ところで、上記特許文献1及び2に開示された従来技術では、不使用時(プレスフィット端子を基板のスルーホールに圧入してない時)にプレスフィット端子が露出した状態にあるので、ワイヤハーネス組立工程や輸送経路で端子曲がりが発生し、機械的、電気的接続不良が起きるという問題がある。特に近年は端子サイズの小型化が進み、端子が変形しやすくなる傾向が顕著となっている。
また、上記特許文献3に開示された従来技術によれば、不使用時は、保護カバーで覆うことで端子を保護するするとともに、コネクタ嵌合時には保護カバーを開放させることで露出端子を相手方の露出端子部に接触させることができる。
しかし、この特許文献3に開示された保護カバーは、コネクタを脱抜する際にスライド式に引き出されて露出端子を覆うように構成されているが、この脱抜後などの不使用時に何らかの外力が加わると、簡単にスライドして端子が露出するという問題があった。
また、この特許文献3に開示された保護カバーの技術を、特許文献1及び2などに開示されているような、基板のスルーホールに直接接続するプレスフィット端子を保持したコネクタの技術に直接適用することはできない。
すなわち、特許文献3の技術は、その公報の図8に示されるとおり、露出端子の一側面に形成された弾性接触片と、雌コネクタ部の内側面に形成されたフレキシブルプリント回路体の露出端子部とを電気的に接触させる(側面と側面を電気的に接触させる)技術において、コネクタの露出端子に対してスライド自在の保護カバーで端子を保護するものである。これに対し、特許文献1及び2などの技術は、プレスフィット端子はスルーホールに圧入されて基板と電気的に接続されるものであるため、その端子先端部を全周面露出させる必要がある。従って、特許文献3の技術の保護カバーを特許文献1及び2などの技術に単純に適用するだけでは、不使用時にはプレスフィット端子を保護し、かつ、プレスフィット端子を基板のスルーホールに圧入する際にプレスフィット端子の電気的接触面を全て露出させることができないという問題がある。
本発明は、このような従来の問題点に鑑みて為されたもので、その目的は、基板に圧接または圧入される端子を保持するコネクタで、基板に端子が圧接または圧入されていない不使用時に、露出する端子を確実に保護することが可能で、かつ小型で成型が容易なコネクタおよび電気接続箱を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係るコネクタは、基板に直接接続される基板接続部と電線の端末が接続される電線接続部を有する端子を保持し、前記電線と前記端子の基板接続部を前記基板のスルーホールに圧接または圧入して接続するコネクタであって、前記端子を保持する端子ハウジングと、前記端子ハウジングとの間に前記端子を収容するように前記端子ハウジングに取り付けられ、前記端子ハウジングとの間に前記端子を収容し、前記端子の先端部を覆う第一位置と、前記端子ハウジングが内嵌される第二位置との間で、前記端子ハウジングと相対的にスライド可能な端子カバーと、前記端子カバーを前記第一位置に位置決めするロック機構と、を備え、前記ロック機構は、前記端子カバーをコネクタの相手部材であるケースハウジングのコネクタ収容部に挿入する過程で、前記コネクタ収容部に設けたロック解除部と干渉して、前記端子カバーの第一位置での位置決めを解除されることを特徴とする。
この態様によれば、端子カバーはロック機構により位置決めされて第一位置にあるとき、基板接続部のある端子の先端部を覆うので、基板のスルーホールに端子が圧接または圧入されていない不使用時に、露出する端子を端子カバーにより確実に保護することができる。また、コネクタ側には、端子カバーを第一位置に位置決めするロック機構のみを設ければよく、ロック解除部はコネクタの相手部材であるケースハウジングのコネクタ収容部に設けられるので、コネクタの構造が簡単になり、小型で成型が容易なコネクタが得られる。
本発明の他の態様に係るコネクタは、前記端子カバーは、前記端子ハウジングと相対的に前記第一位置から前記第二位置側へスライドするときに、前記端子の先端部と前記基板接続部をそれぞれ通過可能にする孔部を有することを特徴とする。
この態様によれば、端子カバーと端子ハウジングが相対的にスライドして端子ハウジングが端子カバーに内嵌すると、端子カバーの孔部から端子の先端部が外部に突出させられる。これにより、端子の先端部と前記基板接続部を基板に圧接または圧入させることができる。
本発明の他の態様に係るコネクタは、前記端子カバーは、前記孔部が形成された底壁部を有し、前記第一位置に位置決めされている状態で、前記端子ハウジングから突出した前記端子の先端部の下側全体を前記底壁部で覆うことを特徴とする。
この態様によれば、端子カバーは、第一位置に位置決めされている状態で、端子ハウジングから突出した前記端子の先端部の下側全体を孔部が形成された底壁部で覆うことで、露出する端子を確実に保護することができる。
本発明の他の態様に係るコネクタは、前記ロック機構は、前記端子カバー側に設けられ、先端に係合爪を有し弾性のある係合片と、前記端子ハウジング側に設けられ、前記係合爪が係合する係止部とを有することを特徴とする。
この態様によれば、基板に端子が圧接または圧入されていない不使用時には、端子カバー側に設けられたロック機構の係合片を、端子ハウジング側に設けられた係止部に係合させることにより、端子カバーを、端子の先端部を覆う第一位置に位置決めして保持することができる。また、端子カバー側には係合片を、端子ハウジング側には溝等の係止部を設ければよく、コネクタ側に設けるロック機構の構造が簡単になるので、小型で成型が容易であり、かつ、低コストのコネクタが得られる。
本発明の他の態様に係るコネクタは、前記係止部は、前記端子ハウジングの側壁に形成され前記係合爪が嵌合する係止溝と、該係止溝に前記係合爪が嵌合した状態で該係合爪の下面が係合する係止面とを有し、前記コネクタを前記コネクタ収容部から離脱させる過程で、前記係合爪を前記係止溝に嵌合させると共に、前記係合爪の下面を前記係止面に係合させることを特徴とする。
この態様によれば、コネクタをコネクタ収容部から離脱させる過程で、係合爪を係止部の係止溝に嵌合させると共に、係合爪の下面を係止部の係止面に係合させるので、端子カバーをロック機構により第一位置に確実に位置決めすることができる。
本発明の他の態様に係るコネクタは、前記端子ハウジングの側壁に、前記基板側にある基端部から反基板側へ延び、前記基端部を支点に揺動可能な弾性のあるロック用係合片が設けられており、該ロック用係合片の中間部には、前記コネクタ収容部の内壁に形成された係止部と係合可能で、前記コネクタ収容部に挿入された前記コネクタの離脱を阻止する係合凸部が形成されており、かつ、前記ロック用係合片の先端部には、該ロック用係合片を、前記基端部を支点にしてロック解除側へ揺動させるための把持部が形成されていることを特徴とする。
この態様によれば、端子の先端部が基板に圧接または圧入された状態(コネクタ嵌合状態)では、端子ハウジングの側壁に設けたロック用係合片がコネクタ収容部の内壁に形成した係止部と係合することで、コネクタ収容部に挿入されたコネクタの離脱が阻止される。一方、端子の先端部を基板のスルーホールから抜き、コネクタをコネクタ収容部から離脱させる際には、ロック用係合片の把持を掴んでロック用係合片をロック解除位置側へ揺動させることで、ロック用係合片と係止部の係合を容易に解除することができる。
上記課題を解決するために、本発明の第2の態様に係る電気接続箱は、上記態様のいずれか一つに記載のコネクタと、前記コネクタが収容されるコネクタ収容部を有するケースハウジングと、電子部品が搭載され、かつ複数の前記スルーホールを有し、前記複数のスルーホールが前記コネクタ収容部に臨むように配置された基板と、を備えることを特徴とする。
この態様によれば、基板のスルーホールに端子が圧接または圧入されていない不使用時に、つまりコネクタをコネクタ収容部から取り外してある離脱状態では、露出する端子を端子カバーにより保護することができるコネクタを用いるので、露出する端子を保護することが可能な電気接続箱を得ることができる。また、コネクタ側には、端子カバーを第一位置に位置決めするロック機構のみを設ければよく、ロック解除部はケースハウジングのコネクタ収容部に設けられるので、コネクタの構造が簡単になり、小型で成型が容易なコネクタが得られる。小型で成型が容易なコネクタを用いるので、小型で製造が容易であり、低コストの電気接続箱を得ることができる。
上記課題を解決するために、本発明の第3の他の態様に係る電気接続箱は、上記態様のいずれか一つに記載のコネクタと、前記コネクタが収容されるコネクタ収容部を有するケースハウジングと、電子部品が搭載され、かつ複数のスルーホールを有し、前記複数のスルーホールが前記コネクタ収容部に臨むように配置された基板と、を備え、前記コネクタ収容部は、該コネクタ収容部の内壁との間に前記係合片を収容する係合片収容空間を形成する壁部を有し、該壁部は、前記ロック解除部として、前記ロック機構により前記第一位置に位置決めされた前記端子カバーを前記コネクタ収容部に挿入する過程では、前記係合片の前記係合爪に当接し、前記係合爪が前記係止部に係合した係合位置から前記係合片を外方へ拡開させて、前記係合爪が前記係止部から離脱する係合解除位置へ弾性変形させると共に、前記端子カバーと前記端子ハウジングを前記コネクタ収容部から離脱させる過程では、前記係合片の前記係合爪に当接し、前記係合片が前記係合解除位置から自身の弾性力で前記係合位置へ復元するのを許容する係合爪ガイド面を有することを特徴とする。
この態様によれば、ロック機構により上記第一位置に位置決めされた端子カバーをコネクタ収容部に挿入する際には、コネクタ側の係合片が係合片収容空間に収容されていく。この挿入過程で、コネクタ側にある係合片の係合爪がコネクタ収容部の壁部に形成された係合爪ガイド面に当接し、この係合爪ガイド面により、係合片をその係合爪が係止部に係合した係合位置から外方へ拡開させて、係合爪が係止部から離脱する係合解除位置へ弾性変形させる。これにより、端子カバーの第一位置での位置決めが解除される。このロック解除により、端子ハウジングが端子カバーに対しスライド可能になり、端子ハウジングを基板側へ押し込むことで、端子ハウジングが端子カバーに内嵌し、端子ハウジングの下端部から突出した端子の先端部(露出端子)が端子カバーの孔部から外部に突出させられる。これにより、端子の先端部を基板のスルーホールに圧接または圧入させることができる。端子の先端部を基板のスルーホールに圧接または圧入させることで、コネクタ収容部へのコネクタの装着(嵌合)が完了する。
このようなコネクタの装着(嵌合)状態から、コネクタ(端子カバーと端子ハウジング)をコネクタ収容部から離脱させる際には、コネクタを反基板側へ引っ張る。この離脱過程では、上記挿入過程とは逆の経路を辿る。即ち、まず、コネクタを反基板側へ引っ張ることで、端子の先端部を基板のスルーホールから抜いていく。これにより、端子ハウジングが端子カバーに対してスライド可能になる。この状態で、端子ハウジングを反基板側へさらに引っ張ることで、端子ハウジングを端子カバーに対して反基板側へスライドさせていき、端子カバーがロック機構により上記第一位置に位置決めされる位置に近づいていく。
このように端子ハウジングを端子カバーに対して反基板側へスライドさせていく過程で、係合爪ガイド面により外方へ拡開されて係合解除位置にある係合片は、その係合爪が係合爪ガイド面に当接しながら、自身の弾性力により係合位置へ復元していく。このように、係合爪が係合位置へ復元し、かつ端子ハウジングと端子カバーの相対位置が、端子カバーがロック機構により第一位置に位置決めされる位置になると、ロック機構の係合片が係止部に係合し、端子カバーがロック機構により第一位置に位置決めされる。この後、端子カバーと一体になった端子ハウジングをさらに引っ張ることで、コネクタをコネクタ収容部から離脱させることができる。
このように、この態様に係る電気接続箱では、離脱状態にあるコネクタ、つまり、コネクタ収容部に装着していないコネクタでは、端子ハウジングから露出する端子を端子カバーで保護することができる。これにより、コネクタ単体での取り扱い時、コネクタ収容部へのコネクタ装着時、およびコネクタ収容部からのコネクタ離脱時に、コネクタに保持された端子の先端部が損傷を受けるのを防止することができる。その結果、コネクタ収容部へのコネクタ装着時に、端子と基板側にある電極等との接触不良や、絶縁不良等の不具合の発生を効果的に防止することができ、電気接続箱との接続信頼性を向上させることができる。
本発明の他の態様に係る電気接続箱は、前記コネクタ収容部の前記壁部に設けられた前記係合爪ガイド面は、前記係合片の係合爪に当接可能で、前記係合片を前記係合位置と前記係合解除位置との間で移行させる傾斜面と、前記係合片の係合爪に当接可能で、前記傾斜面に連続し、前記係合片を前記係合解除位置に保持する垂直面とを有することを特徴とする。
この態様によれば、コネクタ収容部の壁部に設けられた係合爪ガイド面を、前記傾斜面と前記垂直面とを有する構成にすることで、係合片を収容する狭い係合片収容空間内で、かつ、端子カバーと端子ハウジングの相対的なスライド量を小さくして、係合片を係合位置と係合解除位置との間で確実に移行させることができる。これにより、コネクタ収容部が大きくなるのを抑制でき、電気接続箱の小型化を図れる。
本発明によれば、基板に端子が圧接または圧入されていない不使用時に、露出する端子を確実に保護することが可能で、かつ小型で成型が容易なコネクタを得ることができる。
また、本発明によれば、露出する端子を保護することが可能な電気接続箱を得ることができる。また、小型で成型が容易なコネクタを用いるので、小型で製造が容易であり、低コストの電気接続箱を得ることができる。
次に、本発明を具体化した一実施形態を図1乃至図30に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るコネクタおよび電気接続箱を示す斜視図である。図1では、コネクタを用いた電気接続箱を一点鎖線で示し、コネクタをケースハウジングのコネクタ収容部に挿入する前の状態(コネクタ離脱状態)を示している。図2はコネクタの端子ハウジングおよび端子カバーと、コネクタの相手部材であるケースハウジングとの関係を示す平面図。図3はコネクタに使用する端子と電線を示す斜視図である。
図4は、コネクタ離脱状態における、端子ハウジング、端子カバーおよびケースハウジングの関係を示す側面図。
図5はケースハウジングを示す平面図、図6は図5のA−A断面図、図7は図5のB−B断面図、そして、図8は図5のC−C断面図である。
図9は図2のA−A断面図、図10は図9のB部の部分拡大図である。
図11はコネクタをコネクタ収容部に挿入している途中の状態(挿入状態)を示す斜視図、図12は同状態を示す平面図、図13は同状態を示す側面図である。
図14は図12のA−A断面図、図15は図14のC部の部分拡大図である。図16は図12のB−B断面図、図17は図16のD部の部分拡大図である。
図18は端子の先端部が基板のスルーホールに圧接または圧入された状態(コネクタ嵌合状態)を示す斜視図、図19は同状態を示す平面図、図20は同状態を示す側面図である。
図21は図19のA−A断面図、図22は図21のC部の部分拡大図である。図23は図19のB−B断面図、図24は図23のD部の部分拡大図である。
図25はコネクタをコネクタ収容部から引き出している途中の状態(引き出し状態)を示す斜視図、図26は同状態を示す平面図である。
図27は図26のA−A断面図、図28は図27のC部の部分拡大図である。図29は図26のB−B断面図、図30は図29のD部の部分拡大図である。
図1に示す一実施形態に係るコネクタ1は、FET等の電子部品を搭載した基板2を内部に収納した電気接続箱で、ワイヤハーネス幹線の分岐部に設置され、電源や信号を供給する上流の電気接続箱と接続される電気接続箱30に用いられる。
図1では、コネクタ1が使用される電気接続箱30のうち、コネクタ1が収容されるコネクタの相手部材であるコネクタ収容部21を有するケースハウジング(例えばアッパーケース)20と、複数のスルーホール2aが形成された基板2とを示している。基板2の各スルーホール2aの内壁には、電極2bが形成されている。そして、基板2は、複数のスルーホール2aがケースハウジング20のコネクタ収容部21(コネクタ収容部21の下部開口部)に臨むように、ケースハウジング20に対して配置されている。例えば、基板2は、図2および図9に示すように、ケースハウジング20の下端面から所定の間隔を置いて配置されている。
(コネクタの構成)
一実施形態に係るコネクタ1は、このコネクタに保持される複数の電線3のうち任意の電線3間を基板2の配線パターン(図示省略)を介して電気的に相互接続するコネクタである。このコネクタ1は、基板2のスルーホール2aに圧接または圧入される基板接続部4aと、電線3の端末が接続される電線接続部4bをそれぞれ有する複数の端子4(図3参照)を保持可能である。本実施形態では、電線接続部4bは、図3に示すように、電線3の端末に圧着により接続される構造を有し、電線3の絶縁被覆3aに加締めて圧着されるインシュレーションバレル4eと、電線3の心線3bに加締めて圧着されるワイヤバレル4dとを有する。なお、電線接続部4bは、電線3の端末が圧接により接続される圧接接続部であってもよい。
このコネクタ1は、複数の端子4の各基板接続部4aを基板2の対応するスルーホール2aに圧接または圧入して各電線3を基板2の電極2bに接続することで、複数の電線3のうち任意の電線間を基板2の配線パターン(図示省略)を介して電気的に相互接続するようになっている。
このコネクタ1は、図1に示すように、複数の端子4を保持する端子ハウジング5と、端子ハウジング5との間に端子4を収容するように端子ハウジング5に取り付けられ、端子ハウジング5との間に端子4を収容し端子4の先端部を覆う第一位置(図4参照)と、端子ハウジング5が内嵌される第二位置(図21参照)との間で、前記端子ハウジングと相対的にスライド可能な端子カバー6と、端子カバー6を第一位置に位置決めするロック機構10と、を備えている。
ロック機構10は、端子カバー6をコネクタ1の相手部材であるケースハウジング20のコネクタ収容部21に挿入する過程で、コネクタ収容部21に設けたロック解除部と干渉して、端子カバー6の第一位置での位置決めを解除されるようになっている。
図1に示す端子ハウジング5は、図3に示すような直線形状を有する複数の端子4、例えば、1列に8個の端子4を3列に並べて、合計で24個の端子4を保持可能になっている。図4には、端子ハウジング5に保持された複数の端子4のうち、1列に並ぶ8個の端子4の基板接続部4aおよび先端部4cを示してある。
端子カバー6は、端子ハウジング5と相対的に図4に示す第一位置から図21に示す第二位置側へスライドするときに、各端子4の基板接続部4aと先端部4cをそれぞれ通過可能にする複数の孔部7(図9参照)を有している。複数の孔部7はそれぞれ、外方に向けて縮径する傾斜面で形成されているのが好ましい。また、各孔部7には、対応する各端子4の基板接続部4aと先端部4cが常時オーバーラップしている。つまり、コネクタ1がコネクタ収容部21から離脱した状態(図9参照)において、各端子4の基板接続部4aと先端部4cが端子カバー6の対応する各孔部7と正面視でオーバーラップするように作られている。
端子カバー6は、図1および図9に示すように、孔部7が形成された底壁部6aを有し、第一位置に位置決めされている状態で、端子ハウジング5の下端部から突出した各端子4の基板接続部4aと先端部4c(露出する端子)の下側全体を底壁部6aで覆うことで、各端子4の基板接続部4aと先端部4cを保護するようになっている。
ロック機構10は、図1、図9および図10に示すように、端子カバー6側に設けられ、先端に係合爪13,14を有し弾性のある左右の係合片11,12と、端子ハウジング5側に設けられ、左右の係合爪13,14がそれぞれ係合する左右の係止部15,15とを有する。
各係合片11,12の係合爪13,14が係止部15,15に係合することで、端子カバー6と端子ハウジング5が図4および図9に示す第一位置に位置決めされてロックされるようになっている。そして、各係合爪13,14と各係止部15,15との係合が解除されると、端子カバー6が端子ハウジング5と相対的に図4に示す第一位置から図21に示す第二位置へスライド可能になる。
端子ハウジング5に設けられた係止部15,15は、図9および図10に示すように、端子ハウジング5の側壁に形成され係合爪13,14が嵌合する係止溝15aと、係止溝15aに係合爪13,14が嵌合した状態で係合爪13,14の下面が係合する係止面15bとを有する。コネクタ1をコネクタ収容部21から離脱させる過程で、端子カバー6を上記第二位置から第一位置側へスライドさせると、係合爪13,14が係止溝15aにそれぞれ嵌合すると共に、係合爪13,14の下面が係止面15bにそれぞれ係合するようになっている。これにより、係止爪13,14が係止溝15aに確実に係合するようになっている。なお、図10に示すように、係止溝15aの下側面に連続する係止面15bは係止溝15の上側面より端子ハウジング5の側面から突出している。このような構造により、コネクタ1の離脱時に、端子ハウジング5のみが離脱しないように、係止面15bが、係合爪13,14に係合して確実に端子カバー6を引き上げることができる。
端子ハウジング5の側壁には、図1および図4に示すように、基板2側にある基端部40aから反基板側へ縦に延び、基端部40aを支点に弾性変形可能なロック用係合片40が設けられている。このロック用係合片40の中間部には、コネクタ収容部21の内壁に形成された係止部41(図5参照)と係合可能で、コネクタ収容部21に挿入されたコネクタ1の離脱を阻止する係合凸部40bが形成されている。また、ロック用係合片40の先端部には、ロック用係合片40を、基端部40aを支点にしてロック解除側(図1で斜め右側)へ弾性変形させるための把持部40cが形成されている。
また、端子ハウジング5の上部には、図1および図2に示すように、端子ハウジング5に保持された複数の端子4の電線接続部4bに端末がそれぞれ接続された電線3をガイドして外部へ引き出すための複数の電線ガイド溝50が形成されている。本例では、1列に8個の電線ガイド溝50を3列に並べて形成してあり、24本の電線3を外部へ引き出せるようになっている。
(電気接続箱の構成)
一実施形態に係る電気接続箱30は、図1に示すように、上記コネクタ1と、コネクタ1が収容されるコネクタの相手部材であるコネクタ収容部21を有するケースハウジング(例えばアッパーケース)20と、複数のスルーホール2aが形成され、電子部品が搭載された基板2と、を備えている。
コネクタ収容部21は、図5乃至図8に示すように、コネクタ収容部21の左右の内壁21aとの間に係合片11,12を収容する左右の係合片収容空間22,22を形成する壁部24を有する。この壁部24は、上記ロック解除部として、ロック機構10により第一位置に位置決めされた端子カバー6をコネクタ収容部21に挿入する過程では、係合片11,12の係合爪13,14に当接し、係合爪13,14が係止部15,16に係合した係合位置から係合片11,12を外方へ拡開させて、係合爪13,14が係止部15,16から離脱する係合解除位置へ弾性変形させる係合爪ガイド面27を有する。また、この係合爪ガイド面27は、端子カバー6と端子ハウジング5をコネクタ収容部21から離脱させる過程では、係合片11,12の係合爪13,14に当接し、係合片11,12が前記係合解除位置から自身の弾性力で前記係合位置へ復元するのを許容する。
係合爪ガイド面27は、係合片11,12の係合爪13,14に当接可能で、係合片11,12を係合位置と係合解除位置との間で移行させる傾斜面27aと、係合片11,12の係合爪13,14に当接可能で、傾斜面27aに連続し、係合片11,12を係合解除位置に保持する垂直面27bとを有する。
なお、図6および図7で、符号25は、係合片11,12が拡開されて係合位置から係合解除位置へ弾性変形するのを許容するための凹部である。ケースハウジング20側にある凹部25は、端子カバー6の係合爪13,14を更に確実に端子ハウジング5の係止面15bに引っ掛ける為のバックアップ的なものとして設けてある。つまり、凹部25は、端子ハウジング5を離脱させた時に端子カバー6も同時に上がってきて、ケースハウジング20から離脱したときに端子ハウジング5のみ上がってきてしまい、端子4の基板接続部4aと先端部4cがむき出しとなった状態になることがないよう確実に係合し、端子4の基板接続部4aと先端部4cを保護する為のものである。
以上のように構成されたコネクタ1の端子ハウジング5に保持された複数の端子4の各圧入部4aを基板2の複数のスルーホール2aに圧入させるコネクタの嵌合動作と、各基板接続部4aを各スルーホール2aから離脱させるコネクタの離脱動作を説明する。
図1、図2、図4、図9および図10に示すように、コネクタ1がコネクタ収容部21から離脱したコネクタ離脱状態では、端子ハウジング5の左右の係合片11,12の係合爪13,14を端子カバー6の左右の係止部15,15の係止溝15aにそれぞれ係合させる。
これにより、端子カバー6は、端子ハウジング5の下端部から突出した各端子4の基板接続部4aと先端部4c(露出する端子)の下側全体を底壁部6aで覆う第一位置に、ロック機構10により位置決めされてロックされている(図4、図9および図10参照)。従って、コネクタ離脱状態では、第一位置に保持された端子カバー6が、その底壁部6aで各端子4の基板接続部4aと先端部4cの下側全体を覆って、各端子4の基板接続部4aと先端部4c全体を保護している。
このようなコネクタ離脱状態において、ロック機構により第一位置に位置決めされた端子カバー6をコネクタ収容部21に挿入する際には、図11乃至図17に示すように、コネクタ1側の係合片11,12が係合片収容空間22,22に収容されていく。
この挿入過程で、係合爪13,14が壁部24、24に形成された係合爪ガイド面27,27に当接する。その挿入過程の初期には、係合爪13,14が係合爪ガイド面27,27の傾斜面27aに当接する。(図16、図17参照)。係合爪13,14が係合爪ガイド面27,27の傾斜面27a上を移動し、その後、垂直面27bに当接する。係合爪13,14が傾斜面27a上を移動する間に、その傾斜面27aは、係合片11,12を係合爪13,14が係止部15,16の係止溝15aに係合した係合位置から外方へ拡開させる(図21乃至図24参照)。また、係合爪13、14が傾斜面27a上から垂直面27b上に移動すると、係合片11,12はその垂直面27bにより拡開した状態を保持される。
係合片11,12の拡開により、係合爪13,14が係止部15,16の係止溝15aから離脱する係合解除位置(図21、図22参照)へ弾性変形する。これにより、端子カバー6の第一位置での位置決めが解除される。このロック解除により、端子ハウジング5が端子カバー6に対しスライド可能になり、端子ハウジング5を基板2側へさらに押し込むことで、端子ハウジング5が端子カバー6に内嵌し(図18乃至図21参照)、端子ハウジング5の下端部から突出した各端子4の基板接続部4aと先端部4c(露出端子)が端子カバー6の孔部7から外部に突出させられる。これにより、各端子4の基板接続部4aと先端部4cを基板2の対応するスルーホール2aに圧接または圧入させることができる。端子4の基板接続部4aと先端部4cを基板2のスルーホール2aに圧接または圧入させることで、コネクタ収容部21へのコネクタ1の装着(嵌合)が完了する(図18乃至図20参照)。このコネクタ1の装着(嵌合)状態では、ロック用係合片40の係合凸部40bがコネクタ収容部21の内壁に形成された係止部41と係合することで、コネクタ1がコネクタ収容部21にロックされる。
端子ハウジング5の側壁には、図1および図4に示すように、基板2側にある基端部40aから反基板側へ縦に延び、基端部40aを支点に弾性変形可能なロック用係合片40が設けられている。このロック用係合片40の中間部には、コネクタ収容部21の内壁に形成された係止部41(図5参照)と係合可能で、コネクタ収容部21に挿入されたコネクタ1の離脱を阻止する係合凸部40bが形成されている。また、ロック用係合片40の先端部には、ロック用係合片40を、基端部40aを支点にしてロック解除側(図1で斜め右側)へ弾性変形させるための把持部40cが形成されている。
このようなコネクタ1の装着(嵌合)状態から、コネクタ1(端子カバー6と端子ハウジング5)をコネクタ収容部21から離脱させる際には、まず、ロック用係合片40の把持部40cを把持してロック用係合片40を、基端部40aを支点にしてロック解除側(図1で斜め右側)へ弾性変形させる。これにより、コネクタ収容部21に対するコネクタ1のロックが解除される。
この状態で、コネクタ1を反基板側へ引っ張ることで、コネクタ1をコネクタ収容部21から離脱させていく。この離脱過程では、上記挿入過程とは逆の経路を辿る。即ち、まず、コネクタ1を反基板側へ引っ張ることで、端子4の基板接続部4aと先端部4cを基板2のスルーホール2aから抜いていく(図25乃至図27参照)。これにより、端子ハウジング5が端子カバー6に対してスライド可能になる。この状態で、端子ハウジング5を反基板側へさらに引っ張ることで、端子ハウジング5を端子カバー6に対して反基板側へスライドさせていき、端子カバー6がロック機構10により第一位置に位置決めされる位置(図27、図28参照)に近づいていく。
このように端子ハウジング5を端子カバー6に対して反基板側へスライドさせていく過程で、係合爪ガイド面27の垂直面27bにより外方へ拡開されて係合解除位置に保持された係合片11,12は、その係合爪13,14が垂直面27bに当接しながら(図29、図30参照)傾斜面27a上に移動する。係合片11,12は、その係合爪13,14が傾斜面27a上を移動する間に、自身の弾性力により係合位置へ復元していく。このように、係合爪が係合位置へ復元し、かつ端子ハウジングと端子カバーの相対位置が、端子カバーがロック機構により第一位置に位置決めされる位置(図27、図28参照)になると、ロック機構10の係合片11,12が係止部15,16の係止溝15aに係合し、端子カバー6がロック機構10により第一位置に位置決めされる。この後、端子カバー6と一体になった端子ハウジング5をさらに引っ張ることで、コネクタ1(端子カバー6と端子ハウジング5)をコネクタ収容部21から離脱させることができる。
以上のように構成された一実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
○端子カバー6はロック機構10により位置決めされて第一位置にあるとき、基板接続部4aのある端子4の基板接続部4aと先端部4cを覆うので、基板2のスルーホール2aに端子4が圧接または圧入されていない不使用時に、露出する端子(端子4の基板接続部4aと先端部4c)を端子カバー6により確実に保護することができる。
○コネクタ1側には、端子カバー6を第一位置に位置決めするロック機構10のみを設ければよく、ロック解除部はコネクタ1の相手部材であるケースハウジング20のコネクタ収容部21に設けられるので、コネクタ1の構造が簡単になり、小型で成型が容易なコネクタが得られる。
○従って、基板に端子が圧接または圧入されていない不使用時に、露出する端子を保護することが可能で、かつ小型で成型が容易なコネクタを得ることができる。
○端子カバー6と端子ハウジング5が相対的にスライドして端子ハウジング5が端子カバー6に内嵌すると、端子カバー6の孔部7から各端子4の基板接続部4aと先端部4cが外部に突出させられる。これにより、各端子4の基板接続部4aと先端部4cを基板2のスルーホール2aに圧接または圧入させることができる。
○端子カバー6は、第一位置に位置決めされている状態で、端子ハウジング5の下端部から突出した各端子4の基板接続部4aと先端部4cの下側全体を複数の孔部7が形成された底壁部6aで覆うことで、露出する端子を確実に保護することができる。
○基板2のスルーホール2aに各端子4の基板接続部4aが圧接または圧入されていない不使用時には、端子カバー6側に設けられたロック機構10の係合片11,12の係合爪13,14を、端子ハウジング5側に設けられた係止部15,16の係止溝15aに係合させる。これにより、端子カバー6を、各端子4の基板接続部4aと先端部4cを覆う第一位置に位置決めして保持することができる。
○端子カバー6側には係合片11,12を、端子ハウジング5側には係止部15,16の係止溝15aを設ければよく、コネクタ1側に設けるロック機構10の構造が簡単になるので、小型で成型が容易であり、かつ、低コストのコネクタが得られる。
○コネクタ1をコネクタ収容部21から離脱させる過程で、係合片11,12の係合爪13,14を係止部15,16の係止溝15aに嵌合させると共に、係合爪13,14の下面を15,16の係止面15bに係合させるので、端子カバー6をロック機構10により第一位置に確実に位置決めすることができる。
○図1に示す電気接続箱30では、基板2のスルーホール2aに各端子4の基板接続部4aが圧接または圧入されていない不使用時に(コネクタ離脱状態で)、露出する端子を端子カバー6により保護することができるコネクタ1を用いるので、露出する端子を保護することが可能な電気接続箱を得ることができる。
○小型で成型が容易なコネクタを用いるので、小型で製造が容易であり、低コストの電気接続箱を得ることができる。
○図1に示す電気接続箱30では、離脱状態にあるコネクタ1、つまり、コネクタ収容部に装着していないコネクタでは、端子ハウジング5から露出する端子を端子カバー6で保護することができる。これにより、コネクタ1単体での取り扱い時、コネクタ収容部21へのコネクタ装着時、およびコネクタ収容部21からのコネクタ離脱時に、コネクタ1に保持された各端子4の基板接続部4aと先端部4cが損傷を受けるのを防止することができる。その結果、コネクタ収容部21へのコネクタ1の装着時に、端子4と基板2側にある電極等との接触不良や、絶縁不良等の不具合の発生を効果的に防止することができ、電気接続箱30との接続信頼性を向上させることができる。
なお、この発明は以下のように変更して具体化することもできる。
・上記一実施形態では、端子ハウジング5の上部に、端子ハウジング5に保持された複数の端子4の電線接続部4bに端末がそれぞれ接続された電線3をガイドして外部へ引き出すための複数の電線ガイド溝50が形成されている。この電線ガイド溝50のような電線3をガイドして外部へ引き出すための電線ガイド部の無いコネクタにも、本発明は適用可能である。
・上記一実施形態では、基板2のスルーホールに圧接または圧入される基板接続部4aを一端側に有し、電線の端末が圧接或いは圧着により接続される電線接続部4bを他端側に有する直線形状の端子4が、端子ハウジング5に保持されるコネクタ1について説明したが、本発明はこのようなコネクタに限定されない。一端側に基板接続部を、他端側に電線接続部をそれぞれ有し、L字形状の端子が、端子ハウジング5に保持されるコネクタにも本発明は適用可能である。
・上記一実施形態では、コネクタ1が使用される電気接続箱30の概略構成を図1に示してあるが、本発明は、図1に示すコネクタ1と、コネクタ1が収容されるコネクタの相手部材であるコネクタ収容部21を有するケースハウジングと、複数のスルーホール2aが形成された基板2とを有する電気接続箱に広く適用可能である。