JP2009039439A - 医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブ - Google Patents

医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブ Download PDF

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Abstract

【課題】医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブにおいて、生体に挿入または接触させて用いるのに好適となり、低摩擦性が得られるようにする。
【解決手段】直径φが30nm以上200nm以下のCNT2Bをベースマトリックス2A中に分散させてなる複合材料2を用いて、医療用チューブ1を構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブに関する。例えば、生体に挿入または接触させて用いる各種医療用器具に用いる医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブに関する。
従来、医療用チューブ、例えば、生体内に挿入され湾曲された内視鏡のチャンネル管を通じて生体内に挿入されるカテーテル等においては、チャンネル管との挿入性を好適に確保するため、また生体組織を損傷させず目的部位まで確実に挿入することを可能とするため、チューブ外面の低摩擦性とチューブの柔軟性とが要求されている。また、カテーテル内に挿入されたガイドワイヤ等により生体内の目的部位まで誘導される医療用チューブにおいては、カテーテルとガイドワイヤとの摺動抵抗を低減し、ガイドワイヤの操作性を高めるために、チューブ内腔面の低摩擦性も要求されている。
例えば、特許文献1には、このような低摩擦性を満足するカテーテルチュ−ブ等の医療用チューブとして、樹脂とこの樹脂で構成されるマトリックス中に分散されたナノカーボンとからなる複合材料から形成される層を少なくとも含む医療用チューブが提案されている。
特開2005−13495号公報
しかしながら、上記のような従来の医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブには以下のような問題があった。
特許文献1に記載の技術では、低摩擦性を得るために、チューブ表面に繊維状のカーボンナノチューブによって微細な凹凸を形成する構成が開示されており、医療用チューブとして好適となる表面粗さが開示されている。そして、カーボンナノチューブの直径φは最大2000nmであり、この直径の範囲では、繊維長さは数十μm以上であってもよいことが記載されている。また、カーボンナノチューブの含有量が40wt%を越えると、樹脂マトリックスに対してカーボンナノチューブが保持されにくくなり、複合材料の破断強度が低下することが開示されている。
ところが、このような複合材料は、低摩擦性を有するといえども、表面は摩耗することが考えられる。また、カーボンナノチューブは、樹脂マトリックスに埋め込まれているため、含有量が40wt%以下でも表面から離脱する場合がある。
このため、医療用複合材料、医療用チューブとしては、表面が摩耗したり表面から離脱したりしてカーボンナノチューブが生体内に残留した場合に安全性が確保されることが重要となる。ところが、特許文献1には、安全性を確保しつつ低摩擦性を得るための構成については全く開示されていない。
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、生体に挿入または接触させて用いるのに好適となる低摩擦性の医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブを提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本発明の医療用複合材料は、直径φが30nm以上200nm以下のカーボンナノチューブ(以下、CNTと略称する)を高分子材料中に分散させてなる構成とする。
この発明によれば、直径φが30nm以上200nm以下のCNTを高分子材料中に分散させるので、生体に対して低摩擦となり、例えば、摩耗などによってCNTが離脱しても生体内に蓄積したり残留したりしないようにすることができる。
CNTの直径φが30nmより小さいと、生体内でCNTが離脱した場合、生体内で移動しやすくなり、内臓などに蓄積されやすくなる。
CNTの直径φが200nmより大きいと、生体内でCNTが離脱した場合、生体内から排泄されにくくなり、生体内に残留しやすくなる。
また、本発明の医療用複合材料では、前記カーボンナノチューブのカーボン純度は、95wt%以上、かつ前記カーボンナノチューブの残留重金属濃度は、3000ppm以下であることが好ましい。
この場合、CNTが生体内に蓄積、残留した場合でも、生体に悪影響を与えないようにすることができる。
本発明の医療用チューブは、生体に挿入または接触させて用いる医療用チューブであって、チューブ外表面および内表面の少なくともいずれかが、本発明の医療用複合材料で形成された構成とする。
この発明によれば、チューブ外表面および内表面の少なくともいずれかを本発明の医療用複合材料で形成するので、このような医療用複合材料で形成されたチューブ外表面またはチューブ内表面を生体に挿入または接触させた場合にも生体に対して低摩擦となるとともに、摩耗などによってCNTが離脱しても、生体に対して悪影響を与えないようにすることができる。
また、本発明の医療用チューブでは、チューブ断面が単層構造とされ、前記医療用複合材料の前記カーボンナノチューブの含有量が、40wt%以下であることが好ましい。
この場合、チューブ断面が単層構造の場合に医療用複合材料のCNTの含有量を40wt%以下とするので、医療用チューブの柔軟性が向上し、良好な最小曲げ半径Rを有する医療用チューブを形成することができる。
また、本発明の医療用チューブでは、カーボンナノチューブを含有しないチューブ基体の外表面および内表面にそれぞれ前記医療用複合材料の被覆層が形成され、該被覆層のそれぞれにおける前記医療用複合材料の前記カーボンナノチューブの含有量が、75wt%以下であることが好ましい。
この場合、医療用複合材料のCNTの含有量を75wt%以下とするので、低摩擦性が良好となり、CNTを含む医療用複合材料とCNTを含有しないチューブ基体との多層構造とするため、医療用チューブの柔軟性が向上し、良好な最小曲げ半径Rを有する医療用チューブを形成することができる。
本発明の医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブによれば、生体に対して低摩擦となり、仮にチューブ内のCNTが離脱しても生体内の蓄積性や残留性の特性が良好となるので、生体に挿入または接触させて用いるのに好適となるという効果を奏する。
以下では、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、実施形態が異なる場合でも共通する部材には、共通の符号を付して説明は省略する。
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係る医療用複合材料およびそれを用いた医療用チューブについて説明する。
図1(a)、(b)は、本発明の第1の実施形態に係る医療用複合材料を用いた医療用チューブの模式的な正面図および側面図である。
本実施形態の医療用チューブ1は、図1(a)、(b)に示すように、内径D、外径Dの円環状断面を有する長さLのチューブ部材からなり、生体内に挿入したり、生体に接触させたりして医療用に用いるものである。医療用チューブ1の具体例としては、例えば、カテーテルチューブ、ステント用チューブ、内視鏡の挿入部に用いる内視鏡用チューブなどを挙げることができる。
医療用チューブ1の形状は、これらの具体的な適用例に応じて必要な寸法に設定することができる。
このような医療用チューブ1では、外表面1aおよび内表面1bの少なくともいずれかが生体やカテーテルなどと接触して相対移動するため、適宜の摺動特性を備える必要がある。
本実施形態の医療用チューブ1は、ベースマトリックス2AにCNT2Bを分散して低摩擦性を備えるようにした複合材料2を、円環状に成形して、複合材料2による単層構造のチューブ部材を構成したものである。このように、外表面1aおよび内表面1bに、CNT2Bが分散配置されることで、表面に微細な凹凸を形成し、表面の低摩擦性を実現している。
ベースマトリックス2Aとしては、生体に接触させて使用可能な適宜の高分子材料を採用することができる。例えば、ポリエステルエラストマー、ポリオレフィン、オレフィン系共重合体、ポリオレフィンエラストマー、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などのビニル系ポリマー、ポリアミドエラストマー(PAE)、ポリイミド、ポリスチレン、スチレン・エチレン-ブチレン・スチレン(SEBS)樹脂、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリアリレート、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン(POM)、ポリビニルアルコール(PVA)、フッ素樹脂(ETFE、PFA、PTFE)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニルケン化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、セルロースアセテート、ビニルポリスルホン、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンオキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などの各種熱可塑性樹脂、加硫ゴム、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタンなどの熱硬化または架橋性樹脂などの中から、使用条件や生体に対する適性を考慮して選択することができる。また、これらの組合せからなる高分子材料も採用することができる。
CNT2Bとしては、例えば、単層、二層、多層などの円環状の断面構造を有するCNTである。CNT2Bの長さは特に限定されないが、生体内の移動性を考慮して、CNT外径φは、30nm以上かつ200nm以下とする。
このようなCNT2Bの製造方法としては、特に限定されない。例えば、アーク放電法、レーザ蒸発法、触媒気相成長法(CCVD)などを挙げることができる。CCVDは、高純度のCNTを効率よく製造できるため量産性が高いので特に好ましい。
本実施形態では、CCVDの一種である浮遊流動反応法を採用している。
浮遊流動反応法は、炭化水素ガスと、重金属からなる触媒粒子とを反応雰囲気に浮遊せしめることにより、触媒粒子を核としてCNTを成長させる周知の製造方法である。触媒粒子の径と同程度の外径を有するCNTが得られるところから、CNT外径の制御性に優れる製造方法であり、本実施形態のように、CNT外径を制限する場合でも、効率よく量産することが可能である。
CNT2Bのアスペクト比、すなわち、外径に対する長さの比は、上述のように特に限定されない。ただし、浮遊流動反応法など重金属の触媒粒子を用いる場合には、アスペクト比が小さすぎると、例えば、CNTに対する触媒粒子である重金属の割合が大きくなるため、一定のCNT含有量に対して、残留重金属濃度が高くなってしまう。
そのため、本実施形態では、反応条件を調整してCNTの成長長さを制御することで、アスペクト比を調整している。これにより残留重金属濃度を所定範囲に収めるようにしている。
CNT2Bの残留重金属濃度の所定範囲としては、本実施形態では、生体の健康面から、3000ppm以下とすることが好ましい。後述する具体例では、アスペクト比が10〜100の間に分布する状態で、このような残留重金属濃度が達成できている。
ここで、重金属とは、生体の健康に影響のある重金属を意味しており、例えば、Fe、Ni、Co、Moなどを挙げることができる。
また、CNT2Bのカーボン純度は、本実施形態では、生体の健康面から95wt%以上としている。浮遊流動反応法では、炭化水素を原料としているため、反応条件によってはある程度の有機不純物が発生し、この有機不純物の中には生体の健康に影響を与える化合物も含まれると考えられる。このため、カーボン純度を高めることで、このような有機不純物の量を許容範囲内に収めることができる。
次に、このような医療用チューブ1の作用について、具体的な実験結果に基づいて説明する。
医療用チューブ1は、用途に応じて、生体内に円滑に挿入したり、所望の形状に湾曲させたり、カテーテルを滑らかに挿通させたりするために、低摩擦性や柔軟性(湾曲性)などが求められるが、生体と接触して用いられることから生体に対する安全性を確保することが重要となる。
CNTは、材質面では純カーボンである限りにおいて生体に影響しないと考えられるが、機械的、化学的に安定した微細繊維状の物質であるため、万一、生体内に残留した場合、長期的に健康に影響する可能性がある。
そこで、発明者は、鋭意、研究を進めたところ、CNTの生体内の残留特性には、CNT外径が大きく寄与していることが判明し、本発明に至ったものである。
[実験例1]
まず、CNT外径と体内の残留特性との関係について、ラットにCNT外径を変えたCNTを注入し、ラット体内における移動特性、残留特性について調べた実験について説明する。
本実験では、浮遊流動反応法によって、外径φが15nm、25nm、30nm、75nm、150nm、200nm、225nm、350nm、600nmのCNTを製造した。それぞれは、ラットの健康が、カーボン純度、残留重金属の影響を受けないように、カーボン純度は99.5wt%、重金属濃度は1500ppmに設定した。
なお、この実験条件はCNTの生体内の挙動を短時間で調べるためのもので、このCNTの注入量(約15mg)は、医療用チューブ1から離脱する可能性のあるCNTの量に対してあり得ないほど過剰に設定されている。例えば、ポリエステルエラストマーにCNTを10wt%含有させた、外径Dが3mm、内径Dが2mm、長さ2mの医療用チューブ1は、CNTを1g含んでいるが、15mgのCNTを離脱させるには、摩耗が医療用チューブ1の全長全周に亙り層厚の1.5%に達した状態でなければならず、これは現実には起こりえない使用条件である。
そして、これらのCNTをそれぞれ生理食塩水に30wt%分散させた溶液50mlを調製し、この溶液を各10匹のラットに対して、食道より注入し、10日間放置した。
その後、ラットの脳、心臓、大腸の細胞を採取し、パラフィンに包埋し、ミクロトームにより3μm程度に薄切りし、脳細胞に対してはAzan染色、心臓に対しては、ポディアン染色、大腸に対してはHE染色で染色後、電子顕微鏡にて、CNTの有無を確認した。
この実験結果を表1に示す。
Figure 2009039439
表1の実験結果によれば、CNT外径φが30nm〜600nmでは、CNTは、ラットの心臓および脳への移動が確認されず、15nm、25nmでは、心臓および脳にCNTが検出され、CNTの移動が確認された。また、CNT外径φが15nm〜200nmでは、大腸での残留が確認されず、225nm、350nm、600nmでは、大腸での残留が検出された。
CNT外径が小さい場合にCNTが心臓、脳へ移動しているのは、CNT外径が小さいために、CNTが細胞に容易に貫入できるため、細胞内を移動したり、血管に侵入したりし易いためだと考えられる。
CNT外径が大きい場合にCNTが大腸に残留するのは、CNT外径が大きいことで細胞への貫入性が悪くなって、内臓を移動できなくなるものの、大腸内壁には引っ掛かりやすくなるので、体外へは排泄できなくなるためだと考えられる。
このような実験結果に基づいて、本実施形態の医療用チューブ1では、CNT2BのCNT外径φを30nm〜200nmに設定している。これにより、仮に、使用時に医療用チューブ1の表面からCNTが離脱したとしても、生体内の移動や残留が起こらないため、生体に挿入または接触させて用いるのに好適となる。
[実験例2]
実験例2では、このようなCNT2Bにおけるカーボン純度と残留重金属濃度との影響について調べるため、CNT外径φを、30nm、200nmに固定し、それぞれ、カーボン純度(wt%)を、90、92.5、95、97.5、99.5に、また残留重金属濃度(ppm)を、1500、2000、3000、3250、4500、6000に設定して、各組合せにおいて、これらのCNTをそれぞれ生理食塩水に30wt%分散させた溶液50mlを調製し、この溶液を各10匹のラットに対して、食道より注入し、10日間放置した。
そして、各ラットの体温、心拍数、体重、血圧、その他症状(下痢、嘔吐、震え、衰弱、異常な行動)が平常値と変化したか、変化していないかを観察し、安全性の指標として、安全性(%)=正常なラット数/ラット総数を評価した。
この実験結果について、表2、表3に示す。
Figure 2009039439
Figure 2009039439
本実験例の条件では、CNT外径をCNTが生体内を移動したり生体内に残留したりしない限界値に設定しているため、CNTが生体内に残留することによる問題は発生しないはずであるが、不純物や重金属を含むCNTが多量に注入されることで、生体の健康に影響し、安全性評価が低下している。
表2、3のいずれの結果でも、カーボン純度95wt%以上、残留重金属濃度3000ppm以下の条件において、安全性評価が100%となっている。
このため、このような条件下であれば、万一、CNTが医療用チューブ1から離脱して、CNTの不純物や重金属が生体内に摂取されても、生体に対して安全である。
[実験例3]
次に、CNT2Bを用いた医療用チューブ1の摩擦特性、曲げ特性を評価するため、ベースマトリックス2Aとして、ポリエステルエラストマーを用い、CNT2Bの含有量を変えて試料1〜10を作成した。
ここで、CNT2Bは、CNT外径φを40nm、カーボン純度が99.5wt%、残留重金属濃度が2000ppmとし、試料1〜10は、CNT2Bの含有量(wt%)が0.1、0.3、0.5、10、30、40、50、75、80となるように設定した。ただし、試料1は複合材料ではなく、比較例として用意したものである。
これらの試料を用いて、押出し成形により外径Dが3mm、内径Dが1.5mmのチューブを作製した。
作製したチューブに対して、ゴム硬度D用の硬度計(デュロメータ タイプD、JIS K 6253)によりチューブの硬度を測定し、レーザ顕微鏡によりチューブの表面粗さを計測した。
また、外径Dが5mm、内径Dが4mmのフッ素樹脂チューブを曲率半径Rが40mmになるように湾曲させた状態とし、この内部に上記の各試料で作成したチューブを挿入し、フッ素樹脂チューブ(ニチアス(株)製)に対する接触力量をフォースゲージで測定した。さらに、豚の腸を、曲率半径40mmに湾曲させた形状で固定できるポリウレタン製の治具に配置して、上記の各試料で作成したチューブを挿入し、豚の腸に対する接触力を同様のフォースゲージで測定した。
また、上記各試料で作成したチューブを、座屈することなしに曲率半径30mm(R30mm)に曲げることができるかを確認した。
これらの実験結果を、表4に示す。ここで、曲げ特性における「○」はR30mmに曲げることができたことを、「×」は座屈してしまいR30mmに湾曲させることができなかったことを表す。また表4のCNT含有量と接触力量との関係のグラフを図2に示す。図2は、横軸がCNT含有量(wt%)、縦軸が接触力量(N)である。
Figure 2009039439
表4より、CNT含有量が増大するにつれて、チューブの硬度が増大していることがわかる。このため、チューブの柔軟性が低下し、CNT含有量50wt%以上(試料8、9、10)では、R30mmに曲げることができなくなった。したがって、R30mmの曲げ特性を実現するには、CNT含有量を40wt%以下にする必要がある。
また、表面粗さは、CNT含有量0wt%〜0.5wt%の間で急峻に増大し、0.5wt%〜75wt%の間で略直線的により緩やかに増大し、75wt%〜80wt%の間でさらに急峻に増大するような変化を示している。
一方、フッ素樹脂チューブ、豚の腸に対する接触力量は、それぞれ図2の曲線100、101に示すように、いずれも、CNT含有量が増大すると、CNT含有量0.5wt%〜10wt%の間では、CNT含有量0wt%の場合に比べて接触力量が低下し、さらにCNT含有量が増えるにしたがって、緩やかに接触力量が増大している。そして、CNT含有量75wt%以上で、急峻に接触力量が増大している。
実験データは、ややバラツキがあるものの、接触力量の変化は、概ね表面粗さの変化と相関があることが分かる。なお、CNT含有量50wt%、75wt%における接触力量の増加は、後述する実験例4、5の結果と比較すると、曲げ特性の悪化に関係すると考えられる。
対フッ素樹脂チューブと対豚の腸とでは、曲線101に示すように豚の腸の方が、ベースマトリックス2Aに対する摩擦係数が小さいため、全体に接触力量が低く、0.1wt%〜75wt%の範囲で、CNT含有量0wt%の場合に比べて低接触力量となっている。
したがって、医療用チューブ1を生体に対して用いる場合、少なくともCNT含有量0.1wt%〜75wt%の範囲で、摩擦特性が向上されているものである。
以上より、医療用チューブ1では、CNT含有量を40wt%以下に設定することで、良好な曲げ特性が得られる。この場合、CNTを含有しないチューブに比べて生体に対して低摩擦性を有する。
これらが相俟って、生体に対する挿入性を向上することができる。
このように、本実施形態の医療用チューブ1によれば、生体に対して低摩擦となり、摩耗などによってCNTが離脱しても生体内の蓄積性や残留性の特性が良好となるので、生体に挿入または接触させて用いるのに好適となる。
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係る医療用チューブについて説明する。
図3(a)、(b)は、本発明の第2の実施形態に係る医療用チューブの模式的な正面図および側面図である。
本実施形態の医療用チューブ10は、図3(a)、(b)に示すように、内径D、外径Dの円環状断面を有する長さLのチューブ部材からなり、上記第1の実施形態の医療用チューブ1と同様に、生体内に挿入したり、生体に接触させたりして医療用に用いるものである。
そして、医療用チューブ10は、上記第1の実施形態の医療用チューブ1が複合材料2のみからなる単層構造であるのに対して、外表面10a、内表面10bが、それぞれ被覆層11、13で形成され、被覆層11、13の間にベース層12(チューブ基体)を有する三層構造からなる点が異なる。
被覆層11、13は、上記第1の実施形態の複合材料2が、それぞれ層厚t、tに設けられたものである。
ベース層12は、医療用チューブ10の基材であり、被覆層11、13に比べて柔軟性を有する高分子材料によって、厚さtに形成する。ここで、t+t+t=(D−D)/2である。
ベース層12の材質としては、例えば、ベースマトリックス2Aに好適となる高分子材料から選択することができる。ベース層12は、被覆層11、13のベースマトリックス2Aと同じである必要はないが、同じものを採用すれば、被覆層11、12に比べて確実に柔軟性が大きくなり、しかも、被覆層11、13の形成が容易となる。
また、ベース層12として、被覆層11、13のベースマトリックス2Aと異なる材料を採用する場合、ベース層12は、被覆層11、13によって被覆され、外表面10a、内表面10bに露出せず生体に接触しない。そのため、被覆層11、13の耐久性に問題がなければ、ベースマトリックス2Aのように生体と接触させた場合のことを考慮することなく、材料を選定することができる。
次に、このような医療用チューブ10の作用について、具体的な実験結果に基づいて説明する。
[実験例4]
医療用チューブ10の摩擦特性、曲げ特性を評価するため、上記第1の実施形態のベースマトリックス2Aを用いて、ベース層12を形成し、試料1〜10を用いて、被覆層11、13を形成したチューブをそれぞれ試料11〜20として作製した。
ここで、医療用チューブ10の外径D、内径Dは、上記第1の実施形態と同様に、Dが3mm、Dが1.5mmとした。そして、被覆層11、ベース層12、被覆層13の層厚構成は、t:t:t=3:4:3とした。
そして、上記実験例3と同様にして、試料ごとに、ゴム硬度、表目粗さ、フッ素樹脂チューブおよび豚の腸に対する接触力量、曲げ特性の測定、評価を行った。
これらの実験結果を、表5に示す。また表5のCNT含有量と接触力量との関係のグラフを図4に示す。図4は、横軸がCNT含有量(wt%)、縦軸が接触力量(N)である。
Figure 2009039439
表5より、CNT含有量に対するゴム硬度の変化は実験例3と同様であり、CNT含有量に対する表面粗さは実験例3と若干差があるものの実験誤差を考慮すれば略同様である。
また、表面粗さは、CNT含有量0wt%〜0.5wt%の間で急峻に増大し、0.5wt%〜75wt%の間で略直線的により緩やかに増大し、75wt%〜80wt%の間でさらに急峻に増大するような変化を示している。
フッ素樹脂チューブ、豚の腸に対する接触力量は、それぞれ図4の曲線110、111に示すように、いずれも、CNT含有量が増大すると、CNT含有量0.5wt%〜10wt%の間では、CNT含有量0wt%の場合に比べて接触力量が低下し、さらにCNT含有量が増えるにしたがって、緩やかに接触力量が増大している。そして、CNT含有量75wt%以上で、急峻に接触力量が増大している。
実験データのバラツキはややあるものの、接触力量の変化は、表面粗さの変化と相関があることが理解される。特に、図2に比べて、CNT50wt%、75wt%の場合の対フッ素樹脂チューブの接触力は低くなっており、実験例3に比べると、より表面粗さの変化に忠実な直線的な変化を示していると言える。
これは、接触力量を測定しているため、表面状態の同一性による摩擦係数が同一であっても、チューブがフッ素樹脂チューブを通る際に柔軟性が低くなると、医療用チューブ10、1が湾曲に抵抗する程度の差に応じて、フッ素樹脂チューブに対する抗力が発生するためと考えられる。
このため、本実験例では、対フッ素樹脂チューブ、対豚の腸のいずれに対しても、曲線110、111に示すように、0.1wt%〜75wt%の範囲で、CNT含有量0wt%の場合に比べて低接触力量となっている。
したがって、医療用チューブ10は、少なくともCNT含有量0.1wt%〜75wt%の範囲で、摩擦特性が向上されているものである。
一方、曲げ特性の評価結果によれば、実験例3と異なり、CNT含有量0.1wt%〜75wt%の範囲で、R30mmに曲げることができ、良好な曲げ特性が得られている。
これは、医療用チューブ10が、三層構造で構成されているため、被覆層11、12のCNT含有量が増大して、硬度や曲げ剛性が増大しても、医療用チューブ10の曲げ特性は、被覆層11、13よりも柔軟性に富んだベース層12を合わせた全体の曲げ剛性で決まるためである。
[実験例5]
実験例5は、医療用チューブ10の層構成が曲げ特性に及ぼす影響を調べるため、CNT含有量を10wt%に固定し、三層構造の被覆層11、13の層厚比を変化させて、実験例4と同様の評価を行った。ただし、曲げ評価は、曲率半径20mm(R20mm)、10mm(R10mm)に曲げられるかどうかの確認も併せて行った。
試料21、22は、医療用チューブ10において、CNT含有量を10wt%とし、被覆層11、ベース層12、被覆層13の層厚構成をt:t:tを、それぞれ、1:8:1、2:6:2としたものである。表6ではこれらを区別するため、層厚構成比の代わりに複合材料層厚比として、(t+t)/{(D−D)/2}の値を%表示した。
これらの評価結果を表6に示す。ここで、比較のため、試料15(表5)を再掲し、さらに参考のため試料1(表4)、試料5(表4)の結果も記載した。
Figure 2009039439
表6によれば、曲げ特性においては、試料15、22、21の順に小さな曲率半径まで曲げることができるようになり、柔軟性が向上していることが分かる。特に、試料21は、複合材料を用いない試料1と同等の曲げ特性が得られている。
また、試料15、22、21の接触力量は、このような柔軟性の順序にしたがって低減されている。そして、試料21は、複合材料2を用いない試料1に比べて、曲げ特性が同等でありながら、接触力量は、対フッ素樹脂チューブで約45%、対豚の腸で約13%と格段に低減されている。
このように、本実施形態の医療用チューブ10によれば、生体に対して低摩擦となり、摩耗などによってCNTが離脱しても生体内の蓄積性や残留性の特性が良好となるので、生体に挿入または接触させて用いるのに好適となる。また、被覆層11、ベース層12、被覆層13の層厚比を変えることで、生体に対する接触力量、曲げ特性が良好となるように設定することができる。
なお、上記の説明では、最も好ましい条件として、複合材料2のカーボン純度、残留重金属濃度は、実験例2の結果から、それぞれ95wt%以上、3000rpm以下とした場合の例で説明したが、これらの条件は、CNTの現実的な離脱量と生体内の滞留時間における不純物や重金属の毒性に応じて、適宜、安全な範囲に設定することができる。
また、上記の説明では、医療用チューブの外表面および内表面に医療用複合材料が露出する場合の例で説明したが、摺動性が要求される表面が一方に限られる場合には、外表面または内表面に医療用複合材料が露出する構成としてもよい。
また、上記の第2の実施形態の説明では、医療用チューブ10の被覆層11、13の層厚が等しい場合の例で説明したが、それぞれの層厚は相違していてもよい。
また、上記の第2の実施形態の説明では、多層構造として3層構造の例で説明したが、被覆層11、13の間にCNTが含まれない複数の層構造を有する4層以上の多層構造であってもよい。
本発明の第1の実施形態に係る医療用複合材料を用いた医療用チューブの模式的な正面図および側面図である。 実験例3におけるCNT含有量と接触力量の関係を示すグラフである。 本発明の第2の実施形態に係る医療用チューブの模式的な正面図および側面図である。 実験例4におけるCNT含有量と接触力量の関係を示すグラフである。
符号の説明
1、10 医療用チューブ
1a、10a 外表面
1b、10b 内表面
2 複合材料(医療用複合材料)
2A ベースマトリックス(高分子材料)
2B カーボンナノチューブ(CNT)
11、13 被覆層
12 ベース層(チューブ基体)

Claims (5)

  1. 直径φが30nm以上200nm以下のカーボンナノチューブを高分子材料中に分散させてなることを特徴とする医療用複合材料。
  2. 前記カーボンナノチューブのカーボン純度は、95wt%以上、かつ前記カーボンナノチューブの残留重金属濃度は、3000ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の医療用複合材料。
  3. 生体に挿入または接触させて用いる医療用チューブであって、
    チューブ外表面および内表面の少なくともいずれかが、請求項1または2に記載の医療用複合材料で形成されたことを特徴とする医療用チューブ。
  4. チューブ断面が単層構造とされ、前記医療用複合材料の前記カーボンナノチューブの含有量が、40wt%以下であることを特徴とする請求項3に記載の医療用チューブ。
  5. カーボンナノチューブを含有しないチューブ基体の外表面および内表面にそれぞれ前記医療用複合材料の被覆層が形成され、該被覆層のそれぞれにおける前記医療用複合材料の前記カーボンナノチューブの含有量が、75wt%以下であることを特徴とする請求項3に記載の医療用チューブ。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2020209233A1 (ja) * 2019-04-09 2020-10-15 富士フイルム株式会社 内視鏡用架橋体、内視鏡、及び内視鏡用架橋体を形成するための組成物

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