JP2009014395A5 - - Google Patents

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燃料電池用熱電対
本発明は、燃料電池用熱電対に関するものである。
燃料電池は、セルと呼ばれる発電単位が多層に重ねられた構成をしている。燃料電池の試験機の電解質膜温度測定や実用機の温度監視、温度制御などのために、セル内に挿入して温度測定ができる極めて細い熱電対が求められている。本発明は、この熱電対に関するものである。
従来の細径熱電対としては、特許文献1、2に示されるものがある。特許文献1に示されるものは、断面が楕円状で短径が約0.3mmであり、特許文献2に示されるものは、円形断面型の直径が約0.1mm、楕円状断面型の短径も約0.1mmである。
セル内に挿入して温度測定を行うための熱電対は、燃料電池内の場所による電位の違いにより熱電対素線を通って電流が流れることがないよう表面が絶縁されていることが必要であり、また、電解質膜の水分や燃料の使用後に生ずる水分に素線が浸されると、素線の水分に浸された部分が同一電位に近くなり、熱電対の熱起電力が変化して測定温度に誤差が生じるため、水分に対して素線が保護されている事が必要である。
燃料電池用熱電対は、これらの条件を満たしたものであって、燃料電池の構成物への影響を小さくするために、できるだけ細径であることが望ましく、上記0.1mmよりさらに細い熱電対が求められている。
特開2007−078420号公報 特開2007−078433号公報
本発明は、燃料電池のセル内に挿入して温度を測定するための、表面が絶縁及び防水された径が0.014mm以下の熱電対を提供することを目的とする。対象とする燃料電池は、セル1枚当たりの電圧上昇が5V程度以下のもので、例えば、電気自動車の固体高分子型燃料電池はセル1枚当たりの電圧上昇は最大でも1.2V程度で、本発明による熱電対の使用対象に含まれる。
そこで、本発明は、上記の事情に鑑み、燃料電池のセル内に挿入して温度を測定するための、表面が絶縁及び防水された径が0.014mm以下の熱電対を提供し、セル1枚当たりの電圧上昇が5V程度以下の燃料電池を測定対象とすべく、熱電対のプラス側素線(以下「+側熱電対素線」という)とマイナス側素線(以下、「−側熱電対素線」という)を一直線に配置し、向き合った+側熱電対素線の先端と−側熱電対素線の先端が当接する部分を溶接により接合して測温接点とし、+側熱電対素線と−側熱電対素線の表面にポリイミドをコーティングした燃料電池用熱電対であって、+側熱電対素線と−側熱電対素線との素線径を13μm以下、ポリイミドコーティングの厚さを0.5μm以下とし、外径を14μm以下とした燃料電池用熱電対とした。
さらに、本発明は、ポリイミドの刷毛による塗布と、加熱による固化を繰り返すことに
より、+側熱電対素線と−側熱電対素線との熱電対素線表面にポリイミドコーティングを形成した燃料電池用熱電対とした。
本発明は、熱電対の+側熱電対素線と−側熱電対素線を一直線に配置し、向き合った+側熱電対素線の先端と−側熱電対素線の先端が当接する部分を溶接により接合して測温接点とし、+側熱電対素線と−側熱電対素線の表面にポリイミドをコーティングした燃料電池用熱電対であって、+側熱電対素線と−側熱電対素線との素線径を13μm以下、ポリイミドコーティングの厚さを0.5μm以下とし、外径を14μm以下とした燃料電池用熱電対であるので、燃料電池のセル内に挿入して温度を測定するための、表面が絶縁及び防水された径が0.014mm以下の熱電対を提供でき、セル1枚当たりの電圧上昇が5V程度以下の燃料電池を測定対象とすることができる。
さらに、本発明は、ポリイミドの刷毛による塗布と、加熱による固化を繰り返すことにより、+側熱電対素線と−側熱電対素線との熱電対素線表面にポリイミドコーティングを形成した燃料電池用熱電対とした。
本発明の具体的な実施例を、添付する図面に示し、以下詳細に説明する。
1.本発明の細径熱電対の構造
本発明による熱電対の構造を図1に示す。
+側熱電対素線1と−側熱電対素線2を直線状に配置して、+側熱電対素線の細径部3の先端と−側熱電対素線の細径部4の先端が当接する部分を溶接で接続し、それぞれの素線の他端に通常の太さの+側熱電対素線1と−側熱電対素線2が接続されている。この通常の太さの素線1、2は、リード線として熱電対受信計器まで配線される。+側熱電対素線の細径部3と−側熱電対素線の細径部4の溶接部が測温接点5となり、この位置の温度が熱電対の出力温度となる。
細径の熱電対素線には、ポリイミドがコーティングされており、ポリイミドコーティング6は温度測定対象であるセルの幅Bより長い範囲に塗布されている。
2.熱電対の径
熱電対素線の細径部3、4として、外径がφ0.013mm(13μm)以下の素線を用い、これに、以下の工程を数回繰り返して、ポリイミドコーティング6を形成する。
(1) ポリイミドの刷毛による塗布
(2) 加熱による塗布したポリイミドの固化
この工程により、ピンホールが無く水分の浸入を防ぎ、かつ、絶縁材としての耐電圧がDC5Vである厚さ0.0005mm(0.5μm)以下のポリイミドコーティング6が得られる。熱電対の外径は、素線3、4とポリイミドコーティング6を合わせてφ14μm以下である。
3.使用状態の説明
図2に本発明による熱電対の使用状態を示す。本発明による熱電対は、燃料電池セル7内の例えば電解質膜の温度を測定するために挿入されて、図1に示す測温接点5の位置の温度を測定する。図示のセルは1つであるが、実際にはセルは多層に重ねられている。ま
た、セルはアノード、カソード、電解質膜、セパレータなどから構成されるが、図2にはこれらの個別表示はしていない。
熱電対素線の細径部3、4に接続された通常太さの熱電対素線1、2は、リード線としてフローティング入力型の熱電対受信器8に配線される。熱電対受信器において、熱電対の起電力が計測され、これが温度に換算されて、熱電対受信器より測定温度として出力される。
ポリイミドコーティング部はセル幅Bより長いので、熱電対のセル内の部分はポリイミドコーティング6によりセルと電気的に絶縁されており、水分の素線側への浸入も防いでいる。また、図示していないが、細径部のポリイミドコーティングの施されていない部分及び通常太さの熱電対素線には、通常の絶縁被覆が施されている。これらの部分は径の制約が無いので、通常の絶縁被覆を用いることでよい。
4.特徴
本発明の特徴をまとめると次の通りである。
(1) 以下により、外径がφ14μm以下の表面が絶縁された熱電対を実現した。
i. 従来の熱電対は、図3のように+側素線101と−側素線102を図3のように
平行配置し、これを束ねていたものを、本発明では+側素線及び−側素線を直線状に
配置して接合し、かつ、素線径をφ13μm以下の細いものとした。
ii. 熱電対の表面に、ポリイミドの刷毛による塗布と、加熱による固化を、数回繰り
返す事により、厚さ0.5μm以下の電気絶縁のあるポリイミドコーティングを施し
た。
この実現により、燃料電池のセル内の温度を、セル構造物への取付け等による影響
を従来より抑えた状態で測定することが可能となった。また、コーティングをしてい
る部分をセル間に設置すれば、燃料電池の2つのセル間の温度を、セル間のスペーサ
に設けられている燃料や燃料の使用後に生ずる水などの生成物の通路を妨げることが
従来に比べて少ない状態で測定することも可能となった。
(2) ポリイミドコーティング部は、5Vの電気絶縁耐力があることから、1つのセルの
電圧上昇が5V以下の燃料電池に適用可能である。
セルを多数枚重ねた場合、セルの対地電圧はセルの枚数に応じて高くなるが、受信計器としてフローティング入力型のものを用いて、熱電対素線の電位を固定しなければ、この対地高電圧の影響は受けない。熱電対に要求されるのは、熱電対の設置されるセル環境において場所により電圧の異なる部分がある場合に、この電位差によってポリイミドコーティングの電気絶縁が破壊されないことである。ポリイミドコーティングの絶縁が無くなると、熱電対素線を通して、電位差のある部分の間に電流が流れ、セルの性能が低下する。1つのセルの電圧上昇が5V以下の場合、セル内及び隣り合うセル間に生じる場所による電圧の違いは、この電圧を超えることはないので、本熱電対は1つのセルの電圧上昇が5V以下の燃料電池に使用することができる。
(3) ポリイミドは防水性のある材料である。熱電対表面に施したポリイミドコーティン
グは、表面検査及び水没状態での電気絶縁試験により、ピンホール等の開口が無く、水分の素線側への浸入を防止することを確認している。燃料電池には、電解質膜の水分や燃料の水素から生じた水の存在する場所があるが、水中においても熱電対表面の絶縁は保たれ、かつ防水性があるので、このような場所での測定も可能である。
また、ポリイミドは350℃の耐熱性があるので、作動温度がこれよりも低い固体高分子型、リン酸型、アルカリ型等の燃料電池に使用可能である。
(4) 温度測定位置の選択に関し、図2の前後方向については、熱電対を設置する前後方
向の位置により選択でき、図2の左右方向の位置は、熱電対を作る際に図1の測温接点を測定したい左右方向の位置に作ることにより可能である。したがって、燃料電池の構造上の制約が無ければ、希望する任意の位置の温度測定が可能である。
また、燃料電池の構造上の制約で熱電対の直線配置が不可能な場合でも、本熱電対は可撓性があるので、曲げた状態で設置することができる。
本発明の実施例を図4に示す。
熱電対タイプ:JIS C 1602のタイプK
細径部熱電対素線径:φ12.7μm
細径部熱電対+側素線長さ:210mm
細径部熱電対−側素線長さ:210mm
細径部熱電対+側素線と−側素線の接合:レーザー溶接
ポリイミドコーティングの形成:ポリイミドの刷毛による塗布と、加熱による固化を、4回繰り返して形成。
ポリイミドコーティング部長さ:400mm
ポリイミドコーティング厚さ:0.15μm
熱電対外径(素線及びポリイミドコーティング):φ13μm
ポリイミドコーティングの耐電圧:DC5V以上(検査により確認)
ポリイミドコーテンィグの孔:無し(表面拡大鏡検査及び水中で絶縁低下のことは無いことにより確認)
細径部熱電対素線とリード線部熱電対素線の接合:レーザー溶接
本発明は、燃料電池に使用される熱電対について述べたが、細径で設置場所を取らないので、水素ガスエンジン等への設置の可能性がある。
本発明の細径熱電対の全体構造を示す図である。 本発明の使用状態を示す図である。 従来の熱電対素線配置を示す図である。 本発明の実施例の寸法を示す図である。
1…+側熱電対素線(リード線部)
2…−側熱電対素線(リード線部)
3…+側熱電対素線(細径部)
4…−側熱電対素線(細径部)
5…測温接点
6…ポリイミドコーティング

Claims (2)

  1. 熱電対の+側熱電対素線と−側熱電対素線を一直線に配置し、向き合った+側熱電対素線の先端と−側熱電対素線の先端が当接する部分を溶接により接合して測温接点とし、+側熱電対素線と−側熱電対素線の表面にポリイミドをコーティングした燃料電池用熱電対であって、+側熱電対素線と−側熱電対素線との素線径を13μm以下、ポリイミドコーティングの厚さを0.5μm以下とし、外径を14μm以下とした燃料電池用熱電対。
  2. ポリイミドの刷毛による塗布と、加熱による固化を繰り返すことにより、+側熱電対素線と−側熱電対素線との熱電対素線表面にポリイミドコーティングを形成した請求項1記載の燃料電池用熱電対。
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