JP2009027859A - 電動機 - Google Patents
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Abstract
【課題】温度変化に対して外周側回転子と内周側回転子の間の軸受部の同軸度を保障することのできる電動機を提供する。
【解決手段】内周側永久磁石9Bを有する内周側回転子6の外側に、外周側永久磁石9Aを有する外周側回転子5を同軸にかつ相対回動可能に配置する。位相変更手段12を、磁性体製の環状ハウジング15と、ベーンロータ14と、環状ハウジング15の軸方向の端部を跨いで外周側回転子5とベーンロータ14を結合する非磁性体製のドライブプレート16A,16Bを備えた構成とする。環状ハウジング15に軸方向に突出する筒状凸部40を形成し、筒状凸部40を摺動自在に支持する支持プレート43をドライブプレート16Aに固定する。支持プレート43を、環状ハウジング15と略同一の線膨張係数を有する材料で構成する。
【選択図】図1
【解決手段】内周側永久磁石9Bを有する内周側回転子6の外側に、外周側永久磁石9Aを有する外周側回転子5を同軸にかつ相対回動可能に配置する。位相変更手段12を、磁性体製の環状ハウジング15と、ベーンロータ14と、環状ハウジング15の軸方向の端部を跨いで外周側回転子5とベーンロータ14を結合する非磁性体製のドライブプレート16A,16Bを備えた構成とする。環状ハウジング15に軸方向に突出する筒状凸部40を形成し、筒状凸部40を摺動自在に支持する支持プレート43をドライブプレート16Aに固定する。支持プレート43を、環状ハウジング15と略同一の線膨張係数を有する材料で構成する。
【選択図】図1
Description
この発明は、回転子に設けられる永久磁石の界磁特性を変更できる電動機に関するものである。
電動機として、夫々個別に永久磁石を備える内周側回転子と外周側回転子が同軸に配設され、この両回転子を油圧による位相変更手段によって周方向に相対的に回動させ、回転子全体としての界磁特性を変更できるようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この電動機の位相変更手段は、内周に複数の仕切壁を有する環状ハウジングと、この環状ハウジングの内側に配置され、外周に前記仕切壁間に突出するベーンを有するベーンロータ(アクチュエータ部材)とを備え、仕切壁とベーンの間に形成される液室に作動液を適宜給排することによって環状ハウジングとベーンロータを相対回動させるようになっている。そして、環状ハウジングは、外周側回転子と電動機の回転軸に一体に結合され、ベーンロータは、前記回転軸の外周に軸受を介して回転可能に支持されるとともに、内周側回転子に一体に結合されている。
特開2004−72978号公報
ところで、現在、位相変更手段の構造として、外周側回転子とアクチュエータ部材(例えば、上記のベーンロータ)の軸方向両側の端部同士を一対の端板によって連結し、こうして外周側回転子とアクチュエータ部材の間にできる環状空間内に、内周側回転子と環状ハウジングを回動可能に収容する構造を検討している。この位相変更手段は、環状ハウジングの軸方向の両側が端板に挟まれた形で密閉されるため、作動液の漏洩を防止するうえで有利となる。
また、この構造を採用する場合には、環状ハウジングを前記環状空間内にフローティング状態で支持する必要があるため、環状ハウジングの軸方向の両端部に筒状凸部を一体に形成し、環状ハウジングに対峙する両側の端板の内側面に、筒状凸部を摺動自在に支持するための環状溝を形成することを検討している。
しかし、これらの構造を採用する電動機の場合、位相変更手段を構成する環状ハウジングは機械強度の高い鉄系の磁性材料で形成されるが、外周縁部が外周側回転子に結合される一方で内周縁部が内周側回転子の軸方向の端部を微小隙間をもって跨ぐ端板は、外周側永久磁石と内周側永久磁石の磁束短絡を防止する観点から、非磁性材料で形成する必要がある。
このため、環状ハウジングの軸方向の端部に筒状凸部を形成し、この筒状凸部を支持する環状溝を端板に形成する場合には、磁性材料から成る筒状凸部が非磁性材料から成る環状溝に摺動自在に支持されることになる。
このため、環状ハウジングの軸方向の端部に筒状凸部を形成し、この筒状凸部を支持する環状溝を端板に形成する場合には、磁性材料から成る筒状凸部が非磁性材料から成る環状溝に摺動自在に支持されることになる。
ところが、環状ハウジングに採用を検討している鉄系の焼結金属(磁性材料)の線膨張係数が約10×10−6であるのに対し、端板に採用を検討している非磁性材料の線膨張係数は、アルミニウムで約23.9×10−6、ステンレス鋼(SUS)で約17×10−6と相対的に大きな値となる。このため、運転時に発熱を伴う電動機においては、運転時の温度変化によって筒状凸部と環状溝の間のクリアランスが大きく変化し、外周側回転子と内周側回転子の同軸度の保障がむずかしくなる。すなわち、筒状凸部と環状溝の間のクリアランスは、低温時には小さく、高温時には大きくなるため、低温でのクリアランスを最適に設定すると、高温時に両回転子間の軸ズレが大きくなり、逆に高温でのクリアランスを最適に設定すると、低温時に両回転子間の円滑な回動作動が困難になる。
そこでこの発明は、環状ハウジングを磁性材料で形成して機械的強度を確保し、かつ、端板を非磁性材料で形成して磁束短絡を防止しつつ、温度変化に対して外周側回転子と内周側回転子の間の軸受部の同軸度を保障することのできる電動機を提供しようとするものである。
上記の課題を解決する請求項1に記載の発明は、円周方向に沿うように内周側永久磁石(例えば、後述の実施形態における内周側永久磁石9B)が配設された内周側回転子(例えば、後述の実施形態における内周側回転子6)と、この内周側回転子の外周側に同軸にかつ相対回動可能に配設されるとともに、円周方向に沿うように外周側永久磁石(例えば、後述の実施形態における外周側永久磁石9A)が配設された外周側回転子(例えば、後述の実施形態における外周側回転子5)と、前記内周側回転子と外周側回転子を相対回動させて両者の相対的な位相を変更する位相変更手段(例えば、後述の実施形態における位相変更手段12)と、を備えた電動機であって、前記位相変更手段が、前記内周側回転子と一体に設けられた磁性材料から成る環状ハウジング(例えば、後述の実施形態における環状ハウジング15)と、この環状ハウジングの径方向内側に相対回動可能に配置されたアクチュエータ部材(例えば、後述の実施形態におけるベーンロータ14)と、前記外周側回転子と前記アクチュエータ部材の軸方向両側の端部同士を連結する非磁性材料から成る一対の端板(例えば、後述の実施形態におけるドライブプレート16A,16B)と、前記環状ハウジングとアクチュエータ部材の間に設けられ、軸方向の両側の端部を前記一対の端板によって閉塞された液室(例えば、後述の実施形態における進角側作動室24および遅角側作動室25)と、を備え、前記液室に作動液を給排して前記外周側回転子と内周側回転子を相対回動させる構成とされ、前記環状ハウジングと前記端板のいずれか一方に、軸方向に突出する筒状凸部(例えば、後述の実施形態における筒状凸部40)が一体に形成されるとともに、前記環状ハウジングと前記端板の間に、前記筒状凸部を摺動自在に支持する支持部材(例えば、後述の実施形態における支持プレート43)が設けられ、前記支持部材が前記筒状凸部と略同一の線膨張係数を有する材料で構成されていることを特徴とする。
これにより、環状ハウジングと端板のいずれか一方に形成された筒状凸部が、環状ハウジングと端板の間に設けられた支持部材によって摺動自在に支持されるようになるが、支持部材は筒状凸部と線膨張係数の略同一の材料で構成されているため、温度が大きく変化する場合にあっても、筒状凸部と支持部材の間のクリアランスは大きく変化することがなくなる。
これにより、環状ハウジングと端板のいずれか一方に形成された筒状凸部が、環状ハウジングと端板の間に設けられた支持部材によって摺動自在に支持されるようになるが、支持部材は筒状凸部と線膨張係数の略同一の材料で構成されているため、温度が大きく変化する場合にあっても、筒状凸部と支持部材の間のクリアランスは大きく変化することがなくなる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動機において、前記筒状凸部が前記環状ハウジングに一体に形成され、前記支持部材が前記端板に固定されていることを特徴とする。
これにより、筒状凸部が磁性材料によって環状ハウジングと一体に形成されるとともに、端板に固定される支持部材も磁性材料によって形成されることになる。
これにより、筒状凸部が磁性材料によって環状ハウジングと一体に形成されるとともに、端板に固定される支持部材も磁性材料によって形成されることになる。
請求項1に記載の発明によれば、環状ハウジングと端板のいずれか一方に形成された筒状凸部が、この筒状凸部と線膨張係数の略同一の材料から成る支持部材によって摺動自在に支持されるため、環状ハウジングを機械的強度の高い磁性材料で形成し、かつ、端板を磁束短絡を防止し得る非磁性材料で形成しながらも、温度変化に拘わらず、外周側回転子と内周側回転子の間の軸受部のクリアランスをほぼ一定に維持でき、同軸度を常に保障することができる。
請求項2に記載の発明によれば、環状ハウジングに一体に形成された筒状凸部と、端板に固定されて筒状凸部を支持する支持部材が磁性材料によって形成されるため、温度変化に拘わらず軸受部のクリアランスをほぼ一定に維持できるうえ、軸受部の機械的強度を高めることができる。
以下、この発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
この実施形態の電動機1は、図1〜図4に示すように円環状の固定子2(図1参照。)の内周側に回転子ユニット3が配置されたインナロータ型のブラシレスDCモータであり、例えばハイブリッド車両や電動車両等の走行駆動源として用いられる。固定子2は複数相の固定子巻線2aを有し、回転子ユニット3は軸芯部に回転軸4を有している。車両の走行駆動源として用いる場合には、電動機1の回転力はトランスミッション(図示せず。)を介して車輪の駆動軸(図示せず。)に伝達される。この場合、電動機1は車両の減速時に発電機として機能させれば、発電電力を回生エネルギーとして蓄電器に回収することもできる。また、ハイブリッド車両においては、電動機1の回転軸4をさらに内燃機関のクランクシャフト(図示せず。)に連結することにより、内燃機関による発電にも利用することができる。
この実施形態の電動機1は、図1〜図4に示すように円環状の固定子2(図1参照。)の内周側に回転子ユニット3が配置されたインナロータ型のブラシレスDCモータであり、例えばハイブリッド車両や電動車両等の走行駆動源として用いられる。固定子2は複数相の固定子巻線2aを有し、回転子ユニット3は軸芯部に回転軸4を有している。車両の走行駆動源として用いる場合には、電動機1の回転力はトランスミッション(図示せず。)を介して車輪の駆動軸(図示せず。)に伝達される。この場合、電動機1は車両の減速時に発電機として機能させれば、発電電力を回生エネルギーとして蓄電器に回収することもできる。また、ハイブリッド車両においては、電動機1の回転軸4をさらに内燃機関のクランクシャフト(図示せず。)に連結することにより、内燃機関による発電にも利用することができる。
回転子ユニット3は、円環状の外周側回転子5と、この外周側回転子5の内側に同軸に配置される円環状の内周側回転子6を備え、外周側回転子5と内周側回転子6が設定角度の範囲で相対回動可能とされている。
外周側回転子5と内周側回転子6は、回転子本体である円環状のロータ鉄心7,8が、例えば、複数の電磁鋼板を回転軸4に沿う方向に積層して成る積層鋼板によって形成されており、その各ロータ鉄心7,8に軸方向に延出する複数の磁石装着スロット7a…,8a…が円周方向に沿って設けられている。各磁石装着スロット7a,8aには、厚み方向に磁化された平板状の外周側永久磁石9Aと内周側永久磁石9Bが夫々装着されている。そして、磁石装着スロット7a…,8a…は、外周側回転子5上と内周側回転子6上で夫々円周方向で隣接するもの2つが一組を成し、図2に示すように、各組の磁石装着スロット7a,7aおよび8a,8aに同磁極が同方向を向くように外周側永久磁石9A,9Aと内周側永久磁石9B,9Bが夫々装着されている。また、外周側回転子5上の隣接する磁石装着スロット7aの組に装着される外周側永久磁石9A同士は磁極の向きが逆向きになり、内周側回転子6上の隣接する磁石装着スロット8aの組に装着される内周側永久磁石9B同士も磁極の向きが逆向きになっている。すなわち、外周側回転子5においては、外周側がN極とされた外周側永久磁石9Aの対とS極とされた外周側永久磁石9Aの対が、円周方向に交互に並んで配置されており、内周側回転子6も同様に、外周側がN極とされた内周側永久磁石9Bの対と、S極とされた内周側永久磁石9Bの対が円周方向に交互に並んで配置されている。
外周側回転子5と内周側回転子6の磁石装着スロット7a…,8a…は夫々同数設けられ、両回転子5,6の永久磁石9A,9Bが夫々1対1で対応するようになっている。したがって、外周側回転子5と内周側回転子6の各磁石装着スロット7a,8a内の永久磁石9A,9Bを互いに同極同士で対向させる(異極配置にする)ことにより、回転子ユニット3全体の界磁が最も弱められる弱め界磁(図5(b)参照。)の状態を得ることができるとともに、外周側回転子5と内周側回転子6の各磁石装着スロット7a,8a内の永久磁石9A,9Bを互いに異極同士で対向させる(同極配置にする)ことにより、回転子ユニット3全体の界磁が最も強められる強め界磁の状態(図5(a)参照。)を得ることができる。
また、回転子ユニット3は、外周側回転子5と内周側回転子6を相対回動させるための回動機構11を備えている。この回動機構11は、両回転子5,6の相対位相を任意に変更するための位相変更手段12を構成するものであり、非圧縮性の作動流体である作動液の圧力によって操作されるようになっている。位相変更手段12は、上記の回動機構11と、この回動機構11に対する作動液の給排を制御する図示しない液圧制御装置と、を主要な要素として構成されている。
回動機構11は、回転軸4の外周に一体回転可能にスプライン嵌合されるベーンロータ14(アクチュエータ部材)と、ベーンロータ14の外周側に相対回動可能に配置される環状ハウジング15とを備え、この環状ハウジング15が内周側回転子6の内周面に一体に嵌合固定されるとともに、ベーンロータ14が、環状ハウジング15と内周側回転子6の軸方向の両側の端面を跨ぐ円板状の一対のドライブプレート16A,16B(端板)を介して外周側回転子5に一体に結合されている。したがって、ベーンロータ14は回転軸と外周側回転子5とに一体化され、環状ハウジング15は内周側回転子6と一体化されている。なお、図3中22は、ドライブプレート16A,16Bとベーンロータ14を結合するボルトであり、23は、ドライブプレート16A,16Bと外周側回転子5を結合するボルトである。
ベーンロータ14は、回転軸4にスプライン嵌合される円筒状のボス部17の外周に、径方向外側に突出する複数のベーン18…が円周方向等間隔に設けられている。一方、環状ハウジング15は、内周面に円周方向等間隔に複数の凹部19…が設けられ、この各凹部19にベーンロータ14の対応するベーン18が収容配置されるようになっている。各凹部19は、ベーン18の先端部の回転軌道にほぼ合致する円弧面を有する底壁20と、隣接する凹部19,19同士を隔成する略三角形状の仕切壁21によって構成され、ベーンロータ14と環状ハウジング15の相対回動時に、ベーン18が一方の仕切壁21と他方の仕切壁21の間を変位し得るようになっている。
外周側回転子5とベーンロータ14を連結する両側のドライブプレート16A,16Bは、環状ハウジング15の両側面(軸方向の両端面)に摺動自在に密接し、環状ハウジング15の各凹部19の側方を夫々閉塞する。したがって、環状ハウジング15の各凹部19は、ベーンロータ14のボス部17と両側のドライブプレート16A,16Bとともに夫々独立した空間部を形成し、この空間部は、作動液が導入される導入空間となっている。各導入空間内は、ベーンロータ14の対応する各ベーン18によって夫々2室に隔成され、一方の部屋が進角側作動室24(液室)、他方の部屋が遅角側作動室25(液室)とされている。進角側作動室24は、内部に導入された作動液の圧力によって内周側回転子6を外周側回転子5に対して遅角方向に相対回動させ、遅角側作動室25は、内部に導入された作動液の圧力によって内周側回転子6を外周側回転子5に対して遅角方向に相対回動させる。この場合、「進角」とは、内周側回転子6を外周側回転子5に対して、図1中の矢印Rで示す電動機1の主回転方向に進めることを言い、「遅角」とは、内周側回転子6を外周側回転子5に対して、電動機1の主回転方向Rと逆側に進めることを言うものとする。なお、図中33は、仕切り壁21とボス部17の間をシールするシール部材であり、36は、ベーン18と環状ハウジング15の底壁20の間をシールするシール部材である。
また、各進角側作動室24と遅角側作動室25に対する作動液の給排は回転軸4を通して行われるようになっている。具体的には、進角側作動室24は、液圧制御装置の進角側給排通路に接続され、遅角側作動室25は同液圧制御装置の遅角側給排通路に接続されているが、進角側給排通路と遅角側給排通路の一部は、図1に示すように、夫々回転軸4に軸方向に沿って形成させた通路孔26a,27aによって構成されている。そして、各通路孔26a,27aの端部は、回転軸4の外周面の軸方向にオフセットした2位置に形成された環状溝26bと環状溝27bに夫々接続され、その各環状溝26b,27bは、ベーンロータ14のボス部17に略半径方向に沿って形成された複数の導通孔26c…,27c…に接続されている。進角側の導通孔26cは環状溝26bと各進角側作動室24とを接続し、遅角側の導通孔27cは環状溝27bと各遅角側作動室25とを接続している。
この実施形態の電動機1の場合、内周側回転子6が外周側回転子5に対して最遅角位置にあるときに、内周側永久磁石9Bと外周側永久磁石9Aが異極同士で対向して強め界磁の状態(図5(a)参照。)になり、内周側回転子6が外周側回転子5に対して最進角位置にあるときに、内周側永久磁石9Bと外周側永久磁石9Aが同極同士で対向して弱め界磁の状態(図5(b)参照。)になるように設定されている。
なお、この電動機1は、進角側作動室24と遅角側作動室25に対する作動液の給排制御によって、強め界磁の状態と弱め界磁の状態を任意に変更し得るものであるが、こうして磁界の強さが変更されると、それに伴って誘起電圧定数が変化し、その結果、電動機1の特性が変更される。すなわち、強め界磁によって誘起電圧定数が大きくなると、電動機1として運転可能な許容回転速度は低下するものの、出力可能な最大トルクは増大し、逆に、弱め界磁によって誘起電圧定数が小さくなると、電動機1の出力可能な最大トルクは減少するものの、運転可能な許容回転速度は上昇する。
なお、この電動機1は、進角側作動室24と遅角側作動室25に対する作動液の給排制御によって、強め界磁の状態と弱め界磁の状態を任意に変更し得るものであるが、こうして磁界の強さが変更されると、それに伴って誘起電圧定数が変化し、その結果、電動機1の特性が変更される。すなわち、強め界磁によって誘起電圧定数が大きくなると、電動機1として運転可能な許容回転速度は低下するものの、出力可能な最大トルクは増大し、逆に、弱め界磁によって誘起電圧定数が小さくなると、電動機1の出力可能な最大トルクは減少するものの、運転可能な許容回転速度は上昇する。
ところで、回転子ユニット3の内周側回転子6と環状ハウジング15は、軸方向の両側をドライブプレート16A,16Bで閉塞されたベーンロータ14と外周側回転子5の間の環状の空間部内に配置されているが、これらは、環状ハウジング15の軸方向の両端部において、両側のドライブプレート16A,16Bにフローティング状態で回動自在に支持されている。
具体的には、図4に拡大して示すように、環状ハウジング15の軸方向の両端には、軸方向外側に突出する円環状の筒状凸部40が一体に形成され、両側のドライブプレート16A,16Bの内側面(環状ハウジング15に臨む側の面)には、環状ハウジング15の筒状凸部40が挿入係合される環状溝41が形成されている。そして、一方のドライブプレート16Aの内側面のうちの、環状溝41よりも径方向内側領域には、ドライブプレート16Aの外周縁部に対して一段窪んだ円環状の窪み部42が形成され、その窪み部42に、環状ハウジング15の筒状凸部40を外周面で回動可能に支持する偏平リング状の支持プレート43(支持部材)が重合固定されている。そして、一方のドライブプレート16A側の環状溝41は、環状ハウジング15の筒状凸部40を直接的に支持しないため、環状溝41の径方向内側の周面は、支持プレート43の外周面よりも小径に形成されている。また、支持プレート43は、ドライブプレート16Aをベーンロータ14に結合するボルト22により、ドライブプレート16Aとともにベーンロータ14に共締め固定されている。
この実施形態の場合、支持プレート43は、一方のドライブプレート16A側のみに固定され、環状ハウジング15の他方の筒状凸部40は、他方のドライブプレート16Bの環状溝41によって直接支持されている。なお、この環状溝41の径方向内側の周面は支持プレート43の外周面に比較して小径に形成されている。また、他方のドライブプレート16Bには支持プレート43が取り付けられないため、窪み部42は形成されていない。
この実施形態の場合、支持プレート43は、一方のドライブプレート16A側のみに固定され、環状ハウジング15の他方の筒状凸部40は、他方のドライブプレート16Bの環状溝41によって直接支持されている。なお、この環状溝41の径方向内側の周面は支持プレート43の外周面に比較して小径に形成されている。また、他方のドライブプレート16Bには支持プレート43が取り付けられないため、窪み部42は形成されていない。
ここで、環状ハウジング15は、液圧式の位相変更手段12を構成する部品であることから、機械的強度の高い磁性材料である鉄系の焼結金属によって形成され、ドライブプレート16A,16Bは、外周側縁部が外周側回転子5に結合されるとともに、その結合部よりも径方向内側領域が内周側永久磁石9Bの軸方向の端部に近接配置される部品であることから、両永久磁石9A,9Bの磁束短絡を防止するためにアルミニウム(線膨張係数:23.9×10−6)やステンレス鋼(線膨張係数:17×10−6)等の非磁性材料によって形成されている。そして、一方のドライブプレート16Aに固定される支持プレート43は、環状ハウジング15を構成する鉄系の焼結金属(線膨張係数:10×10−6)と略同一の線膨張係数を有するクロム鋼(線膨張係数:12×10−6)や炭素鋼(線膨張係数:11×10−6)等の磁性材料によって形成されている。なお、支持プレート43を構成する磁性材料は、この他の種々の材料が適用可能であるが、その場合、線膨張係数は、9×10−6〜12×10−6の範囲であれば良い。
以上の構成において、この電動機1の界磁特性を変更する場合、液圧制御装置による作動液の給排により、進角側作動室24と遅角側作動室25の一方に作動液を供給するとともに他方から作動液を排出する。そして、こうして作動液の給排が制御されると、ベーンロータ14と環状ハウジング15が相対的に回動し、それにともなって外周側回転子5と内周側回転子6の相対位相が操作される。
この相対位相の操作時には、環状ハウジング15の筒状凸部40が一方のドライブプレート16A側の支持プレート43と、他方のドライブプレート16B側の環状溝41によって摺動自在に支持される。
この相対位相の操作時には、環状ハウジング15の筒状凸部40が一方のドライブプレート16A側の支持プレート43と、他方のドライブプレート16B側の環状溝41によって摺動自在に支持される。
ここで、電動機1は、作動に伴って熱を発するため、始動初期と長時間運転しているときでは大きな温度差が生じ、高温時には構成部品の容積が熱膨張によって変化する。このため、環状ハウジング15の軸受支持部においても、温度によって各部の容積が微妙に変化するが、この電動機1においては、環状ハウジング15の筒状凸部40と、その筒状凸部40を支持する支持プレート43の線膨張係数が略同一になっているため、筒状凸部40と支持プレート43の間のクリアランスは温度の変化に伴って大きく変化することはない。なお、このとき環状ハウジング15とドライブプレート16A,16Bは線膨張係数が大きく異なるため、筒状凸部40と環状溝41のクリアランスは比較的大きく変化するが、一方の筒状凸部40が線膨張係数の略同一の支持プレート43によって支持されていることから、ドライブプレート16A,16Bに対する環状ハウジング15の同軸度は保障されることになる。
したがって、この電動機1においては、環状ハウジング15を機械的強度の高い鉄系の焼結金属で形成し、ドライブプレート16A,16Bを磁束短絡を防止し得る非磁性材料で形成しつつも、環状ハウジング15と線膨張係数の略同一の材料で形成した支持プレート43を一方のドライブプレート16Aに固定し、その支持プレート43で筒状凸部40を支持したことから、外周側回転子5と内周側回転子6の同軸度を、温度変化に拘わらず常に保障することができる。
なお、この発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、一方のドライブプレート16A側にのみ、環状ハウジング15と線膨張係数の略同一の支持プレート43を固定したが、同様の支持プレート43を両側のドライブプレート16A,16Bに固定するようにしても良い。
また、上記の実施形態においては、筒状凸部40を環状ハウジング15に一体に形成し、環状ハウジング15と線膨張係数が略同一である支持部材(支持プレート43)をドライブプレート16Aに固定したが、逆に、筒状凸部をドライブプレートに一体に形成し、ドライブプレートと線膨張係数が略同一である支持部材を環状ハウジングに固定するようにしても良い。
また、上記の実施形態においては、筒状凸部40を環状ハウジング15に一体に形成し、環状ハウジング15と線膨張係数が略同一である支持部材(支持プレート43)をドライブプレート16Aに固定したが、逆に、筒状凸部をドライブプレートに一体に形成し、ドライブプレートと線膨張係数が略同一である支持部材を環状ハウジングに固定するようにしても良い。
1…電動機
5…外周側回転子
6…内周側回転子
9A…外周側永久磁石
9B…内周側永久磁石
12…位相変更手段
14…ベーンロータ(アクチュエータ部材)
15…環状ハウジング
16A,16B…ドライブプレート(端板)
24…進角側作動室(液室)
25…遅角側作動室(液室)
40…筒状凸部
43…支持プレート(支持部材)
5…外周側回転子
6…内周側回転子
9A…外周側永久磁石
9B…内周側永久磁石
12…位相変更手段
14…ベーンロータ(アクチュエータ部材)
15…環状ハウジング
16A,16B…ドライブプレート(端板)
24…進角側作動室(液室)
25…遅角側作動室(液室)
40…筒状凸部
43…支持プレート(支持部材)
Claims (2)
- 円周方向に沿うように内周側永久磁石が配設された内周側回転子と、
この内周側回転子の外周側に同軸にかつ相対回動可能に配設されるとともに、円周方向に沿うように外周側永久磁石が配設された外周側回転子と、
前記内周側回転子と外周側回転子を相対回動させて両者の相対的な位相を変更する位相変更手段と、を備えた電動機であって、
前記位相変更手段が、前記内周側回転子と一体に設けられた磁性材料から成る環状ハウジングと、この環状ハウジングの径方向内側に相対回動可能に配置されたアクチュエータ部材と、前記外周側回転子と前記アクチュエータ部材の軸方向両側の端部同士を連結する非磁性材料から成る一対の端板と、前記環状ハウジングとアクチュエータ部材の間に設けられ、軸方向の両側の端部を前記一対の端板によって閉塞された液室と、を備え、前記液室に作動液を給排して前記外周側回転子と内周側回転子を相対回動させる構成とされ、
前記環状ハウジングと前記端板のいずれか一方に、軸方向に突出する筒状凸部が一体に形成されるとともに、
前記環状ハウジングと前記端板の間に、前記筒状凸部を摺動自在に支持する支持部材が設けられ、
前記支持部材が前記筒状凸部と略同一の線膨張係数を有する材料で構成されていることを特徴とする電動機。 - 前記筒状凸部が前記環状ハウジングに一体に形成され、前記支持部材が前記端板に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の電動機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007189695A JP2009027859A (ja) | 2007-07-20 | 2007-07-20 | 電動機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007189695A JP2009027859A (ja) | 2007-07-20 | 2007-07-20 | 電動機 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009027859A true JP2009027859A (ja) | 2009-02-05 |
Family
ID=40399130
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007189695A Withdrawn JP2009027859A (ja) | 2007-07-20 | 2007-07-20 | 電動機 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009027859A (ja) |
-
2007
- 2007-07-20 JP JP2007189695A patent/JP2009027859A/ja not_active Withdrawn
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A300 | Withdrawal of application because of no request for examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300 Effective date: 20101005 |