本発明による積層構造の製造方法は、基板に複数の層を順に積層する工程と、複数の層の上にマスクを形成する工程と、マスクを用いて複数の層を一括してエッチングする工程とマスクを剥離液で剥離する工程とを含むものである。複数の層を順に形成する工程は、例えば、基板に密着層を形成する工程と、密着層の表面に接して銀層を形成する工程と、銀層の表面に接して銀層を保護するバリア層を形成する工程とを含むものである。
複数の層のうちの一層として、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された銀層を形成することができるが、このときフォトレジストマスクを用いたエッチング後の剥離液としては、前記剥離液は、ジエチレントリアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−2プロパノール、N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミンおよびホルモリンのうちの少なくとも一種からなる有機アミノ化合物と、1種または2種以上の極性有機溶剤とを含有する、非水性のフォトレジスト剥離液組成物を用いることが好ましく、更に、このとき有機アミノ化合物の総含有量含有量を、20質量%以上50質量%以下、更に、極性有機溶剤を、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびN−メチル−2−ピロリジノンのうちの少なくとも一種とすることが望ましい。
本発明による積層構造は、基板に、密着層と、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された銀層と、バリア層とを順に形成したのち、バリア層の上にマスクを形成し、このマスクを用いてバリア層、銀層および密着層を一括してエッチングすることにより形成されたものである。
本発明による表示素子は、基板に、密着層と、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された銀層と、バリア層とを順に形成したのち、バリア層の上にマスクを形成し、このマスクを用いてバリア層、銀層および密着層を一括してエッチングすることにより形成された積層構造を備えたものである。
本発明による表示装置は、基板に複数の表示素子を備えたものであって、表示素子は、密着層と、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された銀層と、バリア層とを順に形成したのち、バリア層の上にマスクを形成し、このマスクを用いてバリア層、銀層および密着層を一括してエッチングすることにより形成された積層構造を備えたものである。
本発明による積層構造の製造方法では、基板に複数の層が順に積層されたのち、これらの複数の層の上にマスクが形成される。続いて、このマスクを用いて複数の層が一括してエッチングされる。このマスクは剥離液により剥離される。
本発明による積層構造、表示素子および表示装置では、バリア層、銀層および密着層が一括してエッチングされることによって、銀層のサイドエッチングが防止される。そして、このとき、マスクの剥離液に水が含まれていると、剥離液に含まれる成分が水と反応してアルカリ性を示すようになり、銀層の側面を腐食したり粒界に入り込み、表示素子の画素内の腐食を進行させるため欠陥が増加するが、特に、上記の非水性の剥離液でマスクを剥離することにより、露出した側面の銀が腐食されることもなく、バリア層表面のマスクおよび不純物が完全に除去されるため、信頼性が向上する。
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
〔第1の実施の形態〕
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の断面構造を表すものである。この表示装置は、極薄型の有機発光ディスプレイとして用いられるものであり、駆動パネル10と封止パネル20とが対向配置され、熱硬化型樹脂よりなる接着層30により全面が貼り合わせられている。駆動パネル10は、例えば、ガラスなどの絶縁材料よりなる基板11の上に、TFT12および平坦化層13を介して、赤色の光を発生する有機発光素子10Rと、緑色の光を発生する有機発光素子10Gと、青色の光を発生する有機発光素子10Bとが、順に全体としてマトリクス状に設けられている。
TFT12のゲート電極(図示せず)は、図示しない走査回路に接続され、ソースおよびドレイン(いずれも図示せず)は、例えば酸化シリコンあるいはPSG(Phospho-Silicate Glass)などよりなる層間絶縁膜12Aを介して設けられた配線12Bに接続されている。配線12Bは、層間絶縁膜12Aに設けられた図示しない接続孔を介してTFT12のソースおよびドレインに接続され、信号線として用いられる。配線12Bは、例えばアルミニウム(Al)もしくはアルミニウム(Al)―銅(Cu)合金により構成されている。なお、TFT12の構成は、特に限定されず、例えば、ボトムゲート型でもトップゲート型でもよい。
平坦化層13は、TFT12が形成された基板11の表面を平坦化し、有機発光素子10R,10G,10Bの各層の膜厚を均一に形成するためのものである。平坦化層13には、有機発光素子10R,10G,10Bの積層構造14と配線12Bとを接続する接続孔13Aが設けられている。平坦化層13は、微細な接続孔13Aが形成されるため、パターン精度が良い材料により構成されていることが好ましい。平坦化層13の材料としては、ポリイミド等の有機材料、あるいは酸化シリコン(SiO2 )などの無機材料を用いることができる。本実施の形態では、平坦化層13は、例えばポリイミド等の有機材料により構成されている。
有機発光素子10R,10G,10Bは、例えば、基板11の側から、TFT12および平坦化層13を介して、陽極としての積層構造(第1電極)14、絶縁膜15、発光層を含む有機層16、および陰極としての共通電極(第2電極)17がこの順に積層されている。共通電極17の上には、必要に応じて、保護膜18が形成されている。
積層構造14は、反射層としての機能も兼ねており、できるだけ高い反射率を有するようにすることが発光効率を高める上で望ましい。そのため、積層構造14は、例えば、銀(Ag)または銀を含む合金により構成された反射層14Aを含むことが好ましい。銀は金属の中で最も反射率が高く、反射層14Aにおける光の吸収損失を小さくすることができるからである。なお、反射層14Aを銀により構成するようにすれば反射率を最も高くすることができるので好ましいが、銀と他の金属との合金により構成するようにすれば、化学的安定性および加工精度を高めることができると共に、後述する密着層14Bおよびバリア層14Cとの密着性も向上させることができるので好ましい。銀は非常に反応性が高く、加工精度および密着性も低いなど、極めて取り扱いが難しいからである。
反射層14Aの積層方向の膜厚(以下、単に膜厚と言う)は、例えば50nm以上200nm以下であることが好ましい。膜厚がこの範囲内であれば、高い反射率を得ることができるからである。更に、50nm以上150nm以下であればより好ましい。反射層14Aを薄くすることにより表面粗さを小さくすることができ、したがって後述するバリア層14Cの膜厚を薄くして光の取り出し効率を上げることができるからである。また、反射層14Aを薄くすることにより、製造途中の熱工程により反射層14Aが結晶化して表面の凹凸が激しくなるのを緩和し、反射層14A表面の凹凸によりバリア層14Cの欠陥が増加するのを阻止することができるからである。
積層構造14は、例えば、基板11の側から、密着層14B、反射層14Aおよびバリア層14Cがこの順に積層されていることが好ましい。密着層14Bは、基板11の平坦面11Aと反射層14Aとの間に設けられ、反射層14Aが平坦化層13から剥離するのを防止するものである。バリア層14Cは、反射層14Aを構成する銀あるいは銀を含む合金が空気中の酸素あるいは硫黄成分と反応することを防止すると共に、反射層14Aを形成した後の製造工程においても反射層14Aがダメージを受けることを緩和する保護膜としての機能を有している。また、バリア層14Cは、銀または銀を含む合金よりなる反射層14Bの表面粗さを緩和する表面平坦化膜としての機能をも有している。
積層構造14は、後述するように、基板11に、密着層14Bと、反射層14Aと、バリア層14Cとを順に形成したのち、バリア層14Cの上にマスクを形成し、このマスクを用いてバリア層14C、反射層14Aおよび密着層14Bを一括してエッチングすることにより形成されたものである。積層構造14の側壁面14Dの形状は、図1に示したような連続面に限られず、一部階段状になっていてもよいし、折れ線状、曲線状、あるいは曲線をつないだような形状などの不均一な形状であってもよい。更に、側壁面14Dは、基板11あるいは平坦化層13に対して垂直であってもよく、斜めになっていてもよい。
バリア層14Cは、例えば、インジウム(In),スズ(Sn)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む金属化合物または導電性酸化物により構成されていることが好ましい。具体的には、バリア層14Cは、インジウム(In)とスズ(Sn)と酸素(O)とを含む化合物(ITO;Indium Tin Oxide),インジウム(In)と亜鉛(Zn)と酸素(O)とを含む化合物(IZO;Indium Zinc Oxide ),酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO)からなる群のうちの少なくとも1種により構成されていることが好ましい。これらの材料をバリア層14Cとして用いることにより積層構造14の平坦性を高めることができるので、有機層16の各層の膜厚が均一になり、有機層16の膜厚不足による積層構造14と共通電極17との短絡の虞がなくなると共に、特に後述の共振器構造を形成する場合には画素内色むらの発生を防いで色再現性を高めることができるので好適であるからである。また、これらの材料は可視光領域における光吸収性が極めて小さいことから、バリア層14Cにおける吸収損失を低減し、光取り出し効率を高めることができるからである。更に、バリア層14Cは、有機層16への正孔注入効率を高めるという仕事関数調整層としての機能も有しており、反射層14Aよりも仕事関数の高い材料により構成されていることが好ましいからである。なかでも、生産性の観点からはITOおよびIZOが特に好ましい。
バリア層14Cの膜厚は、上述した保護膜としての機能を確保するためには例えば、1nm以上50nm以下であることが好ましい。更に、光取り出し効率を高めるためには、3nm以上15nm以下であればより好ましい。
密着層14Bは、例えば、インジウム(In),スズ(Sn)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む金属化合物または導電性酸化物により構成されていることが好ましい。具体的には、密着層14Bは、インジウム(In)とスズ(Sn)と酸素(O)とを含む化合物(ITO;Indium Tin Oxide),インジウム(In)と亜鉛(Zn)と酸素(O)とを含む化合物(IZO;Indium Zinc Oxide ),酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO)からなる群のうちの少なくとも1種により構成されていることが好ましい。バリア層14Cおよび反射層14Aをエッチングした後に密着層14Bをエッチングする際に、新たなマスクを形成したりエッチングガスを変更する必要がなく、同じマスクを用いて同じエッチングガスによりパターニングすることができるからである。更に、密着層14Bを構成する材料とバリア層14Cを構成する材料とが、インジウム(In),スズ(Sn)および亜鉛(Zn)のうち少なくとも一つ同じ元素を含むようにすればより好ましく、中でもインジウム(In)を含むようにすれば特に好ましい。
密着層14Bの膜厚は、反射層14Aのヒロックあるいは剥離を抑制できる程度であることが好ましい。具体的には、5nm以上50nmであることが好ましく、更に10nm以上30nmであればより好ましい。
本実施の形態では、密着層14Bおよびバリア層14Cは、例えば両者ともITOにより構成されている。その他、例えば、密着層14BをITO、バリア層14CをIZOによりそれぞれ構成することが可能である。あるいは、密着層14Bおよびバリア層14Cは、両者ともIZOにより構成されていてもよい。あるいは、密着層14BをZnO、バリア層14CをITOによりそれぞれ構成してもよい。
絶縁膜15は、積層構造14と共通電極17との絶縁性を確保すると共に、有機発光素子10R,10G,10Bにおける発光領域の形状を正確に所望の形状とするためのものである。絶縁膜15は、例えば、膜厚が600nm程度であり、酸化シリコンあるいはポリイミドなどの絶縁材料により構成されている。絶縁膜15は、積層構造14の側壁面14Eから上面の周辺部にかけてを覆うように形成され、積層構造14すなわち有機発光素子10R,10G,10Bにおける発光領域に対応して開口部15Aが設けられている。
有機層16は、有機発光素子10R,10G,10Bの発光色によって構成が異なっている。図2は、有機発光素子10R,10Bにおける有機層16の構成を拡大して表すものである。有機発光素子10R,10Bの有機層16は、正孔輸送層16A,発光層16Bおよび電子輸送層16Cが積層構造14の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層16Aは、発光層16Bへの正孔注入効率を高めるためのものである。本実施の形態では、正孔輸送層16Aが正孔注入層を兼ねている。発光層16Bは、電界をかけることにより電子と正孔との再結合が起こり、光を発生するものであり、絶縁膜15の開口部15Aに対応した領域で発光するようになっている。電子輸送層16Cは、発光層16Bへの電子注入効率を高めるためのものである。
有機発光素子10Rの正孔輸送層16Aは、例えば、膜厚が45nm程度であり、ビス[(N−ナフチル)−N−フェニル]ベンジジン(α−NPD)により構成されている。有機発光素子10Rの発光層16Bは、例えば、膜厚が50nm程度であり、2,5−ビス[4−[N−(4−メトキシフェニル)―N−フェニルアミノ]]スチリルベンゼン―1,4−ジカーボニトリル(BSB)により構成されている。有機発光素子10Rの電子輸送層16Cは、例えば、膜厚が30nm程度であり、8−キノリノールアルミニウム錯体(Alq3 )により構成されている。
有機発光素子10Bの正孔輸送層16Aは、例えば、膜厚が30nm程度であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Bの発光層16Bは、例えば、膜厚が30nm程度であり、4,4−ビス(2,2−ジフェニルビニン)ビフェニル(DPVBi)により構成されている。有機発光素子10Bの電子輸送層16Cは、例えば、膜厚が30nm程度であり、Alq3 により構成されている。
図3は、有機発光素子10Gにおける有機層16の構成を拡大して表すものである。有機発光素子10Gの有機層16は、正孔輸送層16Aおよび発光層16Bが積層構造14の側からこの順に積層された構造を有している。正孔輸送層16Aは、正孔注入層を兼ねており、発光層16Bは、電子輸送層を兼ねている。
有機発光素子10Gの正孔輸送層16Aは、例えば、膜厚が50nm程度であり、α−NPDにより構成されている。有機発光素子10Gの発光層16Bは、例えば、膜厚が60nm程度であり、Alq3 にクマリン6(C6;Coumarin6)を1体積%混合したものにより構成されている。
図1ないし図3に示した共通電極17は、例えば、膜厚が10nm程度であり、銀(Ag),アルミニウム(Al),マグネシウム(Mg),カルシウム(Ca),ナトリウム(Na)などの金属または合金により構成されている。本実施の形態では、例えばマグネシウム(Mg)と銀との合金(MgAg合金)により構成されている。
共通電極17は、有機発光素子10R,10G,10Bのすべてを覆うように形成されている。共通電極17の電圧降下を抑制するため、絶縁膜15の上には補助電極17Aが設けられていることが好ましい。補助電極17Aは、有機発光素子10R,10G,10Bの隙間を縫って設けられており、その端部は、基板11の周辺部に、有機発光素子10R,10G,10Bが設けられた領域を取り囲むように形成された図示しない母線となる幹状補助電極に接続されている。補助電極17Aおよび図示しない母線となる幹状補助電極は、例えば、アルミニウム(Al)あるいはクロム(Cr)のような低抵抗の導電性材料を単層あるいは積層構造としたものにより構成されている。
共通電極17は、また、半透過性反射層としての機能を兼ねている。すなわち、この有機発光素子10R,10G,10Bは、積層構造14の反射層14Aとバリア層14Cとの界面を第1端部P1、共通電極17の発光層16B側の界面を第2端部P2とし、有機層16およびバリア層14Cを共振部として、発光層16Bで発生した光を共振させて第2端部P2の側から取り出す共振器構造を有している。このように共振器構造を有するようにすれば、発光層16Bで発生した光が多重干渉を起こし、一種の狭帯域フィルタとして作用することにより、取り出される光のスペクトルの半値幅が減少し、色純度を向上させることができるので好ましい。また、封止パネル20から入射した外光についても多重干渉により減衰させることができ、後述するカラーフィルタ22(図1参照)との組合せにより有機発光素子10R,10G,10Bにおける外光の反射率を極めて小さくすることができるので好ましい。
そのためには、共振器の第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離Lは数1を満たすようにし、共振器の共振波長(取り出される光のスペクトルのピーク波長)と、取り出したい光のスペクトルのピーク波長とを一致させることが好ましい。光学的距離Lは、実際には、数1を満たす正の最小値となるように選択することが好ましい。
(数1)
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(式中、Lは第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離、Φは第1端部P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と第2端部P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)、λは第2端部P2の側から取り出したい光のスペクトルのピーク波長、mはLが正となる整数をそれぞれ表す。なお、数1においてLおよびλは単位が共通すればよいが、例えば(nm)を単位とする。)
図1に示した保護膜18は、例えば、膜厚が500nm以上10000nm以下であり、透明誘電体からなるパッシベーション膜である。保護膜18は、例えば、酸化シリコン(SiO2 ),窒化シリコン(SiN)などにより構成されている。
封止パネル20は、図1に示したように、駆動パネル10の共通電極17の側に位置しており、接着層30と共に有機発光素子10R,10G,10Bを封止する封止用基板21を有している。封止用基板21は、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光に対して透明なガラスなどの材料により構成されている。封止用基板21には、例えば、カラーフィルタ22が設けられており、有機発光素子10R,10G,10Bで発生した光を取り出すと共に、有機発光素子10R,10G,10B並びにその間の配線において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっている。
カラーフィルタ22は、封止用基板21のどちら側の面に設けられてもよいが、駆動パネル10の側に設けられることが好ましい。カラーフィルタ22が表面に露出せず、接着層30により保護することができるからである。カラーフィルタ22は、赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bを有しており、有機発光素子10R,10G,10Bに対応して順に配置されている。
赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bは、それぞれ例えば矩形形状で隙間なく形成されている。これら赤色フィルタ22R,緑色フィルタ22Gおよび青色フィルタ22Bは、顔料を混入した樹脂によりそれぞれ構成されており、顔料を選択することにより、目的とする赤,緑あるいは青の波長域における光透過率が高く、他の波長域における光透過率が低くなるように調整されている。
さらに、カラーフィルタ22における透過率の高い波長範囲と、共振器構造から取り出す光のスペクトルのピーク波長λとは一致している。これにより、封止パネル20から入射する外光のうち、取り出す光のスペクトルのピーク波長λに等しい波長を有するもののみがカラーフィルタ22を透過し、その他の波長の外光が有機発光素子10R,10G,10Bに侵入することが防止される。
この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
図4ないし図14はこの表示装置の製造方法を工程順に表すものである。まず、図4(A)に示したように、上述した材料よりなる基板11の上に、TFT12,層間絶縁膜12Aおよび配線12Bを形成する。
次に、図4(B)に示したように、基板11の全面に、例えばスピンコート法により上述した材料よりなる平坦化層13を形成し、露光および現像により平坦化層13を所定の形状にパターニングすると共に接続孔13Aを形成する。そののち、ポリイミドをイミド化させるため、クリーンベーク炉で例えば320℃の温度で焼成する。
続いて、図5(A)に示したように、平坦化層13によって形成された平坦面11Aの上に、例えばスパッタ法により、例えばITOよりなる密着層14Bを例えば20nmの膜厚で形成する。
そののち、図5(B)に示したように、密着層14Bの上に、例えばスパッタ法により、例えば銀を含む合金よりなる反射層14Aを例えば100nmの膜厚で形成する。このように、平坦化層13の上に、密着層14Bを介して反射層14Aを形成することにより、反射層14Aが下地層としての平坦化層13から剥離するのを防止することができる。更に、剥離した部分からエッチング液あるいは空気などが侵入し、反射層14Aを構成する銀または銀を含む合金がそれらに含まれる酸素や硫黄成分などと反応することを防止することもできる。
次に、図5(C)に示したように、反射層14Aの上に、例えばスパッタ法により、例えばITOよりなるバリア層14Cを例えば10nmの膜厚で形成する。このように、反射層14Aの成膜後、速やかにバリア層14Cを形成することにより、反射層14Aを構成する銀または銀を含む合金が空気中の酸素または硫黄成分と反応することを防止することができると共に、反射層14Aを形成した後の製造工程においても反射層14Aに対するダメージを緩和し、反射層14Bとバリア層14Cとの界面を清浄に保つことができる。
密着層14A,反射層14Bおよびバリア層14Cを形成したのち、図6(A)に示したように、例えばリソグラフィ技術を用いて、バリア層14Cの上に、例えばフォトレジスト膜よりなるマスク41を形成する。
続いて、図6(B)に示したように、このマスク41を用いて、バリア層14C、反射層14Aおよび密着層14Bを一括してエッチングする。
その後、図7(A)に示したように、剥離液を用いてマスク41を除去する。本実施の形態に好適な剥離液は、以下の構成を有するフォトレジスト剥離液組成物からなるものである。
このフォトレジスト剥離液組成物は、化(1)で表される化合物、化(2)で表される化合物および化(3)で表される化合物からなる群から選択された1種または2種以上の有機アミノ化合物と、1種または2種以上の極性有機溶剤とを含有し、且つ、水を含有しない混合溶液であり、更には、ピロカテコール、ハイドロキノン、ピロガロール、没食子酸および没食子酸エステルとからなる群から選択される1種または2種以上の防食剤を添加することができる。
(化1)
NH2 −A−Y−B−Z
(式中、A,Bはそれぞれ相互に独立して、直鎖状または分岐鎖状をなす、炭素数1〜5のアルキレン基、YはNHまたはOのいずれかであり、ZはNH2 ,OH,NH−D−NH2 (ここで、Dは直鎖状または分岐鎖状の、炭素数1〜5のアルキレン基)である)
(化2)
NH2 −A−N(−B−OH)2
( 式中、A,Bは化(1)と同じである。)
(式中、R はH,炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜5のアミノアルキル基である)
上述の、化(1)、化(2)および化(3)で表される化合物からなる群から選択される有機アミノ化合物は、銀および/または銀合金を含む積層構造をパターニングした後に残るマスク(フォトレジスト膜)を除去する際に、後述の特定の防食剤を添加することにより、フォトレジストおよびフォトレジスト変質層の剥離性能、および銀,銀合金に対する腐食性を改善することができる。
ここで、上記化(1)および化(2)中のAおよびBの炭素数は、フォトレジスト剥離性および銀に対する腐食性を考慮すると、AおよびBの炭素数が合計して2〜10が好ましく、さらに好ましくは、2〜6個である。
これらの有機アミノ化合物のうち、ジエチレントリアミン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−2プロパノール、N−(3−アミノプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−2−アミノエタノール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ホルモリンが好ましく、特に、フォトレジストおよびフォトレジスト変質層に対して高い剥離性を有し、更に、銀および銀合金に対する腐食性が小さいアミノアルコールとして、2−(2−アミノエトキシ)エタノールが好ましい。
また、有機アミノ化合物の総含有量は、フォトレジストおよびフォトレジスト変質層の剥離性能、および銀,銀合金に対する腐食性を考慮すると、20質量%以上50質量%以下の範囲が好ましい。すなわち、20質量%未満であると、フォトレジスト変質層の剥離性が低下し、50質量%より多くなると、銀,銀合金に対する腐食性が問題となる。
また、上記有機アミノ化合物に混合される極性有機溶剤は、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、モノエチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド等のアミド系溶剤、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチルピロリジノン等のピロリジノン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールのアルコール系溶剤、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤が挙げられる。
これらの中で、本実施の形態の極性有機溶剤として好ましいのは、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチルピロリジノン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシドであり、フォトレジスト変質層の除去性の観点より、更に好ましくは、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチル−2−ピロリジノン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール、ジメチルスルホキシド、より好ましくは1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンおよびN−メチル−2−ピロリジノンである。
防食剤としては、アミノ酢酸、酢酸等の有機酸、フロログルシノール、レゾルシノール、フェノール、ベンゾトリアゾール、ピロカテコール、ハイドロキノン、没食子酸、没食子酸エステル、ピロガロールがあり、これらを添加すると、銀および銀合金に対する腐食性がより改善される。
なお、上述のように、有機アミノ化合物の好ましい例として、2−(2−アミノエトキシ)エタノール等を挙げたが、他の有機アミノ化合物として、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。しかし、このうち、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン等は、銀および銀合金に対する腐食性は比較的問題はないが、フォトレジスト変質層に対する剥離性が低いという問題がある。これに対して、モノエタノールアミンは、高い剥離性を有するものの、銀および銀合金を腐食するという問題がある。
従って、有機アミノ化合物としてモノエタノールアミンを用いる場合には、極性有機溶剤と共に防食剤が必須であり、上述の防食剤のうち、特にピロカテコール、ハイドロキノン、没食子酸、没食子酸エステルまたはピロガロールを添加することにより、高い剥離性が得られると同時に、銀および銀合金に対する腐食性の問題も解消することが可能になる。
なお、モノエタノールアミンと混合する極性有機溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶剤、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、モノエチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド等のアミド系溶剤、N−メチル−2−ピロリジノン、N−エチルピロリジノン等のピロリジノン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールのアルコール系溶剤、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶剤、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジイソプロピル−2−イミダゾリジノン等のイミダゾリジノン系溶剤、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤が挙げられる。好ましくは、N−メチル−2−ピロジノンおよび/または1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンである。
以上、種々の非水性のフォトレジスト剥離液を用いることができるが、本実施の形態では、例えば、1種類のアミノアルコールを20〜40質量%、1種類の極性有機溶剤を10〜30質量%、残りを他の種類の極性有機溶剤としたものを用いる。これにより、バリア層14C上に残存したマスク41(フォトレジスト)が除去され、且つ側面に露出した反射層14Aを構成する銀および銀合金の腐食も最小限に抑えられるため、表示装置として用いた場合の滅点などの欠陥が少なくなり、信頼性が向上する。
図7に戻って説明を続けると、マスク41を除去したのち、図7(B)に示したように、基板11の全面にわたり、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition ;化学的気相成長)法により絶縁膜15を上述した膜厚で成膜し、例えばリソグラフィ技術を用いて絶縁膜15のうち発光領域に対応する部分を選択的に除去し開口部15Aを形成する。
次に、図8に示したように、絶縁膜15の上に、基板11の全面にわたり補助電極17Aを形成し、例えばリソグラフィ技術を用いて選択的にエッチングし、所定の形状にパターニングする。
続いて、図9に示したように、例えば蒸着法により、上述した膜厚および材料よりなる有機発光素子10Rの正孔輸送層16A,有機発光素子10Rの発光層16Bおよび有機発光素子10Rの電子輸送層16Cを順次成膜し、有機発光素子10Rの有機層16を形成する。その際、形成予定領域に対応して開口51Aを有する金属性の蒸着マスク51を用い、発光領域、すなわち絶縁膜15の開口部15Aに対応して成膜するようにすることが好ましい。但し、開口部15Aにのみ高精度に蒸着することは難しいので、開口部15A全体を覆い、絶縁膜15の縁に少しかかるようにしてもよい。
そののち、蒸着マスク51をずらして、図10に示したように、有機発光素子10Rの有機層16と同様にして、上述した膜厚および材料よりなる有機発光素子10Gの正孔輸送層16Aおよび発光層16Bを順次成膜し、有機発光素子10Gの有機層16を形成する。続いて、蒸着マスク51を再びずらして、同じく図10に示したように、有機発光素子10Rの有機層16と同様にして、上述した膜厚および材料よりなる有機発光素子10Bの正孔輸送層16A,発光層16Bおよび電子輸送層16Cを順次成膜し、有機発光素子10Bの有機層16を形成する。なお、図10には、蒸着マスク51の開口51Aが有機発光素子10Bの有機層16に対向している状態を表している。
有機発光素子10R,10G,10Bの有機層16を形成したのち、図11に示したように、基板11の全面にわたり、例えば蒸着法により、上述した膜厚および材料よりなる共通電極17を形成する。これにより、共通電極17は、既に形成されている補助電極17Aおよび図示しない母線となる幹状補助電極に電気的に接続される。以上により、図1ないし図3に示した有機発光素子10R,10G,10Bが形成される。
次に、図12に示したように、共通電極17の上に、上述した膜厚および材料よりなる保護膜18を形成する。これにより、図1に示した駆動パネル10が形成される。
また、図13(A)に示したように、例えば、上述した材料よりなる封止用基板21の上に、赤色フィルタ22Rの材料をスピンコートなどにより塗布し、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして焼成することにより赤色フィルタ22Rを形成する。続いて、図13(B)に示したように、赤色フィルタ22Rと同様にして、青色フィルタ22Bおよび緑色フィルタ22Gを順次形成する。これにより、封止パネル20が形成される。
封止パネル20および駆動パネル10を形成したのち、図14に示したように、基板11の有機発光素子10R,10G,10Bを形成した側に、熱硬化型樹脂よりなる接着層30を塗布形成する。塗布は、例えば、スリットノズル型ディスペンサーから樹脂を吐出させて行うようにしてもよく、ロールコートあるいはスクリーン印刷などにより行うようにしてもよい。次いで、図1に示したように、駆動パネル10と封止パネル20とを接着層30を介して貼り合わせる。その際、封止パネル20のうちカラーフィルタ22を形成した側の面を、駆動パネル10と対向させて配置することが好ましい。また、接着層30に気泡などが混入しないようにすることが好ましい。そののち、封止パネル20のカラーフィルタ22と駆動パネル10の有機発光素子10R,10G,10Bとの相対位置を整合させてから所定温度で所定時間加熱処理を行い、接着層30の熱硬化性樹脂を硬化させる。以上により、図1ないし図3に示した表示装置が完成する。
この表示装置では、例えば、積層構造14と共通電極17との間に所定の電圧が印加されると、有機層16の発光層16Bに電流が注入され、正孔と電子とが再結合することにより、主として発光層16Bの正孔輸送層16A側の界面において発光が起こる。この光は、第1端部P1と第2端部P2との間で多重反射し、共通電極17を透過して取り出される。ここでは、バリア層14C,反射層14Aおよび密着層14Bが一括してエッチングされているので、反射層14Aのサイドエッチングが防止され、積層構造14が良好な形状に形成されている。よって、反射層14Aあるいはバリア層14Cの形状不良に起因する有機発光素子10R,10G,10Bの欠陥が防止され、寿命が長くなる。
このように、本実施の形態では、密着層14B,反射層14Aおよびバリア層14Cをこの順に形成したのち、マスク41を用いて一括してエッチングすることにより、サイドエッチングによる反射層14Aあるいはバリア層14Cの形状不良の発生を確実に防止できる。
また、エッチング後のマスク41を上述のような非水性のフォトレジスト剥離液を用いて剥離するようにしたので、バリア層14Cの表面のレジスト残りがなくなり、側面に露出した銀や銀合金の腐食を防止することができる。従って、有機発光素子10R,10G,10Bの滅点等の欠陥を低減し、寿命を長くすることが可能になる。よって、積層構造14が銀または銀を含む合金により構成された反射層14Aを含む場合に特に好適であり、積層構造14の反射率を高めて光取り出し効率を向上させることができる。
更に、マスク41を何度も作り直さず、1つのマスク41により密着層14B,反射層14Aおよびバリア層14Cをエッチングするようにしたので、現像液あるいは剥離液などによるバリア層14Cへのダメージを最小限に抑えると共に、工程数を従来の約3分の1に減らすことができる。よって、優れた性能を有する表示装置を低コストで製造することができる。
〔第2の実施の形態〕
図15は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の断面構造を表すものである。この表示装置は、透過型・反射型併用(半透過型)の液晶ディスプレイとして用いられるものであり、駆動パネル60と対向パネル70とが対向配置され、その間に液晶80が設けられている。
駆動パネル60は、例えばガラスよりなる基板61に、画素電極62がマトリクス状に設けられている。基板61には、画素電極62に電気的に接続された駆動素子としてのTFT63および配線63Aなどを含むアクティブ型の駆動回路が形成されている。基板61の液晶80に対向する側には、配向膜64が全面に設けられ、反対側には偏光板65が設けられている。また、基板61の表面とTFT63および配線63Aとの間には、第1の実施の形態と同様の積層構造14が設けられている。積層構造14とTFT63および配線63Aとの間には、例えば絶縁膜66が設けられている。
画素電極62は、例えば透明電極62Aと反射電極62Bとを有している。透明電極62Aは、例えばITOにより構成され、反射電極62Bは、例えばアルミニウム(Al)あるいは銀(Ag)により構成されている。反射電極62Bは、透明電極62Aの一部領域に重ねるように形成されている。反射電極62Bが形成された領域は、反射型表示領域となり、透明電極62Aの反射電極62Bが重ねられていない領域が、透過型表示領域となる。
TFT63のゲート電極(図示せず)は、図示しない走査回路に接続され、ソース(図示せず)は信号線としての配線63Aに接続され、ドレイン(図示せず)は、画素電極62に接続されている。配線63Aの材料は、第1の実施の形態の配線13Bと同様である。また、TFT63の構成は、第1の実施の形態のTFT12と同様、特に限定されない。TFT63および配線63Aは、例えば酸化シリコン(SiO2 )あるいは窒化シリコン(SiN)よりなる保護膜63Bにより被覆されている。
積層構造14は、本実施の形態では、透明電極62Aに入射しなかった入射光を反射させて図示しないバックライトの側へ戻すための反射膜としての役割を有している。密着層14B,反射層14Aおよびバリア層14Cの材料および膜厚などについては第1の実施の形態と同様である。
配向膜64は、例えば、酸化シリコン(SiO2 )などの斜め蒸着膜により構成されている。この場合、斜め蒸着時の蒸着角度を変えることにより、後述する液晶80のプレティルト角が制御される。配向膜64としては、また、ポリイミドなどの有機化合物をラビング(配向)処理した膜を用いることも可能である。この場合、ラビング条件を変更することによりプレティルト角が制御される。
偏光板65は、図示しないバックライトからの光を一定方向の直線偏光に変える光学素子であり、例えばポリビニルアルコール(PVA)フィルムなどを含んで構成されている。
絶縁膜66は、例えば酸化シリコン(SiO2 )により構成されている。なお、絶縁膜66は、プロセスによってはポリイミド膜を用いることも可能である。
対向パネル70は、駆動パネル60の画素電極62の側に位置しており、ガラスなどよりなる対向基板71を有している。対向基板71には、例えば、画素電極62に対向して、透明電極72およびカラーフィルタ73が対向基板71側から順に積層されて設けられている。また、対向基板71には、カラーフィルタ73の境界に沿って、ブラックマトリクスとしての光吸収膜74が設けられている。対向基板71の液晶80に対向する側には、配向膜75が全面に設けられ、反対側には偏光板76が設けられている。
透明電極72は、例えばITOにより構成されている。カラーフィルタ73は、第1の実施の形態のカラーフィルタ22と同様に構成されている。光吸収膜74は、対向基板71に入射した外光あるいは配線64により反射された外光の反射光などを吸収してコントラストを向上させるものであり、例えば黒色の着色剤を混入した光学濃度が1以上の黒色の樹脂膜、または薄膜の干渉を利用した薄膜フィルターにより構成されている。薄膜フィルタは、例えば、金属,金属窒化物あるいは金属酸化物よりなる薄膜を1層以上積層し、薄膜の干渉を利用して光を減衰させるものである。薄膜フィルタとしては、具体的には、クロムと酸化クロム(III)(Cr2 O3 )とを交互に積層したものが挙げられる。配向膜75および偏光板76は、駆動パネル60の配向膜64および偏光板65と同様に構成されている。
液晶80は、電圧を印加することにより配向状態が変化して透過率を変化させるものである。駆動時に液晶分子の傾斜する方向が一様でないと明暗のむらが生じるため、これを避けるために、あらかじめ液晶80にはわずかなプレティルト角が一定方向に与えられている。
この表示装置は、例えば次のようにして製造することができる。
まず、基板61の平坦面61Aに、第1の実施の形態と同様にして、密着層14B,反射層14Aおよびバリア層14Cをすべて積層したのち一括してエッチングする。その後前記フォトレジスト剥離液を用いてマスクを剥離する。次に、この積層構造14を覆うように上述した材料よりなる絶縁膜66を形成し、更に、透明電極62Aおよび反射電極62Bを形成して画素電極62を形成する。続いて、積層構造14および絶縁膜66の上に、TFT63および配線63Aを形成し、保護膜63で被覆する。そののち、基板61の全面に配向膜64を形成し、ラビング処理を行う。これにより、駆動パネル60が形成される。
また、対向基板71の表面に透明電極72、光吸収膜74およびカラーフィルタ73を形成する。次に、対向基板71の全面に配向膜75を形成し、ラビング処理を行う。これにより、対向パネル70が形成される。
次に、駆動パネル60または対向パネル70の周辺部分に例えばエポキシ樹脂などよりなるシール材(図示せず)を設け、球状あるいは柱状のスペーサ(図示せず)を設ける。続いて、駆動パネル60および対向パネル70を、画素電極62と透明電極72とが対向するように位置合わせし、シール材を硬化させることにより貼り合わせ、液晶80を内部に注入して密封する。そののち、駆動パネル60に偏光板65を、対向パネル70に偏光板76をそれぞれ貼付する。以上により、図15に示した表示装置が完成する。
この表示装置では、例えば、画素電極62と透明電極72との間に所定の電圧が印加されると、液晶80の配向状態が変化して透過率が変化する。図示しないバックライトから透明電極62Aに入射した入射光R1は、液晶80を透過し、透過光R2として取り出される。また、バックライトから反射電極62Bまたは積層構造14に入射した入射光R3は、反射電極62Bあるいは積層構造14の反射層14Aによって反射され、その反射光R4がバックライトの側へ戻るが、反射光R4は、バックライトに設けられた図示しない反射鏡などにより再び画素電極62に入射する。更に、対向パネル70側から入射した外光H1は、反射電極62Bによって反射され、その反射光H2が取り出される。ここでは、バリア層14C,反射層14Aおよび密着層14Bが一括してエッチングされているので、反射層14Aのサイドエッチングが防止され、バリア層14Cが反射層14Aの周囲に庇状に突出するなどの形状不良を生じることなく、積層構造14が良好な形状に形成されている。よって、例えば、バリア層14Cの庇状の部分が破損してその破片が画素電極62あるいは液晶80などに混入することなどが防止される。あるいは、例えば、サイドエッチングにより反射層14Aに空孔が生じ、その空孔に薬液などが残存するおそれがなく、表示装置の寿命が長くなる。
このように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、密着層14B,反射層14Aおよびバリア層14Cを順に形成したのち、マスク41を用いて一括してエッチングし、上記剥離液で剥離したので、反射層14Aあるいはバリア層14Cのレジスト残りや腐食の発生を確実に防止し、表示装置の欠陥を低減し、寿命を長くすることができる。また、第1の実施の形態と同様に、積層構造14が銀(Ag)または銀を含む合金により構成された反射層14Aを含む場合に特に好適であり、積層構造14の反射率を高めてバックライト光の利用効率を高めると共に表示装置の電力消費量を低減することができる。更に、工程数を削減し、低コストで優れた性能を有する表示装置を製造することができる。
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。例えば、上記実施の形態において説明した各層の材料および膜厚、または成膜方法および成膜条件などは限定されるものではなく、他の材料および膜厚としてもよく、または他の成膜方法および成膜条件としてもよい。
また、例えば、上記実施の形態では、密着層14Bおよびバリア層14Cが、インジウム(In),スズ(Sn)および亜鉛(Zn)からなる群のうちの少なくとも1種の元素を含む金属化合物または導電性酸化物により構成され、特に、ITO,IZO,酸化インジウム(In2 O3 ),酸化スズ(SnO2 ),酸化亜鉛(ZnO)からなる群のうちの少なくとも1種により構成されている場合について説明したが、密着層14Bおよびバリア層14Cの一方が上記以外の材料により構成されていてもよい。例えば、バリア層14Cは、透明で光吸収が小さく、反射層14Aおよび密着層14Bと一括してエッチング可能な材料であれば、上記の材料に限られない。
更に、例えば、密着層14Bは、スパッタ法のほか、蒸着法、CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition ;有機金属気相成長)法、レーザーアブレーション法、あるいはめっき法などを用いることが可能である。反射層14Aについても、同様に、スパッタ法のほか、蒸着法、CVD法、MOCVD法、レーザーアブレーション法、あるいはめっき法などを用いることが可能である。
加えて、上記第1の実施の形態では、有機発光素子10R,10G,10Bの構成を具体的に挙げて説明したが、絶縁膜15,補助電極17Aあるいは保護膜18などの全ての層を備える必要はなく、また、他の層を更に備えていてもよい。なお、共通電極17を半透過性電極でなく透明電極とし、共振器構造を備えない場合についても本発明を適用することができるが、本発明は、積層構造14での反射率を高めるものであるので、積層構造14の反射層14Aとバリア層14Cとの界面を第1端部P1、共通電極17の発光層16B側の界面を第2端部P2とし、有機層16およびバリア層14Cを共振部として共振器構造を構成する場合の方が、より高い効果を得ることができる。
更にまた、上記第2の実施の形態では、透過型・反射型併用の液晶ディスプレイの場合を例として説明したが、本発明は、他のタイプの液晶ディスプレイにも適用可能である。例えば、図16に示したように、透過型の液晶ディスプレイにおいて反射膜としての積層構造14を設けるようにしてもよい。あるいは、図17に示したように、積層構造14を反射型の画素電極として用いてもよい。あるいは、第2の実施の形態において、反射電極62Bあるいは配線63Aに代えて積層構造14を設けることも可能である。
加えてまた、上記第2の実施の形態では、液晶表示素子の構成を具体的に挙げて説明したが、全ての層あるいは部材を備える必要はなく、また、他の層あるいは部材を更に備えていてもよい。
更にまた、上記実施の形態では、本発明を有機発光表示装置あるいは液晶表示装置などの表示装置に適用した場合について説明したが、本発明の積層構造は、反射電極あるいは反射膜としての適用に限られず、例えば反射層14Aの抵抗が低いという利点を活かして金属配線として用いることも可能である。これにより、銀の腐食を防ぎ、優れた性能を有する金属配線を実現することができる。
加えてまた、本発明の表示素子、特に有機発光素子の用途は、必ずしも表示装置に限定されるものではなく、例えば、表示を目的としない単なる照明などの用途にも適用可能である。