JP2009007663A - 耐隙間腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.05%以下、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、Cr:20〜25%、Cu:0.3〜1.0%、Ni:0.1〜3.0%、Nb:0.2〜0.6%、N:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、Nb炭窒化物が存在し、かつ前記炭窒化物の径が5μm以下であり、鋼板の表面粗度Raが0.4μm以下であることを特徴とする耐隙間腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
【選択図】図1
Description
C:0.05%以下
C量が0.05%を超えると、鋼を硬質化し、プレス加工性を著しく低下させるとともに、粗大なNb(C,N)の析出を促進し、不動態皮膜の欠陥を誘発して、耐隙間腐食性を劣化させる。このため、C量は0.05%以下、好ましくは0.02%以下とする。
Siは、鋼の脱酸剤として有用な元素である。しかしながら、Si量が0.02%未満では、十分な脱酸効果が得られず、酸化物が多量に生成し、不動態皮膜の欠陥が生じる。一方、Si量が1.0%を超えると、鋼を硬質化し、プレス加工性を低下させる。このため、Si量は0.02%以上1.0%以下とする。
Mn量が0.05%を超えると、固溶強化により鋼を硬質化し、プレス加工性を損なううえ、MnSとして析出し、耐食性を低下させる。このため、Mn量は0.5%以下とするが、少ないほど好ましい。
P量が0.04%を超えると、耐食性を低下させるばかりか、結晶粒界に偏析して熱間加工性を劣化させる。このため、P量は0.04%以下、好ましくは0.03%とする。
S量が0.02%を超えると、MnSとして析出し、耐食性を低下させる。このため、S量は0.02%以下とする。
Alは、鋼の脱酸のために有効な成分である。しかし、Al量が0.1%を超えると、Al系の非金属介在物の増加により不動態皮膜の欠陥が増加する。このため、Al量は0.1%以下とする。
Crは、フェライト系ステンレス鋼の耐食性を決める重要な元素である。隙間腐食環境下では、平滑な表面の場合に比べ、より厳しい腐食環境となるため、Cr量が20%未満では十分な耐食性が得られない。一方、Cr量が25%を超えると、σ相が生成しやすくなりプレス加工性が低下する。このため、Cr量は20%以上25%以下とする。
Cuは、本発明の主要な構成要件の一つであり、腐食発生後、ステンレス鋼の表面に皮膜を形成し、アノード反応による地鉄の溶解を抑制する効果を有する。Niとの複合添加により、Cu皮膜の形成が起こりやすくなり、いっそう活性溶解を緩和する。また、耐発錆性の向上や耐隙間腐食性の向上にも有効な元素である。さらに、表面が平滑で、粗大な析出物が存在しなければ、一旦溶解したCuが地鉄に付着しやすくなり、より迅速に緻密なCu皮膜が形成され、活性溶解が緩やかになる。そのため、部分的に形成された不動態皮膜が地鉄の溶解によって剥離しがたくなり、緻密な不動態皮膜が早期に形成される。緻密な不動態皮膜が形成されると、より低いpHまで不動態を維持することが可能となり、再不動態化能も高くなる。このように不動態皮膜が改質されることで、耐隙間腐食性が向上すると考えられる。このようなCuの効果を得るには、Cu量を0.3%以上にする必要があるが、1.0%を超えると、Cu自身の溶解を促進し、かえって耐食性を低下させる。このため、Cu量は0.3%以上1.0%以下とする。
Niは、本発明の主要な構成要件の一つであり、酸によるアノード反応を抑制し、脱不動態化pHを低下して、より低いpHでも不動態の維持を可能にする元素である。腐食が発生すると、溶解したFeが溶液中の水酸基と反応して水酸化物として沈殿し、pHが低下する。特に、隙間腐食環境下では、拡散によるイオンの移動が穏やかであるため、pHの低下が顕著である。Niが添加されると、Feの溶解によるpHの低下が穏やかになり、腐食の進行も遅くなって、表面原子の流出が穏やかになり、表面に安定したCuの膜や不動態皮膜が生成しやすくなる。そのため、Ni添加により、耐隙間腐食性が向上すると考えられる。このようなNiの効果を得るには、Ni量を0.1%以上にする必要があるが、3.0%を超えると、鋼が硬質化する。このため、Ni量は0.1%以上3.0%以下とする。
Nbは、本発明の主要な構成要件の一つであり、C、Nを固定してCr炭窒化物による鋭敏化を防ぐために有効な元素である。また、本発明者らは、形成されるNb炭窒化物の径を5μm以下にすると、Nb炭窒化物が隙間腐食の起点となりにくいことを見出した。Nb炭窒化物としては、Nb(C,N)とNbCがよく知られている。このうち、Nb(C,N)は数μm以上の径の粗大析出物となるに対し、NbCは1μm以下の径の微細析出物となることが多い。Nb含有量を適正な範囲とし、Nb(C,N)の析出を抑制して、析出物の径を5μm以下とすることで、不動態皮膜の欠陥となる腐食起点とはなりにくく、再不動態化の障害にならなくすることができる。このようなNbの効果を得るには、Nb量を0.2%以上にする必要があるが、0.6%を超えると、粗大なNb(C,N)が析出しやすくなる。このため、Nb量は0.2%以上0.6%以下とする。
Nは、鋼中に固溶して耐食性を向上させる効果を有する。しかし、N量が0.05%を超えると、粗大なNb(C,N)の析出を促進し、耐隙間腐食性を劣化させばかりか、プレス加工性を著しく低下させる。このため、N量は0.05%以下とする。
Zrは、C、Nを固定してCr炭窒化物による鋭敏化を防ぐために有効な元素であり、用途に応じて添加できる。しかし、Zr量が0.5%を超えると、ZrO2などが多量に生成し、表面傷の原因となる。このため、Zr量は0.5%以下とする。
Moは、耐食性を向上させる元素であり、耐隙間腐食性も向上させる。しかし、Mo量が1.0%を超えると、その効果は飽和し、かえってプレス加工性を低下させる。このため、Mo量は1.0%以下とする。
上述したように、Nb炭窒化物を存在させ、その径を5μm以下にすると、Cuの皮膜および不動態皮膜の再形成が起こりにくくなる。その原因は不明であるが、以下のように考えられる。すなわち、表面に5μmを超える析出物があると、その部分だけ不動態皮膜が形成されず、地鉄と析出物との境界は不動態皮膜の欠陥となり、腐食の起点となる。同様に、Cuの皮膜の形成も抑制され、活性溶解が抑制されにくくなる。このため、Nb炭窒化物を存在させ、その径を5μm以下にする必要がある。
表面粗度Raが0.4μmを超えると、隙間の内部と外部で局所的な酸素濃度の不均衡が生まれやすくなり、アノードとカソードに分極してマクロセルを形成し、腐食が起こりやすくなる。また、隙間腐食環境下では、表面の凹凸がイオンの拡散を妨げ、隙間内外でのイオン濃度差の発生を促進する。さらに、平滑でない表面には、Cuの皮膜が生成されにくく、活性溶解が抑制される。このため、鋼板の表面粗度Raを0.4μm以下とする必要がある。
本発明のフェライト系ステンレス鋼板は、通常のフェライト系ステンレス鋼板と同様な方法で作製できる。例えば、上記の成分組成を有する鋼スラブを1150〜1200℃に加熱後、700〜900℃の仕上温度で熱間圧延して板厚2.5〜6mmの熱延板とし、20℃/s以上の冷却速度で570℃以下まで冷却し、570℃以下の巻取温度で巻取り、900〜1100℃で熱延板焼鈍を行った後、酸洗、冷間圧延して冷延板とし、再結晶焼鈍、酸洗、調質圧延することにより製造できる。鋼板の表面粗度Raは、調質圧延のロールの粗度を変えて調整可能である。なお、熱延板を巻取った後は、475℃脆性を避けるために、425〜525℃の温度範囲を100℃/h以上で冷却することが望ましい。また、再結晶焼鈍では、Nbを含む炭窒化物の粗大化を避けるために、鋼板が900℃以上となる時間は1分以下とすることが好ましい。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.05%以下、Si:0.02〜1.0%、Mn:0.5%以下、P:0.04%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、Cr:20〜25%、Cu:0.3〜1.0%、Ni:0.1〜3.0%、Nb:0.2〜0.6%、N:0.05%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有し、Nb炭窒化物が存在し、かつ前記炭窒化物の径が5μm以下であり、鋼板の表面粗度Raが0.4μm以下であることを特徴とする耐隙間腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
- さらに、質量%で、Zr:0.5%以下およびMo:1.0%以下のうちから選ばれた少なくとも1種の元素を含む成分組成を有することを特徴とする請求項1に記載の耐隙間腐食性に優れたフェライト系ステンレス鋼板。
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