JP2009016287A - 有機el装置の製造方法、及び有機el装置の製造装置 - Google Patents

有機el装置の製造方法、及び有機el装置の製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】それぞれの発光色の有機EL素子ごとに適切な処理条件が異なることから、基板に対して単一の処理を実施しても、基板上における全ての発光色の有機EL素子について、必ずしも適切な処理が実施できないことに起因して、必ずしも良好な素子特性が得られないという課題の少なくとも一部を解決するための有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置の製造装置を提供する。
【解決手段】有機EL装置の製造方法は、複数の有機EL素子を備え、複数の有機EL素子の各々の有機EL素子は、電極と少なくとも一層の発光層とを有し、複数の有機EL素子は、少なくとも、第1の色の光を射出する有機EL素子を有する第1のグループと、第1の色とは異なる第2の色の光を射出する有機EL素子を有する第2のグループと、を含む有機EL装置の製造方法であって、有機EL素子が射出する光の色に対応する表面処理を、電極ごとに実施する処理工程を有する。
【選択図】図9

Description

本発明は、有機EL素子(有機エレクトロルミネッセンス(Organic Electro Luminescence)素子)を備えた有機EL装置を製造するための有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置の製造装置に関する。
従来から、有機EL素子を備え、当該有機EL素子が発光する光を用いて表示する有機EL装置が知られている。有機EL素子は、発光膜を形成する材料によって、様々な色の光を発光させることが可能であり、異なる発光色の有機EL素子を組合わせることによって、カラー表示の有機EL装置が形成されている。有機EL素子は、10V程度の低電圧で駆動可能であり、低消費電力でありながら高輝度が得られる。しかし、時間の経過と共に有機EL素子が劣化するという課題があった。劣化の要因の一つとして、電極と有機層との間の膜界面での劣化が挙げられ、当該劣化が素子寿命に与える影響が大きいことが知られている。また、電極と有機層との間の膜界面の特性が発光特性に与える影響が大きいことも知られている。
特許文献1には、ホール注入電極が形成された基板表面を洗浄することによって、素子寿命特性や発光特性に優れた良好な素子特性を有する有機EL素子が得られる、有機EL素子の製造方法及び製造装置が開示されている。
特開平11−45779号公報
しかしながら、洗浄などの処理によって良好な素子特性を実現するためには、電極の上に形成する発光層などの特性や射出するべき光の色に対応して、適正な処理条件を選択する必要がある。カラー表示の有機EL装置においては、単一の基板上に異なる色の光を射出する有機EL素子を形成することが必要である。そして、それぞれの発光色の有機EL素子ごとに、電極に加えるべき適切な処理条件が異なっている。このことから、基板に対して単一の処理を実施しても、基板上における全ての発光色の有機EL素子の電極について、必ずしも適切な処理が実施できない可能性があった。このために、基板上における全ての発光色の有機EL素子について、必ずしも良好な素子特性が得られないという課題があった。
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例にかかる有機EL装置の製造方法は、複数の有機EL素子を備え、前記複数の有機EL素子の各々の有機EL素子は、電極と少なくとも一層の発光層とを有し、前記複数の有機EL素子は、少なくとも、第1の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第1のグループと、前記第1の色とは異なる第2の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第2のグループと、を含む有機EL装置の製造方法であって、基板の上に前記電極を形成する電極形成工程と、前記有機EL素子が射出する光の色に対応する表面処理を、前記電極ごとに実施する処理工程と、前記表面処理が実施された前記電極の上に前記発光層を形成する発光層形成工程と、を有することを特徴とする。
この有機EL装置の製造方法によれば、有機EL素子が射出するべき光の色に対応する表面処理を電極ごとに実施するため、射出するべき光の色に対応して、当該色の光を射出させるために最適な処理を選択して、実施することができる。従って、基板上における、射出する光の色が互いに異なる全ての有機EL素子について、それぞれ良好な素子特性が得られる処理を、当該有機EL素子の電極に施すことができる。
[適用例2]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、前記処理工程は、処理用気体を、当該処理用気体が前記表面処理を実施する前記電極に接触するように、前記基板の周囲に導入する導入工程を含み、前記処理工程は、前記処理用気体を前記電極の表面に作用させることによって実施することが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、処理用気体が基板の周囲に導入されることによって、処理用気体は、表面処理を実施する電極の表面に接する状態で存在するようになる。当該処理用気体が電極の表面に接触することによって、電極の表面処理を実施することができる。
[適用例3]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、前記処理工程は、前記表面処理を行うための処理光を、当該処理光が前記表面処理を実施する前記電極の表面に照射されるように照射する照射工程を含むことが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、表面処理を実施する電極の表面に処理光を照射することによって、当該電極の表面処理を実施することができる。また、表面処理を実施するべき電極の表面に接する状態で存在する処理用気体にも処理光が照射されることから、処理用気体に処理光が照射されることによって処理物質が発生する。この処理物質によって、電極の表面処理を実施することができる。
[適用例4]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、前記処理工程に先んじて、前記有機EL素子のそれぞれを形成するための領域を各前記有機EL素子ごとに区画する隔壁を形成する隔壁形成工程をさらに有することが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、処理工程に際して、表面処理を実施するべき電極と当該電極以外の電極とを、形成された隔壁によって隔てることができる。これにより、例えば、表面処理を実施するべき電極の表面に接するような状態に供給された処理用気体が周囲に拡散することによって、当該表面処理を実施するべき電極以外の電極に対して、当該処理が実施される、又は当該処理に準じた処理が実施されることを抑制することができる。また、例えば、表面処理を実施するべき電極の近傍において処理光が照射された処理用気体から発生した処理物質が周囲に拡散することによって、当該表面処理を実施するべき電極以外の電極に対して、当該処理が実施される、又は当該処理に準じた処理が実施されることを抑制することができる。さらに、例えば、表面処理を実施するべき電極にのみ照射することが好ましい処理光の一部が、反射や回折などに起因して、表面処理を実施するべき電極の周辺の表面処理を実施するべき電極以外の電極に照射されることを抑制することができる。
[適用例5]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法であって、前記処理工程において、前記表面処理を実施する前記電極に対応する開口部を有する開口マスクを用いることが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、開口マスクを用いることによって、開口部を通過した処理用気体のみが処理対象物に接触するようにすることができる。また、開口部を通過した処理光のみが処理対象物に照射されるようにすることができる。表面処理を実施する電極に対応する開口部を有する開口マスクを用いることによって、処理用気体を、開口部を介して、概ね、表面処理を実施するべき電極にのみ接触させるようにすることができる。また、処理光を、開口部を介して、概ね、表面処理を実施するべき電極、及び当該電極に接触するように供給された処理用気体にのみ照射することができる。
[適用例6]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法であって、前記処理工程において、前記表面処理を実施する前記電極に対応する開口部を有する開口マスクを、前記隔壁に密着させて用いることが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、特定の表面処理を実施するべき電極の表面に臨む空間と、表面処理を実施するべき電極以外の電極の表面に臨む空間とを、互いに密着した隔壁と開口マスクとによってより確実に遮断することができる。これにより、特定の表面処理を実施するべき電極以外の電極に対して、当該処理が実施されることを、より確実に抑制することができる。
[適用例7]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、前記開口マスクの前記開口部の開口面積が前記電極の表面処理される面積より小さいことが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、開口部の面積が電極の面積より小さいことから、開口部と電極との相対位置がずれることに起因して、開口部の部分が対向する電極以外の電極の部分に対向する可能性を小さくすることができる。これにより、開口部の電極に対する位置合わせの許容誤差が大きくなるため、開口マスクの基板に対する位置合わせの許容誤差を大きくすることができる。
[適用例8]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、単一の前記電極に対応する前記開口部が、複数の孔によって構成されていることが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、単独の電極を覆う位置にある開口マスクの部分に複数の孔が存在することで、電極側の空間と電極側とは反対側の空間との間の気体の流動に際して、複数の孔の中で、一部の孔が流入口となり他の孔が流出口となることによって、電極側の空間からの気体の流出及び当該空間への気体の流入を発生し易くすることができる。
[適用例9]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、前記処理工程において、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対して処理を実施する際は、各前記グループのそれぞれにおいて共通の前記開口マスクを使用することが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である有機EL素子の電極のグループを処理する際は、共通の開口マスクを使用することができる。これにより、備えるべき開口マスクの数を少なくすることができる。
[適用例10]上記適用例にかかる有機EL装置の製造方法において、前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、前記処理工程において、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対して処理を実施する際は、各前記グループのそれぞれにおいて共通の前記開口マスクを使用し、前記開口マスクが前記隔壁に密着した状態を維持すると共に、前記開口マスクを前記隔壁に沿って移動させるマスク移動工程をさらに有することが好ましい。
この有機EL装置の製造方法によれば、隔壁と開口マスクの開口部ではない部分とによって形成された略密閉されている空間が維持されたまま、開口マスクの基板に対する相対位置が移動される。従って、開口マスクの移動前に開口マスクが臨んでいた電極と、開口マスクの移動後に開口マスクが臨む電極以外の電極に対して、周囲の処理用気体が殆ど接触することなく開口マスクの移動を実施することができる。開口マスクが外された場合は、基板上に形成された電極が全て処理用気体に接触して、電極の表面処理が進行するため、開口マスクの基板に対する相対位置の移動を実施する前に気体を排除して、さらに開口マスクの相対移動の後に導入工程を実施して新たに処理用気体を導入する必要がある。この有機EL装置の製造方法によれば、一回の導入工程によって、同一の開口マスクを使用して、複数のグループに対する処理を実施することができる。なお、移動前に開口部が臨んでいた電極は、開口部が移動して開口マスクで封止された状態になっても、開口マスクとの隙間に残留する処理用気体によって処理が進行する可能性がある。このため、当該電極の適切な処理条件に対して、当該残留する処理用気体に起因する処理の進行を考慮して処理条件を定める必要がある。
[適用例11]本適用例にかかる有機EL装置の製造装置は、複数の有機EL素子を備え、前記複数の有機EL素子の各々の有機EL素子は、電極と少なくとも一層の発光層とを有し、前記複数の有機EL素子は、少なくとも、第1の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第1のグループと、前記第1の色とは異なる第2の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第2のグループと、を含む有機EL装置の製造装置であって、基板の上に前記電極を形成する電極形成部と、前記有機EL素子が射出する光の色に対応する表面処理を、前記電極ごとに実施する表面処理部と、前記発光層を形成する層形成部と、を備えることを特徴とする。
この有機EL装置の製造装置によれば、表面処理部が、有機EL素子が射出する光の色に対応する表面処理を、当該前記有機EL素子が有する前記電極ごとに実施する。従って、射出する光の色に対応して、当該色の光を射出させるために最適な処理を選択して、実施することができる。これにより、基板上における、射出する光の色が互いに異なる全ての有機EL素子について、それぞれ良好な素子特性が得られる処理を、当該有機EL素子の電極に施すことができる。
[適用例12]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記表面処理部は、前記電極の表面に作用させることによって前記表面処理を実施するための処理用気体を、当該処理用気体が前記表面処理を実施する前記電極に接触するように、前記基板の周囲に供給する処理用気体供給部を備えることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、処理用気体供給部を用いて、基板の周囲に処理用気体を供給することができる。処理用気体が基板の周囲に導入されることによって、処理用気体は、表面処理を実施する電極の表面に接する状態で存在するようになる。当該処理用気体が電極の表面に接触することによって、電極の表面処理を実施することができる。
[適用例13]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記表面処理部は、前記表面処理を実施するための処理光を射出する処理光源を備えることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、処理光源を用いて、基板に向けて処理光を照射し、表面処理を実施する電極の表面に処理光を照射することができる。これにより、当該電極の表面処理を実施することができる。また、表面処理を実施する電極の表面に接する状態で存在する処理用気体にも処理光が照射されることから、処理用気体に処理光が照射されることによって処理物質が発生する。この処理物質によって、電極の表面処理を実施することができる。
[適用例14]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記有機EL素子のそれぞれを形成するための領域を各前記有機EL素子ごとに区画する隔壁を形成する隔壁形成部をさらに備えることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、隔壁形成部を用いて、有機EL素子のそれぞれを形成するための領域を各有機EL素子ごとに区画する隔壁を形成することによって、電極の表面処理を実施する際に、表面処理を実施する電極と当該電極以外の電極とを、形成された隔壁によって隔てることができる。これにより、例えば、表面処理を実施する電極の表面に接するような状態に供給された処理用気体が周囲に拡散することによって、当該表面処理を実施する電極以外の電極に対して、当該処理が実施される、又は当該処理に準じた処理が実施されることを抑制することができる。また、例えば、表面処理を実施する電極の近傍において処理光が照射された処理用気体から発生した処理物質が周囲に拡散することによって、当該表面処理を実施するべき電極以外の電極に対して、当該処理が実施される、又は当該処理に準じた処理が実施されることを抑制することができる。さらに、例えば、表面処理を実施する電極にのみ照射することが好ましい処理光の一部が、反射や回折などに起因して、表面処理を実施する電極の周辺の表面処理を実施する電極以外の電極に照射されることを抑制することができる。
[適用例15]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記表面処理部は、前記表面処理を実施するべき前記電極に対応する開口部を有する開口マスクを備えることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、開口マスクを用いることによって、開口部を通過した処理用気体のみが処理対象物に接触するようにすることができる。また、開口部を通過した処理光のみが処理対象物に照射されるようにすることができる。表面処理を実施するべき電極に対応する開口部を有する開口マスクを用いることによって、処理用気体を、開口部を介して、概ね、表面処理を実施するべき電極にのみ接触させるようにすることができる。また、処理光を、開口部を介して、概ね、表面処理を実施するべき電極、及び当該電極に接触するように供給された処理用気体にのみ照射することができる。
[適用例16]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記表面処理部は、前記表面処理を実施する前記電極に対応する開口部を有する開口マスクと、前記開口マスクを前記隔壁に密着させた状態で保持する開口マスク保持部と、をさらに備えることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、開口マスク保持部によって、電極の表面処理を実施する際に、開口マスクを隔壁に密着させた状態で保持することができる。開口マスクを隔壁に密着させることによって、特定の表面処理を実施する電極の表面に臨む空間と、表面処理を実施する電極以外の電極の表面に臨む空間とを、互いに密着した隔壁と開口マスクとによってより確実に遮断することができる。これにより、特定の表面処理を実施するべき電極以外の電極に対して、当該処理が実施されることを、より確実に抑制することができる。
[適用例17]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記開口マスクの前記開口部の開口面積が、前記電極の表面処理される面積より小さいことが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、開口部の面積が電極の表面処理される面積より小さいことから、開口部と電極との相対位置がずれることに起因して、開口部の部分が対向するべき電極以外の電極の部分に対向するということが生ずる可能性を小さくすることができる。これにより、開口部の電極に対する位置合わせの許容誤差が大きくなるため、開口マスクの基板に対する位置合わせの許容誤差を大きくすることができる。
[適用例18]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、単一の前記電極に対応する前記開口部が、複数の孔によって構成されていることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、単独の電極を覆う位置にある開口マスクの部分に複数の孔が存在することで、電極側の空間と電極側とは反対側の空間との間の気体の流動に際して、複数の孔の中で、一部の孔が流入口となり他の孔が流出口となることによって、電極側の空間からの気体の流出及び当該空間への気体の流入を発生し易くすることができる。
[適用例19]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、前記開口マスクは、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対しては、共通して使用可能となる前記開口部の形状及び相互の位置関係を有することが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である有機EL素子の電極のグループを処理する際は、共通の開口マスクを使用することができる。これにより、備えるべき開口マスクの数を少なくすることができる。
[適用例20]上記適用例にかかる有機EL装置の製造装置において、前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、前記開口マスクは、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対しては、共通して使用可能となる前記開口部の形状及び相互の位置関係を有し、前記開口マスクが前記隔壁に密着した状態を維持すると共に、前記開口マスクを前記隔壁に沿って移動させるマスク移動部をさらに備えることが好ましい。
この有機EL装置の製造装置によれば、マスク移動部によって、開口マスクが前記隔壁に密着した状態を維持すると共に、前記開口マスクを前記隔壁に沿って移動させることができる。
隔壁と開口マスクの開口部ではない部分とによって形成されている略密閉された空間が維持されたまま、開口マスクの基板に対する相対位置が移動される。従って、開口マスクの移動前に開口マスクが臨んでいた電極と、開口マスクの移動後に開口マスクが臨む電極以外の電極に対して、周囲の処理用気体が殆ど接触することなく開口マスクの移動を実施することができる。開口マスクが外された場合は、基板上に形成された電極が全て処理用気体に接触して、電極の表面処理が進行するため、開口マスクの基板に対する相対位置の移動を実施する前に気体を排除して、さらに開口マスクの相対移動の後に導入工程を実施して新たに処理用気体を導入する必要がある。この有機EL装置の製造装置によれば、一回の導入工程によって、同一の開口マスクを使用して、複数のグループに対する処理を実施することができる。なお、移動前に開口部が臨んでいた電極は、開口部が移動して開口マスクで封止された状態になっても、開口マスクとの隙間に残留する処理用気体によって処理が進行する可能性がある。このため、当該電極の適切な処理条件に対して、当該残留する処理用気体に起因する処理の進行を考慮して処理条件を定める必要がある。
以下、有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置の製造装置の一実施形態について図面を参照して、説明する。
<有機EL装置>
はじめに、有機EL装置1について、図1から図4を参照して説明する。本実施形態では、“ボトムエミッション型”の有機EL素子を備える有機EL装置であって、駆動回路を内蔵する駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式の有機EL装置を例に説明する。
<有機EL装置の全体構成>
最初に、図1を参照して有機EL装置1の全体構成について説明する。図1は、素子基板を封止基板の側から見た有機EL装置の概略的な平面図である。有機EL装置1は、駆動回路内蔵型のアクティブマトリクス駆動方式の有機EL装置である。
図1において、素子基板10上の画像表示領域11には、複数の画素駆動用信号線16aが配線されると共に、それぞれ画素駆動用信号線16aに電気的に接続される複数の画素部2(図3参照)が所定パターンで配列されている。複数の画素部2はそれぞれ有機EL素子20(図4参照)を含んでいる。なお、図1の画像表示領域11における画素駆動用信号線16aや画素部の具体的な構成については図示を省略し、その詳細については後述する。
画像表示領域11の周辺に位置する周辺領域には、画像表示領域11を挟んで対向する素子基板10の2辺に沿って、Y側駆動回路部12が設けられると共に、この2辺に隣接する一辺に沿ってX側駆動回路部15が設けられている。複数の画素駆動用信号線16aは、Y側駆動回路部12及びX側駆動回路部15に電気的に接続されている。図1には、複数の画素駆動用信号線16aのうち、X側駆動回路部15と電気的に接続される画素駆動用信号線16aについて、画像表示領域11の一辺からX側駆動回路部15に延びて配線される一部分について示してある。画素駆動用信号線16aは、X側駆動回路部15を介して入出力信号線18に電気的に接続されている。
さらに、X側駆動回路部15が設けられた素子基板10の一辺に沿って、複数の実装端子17が設けられている。実装端子17には、入出力信号線18の一端が接続されている。これらの実装端子17には、Y側駆動回路部12やX側駆動回路部15と外部駆動回路とを接続するための中継基板5が実装されている。中継基板5は、可撓性を有し、例えばTAB(Tape Automated Bonding)方式により、実装されている。
Y側駆動回路部12には、走査線駆動回路120(図3参照)が設けられると共に、例えば画素駆動用信号線16aと走査線駆動回路120内の回路素子等とを電気的に接続するための配線や、走査線駆動回路120を駆動するための各種信号の供給経路となる配線等が設けられている。X側駆動回路部15には、データ線駆動回路150(図3参照)が設けられると共に、例えば画素駆動用信号線16aとデータ線駆動回路150内の回路素子等とを電気的に接続するための配線や、データ線駆動回路150を駆動するための各種信号の供給経路となる配線等が設けられている。配線16bは、Y側駆動回路部12とX側駆動回路部15とを電気的に接続しており、X側駆動回路部15を介して入出力信号線18に電気的に接続されている。
入出力信号線18としては、外部回路に入出力される信号の種類に対応して、複数種類の入出力信号線18が設けられている。例えば、画素駆動用電源線18aには、外部回路から画素駆動用電源が供給される。画素駆動用電源線18aの一端側は、X側駆動回路部15、又はX側駆動回路部15及びY側駆動回路部12を介して、画素駆動用信号線16aとしての電源供給線に電気的に接続される。また、外部回路から走査線駆動回路120やデータ線駆動回路150を駆動するための駆動回路用信号が供給される駆動回路用信号線も入出力信号線18に含まれる。このような駆動回路用信号線には、例えば、図1に示すように、駆動回路用信号として、走査線駆動回路120やデータ線駆動回路150の電源となる駆動回路用電源が供給される駆動回路用電源線18bが含まれる。
<有機EL素子の配列>
次に、有機EL装置に形成されている有機EL素子20の配列について説明する。図2は、有機EL素子の配列を模式的に示す平面図である。図2(a)は、素子基板に形成された有機EL素子の全体の配列を模式的に示す平面図であり、図2(b)及び(c)は、3色カラーの有機EL素子の配列例を示す模式平面図である。
上述したように、素子基板10の画像表示領域11には、複数の画素部2(図3参照)が所定パターンで配列されており、複数の画素部2はそれぞれ有機EL素子20(詳細は図4参照)を有している。有機EL素子20はいわゆるカラー素子であり、有機EL装置1は、赤色素子20R(赤色系)、緑色素子20G(緑色系)、青色素子20B(青色系)の3色の有機EL素子20を有している。赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bを有する画素部2を、それぞれ赤色画素部2R、緑色画素部2G、又は青色画素部2Bと表記する。
図2(a)に示すように、画像表示領域11には、有機EL素子20がドットパターン状、本実施形態ではドット・マトリクス状に形成されている。図示省略したが、素子基板10の画像表示領域11や上記した配線などが形成されない領域には、アライメントマークが形成されている。アライメントマークは、有機EL素子20などを形成する諸工程を実施するために素子基板10を製造装置に取付ける際などに位置決め用の基準マークとして用いられる。
図2(b)又は(c)に示すように、有機EL素子20の発光面は、透光性のない樹脂材料によって格子状のパターンに形成された隔壁22によって区画されてドット・マトリクス状に並んだ複数の例えば方形状の開口領域20a(図4又は図5参照)に、発光膜などを形成することによって形成される。
有機EL素子20の配列としては、例えば、ストライプ配列、モザイク配列、デルタ配列等が知られている。ストライプ配列は、図2(b)に示したように、マトリクスの縦列が全て同色の有機EL素子20になる配列である。モザイク配列は、図2(c)に示したように、横方向の各行ごとに有機EL素子20一つ分だけ色をずらした配列で、3色カラー表示の場合、縦横の直線上に並んだ任意の3つの有機EL素子20が3色となる配列である。そして、デルタ配列は、有機EL素子20の配置を段違いにし、3色カラー表示の場合、任意の隣接する3つの有機EL素子20が異なる色となる配列である。
図2(b)又は(c)に示した3色カラー表示の有機EL装置において、画素部2(図3参照)は、それぞれが、R(赤色)、G(緑色)又はB(青色)のうちのいずれか1色の赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bを有する、赤色画素部2R、緑色画素部2G、又は青色画素部2Bである。隣り合って形成されたR(赤色)、G(緑色)、B(青色)の赤色画素部2R、緑色画素部2G、又は青色画素部2Bを各1個ずつ含む画素部2(有機EL素子20)の組で、画像を構成する最小単位である絵素(以降、「絵素24」と表記する。)を形成している。1個所の絵素24内の赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bのいずれか1つ又はそれらの組み合わせに選択的に発光させることにより、フルカラー表示を行う。このとき、透光性のない樹脂材料によって形成された隔壁22はブラックマトリクスとして作用する。
<画素部の構成>
次に、図3及び図4を参照して、有機EL装置1の画像表示領域11における画素部2の構成について具体的に説明する。図3は、有機EL装置の電気的な構成を示すブロック図であり、図4は、画素部の断面図である。
最初に、図3を参照して、有機EL装置の画像表示領域11の電気的な構成について説明する。図3に示すように、画像表示領域11には、上述した画素駆動用信号線16aに相当するデータ線28及び走査線26が縦横に延設され、それらの交点に対応する各画素部2はマトリクス状に配列されている。さらに、画像表示領域11には、各データ線28に対して配列された画素部2に対応する電源供給線27が延在している。電源供給線27もまた、図1の画素駆動用信号線16aに相当する。
なお、本実施形態では、カラー表示を行うために、画像表示領域11には例えば、赤色発光用、緑色発光用及び青色発光用の3種の画素部2が設けられると共に、3種の画素部2に対応する3種のデータ線28及び3種の電源供給線27が設けられている。図3において、例えば隣接する3本のデータ線28ごとに3種の画素部2が設けられている。3本のデータ線28のうち、いずれか1本のデータ線28には、3種のうちいずれか1種の画素部2が配列される。また、このように配列された画素部2には、対応する種類の電源供給線27が電気的に接続されている。
上述したように、素子基板10上の周辺領域には、走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路150が設けられている。走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路150は、上述した実装端子17及び駆動回路用信号線(入出力信号線18)を介して、外部回路から供給される駆動回路用信号に基づいて駆動される。そして、走査線駆動回路120は、複数の走査線26に走査信号を順次供給する。また、データ線駆動回路150は、画像表示領域11に配線された3種のデータ線28に、赤色発光用、緑色発光用及び青色発光用の3種の画像信号を供給する。走査線駆動回路120と、データ線駆動回路150とは、配線16bによって電気的に接続されている。なお、走査線駆動回路120の動作と、データ線駆動回路150の動作とは、外部回路から供給される同期信号によって相互に同期が図られる。
また、図1を参照して説明したように、周辺領域には、画素駆動用電源線18aが設けられている。その画素駆動用電源線18aは、3種の電源供給線27に対応して3種の画素駆動用電源線18aが設けられている。3種の電源供給線27にはそれぞれ、外部回路から実装端子17及び対応する画素駆動用電源線18aを介して画素駆動用電力が供給される。
一つの画素部2には、有機EL素子20が設けられると共に、スイッチング用トランジスタ36及び駆動用トランジスタ34、並びに保持容量38が設けられている。画素部2において、各トランジスタは、例えば、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;以下適宜、「TFT」と表記する。)等により構成される。
スイッチング用トランジスタ36のゲート電極には走査線26が電気的に接続されており、スイッチング用トランジスタ36のソース電極にはデータ線28が電気的に接続されており、スイッチング用トランジスタ36のドレイン電極には駆動用トランジスタ34のゲート電極が電気的に接続されている。また、駆動用トランジスタ34のソース電極には電源供給線27が電気的に接続されており、駆動用トランジスタ34のドレイン電極には、積層体30などと共に有機EL素子20を構成する陽極32(図4参照)が電気的に接続されている。ここでは、各積層体30及び陽極32は、駆動用トランジスタ34を介して電源供給線27に対して並列に接続されている。
なお、このような有機EL装置では、図3に例示した画素回路の構成の他にも、電流プログラム方式の画素回路、電圧プログラム型の画素回路、電圧比較方式の画素回路、サブフレーム方式の画素回路等の各種方式の画素回路を採用することが可能である。
次に、図4を参照して、画素部2の、特に有機EL素子20の更に詳細な構成について説明する。
例えば透明樹脂やガラス基板等の透明基板を用いて構成される素子基板10の上には、上述したように、スイッチング用トランジスタ36及び駆動用トランジスタ34の半導体層40が形成されている。半導体層40は例えば低温ポリシリコン膜を用いて形成されている。また、半導体層40の上には、半導体層40を埋め込むようにスイッチング用トランジスタ36及び駆動用トランジスタ34のゲート絶縁層42が形成されている。そして、ゲート絶縁層42の上に、駆動用トランジスタ34のゲート電極34a及び走査線26(図4では図示省略)が同一膜として形成されている。ゲート電極34a及び走査線26は、Al(アルミニウム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Ti(チタン)、Cu(銅)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いて形成されている。
素子基板10の上の有機EL素子20が形成される位置には、カラーフィルタ51が形成されている。カラーフィルタ51は、赤色フィルタ51R、緑色フィルタ51G、青色フィルタ51Bの3色のいずれかであり、赤色フィルタ51Rが上述した赤色素子20Rの位置に、緑色フィルタ51Gが緑色素子20Gの位置に、青色フィルタ51Bが青色素子20Bの位置にそれぞれ形成されている。赤色フィルタ51R、緑色フィルタ51G、及び青色フィルタ51Bは、色材としてそれぞれ公知の顔料を用いて、公知の方法で形成される。
カラーフィルタ51の上には、カラーフィルタ51を保護すると共に表面を平坦化するためのオーバコート52が形成されている。オーバコート52の上には、SiO2膜53がSiO2を蒸着させることにより形成されている。SiO2膜53は非常に薄いため、光が透過する。
カラーフィルタ層の周囲、及び、走査線26や駆動用トランジスタ34のゲート電極34aを埋め込むように、ゲート絶縁層42の上には層間絶縁層41が形成されている。層間絶縁層41及びゲート絶縁層42は例えばシリコン酸化膜から構成されている。
層間絶縁層41の上には、電源供給線27、駆動用トランジスタ34のドレイン電極54、及びデータ線28(図4では図示省略)が同一の膜として形成されている。これらは、例えばアルミニウム又はITO(Indium Tin Oxide)を含む導電材料からそれぞれ構成されている。層間絶縁層41には、層間絶縁層41及びゲート絶縁層42を貫通して、駆動用トランジスタ34の半導体層40に至るコンタクトホール56及び57が形成されている。電源供給線27及びドレイン電極54を構成する導電膜は、コンタクトホール57及び56の各々の内壁に沿って半導体層40の表面に至るように連続的に形成されている。
層間絶縁層41上には、電源供給線27及びドレイン電極54を埋め込むように、保護層58が形成されている。保護層58としては、例えばシリコン窒化膜(SiN)を形成する。保護層58の上面とSiO2膜53の上面とは略同一平面であり、保護層58及びSiO2膜53を下地として、陽極32が形成されている。陽極32は、保護層58に形成されたコンタクトホールを介してドレイン電極54に電気的に接続されており、SiO2膜53の上を覆っている。有機EL素子20は、いわゆるボトムエミッション型の有機EL素子であり、発光されて図4の矢印aのように射出される光が陽極32を透過するため、陽極32はITOなどの透明導電材料で構成されている。
保護層58、及び陽極32の一部を覆うように、上述した隔壁22が形成されている。隔壁22を形成することによって、陽極32の隔壁22に覆われない領域と隔壁22とで囲まれた空間である開口領域20aが形成されている。この開口領域20aには、積層体30が形成されている。
積層体30は、陽極32の上に薄膜が積層されて形成されている。積層体30を構成する正孔注入層30a、正孔輸送層30b、赤色発光層30R、青色発光層30B、緑色発光層30G、電子輸送層30c、及び電子注入層30dが、この順番で陽極32の上に積層されている。電子注入層30dの上には陰極33が積層されており、当該陰極33は、開口領域外に引き出されて接地されている。なお、図4では、封止基板について図示を省略してある。
正孔注入層30aは、例えばCuPc(銅フタロシアニン)からなる薄膜であり、概ね1nmの膜厚を有する。正孔輸送層30bは、例えばTPTE(トリフェニルアミン4重体)からなる薄膜であり、概ね30nmの膜厚を有する。
赤色発光層30Rは、例えばTPTEをホスト材料とし、DCJTB(4-dicyanomethylene-6-cp-julolidinostyryl-2-tert-butyl-4H-pyran)をドーパント材(発光色素)とする薄膜であり、概ね20nmの膜厚を有する。このDCJTBよりなる発光色素は赤色発光する色素であり、赤色発光層30Rにおいて赤色発光する。
青色発光層30Bは、例えばDPVBi(4,4-Bis(2,2-diphenyl-ethen-1-yl)-biphenyl)をホスト材料とし、BCzVBi(4,4'-(Bis(9-ethyl-3-carbazovinylene)-1,1'-biphenyl)をドーパント材とする薄膜であり、概ね20nmの膜厚を有する。このBCzVBiよりなる発光色素は青色発光する色素であり、青色発光層30Bにおいて青色発光する。
緑色発光層30Gは、例えばAlq(8-hydroxy quinoline aluminum)をホスト材料とし、Qd(キノクリドン)をドーパント材とする薄膜であり、概ね20nmの膜厚を有する。このQd(キノクリドン)よりなる発光色素は緑色発光する色素であり、緑色発光層30Gにおいて緑色発光する。
電子輸送層30cは、例えばAlqからなる薄膜であり、概ね20nmの膜厚を有する。電子注入層30dは、例えばLiF(フッ化リチウム)からなる薄膜であり、概ね0.5nmの膜厚を有する。
陰極33は、アルミニウムからなる薄膜であり、概ね100nmの膜厚を有する。
<有機EL装置の動作>
有機EL装置1の駆動時、走査線26を介して走査信号が供給されることにより、スイッチング用トランジスタ36がオン状態になる。よって、データ線28から供給される画像信号は、駆動用トランジスタ34のゲートに印加されると共に、保持容量38に書き込まれる。このとき、駆動用トランジスタ34はオン状態となり、電源供給線27から駆動電流が、駆動用トランジスタ34を介して有機EL素子20に印加される。その際、駆動用トランジスタ34のゲート電圧は、保持容量38に書き込まれた画像信号により固定されるために、有機EL素子20側には、画像信号に応じた一定の電流が流れる。即ち、陰極33から電子注入層30dに電子が注入され、陽極32から正孔注入層30aに正孔が注入される。注入された電子及び正孔は、それぞれ電子輸送層30c又は正孔輸送層30bを通過して、赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gで結合する。結合が起こった際のエネルギで、周囲の分子が励起される。励起状態から再び基底状態に戻る際に光を発生する。
有機EL素子20は、赤色発光層30R、青色発光層30B、及び緑色発光層30Gを備えており、それぞれの発光層が赤色、青色、又は緑色の光を発生するため、有機EL素子20としては3色が合成された白色光を射出する。当該白色光が、素子基板10の上に形成された赤色フィルタ51R、青色フィルタ51B、又は緑色フィルタ51Gを透過することで、赤色、緑色、又は青色の光が図4の矢印aの方向に射出される。なお、上述したように、赤色発光層30R、青色発光層30B、緑色発光層30Gを構成する材料はそれぞれ異なっており、それぞれが形成されている位置の陽極32又は陰極33からの距離も互いに異なっている。そのため、例えば陽極32から正孔注入層30aへの正孔の注入され易さによって、赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gのいずれかが最も効率良く発光するということが生ずる。これにより、有機EL素子20から射出される白色光は、僅かに赤色、緑色、又は青色に偏った白色光である。
<電極面の表面処理>
次に、陽極32に施す表面処理について説明する。上述したように、陽極32から正孔注入層30aへの正孔の注入され易さによって、赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gのいずれかが最も効率良く発光する。陽極32の表面を処理することにより、発光層を赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gのいずれかが最も効率良く発光するようにすることができる。図5は、製造途中の有機EL装置の断面図である。図5に示した製造途中の有機EL装置1を有機EL装置1Aと表記する。図5に示した有機EL装置1Aは、陽極32が形成され、隔壁22が形成された状態であり、この状態で表面処理を実施することによって、陽極32の表面処理を実施する。
次に、電極の表面処理の処理条件と、当該処理条件の表面処理によって得られる有機EL素子の発光特性との関係について、説明する。表面処理は、処理用気体として酸素ガスを用い、電極の雰囲気の酸素ガスにUV光を照射して、発生するオゾンによって電極面を処理する。図6は、表面処理の処理条件と有機EL素子の特性との関係を示す図である。図6(a)は、UV光の照射時間と電極面の仕事関数との関係を示す図であり、図6(b)は、各画素ごとの適切な処理条件を示す表であり、図6(c)は、適切な処理条件の処理を実施した場合における有機EL素子の発光特性の一例を示す表である。
図6(a)に示すように、T1分乃至T5分の間、UV光を照射することにより、陽極32の仕事関数を、E2eV乃至E6eVにすることができる。UV光をT1分間照射することにより、ITOで形成された陽極32の仕事関数は、E4eVとなる。UV光をT2分間照射することにより、陽極32の仕事関数は、E5eVとなる。UV光をT5分間照射することにより、ITOで形成された陽極32の仕事関数は、E6eVとなる。E6eVとE5eVとの差をE56eVと表記し、E6eVとE4eVとの差をE46eVと表記する。
正孔注入層30aの仕事関数と陽極32の仕事関数とが異なることが、陽極32から正孔注入層30aへ正孔が注入される際の抵抗要因となる。CuPcの仕事関数と陽極32の仕事関数との差が大きいほど、陽極32から正孔注入層30aへ、正孔が移動し難くなる。陽極32から正孔注入層30aへの正孔の移動が容易である方が、正孔と陰極33から注入された電子とが結合する位置は、陰極33側に寄り、正孔の移動が困難である方が、正孔と電子とが結合する位置は、陽極32側に寄る。このため、発光層の位置によって、最も効率良く発光する正孔注入層30aの仕事関数と陽極32の仕事関数との関係が異なっている。
正孔注入層30aを構成するCuPcの仕事関数は、例えばE6eVである。図6(b)に記載した、R画素用条件、B画素用条件、及びG画素用条件は、赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gが最も発光し易くなる条件を示している。図6(b)に示すように、赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gが最も発光し易くなる陽極32(ITO)の仕事関数は、E4eV、E5eV、又はE6eVであることが実験的に確認されている。言い換えると、正孔注入層30a(CuPc)への正孔移動のし難さ、即ち、正孔注入層30aの仕事関数と陽極32の仕事関数との差がE46eVの場合は、赤色発光層30Rが最も発光し易くなり、差がE56eVの場合は、青色発光層30Bが最も発光し易くなり、差が0eVの場合は、緑色発光層30Gが最も発光し易くなる。処理条件としては、赤色発光層30R、青色発光層30B、又は緑色発光層30Gが最も発光し易くなるUV光の照射時間は、T1分、T2分、又はT5分である。従って、陽極32の処理に際してUV光の照射時間がT1分の場合、形成される有機EL素子20が射出する光は、赤色気味の白色光となり、UV光の照射時間がT2分の場合、有機EL素子20が射出する光は、青色気味の白色光となり、UV光の照射時間がT5分の場合、有機EL素子20が射出する光は、緑色気味の白色光となる。
図6(c)に示すように、赤色フィルタ51Rを有する赤色素子20Rの正面輝度電流効率は、陽極32の処理条件、即ちUV光の照射時間が、緑色発光層30Gが最も発光し易くなるT5分であった場合には、8cd/Aであるが、赤色発光層30Rが最も発光し易くなるT1分であった場合には、13cd/Aである。青色フィルタ51Bを有する青色素子20Bの正面輝度電流効率は、陽極32の処理条件、即ちUV光の照射時間が、緑色発光層30Gが最も発光し易くなるT5分であった場合には、7cd/Aであるが、青色発光層30Bが最も発光し易くなるT2分であった場合には、12cd/Aである。これらは、赤色フィルタ51Rを透過する白色光が赤色気味の白色光となる、即ち赤色光の割合が多くなることや、青色フィルタ51Bを透過する白色光が青色気味の白色光となる、即ち青色光の割合が多くなることによって、フィルタでカットされる光が減少するため、発光効率が向上したことによるものである。
<成膜装置>
次に、有機EL装置の製造装置としての成膜装置100の構成について、図7を参照して説明する。図7は、成膜装置の構成を示す模式図である。
図7に示すように、成膜装置100は、表面処理装置200と、真空蒸着装置201と、表面処理装置200と真空蒸着装置201との間を接続し、両装置間で素子基板10(有機EL装置1A)を搬送する真空搬送室203とを備えている。表面処理装置200と真空搬送室203との接合部、真空蒸着装置201と真空搬送室203との接合部には、それぞれ真空ゲート204a、又は真空ゲート204bが配置されている。
表面処理装置200は、処理チャンバ128の中にUV光源126を備えている。処理チャンバ128内のUV光源126からUV光を照射される位置には、当該位置に有機EL装置1A(素子基板10)を保持可能な保持装置(図示省略)が設けられている。また、表面処理装置200は、開口マスク123を備えている。開口マスク123は、保持装置に保持された有機EL装置1Aに対して密着又は離脱可能に、マスク保持装置124によって支持されている。マスク保持装置124は図示省略したアライメント機構を有しており、有機EL装置1Aに対して開口マスク123を精密に位置合わせすることができる。マスク保持装置124は、当該位置合わせを、開口マスク123を有機EL装置1Aに対して略密着させた状態において実施することができる。処理チャンバ128内には、真空ゲート141aと、図示省略したボンベに連通しており、ボンベの酸素ガスを処理チャンバ128に送る給気ポンプ141bとから構成される給気装置141によって酸素ガスが供給される。処理チャンバ128内の使用済みの酸素ガスは、真空ゲート142aと排気ポンプ142bから構成される排気装置142により吸引排気される。表面処理装置200は、UV光源126からUV光を照射して、素子基板10に形成された陽極32を表面処理する。表面処理装置200が表面処理部に相当し、UV光源126が処理光源に相当し、陽極32が電極に相当する。マスク保持装置124が、マスク保持部又はマスク移動部に相当する。
真空蒸着装置201は、成膜材料210を加熱蒸発させるヒーターなどの加熱装置212と、真空ゲート220aと排気ポンプ220bから構成される排気装置220とを備え、真空中で、正孔注入層30aなどの成膜材料210を有機EL装置1Aに順次積層して、積層体30を形成する。図7では、真空蒸着装置201を1台のみ図示したが、赤色発光層30Rなどの形成するべき膜ごとに、それぞれ専用の真空蒸着装置201を設けることが好ましい。
真空搬送室203には、真空ゲート230aと排気ポンプ230bから構成される排気装置230が付設されており、気体を排気して内部の真空度を保つことが可能に構成されている。
<開口マスク>
次に、表面処理装置200に備えられている開口マスク123の構成について、図8を参照して説明する。図8は、開口マスクの概略構成を示す模式図である。図8(a)は、開口マスクの概略構成を示す平面図であり、図8(b)は、開口部の形状を示す部分平面図であり、図8(c)は、開口部の断面形状を開口領域の断面形状と共に示す部分断面図である。
図8(a)に示すように、開口マスク123は、方形状のガラス基板に、方形状の開口部144が形成されている。開口マスク123は、図1を参照して説明した有機EL装置1の画像表示領域11を充分覆う大きさを有している。有機EL装置1の赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bに対応する開口マスク123は、開口部144が、図2を参照して説明した赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの、画像表示領域11における配置位置に対応する位置に形成されている。開口マスク123の開口部144が形成されていない部分には、開口マスク123を有機EL装置1Aに対して位置決めするためのアライメントマーク(図示省略)が形成されている。
図2を参照して説明したように、有機EL装置1における赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bは、ストライプ配列、モザイク配列、又はデルタ配列などの配列で位置している。これらの配列において、複数の赤色素子20Rの相互の位置関係と、複数の緑色素子20Gの相互の位置関係と、複数の青色素子20Bの相互の位置関係とは、互いに共通である。そのため、赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの配置位置に対応する位置に開口部144が形成された開口マスク123は、赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bのいずれを処理する場合にも共通して使用することができる。
図8(b)又は(c)に示すように、開口部144の平面形状は、隔壁22で囲まれた空間である開口領域20aの平面形状と略相似形状である。開口部144の開口面積は、隔壁22に囲まれた陽極32の面積より僅かに小さくなっている。陽極32の表面処理を実施する際には、開口部144と隔壁22(開口領域20a)との位置関係が、図8(b)及び(c)に示したように、画像表示領域11の面に平行な方向において互いに重なる位置関係になるように、開口マスク123は、有機EL装置1Aに対して位置決めされる。開口領域20aの上端部分の平面形状(隔壁22の上端で囲まれた平面形状)は陽極32の面積より大きく、開口部144の開口面積は、隔壁22に囲まれた陽極32の面積より僅かに小さい。位置決めに際して、開口部144が開口領域20aの上端部分から外れないような位置ずれは許容される。
<成膜装置による製造工程>
次に、成膜装置100を用いた有機EL装置1の各製造工程を具体的に説明する。
最初に、カラーフィルタ51などが形成された素子基板10の上に、ITOからなる陽極32を成膜する。
次に、陽極32が形成された素子基板10の上に、隔壁22を形成する。なお、陽極32及び隔壁22を形成するプロセスは、TFTアレイ工程の中で実施することができる。
次に、表面処理装置200を用いて、隔壁22が形成された素子基板10(有機EL装置1A)の陽極32に対して、表面処理を実施する。
次に、真空蒸着装置201を用いて、正孔注入層30a、正孔輸送層30b、赤色発光層30R、青色発光層30B、緑色発光層30G、電子輸送層30c、及び電子注入層30dの成膜材料を、有機EL装置1Aの開口領域20aに順次積層して、積層体30を形成する。
次に、真空蒸着装置201を用いて、有機EL装置1Aの開口領域20aに積層体30が形成された状態の電子注入層30d及び隔壁22の上に、Al(アルミニウム)からなる陰極33を形成する。この場合の成膜材料210には、アルミニウムを含む金属材料が用いられる。陰極の成膜材料としては、アルミニウムを含む金属材料の他に、カルシウム(Ca)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ストロンチウム(SrF2)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)等のうち少なくとも一つを含む金属材料を用いることができる。
表面処理装置200と真空蒸着装置201との間は、真空搬送室203を介して接続されており、素子基板10(有機EL装置1A)は両装置間を、真空搬送室203を通って搬送されることで、上記作業の間に外気に触れることを抑制することができる。
図7に示した成膜装置100においては、真空蒸着装置201を1台のみ図示したが、形成するべき膜ごとに、専用の真空蒸着装置201を設けることが好ましい。
<表面処理>
次に、陽極32の表面処理について、より詳細に説明する。ここでは、上記した表面処理装置200を用いて、上記した有機EL装置1Aの陽極32を表面処理する工程について、図9及び図10を参照して説明する。図9は、陽極を表面処理する工程を示すフローチャートであり、図10は、陽極を表面処理する工程を示す模式断面図である。
図9のステップS21では、図10(a)に示すように、有機EL装置1Aの状態になった素子基板10を、表面処理装置200に投入する。図10に示すように、赤色フィルタ51R、緑色フィルタ51G、青色フィルタ51Bの上に形成された陽極32を、それぞれ陽極32R、陽極32G、陽極32Bと表記する。陽極32R、陽極32G、陽極32Bの面する開口領域20aを、それぞれ開口領域20aR、開口領域20aG、開口領域20aBと表記する。
次に、ステップS22では、マスク保持装置124によって、開口マスク123を有機EL装置1Aに対して密着させるように設置する。マスク保持装置124が有するアライメント機構によって、有機EL装置1Aに対して開口マスク123を位置合わせする。位置合わせすることによって、図10(b)に示すように、陽極32Rの下に赤色フィルタ51Rが形成されており、積層体30が形成されることによって赤色素子20Rが形成されるべき開口領域20aRに、開口マスク123の開口部144が重なるようにする。開口部144と開口領域20aRとは、上述した図8(b)及び(c)に示した開口部144と開口領域20aとのような位置関係になることが好ましい。
次に、ステップS23では、処理チャンバ128の中にプロセスガスである酸素ガスを導入する。図10に示した開口領域20aR,20aG,20aBに酸素ガスが充分供給されるように、排気装置142を用いて処理チャンバ128内の気体を一旦排気して、処理チャンバ128の内部を略真空状態にした後、給気装置141によって酸素ガスを供給する。給気装置141が、処理用気体供給部に相当し、酸素ガスが処理用気体に相当する。
次に、ステップS24では、UV光源126を用いて、開口マスク123が装着された有機EL装置1AにUV光を照射する。UV光は、開口部144を通過して、陽極32Rの表面及び開口領域20aRに充填されている酸素ガスに照射される。これにより、赤色素子20R用の電極となるべき陽極32Rの表面処理が行われる。このとき、図6を参照して説明したように、赤色素子20Rの陽極32に好適な照射時間だけUV光を照射することによって、陽極32Rの仕事関数は、赤色素子20Rの陽極32として好適な仕事関数となる。
次に、ステップS25では、排気装置142を用いて処理チャンバ128内の酸素ガスを排出する。
次に、ステップS26では、マスク保持装置124によって、開口マスク123を移動させて、図10(c)に示すように、積層体30が形成されることによって青色素子20Bが形成されるべき開口領域20aBに、開口部144が重なるように、有機EL装置1Aに対して開口マスク123を位置合わせする。
次に、ステップS27では、処理チャンバ128の中に新な酸素ガスを導入する。
次に、ステップS28では、UV光源126を用いて、開口マスク123が装着された有機EL装置1AにUV光を照射する。UV光は、開口部144を通過して、陽極32Bの表面及び開口領域20aBに充填されている酸素ガスに照射される。これにより、青色素子20B用の電極となるべき陽極32Bの表面処理が行われる。このとき、青色素子20Bの陽極32に好適な照射時間だけUV光を照射することによって、陽極32Bの仕事関数は、青色素子20Bの陽極32として好適な仕事関数となる。
次に、ステップS29では、排気装置142を用いて処理チャンバ128内の酸素ガスを排出する。
次に、ステップS30では、マスク保持装置124によって、開口マスク123を移動させて、図10(d)に示すように、積層体30が形成されることによって緑色素子20Gが形成されるべき開口領域20aGに、開口部144が重なるように、有機EL装置1Aに対して開口マスク123を位置合わせする。
次に、ステップS31では、処理チャンバ128の中に新な酸素ガスを導入する。
次に、ステップS32では、UV光源126を用いて、開口マスク123が装着された有機EL装置1AにUV光を照射する。UV光は、開口部144を通過して、陽極32Gの表面及び開口領域20aGに充填されている酸素ガスに照射される。これにより、緑色素子20G用の電極となるべき陽極32Gの表面処理が行われる。このとき、緑色素子20Gの陽極32に好適な照射時間だけUV光を照射することによって、陽極32Gの仕事関数は、緑色素子20Gの陽極32として好適な仕事関数となる。
次に、ステップS33では、排気装置142を用いて処理チャンバ128内の酸素ガスを排出する。これは、有機EL装置1Aから開口マスク123を取外したときに、処理チャンバ128内でUV光を照射されていた酸素ガスが陽極32R、陽極32G、及び陽極32Bに接触することを抑制するための処置である。これによって、それぞれ赤色素子20R、緑色素子20G、青色素子20Bの陽極32として好適な仕事関数となる処理が施された陽極32R、陽極32G、及び陽極32Bが、UV光を照射されていた酸素ガスに曝されることによってさらに表面処理される可能性を小さくする。
次に、ステップS34では、有機EL装置1Aから開口マスク123を取外して除去する。次に、ステップS35では、素子基板10(有機EL装置1A)を、表面処理装置200から真空蒸着装置201などの別の装置などに移動する。ステップS35を実施して陽極32を表面処理する工程を終了する。
<第2の開口マスク>
次に、表面処理装置200において用いられる開口マスクである第2の開口マスクの構成について、図11を参照して説明する。図11は、第2の開口マスクの概略構成を示す模式図である。図11(a)は、第2の開口マスクの概略構成を示す平面図であり、図11(b)は、第2開口部の形状を示す部分平面図であり、図11(c)は、第2開口部の断面形状を開口領域の断面形状と共に示す部分断面図である。
図11(b)に示すように、第2の開口マスク323の第2開口部344は、略円形の開口孔344aを10個有している。
図11(a)に示すように、第2の開口マスク323は、方形状のガラス基板に、第2開口部344が形成されている。第2の開口マスク323は、図1を参照して説明した有機EL装置1の画像表示領域11を充分覆う大きさを有している。有機EL装置1の赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bに対応する第2の開口マスク323は、第2開口部344が、図2を参照して説明した赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの、画像表示領域11における配置位置に対応する位置に形成されている。第2の開口マスク323の第2開口部344が形成されていない部分には、第2の開口マスク323を有機EL装置1Aに対して位置決めするためのアライメントマーク(図示省略)が形成されている。
図2を参照して説明したように、有機EL装置1における赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bは、ストライプ配列、モザイク配列、又はデルタ配列などの配列で位置している。これらの配列において、複数の赤色素子20Rの相互の位置関係と、複数の緑色素子20Gの相互の位置関係と、複数の青色素子20Bの相互の位置関係とは、互いに共通である。そのため、赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの配置位置に対応する位置に第2開口部344が形成された第2の開口マスク323は、赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bのいずれを処理する場合にも共通して使用することができる。
図11(b)又は(c)に示すように、第2開口部344を構成する10個の開口孔344aは、隔壁22で囲まれた空間である開口領域20aの平面形状内に収まるように配置されている。陽極32の表面処理を実施する際には、第2開口部344と陽極32(開口領域20a)との位置関係が、図11(b)及び(c)に示したように、画像表示領域11の面に平行な方向において互いに対向する位置関係になるように、第2の開口マスク323は、有機EL装置1Aに対して位置決めされる。
以下、本実施形態の効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)陽極32R、陽極32G、又は陽極32Bを表面処理する際は、それぞれの陽極32ごとに、赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの陽極32に好適な照射時間だけUV光を照射することによって、表面処理を実施する。これにより、陽極32R、陽極32G、及び陽極32Bの仕事関数を、それぞれ赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの陽極32として好適な仕事関数にすることができる。即ち、赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bを、それぞれの発光する光の色を発光するのに好適な有機EL素子20とすることができる。
(2)開口マスク123は、開口部144が、有機EL装置1の赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの、画像表示領域11における配置位置に対応する位置に形成されている。これにより、開口マスク123を用いることで、赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bがそれぞれ形成されるべき位置の陽極32R、陽極32G、及び陽極32Bに対して、各陽極32R、陽極32G、又は陽極32Bのグループごとに、個別にUV光を照射することができる。同様に、各陽極32R、陽極32G、又は陽極32Bのグループごとに、個別にUV光が照射された酸素ガスを作用させることができる。
(3)略真空状態の処理チャンバ128の中に酸素ガスを導入することによって酸素ガスを開口領域20aに配置して、当該酸素ガスにUV光を照射している。これにより、酸素ガスからオゾンを発生させて、開口領域20aに臨む陽極32に対して表面処理を施すことができる。
(4)陽極32の処理工程の前に隔壁22を形成する。隔壁22によって、表面処理を実施するべき陽極32と当該陽極32以外の陽極32とを、隔てることができる。これにより、表面処理を実施する陽極32の近傍においてUV光が照射された酸素ガスから発生したオゾンが周囲に拡散することによって、当該表面処理を実施する陽極32以外の陽極32に対して、当該処理が実施される、又は当該処理に準じた処理が実施されることを抑制することができる。
(5)陽極32の表面処理の実施に際して、開口マスク123を有機EL装置1Aの隔壁22に対して密着させるように設置する。これにより、表面処理を実施する陽極32に臨んで、隔壁22と開口マスク123とで略密閉された空間が形成されるため、表面処理を実施する陽極32以外の陽極32に対して、当該処理が実施されることを、より確実に抑制することができる。
(6)有機EL装置1において、複数の赤色素子20Rの相互の位置関係と、複数の緑色素子20Gの相互の位置関係と、複数の青色素子20Bの相互の位置関係とは、互いに共通である。そのため、赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bの配置位置に対応する位置に開口部144が形成された開口マスク123は、赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bのいずれを処理する場合にも共通して使用することができる。これにより、有機EL素子20の陽極32の処理に際して、各グループごとに個別の開口マスク123を用意することは不要であり、開口マスク123の必要数を少なくすることができる。
(7)開口領域20aの上端部分の平面形状(隔壁22の上端で囲まれた平面形状)は陽極32の面積より大きく、開口部144の開口面積は、隔壁22に囲まれた陽極32の面積より僅かに小さい。開口部144が開口領域20aの上端部分から外れなければ、実質的に、開口部144の開口部分の全面が陽極32に臨んでいる状態である。このため、開口マスク123の有機EL装置1Aに対する位置決めに際して、開口部144が開口領域20aの上端部分から外れないような位置ずれは許容される。これにより、開口部144の陽極32に対する位置合わせの許容誤差が大きくなるため、開口マスク123の有機EL装置1Aに対する位置合わせの許容誤差を大きくすることができる。
(8)第2の開口マスク323の第2開口部344は、略円形の開口孔344aを10個有している。単一の開口領域20aを覆う位置にある第2の開口マスク323に複数の開口孔344aが存在することで、開口領域20aと開口領域20aとは反対側の空間との間の気体の流動に際して、10個の開口孔344aの一部が流入口となり他の開口孔344aが流出口となる可能性がある。これによって、開口領域20aからの酸素ガスの流出及び当該空間への酸素ガスの流入を発生し易くすることができる。
以上、添付図面を参照しながら有機EL装置の製造方法、及び有機EL装置の製造装置の好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
(変形例1)前記実施形態においては、真空蒸着装置201を用いて、蒸着法によって正孔注入層30a、正孔輸送層30b、赤色発光層30R、青色発光層30B、緑色発光層30G、電子輸送層30c、及び電子注入層30dの成膜材料を、有機EL装置1Aの開口領域20aに順次積層して、積層体30を形成していた。しかし、積層体30を構成する有機層を、蒸着法を用いて形成することは必須ではない。有機層は、例えばスピンコート法やインクジェット法などの塗布法により形成することもできる。
インクジェット法による有機層の形成の一例について説明する。インクジェット法による正孔注入層又は正孔輸送層の形成は、インクジェット装置により正孔注入層又は正孔輸送層の材料を含む液状体を液滴吐出し、乾燥処理及び熱処理を行うことによって、正孔注入層又は正孔輸送層が形成される。
インクジェット法による発光層の形成は、例えば、表面改質工程、発光層形成材料吐出工程及び乾燥工程からなる。表面改質工程は、発光層形成の際に用いる組成物の非極性溶媒と同一の溶媒又はこれに類する溶媒である表面改質材を、インクジェット法、スピンコート法又はディップ法により正孔注入/輸送層上に塗布した後に乾燥することにより行う。表面改質材としては、組成物の非極性溶媒同一なものとして例えば、シクロヘキシルベンゼン、ジハイドロベンゾフラン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン等を採用でき、組成物の非極性溶媒に類するものとして例えば、トルエン、キシレン等を採用できる。発光層形成材料吐出工程は、インクジェット法により、発光層形成材料を含む組成物を、正孔注入/輸送層上に吐出する。その後、乾燥処理して、組成物に含まれる非極性溶媒を蒸発させ、発光層形成材料を析出させて、発光層を形成する。なお、このような有機層の形成は、水蒸気及び酸素の無い雰囲気下で行うことが好ましく、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気下で作業を行うことが好ましい。
(変形例2)前記実施形態においては、有機EL素子20は、基板側から光を射出する“ボトムエミッション型”の有機EL素子であったが、有機EL素子はボトムエミッション型に限らない。封止基板側から光を射出するトップエミッション型の有機EL素子であってもよい。トップエミッション型の有機EL素子においては、少なくとも封止基板側の電極を透明な材料で形成する。
(変形例3)前記実施形態においては、有機EL素子20は、基板側に陽極32が形成されており、封止基板側に陰極33が形成されていたが、陽極及び陰極をこのように配置することは必須ではない。有機EL素子は、基板側に陰極を配置し、封止基板側に陽極を配置する構成であってもよい。
基板側に陰極を配置する構成の場合は、陰極の表面に対して、有機EL素子が射出する光の色ごとに最も適した表面処理を実施することによって、前記した実施形態において陽極32に対して各有機EL素子が射出する光の色ごとに最も適した表面処理を実施した場合と同様に、好適な有機EL素子を形成することができる。
(変形例4)前記実施形態においては、有機EL素子20は、発光層として、赤色発光層30R、青色発光層30B、及び緑色発光層30Gの三色の発光層を備えていたが、有機EL素子が、当該三色の発光層を備えることは必須ではない。有機EL素子が備える発光層は、他の色の光を発光する発光層であってもよい。
(変形例5)前記実施形態においては、有機EL素子20は、単独の有機EL素子20が、発光層として、赤色発光層30R、青色発光層30B、及び緑色発光層30Gの三色の発光層を各一層ずつ備えていたが、ひとつの有機EL素子が、発光層を三層備えることは必須ではない。例えば、赤色発光層、青色発光層、又は緑色発光層を一層有する構成であってもよい。あるいは、赤色に発光する発光色素、青色に発光する発光色素、及び緑色に発光する発光色素を有する発光層を一層有する構成であってもよい。
発光層を一層有する構成の有機EL素子においては、基板側に形成された電極に対して、当該電極に積層するべき発光層の、例えば材質に応じて、積層するべき発光層の種類ごとに最も適した表面処理を実施する。これによって、前記した実施形態において陽極32に対して各有機EL素子が射出する光の色ごとに最も適した表面処理を実施した場合と同様に、好適な有機EL素子を形成することができる。
(変形例6)前記実施形態においては、有機EL装置1が備える有機EL素子20は、赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bの3種類であったが、有機EL装置が備える有機EL素子の種類は3種類に限らない。有機EL装置は、さらに多くの種類の有機EL素子を備える多色の有機EL装置であってもよい。多色の有機EL装置としては、例えば、赤色、緑色、青色に加えて赤色、緑色、青色の補色のシアン(青緑)、マゼンタ(紫赤)、イエロー(黄色)の有機EL素子を有する6色有機EL装置があげられる。また、シアン(青緑)、マゼンタ(紫赤)、イエロー(黄色)の3色に緑色を加えた4色有機EL装置や、赤色、緑色、青色に白色を加えた4色有機EL装置などがあげられる。
(変形例7)前記実施形態においては、有機EL素子20は、陽極32と陰極33との間に、正孔輸送層30b、赤色発光層30R、青色発光層30B、緑色発光層30G、電子輸送層30c、及び電子注入層30dが形成されていたが、有機EL素子がこれらの各層の全てを備えることは必須ではない。有機EL素子は、発光層のみが画素電極と対向電極とに挟まれた構成のものや、正孔輸送層と発光層と電子輸送層とが挟まれた構成のものや、正孔輸送層と発光層と電子輸送層と正孔注入層とが挟まれた構成のものや、正孔輸送層と発光層と電子輸送層と正孔注入層と電子注入層とが挟まれた構成のものなどが知られている。有機EL素子は、これらの構成の中で、いずれの構成を有する有機EL素子であってもよい。また、上記各層とは異なる機能を有する層をさらに有する有機EL素子であってもよい。
(変形例8)前記実施形態においては、走査線駆動回路120及びデータ線駆動回路150は、予め素子基板10の表面に低温ポリシリコンの半導体層を形成するなどの方法によって、素子基板10の表面上に直接形成していたが、有機EL素子の駆動回路を基板上に直接形成することは必須ではない。有機EL素子を駆動可能なドライバICをガラス基板上に平面実装する構成であってもよい。
(変形例9)前記実施形態においては、陽極32R、陽極32B、及び陽極32Gの表面処理を順次実施して、有機EL装置1Aにおける全ての陽極32の処理が終了したところで正孔注入層30aを形成する工程を行っていたが、正孔注入層30aなどを形成する前に全ての陽極32の処理を完了することは必須ではない。陽極32R、陽極32B、又は陽極32Gのみの表面処理を実施し、処理済みの陽極32のみにおいて、次の正孔注入層30aなどを形成する工程を実施して、当該表面処理の工程と正孔注入層30aなどを形成する工程との組を有機EL素子の発光色(種類)ごとに繰返してもよい。電極の表面処理と有機層の形成との間の時間経過を少なくすることができるため、表面処理の効果が時間の経過にともなって減少することを抑制することができる。
(変形例10)前記実施形態においては、陽極32R、陽極32B、及び陽極32Gの表面処理のために使用する酸素ガスの特性については共通の酸素ガスとして説明したが、陽極32Rと、陽極32Bと、陽極32Gとの処理条件を変える手段として、処理用の酸素ガスの特性を変えてもよい。例えば酸素ガスの濃度を変えることによって、陽極などの電極における処理後の特性を調整することができる。
(変形例11)前記実施形態においては、有機EL装置1が備える赤色素子20R、緑色素子20G、及び青色素子20Bは、互いに略同じ平面形状をしていたが、有機EL装置が備える有機EL素子の平面形状が互いに略同一であることは必須ではない。また、複数の赤色素子20R、緑色素子20G、又は青色素子20Bからなる有機EL素子のグループは、当該グループにおける各有機EL素子の位置関係が、赤色素子20Rのグループと、緑色素子20Gのグループと、又は青色素子20Bのグループとで共通であったが、グループにおける各有機EL素子の位置関係が各グループの間で共通であることは必須ではない。有機EL装置が備える有機EL素子の平面形状が互いに略同一でない場合や、有機EL素子の位置関係が各グループの間で共通でない場合には、それぞれの有機EL素子の電極を処理する際に、当該電極に対応する専用の開口マスクを使用する。
(変形例12)前記実施形態においては、表面処理は、処理用気体として酸素ガスを用い、電極の雰囲気の酸素ガスに処理光としてのUV光を照射して、発生するオゾンによって電極面を処理するものであり、また、電極面に直接照射されるUV光によって、電極面を処理するものであった。しかし、処理用気体が酸素ガスであることや、処理用気体を活性化させる処理光がUV光であることは、必須ではない。他の処理用気体を用い、当該処理用気体を活性化させる波長を有する別の処理光を用いてもよい。
また、処理用気体は、処理用気体自体が電極面に接触することによって当該電極面に作用して、電極を表面処理するものであってもよい。
(変形例13)前記実施形態においては、処理を実施するべき陽極32を他の陽極32と分離するために、開口マスク123を用いていたが、処理するべき電極のみを処理できるようにするために開口マスクを用いることは必須ではない。処理するべき電極のみを処理できるように分離できれば、他の方法を用いてもよい。
(変形例14)前記実施形態においては、有機EL素子20の発光層などは、隔壁22によって区画された領域に形成されていたが、この領域のみでなく、隔壁22上を含めた画像表示領域11全面に形成してもよい。この場合、有機EL素子の発光層などを隔壁22によって区画された領域に選択的に形成する必要が無いため、より簡便に形成することができる。
(変形例15)前記実施形態においては、開口マスク123を用いて処理を実施する際に、開口マスク123を隔壁22に密着させることによって、処理を実施するべき陽極32を他の陽極32と確実に分離していたが、開口マスクを隔壁に密着させることは必須ではない。処理するべき電極のみを処理できるように確実に分離できれば、開口マスクを隔壁に密着させない方法であってもよい。
(変形例16)前記実施形態においては、陽極32R、陽極32G、又は陽極32Bの表面処理を実施した後、次の陽極32の表面処理を実施するために開口マスク123を移動する前に、酸素ガスの排出を行っていた。酸素ガスを排出することによって、当該移動の際に、それまで開口マスク123によって酸素ガスから隔絶されていた陽極32に酸素ガスが接触することを抑制していた。しかし、開口マスクの移動の際に、処理用気体から開口マスクによって隔絶されていた電極であって、その時点では処理を実施するべきではない電極に処理用気体が接触することを抑制するために、処理用気体を排出することは必須ではない。開口マスクを隔壁に略密着させた状態を維持したまま開口マスクを移動することによって、その時点では処理を実施するべきではない電極に処理用気体が接触することを抑制してもよい。
開口マスクを隔壁に略密着させた状態を維持したまま開口マスクを移動することによって、隔壁と開口マスクの開口部ではない部分とによって形成されている略密閉された空間が維持されたまま、開口マスクの基板に対する相対位置が移動される。従って、開口マスクの移動前に開口マスクが臨んでいた電極と、開口マスクの移動後に開口マスクが臨む電極以外の電極に対して、周囲の処理用気体が殆ど接触することなく開口マスクの移動を実施することができる。特に、開口マスクの移動を、隣合って形成された電極の一方に臨んでいた開口部を他方の電極に臨む位置に移動するようにして実施することにより、開口マスクが臨む電極以外の電極に対して、周囲の処理用気体が殆ど接触することなく開口マスクの移動を実施することができる。これにより、開口マスクの移動の前に処理用気体を排出し、移動後に処理用気体を供給することが不要となり、一回酸素ガスを導入することによって、同一の開口マスクを使用して、異なる種類の電極に対する表面処理を実施することができる。
なお、移動前に開口部が臨んでいた電極は、開口部が移動して開口マスクで封止された状態になっても、開口マスクとの隙間に残留する処理用気体によって処理が進行する可能性がある。このため、当該電極の適切な処理条件に対して、当該残留する処理用気体に起因する処理の進行を考慮して処理条件を定める必要がある。
例えば、UV光の照射時間と電極の仕事関数との関係が、図6を参照して説明した関係であって、簡単にするために、残留した処理用気体でもUV光を照射していた時と、処理速度は同じと仮定する。最初に、開口部144を陽極32Gに臨ませて、陽極32Gを(T5−T2)分間処理する。次に、開口部144を陽極32Bに臨ませて、陽極32Bを(T2−T1)分間処理する。次に、開口部144を陽極32Rに臨ませて、陽極32Rを(T1)分間処理する。陽極32Gは、(T5−T2)分間処理され、次に残留した処理用気体に、(T2−T1)分間及び(T1)分間曝されており、合計T5分間処理されている。同様に、陽極32B及び陽極32Rは、T2分間又はT1分間処理されており、上記した実施形態において図6を参照して説明した表面処理と同様の表面処理を実施することができる。
(変形例17)前記実施形態においては、有機EL素子20は、三層の発光層を備えており、三層を陽極32側から赤色発光層30R、青色発光層30B、及び緑色発光層30Gの順で積層していたが、発光層を当該順番で積層することは必須ではない。発光層の積層順はどのような順序であってもよい。ただし、発光層の電極からの距離によって、当該発光層を他の発光層より効率良く発光させるために電極に施す表面処理の適切な条件が異なる。そのため、発光層の積層順も考慮して、電極に施す表面処理の条件を決定する必要がある。
(変形例18)前記実施形態においては、表面処理は、処理用気体として酸素ガスを用い、電極の雰囲気の酸素ガスに処理光としてのUV光を照射して、発生するオゾンによって電極面を処理するものであり、また、電極面に直接照射されるUV光によって、電極面を処理するものであった。しかし、処理用気体及び処理用気体を活性化させる処理光を用いることは、必須ではない。表面処理は、処理光を電極面に直接照射することによって電極面を表面処理する処理であってもよい。
(変形例19)前記実施形態においては、開口部144の開口面積は、隔壁22に囲まれた陽極32の面積より僅かに小さくなっていたが、開口部の開口面積が電極の面積より小さいことは必須ではない。処理用気体や処理光は、開口部を通過して電極に作用する。処理用気体や処理光が通過し易くするためには、開口部の開口面積は、大きいことが好ましい。開口部の開口面積は、開口部が処理を実施するべき電極に臨んだ状態で、開口部の一部が、その時点では処理を実施するべきでない電極の一部に臨む状態にならない範囲であれば、電極の面積より大きくてもよい。ただし、開口部の一部が、その時点では処理を実施するべきでない電極の一部に臨む状態にならないように、開口マスクを位置決めすることが必要である。
素子基板を封止基板の側から見た有機EL装置の概略的な平面図。 (a)素子基板に形成された有機EL素子の全体の配列を模式的に示す平面図。(b),(c)3色カラーの有機EL素子の配列例を示す模式平面図。 有機EL装置の電気的な構成を示すブロック図。 画素部の断面図。 製造途中の有機EL装置の断面図。 (a)UV光の照射時間と電極面の仕事関数との関係を示す図。(b)各画素ごとの適切な処理条件を示す表。(c)適切な処理条件の処理を実施した場合における有機EL素子の発光特性の一例を示す表。 成膜装置の構成を示す模式図。 (a)開口マスクの概略構成を示す平面図。(b)開口部の形状を示す部分平面図。(c)開口部の断面形状を開口領域の断面形状と共に示す部分断面図。 陽極を表面処理する工程を示すフローチャート。 陽極を表面処理する工程を示す模式断面図。 (a)第2の開口マスクの概略構成を示す平面図。(b)第2開口部の形状を示す部分平面図。(c)第2開口部の断面形状を開口領域の断面形状と共に示す部分断面図。
符号の説明
1…有機EL装置、1A…有機EL装置、2…画素部、10…素子基板、20…有機EL素子、20B…青色素子、20G…緑色素子、20R…赤色素子、20a,20aB,20aG,20aR…開口領域、22…隔壁、30B…青色発光層、30G…緑色発光層、30R…赤色発光層、30a…正孔注入層、30b…正孔輸送層、30c…電子輸送層、30d…電子注入層、32,32B,32G,32R…陽極、33…陰極、51…カラーフィルタ、51B…青色フィルタ、51G…緑色フィルタ、51R…赤色フィルタ、123…開口マスク、124…マスク保持装置、126…UV光源、141…給気装置、142…排気装置、144…開口部、200…表面処理装置、201…真空蒸着装置、323…第2の開口マスク、344…第2開口部、344a…開口孔。

Claims (20)

  1. 複数の有機EL素子を備え、前記複数の有機EL素子の各々の有機EL素子は、電極と少なくとも一層の発光層とを有し、前記複数の有機EL素子は、少なくとも、第1の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第1のグループと、前記第1の色とは異なる第2の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第2のグループと、を含む有機EL装置の製造方法であって、
    基板の上に前記電極を形成する電極形成工程と、
    前記有機EL素子が射出する光の色に対応する表面処理を、前記電極ごとに実施する処理工程と、
    前記表面処理が実施された前記電極の上に前記発光層を形成する発光層形成工程と、を有することを特徴とする、有機EL装置の製造方法。
  2. 前記処理工程は、処理用気体を、当該処理用気体が前記表面処理を実施する前記電極に接触するように、前記基板の周囲に導入する導入工程を含み、
    前記処理工程は、前記処理用気体を前記電極の表面に作用させることによって実施することを特徴とする、請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
  3. 前記処理工程は、前記表面処理を行うための処理光を、当該処理光が前記表面処理を実施する前記電極の表面に照射されるように照射する照射工程を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の有機EL装置の製造方法。
  4. 前記処理工程に先んじて、前記有機EL素子のそれぞれを形成するための領域を各前記有機EL素子ごとに区画する隔壁を形成する隔壁形成工程をさらに有することを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  5. 前記処理工程において、前記表面処理を実施する前記電極に対応する開口部を有する開口マスクを用いることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  6. 前記処理工程において、前記表面処理を実施する前記電極に対応する開口部を有する開口マスクを、前記隔壁に密着させて用いることを特徴とする、請求項4に記載の有機EL装置の製造方法。
  7. 前記開口マスクの前記開口部の開口面積が、前記電極の表面処理される面積より小さいことを特徴とする、請求項5又は6に記載の有機EL装置の製造方法。
  8. 単一の前記電極に対応する前記開口部が、複数の孔によって構成されていることを特徴とする、請求項5乃至7のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  9. 前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、
    前記処理工程において、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対して処理を実施する際は、各前記グループのそれぞれにおいて共通の前記開口マスクを使用することを特徴とする、請求項5乃至8のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  10. 前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、
    前記処理工程において、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対して処理を実施する際は、各前記グループのそれぞれにおいて共通の前記開口マスクを使用し、
    前記開口マスクが前記隔壁に密着した状態を維持すると共に、前記開口マスクを前記隔壁に沿って移動させるマスク移動工程をさらに有することを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  11. 複数の有機EL素子を備え、前記複数の有機EL素子の各々の有機EL素子は、電極と少なくとも一層の発光層とを有し、前記複数の有機EL素子は、少なくとも、第1の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第1のグループと、前記第1の色とは異なる第2の色の光を射出する複数の有機EL素子を有する第2のグループと、を含む有機EL装置の製造装置であって、
    基板の上に前記電極を形成する電極形成部と、
    前記有機EL素子が射出する光の色に対応する表面処理を、前記電極ごとに実施する表面処理部と、
    前記発光層を形成する層形成部と、を備えることを特徴とする、有機EL装置の製造装置。
  12. 前記表面処理部は、前記電極の表面に作用させることによって前記表面処理を実施するための処理用気体を、当該処理用気体が前記表面処理を実施する前記電極に接触するように、前記基板の周囲に供給する処理用気体供給部を備えることを特徴とする、請求項11に記載の有機EL装置の製造装置。
  13. 前記表面処理部は、前記表面処理を実施するための処理光を射出する処理光源を備えることを特徴とする、請求項11又は12に記載の有機EL装置の製造装置。
  14. 前記有機EL素子のそれぞれを形成するための領域を各前記有機EL素子ごとに区画する隔壁を形成する隔壁形成部をさらに備えることを特徴とする、請求項11乃至13のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置。
  15. 前記表面処理部は、前記表面処理を実施するべき前記電極に対応する開口部を有する開口マスクを備えることを特徴とする、請求項11乃至14のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造方法。
  16. 前記表面処理部は、前記表面処理を実施する前記電極に対応する開口部を有する開口マスクと、
    前記開口マスクを前記隔壁に密着させた状態で保持する開口マスク保持部と、をさらに備えることを特徴とする、請求項14に記載の有機EL装置の製造装置。
  17. 前記開口マスクの前記開口部の開口面積が、前記電極の表面処理される面積より小さいことを特徴とする、請求項15又は16に記載の有機EL装置の製造装置。
  18. 単一の前記電極に対応する前記開口部が、複数の孔によって構成されていることを特徴とする、請求項15乃至17のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置。
  19. 前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、
    前記開口マスクは、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対しては、共通して使用可能となる前記開口部の形状及び相互の位置関係を有することを特徴とする、請求項15乃至18のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置。
  20. 前記有機EL装置は、同じ色の光を射出する前記有機EL素子のグループにおける各前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が、各前記グループの間で互いに実質的に共通である前記グループを二以上備え、
    前記開口マスクは、前記有機EL素子の形状及び相互の位置関係が互いに実質的に共通である前記グループに対しては、共通して使用可能となる前記開口部の形状及び相互の位置関係を有し、
    前記開口マスクが前記隔壁に密着した状態を維持すると共に、前記開口マスクを前記隔壁に沿って移動させるマスク移動部をさらに備えることを特徴とする、請求項16乃至18のいずれか一項に記載の有機EL装置の製造装置。
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JP2009087930A (ja) * 2007-09-13 2009-04-23 Semiconductor Energy Lab Co Ltd 発光装置の作製方法および蒸着用基板
JP2018174155A (ja) * 2009-10-21 2018-11-08 株式会社半導体エネルギー研究所 半導体装置

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