蓋機枠50に突設された出口流路管部53まで貫通されている。なお、出口流路54の流体室52との接続部は、流体抵抗を減ずるために滑らかに丸められている。
また、図示は省略するが流体室52には、内部に充填された液体に旋回流を発生させるための旋回流発生手段が設けられている。
接続チューブ15から入口流路55に一定の圧力で輸液バック20から供給される液体は、旋回流発生手段により流体室52内を流動して旋回流を発生する。旋回流は、旋回することによる遠心力で液体が流体室52の内周側壁に押し付けられるとともに、流体室52内に含まれる気泡は旋回流の中心部に集中される。中心部に集められた気泡は、出口流路54から排除される。
出口流路管部53には接続流路管60が接続されている。接続流路管60には出口接続流路61が穿設されており、出口接続流路61の直径は出口流路54の直径より大きい。また、接続流路管60の管部は、液体の圧力脈動を吸収しない剛性を有している。接続流路管60の先端部にはノズル62が挿着されている。このノズル62には液体噴射開口部63が穿設されている。液体噴射開口部63の直径は、出口流路54の直径より小さい。
圧電素子71には駆動信号を入力するリード線群72が接続されている。リード線群72は絶縁被覆されたリード線73,74から構成され、機枠40の筒部42の対向する2箇所に設けられる切欠部43を貫通し、筒部42の外側に延在される。そして、機枠40に取り付けられる第1回路基板150に設けられる接続電極(図示せず)に接続される。
また、底板90には、GND線75が接続されて、駆動制御部110の一部に電気的にGND接地されている。機枠40と蓋機枠50と接続流路管60とノズル62と底板90等の構成要素が全て金属製の場合は、底板90にGND線75を設けることで、脈動発生部30全体をGND接地し、脈動発生部30内で漏電等が発生したときの安全対策としている。
上述したように構成される脈動発生部30は、ホルダに周囲を覆われ保持されている。
図3は、ホルダに装着された状態の脈動発生部の概略構造を示し、(a)は上ケースを透視した正面構成図、(b)は(a)のA―A切断面を示す断面構成図である。図3(a),(b)において、脈動発生部30は合成樹脂からなるホルダ130によって保持されるとともに周囲を覆われている。ホルダ130は、上ケース135と下ケース136とから構成され、接合面137において密着固定されている。
ホルダ130は、接続流路管60の根元部まで筒状に延在された抓み部131と、執刀医の掌中に把持される把持部133と接続チューブ15やリード線群72,76を擬似結束する案内部132とを備えている。把持部133は掌中に脈動発生部30を支えながら、抓み部131を鉛筆を軽く握るようにして操作される。従って、抓み部131と把持部133とは、操作しやすい形状に設計される。
ホルダ130の内部には、第1回路基板150と第2回路基板160とが装着されている。第1回路基板150は、脈動発生部30を構成する機枠40の外周部に挿着して蓋機枠50に固着される。そして、第1回路基板150の表面に形成される電極パターン(図示せず)に接続される。この第1回路基板150には、操作部材としてのスイッチ121が装着されている。スイッチ121は、頭部がホルダ130の接続流路管60側の側面に貫通されている。但し、頭部は側面表面からは突出しない。
スイッチ121は、本実施形態ではプッシュON/プッシュOFF型スイッチが用いられている。スイッチ121と第1回路基板150との接続部にはリード線73,74それぞれが接続される電極パターンが延在される。そして、プッシュON操作で脈動発生部30に駆動制御部110から駆動信号が入力され、脈動発生部30が駆動して液体の噴出を開始する。また、プッシュOFF操作で駆動制御部110からの駆動信号が遮断されて駆動停止するよう構成される。
一方、第2回路基板160は、第1回路基板150に対して略垂直方向にホルダ130に配設され、その表面に操作部材としての切換えスイッチ122(図示は簡略化している)が装着されている。切換えスイッチ122は、スライドスイッチ、多段式プッシュスイッチ、ロータリースイッチ等の多接点スイッチを使用することができる。切換えスイッチ122は、図3(b)に示すように上ケース135を貫通している。但し、頭部122aは上ケース135の表面からは突出しない。そして、これらの切換えスイッチは、脈動発生部30を把持する片手で操作できる形態とする。例えば、ロータリースイッチの場合は頭部に操作レバーを付加すればよい。切換えスイッチ122は、頭部をスライドまたはプッシュまたは回転することで、複数の駆動波形の組み合わせを選択することを可能にする。従って、リード線群76は、駆動波形の組み合わせ数に相当する複数のリード線から構成される。
なお、第1回路基板150と第2回路基板160とをフレキシブル回路基板とすれば、一体で形成することができる。
また、脈動発生部30の側面方向に接続される接続チューブ15は、把持部133の内部を緩やかに湾曲しながら案内部132から延在され、輸液バック20に接続される。
脈動発生部30、接続流路管60、第1回路基板150、第2回路基板160、スイッチ121、切換えスイッチ122及び接続チューブ15はそれぞれ、上ケース135、下ケース136に穿設される溝内に位置を規制され、上ケース135と下ケース136とを接合することで、ホルダ130内に移動しないように保持されている。なお、上ケース135と下ケース136との接合は、固定螺子140(図示は簡略化している)により行われる。
次に、本実施形態における脈動発生部30の動作について図1,2を参照して説明する。本実施形態の脈動発生部30の液体吐出は、入口流路側のイナータンスL1(合成イナータンスL1と呼ぶことがある)と出口流路側のイナータンスL2(合成イナータンスL2と呼ぶことがある)の差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。イナータンスLは、液体の密度ρ、流路の断面積S、流路の長さhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる液体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係式が導き出される。つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンスは、個々の流路のイナータンスを電気回路におけるインダクタンスの並列接続、または直列接続と同様に合成して算出することができる。
なお、合成イナータンスL1は、流入接続流路56が入口流路55に対して直径が十分大きく設定されているので、合成イナータンスL1は、入口流路55の範囲において算出される。接続チューブ15は柔軟性を有するため、合成イナータンスL1の算出から削除してもよい。
また、合成イナータンスL2は、出口接続流路61の直径が出口流路54よりもはるかに大きく、接続流路管60内部の液体及び管部の若干の弾性変形により合成イナータンスL2への影響は軽微である。従って、合成イナータンスL2は出口流路54のイナータンスに置き換えてもよい。
本実施形態では、合成イナータンスL1が合成イナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路55の流路長及び断面積、出口流路54の流路長及び断面積を設定される。
次に、脈動発生部30の動作について説明する。輸液バック20から入口流路55には、指定の圧力で液体が供給される。その結果、圧電素子71が動作を行わない場合、輸液バック20の吐出力と入口流路側全体の流体抵抗値の差によって液体は流体室52内に流入する。
ここで、圧電素子71に所定の駆動波形からなる駆動信号が入力され、急激に圧電素子71が伸張したとすると、流体室52内の圧力は、入口流路側及び出口流路側の合成イナータンスL1,L2が十分な差を有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。この圧力は、入口流路55に加えられていた輸液バック20による圧力よりはるかに大きいため、入口流路側から流体室52内への液体の流入はその圧力によって減少し、出口流路54からの流出が増加する。
しかし、入口流路55の合成イナータンスL1は、出口流路54の合成イナータンスL2よりも大きいため、入口流路55から液体が流体室52へ流入する流量の減少量よりも、出口流路54から吐出される液体の増加量の方が大きいため、出口流路54にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管60内を伝播して、先端のノズル62の液体噴射開口部63から液体が脈動噴射される。液体噴射開口部63の直径は、出口流路54の直径よりも小さいので、液体は、さらに高圧、高速のパルス状の液滴として噴射される。
一方、流体室52内は、入口流路55からの液体流入量の減少と出口流路54からの液体流出の増加との相互作用で圧力上昇直後に真空状態となる。その結果、輸液バック20の圧力と、流体室52内の真空状態の双方によって一定時間経過後、入口流路55の液体は圧電素子71の動作前と同様な速度で流体室52内に向かう流れが復帰する。入口流路55内の液体の流動が復帰した後、圧電素子71の伸張があれば、液体噴射開口部63からの脈動噴射を継続することができる。そして、液体の噴出強度や噴出量は、駆動信号、つまり駆動波形によって制御される。
次に、駆動波形について図面を参照して説明する。
図4は、本実施形態に係る脈動発生部の駆動波形の1例を模式的に示す説明図である。横軸に時間(経過時間)、縦軸に駆動波形の波高値としての脈動発生部駆動電圧を示している。図4にて例示する脈動発生部駆動電圧は、位相が−π/2から始まる正弦波の整数個の連続波形(出力パルスと表すことがある)と、休止時間Iとから構成される。
ここで、駆動波形における波高値を脈動発生部駆動電圧A、連続する出力パルス数n、連続する出力パルス間の休止時間I、周期Tとしたときの駆動波形と組織切除との関係について説明する。
脈動噴射される液体による組織切除においては、脈動の強度が大きいと硬度が大きい組織の切除が可能になる。これは、脈動発生部駆動電圧Aを大きくすることで実現できる。しかし一方、同時に単位時間あたりの噴射液体量も増加する。その結果、単位時間あたりの切除深さも同時に大きくなってしまう。
執刀医が、単位時間あたりの切除深さの増加を望まない場合には、脈動発生部駆動電圧Aを増加させると同時に連続する出力パルス数nを適正な値に減ずるか、もしくは休止時間Iを増加する等の必要がある。
本実施形態では、切換えスイッチ122を操作することで手術部位の切除硬度を選択入力し、切除硬度に対応する脈動発生部駆動電圧A、出力パルス数n、休止時間Iを駆動制御部110にて算出して所望の駆動波形を脈動発生部30に出力する。
図5は、本実施形態に係る駆動制御部の主たる構成を示す構成説明図である。図5において、駆動制御部110には、最適駆動パラメタ演算装置112と駆動制御回路111と表示装置113を含み、他に駆動制御部110に電力を供給する電源115を備える。切換えスイッチ122において選択しリード線群76を介して入力される切除硬度に対して、最適駆動パラメタ演算装置112に予め設定された流体室52への供給圧力、液体噴射開口部63の直径をもとに、所望の脈動発生部駆動電圧A、出力パルス数n、休止時間I等のパラメタを算出して、それらに基づく駆動波形を駆動制御回路111にて形成する。そして、形成された駆動波形を有する駆動信号をリード線群72を介して脈動発生部30に出力する。
なお、表示装置113は入力装置を備え、流体室52の供給圧力、液体噴射開口部63の直径等の基礎データを入力し、流体室52の供給圧力、液体噴射開口部63の直径等の基礎データと、切除硬度、脈動発生部駆動電圧A、出力パルス数n、休止時間I、駆動時間と、が表示される。なお、被手術者名、執刀医名や日付等も表示されることが望ましい。
続いて、本実施形態による操作部材120の操作方法について図3〜図5を参照して説明する。切換えスイッチ122には、選択可能な切除硬度(切除硬度に対応する記号でもよい)が表示されている。まず、切換えスイッチ122にて手術部位に対応した切除硬度を選択する。すると、駆動制御部110にて切除硬度に対応した適切な脈動発生部駆動電圧A、出力パルス数n及び休止時間Iを演算処理し、駆動制御回路111にて駆動波形を形成し脈動発生部30に出力する。しかしこの時点では、スイッチ121ではOFF状態であるために液体の噴出はない。続いて、スイッチ121をプッシュON操作することで液体の噴出が開始され手術可能な状態となる。
なお、切換えスイッチ122は、切除硬度を選択し、その状態を維持するための節度感を有している。
スイッチ121は、プッシュON/プッシュOFF型のスイッチのため、執刀医はスイッチ121を操作して手術途中でON/OFFを自在に切換えることが可能である。また、切換えスイッチ122も手術途中において駆動波形の切換えが可能である。
なお、スイッチ121、切換えスイッチ122は実施形態の1例であり、上述した機能を有するものであれば特に限定されない。
従って、上述した実施形態1によれば、操作部材としてのスイッチ121、切換えスイッチ122を脈動発生部30のホルダ130、つまり執刀医の手元位置に備えることで、執刀医自身が切除状態を確認しながら、手元のスイッチ121より脈動発生部30のON/OFF操作、つまり駆動開始または停止操作を行い、切換えスイッチ122により手術部位の切除硬度に合わせて駆動波形を切換え、最適駆動波形にて手術できるという効果がある。前述した特許文献2の構造では液体制御装置をONしたときから直ちに液体が噴出することになるが、本発明によれば、実際に手術を開始する直前から液体を噴出させることができる。
また、最適駆動パラメタ演算装置112において、予め設定された流体室52の供給圧力、液体噴射開口部63の直径をもとに、脈動発生部駆動電圧A、出力パルス数n、休止時間I等のパラメタを算出して最適な駆動波形を形成するため、執刀医は面倒な設定作業を必要としない。
さらに、スイッチ121、切換えスイッチ122は、ホルダ130の表面から突出させていないので、手術中に不用意に操作してしまうことを防止している。特に、切換えスイッチ122の操作には節度感をもたせているので、無意識のうちに駆動波形を切換えてしまう心配がない。
また、接続チューブ15は、脈動発生部30の側面方向に接続しているが、ホルダ130の内部で緩やかに湾曲させ、接続流路管60とは反対側にリード線群72,76と共に延在させている。このことから、脈動発生部30を把持して操作する際に接続チューブ15やリード線群72,76が邪魔にならず操作しやすいという効果もある。
なお、上述した実施形態1では、切換えスイッチ122において駆動波形として脈動発生部駆動電圧A、出力パルス数n、休止時間Iを組み合わせ設定する構成としたが、脈動発生部駆動電圧Aのみを変更する構造としてもよい。このような構造では、切換えスイッチ122として可変ボリュームを採用すれば連続性を有して脈動発生部駆動電圧Aを変更することができる。
また、連続する出力パルス数n、休止時間I、周期T(周波数)を単独で切換えるようにしてもよく、手術部位、特に切除硬度に対応した駆動波形を形成するために最適な駆動波形を選択すればよい。
また、脈動発生部30がホルダ130を備え、ホルダ130が把持部133及び抓み部131を備えており、ホルダ130及び把持部133を把持しやすい形状とすれば、操作性を一層向上させることができる。
また、実施形態1では、操作部材としてスイッチ121と切換えスイッチ122を設ける構造を例示しているが、どちらか一方を設ける構造としてもよい。
(実施形態2)
続いて、本発明の実施形態2に係る流体噴射装置について説明する。実施形態2は、駆動制御部110が、最適駆動波形のパラメタテーブルを含むことを特徴としている。図4,5を参照し、実施形態1との相違部分を中心に説明する。前述した実施形態1では、駆動制御部110には最適駆動パラメタ演算装置112が備えられているが、実施形態2では最適駆動パラメタ演算装置112に替わり最適駆動パラメタテーブルが備えられている(図示は省略する)。
表1、表2に最適駆動パラメタテーブルの1例を示している。表1は、比較的切除硬度が高い部分が多い手術に対応する最適駆動パラメタテーブルを表している。表2は、表1よりも切除硬度が低い部分が多い手術に対応する最適駆動パラメタテーブルを表している。
Figure 2009045167
Figure 2009045167
表1,2において、最適駆動パラメタテーブルには、切換えスイッチ122によって選択される切除硬度に対応する脈動発生部駆動電圧A、スペースが含まれる。ここで、スペースとは、休止時間Iを脈動が構成される正弦波の周期Tの倍数で表したものである。
従って、切換えスイッチ122を操作して最適な切除硬度を選択することにより、表1,2に表される最適駆動パラメタテーブルから切除硬度に対応した脈動発生部駆動電圧A、スペースにて形成される駆動波形を脈動発生部30に出力する。
なお、表1に表される最適駆動パラメタテーブルと、表2に表される最適駆動パラメタテーブルとを駆動制御部110にて設定する場合には、表1と表2とを駆動制御部110に設けられる操作部材を用いて、表1、表2それぞれの最適駆動パラメタテーブルを切換える。そして、切換えスイッチ122の選択表示部には切除硬度1,2,3の目盛を附しておき、この切除硬度1,2,3の中から所望の切除硬度を選択する。
また、表1に表される最適駆動パラメタテーブルと、表2に表される最適駆動パラメタテーブルとを切換えスイッチ122のみで選択する場合には、表1と表2の切除硬度に対応した連続番号(例えば、1〜6)を附しておき、この番号の中から所望の切除硬度を選択すればよい。
なお、表1,2に表される最適駆動パラメタテーブルは1例であって、さらに広い範囲の切除硬度に対応するように、いくつかの最適駆動パラメタテーブルを用意しても、1テーブルの中をさらに細分化してもよく、脈動発生部駆動電圧A及びスペース以外のパラメタ設定としてもよい。
このような実施形態2では、操作部材としての切換えスイッチ122を操作して最適駆動パラメタテーブルから切除硬度に対応した駆動波形を選択し出力することから、手術部位の切除硬度に対応した最適条件を容易に設定することができ、必要以上の強い液体噴射の危険性もなく、安全に手術を行うことができる。
また、最適駆動パラメタテーブルの選択をホルダ130に備えられる切換えスイッチ122にて行えるので、執刀医は手術途中においても手術の状況に対応した駆動波形を選択して、最適条件において手術を進行させることができる。
(実施形態3)
続いて、本発明の実施形態3に係る流体噴射装置について説明する。実施形態3は、駆動信号をON入力してから脈動発生部が駆動開始するまで、つまり液体噴射までの間に一定の時間間隔を有していることを特徴としている。構造は前述した実施形態1と同じなので図示を省略する。
実施形態3による流体噴射装置10は、駆動制御部110にタイマー機能を備え、スイッチ121をON操作してから一定の時間差を有して、例えば、1〜3秒後に、駆動信号が脈動発生部30に出力されるものである。なお、この時間間隔は限定されない。
流体噴射装置10におけるON/OFF操作は、執刀医の手元でスイッチ121を操作して行うことができる。そこで、スイッチ121をON入力してから脈動発生部30が駆動開始するまでに時間間隔を設けることにより、その時間間隔を執刀の準備時間とすれば、いきなり高圧の液体噴射されることによる手元の狂いが生ずることもなく、正確な手術部位に液体噴射を行えるという効果がある。
(実施形態4)
続いて、本発明の実施形態4に係る流体噴射装置について説明する。実施形態4は、スイッチ121をON入力してから指定された波高値に達するまでに一定の時間を設けていることを特徴としている。構造は前述した実施形態1と同じなので図示を省略する。
駆動波形の波高値、つまり脈動発生部駆動電圧Aは組織切除能力に影響する。そこで、スイッチ121をON操作してから、駆動制御部110(具体的には駆動制御回路111)にて、脈動発生部駆動電圧Aを組織切除ができない低い値から徐々に大きくしていき、一定の時間経過後(例えば、数秒後)に組織切除可能な脈動発生部駆動電圧Aに到達させる。なお、この段階における駆動波形のうち、周期T、連続する出力パルス数n、休止時間Iは一定にしている。
このようにすることで、いきなり組織切除可能な脈動発生部駆動電圧Aにするよりも、脈動発生部駆動電圧Aが低い段階で噴射位置を調整して、噴射強度を確認しながら手術を開始することができる。また、切除部位に対して正確な位置に流体を噴射することができる。
さらに、脈動発生部駆動電圧Aを徐々に大きくしていく段階で、波高値が高すぎる場合、または低すぎる場合には直ちに切換えスイッチ122を操作して脈動発生部駆動電圧Aの調整を行うことができる。
なお、前述した実施形態3と実施形態4とを組み合わせることが可能である。つまり、スイッチ121をON操作してから液体噴射までに一定の時間間隔を設けたうえ、徐々に脈動発生部駆動電圧Aを高めていく構成である。このようにすれば、一層、安全性と操作性を向上させることができる。
(実施形態5)
続いて、本発明の実施形態5に係る流体噴射装置について説明する。実施形態5は、駆動制御部が、脈動発生部の駆動状態を報知する報知発生手段(図示は省略する)を備えていることを特徴としている。構造は前述した実施形態1と同じなので図示を省略する。
報知発生手段としては、ブザー音のような報知音発生手段や光報知発生手段等がある。報知音発生手段を例にして説明する。報知音発生手段は駆動制御部110に設けられる。報知音発生手段による報知音は、液体噴射開始または停止(スイッチ121のON操作またはOFF操作のとき発生される。また、実施形態3によるスイッチ121をON操作してから液体噴射開始までに時間差がある場合には液体噴射直前に報知音を発生させることが好ましい。
また、実施形態4による徐々に脈動発生部駆動電圧Aを高めていく場合には、スイッチ121をON操作してから所定の脈動発生部駆動電圧Aに達するまでの間に間歇的な報知音を発生させる、または報知間隔を徐々に短くしていく、または徐々に報知音を大きくしていくようにしてもよい。さらに、これらの報知音を組み合わせてもよい。
なお、報知音を発する報知手段としてのブザーは、駆動制御部110または脈動発生部30に設ける構造とすることができる。または、執刀医が認知できる場所であれば設置場所は限定されない。
このような報知手段を備えることにより、執刀医に流体噴射装置10の駆動開始までの状態や、その変化を報知手段により知ることができ、手術開始の準備を促すことを可能にする。
本発明の実施形態1に係る流体噴射装置の概略構成を示す構成図。 本発明の実施形態1に係る脈動発生部の概略構造の1例を示す断面図。 本発明の実施形態1に係るホルダに装着された状態の脈動発生部の概略構造を示し、(a)は上ケースを透視した正面構成図、(b)は(a)のA―A切断面を示す断面構成図。 本発明の実施形態1に係る脈動発生部の駆動波形の1例を模式的に示す説明図。 本発明の実施形態1に係る駆動制御部の主たる構成を示す構成説明図。
符号の説明
10…流体噴射装置、15…接続チューブ、30…脈動発生部、52…流体室、60…接続流路管、110…駆動制御部、121…スイッチ、122…切換えスイッチ、130…ホルダ。

Claims (8)

  1. 流体室の容積を変更し、流体を一定の休止時間を有して繰り返し脈動噴射する流体噴射装置であって、
    接続チューブから供給される流体を接続流路管から脈動噴出させる脈動発生部と、
    前記脈動発生部とは別体に設けられ、前記脈動発生部に駆動信号を入力する駆動制御部と、
    前記脈動発生部に、前記駆動信号のON/OFF入力操作または前記駆動信号の駆動波形の切換え操作の少なくとも一方を行う操作部材と、
    が備えられていることを特徴とする流体噴射装置。
  2. 請求項1に記載の流体噴射装置において、
    前記駆動波形の波高値、連続する出力パルス数及び前記連続する出力パルスの間に設けられる休止時間のうち少なくとも1つが前記操作部材によって切換えられることを特徴とする流体噴射装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、
    前記駆動制御部が、前記駆動波形の切換え操作に基づき所望の流体噴射条件に対応する最適駆動波形を導き出す最適駆動パラメタ演算装置を含むことを特徴とする流体噴射装置。
  4. 請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、
    前記駆動制御部が、前記駆動波形の切換え操作に基づき所望の流体噴射条件に対応する最適駆動波形を表す最適駆動パラメタテーブルを含むことを特徴とする流体噴射装置。
  5. 請求項1または請求項2に記載の流体噴射装置において、
    前記操作部材によるON入力操作後から脈動発生部が駆動開始するまでの間に一定の時間間隔を有していることを特徴とする流体噴射装置。
  6. 請求項5に記載の流体噴射装置において、
    前記操作部材によるON入力操作後から徐々に前記駆動波形の波高値を大きくし、所定の波高値に達するまでに一定の時間間隔を設けていることを特徴とする流体噴射装置。
  7. 請求項1または請求項5に記載の流体噴射装置において、
    前記駆動制御部が、前記脈動発生部の駆動状態を報知する報知発生手段を備えていることを特徴とする流体噴射装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の流体噴射装置において、
    前記脈動発生部がホルダを備え、
    前記操作部材が前記ホルダに設けられていることを特徴とする流体噴射装置。
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