JP2009008992A - 自己形成光導波路の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光ファイバ10aの一端10aeと同様の光ファイバ10bの一端10beを光光硬化性樹脂液11に浸した。光ファイバ10aの他端にアルゴンイオンレーザからの波長488nmのレーザ光を導入して一端10aeから光硬化性樹脂液11に照射して自己形成的に硬化物を形成すると共に、モードロックチタンサファイアレーザからの波長800nmの制御光を硬化物の成長端近傍に集光して走査した。硬化物の成長速度0.2mm/分に合わせて、制御光の集光点を速度0.2mm/分で光ファイバ10aの一端10aeと光ファイバ10bの一端10beを滑らかに繋ぐように走査し、ゆるやかに湾曲した軸状の硬化物11cを得た。
【選択図】図2
Description
そこで自己形成光導波路の更なる展開を測るため、湾曲或いはY字分岐の可能性を検討することとなった。
特許文献1及び2は、2本の光束の集光点を重ね合わせて光導波路を作製するものである。
特許文献2及び3は、多光子吸収を利用し、集光点を走査して光導波路を作製するものである。
特許文献4乃至6は、自己形成光導波路を屈曲させるものである。
特許文献2及び3の技術の問題点は、光導波路の断面形状が接続対象となる光ファイバの真円コア断面形状と一致しないという問題点がある。これは、レーザー焦点部分の楕円状のエネルギー分布を反映する為である。
特許文献4乃至6の技術の問題点は、自己形成光導波路の定量的かつ連続的な成長方向変化が難しいことである。特許文献4及び5については、自己形成光導波路の成長方向変化(光軸方向以外への)は、実のところ2つの対向する照射光の重なった領域へ自己形成光導波路が成長することによるものである。これは開口数(NA)などに由来し、光の重なる領域にしか成長できないと言う点と、光の重なる領域の強度分布に依存する成長しか出来ない為である。それ故に例えばS字形状、Z次形状など成長の形状を指定することは難しい。又、特許文献6は自己形成光導波路をミラー、フィルタなどパッシブな光部品により屈曲点を設けているが、これら光部品が無い時には直線状にしか成長させることが出来ない。
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の自己形成光導波路の製造方法において、制御光の波長が600nm以上830nm以下であることを特徴とする。
最も可能性の高い機構は、制御光の集光点近傍に微小な硬化物が形成されることである。当該硬化物は、まさしく硬化光による硬化物と同一物であって、硬化光により形成される軸状の硬化物(コア)の径の範囲内にあるならば、最終的には軸状の硬化物(コア)の内部に埋没する。この際、硬化光による硬化物の先端付近で、制御光の集光点に形成される微小な硬化物が、硬化光による硬化物の先端を誘導する形となる。即ち、硬化光により形成される軸状の硬化物(コア)の先端に、制御光の集光点に形成される微小な硬化物が次々と形成される。この際、制御光の集光点が所望方向に走査されることにより、制御光の集光点に形成される微小な硬化物が、列をなして(微小な連続体として)当該集光点の走査された軌跡に配置されることとなる。この際、光硬化性樹脂は、光照射により活性化された後、短時間ではあるが一定の時間、反応点が活性化されており、重合(硬化)が継続する。すると、当該集光点の走査された軌跡に配置された微小な硬化物の表面から、硬化光の光軸から離れる方向にも硬化が生じ、軸状の硬化物(コア)が順次形成される状況となる。軸状の硬化物(コア)の径が、それ以前に形成された硬化物(コア)の径程度になることから、最終的な軸状の硬化物(コア)形状は、硬化光導入用導波路から導入される硬化光によって決定されるものである。しかし、軸状の硬化物(コア)の成長端において、集光点の走査された軌跡に配置された微小な硬化物が常に存在し、当該微小な硬化物表面の光硬化性樹脂の反応点が一定の時間、消失せずに活性化されているならば、微小な硬化物が例えば湾曲している場合、最終的な軸状の硬化物(コア)も、微小な硬化物の湾曲に合わせて湾曲するものと考えられる。
ここにおいて、制御光の集光点に形成される微小な硬化物の最先端は、硬化光による軸状の硬化物(コア)の成長端から、余り離れていないことが望ましい可能性が高い。また、集光点以外の制御光の照射部分が硬化しないことが望ましい。
一方、制御光は多光子吸収でのみ開始されている。この際、二光子吸収により極端に早い重合が起きないよう、制御光は光重合開始剤の吸収端よりもやや短波長の2倍波長を選択すると良い。
制御光は、多光子吸収が容易となるように、例えばフェムト秒パルスレーザを用いると良い。また、二光子吸収色素その他の色素を添加することで、多光子吸収が更に容易となる。
成長終了端は、任意の光学部材、光学素子までとして接続して終端させると良い。光学部材としては、筐体等の透明部材、ミラー等の反射部材、フィルタ等の干渉部材、或いは光ファイバ等の光導波路が挙げられる。
光学素子としては、発光素子、受光素子、その他の光電素子等が挙げられる。
脂肪族系としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコール。
芳香族系としてはビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールZ、ビスフェノールF、ノボラック、o-クレゾールノボラック、p-クレゾールノボラック、p-アルキルフェノールノボラック等の各種フェノール化合物等。
これら、あるいはこれらから任意に1種乃至複数種選択された多価アルコールのオリゴマー(ポリエーテル)の構造を有する比較的低分子(分子量3000程度以下)骨格に、反応基として次の官能基等を導入したもの。
〔ラジカル重合性材料〕
ラジカル重合可能なアクリロイル基等のエチレン性不飽和反応性基を構造単位中に1個以上、好ましくは2個以上有する光重合性モノマー及び/又はオリゴマー。エチレン性不飽和反応性基を有するものの例としては、(メタ)アクリル酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸エステル等の共役酸エステルを挙げることができる。
〔カチオン重合性材料〕
カチオン重合可能なオキシラン環(エポキシド)、オキセタン環等の反応性エーテル構造を構造単位中に1個以上、好ましくは2個以上有する、光重合性のモノマー及び/又はオリゴマー。オキシラン環(エポキシド)としては、オキシラニル基の他、3,4-エポキシシクロヘキシル基なども含まれる。またオキセタン環とは、4員環構造のエーテルである。
ラジカル重合性モノマー及び/又はオリゴマーから成るラジカル重合性材料の重合反応を光によって活性化する化合物である。具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインプロピルエーテル等のベンゾイン類、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン及びN,N-ジメチルアミノアセトフェノン等のアセトフェノン類、2-メチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン及び2-アミルアントラキノン等のアントラキノン類、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン及び2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類、アセトフェノンジメチルケタール及びベンジルジメチルケタール等のケタール類、ベンゾフェノン、メチルベンゾフェノン、4,4'-ジクロロベンゾフェノン、4,4'-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン及び4-ベンゾイル-4'-メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン類、並びに2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド等が挙げられる。尚、ラジカル重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良く、また、これらに限定されることはない。
〔カチオン重合開始剤〕
カチオン重合性モノマー及び/又はオリゴマーから成るカチオン重合性材料の重合反応を光によって活性化する化合物である。具体例としては、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、セレニウム塩、ピリジニウム塩、フェロセニウム塩、ホスホニウム塩、チオピリニウム塩が挙げられるが、熱的に比較的安定であるジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、フェニル(p-アニシル)ヨードニウム、ビス(p-t-ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p-クロロフェニル)ヨードニウムなどの芳香族ヨードニウム塩、ジフェニルスルホニウム、ジトリルスルホニウム、フェニル(p-アニシル)スルホニウム、ビス(p-t-ブチルフェニル)スルホニウム、ビス(p-クロロフェニル)スルホニウムなどの芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩光重合開始剤が好ましい。芳香族ヨードニウム塩および芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩光重合開始剤を使用する場合、アニオンとしてはBF4 -、AsF6 -、SbF6 -、PF6 -、B(C6F5)4 -などが挙げられる。尚、カチオン重合開始剤は単独で使用しても、2種以上を併用しても良く、また、これらに限定されることはない。
〔その他〕
更には、二光子吸収を効率よく生じさせるため、二光子吸収色素を添加しても良い。
以下の実施例に先立って、次の予備実験を行った。
アクリル系の液状の光重合性化合物を用意した。光重合開始剤としてはチバスペシャリティケミカルズ社のIRGACURE1800を用いた。通常、その吸収端は488nmよりも小さいと考えられているものである。
硬化光導入用導波路として、コア径100μmのステップインデックス型光ファイバ(次の実施例1で10a)を用意した。
光ファイバの一端を光硬化性樹脂液(次の実施例1で11)に浸し、他端にアルゴンイオンレーザからの波長488nmのレーザ光を導入した。出力は0.03mWとした。この際、光硬化性樹脂液に浸した光ファイバ端から、自己形成的に軸状の硬化物が形成された。当該硬化物の光軸方向の成長速度は0.2mm/分であった。
これらの位置関係は、いずれの光ファイバ10a、10bの光軸もx軸方向にほぼ平行であり、且つそれらはほぼ240μm離れていた。各々の端部は、x軸方向に3850μm、y軸方向に211μm、z軸方向に120μm離れていた。
こうして、硬化物の成長速度0.2mm/分に合わせて、制御光の集光点を速度0.2mm/分で光ファイバ10aの一端10aeと光ファイバ10bの一端10beを滑らかに繋ぐように走査した。これにより、硬化物の成長端が制御光の集光点に追随して光ファイバ10aの一端10aeと光ファイバ10bの一端10beを滑らかに繋ぐように、ゆるやかに湾曲した軸状の硬化物11cとして形成された。これを図1に写真図で、図2に当該写真図の説明図として示す。
図1で破線で示したものは、図2の破線で示した仮想コア11ia及び11ibであって、各々、光ファイバ10aの一端10aeから、並びに、光ファイバ10bの一端10beから、波長488nmのレーザ光を照射した場合に形成されるべき硬化物(コア)の位置を示すものである。このように、光ファイバ10aの一端10aeから、光ファイバ10bの一端10beから、各々波長488nmのレーザ光を照射した場合にはそれにより形成される硬化物(コア)は交わることはない。尚、図2でra及びrbで示した、ゆるやかに湾曲した軸状の硬化物11cの2箇所の曲率半径は、約3cm程度と考えられる。
即ち、請求項2に係る発明が実施可能であることが証明された。
実施例1において、制御光の出力を500mWとした他は全く同様に行った。光ファイバ10aの一端10ae近傍において、断面が円外部に凸部を有する軸状の硬化物11’’が得られた。硬化物11’’の顕微鏡写真を図5に示す。
このことから、本実施例1乃至3の出力を150mWとした場合においても、制御光の集光点近傍では二光子吸収等により光重合開始剤が活性化(開裂等)し、硬化物が生じていることが想像できる。即ち、光ファイバ10aからの硬化光により硬化する範囲である直径100μmよりも小さい範囲において、制御光により硬化物が生じていると考えられる。
硬化光による硬化物に先立って、制御光により硬化物が生じ、当該制御光による硬化物の表面からも硬化光による硬化が継続して生じているものと考えられる。
10ae:硬化光の射出端
11c:ゆるやかに湾曲した軸状の硬化物(自己形成光導波路のコア)
Claims (5)
- 光軸に対して所定形状の垂直断面を有し、所定波長の硬化光を導入するための硬化光導入用導波路を用い、
光硬化性樹脂液に、前記硬化光導入用導波路の射出端から前記所定波長の硬化光を導入して自己形成的に前記光硬化性樹脂液を硬化させて軸状の硬化物を形成する際に、
当該硬化物の成長端近傍に、前記硬化光よりも長波長の制御光を集光し、当該制御光の集光点を走査することにより、前記硬化物の成長方向を当該制御光の走査方向に誘導することを特徴とする湾曲した自己形成光導波路の製造方法。 - 光軸に対して所定形状の垂直断面を有し、所定波長の硬化光を導入するための硬化光導入用導波路を用い、
光硬化性樹脂液に、前記硬化光導入用導波路の射出端から前記所定波長の硬化光を導入して自己形成的に前記光硬化性樹脂液を硬化させて第1の軸状の硬化物を形成したのち、
前記硬化光を導入したまま、前記第1の軸状の硬化物の任意の位置に前記硬化光よりも長波長の制御光を集光し、当該制御光の集光点を走査することにより、新たな硬化物の成長端を発生させると共に、当該新たな硬化物の成長方向を当該制御光の走査方向に誘導して、前記第1の軸状の硬化物から分岐した第2の軸状の硬化物を形成することを特徴とする分岐した自己形成光導波路の製造方法。 - 光軸に対して所定形状の垂直断面を有し、所定波長の硬化光を導入するための硬化光導入用導波路を用い、
光硬化性樹脂液に、前記硬化光導入用導波路の射出端から前記所定波長の硬化光を導入して自己形成的に前記光硬化性樹脂液を硬化させて軸状の硬化物を形成する際に、
当該硬化物の成長端近傍に、前記硬化光よりも長波長の複数個の制御光を各々集光し、当該複数個の制御光の集光点を走査することにより、前記硬化物の成長端を複数個発生させると共に、当該複数個の硬化物の成長方向を各制御光の走査方向に各々誘導して、複数個の分岐を有する硬化物を形成することを特徴とする分岐した自己形成光導波路の製造方法。 - 前記制御光の集光点近傍において、多光子過程により前記光硬化性樹脂液の硬化反応を生じさせることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の自己形成光導波路の製造方法。
- 前記制御光の波長が600nm以上830nm以下であることを特徴とする請求項4に記載の自己形成光導波路の製造方法。
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