JP2009001540A - 心疾患抑制剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、安全であり毎日の投与も可能である上に優れた心疾患抑制効果を有する薬剤、および上記薬剤を収率よく高濃度で製造する方法を提供することにある。
【解決手段】本発明に係る心疾患抑制剤は、有効成分としてマンギフェリンを含有することを特徴とする。また、本発明の製造方法は、サラシア属植物に含まれるマンギフェリンを、アルコール水を用いて15〜30℃の温度で抽出することを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、心疾患を抑制するための薬剤に関するものである。
悪性新生物、心疾患および脳血管疾患は三大成人病といわれ、常に死因の上位を占めている。これらのうち心疾患は、近年における肥満の増大と共にそのリスクが増しており問題となっている。即ち、肥満により全身に脂肪が付くとそれら脂肪組織にまで血液を送る必要が生じるため心臓に負担がかかり、心筋が肥大する。この肥大した心筋にも栄養と酸素が必要となるため、より一層心臓に負担がかかることになる。かかる肥大した心臓に過剰な負担が継続すると収縮不全や拡張不全が起こり、最悪の場合には悪性の不整脈や心不全に至る。
以上の状況下、心疾患を抑制するための薬剤については様々な研究がなされており、医療現場で実際に使用されている薬剤もある。例えば生理活性ペプチドであるアンジオテンシンは血圧上昇活性を有することから、アンジオテンシン変換酵素の阻害剤やアンジオテンシン受容体の拮抗薬が高血圧の治療剤として開発されている。しかしアンジオテンシンは生体内で重要な役割を担っており、その作用を強く阻害すれば当然に副作用の問題が起こる。現在利用されているこれら合成薬剤には常に副作用の問題が伴うので、副作用がより少ないと考えられる天然成分から目的薬剤を見出すことが好ましい。
天然成分から見出された心疾患の抑制効果を示す化合物は、例えば特許文献1と2に開示されている。これらの化合物は生薬であるトウヤクまたはカンゾウから抽出することができ、糖類にそれぞれグリチルレチン酸構造とピラノピラノン構造が結合した化学構造を有し、心疾患の前駆状態である心肥大を治療または予防できるとされている。
一方、ニシキギ科サラシア属の植物に含まれる成分は、糖尿病、肥満、高脂血症に対して有効であり(例えば、特許文献3〜特許文献5をご参照)、ぺルオキシソーム増殖因子活性受容体(PPAR)活性化作用を有する(特許文献6をご参照)ことも報告されている。
このうち、特許文献5には、「血糖値上昇抑制作用は、サラシア属植物に含まれる成分の一部が、糖質分解酵素であるα−グルコシダーゼ(α−D−glucosidase)に対する阻害作用を示すことによって発揮される」点に鑑み、α−グルコシダーゼ阻害活性をIC50値として評価する方法が開示されている。また、特許文献4には、特許文献5に記載のIC50値による血糖値上昇抑制評価法の代替手段として、キサントン配糖体であるマンギフェリンを測定する方法が提案されている。特許文献4の図2に示すように、マンギフェリン含量とIC50値とは、非常に高い相関関係を有している。従って、サラシア属植物中に微量しか存在せず検出が困難で再現性も低いα−グルコシダーゼ阻害活性成分を測定しなくても、サラシア属植物の各部位に一定レベルで含まれているマンギフェリン量を、マンギフェリン量と相関関係の高いIC50値を代用して測定することによって、血糖値上昇抑制作用を短時間で簡便に評価できると記載されている。
これらの特許文献3〜6では、サラシア属の植物に水やメタノールなどの有機溶媒を加えて加熱する加熱抽出法を用いて有効成分を抽出している。
特開平10−330256号公報 特開平10−330268号公報 特開平11−116946号公報 特開2002−267655号公報 特開2003−245095号公報 特開2005−295591号公報
上述したように、心疾患は常に死亡原因の上位を占めるものであるため積極的な対策が必要である。特に、心疾患の発症に至る前に、常日頃から対策を講じて心疾患を予防的に抑制することが好ましい。しかしながら、高血圧症の治療薬などの合成薬剤は既に実用化されているものの、安全で毎日服用でき且つ有効な薬剤は少なかった。
例えば特許文献1と2には天然成分であり心肥大に効果があるとされている化合物の記載がある。しかし、これら特許文献の実施例では各化合物がコラーゲン生合成に関与するヒートショックタンパク質の1つの発現を抑制することが実証されているのみであり、心肥大はコラーゲン合成の異常亢進が関与する疾患の一例として例示されているに過ぎず、これら化合物が真に心肥大を抑制できるか否かは不明である。
また、特許文献3〜特許文献6には、サラシア属植物に含まれるマンギフェリンが糖尿病などの疾病に有効であることは開示または示唆されているが、マンギフェリンが心肥大抑制作用を有することは、何も教示しておらず、実証もしていない。
そこで、本発明が解決すべき課題は、安全であり毎日の投与も可能である上に優れた心疾患抑制効果を有する薬剤を提供することにある。
また、本発明が解決すべき他の課題は、上記薬剤を高収率且つ低コストで製造する方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた。その結果、既にお茶として飲用されているサラシア属植物に含まれる化合物であるマンギフェリンが心疾患を有効に抑制できることを見出して本発明を完成した。
上記課題を解決することができた本発明の心疾患抑制剤はマンギフェリンを含有することを特徴とする。
本発明の心疾患抑制剤としては、マンギフェリンを含むサラシア属植物抽出物を含有するものが好ましい。サラシア属植物抽出物にはマンギフェリン以外の成分も含まれるが、例えばマンギフェリンを化学合成するよりも効率的に製造することができる。
また、本発明の心疾患抑制剤としては、マンギフェリンを含むサラシア属植物のアルコール水抽出物(アルコールと水との混合溶媒による抽出物)を含有するものが好ましい。後述する実施例の通り、サラシア属植物のアルコール水抽出物はマンギフェリンを高濃度で含み、且つ心疾患を直接抑制することができる。より好ましくは、アルコール水に対するアルコールの混合比率が40容量%以上のアルコール水抽出物であり、最も好ましくは50容量%エタノール水抽出物である。
本発明の心疾患抑制剤は、心肥大を抑制する目的で使用することができる。心肥大は心疾患の前駆状態であるので、心肥大を抑制することにより心疾患の発症を防止することができる。また、本発明の心疾患抑制剤が心肥大を直接抑制できることは、後述する実施例により実証されている。
また、上記課題を解決することができた本発明に係る心疾患抑制剤の製造方法は、サラシア属植物に含まれるマンギフェリンを、アルコール水を用いて15〜30℃の温度で抽出することを特徴とする。
上記方法に用いられるアルコール水は、アルコール水に対するアルコールの比率が40容量%以上であることが好ましく、50容量%エタノール水を用いることが最も好ましい。
本発明の心疾患抑制剤によれば、心疾患の前駆状態である心肥大を直接抑制することができ、また、心疾患の指標となるタンパク質等の産生を抑制できることから、特に心疾患を予防的に抑制できると考えられる。また、本発明の有効成分であるマンギフェリンは、お茶としても飲用されているサラシア属植物の含有成分であるので毒性は少なく、毎日飲用可能である。
従って本発明は、近年、肥満などによりそのリスクが増大している心疾患を、常に副作用の問題が伴う合成薬剤によらず抑制できるものとして非常に有用である。
また、本発明の製造方法によれば、従来のような加熱抽出法を行わなくても、サラシア属植物に含まれるマンギフェリンを高濃度に含む薬剤が高い収率で、しかも低コストで得られるため、薬剤間の薬効のバラツキが少ない高品質の心疾患抑制剤を提供できる点で、極めて有用である。
本発明の心疾患抑制剤は、マンギフェリンを有効成分として含有する。なお、本発明において「抑制」とは、発症した心疾患の症状を緩和するほか、その発症を予防的に防止することも含む。本発明の心疾患抑制剤は安全性が高く毎日でも服用できる上に、心疾患の前駆状態である心肥大を直接抑制できるので、特に心疾患の予防剤としての利用価値が高い。よって、いわゆる健康食品としての服用も可能である。
本発明に係る心疾患抑制剤の有効成分であるマンギフェリンは、C191811の化学式を有し、下記の通りグルコースの1位にキサントン構造が結合した化学構造を有する。
マンギフェリンは化学合成してもよいが、サラシア属植物の含有成分であるのでサラシア属植物から抽出すれば効率よく製造することができる。サラシア属植物はインドやスリランカ、東南アジアなどの亜熱帯地域に広く分布するニシキギ科の植物であり、例えばサラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・プリノイデス(S. prinoides)、サラシア・オブロンガ(S. oblonga)を挙げることができる。抽出部位としては根、幹、枝、葉などがあるが、マンギフェリンは根や枝葉からより効率的に抽出することができ、特に根から効率的に抽出できる。また、マンギフェリンはマンゴー(Mangifera indica、ウルシ科)の果実にも含まれており、その葉や樹脂からも抽出され得る。
抽出方法は、常法、すなわち、採取したサラシア属植物を粗切りして抽出溶媒に浸漬した後に濾過し、濾液を濃縮する方法を適用することができるが、後記する実施例に示すように、抽出溶媒としてアルコールと水の混合溶媒を用い、加熱せずに約15〜30℃の室温で抽出する抽出法(冷浸法)を用いれば、低コストで、サラシア属植物からの抽出物を収率良く、且つ、抽出物中のマンギフェリンを高濃度で得られることが判明した。
なお、前述した特許文献3〜特許文献6にも、サラシア属植物からマンギフェリンなどの成分を抽出する方法は記載されている。しかしながら、これらの特許文献には、いずれも、水やメタノールやアルコール水を加えて約80〜90℃に加熱して抽出する加熱抽出法が開示されているだけで、本発明のように加熱せずに室温で抽出する冷浸法は開示されていない。これまでは、代表的には、原料であるサラシア属植物に対して2〜20倍量(質量比)の水を加えて約80〜100℃で約2〜4時間加熱抽出を行なってサラシア属植物由来のマンギフェリンを得ている(例えば、後記する表8のNo.46〜48、表9のNo.61〜63を参照)が、本発明者の詳細な実験結果によれば、
(ア)従来のような、抽出溶媒として水を用いた高温加熱抽出法では、サラシア属植物からの抽出物の収率が低く、マンギフェリンを高濃度に得ることができないこと、
(イ)抽出溶媒として、水の代わりにアルコール水(特に、40〜70容量%エタノール水、最も好ましくは50容量%エタノール水)を用いると、抽出物を収率良く、高濃度のマンギフェリンが得られること、
(ウ)更に、アルコール水を用い、且つ、室温で抽出すると、高温で加熱したのと同程度またはそれ以上の抽出効率および高濃度マンギフェリンが得られること、
(エ)従って、加熱によるコストの上昇なども含めて総合的に勘案すれば、アルコール水を用いた冷浸法が最も優れていること、
が判明した。
表1は、後記する製造例2において、表5のNo.9(本発明例)および表9のNo.62(従来例)の実験データを抜き出して対比したものである。表1より、本発明例のように50容量%エタノール水を用いて室温で抽出すると、水を用いて加熱抽出を行う従来例に比べ、エキス収量で約1.7倍、マンギフェリン量で約3.3倍、キサントン類の含有量で約4.09倍と、いずれも大幅に上昇することが明瞭に分かる。
以下、サラシア属植物からマンギフェリンを抽出する工程を、順次説明する。
まず、サラシア属植物を粗切りする。サラシア属植物は細かく切断するほど抽出効率は高まるが手間がかかるので、粗切りの程度は適宜調整すればよい。
次に、粗切りしたサラシア属植物を抽出するが、特に、抽出溶媒および抽出温度は、高濃度のマンギフェリンを収率良く得るうえで極めて重要である。これらの抽出条件によって、抽出物の量(抽出性)やマンギフェリンの含有量(薬効)は大きく変化するからである。
抽出溶媒としては、通常、水;メタノールやエタノールなどのアルコール;水とアルコールの混合溶媒などが用いられ、抽出物は服用しなければならないことを考慮すれば、水またはエタノール水を用いることが良いといわれている。これに対し、本発明では、特に、水とアルコールの混合溶媒(アルコール水)を用いることが好ましい。後記する実施例に示すように、抽出温度が同じであっても、アルコールの含有率によって抽出物の量やマンギフェリンの含有量は変化し、アルコール水全体に占めるアルコールの割合(容量比)がおおむね、40%以上になると、これらの値が上昇した。
抽出温度は、経済性を考慮すると、約15〜30℃の室温とすることが好ましい。室温で抽出を行なっても、高温加熱法と同程度またはそれ以上の効果が得られることが実験によって確認されたからである。
従って、抽出物の収率やマンギフェリン含有量、コストを総合的に勘案すれば、50容量%エタノール水を用いて約15〜30℃の室温で抽出することが最も好ましい。
なお、抽出時間は、抽出条件に応じて適切に調整すれば良いが、おおむね、1〜10日間程度抽出することが好ましい。
このようにして得られた抽出液はそのまま、或いは水で希釈して飲用してもよいが、製品の流通を考慮すれば濃縮することが好ましい。濃縮の条件も特に制限されないが、マンギフェリン等は高温で分解することも考えられるので、好ましくは50℃以下で減圧濃縮する。
サラシア属植物抽出物は、さらにクロマトグラフィや再結晶などによりマンギフェリン濃度を高めるか或いはマンギフェリンを単離精製してもよい。しかし、サラシア属植物抽出物に含まれるその他の成分もマンギフェリンと同様の効果またはさらなる効果を示す可能性があるので、抽出物をそのまま用いてもよい。マンギフェリンを単離精製するのであれば、マンゴーの果実や葉、樹皮などを原料にして抽出することも勿論可能である。
本発明に係る心疾患抑制剤の剤形は特に問わない。例えば、サラシア属植物の抽出液や濃縮した抽出物を再度水に溶解した液剤としてもよく、また、濃縮した抽出物からなる粉末剤や錠剤としてもよい。注射剤とすることも考えられるが、毎日摂取する場合は経口投与剤が好適である。
本発明に係る心疾患抑制剤の投与量は、被投与者の症状や目的、性別、年齢などを考慮して適宜調整することができるが、通常は、マンギフェリン量で1回当たり25〜100g/kg体重程度、その他の成分を含むサラシア属植物抽出物量で1回当たり25〜1000g/kg体重程度とすることができる。なお、アルコール水の抽出物を用いれば、熱水抽出物に比べ、高濃度のマンギフェリンが得られるため、抽出物量をより少なくしても同様の効果が得られる。また、1日1回の投与でもよいが、1日当たり2〜4回程度投与してもよい。
本発明の心疾患抑制剤は、特に致死的な心疾患の前駆状態である心肥大を有効に抑制することができる上に、後述する実験結果の通り極めて安全である。よって本発明の心疾患抑制剤は、常に副作用が伴う合成医薬品とは異なり、いわゆる健康食品としての使用も可能である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例により制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
(製造例1)
インドのタミルナダ州で採取したサラシア・オブロンガの根、幹または枝葉200gを粗切りし、2Lの30容量%(以下、特に断らない限り単に「%」とする)、50%もしくは80%のエタノール水または100%エタノールに浸漬し、20〜25℃で1週間静置した。次いで、根等を濾過により除去し、濾液を45℃以下で減圧濃縮することによりサラシア・オブロンガ抽出物を得た。
また、同サラシア・オブロンガの根を粗切りし、20倍量の水を加えて約3時間沸騰させつつ抽出する操作を2回繰り返し、各抽出液を合わせた後に45℃以下で減圧濃縮することによりサラシア・オブロンガ抽出物を得た。
各抽出物について収率を求め、また、キサントン類とマンギフェリンの含有割合を測定した。それぞれの測定条件は以下の通りである。
(1)キサントン類の含有割合の測定条件
シグマ社製のマンギフェリン5mgを精密に量り取り、50mL容メスフラスコに入れ、80%アセトン水を加えて50mLにメスアップした。5分間超音波処理して溶解した後、0.45μmメンブランフィルタで濾過した。得られた濾液5mLを10mL容メスフラスコに入れ、80%アセトン水を加えて10mLにメスアップすることにより2倍希釈液を得た。同様の操作により10倍希釈液を得た。以上により得られた0.01質量%、0.005質量%および0.001質量%のマンギフェリンの80%アセトン水溶液につき、364nmにて吸光度を測定した。その結果から、吸光度とマンギフェリン濃度(質量%)とについて、下記式を導き出した。
Y=315.85X+0.0638
(式中、Yは364nmの吸光度を示し、Xはマンギフェリン濃度(質量%)を示す)
別途、各抽出物の粉末5mgを精密に量り取り、10mL容メスフラスコに入れ、80%アセトン水を加えて10mLにメスアップした。5分間超音波処理して溶解した後、0.45μmメンブランフィルタで濾過し、濾液の364nmの吸光度を測定した。測定された吸光度を上記式に代入し、算出された濃度をキサントン量とした。なお、マンギフェリンが364nmの光に吸収極大を示すのはキサントン骨格に由来するので、上記式からは、マンギフェリンに限られずキサントン骨格を有する化合物の量を算出することができる。
(2)マンギフェリン含有割合の測定条件
各抽出物の粉末100mgを精密に量り取り、20mL容メスフラスコに入れ、約15mLの50%メタノール水を加えて溶解した。超音波処理を15分間行った後、50%メタノール水を加えて20mLにメスアップした。次いで、得られた溶液を0.45μmメンブランフィルタで濾過し、HPLCにより分析し、マンギフェリンピークの面積率によりマンギフェリンの含有割合を求めた。HPLCの条件は以下の通りである。
カラム: GLサイエンス社製 ODS−3 250mm×4.6mm 5μm
カラム温度: 45℃
移動相: 2%酢酸:メタノール=70:30の混合液
流量: 1.0mL/分
検出波長: 365nmUV
標準物質:和光純薬製のマンギフェリンを約100ppmで50%メタノールに溶解
各サラシア・オブロンガ抽出物の用いた根等に対する収率、キサントン類の含有割合およびマンギフェリンの含有割合を表2に示す。なお、良好な結果が得られた50%エタノールによるサラシア・オブロンガの根からの抽出では、普遍性を調べるために同様の実験を4回繰り返した。
上記結果の通り、サラシア・オブロンガの根から50%エタノール水を用いて、20〜25℃と比較的低温で抽出した場合には、熱水を用いた場合に比して、有効成分であるマンギフェリンやその他のキサントン類を6.6〜11.8倍という効率で抽出できることが明らかとなった。なお、一般的に、現段階では野生のサラシア・オブロンガが用いられているが、抽出物の収率やマンギフェリン含有量などのばらつきが大きい。しかし本発明者らによりサラシア属植物の植栽研究は開始されており、将来的には高品質なサラシア属植物の安定的供給も可能になり得、さらに50%エタノール水を用いる上記方法により高品質のサラシア属植物抽出物が提供できるようになる可能性がある。
(試験例1:心臓重量等の計測)
モナッシュ大学動物室(オーストラリア ビクトリア州)から購入した13〜15週齢の正常な雄性Zuckerラット(以下、「ZL」という)10匹と遺伝的に肥満の雄性Zuckerラット(以下、「ZDF」という)10匹を、12時間毎に明暗調整された23±1℃の飼育室で飼育した。これら各ラットを5匹ずつ抽出物投与群と対照群の計4群に分けた。上記製造例1の熱水抽出物を濃度5質量%で5質量%アラビアゴム水溶液に溶解した。経口投与用ゾンデを用いて、7週間にわたり当該水溶液0.2mL/kg体重を1日1回ずつ抽出物投与群に投与した。対照群へは5質量%アラビアゴム水溶液を同量投与した。7週間後にラットを屠殺して心臓を迅速に摘出し、氷冷した生理食塩水で洗浄した後に表面に付着した水分を濾紙で除去し、心臓の重量(以下、「HW」という)を測定した。また、この摘出した全心臓から左心室のみを分離してその重量(以下、「LVW」という)を測定した。さらに右頚骨の長さ(単位:cm、以下、「TL」という)も測定し、心肥大の評価に用いられる各重量と頚骨長さとの比、即ちHW/TLとLVW/TLを算出した。結果を図1に示す。
図1の通り、正常なZuckerラットに比べ、肥満Zuckerラットでは心臓重量と左心室重量が共に有意に重くなっており、心臓重量/頚骨長さと左心室重量/頚骨長さの値も有意に大きくなっている。しかし、サラシア属抽出物を投与したところ、これらの値は正常ラットと同等程度まで低減された。なお、正常ラットにサラシア属植物抽出物を投与した場合でも心臓重量等は多少の減少傾向は見られるが、統計的に有意なものではないことから、サラシア属植物抽出物は正常ラット群にはほとんど影響を与えないことが分かる。
(試験例2:心筋細胞の大きさの測定)
上記試験例1で得られた左心室の一部を6%ホルマリン液で数日間固定し、無水アルコールで脱水後パラフィンに包埋した。各切片をヘマトキンリン−エオジン染色した。左心室の生体成分の測定はイメージ分析機(カールツァイスビジョン社製、KS400 Imaging System、ドイツ国エーヒンク)で行った。100個の心筋細胞を任意に選択し、大きさの分析に用いた。結果を図2に示す。また、各データはANOVA社の1−factor analysis of varianceで解析し、さらにStudent−Newman−Keulsテストにより検定した。
図2aと図2cを比較すれば明らかな通り、肥満Zuckerラットでは正常Zuckerラットに比べて左心室の心筋細胞が肥大している。図2eの通り、Student−Newman−Keulsテストで統計的処理をしても、肥満Zuckerラットの心筋細胞の大きさは正常ラットに対して有意に大きい。しかし、肥満Zuckerラットにサラシア属植物の熱水抽出物を投与した場合には、図2dの写真によっても明らかな通り小さくなっており、図2eの通り統計的にも対照群に比して有意に小さい。よって、本発明に係るサラシア属植物抽出物は肥満による心肥大を有意に抑制できることが実証された。
(試験例3:ラット左心室におけるANP、BNPおよびAT1の発現量の測定)
ナトリウム利尿ペプチドであるANP(Atrial natriuretic peptide)とBNP(Brain natriuretic peptide)は、ほとんど全ての心疾患の早期に起こる内分泌異常により血中に遊離するので心疾患のマーカーとなる。また、アンジオテンシンIIは、心筋と平滑筋細胞の生長を刺激して高血圧の病態進行に関与することから心疾患のマーカーとなる。そこで、ANP、BNPおよびAT1(アンジオテンシンIIサブタイプAT1)の発現量に対するサラシア属植物抽出物の影響を調べた。
上記試験例1で得られた左心室の残りの部分からTRIゾル(Invitrogen、オーストラリア)を用いて総mRNAと総タンパク質を得た。得られた総mRNAを3%アガロースゲルで電気泳動し、臭化エチジウムで染色し、既報(Abe Aら,Eur.J.Pharmacol.,436,pp.7-13(2002))に従ったRT−PCR法によりANP、BNPおよびAT1をコードするmRNAの発現量を、筋肉の収縮性タンパク質であるβアクチンのmRNAに対する相対量として求めた。また、電気泳動後のゲルの各バンドをCCDカメラで撮影し、Image J 1.29X(NIH、米国)で画像処理した。
また、左心室から得た総タンパク質に含まれるAT1の量を、Bradford法(Bradford MMら,Anal.Biochem.,72,pp. 284-254,(1976))により測定した。詳しくは、総タンパク質をSDS−PAGE(10%ポリアクリルアミドゲル)で分離し、Dunn−Carbonate Transfer緩衝液(10mM炭酸水素ナトリウム、3mM炭酸ナトリウム、15%メタノール、4℃)中でPVDF膜(ポリフッ化ビニリデン膜)に転写した。次いで、5%スキムミルクを加えることにより反応を停止した。得られたPVDF膜は0.2M NaOHで5分間処理した後に、抗AT1ウサギ一次抗体(1:400に希釈、米国Santa Cruz Biotechnology社製)と90分間反応させた。次にワサビダイコン由来のパーオキシダーゼと結合した抗ウサギ二次AT1抗体(1:6000に希釈、米国Promega社製)で60分間洗浄した後、結合した抗体を高感度蛍光キット(Lumi−Light Western Blotting Substrate、米国Roche社製)を用いて検出した。PVDF膜はX線フィルム(米国Kodak社製)に露出させ、SRX−101AX線現像機(台湾Konica社製)で現像した。結果の定量分析は、Molecular Analyst softwave(version2.1.2、米国Biorad社製)でX線フィルム上をスキャンさせ、NIH Image version1.62によりデンシトメトリーで行い、筋肉の収縮性タンパク質であるアクチンに対する蛍光強度の比を算出した。なお、ウエスタンプロットは既報(Zhou YTら,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,95,pp.8898-8903(1998);およびDavies GFら,J.Parmacol.Exp.Ther.,300,pp.72-77(2002))により行った。結果を図3に示す。
左心室におけるANPとBNPの発現量に対するサラシア属植物の作用効果を図3に、左心室におけるAT1の量の発現量に対するサラシア属植物の作用効果を図4に示す。
図3の通り、肥満ラットではANPとBNPの両方の発現量が増大している。この結果につきStudent−Newman−Keulsテストにより検定したところ、p<5%の危険率で有意であった。また、図4の通り、肥満ラットではAT1のmRNAの発現量とAT1自体の発現量が増大している。この結果につきStudent−Newman−Keulsテストにより検定したところ、p<5%の危険率で有意であった。それに対してサラシア属植物抽出物を投与された肥満ラットでは、ANPとBNPおよびAT1の発現量が有意に低減されている。よってサラシア属植物抽出物は、心疾患のリスクを低減できることが証明された。
(試験例4:ラット心筋芽細胞におけるANP、BNPおよびAT1の発現量の測定)
心臓繊維芽細胞はアンジオテンシンIIによる刺激により活性化し、ANPやBNP、アンジオテンシンIIの生合成の亢進状態となり心肥大を引き起こすと考えられる。そこで、かかる状態を[3H]チミジンの取込量として評価し、サラシア属植物抽出物、マンギフェリン、およびアンジオテンシンIIの合成拮抗薬であるテルミサルタンの影響を試験した。
先ず、新生ラット胎児の心臓繊維芽細胞を既報(Watanabe Tら,Biochem.Biophys.Res.Commum.,311,pp.454-459(2003))に準じて得た。即ち、生後1〜3日のSD系ラットの心室を約1mm3に切りとり、この組織を37℃で10分間一定に攪拌しつつトリプシン(0.125%,Gibco T8003)で消化分解した。その上清の2/7を集め、1000rpmで5分間遠心分離した。分離された細胞を集め、10%FBS(Hangzhou Sijiging、050416、中国Hangzhou)、25mM Hepes(pH7.4、シグマ社製、H4034)および抗生物質混合液(Hyclone、SV300/0)が含まれているダルベッコ変法イーグル培地(1000mg/Lのブドウ糖を含有。以下、「DMEM」という)に再懸濁した。繊維芽細胞は5%CO2ガスを充満させたチャンバー中37℃で1時間培養した。さらに24穴の培養皿に1×106個ずつ分注し、血清を添加せず16〜18時間培養した。
ラット心筋芽細胞であるH9c2細胞(American Type Culture Collection,Manasas,米国ヴァージニア州)を、ダルベッコ変法イーグル培地(1000mg/Lのブドウ糖を含有)に10%のウシ胎児血清、4mM L−グルタミン、1質量%ペニシリンおよび1質量%ストレプトマイシンを含有する培地で培養した。24穴の培養皿に1×106個の細胞を分注した。各細胞へ50μg/mLのサラシア属植物抽出物、25μMのマンギフェリン、または合成降圧剤であるテルミサルタン(1μM、ベーリンガー)を加え、1.5時間後にさらに5μMのアジオテンシンIIを加えて刺激した。
別途、製造例1の熱水抽出物、マンギフェリンおよびアンジオテンシンII拮抗薬であるテルミサルタンをDMSOに溶解し、それぞれ熱水抽出物:50μg/ml、マンギフェリン:25μM(10.55μg/mL)、1μMの濃度でテルミサルタンを繊維芽細胞の培養液に加えた。1.5時間後、10%FBSと1μCi/mlの[3H]チミジン(Beijing Atom High−Tech Co.Ltd.、中国北京)およびアンジオテンシンII(1μm)を添加した。アンジオテンシンIIの添加から24時間後に、冷却したPBS(Boster,AR0030)により繊維芽細胞を3回洗浄した。当該繊維芽細胞を5%TCAと4℃で1時間反応させることによりDNAを沈殿させ、得られた沈殿をNaOHの0.1N無水エタノール溶液に溶解した。この溶液の放射活性を液体シンチレーションカウンターで求めた。また、上記試験例3と同様の方法によって、ANPをコードするmRNAの発現量をβアクチンのmRNAに対する相対量として求めた。ANPのmRNAの発現量の測定結果を図5Aに、[3H]チミジンの取込量の測定結果を図5Bに示す。
図5の通り、アンジオテンシンIIにより心筋芽細胞を刺激すると、単なる生理食塩水を投与した場合に比してANPのmRNAの発現量が2倍以上となり、また、チミジン取り込み量が1.5倍近くとなり、ANPなどのタンパク質の発現量が増加するのが分かる。一方、サラシア属植物抽出物は心筋芽細胞のANPのmRNAの発現やチミジン取り込みを抑制し、心肥大を抑制している。マンギフェリンは、さらに少ない用量でチミジン取り込み等を抑制している。従って、本発明に係るマンギフェリンおよびサラシア属植物抽出物は、異常な心肥大を誘導するANPやBNPなどの生理活性タンパク質の生合成亢進を抑制することができ、合成薬剤であるテルミサルタンに代わり得るものであることが証明された。
(試験例5:安全性試験)
製造例1で得られたサラシア・オブロンガの根の50%エタノール水抽出物を、1日当たり100mg/kg体重、300mg/kg体重または900mg/kg体重ずつ4週間にわたり、体重125gの雄性または雌性のSDラットへそれぞれ5匹ずつ経口投与した。4週間後、各ラットの摂餌量、摂水量、体重、心臓などの臓器重量、総タンパクなどの血中濃度を測定し、各群の平均値を求めた。比較のために、サラシア属植物抽出物を投与しない対照群についても同様の測定を行った。
その結果、サラシア属植物抽出物の投与群の各値は対照群に比べて全体的にいえば有意差のある異常値は認められなかった。但し、900mg/日でサラシア属植物抽出物を投与した群において、4週間後に血中乳酸脱水素酵素(LDH)の有意な減少が見られた。LDHの血中濃度は炎症などにより増加するものであり、かえって減少する理由は明らかではないが、LDHは細胞内から血中へ逸脱するものであるので、サラシア属植物抽出物は細胞膜を安定化する作用があるのかもしれない。その他、平均赤血球色素濃度の有意な上昇が認められたが、特に問題にする程度ではなかった。
これら結果のうち、雄性SDラットの体重と臓器重量の結果を表3に、雌性SDラットの体重と臓器重量の結果を表4に示す。
以上の通り、本発明に係るサラシア属植物抽出物は、高投与量で継続的に投与してもほとんど問題がなかったことから、非常に安全な薬剤であることが証明された。
(製造例2)
本製造例では、抽出溶媒、抽出温度、およびサラシア属植物と抽出溶媒の混合比率(質量比)を様々に変化させて得られた種々のサラシア属植物からの抽出物について、前述した製造例1と同様にして抽出物(エキス)の収量(mg)、並びにキサントン類およびマンギフェリンの含有量(mg)を測定すると共に、後に詳しく説明するように、α−グルコシダーゼ阻害活性をIC50値によって評価した。
製造例2における抽出方法の詳細は、以下のとおりである。
ここでは、市販のサラシア・オブロンガ粉末(ロットS.O.060919Y 80メッシュ)を用いて、以下のようにして抽出溶媒および抽出温度を変えて実験を行なった。
(A)室温での抽出実験
サラシア・オブロンガ粉末10gに対し、5倍量、10倍量、または20倍量の50%エタノール水を加え、室温(約20℃)で1日静置する抽出操作を行ない、抽出液を得た。別途、上記と同様の抽出操作を行い、別の抽出液を得た。これらの抽出液を合わせて、減圧下、45〜50℃で溶媒を留去した後、凍結乾燥してサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
上記の抽出法では、抽出溶媒として50%エタノールを用いて抽出を行なったが、50%エタノールの代わりに、水、30%エタノール、80%エタノール、95%エタノールを用い、上記と同様にして種々のサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
(B)50℃での抽出法
サラシア・オブロンガ粉末10gに対し、5倍量、10倍量、または20倍量の50%エタノールを加え、50℃で2時間還流しながら加熱抽出を行なった。別途、上記と同様の加熱抽出を行い、別の抽出液を得た。これらの抽出液を合わせた後は、前述した(A)の抽出法と同様にしてサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
上記の抽出法では、抽出溶媒として50%エタノールを用いて抽出を行なったが、50%エタノールの代わりに、水、30%エタノール、80%エタノール、95%エタノールを用い、上記と同様にして種々のサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
(C)75℃での抽出法
前記(B)の抽出法において、75℃で2時間還流しながら加熱抽出を行なったこと以外は、前記(B)と同様に抽出を行い、種々のサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
(D)80℃での抽出法
前記(B)の抽出法において、80℃で2時間還流しながら加熱抽出を行なったこと以外は、前記(B)と同様に抽出を行い、種々のサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
(E)100℃での抽出法
前記(B)の抽出法において、100℃で2時間還流しながら加熱抽出を行なったこと以外は、前記(B)と同様に抽出を行い、種々のサラシア・オブロンガ乾燥エキスを得た。
上記(A)〜(E)の抽出法によって得られた各抽出物について、製造例1と同様にして、抽出物の収量(エキス収量)、並びにキサントン類およびマンギフェリンの含有量を測定した。本製造例では、エキス収量については100mg以上(すなわち、原料のサラシア・オブロンガ粉末10gに対するエキス収率が10%以上)を「合格」、マンギフェリン含有量については25mg以上を「合格」、キサントン類の含有量については100mg以上を「合格」とした。
更に、参考のため、上記の各抽出物について、以下のようにして、α−グルコシダーゼ阻害活性をIC50値によって評価した。
(3)α−グルコシダーゼ阻害活性の測定条件(IC50値による評価方法)
まず、上記のようにして得られたサラシア・オブロンガ乾燥エキスに対し、表5〜9に示すように種々の抽出溶媒を所定の混合比率で混合した試料を用意した。
一方、ショ糖37mMおよび4%DMSOを0.2mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)に加えて確実に溶解させた溶液を調製した。この溶液1000mLに上記の試料を20mg加え、測定用試料を得た。
一方、α−グリコシダーゼ(ORIENTAL YEAST CO.,LTD製)1mgを0.2mol/Lリン酸緩衝液(pH7.0)10mgに溶解し、酵素液を得た。
上記の測定用試料および酵素液をそれぞれ、0.7mLずつ採取し、充分混和して37℃で30分間インキュベートした後、水0.8mLを加え、100℃で2分間加熱して酵素反応を停止させた。
このようにして得られた反応液を冷却し、生成したグルコースの量をグルコース測定キット(グルコースCIIテストワコー、和光純薬工業)を用いて測定し、IC50値を算出した。本製造例では、IC50値が48.15μg/mL以下のものを「合格」とした。
上記抽出方法(A)〜(E)の結果を、それぞれ、表5〜表9に示す。これらの表には、各評価項目が合格のものに下線を付している。
更に、これらの表に「総合評価」の欄を設け、下記基準に従い、抽出効率および薬効の両方に優れているものに「◎」または「○」を付し、抽出効率および薬効のいずれかに劣るものに「×」を付した。すなわち、本製造例では、抽出効率を「エキス収量」で評価し、サラシア属植物由来の薬効を「マンギフェリン量」、「キサントン類量」、及び「IC50値」の3つのパラメータで評価しているが、心肥大抑制作用を最も有効に評価し得るパラメータ(有効成分)は「マンギフェリン量」またはその上位概念である「キサントン類量」であるから、少なくとも、「エキス収量」、および「マンギフェリン量」または「キサントン類量」が上記の合格基準を満足するものを「総合評価:○」とした。具体的には、下記基準に従い、各実験例の抽出効率および薬効を総合評価した。
総合評価「◎」:エキス収量が合格で、且つ
マンギフェリン量、キサントン類量、IC50値の全てが合格
総合評価「○」:エキス収量が合格で、且つ、
マンギフェリン量またはキサントン類量のいずれかが合格
(IC50値は、合格・不合格のどちらでも可)
総合評価「×」:マンギフェリン量、キサントン類量のいずれかは合格だが
エキス収量は不合格、若しくは
エキス収量は合格だが、
マンギフェリン量、キサントン類量のいずれかは不合格
(IC50値は合格・不合格のどちらでも可)、若しくは
マンギフェリン量、キサントン類量、エキス収量のすべてが不合格
これらの表より、以下のように考察することができる。
このうち、表8のNo.46〜48(抽出温度80℃)および表9のNo.61〜63(抽出温度100℃)は、いずれも、従来の代表例であり、水を用いた80℃以上の高温加熱抽出法の例である。
まず、抽出溶媒について検討すると、水よりも、水とエタノールの混合溶媒を用いた方が、抽出率も薬効も高くなった。
詳細には、水を用いた場合には、抽出温度にかかわらず、エキス収量がすべて低く、且つ、マンギフェリン量、キサントン類量、IC50値で評価される薬効も、すべて、本製造例の合格基準を大幅に下回っており(表5のNo.1〜3、表6のNo.16〜18、表7のNo.31〜33、表8のNo.46〜48、表9のNo.61〜63を参照)、抽出温度を100℃に高めても、マンギフェリン量は最高で14.16mg、キサントン類量は最高で41.39mg(いずれも、表9のNo.63を参照)であり、合格基準(マンギフェリン量:25mg以上、キサントン類量:100mg以上)を大幅に下回った。
これに対し、抽出溶媒として、水とエタノールの混合溶媒を用いると、抽出温度にかかわらず、エキス収量および薬効は上昇した。特に、エタノールの含有率が50%以上のエタノール水を用いれば、抽出物に対する抽出溶媒の混合比率にかかわらず、おおむね、これらの値は上昇し、とりわけ、50%エタノール水を用い、80℃で抽出を行なった表8のNo.54;50%エタノール水を用い、100℃で抽出を行なった表9のNo.68、69;80%エタノール水を用い、100℃で抽出を行なった表9のNo.72は、総合評価が○であり、50%エタノール水を用い、室温で抽出を行なった表5のNo.9は総合評価が◎であった。
加熱によるコストの上昇を考慮すれば、加熱抽出よりも、室温で抽出する冷浸法を用いた方が、コストを低く抑えられる。従って、抽出効率や薬効のみならず経済性をも考慮すれば、冷浸法を用いることが最も推奨される。
特に、50%以上のエタノール水を用いて室温で抽出すれば、表5のNo.7〜9に示すように、サラシア属乾燥エキスに対する抽出溶媒の混合比率にかかわらず、マンギフェリン量は20mg以上、キサントン類量は70mg以上と総じて高くなり、エキス収量も760mg以上と高くなった。とりわけ、50%エタノール水を用いた表5のNo.9は、これらの評価項目のいずれもが本製造例の合格基準を満足し、極めて良好な特性を示した。
なお、薬効に関し、マンギフェリン量と、キサントン類量またはIC50値との相関関係を見ると、マンギフェリン量とキサントン類量は、総じて、高い相関関係が認められたが、マンギフェリン量とIC50値の相関関係は低く、マンギフェリン量が多くてもIC50値が高い例もあり、バラツキが見られた。
例えば、表5のNo.10、13、14;表6のNo.25、26、28、29;表7のNo.37、42;表8のNo.52、58、59;表9のNo.64〜67、73は、いずれも、マンギフェリン量は低いて悪いのにIC50値が低くて良好な例であり、一方、表5のNo.12;表9のNo.72は、マンギフェリン量は高くて良好なのにIC50値が高くて悪い例であり、良好な相関関係が認められなかった。
従って、心疾患抑制剤の指標としては、サラシア属植物由来のマンギフェリンまたはキサントン類を用いることが有効であることが分かった。
正常Zuckerラット(ZL)と肥満Zuckerラット(ZDF)の対照群(Con)とサラシア属植物抽出物投与群(SOE)の、(a)心臓重量(HW)、(b)心臓重量/頚骨長さ(HW/TL)、(c)左心室重量(LVW)、(d)左心室重量/頚骨長さ(LVW/TL)である。各図中、「*」はStudent−Newman−Keulsテストによりp<5%の危険率で有意差がある場合を示す。 正常Zuckerラット(ZL)と肥満Zuckerラット(ZDF)で、対照群(Con)とサラシア属植物抽出物投与群(SOE)における心細胞の大きさを比較するための写真と統計処理結果を示す図である。図中、(a)はZLの対照群の心細胞の写真、(b)はZLのサラシア属植物抽出物投与群の心細胞の写真、(c)はZDFの対照群の心細胞の写真、(d)はZDFのサラシア属植物抽出物投与群の心細胞の写真、(e)はこれら心細胞の大きさの統計処理結果を示す写真である。「*」はStudent−Newman−Keulsテストによりp<5%の危険率で有意差がある場合を示す。 正常Zuckerラット(ZL)と肥満Zuckerラット(ZDF)で、対照群(Con)とサラシア属植物抽出物投与群(SOE)におけるANPをコードするmRNAの発現量(A)とBNPのmRNAの発現量(B)を示す図である。図中、「*」はStudent−Newman−Keulsテストによりp<5%の危険率で有意差がある場合を示す。 正常Zuckerラット(ZL)と肥満Zuckerラット(ZDF)で、対照群(Con)とサラシア属植物抽出物投与群(SOE)におけるAT1をコードするmRNAの発現量(a)とAT1自体の発現量(b)を示す図である。図中、「*」はStudent−Newman−Keulsテストによりp<5%の危険率で有意差がある場合を示す。 アンジオテンシンIIで刺激した心臓繊維芽細胞において、サラシア属植物抽出物を投与した場合(SOE)、マンギフェリンを投与した場合(MA)、およびテルミサルタンを投与した場合(Tel)におけるANPのmRNAの発現量(図5A)とチミジンの取込量(図5B)を示す図である。比較のために、アンジオテンシンIIの代わりに生理食塩水を添加した場合(Saline)の結果も合わせて示す。図中、「*」はStudent−Newman−Keulsテストによりp<5%の危険率で有意差がある場合を示す。

Claims (8)

  1. マンギフェリンを含有することを特徴とする心疾患抑制剤。
  2. サラシア属植物抽出物を含有する請求項1に記載の心疾患抑制剤。
  3. サラシア属植物のアルコール水抽出物を含有する請求項2に記載の心疾患抑制剤。
  4. 前記アルコール水に対するアルコールの比率は40容量%以上である請求項3に記載の心疾患抑制剤。
  5. 心肥大を抑制するものである請求項1〜4の何れか1項に記載の心疾患抑制剤。
  6. 請求項1〜5の何れか1項に記載の心疾患抑制剤を製造する方法であって、
    サラシア属植物に含まれるマンギフェリンを、アルコール水を用いて15〜30℃の温度で抽出することを特徴とする心疾患抑制剤の製造方法。
  7. 前記アルコール水に対するアルコールの比率は40容量%以上である請求項6に記載の製造方法。
  8. 50容量%エタノール水を用いる請求項6または7に記載の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014076962A (ja) * 2012-10-10 2014-05-01 Sakamoto Yakusoen:Kk 脂肪肝抑制剤

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