JP2009022519A - 心理状態緩和装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】被験者の現在の心理状態(平静状態)を維持する心理状態緩和装置を提供することを課題とする。
【解決手段】運転者の心理状態を緩和する心理状態緩和装置1であって、運転者の心理パラメータを取得する心理パラメータ取得手段2,3,4,5と、取得されたイライラレベルに基づいて所定時間t0後の運転者のイライラレベルを予測し、予測結果に基づいて運転者が所定時間t0後に平静状態からイライラ状態に変化すると判定した場合に、平静状態を維持するための沈静刺激の付与を開始する時刻を設定する開始時刻設定手段6と、設定された時刻に沈静刺激の付与を開始する刺激付与手段7,8,9と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】運転者の心理状態を緩和する心理状態緩和装置1であって、運転者の心理パラメータを取得する心理パラメータ取得手段2,3,4,5と、取得されたイライラレベルに基づいて所定時間t0後の運転者のイライラレベルを予測し、予測結果に基づいて運転者が所定時間t0後に平静状態からイライラ状態に変化すると判定した場合に、平静状態を維持するための沈静刺激の付与を開始する時刻を設定する開始時刻設定手段6と、設定された時刻に沈静刺激の付与を開始する刺激付与手段7,8,9と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、被験者の心理状態を緩和する心理状態緩和装置に関する。
渋滞などで運転者のイライラ状態が高くなると、運転中に判断ミスや急な操作などをし易くなるので、そのイライラ状態への移行を防止するための技術が研究されている。例えば、特許文献1には、取得した生体情報と算出した道路負荷量とに基づいて将来の運転者の生理状態を予測し、予測した生理状態を運転者に知覚させる情報提供システムが開示されている。
特開2003−61939号公報
特開2005−237456号公報
特開2005−157662号公報
特開2004−283241号公報
特開2004−168202号公報
しかしながら、上記特許文献1に記載の情報提供システムでは、予測される生理状態を報知するのみであり、運転者の心理状態に直接働きかけるような手段は採られていない。そのため、運転者のイライラ状態への移行を抑制する手段が求められている。
イライラ状態の抑制に関しては、運転者が平静状態(イライラしていない状態)のときには、強い沈静刺激を与えるほど該運転者のリラックスレベルが上昇することが確認されている。このような関係を図11に示す。図11では、平静状態のときに、音楽やにおいなどの沈静効果のある強い刺激を運転者に与えた場合(SS)、沈静効果のある弱い刺激を与えた場合(WS)、及び沈静刺激を与えない場合(NS)のリラックスレベルの時間変化が示されている。
一方、運転者が渋滞などで既にイライラ状態のときに沈静刺激を与えないと、図12の実線NSで示すように、時間の経過に伴ってイライラレベルが更に上昇していく。これに対し、運転者が既にイライラ状態の場合に沈静刺激を与えたとしても、破線GSのようにイライラレベルが低下することは確認されていない。イライラ状態が高まっているときは、既に生じている心理状態などの内的要因に対して大きく注意を傾けているため、新たに発生した刺激(沈静刺激)などの外的要因に対しての受容性が大幅に低下している。そのため、運転者が外的な刺激を受け難い状態になっていると考えられる。したがって、イライラ状態のときに沈静刺激を与えても、イライラ状態を緩和できるとは限らない。
そこで、本発明は、被験者の現在の心理状態(平静状態)を維持する心理状態緩和装置を提供することを課題とする。
本発明に係る心理状態緩和装置は、被験者の心理状態を緩和する心理状態緩和装置であって、被験者の心理パラメータを取得する心理パラメータ取得手段と、心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づいて所定時間後の被験者の心理状態を予測し、予測した心理状態に基づいて被験者が該所定時間後に現在の心理状態から所定の心理状態に変化すると判定した場合に、沈静刺激の付与を開始する時刻を設定する開始時刻設定手段と、開始時刻設定手段により設定された時刻に沈静刺激の付与を開始する刺激付与手段と、を備えることを特徴とする。
この心理状態緩和装置では、心理パラメータ取得手段により、被験者の心理パラメータが取得される。続いて、開始時刻設定手段により、所定時間後の心理状態が予測され、予測された心理状態に基づいて被験者が所定時間後に現在の心理状態から所定の心理状態に変化すると判定された場合に、沈静刺激の付与を開始する時刻が設定される。そして、設定された開始時刻に、刺激付与手段により沈静刺激が付与される。これにより、将来の心理状態が予測され、予測結果に基づいて沈静刺激を付与するタイミングが設定されるので、沈静刺激を付与するのに適した時期にその付与を実行することが可能になる。その結果、被験者の現在の心理状態を維持できる。
なお、心理パラメータは、被験者の心理状態を表す様々なパラメータであり、例えば、生体情報(心拍数、血圧など)、挙動情報(しぐさ、表情など)、外的な環境情報(渋滞、割込みなど)である。所定の心理状態は、現在の心理状態よりも被験者が不快と感じる側の心理状態であり、例えば、イライラ状態が高まりつつある状態、怒りが高まりつつある状態、不安が高まりつつある状態である。したがって、現在の心理状態の維持とは、そのような所定の心理状態への移行を抑制することである。
本発明の上記心理状態緩和装置では、開始時刻設定手段は、心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づく現在の心理状態が所定の閾値未満であり、且つ該心理パラメータに基づいて予測された所定時間後の心理状態が所定の閾値以上の場合に、被験者が該所定時間後に現在の心理状態から所定の心理状態に変化すると判定し、該判定の時刻を沈静刺激の付与を開始する時刻に設定すると好適である。
この心理状態緩和装置では、開始時刻設定手段により、取得された心理パラメータに基づく現在の心理状態が所定の閾値未満で、且つ予測された所定時間後の心理状態が所定の閾値以上の場合に、被験者が所定時間後に現在の心理状態から所定の心理状態に変化すると判定される。そして、その判定に基づいて、その判定の時刻が沈静刺激付与の開始時刻に設定される。これにより、現在よりも不快感が高まると判定された場合に、その判定時点から沈静刺激の付与が開始される。このように判定時点からすぐに沈静刺激の付与を開始することで、被験者の現在の心理状態をより確実に維持できる。なお、所定の閾値とは、現在の心理状態と所定の心理状態との境界値である。
本発明の心理状態緩和装置では、刺激付与手段は、沈静刺激を付与した後に心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づいて、沈静刺激の付与後一定時間が経過するまで現在の心理状態が維持されていると判定した場合に、沈静刺激の付与を終了すると好適である。
この心理状態緩和装置では、現在の心理状態を緩和するために刺激付与手段により沈静刺激の付与が開始された後、一定時間が経過するまで被験者の現在の心理状態が維持されていると判定された場合に、沈静刺激の付与を終了する。沈静刺激の付与によって、被験者の現在の心理状態が一定時間維持されたならば、十分な沈静効果が得られたといえる。したがって、一定時間後に沈静刺激の付与を終了させることで、必要最低限の沈静刺激の付与により、被験者の現在の心理状態を維持できる。
本発明の心理状態緩和装置では、刺激付与手段は、沈静刺激を付与した後に心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づいて、被験者が現在の心理状態から所定の心理状態に変化したと判定した場合に、沈静刺激の付与を終了すると好適である。
この心理状態緩和装置では、刺激付与手段により、沈静刺激付与後に被験者が現在の心理状態から予測された所定の心理状態に変化したと判定された場合に、沈静刺激の付与を終了する。沈静刺激が付与されているにもかかわらず、被験者が所定の心理状態に変化してしまった場合には、それ以上沈静刺激を付与し続けても十分な沈静効果を得ることは期待できない。したがって、被験者が所定の心理状態になった際に沈静刺激の付与を終了させることで、不必要な沈静刺激の付与を中止できる。
本発明は、所定の心理状態に移行する前に沈静刺激の付与を開始することにより、被験者の現在の心理状態(平静状態)を維持することができる。
以下、図面を参照して、本発明に係る心理状態緩和装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る心理状態緩和装置を、車両に搭載され、運転者の平静状態を維持する心理状態緩和装置に適用する。本発明に係る心理状態緩和装置では、所定時間後に運転者が平静状態からイライラ状態に変化しそうな場合に、平静状態を維持するための沈静刺激を付与し、運転者がイライラ状態になることを防止する。さらに、本発明に係る心理状態緩和装置では、沈静刺激を一定時間付与している間運転者が平静状態を維持しているか、若しくは運転者がイライラ状態に変化した場合に、沈静刺激の付与を終了する。
まず、図1〜3を参照して、本実施形態の概要について説明する。図1は、本実施形態の概念図である。図2は、沈静刺激を付与した場合と付与しなかった場合のイライラレベルの時間変化の一例である。図3は、沈静刺激の付与の有無とイライラレベルとの関係についての実証実験データである。
心理状態緩和装置1は、環境情報(渋滞、割込みなど)、車両情報(車速低下、急制動など)、生体情報(心拍数、血圧など)に基づいて運転者のイライラ状態の変化(イライラレベル)を検出する。続いて、心理状態緩和装置1は、イライラ状態の変化に基づいて所定時間後のイライラ状態を予測し、該所定時間後のイライラレベルが高くなりそうと判定した時点を沈静刺激の付与の開始時刻に設定する。続いて、心理状態緩和装置1は、設定した開始時刻から運転者に所定の沈静刺激を付与し始める。心理状態緩和装置1は、沈静刺激を付与後もイライラ状態の変化を監視する。そして、一定時間経過後に、平静状態(イライラレベルが低い状態を)を維持しているか、又はイライラレベルが高くなってしまったと判定した場合に、その判定時点を終了時点として沈静刺激の付与を終了する。
なお、本実施の形態で用いるイライラレベルは、0〜2までの値であり、整数値(0、1、2)としてもよいし、整数値でなくてもよい。イライラレベル0は、イライラの自覚がない状態であり、通常の平静状態である。イライラレベル1は、イライラの自覚が小さい状態であり、ムッとする程度の状態である。イライラレベル2は、イライラの自覚が大きい状態であり、怒りを我慢し、一触即発の状態である。このイライラレベル2ぐらいまでになると、運転中に判断ミスや急操作などを起こり易くなる。ちなみに、イライラレベル3は、怒りを暴発させた状態である。このイライラレベル3まで検出するようにしてもよい。
心理状態緩和装置1は、渋滞などの要因で所定時間後にイライラ状態が高まると予測されるときに(イライラレベルが0から1に推移しそうなときに)、沈静刺激を運転者に付与することによって、運転者を平静状態に留めるようにする。これにより、運転者のイライラ状態が、運転に支障をきたすようなレベルまで高まっていくことを未然に防止できる。このような効果を示すモデルを図2に示す。破線GSは、沈静刺激を付与した場合のイライラレベルの推移、実線NSは、沈静刺激を付与しない場合のイライラレベルの推移である。
なお、イライラ状態が高くなってしまった場合(例えばイライラレベルが2に達した場合)、運転者はその高いイライラ状態の要因に大きく注意を傾けているため、沈静刺激を付与しても効果が現れない。この現象について図3を用いて説明する。図3において、実線NSは、沈静刺激を与えない場合における被験者のイライラレベルの推移であり、破線GSは、沈静刺激を付与した場合のイライラレベルの推移である。なお、実験では、実験開始から1000秒経過後に被験者を一旦平静状態に戻すようにしている。図3に示すように、イライラレベルが1より小さい平静状態の場合(0〜1000秒)では、沈静刺激を付与することでイライラレベルの上昇を抑制できる。すなわち、沈静刺激によって平静状態が維持される。しかし、イライラレベルが2のイライラ状態の場合(1000〜3500秒)には、沈静刺激を与えても、その刺激を与えない場合と同様にイライラレベルが2から低下しない。すなわち、怒りを我慢する程のイライラ状態になってしまうと、沈静刺激の効果が見られなくなってしまう。そのため、イライラ状態が高くなってしまった場合、心理状態緩和装置1は沈静刺激の付与を中止する。
沈静刺激は、人間の五感に直接働きかける沈静刺激のうち、一般的に人間の心理状態を緩和させる効果があるとされているものをいう。例えば、聴覚系の場合には長調でスローテンポの音楽、嗅覚系の場合にはペパーミントやラベンダーの香り、視覚系の場合には青色系の照明光が挙げられる。なお、心理状態緩和装置1が付与する沈静刺激はこれらに限定されない。
図4〜図8を参照して、本実施の形態に係る心理状態緩和装置1について説明する。図4は、本実施の形態に係る心理状態緩和装置1の構成図である。図5は、イライラレベルの時間変化の一例である。図6は、沈静刺激を付与した後の心拍数の時間変化の一例である。図7は、沈静刺激を付与した後の血圧の時間変化の一例である。図8は、沈静刺激として使用される照明光を制御するために事前に設定されるパラメータの一例である。
心理状態緩和装置1は、運転者のイライラレベルを検出し、イライラレベルが所定時間後に現在より高くなると予想される場合にイライラレベルの上昇を抑制する。特に、心理状態緩和装置1は、所定時間後のイライラレベルを予測し、その予測結果に基づいて沈静刺激の付与を開始する時刻を設定し、その開始時刻から沈静刺激を付与し始める。そのために、心理状態緩和装置1は、環境情報検出手段2、車両情報検出手段3、生体情報検出手段4、イライラ状態変化検出手段5、開始判定手段6、終了判定手段7、沈静刺激制御手段8、沈静刺激呈示装置9を備えている。特に、イライラ状態変化検出手段5、開始判定手段6、終了判定手段7、沈静刺激制御手段8については、心理状態緩和装置1のECU[Electronic Control Unit]に構成される。
なお、本実施の形態では、環境情報検出手段2、車両情報検出手段3、生体情報検出手段4、及びイライラ状態変化検出手段5が特許請求の範囲に記載する心理パラメータ取得手段に相当し、開始判定手段6が特許請求の範囲に記載する開始時刻設定手段に相当し、終了判定手段7、沈静刺激制御手段8、及び沈静刺激呈示装置9が特許請求の範囲に記載する刺激付与手段に相当する。
環境情報検出手段2は、渋滞や割込みなどのイライラ状態に影響を与える環境要因の情報を検出する手段である。例えば、渋滞の場合、VICS情報(渋滞情報など)を取得するナビゲーション装置である。割込みの場合、車間距離を検出するためのレーダセンサと車間距離に基づいて割込みを判定する処理部、前方画像を撮像するカメラと画像情報に基づいて割込みを判定する処理部、あるいは、これらの組合せである。なお、環境情報検出手段2の各処理部については、ECU内に構成してもよい。
車両情報検出手段3は、渋滞や割込みなどのイライラ状態に影響を与える環境要因が発生したことを推測するための車両側での情報を検出する手段である。例えば、渋滞の場合、車速を検出するための車速センサと車速に基づいて車速低下を判定する処理部である。割込みの場合、車速を検出するための車速センサと車速に基づいて急制動を判定する処理部、ブレーキの踏み込みを検出するブレーキセンサとブレーキの踏み込みに基づいて急制動を判定する処理部、あるいは、これらの組合せである。なお、この車両情報検出手段3は、環境情報検出手段2の構成に含め、総合的に渋滞や割込みなどの環境要因を検出するようにしてもよい。また、車両情報検出手段3の各処理部については、ECU内に構成してもよい。
生体情報検出手段4は、イライラ状態を表すような生体情報として心拍数、血圧を検出する手段である。具体的には、心拍数センサ(心電センサでもよい)、血圧センサである。
イライラ状態変化検出手段5は、運転者のイライラレベルを検出する手段である。具体的には、イライラ状態変化検出手段5は、環境情報検出手段2で検出した環境情報と車両情報検出手段3で検出した車両情報から取得されるイライラ状態の要因となる環境要因(渋滞、割込み)及び生体情報検出手段4で検出した情報から得られるイライラ状態を表すような生体情報(心拍数、血圧)に基づいてイライラレベルを判定する。なお、イライラレベルの判定方法については、どのような方法でもよく、生体情報だけで判定してもよいし、環境要因だけで判定してもよい、あるいは、運転者の挙動情報などの別の情報を用いて判定してもよい。また、生体情報についても、心拍数や血圧以外の情報を用いてもよい。
開始判定手段6は、沈静刺激の付与を開始する時刻を設定する手段である。具体的には、開始判定手段6は、イライラ状態変化検出手段5で検出されたイライラレベルに基づいて所定時間後の心理パラメータを予測し、予測した心理パラメータに基づいて沈静刺激の付与を開始する時刻を設定する。
開始判定手段6は、まず、イライラ状態変化検出手段5で検出されたイライラレベルが1(所定の閾値)未満か否かを判定する。そして、そのイライラレベルが1未満の場合、開始判定手段6は、所定時間t0後のイライラレベルを予測する。
イライラレベルを予測するために、開始判定手段6は、環境情報検出手段2で取得された渋滞情報及び走行予定経路に基づいて、自車両がその渋滞に遭遇する可能性や渋滞区間を通過する時間などを判定する。また、開始判定手段6は、生体情報検出手段4で取得された生体情報に基づいて、現時点での生体情報の推移を算出する。生体情報の推移を算出するのは、運転者が将来渋滞に巻き込まれることを知ったときに、運転者の心拍数や血圧などが変化することが期待できるからである。
開始判定手段6は、取得した渋滞情報と生体情報とに基づいて所定時間t0後のイライラレベルを予測する。例えば、近い将来渋滞に遭遇する可能性が高い場合(図5参照)や、運転者の心拍数及び血圧が上昇し始めている場合、開始判定手段6は、所定時間t0後にイライラレベルが1以上になると予測する。開始判定手段6は、多数の運転者による実験などに基づく解析モデルをプログラムとして予めメモリ(図示せず)に記憶し、このプログラムを実行することでイライラレベルの予測を実行する。
続いて、開始判定手段6は、予測したイライラレベルが1(所定の閾値)以上である場合に、運転者が所定時間t0後にムッとする程度の状態になると判定し、現時点T0(図5参照)、すなわちこの判定の時刻を、沈静刺激付与の開始時刻に設定する。そして、開始判定手段6は、沈静刺激の付与を開始するための開始命令を沈静刺激制御手段8に出力する。
終了判定手段7は、沈静刺激の付与を終了する時刻を判定する手段である。具体的には、終了判定手段7は、沈静刺激付与開始後の運転者の血圧及び心拍数が所定の範囲内か否かを判定するとともに、沈静刺激を付与し始めた開始時刻T0から最低呈示時間t1経過したか否かを判定する。なお、最低呈示時間とは、沈静刺激付与終了後も運転者が平静状態を一定時間以上維持するために必要な最低時間であり、多数の運転者に対する実験などによって予め設定される。
終了判定手段7は、沈静刺激付与開始後の心拍数が基準心拍数HR0の範囲内か否かを判定する(図6参照)。基準心拍数HR0は、イライラレベル0(平静状態)を表す心拍数であり、閾値a1以下の心拍数である。なお、図6で示される基準心拍数HR1,HR2は、それぞれイライラレベル1,2を表す心拍数であり、これら基準心拍数HR1,HR2は、閾値a2を境に分けられる。閾値a1、a2は、多数の被験者による実験などによって予め設定された値であり、a1<a2である。
また、終了判定手段7は、沈静刺激付与開始後の血圧が基準血圧BP0の範囲内か否かを判定する(図7参照)。基準血圧BP0は、イライラレベル0(平静状態)を表す血圧であり、閾値b1以下の血圧である。なお、図7で示される基準血圧BP1,BP2は、それぞれイライラレベル1,2を表す心拍数であり、これら基準血圧BP1,BP2は、閾値b2を境に分けられる。閾値b1、b2は、多数の被験者による実験などによって予め設定された値であり、b1<b2である。
現在の血圧が基準血圧BP0の範囲内であり、且つ現在の心拍数が基準心拍数HR0の範囲内の場合、運転者は、沈静刺激の付与によって平静状態を維持しているといえる。この場合、終了判定手段7は、開始時刻T0から最低呈示時間t1が経過するまで、血圧及び心拍数の監視を一定の時間間隔で繰り返し行う。その後、血圧及び心拍数がイライラレベル0を示す状態を維持したまま最低呈示時間t1が経過した場合、終了判定手段7は、現時点T1を終了時刻とし、沈静刺激の付与を終了するための終了命令を沈静刺激制御手段8に出力する。最低呈示時間t1経過後に沈静刺激の付与を中止するのは、その時点で沈静刺激付与の効果が十分に現れていると予測できるからである。
一方、現在の血圧が基準血圧BP1又はBP2の範囲にあるか、現在の心拍数が基準心拍数HR1又はHR2の範囲にある場合、終了判定手段7は終了命令を沈静刺激制御手段8に出力する。言い換えれば、終了判定手段7は、運転者のイライラレベルが開始判定手段6により予測されたイライラレベル1以上になった場合に終了命令を出力する。この場合に終了命令を出力するのは、図3に示すように、イライラレベルが一定値以上になってしまうと沈静刺激の効果が認められないからである。
沈静刺激制御手段8は、沈静刺激の付与制御を行い、沈静刺激呈示装置9に各種の命令をする手段である。具体的には、沈静刺激制御手段8は、開始判定手段6から開始命令が入力された場合に、沈静刺激の刺激付与方法を選択する。そして、沈静刺激制御手段8は、選択した刺激付与方法にしたがって、付与する刺激の内容を示す付与命令を、その刺激を付与する沈静刺激呈示装置9に出力する。沈静刺激制御手段8は、沈静刺激を付与後、終了判定手段7から終了命令が入力されるまで、沈静刺激呈示装置9に付与命令を繰り返し出力する。これに対し、終了命令が入力された場合、沈静刺激制御手段8は、沈静刺激の終了を示す付与終了命令を、付与命令を出力していた沈静刺激呈示装置9に出力する。
刺激付与方法の選択としては、どのような方法で選択してもよく、例えば、上記に示した幾つかの沈静刺激の中から予め決めた順番で行うようにしてもよいし、一種類の沈静刺激の複数のパターンから適宜選択するようししてもよいし、運転者がそのときに行っている操作(入力操作、音声認識など)に対して付与できる沈静刺激を選択するようにしてもよい。図8は、照明光を利用した沈静刺激を付与するためのデータの一例である。図8には、データを識別するID、三原色(RGB)の設定値、照度などが関連付けられた照明光のデータが4個示されている。沈静刺激制御手段8は、例えば、ID1で識別されるデータ(RGBの設定値がr1,g1,b1、且つ照度がi1のデータ)を選択したり、4個のデータすべてを選択したりしてもよい。
沈静刺激呈示装置9は、沈静刺激を付与する装置である。例えば、オーディオ装置、照明装置、及び芳香発生装置を沈静刺激呈示装置9として作動させることができる。具体的には、沈静刺激呈示装置9では、沈静刺激制御手段8から付与命令が入力されると、その付与命令に応じて所定の沈静刺激を呈示する。また、沈静刺激呈示装置9は、沈静刺激制御手段8からの付与終了命令があると、その付与終了命令に応じて所定の沈静刺激の呈示を終了する。
図9及び10を参照して、心理状態緩和装置1の処理について説明する。特に、開始判定手段6の処理については図9のフローチャートに沿って説明し、終了判定手段7の処理については図10のフローチャートに沿って説明する。図8は、図4に示す開始判定手段6の処理の流れを示すフローチャートである。図9は、図4に示す終了判定手段7の処理の流れを示すフローチャートである。
環境情報検出手段2では、常時、渋滞や割込みなどの環境情報をセンシングする。また、車両情報検出手段3では、常時、車速低下や急制動などの車両情報をセンシングする。また、生体情報検出手段4では、常時、心拍数、血圧をセンシングする。
イライラ状態変化検出手段5では、一定時間毎に、環境情報検出手段2で検出した環境情報、車両情報検出手段3で検出した車両情報及び生体情報検出手段4で検出した生体情報に基づいてイライラレベルを検出する。
開始判定手段6は、一定時間毎に、イライラ状態変化検出手段5からイライラレベルを取得する(S10)。そして、開始判定手段6は、現時点のイライラレベルが1未満か否かを判定する(S11)。S11にてイライラレベルが1以上と判定した場合、開始判定手段6は、次の時点でのイライラレベルを取得するまで待ち、再度、次の時点でのイライラレベルで判定する。
S11にてイライラレベルが1未満であると判定した場合、開始判定手段6では、現時点から所定時間t0後のイライラレベルを予測する(S12)。この予測は、開始判定手段6が、環境情報検出手段2から取得した渋滞情報と、生体情報検出手段4から取得した生体情報とを所定のプログラムに入力することで行われ、そのプログラムの出力結果が予測結果となる。続いて、開始判定手段6は、予測したイライラレベルが1以上か否かを判定する(S13)。S13にて予測したイライラレベルが1以上でないと判定された場合、開始判定手段6は、次の時点でのイライラレベルを取得するまで待ち、再度、次の時点でのイライラレベルに基づいて所定時間t0後のイライラレベルを予測する。
S13にて所定時間t0後のイライラレベルが1以上になると予測された場合、開始判定手段6は、現時点T0を開始時刻に決定し、沈静刺激制御手段8に開始命令を出力する(S14)。この開始命令により、沈静刺激制御手段8の制御の下、沈静刺激呈示装置9から沈静刺激が運転者に対して付与される。
終了判定手段7では、まず、開始時刻T0を取得する(S20)。続いて、終了判定手段7は、生体情報検出手段4で検出された現在の血圧が基準血圧BP0の範囲内か否かを判定する(S21)。S21にて現在の血圧が基準血圧BP0の範囲内であると判定された場合、終了判定手段7は、生体情報検出手段4で検出された現在の心拍数が基準心拍数HR0の範囲内か否かを判定する(S22)。S22にて現在の心拍数が基準心拍数HR0の範囲内であると判定された場合、終了判定手段7は、開始時刻T0から最低呈示時間t1が経過したか否かを判定する(S23)。S23にて最低呈示時間t1を経過していないと判定された場合、終了判定手段7は一定時間待ち、その後検出された血圧及び心拍数について上記S21及びS22の処理を繰り返す。
一方、S23にて最低呈示時間t1を経過したと判定された場合、終了判定手段7は、現時点T1を終了時刻に決定し、沈静刺激制御手段8に終了命令を出力する(S24)。この終了命令により、沈静刺激制御装置8は、沈静刺激呈示装置9による沈静刺激の付与を停止する。このとき、運転者は、沈静刺激の付与によりイライラレベル0の状態、すなわち平静状態を維持している。
以上に対し、S21にて現在の血圧が基準血圧BP0の範囲にないと判定された場合、又はS22にて現在の心拍数が基準心拍数HR0の範囲にないと判定された場合、終了判定手段7は、現時点T1を終了時刻に決定し、沈静刺激制御手段8に終了命令を出力する(S24)。このとき、運転者は平静状態からイライラ状態に変化している。
以上説明したように、本実施形態の心理状態緩和装置1によれば、将来のイライラレベルが予測され、予測結果に基づいて沈静刺激を付与するタイミングが設定されるので、沈静刺激を付与するのに適した時期にその付与を実行することが可能になる。その結果、運転者の平静状態(イライラレベルが0の状態)を維持できる。
また、心理状態緩和装置1によれば、所定時間t0後のイライラレベルが1以上になると判定された場合、すなわち現在よりもイライラレベルが高まると判定された場合に、その判定時点から沈静刺激の付与が開始される。このように判定時点からすぐに沈静刺激の付与を開始することで、運転者の平静状態をより確実に維持できる。
また、心理状態緩和装置1によれば、最低呈示時間経過後に沈静刺激の付与を終了させることで、必要最低限の沈静刺激の付与により、運転者の平静状態を維持できる。これは、沈静刺激の付与によって、運転者が最低呈示時間の間平静状態を維持していれば、十分な沈静効果が得られたといえるからである。
また、心理状態緩和装置1によれば、被験者が平静状態からイライラ状態に変化した際に沈静刺激の付与を終了させることで、不必要な沈静刺激の付与を中止できる。これは、沈静刺激が付与されているにもかかわらず運転者がイライラ状態になってしまえば、それ以上沈静刺激を付与し続けても十分な沈静効果を得ることが期待できないからである。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、上記実施形態では車両に搭載され、運転者のイライラ状態を緩和する心理状態緩和装置に適用したが、イライラ状態以外にも怒っている状態、不安な状態などの他の所定の心理状態を緩和する装置にも適用可能であり、また、他の乗り物の運転者、各種プラントの監視者、夜間の従業者などの他の対象に対しても適用可能である。
また、上記実施形態では心理状態緩和装置でイライラレベルも検出する構成としたが、イライラ推定装置などの他の装置からイライラレベルを取得する構成としてもよい。
また、上記実施形態では、環境情報検出手段2で取得された環境情報と、生体情報検出手段4で取得された生体情報とに基づいて、所定時間後のイライラレベルを予測したが、イライラレベルの予測手法は限定されない。例えば、環境情報及び生体情報のうち一方の情報のみに基づいて予測してもよい。また、車両情報検出手段3により取得された車両情報を用いて予測してもよい。
また、上記実施形態では、運転者が平静状態からイライラ状態に変化すると判定された時刻を沈静刺激付与の開始時刻に設定したが、沈静刺激付与の開始時刻の設定方法はこれに限定されない。例えば、運転者が平静状態からイライラ状態に変化すると判定された時刻の所定時間後を沈静刺激付与の開始時刻に設定してもよい。ただし、沈静刺激付与は、運転者が平静状態(現在の心理状態)を維持している時に開始する必要がある。
また、上記実施形態では、沈静刺激付与を開始した後、イライラ状態へ変化したことが検出された際に沈静刺激の付与を即時に終了する構成としたが、終了の判断方法はこれに限定されない。例えば、イライラ状態への変化が検出された後も一定時間沈静刺激の付与を継続し、その一定時間が経過してもイライラ状態が続いている場合に沈静刺激の付与を終了するように心理状態緩和装置を構成してもよい。
1…心理状態緩和装置、2…環境情報検出手段、3…車両情報検出手段、4…生体情報検出手段、5…イライラ状態変化検出手段、6…開始判定手段、7…終了判定手段、8…沈静刺激制御手段、9…沈静刺激呈示装置
Claims (4)
- 被験者の心理状態を緩和する心理状態緩和装置であって、
前記被験者の心理パラメータを取得する心理パラメータ取得手段と、
前記心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づいて所定時間後の前記被験者の心理状態を予測し、予測した心理状態に基づいて前記被験者が該所定時間後に現在の心理状態から所定の心理状態に変化すると判定した場合に、沈静刺激の付与を開始する時刻を設定する開始時刻設定手段と、
前記開始時刻設定手段により設定された時刻に前記沈静刺激の付与を開始する刺激付与手段と、
を備えることを特徴とする心理状態緩和装置。 - 前記開始時刻設定手段は、前記心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づく現在の心理状態が所定の閾値未満であり、且つ該心理パラメータに基づいて予測された所定時間後の心理状態が前記所定の閾値以上の場合に、前記被験者が該所定時間後に前記現在の心理状態から前記所定の心理状態に変化すると判定し、該判定の時刻を前記沈静刺激の付与を開始する時刻に設定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の心理状態緩和装置。 - 前記刺激付与手段は、前記沈静刺激を付与した後に前記心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づいて、前記沈静刺激の付与後一定時間が経過するまで前記現在の心理状態が維持されていると判定した場合に、前記沈静刺激の付与を終了する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の心理状態緩和装置。 - 前記刺激付与手段は、前記沈静刺激を付与した後に前記心理パラメータ取得手段により取得された心理パラメータに基づいて、前記被験者が前記現在の心理状態から前記所定の心理状態に変化したと判定した場合に、前記沈静刺激の付与を終了する、
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の心理状態緩和装置。
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