JP2009013139A - アゾペプチド複合体 - Google Patents

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Abstract

【課題】光照射によって活性を制御できるアゾペプチド複合体及び光照射による該アゾペプチド複合体の活性制御方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)に表されるアゾペプチド複合体。
Figure 2009013139

(式中、
R1〜R5は、同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP1を有する基を表し、且つ
R1〜R5の少なくとも1つはペプチドP1を有する基を表す; R6〜R10は、同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP2を有する基を表し、且つ
R6〜R10の少なくとも1つはペプチドP2を有する基を表す)
【選択図】なし

Description

本発明は、アゾペプチド複合体及び光照射による該アゾペプチド複合体の活性制御方法に関する。
近年、ペプチド構造の光制御の研究が活発になっている。例えば、G. Andrew Woolley (University of Toronto, カナダ)らは、あるペプチドの両端をアゾ化合物で架橋し、シスートランス異性化を制御し、ペプチドが一方の構造を取るときはαへリックス構造を形成しないが、光を照射してアゾ基の構造を変えることでαへリックス構造を形成するペプチドを発明した。Woolleyらは、このペプチドの構造変化を可逆的に光制御することに成功している(例えば非特許文献1を参照)。しかし、彼らの研究ではペプチドの構造形成の制御にとどまっており、応用面の発明にはまだ到達していない。
Luis Moroder (Max-Plank-Institut fur Biochemie, ドイツ)らはペプチドをアゾ化合物で架橋し、ペプチドの構造変化をNMR法などの分光法により明らかにしている(例えば非特許文献2を参照)。しかし、MoroderらはWoolleyらと同様、まだ応用面の研究を行っていない。
廣田らは光解離性修飾基を導入した光制御ペプチド及び光制御ペプチドを用いたペプチド−蛋白質複合体形成の光制御方法を発明した(例えば特許文献1を参照)。しかし、このペプチドの構造変化は可逆的ではなく一方向だけであり、DNA切断の光制御の概念も含まれていなかった。
一方、金属結合ペプチドによるDNA切断の報告例は非常に多くある(例えば非特許文献3及び4)ものの、DNA切断を光制御する方法については未だ知られていない。
このように、従来はDNA切断を空間的及び時間的に制御する方法、DNA切断を光で制御する方法は知られていなかった。
WO2007/021016 Acc. Chem. Res., 38, 486-493 (2005) J. Peptide Sci., 5, 59-529 (1999) Chem. Eur. J., 12, 6621-6629 (2006) Dalton Trans 2006, 2066-2071 (2006)
本発明は、光照射によって活性を制御できるアゾペプチド複合体及び光照射による該アゾペプチド複合体の活性制御方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、アゾベンゼンを金属結合ペプチドに結合させ、このペプチドを用いることによって上記課題を解決し得ることを見出した。アゾベンゼンは、約355nmの光を照射するとシス型になり、約430nmの光を照射するとトランス型になることができる。本発明者らは、このようなアゾベンゼンの性質を利用し、光制御が可能な金属結合ペプチドを用いて、種々の活性、例えばDNA切断等を制御できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果完成されたものである。
項1.下記一般式(1)に示されるアゾペプチド複合体。
Figure 2009013139
(式中、
R1〜R5は、同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP1を有する基を表し、且つ
R1〜R5の少なくとも1つはペプチドP1を有する基を表す;
R6〜R10は、同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP2を有する基を表し、且つ
R6〜R10の少なくとも1つはペプチドP2を有する基を表す)
項2.前記ペプチドP1を有する基とペプチドP2を有する基が、同一又は異なって、一般式(1)に示されるアゾ基のシス−トランスの立体構造の変化に伴って、ペプチドP1とペプチドP2の相互作用の有無又は強弱を変化させ得るアミノ酸配列を有する項1に記載のアゾペプド複合体。
項3.前記ペプチドP1及びP2が、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含むペプチドである項1又は2のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項4.前記ペプチドP1及びP2のC末端がカルボキシル基であり、前記ペプチドP1及びP2のN末端がアミノ基である項1〜3のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項5.前記ペプチドP1又はP2の少なくともいずれか一方が、金属イオンと錯体を形成しているペプチドである項1〜4のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項6.前記式(1)中、R3又はR8が、それぞれ金属イオンと錯体を形成することが可能なペプチドP1又はP2を有する基であり、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9及びR10が水素原子である項1〜5のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項7.金属イオンが、遷移金属から選択される少なくともいずれか1種である項5又は6に記載のアゾペプチド複合体。
項8.金属イオンが銅イオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくともいずれか1種である項7に記載のアゾペプチド複合体。
項9.前記ペプチドP1及びP2が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びヒスチジンからなる群より選択される少なくとも1種を含むペプチドである項1〜8のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項10.前記ペプチドP1がグリシン及びシステインからなるジペプチドであって、前記式(1)中のR3がペプチドP1を有する基であり;
前記ペプチドP2がグリシン及びシステインからなるジペプチドであって、前記式(1)中のR8がペプチドP2を有する基である、
項1〜9のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項11.前記ペプチドP1及びP2がDNA切断能を有するペプチドである項1〜10のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
項12.項1〜11のいずれかに記載のアゾペプチド複合体に光を照射する工程を含む、該アゾペプチド複合体の活性を制御する方法。
項13.DNA切断を制御する方法である、項12に記載の方法。
本発明のアゾペプチド複合体は、光照射によってシス型−トランス型に構造が可逆的に変化することから、この構造の変化に伴う活性のオンオフ又は強弱を光照射によって簡便に制御することができる。より具体的には、光照射によって、アゾペプチド複合体のDNA切断活性のオンオフ又は強弱を制御することができる。
DNA切断は細胞死を引き起こすため、レーザー光等を用いて本発明のアゾペプチド複合体によるDNA切断を光制御し、癌細胞等を選択的に死滅させることができる。
<アゾペプチド複合体>
本発明のアゾペプチド複合体は、下記一般式(1)に示される構造を有するものである。
Figure 2009013139
以下、一般式(1)について詳細に説明する。
(i)R1〜R10を構成する基について
上記一般式(1)中、R1〜R5及びR6〜R10は、それぞれ同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP1を有する基を表す。
上記一般式(1)においてアルキル基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個である。本発明において用いられるアルキル基の具体例としては、例えば炭素数1〜6個の直鎖状または分岐状のアルキル基:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、2−メチルブチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、4−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3,3−ジメチルブチル、1,1−ジメチルブチル、1,3−ジメチルブチル、2,3−ジメチルブチル、1−エチルブチル、1−メチル−1−エチルプロピル、1−メチル−2−エチルプロピル、2−メチル−1−エチルプロピルまたは2−メチル−2−エチルプロピル基が挙げられ、より好ましくはメチル基、エチル基である。
アルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、通常1〜20個、好ましくは1〜10個、より好ましくは1〜6個である。本発明において用いられるアルコキシ基の具体例としては、例えば炭素数1〜6個の直鎖状または分岐状のアルコキシ基:メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、n−ペンチルオキシ、イソペンチルオキシまたはn−ヘキシルオキシ基が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。
酸性基とは、水中でH+を放出し酸性を示す基であり、カルボキシル基、ヒドロキシル基、スルホン基等が挙げられ、好ましくはカルボキシル基である。
塩基性基とは水中でH+を受け取って塩基性を示す基であり、アミノ基(アミン)等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、好ましくは臭素原子である。
上記R1〜R5を構成する置換基であってペプチドP1を有する基以外は、好ましくは水素原子、メチル、エチル等であり、より好ましくは水素原子である。また、上記R6〜R10を構成する置換基であってペプチドP2を有する基以外は、好ましくは水素原子、メチル、エチル等であり、より好ましくは水素原子である。
(ii)ペプチドP1及びP2について
上記一般式(1)においてR1〜R5を構成する置換基のうち、少なくとも1個以上、好ましくは1〜3個、特に好ましくは1個がペプチドP1を有する基である。
また、R6〜R10を構成する置換基のうち、少なくとも1個以上、好ましくは1〜3個、特に好ましくは1個がペプチドP2を有する基である。
本発明においてペプチドP1及びP2を有する基の結合位置は、アゾベンゼンのアゾ基のシス−トランスの立体構造の変化によってペプチドP1とP2の相互作用の有無乃至強弱が変化するように、上記一般式(1)に示されるR1〜R5又はR6〜R10のいずれかに結合されている限り特に限定されない。例えば、上記一般式(1)において、
R1〜R5の少なくとも1つはペプチドP1を有する基であり、且つ/又はR6〜R10の少なくとも1つはペプチドP2を有する基であり;
好ましくはペプチドP1を有する基がR3に結合し、且つ/又はペプチドP2を有する基がR8に結合し;
より好ましくはペプチドP1を有する基がR3に結合し、且つペプチドP2を有する基がR8に結合する。
本発明において、ペプチドP1及びP2を有する基の結合位置と他の置換基の組み合わせとして好ましくは、ペプチドP1を有する基がR3に結合し、且つペプチドP2を有する基がR8に結合し、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9及びR10が水素原子である。
ペプチドP1及びP2は、同一であってもよく、異なるものであってもよい。ここで、ペプチドP1及びP2とは、それぞれ、アゾ基のシス−トランスの立体構造の変化に伴って、当該ペプチドP1とP2の相互作用の有無乃至強弱に基づいて所望の活性を変化させ得るアミノ酸配列を有するペプチド残基を指す。
ペプチドP1とP2が相互作用することによって所望の活性が発現されるような本発明のアゾペプチド複合体は、例えば、以下のようにして活性を制御することができる。
(ii-a)本発明のアゾペプチド複合体のアゾ基がシス型の場合にペプチドP1とP2の相互作用によって活性を有するか、活性が強く現れ(活性型);
トランス型の場合にペプチドP1とP2の立体構造且つ/又は相互の立体配置に変化をきたした結果、ペプチドP1とP2が相互に作用しなくなるために活性を有さないか、活性が弱く(非活性型)なるように制御できる。
(ii-b)本発明のアゾペプチド複合体のアゾ基がシス型の場合、ペプチドP1とP2の立体構造且つ/又は相互の立体配置に変化をきたした結果、ペプチドP1とP2が相互に作用しなくなるために活性を有さないか、活性が弱く(非活性型)なり;
トランス型の場合にペプチドP1とP2の相互に作用することによって活性を有しているか、活性が強く現れる(活性型)ように制御できる。
前記ペプチドP1及びP2の相互作用に基づいて変化される活性としては、特に限定されないが、例えばDNA切断能、酵素等の生体分子の活性化、酵素等の生体分子の活性阻害等が挙げられる。
本発明においてペプチドP1及びP2を構成するアミノ酸の種類(天然アミノ酸、非天然アミノ酸を含む)、結合様式等は、アゾベンゼンのアゾ基のシス−トランスの立体構造の変化によってペプチドP1とP2の相互作用の有無乃至強弱が変化するように設計されている限り特に限定されないが、ペプチドP1及びP2を構成するアミノ酸としては、互いに同一又は異なって、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個、特に好ましくは2個のアミノ酸が例示される。
ペプチドP1及びP2におけるアミノ酸どうしの結合様式は特に限定さないが、例えば、システインとグリシンの組み合わせであれば、システインのアミノ基とグリシンのカルボキシル基がペプチド結合したもの、若しくはシステインのカルボキシル基とグリシンのアミノ基がペプチド結合したもののいずれでもよい。
また、本発明においてペプチドP1又はP2を有する基は、ペプチドP1又はP2そのもので構成されていてもよく、ペプチドP1又はP2とリンカーで構成されているものも含まれる。ペプチドP1又はP2を有する基がペプチドそのものである場合、末端のアミノ基又はカルボキシル基、あるいは側鎖のいずれか、好ましくは側鎖が上記一般式(1)に示されるベンゼン環に結合していればよい。従って、このような場合には、ペプチドP1又はP2を構成するアミノ酸のうち、ベンゼン環に結合するアミノ酸として、側鎖に官能基を有するアミノ酸を用いることが好ましく、例えばシステイン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン等が挙げられる。ペプチドP1を構成するアミノ酸にシステインが含まれる場合、側鎖の硫黄原子を介して上記一般式(1)に示されるベンゼン環とスルフィド結合によって結合することができる。
ペプチドP1又はP2を有する基がペプチドP1又はP2とリンカーによって構成されている場合、ペプチドP1又はP2はリンカーを介して上記一般式(1)に表されるベンゼン環に結合する。このような場合、ペプチドP1又はP2のアミノ基又はカルボキシル基、あるいはリンカーと結合能を有する官能基とリンカーとを結合させ、上記一般式(1)に表されるベンゼン環に結合させることができる。リンカーとしては従来公知のものを使用することができ、アゾベンゼンのアゾ基のシス−トランスの立体構造の変化によってペプチドP1とP2の相互作用の有無乃至強弱の変化を阻害しない限り特に限定されないが、例えばPEGリンカー、アルキル基、ケトン基、エーテル基、アルケニル基(C1〜C、好ましくはC1〜C5、より好ましくはC1〜C3)等が挙げられる。
本発明のペプチドP1又はP2は、リンカー以外にも他の分子を結合することができるが、本発明の実施態様としてはN末端及びC末端が未結合であるものが好ましい。
すなわち、上記アミノ酸によって構成されるペプチドP1及びP2は、少なくともN末端又はC末端のいずれかが他分子と未結合の状態であり、好ましくはN末端が他分子と未結合の状態であり、より好ましくはN末端及びC末端の両方が他分子と未結合の状態である。下記(iii)において説明するとおり、本発明のアゾペプチド複合体がDNA切断能を有するものであるときは、ペプチドP1又はP2の少なくともいずれか一方が、金属イオンと錯体を形成しているペプチドであることが好ましく、例えば、N末端が他分子と未結合の状態であればこの部分に金属イオンとの錯体を形成させることができる。また、C末端が他分子と未結合の状態である場合もこの部分を金属イオンに配位させることができる。
上記一般式(1)においてペプチドP1及びP2は、N末端から1つ目のアミノ酸と2つ目のアミノ酸が以下の特徴を有するのが望ましい:
(ii-c)N末端から1つ目のアミノ酸の少なくともいずれか一方が遊離アミノ基を有するか、又はN末端から2つ目のアミノ酸が遊離カルボキシル基を有し;
(ii-d)好ましくはN末端から1つ目のアミノ酸が遊離アミノ基を有し;
(ii-e)より好ましくはN末端から1つ目のアミノ酸が遊離アミノ基を有し、且つN末端から2つ目のアミノ酸が遊離カルボキシル基を有する。
(iii)DNA切断能を有するアゾペプチド複合体
本発明の好ましい実施態様として、DNA切断能を有するアゾペプチド複合体が挙げられる。以下、DNA切断能を有するアゾペプチド複合体のペプチドP1及びP2の組み合わせについて説明する。
本発明のアゾペプチド複合体がDNA切断能を有するものであるときは、ペプチドP1及びP2としては、所望の活性が得られるものであれば天然アミノ酸、非天然アミノ酸を問わず、いずれのアミノ酸も使用することができ、このようなアミノ酸が1又は2以上連結しているものが挙げられる。
ペプチドP1及びP2を構成し得るアミノ酸の例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヒスチジン等の天然アミノ酸;ノルロイシン、パラニトロフェニルアラニン等の非天然アミノ酸が挙げられ、好ましくはグリシン、システインである。
ペプチドP1及びP2として好ましくは末端にグリシンを有するものであり;より好ましくは末端にグリシン及びシステインを有し、1〜5個のアミノ酸が付加されたものであり;さらに好ましくはグリシン及びシステインからなるものである。
DNA切断を目的として本発明のアゾペプチド複合体を用いる場合は、ペプチドP1又はP2の少なくともいずれか一方が金属イオンと錯体を形成しているもの;好ましくはペプチドP1及びP2が金属イオンと錯体を形成しているもの;より好ましくはペプチドP1及びP2のN末端が金属イオンと錯体を形成しているものが使用される。本発明において、このような化合物をアゾペプチド−金属複合体と呼ぶことがある(例えば銅イオンとの錯体が形成されている場合にはアゾペプチド−銅複合体と呼ぶことがある)。
本発明においてペプチドP1又はP2と錯体を形成する金属イオンとしては、遷移金属のイオンが挙げられ、好ましくは銅、ニッケル、亜鉛のイオンであり、より好ましくは銅、亜鉛のイオンであり、さらに好ましくは銅イオンである。
具体的には、ペプチドP1又はP2がN末端からGly-Cysで構成され、N末端から1つ目のアミノ酸がグリシンであり、N末端から2つ目のシステインの硫黄原子を介してベンゼン環に結合している場合、グリシンのアミノ基の窒素原子、アミド結合の窒素原子、システインのカルボキシル基の酸素原子及び水分子と銅イオンが錯体を形成することができる。ここで、ペプチドP1とペプチドP2は必ずしも同一の金属イオンと錯体を形成していなくても良いが、本発明のアゾペプチド−金属複合体がシス型の場合にはペプチドP1及びP2が相互作用するように設計される。
本発明のアゾペプチド−金属複合体は、シス型及びトランス型の両方で錯体を形成し、シス型の時に錯体が近接することによってペプチドP1及びP2が相互作用し、所望の活性(例えばDNA切断活性)を制御することができる。トランス型の時はペプチドP1とP2が離れるために相互作用が解消されて活性が弱いか、又は活性が発現されない。
前記金属イオンとペプチドP1又はP2が錯体を形成する場合、モル比にしてアゾペプチド複合体1に対して1〜5、好ましくは1〜3、より好ましくは1〜2、特に好ましくは2の割合で金属イオンを結合させる。
本発明の好ましい実施態様のとして、上記一般式(1)において以下の条件を満たすものが挙げられる。
(iii-a)一般式(1)中、R3又はR8が、それぞれ金属イオンと錯体を形成することが可能なペプチドP1又はP2を有する基であり、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9及びR10が水素原子であるアゾペプチド複合体。
(iii-b)ペプチドP1がグリシン及びシステインからなるジペプチドであって、一般式(1)中のR3がペプチドP1を有する基であり;
ペプチドP2がグリシン及びシステインからなるジペプチドであって、一般式(1)中のR8がペプチドP2を有する基であるアゾペプチド複合体。
(iii-c)ペプチドP1がN末端からグリシン及びシステインがペプチド結合してなるジペプチドであって、前記式(1)中のR3がペプチドP1を有する基であり;
ペプチドP2がN末端からグリシン及びシステインがペプチド結合してなるジペプチドであって、前記式(1)中のR8がペプチドP2を有する基であり;
ペプチドP1を有する基とペプチドP2を有する基がそれぞれシステインの硫黄原子を介してベンゼン環に結合しており;
その他の置換基(R1, R2, R4, R5, R6, R7, R9, R10)が水素原子であって、ペプチドP1及びP2が銅イオンと錯体を形成している、DNA切断能を有するアゾペプチド複合体。
<アゾペプチド複合体の合成>
本発明のアゾペプチド複合体のペプチドP1及びP2は、公知のポリペプチド合成法、特に液相合成法あるいは固相合成法によって製造することができる。
例えば、固相合成法では、最もC末端に対応するアミノ酸のアミノ基を9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)基などのウレタン型保護基で保護したN-保護アミノ酸のカルボキシル基を、アミノ基を有する不溶性樹脂に結合させた後、アミノ基の保護基を除去し、N末端方向に順次保護アミノ酸を縮合させ、次いで不溶性樹脂およびアミノ酸の保護基を脱保護させて、本発明のポリペプチドを得ることができる。
前記のアミノ基を有する不溶性樹脂としては、特に限定されないが、Fmoc-NH-SAL樹脂(4-(2',4'-ジメトキシフェニル-Fmoc-アミノエチル)フェノキシリンカー樹脂)が好ましく、開裂によって直接目的物を与えることができる。
本発明のポリペプチドの合成に用いる保護アミノ酸は、官能基を公知の方法により公知の保護基で保護することにより得ることができるし、市販の保護アミノ酸を使用することもできる。保護基としては公知のものが使用でき、例えば、上記に例示したものを使用できる。
保護アミノ酸を調製する場合には、例えば、DIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド)-HOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)法等のような公知の方法を用いることができる。本縮合反応は公知の溶媒中で行うことができ、例えば、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒が例示される。アミノ基の保護基の脱離試薬としては限定されず、ピペリジン/ジメチルホルムアミド等の公知の試薬によって、Fmoc基等の保護基を切断することができる。また、合成の各段階における縮合反応の進行の程度は、例えばニンヒドリン反応法のような公知の方法によって確認することができる。
上記のようにして、所望のアミノ酸配列を有する保護ポリペプチドを得ることができる。
不溶性樹脂としてFmoc-NH-SAL樹脂を用いた場合、TMSBr(トリメチルシリルブロミド)やTFA(トリフルオロ酢酸)等で処理することにより、樹脂及び保護基を同時に脱離させることができる。
得られた本発明のポリペプチドは、例えば、抽出、再結晶、各種クロマトグラフィー(ゲルろ過、イオン交換、分配、吸着)、電気泳動、向流分配等、公知の手段により単離精製することができ、逆相高速液体クロマトグラフィーによる方法が好ましい。
得られたペプチドP1及びP2のアゾベンゼンへの結合は、例えば下記実施例の『アゾペプチドの合成』に記載される方法に従って行うことができる。すなわち、10 mMリン酸カリウム緩衝溶液、pH 7.5(40 ml)とジメチルホルムアミド50mlを10分間窒素雰囲気下で攪拌後、この混合溶液にジメチルホルムアミド1mlに溶解した4,4'-bis(bromomethyl)azobenzene 1mg(2.7mmol)を加える。この溶液に2mg(11 mmol)のペプチド(GlyCys又はCysGly)を遮光下で加え、窒素雰囲気下で室温で15分間攪拌する。その後、50°Cで5 分間攪拌すると黄色透明溶液が得られる。溶液を乾固後、得られた固体を少量の純水に溶解し、HPLCを用いて純水とアセトニトリル溶液で精製する。アゾペプチドを含む分画を集め、凍結乾燥してアゾベンゼンにペプチドP1及びP2が結合した本発明のアゾペプチド複合体を得ることができる。
また、上記のようにして得られたアゾペプチド複合体のペプチドP1及びP2への金属イオンの結合は、例えば下記実施例の『GCAペプチドへの銅イオンの結合』に記載される方法に従って行うことができる。すなわち、上記で得られたアゾペプチド複合体を純水に溶かし、30 μMペプチド(20 mMリン酸カリウム緩衝溶液、pH 7.4)に対して、例えばペプチド:銅が1:2の割合になるように40 mM Cu(NO)3を加え、アゾペプチドに金属イオンを結合させ、アゾペプチド複合体に銅イオンが結合したアゾペプチド−銅複合体を得ることができる。銅の結合の有無(錯体形成の有無)は550-650 nmでの吸収で確認することができる。
以上のようにして得られる本発明のアゾペプチド複合体は、光照射による光異性化反応によってシス型−トランス型に可逆的に構造が変化するに伴い、活性のオンオフ(又は強弱)が調節される。また、本発明のアゾペプチド−銅複合体がシス型である場合には、優れたDNA切断能を有することから、DNAを切断するときにはシス型であることが好ましい。本発明の限定的解釈を望むものではないが、例えば本発明のアゾペプチド−銅複合体(アゾペプチド:銅イオン=1:2の場合)は、光照射によってアゾペプチド−銅複合体の2つの銅錯体の距離が変化する、または銅の配位構造が変化するに伴ってDNA切断能の活性のオンオフが制御されると考えられる。
また、本発明のアゾペプチド−金属複合体(好ましくはアゾペプチド−銅複合体)には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、修飾を加えることができ、例えば、細胞内に挿入するために側鎖にArg-tag(アルギニンタグ)を付加したり、ペプチドの側鎖にDNA認識能を有する化合物を結合させたり、C末端にDNA結合能を有するペプチド(例えば、ロイシンジッパー、へリックスターンへリックス、ジンク(Zn)フィンガー等のDNA結合モチーフ)を連結したりすることができる。さらに、本発明のアゾペプチド−金属複合体をリポソームに包接して用いることもできる。これらの修飾や包接は、従来公知の方法に従って行うことができる。このような修飾等を加えることによって、本発明のアゾペプチド−金属複合体が細胞内に入りやすくなり、生体内(細胞内)における本発明のアゾペプチド−金属複合体の活性のオンオフ(又は強弱)を調節することができる。
<光照射によるアゾペプチド複合体の活性制御方法>
上記アゾペプチド複合体は、光の照射によって可逆的にシス型−トランス型に構造を可逆的に変化させることができる。従って、本発明は、前記アゾペプチド複合体に光を照射することを含む、該アゾペプチド複合体の活性を制御する方法をも提供する。この方法によれば、ペプチドP1及びP2に基づく前記アゾペプチド複合体の活性のオンオフ又は強弱を制御することができる。また、前記アゾペプチド−金属複合体(特にアゾペプチド−銅複合体)は、DNA切断能を有することから、本発明の活性制御方法によれば光照射によってDNAの切断を制御することができる。以下、アゾペプチド−銅複合体を例に、本発明のアゾペプチド複合体の活性制御方法を説明する。
本発明の活性制御方法において、光照射の方法は、本発明のアゾペプチド−銅複合体の光異性化反応がおきる程度の光照射量及び波長を採用すればよい。照射する光の波長を調節することによって、本発明のアゾペプチド−銅複合体のシス型−トランス型を制御することができる。すなわち、本発明のアゾペプチド−銅複合体をシス型にする場合は、照射光の波長は、340〜380nm程度、好ましくは345〜360nm程度、より好ましくは350〜360nm程度、さらに好ましくは355nm程度であり、トランス型にする場合は、400〜460nm程度、好ましくは410〜440nm程度、より好ましくは425〜435nm、さらに好ましくは430nm程度である。光源としては、シス型−トランス型を制御することができれば特に限定されないが、パルスレーザー、連続発振レーザー等を使用することができる。また、光の照射時間は、レーザー強度に依存する。例えば、シス型にする場合、8 mJ, 10 Hzのパルスレーザーなら、通常約0〜10分、好ましくは0.001〜10分、好ましくは0.5〜3分、より好ましくは1.5分程度である。トランス型にする場合、8 mWの連続発振レーザーなら、通常約0〜30分、好ましくは1〜20分、より好ましくは10分程度である。
前記アゾペプチド−銅複合体は、例えばDNA切断能についてはシス型の方がトランス型に比べて優れた活性を有する。従って、照射する光の波長を変更することによってシス型−トランス型の構造変化を調節することにより、DNA切断能のオンオフ又は強弱を調節することができる。このような方法によれば、DNA切断を時間的に制御することができる。
DNA切断の確認は、従来公知の方法に従えばよく、例えば、プラスミドDNA(例えばpUC19)と本発明のアゾペプチド−銅複合体を混合し、アガロースゲル電気泳動におけるDNAの移動度を観察することにより切断を確認する方法が挙げられる。DNAが切断されていればニック(nick)形状のプラスミドDNA、さらに切断されれば直鎖形状のDNAがニック形状DNAより少し大きい移動度で観察され、切断されていなければスーパーコイル状DNAが一番大きい移動度で観察される。
DNA切断は細胞死を引き起こすことから、例えば体表部分の癌細胞(皮膚癌、乳癌、リンパ腫等)にリポソーム等に封入した本発明のアゾペプチド−銅複合体を取り込ませておき、上記条件で光照射を行い、癌細胞を選択的に死滅させることができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
アゾペプチド(GCA及びCGA)の合成
アゾペプチドの製造方法は、下記スキームに表される。
Figure 2009013139
上記スキームに示される化合物1(4,4’−ビス(ブロモメチル)アゾベンゼン)は、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンから製造される。具体的な製造方法は、以下の通りである。
参考文献:Y. Mori, T. Niwa, K. Toyoshi, Chem. Pharm. Bull., 29, 1439-1442(1981).
<4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)アゾベンゼンの製造>
4−ニトロベンジルアルコール(1.5 g, 10 mmol)をエタノール(100 mL)に溶解し、NaOH (9.6 g)を添加した。得られた溶液に、亜鉛紛(5.2 g, 80 mmol)を少しずつ添加し、1日間(12時間又は一晩)還流した。この反応液を濾過し、濾液をエチルアセテートで抽出することによって生成物を得た。この粗生成物を用いて、化合物1を得るために臭素化を行った。
<4,4’−ビス(ブロモメチル)アゾベンゼン(上記化合物1)の合成>
4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)アゾベンゼン2.4 g(10 mmol)、トリフェニルホスフィン5.3g(20 mmol)、及びテトラブロモカーボン6.6 g(20 mmol)を無水THF(テトラヒドロフラン)(50 mL)に溶解し、窒素雰囲気下で攪拌した。得られた溶液を蒸発乾固し、生成物をシリカカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:CHCl3=1:1)を用いて精製した。収率15 %。
<アゾペプチド(GCA及びCGA)の合成>
40 mlの緩衝溶液(10 mMリン酸カリウム、pH7.5)及び50 mlジメチルホルムアミド(DMF)の混合溶液を窒素雰囲気下で10分間攪拌した。前記混合溶液に、(2.7 μmol)の4,4’−ビス(ブロモメチルアゾベンゼン)(上記化合物1)1 mgを1 mlジメチルホルムアミドに溶解して得た溶液を添加した。前記溶液に2 mg(11μmol)のペプチド(GlyCys又はCysGly)を遮光下で添加し、得られた混合物を室温、窒素雰囲気下で15分間攪拌した。その後、この反応混合物を、50℃にて5分間ゆっくり攪拌し、透明な黄色溶液を得た。
得られた反応混合物を低圧下で蒸発させ、黄色固体を得た。この固体(粗生成物)を、最小量の水に溶解し、HPLCを用いて精製した。HPLCにおいて、5%アセトニトリルを含む純水(A溶液)及びアセトニトリル溶媒(B溶液)の二液で勾配をかけて(60分間で100%A溶液(0%B溶液)から40%A溶液(60%B溶液)への直線的な勾配)精製した。アゾペプチドGCA及びCGAを含む画分を採取し、凍結乾燥した。得られた化合物はMALDI-Massスペクトラム及びアゾ基の吸収によって確認した。MALDI-Massスペクトルの結果を図1−1及び1−2に示す。結果より、MALDI-Massスペクトルで観測されたピーク値は、アゾペプチドGCA(理論分子量:562.17)及びCGA(理論分子量:562.17)がそれぞれプロトン化した種の理論分子量とほぼ一致することが示された。また、HPLCクロマトグラムを図2−1及び2−2に示す。HPLCクロマトグラムに示される結果より、アゾペプチドGCA及びCGAは、それぞれ単一の画分として得られたことが示された。
試験例1.アゾ架橋Gly Cysペプチド(GCAペプチド:GC-azoBz-GC)
(1)上記のようにして得られたGCAペプチドは、光照射によって以下のような挙動を示す。すなわち、トランス体では分子内の2つのペプチド部分が遠く、シス体では近いことが示される。
Figure 2009013139
(2)光照射によるGCAペプチドのシス体−トランス体の変化を観察した。
8.6 μMのペプチド(20 mMリン酸カリウム緩衝液、pH 7.4)に355 nm (8 mJ, 90秒)と430 nm (10mW, 10 分)の光を交互に照射し、各光を照射後に吸収スペクトルを測定した。
結果を図3及び4に示す。図3の吸収スペクトルより、トランス型のアゾペプチドに355nm (8 mJ, 90秒)のレーザー光を照射すると、アゾペプチドはほぼ100%シス型になったと見積もられた。また、シス型のアゾペプチドに430 nm(10 mW, 10分)のレーザー光を照射するとアゾペプチドは70〜75%程度がトランス型になったになったと見積もられた。図4に示されるように、光照射によるペプチドの分解はおこらず、光照射によってGCAペプチドはトランス型−シス型で可逆的に構造が変化することが示された。
(3)GCAペプチドへの銅イオンの結合
30 μMのアゾペプチド溶液(20 mMリン酸カリウム緩衝溶液, pH7.4)に40 mM硝酸銅水溶液を加え、吸収スペクトル変化を観測した。アゾペプチドの濃度は、340 nmでのモル吸光係数3×104 M-1cm-1を用いて計算した。ペプチド溶液に高濃度の硝酸銅水溶液を滴下すると、アゾペプチド−銅錯体に由来する550-650 nmの吸収帯が生じ、錯体の形成が確認された。
また、アゾペプチドと硝酸銅混合後の溶液のESR(電子スピン共鳴)スペクトルを、液体窒素を用い、77K(液体窒素温度)にて測定した。ESRスペクトルより、ペプチド:銅=1:2の条件下では、シス型およびトランス型の両方で、2個の窒素原子と2個の酸素原子が銅に配位して、錯体が形成していることが確認された。ESR測定では、5%グリセロール(溶媒の水との体積比)の試料溶液を調製し、凍結して測定した。
(4)銅GCAペプチド複合体によるDNA切断
<DNA切断試験>
プラスミドDNA(pUC19)は、E-coli(大腸菌)に過剰発現させることによって得た後、QIAGEN miniprepキット(QIAGEN社製)を用いて精製した。DNA原液として、Tris緩衝溶液(10 mM、pH 8)を調製した。DNAの精製度はゲル電気泳動によって確認し、DNA溶液は4℃で保存した。
DNA切断試験において、最終濃度2〜10μgのDNA及び20〜100μMの濃度の銅GCAペプチド複合体を使用した。DNA切断試験は、スーパーコイル状のプラスミドDNAにアゾペプチド−銅複合体を添加し、スーパーコイル、ニック(損傷型)及び直鎖形態のプラスミドDNAの生成量を、アガロースゲル電気泳動において各形状のDNAを観察することによって行った。1 %アガロースゲルは、エチジウムブロマイド溶液で染色すると、異なる形態のDNAを明確に示した。
DNA溶液と適当量のGCAペプチド−銅複合体の混合溶液を37℃にして、DNA切断を反応を様々な反応時間で止めた。DNA切断には、等量の10×DNAローディングバッファーと1 mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)の混合溶液を用いた。DNA試料をアガロースゲルにロード(load)した後、電気泳動を行った。その後、ゲルをエチジウムブロマイド(染色,1 μg/1μl)溶液に移し、5分間染色した。DNAバンドは、Gel Document Instrument(Bio-rad社製)を用いて可視化した。
結果を図5に示す。図5より、355 nmのレーザ照射により、スーパーコイル型DNAが損傷型DNAへ切断される反応が速くなり、DNA切断の速さを光制御できたことが示された。
(5)アスコルビン酸存在下におけるGCAペプチド−銅複合体によるDNA切断試験
上記(4)と同様の方法に従い、20 mMリン酸緩衝溶液(pH 7.3)を用いて、遮光下50 μMアスコルビン酸を添加して、アスコルビン酸存在下におけるGCAペプチド−銅複合体によるDNA切断試験を行った。
結果を図7に示す。図7より、アスコルビン酸存在下の酸化的DNA切断条件下では、シス型及びトランス型のGCAペプチド−銅複合体は同程度の速さでDNAを切断する結果を示した。
また、アスコルビン酸存在下におけるアゾペプチド−銅複合体の分解を逆相HPLCを用いて確認したところ、アスコルビン酸存在下でアゾペプチド−銅複合体の大部分が分解されないことが示された。すなわち、酸化的DNA切断条件下において、アゾペプチド−銅複合体は活性酸素種(ROS)の攻撃によって大部分が分解されないことが示された。
(6) GCAペプチド−銅複合体(銅:ペプチド=1:1)によるDNA切断試験
上記(4)と同様の方法に従い、GCAペプチド−銅ペプチド複合体(銅:ペプチド=1:1)によるDNA切断試験を行った。
結果を図8に示す。図8より、ペプチド:銅のモル比が1:1の場合は、トランス型とシス型GCAペプチド−銅複合体において、DNA切断の速さに明確な差は観測されなかった。
試験例2.アゾ架橋Cys Glyペプチド(CGAペプチド:CG-azoBz-CG)
(1)上記のようにして得られたCGAペプチドは、光照射によって以下のような挙動を示す。すなわち、トランス体では2つのペプチド部分が遠く、シス体では近いことが示される。
Figure 2009013139
上記GCAペプチドへの銅イオンの結合と同様の方法に従ってCGAペプチドー銅複合体を得た。
(2) CGAペプチド−銅複合体によるDNA切断
上記DNA切断試験の方法に従ってCGAペプチド−銅複合体によるDNA切断を観察した。結果を図9に示す。図9より、シス体で355 nmのレーザ照射により、スーパーコイル型DNAが損傷型DNAへ切断される反応が速くなり、DNA切断の速さを光制御できたことが示された。
精製アゾペプチドGCAのMALDI-TOFマススペクトルを示す。 精製アゾペプチドCGAのMALDI-TOFマススペクトルを示す。 精製アゾペプチドGCAのHPLCクロマトグラム(340 nm)を示す。 精製アゾペプチドCGAのHPLCクロマトグラム(340 nm)を示す。 光照射による精製アゾペプチドGCAの吸収スペクトル変化を示す。 光照射による精製アゾペプチドGCAの吸光度変化を示す。 GCAペプチド−銅複合体を用いたDNA切断試験の結果を示す。 アスコルビン酸存在下でのGCAペプチド−銅複合体によるDNA切断試験の結果を示す。図中、GCAペプチド−銅複合体(ペプチド:銅=1:2)による。Aはトランス型、Bはシス型(355nmにおける光異性化)によるDNA切断結果を表す。 GCAペプチド−銅複合体(銅:ペプチド=1:1)のDNA切断試験の結果を示す。 CGAペプチド−銅複合体を用いたDNA切断試験の結果を示す。
符号の説明
図中、NはニックDNA(損傷型DNA)、Sはスーパーコイル型DNA、Lは直鎖型DNAを表す。

Claims (13)

  1. 下記一般式(1)に示されるアゾペプチド複合体。
    Figure 2009013139
    (式中、
    R1〜R5は、同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP1を有する基を表し、且つ
    R1〜R5の少なくとも1つはペプチドP1を有する基を表す;
    R6〜R10は、同一又は異なって水素原子、アルキル基(C1〜C20)、アルコキシ基(C1〜C20)、ハロゲン原子、酸性基、塩基性基又はペプチドP2を有する基を表し、且つ
    R6〜R10の少なくとも1つはペプチドP2を有する基を表す)
  2. 前記ペプチドP1を有する基とペプチドP2を有する基が、同一又は異なって、一般式(1)に示されるアゾ基のシス−トランスの立体構造の変化に伴って、ペプチドP1とペプチドP2の相互作用の有無又は強弱を変化させ得るアミノ酸配列を有する請求項1に記載のアゾペプド複合体。
  3. 前記ペプチドP1及びP2が、天然アミノ酸及び非天然アミノ酸からなる群から選択される少なくとも1種のアミノ酸を含むペプチドである請求項1又は2のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  4. 前記ペプチドP1及びP2のC末端がカルボキシル基であり、前記ペプチドP1及びP2のN末端がアミノ基である請求項1〜3のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  5. 前記ペプチドP1又はP2の少なくともいずれか一方が、金属イオンと錯体を形成しているペプチドである請求項1〜4のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  6. 前記式(1)中、R3又はR8が、それぞれ金属イオンと錯体を形成することが可能なペプチドP1又はP2を有する基であり、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R9及びR10が水素原子である請求項1〜5のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  7. 金属イオンが、遷移金属から選択される少なくともいずれか1種である請求項5又は6に記載のアゾペプチド複合体。
  8. 金属イオンが銅イオン、ニッケルイオン及び亜鉛イオンからなる群より選択される少なくともいずれか1種である請求項7に記載のアゾペプチド複合体。
  9. 前記ペプチドP1及びP2が、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン、システイン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸及びヒスチジンからなる群より選択される少なくとも1種を含むペプチドである請求項1〜8のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  10. 前記ペプチドP1がグリシン及びシステインからなるジペプチドであって、前記式(1)中のR3がペプチドP1を有する基であり;
    前記ペプチドP2がグリシン及びシステインからなるジペプチドであって、前記式(1)中のR8がペプチドP2を有する基である、
    請求項1〜9のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  11. 前記ペプチドP1及びP2がDNA切断能を有するペプチドである請求項1〜10のいずれかに記載のアゾペプチド複合体。
  12. 請求項1〜11のいずれかに記載のアゾペプチド複合体に光を照射する工程を含む、該アゾペプチド複合体の活性を制御する方法。
  13. DNA切断を制御する方法である、請求項12に記載の方法。
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