JP2009040856A - 軽油組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】動植物油脂および動植物油脂由来成分であるトリグリセリド含有炭化水素を原料として製造された環境低負荷型軽油基材を含有し、ライフサイクルCO排出特性および酸化安定性に優れ、かつ部材安定性に優れた軽油組成物を提供する。
【解決手段】水素の存在下、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に含硫黄炭化水素化合物を混合した被処理油と、所定の多孔性無機酸化物および活性金属を含有する触媒とを、所定の反応条件下で接触させることによって製造される環境低負荷型軽油基材10〜90容量%と脱ろう軽油基材90〜10容量%とを混合して得られる軽油基材95〜30容量%に、石油系水素化処理油を5〜70容量%混合して得られる、90%留出温度360℃以下、硫黄分10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸アルキルエステル分3.5質量%以下、全酸価0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、グリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下である軽油組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分であるトリグリセリド含有炭化水素を原料として製造された環境低負荷型軽油基材と原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材(以降、原油等から精製された脱ろう軽油基材ともいう。)、および原油等から精製された軽油、灯油留分を有する石油系水素化処理油を混合することによって得られる、ライフサイクルCO排出特性および酸化安定性に優れ、且つ低温流動性に優れた軽油組成物に関するものである。
従来、軽油の基材としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油に水素化処理や水素化脱硫処理を施したもの、原油の常圧蒸留装置から得られる直留灯油に水素化処理や水素化脱硫処理を施したもの等が知られている。従来の軽油組成物は上記軽油基材及び灯油基材を1種または2種以上配合することにより製造されている。また、これらの軽油組成物には、必要に応じてセタン価向上剤や清浄剤等の添加剤が配合される(例えば、非特許文献1参照。)。
特許文献1(特開2003−171670号公報)には、天然油脂類あるいはその誘導体及び食用廃油等を原料とする炭化水素類の製造方法を提供することを目的として、天然油脂、廃天然油脂またはその誘導体と、活性化した水素とを金属触媒、合金触媒、金属担持触媒および合金担持触媒からなる群より選ばれる触媒の存在下反応させることを特徴とする炭化水素類の製造方法が開示されている。
また特許文献2(特表2005−538204号公報)には、植物および/または動物および/または魚を起源とする生物学的原材料から調製される成分または成分の混合物を0.1〜99容量%および酸素を含む成分を0〜20容量%含むディーゼルエンジン用燃料組成物が開示されている。ここで両成分は、フィッシャー−トロプシュ工程からの粗油および/または画分に基づくディーゼル成分と混合されるとされている。
また、特許文献3(特開2004−189885号公報)には、脂肪酸を構成する炭素数が6から20までの飽和又は不飽和脂肪酸のメチルエステル又はエチルエステル、あるいはそれらの混合物からなる環境対応型ディーゼル燃料組成物が開示されている。
しかしながら、ライフサイクルCO排出特性、酸化安定性、低温性能といった要求性能を高水準で同時に達成できる高品質の燃料を設計することは非常に困難であり、なおかつ市販燃料油として求められている諸性能を十分満たし、また現実的な製造方法については開示されていない。
特開2003−171670号公報 特表2005−538204号公報 特開2004−189885号公報 小西誠一著,「燃料工学概論」,裳華房,1991年3月,p.136−144
ところで、近年、早急な大気環境改善及び環境負荷低減を目指して、内燃機関用燃料である軽油中の硫黄分及び芳香族含有量の低減が求められている。また同時に地球温暖化問題に対応するため、一層の燃費向上に貢献しかつ二酸化炭素(CO)削減に効果的な燃料性状が求められており、その解決手段の1つとして合成燃料や再生可能エネルギーであるバイオディーゼル燃料(以降BDFとも表記する。)を代替燃料として用いることが検討されている。
BDFは天然の動植物油脂を原料にした脂肪酸アルキルエステル混合物が主であり、排出ガス中のすす生成寄与度が大きいとされている芳香族化合物分や排出ガス後処理触媒への被毒等の影響が大きいとされている硫黄分をほとんど含まず、またそれ自身が分子中に酸素を持った含酸素化合物であるため、代替燃料の有力な候補として着目されている。また、植物由来であることから再生可能エネルギーと位置づけられているため、1997年に締結された国際間での二酸化炭素削減プロトコル、いわゆる京都議定書においてはBDF起因の二酸化炭素は排出量として計上されないルールである点も、BDFは政策的なメリットを有している。
しかしながら、天然の動植物油脂を原料とした脂肪酸アルキルエステルは本来重質な成分が多く、エンジン燃焼等における燃え切り性が悪くなり、燃焼時の未燃炭化水素排出を増加させる懸念がある。また、脂肪酸アルキルエステルは含酸素化合物であるため、燃焼時のアルデヒド類の排出を増加させる懸念がある。飽和脂肪酸基を多く有する脂肪酸アルキルエステルを多く含有するBDFの場合は、常温でも固体であるために燃料としての取り扱いに劣り、また低温時の流動性能も確保することが困難である。不飽和脂肪酸基を多く含有するBDFの場合は、その化学組成上酸化安定性に劣り、色相の劣化やスラッジの生成およびエンジン部材への悪影響が懸念されている。更には、脂肪酸アルキルエステルを精製する際の原料である脂肪酸グリセライド、アルキルアルコール及び副生成物であるグリセリン混合物はエンジン部材や燃料噴射系への悪影響が極めて懸念されているものである。
これらの傾向は既存の軽油等には見られなかった傾向であり、そのためBDF単独で使用する場合だけでなく、既存の軽油等に混合して使用する場合においても同様に問題となっており、BDF自体の性状に留意するだけでなく、既存軽油との混合使用時においても酸化安定性や低温性能、燃焼性等に従来以上に留意する必要がある。
従って、有害排気成分の低減と共にライフサイクルCO排出特性および酸化安定性に優れ、良好な低温性能を有する軽油組成物の提供に関して、天然の動植物油脂を原料にした脂肪酸アルキルエステル混合物であるBDFの使用では、これらの性能改善を同時に達成することはできない。さらに、これらのエンジン性能は他の燃料性状とも密接に関連するため、これらの要求性能を高水準で同時に達成できる高品質の燃料を設計することは非常に困難であり、なおかつ市販燃料油として求められている諸性能を十分満たし、また現実的な製造方法の検討を踏まえた例、知見は存在していない。
本発明は、かかる実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分であるトリグリセリド含有炭化水素を原料として製造された環境低負荷型軽油基材と原油等から精製された脱ろう軽油基材、および原油等から精製された軽油、灯油留分を有する石油系水素化処理油を混合することによって得られる、ライフサイクルCO排出特性および酸化安定性に優れ、且つ低温流動性に優れた軽油組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1は、水素の存在下、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に含硫黄炭化水素化合物を硫黄分が1質量ppm〜2質量%となるように混合した被処理油と、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる2種以上の元素を含んで構成される多孔性無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第6A族及び第8族の元素から選ばれる1種以上の金属を含有する触媒とを、水素圧力2〜13MPa、液空間速度0.1〜3.0h−1、水素/油比150〜1500NL/L、反応温度150〜480℃の条件下で接触させることによって製造される留分(環境低負荷型軽油基材)10〜90容量%と原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材90〜10容量%とを混合することで得られる軽油基材A95〜30容量%に、原油等から精製された軽油留分を水素化処理して得られる石油系水素化処理油(軽油基材B)を5〜70容量%混合することで得られる、90%留出温度が360℃以下、硫黄分が10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸アルキルエステル分3.5質量%以下、全酸価0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、グリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下であることを特徴とする軽油基材AおよびBからなる軽油組成物に関するものである。
また、本発明の第2は、水素の存在下、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分10〜90容量%と原油等から精製された軽油留分を有する石油系基材90〜10容量%とを混合した被処理油を、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる2種以上の元素を含んで構成される多孔性無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第6A族及び第8族の元素から選ばれる1種以上の金属を含有する触媒とを、水素圧力2〜13MPa、液空間速度0.1〜3.0h−1、水素/油比150〜1500NL/L、反応温度150〜480℃の条件下で接触させることによって製造される留分(環境低負荷型軽油基材)10〜90容量%に、原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材を90〜10容量%混合することで得られる軽油基材A’95〜30容量%に、原油等から精製された灯油留分を水素化処理して得られる石油系水素化処理油(軽油基材B’)を5〜70容量%混合することで得られる、90%留出温度が360℃以下、硫黄分が10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸アルキルエステル分3.5質量%以下、全酸価0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、グリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下であることを特徴とする軽油基材A’およびB’からなる軽油組成物に関するものである。
本発明によれば、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分であるトリグリセリド含有炭化水素を原料として製造された環境低負荷型軽油基材と原油等から精製された脱ろう軽油基材、および原油等から精製された軽油、灯油留分を有する石油系水素化処理油を混合することによって、従来の軽油組成物では実現が困難であったライフサイクルCO排出特性および酸化安定性に優れ、良好な低温性能を有する軽油組成物が提供される。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明にかかる環境低負荷型軽油基材は、所定の原料油を水素化処理して得られる低硫黄、低酸素の留分である。所定の原料油は、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に、含硫黄炭化水素化合物を硫黄分が1質量ppm〜2質量%となるように混合して得られる混合油(被処理油)、もしくは動植物油脂および/または動植物油脂由来成分10〜90容量%と原油等から精製された軽油留分を有する石油系基材90〜10容量%とを混合して得られる混合油(被処理油)である。
本発明における動植物油脂および/または動植物油脂由来成分とは、天然もしくは人工的に生産、製造される動植物油脂および/またはこれらの油脂を由来して生産、製造される成分をいう。動物油脂および動物油の原料としては、牛脂、牛乳脂質(バター)、豚脂、羊脂、鯨油、魚油、肝油等が挙げられ、植物油脂および植物油原料としては、ココヤシ、パームヤシ、オリーブ、べにばな、菜種(菜の花)、米ぬか、ひまわり、綿実、とうもろこし、大豆、ごま、アマニ等の種子部及びその他の部分が挙げられるが、これ以外の油脂、油であっても使用に問題はない。これらの原料油に関してはその状態が固体、液体であることは問わないが、取り扱いの容易さおよび二酸化炭素吸収能や生産性の高さから植物油脂、植物油を原料とする方が好ましい。また、本発明においては、これらの動物油、植物油を民生用、産業用、食用等で使用した廃油も雑物等の除去工程を加えた後に原料とすることができる。
動植物油脂および動植物油脂由来成分中に含有されるグリセライド化合物の脂肪酸部分の代表的な組成としては、飽和脂肪酸と称する分子構造中に不飽和結合を有しない脂肪酸である酪酸(CCOOH)、カプロン酸(C11COOH)、カプリル酸(C15COOH)、カプリン酸(C19COOH)、ラウリン酸(C1123COOH)、ミリスチン酸(C1327COOH)、パルミチン酸(C1531COOH)、ステアリン酸(C1735COOH)、及び不飽和結合を1つもしくは複数有する不飽和脂肪酸であるオレイン酸(C1733COOH)、リノール酸(C1731COOH)、リノレン酸(C1729COOH)、リシノレン酸(C1732(OH)COOH)等が挙げられる。自然界の物質におけるこれら脂肪酸の炭化水素部は一般に直鎖であることが多いが、本発明において本発明で規定する性状を満たす限りで、側鎖を有する構造、すなわち異性体であっても使用することができる。また、不飽和脂肪酸における分子中の不飽和結合の位置も、本発明において本発明で規定する性状を満たす限りで、自然界で一般に存在確認されているものだけでなく、化学合成によって任意の位置に設定されたものも使用することができる。
動植物油脂および動植物油脂由来成分はこれらの脂肪酸を1種または複数種有しており、原料によってその有する脂肪酸類は異なっている。例えば、ココヤシ油はラウリン酸、ミリスチン酸等の飽和脂肪酸を比較的多く有しているが、大豆油はオレイン酸、リノール酸等の不飽和脂肪酸を多く有している。
動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に混合して被処理油を形成する含硫黄炭化水素化合物としては特に制限されないが、具体的には、スルフィド、ジスルフィド、ポリスルフィド、チオール、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン及びこれらの誘導体などが挙げられる。被処理油に含まれる含硫黄炭化水素化合物は単一の化合物であってもよく、あるいは2種以上の混合物であってもよい。あるいはまた、前記の含硫黄炭化水素化合物の代わりに硫黄分を含有する石油系炭化水素留分を用いても良い。
含硫黄炭化水素化合物の配合割合は、被処理油の硫黄分が1質量ppm〜2質量%、好ましくは10質量ppm〜1質量%となるように配合する。
原料油(被処理油)の水素化条件としては、水素圧力2〜13MPa、液空間速度0.1〜3.0h−1、水素/油比150〜1500NL/Lの条件下で行われることが望ましく、水素圧力3〜12MPa、液空間速度0.2〜2.0h−1、水素/油比200〜1200NL/Lといった条件がより望ましく、水素圧力4〜10.5MPa、液空間速度0.25〜1.0h−1、水素油比300〜1000NL/Lといった条件がさらに望ましい。これらの条件はいずれも反応活性を左右する因子であり、例えば、水素圧力および水素/油比が前記下限値に満たない場合には反応性の低下や急速な活性低下を招く恐れがあり、水素圧力および水素/油比が前記上限値を超える場合には圧縮機等の過大な設備投資を要する恐れがある。液空間速度は低いほど反応に有利な傾向にあるが、前記下限未満の場合は極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となる傾向にあり、他方、前記上限を超えている場合は反応が十分進行しなくなる傾向にある。
反応温度は目的とする原料油重質留分の分解率あるいは目的とする留分収率を得るため150〜480℃の範囲が好ましく、望ましくは220〜400℃、さらに望ましくは260〜360℃の範囲に設定する。反応温度が前記下限値に満たない場合には、反応が十分に進行しなくなる恐れがあり、前記上限値を超える場合には過度に分解が進行し、液生成物留率の低下を招く傾向にある。
水素化処理の反応器の形式は、固定床方式であってもよい。すなわち、水素は原料油に対して向流または並流のいずれの形式をとることもでき、また、複数の反応塔を有し向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式を採用することができる。また、反応器は単独または複数を組み合わせてもよく、一つの反応器内部を複数の触媒床に区分した構造を採用しても良い。本発明において、反応器内で水素化処理された留出油は気液分離工程、精留工程等を経て所定の留分に分画される。このとき、反応に伴い生成する水分あるいは原料油に硫黄分が含まれている場合には硫化水素が発生する可能性があるが、複数の反応器の間や生成物回収工程に気液分離設備やその他の副生ガス除去装置を設置しても良い。
一般的に水素ガスは加熱炉を通過前あるいは通過後の原料油に随伴して最初の反応器の入口から導入するが、これとは別に、反応器内の温度を制御するとともに、できるだけ反応器内全体に渡って水素圧力を維持する目的で触媒床の間や複数の反応器の間に導入してもよい。このようにして導入される水素をクエンチ水素と呼称する。このとき、原料油に随伴して導入する水素に対するクエンチ水素との割合は望ましくは10〜60容量%、より望ましくは15〜50容量%である。クエンチ水素の割合が前記下限値より低い場合には後段反応部位での反応が十分進行しない恐れがあり、前記上限値を超える場合には反応器入口付近での反応が十分進行しない恐れがある。
水素化触媒の担体としては、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる2種以上の元素を含んで構成される多孔性の無機酸化物が用いられる。一般的にはアルミナを含む多孔性無機酸化物であり、その他の担体構成成分としてはシリカ、チタニア、ジルコニア、ボリア、マグネシアなどが挙げられる。望ましくはアルミナとその他構成成分から選ばれる少なくとも1種類以上を含む複合酸化物である。また、このほかの成分として、リンを含んでいてもよい。アルミナ以外の成分の合計含有量は1〜20重量%であることが好ましく、2〜15重量%であることがより望ましい。アルミナ以外の成分の合計含有量が1重量%に満たない場合は、十分な触媒表面積を得ることが出来ず、活性が低くなる恐れがあり、また20重量%を超える場合は、担体の酸性質が上昇し、コーク生成による活性低下を招く恐れがある。リンを担体構成成分として含む場合には、その含有量は、酸化物換算で1〜5重量%であることが望ましく、2〜3.5重量%がさらに望ましい。
アルミナ以外の担体構成成分である、シリカ、チタニア、ジルコニア、ボリア、マグネシアの前駆体となる原料は特に限定されず、一般的なケイ素、チタン、ジルコニウム、ボロン、マグネシウムを含む溶液を用いることができる。例えば、ケイ素についてはケイ酸、水ガラス、シリカゾルなど、チタンについては硫酸チタン、四塩化チタンや各種アルコキサイド塩など、ジルコニウムについては硫酸ジルコニウム、各種アルコキサイド塩など、ボロンについてはホウ酸など、マグネシウムについては硝酸マグネシウムなどを用いることができる。リンとしては、リン酸あるいはリン酸のアルカリ金属塩などを用いることができる。
これらのアルミナ以外の担体構成成分の原料は、担体の焼成より前のいずれかの工程において添加する方法が望ましい。例えば、予めアルミニウム水溶液に添加した後にこれらの構成成分を含む水酸化アルミニウムゲルとしてもよく、調合した水酸化アルミニウムゲルに添加してもよく、あるいは市販のアルミナ中間体やベーマイトパウダーに水あるいは酸性水溶液を添加して混練する工程に添加してもよいが、水酸化アルミニウムゲルを調合する段階で共存させる方法がより望ましい。これらのアルミナ以外の担体構成成分の効果発現機構は解明できていないが、アルミニウムと複合的な酸化物状態を形成していると思われ、このことが担体表面積の増加や、活性金属となんらかの相互作用を生じることにより、活性に影響を及ぼしていることが考えられる。
水素化触媒の活性金属としては、周期律表第6A族および第8族金属から選ばれる少なくとも一種類の金属を含有し、望ましくは第6A族および第8族から選択される二種類以上の金属を含有している。例えば、Co−Mo、Ni−Mo、Ni−Co−Mo、Ni−Wなどが挙げられ、水素化に際しては、これらの金属を硫化物の状態に転換して使用することが好ましい。
活性金属の含有量は、例えば、WとMoの合計担持量は、望ましくは酸化物換算で触媒重量に対して12〜35重量%、より望ましくは15〜30重量%である。WとMoの合計担持量が12重量%に満たない場合、活性点数の減少により活性が低下する可能性があり、35重量%を超える場合には、金属が効果的に分散せず、同様に活性の低下を招く可能性がある。また、CoとNiの合計担持量は、望ましくは酸化物換算で触媒重量に対して1.5〜10重量%、より望ましくは2〜8重量%である。CoとNiの合計担持量が1.5重量%未満の場合には充分な助触媒効果が得られず活性が低下してしまう恐れがあり、10重量%より多い場合には、金属が効果的に分散せず、同様に活性を招く可能性がある。
水素化触媒のいずれの触媒において、活性金属を触媒に含有させる方法は特に限定されず、通常の脱硫触媒を製造する際に適用される公知の方法を用いることができる。通常は、活性金属の塩を含む溶液を触媒担体に含浸する方法が好ましく採用される。また平衡吸着法、Pore−filling法、Incipient−wetness法なども好ましく採用される。例えば、Pore−filling法は、担体の細孔容積を予め測定しておき、これと同じ容積の金属塩溶液を含浸する方法であるが、含浸方法は特に限定されるものではなく、金属担持量や触媒担体の物性に応じて適当な方法で含浸することができる。
上記のようにして、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に含硫黄炭化水素化合物を混合した被処理油を、所定条件下に水素化処理することにより環境低負荷型軽油基材が製造される。
本発明の第1の軽油組成物は、前記で製造された環境低負荷型軽油基材10〜90容量%と原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材90〜10容量%とを混合することにより得られる軽油基材A95〜30容量%に、原油等から精製された軽油留分を水素化処理して得られる石油系水素化処理油(軽油基材B)を5〜70容量%混合して所定の性能を満たした軽油基材AおよびBからなる。
本発明における脱ろう軽油基材とは、軽油基材からワックス分を除去したものであり、具体的には炭素数20以上のノルマルパラフィン成分を15容量%以下としたものが好ましく、より好ましくは12容量%以下、さらに好ましくは10容量%以下である。炭素数20以上のノルマルパラフィン成分が上記範囲を超えると、製品軽油の低温流動性が不十分となり、曇り点や流動点が十分低下しない場合がある。また、脱ろう軽油基材の曇り点としては−20℃〜−5℃の範囲であることが好ましい。
水素化脱ろう処理の方法としては特に限定されず、例えばゼオライト系等の脱ろう触媒を用い、310℃〜380℃の範囲で3〜7MPaの圧力下、1.0〜2.0hr−1の液空間速度(LHSV)で行うことができる。
軽油基材Aにおける環境低負荷型軽油基材と脱ろう軽油基材の混合割合は、20〜80容量%:80〜20容量%が好ましく、40〜60容量%:60〜40容量%がより好ましい。
原油等から精製された軽油留分を有する石油系水素化処理油(軽油基材B)としては、原油の常圧蒸留装置から得られる直留軽油、常圧蒸留装置から得られる直留重質油や残査油を減圧蒸留装置で処理して得られる減圧軽油、減圧重質軽油あるいは脱硫重油を接触分解または水素化分解して得られる接触分解軽油または水素化分解軽油等の石油系炭化水素(軽油留分を有する石油系炭化水素)を水素化処理して得られる水素化処理軽油若しくは水素化脱硫軽油等が挙げられる。
これらの石油系水素化処理油は、所定の条件を満たす範囲で、複数の軽油留分基材及び灯油留分基材を配合して構成することができる。
上述の原料油(軽油留分を有する石油系炭化水素)の水素化処理条件は、通常、反応温度170〜320℃、水素圧力2〜10MPa、LHSV0.1〜2h−1、水素/油比100〜800NL/Lである。好ましくは反応温度175℃〜300℃、水素圧力2.5〜8MPa、LHSV0.2〜1.5h−1、水素/油比150〜600NL/Lであり、さらに好ましくは反応温度180℃〜280℃、水素圧力3〜7MPa、LHSV0.3〜1.2h−1、水素/油比150〜500NL/Lである。反応温度は低温ほど水素化反応には有利であるが、脱硫反応には好ましくない。水素圧力、水素/油比は高いほど脱硫、水素化反応とも促進されるが、経済的に最適点が存在する。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので不利である。
原料油を水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独でもまたは複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備を有していてもよい。
水素化処理装置の反応形式は、固定床方式が好ましく採用される。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることができ、また、複数の反応塔を有し、向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式が好ましい。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
水素化処理に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したものである。多孔質担体としては無機酸化物が挙げられる。具体的な無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、あるいはゼオライトがあり、本発明ではこのうちチタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトのうち少なくとも1種類とアルミナによって構成されているものがよい。その製造法は特に限定されないが、各元素に対応した各種ゾル、塩化合物などの状態の原料を用いて任意の調製法を採用することができる。さらには一旦シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナチタニア、シリカチタニア、アルミナボリアなどの複合水酸化物あるいは複合酸化物を調製した後に、アルミナゲルやその他水酸化物の状態あるいは適当な溶液の状態で調製工程の任意の工程で添加して調製してもよい。アルミナと他の酸化物との比率は多孔質担体に対して任意の割合を取り得るが、好ましくはアルミナが90質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、所定の水熱処理および/または酸処理によって超安定化したもの、あるいはゼオライト中のアルミナ含有量を調整したものを用いることができる。好ましくはフォージャサイト、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。Y型は超安定化したものが好ましく、水熱処理により超安定化したゼオライトは本来の20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成される。水熱処理条件は公知の条件を用いることができる。
水素化処理に用いる触媒の活性金属としては周期律表第6A族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはMoおよびWから選ばれる少なくとも1種類である。活性金属としては第6A族金属と第8族金属を組み合わせたものでよく、具体的にはMoまたはWと、CoまたはNiの組み合わせであり、例えばCo−Mo、Co−W、Ni−Mo、Ni−W、Co−Ni−Mo、Co−Ni−Wなどの組み合わせを採用することができる。金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
金属担持は、構成されている多孔質担体の調製全工程終了後に行ってもよく、多孔質担体調製中間工程における適当な酸化物、複合酸化物、ゼオライトに予め担持した後に更なるゲル調合工程あるいは加熱濃縮、混練を行ってもよい。
活性金属の担持量は特に限定されないが、触媒質量に対し金属量合計で0.1〜10質量%、好ましくは0.15〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
触媒は、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いるのが好ましい。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
上記のようにして、原油等から精製された軽油留分を水素化処理して石油系水素化処理油(軽油基材B)が製造される。
本発明の第1の軽油組成物は、前記軽油基材Aと前記軽油基材Bからなり、その混合割合は、軽油基材A:軽油基材Bが95〜30容量%:5〜70容量%であり、好ましくは90〜35容量%:10〜65容量%であり、より好ましくは85〜40容量%:15〜60容量%である。
また本発明の第2の軽油組成物は、前述の植物油脂および/または動植物油脂由来成分10〜90容量%に、前述の原油等から精製された軽油留分を有する石油系炭化水素(石油系基材)90〜10容量%とを混合した被処理油を、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる2種以上の元素を含んで構成される多孔性無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第6A族及び第8族の元素から選ばれる1種以上の金属を含有する触媒とを、水素圧力2〜13MPa、液空間速度0.1〜3.0h−1、水素/油比150〜1500NL/L、反応温度150〜480℃の条件下で接触させることによって製造される留分(環境低負荷型軽油基材)10〜90容量%に、原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材を90〜10容量%混合することで得られる軽油基材A’95〜30容量%に原油等から精製された灯油留分を水素化処理して得られる石油系水素化処理油(軽油基材B’)5〜70容量%混合し、所定の性能を満たした軽油基材A’およびB’からなる。
前述の植物油脂および/または動植物油脂由来成分10〜90容量%に、前述の原油等から精製された軽油留分を有する石油系炭化水素(石油系基材)90〜10容量%とを混合した被処理油を、水素化処理して環境低負荷型軽油基材を製造する際の水素化条件は、本発明の第1における動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に含硫黄炭化水素化合物を混合した被処理油を、水素化処理する際の条件と同様の条件が採用される。
植物油脂および/または動植物油脂由来成分と原油等から精製された軽油留分を有する石油系炭化水素(石油系基材)の混合割合は、好ましくは20〜80容量%:80〜20容量%であり、より好ましくは40〜60容量%:60〜40容量%である。
軽油基材A’における環境低負荷型軽油基材と脱ろう軽油留分の混合割合は、20〜80容量%:80〜20容量%が好ましく、40〜60容量%:60〜40容量%がより好ましい。
原油等から精製された灯油留分を有する石油系水素化処理油(軽油基材B’)としては、原油の常圧蒸留により得られる直留灯油、水素化分解軽油と共に製造される水素化分解灯油等の石油系炭化水素(灯油留分を有する石油系炭化水素)を水素化処理して得られる水素化処理灯油などが挙げられる。
上述の原料油(灯油留分を有する石油系炭化水素)の水素化処理条件は、通常、反応温度220〜350℃、水素圧力1〜6MPa、LHSV0.1〜10h−1、水素/油比10〜300NL/Lである。好ましくは反応温度250℃〜340℃、水素圧力2〜5MPa、LHSV1〜10h−1、水素/油比30〜200NL/Lであり、さらに好ましくは反応温度270℃〜330℃、水素圧力2〜4MPa、LHSV2〜10h−1、水素/油比50〜200NL/Lである。反応温度は低温ほど水素化反応には有利であるが、脱硫反応には好ましくない。水素圧力、水素/油比は高いほど脱硫、水素化反応とも促進されるが、経済的に最適点が存在する。LHSVは低いほど反応に有利であるが、低すぎる場合には極めて大きな反応塔容積が必要となり過大な設備投資となるので不利である。
原料油を水素化処理する装置はいかなる構成でもよく、反応塔は単独でもまたは複数を組み合わせてもよく、複数の反応塔の間に水素を追加注入してもよく、気液分離操作や硫化水素除去設備を有していてもよい。
水素化処理装置の反応形式は、固定床方式が好ましく採用される。水素は原料油に対して、向流または並流のいずれの形式をとることができ、また、複数の反応塔を有し、向流、並流を組み合わせた形式のものでもよい。一般的な形式としてはダウンフローであり、気液双並流形式が好ましい。反応塔の中段には反応熱の除去、あるいは水素分圧を上げる目的で水素ガスをクエンチとして注入してもよい。
水素化処理に用いる触媒は水素化活性金属を多孔質担体に担持したものである。多孔質担体としては無機酸化物が用いられる。具体的な無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、あるいはゼオライトがあり、本発明ではこのうちチタニア、ジルコニア、ボリア、シリカ、ゼオライトのうち少なくとも1種類とアルミナによって構成されているものがよい。その製造法は特に限定されないが、各元素に対応した各種ゾル、塩化合物などの状態の原料を用いて任意の調製法を採用することができる。さらには一旦シリカアルミナ、シリカジルコニア、アルミナチタニア、シリカチタニア、アルミナボリアなどの複合水酸化物あるいは複合酸化物を調製した後に、アルミナゲルやその他水酸化物の状態あるいは適当な溶液の状態で調製工程の任意の工程で添加して調製してもよい。アルミナと他の酸化物との比率は多孔質担体に対して任意の割合を取りうるが、好ましくはアルミナが90質量%以下、さらに好ましくは60質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。これらの条件、触媒は原料油の性状を満たす限りにおいて特に限定されるものではない。
ゼオライトは結晶性アルミノシリケートであり、フォージャサイト、ペンタシル、モルデナイトなどが挙げられ、所定の水熱処理および/または酸処理によって超安定化したもの、あるいはゼオライト中のアルミナ含有量を調整したものを用いることができる。好ましくはフォージャサイト、モルデナイト、特に好ましくはY型、ベータ型が用いられる。Y型は超安定化したものが好ましく、水熱処理により超安定化したゼオライトは本来の20Å以下のミクロ細孔と呼ばれる細孔構造に加え、20〜100Åの範囲に新たな細孔が形成される。水熱処理条件は公知の条件を用いることができる。
水素化処理に用いる触媒の活性金属としては周期律表第6A族金属から選ばれる少なくとも1種類の金属である。好ましくはMoおよびWから選ばれる少なくとも1種類である。活性金属としては第6A族金属と第8族金属を組み合わせたものでよく、具体的にはMoまたはWと、CoまたはNiの組み合わせであり、例えばCo−Mo、Co−W、Ni−Mo、Ni−W、Co−Ni−Mo、Co−Ni−Wなどの組み合わせを採用することができる。金属源としては一般的な無機塩、錯塩化合物を用いることができ、担持方法としては含浸法、イオン交換法など通常の水素化触媒で用いられる担持方法のいずれの方法も用いることができる。また、複数の金属を担持する場合には混合溶液を用いて同時に担持してもよく、または単独溶液を用いて逐次担持してもよい。金属溶液は水溶液でもよく有機溶剤を用いてもよい。
金属担持は、構成されている多孔質担体の調製全工程終了後に行ってもよく、多孔質担体調製中間工程における適当な酸化物、複合酸化物、ゼオライトに予め担持した後に更なるゲル調合工程あるいは加熱濃縮、混練を行ってもよい。
活性金属の担持量は特に限定されないが、触媒質量に対し金属量合計で0.1〜10質量%、好ましくは0.15〜5質量%、さらに好ましくは0.2〜3質量%である。
触媒は、水素気流下において予備還元処理を施した後に用いるのが好ましい。一般的には水素を含むガスを流通し、200℃以上の熱を所定の手順に従って与えることにより触媒上の活性金属が還元され、水素化活性を発現することになる。
上記のようにして、原油等から精製された灯油留分を水素化処理して石油系水素化処理油(軽油基材B’)が製造される。
本発明の第2の軽油組成物は、前記軽油基材A’と前記軽油基材B’からなり、その混合割合は、軽油基材A’:軽油基材B’が95〜30容量%:5〜70容量%であり、好ましくは90〜35容量%:10〜65容量%であり、より好ましくは85〜40容量%:15〜60容量%である。
本発明の軽油組成物は、前述の基材から構成され、90%留出温度が360℃以下、硫黄分が10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸アルキルエステル分3.5質量%以下、全酸価0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、グリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下である軽油組成物である。
本発明の軽油組成物の目詰まり点(CFPP)は、JIS2号軽油規格である−5℃以下を満たすことが必要であり、さらに、ディーゼル車のプレフィルタ閉塞防止の点から、−6℃以下であることが好ましく、−7℃以下であることがより好ましい。ここで目詰まり点とは、JIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
また、本発明の軽油組成物の流動点は、JIS2号軽油規格である−7.5℃以下を満たす必要がある。さらに、低温始動性ないしは低温運転性の観点、並びに電子制御式燃料噴射ポンプにおける噴射性能維持の観点から、−10℃以下であることが好ましい。ここで流動点とは、JIS K 2269「原油及び石油製品の流動点並びに石油製品曇り点試験方法」により測定される流動点を意味する。
本発明の軽油組成物の硫黄分は、エンジンから排出される有害排気成分低減と排ガス後処理装置の性能向上の点から10質量ppm以下であることが必要であり、好ましくは5質量ppm以下、より好ましくは3質量ppm以下、さらに好ましくは1質量ppm以下である。なお、ここでいう硫黄分とは、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を意味する。
本発明の軽油組成物の酸素分は、酸化安定性向上の観点から1質量%以下であることが必要であり、好ましくは0.8質量%以下、より好ましくは0.6質量%以下、さらに好ましくは0.4質量%以下、最も好ましくは0.2質量%以下である。なお、酸素分は一般的な元素分析装置で測定することができ、例えば、試料を白金炭素上でCOに転換し、あるいはさらにCOに転換した後に熱伝導度検出器を用いて測定することもできる。
本発明の軽油組成物の引火点は、45℃以上であることが好ましい。引火点が45℃に満たない場合には、安全上の理由により軽油組成物として取り扱うことができない。同様の理由により、引火点は54℃以上であることが好ましく、58℃以上であることがより好ましい。なお、本発明でいう引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点
試験方法」で測定される値を示す。
本発明の軽油組成物のセタン指数は、45以上であることが好ましい。セタン指数が45に満たない場合には、排出ガス中のPM、アルデヒド類、あるいはさらにNOxの濃度が高くなる傾向にある。また、同様の理由により、セタン指数は48以上であることが好ましく、51以上であることが最も好ましい。なお、本発明でいうセタン指数とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出される価を意味する。ここで、上記JIS規格におけるセタン指数は、一般的にはセタン価向上剤を添加していない軽油に対して適用されるが、本発明ではセタン価向上剤を添加した軽油組成物についても上記「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」を適用し、当該算出方法により算出される値をセタン指数として表す。
本発明の軽油組成物におけるセタン価は、好ましくは52以上であり、より好ましくは54以上であり、さらに好ましくは55以上である。セタン価が52に満たない場合には、排出ガス中のNOx、PM及びアルデヒド類の濃度が高くなりやすい。また、排ガス中の黒煙低減の観点から、セタン価は90以下であることが好ましく、88以下であることがより好ましく、85以下であることがさらに好ましい。また本発明の軽油組成物においては、必要に応じてセタン価向上剤を適量配合し、得られる軽油組成物のセタン価を向上させることができる。なお、ここでいうセタン価とは、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
本発明の軽油組成物の15℃における密度は、発熱量確保の点から、750kg/m以上であることが好ましく、760kg/m以上がより好ましく、770kg/m以上がさらに好ましい。また、当該密度は、NOx、PMの排出量を低減する点から、850kg/m以下であることが好ましく、845kg/m以下であることがより好ましく、840kg/m以下がさらに好ましい。なお、ここでいう密度とは、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を意味する。
本発明の軽油組成物は、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が好ましくは460μm以下、より好ましくは430μm以下、さらに好ましくは410μm以下となる潤滑性能を有することが望ましい。HFRR摩耗痕径(WS1.4)が460μmを超える場合は、特に分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増、ポンプ各部の摩耗増を引き起こし、排ガス性能、微小粒子性能の悪化のみならずエンジン自体が破壊される恐れがある。また、高圧噴射が可能な電子制御式燃料噴射ポンプにおいても、摺動面等の摩耗が懸念される。
なお、本発明でいうHFRR摩耗痕径(WS1.4)とは、社団法人石油学会から発行されている石油学会規格JPI−5S−50−98「軽油−潤滑性試験方法」により測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物における芳香族分には特に制限はないが、環境負荷低減効果を高め、NOx及びPM低減の観点から、20容量%以下であることが好ましく、より好ましくは19容量%以下、さらに好ましくは18容量%以下である。なお、本発明でいう芳香族分とは、社団法人石油学会により発行されている石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された芳香族分の容量百分率(容量%)を意味する。
本発明の軽油組成物の水分は、燃料タンク等への部材への悪影響、及びエステル化合物の加水分解抑制の観点から、300容量ppm以下であることが好ましく、250容量ppm以下であることがより好ましく、200容量ppm以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう水分とは、JIS K 2275「水分試験方法(原油及び石油製品)」で規定される水分である。
本発明の軽油組成物における蒸留性状としては、90容量%留出温度が360℃以下であることが必要であり、好ましくは340℃以下、より好ましくは330℃以下、さらに好ましくは320℃以下である。90容量%留出温度が360℃を超えると、PMや微小粒子の排出量が増加する傾向にある。また、90容量%留出温度は、好ましくは280℃以上、より好ましくは285℃以上、さらに好ましくは290℃以上、さらにより好ましくは295℃以上である。90容量%留出温度が280℃に満たないと、燃費向上効果が不十分となり、エンジン出力が低下する傾向にある。なお、ここでいう90容量%留出温度とは、JIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法−常圧法」に準拠して測定される値を意味する。
本発明の軽油組成物の30℃における動粘度については特に制限はないが、2.5mm/s以上であることが好ましく、2.7mm/s以上であることがより好ましく、2.9mm/s以上であることがさらに好ましい。当該動粘度が2.5mm/sに満たない場合は、燃料噴射ポンプ側の燃料噴射時期制御が困難となる傾向にあり、またエンジンに搭載された燃料噴射ポンプの各部における潤滑性が損なわれるおそれがある。また、本発明の軽油組成物の30℃における動粘度は5mm/s以下であることが好ましく、4.7mm/s以下であることがより好ましく、4.5mm/s以下であることがさらに好ましい。当該動粘度が5mm/sを超えると、燃料噴射システム内部の抵抗が増加して噴射系が不安定化し、排出ガス中のNOx、PMの濃度が高くなってしまう。なお、ここでいう動粘度とは、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を意味する。
本発明の軽油組成物における10%残油の残留炭素分については特に制限はないが、微小粒子やPM低減の観点、並びにエンジンに搭載される排ガス後処理装置の性能維持の観点から、0.1質量%以下であることが好ましく、0.08質量%以下であることがより好ましく、0.06質量%以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう10%残油の残留炭素分とは、JIS K 2270「原油及び石油製品−残留炭素分試験方法」により測定される10%残油の残留炭素分を意味する。
本発明の軽油組成物においては、エンジン部材への悪影響の観点から、全酸価は0.13mgKOH/g以下であることが必要である。全酸価は混合物内の遊離脂肪酸量を示しているため、この値が大きいと酸性化合物による部材への悪影響が懸念される。そのため、全酸価は0.10mgKOH/g以下であることが好ましく、0.08mgKOH/g以下であることがより好ましく、0.05mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。なお、ここでいう全酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」により測定される全酸価を意味する。
本発明の軽油組成物においては、エンジン燃焼等における燃え切り性の悪化の観点から脂肪酸アルキルエステル分は3.5質量%以下であることが必要である。好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。なお、ここでいう脂肪酸アルキルエステル分とはEN 14103に準拠して測定される脂肪酸アルキルエステル分を意味する。
本発明の軽油組成物においては、燃料噴射系への悪影響の観点から、メタノール分は0.01質量%以下であることが必要である。好ましくは0.008質量%以下、より好ましくは0.006質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下である。なお、ここでいうメタノール分とはJIS K 2536およびEN 14110に準拠して測定されるメタノール分を意味する。
本発明の軽油組成物においては、燃料噴射系への悪影響の観点から、グリセライド分は0.01質量%以下であることが必要である。好ましくは0.008質量%以下、より好ましくは0.006質量%以下、さらに好ましくは0.005質量%以下である。なお、ここでいうグリセライド分とはEN 14105に準拠して測定されるグリセライド分を意味する。
本発明の軽油組成物においては、必要に応じてセタン価向上剤を適量配合し、得られる軽油組成物のセタン価を向上させることができる。
セタン価向上剤としては、軽油のセタン価向上剤として知られる各種の化合物を任意に使用することができ、例えば、硝酸エステルや有機過酸化物等が挙げられる。これらのセタン価向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。
本発明においては、上述のセタン価向上剤の中でも硝酸エステルを用いることが好ましい。かかる硝酸エステルには、2−クロロエチルナイトレート、2−エトキシエチルナイトレート、イソプロピルナイトレート、ブチルナイトレート、第一アミルナイトレート、第二アミルナイトレート、イソアミルナイトレート、第一ヘキシルナイトレート、第二ヘキシルナイトレート、n−ヘプチルナイトレート、n−オクチルナイトレート、2−エチルヘキシルナイトレート、シクロヘキシルナイトレート、エチレングリコールジナイトレートなどの種々のナイトレート等が包含されるが、特に炭素数6〜8のアルキルナイトレートが好ましい。
セタン価向上剤の含有量は、組成物全量基準で500質量ppm以上であることが好ましく、600質量ppm以上であることがより好ましく、700質量ppm以上であることがさらに好ましく、800質量ppm以上であることが特に好ましく、900質量ppm以上であることが最も好ましい。セタン価向上剤の含有量が500質量ppmに満たない場合は、十分なセタン価向上効果が得られず、ディーゼルエンジン排出ガスのPM、アルデヒド類、さらにはNOxが十分に低減されない傾向にある。また、セタン価向上剤の含有量の上限値は特に限定されないが、軽油組成物全量基準で、1400質量ppm以下であることが好ましく、1250質量ppm以下であることがより好ましく、1100質量ppm以下であることがさらに好ましく、1000質量ppm以下であることが最も好ましい。
セタン価向上剤は、常法に従い合成したものを用いてもよく、また、市販品を用いてもよい。なお、セタン価向上剤と称して市販されているものは、セタン価向上に寄与する有効成分(すなわちセタン価向上剤自体)を適当な溶剤で希釈した状態で入手されるのが通例である。このような市販品を使用して本発明の軽油組成物を調製する場合には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
本発明の軽油組成物においては、上記セタン価向上剤以外の添加剤を必要に応じて配合することができ、特に、潤滑性向上剤および/または清浄剤が好ましく配合される。
潤滑性向上剤としては、例えば、カルボン酸系、エステル系、アルコール系およびフェノール系の各潤滑性向上剤の1種又は2種以上が任意に使用可能である。これらの中でも、カルボン酸系及びエステル系の潤滑性向上剤が好ましい。
カルボン酸系の潤滑性向上剤としては、例えば、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸及び上記カルボン酸の2種以上の混合物が例示できる。
エステル系の潤滑性向上剤としては、グリセリンのカルボン酸エステルが挙げられる。カルボン酸エステルを構成するカルボン酸は、1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、リノ−ル酸、オレイン酸、サリチル酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ヘキサデセン酸等がある。
潤滑性向上剤の配合量は、HFRR摩耗痕径(WS1.4)が前述の好ましい範囲内であれば特に制限されないが、組成物全量基準で35質量ppm以上であることが好ましく、50質量ppm以上であることがより好ましい。潤滑性向上剤の配合量が前記の範囲内であると、配合された潤滑性向上剤の効能を有効に引き出すことができ、例えば分配型噴射ポンプを搭載したディーゼルエンジンにおいて、運転中のポンプの駆動トルク増を抑制し、ポンプの摩耗を低減させることができる。また、配合量の上限値は、それ以上加えても添加量に見合う効果が得られないことから、組成物全量基準で150質量ppm以下であることが好ましく、105質量ppm以下であることがより好ましい。
清浄剤としては、例えば、イミド系化合物;ポリブテニルコハク酸無水物とエチレンポリアミン類とから合成されるポリブテニルコハク酸イミドなどのアルケニルコハク酸イミド;ペンタエリスリトールなどの多価アルコールとポリブテニルコハク酸無水物から合成されるポリブテニルコハク酸エステルなどのコハク酸エステル;ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、ビニルピロリドンなどとアルキルメタクリレートとのコポリマーなどの共重合系ポリマー、カルボン酸とアミンの反応生成物等の無灰清浄剤等が挙げられ、中でもアルケニルコハク酸イミド及びカルボン酸とアミンとの反応生成物が好ましい。これらの清浄剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
アルケニルコハク酸イミドを使用する例としては、分子量1000〜3000程度のアルケニルコハク酸イミドを単独使用する場合と、分子量700〜2000程度のアルケニルコハク酸イミドと分子量10000〜20000程度のアルケニルコハク酸イミドとを混合して使用する場合とがある。
カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するカルボン酸は1種であっても2種以上であってもよく、その具体例としては、炭素数12〜24の脂肪酸および炭素数7〜24の芳香族カルボン酸等が挙げられる。炭素数12〜24の脂肪酸としては、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、炭素数7〜24の芳香族カルボン酸としては、安息香酸、サリチル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、カルボン酸とアミンとの反応生成物を構成するアミンは、1種であっても2種以上であってもよい。ここで用いられるアミンとしては、オレイルアミンが代表的であるが、これに限定されるものではなく、各種アミンが使用可能である。
清浄剤の配合量は特に制限されないが、清浄剤を配合した効果、具体的には、燃料噴射ノズルの閉塞抑制効果を引き出すためには、清浄剤の配合量を組成物全量基準で30質量ppm以上とすることが好ましく、60質量ppm以上とすることがより好ましく、80質量ppm以上とすることがさらに好ましい。30質量ppmに満たない量を添加しても効果が現れない可能性がある。一方、配合量が多すぎても、それに見合う効果が期待できず、逆にディーゼルエンジン排出ガス中のNOx、PM、アルデヒド類等を増加させる恐れがあることから、清浄剤の配合量は300質量ppm以下であることが好ましく、180質量ppm以下であることがより好ましい。
なお、先のセタン価向上剤の場合と同様、潤滑性向上剤又は清浄剤と称して市販されているものは、それぞれ潤滑性向上または清浄に寄与する有効成分が適当な溶剤で希釈された状態で入手されるのが通例である。このような市販品を本発明の軽油組成物に配合する際には、軽油組成物中の当該有効成分の含有量が上述の範囲内となることが好ましい。
また、本発明における軽油組成物の性能をさらに高める目的で、後述するその他の公知の燃料油添加剤(以下、便宜上「その他の添加剤」という。)を単独で、または数種類組み合わせて添加することもできる。その他の添加剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルケニルコハク酸アミドなどの低温流動性向上剤;フェノール系、アミン系などの酸化防止剤;サリチリデン誘導体などの金属不活性化剤;ポリグリコールエーテルなどの氷結防止剤;脂肪族アミン、アルケニルコハク酸エステルなどの腐食防止剤;アニオン系、カチオン系、両性系界面活性剤などの帯電防止剤;アゾ染料などの着色剤;シリコン系などの消泡剤等が挙げられる。
その他の添加剤の添加量は任意に決めることができるが、添加剤個々の添加量は、軽油組成物全量基準でそれぞれ好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.2質量%以下である。
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1〜3および比較例1〜3)
表1に示す性状を有する植物油脂に含硫黄炭化水素化合物としてジメチルジサルファィド(DMDS)を5質量ppm添加した被処理油を表2に示す反応条件で反応させ、表3に示す環境低負荷型軽油基材を調製した。
また、表1に示す性状を有する植物油脂80容量%に表1に示す性状を有する石油系軽油基材20容量%を混合した被処理油を表2に示す反応条件で反応させ、表3に示す環境低負荷型軽油基材を調製した。
また、表1に示す植物油脂をエステル化して得た脂肪酸アルキルエステルの性状を表3に示す。これらの脂肪酸アルキルエステルはメタノールとの反応により得られたメチルエステル化合物であり、ここではアルカリ触媒(ナトリウムメチラート)の存在下で70℃、1時間程度の撹拌を行い、アルキルアルコールと直接反応させてエステル化合物を得るエステル交換反応を用いた。
表3に示した環境低負荷型軽油基材、植物油脂のメチルエステル化物および石油系基材である石油系水素化精製油、脱ろう軽油基材を調合して軽油組成物を製造した(実施例1〜3および比較例1〜3)。
調合した軽油組成物の調合比率、及びこの調合した軽油組成物に対して、15℃における密度、30℃における動粘度、引火点、硫黄分、酸素分、蒸留性状、芳香族分、セタン価及びセタン指数、10%残油の残留炭素分、水分、目詰まり点、酸化安定性試験(加速試験前後の酸価)を測定した結果、またライフサイクルCO排出量の計算結果を表4に示す。
なお、燃料油の性状は以下の方法により測定した。
密度は、JIS K 2249「原油及び石油製品の密度試験方法並びに密度・質量・容量換算表」により測定される密度を指す。
動粘度は、JIS K 2283「原油及び石油製品−動粘度試験方法及び粘度指数算出方法」により測定される動粘度を指す。
硫黄分は、JIS K 2541「硫黄分試験方法」により測定される軽油組成物全量基準の硫黄分の質量含有量を指す。
酸素分は元素分析法により測定した。
蒸留性状は、全てJIS K 2254「石油製品−蒸留試験方法」によって測定される値である。
芳香族分は、社団法人石油学会により発行されている石油学会法JPI−5S−49−97「炭化水素タイプ試験方法−高速液体クロマトグラフ法」に準拠され測定された芳香族含有量の容量百分率(容量%)を意味する。
水分は、JIS K 2275「水分試験方法(原油及び石油製品)」で規定される水分を意味する。
引火点はJIS K 2265「原油及び石油製品引火点試験方法」で測定される値を
示す。
全酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」により測定される全酸価を意味する。
目詰まり点とはJIS K 2288「軽油−目詰まり点試験方法」により測定される目詰まり点を指す。
セタン指数は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「8.4変数方程式を用いたセタン指数の算出方法」によって算出した価を指す。なお、セタン価は、JIS K 2280「石油製品−燃料油−オクタン価及びセタン価試験方法並びにセタン指数算出方法」の「7.セタン価試験方法」に準拠して測定されるセタン価を意味する。
(ライフサイクルCO算出)
ライフサイクルCOは、ディーゼルエンジン搭載車両における軽油組成物の燃焼に伴い発生したCOと、採掘から車両タンクへの燃料給油までに発生したCOと分けて算出した。
燃焼に伴い発生したCO(以下、「Tank to Wheel CO」という。)は、上記車両試験を行ったときのCO排出量、走行燃費及び燃料密度に基づいて、各軽油組成物単位発熱量当たりの排出量として算出した。
また、採掘から車両タンクへの燃料給油までに発生したCO(以下、「Well to Tank CO」という。)は、原料及び原油ソースの採掘、輸送、加工、配送、車両への給油までの一連の流れにおけるCO排出量の総和として算出した。なお、「Well to Tank CO」の算出にあたっては、下記(1B)〜(5B)に示す二酸化炭素の排出量を加味して演算を行った。かかる演算に必要となるデータとしては、本発明者らが有する製油所運転実績データを用いた。
(1B)各種処理装置、ボイラー等設備の燃料使用に伴う二酸化炭素の排出量。
(2B)水素を使用する処理においては、水素製造装置における改質反応に伴う二酸化炭素の排出量。
(3B)接触分解装置等の連続触媒再生を伴う装置を経由する場合は、触媒再生に伴う二酸化炭素の排出量。
(4B)軽油組成物を、横浜で製造又は陸揚げし、横浜から仙台まで配送し、仙台で車両に給油したときの二酸化炭素の排出量。
(5B)動植物油脂および動植物油脂由来の成分は原産地をマレーシアおよびその周辺地域とし、製造を横浜で行うとした際の二酸化炭素の排出量。
なお、動植物油脂および動植物油脂由来の成分を使用した場合、いわゆる京都議定書においてはこれらの燃料に起因する二酸化炭素は排出量として計上されないルールが適用される。本計算においては、燃焼時に発生する「Tank to Wheel CO」に対してこれを適用させた。
このようにして算出した「Tank to Wheel CO」と「Well to
Tank CO」、並びにこれらの総和であるライフサイクルCO(LC)の各排出量をそれぞれ表4に示す。なお、比較例1を100とし、各結果を相対的に比較、定量化した数値もあわせて示す。
(酸化安定性試験)
115℃、酸素バブリング下、16時間の条件で燃料を加速劣化させ、試験前後での酸化を測定した。なお、ここでいう全酸価とは、JIS K 2501「石油製品及び潤滑油−中和価試験方法」により測定される全酸価を意味する。
実施例および比較例で使用した軽油組成物は、表4に示すとおり、水環境低負荷型軽油基材、植物油脂のメチルエステル化物および石油系基材である石油系水素化処理油を特定の割合で調合して製造したものである。
表4から明らかなように、環境低負荷型軽油基材、および環境低負荷型軽油基材と石油系水素化処理油とを混合して使用し、本発明で規定される範囲内で配合した実施例1〜3においては、95%留出温度が360℃以下、硫黄分が10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸メチルエステル分3.5質量%以下、全酸価増加量0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、かつグリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下という性状を満足し、且つライフサイクルでの二酸化炭素排出量が少ない軽油組成物を容易にかつ確実に得ることができた。一方、上記特定の環境低負荷型軽油基材を用いずに軽油組成物を調製した比較例1〜3においては、本発明の目的とする軽油組成物は必ずしも得られない。
Figure 2009040856
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Claims (2)

  1. 水素の存在下、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分に含硫黄炭化水素化合物を硫黄分が1質量ppm〜2質量%となるように混合した被処理油と、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる2種以上の元素を含んで構成される多孔性無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第6A族及び第8族の元素から選ばれる1種以上の金属を含有する触媒とを、水素圧力2〜13MPa、液空間速度0.1〜3.0h−1、水素/油比150〜1500NL/L、反応温度150〜480℃の条件下で接触させることによって製造される留分(環境低負荷型軽油基材)10〜90容量%と原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材90〜10容量%とを混合することで得られる軽油基材A95〜30容量%に、原油等から精製された軽油留分を水素化処理して得られる石油系水素化処理油(軽油基材B)を5〜70容量%混合することで得られる、90%留出温度が360℃以下、硫黄分が10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸アルキルエステル分3.5質量%以下、全酸価0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、グリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下であることを特徴とする軽油基材AおよびBからなる軽油組成物。
  2. 水素の存在下、動植物油脂および/または動植物油脂由来成分10〜90容量%と原油等から精製された軽油留分を有する石油系基材90〜10容量%とを混合した被処理油を、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、ホウ素、チタン及びマグネシウムから選ばれる2種以上の元素を含んで構成される多孔性無機酸化物並びに該多孔性無機酸化物に担持された周期律表第6A族及び第8族の元素から選ばれる1種以上の金属を含有する触媒とを、水素圧力2〜13MPa、液空間速度0.1〜3.0h−1、水素/油比150〜1500NL/L、反応温度150〜480℃の条件下で接触させることによって製造される留分(環境低負荷型軽油基材)10〜90容量%に、原油等を常圧蒸留装置で処理して得られる軽油留分を更に水素化脱ろう処理して得られる脱ろう軽油基材を90〜10容量%混合することで得られる軽油基材A’95〜30容量%に、原油等から精製された灯油留分を水素化処理して得られる石油系水素化処理油(軽油基材B’)を5〜70容量%混合することで得られる、90%留出温度が360℃以下、硫黄分が10質量ppm以下、酸素分1質量%以下、脂肪酸アルキルエステル分3.5質量%以下、全酸価0.13mgKOH/g以下、メタノール分0.01質量%以下、グリセライド分0.01質量%以下、目詰まり点−5℃以下であることを特徴とする軽油基材A’およびB’からなる軽油組成物。
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