JP2009008608A - Dna結合タンパクの定量方法及び定量用キット - Google Patents

Dna結合タンパクの定量方法及び定量用キット Download PDF

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Abstract

【課題】 分離精製操作を経ることなく、短時間で高精度に、夾雑物を含む生体試料等の液体試料中の目的のDNA結合タンパクの含有量を定量できる方法、及びそのための定量用キットを提供する。
【解決手段】 目的のDNA結合タンパクが結合する核酸配列を有する蛍光標識核酸プローブPfw及び前記核酸配列を有する非標識核酸プローブPwを含有する試薬Aと、前記液体試料とを混合した混合液Aにおける並進拡散時間Ta;並びに前記蛍光標識核酸プローブPfw及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブPnを含有する試薬Bと、前記液体試料とを混合した混合液Bにおける並進拡散時間Tbを、蛍光相関分光法により求め、両者の並進拡散時間の差|Ta−Tb|に基づいて、試料中の目的のDNA結合タンパク量を求める。定量用キットは、プローブPfwとPwを含有する試薬A、及びプローブPfwとPnを含有する試薬Bとの組合わせである。
【選択図】 図2

Description

本発明は、生体試料のように、目的のDNA結合タンパクとその他の夾雑物を含有する試料から、目的のDNA結合タンパクの含有量を測定する定量方法であって、試料から目的のDNA結合タンパク等の分離精製操作を行なわずに、短時間で目的のDNA結合タンパクを高精度に定量できるDNA結合タンパクの定量方法、及び当該方法の実施に使用する定量用キットに関する。
生体試料のように、夾雑物を含有する試料から、目的のDNAタンパクを定量する方法としては、例えば、特開2001−321199(特許文献1)に開示されている方法がある。この特許文献1に開示の方法は、目的のDNA結合タンパクをプローブに特異的に結合させた複合体を分離し、得られた複合体を免疫学的定量法、あるいはDNA自体をPCRで増幅させて定量するものである。
試料から目的とするタンパクとプローブとの複合体を分離、洗浄する操作は煩雑である。さらに、得られた複合体を免疫学的方法で測定したり、複合体からDNAのみを取り出してPCRで増幅したりする操作も同様に煩雑であり、これらの方法では定量結果を得るまでに時間がかかる。
特開2005−6566(特許文献2)には、蛍光相関分光法を利用して、複数のタンパクを含む試料から、分離、洗浄操作をすることなく、目的のDNA結合タンパクのみを短時間で検出する方法が提案されている。
特許文献2では、実施例において、蛍光標識DNAプローブを用いて、生体試料の核抽出物中の転写因子AP−1、NF−κBを検出できることが示されており、さらに、使用するDNA結合プローブと目的転写因子との結合反応において転写因子の濃度と測定される並進拡散時間と相関関係があること、さらには転写因子(AP−1)を活性化させる刺激因子(TNF−α)の添加と、標識DNAプローブ−転写因子複合体との相関関係があることが示されている。
ところで、蛍光相関分光法は、溶液状態にあるサンプル中の分子のブラウン運動による並進拡散時間を測定する方法であり、プローブとタンパク質との複合体形成による並進拡散時間の延長により、プローブに特異的に結合するタンパクを検出している。しかし、溶液状態にあるサンプル中の分子のブラウン運動は、溶液粘度の影響を受けやすい。このため、生体試料のように、他のタンパクなどの高分子物質が含まれている試料では、目的のタンパクとプローブの複合体量が同じであっても、溶液試料に含まれる他のタンパク等の含有量が異なることによって粘度が変わると、測定される拡散時間も変わってしまう場合がある。
また、WO2006/062127(特許文献3)には、炎症性サイトカインの転写因子を測定することにより、敗血症を含む全身性炎症症候群(SIRS)の診断支援を行なう方法が開示されている。SIRSでは、刻々と病態が変化していくため、病態に応じた治療を施すために、診断の判断材料とするための目的タンパク量を1時間以内に定量できることが望まれる。このため、目的タンパクの分離や洗浄を要する定量方法は、健康診断のような緊急を要しないタンパクの定量には適用できるが、病態変化の診断など、患者から採取した試料に含まれる特定タンパクの量を短時間で知りたいような場合には、対処できない。従って、蛍光相関分光法等を用いて、短時間に転写因子を測定する必要がある。
このように、特に診断分野において、NF−κB等のDNA結合タンパクである転写因子を、蛍光相関分光法等を用いてより正確に定量する方法が求められていた。
特開2001−321199 特開2005−6566 WO2006/062127
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体試料のように、夾雑物を含む試料から、目的のDNA結合タンパクのみを分離精製等しなくても、短時間で高精度に、目的のDNA結合タンパクの含有量を定量できる方法、及びそのための定量用キットを提供することにある。
本発明のDNA結合タンパクの定量方法は、液体試料中の目的とするDNA結合タンパクの含有量を測定する方法であって、
前記DNA結合タンパクが結合する核酸配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)を含有する測定用試薬Aと、前記液体試料とを混合した混合液Aにおける並進拡散時間(Ta)を、蛍光相関分光法により求める工程;
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)を含有する測定用試薬Bと、前記液体試料とを混合した混合液Bにおける並進拡散時間(Tb)を、蛍光相関分光法により求める工程;及び
並進拡散時間(Ta)と並進拡散時間(Tb)との差に基づいて、前記試料に含まれる前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程;
を含む。
前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程は、目的のDNA結合タンパク量と並進拡散時間との関係データ、及び前記差に基づいて、前記試料に含まれる前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程であることが好ましい。
また、前記関係データは、DNA結合タンパクの含有量が異なる2種以上の試料について測定された並進拡散時間と各試料のDNA結合タンパク量との関係から得られた検量線であることが好ましい。ここで、検量線作成に用いられる前記試料は、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)を含有する検量用反応液と前記DNA結合タンパクを既知量含む検量用試料とを混合して得られるものである。
また、前記測定用試薬A及び前記測定用試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量は、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の含有量に対し過剰量であることが好ましい。
また、前記測定用試薬A及び前記測定用試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量が同等量であることが好ましい。
また、前記液体試料は核抽出物を含むことが好ましく、前記DNA結合タンパクは、転写因子、特にサイトカインの転写を調節する転写因子であることが好ましい。
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)、及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)の少なくとも1つが、ステムループ構造を形成していることが好ましい。
本発明の蛍光相関分光法によるDNA結合タンパクの定量用キットは、
目的のDNA結合タンパクと結合する塩基配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と、前記DNA結合タンパクと結合する塩基配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)とを含有する試薬A;及び
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と、前記DNA結合タンパクが結合しない非標識核酸プローブ(Pn)とを含有する試薬B;
を含む。
前記試薬A及び前記試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量は、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の含有量に対し過剰量であることが好ましい。
また、前記試薬A及び前記試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量が同等量であることが好ましい。
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の塩基配列と、前記非標識核酸プローブ(Pw)の塩基配列とは同一であることが好ましい。また、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)、及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)の少なくとも1つが、ステムループ構造を形成していることが好ましい。
本発明のDNA結合タンパクの定量方法は、目的のDNA結合タンパクと結合できる蛍光標識核酸プローブを用いて複合体を形成させ、蛍光標識を蛍光相関分光方法で測定することにより、夾雑物を含む混合試料から目的のDNA結合タンパクを分離精製といった煩雑な操作をするくことなく、迅速に、目的のDNA結合タンパクを定量することができる。しかも蛍光標識していないプローブの競合アッセイ系を利用することで、夾雑物を含む液体試料における夾雑物による粘度の影響を排除することができるので、検量線から算出される含有量の正確度が高く、定量方法として優れている。
〔定量用キット〕
はじめに、本発明のDNA結合タンパクの定量方法で使用する定量用キットについて説明する。
本発明のDNA結合タンパクの定量用キットは、蛍光相関分光測定に適用されるもので、核酸プローブが異なる下記試薬Aと試薬Bの組合わせである。
試薬Aは、目的のDNA結合タンパクと結合する配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と、前記DNA結合タンパクと結合する塩基配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)を含有する。
試薬Bは、試薬Aにおける非標識核酸プローブ(Pw)に代えて、目的とするDNA結合タンパクが結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を含有させたものである。すなわち、目的のDNA結合タンパクと結合する配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、及び目的のDNA結合タンパクが結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を含有している。
DNA結合タンパクとは、DNAに親和性をもち、DNAに特異的あるいは非特異的に結合するタンパク質の総称で、遺伝子発現を調節する2本鎖DNAに結合するタンパク、1本鎖に結合するタンパクの他、DNAへリカーゼ等のDNA依存性ATPアーゼ、DNAトポイソメラーゼなども含まれる。これらのうち、本発明で測定対象としては、2本鎖DNAに特異的に結合するタンパクが好ましい。
より好ましいDNA結合タンパクとしては転写因子が挙げられ、特にサイトカインの転写を調節する転写因子が好ましい。サイトカインの転写因子としては、NF−κB、AP−1、NFAT、STATファミリー、IRFファミリー、C/EBP、Sp1、及びCREBなどが挙げられ、これらのうち、特にNF−κBが好ましい。
目的とするDNA結合タンパクが結合する核酸配列とは、目的とするDNA結合タンパクが特異的に結合するDNA配列であり、タンパクの種類に応じて適宜その配列は選択される。目的のDNA結合タンパクが転写因子の場合、発現に関与する転写調節領域、特にエンハンサー領域の配列が該当する。
本発明で用いられる蛍光標識核酸プローブ(Pfw)は、後述する蛍光物質により標識され、目的とするDNA結合タンパクが結合する塩基配列である、コンセンサス配列(Wseq)を含むものであれば、特に制限されるものではない。また、核酸を構成する塩基は、DNA構成塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、チミンの他、RNA構成塩基であるウラシル、さらにPNAなど、又はこれらの修飾塩基を使用することができる。
尚、測定対象のDNA結合タンパクが、2本鎖DNAに結合するDNA結合タンパクの場合、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)としては、コンセンサス配列(Wseq)を含み、且つステムループ構造を形成しているものが好ましく用いられる。ステムループ構造を有するプローブは、コンセンサス配列(Wseq)を含んだセンス鎖又はアンチセンス鎖を鋳型として相補鎖を作製し、これらをハイブリダイズさせた後、アデニン又はチミンによって架橋することでステムループ構造を形成させることにより作製することができる。また、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の総塩基数は特に制限されるものではないが、46〜74個程度の核酸プローブが好ましい。
標識に使用される蛍光物質としては、核酸プローブを標識できるものであれば特に制限されるものではない。例えば、TAMRA、Rhodamine Green、Alexa546、TMR、Alexa488、Alexa647などが挙げられ、特にTAMRA、Rhodamine Greenが好ましく用いられる。これらの蛍光物質は既に公知であり、一般に入手可能である。
本発明に使用する非標識核酸プローブ(Pw)は、蛍光物質により標識されておらず。、目的とするDNA結合タンパクが結合するコンセンサス配列(Wseq)を含むものであれば、特に制限されるものではない。非標識核酸プローブ(Pw)の核酸配列全体が蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の核酸配列全体と等しいことが望ましいが、目的とするDNA結合タンパクの配列部分以外の配列で、当該結合配列に影響与えない部分であれば、数個程度異なっていてもよい。
また、測定対象のDNA結合タンパクが2本鎖DNAに結合するDNA結合タンパクの場合、非標識核酸プローブ(Pw)は、上述の蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と同様に、コンセンサス配列(Wseq)を含み、且つステムループ構造を形成していることが好ましい。
本発明に使用するDNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)は、蛍光物質により標識されておらず、プローブ全体において上記コンセンサス配列(Wseq)を含まないものであれば特に限定されないが、当該プローブに含まれる総塩基数が、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び非標識核酸プローブ(Pw)と同じ塩基数であることが好ましい。また、蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び非標識核酸プローブ(Pw)と同様に、ステムループ構造を形成していることが好ましい。
定量用キットの試薬Aには、核酸プローブとして、上記蛍光標識プローブ(Pfw)及び非蛍光標識プローブ(Pw)が含まれている。
試薬A中の蛍光標識プローブ(Pfw)の含有量は、測定試料中に含まれる標的のDNA結合タンパクを捕捉するのに充分な量である。試薬A中の非標識核酸プローブ(Pw)の含有量は、蛍光標識プローブ(Pfw)の含有量よりも多い量であれば特に制限されるものではないが、10倍以上の量が好ましく、特に50倍以上の量が含有されていることが好ましい。
試薬Aは、蛍光標識プローブ(Pfw)、非標識核酸プローブ(Pw)の他、核酸プローブに対する非特異結合を抑制するために、poly(dIdC)を含有させることが好ましい。
また、試薬Aの溶媒としては、核酸プローブの2本鎖部分が安定して存在でき、且つ標的とするDNA結合タンパクが安定して存在することにより、核酸プローブとDNA結合タンパクが結合できるpH、塩濃度を保持できるものが用いられる。具体的には、Trisバッファー、Hepesバッファー、Phosphateバッファーなどに、塩化ナトリウム、金属捕捉剤としてEDTA、DTTなどを適宜添加した溶液を用いることができ、DNA結合タンパクの種類に応じて、適宜選択される。
定量用キットの試薬Bは、試薬Aに含まれる核酸プローブのうち、非標識核酸プローブ(Pw)に代えて、標的タンパクと結合しない非標識核酸プローブ(Pn)を含有させた点が異なるだけで、他の組成は試薬Aと同じである。すなわち、試薬Bは、試薬Aと同じ溶媒に、試薬Aと同濃度の蛍光標識プローブ(Pfw)を含み、DNA結合タンパクが結合しない非標識核酸プローブ(Pn)をPfwよりも過剰量含む。ここで、試薬AのDNA結合タンパクが結合する非標識核酸プローブ(Pw)と、試薬BのDNA結合タンパクが結合しない非標識核酸プローブ(Pn)は同濃度であることが好ましい。換言すると、試薬A及び試薬Bにそれぞれ含まれる非標識核酸プローブPw及び非標識核酸プローブPnの含有量が同等量であることが好ましい。
本発明の測定用キットは、上記試薬A及び試薬Bの組合わせであるが、さらに、標的となるDNA結合タンパク量と並進拡散時間との関係を示すデータを含んだ説明書を含むことが好ましい。前記関係データは、好ましくは、標的となるDNA結合タンパク量と並進拡散時間の関係をグラフ化した検量線である。さらに、測定値を入力することで、検量線から含有量を算出する算出プログラムが含まれていても良い。
説明書は、具体的には、検量線を記載した仕様書であってもよいし、さらには含有量及び必要に応じて算出プログラムを記録したフレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、磁気記録ディスク(DVD)等の記録媒体であってもよいし、あるいは電気回線を通じて、使用者のパソコンに直接ダウンロードされるものであってもよい。
このような検量線は、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)を含有する検量用反応液に、タンパク質として目的のDNA結合タンパク質を既知量添加した検量用試料を、2種以上調製し、各試料について並進拡散時間を測定し、各試料のDNA結合タンパク量と測定された並進拡散時間との関係から求められる。好ましくは、段階的希釈法などにより、濃度が異なる複数の検量用試料を調製し、各試料におけるDNA結合タンパク含有量と並進拡散時間との相関性を示す直線を、最小自乗法により求める。
尚、検量用試料に用いられる溶媒は、測定用試薬キットとして供される測定用試薬Aと基本組成は同じであるが、Poly(dIdC)を含まないものであることが好ましい。
〔定量方法〕
次に、本発明のDNA結合タンパクの定量方法について説明する。
本発明のDNA結合タンパクの定量方法は、液体試料中の目的とするDNA結合タンパクの含有量を測定する方法であって、
前記DNA結合タンパクが結合する核酸配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)を含有する測定用試薬Aと、前記液体試料とを混合した混合液Aにおける並進拡散時間(Ta)を、蛍光相関分光法により求める工程;
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)を含有する測定用試薬Bと、前記液体試料とを混合した混合液Bにおける並進拡散時間(Tb)を、蛍光相関分光法により求める工程;及び
並進拡散時間(Ta)と並進拡散時間(Tb)との差に基づいて、前記試料に含まれる前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程;
を含む。
より具体的には、
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び非標識核酸プローブ(Pw)を(好ましくはPwをPfwよりも過剰量)含有する測定用試薬Aと、前記液体試料とを混合した混合液Aにおける並進拡散時間(Ta)を、蛍光相関分光法により求める工程;
前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)を(好ましくはPnをPwと同等量)含有する測定用試薬Bと、前記液体試料とを混合した混合液Bにおける並進拡散時間(Tb)を、蛍光相関分光法により求める工程;
前記並進拡散時間(Ta)と前記並進拡散時間(Tb)の差(|Ta−Tb|)を算出する工程;
予め作成された、目的のDNA結合タンパク量と並進拡散時間との関係データに基づいて、前記算出された差から、前記試料中のDNA結合タンパク量を求める工程
を含む。
本発明の定量方法は、目的のDNA結合タンパクが核酸に結合していないフリーの状態で存在している液体試料であれば適用できるが、夾雑物を含有する液体試料、具体的には患者から採取した生体試料に好ましく適用できる。
生体試料としては、患者から採取された細胞成分を含むものであれば特に制限されるものではない。例えば、血液、尿、細気管支肺胞洗浄液、唾液、痰、脳骨髄液、関節液、浸潤液の他、組織を可溶化したものなどが挙げられる。
刺激に応じて活性化された転写因子(活性型転写因子)の量を定量したい場合には、核抽出物を試料として用いることが好ましい。炎症性サイトカイン等の刺激により発現するサイトカインの転写を調節する転写因子の場合、通常、細胞質内に存在しているが、刺激によりサイトカインが発現しようとする場合に、関与する転写因子は核内へ移行するからである。
患者から採取した試料から核内抽出物を含む試料の調製方法は特に限定しないが、例えば、細胞を低張液で処理して膨張させ、ホモジナイザー又はシリンジを用いて、細胞膜を破壊し、遠心により核ペレットを単離し、これを高張液又は界面活性剤で処理することにより、核蛋白質を抽出し、遠心の後、上清を回収するといった方法が挙げられる。この上清には、核から抽出されたタンパク質が含有されている。
以上のような液体試料を、本発明の定量用キットの試薬A(測定用試薬A)と混合し、混合液Aを得る。
混合比率は、液体試料中に含まれ得る目的のDNA結合タンパクを、試薬A中に含まれる蛍光標識プローブ(Pfw)で捕捉するのに充分となる割合である。混合液Aは、5〜15分静置後、並進拡散時間(Ta)を測定する。核酸プローブとDNA結合タンパクとを反応させるためである。反応時間は、目的のDNA結合タンパクの種類、含有量にもよるが、だいたい5〜15分程度で核酸プローブとDNA結合タンパクとの複合体を形成できる。
混合液Aでは、液体試料に含まれる標的DNA結合タンパクが、特異的結合配列を有する核酸プローブに結合する。ここで、試薬A中には、蛍光標識核酸プローブPfwに比べて、非標識核酸プローブPwが大過剰に含まれていることから、優先的にPwと結合することになる。よって、混合液A中には、蛍光標識核酸プローブPfwと、非標識核酸プローブPwと標的となるDNA結合タンパクとの複合体(Pw−タンパク複合体)、非標識核酸プローブPwが含まれると考えられる。つまり、混合液A中の蛍光標識物質は、蛍光標識核酸プローブPfwと考えられる。
一方、本発明の測定用試薬キットの試薬Bと液体試料とを混合して混合液Bを得、混合液Aと同じ時間だけ静置した後、並進拡散時間(Tb)を測定する。混合液Bでは、測定試料に含まれる標的DNA結合タンパクが、特異的結合配列を有する蛍光標識核酸ブローブPfwに結合する。ここで、試薬B中に大過剰に含まれている非標識核酸プローブPnは、標的DNA結合タンパクとは実質的に結合しないので、液体試料中に含まれる他のタンパクと複合体を形成することはあっても、標的タンパクとは複合体を形成しない。混合液Bに含まれる蛍光標識物質は、蛍光標識核酸プローブPfwと標的DNA結合タンパクとの複合体(Pfw−標的タンパク複合体)、及び未反応の蛍光標識核酸プローブPfwであると考えられる。
並進拡散時間の測定は、混合液A、混合液Bそれぞれに共焦点レーザー光を照射し、蛍光相関分光法(FCS)で測定する。
混合液Aにおける蛍光標識物質は、複合体を形成していない核酸プローブPfwとみなせるから、混合液Aの並進拡散時間(Ta)はPfwの並進核酸時間とみなせる。一方、混合液Bにおける蛍光標識物質は、Pfw−標的タンパク複合体、及び未反応の蛍光標識核酸プローブPfwとみなせるから、混合液Bの並進拡散時間(Tb)はPfw−標的タンパク複合体及び未反応の蛍光標識核酸プローブPfwの並進核酸時間とみなせる。従って、並進拡散時間(Ta)と並進拡散時間(Tb)の差(|Ta−Tb|)は、Pfw−標的タンパク複合体の有無に基づく並進拡散時間の差に相当すると考えられる。
試薬キットに含まれる標的DNA結合タンパク量と並進拡散時間との関係データに基づいて、拡散時間差(|Ta−Tb|)から標的DNA結合タンパク量を求めることができる。例えば、関係データが、並進拡散時間と標的タンパクとの相関性を示した検量線であれば、検量線の傾きを求め、並進拡散時間差をその傾きで除すれば、タンパク量を算出できる。
ここで、蛍光相関分光法(FCS)とは、測定用試料の溶液が共焦点領域を通過するときに発する蛍光を測定する方法である。溶液中の分子はブラウン運動により自由に移動する。このため、小さい分子は動きが速く、共焦点領域を速く通過するため蛍光の信号強度の変化が速くなるが、大きな分子は動きが遅いため蛍光信号強度の変化がおそくなる。この蛍光の信号強度の揺らぎの速さから分子の運動速度(並進拡散時間)を自己相関法により求める方法である。
FCSを利用するアッセイ系では、溶液粘度の影響を受けやすいという特徴がある。つまり、分子のブラウン運動による並進拡散時間を測定しているが、溶液の粘性に影響を与える分子が共存することにより、分子量変化以外の要因で並進拡散時間が遅延する可能性がある。このような理由から、同じ量のDNAタンパク−プローブ複合体が溶液中に含まれている場合であっても、純系試料中のDNA結合タンパク−プローブ複合体の並進拡散時間と、生体試料のように他のタンパク等の高分子が共存している試料中の同程度量のDNA結合タンパク−プローブ複合体の並進拡散時間とでは、微妙に異なる。一般に、後者の方が、複合体の運動が阻害されているので、並進拡散時間が長くなる傾向にある。
しかしながら、本発明のアッセイ系では、測定する混合液A、混合液Bは、形成されたDNA結合タンパク−プローブ複合体が、他のタンパク等の高分子にブラウン運動が阻害されるという条件は同じになる。従って、混合液Aの並進拡散時間(Ta)と混合液Bの並進拡散時間(Tb)との差((|Ta−Tb|)では、測定試料に含まれる夾雑物の影響による拡散時間の延長を相殺することが可能となる。このため、混合液Aの並進拡散時間(Ta)と混合液Bの拡散時間(Tb)との差(|Ta−Tb|)に基づいて、並進拡散時間とタンパク量との関係を示す検量線、具体的には検量線の傾きで除することにより、試料中に含まれるDNA結合タンパク−プローブ複合体の量を正確に算出できる。
即ち、本発明の定量方法を用いて求められた含有量は、液体試料に含まれる夾雑物の影響による並進拡散時間の延長を相殺されていると考えられるので、生体試料であっても、純系試料で測定したときと同程度の精度で、含有量を測定することが可能となる。
本発明の定量方法では、液体試料から混合液A、Bを調製し、核酸プローブとDNA結合タンパクとの複合体を形成させるのに要する反応時間、FCSによる並進拡散時間を得るのに要する測定時間の合計で済むので、測定終了までにかかる時間は30分以内である。従って、含有量算出プログラムを備えた使用キットであれば、30分以内に含有量を求めることができる。
〔核酸プローブ〕
(1)蛍光標識されたコンセンサス配列(Wseq)を有する核酸プローブ(Pfw)
4塩基のアデニンをループ部分とするステムルーム構造を形成する下記塩基配列の核酸の5’末端に、蛍光色素としてTAMRA(シグマジェノシス社)を結合したものである。下記配列のうち、Wseqは、5’末端から8番目〜17番目の領域である。
Figure 2009008608
なお、Pfwは、シグマジェノシス社で合成されたOligonucleoride(凍結乾燥品)を10mM Tris−HCl溶液で溶解し、Pfw濃度100μMとした後、95℃で10分間、65℃で30分間保持して1本鎖にした後、再び常温に戻してステムループ構造を形成させて、使用に供した。
(2)非標識の結合配列(Wseq)を有する核酸プローブ(Pw)
蛍光色素が結合されていない以外は、Pfwと同様の塩基配列(下記配列)を有する核酸プローブである。
Figure 2009008608
なお、Pwは、Pfwと同様に、一旦、熱変性により1本鎖にした後、再び常温に戻してステムループ構造を形成させて、使用に供した。
(3)非標識で結合しない非特異タイプの核酸プローブ(Pn)
下記塩基配列の核酸プローブであり、4塩基のアデニンをループ部分とするステムループ構造を形成している。
Figure 2009008608
なお、Pnも、Pfwと同様に、一旦、熱変性により1本鎖にした後、再び常温に戻してステムループ構造を形成させて、使用に供した。
〔試薬、試料〕
(1)FCSバッファー
FCS測定溶液調製のために使用した溶媒で、下記組成を有している。
Figure 2009008608

(2)リコビナントNF−κB
プロメガ社の市販品を、所定の希釈液で希釈して使用した。希釈液としては、50mM NaCl、5mM DTT、20mM HEPES(pH7.9)、0.1% NP−40、10%グリコールの組成を有する溶液を使用した。
(3)採取血液からの末梢血単核球の核抽出物
真空採血管により採取した血液に等量の生理食塩水を加え、2倍に希釈した後、リンパ球単離用比重液としてFicoll(アマシャムバイオサイエンス社)の上に重層し、遠心により赤血球、末梢血単核球及び血漿成分に分離した。末梢血単球分画を回収し、生理食塩水で洗浄後、遠心操作を行ない、上清を除去して細胞のペレットを得た。
細胞ペレットからの核抽出物の調製は、Novagen社のタンパク抽出キットであるNucBuster(登録商標)を使用した。すなわち、細胞のペレットを、75μlのReagent1で分散させ、Vortexで15秒間ホモジナイズし、5分間、氷上で静置した。その後、再びボルテックスで15秒間ホモジナイズし、15000rpm、4℃で5分間遠心し、細胞質フラクションとなる上清を回収した。得られたペレットに、DTT、プロテアーゼインヒビター、及びReagent2の混合液(混合比1:1:75)40μl加え、ボルテックスで15秒間ホモジナイズし、5分間氷上で静置した。再びボルテックスで15秒間ホモジナイズし、15000rpm、4℃で5分間、遠心し、得られた上清を核抽出物として用いた。
(4)HeLa細胞の核抽出物
HeLa細胞の培養液を190gで5分間遠心し、回収したHeLa細胞を1mlの氷冷したリン酸緩衝塩類溶液(PBS)で洗浄して、細胞のペレットを得た。細胞ペレットからの核抽出物の調製は、Novagen社のタンパク抽出キットであるNucBuster(登録商標)を使用した。すなわち、細胞のペレットを、150μlのReagent1で分散させ、ボルテックスで15秒間ホモジナイズし、5分間、氷上で静置した。その後、再びボルテックスで15秒間ホモジナイズし、15000rpm、4℃5分間遠心し、細胞質フラクションとなる上清を回収した。得られたペレットに、DTT、プロテアーゼインヒビター、及びReagent2の混合液(混合比1:1:75)80μl加え、ボルテックスで15秒間ホモジナイズし、5分間氷上で静置した。再びボルテックスで15秒間ホモジナイズし、15000rpm、4℃で5分間遠心し、得られた上清を核抽出物とした。
〔検量線の作成〕
リコビナントNF−κB(プロメガ社)1μlと希釈液(50mM NaCl、5mM DTT、20mM HEPES(pH7.9)、0.1% NP−40、10%グリコール)39μlを混合し、リコビナントNF−κB濃度6ng/μlのキャリブレーター原液を調製した。
FCSバッファー4μl、100nMの蛍光標識核酸プローブPfw0.2μl(最終濃度1nM)、水8.8μl、Reagent2を5μl混合して、検量用反応液を調製した。
検量用反応液にキャリブレーター原液の希釈液とを混合して、リコビナントNF−κB濃度1.5ng/μl、0.8ng/μl、0.2ng/μlのキャリブレーターを調製した。室温で10分間反応させた後、MF20(オリンパス社)により、各キャリブレータの並進拡散時間を測定した。リコビナントNF−κB濃度0ng/μlに該当する希釈液のみと検量線用反応液の混合液についても、上記キャリブレータと同様にして、並進拡散時間を測定した。
リコビナントNF−κBの濃度をX軸、と並進拡散時間をY軸にプロットし、直線性が得られる濃度範囲で最小自乗法により検量線を作成した。得られた検量線のグラフを図1に示す。
〔純系液体試料中のタンパク−プローブ複合体の並進拡散時間〕
(1)FCS測定用試料の調製
純系試料として、リコビナントNF−κBの0.6μg/μl溶液を用いた。この純系液体試料5μlに、FCSバッファー、水、poly(dIdC)、及び核酸プローブを、表2に示すように混合して、測定用サンプルNo.1−5を調製した。また、コントロールとして、純系試料を含まず、核酸プローブとして蛍光標識プローブPfwのみを使用したものを用いた。さらに、参考のために、抗p50抗体をさらに添加したものを用いた。尚、各サンプルにおいて、反応時間は10分とした。
Figure 2009008608

(2)FCS測定
上記で調製したサンプルNo.1−5、コントロール、及び参考例について、オリンパス社のMF20を用いて、並進拡散時間を測定した。結果を図2に示す。
蛍光標識プローブPfwに基づく並進拡散時間(478.2μsec)を示すコントロールに対して、サンプルNo.1の並進拡散時間(969.3μsec)は、NF−κBと蛍光標識プローブPfwとの複合体(Pfw−NF複合体と略記)形成に基づき、長くなっていた。サンプル2は競合プローブとなるPwが含まれているため、Pfw−NF複合体形成の割合が若干減少したためか、並進拡散時間(868μsec)は、コントロールの並進拡散時間よりは長いが、サンプル1の並進拡散時間よりは短かった。Pw量が50倍であるサンプル3の拡散時間(495.8μsec)は、コントロールとほぼ同じであり、NF−κBの大部分がPwと複合体を形成し、蛍光物質であるPfwは複合体を形成しない状態で存在していたと言える。
サンプル4,5は、NF−κBが結合しない核酸プローブを含有する場合であり、いずれの並進拡散時間もサンプル1と同程度であった。このことは、サンプル4,5では蛍光物質はPfw−NF複合体であったことがわかる。
尚、参考例では、抗p50抗体が拡散プローブPfwよりも分子量が大きいことに基づき、当該抗体とNF−κBとの複合体はPfw−NF複合体よりも大きくなり、拡散時間も長くなったと考えられる。
〔HeLa細胞の核抽出物のタンパク−プローブ複合体の並進拡散時間〕
(1)FCS測定用試料の調製
夾雑物を含有する生体試料として、ヒト子宮頸癌の細胞株であるHeLa細胞の核抽出物を使用し、DNA結合タンパクとして活性型NF−κB(核に移行したNF−κB)を定量した。培養細胞の状態から活性型NF−κBを得るために、すなわち核内にNF−κBを移行させるために、TNF−αをHeLa細胞の培地に添加した後、核抽出物を調製し、表3に示すように、核抽出物、FCS測定用溶媒、Poly(dIdC)、核酸プローブを混合して、サンプル10−13を調製した。反応時間は、5分とした。
なお、サンプル10については、TNF−αを添加せずに調製した核抽出物を用いた。また、コントロールでは、核抽出物を添加しなかった。
Figure 2009008608
(2)FCS測定
サンプル10−13及びコントロールについて、オリンパス社のMF20を用いて、並進拡散時間を測定した。結果を図3に示す。
サンプル10とサンプル11の相違点は、NF−κBを活性型NF−κBとするための刺激の有無である。TNF−αを添加したサンプル11の並進拡散時間は、無添加のサンプル10の並進拡散時間よりも長くなっており、蛍光標識プローブPfwがNF−κBと複合体(Pfw−NF複合体)を形成したことが確認できる。そして、NF−κBが核に移行するためには、TNF−αを添加する必要があることがわかる。
サンプル10では、原則として、ほとんど活性型NF−κBは含まれていないと考えられるので、蛍光物質は蛍光標識プローブPfw単体であると考えられるが、サンプル10の並進拡散時間(610.8μsec)は、コントロールの並進拡散時間(566.7μsec)より長かった。このことは、サンプル10では、TNF−αによる刺激を与えない状態でも、核内に少量のNF−κBが含まれていること、あるいはサンプル10の溶液試料は、核抽出物自体を含まないコントロールと比べて、溶液の粘性が上がったことにより、蛍光標識プローブPfwのブラウン運動の自由度が若干阻害されたためと考えられる。
サンプル12では、競合プローブの共存により、NF−κBの大部分が非標識プローブPwと複合体を形成し、蛍光物質は、蛍光標識プローブPfw単体となっていると考えられる。サンプル12の並進拡散時間は、サンプル10の並進拡散時間とほぼ等しかったことから、サンプル10では、NF−κBはほとんど含まれていなかったと考えられる。
サンプル13の並進拡散時間は、サンプル11の並進拡散時間とほぼ等しかった。サンプル13では、共存している非標識プローブPnは、NF−κBが複合体を形成しないプローブであることから、サンプル13に存在する蛍光物質は、Pfw−NF複合体であると考えられる。従って、Pfw−NF複合体の形成による並進拡散時間の延長は、NF−κBの有無によるサンプル10の並進拡散時間とサンプル11の並進拡散時間の差違で知ることができるだけでなく、競合プローブの共存によるPfw−NF複合体の形成の有無によるサンプル12の並進拡散時間とサンプル13の並進拡散時間との差で知ることができる。また、コントロールの並進拡散時間の差とサンプル10の並進拡散時間の差は、溶液粘度が高くなったことによる蛍光標識プローブPfwのブラウン運動の自由度が若干影響を受けたためではないかと考えられる。
〔核抽出物中のNF−κBの定量:添加回収実験による検証〕
(1)FCS測定用試料の調製及びFCSによる測定
ヒト単球系細胞株であるU937より調製した核抽出物10μgに対してリコビナントNF−κBを0.4ng/μlとなるように混合し、さらに核酸プローブ(Pfw、Pw、Pn)、FCSバッファー、Reagent2、Poly(dIdC)、水を表4に示すように混合して、測定用試料21、22、23を調製した。上記で調製した各測定用試料21,22,23について、FCSにより蛍光物質の並進拡散時間を3回ずつ測定し、平均並進拡散時間を求めた。各測定用試料の組成及び平均並進拡散時間を表4に示す。
Figure 2009008608
(2)含有量の算出及び検証
図1に示す検量線に基づき、並進拡散時間からNF−κB量を算出した。
試料21の並進拡散時間(650.7μsec)とコントロールとなる検量線作成に使用したNF−κB濃度が0ng/μlの並進拡散時間(533μsec)の差から算出されるNF−κB量は0.50ng/μlであった。これは、試料に添加したNF−κB量から考えると回収率は124%に該当する。一方、試料22の並進拡散時間と試料23の並進拡散時間の差から算出されるNF−κB量は0.42ng/μlであった。これは、試料に添加したNF−κB量から考えると回収率は105%に該当する。
従って、非標識核酸プローブ(Pw、Pn)の競合アッセイ系を利用した本発明の定量方法によれば、試料に含まれる夾雑物の影響が相殺されて、蛍光標識核酸プローブとの複合体形成に基づく並進拡散時間の遅延を正確に知ることができ、検量線から算出される含有量の信頼性が高い、高精度の定量方法であることが確認できた。
本発明の試薬キットを使用する本発明の定量方法によれば、生体試料のような、目的とするDNA結合タンパク以外に、他のタンパク等の高分子や夾雑物が混在している試料から、目的とするDNA結合タンパクの分離精製といった煩雑な操作をしなくても、高精度に目的タンパクの含有量を、短時間で定量することができる。従って、急患患者の症状や手術中の病状変化や時々刻々と病状が変化するような症状の把握のための診断支援情報を得るためのタンパク定量方法、定量用キットとして有用である。
NF−κBと並進拡散時間の関係を示す検量線のグラフである。 純系液体試料を用いた場合のFCS測定結果一覧を示すグラフである。 核抽出物試料におけるNF−κBのFCS測定結果一覧を示すグラフである。

Claims (14)

  1. 液体試料中の目的とするDNA結合タンパクの含有量を測定する方法であって、
    前記DNA結合タンパクが結合する核酸配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)を含有する測定用試薬Aと、前記液体試料とを混合した混合液Aにおける並進拡散時間(Ta)を、蛍光相関分光法により求める工程;
    前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)を含有する測定用試薬Bと、前記液体試料とを混合した混合液Bにおける並進拡散時間(Tb)を、蛍光相関分光法により求める工程;及び
    並進拡散時間(Ta)と並進拡散時間(Tb)との差に基づいて、前記試料に含まれる前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程;
    を含むDNA結合タンパクの定量方法。
  2. 前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程は、
    目的のDNA結合タンパク量と並進拡散時間との関係データ、及び前記差に基づいて、前記液体試料に含まれる前記目的のDNA結合タンパク量を求める工程である、請求項1に記載のDNA結合タンパクの定量方法。
  3. 前記関係データは、
    前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)を含有する検量用反応液、及び前記DNA結合タンパクを既知量含む検量用試料を混合して得られる、前記DNA結合タンパク量が異なる2種以上の試料について測定された並進拡散時間と、
    前記各試料のDNA結合タンパク量との関係から得られた検量線である請求項2に記載のDNA結合タンパクの定量方法。
  4. 前記測定用試薬A及び前記測定用試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量は、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の含有量に対し過剰量である、請求項1〜3のいずれかに記載の定量方法。
  5. 前記測定用試薬A及び前記測定用試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量が同等量である、請求項1〜4のいずれかに記載の定量方法。
  6. 前記液体試料は、核抽出物を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の定量方法。
  7. 前記DNA結合タンパクは、転写因子である請求項1〜6のいずれかに記載の定量方法。
  8. 前記転写因子は、サイトカインの転写を調節する転写因子である請求項7に記載の定量方法。
  9. 前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)、及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)の少なくとも1つが、ステムループ構造を形成している請求項1〜8のいずれかに記載の定量方法。
  10. 目的のDNA結合タンパクと結合する塩基配列を有する蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と、前記DNA結合タンパクと結合する塩基配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)とを含有する試薬A;及び
    前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)と、前記DNA結合タンパクが結合しない非標識核酸プローブ(Pn)とを含有する試薬B;
    を含む、蛍光相関分光法によるDNA結合タンパクの定量用キット。
  11. 前記試薬A及び前記試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量は、前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の含有量に対し過剰量である、請求項10に記載の定量用キット。
  12. 前記試薬A及び前記試薬Bにそれぞれ含まれる前記非標識核酸プローブ(Pw)及び前記非標識核酸プローブ(Pn)の含有量が同等量である、請求項10〜11のいずれかに記載の定量用キット。
  13. 前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)の塩基配列と、前記非標識核酸プローブ(Pw)の塩基配列とは同一である請求項10〜12のいずれかに記載の定量用キット。
  14. 前記蛍光標識核酸プローブ(Pfw)、前記核酸配列を有する非標識核酸プローブ(Pw)、及び前記DNA結合タンパクが結合しない核酸配列からなる非標識核酸プローブ(Pn)の少なくとも1つが、ステムループ構造を形成している請求項10〜13のいずれかに記載の定量用キット。
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