JP2009027846A - 永久磁石およびこれを用いた表面磁石型モータ - Google Patents

永久磁石およびこれを用いた表面磁石型モータ Download PDF

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Abstract

【課題】表面磁石型モータに好適に用いることができ、モータの小型化、高出力化を図ることが可能な永久磁石を提供すること。
【解決手段】モータのロータ表面に配置される永久磁石であって、保磁力の異なる複数の磁石材料を寄せ合わせて略円弧状に一体的に形成されており、着磁後に極変わり目となる磁石両縁部には、上記磁石材料のうち、最も高い保磁力を示す磁石材料より形成された高保磁力部を少なくとも存在させ、当該磁石の磁化容易軸を、ラジアル方向に配向させる。
【選択図】図4

Description

本発明は、永久磁石およびこれを用いた表面磁石型モータに関するものである。
近年、ハイブリッド自動車(HEV)、大型ACサーボなどに組み込まれるモータの需要が増加している。
例えば、自動車分野等では、燃費改善、室内空間の確保、排出ガスの低減などの要求が高まっており、従来よりも小型で高出力な高性能のモータが求められている。
この種のモータとしては、ロータ表面に永久磁石を貼り付けた表面磁石型(Surface Permanent Magnet)モータ(SPMモータ)、ロータ内部に永久磁石を埋め込んだ埋込磁石型(Internal Permanent Magnet)モータ(IPMモータ)などが知られている。
モータの高性能化を図るためには、少ない体積でモータトルクを実現することが重要である。しかし、一般に、モータトルクは、モータ直径の2乗に比例して大きくなり、長さに比例して大きくなる。したがって、モータを単に小型化すれば、大きなトルクが得られず、それに伴い出力も低下してしまう。
そのため、モータの高性能化には、用いられる永久磁石の磁力を向上させることが一般的な手法となる。
磁力の大きな磁石材料としては、Nd−Fe−B系などが知られている。従来、このような磁石材料によって構成された単一成分の永久磁石がモータに広く用いられてきた。
最近では、異なる磁石材料を組み合わせて永久磁石を構成し、これをモータに用いる提案もなされるようになってきている。
例えば、特許文献1には、第一の磁石と、第一の磁石を囲繞する第二の磁石とからなり、第一の磁石は、磁束密度が相対的に高く、保磁力が相対的に低い材料から構成されており、第二の磁石は、磁束密度が相対的に低く、保磁力が相対的に高い材料から構成された永久磁石が開示されている。また、特許文献1には、その永久磁石をロータ内部に埋め込んだ埋込磁石型モータが開示されている。
第一の磁石材料としては、具体的には、保磁力が10〜20kOeのネオジム、第二の磁石材料としては、保磁力が20kOeよりも大きなネオジムにジスプロシウムを添加した材料を用いる点が記載されている。
特開2006−261433号公報
ところで、モータに組み込まれる永久磁石は、モータの使用環境温度、磁石へ印加される反磁界などによる減磁により、モータ使用中に磁力の低下が生じやすい。そのため、モータに用いる永久磁石は、これらに耐えうる保磁力を有している必要がある。
しかしながら、磁石の保磁力(iHc)と磁束密度(B)との関係は、一方が大きくなると他方が小さくなるといった、トレードオフの関係になっている。
そのため、従来広く用いられてきた単一成分からなる永久磁石を使用する場合、磁石使用環境、モータ構造が決まった時点で、それに必要な保磁力(iHc)を確保しようとすれば、それに伴い磁束密度(B)が定まり、その結果、磁石の大きさがほぼ確定する。
この場合、大きな保磁力を必要とすれば、残留磁束密度が小さくなるため、モータ体積(磁石体積)を小さくし難く、モータの小型化、高出力化は困難を極める。
一方、特許文献1の永久磁石は、埋込磁石型モータ用であり、構造を異にする表面磁石型モータの永久磁石としてそのまま適用することは難しい。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、表面磁石型モータに好適に用いることができ、モータの小型化、高出力化を図ることが可能な永久磁石を提供することにある。また、この永久磁石を用いた表面磁石型モータを提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明者らは、種々の研究を重ねた。その結果、ロータ表面に永久磁石を備えた表面磁石型モータでは、着磁後に極変わり目となる部分が、最も反磁界の影響が大きく、特に高温でモータを運転した場合、磁力が低下しやすいことが判明した。
そこで、保磁力の異なる複数の磁石材料より永久磁石を構成し、上記極変わり目となる部分に、相対的に最も高い保磁力を示す磁石材料を配置し、その他の部分については、それほど保磁力が必要とならないため、相対的に低い保磁力を示す磁石材料を配置すれば、磁石全体として高い磁力が得られ、モータの小型化、高出力化を図ることができるとの知見を得るに至った。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、本発明に係る永久磁石は、モータのロータ表面に配置される磁石であって、保磁力の異なる複数の磁石材料を寄せ合わせて略円弧状に一体的に形成されており、着磁後に極変わり目となる磁石両縁部には、上記磁石材料のうち、最も高い保磁力を示す磁石材料より形成された高保磁力部が少なくとも存在し、当該磁石の磁化容易軸が、ラジアル方向に配向していることを要旨とする。
具体的には、本発明に係る第1の永久磁石は、上記高保磁力部が、上記磁石両縁部の全体にわたって存在しており、これら両高保磁力部の間は、上記高保磁力部を形成する磁石材料よりも低い保磁力を示す磁石材料より形成されていることを要旨とする。
また、本発明に係る第2の永久磁石は、磁石厚み方向に複数の磁石層が積層されてなる積層構造を有し、上記各磁石層の保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されていることを要旨とする。
また、本発明に係る第3の永久磁石は、磁石厚み方向に複数の磁石層が積層されてなる積層構造を有し、上記各磁石層の保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されており、上記ステータに対向する磁石層は、少なくともその層両縁部の全体にわたって上記高保磁力部が存在しており、これら両高保磁力部の間は、上記高保磁力部を形成する磁石材料よりも低い保磁力を示す磁石材料より形成されていることを要旨とする。
上記永久磁石の磁石材料としては、R−X1−X2系磁石材料(但し、R:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される1種または2種以上の希土類元素、X1:Feおよび/またはCo、X2:Bおよび/またはC)を好適に用いることができる。
一方、本発明に係る表面磁石型モータは、上記本発明に係る永久磁石をロータ表面に備えていることを要旨とする。
本発明に係る永久磁石は、保磁力の異なる複数の磁石材料を寄せ合わせて略円弧状に一体的に形成されており、着磁後に極変わり目となる磁石両縁部には、上記磁石材料のうち、最も高い保磁力を示す磁石材料より形成された高保磁力部が少なくとも存在する。
表面磁石型モータでは、着磁後に極変わり目となる部分が、最も磁束密度が低下しやすいが、本発明に係る永久磁石によれば、この部分に、相対的に最も高い保磁力を示す磁石材料が配置されている。
そのため、その他の部分については、相対的に低い保磁力を示す磁石材料が配置されることになり、磁石全体として高い磁力が得られることになる。
その結果、単一成分の磁石材料からなる永久磁石に比べ、永久磁石の体積を小さくすることが可能となり、表面磁石型モータの小型化、高出力化を図ることが可能になる。
また、上記永久磁石は、熱間押出し加工を用いた成形で製造することが可能であることから、磁石製造性にも優れる。
この際、第1の永久磁石によれば、用いる磁石材料の数が最も少なくて済む。そのため、磁石の製造が容易になって、製造コストを低減しやすくなる。
また、上記の通り、表面磁石型モータでは、着磁後に極変わり目となる部分が最も磁束密度が低下しやすいが、磁石厚み方向で見た場合、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって、磁束密度が低下する。
そのため、上記第2の永久磁石の構成を採用すれば、各磁石層に必要な保磁力を細かく調整することが可能となる。
また、上記第3の永久磁石によれば、着磁後に極変わり目となる部分について、局所的に保磁力を高めつつ、その他の各磁石層について必要な保磁力を細かく調整することが可能となる。
上記永久磁石を構成する複数の磁石材料を、R−X1−X2系磁石材料(但し、R:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される1種または2種以上の希土類元素、X1:Feおよび/またはCo、X2:Bおよび/またはC)から選択して用いた場合には、必要な保磁力を確保しやすく、高い磁力を有する磁石を得やすくなる。すなわち、R成分の含有量、R成分の構成比率により広い範囲で保磁力設計をしやすく、磁石の最適箇所に必要最低限の保磁力成分を配置することで磁石全体の磁力を向上させることができる。
一方、本発明に係る表面磁石型モータは、上記本発明に係る永久磁石をロータ表面に備えている。そのため、小型で高出力なモータとなる。したがって、ハイブリッド自動車(HEV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCEV)、大型ACサーボなどに好適である。
以下、本発明に係る永久磁石(以下、「本永久磁石」ということがある。)、本発明に係る表面磁石型モータ(以下、「本モータ」ということがある。)について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る永久磁石を備えた、本発明に係る表面磁石型モータの断面構造の一例を示した図である。図1に示すように、本モータ10は、ステータ12と、ロータ14とを備えている。
ステータ12は、全体的に略円筒状に形成されており、外形を形成するヨーク12aと、ヨーク12aの内周面から径方向に向かって延設された複数のティース12bと、ティース12bに巻回された巻線12c(図1中、一部のみ図示)とを備えている。
ロータ14は、全体的に略円柱形状に形成されたロータコア14aと、ロータコア14aの表面に貼り付けされた永久磁石M(図1では、磁石構成を省略して図示)とを備えている。なお、図1では、本モータ10は、永久磁石Mを4つ備えているが、その数は特に限定されるものではない。
ステータ12とロータ14とは、ステータ12のティース12bの先端部と、ロータ14の永久磁石Mの表面との間に所定の隙間16介して、略同軸に対向配置されている。
上述したように、本永久磁石は、ロータ表面に配置される磁石である。それ故、本永久磁石は、ロータコア表面に沿って略円弧状に形成されている。なお、略円弧状とは、円弧状のみならず、三日月状などの形状も含む概念である。
ここで、本永久磁石は、保磁力(iHc)の異なる複数の磁石材料を寄せ合わせて一体的に形成されている。つまり、本永久磁石は、磁石特性を考慮すると、典型的には、保磁力(iHc)、残留磁束密度(Br)が異なる複数の磁石材料から構成されていることになる。
もっとも、磁石組成の選択の仕方によっては、保磁力が異なっていても残留磁束密度が一致することもあり得る。そのため、本永久磁石は、少なくとも保磁力の異なる複数の磁石材料より形成されておれば、各磁石材料間で残留磁束密度が一致していても構わない。
本永久磁石は、着磁後に極変わり目となる磁石両端部に、上記複数の磁石材料のうちで、最も高い保磁力を示す磁石材料より形成された高保磁力部が、少なくとも存在している。これは次の理由によるものである。
図2は、モータを10ATで励磁し、図3(a)に示す永久磁石m1、m2の位置から、図3(b)に示す永久磁石m1、m2の位置まで、ロータを90度回転させた際の、計算基準位置Pにおけるロータ角度と磁束密度との関係を示している。
この図2によれば、表面磁石型モータの永久磁石は、着磁後に極変わり目となる部分が、最も磁束密度が低下しやすいことが分かる。その他にも、ステータと対向する磁石最外周(ステータ側)が、磁石最内周(ロータ中心部側)よりも磁束密度が低下しやすいことも分かる。そのため、本永久磁石Mでは、少なくとも磁石両端部に高保磁力部を配置している。
本永久磁石Mにおいて、高保磁力部は、磁石両端部の全域にわたって配置されていても良いし、磁石両端部かつ磁石厚み方向の一部に部分的に存在していても良い。着磁後に極変わり目となる部分が、最も磁束密度が低下しやすく、さらに、磁石最外周が、磁石最内周よりも磁束密度が低下しやすいことなどを考慮すると、高保磁力部は、少なくとも、磁石両端部かつ磁石最外周となる部分が含まれるように存在させるのが好ましい。
本永久磁石において、高保磁力部を存在させる部分以外の部分(以下、「残余部分」ということがある。)については、基本的には、上記複数の磁石材料のうち、最も高い保磁力を示す磁石材料以外の磁石材料(以下、「残余の磁石材料」ということがある。)により形成されることになる。
本永久磁石において、残余の磁石材料の配置は特に限定されるものではない。好ましくは、磁石全体として高い磁力を効率良く得ることができるなどの観点から、磁石最外周に近い位置ほど、保磁力が大きくなる(残留磁束密度が小さくなる)ように、残余の磁石材料を配置すると良い。
具体的には、以下の通りである。すなわち、第1の磁石材料[iHc、Br]、第2の磁石材料[iHc、Br]、第3の磁石材料[iHc、Br]があり、各保磁力の関係が、iHc>iHc>iHcであるとする。そうすると、磁石特性から、基本的には、各残留磁束密度Brの関係は、Br>Br>Brとなる。
本永久磁石が、第1の磁石材料、および、第2の磁石材料の2つからなる場合、例えば、高保磁力部は、第1の磁石材料より構成し、残余部分は、第2の磁石材料より構成すれば良い。
本永久磁石が、第1の磁石材料、第2の磁石材料、および、第3の磁石材料の3つからなる場合、例えば、高保磁力部は、第1の磁石材料より構成し、残余部分は、第2の磁石材料、第3の磁石材料より構成すれば良い。この場合、第3の磁石材料よりも保磁力の大きい第2の磁石材料は、第3の磁石材料よりも磁石最外周に近い部分に配置するのが好ましい。これは例えば、磁石厚み方向に複数の磁石層を形成し、ステータ側により近い磁石層に第2の磁石材料を配置するなどすれば、実現することができる。
本永久磁石を構成する複数の磁石材料としては、R−X1−X2系磁石材料(但し、R:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される1種または2種以上の希土類元素、X1:Feおよび/またはCo、X2:Bおよび/またはC)などを好適なものとして用いることができる。モータ性能などを考慮し、保磁力が異なるように適宜選択して用いることができる。
好ましくは、高い飽和磁化と高い異方性磁界とを兼ね備え、磁力が強力であるなどの観点から、Nd−Fe−B系磁石材料を好適に用いることができる。
本永久磁石は、当該磁石の磁化容易軸が、ラジアル方向に配向している。磁化容易軸とは、磁石材料に外部磁界を加えたとき、磁化されやすい方向のことである。当該磁石の磁化容易軸を、ラジアル方向に配向させるためには、例えば、押出加工時の最大圧縮方向がラジアル方向と平行になるようにすれば良い。上記磁化容易軸は、ロータ中心部側からモータのステータ側に配向していることが好ましい。
本永久磁石は、例えば、以下のようにして製造することができる。すなわち、先ず、保磁力の異なる複数の磁石材料を寄せ合わせて一体化した予備成形体を成形する。この際、予備成形体のうち、高保磁力部になりうる部分には、上記複数の磁石材料のうち、最も高い保磁力を示す磁石材料を配置する。
なお、予備成形体の形状は、本永久磁石と同じ略円弧状にはなっていないことが多いが、同じ略円弧状になっていても良い。成形性、その後の加工性などの観点から、予備成形体の形状は、立方体、直方体などの四角柱形状などが好ましい。
かかる予備成形体は、例えば、金型内を所定の領域に区画し、区画された各空隙に、所定の各磁石粉末材料を充填し、冷間プレスした後、更に600℃〜900℃でホットプレスをするなどして成形することができる。
他の方法としては、例えば、圧延加工などにより、各磁石粉末材料より部分成形体を成形し、これらを貼り合わせるなどしても良い。
各磁性粉末材料は、所定組成となるように配合した原料を溶解して得られた溶湯を、回転ロールに噴出させて、急冷薄片体を形成し、これを成形に最適な粒径に粉砕するなどして準備することができる。
次いで、得られた予備成形体を、略円弧状になるように押出加工する。
この工程では、予備成形体の厚み、幅、長さ(高さ)と、得られる永久磁石の厚み、外周側および内周側の円弧長、長さ(高さ)とが、それぞれ、ほぼ同じ方向に揃うように、押出金型内に予備成形体を配置し、その後これを押し出せば良い。
そうすると、予備成形体の押出し断面の厚み方向の寸法が絞られるとともに、この厚み方向と直交する幅方向の寸法が拡げられるように押し出される。
これにより、円弧面に略垂直な方向に磁化容易軸方向が配向した永久磁石が得られる。
上記押出加工時の温度は、用いた磁石材料の種類などによっても異なるが、十分に密度を上げることができれば、特に限定されるものではない。
上記押出加工時の温度は、好ましくは、700〜900℃の範囲内、より好ましくは、750〜850℃の範囲内であると良い。
次いで、得られた押出体を周知の方法により着磁すれば、本永久磁石を得ることができる。
次に、第1実施形態に係る永久磁石M、第2実施形態に係る永久磁石M、第3実施形態に係る永久磁石Mを用いて、本発明に係る永久磁石Mをより具体的に説明する。
(第1実施形態)
図4は、第1実施形態に係る永久磁石Mについて示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観図、(c)は永久磁石Mの作製に供する予備成形体の一例である。
図4(a)(b)に示すように、第1実施形態に係る永久磁石Mは、磁石両縁部の全体にわたって高保磁力部Aが存在している。
これら両高保磁力部Aの間は、高保磁力部Aを形成する磁石材料よりも低い保磁力を示す磁石材料より形成された低保磁力部Bとされている。
なお、永久磁石Mの磁化容易軸は、ラジアル方向に配向している(図4(a)中の矢印方向、以下、永久磁石M〜Mでは省略する。)。
高保磁力部Aを形成する磁石材料[iHc(A)、Br(A)]、低保磁力部Bを形成する磁石材料[iHc(B)、Br(B)]とすると、各保磁力の関係は、iHc(A)>iHc(B)となっている。また、磁石特性から、各残留磁束密度Brの関係は、Br(B)>Br(A)となっている。
上記構成の永久磁石Mは、用いる磁石材料の数が最も少なくて済む。そのため、磁石の製造が容易になって、製造コストを低減しやすくなるなどの利点がある。
また、図5に、第1実施形態に係る永久磁石Mの変形例を示す。図5に示すように、永久磁石Mは、低保磁力部Bが、磁石厚み方向に複数の磁石層(ここでは、磁石層b、磁石層bの2層)が積層されてなる積層構造を有していても良い。この場合、各磁石層の保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されていると良い。
図6は、熱間押出加工により、永久磁石Mを作製する様子を示した図である。図6中、押出方向はZ方向である。
上記永久磁石Mは、例えば、図6に示すように、略角形状の予備成形体M’を押出金型(不図示)内にセットし、予備成形体M’を800℃程度の温度で押し出すことにより得ることができる。
より具体的には、図4に示すように、予備成形体M’の各寸法を、厚みT’、幅W’、長さL’とする。また、永久磁石Mの各寸法を、厚みT、平均円弧長(Wo+Wi)/2(但し、外周側の円弧長Wo、内周側の円弧長Wi)、長さL、円弧半径Rとする。
この場合、図6に示すように、予備成形体M’と永久磁石Mとを、X方向にT’とT、Y方向にW’とWoおよびWi、Z方向にL’とLがほぼ揃うように配置し、その後押出しを行う。
そうすると、予備成形体M’の押出し断面のX方向の寸法が絞られるとともに、このX方向と直交するY方向の寸法が拡げられるように押し出され、永久磁石Mが得られる。
この際、Y方向の寸法を拡げる量は、ひずみ比ε/ε=ln(((Wo+Wi)/2)/W’)/ln(L/L’)が、好ましくは、0.2〜3.5の範囲内、より好ましくは、0.4〜1.6の範囲内、最も好ましくは、0.9〜1.1となるよう寸法を設定すると良い。(但し、lnは自然対数である。)。
これにより、図4(a)に示すように磁化容易軸方向が、円弧面Sに略垂直な方向に配向した永久磁石Mを得ることができる。
なお、上記予備成形体M’は、高保磁力部Aとなりうる磁石粉末材料A’、低保磁力部Bとなりうる磁石粉末材料B’を、永久磁石Mの配置関係と対応させた状態で金型内に配置し、冷間プレスした後、更に800℃程度でホットプレスをするなどすれば、成形することができる。
上記永久磁石Mにおいて、高保磁力部Aを存在させる領域は、特に限定されるものではなく、モータに要求される出力、用いる磁石材料の組成などに応じて最適な領域とすれば良い。
(第2実施形態)
図7は、第2実施形態に係る永久磁石Mについて示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観図、(c)は永久磁石Mの作製に供する予備成形体の一例である。
図7(a)(b)に示すように、第2実施形態に係る永久磁石Mは、磁石厚み方向に複数の磁石層(ここでは、磁石層A、磁石層B、磁石層Cの3層)が積層されてなる積層構造を有している。
そして、各磁石層A〜Cの保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されている。
すなわち、磁石層Aを形成する磁石材料[iHc(A)、Br(A)]、磁石層Bを形成する磁石材料[iHc(B)、Br(B)]、磁石層Cを形成する磁石材料[iHc(C)、Br(C)]とすると、各保磁力の関係は、iHc(A)>iHc(B)>iHc(C)となっている。また、磁石特性から、各残留磁束密度Brの関係は、Br(C)>Br(B)>Br(A)となっている。
上記構成の永久磁石Mは、最も磁束密度が低下しやすい極変わり目となる部分以外に、さらに、次に磁束密度が低下しやすい磁石最外周についても、相対的に高い保磁力の磁石材料で形成されている。また、磁石厚み方向で見た場合、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって、順に保磁力が高くなるような層構成になっている。
そのため、上記構成の永久磁石Mは、各磁石層に必要な保磁力を細かく調整することができる利点がある。
なお、上記永久磁石Mは、例えば、図7(c)に示した予備成形体M’を用いて、上記永久磁石Mと同様に作製することができる。また、予備成形体M’は、磁石層Aとなりうる磁石粉末材料A’、磁石層Bとなりうる磁石粉末材料B’を用いて、上記予備成形体M’と同様に作製することができる。
また、図7(a)、(b)に示したような永久磁石Mの製法としては、次のような方法を用いることもできる。
すなわち、ほぼ円形の断面の貫通孔を持ったダイの中に、孔の一方から出入りするパンチと、孔の他方から挿入されて先端がダイに内部に位置するマンドレルとを有する押出成形装置を準備する。
そして、所定の磁石粉末材料をダイ内に装填し、これを冷間プレスした後、更に800℃程度でホットプレスして円柱状または円筒状の予備成形体とする。その後、予備成形体をダイ内に装填し、これをパンチで押圧してカップ状押出体にする。
次いで、表面の必要箇所に、半径方向に延設されてダイの壁に至るフィンを予め設けたマンドレルで押し出すと、カップ状押出体が分割され、円弧状の永久磁石を得ることができる。
(第3実施形態)
図8は、第3実施形態に係る永久磁石Mについて示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観図、(c)は永久磁石Mの作製に供する予備成形体の一例である。
図8(a)(b)に示すように、第3実施形態に係る永久磁石Mは、磁石厚み方向に複数の磁石層(ここでは、磁石層A、磁石層B、磁石層Cの3層)が積層されてなる積層構造を有している。
また、各磁石層A〜Cの保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されている。
そして、少なくとも、ステータに対向する磁石層Aは、その層両縁部の全体にわたって高保磁力部a31が存在している。また、これら両高保磁力部a31の間には、高保磁力部a31を形成する磁石材料よりも低い保磁力を示す磁石材料より形成された低保磁力部a32が存在している
すなわち、磁石層Aの高保磁力部a31を形成する磁石材料[iHc(A・a31)、Br(A・a31)]、磁石層Aの低保磁力部a32を形成する磁石材料[iHc(A・a32)、Br(A・a32)]、磁石層Bを形成する磁石材料[iHc(B)、Br(B)]、磁石層Cを形成する磁石材料[iHc(C)、Br(C)]とすると、各保磁力の関係は、iHc(A・a31)>iHc(A・a32)>iHc(B)>iHc(C)となっている。また、磁石特性から、各残留磁束密度Brの関係は、Br(C)>Br(B)>Br(A・a32)>Br(A・a31)となっている。
上記永久磁石Mは、永久磁石M、永久磁石Mをほぼ組み合わせた構造になっており、着磁後に極変わり目となる部分について、局所的に保磁力を高めつつ、その他の各磁石層について必要な保磁力を細かく調整することができる。
なお、上記永久磁石Mは、例えば、図8(c)に示した予備成形体M’を用いて、上記永久磁石Mと同様に作製することができる。また、予備成形体M’は、磁石層Aの高保磁力部a31となりうる磁石粉末材料a31’、磁石層Aの低保磁力部a32となりうる磁石粉末材料a32’、磁石層Bとなりうる磁石粉末材料B’、磁石層Cとなりうる磁石粉末材料C’を用いて、上記予備成形体M’と同様に作製することができる。
実際に、500W、8P12S、180℃の耐熱性が必要な表面磁石型モータについて、図5に示す磁石構成の永久磁石を設計した結果、高保磁力部Aを形成する磁石材料[iHc(A)=1989k[A/m]、Br(A)=1.15[T]]、低保磁力部Bを形成する磁石層bの磁石材料[iHc(A)=1591k[A/m]、Br(A)=1.25[T]]、低保磁力部Bを形成する磁石層bの磁石材料[iHc(A)=1193k[A/m]、Br(A)=1.35[T]]とすることにより、高保磁力部Aを形成する磁石材料[iHc(A)=1989k[A/m]、Br(A)=1.15[T]]単一で全体を設計した永久磁石と比較して、磁石高さを10%削減できた。その結果、モータ体積も同じ出力のまま10%削減できた。なお、上述の「8P12S」とは、磁石の極数が8極、巻線を施し、印加電流により界磁するステータ極数が12極であることを意味している。
以上、本発明に係る永久磁石、表面磁石型モータについて説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る永久磁石を備えた、本発明に係る表面磁石型モータの断面構造の一例を示した図である。 計算により求めた、ロータ位置による磁石内磁束密度の分布図である。 図2のデータを得るための計算モデルを模式的に示した図である。 第1実施形態に係る永久磁石Mについて示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観図、(c)は永久磁石Mの作製に供する予備成形体の一例である。 第1実施形態に係る永久磁石Mの変形例を示した図(平面図)である。 熱間押出加工により、永久磁石Mを作製する様子を示した図である。 第2実施形態に係る永久磁石Mについて示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観図、(c)は永久磁石Mの作製に供する予備成形体の一例である。 第3実施形態に係る永久磁石Mについて示した図であり、(a)は平面図、(b)は外観図、(c)は永久磁石Mの作製に供する予備成形体の一例である。
符号の説明
10 表面磁石型モータ(本モータ)
12 ステータ
12a ヨーク
12b ティース
12c 巻線
14 ロータ
14a ロータコア
16 隙間
M 永久磁石
永久磁石
高保磁力部
低保磁力部
’ 予備成形体
’ 高保磁力部Aとなりうる磁石粉末材料
’ 低保磁力部Bとなりうる磁石粉末材料
永久磁石
磁石層
磁石層
磁石層
’ 予備成形体
’ 磁石層Aとなりうる磁石粉末材料
’ 磁石層Bとなりうる磁石粉末材料
’ 磁石層Cとなりうる磁石粉末材料
永久磁石
磁石層
31 高保磁力部
32 低保磁力部
磁石層
磁石層
’ 予備成形体
31’ 磁石層Aの高保磁力部a31となりうる磁石粉末材料
32’ 磁石層Aの低保磁力部a32となりうる磁石粉末材料
’ 磁石層Bとなりうる磁石粉末材料
’ 磁石層Cとなりうる磁石粉末材料

Claims (6)

  1. モータのロータ表面に配置される永久磁石であって、
    保磁力の異なる複数の磁石材料を寄せ合わせて略円弧状に一体的に形成されており、
    着磁後に極変わり目となる磁石両縁部には、前記磁石材料のうち、最も高い保磁力を示す磁石材料より形成された高保磁力部が少なくとも存在し、
    当該磁石の磁化容易軸が、ラジアル方向に配向していることを特徴とする永久磁石。
  2. 前記高保磁力部は、前記磁石両縁部の全体にわたって存在しており、
    これら両高保磁力部の間は、前記高保磁力部を形成する磁石材料よりも低い保磁力を示す磁石材料より形成されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石。
  3. 磁石厚み方向に複数の磁石層が積層されてなる積層構造を有し、
    前記各磁石層の保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石。
  4. 磁石厚み方向に複数の磁石層が積層されてなる積層構造を有し、
    前記各磁石層の保磁力は、ロータ中心部側からモータのステータ側に向かって順に高く設定されており、
    前記ステータに対向する磁石層は、少なくともその層両縁部の全体にわたって前記高保磁力部が存在しており、これら両高保磁力部の間は、前記高保磁力部を形成する磁石材料よりも低い保磁力を示す磁石材料より形成されていることを特徴とする請求項1に記載の永久磁石。
  5. 前記磁石材料は、R−X1−X2系磁石材料(但し、R:Nd、Pr、Dy、TbおよびHoから選択される1種または2種以上の希土類元素、X1:Feおよび/またはCo、X2:Bおよび/またはC)であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の永久磁石。
  6. 請求項1から5の何れかに記載の永久磁石をロータ表面に備えた表面磁石型モータ。
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