以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる水処理用反応槽が適用された水処理システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態にかかる水処理システム1は、被処理水又は処理水が流れる水道管11と、着水井21と、混和池31と、フロック形成池41と、沈殿池51と、急速ろ過池61と、本発明の実施形態にかかる水処理用反応槽71と、活性炭吸着池91と、浄水池101とを備え、これらは、水道管11を介して着水井21が設置されている上流側から順番に配設されている。被処理水は、水道管11を通って着水井21に流入して処理を施され、次いで混和池31から浄水池101まで水道管11を通って順に処理を施され、最終的には処理水となって、浄水池101が設置されている下流側の水道管11から排出される。なお、本発明の水処理システム1を構成する設備の種類および設置数は、図1に示す例に限定されない。
次に、上記各設備の構成について説明する((社)日本水道協会編『水道用語辞典(第二版)』(東京、(社)日本水道協会、1996年))。なお、本発明の実施形態にかかる水処理用反応槽71の詳細については後述する。
着水井21は、浄水場等へ流入する原水の水位動揺を安定させ、水位調節と流入量測定を行うために設ける池、あるいはマス(桝)のことである。
混和池31は、凝集剤を注入した後に、直ちに急速な撹拌を与えて凝集剤を原水中に均一にいきわたらせるための混和装置のことである。
フロック形成池41は、沈澱処理の前処理としてフロック形成を行うための池である。
沈殿池51は、水よりも重い粒子が静水中やきわめて静かな流れの中では、沈降して水と分離するという原理を利用して、原水を静かに流れる広い池に流入させて原水中の粒子を分離する池のことである。
急速ろ過池61は、凝集沈殿処理を行った後に、残りの濁質をろ過して除去するためのろ過槽のことである。
活性炭吸着池91は、活性炭の優れた吸着能力を利用して、また、活性炭表面に成育した微生物の分解作用を利用して、異臭味、色度、陰イオン界面活性剤、フェノール類等の有機物を除去するものである。
浄水池101は、浄水場内において、浄水処理の運転管理上生じるろ過水量と送水量との間の不均衛を緩和するとともに、事故時または水質異常時における水量変動の対応などのために浄水を貯留するものである。
次に、本発明の第1の実施形態にかかる水処理用反応槽について説明するが、各水処理用反応槽は後述する構成要素を複数含んでいてもよく、また、構成要素以外の構成要素を含んでいてもよく、あるいは、後述する構成要素のうちの一部が含まれていなくてもよい。また、各構成要素の設置場所については、本発明が意図するように機能すれば、特に限定されるものではない。なお、各水処理用反応槽で同様の機能を有する部分については、説明の重複を避けるため第1の実施形態のみその説明を行い、第2の実施形態以降はその説明を省略する。
図2は、本発明の第1の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図2に示すとおり、本発明の水処理用反応槽71は、散気管式又はディフューザ式反応槽と呼ばれるものである。ここで、散気管式反応槽とは、底部(本発明においては、反応槽211の底部)から多孔質の散気管(本発明においては、オゾンガス注入管221)を用いて、オゾンガスを吹き込む方式のものである。これは、少流量から大流量の処理に対応でき、また、操作の融通性もあることから、オゾンを用いた水処理において、最も一般的に使用されている(宗宮功編著『オゾンハンドブック』(横浜、サンユー書房、2004年)、宗宮功編著『オゾン利用水処理技術』(公害対策技術同友会、1989年))。本実施形態においては、水道管11を流れる被処理水を貯水する反応槽211と、オゾンガスを発生させるオゾンガス発生装置(図示せず)と、オゾンガスを反応槽211中に注入し、被処理水と接触させるオゾンガス注入管221と、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測する溶存オゾン濃度計231と、溶存オゾン濃度に基づいて過酸化水素の注入量を決定し、過酸化水素注入装置251に伝え、その注入量を制御するフィードバック制御装置241と、フィードバック制御装置241からの信号を受けて、過酸化水素を過酸化水素注入管261に注入する過酸化水素注入装置251と、過酸化水素を水道管に流入する水道管11とで構成されている。被処理水は、水道管11を通って反応槽211に流入して適量を貯水された後、オゾンガス注入管221からオゾンガスが注入され、被処理水と接触して溶存オゾンが生成され、反応槽211の出口側に設置された溶存オゾン濃度計231により測定される。この溶存オゾン濃度に基づいて、フィードバック制御装置241より過酸化水素の注入量が決定され、次いで、過酸化水素注入装置251から過酸化水素注入管261を通って過酸化水素が反応槽211に流入して浄水処理が施され、反応槽211の出口側に設置された水道管11から排出される。
次に、本発明の過酸化水素の注入量の制御方法について、水処理原理を踏まえて説明する。
通常のオゾン処理では、図3に示すように、溶存オゾンによる反応(図中の(B))と、溶存オゾンが分解して生成したヒドロキシルラジカルによる反応(図中の(D))との、二つの経路により処理対象物質の酸化分解が行われている。この場合、溶存オゾンにより処理対象物質が分解される速度(図中の(B))と溶存オゾンが自己分解する速度(図中の(C)、自己分解にともない一部がヒドロキシルラジカルへと変換)との和が、オゾンガスが被処理水中に溶解して溶存オゾンを生成させる速度(図中の(A))と比較して非常に遅いために、反応槽中に溶存オゾンが蓄積されるので、上記(A)の生成速度が低下する。従って、通常のオゾン処理では、全体のマスバランスを考えると、図4に示すように、オゾンガスが溶解して生成された溶存オゾンの一部が消費されずに反応槽中に残存するだけでなく、未溶解のオゾンガス(図中の未使用オゾンガス)も残存するので、全体的な処理効率は低下する。
そこで、例えば特開平9−276882号公報(第11項、図1)や特開平10−165971号公報(第8項、図1)に開示されている水処理用反応槽のように、ヒドロキシルラジカルの供給源であるオゾンガスに過酸化水素を添加する、促進酸化処理法を導入し、処理効率を向上させる試みがなされている。図5に示すように、促進酸化処理法では、オゾンガスとして注入されたオゾンが被処理水へと溶け込み、その後添加された過酸化水素と反応してヒドロキシルラジカルを生成し、処理対象物質が分解される。しかし、この場合、過酸化水素の添加量が最適化されていないため過酸化水素が不足していると、溶存オゾンが分解される速度(図中の(B)と(C)の和)は、オゾンガスが被処理水中に溶解して溶存オゾンを生成させる速度(図中の(A))と比較して遅いため、通常のオゾン処理と同様に、反応槽中に溶存オゾンが蓄積されるので、上記(A)の生成速度が低下する。従って、促進酸化処理法では、全体のマスバランスを考えると、図6に示すように、通常のオゾン処理を行った場合と比較すると、残存溶存オゾン量は低減するものの、未溶解のオゾンガスと共に残存するので、全体的な処理効率は低下する。
一方、本発明においては、図7に示すように、上記と同様に促進酸化処理法を適用し、過酸化水素を添加している。この場合、過酸化水素添加量を最適化しているため、オゾンガスが被処理水中に溶解して溶存オゾンを生成させる速度(図中の(A))と、溶存オゾンが分解される速度(図中の(B)と(C)の和)とは同等の速度であり、溶存オゾンは蓄積されない。また、溶存オゾンは過酸化水素と主に反応しているため、生成したヒドロキシルラジカルによって対象物質は主に分解されている。従って、上記(A)の生成速度は常に最大の速度を保つことができ、全体のマスバランスを考えると、図8に示すように、未溶解のオゾンガスもほとんど残存しないので、全体的な処理効率は向上する。
すなわち、両者の差は全体のマスバランスの制御方法にある。従来技術の促進酸化処理における制御方法は、図9に示すように、オゾンガスと過酸化水素の比率により決定され、この比率は、上記両従来技術共に予め設定した数値である。従って、実験室規模で算出した数値を実際の施設において導入したとしても微調整が必要であり、また、実際の被処理水の水質や装置の形状等によっては、この数値を用いて処理ができない可能性もあり、作業者の労力や時間を費やし、全体的な処理効率が低下することが予想される。
しかしながら、本発明の促進酸化処理における制御方法は、図10に示すように、溶存オゾン濃度を指標として過酸化水素の注入量を最適化するため、実験室規模での予備実験はもとより、実際の施設でも微調整に労力と時間を費やす必要はない。ここで、過酸化水素の注入量の最適化とは、未知濃度のオゾンガスを反応槽内に注入した際に、オゾンガスの溶解量が最大となる条件、すなわち、良好な処理効率を得るための条件を決定し、その条件から過酸化水素の注入量を算出することである。反応槽中のオゾンガス濃度の変化は、下記数式(I)
(式中、[O3]gas(mg/L)はオゾンガス濃度を、KLa(1/s)は総括オゾン移動容量係数を、[O3]liq(mg/L)は溶存オゾン濃度を、[O3]* liq(mg/L)は飽和溶存オゾン濃度を示す。)により表わされる。注入したオゾンガスが最大限に利用される条件とは、経過時間ごとのオゾンガスの減少量(被処理水への溶解量)が最大となる条件でもある。式(I)より、溶存オゾン濃度が低い場合には、オゾンガスの被処理水への溶解速度が大きいことがわかり、溶存オゾンは過酸化水素水と反応してヒドロキシルラジカルを生成するが、その生成速度は過酸化水素濃度が高い場合に大きくなる。よって、経過時間ごとの全溶存オゾンと反応する量の過酸化水素が反応槽中に存在していれば、オゾンガスの溶解速度は常に最大となる。
従って、上述した通常のオゾン処理では、反応槽の出口の溶存オゾン濃度が最も高くなることから、上述したオゾンガスの溶解速度を常に最大にするためには、反応槽の出口において溶存オゾンが検出されなければ、反応槽の他の地点からも検出されないと考えられる。よって、図2に示すように、溶存オゾン濃度計231は、反応槽211の出口に設置することが望ましい。
また、フィードバック制御装置241は、溶存オゾン濃度計231で検出された溶存オゾン濃度を基にして、好ましくは、溶存オゾンの量を低減するように、さらに好ましくは、溶存オゾンの量が最小になるように制御可能に設計されることが望ましい。なお、過酸化水素は過剰になると処理効率が低下し、さらに経済的負担を増加させるという観点から注入量が少ないことが望ましいので、フィードバック制御装置241は、オゾンガスの溶解速度を常に最大にするために必要な注入量、好ましくは必要最低限の注入量を条件として設定されても構わない。また、他の観点から添加する過酸化水素量の上限又は下限を設定する必要性が生じた場合にも、状況に応じて適宜設計変更されてもよい。さらに、溶存オゾン濃度計231の精度差により、設置する溶存オゾン濃度計231の精度が低い場合には、検出限界値より低い溶存オゾン濃度を基にして、過酸化水素の注入量を制御可能に設計されてもよい。
次に、本発明の水処理用反応槽の他の実施形態について説明するが、これらは第1の実施形態にかかる水処理用反応槽と同様に、例えば図1に示すような水処理システムに適用可能である。
図11は、本発明の第2の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図11に示すとおり、本発明の水処理用反応槽72は、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と異なり、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽である。被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231は、反応槽211cの出口に設置され、フィードバック制御装置241は、溶存オゾン濃度計231により計測された反応槽211c中の溶存オゾン濃度に基づいて、過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。すなわち、本実施形態においては、第1の実施形態と同様に過酸化水素の注入個所が1ヶ所であるので、反応槽211c中の溶存オゾン濃度を計測することにより、反応槽211a〜211c中の溶存オゾン濃度を計測しているのに等しい。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図12は、本発明の第3の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図12に示すとおり、本発明の水処理用反応槽73は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽であり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231は、反応槽211cの出口に設置されている。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽とは異なり、フィードバック制御装置241a〜241cは、溶存オゾン濃度計231で計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度に基づいて、それぞれ反応槽211a〜211cへの過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。すなわち、本実施形態は、第2の実施形態と比較すると、それぞれの反応槽211a〜211cに過酸化水素注入装置251a〜251cがあるため、前段の反応槽211aにおいて、それ以降の反応槽211b、211cに必要となる過酸化水素を過剰に注入する必要がなく、それぞれの反応槽211a〜211cで必要最小限の過酸化水素を注入すればよい。このとき、過酸化水素の注入量は、それぞれの過酸化水素注入装置251a〜251cについて制御することも、そのうちの特定の過酸化水素注入装置のみについて注入量を制御することも可能である。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図13は、本発明の第4の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図13に示すとおり、本発明の水処理用反応槽74は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽である。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と異なり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231a、231b、231cは、反応槽211a、211b、211cの出口にそれぞれ設置されており、溶存オゾン濃度計231aで計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度と、溶存オゾン濃度計231bで計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度と、溶存オゾン濃度計231cで計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度とに基づいて、フィードバック制御装置241aとフィードバック制御装置241bとフィードバック制御装置241cとが、反応槽211aへの過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。この際、過酸化水素注入装置251は、両制御装置が算出したそれぞれの過酸化水素の注入量を、別個に又は一度に、過酸化水素注入管261へ注入可能に構成されてもよい。すなわち、本実施形態のように、複数の反応槽211a〜211cが直列につながっている場合、それぞれの反応槽211a〜211cでオゾンガスの注入率を変える場合がある。このとき、オゾンガスの注入率が高い反応槽の出口の溶存オゾン濃度は、最終的な出口(本実施形態においては、反応槽211cの出口)の溶存オゾン濃度より、高くなる可能性もある。本実施形態では、それぞれの反応槽211a〜211cの出口に溶存オゾン濃度計231a〜231cが設置してあるため、それぞれの反応槽211a〜211cでオゾンガス注入率等の処理条件が異なる場合においても、それぞれの反応槽211a〜211cにおいて最適な処理条件で処理を行うことができる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図14は、本発明の第5の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図14に示すとおり、本発明の水処理用反応槽75は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽である。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と異なり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231a、231b、231cは、反応槽211a、211b、211cの出口にそれぞれ設置されており、フィードバック制御装置241a、241b、241cは、溶存オゾン濃度計231a、231b、231cでそれぞれ計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度に基づいて、反応槽211a、211b、211cへの過酸化水素の注入量を、それぞれ制御している。すなわち、本実施形態は、第3の実施形態と第4の実施形態とを組み合わせた構成となっているため、多段反応槽のそれぞれの反応槽211a〜211cで、オゾンガス注入率等の反応条件が異なる場合でも、それぞれの反応槽211a〜211cに必要最小限の過酸化水素を注入することができる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図15は、本発明の第6の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図15に示すとおり、本発明の水処理用反応槽76は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽であり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231は、反応槽211cの出口に設置されている。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽とは異なり、過酸化水素注入装置251は反応槽211bの入口に設置され、フィードバック制御装置241は、溶存オゾン濃度計231により計測された反応槽211c中の溶存オゾン濃度に基づいて、過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。すなわち、被処理水中には、オゾンと反応性が高い成分がある程度存在している。本実施形態では、最初の反応槽211aではオゾン処理により、オゾンと反応性が高い成分が優先的に分解され、その後の反応槽211b、211cで残りの難オゾン反応性の成分がオゾン/過酸化水素処理によって分解されることとなる。よって、本実施形態の構成の場合には、最初の反応槽211aで、不必要な過酸化水素を注入する必要がない。なお、1段目の反応槽211aの出口に溶存オゾン濃度計を設置し、溶存オゾン濃度を制御することも可能である。後段のオゾン/過酸化水素処理の構成は、第2の実施形態と同様であり、反応槽211cの出口の溶存オゾン濃度により、反応槽211b、211c中の溶存オゾン濃度を制御していることとなる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図16は、本発明の第7の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図16に示すとおり、本発明の水処理用反応槽77は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽であり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231は、反応槽211cの出口に設置されている。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽とは異なり、フィードバック制御装置241a、241bは、溶存オゾン濃度計231で計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度に基づいて、それぞれ反応槽211b、211cへの過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。すなわち、本実施形態は、第3の実施形態と第6の実施形態を組み合わせた構成となっている。このため、最初の反応槽211aではオゾン処理により、オゾンと反応性が高い成分が優先的に分解され、その後の反応槽211b、211cで残りの難オゾン反応性の成分がオゾン/過酸化水素処理によって分解されることとなる。本実施形態の構成の場合、最初の反応槽211aで、不必要な過酸化水素を注入する必要がない。なお、第6の実施形態の場合と同様に、1段目の反応槽211aの出口に溶存オゾン濃度計を設置し、溶存オゾン濃度を制御することも可能である。後段のオゾン/過酸化水素処理では、第3の実施形態と同様に、前段の反応槽211bにおいて、それ以降の反応槽211cで必要となる過酸化水素を過剰に注入する必要がない。このとき、過酸化水素の注入量は、各過酸化水素注入装置251a、251bについて制御することも、そのうちの特定の過酸化水素注入装置のみについて注入量を制御することも可能である。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図17は、本発明の第8の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図17に示すとおり、本発明の水処理用反応槽78は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽である。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽とは異なり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231a、231bは、反応槽211b、211cの出口にそれぞれ設置されており、溶存オゾン濃度計231aで計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度と、溶存オゾン濃度計231bで計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度とに基づいて、フィードバック制御装置241aとフィードバック制御装置241bとが、反応槽211bへの過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。この際、過酸化水素注入装置251は、両制御装置が算出したそれぞれの過酸化水素の注入量を、別個に又は一度に、過酸化水素注入管261へ注入可能に構成されてもよい。すなわち、本実施形態は、第4の実施形態と第6の実施形態を組み合わせた構成となっている。このため、最初の反応槽211aではオゾン処理により、オゾンと反応性が高い成分が優先的に分解され、その後の反応槽211b、211cで残りの難オゾン反応性の成分がオゾン/過酸化水素処理によって分解されることとなる。本実施形態の構成の場合、最初の反応槽211aで、不必要な過酸化水素を注入する必要がない。なお、第6の実施形態の場合と同様に、1段目の反応槽211aの出口に溶存オゾン濃度計を設置し、溶存オゾン濃度を制御することも可能である。後段のオゾン/過酸化水素処理では、それぞれの反応槽211b、211cでオゾンガス注入率等の処理条件を変える場合、ある反応槽の出口の溶存オゾン濃度は、最終的な出口(本実施形態においては、反応槽211cの出口)の溶存オゾン濃度より、高くなる可能性もある。第6の実施形態の構成では、第4の実施形態と同様に、それぞれのオゾン反応槽211b、211cの出口に溶存オゾン濃度計231a、231bが設置してあるため、このようにそれぞれのオゾン反応槽211b、211cで処理条件が異なる場合においても、それぞれのオゾン反応槽211b、211cにおいて最適な処理条件で処理を行うことができる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図18は、本発明の第9の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図18に示すとおり、本発明の水処理用反応槽79は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と同様に、複数の反応槽211a、211b、211cを直列につなぐ多段型の反応槽である。しかし、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽とは異なり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231a、231bは、反応槽211b、211cの出口にそれぞれ設置されており、フィードバック制御装置241a、241bは、溶存オゾン濃度計231a、231bでそれぞれ計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度に基づいて、反応槽211b、211cへの過酸化水素の注入量を、それぞれ制御可能に構成されている。すなわち、本実施形態は、第5の実施形態と第6の実施形態を組み合わせた構成となっている。このため、最初の反応槽211aではオゾン処理により、オゾンと反応性が高い成分が優先的に分解され、その後の反応槽211b、211cで残りの難オゾン反応性の成分がオゾン/過酸化水素処理によって分解されることとなる。本実施形態の構成の場合、最初の反応槽211aで、不必要な過酸化水素を注入する必要がない。なお、第6の実施形態の場合と同様に、1段目のオゾン反応槽211aの出口に溶存オゾン濃度計を設置し、溶存オゾン濃度を制御することも可能である。後段のオゾン/過酸化水素処理では、第5の実施形態と同様に、それぞれの反応槽211b、211cで、オゾンガス注入率等の反応条件が異なる場合でも、それぞれの反応槽211b、211cに必要最小限の過酸化水素を注入することができる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図19は、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図19に示すとおり、本発明の水処理用反応槽80は、本発明の第2の実施形態の水処理用反応槽と異なり、エゼクタ式反応槽又はインクジェット式反応槽と呼ばれるものである。エゼクタ式反応槽とは、過酸化水素を添加した被処理水をノズル(図示せず)へ送り、ノズルでの圧力差を利用してオゾンガス注入管221を介してオゾンガスを吸引し、水道管11をとおって反応槽211中へ分散させる方式の反応槽である。すなわち、本発明の実施の形態は、オゾンガス及び過酸化水素を反応槽211へ注入させる手段が、本発明の第1〜9の実施形態にかかる水処理用反応槽とは異なるものである。エゼクタ271は、コンパクトな装置であり、分散気泡は微細で気液の混合が激しく、大きな物質移動係数が得られ、また、ディフューザ(本発明の第1〜9の実施形態にかかる水処理用反応槽に用いられている方式)のような深い水深を必要とせず、短時間で高オゾン溶解効率が得られる。よって、小規模な場合には有効な方式とされ、上下水道の高度処理に適用されている。また、エゼクタ式反応槽である水処理用反応槽80では、オゾンガスの溶解はエゼクタ271で行われるが、残存オゾンガスは反応槽211でも吸収される。したがって、本実施形態では、反応槽211中の溶存オゾン濃度を計測することにより、エゼクタ271および反応槽211における溶存オゾン濃度を計測及び制御していることになる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図20は、本発明の第11の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図20に示すとおり、本発明の水処理用反応槽81は、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽と同様に、エゼクタ式反応槽又はインクジェット式反応槽と呼ばれるものである。しかし、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽とは異なり、エゼクタ271と反応槽211との間に溶存オゾン濃度計231を配設している。また、エゼクタ式反応槽である水処理用反応槽81の場合、エゼクタ271の性能やオゾン注入量によっては、注入したオゾンガスは全てエゼクタ271で溶け込み可能な場合がある。この場合、溶存オゾン濃度は、エゼクタ271の出口で最も高くなると考えられる。本実施形態では、エゼクタ271に特化して溶存オゾン濃度を計測及び制御していることとなる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図21は、本発明の第12の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図21に示すとおり、本発明の水処理用反応槽82は、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽と同様に、エゼクタ式反応槽又はインクジェット式反応槽と呼ばれるものであり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231は、反応槽211の出口に設置されている。しかし、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽とは異なり、フィードバック制御装置241a、241bは、溶存オゾン濃度計231で計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度に基づいて、それぞれエゼクタ271及び反応槽211への過酸化水素の注入量を、それぞれ制御している。すなわち、本実施形態は、第10の実施形態と比較すると、エゼクタ271及び反応槽211のそれぞれに、過酸化水素注入装置251a、251bが、過酸化水素が注入可能に配設されているため、エゼクタ271及び反応槽211のそれぞれに対して必要最小量の過酸化水素を注入することが可能となり、エゼクタ271での反応において過剰な過酸化水素を注入する必要がない。このとき、過酸化水素の注入量は、それぞれの過酸化水素注入装置251a、251bについて制御することも、そのうちの特定の過酸化水素注入装置のみについて注入量を制御することも可能である。
図22は、本発明の第13の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図22に示すとおり、本発明の水処理用反応槽83は、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽と同様に、エゼクタ式反応槽又はインクジェット式反応槽と呼ばれるものである。しかし、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽とは異なり、エゼクタ271と反応槽211との間と、反応槽211の出口とに溶存オゾン濃度計231a、231bをそれぞれ配設し、溶存オゾン濃度計231aにより計測された被処理水中の各溶存オゾンの濃度と、溶存オゾン濃度計231bにより計測された被処理水中の各溶存オゾンの濃度とに基づいて、フィードバック制御装置241aとフィードバック制御装置241bとが、反応槽211への過酸化水素の注入量を制御可能に構成されている。この際、過酸化水素注入装置251は、両制御装置が算出したそれぞれの過酸化水素の注入量を、別個に又は一度に、過酸化水素注入管261へ注入可能に構成されてもよい。また、本実施形態では、エゼクタ271およびオゾン反応槽211のそれぞれに溶存オゾン濃度計231a、231bが設置してあり、第10の実施形態と第11の実施形態とを合わせた構成となっている。上述したように、エゼクタ271の性能や処理条件によっては、オゾンガスはエゼクタ271のみで水中に溶け込む場合と、エゼクタ271と反応槽211の両方で水中に溶け込む場合がある。本実施形態の構成では、そのいずれの場合についても対応可能なように、溶存オゾン濃度を計測及び制御していることとなる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図23は、本発明の第14の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図23に示すとおり、本発明の水処理用反応槽84は、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽と同様に、エゼクタ式反応槽又はインクジェット式反応槽と呼ばれるものである。しかし、本発明の第10の実施形態にかかる水処理用反応槽とは異なり、被処理水中の溶存オゾンの濃度を計測するための溶存オゾン濃度計231a、231bは、エゼクタ271と反応槽211との間と、反応槽211の出口とにそれぞれ設置されており、フィードバック制御装置241a、241bは、溶存オゾン濃度計231a、231bでそれぞれ計測された被処理水中の溶存オゾンの濃度に基づいて、エゼクタ271及び反応槽211への過酸化水素の注入量を、それぞれ制御している。また、図23では、エゼクタ271と反応槽211それぞれに溶存オゾン濃度計231a、231bと過酸化水素注入装置251a、251bが設置してある。このため、第13の実施形態の場合と同様に、エゼクタ271の性能や処理条件によらず、溶存オゾン濃度が高くなる地点の溶存オゾン濃度を計測及び制御できる。また、第12の実施形態の場合と同様に、エゼクタ271、反応槽211のそれぞれに対して必要最小量の過酸化水素を注入することが可能となり、エゼクタ271での反応において過剰な過酸化水素を注入する必要がない。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図24は、本発明の第15の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図24に示すとおり、本発明の水処理用反応槽85は、Uチューブ式反応槽又は下方注入式反応槽と呼ばれるものであり、一般的に、散気管式反応槽と比べて水深が深いため、オゾン分圧が高くなるので、オゾンガスの吸収速度が大きいといわれている(宗宮功編著『オゾンハンドブック』(横浜、サンユー書房、2004年))。本実施形態においては、反応槽212は、水深20m〜35mの垂直円筒形の閉管内に内管281を配した二重管により構成され、内管281は水道管11に接続されており、被処理水は内管281を通って流入する。オゾンガス注入管221は内管281内に設置されており、オゾンガスはそこで被処理水中に引き込まれる。内管281の底部に下降した被処理水とオゾンガスは外周の環状帯に導かれ、上向きの流れに変換されて上昇し、下向管の上部に設けられた流出槽291に越流する。ここで、残オゾンガスは排オゾン管(図示せず)から排出され、処理水は水道管11より流出する。フィードバック制御装置241は、溶存オゾン濃度計231が流出槽291中の処理水の溶存オゾン濃度を計測した溶存オゾン濃度を基づいて、反応槽212への過酸化水素の注入量を制御している。また、Uチューブ式反応槽である水処理用反応槽85は、内管281と反応槽212のそれぞれにおいて、異なるオゾン吸収特性でオゾンガスは水中へと溶解しているが、本実施形態では、反応槽212出口に溶存オゾン濃度計231を1つ設置することで、内管281と反応槽212における溶存オゾン濃度を制御していることとなる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図25は、本発明の第16の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図25に示すとおり、本発明の水処理用反応槽86は、Uチューブ式反応槽又は下方注入式反応槽と呼ばれるものである。Uチューブ式反応槽である水処理用反応槽86は、内管281の通過時に、水深が大きくなるのにともなってオゾンガスの溶け込み速度が大きくなるため、オゾンガスの注入率によっては、内管281出口においてオゾンガスが全て水中に溶解する場合もある。本実施形態では、内管281出口に溶存オゾン濃度計231が設置されており、このような処理条件に対応するため、内管281に特化して溶存オゾン濃度を計測及び制御していることとなる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図26は、本発明の第17の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図26に示すとおり、本発明の水処理用反応槽87は、Uチューブ式反応槽又は下方注入式反応槽と呼ばれるものである。本実施形態では、Uチューブ式反応槽である水処理用反応槽87の内管281と反応槽212のそれぞれに過酸化水素注入装置251a、251bが設置してある。このため、内管281、反応槽212のそれぞれに対して必要最小量の過酸化水素を注入することが可能となり、内管281での反応において過剰な過酸化水素を注入する必要がない。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図27は、本発明の第18の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図27に示すとおり、本発明の水処理用反応槽88は、Uチューブ式反応槽又は下方注入式反応槽と呼ばれるものである。本実施形態では、Uチューブ式反応槽の内管281と反応槽212のそれぞれの出口に溶存オゾン濃度計231a、231bが設置してあり、第15の実施形態と第16の実施形態とを合わせた構成となっている。上述したように、処理条件によっては、オゾンガスは内管281のみで水中に溶け込む場合と、内管281と反応槽212の両方で水中に溶け込む場合がある。本実施形態の構成では、そのいずれの場合についても対応可能なように、溶存オゾン濃度を計測及び制御していることとなる。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
図28は、本発明の第19の実施形態にかかる水処理用反応槽を示すブロック図である。図28に示すとおり、本発明の水処理用反応槽89は、Uチューブ式反応槽又は下方注入式反応槽と呼ばれるものである。本実施形態では、Uチューブ式反応槽である水処理用反応槽89の内管281と反応槽212のそれぞれに溶存オゾン濃度計231a、231bと過酸化水素注入装置251a、251bが設置してある。このため、第18の実施形態と同様に、処理条件によらず、溶存オゾン濃度が高くなる地点の溶存オゾン濃度を計測及び制御できる。また、第17の実施形態と同様に、内管281、反応槽212のそれぞれに対して必要最小量の過酸化水素を注入することが可能となり、内管281での反応において過剰な過酸化水素を注入する必要がない。なお、その他の構成、オゾン及び過酸化水素の注入量の制御方法及び水処理原理については、本発明の第1の実施形態の水処理用反応槽と同様である。
本発明においては、オゾンガスの接触方式は、特に制限をされるものではなく、例えば、タービン式(機械攪拌式)、マイクロバブル発生システム等を用いることができ、何れかを目的に合わせて適宜選択すればよい。また、オゾンガスの注入量の制御方法についても特に制限されず、例えば、既知の制御方法である被処理水の全有機炭素量や、紫外線吸光度に対する比率による制御方法等を適用してもよい。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。