JP2009011245A - ステロイド感受性の判定方法及び全身性炎症反応症候群の発症予測方法 - Google Patents

ステロイド感受性の判定方法及び全身性炎症反応症候群の発症予測方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 時々刻々と変化するような病態に対して適切なステロイド治療を行なうことができるように、ステロイドの投与効果を短時間で知ることができるステロイド感受性の判定方法、SIRSの発症予測方法、及びこれらの結果を出力できる装置を提供する。
【解決手段】 ステロイド投与後の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量を測定する工程;及び測定結果に基づいて前記患者のステロイド感受性を判定する工程を含む。蛍光相関分光法等を利用して、分離精製操作を経ずに生体試料中の活性型転写因子量を測定する。
【選択図】 図7

Description

本発明は、心筋梗塞や心不全患者の動脈弁置換手術、癌患者の腫瘍切除手術などの侵襲性の大きい外科手術に伴って起る全身性炎症性症候群(SIRS)等の炎症反応を抑制するために投与されたステロイド投与の効果を迅速に判定するステロイド感受性の判定方法及び判定装置、並びにSIRSの発症予測方法及び予測装置に関する。
従来より、全身性又は局所性の炎症を起こしている患者に対しては、一般に抗炎症剤であるステロイドが投与されているが、その臨床的効果は十分ではないといった報告もある。また、抗炎症治療としてのステロイド投与に関しては、病態に対するステロイド投与の明確なプロトコルが確立されていないことから、過剰投与となって感染症を引き起すことになったり、連続投与が必要な場合に投与不十分なために、炎症抑制効果が不十分になったりする。
このため、臨床現場においては、ステロイド投与による効果を確認しながら、ステロイド投与スケジュール、適正な投与量を決めていきたいといった要望があり、ステロイド投与による効果を判定、測定する方法が望まれている。
ステロイド投与の効果を知る方法としては、炎症に関連するサイトカインの量を測定する方法がある。しかし、ステロイド投与により実際に炎症性サイトカインの産生が抑制され、あるいはそれらが代謝、分解されてサイトカイン量が減少するまでの応答には時間がかかる。しかもサイトカイン量の主な測定方法であるELISAでは、患者の試料採取から測定結果が得られるまでにも時間がかかる。このような理由から、ステロイド投与の効果が現われはじめ、炎症性サイトカインの産生抑制、代謝、分解がはじまっているにもかかわらず、患者から採取された試料においては、炎症性サイトカインがまだ多量に組織液中に存在しているといったような測定結果しか得られない場合がある。
このため、サイトカイン量に基づいて炎症反応を判断する場合、ステロイド投与効果が現われはじめているにもかかわらず、ステロイド投与が不十分であるといった判断をしてしまうおそれがある。また、人工心肺の使用や人工弁置換を伴うような侵襲性の高い外科手術中の患者の状態や、炎症状態から抗炎症状態へと症状が時々刻々と変わるSIRSのような病態に対しては、測定試料の採取時と、患者に症状の進行状態とが合致しているとは限らない。このため、炎症性サイトカインの含有量の測定結果から判定されたステロイド投与効果に基づいて、次の治療方法を選択することは必ずしも適切でない。
炎症性サイトカイン量が変化する前に、炎症性サイトカインの発現を予測することで、SIRSのような時々刻々と病態が変化する疾患に対して、炎症症状が現われる前に発症を予測する診断支援方法が、WO2006−62127(特許文献1)に提案されている。ここで提案している方法は、炎症性サイトカインの産生に関与する転写因子の活性を測定することで、炎症性サイトカインが発現するか否かを予測するというものである。そして、実施例においては、刺激を付与した細胞の核抽出物から、炎症性サイトカインの発現に関与する活性型転写因子をゲルシフトアッセイで検出している。
しかし、特許文献1には、ステロイドの感受性の判定やステロイドの投与効果の判定について、全く記載がない。
WO2006−62127
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、時々刻々と変化するような病態に対して、適切なステロイド治療を行なうことができるように、炎症性サイトカインの活性型転写因子量を迅速に測定することで、ステロイドの投与効果を、短時間で知ることができるステロイド感受性の判定方法、SIRSの発症予測方法、及びこれらの結果を出力できる装置を提供することにある。
本発明者らは、患者から採取した生体試料から、サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量を、迅速に且つ高精度に定量できる方法を種々検討し、定量方法を確立することで、本発明を完成した。
すなわち、本発明のステロイド感受性の判定方法は、ステロイド投与後の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量を測定する工程;及び測定結果に基づいて前記患者のステロイド感受性を判定する工程を含む。
前記生体試料が血球の核抽出物であることが好ましく、前記活性型転写因子は、NF−κBであることが好ましい。
前記測定工程は、蛍光相関分光法(FCS)、蛍光偏光解消法(FP)、及び蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)よりなる群から選ばれる1種の測定方法を用いて、前記活性型転写因子量を測定することにより実行されることが好ましい。
前記活性型転写因子量は、下記反応系Aにおける蛍光物質の測定結果A及び下記反応系Bにおける蛍光物質の測定結果Bに基づいて求められることが好ましい。
反応系A:前記生体試料、前記活性型転写因子が特異的に結合する塩基配列(Wseq)を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、及び前記配列(Wseq)を含む非標識核酸プローブ(Pw)を含み、PwはPfwよりも多く含む系、
反応系B:生体試料、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、及び前記活性型転写因子が特異的に結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を含み、Pnは試薬A中のPwと同等量を含む系。
また、前記測定工程は、前記反応系A及び反応系Bの蛍光物質の並進拡散時間を蛍光相関分光法により測定し、前記反応系A測定された並進拡散時間Taと前記反応系Bで測定された並進拡散時間Tbとの差(|Ta−Tb|)に基づいて、前記活性型転写因子量を算出することにより実行されることが好ましい。
また、本発明のステロイド感受性の判定方法は、ステロイド投与前の患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量を測定する工程を更に含み、前記判定工程は、ステロイド投与前の活性型転写因子量とステロイド投与後の活性型転写因子量とを比較した結果に基づいて行なわれてもよい。あるいは、ステロイド投与後の患者から経時的に採取された生体試料に含まれる活性型転写因子量を測定する第2測定工程を、更に含み、前記判定工程は、それぞれの測定結果を比較した結果に基づいて行なわれてもよい。
本発明の全身性炎症反応症候群の発症予測方法は、刺激付与前の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量(M1)を測定する工程;刺激付与30〜120分後の前記患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量(M2)を測定する工程;及び刺激付与前の活性型転写因子量(M1)と刺激付与後の活性型転写因子量(M2)とを比較した結果に基づいて患者の全身性炎症反応症候群の発症を予測する工程を含む。
本発明のステロイド感受性の判定装置は、ステロイド投与後の患者から採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量に関する情報を取得する取得手段;前記取得手段により取得された情報に基づいて、患者のステロイド感受性を判定する判定手段;及び前記判定手段による判定結果を出力する出力手段;を備えている。
前記取得手段は、ステロイド投与後の患者から経時的に採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量に関する経時的データを取得し、前記判定手段は、前記経時的データの変化に基づいて、患者のステロイド感受性を判定することが好ましい。
また、前記取得手段は、ステロイド投与前の患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量に関する情報(以下「投与前活性型転写因子量情報」という)を、さらに取得し、前記判定手段は、前記取得手段により取得された前記投与前活性型転写因子量情報と、前記ステロイド投与後の患者から取得された活性型転写因子量情報とに基づいて、ステロイド感受性を判定することが好ましい。
本発明の全身性炎症反応症候群の発症予測装置は、刺激付与される患者の刺激付与前及び刺激付与後に採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子に関する情報を取得する取得手段;前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記患者の全身性炎症反応症候群の発症を予測する予測手段;及び前記予測手段による予測結果を出力する出力手段;を備えている。
本発明のステロイド感受性の判定方法は、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量に基づいて判定するので、炎症症状に変化が現われる前に、患者のステロイド感受性を知ることができる。
また、本発明の全身性炎症反応症候群の発症予測方法は、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子に着目し、刺激付与される患者の刺激付与前後での量変化に基づいて行なうので、全身性炎症反応症候群の発症を症状が現われる前に予測することが可能であり、これによりSIRSの重症化を防止することができる。
〔活性型転写因子量の測定〕
はじめに、本実施形態の発明のステロイド感受性の判定方法、全身性炎症反応症候群発症の予測方法で採用する、活性型転写因子量の測定方法について説明する。
活性型転写因子量の測定方法は、蛍光相関分光法(Fluorescence correlation spectroscopy menthod:FCS)、蛍光偏光解消法(Fluorescence polarization method:FP)、及び蛍光共鳴エネルギー移動法(Fluorescence resonance energy transfer method:FRET)よりなる群から選ばれる1種であることが好ましい。
いずれの方法においても、活性型転写因子が特異的に結合できる蛍光標識核酸プローブ(Pfw)を使用し、溶液中で前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と活性型転写因子との複合体を形成させ、形成された複合体(Pfw−転写因子複合体)と未反応の蛍光標識核酸プローブとを区別できる物理量を測定する。この物理量は、後述するように、FCSの場合は並進拡散時間、FPの場合は偏光度、FRETの場合は蛍光強度などの測定値であり、それぞれの測定値が活性型転写因子の量を反映する情報である。
このような測定方法によれば、生体試料のように、2種以上のタンパク、その他の夾雑物が混合して含まれている混合系試料から、目的の活性型転写因子を分離精製する操作を行なわなくても、Pfw−活性型転写因子複合体を検出測定することで、活性型転写因子量を知ることができる。
分離精製操作を要さず、生体試料から直接、目的の活性型転写因子量を測定することができるので、短時間で検出結果を得ることができる。また、溶液中でプローブとの結合を生成させ、溶液系で測定する方法であることから、混合系試料中の目的の転写因子に特異的に結合するプローブとの複合体を検出するアッセイ系のうち、固相にプローブを固定化して複合体を形成させる方法、例えば、表面プラズモン共鳴法や水晶発振子マイクロバランス法、ELISA、イムノアッセイと比べて、固相の非特異吸着による誤差が少なくて済む。
蛍光相関分光法(FCS)とは、測定用試料の溶液が共焦点領域を通過するときに発する蛍光を測定する方法である。溶液中の分子はブラウン運動により自由に移動することができるので、小さい分子は動きが速く、共焦点領域を速く通過するため蛍光の信号強度の変化が速くなるが、大きな分子は動きが遅いため蛍光信号強度の変化がおそくなる。この蛍光の信号強度の揺らぎの速さから分子の運動速度(並進拡散時間)を自己相関法により求める方法であり、蛍光標識DNAプローブとの複合体形成により共焦点領域を通過するのにかかる時間(並進拡散時間)が、蛍光標識DNAプローブ単体の並進拡散時間よりも長くなることから、並進拡散時間により、活性型転写因子との複合体の量を知ることができる。
蛍光偏光解消法(FP)とは、溶液中の蛍光分子が平面偏光により励起されると、蛍光分子中のフルオロフォアが励起状態で且つ定常状態を維持しているとき、同一平面に偏光蛍光を発し、フルオロフォアが励起状態中に、ブラウン運動により回転すると励起表面と異なる平面へ蛍光を発して蛍光偏光が解消されることを利用したもので、蛍光標識DNAプローブ単体のように分子容積の小さな分子では溶液中のブラウン運動により激しく回転するため低い偏光度を示し、活性型転写因子量と複合体を形成すると、溶液中におけるブラウン運動は減少し、偏光度は上昇する。よって、偏光度の変化から、複合体形成の割合を知ることができる。
蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)とは、ある波長で励起された蛍光分子のそばに別の分子があって発光スペクトルと吸収スペクトルに重なりがあると、蛍光分子の励起エネルギーが別の蛍光分子へ移動する蛍光共鳴エネルギー移動現象が起るので、複合体を形成することで、蛍光標識DNAプローブ単体の光強度が減衰し、新たな蛍光強度が大きくなる。従って、複合体、プローブ単体それぞれの蛍光強度を測定することで、複合体量を知ることができる。
以上のように、FCSでは蛍光標識された物質の並進拡散時間を測定し、FPでは蛍光標識された物質の偏光度を測定し、FRETでは蛍光強度を測定することになるので、これらの物理量から活性型転写因子量を算出する。具体的には、タンパクとして目的の活性型転写因子(好ましくは組換え転写因子)のみを含む純系試料の溶液を調製し、これについて活性型転写因子量と、測定される物理量との関係を示す検量線を作成しておき、生体試料で測定される物理量から、検量線に基づいて活性型転写因子量を算出すればよい。
蛍光標識核酸プローブ(Pfw)は、後述する蛍光物質により標識され、目的とする活性型転写因子が結合する塩基配列である、コンセンサス配列(Wseq)を含むものであれば、特に制限されるものではない。また、核酸を構成する塩基は、DNA構成塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、チミンの他、RNA構成塩基であるウラシル、さらにPNAなど、又はこれらの修飾塩基を使用することができる。また、Pfwは、ステムループ構造を形成しているものが好ましく用いられる。ステムループ構造を有するプローブは、コンセンサス配列(Wseq)を含んだセンス鎖又はアンチセンス鎖を鋳型として相補鎖を作製し、これらをハイブリダイズさせた後、アデニン又はチミンによって架橋することでステムループ構造を形成させることにより作製することができる。また、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の総塩基数は特に制限されるものではないが、46〜74個程度の核酸プローブが好ましい。
標識に使用される蛍光物質としては、核酸プローブを標識できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、TAMRA、Rhodamine Green、Alexa546、TMR、Alexa488、Alexa647などが挙げられ、特にTAMRA、Rhodamine Greenが好ましく用いられる。これらの蛍光物質は既に公知であり、一般に入手可能である。
生体試料に含まれる活性型転写因子量の測定は、溶液中の分子のブラウン運動が関係していることから、溶液の粘度や他のタンパク等の夾雑物が共存する場合、測定される物理量はこれらの影響を受けることになる。このため、夾雑物の影響がない系で作成した検量線から算出される量と、実際の生体試料に含まれる量とは違った値になってしまう場合が少なくない。また、試料によって夾雑物の含有量や溶液の粘度が異なることから、測定対象の含有量が等しい場合であっても、検量線から算出される量は異なってしまうといった場合がある。この点、反応系A及び反応系Bそれぞれの測定結果を用いて活性型転写因子量を求めることで、夾雑物の共存による影響を相殺できるので、検量線から算出される含有量の正確度が高くなる。
反応系Aとは、目的の活性型転写因子と結合する配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)を含有し、且つPfwと同じ塩基配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)をPfwの含有量より多く含有する試薬Aと、生体試料との混合系である。ここで、試薬A中の蛍光標識プローブ(Pfw)の含有量は、測定試料中に含まれる標的の転写因子を捕捉するのに充分な量である。試薬A中の非標識核酸プローブ(Pw)の含有量は、Pfwの含有量よりも多い量で、具体的には10倍以上の量、好ましくは50倍以上の量が含有されていることが好ましい。
反応系Bとは、試薬Aにおける非標識核酸プローブ(Pw)に代えて、目的とする活性化転写因子が結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を含有させた試薬Bと、生体試料との混合系である。すなわち、試薬Bには、コンセンサス配列(Wseq)を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、及び目的の転写因子が結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を、非標識核酸プローブPwと同等量含有する。
本発明に使用する非標識核酸プローブ(Pw)は、蛍光物質により標識されておらず、測定対象となる活性型転写因子が結合するコンセンサス配列(Wseq)を含むものであれば、特に制限されるものではない。非標識核酸プローブ(Pw)の核酸配列全体が蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の核酸配列全体と等しいことが望ましいが、目的とするDNA結合タンパクの配列部分以外の配列で、当該結合配列に影響与えない部分であれば、数個程度異なっていてもよい。また、非標識核酸プローブ(Pw)は、上述の蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と同様に、コンセンサス配列(Wseq)を含み、且つステムループ構造を形成していることが好ましい。
活性型転写因子が結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)は、蛍光物質により標識されておらず、プローブ全体において上記コンセンサス配列(Wseq)を含まないものであれば特に限定されないが、当該プローブに含まれる総塩基数が、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び非標識核酸プローブ(Pw)と同じ塩基数であることが好ましい。また、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び非標識核酸プローブ(Pw)と同様に、ステムループ構造を形成していることが好ましい。
尚、試薬A、試薬Bには、上記核酸プローブの他、核酸プローブに対する非特異結合を抑制するために、poly(dIdC)が含有されていることが好ましい。また、試薬Aの溶媒としては、核酸プローブの2本鎖が安定して存在でき、且つ標的とする活性型転写因子が安定して存在することにより、核酸プローブと転写因子が結合できるpH、塩濃度を保持できるものが用いられる。具体的には、Trisバッファー、Hepesバッファー、Phosphateバッファーなどに、塩化ナトリウム、2価金属イオン捕捉剤としてEDTA、DTTなどを適宜添加した溶液を用いることができ、転写因子の種類に応じて、適宜選択される。
FCSの測定方法で、上記のような反応系A及び反応系Bを利用した場合、以下のようにして活性型転写因子量を求める。
すなわち、反応系A及び反応系Bそれぞれに、共焦点レーザ光を照射し、蛍光相関分光法により、反応系Aにおける並進拡散時間(Ta)を、反応系Bにおける並進拡散時間(Tb)を求めて、両者の並進拡散時間の差(|Ta−Tb|)を算出する。予め作成された転写因子量と並進拡散時間との関係を示す検量線に基づいて、前記並進拡散時間の差(|Ta−Tb|)から、試料中の活性型転写因子量を算出する。
反応系Aでは、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)に比べて、非標識核酸プローブ(Pw)が過剰に含まれていることから、活性型転写因子は、優先的にPwと結合することになる。よって、反応系A中の蛍光標識物質は、Pfwと考えられるから、反応系Aの並進拡散時間(Ta)はPfwの並進拡散時間となる。
一方、反応系Bでは、過剰に含まれている非標識核酸プローブ(Pn)は、標的の転写因子とは実質的に結合しないので、試料中の活性型転写因子は蛍光標識核酸ブローブ(Pfw)に結合する。よって、反応系Bの並進拡散時間(Tb)は、反応系Bに含まれる蛍光標識物質、すなわちPfwと活性型転写因子の複合体(Pfw−転写因子複合体)、及び未反応のPfwの並進拡散時間となる。
従って、反応系Bの並進拡散時間(Tb)と反応系Aの並進拡散時間(Ta)の差は、Pfw−転写因子複合体の有無に基づく拡散時間の差に相当すると考えられる。このような反応系では、複合体のブラウン運動に対する他のタンパクの影響は、反応系A、Bともに同じである。従って、他のタンパクの影響を相殺できるので、純系試料を用いて作製した検量線から算出される含有量の正確度が高くなる。
〔ステロイド感受性の判定方法〕
本発明のステロイド感受性の診断方法は、ステロイド投与後の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量を測定し、測定結果に基づいて、前記患者のステロイド感受性を判定する方法である。
生体試料としては、患者から採取された細胞を含む液体試料で、患者の血液、尿、髄液、唾液、痰などが挙げられるが、炎症反応、ステロイドの応答が現われやすく、採取容易という点から、血液、好ましくは、血球の核抽出物が用いられる。これは、炎症性サイトカインの発現量に関与する活性型転写因子が、核抽出物に多く存在するためである。
患者からの測定試料の採取は、ステロイド投与後、10分〜5時間後に行なうことが好ましく、転写因子の種類、患者の状態、ステロイド薬の代謝速度等によって適宜選択される。例えば、NF−κBであれば、30分〜4時間後に行なうことが好ましい。
ステロイド投与後の測定試料の採取は、1回に限らず、経時的に行なうことが好ましい。これにより、ステロイド投与による活性型転写因子量の経時的変化を知ることができる。活性型転写因子量の経時的変化を知ることで、患者の感受性の個人差、ステロイド薬の種類の違いによる代謝、分解速度の違い等の種々の要因を考慮して試料採取時間を決定しなくても、精度の高いステロイド感受性の判定結果を得ることが可能となる。
また、ステロイド投与前にも測定試料を採取することが好ましい。活性型転写因子量は個人差があり、患者の病態にも依存するので、ステロイド投与前後の変化を見ることで、信頼性の高い判定結果を得ることができる。
患者から採取した試料から核内抽出物を含む試料の調製方法は特に限定しないが、例えば、細胞を低張液で処理して膨張させ、ホモジナイザー又はシリンジを用いて、細胞膜を破壊し、遠心により核ペレットを単離し、これを高張液又は界面活性剤で処理することにより、核蛋白質を抽出し、遠心の後、上清を回収するといった方法が挙げられる。この上清には、核から抽出されたタンパク質が含有されている。核抽出物の調製は、公知の方法を用いて行なえばよく、また市販のキットを試用することもできる。例えば、市販のキットとしては、Novagen社のタンパク抽出キットであるNucBuster(登録商標)等が挙げられる。患者からの試料採取から測定に供する試料調製までの時間は、出来る限り短くすることがステロイド感受性の効果を迅速に判定する観点から好ましい。
炎症性サイトカインとしては、炎症症状を引き起すサイトカインであり、ステロイド投与によりその発現が変化するものであれば、特に制限されるものではないが、Tumor Necorosis因子(TNFα)、インターロイキン1、インターロイキン6、インターロイキン8、インターロイキン18が挙げられる。
測定対象とする活性型転写因子としては、これらの炎症性サイトカインの発現を調節する転写因子であれば、特に制限されるものではない。例えば、AP−1、NF−κB、EGR1、CREBファミリー、SP1、AP−2、C/EBPファミリーなどが挙げられ、これらのうち、NF−κBが好ましい。
以上のようにして調製した生体試料を、上述の定量方法に従って、該当する物理量を測定し、予め作成された検量線に基づいて、測定された物理量から活性型転写因子量を算出する。いずれも試料調製から、プローブとの反応時間、測定にかかる時間の合計、すなわち試料調製から定量結果を得るまでの時間は30分以内とすることが可能である。
定量結果、すなわち患者から採取された試料に含まれる活性型転写因子量により、ステロイド感受性を判定する。判定は、具体的には、下記により行なうことが好ましい。
(1)測定結果と、ステロイド投与前の患者から採取された試料に含まれていた活性型転写因子量と比較する。測定結果が、ステロイド投与前の活性型因子量よりも減少していれば、患者はステロイド感受性が高く、逆に増加又はほとんど変化しない場合には、患者のステロイド感受性は低いと判定することができる。
(2)ステロイド投与後、経時的に患者から試料を採取し、当該試料における活性型転写因子量の測定結果を得る。測定結果が経時的に低下していれば、患者はステロイド感受性が高いと判定することができ、経時的に増加又は変化しない場合には、ステロイド感受性が低いと判定することができる。
得られた判定結果から、臨床現場の医師は、当該患者のステロイド投与効果を判定することができる。例えば、代謝速度なども含めたステロイド投与効果、患者特有のステロイド感受性を判定することができ、当該判定結果に基づいて、その後のステロイド投与量、投与タイミングなどを含めた投与スケジュールを含めたステロイド治療スケジュールを決めることができる。さらに、活性型転写因子量の経時的変化に基づいて、例えば、ステロイド投与により炎症性サイトカイン発現は抑制される方向にあるか、その抑制が不十分であるか、単に効き方が遅いだけで、数時間後には炎症はおさまるかといったことも予測できる。
〔全身性炎症反応症候群(SIRS)の発症予測方法〕
本実施形態のSIRSの発症予測方法は、刺激付与前の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量(M1)を測定する工程;
刺激付与から30〜120分後の前記患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量(M2)を測定する工程;
刺激付与前の活性型転写因子量(M1)と刺激付与後の活性型転写因子量(M2)とを比較した結果に基づいて、患者の全身性炎症反応症候群の発症を予測する工程
を含む。
ここでいう刺激とは、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現に影響を及ぼす刺激であれば、特に制限されるものではないが、例えば、ステロイド等の薬剤投与、心筋梗塞の弁置換や腫瘍部の切除等の侵襲性の大きい外科的手術、手術における切開、切除、人工心肺の使用などの手術操作、さらにはけが、火傷、感染などが挙げられる。
患者からの生体試料の採取は、上記のような刺激付与前と刺激付与後である。刺激付与前の試料採取は、患者の平常時であってもよいし、刺激付与直前、例えば、手術前であってもよい。刺激付与後の試料採取は、少なくとも1回は、刺激付与から10分〜5時間後に行なうことが好ましく、転写因子の種類、患者の状態等によって適宜選択される。特に刺激付与から30〜120分後に、試料採取を行なうことが好ましい。これは、刺激付与から30〜120分後に炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現に関与する転写因子が核内に移行して、活性型転写因子として、生体試料の核抽出物に含まれるようになっていると考えられるからである。
測定に供する生体試料は、上記ステロイド投与効果の判定方法と同様、血球の核抽出物であることが好ましい。また、測定対象となる転写因子は、炎症性サイトカインの他、抗炎症性サイトカインの発現に関与する転写因子である。いずれも炎症反応の亢進、減退により発現量が変化するサイトカインだからである。炎症性サイトカインの転写因子としては、上記ステロイド投与効果の判定方法で測定対象とした転写因子が挙げられる。
抗炎症性サイトカインとしては、インターロイキン10、インターロイキン4、インターロイキン2、インターロイキン1レセプターアンタゴニストなどが挙げられ、抗炎症性サイトカインの発現に関与する転写因子としては、STATファミリー、AP1、NFAT、Oct−1、SP1などが挙げられる。
刺激付与前に採取した試料に含まれる活性型転写因子量(M1)と刺激付与後に採取した試料に含まれる活性型転写因子量(M2)とを比較する。比較結果により炎症反応が全身性炎症性反応へと移行し重症化するかを予測できる。
例えば、測定対象が炎症性サイトカインの発現に関与する転写因子の場合には、M1よりもM2が大きくなっていると、活性型転写因子量が増大していることを意味し、炎症性サイトカインの発現量が増大してくると予測される。ひいては炎症反応が発症すると予測される。一方、M2がM1とあまり変わらない場合や、逆に減少している場合には、活性型転写因子量が増大していないことを意味する。このことは、炎症性サイトカイン量がそれほど変化しないと予測できるので、ひいては、重症な炎症反応は起らないであろうと予測される。
ここで、炎症反応とは、侵襲に対する生体の防御反応であり、炎症反応が強すぎると全身性の炎症反応へと移行する。特に白血球数(12000/μl以上又は4000/μl以下あるいは未熟顆粒球10%以上)、発熱(38℃以上又は36℃以下)、頻脈(20/分以上又はPaCO、32Torr以下)、心拍数(90/分以上)の4項目中、2項目以上が該当する場合、SIRSと診断される。
〔ステロイド感受性の判定装置〕
本実施形態のステロイド感受性の判定装置は、ステロイド投与後の患者から採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカインの活性型転写因子の量に関する情報を取得する取得手段;前記取得手段により取得された情報に基づいて、患者のステロイド感受性を判定する判定手段;及び前記判定手段による判定結果を出力する出力手段を備えている。
本発明の判定装置の一実施形態について、図1のハードウェア構成例に基づいて説明する。
本実施形態に係る判定装置100は、本体110と、ディスプレイ120と、入力デバイス130とから主として構成されたコンピュータ100aによって構成されている。本体110は、CPU110aと、ROM110bと、RAM110cと、ハードディスク110dと、読出装置110eと、入出力インタフェース110fと、通信インタフェース110gと、画像出力インタフェース110hとから主として構成されており、CPU110a、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110d、読出装置110e、入出力インタフェース110f、および画像出力インタフェース110hは、バス110iによってデータ通信可能に接続されている。
図1に示すステロイド感受性の判定装置100の構成において、入出力インタフェース110fが情報取得手段に該当し、ディスプレイ120が判定結果を出力する出力手段に該当する。また、判定手段はCPU110aが該当し、ROM110b、RAM110c、ハードディスク110dは記憶手段である。
入出力インタフェース110fは、例えばUSB,IEEE1394,RS-232C等のシリアルインタフェース、SCSI,IDE,IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース110fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス130が接続されており、ユーザが当該入力デバイス130を使用することにより、コンピュータ100aにデータを入力することが可能である。
入力デバイス130を介して、FCS測定装置などで測定された物理量(測定データ)をユーザーが入力してもよいし、活性型転写因子を測定する測定装置、例えば、FCS測定装置の出力部と入出力インタフェース130とを接続して、測定により得られた並進拡散時間に該当するデジタル信号を、活性型転写因子の量に関する情報として直接入力されるようにしてもよい。
入力される測定データは、ステロイド投与後の患者から採取された試料における活性型転写因子の量に関する情報の他、ステロイド投与前の患者から採取された試料における活性型転写因子の量に関する情報、さらには経時的に採取した試料における活性型転写因子の量に関する情報を含んでいてもよい。
判定手段であるCPU110aは、記憶手段としてのハードディスク110dやROM110bに記憶されているコンピュータプログラムをRAM110cにロードし、実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム140aを当該CPU110aが実行することにより、コンピュータ100aが判定システム100として機能する。具体的には、情報取得手段から入力された測定データに基づいて、予め記憶された検量線データに基づき、試料に含まれる活性型転写因子量を算出する。算出された活性型転写因子量に基づいて、ステロイド感受性を判定する。具体的には、ステロイド投与前の活性型転写因子量との比較結果、記憶手段に記憶されている健常人データ(閾値)との比較結果、経時的に取得された測定データから算出される活性型転写因子量の変化などに基づいて、判定結果を出力する。
出力される判定結果は、具体的には、数時間前にステロイドを投与した患者の活性型転写因子量が健常人の平均レベルと比べて多いか少ないか、ステロイド投与後に経時的に取得した活性型転写因子量であれば、活性型転写因子量が増加傾向にあるか、減少傾向にあるかといった結果が出力される。ステロイド投与前の活性型転写因子量が測定された場合には、投与前の活性型転写因子量と投与後の活性型転写因子量とを比較して減少しているかどうかの判定結果が出力される。
記憶手段には、測定データ(測定された物理量)に基づいて、活性型転写因子を算出するのに必要なデータ、さらには、判定手法に応じて、ステロイド投与効果を判定するための健常人データなどが記憶されていてもよい。さらに、今後必要な投与量、比較結果が閾値と同程度以下の場合にはステロイド投与中止といったメッセージ出力などの情報を記憶させてもよく、これらの情報は、ハードディスク110dに記憶される。
ROM110bは、CPU110aにより実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータ等が記録されている。
RAM110cは、SRAMまたはDRAM等によって構成されている。RAM110cは、ハードディスク110dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU110aの作業領域として利用される。入出力インタフェース110fから入力された、測定される物理量等の情報を、一時的に記憶してもよい。
ハードディスク110dには、測定データから活性型転写因子量を計算するためのプログラム、感受性判定のためのプログラム、閾値と比較して判定結果を出力するためのプログラムの他、オペレーティングシステム(例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステム)およびアプリケーションプログラム等、CPU110aに実行させるための種々のコンピュータプログラムがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム140aも、このハードディスク110dにインストールされている。
読出装置110eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体140に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体140には、コンピュータを本実施形態に係る判定装置として機能させるためのアプリケーションプログラム140aが格納されており、コンピュータ100aが当該可搬型記録媒体140から本発明に係るアプリケーションプログラム140aを読み出し、当該アプリケーションプログラム140aをハードディスク110dにインストールすることが可能である。
なお、前記アプリケーションプログラム140aは、可搬型記録媒体140によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ100aと通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム140aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ100aがアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク110dにインストールすることも可能である。
画像出力インタフェース110hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ120に接続されており、CPU110aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ120に出力するようになっている。ディスプレイ120は、入力された映像信号にしたがって、判定手段が行なった判定結果を表示する。
臨床現場の医師は、出力されたステロイド感受性の判定結果、即ち、数時間前に患者に投与したステロイドによる活性型転写因子量についての判定結果を知ることができ、これにより判定対象となった活性型転写因子が関与する炎症性サイトカインの発現が増大、減少するといったこと、ひいては患者の炎症症状がステロイド投与により収まる傾向にあるのか、さらなるステロイド投与が必要なのかといった診断、さらには今後のステロイド投与量、ステロイド投与スケジュールなどのステロイド治療プログラムを決める有用な判断材料として活用できる。
特に癌患者の腫瘍切除手術後のICUで、適切なステロイド治療、ステロイド投与タイミングを決めることで、術後のSIRS発症や重症化およびステロイドの過剰投与による副作用を予防することが可能となる。
なお、上記実施形態においては、測定データ(活性型転写因子量に関する情報)と検量線データに基づいて活性型転写因子量を算出し、算出された活性型転写因子量に基づいてステロイド感受性の判定を行なうようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、ステロイド投与前後の測定データの比較、健常人データと測定データとの比較、あるいは経済的に取得された測定データの変化などに基づいてステロイド感受性の判定を行なうようにしてもよい。
〔全身性炎症反応発症予測装置〕
本実施形態の全身性炎症反応発症予測装置は、刺激付与される患者の刺激付与前及び刺激付与後に採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子の量に関する情報を取得する取得手段;前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記患者のSIRSの発症を予測する予測手段;及び前記予測手段による予測結果を出力する出力手段;を備えている。
上記発症予測装置は、ステロイド感受性判定装置100と同様の構成のものを採用できる。
情報取得手段は、システムにおける入出力インタフェース110fが該当する。情報取得手段が取得する情報が、ステロイド感受性の判定装置ではステロイド投与後の患者から採取された活性型転写因子の量に関する情報であったのに対し、SIRSの発症予測装置では、刺激付与される患者の刺激付与前及び刺激付与後に採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子の量に関する情報である。
前記予測手段は、CPU110aが該当する。予測手段であるCPU110aは、記憶手段(ROM110b、ハードディスク110d)にインストールされたコンピュータプログラムを実行することで、情報取得手段から入力された測定データと、予め記憶された検量線データに基づき、試料に含まれる活性型転写因子量を算出する。算出された刺激付与前の活性型転写因子量(M1)と刺激付与後の活性型転写因子量(M2)の値を比較し、さらに経時的に活性型転写因子の量が算出されている場合には、刺激付与前からの活性化転写因子量の変化を求め、これらの比較結果、変化の様子などに基づいて、SIRSの発症を予測する。
例えば、活性型転写因子として、炎症性サイトカインの発現を調節する転写因子を測定対象としていた場合、M2の値がM1より大きい、活性型転写因子量が増加傾向にあるといった場合には、SIRS重症化のおそれありといった予測をし、M2の値がM1より小さく、活性型転写因子量が減少傾向にあるといった場合には、SIRS重症化の危険は小さいといった予測をする。
出力手段は、ステロイド感受性判定装置の出力手段と同様に、ディスプレイ120が、判定結果を出力する出力手段に該当する。ステロイド感受性の判定装置ではステロイド感受性についての判定結果を出力するのに対し、SIRSの発症予測装置では、予測手段により予測された結果、すなわちSIRS重症化のおそれあり、SIRS発症の危険は少ないといったような予測結果を出力する。
従って、このような予測結果を得た臨床現場では、SIRS重症化のおそれがある場合には、抗炎症剤の投与を決定したり、SIRS発症の危険が少ないといった予測結果であれば、現時点における発熱症状などがあっても、即座にステロイド治療などを選択せず、症状を観察するといった決定をすることができる。
なお、上記実施形態においては、測定データ(活性型転写因子量に関する情報)と検量線データに基づいて活性型転写因子量を算出し、算出された活性型転写因子量に基づいてSIRSの発症予測を行なうようにしているが、これに限定されるものではなく、例えば、刺激付与前後の測定データの比較、あるいは閾値データと測定データとの比較などに基づいてSIRSの発症予測を行なうようにしてもよい。
〔測定に使用する試薬、核酸プローブ〕
(1)FCSバッファー
FCS測定溶液調製のために使用した溶媒で、下記組成を有している。
Figure 2009011245

(2)核酸プローブ
(2−1)蛍光標識されたコンセンサス配列(Wseq)を有する核酸プローブ(Pfw)
4塩基のアデニンをループ部分とするステムルーム構造を形成する下記塩基配列の核酸の5’末端に、蛍光色素としてTAMRA(シグマジェノシス社)を結合したものである。下記配列のうち、Wseqは、5’末端から8番目〜17番目の領域である。
Figure 2009011245
なお、Pfwは、シグマジェノシス社で合成されたOligonucleoride(凍結乾燥品)を10mM Tris−HCl溶液で溶解し、Pfw濃度100μMとした後、95℃で10分間、65℃で30分間保持して1本鎖にした後、再び常温に戻してステムループ構造を形成させて、使用に供した。
(2−2)非標識の結合配列(Wseq)を有する核酸プローブ(Pw)
蛍光色素が結合されていない以外は、Pfwと同様の塩基配列(下記配列)を有する核酸プローブである。
Figure 2009011245
なお、Pwは、Pfwと同様に、一旦、熱変性により1本鎖にした後、再び常温に戻してステムループ構造を形成させて、使用に供した。
(2−3)非標識で結合しない非特異タイプの核酸プローブ(Pn)
下記塩基配列の核酸プローブであり、4塩基のアデニンをループ部分とするステムループ構造を形成している。
Figure 2009011245
なお、Pnも、Pfwと同様に、一旦、熱変性により1本鎖にした後、再び常温に戻してステムループ構造を形成させて、使用に供した。
〔採取血液の活性型転写因子量の測定方法〕
(1)採取血液からの末梢血単核球の活性型転写因子測定用溶液の調製
患者から真空採血管により採取した血液に等量の生理食塩水を加え、2倍に希釈した後、リンパ球単離用比重液としてFicoll(アマシャムバイオサイエンス社)の上に重層し、遠心により赤血球、末梢血単核球及び血漿成分に分離した。末梢血単球分画を回収し、生理食塩水で洗浄後、遠心操作を行ない、上清を除去して細胞のペレットを得た。
Novagen社のタンパク抽出キットであるNucBuster(登録商標)を使用して、上記細胞ペレットから核抽出物を調製した。すなわち、細胞のペレットを、75μlのReagent1で分散させ、Vortexで15秒間ホモジナイズし、5分間、氷上で静置した。その後、再びボルテックスで15秒間ホモジナイズし、15000rpm、4℃で5分間遠心し、細胞質フラクションとなる上清を回収した。得られた核ペレットに、DTT、プロテアーゼインヒビター、及びReagent2の混合液(混合比1:1:75)40μl加え、ボルテックスで15秒間ホモジナイズし、5分間氷上で静置した。再びボルテックスで15秒間ホモジナイズし、15000rpm、4℃で5分間、遠心した。得られた上清が核抽出物であり、これを活性型転写因子測定用溶液として用いた。
(2)転写因子量算出用検量線の作成
リコビナントNF−κB(プロメガ社)1μlと希釈液(50mM NaCl、5mM DTT、20mM HEPES(pH7.9)、0.1% NP−40、10%グリコール)39μlを混合し、リコビナントNF−κB濃度3ng/μlのキャリブレータ原液を調製した。
FCSバッファー4μl、100nMの蛍光標識核酸プローブPfw0.2μl(最終濃度1nM)、水8.8μl、Reagent2を5μl混合して、検量用反応液を調製した。
検量用反応液にキャリブレータ原液の希釈液を混合して、リコビナントNF−κB濃度1.5ng/μl、0.8ng/μl、0.2ng/μlのキャリブレータを調製した。室温で10分間反応させた後、MF20(オリンパス社)により、各キャリブレータの並進拡散時間を測定した。リコビナントNF−κB濃度0ng/μlに該当する希釈液のみと検量用反応液の混合液についても、上記キャリブレータと同様にして、並進拡散時間を測定した。
リコビナントNF−κBの濃度をX軸、と並進拡散時間をY軸にプロットし、直線性が得られる濃度範囲で最小二乗法により検量線を作成した。得られた検量線のグラフを図2に示す。
(3)活性型転写因子量のFCSによる測定
患者から採取した血液を用いて調製した活性型転写因子測定用溶液(核抽出物)、FCSバッファー、核酸プローブ、水、Poly(dIdC)を、表2に示す割合で混合することにより反応系A及び反応系Bを調製し、室温で15分反応させた。反応終了後、MF20(オリンパス社)により、並進拡散時間を測定し、図2に示す検量線に基づいてNF−κBの含有量を算出した。
Figure 2009011245
〔採取血液中のIL−6の測定方法〕
(1)採取血液からのIL−6測定用溶液の調製
真空採血管により採取した血液に等量の生理食塩水を加え、2倍に希釈した後、Ficoll(リンパ球単離用比重液)の上に重層し、遠心して赤血球球、末梢血単核球及び血漿成分に分離した。遠心後、血漿成分を回収し、インターロイキン6(IL−6)測定用溶液として用いた。
(2)IL−6定量用検量線の作成
Endogen Human IL−6 ELISAキット(PIERCE社のEH2IL6)を用いて測定した。
キットに付属のキャリブレータを、希釈溶液で段階的に希釈して、濃度が異なるキャリブレータを調製し、各濃度のキャリブレータ50μlをいれた各wellに、希釈溶液100μlを添加し、室温で2時間インキュベートした。反応終了後、Washバッファーにより3回洗浄し、各ウェルにビオチン化抗IL−6抗体50μlとHRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)標識ストレプトアビジン100μlを添加し、室温で30分間インキュベートした。反応終了後、Washバッファーで3回洗浄し、基質を100μl添加し、20分間室温でインキュベートする。20分後、反応停止溶液を50μl加え、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度(リファレンス:550nm)を測定した。
キャリブレータの濃度をX軸、吸光度をY軸にプロットし、最小二乗法により検量線を作成した。なお、吸光度としては、測定された450nmの吸光度から550nmの吸光度を引いた値をプロットした。
(3)IL−6のELISAによる測定
調製したサイトカイン用試料50μlをいれた各wellに、希釈溶液100μlを添加し、室温で2時間インキュベートした。反応終了後、Washバッファーにより3回洗浄し、各ウェルにビオチン化抗IL−6抗体50μlとHRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)標識ストレプトアビジン100μlを添加し、室温で30分間インキュベートした。反応終了後、Washバッファーにより3回洗浄し、基質を100μl添加し、20分間室温でインキュベートする。20分後、反応停止溶液を50μl加え、マイクロプレートリーダーを用いて450nmの吸光度(リファレンス:550nm)を測定した。
測定された450nmの吸光度から550nmの吸光度を引いた値を測定値とし、検量線に基づいて、当該吸光度からIL−6量を算出した。
〔SIRSの発症予測〕
下記のような手術を行なう患者の刺激前後のNF−κB量、IL−6量の変化を調べ、術後の様子を見た。
(1)患者1(胆嚢癌)
胆嚢癌の患者に膵頭十二指腸切除手術を行なった。麻酔導入直後すなわちAライン挿入時(9時)に患者から7ml採血した。9時17分に手術を開始し、集中治療室(ICU)に入室する(19時)までの間、2時間毎に、7mlずつ採血した。各時間(9時、11時、13時、15時、17時、19時)に採取した血液から、上記調製方法にて、NF−κB測定用溶液及びIL−6測定用溶液を調製し、上記測定方法にて、NF−κB量、IL−6量を求めた。各測定結果を図3及び図4に示す。
この患者は、手術後3日間、白血球数の上昇、発熱、頻脈が認められ、SIRSと診断された。手術開始2時間後からNF−κB量が増加しており(図3参照)、手術6時間後くらいから、炎症性サイトカインであるIL−6量が急激に増大していた(図4参照)。これらのことから、切除手術という刺激付与前から刺激後付与後にNF−κB量が増大している場合には、SIRSの発症を予測できると考える。つまり、刺激付与後まもなく変化が現われる転写因子量(活性型NF−κB量)の変化を見ることで、SIRSの発症を予測することが可能である。一方、IL−6量に着目する場合、刺激付与から6時間以上経過しなければ、SIRS発症を予測できない。
(2)患者2(大動脈弁閉鎖不全症)
大動脈弁閉鎖不全症の患者に、大動脈弁置換手術(AVR)を行なった。麻酔導入直後すなわちAライン挿入時(8時50分)に患者から7ml採血した。9時33分に手術を開始し、人工心肺離脱直後(11時45分)、ICU移動時(12時10分)、及びICUでの翌朝8時に、7mlずつ採血した。各時間に採取した血液から、上記調製方法にて、NF−κB測定用溶液及びIL−6測定用溶液を調製し、上記測定方法にて、NF−κB量、IL−6量を求めた。各測定結果を図5及び図6に示す。
この患者は、白血球数の上昇は見られたものの、心拍数65−80/分(正常レベル)であり、発熱もなく、SIRSのクライテリアをみたさなかった。図5からわかるように、刺激となる手術前に活性型NF−κBが存在したものの、手術開始後、大きな増加もなく、手術終了時には、開始時よりも活性型NF−κB量は減少していた。一方、図6からわかるように、IL−6量は、手術開始後の数時間は増加したが、翌朝には、手術前と同程度にまで下がっていた。従って、IL−6量が低いことはSIRSが発症しなかったことと合致しており、刺激付与から数時間後に採血された試料中の活性型NF−κB量が刺激付与前よりも増大していないことは、IL−6量のその後の減少とも合致している。よって、刺激付与後、数時間後の活性型NF−κB量を測定し、刺激付与前よりも増大していなければ、手術後のSIRS発症の危険が少ないと予測することが可能である。
〔ステロイド感受性の判定〕
下記のような手術を行なう患者にステロイドを投与し、NF−κB量、IL−6量の変化を調べた。
(2)患者3(急性心筋梗塞及び心房中隔破裂)
急性心筋梗塞及び心房中隔破裂で緊急入院してきた患者に、冠動脈バイパス手術を行なった。手術開始は9時03分であった。手術執刀直前(9時00分)に採血し、9時39分にステロイド薬(メチルプレドニゾロン500mg)を投与した。また、人工心肺離脱直後(13時00分)、ICU移動直前(13時50分)にそれぞれ7mlずつ採血した。各時間に採取した血液から、上記調製方法にて、NF−κB測定用溶液及びIL−6測定用溶液を調製し、上記測定方法にて、NF−κB量、IL−6量を求めた。各測定結果を図7及び図8に示す。
図7からわかるように、手術開始時には活性型NF−κB量は高かったが、ステロイド投与して約3時間30分後には、活性型NF−κBはほとんど消失していた。一方、図8から、IL−6量については、手術開始時から4時間後では、ステロイド投与前(手術開始後)よりも増大していた。しかしながら、その後、ICU移動直前(手術開始から約5時間後、ステロイド投与から4時間半後)には減少に転じていたものの、ステロイド投与前よりは、まだ多かった。この患者はステロイド投与効果が現われており、ステロイド感受性であると判定できる。また、ステロイド感受性の判定は、IL−6では投与から4時間半後でも明確には判定できないが、活性型NF−κB量に基づけば、投与後、3時間半以内の採血で判定できることがわかる。
(3)患者4(大動脈弁閉鎖不全)
大動脈弁閉鎖不全症で緊急入院してきた患者に、大動脈弁置換手術を行なった。手術開始は9時26分であった。手術執刀直前(9時12分)に採血し、9時53分にステロイド薬(メチルプレドニゾロン500mg)を投与した。また、人工心肺離脱直後(11時48分)、ICU移動直前(12時51分)にそれぞれ7mlずつ採血した。各時間に採取した血液から、上記調製方法にて、NF−κB測定用溶液及びIL−6測定用溶液を調製し、上記測定方法にて、NF−κB量、IL−6量を求めた。各測定結果を図9及び図10に示す。
この患者は、活性型NF−κB量がステロイド投与前よりもステロイド投与後の方が増大していた。また、手術開始時には、それほど活性型NF−κB量は多くなかったが、人工心肺離脱時(ステロイド投与2時間後)には活性型NF−κB量が増大し、その後、ICU移動直前(ステロイド投与3時間後)でも、活性型NF−κB量が減少に転ずることはなかった。また、IL−6量については、手術開始後、人工心肺離脱時、ICU移動直前まで、増加傾向にあった。従って、この患者は、ステロイド投与前後で活性型NF−κB量が増加しているだけでなく、その後も減少に転じていないので、この患者はステロイド投与効果が認められない、すなわちステロイド非感受性の患者であると判定できる。
本発明のステロイド感受性の判定方法によれば、ステロイド投与後、短時間でステロイド投与効果を知ることができるので、臨床現場で、本発明の判定方法を利用してステロイド感受性の判定結果を知ることで、心筋梗塞の弁置換手術や癌の腫瘍切除手術の術前、術後の炎症反応、時々刻々と症状が変化し得るSIRSのような病態に対して行なったステロイド治療効果を迅速に知り、さらにその結果に応じて、次に行なうステロイド治療における適切な量のステロイド投与、ステロイド投与スケジュールの調整に役立てることができる。
また、本発明のSIRSの発症予測方法では、炎症の直接の原因となるサイトカイン量が変化するよりも速い段階でサイトカイン量と関連づけられる活性型転写因子量に基づいて予測することができるので、臨床現場、特に侵襲性の大きい手術現場で、SIRSが重症化する前に適切な対処、治療を選択するのに役立つ。
本発明のステロイド感受性の判定装置の構成を示すブロック図である。 活性型転写因子量算出に用いた検量線を示すグラフである。 患者1のNF−κB量の測定結果を示すグラフである。 患者1のIL−6量の測定結果を示すグラフである。 患者2のNF−κB量の測定結果を示すグラフである。 患者2のIL−6量の測定結果を示すグラフである。 患者3のNF−κB量の測定結果を示すグラフである。 患者3のIL−6量の測定結果を示すグラフである。 患者4のNF−κB量の測定結果を示すグラフである。 患者4のIL−6量の測定結果を示すグラフである。

Claims (13)

  1. ステロイド投与後の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量を測定する工程;及び
    測定結果に基づいて、前記患者のステロイド感受性を判定する工程
    を含む、ステロイド感受性の判定方法。
  2. 前記生体試料が血球の核抽出物である請求項1に記載の判定方法。
  3. 前記活性型転写因子は、NF−κBである請求項1又は2に記載の判定方法。
  4. 前記測定工程は、蛍光相関分光法(FCS)、蛍光偏光解消法(FP)、及び蛍光共鳴エネルギー移動法(FRET)よりなる群から選ばれる1種の測定方法を用いて、前記活性型転写因子量を測定することにより実行される請求項1〜3のいずれかに記載の判定方法。
  5. 前記活性型転写因子量は、下記反応系Aにおける蛍光物質の測定結果A及び下記反応系Bにおける蛍光物質の測定結果Bに基づいて求められる請求項1〜4のいずれかに記載の判定方法;
    反応系A:前記生体試料、前記活性型転写因子が特異的に結合する塩基配列(Wseq)を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、及び前記配列(Wseq)を含む非標識核酸プローブ(Pw)を含み、PwはPfwよりも多く含む系、
    反応系B:生体試料、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、及び前記活性型転写因子が特異的に結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を含み、Pnは試薬A中のPwと同等量を含む系。
  6. 前記測定工程は、
    前記反応系A及び反応系Bの蛍光物質の並進拡散時間を蛍光相関分光法により測定し、
    前記反応系Aで測定された並進拡散時間Taと前記反応系Bで測定された並進拡散時間Tbとの差(|Ta−Tb|)に基づいて、前記活性型転写因子量を算出することにより実行される請求項5に記載の判定方法。
  7. ステロイド投与前の患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量を測定する工程を、更に含み、
    前記判定工程は、ステロイド投与前の活性型転写因子量とステロイド投与後の活性型転写因子量とを比較した結果に基づいて行なわれる請求項1〜6のいずれかに記載の判定方法。
  8. ステロイド投与後の患者から経時的に採取された生体試料に含まれる活性型転写因子量を測定する第2測定工程を、更に含み、
    前記判定工程は、それぞれの測定結果を比較した結果に基づいて行なわれる請求項1〜7のいずれかに記載の判定方法。
  9. 刺激付与前の患者から採取された生体試料に含まれる、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量(M1)を測定する工程;
    刺激付与30〜120分後の前記患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量(M2)を測定する工程;
    刺激付与前の活性型転写因子量(M1)と刺激付与後の活性型転写因子量(M2)とを比較した結果に基づいて、患者の全身性炎症反応症候群の発症を予測する工程
    を含む全身性炎症反応症候群の発症予測方法。
  10. ステロイド投与後の患者から採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子量に関する情報を取得する取得手段;
    前記取得手段により取得された情報に基づいて、患者のステロイド感受性を判定する判定手段;及び
    前記判定手段による判定結果を出力する出力手段;
    を備えたステロイド感受性の判定装置。
  11. 前記取得手段は、ステロイド投与後の患者から経時的に採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量に関する経時的データを取得し、
    前記判定手段は、前記経時的データの変化に基づいて、患者のステロイド感受性を判定する請求項10に記載の判定装置。
  12. 前記取得手段は、さらに、ステロイド投与前の患者から採取された生体試料に含まれる、前記活性型転写因子量に関する情報(以下「投与前活性型転写因子量情報」という)を取得し、
    前記判定手段は、前記取得手段により取得された前記投与前活性型転写因子量情報と、前記ステロイド投与後の患者から取得された活性型転写因子量情報とに基づいて、ステロイド感受性を判定する請求項10又は11に記載の判定装置。
  13. 刺激付与される患者の刺激付与前及び刺激付与後に採取された生体試料について測定された、炎症性サイトカイン又は抗炎症性サイトカインの発現を調節する活性型転写因子に関する情報を取得する取得手段;
    前記取得手段により取得された情報に基づいて、前記患者の全身性炎症反応症候群の発症を予測する予測手段;及び
    前記予測手段による予測結果を出力する出力手段;
    を備えた全身性炎症反応症候群の発症予測装置。
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