JP2009017895A - 診断システム - Google Patents

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Abstract

【課題】股OAの診断システムにおいて、股OAの患者の転倒し易さや、リハビリの進度を数値的な指標で客観的に示す。
【解決手段】加速度センサから取得した股OA患者の歩行時における加速度の大きさと向きのデータに基づいて、被験者の前方向加速度割合、前後方向加速度総和、又は前後方向又は左右方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度を求める。これらの値に基づいて、股OA患者の転倒し易さ及びリハビリの進度を数値的な指標で客観的に診断することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、変形性股関節症(以下、股OA(osteoarthrosis)という)の患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリテーション(以下、リハビリと略す)の進度を診断する診断システムに関するものである。
股OAの患者は、歩行障害を有することが多い。従来のこれらの患者の歩き方の分析方法としては、患者の歩行中における骨盤回旋角度の最大値や肩峰側方偏位の最大値といった断片的データを高齢者等のデータと比較して分析する方法があった。
しかしながら、上記のような従来の患者の歩き方の分析方法では、患者の歩き方を動作として分析していないので、股OAの患者の転倒し易さを数値的な指標で客観的に示すことが難しい。
また、変形性関節症等の患者の歩行の評価システムとしては、非特許文献1に記載された発明が知られているが、この発明を実施するためには、主に2台の床反応力計と4台のCCDカメラでデータを採取する必要があるため、歩行の評価に必要な機器の購入に要するコストが高くなり、これらの機器を通常の病院に設置するのが難しいという問題がある。また、歩行の評価に必要なデータを採取するために、患者を長時間(1時間程度)歩かせなければならず、患者に大きな負担を強いるという問題があった。さらにまた、採取したデータの解析のアルゴリズムが複雑であり、データ処理に時間がかかるという問題があった。
神崎秀人、外4名、「機器を使用した歩行の評価」、理学療法学、2003年6月20日、第30巻、第4号、p.258、図7−8
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、股OAの患者の転倒し易さやリハビリの進度を、数値的な指標で客観的に示すことができ、しかも、診断に必要な機器の購入に要するコストを節約することができ、診断に必要なデータを採取するために患者に大きな負担を強いることを防ぐことが可能な診断システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、変形性股関節症の患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリテーション(以下、リハビリと略す)の進度を診断する診断システムにおいて、前記患者の歩行時に、該患者の少なくとも前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きとを検出する加速度センサと、前記加速度センサにより検出された加速度の大きさと向きのうち、複数の検出ポイントにおける加速度の大きさと向きのデータを記録する加速度データ記録手段と、前記加速度データ記録手段に記録された複数の検出ポイントにおける加速度の大きさと向きのデータに基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断する診断手段とを備えたものである。
請求項2の発明は、請求項1に記載の診断システムにおいて、前記診断手段は、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値に占める、前方向の加速度の大きさの総和の割合(以下、前方向加速度割合という)を求めて、この前方向加速度割合に基づいて、前記患者の転倒し易さを診断するものである。
請求項3の発明は、請求項1に記載の診断システムにおいて、前記診断手段は、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値(以下、前後方向加速度総和という)を求めて、この前後方向加速度総和に基づいて、前記患者の転倒し易さを診断するものである。
請求項4の発明は、請求項2に記載の診断システムにおいて、前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、前記前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前方向加速度割合を求めるものである。
請求項5の発明は、請求項2に記載の診断システムにおいて、前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、前記前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前方向加速度割合を求めるものである。
請求項6の発明は、請求項3に記載の診断システムにおいて、前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、前記前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前後方向加速度総和を求めるものである。
請求項7の発明は、請求項3記載の診断システムにおいて、前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、前記前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前後方向加速度総和を求めるものである。
請求項8の発明は、請求項4又は請求項6に記載の診断システムにおいて、前記前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上にリサージュ図形を作成するリサージュ図形作成手段をさらに備え、前記ベクトル作成手段は、前記2次元の座標平面上における原点を始点とし、前記リサージュ図形作成手段により作成されたリサージュ図形上の各点を終点とするベクトルを作成するものである。
請求項9の発明は、請求項5又は請求項7に記載の診断システムにおいて、前記前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上にリサージュ図形を作成するリサージュ図形作成手段をさらに備え、前記ベクトル作成手段は、前記2次元の座標平面上における原点を始点とし、前記リサージュ図形作成手段により作成されたリサージュ図形上の各点を終点とするベクトルを作成するものである。
請求項10の発明は、請求項1に記載の診断システムにおいて、前記診断手段は、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前記患者の前後方向における加速度の向きの変化の頻度を表す周波数(以下、前後方向における加速度周波数という)と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度(レベル)とを求めて、この各周波数帯域毎の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するものである。
請求項11の発明は、請求項10に記載の診断システムにおいて、前記診断手段は、前記各周波数帯域毎の強度のうち、5ヘルツ以上の周波数帯域の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するものである。
請求項12の発明は、変形性股関節症の患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリテーション(以下、リハビリと略す)の進度を診断する診断システムにおいて、前記患者の歩行時に、該患者の少なくとも左右方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きとを検出する加速度センサと、前記加速度センサにより検出された加速度の大きさと向きのうち、複数の検出ポイントにおける加速度の大きさと向きのデータを記録する加速度データ記録手段と、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前記患者の左右方向における加速度の向きの変化の頻度を表す周波数(以下、左右方向における加速度周波数という)と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度(レベル)とを求めて、この各周波数帯域毎の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断する診断手段とを備えたものである。
請求項13の発明は、請求項12に記載の診断システムにおいて、前記診断手段は、前記各周波数帯域毎の強度のうち、5ヘルツ以上の周波数帯域の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するものである。
請求項14の発明は、請求項1乃至請求項13に記載の診断システムにおいて、前記加速度センサを、前記患者の第2腰椎に相当する位置に装着したものである。
請求項15の発明は、請求項1乃至請求項14に記載の診断システムにおいて、前記加速度センサを、無線型の加速度センサとしたものである。
請求項1の発明によれば、加速度データ記録手段に記録された変形性股関節症の患者の歩行時における加速度の大きさと向きのデータに基づいて、変形性股関節症の患者の歩き方を動作として分析することができる。例えば、前後方向における加速度の大きさと向きのデータに基づいて、患者の前後方向における加速度の大きさの総和を求めることにより、変形性股関節症の患者の歩行時における転倒し易さを、数値的な指標で客観的に示すことができる。
また、上記非特許文献1に示される発明と異なり、データの採取に必要な機器が、高価な床反応力計やCCDカメラではなく、安価な加速度センサのみであるため、診断に必要な機器の購入に要するコストを節約することができる。さらにまた、上記非特許文献1に示される発明と異なり、診断に必要なデータを採取するために患者に強いる行為が、数歩の歩行のみであるため、診断に必要なデータを採取するのに患者に大きな負担を強いることを防ぐことができる。
請求項2の発明によれば、前方向加速度割合に基づいて、変形性股関節症の患者の転倒し易さを診断する。ここで、本発明者は、一般に、転倒経験のある変形性股関節症の患者の場合、健常者に比べて、前方向加速度割合が上昇することを発見した。従って、上記の前方向加速度割合に基づいて、変形性股関節症の患者の歩行時における転倒し易さを、数値的な指標で客観的に診断することができる。
請求項3の発明によれば、前後方向加速度総和に基づいて、変形性股関節症の患者の転倒し易さを診断する。ここで、本発明者は、一般に、転倒経験のある変形性股関節症の患者の場合、健常者に比べて、前後方向加速度総和が上昇することを発見した。従って、上記の前後方向加速度総和に基づいて、前記患者の転倒し易さを、数値的な指標で客観的に診断することができる。
請求項4の発明によれば、複数の検出ポイントにおける患者の前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成し、作成されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出する。そして、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前方向加速度割合を求める。ここで、本発明者は、一般に、上記の前方向加速度割合の算出方法を採用することにより、転倒経験のある変形性股関節症の患者と健常者との前方向加速度割合の差が拡大することを発見した。従って、上記の前方向加速度割合の算出方法を採用することにより、上記請求項2に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項5の発明によれば、複数の検出ポイントにおける患者の前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成し、作成されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出する。そして、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前方向加速度割合を求める。ここで、本発明者は、一般に、上記の前方向加速度割合の算出方法を採用することにより、転倒経験のある変形性股関節症の患者と健常者との前方向加速度割合の差が拡大することを発見した。従って、上記の前方向加速度割合の算出方法を採用することにより、上記請求項2に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項6の発明によれば、複数の検出ポイントにおける患者の前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成し、作成されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出する。そして、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前後方向加速度総和を求める。ここで、本発明者は、一般に、上記の前後方向加速度総和の算出方法を採用することにより、転倒経験のある変形性股関節症の患者と健常者との前後方向加速度総和の差が拡大することを発見した。従って、上記の前後方向加速度総和の算出方法を採用することにより、上記請求項3に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項7の発明によれば、複数の検出ポイントにおける患者の前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成し、作成されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出する。そして、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前後方向加速度総和を求める。ここで、本発明者は、一般に、上記の前後方向加速度総和の算出方法を採用することにより、転倒経験のある変形性股関節症の患者と健常者との前後方向加速度総和の差が拡大することを発見した。従って、上記の前後方向加速度総和の算出方法を採用することにより、上記請求項3に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項8の発明によれば、前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上にリサージュ図形を作成するようにしたことにより、変形性股関節症の患者に、自分の歩き方を動作として捉えた場合の特徴を分かり易く示すことができる。これにより、患者が自己の歩き方を正確に認識して、効率的なリハビリを行うことができる。
請求項9の発明によれば、前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上にリサージュ図形を作成するようにしたことにより、変形性股関節症の患者に、自分の歩き方を動作として捉えた場合の特徴を分かり易く示すことができる。これにより、患者が自己の歩き方を正確に認識して、効率的なリハビリを行うことができる。
請求項10の発明によれば、前後方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度に基づいて、患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するようにした。ここで、本発明者は、一般に、変形性股関節症の患者の場合、健常者に比べて、前後方向における加速度周波数の5ヘルツ以上の周波数帯域における強度が上昇することと、手術後のリハビリの程度が進んだ患者の場合、手術前の患者に比べて、前後方向における加速度周波数の5ヘルツ以上の周波数帯域における強度が低下することを発見した。従って、上記の前後方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度に基づいて、患者の転倒し易さ及びリハビリの進度を、数値的な指標で客観的に診断することができる。
請求項11の発明によれば、前記各周波数帯域毎の強度のうち、5ヘルツ以上の周波数帯域の強度に基づいて、患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するようにした。これにより、上記請求項10に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項12の発明によれば、左右方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度に基づいて、患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するようにした。ここで、本発明者は、一般に、変形性股関節症の患者の場合、健常者に比べて、左右方向における加速度周波数の5ヘルツ以上の周波数帯域における強度が上昇することと、手術後のリハビリの程度が進んだ患者の場合、手術前の患者に比べて、左右方向における加速度周波数の5ヘルツ以上の周波数帯域における強度が低下することを発見した。従って、上記の左右方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度に基づいて、患者の転倒し易さ及びリハビリの進度を、数値的な指標で客観的に診断することができる。
請求項13の発明によれば、前記各周波数帯域毎の強度のうち、5ヘルツ以上の周波数帯域の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するようにした。これにより、上記請求項12に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項14の発明によれば、加速度センサを、患者の第2腰椎に相当する位置に装着したことにより、上記請求項1乃至請求項13に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
請求項15の発明によれば、加速度センサを、無線型の加速度センサとしたことにより、上記請求項1乃至請求項14に記載の発明の効果を的確に得ることができる。
本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。本発明は、変形性股関節症(以下、股OA(osteoarthrosis)という)の患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリテーション(以下、リハビリと略す)の進度を診断する診断システムに関するものである。なお、以下に記載した実施形態は、本発明を網羅するものではなく、本発明は、下記の形態だけに限定されない。
図1(a)(b)(c)は、本実施形態の診断システムにおいて作成された健常者のリサージュ図形を示す。図1(a)は、無線型3次元加速度センサ(図17の131参照;以下、加速度センサと略す)により検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の前後方向及び左右方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形1を示す。図1(b)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の前後方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形2を示す。図1(c)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の左右方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形3を示す。
図2(a)(b)(c)は、本実施形態の診断システムにおいて作成された転倒経験のある股OAの患者のリサージュ図形を示す。図2(a)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の前後方向及び左右方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形11を示す。図2(b)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の前後方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形12を示す。図2(c)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の左右方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形13を示す。
図3(a)(b)(c)は、本実施形態の診断システムにおいて作成された転倒経験のない股OAの患者のリサージュ図形を示す。図3(a)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の前後方向及び左右方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形21を示す。図3(b)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の前後方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形22を示す。図3(c)は、加速度センサにより検出された、複数の検出ポイントにおける被験者の左右方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づいて作成したリサージュ図形23を示す。
上記の各図1(a)(b)(c)、図2(a)(b)(c)及び図3(a)(b)(c)においては、被験者画像6を各リサージュ図形と共にパソコンのディスプレイ159(図17参照)に表示するようにしたので、被験者や医師に、被験者の歩き方を動作として捉えた場合の特徴を分かり易く示すことができる。これにより、股OAの患者が自己の歩き方を正確に認識して、効率的なリハビリを行うことができる。上記の各図に表示されたリサージュ図形12の元になる加速度の大きさと向きのデータは、全て被験者の第2腰椎に相当する位置に装着した加速度センサからの出力値である。
被験者が健常者である場合には、上記の図1(a)(c)に示されるように、被験者の左方向における加速度の大きさの総和と右方向における加速度の大きさの総和とがほぼ同じ大きさになっている。また、被験者が健常者である場合には、上記の図1(b)(c)に示されるように、被験者の歩行時における上下動がリズミカルであり、図2(b)(c)及び図3(b)(c)に示される、被験者が股OAの患者の場合と異なり、棘波(例えば、図2(c)の14、及び図3(c)の24)が少ない。さらにまた、被験者が健常者である場合には、図1(b)に示されるように、被験者の前方向における加速度の大きさの総和が、大きくなることはないが、被験者が股OAの患者の場合には、図2(b)の15及び図3(b)の25に示されるように、被験者が健常者である場合と比べて、被験者の前方向における加速度の大きさの総和が大きくなる。
また、上記図2(b)の15及び図3(b)の25に示されるように、被験者が転倒経験のある股OAの患者の場合には、被験者が転倒経験のない股OAの患者の場合と比べて、被験者の前方向における加速度の大きさの総和が大きくなる。
図4は、転倒経験のない健常者と転倒経験のある股OAの患者の前方向(への)加速度割合の平均値を示す。本明細書において、前方向加速度割合とは、前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値に占める、前方向の加速度の大きさの総和の割合を表す。転倒経験のない健常者の前方向加速度割合の平均値と転倒経験のある股OAの患者の前方向加速度割合の平均値との有意差を検定すると、p(有意差検定による危険率)<0.001であった。従って、これらの平均値の間には、統計学的な有意差が認められる。
本診断システムでは、上記の各リサージュ図形の元になる2方向(前後方向と上下方向、又は前後方向と左右方向)の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成する。そして、作成したベクトルのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、上記の前方向加速度割合を求める。何故なら、一般に、上記のベクトルを用いた前方向加速度割合の算出方法を採用することにより、転倒経験のある股OAの患者と転倒経験のない健常者との前方向加速度割合の差が拡大するからである。
次に、図5を参照して、前後方向と上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて前方向加速度割合を求める方法について説明する。まず、データ分析用のパソコンのCPU151(図17参照)が、加速度センサからの出力値に基づいて求めた前後方向と上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点Oを始点とし、リサージュ図形31上の点を終点とするベクトルを作成する。例えば、リサージュ図形31上の点P1の場合には、作成されるベクトルは、Vとなる。さらに、CPU151は、リサージュ図形31上の点P2、P3についても、対応するベクトルを作成する。次に、CPU151は、作成した各ベクトルの大きさを算出する。例えば、上記のベクトルVの場合には、下記の式(1)を用いて、ベクトルの大きさを算出する。
CPU151は、上記のようにして算出したベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトル(図6中の第II象限と第III象限に存在する各ベクトル)の大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトル(図6中の第I象限と第IV象限に存在する各ベクトル)の大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出する。図6に示される例では、向きが前方向のベクトルとは、v6とv7であり、向きが後方向のベクトルとは、v1、v2、v3、v4、v5である。従って、CPU151は、図6に示される例では、前方向の加速度の大きさの総和を、下記の式(2)を用いて算出する。
また、CPU151は、図6に示される例では、後方向の加速度の大きさの総和を、下記の式(3)を用いて算出する。
CPU151は、上記の式(2)と式(3)で求めた前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値を求めて、この合計値に占める、前方向の加速度の大きさの総和の割合を、上記の前方向加速度割合とする。
また、図7に示されるように、被験者が転倒経験のある股OAの患者の場合には、被験者が転倒経験のない健常者の場合と比べて、被験者の前後方向における加速度が全体的に大きくなる。従って、図8に示されるように、転倒経験のある股OA患者の前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値(以下、前後方向加速度総和という)の平均値は、転倒経験のない健常者の前後方向加速度総和の平均値よりも大きくなる。ここで、上記の前後方向加速度総和を求めるのに必要な被験者の前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和の算出には、上記図5及び図6に示される前方向のベクトルの大きさと後方向のベクトルの大きさを累計する方法が用いられる。何故なら、一般に、このベクトルを用いた前後方向加速度総和の算出方法を採用することにより、転倒経験のある股OAの患者と転倒経験のない健常者との前後方向加速度総和の差が拡大するからである。図8に示されるように、転倒経験のない健常者(転倒未経験者)の前後方向加速度総和の平均値と転倒経験のある股OAの患者(転倒経験者)の前後方向加速度総和の平均値との有意差を検定すると、p(有意差検定による危険率)<0.001であった。従って、これらの平均値の間には、統計学的な有意差が認められる。
上記のように、前方向加速度割合や前後方向加速度総和の平均値に基づいて、被験者が股OAの患者であるか否かということや、股OAの患者の転倒し易さを、数値的な指標で客観的に診断することができる。
次に、本診断システムに採用されている、加速度周波数を用いた股OAの患者の転倒し易さやリハビリの進度の診断方法について説明する。ここで、上記の加速度周波数とは、被験者の前後方向、左右方向、又は上下方向における加速度の向きの変化の頻度を表す周波数のことを指す。
まず、図9及び図10を参照して、上記の加速度周波数を用いた診断方法に採用されている被験者の一間歩の歩様(被験者が一歩歩く間の歩様)の検出方法と、従来における被験者の一間歩の歩様の検出方法との相違点について説明する。図9は、健常者の歩行時における各動作のタイミングと、加速度センサにより求めた上下方向の加速度との関係を表す波線61を示す。図10は、股OA患者の歩行時における各動作のタイミングと、加速度センサにより求めた上下方向の加速度との関係を表す波線81を示す。
図9における63、64、65、66、68、69、70、71、73、74、75、76は、それぞれ左足のかかとが着地した瞬間(left heel contact)、左足が全体的に地面にべったり付いた瞬間(foot flat)、右足のつま先が地面から離れた瞬間(opposite toe-off)、右足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance)、右足のかかとが着地した瞬間(right heel contact)、右足が全体的に地面にべったり付いた瞬間(foot flat)、左足のつま先が地面から離れた瞬間(opposite toe-off)、左足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance)、左足のかかとが着地した瞬間(left heel contact)、左足が全体的に地面にべったり付いた瞬間(foot flat)、右足のつま先が地面から離れた瞬間(opposite toe-off)、右足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance)を示す。
図10における83、85、66、88、90、91、93、95、96は、それぞれ左足のかかとが着地した瞬間(left heel contact)、右足のつま先が地面から離れた瞬間(opposite toe-off)、右足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance)、右足のかかとが着地した瞬間(right heel contact)、左足のつま先が地面から離れた瞬間(opposite toe-off)、左足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance)、左足のかかとが着地した瞬間(left heel contact)、右足のつま先が地面から離れた瞬間(opposite toe-off)、右足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance)を示す。
従来の歩様の検出方法では、図9における波線61のピーク62、67、72を、それぞれ左足のかかとが着地した瞬間(left heel contact)、右足のかかとが着地した瞬間(right heel contact)、左足のかかとが着地した瞬間(left heel contact)であるとみなして、ピーク62とピーク67の間、及びピーク67とピーク72の間を被験者の一間歩として、被験者の歩様を検出していた。しかし、図9に示されるように、波線61のピーク62、67、72と、左右の足のかかとが着地した瞬間63、68、73とは、一致しない場合が多い。従って、波線61における上記のピーク間を一間歩とみなして被験者の歩様を検出した場合には、正確な歩様の検出を行なうことが難しい。
これに対して、本診断システムでは、左右の足が地面から一番高く上がった瞬間(mid stance;以下、ミッドスタンスという)を基準に、被験者の歩様を検出している。例えば、図9に示されるミッドスタンス66とミッドスタンス71との間や、ミッドスタンス71とミッドスタンス76との間を一間歩とみなして、被験者の歩様を検出する。一般に、ミッドスタンスの状態では、被験者の体軸の上下方向の動きが一瞬静止するため、加速度センサにより採取した上下方向における加速度が、ほぼ0になる。これは、図10に示される股OA患者の歩行時における波線81のミッドスタンス86、91、96についても同様である。従って、波線61や波線81における加速度が0のポイントの中から、ミッドスタンスに相当するポイントを見つけて、これらのポイントのうち、隣合うポイント間における被験者の歩様を検出することにより、従来の歩様の検出方法と比べて、より正確な歩様の検出を行なうことができる。
次に、図11(a)(b)、図12(a)(b)及び図13(a)(b)を参照して、上記の加速度周波数を用いた股OAの患者の転倒し易さやリハビリの進度の診断方法について具体的に説明する。図11(a)は、健常者の左右方向における加速度周波数(左右方向における加速度の向きの変化の頻度を表す周波数)と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度(レベル)の関係を示し、図11(b)は、股OA患者の左右方向における加速度周波数と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度(レベル)の関係を示す。また、図12(a)(b)は、それぞれ健常者と股OA患者との上下方向における加速度周波数と強度(レベル)の関係を示す。さらにまた、図13(a)(b)は、それぞれ健常者と股OA患者との前後方向における加速度周波数と強度(レベル)の関係を示す。これらの図に示される曲線101乃至106は、図9及び図10に示されるような、所定の方向における加速度の大きさの経時的な変化を示すデータを、高速フーリエ変換(FFT)して求めたデータを表したものである。図11(a)(b)に示されるように、被験者が股OAの患者の場合には、被験者が健常者である場合と比べて、左右方向の加速度周波数の強度が、5ヘルツ以上の周波数帯域において上昇する。また、図13(a)(b)に示されるように、被験者が股OAの患者の場合には、被験者が健常者である場合と比べて、前後方向の加速度周波数の強度が、5ヘルツ以上の周波数帯域において上昇する。これは、被験者が股OAの患者の場合には、被験者が健常者である場合と比べて、罹患している方の足が地面に着くときの足の動きが複雑になっているためであると考えられる。
上記の結果から、股OAの患者の前後方向又は左右方向の加速度周波数について、5ヘルツ以上の周波数帯域における強度が、以前に比べて下がったか否かをチェックすることにより、股OAの患者のリハビリの進度を診断することができる。また、被験者の前後方向又は左右方向の加速度周波数について、5ヘルツ以上の周波数帯域における強度をチェックすることにより、被験者が股OA患者であるか否かということや、被験者の転倒し易さを診断することもできる。
上記の診断方法の統計学的な有意性について、図14乃至図16を参照して説明する。図14は、左右方向における、健常者、オペ前の股OA患者、オペ後の股OA患者の加速度周波数の高・低周波数帯域別の平均強度を示す。図15は、上下方向における、健常者、オペ前の股OA患者、オペ後の股OA患者の加速度周波数の高・低周波数帯域別の平均強度を示す。図16は、前後方向における、健常者、オペ前の股OA患者、オペ後の股OA患者の加速度周波数の高・低周波数帯域別の平均強度を示す。図14及び図16に示されるように、左右方向及び前後方向における健常者とオペ前の股OA患者の加速度周波数の平均強度は、5ヘルツ以上の高周波数帯域においても、5ヘルツ未満の低周波数帯域においても、明らかに相違している(統計学的な有意差が認められる)。また、左右方向及び前後方向におけるオペ前の股OA患者とオペ後の股OA患者の加速度周波数の平均強度も、5ヘルツ以上の高周波数帯域においても、5ヘルツ未満の低周波数帯域においても、明らかに相違している(統計学的な有意差が認められる)。これらの有意差を検定すると、p(有意差検定による危険率)<0.05であった。
これに対して、図15に示されるように、上下方向における健常者とオペ前の股OA患者の加速度周波数の平均強度は、5ヘルツ以上の高周波数帯域においては、明らかに相違している(統計学的な有意差が認められる)が、5ヘルツ未満の低周波数帯域では、大差がない(統計学的な有意差が認められない)。また、上下方向におけるオペ前の股OA患者とオペ後の股OA患者の加速度周波数の平均強度についても、5ヘルツ以上の高周波数帯域においては、明らかに相違している(統計学的な有意差が認められる)が、5ヘルツ未満の低周波数帯域では、大差がない(統計学的な有意差が認められない)。
上記の結果から、パソコンのCPU151が、加速度センサを用いて採取した被験者の前後方向又は左右方向の加速度データに基き、図11(a)(b)又は図13(a)(b)に示されるような加速度周波数の各周波数帯域毎の強度を表すグラフを作成して、股OAの患者の前後方向又は左右方向の加速度周波数について、5ヘルツ以上の周波数帯域における強度が、以前に比べて下がったか否かをチェックすることにより、股OAの患者のリハビリの進度を診断することができる。また、パソコンのCPU151が、加速度センサを用いて採取した被験者の前後方向又は左右方向の加速度データに基き、図11(a)(b)又は図13(a)(b)に示されるような加速度周波数の各周波数帯域毎の強度を表すグラフを作成して、被験者の前後方向又は左右方向の加速度周波数について、5ヘルツ以上の周波数帯域における強度をチェックすることにより、被験者が股OA患者であるか否かということや、被験者の転倒し易さを診断することもできる。
また、パソコンのCPU151が、加速度センサを用いて採取した被験者の前後方向又は左右方向の加速度データに基き、図11(a)(b)又は図13(a)(b)に示されるような加速度周波数の各周波数帯域毎の強度を表すグラフを作成した後に、医師や被験者が、これらのグラフを見てチェックすることにより、上記の股OA患者のリハビリの進度や、被験者が股OA患者であるか否かということや、被験者の転倒し易さを診断するようにしてもよい。
図17は、上記の各診断方法を採用した診断システム130の電気的ブロック構成を示す。図に示されるように、この診断システム130は、主に加速度センサ131とパソコン132とより構成されている。加速度センサ131は、被験者の前後、左右、及び上下の全ての方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きとを検出するための3次元加速度センサ141と、3次元加速度センサ141から送られた信号を処理するための信号処理回路142と、信号処理回路142による処理後の信号をパソコン132に送信するための無線信号送信部143と、アンテナ144と、加速度センサ131内の各部に電源を供給するためのバッテリ145とを有している。
また、上記のパソコン132は、パソコン全体を制御するためのCPU151と、加速度センサ131内の無線信号送信部143からアンテナ152を介して無線信号を受信するための無線信号受信部153と、加速度センサ131から受信した加速度の大きさと向きのデータを含む各種のデータやプログラムを格納するためのHDD154(加速度データ記録手段)と、各種のプログラム等がローディングされるRAM156と、各種の制御用のプログラムを記憶したROM157と、パソコン内の各ブロックに電源を供給するための電源部158とを備えている。
上記のHDD154には、上記の各診断方法(前方向加速度割合を用いた診断方法、前後方向加速度総和を用いた診断方法、及び加速度周波数を用いた診断方法)によって、被験者が股OA患者であるか否かということや、被験者の転倒し易さや、股OAの患者のリハビリの進度を診断するための診断プログラム162が格納されている。また、HDD154には、上記の各診断方法に用いられるリサージュ図形やベクトルやグラフを作成するためのグラフ作成プログラム163と、被験者の歩行時に加速度センサ131から受信した加速度の大きさと向きのデータを格納した歩様DB164とが格納されている。上記のCPU151と診断プログラム162とが、請求項における診断手段と算出手段に相当する。また、上記のCPU151とグラフ作成プログラム163とが、請求項におけるベクトル作成手段とリサージュ図形作成手段に相当する。
また、パソコン132は、上記のグラフ作成プログラム163により作成されたグラフ等を表示するためのディスプレイ159と、各種の指示入力を行うための操作部160とを備えている。
ユーザが、操作部160を用いて、被験者の診断をパソコン132のCPU151に指示すると、パソコン132のCPU151は、歩様DB164に格納された加速度の大きさと向きのデータに基き、上記の各診断方法(前方向加速度割合を用いた診断方法、前後方向加速度総和を用いた診断方法、及び加速度周波数を用いた診断方法)により、被験者が股OA患者であるか否かということや、被験者の転倒し易さや、股OAの患者のリハビリの進度を自動的に診断する。
上記のように、本実施形態による診断システムによれば、前方向加速度割合、前後方向加速度総和、及び前後又は左右方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度に基づいて、被験者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断するようにした。これにより、被験者が股OA患者であるか否かということや、被験者の転倒し易さや、股OAの患者のリハビリの進度を数値的な指標で客観的に示すことができる。
また、本実施形態による診断システムでは、上記非特許文献1に示される発明と異なり、データの採取に必要な機器が、高価な床反応力計やCCDカメラではなく、安価な加速度センサのみであるため、診断に必要な機器の購入に要するコストを節約することができる。さらにまた、上記非特許文献1に示される発明と異なり、歩行の評価に必要なデータを採取するために被験者に強いる行為が、数歩の歩行のみであるため、診断に必要なデータを採取するのに股OA患者等の被験者に大きな負担を強いることを防ぐことができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では、加速度センサとして、無線信号を送信可能な加速度センサを用いたが、有線の加速度センサを用いてもよい。また、上記実施形態では、加速度センサとして、被験者の前後、左右、及び上下の全ての方向における加速度の大きさと向きとを検出することが可能な3次元加速度センサを用いたが、加速度センサとして、被験者の前後方向及び左右方向のみを検出可能な2次元加速度センサを用いてもよい。さらにまた、加速度センサの被験者への装着位置は、必ずしも被験者の第2腰椎に相当する位置に限られず、被験者の体軸の動きの加速度の大きさと向きとを検出することが可能な位置であればよい。また、上記の実施形態では、パソコン132のCPU151が被験者の転倒し易さや、股OAの患者のリハビリの進度を自動的に診断する場合の例を示したが、パソコンのCPUが、前方向加速度割合、前後方向加速度総和、又は前後・左右方向における加速度周波数の各周波数帯域毎の強度をディスプレイ上に表示して、医師や被験者が、これらのデータに基づいて、被験者の転倒し易さやリハビリの進度を診断するようにしてもよい。
(a)は、本発明の診断システムにおいて作成された、健常者の歩行時における前後方向及び左右方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図、(b)は、健常者の歩行時における前後方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図、(c)は、健常者の歩行時における左右方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図。 (a)は、上記診断システムにおいて作成された、転倒経験のある股OA患者の歩行時における前後方向及び左右方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図、(b)は、転倒経験のある股OA患者の歩行時における前後方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図、(c)は、転倒経験のある股OA患者の歩行時における左右方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図。 (a)は、上記診断システムにおいて作成された、転倒経験のない股OA患者の歩行時における前後方向及び左右方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図、(b)は、転倒経験のない股OA患者の歩行時における前後方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図、(c)は、転倒経験のない股OA患者の歩行時における左右方向及び上下方向の体軸の動きの加速度の大きさと向きを表すリサージュ図形を示す図。 転倒経験のない健常者と転倒経験のある股OAの患者との前方向への加速度割合の平均値を示す図。 ベクトルを作図して前方向と後方向の加速度の大きさの総和を求める方法の説明図。 ベクトルを作図して前方向と後方向の加速度の大きさの総和を求める方法の説明図。 転倒経験のある股OAの患者と転倒経験のない健常者の前後方向における加速度の大きさを比較して示す図。 転倒経験のない健常者と転倒経験のある股OAの患者との前後方向加速度総和の平均値を示す図。 健常者の歩行時における各動作のタイミングと、加速度センサにより求めた上下方向の加速度との関係を表す波線を示す図。 股OA患者の歩行時における各動作のタイミングと、加速度センサにより求めた上下方向の加速度との関係を表す波線を示す図。 (a)は、健常者の左右方向における加速度周波数と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度の関係を示す図、(b)は、股OA患者の左右方向における加速度周波数と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度の関係を示す図。 (a)(b)は、それぞれ健常者と股OA患者との上下方向における加速度周波数と強度の関係を示す図。 (a)(b)は、それぞれ健常者と股OA患者との前後方向における加速度周波数と強度の関係を示す図。 左右方向における、健常者、オペ前の股OA患者、オペ後の股OA患者の加速度周波数の高・低周波数帯域別の平均強度を示す図。 上下方向における、健常者、オペ前の股OA患者、オペ後の股OA患者の加速度周波数の高・低周波数帯域別の平均強度を示す図。 前後方向における、健常者、オペ前の股OA患者、オペ後の股OA患者の加速度周波数の高・低周波数帯域別の平均強度を示す図。 上記診断システムの電気的ブロック構成図。
符号の説明
1 リサージュ図形
2 リサージュ図形
3 リサージュ図形
11 リサージュ図形
12 リサージュ図形
13 リサージュ図形
21 リサージュ図形
22 リサージュ図形
23 リサージュ図形
130 診断システム
131 加速度センサ
151 CPU(診断手段、算出手段、ベクトル作成手段、リサージュ図形作成手段)
154 HDD(加速度データ記録手段)
162 診断プログラム(診断手段、算出手段)
163 グラフ作成プログラム(ベクトル作成手段、リサージュ図形作成手段)

Claims (15)

  1. 変形性股関節症の患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリテーション(以下、リハビリと略す)の進度を診断する診断システムにおいて、
    前記患者の歩行時に、該患者の少なくとも前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きとを検出する加速度センサと、
    前記加速度センサにより検出された加速度の大きさと向きのうち、複数の検出ポイントにおける加速度の大きさと向きのデータを記録する加速度データ記録手段と、
    前記加速度データ記録手段に記録された複数の検出ポイントにおける加速度の大きさと向きのデータに基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断する診断手段とを備えたことを特徴とする診断システム。
  2. 前記診断手段は、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値に占める、前方向の加速度の大きさの総和の割合(以下、前方向加速度割合という)を求めて、この前方向加速度割合に基づいて、前記患者の転倒し易さを診断することを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
  3. 前記診断手段は、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前方向の加速度の大きさの総和と後方向の加速度の大きさの総和との合計値(以下、前後方向加速度総和という)を求めて、この前後方向加速度総和に基づいて、前記患者の転倒し易さを診断することを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
  4. 前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、
    前記前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、
    前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、
    前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前方向加速度割合を求めることを特徴とする請求項2に記載の診断システム。
  5. 前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、
    前記前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、
    前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、
    前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前方向加速度割合を求めることを特徴とする請求項2に記載の診断システム。
  6. 前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、
    前記前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、
    前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、
    前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前後方向加速度総和を求めることを特徴とする請求項3に記載の診断システム。
  7. 前記加速度データ記録手段に記録されている加速度の大きさと向きのデータには、複数の検出ポイントにおける前記患者の前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータが含まれており、
    前記前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上に、原点を始点とするベクトルを作成するベクトル作成手段と、
    前記ベクトル作成手段により作成されたベクトルの大きさを算出する算出手段とをさらに備え、
    前記診断手段は、前記算出手段により算出されたベクトルの大きさのうち、その向きが前方向のベクトルの大きさを累計して、前方向の加速度の大きさの総和を算出すると共に、その向きが後方向のベクトルの大きさを累計して、後方向の加速度の大きさの総和を算出し、これら前方向と後方向の加速度の大きさの総和に基づいて、前記前後方向加速度総和を求めることを特徴とする請求項3に記載の診断システム。
  8. 前記前後方向及び上下方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上にリサージュ図形を作成するリサージュ図形作成手段をさらに備え、
    前記ベクトル作成手段は、前記2次元の座標平面上における原点を始点とし、前記リサージュ図形作成手段により作成されたリサージュ図形上の各点を終点とするベクトルを作成することを特徴とする請求項4又は請求項6に記載の診断システム。
  9. 前記前後方向及び左右方向の加速度の大きさと向きのデータに基づいて、2次元の座標平面上にリサージュ図形を作成するリサージュ図形作成手段をさらに備え、
    前記ベクトル作成手段は、前記2次元の座標平面上における原点を始点とし、前記リサージュ図形作成手段により作成されたリサージュ図形上の各点を終点とするベクトルを作成することを特徴とする請求項5又は請求項7に記載の診断システム。
  10. 前記診断手段は、前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の前後方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前記患者の前後方向における加速度の向きの変化の頻度を表す周波数(以下、前後方向における加速度周波数という)と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度(レベル)とを求めて、この各周波数帯域毎の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断することを特徴とする請求項1に記載の診断システム。
  11. 前記診断手段は、前記各周波数帯域毎の強度のうち、5ヘルツ以上の周波数帯域の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断することを特徴とする請求項10に記載の診断システム。
  12. 変形性股関節症の患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリテーション(以下、リハビリと略す)の進度を診断する診断システムにおいて、
    前記患者の歩行時に、該患者の少なくとも左右方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きとを検出する加速度センサと、
    前記加速度センサにより検出された加速度の大きさと向きのうち、複数の検出ポイントにおける加速度の大きさと向きのデータを記録する加速度データ記録手段と、
    前記加速度データ記録手段に記録された、前記患者の左右方向における、体軸の動きの加速度の大きさと向きのデータに基づき、前記患者の左右方向における加速度の向きの変化の頻度を表す周波数(以下、左右方向における加速度周波数という)と、この加速度周波数の各周波数帯域毎の強度(レベル)とを求めて、この各周波数帯域毎の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断する診断手段とを備えたことを特徴とする診断システム。
  13. 前記診断手段は、前記各周波数帯域毎の強度のうち、5ヘルツ以上の周波数帯域の強度に基づいて、前記患者の転倒し易さ、又は/及びリハビリの進度を診断することを特徴とする請求項12に記載の診断システム。
  14. 前記加速度センサを、前記患者の第2腰椎に相当する位置に装着したことを特徴とする請求項1乃至請求項13に記載の診断システム。
  15. 前記加速度センサは、無線型の加速度センサであることを特徴とする請求項1乃至請求項14に記載の診断システム。
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