JP2008540456A - 血管疾患の治療 - Google Patents

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Abstract

本発明は、血管機能障害および心臓機能障害を治療するための方法および薬剤に関する。また血管機能障害および心臓機能障害に関連したさまざまな生理学的および病理学的徴候を治療するための方法および薬剤も提供する。
【選択図】図1

Description

本出願は、2005年5月5日出願の米国仮出願第60/678,495号、2005年6月15日出願の米国仮出願第60/690,957号、および2005年11月7日出願の米国仮出願第60/734,433号の優先権を主張するものであり、これらはそれぞれ、参照としてその全体を本明細書に含めるものとする。
本発明は、血管および心臓機能の障害を治療する方法および薬剤に関する。血管機能障害および心臓機能障害に関連するさまざまな生理学的および病理学的特徴を治療する方法および薬剤も提供する。
糖尿病の血管合併症は重大な障害をもたらし、あらゆる主要臓器を冒す可能性がある。糖尿病患者は、アテローム性動脈硬化、ならびに心臓血管、末梢血管および脳血管疾患の発症率が増加する。血管合併症および疾患は、糖尿病個体の死亡および病的状態の大半の原因となる。
糖尿病患者における血管疾患の発生には、高血糖、高血圧、肥満および脂質代謝異常などの多くの要因が関与する。たとえば、血糖値の上昇(すなわち高血糖)は、網膜症、腎症および神経障害などの細小血管合併症の根本的な原因であり、心臓血管疾患および末梢血管疾患といった大血管合併症の早期発症および急速な進行の一因となると考えられている。血糖値の上昇および酸化ストレスは、いずれも糖尿病の微小環境に特徴的であり、終末糖化産物(AGE)形成を促進する。高血糖およびAGEは、内皮の正常な構造および機能に変化(たとえば、損傷)を引き起こす可能性があり、内皮機能障害をもたらすことが考えられる。それに加えて、高血糖およびAGEは、体内の細小血管系および大血管系の損傷を含めて、さまざまな血管合併症に関与してきた。さらに高血糖および脂質代謝異常は、心臓血管および脳血管疾患の一般に認められたマーカーである、血管内膜-中膜の厚さと関係がある。
糖尿病の心臓血管合併症は重篤であり、糖尿病の病的状態および死亡率に著しい影響をおよぼす。こうした合併症には、冠動脈性心疾患(CHD)、鬱血性心不全、脳卒中、末梢動脈疾患、心筋症、腎症、網膜症、および神経障害がある。
血管疾患は、糖尿病患者において、たとえば糖尿病性腎症(よく見られる、多くの場合重篤な疾患)のような他の合併症に関連して発現することがある。心臓血管疾患は、末期腎不全(ESRD)となった糖尿病患者で一番多い死亡原因である(McMillanら(1990) BMJ 301:540-544; Hirschlら(1992) Am J Kidney Dis. 20:564-568; およびRischen-Vosら(1992) Nephrol Dial Transplant 7:433-437)。
糖尿病患者は、鬱血性心不全の重大な危険にさらされている。長期間にわたる高血圧、慢性的な高血糖、重いアテローム性冠状動脈硬化などの多くの要因が、糖尿病性心筋症の発症率を高める原因となる。脳卒中による死亡率は、糖尿病患者を糖尿病でない人と比べると、ほぼ3倍に上昇する(Stamlerら、(1993) Diabetes Care 16:434-444)。さらに、糖尿病は、重篤なアテローム性頸動脈硬化の可能性も高める(Folsomら、(1994) Stroke 16:434-444. およびO’Leary ら、(1992) Stroke 25:66-73)。
末梢血管疾患(PVD)の発生率は、糖尿病でない人より糖尿病患者の方が約4倍高い(たとえば、Gibbons (1998) Peripheral vascular disease、H.E. Lebovitz編、Therapy for diabetes mellitus (第3版)より、290-302ページを参照されたい)。末梢血管疾患は、脚、場合によっては腕、の動脈がアテローム性硬化によって狭くなる疾患である。それが、下肢潰瘍、創傷治癒障害、ならびに感染と闘う能力の低下の一因となる。この理由としては、酸素、栄養素、および抗生物質の感染部位への運搬の遅延もしくは阻害(虚血)、ならびに免疫応答障害が挙げられる(Gibbons、上記を参照されたい)。糖尿病に伴う他の病的状態、たとえば、高血圧、肥満、および脂質代謝異常は、糖尿病患者がPVDを発症する危険性をさらに悪化させる。
糖尿病の血管合併症の進行および重症度を治療もしくは軽減すること、またはこうした合併症の発症を予防することを目的とした現行の治療法は、血糖コントロールの最適化(食事療法および/またはインスリン治療の改善による)、高血圧コントロール(高血圧を低下させるためにアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤およびアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)を投与することを含む)、コレステロール低下治療などを含めて、さまざまなアプローチを用いる。しかしながら、こうした治療は誰にでもうまくいくわけではなく、糖尿病に関連する血管合併症および病状(たとえば損傷)を回復させるのに、または冒された血管、臓器および組織の機能を改善するのに、効果のないことも多い。さらに、米国および世界における、人口の高齢化、ならびに肥満の罹患率および座業の多い生活習慣の確実な増加といった要因により、糖尿病の有病率は全世界で高まっている。このように糖尿病は、全世界で、血管疾患の主なリスクファクターとなっている。
したがって、当技術分野において、糖尿病の血管合併症を治療する方法、こうした血管合併症の進行および重症度を軽減する方法、ならびにこうした合併症の発症を予防する方法が必要である。加えて、当技術分野において、血管系の病変および損傷を回復に向かわせることを含めて、糖尿病に伴う血管合併症の回復に有効な方法および薬剤、ならびに糖尿病に伴う血管合併症に冒された血管、臓器、および組織の機能を改善する方法および薬剤が必要である。
本発明は、糖尿病の動物モデルにおいて、CTGFの特異的阻害が血管機能障害を軽減するだけでなく、血管機能をある程度まで改善することをはじめて示すことによって、上記の要求に応えるものである。特に、本発明は、糖尿病動物モデルにおいて、抗CTGF抗体の投与が動脈壁硬化、血管透過性、血管外遊出、たとえば浮腫、および血管石灰化を効果的に軽減したことを実証する。本発明の方法および薬剤はまた、糖尿病に関連した血管系の病変および損傷を快方に向かわせるのに効果的であった。
本発明はさらに、CTGFの特異的阻害が心臓機能を改善することを示す。特に本発明は、下記のパラメータの実証された改善によって証明されるように、抗CTGF抗体の投与が、心臓機能に測定可能な改善をもたらしたことを明らかにする:心室弛緩、心室収縮、拡張末期圧、拡張末期容積、駆出率、動脈弾性率、一回拍出量、および心拍出量。
本発明は、被験体において血管機能障害を軽減する、または血管機能を改善する方法を提供するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体において血管機能障害を軽減する、または血管機能を改善することを含んでなる。
さまざまな実施形態において、被験体は、糖尿病であるか、もしくは糖尿病のリスクがある被験体である。
特定の実施形態において、血管機能は、細小血管機能もしくは大血管機能とすることができるが、末梢血管系に関連した血管機能であることもある。
ある実施形態において、前記方法は具体的には、内皮機能障害を軽減すること;動脈壁硬化、特に軸方向、半径方向および周方向の動脈壁硬化からなる群から選択される動脈壁硬化を治療もしくは低減すること;血管透過性を低下させること;血管外遊出を減少させること;内膜-中膜の肥厚を減少させること;または総頸動脈内膜中膜肥厚を減少させることを目的とすることができる。特に、前記方法は浮腫もしくは組織浮腫を減少させることを目的とする。同様に、前記方法は、血管の損傷もしくは機能障害を軽減すること;または血管石灰化を軽減することを目的とする。
本発明の方法は特に、糖尿病に伴う血管合併症を治療することを意図している。
本方法の対象は、哺乳類の被験体とすることができる。特に、被験体はヒト被験者とすることができる。
本発明の方法で使用される抗CTGF薬は、たとえば、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは小分子でありうる。具体的には、抗CTGF薬は、CTGFと結合する抗体、またはそのフラグメント;アンチセンス分子;siRNA;または小分子化合物とすることができる。特定の実施形態において、抗CTGF薬は、CTGFに対するモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。他の特定の実施形態において、抗CTGF薬は、WO 2004/108764に記載のCLN-1またはそのフラグメントである。
当然のことながら、本発明は、本明細書に記載の特定の方法論、プロトコル、細胞株、アッセイおよび試薬に限定されず、これらはさまざまに変更することができる。やはり当然のことであるが、本明細書で使用される専門用語は、本発明の特定の実施形態を説明することを目的としており、決して添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形での表現は、文脈上明らかにそうでないと指示される場合を除き、複数形の言及を包含することに留意しなければならない。したがって、たとえば、「フラグメント(単数)」に対する言及は、複数個のそうしたフラグメントを包含し、「抗体(単数)」への言及は、1つもしくは複数の抗体、および当業者に公知のそれらの均等物などへの言及である。
特に指示しない限り、本明細書で使用される科学技術用語はすべて、本発明の属する分野の当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。本発明の実施もしくは試験に際して、本明細書に記載されたのと同様もしくは同等のいかなる方法および材料も使用することができるが、好ましい方法、機器、および材料をここに記載する。本明細書で引用されたすべての刊行物は、その刊行物中で報告された、本発明と関連して使用することができる方法、試薬、および器具を説明および開示することを目的として、参照することによってその全体を本明細書に含めるものとする。本明細書中の何ものも、本発明が先行発明によってそうした開示に先行する権利を有していないことを容認するものとして解釈されるべきではない。
本発明の実施には、特に指示しない限り、当分野の技術の範囲内で、化学、生化学、分子生物学、細胞生物学、遺伝学、免疫学および薬理学の従来の方法を用いることができる。こうした技術は、文献において十分に説明されている。たとえば、Gennaro, A.R.編、(1990) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 第18版、Mack Publishing Co.; Colowick, S.ら編、Methods In Enzymology, Academic Press, Inc.; Handbook of Experimental Immunology, 第I-IV巻 (D.M. WeirおよびC.C. Blackwell編、1986, Blackwell Scientific Publications); Maniatis, T.ら編、(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、第I-III巻、Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M.ら編、(1999) Short Protocols in Molecular Biology, 第4版、John Wiley & Sons; Reamら編、(1998) Molecular Biology Techniques: An Intensive Laboratory Course, Academic Press); PCR (Introduction to Biotechniques Series), 第2版(Newton & Graham eds., 1997, Springer Verlag)を参照されたい。
本発明は、一部には、結合組織成長因子(connective tissue growth factor: CTGF)が、血管機能障害(すなわち血管機能不全)および心臓機能障害(すなわち心機能不全)を含めた心臓血管疾患の特定の局面で重要な役割を果たすという知見に関する。
本発明はまた、一部には、血管機能障害および心臓機能障害の複数かつ特定の状態を治療する際にCTGFの阻害が予想外に有益であるという知見に基づく。本発明は、CTGFの阻害がこれまでCTGFとは結び付けられていなかった心臓血管疾患のさまざまな病状を軽減したことを示すデータを提供する。ある態様において、本発明は、CTGFの阻害が、血管機能障害および心機能障害の特定の生理学的ならびに病理学的側面を治療もしくは予防するための治療的アプローチをもたらすという証拠を提供する。
本発明は、被験体において、血管機能障害および心臓機能障害に関連する複数の明確な病理学的プロセスを伴う合併症を軽減する、改善する、または回復させる方法および薬剤を提供する。ある実施形態において、被験体は動物であるが、より好ましくは哺乳類であり、もっとも好ましくはヒトである。
本発明はまた、本明細書に記載の方法に使用する薬剤を提供する。こうした薬剤としては、小分子化合物;抗体もしくは機能的に活性のあるそのフラグメントを含めた、ペプチドおよびタンパク質;ならびに低分子の干渉性リボ核酸(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、およびアンチセンス配列などのポリヌクレオチドを含めることができる(たとえば、Zeng (2003) Proc Natl Acad Sci USA 100:9779-9784; およびKurreck (2003) Eur J Biochem 270:1628-1644を参照されたい)。
血管機能障害
血管機能障害(たとえば、血管機能不全)は、たとえば、血管系の構造および/または機能の障害もしくは欠陥を含めて、さまざまな異常に起因すると考えられる。血管機能障害は、血管系のさまざまな病変および損傷を伴い、その結果、たとえば、動脈壁硬化、血管透過性、および血管石灰化につながる有害な変化をもたらす。
動脈壁硬化は、血管の伸展性、コンプライアンス、および弾性率といった特性を包含し、冠動脈性心疾患および心血管系死亡率のすぐれた予測因子であることが明らかとなっている(たとえば、O’Rourkeら、(2002) Am J Hypertens 15:426-444; Boutouyrieら、(2002) Hypertension 39:10-15; Blacherら、(1999) Circulation 99:2434-2439を参照されたい)。一般に、動脈壁硬化の増加は、収縮期圧の増加、心室重量の増加、ならびに拡張期冠潅流の低下をもたらす可能性がある。動脈壁硬化の増加はまた、下肢動脈における血流量の減少とも関係している(たとえば、Suzukiら、(2001) Diabetes Care 24:2107-2114を参照されたい)。
動脈壁硬化の増加、すなわち動脈壁が硬くなることは、糖尿病および慢性腎臓病を含めた多くの病態と関係があり、また老化のプロセスの顕著な特徴である。動脈壁の硬化は、糖尿病もしくはメタボリックシンドロームの個体にとって特に懸念されることであり、そうした個体では、動脈壁の硬化が全年齢層にわたって一貫して認められる。動脈壁硬化はまた、たとえば心筋梗塞、心不全などの心臓血管疾患、全死亡率、脳卒中、認知症、および腎臓病のリスク増大の指標でもある。
動脈壁の硬化は、血管系と心臓の両方の構造および機能への有害な作用と関連している。動脈において、動脈壁の硬化は、機械的血管刺激の変化に影響を及ぼし、結果として内皮機能障害および血管疾患をもたらす。心臓では、動脈壁の硬化は、心室に課せられる仕事量、心臓駆出の効率、および心臓自体の潅流に影響を及ぼす。
動脈壁硬化の臨床的な代用マーカーには、収縮期高血圧および脈圧の増加がある。脈圧は、収縮期血圧と拡張期血圧の差である。動脈壁硬化は、脈圧の増加と関係がある。正常値を超える脈圧値の増加は、動脈壁の硬化を示す。動脈壁硬化はまた、脈波伝播速度(PWV)の測定によっても評価することができる(たとえば、Lehmanら、(1992) Diabetic Med 9:114-119を参照されたい)。脈波伝播速度は、心臓から出て動脈に沿って進む、心室駆出の圧縮波の進行速度である。動脈に沿って進む脈波の速度は、その動脈の硬さによって左右される。脈波速度の測定は、頸動脈と大腿動脈の間で行われることが多い。波の遅い方が動脈の柔軟性を示し、波の速いほうが動脈の硬化を示す;したがって、脈波の速度が速いほど、血管壁の硬直性および硬化度は高く、伸展性は低い(たとえば、NicholsおよびO’Rourke、McDonald’s blood flow in arteriesより、Theoretical, experimental and clinical principles、第4版、London, Sydney, Auckland: Arnold E. 1998を参照されたい)。動脈壁の硬化を測定する上記およびその他の方法は、当技術分野で公知であり、当業者が容易に利用することができる。
冠動脈石灰化、弁石灰化、大動脈石灰化、および動脈石灰化を含めた血管石灰化は、血管機能にも心臓機能にも直接の影響を及ぼす。血管石灰化は、大動脈および総頸動脈といった大血管の壁の硬化および拡張を伴い、血管の収縮および弛緩を損なうことによって血管機能を冒す。血管石灰化は、冠動脈性心臓病および血管疾患の確立された指標であり、血管機能障害および心機能障害を含めて心臓血管疾患の発症および病因において重大な役割を果たしており、そのようにして、心筋梗塞および死亡のいっそう高いリスクに結び付く(たとえば、Dohertyら、(2004) Endocr Rev 25:629-627を参照されたい)。血管石灰化は、動脈の内膜および中膜のいずれにも起こる可能性がある。
本発明は、血管機能障害の治療に有用な方法および薬剤を提供する。さまざまな実施形態において、本発明の方法および薬剤は血管機能障害の治療に有用であるが、この血管機能障害とは、動脈壁硬化、血管透過性、血管外遊出、および血管石灰化である。
ある態様において、本発明は、糖尿病に罹っている、または糖尿病に罹るリスクのある被験体の血管機能障害を軽減し、血管機能を改善する方法に関する。さらに、本発明は、糖尿病に罹っている、または糖尿病に罹るリスクのある被験体において、糖尿病もしくは上昇した血糖値に伴って生じる血管の合併症、病変または損傷を回復させる方法に関する。具体的には、下記の方法のそれぞれの好ましい実施形態において好ましい被験体はヒト被験者であることが想定される。
本発明は、糖尿病に罹っている、または糖尿病に罹るリスクのある被験体において、血管機能障害を軽減する方法を提供するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体の血管機能障害を軽減することを含んでなる。抗CTGF薬は、本明細書で使用される場合、CTGFの発現もしくは活性を阻害する物質である。糖尿病に罹っている、または糖尿病に罹るリスクのある被験体において、血管機能を改善する方法も本明細書で提供されるが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって血管機能を改善することを含んでなる。
本発明は、糖尿病に伴う血管合併症、病変もしくは損傷を有する、またはそのリスクのある被験体において、血管合併症、病変もしくは損傷を回復させる方法を提供するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体の血管合併症、病変もしくは損傷を回復させることを含んでなる。
本明細書に記載された特定の方法が、糖尿病に罹っている、または糖尿病に罹るリスクのある被験体に言及している場合、その被験体が糖尿病を患っている被験体、または糖尿病に罹るリスクのある被験体であるかどうかは、当業者に認められかつ利用されている指標によって決定することができると考えられる。たとえば、約200 mg/dLを超える血糖値を示すヒト被験者(たとえば、空腹時血糖検査、経口ブドウ糖負荷試験、またはランダムな血糖検査で測定)は、糖尿病を患う被験者であると特徴付けることができる。したがって、ある態様において、約200 mg/dLを超える血糖値を示すヒト被験者が、本発明で提供される方法または薬剤の使用によって治療するのに適した被験体であると想定される。糖尿病に罹るリスクのある被験体、たとえば、糖尿病に罹るリスクのあるヒト被験者は、糖尿病を発症するリスクの増加と関係があることが知られている各種の要因のうち1つもしくは複数の評価によって確認することができるが、こうした要因には、糖尿病の家族歴、特定の民族もしくは人種集団、妊娠糖尿病の既往歴、肥満、特に、高レベルの内臓脂肪もしくは腹部脂肪、座ることの多いライフスタイル、年齢、高血圧、統合失調症など、ならびにグルコース代謝の変化、たとえば、耐糖能障害(IGT)または前糖尿病が挙げられる。
本発明の方法のさまざまな実施形態において、血管機能障害は細小血管機能障害または大血管機能障害である。ある実施形態において、こうした機能障害は、心臓血管機能障害、または脳血管機能障害、または腎症、網膜症もしくは神経障害に関係する血管機能障害である。特定の実施形態において、機能障害は心室機能障害であるが、また別の実施形態では、左心室機能障害である。ある実施形態において、機能障害は末梢血管系の機能障害である。
血管機能を改善する方法も本発明に含まれる。ある態様において、本発明は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において、血管機能を改善する方法を提供するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体の血管機能を改善することを含んでなる。
さまざまな態様において、血管機能は細小血管機能または大血管機能であると想定される。ある実施形態において、血管機能は、心臓血管もしくは脳血管の機能であり、または腎症、網膜症もしくは神経障害に関連する。ある態様において、機能は心室機能であり、また別の態様では、左心室機能である。ある態様において、血管機能は末梢血管系に関わる。
本発明はさらに、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において、内皮機能障害を軽減する方法を包含するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体の内皮機能障害を軽減することを含んでなる。糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において、内皮機能を改善する方法も本明細書で提供されるが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって内皮機能を改善することを含んでなる。内皮機能障害を回復させる方法は、特に本発明によって意図される。
ある実施形態において、本発明は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において、糖尿病に伴う血管合併症を治療する方法を提供するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって血管合併症を治療することを含んでなる。抗CTGF薬は、CTGFの活性および/または発現を阻害する任意の物質である。糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において、血管合併症の進行もしくは重症度を減少させる方法も提供されるが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって血管合併症の進行もしくは重症度を減少させることを含んでなる。さらに本明細書で意図されるのは、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において、血管合併症の発症を予防する、もしくは遅らせる方法であるが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって血管合併症の発症を予防する、もしくは遅らせることを含んでなる。別の実施形態において、本発明は、糖尿病に伴う血管合併症、病変、もしくは損傷を有する、またはそれを有するリスクのある被験体において、糖尿病に伴う血管合併症、病変、もしくは損傷を回復させる方法を提供するが、その方法は、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体において糖尿病に伴う血管合併症、病変、もしくは損傷を回復させることを含んでなる。
ある特定の実施形態において、血管合併症は大血管合併症である;他の実施形態において、細小血管合併症である。さまざまな実施形態において、合併症は、心臓病、腎症、神経障害および網膜症からなる群から選択される。ある実施形態において、合併症は心臓血管合併症もしくは脳血管合併症である。別の実施形態において、合併症は、末梢血管系の合併症である。
本明細書において、動脈壁硬化を治療する方法を含む、追加の方法が提供されるが、その方法は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体に、有効量の抗CTGF薬を投与し、それによって動脈壁硬化を治療することを含んでなる。さまざまな態様において、動脈壁硬化は、軸方向、半径方向および周方向の動脈壁硬化からなる群から選択される。血管透過性を減少させる方法;血管外遊出、たとえば浮腫、もしくは組織浮腫を減少させる方法;内膜中膜肥厚を減少させる方法;ならびに総頸動脈内膜中膜肥厚を減少させる方法も本発明に含まれる。それぞれの場合に、本方法は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体に、有効量の抗CTGF薬を投与し、それによって望ましい効果を達成すること、たとえば、それぞれ、血管透過性を減少させること;血管外遊出、たとえば浮腫、もしくは組織浮腫を減少させること;内膜中膜肥厚を減少させること;ならびに総頸動脈内膜中膜肥厚を減少させることを含んでなる。
ある態様において、本発明は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体において血管への損傷もしくはその機能障害を減じる方法を提供するが、その方法は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体に有効量の抗CTGF薬を投与し、それによって被験体において血管への損傷もしくはその機能障害を減じることを含んでなる。さまざまな態様において、血管は、大血管系の血管、たとえば、大動脈、冠動脈、頸動脈、脳血管動脈、腎動脈、腸骨動脈、大腿動脈、膝窩動脈といった主要血管とすることができるが、または、細小血管系の血管、たとえば、網膜細動脈、糸球体細動脈、神経栄養血管、心臓の細動脈、ならびに眼、腎臓、心臓、および中枢・末梢神経系の関連毛細血管床といった細小血管であってもよい。
ある態様において、本発明は、被験体において血管石灰化を軽減する方法を提供するが、その方法は、被験体に有効量の抗CTGF薬を投与し、それによって被験体において血管石灰化を軽減することを含んでなる。特定の態様において、上記の方法のように、被験体は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体である。
好ましい実施形態において、被験体は哺乳類被験体であり、もっとも好ましい実施形態では、被験体はヒト被験者である。特定の実施形態において、被験体は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体である。
心臓機能障害
心臓機能障害(たとえば、心臓機能不全)および心臓病は、たとえば、心臓および心筋の収縮および/または弛緩の障害もしくは損傷を含めた、さまざまな異常に起因すると考えられる。臨床上の観点から、心臓機能障害は、心臓機能の異常のために、代謝を行う組織の要求に見合う速度で心臓が血液を拍出することができない状態、および/または異常に増大した心室拡張期容積からのみ拍出することができる状態とみなすことができる。心臓機能障害(たとえば、心臓機能不全、心不全)は、収縮期心臓機能障害または拡張期心臓機能障害とすることができるが、それぞれ収縮期心不全および拡張期心不全として知られている。
収縮期心臓機能障害において、主たる異常は心室が正常に収縮できず、十分な血液を送り出せないことである。収縮期心臓機能障害は、心筋の収縮力の障害と関係があり、この障害が収縮期の収縮を弱め、一回拍出量および心拍出量の低下、不十分な心室排出、心臓拡張、およびしばしば心室拡張期圧の上昇をもたらす。成人の収縮期心臓機能障害は、左心室駆出率45%未満として定義される。拡張期心臓機能障害では、主たる異常は、心室が正常に弛緩および/または充満することができないことである。拡張期心不全と関連する心室の弛緩障害および充満障害は、どのような所定の拡張期容積でも心室拡張期圧の上昇をもたらす。心臓機能障害のある多くの患者は、心室収縮および心室弛緩のいずれにも異常を示す。
被験体において心臓機能障害を特定し、診断し、または他のやり方で評価するために、いくつかの技術が当業者に利用可能である。一般に、こうした技術には、たとえば、心電図記録、心エコー検査、心臓カテーテル法、血管造影法、ならびに放射性核種血管造影法を含めた心臓核医学イメージング技術がある。
ある例において、安静時の、心室拡張末期圧が正常もしくは高い被験体では、心拍出量および一回拍出量は、心臓機能障害もしくは心不全が存在する場合、低下することがある。多くの場合、安静時に十分である心臓機能は、労作時には不十分である可能性がある。
心臓機能は、駆出率の測定、つまり心拍ごとに心臓が送り出す血液量の測定によって、評価される。駆出率は、拡張末期容積に対する一回拍出量の比であり、心室から駆出される血液の容量(一回拍出量、SVと呼ばれる)を、充満後の心室中の血液容量(拡張末期容積、EDV)で割ることによって算出される。成人被験者における駆出率の正常値は50〜70%である。心臓への損傷は、効果的に血液を駆出する心臓の能力を損ない、その結果、駆出率を低下させる。駆出率の低下は、臨床的には、心臓機能障害もしくは心不全として現れる。駆出率は、心臓機能障害に関係した予後を予測する最も重要な要素の1つである;駆出率の低下した患者は、一般に予後がよくない。
駆出率は通常、心エコー検査によって測定されるが、この検査では心周期を通じて心腔(たとえば、心室)の容積を測定する。駆出率はまた、心臓MRI、高速走査心臓体軸断層撮影(CT)イメージング、心室撮影法、ゲートSPECT、および造影剤もしくは放射性核種血管造影法によって測定することもできる。
正常な左心室は、一回の拍動で拡張末期容積の50〜80%を駆出する;すなわち、その駆出率は0.50〜0.80である。成人では、左心室容積の正常値は次の通りである:拡張末期容積72 +/- 15 mL/m2 (平均+/-標準偏差)および収縮末期容積20 +/- 8 mL/m2。
本発明は、心機能を改善する方法;心室弛緩を改善する方法;心室収縮力を改善する方法;拡張末期圧を改善する方法;拡張末期容積を改善する方法;駆出率を改善する方法;動脈弾性率を改善する方法;一回拍出量を改善する方法;心拍出量を改善する方法を含めて、さらなる方法を包含する。こうした方法はそれぞれ、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体に、有効量の抗CTGF薬を投与し、それによって、被験体において望ましい効果、たとえば、心機能の改善;心室弛緩の改善;心室収縮力の改善;拡張末期圧の改善;拡張末期容積の改善;駆出率の改善;動脈弾性率の改善;一回拍出量の改善;心拍出量の改善を、それぞれ、被験体において達成することを含んでなる。
ある実施形態において、本発明は、心臓合併症を治療もしくは予防する方法を提供するが、その方法は、抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって心臓合併症を治療もしくは予防することを含んでなる。特定の実施形態において、被験体は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体である。特に、本発明の方法は、心臓肥大、鬱血性心不全および心筋症から選択される心臓合併症を治療もしくは予防するために使用することができる。本発明の方法はまた、血中LDL濃度を下げることによって心臓合併症を治療もしくは予防するために用いることもできる。
好ましい実施形態において、被験体は、哺乳類被験体であり、もっとも好ましい実施形態では、被験体はヒト被験者である。特定の実施形態において、被験体は、糖尿病に罹患した、または罹患するリスクのある被験体である。
抗CTGF薬
上記のいずれの方法においても、抗CTGF薬はポリペプチド、ポリヌクレオチド、または小分子;たとえば、CTGFと結合する抗体、アンチセンス分子、siRNA、小分子化合物などであることが、特に想定される。具体的には、本発明は、CTGFの阻害が、CTGFの発現および活性を調節するための当技術分野で公知の任意の手段によって達成できることを想定している。抗CTGF薬、たとえば、CTGFに対するヒトモノクローナル抗体を使用することが好ましいが、ただし、CTGFをコードする遺伝子の発現を阻害する方法、CTGFの産生を阻害する方法、またはCTGFの活性を阻害する方法のいずれも、本発明によって意図される。
本発明の方法で使用される典型的な抗体は、たとえば、米国特許第5,408,040号;国際公開番号WO 99/07407;国際公開番号WO 99/33878;および国際公開番号WO 00/35936に記載される。本発明の方法で使用される典型的な抗体は、国際公開番号WO 2004/108764に記載されており、これは参照としてその全体を本明細書に含めるものとする。こうした抗体、もしくはそのフラグメントは、当業者に知られているさまざまな方法によって投与することができる。たとえば、抗体は静脈内、腹腔内、または皮下に注入される。
CTGF発現および/またはCTGF活性の小分子阻害剤も記載されている;たとえば、国際公開番号WO 96/38172は、コレラ毒素および8Br-cAMPといったcAMPのモジュレーターをCTGF発現の阻害剤として同定している。したがって、たとえば、イロプロスト(Iloprost)のようなプロスタグランジンおよび/またはプロスタサイクリンアナログ(たとえば、国際公開番号WO 00/02450; Ricuperoら、(1999) Am J Physiol 277:L1165-1171; さらに、Ertlら、(1992) Am Rev Respir Dis 145:A19を参照されたい)、ならびにホスホジエステラーゼIV阻害剤の可能性があるもの(たとえば、Kohyamaら、(2002) Am J Respir Cell Mol Biol 26:694-701を参照されたい)として同定された化合物を用いて、CTGF発現を調節することができる。また、セリン/トレオニン マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(特にp38、サイクリン依存性キナーゼ、たとえばCDK2)およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ(GSK)-3の阻害剤も、CTGF発現の低下に関係していた(たとえば、Matsuokaら、(2002) Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 283:L103-L112; Yosimichiら、(2001) Eur J Biochem 268:6058-6065; 国際公開番号WO 01/38532; および国際公開番号WO 03/092584を参照されたい)。こうした化合物は、当技術分野の確立された手順に従って製剤化して、投与することができる。
さらに、低分子の干渉性リボ核酸(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、およびアンチセンス配列などのポリヌクレオチドを本発明の方法で使用し、CTGFの発現および/または産生を阻害することができる(たとえば、Kondoら、(2000) Biochem Biophys Res Commun 278:119-124を参照されたい)。このような技術は当業者によく知られている。CTGF発現を標的とするアンチセンス構築物はすでに記載され、さまざまな細胞型においてCTGF発現を低下させるために利用されている(たとえば、国際公開番号WO 96/38172; 国際公開番号WO 00/27868; 国際公開番号WO 00/35936; 国際公開番号WO 03/053340; Kothapalliら、(1997) Cell Growth Differ 8(1):61-68; Shimoら、(1998) J Biochem (Tokyo) 124(1):130-140; ならびにUchioら、(2004) Wound Repair Regen 12:60-66を参照されたい)。こうしたアンチセンス構築物を用いてCTGFの発現を低下させ、それによって、CTGFが引き起こす病理学的プロセスを改善もしくは予防することができる。こうした構築物は、細胞特異的もしくは組織特異的な発現、および構成的発現もしくは誘導発現に適した、ベクターならびに発現調節因子を用いてデザインすることができる。こうした遺伝子構築物は、当技術分野に含まれる確立された手順にしたがって、製剤化して投与することができる。
したがって、本発明のある態様において、抗CTGF薬はCTGFに対する抗体である。好ましい実施形態において、抗体はCTGFに対するモノクローナル抗体である。別の好ましい実施形態において、抗体は、CTGFに対するヒト抗体もしくはヒト化抗体である。特に好ましい実施形態において、抗体は、国際公開番号WO 2004/108764に記載のCLN-1である。もう一つの実施形態において、薬剤は小分子である。別の実施形態において、薬剤は核酸である。さらに別の実施形態において、核酸は、環状ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、またはポリヌクレオチドからなる群から選択される。特定の実施形態において、薬剤はアンチセンスオリゴヌクレオチド、またはsiRNAである。
本発明は、他の治療法と組み合わせた本発明の方法の使用を包含する。ある実施形態において、本発明の方法を別の治療法と併用すると、たとえば、特定の病理学的事象などに対する治療効果がさらに高められる。2つの治療は、同時に、もしくは連続して、たとえば、一方の治療の時間経過のあいだに、または病気の進行および寛解後に行うことができる。別の実施形態において、本発明の方法は、同様のもしくは異なる作用機序を有する、たとえばACE阻害剤、ARB、スタチン、終末糖化産物(advanced glycation endproduct: AGE)阻害剤などの別の治療法と併用される。血管合併症および血管疾患を治療する現行の治療法は当業者に知られており、たとえば、ACE阻害剤、アンジオテンシン受容体遮断薬、スタチン、終末糖化産物阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬などがある。本発明の方法の使用と併せて上記治療薬のいずれかを使用することが、特に想定される。
ブラジキニンは、CTGFの発現を制御することが明らかとなっているが、ブラジキニンB1受容体拮抗薬は、糖尿病動物において血管透過性を低下させた(たとえば、Ricuperoら、(2000) J Biol Chem 275:12475-12480; Lawsonら、(2005) Regul Pept 124:221-224; Tan ら、(2005) Am J Physiol Renal Physiol 288:F483-F492; Wilkinson-BerkaおよびFletcher (2004) Curr Pharm Des 10:3313-3330を参照されたい)。したがって、ある態様において、本発明は、たとえば血管透過性および血管外遊出といった、CTGFが介在する血管合併症を調節する、カリクレイン-キニン系を制御するための方法および薬剤を提供する。カリクレイン-キニン系を制御する薬剤および方法の使用は、単独で、もしくはCTGFを阻害する薬剤および方法の使用と併せて、特に想定される。
医薬製剤および投与経路
本発明の組成物は、そのままで、もしくは当業者によく知られているように添加剤を含有する医薬組成物として投与することができる。本発明の治療方法は、有効量の本発明の化合物を、血管機能不全(すなわち血管機能障害)もしくは心臓機能不全(すなわち心臓機能障害)を有する、またはそのリスクのある被験体に投与することを含んでなる。好ましい実施形態において、被験体は哺乳類被験体であり、もっとも好ましい実施形態では、被験体はヒト被験者である。
化合物もしくは薬物の有効量、たとえば投与量は、ルーチンな実験によって容易に決定することができるが、効果的で使いやすい投与経路、および適当な製剤処方も同様に決定することができる。当技術分野においてさまざまな製剤処方および薬物送達システムが利用可能である(たとえば、Gennaro編、(2000) Remington’s Pharmaceutical Sciences, 上記; ならびにHardman, LimbirdおよびGilman編、(2001) The Pharmacological Basis of Therapeutics, 上記を参照されたい)。
適当な投与経路としては、たとえば、経口、直腸内、局所、鼻内、経肺、眼内、腸内、および非経口投与を挙げることができる。非経口投与の主要な経路には、静脈内、筋肉内、および皮下投与がある。副次的な投与経路としては、腹腔内、動脈内、関節腔内、心腔内、槽内、皮内、病変内、眼内、胸腔内、髄腔内、子宮内、および脳室内投与が挙げられる。薬物の物理的、化学的および生物学的特性とともに、治療すべき適応症によって、使用すべき製剤の種類および投与経路が決まり、局所投与と全身投与のどちらが好ましいかも決定される。
本発明の化合物の医薬剤形は、即時放出型、制御放出型、持続放出型、またはターゲットドラッグデリバリーシステムとして提供される。通常使用される剤形には、たとえば、溶液剤および懸濁液剤、(マイクロ)エマルション剤、軟膏剤、ジェル付きパッチ剤、リポソーム、錠剤、糖衣錠、ソフトもしくはハードシェルカプセル剤、座剤、膣座薬、インプラント、非晶質もしくは結晶性粉剤、エアロゾル剤、ならびに凍結乾燥製剤がある。使用する投与経路に応じて、薬物の適用もしくは投与のために、特別な器具が必要になると考えられるが、それはたとえば、注射器と針、吸入器、ポンプ、ペン型注射器、アプリケーター、または専用フラスコである。医薬剤形は多くの場合、薬物、添加剤、および容器/クロージャーシステムからなる。1種もしくは数種の添加剤(不活性成分とも呼ばれる)を本発明の化合物に加えて、薬物の製造、安定性、投与、および安全性を改善したり、容易にしたりすることができ、こうした添加剤は望ましい薬物放出プロファイルを達成する手段を提供することができる。したがって、薬物に添加すべき添加剤の種類は、たとえば、薬物の物理的および化学的性質、投与経路、および製造方法といった、さまざまな要因に左右されると考えられる。製薬上許容される添加剤が当技術分野において利用可能であるが、これにはさまざまな薬局方に記載されたものがある(たとえば、USP、JP、EPおよびBP、FDAウェブページ(www.fda.gov)、Inactive Ingredient Guide 1996、およびHandbook of Pharmaceutical Additives, Ash編; Synapse Information Resources, Inc. 2002を参照されたい)。
本発明の化合物の医薬剤形は、当技術分野でよく知られている方法のいずれによっても製造することができるが、それは、たとえば、従来の混合、篩分、溶解、融解、造粒、糖衣錠製造、打錠、懸濁、押出加工、噴霧乾燥、研和、乳化、(ナノ/マイクロ)カプセル化、封入、または凍結乾燥プロセスによる。上記のように、本発明の組成物は、活性分子の医薬用製剤への加工を容易にする、1種もしくは数種の生理学的に許容される不活性成分を含有することができる。
適切な製剤は、望ましい投与経路によってきまる。たとえば静脈注射用には、本組成物を水溶液として製剤化することができ、それには、必要に応じて、たとえば製剤pHを調整するためのリン酸塩、ヒスチジンもしくはクエン酸塩などの、生理学的に適合するバッファー、ならびに、たとえば塩化ナトリウムもしくはデキストロースといった等張化剤を用いる。経粘膜もしくは鼻内投与用には、半固体製剤、液体製剤、もしくはパッチ剤が好ましく、場合によっては浸透促進剤を含有することができる。こうした浸透剤は当技術分野で広く知られている。経口投与用では、本化合物は液体もしくは固体剤形として、さらに即時放出もしくは制御/持続放出製剤として、製剤化することができる。被験体による経口摂取に適した剤形には、錠剤、丸剤、糖衣錠、ハードおよびソフトシェルカプセル剤、液剤、ジェル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁液剤および乳濁液剤がある。化合物はまた、座薬もしくは停留浣腸のような直腸用組成物として製剤化することもできるが、これはたとえば、従来の座薬基剤であるカカオバターもしくは他のグリセリドを含有する。
添加剤を用いて固体経口剤形を得ることができるが、この添加剤には、賦形剤、崩壊剤、結合剤(乾燥および湿潤)、溶解遅延剤、滑沢剤、流動促進剤、付着防止剤、陽イオン交換樹脂、湿潤剤、酸化防止剤、防腐剤、着色剤および着香剤を含めることができる。これらの添加剤は合成もしくは天然起源とすることができる。こうした添加剤の例としては、セルロース誘導体、クエン酸、リン酸二カルシウム、ゼラチン、炭酸マグネシウム、ラウリル硫酸マグネシウム/ナトリウム、マンニトール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ケイ酸塩、二酸化ケイ素、安息香酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン、ステアリン酸もしくはその塩、糖類(すなわち、ブドウ糖、ショ糖、乳糖など)、タルク、トラガカントゴム、植物油(硬化油)、およびワックスがある。エタノールおよび水は造粒助剤としての役割を果たすことができる。ある場合には、錠剤を、たとえば、味をマスキングするフィルム、胃酸に抵抗性のフィルム、または放出を遅らせるフィルムでコーティングすることが望ましい。錠剤をコーティングして糖衣錠とするために、多くの場合、天然および合成ポリマーを着色料、糖類および有機溶媒もしくは水と組み合わせて用いる。錠剤よりカプセル剤が好ましい場合には、薬物の粉末、その懸濁液もしくは溶液を、適合するハードもしくはソフトシェルカプセルに入れて投与することができる。
ある実施形態において、本発明の化合物は、たとえば皮膚パッチ剤、半固体もしくは液体製剤(たとえば、ジェル剤、(マイクロ)エマルション剤、軟膏剤、溶液剤、(ナノ/マイクロ粒子)懸濁液剤、またはフォーム剤)を介して、局所的に投与することができる。皮膚および深部組織への薬物の浸透は、たとえば、浸透促進剤を用いて;水、有機溶媒、ワックス、油、合成および天然ポリマー、界面活性剤、乳化剤などの親油性、親水性および両性添加剤の適当な選択および組み合わせによって;pH調整によって;ならびに錯化剤の使用によって、制御することができる。イオントフォレーシスのような他の技術を用いて、本発明の化合物の皮膚浸透性を制御することができる。経皮もしくは局所投与は、たとえば、全身曝露を最小限にした局所送達が求められる状況では、好ましいと考えられる。
吸入による投与、または鼻への投与のために、本発明にしたがって使用する化合物は、溶液剤、懸濁液剤、乳濁液剤、または半固体エアロゾル剤の形で、加圧パックもしくはネブライザーから、通常、噴射剤、たとえば、メタンおよびエタンから誘導されたハロゲン化炭素、二酸化炭素、もしくは任意の他の適当な気体を用いて、うまく送達される。局所エアロゾルには、ブタン、イソブテン、およびペンタンのような炭化水素が有用である。加圧エアロゾルの場合には、計測した量を送達するためのバルブを備えることによって、適当な投薬単位を測定することができる。吸入器用の、たとえばゼラチンの、カプセル剤およびカートリッジを処方することができる。これは典型的には、本化合物と適当な粉末基剤(たとえば、乳糖もしくはデンプン)との粉末混合物を含有する。
注射による非経口投与用に製剤化される組成物は、通常、無菌状態であり、単位投薬形態で、たとえば、アンプル、注射器、ペン型注射器に入れた状態で、または複数回投与量の容器に入れて提供されるが、後者は通例、防腐剤を含有する。組成物は、油性もしくは水性媒体中の懸濁液、溶液、または乳濁液の形をとることができ、たとえば、バッファー、等張化剤、増粘剤、界面活性剤、懸濁化剤および分散助剤、酸化防止剤、生体適合性ポリマー、キレート剤、防腐剤といった処方用添加剤を含有することができる。注射部位に応じて、媒体は水、合成もしくは植物油、および/または有機共溶媒を含有することができる。たとえば、凍結乾燥製品もしくは濃縮物を用いるような特定の場合には、非経口製剤は、投与に先立って再調製もしくは希釈することになる。本発明の化合物の制御放出もしくは持続放出をもたらすデポー製剤は、ナノ/マイクロ粒子、またはナノ/マイクロ結晶もしくは非微粉化結晶の注射可能な懸濁液を包含する。ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)もしくはそのコポリマーといったポリマーは、当技術分野でよく知られた他のポリマーに加えて、制御/持続放出マトリクスとして役に立つ。他のデポーデリバリーシステムは、切開を必要とするインプラントおよびポンプの形で提供される。
本発明の分子の静脈注射に適した担体は、当技術分野でよく知られており、水をベースとした溶液が含まれるが、この溶液は、イオン化化合物を形成する塩基(たとえば水酸化ナトリウム)、等張化剤としての塩化ナトリウムもしくはショ糖を含有し、たとえば、バッファーはリン酸塩もしくはヒスチジンを含有する。共溶媒、たとえばポリエチレングリコールを添加してもよい。こうした水ベースの系は、本発明の化合物を溶解するのに有効であり、全身投与したとき低毒性をもたらす。溶液系の構成成分の割合は、溶解性および毒性の特徴を損なわなければ、相当に変えることができる。さらに、構成成分それ自体を変更することができる。たとえば、ポリソルベートやポロキサマーのような低毒性の界面活性剤を使用することができ、同様にポリエチレングリコールや他の共溶媒を使用してもよく、ポリビニルピロリドンのような生体適合性ポリマーを添加してもよく、他の糖類およびポリオールをデキストロースの代わりに使用してもよい。
本発明の治療法に有用な組成物のために、まず、治療上有効な用量を、当技術分野でよく知られているさまざまな技術を用いて予測する。動物実験に使用する初回量は、細胞培養アッセイで立証された有効濃度を基にすることができる。ヒト被験者に適した用量域は、たとえば、動物実験および細胞培養アッセイから得られたデータを用いて決定することができる。
本発明の化合物、薬剤もしくは薬物の治療上有効な用量もしくは量とは、被験体において結果として症状の改善または延命をもたらす、当該化合物、薬剤もしくは薬物の用量もしくは量を指す。こうした分子の毒性および治療効力は、細胞培養物もしくは実験動物を用いた標準的な薬学的手順により、たとえば、LD50 (集団の50%に死をもたらす用量)およびED50 (集団の50%に治療上有効である用量)の測定によって、判定することができる。治療効果に対する毒性作用の用量比が治療指数であり、これは、LD50/ED50比として表すことができる。治療指数の高い薬剤が好ましい。
有効量または治療上有効な量は、研究者、獣医師、医師、もしくは他の臨床医学者によって求められる、組織、系、動物もしくはヒトの生物学的もしくは医学的な応答(たとえば、血管機能の改善、心機能の改善など)を引き出す薬剤もしくは医薬組成物の量である。
用量は、好ましくは、毒性がほとんどないかまったくない、ED50を含む循環濃度の範囲内に含まれる。用量は、採用された剤形および/または利用される投与経路に応じて、この範囲内で変更することができる。被験体の状態の詳細を考慮して、当技術分野で知られている方法にしたがって、的確な製剤、投与経路、用量、および投与間隔を選択すべきである。
投与量および投与間隔は、望ましい効果(たとえば、血管機能の改善、心機能の改善など)を達成するのに十分な活性成分の血中濃度、すなわち最小有効濃度(MEC)を与えるように、個別に調整することができる。MECは化合物ごとに変化するが、たとえば、in vitroデータおよび動物実験から予測することができる。MECを実現するのに必要な投与量は、個体の特性および投与経路に左右されると考えられる。局所投与もしくは選択的取り込みの場合、薬物の有効局所濃度は血中濃度と無関係でありうる。
投与される薬剤もしくは組成物の量はさまざまな要因に左右されるが、そうした要因としては、治療を受ける被験体の性別、年齢および体重、苦痛の程度、投与方法、ならびに処方する医師の判断が含まれる。
本発明の組成物は、必要ならば、活性成分を含有する一回分もしくは複数回分の単位剤形が入っているパックもしくはディスペンサー容器で提供される。こうしたパックもしくは容器は、たとえば、ブリスターパックのような金属もしくはプラスチックフォイル、またはガラス製もしくはゴム製ストッパー(バイアル中の場合)を含んでなる。パックもしくはディスペンサー容器には投与の説明書を添えることができる。適合する製薬上の担体で製剤化された本発明の化合物を含む組成物はまた、調製して、適当な容器に入れ、表示した症状の治療についてのラベルを付すこともできる。
本発明の上記および他の実施形態は、本明細書の開示内容を考慮して、当業者が容易に想起しうるものである。
下記の実施例を参照することによって本発明をさらに理解することができるが、こうした実施例は、単に本発明の例証を意図するものである。これらの実施例は、本発明を説明するためにのみ提示される。本発明は、例示された実施例によって範囲が限定されることはなく、実施例は単に本発明の一面を説明することを目的とする。機能として等価な方法はどれも本発明の範囲に含まれる。本明細書の記載とは別に、本発明のさまざまな変更が、前述の記載および添付の図面から当業者に明白となるであろう。こうした変更は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
実施例1
抗CTGF治療は、血流力学パラメータおよび心機能を改善する
本発明の方法を用いて、糖尿病に伴う血管合併症のある特定の態様について、動物モデルで広範な効果を下記のように立証した。ストレプトゾトシン(STZ)(65 mg/kg)の1回静脈内投与によって、Sprague Dawleyラットに真性糖尿病を誘発した。STZ誘発糖尿病は、ラットにおいて血管透過性の増大をもたらし(Lawsonら、(2005) Regul Pept 124:221-224)、心機能の低下を招く(Machackovaら、(2004) Mol Cell Biochem 261:271-278)。実験用ラットは、第0日に、65 mg/kg (65mg/ml)の用量で0.1Mクエン酸緩衝ストレプトゾトシン(pH 4.1)の静脈注射を受けた。STZで処理した動物における糖尿病誘発の成功は、第2日に、空腹時血糖値の上昇(>250mg/dl)によって確認した。
糖尿病動物を、治療群に分割した(溶媒、または3mg/kg、5 mg/kgもしくは10mg/kgの抗CTGF抗体CLN-1)。処理された動物は、6週間のあいだ、1週間に3回のIP注射によって、溶媒、もしくは抗CTGF抗体の投与を受けた。6週間の終わりに、動物を麻酔して、心機能を測定するために圧力トランスデューサー付きマイクロチップコンダクタンスカテーテル(Millar instruments)を左心室に入れた。コンピュータ処理データ収集システム(ADI Instruments)によって圧力容積曲線を記録した。圧力容積曲線のコンピュータ解析によって血流力学パラメータを測定した(PVAN システム、Millar Instruments)。あるいはまた、動物を軽度に麻酔し、心臓超音波技術によって心機能を測定した。こうした技術は、当業者によく知られている。
糖尿病動物は、さまざまな血流力学パラメータおよび心機能パラメータによって確認されるように、心機能の低下を示した。抗CTGF抗体で治療した糖尿病動物は、未治療の糖尿病動物と比べて心機能の向上を示した。具体的には、抗CTGF抗体で治療した糖尿病動物は、心室弛緩、心室収縮力、拡張末期圧、拡張末期容積、駆出率、動脈弾性率、一回拍出量、および心拍出量の改善を示した。総合すると、これらの結果は、CTGFの阻害が、糖尿病に伴う血管合併症を処置する(たとえば、心臓および血管機能を改善する)ための治療的アプローチを提供することを示した。
糖尿病動物は、さまざまな血流力学および心機能パラメータによって確認されるように、心機能の低下を示した。抗CTGF治療が駆出率(一回拍出量を全容積で割ったもの)に及ぼす効果を調べた。図1に示すように、糖尿病動物は、心臓収縮および拡張機能が損なわれ、もしくは低下していた。特に、糖尿病動物は、健康な対照動物と比べて駆出率(EF)パーセントが低下していた。抗CTGF抗体の投与を受けた糖尿病動物は、未治療の対照糖尿病動物と比較して、駆出率パーセントの増加を示した(図1を参照されたい)。抗CTGF抗体の投与後(第6週から第12週まで)糖尿病動物は、健康な糖尿病でない対照動物で観察された駆出率パーセントと同様/同等の駆出率パーセントを示した。このデータは、抗CTGF抗体の投与が駆出率の低下を防ぐことを明らかにした。
抗CTGF治療が左心室拡張末期圧(LVEDP)に及ぼす効果も調べた。糖尿病動物は、左心室拡張末期圧の増加を示した。図2に示すように、抗CTGF抗体の投与は、未治療の対照糖尿病動物で認められた左心室拡張末期圧の増加を予防した。抗CTGF抗体の投与を受けた糖尿病動物は、糖尿病でない健康な対照動物で見られたのと同様の左心室拡張末期圧を示した。これらの結果は、抗CTGF抗体の投与が左心室拡張末期圧の増加を防ぐことを明らかにした。
抗CTGF治療が心臓収縮および弛緩に及ぼす効果も調べた。図3に示すように、糖尿病動物は、糖尿病でない健康な対照動物と比べて最大dP/dtの低下を示した。さらに、糖尿病動物への抗CTGF抗体の投与は、未治療の糖尿病動物で見られる最小dP/dt収縮力の低下を予防した(図4を参照されたい)。最大dP/dtが減少すること、ならびに最小dP/dtの減少が少なくなることは、心臓収縮力および弛緩の改善を示している。
総合すると、上記の結果は、抗CTGF治療が心機能の改善に有効であることを明らかにした。
実施例2
抗CTGF治療が動脈壁硬化を低下させる
抗CTGF治療が動脈壁硬化(血管機能、および特に大血管機能の尺度)に及ぼす効果を、上記実施例1に記載の糖尿病の動物モデルを用いて評価した。頸動脈から得られた受動圧-および能動圧-体積データを含めて、動脈壁硬化のさまざまな測定値が得られた。こうした測定のために、左頸動脈の遠位部分に、三方活栓に連結されたPE-50チューブのカニューレを挿入した。改変Krebsバッファー溶液を、カニューレを通して頸動脈内に注入した。頸動脈の近位端を、血管閉塞器具を用いて閉塞した。バッファー溶液の注入時に発生した力を測定するために、圧力トランスデューサーを三方活栓に接続した。PEチューブの末端をアイソメトリック・フォース・トランスデューサー(力変換機)に接続し、加圧時の、等尺性の軸方向の力を測定した。デジタル画像解析システムを用いて、上記動脈セグメントの外側の半径の変化を測定した。受動的な動脈壁硬化度は、動脈セグメントにCa2+フリーのバッファーを潅流することによって測定した。能動的な動脈壁硬化度を測定するために、血管拡張薬および血管収縮薬、たとえばノルエピネフリンを潅流液に加えた。特定の実験では、動脈セグメントを動物から摘出し、同様の装置を用いてin vivo伸び長さでex vivo評価した。
糖尿病ラットは、頸動脈の動脈壁硬化が増加していた。図5に示すように、摘出された頸動脈の力-圧力曲線は、糖尿病動物における頸動脈の軸方向硬化の増加を示した。3 mg/kgもしくは10 mg/kgの抗CTGF抗体(CLN-1)で治療した糖尿病動物の頸動脈の軸方向硬化は、健康な対照動物と同様であった。これらの結果は、抗CTGF抗体による糖尿病動物の治療が、頸動脈の軸方向硬化を予防もしくは軽減する(たとえば、血管機能障害を予防もしくは軽減し、特に大血管機能障害を予防もしくは軽減する)こと、ならびに抗CTGF抗体による治療は、糖尿病に伴う軸方向硬化を、糖尿病でない対照の硬化にまで正常化することを明らかにした。
さらに、圧力半径曲線の解析から、糖尿病動物が頸動脈の円周方向(すなわち半径方向)硬化の増加を示すことが明らかになった。抗CTGF抗体で治療した糖尿病動物は、糖尿病でない動物と同様の頸動脈の周方向硬化を示した(図6を参照されたい)。
総合すると、上記データは、CTGFの阻害が、糖尿病に伴う動脈壁硬化および血管硬化の増加を軽減し、または予防する方法をもたらすことを示した。したがって、CTGFの阻害は、糖尿病に伴う血管合併症を治療し血管機能を改善する治療的アプローチを与える。
上記実験の他に、本発明の方法および薬剤を使用して、糖尿病に伴う血管合併症の別の態様について、動物モデルにおいて広範な効果を立証した。一連の実験において、抗CTGF治療が動脈壁硬化(血管機能、特に大血管機能の尺度)に及ぼす効果を、上記実施例1に記載の糖尿病の動物モデルを用いて評価した。0.1Mクエン酸緩衝(pH 4.1)ストレプトゾトシン(STZ)(65 mg/kg)の単回i.v.注射によってSprague Dawleyラットに糖尿病(1型糖尿病)を誘発した。STZで処理した動物の糖尿病誘発の成功は、第2日に、空腹時血糖値の上昇(>250mg/dl)によって確認した。ラットのSTZ誘発糖尿病は血管透過性の増加をもたらす(Lawsonら、(2005) Regul Pept 124:221-224)。
別の一連の実験において、STZ注射後6週間、糖尿病ならびに糖尿病に合併する障害が、動物において進行するにまかせた。6週間後、糖尿病動物をそこで、次のようにさまざまな治療群に分けた:対照ヒトIgG(10 mg/kg、IP注射、週3回、6週間);抗CTGF抗体(CLN-1、10 mg/kg、IP注射、週3回、6週間);カプトプリル(75 mg/kg/日、PO、飲料水に入れて)。
図7は、in vivo軸方向伸びを維持するために必要とされる軸方向の力を示す。図7において、データは平均+/- SEとして提示される;NS = 有意差は認められない;データは、反復測定のための二元配置分散分析(ANOVA)によって解析した(Turkey post hoc検定)。
糖尿病ラットは、頸動脈の動脈壁硬化が増加していた。具体的には、糖尿病は、軸方向の受動的な硬化を有意に増大させた。図7に示すように、摘出された頸動脈の力-圧力曲線は、糖尿病誘発後6週間で、糖尿病動物の頸動脈の軸方向硬化の増加を示した(図7のSTZ 6 wkを参照されたい)。図7に示すように、軸方向の受動的硬化の増加は、糖尿病でない対照動物の軸方向受動的硬化と比較して、6週時点の糖尿病動物(未治療)、または12週時点の糖尿病動物(第6週から第12週まで対照のHuIgGで治療)で認められた。STZ処理ならびに糖尿病発症後12週間で、対照HuIgGで第6週から第12週まで治療した動物は、第6週で観察されたのと比べて増加した受動的軸方向硬化を示した。これらの結果は、糖尿病動物が動脈壁硬化の増加を発症し、それは第6週から第12週まで進行し悪化することを示した。
抗CTGF抗体の投与を受けた糖尿病動物は、対照HuIgGの投与を受けた糖尿病動物と比べて、軸方向受動的硬化の低下を示し、または軸方向受動的硬化が減少していた(図7を参照されたい)。糖尿病動物はSTZ注射ならびに糖尿病発症後6週の始めから、抗CTGF抗体の投与を受けたが、その時点では動物はすでに、糖尿病でない動物と比べて、軸方向硬化の増加を示した。第6週から第12週まで抗CTGF抗体を投与した後、動物は、軸方向受動的硬化の測定値が第6週より低くなっていた。このデータは、抗CTGF抗体の投与が、頸動脈の軸方向の受動的硬化の進行を抑えることを示した。このデータはまた、抗CTGF抗体の投与が、糖尿病に伴う軸方向硬化を回復させ、または低下させるのに有効であることを示した。
上記の結果は、抗CTGF抗体による糖尿病動物の治療が、頸動脈の軸方向硬化を予防し、軽減する(たとえば、血管機能障害を予防し軽減する、特に大血管機能障害を予防し軽減する)こと、ならびに、抗CTGF抗体による治療が、糖尿病に伴う軸方向硬化を回復させるのに有効であることを明らかにした。
総合すると、上記のデータから、CTGFの阻害が、糖尿病に伴う動脈壁硬化および血管硬化の増加を軽減し、または予防する方法をもたらすことが示された。したがって、CTGFの阻害は、糖尿病に伴う血管合併症を治療し、血管機能を改善する治療的アプローチをもたらす。
さらに、上記動物の圧力-半径曲線の解析から、糖尿病動物が頸動脈の円周方向(すなわち半径方向)硬化の増加を示すことが明らかになった。図8より、高圧での圧力-半径曲線の左方向へのシフトは、動脈壁硬化の増加を示唆した。データから、6週間時点の糖尿病動物、または第6週から第12週まで対照HuIgGで処置した糖尿病動物が、健康な対照動物と比較して、増加した頸動脈の円周方向(すなわち半径方向)の動脈壁硬化を示すことが明らかになった(図8を参照されたい)。図8において、データは平均+/- SEとして提示される;NS = 有意差は認められない;データは、反復測定のための分散分析(ANOVA)によって、LSD post hoc検定により解析した。
STZ注射および糖尿病の発現後、第6週から第12週まで抗CTGF抗体で治療した糖尿病動物は、対照のヒトIgGで処置した動物と比較して、頸動脈円周方向硬化の著しい減少を示した。こうした結果は、抗CTGF抗体の投与が、糖尿病に伴う円周方向の動脈壁硬化を軽減するのに有効であることを示した。さらに、これらの結果から、抗CTGF抗体による治療が、糖尿病に伴う円周方向の受動的動脈壁硬化を回復させ、改善する(たとえば、円周方向動脈壁硬化を低下させる)のに有効であることが明らかになった。
総合すると、これらのデータは、CTGFの阻害が、糖尿病に伴う動脈壁硬化および血管硬化の増加を軽減、予防、もしくは回復する方法をもたらす(たとえば、血管機能障害を軽減もしくは回復する、特に大血管機能障害を軽減もしくは回復する)ことを示した。したがって、CTGFの阻害は、糖尿病に伴う血管合併症を治療し、血管機能を改善する、効果的な治療的アプローチをもたらす。さらに、上記の結果から、本発明の方法および化合物が、糖尿病に伴う大血管合併症の治療、予防、軽減、または回復に有効であり、したがって大血管機能の改善に有用であることが明らかになった。
無負荷およびゼロ応力状態の測定
本発明の方法および薬剤を用いて、糖尿病に伴う血管合併症のある特定の態様について、動物モデルで広範な有効性を立証した。一連の実験で、抗CTGF治療が動脈壁硬化(血管機能、特に大血管機能の尺度)に及ぼす効果を、下記のように糖尿病の動物モデルを用いて評価した。0.1Mクエン酸緩衝(pH 4.1)ストレプトゾトシン(STZ)(65 mg/kg)の単回i.v.注射によってSprague Dawleyラットに糖尿病(1型糖尿病)を誘発した。STZで処理した動物の糖尿病誘発の成功は、第2日に、空腹時血糖値の上昇(>250mg/dl)によって確認した。
STZ注射後6週間、糖尿病ならびに糖尿病に合併する障害が、動物において進行するにまかせた。6週間後、糖尿病動物をそこで、次のようにさまざまな治療群に分けた:対照ヒトIgG(10 mg/kg、IP注射、週3回、6週間);抗CTGF抗体(CLN-1、10 mg/kg、腹腔内(IP)注射、週3回、6週間);カプトプリル(75 mg/kg/日、PO、飲料水に入れる);ロサルタン(20 mg/kg/日、飲料水に入れる);抗CTGF抗体(CLN-1、10 mg/kg、IP注射、週3回、6週間)+カプトプリル(75 mg/kg/日、per os(PO、経口投与)、飲料水に入れる); 抗CTGF抗体(CLN-1、10 mg/kg、IP注射、週3回、6週間)+ロサルタン(20 mg/kg/日、飲料水に入れる)。
本研究の動物は、実施例1に記載のように動脈の力学的性質の検査を受けた。動脈セグメントの長さを、力学的性質を調べる前にin vivoで測定した。無負荷でゼロ応力状態のデータを得るために、検体の長さを力学的検査の20分後に測定した。この長さを、血管の摘出前に測定したin vivoセグメントの長さと比較した。その結果得られた比を、in vivo軸方向伸び率として報告した。実験糖尿病は、図9に示すように6週間までにはin vivo軸方向伸び率を減少させる。抗CTGF抗体による治療は、第12週までin vivo軸方向伸び率がさらに減少することを予防したが、溶媒処理動物ではin vivo軸方向伸び率は減少し続けた。こうしたin vivo伸び率の減少は動脈壁の硬化を意味する。動脈壁硬化は、抗CTGF抗体による治療によって予防された。
大動脈輪の増大した開放角の復元
大動脈輪を、摘出した頸動脈セグメントの中央部分から切除し、Krebs溶液中に入れた。無負荷状態の大動脈輪の横断面のデジタル写真を撮影した。そのリングに半径方向に切れ目を入れて、扇形に開いた。粘弾性クリープが生じるままにして20分後にデジタル写真を撮影した。開放角は、扇形の内側表面の中心点を内側先端につなぐ線の間の角度として定義され、ゼロ応力状態を特徴付ける。実験糖尿病は、図10に示すように6週間までに、開放角を増大させた。抗CTGF抗体による治療は、増大した開放角を、第12週までに健康な対照と変わらないレベルにまで正常化したが、溶媒で処置した動物では開放角は増加し続けた。開放角は、動脈壁の残留応力の指標である。
これらの結果は、抗CTGF抗体による糖尿病動物の治療が、頸動脈の動脈壁の病的変化を予防し、回復させる(たとえば、血管機能障害を予防し軽減する、特に大血管機能障害を予防し軽減する)こと、ならびに、抗CTGF抗体による治療が、糖尿病に伴う硬化を回復するのに有効であることを明らかにした。総合すると、上記のデータから、CTGFの阻害が、糖尿病に伴う動脈壁硬化および血管硬化の増加を軽減し、予防し、もしくは回復させる(たとえば、血管機能障害を軽減し、もしくは回復させる、特に大血管機能障害を軽減し、もしくは回復させる)方法をもたらすことが示された。したがって、CTGFの阻害は、糖尿病に伴う血管合併症を治療し、血管機能を改善する有効な治療的アプローチを与える。さらに、これらの結果は、本発明の方法および化合物が、血管合併症の治療、予防、軽減、もしくは回復に有効であり、したがって、血管機能の改善に有用であることを示した。
実施例3
抗CTGF治療は血管透過性を低下させる
抗CTGF治療が血管透過性(血管機能、特に大血管機能の尺度)に及ぼす効果を、上記実施例1に記載の糖尿病の動物モデルを用いて評価した。糖尿病誘発後のさまざまな時点で、ラットの血管透過性(VP)の増加を次のように検査した。無麻酔ラットにエバンスブルー(EB)色素を静脈注射で投与した(20mg/kg)。20分後に、麻酔薬の過量投薬によって動物を屠殺し、心臓を摘出した。肩より後ろの胴体から皮膚切片を切り取って秤量した。このアッセイにおいて、血管透過性の増加は、色素の皮膚への血管外遊出によって特徴付けられる。皮膚はホルムアミド(4ml/g湿重量)に24℃で24時間浸漬した。その後、ホルムアミド中に抽出されたEB色素の吸光度を、プレートリーダーを用いて620 nmで分光光度法によって測定した。このアッセイにおいて、EB色素の濃度は、血管透過性の程度と比例する。さらに、6 mmバイオプシーパンチを用いて皮膚切片を採取した。この切片を秤量した後、60℃にて一晩乾燥した。乾燥したサンプルを秤量し、乾重量に対する湿重量の比を測定した。湿重量/乾重量比の増加は組織浮腫を示す。
図11および12に示すように、糖尿病動物は3週間時点ですでに、組織におけるエバンスブルー血管外遊出の増加、および湿/乾重量比の増加によって立証されるように、(糖尿病でない対照動物と比較して)血管透過性および組織浮腫が増加していた。抗CTGF抗体で治療した糖尿病動物は、未治療糖尿病動物と比較して、エバンスブルー血管外遊出が減少し、湿/乾重量比も低下した。
これらの結果は、糖尿病動物の抗CTGF抗体による治療が、血管透過性を低下させ、糖尿病に伴う組織浮腫を減らす(たとえば、血管機能障害、特に細小血管機能障害を軽減する)ことを明らかにした。総合すると、上記の結果は、本発明の方法および化合物が、糖尿病に伴う細小血管合併症の治療、予防、もしくは軽減に有効であり、したがって細小血管機能の改善に有用であることを示した。
図13に示すように、6週間時点の糖尿病動物、ならびにSTZを注射して糖尿病を発症したのち第6週から第12週まで対照HuIgGの投与を受けた糖尿病動物は、組織におけるエバンスブルー血管外遊出の増加、および湿/乾重量比の増加によって立証されるように、(糖尿病でない対照動物と比較して)血管透過性および組織浮腫が増加していた(図13のデータはANOVAの後にLSD post hoc検定によって解析した)。(第6週から第12週まで)抗CTGF抗体で治療した糖尿病動物は、未治療の糖尿病動物と比較して、エバンスブルー血管外遊出の減少および湿/乾重量比の減少を示した。加えて、第6週から第12週まで抗CTGF抗体の投与を受けた糖尿病動物は、対照ヒトIgGの投与を受けた対照動物で認められるのと比較して、血管透過性および組織浮腫の減少を示した。これらの結果は、抗CTGF抗体治療が糖尿病に伴う血管透過性および組織浮腫の改善、軽減、および回復に有効であることを示した。
これらの結果は、抗CTGF抗体による糖尿病動物の治療が、糖尿病に伴う血管透過性の軽減および回復、ならびに組織浮腫の軽減および回復(たとえば、血管機能障害の軽減および回復、特に細小血管機能障害の軽減および回復)をなすことを明らかにした。総合すると、上記の結果から、本発明の方法および化合物が、糖尿病に伴う細小血管合併症の治療、予防、軽減、もしくは回復に有効であり、細小血管機能の改善に有用であることが明らかになった。
実施例4
抗CTGF治療は血管石灰化を軽減する
抗CTGF抗体の血管石灰化への効果を次のように調べた。カルシウム鉱物沈着物についてのvon Kossa染色を、STZによる糖尿病誘発の6週間後の動物から得られた頸動脈切片に対して行った。総頸動脈の2 cmセグメントを10%亜鉛 ホルマリン(0.1 M)に24時間入れ、段階的な一連のエタノール溶液に入れて脱水した後、パラフィンに包埋した。厚さ3μmの頸動脈組織切片を切り取り、脱パラフィンして、蒸留水中で水和した後、5% AgNO3で60分間処理した。その後、頸動脈組織標本を蒸留水ですすぎ、5% Na2S2O3で2分間処理した。次に標本を順次、蒸留水および95%エタノールですすいだ。標本をその後エオシンで対比染色し、光学顕微鏡下で検査し、血管壁の内膜層に沿って暗黒/茶色の染色が存在することによって血管壁石灰化を評価した。血管石灰化は、光学顕微鏡で観察した血管壁内に存在する、または存在しないとして、評価される。
本研究の結果を図14に示す。糖尿病誘発の6週間後、血管系に関わるカルシウム鉱物沈着物についてのvon Kossa染色は、糖尿病動物から得られた頸動脈の内膜層にそって強い陽性の黒/茶色の染色部分を出現させた;これに対して糖尿病でない動物から得られた頸動脈は、カルシウムの染色をほとんど、もしくはまったく示さなかった。さらに、対照ヒトIgGで処置した糖尿病動物(n=6)から得られた頸動脈のうち半数は、血管石灰化に関して強い陽性染色を示した。同様にカプトプリルで治療した糖尿病動物から得られた頸動脈の半数が、6週間で強いカルシウム染色を示した(n=8)。抗CTGF抗体(CLN-1, 3 mg/kg)で治療した糖尿病動物から得られた頸動脈は、カルシウム鉱物沈着物の染色の減少を示した。具体的には、3 mg/kgの抗CTGF抗体(CLN-1)で治療した糖尿病動物から得られた頸動脈のうち半数未満(43%)が6週間で陽性のカルシウム染色を示した。高用量の抗CTGF抗体(CLN-1, 10 mg/kg)の投与は、糖尿病動物から得られた頸動脈のすべてでカルシウム沈着を予防した(n=6)。これらの結果は、抗CTGF抗体による糖尿病動物の治療が血管石灰化を予防もしくは軽減することを明らかにした。このデータは、抗CTGF治療が血管石灰化の予防もしくは軽減に有用であることを示した。
実施例5
抗CTGF治療は、心臓血管合併症の糖尿病動物モデルにおいて、治療上の利点を有する
8週齢の雄db/dbマウス(C57BLKS/J-leprdb/leprdb)およびそれと週齢の一致した糖尿病でないdb/+同腹子(C57BLKS/J-leprdb/+)(Jackson Labs, Bar Harbor, ME)を使用した。db/dbマウスは、初期体重が約40 gであった。糖尿病でないdb/+マウスの初期体重は約20 gであった。特定の実験群においては、飲料水に、ロサルタン約2 mg/日の投与を保証する濃度であるロサルタン(200 mg/L)を添加した。
精製された複数ドナー由来ヒトIgGをSigma Chemical Corporation (St. Louis, Mo.)から購入し、プロテインAクロマトグラフィーによって再精製した。ヒトIgGを含有する酸溶出液をただちに中和し、PBSに対して徹底的に透析した後、無菌濾過して、純度と内毒素の不在を確認し、使用まで4℃にて保存した(バッチ番号CML 052803など、4.67 mg/mL)。
抗CTGFモノクローナル抗体(CLN-1)治療は、100%のdb/dbマウスがはっきりと高血糖となる(db/+ 対照マウスより2倍以上上昇した血糖値によって立証される)8週齢の時点で開始した。高血糖によって確認される糖尿病の発症後、db/dbマウスを無作為に10匹ずつのグループに分け、次のように処置した。1グループのdb/dbマウスは、抗CTGF抗体(3 mg/kg)のi.p.注射で処置し、もう1つのグループは抗CTGF抗体(CLN-1, 10 mg/kg)で処置した;別のグループはアイソタイプの一致する無関係のヒトIgG(cIgG, 10 mg/kg)で処置した;他の1群は飲料水に入れたロサルタン(2 mg/日)の投与を受けた;さらにもう1つのグループは飲料水に入れたロサルタン(2 mg/日)の投与、ならびにcIgG(10 mg/kg)のIP注射を受けた。抗体は、300マイクログラムの初回ボーラス投与で腹腔内(IP)投与し、その後3 mg/kgもしくは10 mg/kg (注射容量は約0.5 ml)の投与量で、週3回、8週間にわたって投与した。
動物屠殺時に、ヘパリン添加キャピラリチューブを用いて、非空腹時血液サンプルを後眼窩静脈叢から抜き取った。分離されていないヘパリン添加血液のHbA1Cおよび脂質濃度を分析した。血清サンプルは、分析が行われるまで−80℃で保存した。左右の腎臓、肝臓、および心臓を各動物から摘出し、秤量した。
血液脂質測定は次のように実施した:総コレステロール(TC)、HDL、およびトリグリセリド(TG)の濃度は、市販の検査キットで測定した(PTS Panels, Polymer Technology Systems, Inc.)。LDL濃度は次式:LDL = TC −HDL − (TG/5)により算出した。糖化ヘモグロビン濃度(糖化ヘモグロビンHbA1cの%として測定される)は、新鮮全血で、妥当性が立証された市販のHbA1c検査キットによって測定した。
図15に示すように、抗CTGF抗体を投与された糖尿病動物は、対照IgGを投与された糖尿病動物より心臓重量が減少していた。こうした結果は、抗CTGF治療が、心臓肥大、鬱血性心不全、および心筋症などの、糖尿病に伴う心臓血管障害の治療に有用であることを示唆した。図16は、抗CTGF抗体投与が、実施例1に記載のSTZ誘発糖尿病ラットモデルにおいて、体重に対する心臓重量の比を低下させたことを示す。
図17に示すように、抗CTGF抗体の糖尿病動物への投与は、血中LDL濃度を低下させた。LDL濃度の増加は、心臓血管疾患および障害の発症のリスクファクターである。したがって、上記の結果は、抗CTGF治療が、LDL濃度を低下させることによって、心臓血管疾患の発症するリスクを下げる、もしくは発症を予防するのに有用であることを示唆した。
図18は、抗CTGF抗体の糖尿病動物への投与が、血中HbA1c(糖化ヘモグロビン)濃度を低下させたことを示す。図19は、抗CTGF抗体投与が、実施例1に記載のSTZ誘発糖尿病ラットモデルにおいて、血中HbA1c濃度を低下させたことを示す。糖化ヘモグロビン濃度の測定は、ヒトにおいて、先行する2,3か月間の平均血糖濃度の正確な指数を与える。ヒトでは、正常な(糖尿病でない)糖化ヘモグロビン濃度は4〜6%の間にある。糖尿病のヒト個体に関する研究において、DCCTは、HbA1c濃度を平均HbA1c濃度7.2%に低下させる、もしくは7.2%に維持することによって、結果として、これより高いHbA1c濃度を示す糖尿病個体と比べて、心臓血管疾患が35%低下することを明らかにした。したがって、上記の結果は、抗CTGF治療が、糖化ヘモグロビン濃度の低下、それによる心臓血管疾患の発症リスクの減少、もしくは発症予防に有用であることを示唆した。
図20は、抗CTGF抗体およびARBの併用療法が、血中HDL濃度を増加させるのに有効であることを示す。
本明細書に提示および記載されたもの以外に、前述の記載から、本発明のさまざまな変更が当業者に明白となるであろう。そうした変更は、添付の特許請求の範囲に含まれるものとする。
本明細書に引用された参考文献はすべて、参照としてその全体を本明細書に含めるものとする。
下記の参考文献はいずれも、参照としてその全体を本明細書に含めるものとする。
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図1は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において心臓駆出率を有効に改善したことを示す。 図2は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において左心室拡張末期圧を有効に低下させたことを示す。 図3は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において心収縮力を有効に改善したことを示す。 図4は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において心室の心臓弛緩の速度を有効に改善したことを示す。 図5は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において頸動脈の軸方向の硬化を有効に軽減したことを示す。 図6は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において頸動脈の周方向の硬化を有効に軽減したことを示す。 図7は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において糖尿病に伴う頸動脈の軸方向の硬化を有効に軽減し、回復させたことを示す。 図8は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において糖尿病に伴う頸動脈の周方向の硬化を有効に軽減し、回復させたことを示す。 図9は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体においてin vivoでの軸方向の伸縮率の低下を有効に回復させたことを示す。 図10は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において大動脈輪の開放角の増加を有効に復元したことを示す。 図11は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において血管外浮腫を有効に減少させたことを示す。 図12は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において血管透過性を有効に減少させたことを示す。 図13は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において糖尿病に伴う血管透過性および血管外浮腫を有効に軽減し、回復させたことを示す。 図14は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において血管石灰化を有効に減少させたことを示す。 図15は、本発明の方法および薬剤が、糖尿病動物モデルにおいて心臓重量を有効に減少させたことを示す。 図16は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体において体重に対する心臓重量比を有効に減少させたことを示す。 図17は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体においてLDLの血中濃度を有効に低下させたことを示す。 図18は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体においてHbA1cの血中濃度を有効に低下させたことを示す。 図19は、本発明の方法および薬剤が、哺乳類被験体においてHbA1cの血中濃度を有効に低下させたことを示す。 図20は、アンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)治療と併用した抗CTGF抗体投与が、哺乳類被験体においてHDLの血中濃度を増加させたことを示す。

Claims (18)

  1. 被験体において血管機能障害を軽減する、もしくは血管機能を改善する方法であって、有効量の抗CTGF薬を被験体に投与し、それによって被験体の血管機能障害を軽減する、もしくは血管機能を改善することを含んでなる上記方法。
  2. 被験体が、糖尿病に罹患した被験体、もしくは糖尿病に罹患するリスクのある被験体である、請求項1に記載の方法。
  3. 血管機能が細小血管機能もしくは大血管機能である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 血管機能が末梢血管系に関連する、請求項1または2に記載の方法。
  5. 前記方法が内皮機能障害を軽減するための方法である、請求項1または2に記載の方法。
  6. 前記方法が動脈壁硬化を治療もしくは軽減するための方法である、請求項1または2に記載の方法。
  7. 動脈壁硬化が軸方向、半径方向、および円周方向の動脈壁硬化からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記方法が、血管透過性を低下させる、血管外遊出を減少させる、内膜中膜肥厚を軽減する、または総頸動脈内膜中膜肥厚を軽減するための方法である、請求項1または2に記載の方法。
  9. 前記方法が、浮腫もしくは組織浮腫を減少させるための方法である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記方法が、血管の損傷もしくは機能障害を軽減するための方法である、請求項1または2に記載の方法。
  11. 前記方法が、血管石灰化を軽減するための方法である、請求項1または2に記載の方法。
  12. 前記方法が、糖尿病に伴う血管合併症を治療するための方法である、請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
  13. 被験体が哺乳類の被験体である、請求項1〜12のいずれか1つに記載の方法。
  14. 被験体がヒト被験者である、請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
  15. 抗CTGF薬が、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、もしくは小分子である、請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
  16. 抗CTGF薬が、CTGFと結合する抗体もしくはそのフラグメント;アンチセンス分子;siRNA;または小分子化合物である、請求項15に記載の方法。
  17. 抗CTGF薬が、CTGFに対するモノクローナル抗体、もしくはそのフラグメントである、請求項16に記載の方法。
  18. 抗CTGF薬が、WO 2004/108764に記載のCLN-1、もしくはそのフラグメントである、請求項16に記載の方法。
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