JP2009024580A - 内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】燃焼モードを正常に切り替える。
【解決手段】エンジン200の燃焼モードを、ストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとの間で切り替える際、ECU100は、燃焼モード切り換え処理を実行する。当該処理においては、エンジン200の目標トルクTrrefが、切り換え前の燃焼モードについて推定された切り換え前トルクに対し、切り換え後の燃焼モードについて推定された切り換え後トルクと当該切り換え前トルクとの差分に経過時間に応じて増加する寄与比率γを乗じてなる加算項が加算されることにより、最終的に切り換え後トルクに一致するように設定される。その結果、内的又は外的に、或いは経時的に吸入空気量のズレが生じたとしても、目標トルクと切り換え後トルクとの偏差に応じた点火時期の補正が有限の時間経過のうちに、且つトルクショックを伴うことなく終了し、燃焼モードが正常に切り替わる。
【選択図】図8
【解決手段】エンジン200の燃焼モードを、ストイキ燃焼モードとリーン燃焼モードとの間で切り替える際、ECU100は、燃焼モード切り換え処理を実行する。当該処理においては、エンジン200の目標トルクTrrefが、切り換え前の燃焼モードについて推定された切り換え前トルクに対し、切り換え後の燃焼モードについて推定された切り換え後トルクと当該切り換え前トルクとの差分に経過時間に応じて増加する寄与比率γを乗じてなる加算項が加算されることにより、最終的に切り換え後トルクに一致するように設定される。その結果、内的又は外的に、或いは経時的に吸入空気量のズレが生じたとしても、目標トルクと切り換え後トルクとの偏差に応じた点火時期の補正が有限の時間経過のうちに、且つトルクショックを伴うことなく終了し、燃焼モードが正常に切り替わる。
【選択図】図8
Description
本発明は、例えばストイキ燃焼とリーン燃焼との間で燃焼モードを切り替え可能な、且つ内燃機関を目標トルクに応じて制御する所謂トルクデマンド制御を実行可能な内燃機関の制御装置の技術分野に関する。
この種の装置として、燃焼モードの切り換え時におけるトルク段差を抑制するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示された内燃機関の制御装置(以下、「従来の技術」と称する)によれば、燃焼モードの切り換え後に、吸入空気量と目標吸入空気量との偏差が所定値未満となるまで点火遅角等のトルク補正を行うことによって、当該トルク段差の抑制が可能であるとされている。
尚、燃焼モードの切り換え時、切り換えの方向に応じて点火時期補正や当量比補正の切り換え時期を変更するものも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
例えば内燃機関を構成する各部の機械的なバラツキや、それらに生じる経時変化等により、吸入空気量と目標吸入空気量との偏差が所定未満に収束しない場合がある。そのような場合には、点火時期の遅角を含む点火時期の補正が終了することなく継続されるため、燃焼モードが正常に切り替わらずに、燃費が著しく悪化する可能性がある。即ち、従来の技術には、燃焼モードの切り換え時において燃費の悪化を招きかねないという技術的な問題点がある。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、燃焼モードを正常に切り替えることが可能な内燃機関の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係る内燃機関の制御装置は、空燃比により規定される燃焼モードの切り換えが可能な内燃機関の制御装置であって、前記燃焼モードの各々について前記内燃機関の運転条件に基づいて前記内燃機関のトルクを推定可能なトルク推定手段と、前記燃焼モードが一の燃焼モードから他の燃焼モードへ切り替えられた場合に、前記内燃機関の目標トルクを、経過時間に応じて増加するように設定される寄与比率γ1と前記他の燃焼モードについて推定されたトルクたる切り換え後トルクとの積を含む第1項、及び前記寄与比率γ1の増加に伴って減少する寄与比率γ2と前記一の燃焼モードについて推定されたトルクたる切り換え前トルクとの積を含む第2項を含み、且つ前記経過時間に応じて前記目標トルクに対する前記切り換え後トルクの寄与が大きくなるように設定する目標トルク設定手段と、前記設定された目標トルクと前記他の燃焼モードについて推定されたトルクとの偏差に応じて、トルクショックが緩和されるように前記内燃機関の点火時期を制御する点火時期制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明における「内燃機関」とは、例えば複数の気筒を有し、当該各々の燃焼室において、例えばガソリン、アルコール或いはそれらの混合燃料等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する爆発力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等を適宜介し、例えば車両の車軸に対して動力として出力することが可能に構成された機関を包括する、例えば2サイクル或いは4サイクルレシプロエンジン等を含む概念であり、本発明では特に、燃焼モードとして、空燃比により規定される複数の燃焼モードを採ることが可能に構成された機関を指す。
ここで、「燃焼モード」とは、制御目標としての空燃比により主として規定される燃焼形態を指し、例えば、理論空燃比又は理論空燃比近傍の空燃比で実現される燃料(或いは混合気)のストイキ燃焼を伴うストイキ燃焼モード、理論空燃比よりもリーン側(即ち、高い側)で設定されるリーン空燃比で実現される燃料(或いは混合気)のリーン燃焼を伴うリーン燃焼モード、或いは理論空燃比よりもリッチ側(即ち、低い側)で設定されるリッチ空燃比で実現される燃料(或いは混合気)のリッチ燃焼を伴うリッチ燃焼モード等を適宜に含み得る概念である。好適な一形態として、これら燃焼モードの切り替えは、例えば内燃機関の負荷条件に応じてなされ、例えば高負荷領域(リーン燃焼時のトルクではドライバの要求トルクが満たし得ない、或いは当該要求トルクを満たすことに実践上無視し得ない不具合が伴い得る程度に負荷が高い領域)においてストイキ燃焼モードが、また低負荷領域(リーン燃焼時のトルクにより要求トルクを実践上問題無い範囲で満たし得る、或いはリーン燃焼による燃費向上の利益を実践上何らかの不具合を顕在化させることなく享受し得る程度に負荷が低い領域)においてリーン燃焼モードが、夫々選択され、実制御に供されてもよい。或いは、例えばリーン燃焼モードの実行期間中に、例えばNSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)におけるNOx燃焼を促進する等の理由から(即ち、例えばNOx吸蔵量に応じて、或いはリーン燃焼モードが選択されている期間の長さに応じて)、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ或いはリッチ燃焼モードへ例えば一時的に切り替えられてもよい。
尚、本発明に係る「燃焼モード」とは、空燃比により規定される限りにおいて、例えば、燃焼に供される混合気の状態を含んで規定されてもよく、例えば、リーン燃焼を採れば、均質リーン燃焼及び成層リーン燃焼等が含まれてもよい。従って、本発明に係る内燃機関における燃料の噴射形態は、所謂ポート噴射及び筒内噴射のいずれであってもよく、また他の噴射形態であってもよい。
一方、本発明に係る内燃機関は、その動作状態が目標トルクに基づいて制御される。目標トルクは、例えば、アクセルペダルの操作量(以下、適宜「アクセル開度」と称する)等、目標トルクと相関を有し得るものとして定められた各種の指標値に基づいて直接的に、例えば予め然るべき記憶手段に記憶されたマップを参照することにより、或いは例えば予め実験的に、経験的に、理論的に、又はシミュレーション等に基づいて少なくとも実践上過不足ない程度にドライバの要求するトルクと整合する目標トルクを導出し得るよう定められた数値演算式、論理演算式又はアルゴリズム等に従った各種数値演算や論理演算の結果として設定される。或いは、これら各種指標値に基づいて間接的に、例えば目標トルクと相関するドライバ要求加速度等の算出、導出又は推定等を経て設定されてもよい。目標トルクが設定されると、例えば電子制御式スロットル装置等の駆動制御を介して、当該目標トルクが出力されるようにスロットルバルブの開度(以下、適宜「スロットル開度」と称する)等が調整され、吸入空気量が目標値に制御され、内燃機関の機関出力トルク(以下、適宜「実トルク」と称する)は、目標トルクに追従せしめられる。即ち、所謂トルクデマンド方式の制御が実行される。
ここで、燃焼モードの切り替え要求自体は、目標トルクの変化とは無関係に発生し得る(無論、燃焼モードが負荷条件に応じて切り替わるならば、負荷条件と対応する目標トルクと全く無関係ではない)から、目標トルクに変化がない運転状態であっても燃焼モードが切り替わることがある。燃焼モードの切り替わりには目標空燃比の変化が伴うから、燃焼モードの切り替わり時には必然的に、その時点での吸入空気量に応じて燃料噴射量の増加制御(例えば、リーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへの切り替え時)又は減少制御(例えば、ストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードへの切り替え時)が行われる。
一方で、燃料噴射量は、実トルクと関係するから、燃料噴射量の増減が伴う場合、燃焼モードの切り替わり前後において実トルクの急激な変化が生じ、所謂トルクショック(トルク段差とも称される)として顕在化し易い。無論、燃焼モードが切り替えられる場合、例えばスロットル開度の制御等により、吸入空気量が切り替え後の燃焼モードの空燃比に対応する量まで増減制御され、然るべき時間経過の後には切り替え後の燃焼モードに対応する実トルクは、目標トルク、或いは目標トルク近傍の値に収束するが、一般的に、スロットル開度の変化に対して吸入空気量の応答性は悪い(少なくとも燃料噴射量の応答速度と較べれば遅い)から、スロットル開度のみにより実トルクを目標トルクに正確に追従させることには実践上の困難が伴い得る。尚、このような問題は、目標トルクが上述したように不変である場合に比較的顕著であるが、目標トルクの連続性を担保する観点からみれば、少なくとも刹那的にみて燃焼モードの切り替わり時点において目標トルクは連続であるべきであり、目標トルクの変化が緩慢であるにせよ生じている状況、或いは目標トルクが激しく変化している状況であったとしても本質的には変わりなく生じ得る。
そこで、本発明に係る内燃機関の制御装置には、夫々が例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として一体に又は別体に構成される、トルク推定手段及び点火時期制御手段が備わる。
トルク推定手段は、例えばAFM(Air Flow Meter)等の各種検出手段により検出される又は推定される吸入空気量(即ち、内燃機関の負荷に対応する指標値)又は係る吸入空気量から算出される実負荷率、機関回転速度、燃料噴射量、及び固定値又は可変な値として設定される、基準となる点火時期(以下、適宜「ベース点火時期」と称する)等に基づいて、予め設定され然るべき記憶手段に記憶されてなるマップ等から該当する数値を選択すること等によって、或いはその都度然るべきアルゴリズムや算出式に従った論理演算や数値演算を行うこと等によって、内燃機関の実トルクを推定する。このような実トルクの推定は、予め設定される燃焼モードの各々について、何ら変わりなく実行可能であり、現時点で選択されていない燃焼モードに対応するトルク(この場合、厳密には実トルクではなく、言わば仮想的な実トルクである)も同様に推定可能である。
このように、その時点での内燃機関の実トルクが推定されれば、この推定される実トルクと目標トルクとの差分は、即ちトルクショックそのもの、或いはトルクショックを好適に表す指標値の一となる。ここで、点火時期制御手段は、目標トルクと推定された実トルクとの偏差に応じて点火時期を制御する。例えば、実トルクが目標トルクよりも大きい場合、実トルクを目標トルクへ近付けるべく、例えば点火時期を遅角する点火時期遅角制御が実行される。点火時期を遅角する(実践上、不具合が顕在化しない制御範囲で遅角する)ことによって実トルクは少なくとも減少する。また、例えば実トルクが目標トルクよりも小さい場合、実トルクを目標トルクへ近づけるべく、例えば点火時期を進角する点火時期進角制御が実行される。点火時期を進角する(実践上、不具合が顕在化しない制御範囲で進角する)ことによって実トルクは少なくとも増加する。このような点火時期制御手段によるトルクショックの緩和制御により、燃焼モードの切り替わり時におけるトルクショックは、少なくとも実践上ドライバに不快感を与えることのない程度に低減される。
一方、例えば、吸気管、吸気ポート、スロットルバルブ或いは吸気バルブ等、内燃機関を構成する各種の装置、部材又は部品には、例えばその形状、寸法又は動作状態(動作量、動作させるための制御量及び動作範囲等を含む)を含む物理的な、機械的な、機構的な又は電気的な状態に少なくとも幾らかなりのバラツキ(即ち、個体差)があり、また、内燃機関の使用条件によっては、経時的に物理的、機械的、機構的又は電気的な各種の不具合(故障、損傷又は損壊等を含む)が生じることもある。このような、内的又は外的を問わない何らかの要因により、例えば同一アクセル開度に対する吸入空気量相互間に有意な差が生じる場合、或いは同一スロットル開度に対する吸入空気量相互間に有意な差が生じる場合、燃焼モードの切り替え時に最終的に到達する吸入空気量(即ち、点火時期によるトルクショックの緩和制御を除けば、一義的に実トルクである)の、目標吸入空気量(即ち、同様に一義的に目標トルクである)への収束精度が低下する。
このような場合、上述した点火時期によるトルクショック緩和制御の要否を規定する条件が、少なくともトルクショックを顕在化させないように定められる限りにおいては、当該トルクショックの緩和制御を終了することが難しくなる。従って、例えば、点火時期の遅角制御が、或いは点火時期の進角制御が終了することなく継続され、燃焼モードが正常に切り替わらないことになる。例えば、燃焼モードの切り換え時点(当該切り換え時点により一義的に定まる時点であってもよい)から点火時期の調整を伴わずに内燃機関を動作させることが可能となった時点(当該時点により一義的に定まる時点であってもよい)をして燃焼モードの切り換え期間と定義するならば、このような内燃機関に生じる内的又は外的な要因による吸入空気量のズレは、燃焼モードの切り換え期間を終了させ難い方向に作用する。このように燃焼モードの切り替え期間が継続すると、点火時期が遅角側に補正されるにせよ進角側に補正されるにせよ、ベース点火時期がMBTに設定されていれば顕著に、またそうでないにしろ幾らかなり、燃費或いはエミッションの悪化が伴い得る。
そこで、本発明に係る内燃機関の制御装置には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成される目標トルク設定手段が備わり、係る問題が好適に解決される構成となっている。即ち、目標トルク設定手段は、燃焼モードが一の燃焼モードから他の燃焼モードへ切り替えられた場合に、目標トルクを、寄与比率γ1と切り換え後トルク(即ち、ここでは他の燃焼モードについて推定されたトルク)との積を含む、好適には当該積そのものである第1項、及び寄与比率γ2と切り換え前トルク(即ち、ここでは一の燃焼モードについて推定されたトルク)との積を含む、好適な一形態としては当該積そのものである第2項を含むように設定する。
ここで、寄与比率γ1とは、燃焼モードの切り替え期間に対応する経過時間(好適な一形態としては、切り替え時点からの経過時間)に応じて増加する可変な値であり、且つ設定されるべき目標トルクに対する、切り換え後トルクの寄与の度合いを規定し得る値を包括する概念である。また、寄与比率γ2とは、寄与比率γ1の増加に伴って減少する、好適には寄与比率γ1と一義的な関係を有する値であり、寄与比率γ1とγ2とは、好適にはいずれか一方が定まれば一義的に他方が定まる対応関係にある。比率であることに鑑みれば、好適にはこれらの総和は1であるが、設定された目標トルクが実践上何らかの不具合を顕在化させない限りにおいて、寄与比率γ1とγ2との総和は1でなくてもよく、また必ずしも一義的な関係を有しておらずともよい。例えばこれらは相互に一対多、多対一又は多対多に対応する関係であってもよい。
この寄与比率γ1及びγ2は、或いはγ1及びγ2のうち一方(一方が定まれば他方が定まる場合)は、例えば、然るべき記憶手段に上記経過時間に対応付けられる形で記憶されている場合には、当該経過時間に対応する一の値を選択的に取得することにより目標トルクの設定に供されてもよいし、その都度、予め実験的に、経験的に、理論的に、又はシミュレーション等に基づいて当該寄与比率を実践上過不足なく設定し得るように定められた数値演算式、論理演算式又はアルゴリズムに従った数値演算又は論理演算の結果として個別具体的に目標トルクの設定に供されてもよい。
ここで特に、目標トルク設定手段は、内燃機関の目標トルクを、上述した経過時間に応じて目標トルクに対する切り換え後トルクの寄与が大きくなるように設定する。即ち、目標トルクは、第1項及び第2項がどのように目標トルクに対し影響しているかによらず、少なくとも経過時間に応じて段階的に又は連続的に、切り換え後トルクに漸近又は収束するように設定される。このように、本発明に係る内燃機関の制御装置において、目標トルクは、切り換え前トルク、切り換え後トルク及びこれらの寄与の度合いを規定する時間関数としての寄与比率によって一定又は不定の周期で段階的に、又は連続的に設定される。従って、目標トルクと切り換え後トルクの収束値とが実践的に見て看過し得ない程度に乖離している場合であっても、目標トルク(或いは切り換え後トルク)を、切り換え後トルクに(或いは目標トルクに)厳密に、又は実質的に、或いは現実的に一致させることが可能となる。
このため、上述した点火時期制御手段によるトルク調整は、有限の時間範囲の内に終了する。言い換えれば、燃焼モードの切り換え期間を有限の時間範囲として設定することが可能となる。即ち、一の燃焼モードを、トルク調整を伴わない他の燃焼モードに切り替えること、即ち燃焼モードを正常に切り替えることが可能となるのである。本発明に係る内燃機関の制御装置によれば、このように点火時期によるトルク調整が有限の時間範囲において終了することにより、点火時期の遅角又は進角等による燃費やエミッションの悪化を効果的に抑制するといった実践上極めて高い利益が提供される。
尚、本発明に係る目標トルク設定手段は、このような燃焼モードの切り換え時における目標トルクに加えて、燃焼モードの切り換えがなされない期間における目標トルク(例えば、上述したような、アクセル開度やドライバ要求加速度等に基づいた目標トルク)の設定を行ってもよい。即ち、本発明に係る目標トルク設定手段の動作は、内燃機関の目標トルクを設定する設定手段の動作の一部であってもよい。
本発明に係る内燃機関の制御装置の一の態様では、前記寄与比率γ1と前記寄与比率γ2との和は1である。
この態様によれば、寄与比率γ1とγ2との和が1であるため、目標トルクを、切り換え時点における実トルクに対応するトルク、好適な一形態としては切り換え時点における実トルクから、切り換え後トルクに対応するトルク、好適な一形態としては切り換え後トルクまで、実践上の有意性を担保しつつ変化させることが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記目標トルク設定手段は、前記第1項と前記第2項との和として前記目標トルクを設定する。
この態様によれば、目標トルクが、第1項と第2項との和として設定されるため、目標トルクを、切り換え時点における実トルクに対応するトルク(好適には、切り換え時点における実トルク)から、切り換え後トルクに対応するトルク(好適には切り換え後トルク)まで、実践上の有意性を担保しつつ変化させることが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記目標トルク設定手段は、前記経過時間が所定値に達した時点で前記切り換え後トルクと一致するように前記目標トルクを設定する。
この態様によれば、経過時間が所定値に達した時点で目標トルクが切り換え後トルクに一致するため、例えば燃焼モードの切り換えに伴うトルクショックを好適に緩和しつつ、燃焼モードの切り換え期間(即ち、点火時期制御によるトルク調整を伴う期間)を可及的に短縮化するといったことが可能となる。より定性的に言えば、この態様によれば、トルクショックの軽減と燃費及びエミッションの悪化抑制とを相互に協調的に実現することが可能となり、実践上極めて有益である。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記寄与比率γ1は、前記経過時間と時定数とにより規定される一次遅れ要素に基づいて設定される。
この態様によれば、寄与比率γ1が(寄与比率γ1がγ2と一義的であればγ2であってもよい)、経過時間と時定数(即ち、約0.63)とにより規定される一次遅れ要素に基づいて設定されるため、寄与比率γ1(場合によってはγ2)を数値演算の結果として簡便に且つ有意に導出することが可能となる。
本発明に係る内燃機関の制御装置の他の態様では、前記寄与比率γ1は、予め定常状態において前記燃焼モードが切り替えられた場合の、前記切り換え前トルク及び前記切り換え後トルクの時間応答特性に基づいて設定される。
この態様によれば、寄与比率γ1(寄与比率γ1がγ2と一義的であればγ2であってもよい)が、定常時における切り換え前トルク及び切り換え後トルクの時間応答に基づいて設定されるため、定常走行時(即ち、本来目標トルクの変化が生じない状況)、且つ切り換え後トルクが有限の時間経過の後に燃焼モードの切り換え時点におけるトルクに収束する場合において、目標トルクを物理的に、実質的又は現実的にみて一定の値に維持することが可能となる。従って、吸入空気量の特性(例えば、スロットル開度に対する吸入空気量或いはその時間応答等)が、内燃機関の個体差或いは内的又は外的な要因による経時的な変化等により、事前の適合から乖離しているか否かとは関係なく、燃焼モードの切り換えを、トルクショックを顕在化させることなく、且つ有限の時間で終了させることが可能となる。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の模式図である。
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<第1実施形態>
<実施形態の構成>
始めに、図1を参照して、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム10の構成について説明する。ここに、図1は、エンジンシステム10の模式図である。
図1において、エンジンシステム10は、図示せぬ車両に搭載され、ECU100、エンジン200、ブレーキペダル300、ブレーキペダルセンサ310、アクセルペダル400及びアクセルポジションセンサ410を備える。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等を備え、エンジン200の動作全体を制御する電子制御ユニットであり、本発明に係る「内燃機関の制御装置」の一例である。
尚、ECU100は、本発明に係る「トルク推定手段」、「目標トルク設定手段」及び「点火時期制御手段」の夫々一例として機能する一体の電子制御ユニットであるが、本発明に係るこれら各手段の物理的、機械的及び電気的な構成は、これに限定されるものではなく、例えば複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
エンジン200は、車両の動力源として機能するガソリンエンジンであり、本発明に係る「内燃機関」の一例である。エンジン200は、シリンダ201内にその一部たる点火プラグの一部が露出してなる点火装置202の点火動作により混合気を爆発させると共に、爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介してクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。また、クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。クランクポジションセンサ206は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100は、クランクポジションセンサ206によって検出されたクランクシャフト205の回転位置に基づいて、点火装置202の点火時期等を制御することが可能に構成されている。また、ECU100は、クランクシャフト205の回転位置に基づいてエンジン200の機関回転数NEを算出することが可能に構成されている。以下に、エンジン200の要部構成を、その動作の一部と共に説明する。
シリンダ201内における燃料の燃焼に際し、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート213において、インジェクタ214から噴射された燃料と混合されて前述の混合気となる。燃料は、燃料タンク215に貯留されており、低圧ポンプ217の作用によりデリバリパイプ216を介してインジェクタ214に圧送供給されている。インジェクタ214は、ECU100と電気的に接続されており、この供給される燃料を、ECU100の制御に従って吸気ポート213に噴射することが可能に構成されている。
尚、本実施形態におけるインジェクタ214は、吸気ポート213に燃料を噴射する所謂ポート噴射型の燃料噴射装置として構成されているが、これは一例に過ぎず、例えば低圧ポンプ217に接続された高圧ポンプ及びコモンレール等により高温高圧のシリンダ201内に直接燃料を噴射する、所謂筒内直噴インジェクタとして構成されていてもよい。
シリンダ201内部と吸気管207とは、吸気バルブ218の開閉によって連通状態が制御されている。シリンダ201内部で燃焼した混合気は排気となり吸気バルブ218の開閉に連動して開閉する排気バルブ219の開弁時に排気ポート220を介して排気管221に導かれる。
吸気管207上には、クリーナ208が配設されており、外部から吸入される空気が浄化される構成となっている。クリーナ208の下流側(シリンダ側)には、エアフローメータ209が配設されている。エアフローメータ209は、ホットワイヤー式と称される形態を有しており、吸入された空気の質量流量(即ち、吸入空気量)を直接検出することが可能に構成されている。尚、エアフローメータ209は、ECU100と電気的に接続されており、検出された吸入空気の質量流量は、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
吸気管207におけるエアフローメータ209の下流側には、シリンダ201内部へ吸入される吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ210が配設されている。このスロットルバルブ210には、スロットルポジションセンサ212が電気的に接続されており、その開度たるスロットル開度THRを検出することが可能に構成されている。尚、スロットルポジションセンサ212は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたスロットル開度THRは絶えず、或いは一定又は不定の周期でECU100に把握される構成となっている。
一方、ECU100は、後述するアクセルポジションセンサ410によって検出されるアクセル開度に基づいてスロットルバルブモータ211の駆動状態を制御する。スロットルバルブ210は、係るスロットルバルブモータ211の駆動力によって駆動される構成となっている。尚、スロットルバルブ210は、ECU100により制御されたスロットルバルブモータ211の駆動力により駆動される電子制御式のスロットルバルブであり、スロットル開度は、ECU100によって、ドライバの意思(即ち、アクセル開度)とは無関係に制御され得る。
排気管221には、三元触媒223が設置されている。三元触媒223は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能な触媒である。
三元触媒223の下流側には、NOxの浄化に供されるNSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)が設けられている。NSR触媒は、後述する燃焼モードとしてリーン燃焼モードが選択される期間において、三元触媒223により浄化できないNOxを吸蔵すると共に、適宜行われるリッチスパイク制御(空燃比リッチ制御)において吸蔵されたNOxを排気中のHCによりN2に還元することが可能に構成される。
排気管221における三元触媒223の上流側には、空燃比センサ222が配設されている。空燃比センサ222は、排気ポート220を介して排出される排気ガス中の酸素濃度に基づいて、エンジン200の空燃比を検出することが可能に構成されている。空燃比センサ222は、ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比は、絶えずECU100によって把握される構成となっている。
また、シリンダ201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するための冷却水の温度を検出するための温度センサ224が配設されている。温度センサ224は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたエンジン冷却水温は、ECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
ブレーキペダル300は、ドライバにより操作されるペダルであり、車両は、このブレーキペダルが操作された場合に制動される構成となっている。このブレーキペダル300の操作量たるブレーキ操作量は、ブレーキペダル300の近傍に配されたブレーキペダルセンサ310により検出される構成となっている。また、ブレーキペダルセンサ310は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたブレーキ操作量は、ECU100により絶えず、或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
尚、ECU100には、車両の個々の車輪に制動力を付与する図示せぬ制動装置の制御系、例えばブレーキアクチュエータ等が電気的に接続されており、ブレーキペダルセンサ310によって検出されたブレーキ操作量に応じて制動力が制御される構成となっている。
アクセルペダル400は、ドライバにより操作されるペダルである。アクセルペダル400は、ドライバが車速を調整する際に、或いは加速を求める際に顕著に操作されるペダルであり、その操作量たるアクセル開度は、上述したようにスロットルバルブ210の開度が制御される際に使用される。また、アクセルペダル400の近傍には、アクセルポジションセンサ410が設置されており、アクセル開度がリアルタイムに検出される構成となっている。アクセルポジションセンサ410は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度はECU100によって絶えず或いは一定又は不定の周期で把握される構成となっている。
<実施形態の動作>
以下に、上記構成を有する本実施形態に係るエンジンシステム10の動作について説明する。
以下に、上記構成を有する本実施形態に係るエンジンシステム10の動作について説明する。
<燃焼モードの概要>
エンジン200では、空燃比20以上(一例であり、限定されない)のリーン空燃比を目標空燃比とするリーン燃焼モードと、空燃比14.8のストイキ空燃比を含み、且つ燃焼性やトルク特性を勘案した調整を可能とする空燃比範囲(即ち、一時的に空燃比リッチな状況が必要となる場合に選択される12〜13前後の空燃比を含む範囲)に属する空燃比を目標空燃比とするストイキ燃焼モードとの二種類の燃焼モードが適宜切り替えられつつ実制御に供される構成となっている。
エンジン200では、空燃比20以上(一例であり、限定されない)のリーン空燃比を目標空燃比とするリーン燃焼モードと、空燃比14.8のストイキ空燃比を含み、且つ燃焼性やトルク特性を勘案した調整を可能とする空燃比範囲(即ち、一時的に空燃比リッチな状況が必要となる場合に選択される12〜13前後の空燃比を含む範囲)に属する空燃比を目標空燃比とするストイキ燃焼モードとの二種類の燃焼モードが適宜切り替えられつつ実制御に供される構成となっている。
ECU100は、空燃比センサ222により検出されるエンジン200の空燃比を参照して、燃料噴射量のフィードバック制御を行い、空燃比が、その時点で選択されている燃焼モードに対応する空燃比となるようにインジェクタ214を介した燃料噴射量を制御する。尚、このような空燃比の制御は無論、エンジン200に備わる複数のシリンダ201の各々について実現される。
一方、本実施形態において、ECU100は、エンジン200の車速及びアクセル開度に基づいてこれら燃焼モードを選択する。基本的には、低負荷走行時にリーン燃焼モードが、また高負荷走行時にストイキ燃焼モードが、夫々選択される。尚、リーン燃焼モードにおいては、上述したようにNSR触媒225にNOxが吸蔵されるため、適宜空燃比がストイキ空燃比よりもリッチ側に設定され、吸蔵されたNOxが燃焼せしめられる。このような一時的な空燃比のリッチ制御は、ストイキ燃焼モードの一部として実現される。
尚、本発明に係る内燃機関が採り得る燃焼モードの種類は、ここに例示するものに限定されず、多種多様な形態を採ってよい。また、燃焼モード相互間の切り換え条件も、何ら限定されず、例えば公知の各種条件が採用されてよい。
<トルクデマンド制御>
エンジンシステム10では、エンジン200の動作状態が、目標トルクに応じてECU100により制御され、所謂トルクデマンド制御が実行される。ここで、図2を参照し、トルクデマンド制御の詳細について説明する。ここに、図2は、トルクデマンド制御のロジックを概念的に表してなるブロック図である。
エンジンシステム10では、エンジン200の動作状態が、目標トルクに応じてECU100により制御され、所謂トルクデマンド制御が実行される。ここで、図2を参照し、トルクデマンド制御の詳細について説明する。ここに、図2は、トルクデマンド制御のロジックを概念的に表してなるブロック図である。
図2において、ECU100には、スロットル開度マップ101、トルクマップ102及び遅角量マップ104の三種類のマップが格納されている。
スロットル開度マップ101は、エンジン200のスロットル開度指示値thrがエンジン200の目標トルクTrrefに対応付けられて設定されてなるマップである。ECU100は、目標トルクTrrefを算出し、スロットル開度マップ101から、算出された目標トルクTrrefに対応する値を選択的に取得することにより、スロットル開度指示値thrを決定する。ECU100は、この決定されたスロットル開度指示値thrに基づいて上述したようにスロットルバルブモータ211を制御し、スロットルバルブ210の開閉状態(即ち、スロットル開度)を制御する。
尚、この際、ECU100は、アクセルポジションセンサ410を介して取得されるアクセル開度に基づいてドライバが要求する前後加速度を算出し、係る前後加速度に基づいて目標トルクTrrefを算出する。目標トルクTrrefは、ドライバが要求する要求トルクであり、エンジン200から出力されるべきトルクの目標値を表す。算出された目標トルクTrrefの値は、スロットル開度指示値thrの決定に供されると共に、後述する加減算器103に出力される。
トルクマップ102は、エンジン200により出力されている実トルクの推定値を表す推定トルクTrmesの値が格納されたマップである。トルクマップ102には、後述する燃焼モードの各々について、エアフローメータ209により検出される吸入空気量(或いは、吸入空気量と機関最大吸入空気量とに基づいて算出される実負荷率等、エンジン負荷に対応する各種指標値であってもよい)、クランクポジションセンサ206の出力信号から算出される機関回転速度NE、インジェクタ214から噴射される燃料の噴射量、及びROMに格納された点火装置202のベース点火時期PGBSE(即ち、これらは夫々本発明に係る「内燃機関の運転条件」の一例である)に対応付けられる形で、推定トルクTrmesの値が格納されている。ECU100は、トルクマップ102から、現時点のこれら運転条件に対応する値を選択的に取得することにより推定トルクTrmesの値を取得する。取得された推定トルクTrmesの値は、加減算器103に出力される。この際、ベース点火時期PGBSEの値は、推定トルクTrmesの取得に供されると共に、後述する加減算器105に出力される。
尚、推定トルクTrmesの取得方法(即ち、エンジン200における実トルクの推定方法)は、ここに例示するマップを使用した手法に限定されない。例えば、予め燃焼モードの各々について、又は燃焼モードに対応する空燃比を代入すべき一の演算要素として、予め実験的に、経験的に、又は理論的にエンジン200の実トルクを実践上不足の無い程度に導出し得るものとして定められた各種の数値演算式、論理演算式、アルゴリズム或いはシミュレーションモデルに、例えば上述したような運転条件に対応する各種指標値(場合により燃焼モードに対応する空燃比を含む)を代入すること等によりなされる数値演算や論理演算の結果として、推定トルクTrmesが算出されてもよい。
加減算器103では、目標トルクTrrefの値から推定トルクTrmesの値が減算される。この結果、加減算器103からは、「Trref−Trmes」に相当するトルク偏差ΔTrの値が遅角量マップ104に出力される。
遅角量マップ104は、点火装置202の点火時期をベース点火時期PGBSEに対しどれだけ遅角させるかを表す遅角量DLが、係るトルク偏差ΔTrの値に対応付けられて格納されている。点火時期の遅角によりエンジン200の実トルクは低下するから、遅角量マップ104には、当該偏差の値が負である場合(即ち、推定トルクTrmesが目標トルクTrrefよりも大きい場合)についてのみ有意な遅角量が設定されている。その他の場合については、遅角量はゼロに設定される。
ECU100は、遅角量マップ104から該当する遅角量DLを選択して加減算器105に出力する。加減算器105には、既に述べたようにベース点火時期PGBSEの値が出力されており、加減算器105は、「PGBSE−DL」に相当する減算処理を行って、最終的な点火時期PGを決定し、点火時期PGに対応する点火時期指示値pgを算出する。ECU100は、この決定された点火時期指示値pgに基づいて点火装置202を制御し、エンジン200の点火時期をこの決定された点火時期PGに制御する。
このように、エンジンシステム10では、ベース点火時期PGBSEに対するエンジン200の実トルクを表す推定トルクTrmesが目標トルクTrrefよりも大きい場合について点火時期の遅角量DLが設定され、点火時期が遅角される。即ち、本発明に係る「点火時期を制御する」動作の一例たる点火時期の遅角制御が実行される。この結果、エンジン200の実トルクを目標トルクTrrefに追従させることが可能となり、ドライバビリティを含む快適性の向上が図られる。
尚、本発明に係る「点火時期を制御する」動作としては、このような点火時期の遅角のみでなく、点火時期の進角制御も含まれる。従って、図示は省略するが、ECU100には、遅角量マップ104と同等の進角量マップが格納される。この進角量マップには、例えば点火装置202の点火時期をベース点火時期PGBSEに対しどれだけ進角させるかを表す進角量が、上述したトルク偏差ΔTrの値に対応付けられて格納されている。点火時期の進角によりエンジン200の実トルクは上昇するから、進角量マップには、当該偏差の値が正である場合(即ち、推定トルクTrmesが目標トルクTrrefよりも小さい場合)についてのみ有意な進角量が設定されている。その他の場合については、進角はゼロに設定される。
<燃焼モードの切り換え制御>
エンジン200の燃焼モードは、上述したように主としてエンジン負荷に応じて切り替わる。ここで、図3を参照し、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替わる際のエンジン200のトルクの推移について説明する。ここに、図3は、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる際のエンジン200の動作状態を表すタイミングチャートである。尚、これ以降は、特に断りのない限り、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる場合について説明することとする。即ち、本実施形態では、リーン燃焼モードが本発明における「一の燃焼モード」に、同様にストイキ燃焼モードが「他の燃焼モード」に夫々相当する。
エンジン200の燃焼モードは、上述したように主としてエンジン負荷に応じて切り替わる。ここで、図3を参照し、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードに切り替わる際のエンジン200のトルクの推移について説明する。ここに、図3は、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる際のエンジン200の動作状態を表すタイミングチャートである。尚、これ以降は、特に断りのない限り、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる場合について説明することとする。即ち、本実施形態では、リーン燃焼モードが本発明における「一の燃焼モード」に、同様にストイキ燃焼モードが「他の燃焼モード」に夫々相当する。
図3において、横軸は時刻であり、縦軸の系列には、上段から順にスロットル開度THR、吸入空気量GA、エンジン200のトルク及び点火時期PGの時間応答特性が表されている。尚、スロットル開度THRとは、上述したスロットル開度指示値thrに基づいた制御を経た実際のスロットルバルブ210の開度であり、点火時期PGとは、上述した点火時期指示値pgに基づいた点火時期制御を経た点火装置202の実際の点火時期である。
図3には、トルクの応答特性として、目標トルクTrrefの時間応答特性たる図示PRF_Trref1(図示破線参照)、ベース点火時期PGBSEにおける(即ち、点火時期の遅角を伴わない)ストイキ燃焼モードについての推定トルクTrmesの時間応答特性たる図示PRF_TrST1(実線参照)、及びベース点火時期PGBSEにおける(即ち、点火時期の遅角を伴わない)リーン燃焼モードについての推定トルクTrmesの時間応答特性たる図示PRF_TrLN1(鎖線参照)の三種類の時間応答特性が示される。
図3において、例えば車両が定常走行中である等して、目標トルクTrrefがTr0で一定であるとする。このように目標トルクが一定である状況において、時刻T0に燃焼モードがストイキ燃焼モードに切り替えられたとする。この場合、時刻T0以降、PRF_TrST1は、本発明に係る「切り換え後トルク」の時間応答特性に、PRF_TrLN1は、本発明に係る「切り換え前トルク」の時間応答特性に夫々対応する。尚、時刻T0以降に、PRF_TrST1及びPRF_TrLN1により表される、ベース点火時期にPGBSEにおけるエンジン200の推定トルクTrmesを、これ以降夫々「切り換え後トルクTrST」及び「切り換え前トルクTrLN」と称することとする。
燃焼モードがストイキ燃焼モードへ切り替わると、目標空燃比が低くなるため、吸入空気量が過剰となる。このため、ECU100は、上述したスロットル開度指示値thrの変更を経て、スロットル開度THRを時刻T0以前のTHR1からストイキ燃焼モードにおいてエンジントルクを目標トルクTr0に収束させるためのTHR0まで減少させ、吸入空気量GAを、GA1からGA0へと変化させる。
ところが、スロットル開度THRの変化に対し、吸入空気量GAの時間応答は緩慢であり、スロットル開度THRの変化に対し実際に吸入空気量GAがGA0まで変化するには、実践上無視し得ない時間遅延が生じる。図3では、そのような時間遅延により、時刻T0から相応の時間経過を経た時刻T1において吸入空気量がGA0に収束する様子が示される。
一方、このように吸入空気量GAの変化が緩慢であるのに対し、目標空燃比自体は、時刻T0においてストイキ燃焼モードに対応する値へ瞬時的に切り替わるため、何らの対策もなされなければ、時刻T0から時刻T1に至る期間において、実トルクは切り換え後トルクTrSTとなり、当該期間において目標トルクに対し明らかに過剰となる。即ち、時刻T0から時刻T1に至る期間においてドライバにより知覚可能なトルクショックが生じることとなる。
そこで、ECU100は、吸入空気量GAの減少制御及びそれに伴う燃料噴射量の制御に連動して、トルク偏差ΔTr(即ち、切り換え後トルクTrSTと目標トルクTrrefとの偏差)に応じて点火時期PGを遅角する。即ち、点火時期PGは、ベース点火時期PGBSEから時刻T0においてPGDL1まで遅角され、時刻T1にかけて徐々に遅角量DLが減少せしめられることにより、時刻T1において再びベース点火時期PGBSEに復帰する。このような点火時期PGの制御に伴い、図3において不図示の実トルクは、目標トルクTrrefに一致する。
<燃焼モード切り換え処理の詳細>
一方、例えばスロットルバルブ210等、吸入空気量と相関を有する、エンジン200を構成する各種の装置、部材又は部品には、例えばその形状、寸法又は動作状態(動作量、動作させるための制御量及び動作範囲等を含む)を含む物理的な、機械的な、機構的な又は電気的な状態に少なくとも幾らかなりのバラツキ(即ち、個体差)があり、また、エンジン200の使用条件によっては、経時的に物理的、機械的、機構的又は電気的な各種の不具合(故障、損傷又は損壊等を含む)が生じることもある。このような、内的又は外的を問わない何らかの要因により、或いは経時的な要因により、例えば同一アクセル開度に対する吸入空気量相互間に有意な差が生じる場合、或いは同一スロットル開度に対する吸入空気量相互間に有意な差が生じる場合、燃焼モードを切り替えた際に最終的に到達する吸入空気量(即ち、切り換え後トルクTrSTと相関する)の、目標吸入空気量(即ち、目標トルクと相関する)への収束精度が低下する。
一方、例えばスロットルバルブ210等、吸入空気量と相関を有する、エンジン200を構成する各種の装置、部材又は部品には、例えばその形状、寸法又は動作状態(動作量、動作させるための制御量及び動作範囲等を含む)を含む物理的な、機械的な、機構的な又は電気的な状態に少なくとも幾らかなりのバラツキ(即ち、個体差)があり、また、エンジン200の使用条件によっては、経時的に物理的、機械的、機構的又は電気的な各種の不具合(故障、損傷又は損壊等を含む)が生じることもある。このような、内的又は外的を問わない何らかの要因により、或いは経時的な要因により、例えば同一アクセル開度に対する吸入空気量相互間に有意な差が生じる場合、或いは同一スロットル開度に対する吸入空気量相互間に有意な差が生じる場合、燃焼モードを切り替えた際に最終的に到達する吸入空気量(即ち、切り換え後トルクTrSTと相関する)の、目標吸入空気量(即ち、目標トルクと相関する)への収束精度が低下する。
このような場合に生じる問題について、図4を参照して説明する。ここに、図4は、吸入空気量が目標値に収束しない場合のエンジン200の動作状態を表すタイミングチャートである。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、吸入空気量GAが、何らかの原因により時刻T1にGA2(GA0<GA2<GA1)に収束したとする。この場合、切り換え後トルクTrSTの時間応答は、図示PRF_TrST2(実線参照)となり(同様に、切り換え前トルクTrLNの時間応答は、図示PRF_TrLN2(鎖線参照)となる)、切り換え後トルクTrSTの収束値は、Tr3(Tr0<Tr3<Tr1)となる。即ち、時刻T1以降においても、目標トルクTrrefとのトルク偏差ΔTr(即ち、Tr3−Tr0に相当するトルク偏差)が解消されない。
従って、点火時期PGは、時刻T1以降もベース点火時期PGBSEに収束することなく一定量遅角された状態を維持し、図示PGDL2(PGDL1<PGDL2<PGBSE:尚、遅角側を小とする)に収束する。ここで、点火時期の遅角は、エンジン200の発するエネルギを敢えて非効率に取り出している状態に相当するから、このように点火時期の遅角制御が継続される場合、即ち、燃焼モードの切り換えが終了しない場合、エンジン200の燃費及びエミッションは著しく悪化する可能性がある。
ところが、燃焼モードの切り換え時点(ここでは、時刻T0)においては、例えばスロットルバルブ210のバラツキや経年変化等に起因するこの種の吸入空気量のズレの度合いが不明であり、切り換え後トルクTrSTが最終的に如何なる値に収束するかが不明である。これに対し、時刻T1において吸入空気量GAを更に減少せしめるべくスロットル開度THRの調整を行っても、最終的に切り換え後トルクTrSTが目標トルクTrrefに収束するのに要する時間が長大化し、結局その期間について点火時期の遅角制御が継続することによって、燃費及びエミッションの悪化が避け難い。一方で、このような燃費及びエミッションの悪化を嫌って時刻T1において点火時期の遅角を強制的に終了すれば、即ち、トルク偏差ΔTrに対応するトルクショックがドライバにより知覚され、ドライバビリティの悪化が回避され難い。
そこで、本実施形態において、ECU100は、燃焼モード切り換え処理を実行し、燃焼モードの切り換え時における目標トルクTrrefを、このような問題が生じることの無いように設定する。
ここで、図5を参照し、燃焼モード切り換え処理の詳細について説明することとする。ここに、図5は、燃焼モード切り換え処理のフローチャートである。尚、燃焼モード切り替え処理は、燃焼モードの切り替え時点において起動し、ECU100の制御クロックに同期した所定の周期毎に繰り返し実行されると共に、燃焼モードの切り替え期間が終了した時点で終了する処理である。
図5において、ECU100は、上述したように燃焼モード切り換え時のスロットル制御を実行する(ステップS101)。本実施形態では、即ち、スロットル開度THRを閉じ側に制御する。スロットル開度THRの制御がなされると、ECU100は、ストイキ燃焼モードにおいて点火時期がベース点火時期PGBSEに制御された場合のトルクに相当する切り換え後トルクTrSTを推定する(ステップS102)と共に、同様にリーン燃焼モードにおいて点火時期がベース点火時期PGBSEに制御された場合のトルクに相当する切り換え前トルクTrLNを推定する(ステップS103)。切り換え後トルクTrST及び切り換え前トルクTrLNが推定されると、ECU100は、目標トルクTrrefを算出する(ステップS104)。
ここで、本実施形態において、燃焼モード切り換え時の目標トルクTrrefは、下記(1)式に従って算出される。
Trref=TrLN+(TrST−TrLN)×γ・・・(1)
ここで、γは、目標トルクTrrefに対する切り替え後トルクTrSTの寄与の度合いを規定する、0〜1までの値を採る寄与比率であり、本発明に係る「寄与比率γ1」の一例である。係る(1)式に従うことにより、目標トルクTrrefは、切り換え前トルクTrLNに対し、切り換え後トルクTrSTと切り換え前トルクTrLNとの差分に寄与比率γを乗じた加算項を加算したものとして設定される。
ここで、γは、目標トルクTrrefに対する切り替え後トルクTrSTの寄与の度合いを規定する、0〜1までの値を採る寄与比率であり、本発明に係る「寄与比率γ1」の一例である。係る(1)式に従うことにより、目標トルクTrrefは、切り換え前トルクTrLNに対し、切り換え後トルクTrSTと切り換え前トルクTrLNとの差分に寄与比率γを乗じた加算項を加算したものとして設定される。
従って、当該加算項がゼロである場合(即ち、寄与比率γがゼロである場合)には目標トルクTrrefは切り換え前トルクTrLNに一致し、寄与比率γが1であれば、目標トルクTrrefは切り替え後トルクTrSTに一致する。
ここで、(1)を変形すれば、下記(2)式が得られる。
Trref=TrST×γ+(1−γ)TrLN・・・(2)
この(2)式から明らかなように、寄与比率γは、本発明に係る「寄与比率γ1」の一例であり、また「1−γ」は、本発明に係る「寄与比率γ2」の一例である。また、(2)式の第1項は、本発明に係る「第1項」の一例であり、また(2)式における第2項は、本発明に係る「第2項」の一例である。即ち、目標トルクTrrefは、別の見方をすれば、切り換え後トルクTrST及び切り換え前トルクTrLNを、夫々寄与比率γ1及びγ2に応じた度合いで反映させることによって算出される。寄与比率γ1(即ち、寄与比率γ)が大きければ、目標トルクTrrefに対する切り換え後トルクTrSTの寄与は大きくなり、それに伴い、切り換え前トルクTrLNの寄与は小さくなる。
この(2)式から明らかなように、寄与比率γは、本発明に係る「寄与比率γ1」の一例であり、また「1−γ」は、本発明に係る「寄与比率γ2」の一例である。また、(2)式の第1項は、本発明に係る「第1項」の一例であり、また(2)式における第2項は、本発明に係る「第2項」の一例である。即ち、目標トルクTrrefは、別の見方をすれば、切り換え後トルクTrST及び切り換え前トルクTrLNを、夫々寄与比率γ1及びγ2に応じた度合いで反映させることによって算出される。寄与比率γ1(即ち、寄与比率γ)が大きければ、目標トルクTrrefに対する切り換え後トルクTrSTの寄与は大きくなり、それに伴い、切り換え前トルクTrLNの寄与は小さくなる。
ここで、図6を参照し、寄与比率γの詳細について説明する。ここに、図6は、定常運転時における切り換え後トルクTrST及び切り換え前トルクTrLNの時間応答特性を表す模式図である。尚、同図において、図3と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、PRF_TrST1及びPRF_TrLN1の夫々について、燃焼モードの切り換え時点を基準時刻(即ち、ゼロ)とした場合の、20msec経過する毎のトルクの値がプロットされる。即ち、PRF_TrST1について、時刻0、20(msec)、・・・、100(msec)に対応する図示白丸m1、m2、・・・、m6が、またPRF_TrLN1について、時刻0、20(msec)、・・・、100(msec)に対応する図示白丸n1、n2、・・・、n6である。
ここで、寄与比率γは、PRF_Trref1により表される、定常状態における本来の目標トルク(即ち、吸入空気量のズレが生じない場合の目標トルクであり、定常状態においては燃焼モードの切り換え前後において変化しない)に対する、切り換え後トルクTrST及び切り換え前トルクTrLNの相対的な乖離の度合いを正規化して表した場合に、切り換え後トルクTrSTについて得られた当該正規化された値を1から減じてなる値として設定される。
例えば、基準時刻において、目標トルクTrrefは、切り換え前トルクTrLNと一致しているため、正規化された乖離の度合いとしては、切り換え前トルクTrLNについて0であり、切り換え後トルクTrSTについて1となる。従って、寄与比率γは0となる。寄与比率γが0であるということは、即ち、切り換え後トルクTrSTが目標トルクTrrefの算出に反映されないことを意味する。
また、例えば、時刻100(msec)(厳密には、基準時刻から100msecが経過した時刻)において、目標トルクTrrefは、切り換え後トルクTrSTと一致するため、正規化された乖離の度合いとしては、切り換え前トルクTrLNについて0であり、切り換え後トルクTrSTについて0となる。従って、寄与比率γは1となる。寄与比率γが1であるということは、即ち、切り換え前トルクTrLNが目標トルクTrrefの算出に反映されないことを意味する。
寄与比率γは、切り換え後トルクTrST及び切り換え前トルクTrLNのこのような定常時間応答に基づいて、エンジン200における内的又は外的な或いは経時的な要因による吸入空気量のズレが生じていない場合(即ち、切り換え後トルクTrSTが、有限の経過時間の後に、燃焼モードの切り替え時点における目標トルクTrrefに収束する場合)に、算出される目標トルクTrrefが、当該燃焼モードの切り換え時点における目標トルクを維持し得るように定められ、予めROMに固定値として記憶されている。尚、図6に例示する時間周期は、ECU100の動作周期と対応する周期となっており、例えばECU100の構成及び電気的な制御形態に応じて、各種の態様を採り得る趣旨である。
ここで、図7を参照し、このようにROMに格納される寄与比率γについて説明する。ここに、図7は、寄与比率γと経過時間との対応関係を表す表である。
図7に示すように、寄与比率γは、初期値がゼロであり、経過時間に応じて増加し、最終的に1となる。これに伴い、本発明に係る寄与比率γ2の一例たる1−γの値は、初期値が1であり、最終的に0となる。
図5に戻り、ステップS104に係る処理において、ECU100は、燃焼モードの切り替え時点から起動する内蔵タイマによりカウントされる経過時間に対応する寄与比率γの値をROMから取得すると共に、切り替え前トルクTrLN及び切り替え後トルクTrSTを夫々算出し、上記(1)式に代入することにより、目標トルクTrrefを算出する。
目標トルクTrrefが算出されると、ECU100は、ステップS104に係る処理の実行過程において得られた寄与比率γが1であるか否か、即ち、目標トルクTrrefが切り替え後トルクTrSTと一致するか否かを判別する(ステップS105)。
寄与比率γが1である場合(ステップS105:YES)、目標トルクTrrefは切り替え後トルクTrSTに一致するため、点火時期の遅角制御の実行条件を規定するトルク偏差ΔTrはゼロとなり、当該遅角制御は終了し、点火時期はベース点火時期PGBSEに復帰する(ステップS106)。従って、燃焼モードは完全にストイキ燃焼モードに切り替わり、燃焼モードの切り替えが完了する。
一方、寄与比率γが1でない場合(ステップS105:NO)、ECU100は、算出された目標トルクTrrefと切り替え後トルクTrSTとの偏差たるトルク偏差ΔTrに応じた点火時期の遅角制御を継続する(ステップS107)。ステップS106又はステップS107に係る処理が実行されると、燃焼モード切り替え処理は終了する。既に述べたように、燃焼モード切り替え処理は、点火時期の遅角によるトルクショック低減処理が実行されている期間中は、繰り返し実行され、燃焼モードの切り替えが完了した時点で終了する。このため、ステップS106に係る処理を経て燃焼モード切り替え処理が終了した場合、次なる燃焼モードの切り替えタイミングまで、燃焼モード切り替え処理は行われない。
ここで、図8を参照し、本実施形態に係る燃焼モード切り替え処理の効果について説明する。ここに、図8は、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる際のエンジン200の動作状態を本実施形態に係る燃焼モード切り替え処理が適用された場合について表すタイミングチャートである。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、図4と同様に、エンジン200に生じる内的又は外的な或いは経時的な要因により吸入空気量Gaが目標値たるGa0まで減少することなくGa2に収束した場合、本実施形態に係る燃焼モード切り替え処理が適用されると、目標トルクTrrefは、図示PRF_Trref2(破線参照)に示すように、燃焼モードの切り替え開始時刻たる時刻T0において、PRF_TrLN2上の値(即ち、Tr0)から、経過時間に応じてPRF_TrST2により規定される切り替え後トルクTrSTに漸近する。その結果、時刻T1において、PRF_Trref2とPRF_TrST2とは整合し、目標トルクTrrefは、切り換え後トルクTrST2の収束値であるTr3に設定される。これに伴い、点火時期PGはベース点火時期PGBSEに復帰して燃焼モードの切り替え期間が終了する。即ち、燃焼モードが有限の時間経過の後に正常に切り替わる。
このように、本実施形態に係る燃焼モード切り替え処理によれば、エンジン200において、個体差によって、又は経時的な変化によって、或いは何らかの内的な又は外的な要因によって吸入空気量の目標値に対するズレが生じたとしても、寄与比率γが1に設定される有限な時間経過の後に、目標トルクTrrefと切り替え後トルクTrSTとが必ず一致する。このため、点火時期の遅角制御は、同様に有限の時間経過の後に必ず終了し、燃焼モードを正常に切り替えることが可能となるのである。
また、この際、寄与比率γを、時間経過に応じて段階的に又は連続的に増加する関数として設定しておくことにより、燃焼モードの切り替え期間中における目標トルクTrrefの推移が連続的となり、燃焼モードの切り替え期間が終了する際にトルクショックが発生することが防止される。
尚、本実施形態におけるエンジン200は、目標トルクに応じてその動作状態が制御される、所謂トルクデマンド型の制御形態を採るが、燃焼モードの切り替え期間において、目標トルクが設定される限りにおいて、必ずしも、エンジン200の動作期間の全域にわたってこのような目標トルクが設定される必要はない。
また、上記(1)式(或いは(2)式)は、目標トルクTrrefを算出するための式の一例に過ぎず、燃焼モードの切り換え期間において、トルクショックを低減し(少なくともドライバが許容し得る範囲に収まるように低減し、或いは少なくともドライバによる知覚がなされない程度に低減し)、且つ点火時期の補正(ここでは、遅角)が継続されることによる燃費やエミッションの悪化を顕在化させない有限の時間範囲内で切り換え後トルクTrSTに一致するように、又は実質的に若しくは現実的に一致しているとみなし得る値に収束するように、或いは実質的に若しくは現実的に一致している場合と同等の利益が享受され得る値に収束するように目標トルクTrrefを設定し得る限りにおいて、何ら限定されない趣旨である。
また、本実施形態では、燃焼モードがリーン燃焼モードからストイキ燃焼モードへ切り替わる場合についてのみ説明したが、ストイキ燃焼モードからリーン燃焼モードへ燃焼モードが切り替えられる場合についても、上述した制御及び処理を基本的に適用可能である。但し、この場合、燃焼モードの切り換え時点において吸入空気量が不足するため、スロットル開度は開き側に制御され、切り換え期間中のトルク不足(言わば、負のトルク段差)を低減すべく点火時期は進角側に制御される。
<第2実施形態>
目標トルクTrrefの設定態様は、第1実施形態のものに限定されない。ここで、図9を参照し、このような趣旨に基づいた本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図9は、本発明の第2実施形態に係る燃焼モード切り替え処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
目標トルクTrrefの設定態様は、第1実施形態のものに限定されない。ここで、図9を参照し、このような趣旨に基づいた本発明の第2実施形態について説明する。ここに、図9は、本発明の第2実施形態に係る燃焼モード切り替え処理のフローチャートである。尚、同図において、図5と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図9において、ステップS103及びステップS104に係る処理により、夫々切り換え後トルクTrST(即ち、ストイキ燃焼モードにおけるトルク)及び切り換え前トルクTrLN(即ち、リーン燃焼モードにおけるトルク)を推定すると、ECU100は、下記(3)式に従って、目標トルクTrrefを算出する(ステップS201)。
Trref=TrLN+(TrST−TrLN)×(1−exp(−t/τ))・・・(3)
ここで、tは、燃焼モード切り換え時点からの経過時間であり、τは時定数である。即ち、上記式における(1−exp(−t/τ))は、所謂一次遅れ要素を表す項であり、本発明に係る「寄与比率γ1」の他の例たる寄与比率である(以下、「寄与比率γ」と称する)。
ここで、tは、燃焼モード切り換え時点からの経過時間であり、τは時定数である。即ち、上記式における(1−exp(−t/τ))は、所謂一次遅れ要素を表す項であり、本発明に係る「寄与比率γ1」の他の例たる寄与比率である(以下、「寄与比率γ」と称する)。
このように一次遅れ要素としての寄与比率γに基づいて目標トルクTrrefが設定される場合、目標トルクTrrefを燃焼モードの切り換え時点の目標トルク(即ち、リーン燃焼モードのトルク)から、最終目標としての目標トルク(即ち、ストイキ燃焼モードのトルク)まで経過時間に応じて連続的に変化させることが可能となり、図8と同様の目標トルクTrrefの時間応答を得ることが可能となる。
但し、(3)式において寄与比率γ(即ち、一次遅れ要素)は、その性質上、1にはならないため、ECU100は、寄与比率γが、判断基準値(ここでは、0.98とする)以上であるか否かを判別する(ステップS202)。寄与比率γが0,98未満である場合(ステップS202:NO)、ECU100は、点火時期の遅角によるトルク補正を継続し(ステップS107)、寄与比率γが0.98以上となった場合(ステップS202:YES)、ECU100は、点火時期をベース点火時期PGBSEに戻し、燃焼モードの切り換えが完了する(ステップS106)。
ここで特に、ステップS106に係る処理が実行される場合、寄与比率が1にならないため、上記判断基準値に応じて厳密にはトルクショックが発生する。従って、判断基準値は、燃焼モードの切り換え期間を冗長に長大化させることなく、且つ燃焼モードの切り換え完了時におけるトルクショックが少なくともドライバに知覚されることのない程度に低減される値として設定される。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う内燃機関の制御装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
10…エンジンシステム、100…ECU、200…エンジン、202…点火装置、209…エアフローメータ、210…スロットルバルブ。
Claims (6)
- 空燃比により規定される燃焼モードの切り換えが可能な内燃機関の制御装置であって、
前記燃焼モードの各々について前記内燃機関の運転条件に基づいて前記内燃機関のトルクを推定可能なトルク推定手段と、
前記燃焼モードが一の燃焼モードから他の燃焼モードへ切り替えられた場合に、前記内燃機関の目標トルクを、経過時間に応じて増加するように設定される寄与比率γ1と前記他の燃焼モードについて推定されたトルクたる切り換え後トルクとの積を含む第1項、及び前記寄与比率γ1の増加に伴って減少する寄与比率γ2と前記一の燃焼モードについて推定されたトルクたる切り換え前トルクとの積を含む第2項を含み、且つ前記経過時間に応じて前記目標トルクに対する前記切り換え後トルクの寄与が大きくなるように設定する目標トルク設定手段と、
前記設定された目標トルクと前記他の燃焼モードについて推定されたトルクとの偏差に応じて、トルクショックが緩和されるように前記内燃機関の点火時期を制御する点火時期制御手段と
を具備することを特徴とする内燃機関の制御装置。 - 前記寄与比率γ1と前記寄与比率γ2との和は1である
ことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記目標トルク設定手段は、前記第1項と前記第2項との和として前記目標トルクを設定する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記目標トルク設定手段は、前記経過時間が所定値に達した時点で前記切り換え後トルクと一致するように前記目標トルクを設定する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記寄与比率γ1は、前記経過時間と時定数とにより規定される一次遅れ要素に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。 - 前記寄与比率γ1は、予め定常状態において前記燃焼モードが切り替えられた場合の、前記切り換え前トルク及び前記切り換え後トルクの時間応答特性に基づいて設定される
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の内燃機関の制御装置。
Priority Applications (1)
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JP2007188041A JP2009024580A (ja) | 2007-07-19 | 2007-07-19 | 内燃機関の制御装置 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2018066328A1 (ja) * | 2016-10-03 | 2018-04-12 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 内燃機関制御装置 |
CN113799780A (zh) * | 2021-09-27 | 2021-12-17 | 清华大学 | 发动机启动工况模式切换的动态转矩协调控制系统和方法 |
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2007
- 2007-07-19 JP JP2007188041A patent/JP2009024580A/ja active Pending
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WO2018066328A1 (ja) * | 2016-10-03 | 2018-04-12 | 日立オートモティブシステムズ株式会社 | 内燃機関制御装置 |
US11060476B2 (en) | 2016-10-03 | 2021-07-13 | Hitachi Automotive Systems, Ltd. | Internal combustion engine control device |
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