JP2008538932A - モナティンの立体異性体及びそれらの前駆体の製造のためのポリペプチド及び生合成経路 - Google Patents

モナティンの立体異性体及びそれらの前駆体の製造のためのポリペプチド及び生合成経路 Download PDF

Info

Publication number
JP2008538932A
JP2008538932A JP2008515698A JP2008515698A JP2008538932A JP 2008538932 A JP2008538932 A JP 2008538932A JP 2008515698 A JP2008515698 A JP 2008515698A JP 2008515698 A JP2008515698 A JP 2008515698A JP 2008538932 A JP2008538932 A JP 2008538932A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
monatin
aminotransferase
tryptophan
racemase
alanine
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2008515698A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5336182B2 (ja
Inventor
ジェイ. ブラゾー,ブライアン
バーク,エレン
ソーザ,マービン エル. デ
ジェイ. ゴート,スティーブン
エム. ヒックス,ポーラ
アール. コルマン,シェリー
ルギンブール,ペーター
シー. マクファーラン,サラ
リチャードソン,トビー
エー. サンチェス−リーラ,フェルナンド
ソルヘイド,クリストファー
ウェイナー,デイビッド
チャオ,リーシャン
Original Assignee
カーギル,インコーポレイティド
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by カーギル,インコーポレイティド filed Critical カーギル,インコーポレイティド
Publication of JP2008538932A publication Critical patent/JP2008538932A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5336182B2 publication Critical patent/JP5336182B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/1096Transferases (2.) transferring nitrogenous groups (2.6)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/90Isomerases (5.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12PFERMENTATION OR ENZYME-USING PROCESSES TO SYNTHESISE A DESIRED CHEMICAL COMPOUND OR COMPOSITION OR TO SEPARATE OPTICAL ISOMERS FROM A RACEMIC MIXTURE
    • C12P17/00Preparation of heterocyclic carbon compounds with only O, N, S, Se or Te as ring hetero atoms
    • C12P17/10Nitrogen as only ring hetero atom

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)
  • Indole Compounds (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Abstract

モナティン及び、例えば、R,R体モナティンやS,R体モナティンなどのモナティンの特定の立体異性体、並びにその塩を、ポリペプチド及び生合成経路を使用して製造する。これらのポリペプチド及び生合成経路は、また、いくつかの生合成経路を含めた特定のモナティン合成経路において形成される中間体である、R-2-ヒドロキシ-2-(インドリル-3-イルメチル)-4-ケト・グルタル酸の製造においても有用である。

Description

この開示は、D-トリプトファン、インドール-3-ピルビン酸、R-2-ヒドロキシ-2-(インドール-3イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(R-MP)、及び、例えば、R,R体及びS,R体モナティンなどのモナティンの特定の立体異性体、並びにその塩の製造において有用なポリペプチド及び生合成経路を提供する。
モナティンは、以下の化学式:
Figure 2008538932
を持つ強力な甘味料である。モナティンは、4つの潜在的な立体異性配置に通じる2つのキラル中心を含んでいる。R,R立体配置(「R,R立体異性体」又は「R,R体モナティン」);S,S立体配置(「S,S立体異性体」又は「S,S体モナティン」);R,S立体配置(「R,S立体異性体」又は「R,S体モナティン」);及びS,R立体配置(「S,R立体異性体」又は「S,R体モナティン」)。本明細書中に使用される場合に、別段の記載がない限り、用語「モナティン」は、モナティンの4つの立体異性体の全てを含む組成物、モナティン立体異性体のいずれかの組み合わせを含む組成物(例えば、モナティンのR,R及びS,S立体異性体だけを含む組成物)、並びに1つの異性体を指すために使用される。
当該開示の目的のために、モナティン炭素骨格は、アルコール基が直に共有結合で取り付けられた炭素を2位の炭素と認定し、そして、アミノ基が直に共有結合で取り付けられた炭素を4位の炭素と認定して、先に説明されるように番号付けされる。その結果、本明細書中のR,R体モナティン、S,S体モナティン、R,S体モナティン、及びS,R体モナティンに対する言及は、別段の指示のない限り、それぞれ、以下の:2R,4R体モナティン、2S,4S体モナティン、2R,4S体モナティン、及び2S,4R体モナティンを意味する。
文献において、モナティン炭素骨格は、また、アルコール基に取り付けられた炭素を4位の炭素とし、そして、アミノ基に取り付けられた炭素を2位の炭素とする、代替規則も使用して番号付けされたことに留意しなければならない。従って、例えば、この開示における2S,4R体モナティンに対する言及は、代替の番号付け規則を使用する文献において2R,4Sモナティンに対する言及と同じであるだろう。
更に、様々な命名規則のため、モナティンは、以下の:2-ヒドロキシ-2-(インドール-3-イルメチル)-4-アミノグルタル酸;4-アミノ-2-ヒドロキシ-2-(1H-インドール-3-イルメチル)-ペンタン二酸;4-ヒドロキシ-4-(3-インドリルメチル)グルタミン酸;及び3-(1-アミノ-1,3-ジカルボキシ-3-ヒドロキシ-ブタ-4-イル)インドール、を含めた多数の代替の化学名で知られている。
モナティンの特定の異性体は、南アフリカのトランスバール地方にある植物であるシュレロチトン・イリシホリアス(Schlerochiton ilicifolius)の根皮中に見つけることができる。本明細書中に援用される、米国特許出願番号第10/422,366号(「第’366号出願」)、同第10/979,821号(「第’821号出願」)、及び同第11/114,922号(「第’922号出願」)が、とりわけ、生体外及び生体内におけるモナティンの製造のためのポリペプチド、経路、及び微生物を開示している。
発明の概要
当該開示は、とりわけ、D-トリプトファン、インドール-3-ピルビン酸、R-2-ヒドロキシ2-(インドール-3-イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(また、R-α-ケト酸モナティン、R-モナティン前駆体、R-MP、及びモナティンのα-ケト型とも呼ばれる)、及び、例えば、R,R及びS,R体モナティンなどの特定のモナティンの立体異性体、並びにその塩の製造において有用であるポリペプチド及び生合成経路を提供する。前記過程には、4-R異性体に富んだモナティン組成物を製造するため、及び/又はMPアミノ化のためのアミノ酸ドナーとして化学量論的な量のD-アミノ酸基質を使用する必要なくR,R体モナティンを製造するために、1種類以上のポリペプチド、具体的には、例えば、ラセマーゼ(例えば、グルタミン酸ラセマーゼ、アスパラギン酸ラセマーゼ、及びアラニン・ラセマーゼ)、広特異性(broad specificity)D-アミノ基転移酵素(また、D-アラニン・アミノ基転移酵素、D-アミノ酸アミノ基転移酵素、及びD-アスパラギン酸アミノ基転移酵素とも呼ばれる)、(L-トリプトファン-アミノ基転移酵素、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アスパラギン酸アミノ基転移酵素、及びL-アラニン-アミノ基転移酵素を含めた)L-アミノ基転移酵素、アルドラーゼ(例えば、R体に特異的なアルドラーゼ)、D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素(また、D-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素とも呼ばれる)、D-メチオニン・アミノ基転移酵素、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ、及びアスパラギン酸-4-デカルボキシラーゼなどの酵素の使用が含まれる。
簡潔にするために、明細書及び請求項の中で、中間体/生成物が、形成されるものとして(例えば、モナティン又はモナティン前駆体に)特定される場合には、常に、用語「及び/又はその塩」が、適切な所に含まれると理解されるべきである。言い換えれば、例えば、語句「インドール-3-ピルビン酸はMPに変換される」は、「インドール-3-ピルビン酸はMP、そして、及び/又はその塩に変換される」と読むことが理解されるべきである。実際、当業者は、示された反応条件下、中間体/生成物の塩が、実際に存在しているか、又はそれもまた存在していることを認識しているだろう。
いくつかの態様によると、その過程は、モナティン組成物であって、その組成物のモナティン成分がモナティンのR,R、及びS,R体だけを含んでいるものを製造する。用語「だけ」は、特定の異性体だけが形成されることを示すのに使用される時、別段の記載のない限り、ラセミ化が起こらなかった場合に、経路が特定された異性体だけを作り出すことを意味している。その結果、用語「だけ」は、他の異性体の不存在を意味すると解釈するべきではなく、むしろ当業者は、起こるかもしれないラセミ化のために、他の異性体が比較的に少量で存在しているかもしれないことを認識しているだろう。いくつかの態様によると、その過程は、モナティン組成物であって、その組成物のモナティン成分がモナティンのR,R体だけを含んでいるものを作り出す(よって、他の異性体をもたらすラセミ化が起こる範囲を除いて意味する)。
本明細書中に使用される場合に、語句「モナティン組成物」は、1種類以上のモナティンの異性体を含む組成物を意味し;その用語は、また、状況次第で、モナティンのたった1種類の異性体だけを含み、そして、他に何も含まない組成物も意味する。
いくつかの態様において、当該発明によると、モナティン組成物の製造過程が提供され、それには、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、インドール-3-ピルビン酸から2-ヒドロキシ2-(インドール-3イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(「モナティン前駆体」又は「MP」)を製造し、そして、MPからモナティンを製造するステップが含まれる。インドール-3-ピルビン酸を製造するためのL-トリプトファンの反応は、R-MP、R,R体モナティン、若しくはその両方に対するよりも、基質としてのL-トリプトファンに対してより高い特異性、より高い活性、又はその両方を有する酵素によって促進される。特定の態様によると、インドール-3-ピルビン酸の反応は、R体に特異的なアルドラーゼ活性を有する酵素によって促進され、そして、その結果、R-MPを作り出す。特定の態様によると、ラセマーゼ酵素は、L-トリプトファン・アミノ基転移反応の副産物としてある異性体から他の異性体が形成される(又はそれは、トリプトファン反応の副産物である他のアミノ酸から形成される)アミノ酸のエピマー化を促進することができる。
本発明によるいくつかの態様において、モナティン組成物の製造過程が提供され、それには、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、インドール-3-ピルビン酸から2-ヒドロキシ2-(インドール-3イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(「モナティン前駆体」又は「MP」)を製造し、そして、MPからモナティンを製造するステップが含まれる。インドール-3-ピルビン酸を製造するためのL-トリプトファンの反応は、R-MP、R,R体モナティン、若しくはその両方に対してよりも、基質としてのL-トリプトファンに対してより高い特異性、より高い活性、若しくはその両方を有する酵素によって促進され、且つ、モナティンを形成するMPの反応は、R-MPに対して立体選択的である酵素によって促進される。
言及が、例えば、前段落などの一連の反応に対してなされる場合に、本発明は、各ステップが明確に実施される必要がないことに留意するべきであり;そのステップが暗黙のうちに実施されるかもしれないだけで十分である。言い換えれば、例えば、各反応が適切な酵素によって促進される、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、インドール-3-ピルビン酸から2-ヒドロキシ2-(インドール-3イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(「モナティン前駆体」又は「MP」)を製造し、そして、MPからモナティンを製造するステップが含まれるモナティン組成物の製造過程は、酵素とL-トリプトファンを混ぜ合わせ、そして、列挙された反応が起き得るように条件を設定することによって実施できる。そのような一例として、L-トリプトファンが反応してインドール-3-ピルビン酸を形成することができ、L-トリプトファンの反応から製造されたインドール-3-ピルビン酸が反応してMPを形成することができ、そして、インドール-3-ピルビン酸の反応から製造されたMPが反応してモナティンを形成することができる。前記過程は、また、一例として、L-トリプトファンの製造が起こるのに好適な条件下でL-トリプトファンを製造することができる化合物を準備し、そして、その化合物を、示した一連の反応を促進することができる酵素と、それらの反応が起こるのに好適な条件下で混ぜ合わせることによっても実施されるかもしれない。更に他の例として、前記過程は、説明した経路によりモナティンを産生するように遺伝子操作した微生物を準備し、そして、発酵工程が起こるのに適切な条件を提供することによって実施されるかもしれない。例えば、大量のL-トリプトファン(又は、D-トリプトファン)を自然に産生する微生物が、モナティンに対する経路内での反応を促進するのに使用される酵素の1種類以上を産生するか、又は過剰産生するように遺伝子操作されてもよく、そして、上記微生物がそれによりモナティンを産生することができるように、適切な条件が提供されるかもしれない。
本発明による他の態様において、モナティンの製造過程が提供され、そこで、L-トリプトファンがインドール-3-ピルビン酸に変換される時に、α-ケト酸基質がL-アミノ酸を形成し、そして、インドール-3-ピルビン酸が反応して(R-MP及びS-MPの両方を含む可能性があるが、好ましくは、R-MPだけを又はそれを主に含む)MPを形成し、そして、R-MPがR,R体モナティンに変換される時に、L-アミノ酸が反応してα-ケト酸基質を再生する(また、「リサイクル」とも呼ばれる)。R,R体モナティンを形成するR-MPの反応は、例えば、D-メチオニン・アミノ基転移酵素などの立体反転アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.41)、又はD-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素由来の酵素によって促進される。
本発明による他の態様において、モナティン組成物を製造過程が提供され、それには、L-トリプトファンからD-トリプトファンを製造し、D-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、インドール-3-ピルビン酸からR-MPを製造し、そして、R-MPからR,R体モナティンを製造するステップが含まれる。L-トリプトファンからのD-トリプトファンの製造は、トリプトファン・ラセマーゼ、及びその機能的な同等物によって促進される。特定の更なる態様において、インドール-3-ピルビン酸を形成するD-トリプトファンの反応、及びモナティンを形成するMPの反応は、同じ酵素によって促進される。更に他の更なる態様において、インドール-3-ピルビン酸の反応は、R体に特異的なアルドラーゼ活性を有する酵素によって促進され、結果的にR-MPが形成され、そして、インドール-3-ピルビン酸を形成するD-トリプトファンの反応、及びR,R体モナティンを形成するR-MPの反応は、同じ酵素によって促進される。
本発明による他の態様において、(a)トリプトファン・ラセマーゼを利用してL-トリプトファンからD-トリプトファンを製造し(上記ラセマーゼは、モナティンに対して制限された活性しかないか、若しくは活性がないはずである)、(b)D-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、(c)インドール-3-ピルビン酸からR-モナティン前駆体を製造し、そして、(d)R-モナティン前駆体からR,R体モナティンを製造するステップを含むか、あるいは、基本的にそれらから成るR,R体モナティン又はその塩を製造する方法が、本明細書中に開示されている。
多数の態様が開示される一方で、本発明の更に他の態様は、明細書から当業者にとって明らかになるかもしれない。本明細書中の説明から実現される場合には、本発明は、本発明の趣旨及び範囲から全く逸脱することなく、様々な側面において修飾が可能である。従って、図面及び詳細な説明は、本質的に説明に役立つものであり、且つ、制限するものでないと見なされるべきである。
発明の詳細な説明
略語と用語
用語及び方法に関する以下の説明は、当該開示をよりよく説明し、且つ、当該開示の実施において当業者を導くために提供される。本明細書中では、用語「包含する(including)」は「含む(comprising)」を意味する。用語「含む」が使用される場合はいつでも、「制限される」が明らかに記載されているかどうかに関わらず、「それだけに制限されることなく含む」を意味すると理解されるべきである。加えて、単数形「a」、「an」、又は「the」には、別段の明確に指示する文脈がない限り、複数の言及対象が含まれる。例えば、「タンパク質を含む」ことへの言及には、1つ又は複数のそのようなタンパク質が含まれ、そして、「細胞を含む」ことへの言及は、1つ以上の細胞、及び当業者に知られているその同等物などへの言及が含まれる。用語「約」は、あらゆる測定においても起こる実験誤差の範囲を網羅する。別段の記載のない限り、 「約」という単語が明確に使用されていなくても、全ての測定の数値には、それらの前に単語「約」があるとみなす。
保存的置換:ポリペプチド内における、あるアミノ酸の他のアミノ酸への置換であって、上記ポリペプチドの活性に対してわずかしか影響しないか、又は全く影響しない置換。前記置換は、交換されたアミノ酸が構造的又は機能的に同様に見えるかどうかに関わらず保存的であると見なされる。例えば、理想的には、1つ以上の保存的置換を含むトリプトファン・アミノ基転移酵素ポリペプチドは、トリプトファン・アミノ基転移酵素活性を持ち続ける。ポリペプチドは、例えば、部位特異的突然変異誘発、若しくはPCR法などの標準的な手順、又は当業者に知られている他の方法を使用することによってそのポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を操作することによって、1つ以上の保存的置換を含むように製造されてもよい。
タンパク質内の本来のアミノ酸に対して置換されるかもしれず、且つ、ポリペプチドの活性に対してわずかしか又は全く影響がない場合には保存的置換と見なされるかもしれないアミノ酸の限定されることのない例には、以下の:ser又はthrで置換されるAla;gln、his、又はlysで置換されるarg;glu、gln、lys、his、aspで置換されるasn;asn、glu、又はglnで置換されるasp;ser又はalaで置換されるcys;asn、glu、lys、his、asp、又はargで置換されるgln;asn、gln、lys、又はaspで置換されるglu;proで置換されるgly;asn、lys、gin、arg、tyrで置換されるhis;leu、met、val、pheで置換されるile;ile、met,val、pheで置換されるleu;asn、glu、gln、his、argで置換されるlys;ile、leu、val、pheで置換されるmet;trp、tyr、met、ile、又はleuで置換されるphe;thr、alaで置換されるser;ser又はalaで置換されるthr;phe、tyrで置換されるtrp;his、phe、又はtrpで置換されるtyr;及びmet、ile、leuで置換されるval、が含まれる。
保存的置換に関する更なる情報は、他の場所にもあるが、Ben-Bassatら、J. Bacteriol 169:751-757ページ(1987年);O’Reganら、Gene 77:237-251ページ(1989年);Sahin-Tothら、Protein Sci. 3:240-247ページ(1994年);Hochuliら、Bio/Technology 5:1321-1325ページ(1988年);WO 00/67796(Curdら)、及び遺伝子学と分子生物学の標準的な教科書で見つけられる。
由来する:明細書及び請求項の目的のために、以下の:1)その物質が、生物体/起源の中に存在している;2)その物質が、天然の宿主から取り出される;又は3)その物質が天然の宿主から取り出され、そして、例えば、突然変異誘発によって、作製される、のいずれか1つ以上が当てはまれば、物質は、生物体又は起源に由来する。
単離された:用語「単離された」は、本明細書中では、その天然の宿主から取り出されたいずれかの物質を指し;その物質が、いずれの特別な純度も必要としない。例えば、「単離された核酸」は、その核酸が生じた生物体の天然のゲノム内で直に隣接する(5’末端のもの及び3’末端のもの)配列の両方と直に隣接していない天然の核酸を指す。例えば、単離された核酸は、これだけに制限されることなく、あらゆる長さの組み換えDNA分子であってもよいが、但し、天然のゲノム内でその組み換えDNA分子のすぐ側面に位置することが一般に分かっている核酸配列の1つが取り出されているか、又は不存在であることを条件とする。よって、単離された核酸には、これだけに制限されることなく、他の配列から独立した別々の分子(例えば、PCR法又は制限エンドヌクレアーゼ処理によって調製されたcDNA又はゲノムDNA断片)として存在する組み換えDNA、並びにベクター、自律複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、若しくはヘルペスウイルス)内に、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA内に組み込まれる組み換えDNAが含まれる。加えて、単離された核酸には、ハイブリッド又は融合核酸配列の一部である組み換えDNA分子が含まれる可能性がある。
本明細書中では、核酸に関して、用語「単離された」には、また、あらゆる非天然の核酸も含まれるが、それは、非天然の核酸配列は、天然に見られないため、天然のゲノム内で直に隣接する配列を持っていないからである。例えば、非天然の核酸、例えば、遺伝子操作された核酸などが、単離された核酸であると見なされる。
遺伝子操作された核酸は、一般的な分子クローニング又は化学的核酸合成技術を使用することで作製されてもよい。単離された非天然の核酸は、他の配列から独立しているか、あるいはベクター、自律複製プラスミド、ウイルス(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス内に、若しくはヘルペスウイルス)、又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNA内に組み込まれてもよい。加えて、非天然の核酸には、ハイブリッド又は融合核酸配列の一部である核酸分子が含まれる可能性がある。
例えば、cDNA、ゲノム・ライブラリー、又はゲノムDNA制限消化産物を含むゲル切片内の、数百〜数百万の他の核酸分子の中に存在する核酸は、単離された核酸であると見なされるべきではない。
精製された:用語「精製された」は、本明細書中では、混入物が着目のサンプルから取り除かれたことを示す。別段の文脈による指摘がない限り、用語「精製された」は、絶対的な純粋さを必要としないが、むしろ、相対語として解釈される。よって、例えば、精製されたポリペプチド又は核酸の調製物は、対象のポリペプチド又は核酸が、そのポリペプチド又は核酸が生物体内の天然の環境において存在したであろうよりも高い濃度にて、又はそれが取り出された環境におけるよりも高い濃度にて存在するものであるかもしれない。
立体反転アミノ基転移酵素:「立体反転アミノ基転移酵素」は、アミノ・ドナーとして反対のキラリティー基質を使用していても、優先的に又は選択的にキラル・アミノ酸生成物(例えば、モナティンなど)を作り出すことができるポリペプチドである。例えば、立体反転アミノ基転移酵素は、R,R体モナティンを作り出すための基質としてL-グルタミン酸を優先的に又は選択的に使用するD-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素(また、D-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素とも呼ばれる)であるかもしれない。立体反転アミノ基転移酵素の限定されることのない例には、D-メチオニン・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.41)、及びD-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素活性又はD-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素活性を有する酵素が含まれる。
補完遺伝子(Complementing Gene):「補完遺伝子」は、発現されると生物体の突然変異を無効にする遺伝子である。例えば、生物体が、細胞によるトリプトファンの合成に必要とされる遺伝子の1つにヌル突然変異を持つ場合に、補完遺伝子は、発現されると、その系統が最少培地(すなわち、トリプトファンなし)で増殖することを可能にするものであるかもしれない。
立体選択的な酵素:「立体選択的な酵素」は、他の異性体に対する特異性、及び/又は活性と比べて、ある異性体に対してより高い特異性、及び/又はより高い活性を有する酵素である。例えば、立体選択的な酵素は、S-MPに対するよりもR-MPに対してより高い特異性、及び/又は活性を有するものである。好ましい態様において、立体選択的な酵素は、他のものに比べて、ある異性体に対して制限された活性を有する。「制限された」活性は、例えば、本明細書中に提供された実験により測定された場合に、最小か、又は認知できないくらいの活性であることを意味する。例えば、実施例6は、HEXAspCP9T/R122GがS,S体モナティンに対して制限された活性を有する酵素であることを明らかにしている。実施例8は、S.メリロティ(S. meliloti)TatAがS-MPに対して制限された活性を有するその他の酵素であることを明らかにしている。実施例18において、B.ハロデュランス(B. halodurans)のD-ア-ミノ基転移酵素が、S-MPと比べてR-MPに対してより高い選択性を有し、R,R体モナティンのより高い立体純度(stereopurity)をもたらした。また、実施例19では、混成DATがR-MPと比較してS-MPに対して制限された活性を有することが示された。
相同:用語「相同」は、本明細書中では、標準的な方法を使用して2つの配列を整列させた時に、タンパク質又は核酸が、他のタンパク質又は核酸の配列に対して比較的に高度な配列同一性を示すことを指す。例えば、標準的な方法を使用して2つの配列を整列させた時に、R体に特異的なアルドラーゼが配列番号22のアルドラーゼに対して少なくとも約50%の配列同一性を含む場合、そのR体に特異的なアルドラーゼは配列番号22のアルドラーゼに相同である。
EC番号:国際生化学分子生物学連合によって割り付けられる酵素分類番号。
モナティンのR,R体及び他の立体異性体を製造するための生合成経路
とりわけ、WO 03/091396 A2(例えば、図1〜3及び11〜13を参照のこと)に記載されているように、モナティンは、生物学的変換(すなわち、ポリペプチドを用いて基質の生成物への反応を促進するステップ)を伴う多段階経路を通してトリプトファンから製造されてもよい。説明される経路は、トリプトファンをインドール-3-ピルビン酸に生物学的に変換し、インドール-3-ピルビン酸を2-ヒドロキシ2-(インドール-3-イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(「MP」)に生物学的に変換し、そして、MPをモナティンに生物学的に変換するステップを伴う。モナティンの製造に使用される本発明の生合成経路には、以下のステップ、作用機序、及び/又は経路の1つ以上が含まれるか、あるいは、基本的にそれらから成るかもしれない。以下で説明されるステップ、作用機序、及び/又は経路は、単に、代表的であるだけである。
モナティン、又はその塩を製造する1つの方法には、(a)インドール-3-ピルビン酸をL-トリプトファンから製造し、(b)モナティン前駆体をインドール-3-ピルビン酸から製造し、そして、(c)モナティンをモナティン前駆体から製造するステップが含まれる。
トリプトファンをインドール-3-ピルビン酸に変換するのに有用な酵素は、酵素分類法(「EC」)2.6.1.27、1.4.1.19、1.4.99.1、2.6.1.28、1.4.3.2、1.4.3.3、2.6.1.5、2.6.1.-、2.6.1.1、2.6.1.21、及び3.5.1.-のメンバーが含まれる。これらのクラスには、以下の:L-トリプトファン及びα-KG(すなわち、α-ケトグルタル酸、また、2-オキソグルタラートとも呼ばれる)をインドール-3-ピルビン酸及びL-グルタマートに変換するトリプトファン・アミノ基転移酵素;D-トリプトファン及び2-オキソ酸をインドール-3-ピルビン酸及びアミノ酸に変換するD-トリプトファン・アミノ基転移酵素;L-トリプトファン及びNAD(P)をインドール-3-ピルビン酸、及びNH3とNAD(P)Hに変換するトリプトファン脱水素酵素;D-アミノ酸及びFADをインドール-3-ピルビン酸、及びNH3とFADH2に変換するD-アミノ酸脱水素酵素;L-トリプトファン及びフェニルピルビン酸をインドール-3-ピルビン酸及びL-フェニルアラニンに変換するトリプトファン-フェニルピルビン酸トランスアミナーゼ;L-アミノ酸、H2O、及び酸素を2-オキソ酸、NH3、及びH2O2に変換するL-アミノ酸酸化酵素;D-アミノ酸、H2O、及びO2を2-オキソ酸、NH3、及びH2O2に変換するD-アミノ酸酸化酵素;並びにL-トリプトファン、H2O、及びO2をインドール-3-ピルビン酸、NH3、及びH2O2に変換するD-トリプトファン酸化酵素、などのポリペプチドが含まれる。これらのクラスには、また、チロシン(芳香族)アミノ基転移酵素、アスパラギン酸アミノ基転移酵素、D-アミノ酸(又は、D-アラニン)アミノ基転移酵素、及び複数のアミノ基転移酵素活性を有し、その中の一部がトリプトファン及び2-オキソ酸をインドール-3-ピルビン酸及びアミノ酸に変換することができる広範な(複数基質)アミノ基転移酵素も含まれる。加えて、これらのクラスには、水の存在下で、トリプトファンをインドール-3-ピルビン酸及びアンモニウムに変換するフェニルアラニン・デアミナーゼが含まれる。
インドール-3-ピルビン酸のL-トリプトファンからの製造は、また、MP又はモナティンのいずれかに対するよりも、基質としてのL-トリプトファンに対してより高い活性、より高い特異性、又はその両方を有する酵素の1つ以上によって促進されてもよい。MP又はモナティンのいずれかに対するよりも、基質としてのL-トリプトファンに対してより高い活性、及び/又はより高い特異性を有する酵素の例には、これだけに制限されることなく、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アスパラギン酸アミノ基転移酵素、及びL-アミノ酸酸化酵素が含まれる。
インドール-3-ピルビン酸をMPに変換するために有用な酵素には、酵素クラスEC 4.1.3.-、4.1.3.16、4.1.3.17、及び4.1.2.-のメンバーが含まれる。これらのクラスには、例えば、2つのカルボン酸基質の縮合を触媒するアルドラーゼなどの炭素-炭素シンターゼ/リアーゼが含まれる。酵素クラスEC 4.1.3-が、求電子試薬としてオキソ酸基質(例えば、インドール-3-ピルビン酸など)を利用して炭素-炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼであるのに対して、EC4.1.2-は、求電子試薬としてアルデヒド基質(例えば、ベンズアルデヒドなど)を利用して炭素-炭素結合を形成するシンターゼ/リアーゼである。例えば、KHGアルドラーゼ(EC 4.1.3.16)及びProAアルドラーゼ(EC 4.1.3.17)が、インドール-3-ピルビン酸及びピルビン酸をMPに変換することが知られている。ProAアルドラーゼは、コマモナス・テストステロニ(Comamonas testosteroni)由来の4-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソグルタル酸アルドラーゼだけを特定すると考えられる可能性があるが、別段の記載のない限り、本明細書中において用語、ProAアルドラーゼは、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソグルタル酸アルドラーゼ活性を有するあらゆるポリペプチドも意味するために使用される。Proアルドラーゼに関する適切な例には、コマモナス・テストステロニProA(配列番号1(核酸配列)、配列番号2(アミノ酸配列))及びシノリゾビウム・メリロティ(Sinorhizobium meliloti)ProA(NCBI受入番号CAC46344)、又はコマモナス・テストステロニProA(配列番号1(核酸配列)、配列番号2(アミノ酸配列))、及び/又はシノリゾビウム・メリロティProA(NCBI受入番号CAC46344)に相同性を示す酵素が含まれる。
例えば、好適な酵素は、コマモナス・テストステロニProA(配列番号2)、及び/又はシノリゾビウム・メリロティProA(NCBI受入番号CAC46344)と少なくとも約40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、及び/又は99%のアミノ酸配列同一性があるかもしれない。MPは、また、例えば、アルドール縮合などの化学変化を使用することで作り出されてもよい。
MPのモナティンへの変換に有用な酵素には、以下の酵素クラス(EC):トリプトファン・アミノ基転移酵素(2.6.1.27)、トリプトファン脱水素酵素(1.4.1.19)、D-アミノ酸脱水素酵素(1.4.99.1)、グルタミン酸脱水素酵素(1.4.1.2〜4)、フェニルアラニン脱水素酵素(1.4.1.20)、トリプトファン-フェニルピルビン酸・トランスアミナーゼ(2.6.1.28)のメンバー、又は、例えば、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(EC2.6.1.1)、チロシン(芳香族)アミノ基転移酵素(2.6.1.5)、D-トリプトファン・アミノ基転移酵素、若しくはD-アラニン(2.6.1.21)アミノ基転移酵素などのアミノ基転移酵素ファミリー(2.6.1.-)のより一般なメンバー、が含まれる(例えば、WO 03/091396 A2の図2を参照のこと)。この反応もまた、化学変化を使用することで実施されてもよい。ケト酸(MP)のアミノ化は、アンモニアとシアノ水素化ホウ素ナトリウムを使用した還元的なアミノ化によって実施される。WO 03/091396 A2の図11〜13は、MPをモナティンに変換するのに使用される追加のポリペプチドを示し、並びにインドール-3-ピルビン酸又はトリプトファンからのモナティンの増収をもたらす。
モナティン組成物の味覚特性は、その組成物中のモナティンの様々な立体異性体の相対量を制御することによって変更できる。当該開示は、所望の割合のR,R体モナティン、及び/又はS,R体モナティンを含むモナティン組成物を製造するための経路及び物質を提供する。
例えば、本明細書中に例示されたものなどの経路によって製造されたモナティン化合物のキラリティーは、生物学的変換に使用されるpHとポリペプチドによって変更できる。生合成経路を使用してモナティンが形成される時、以下のものが考えられる。生物触媒反応において、モナティンの炭素2(前記の化学構造を参照のこと)のキラリティは、インドール-3-ピルビン酸をMPに変換する酵素によって決定される。複合酵素(例えば、EC 4.1.2.-〜4.1.3-)は、インドール-3-ピルビン酸をMPに変換する。これにより、当業者は、所望の異性体を形成する酵素を選ぶことができる。あるいは、インドール-3-ピルビン酸をMPに変換する酵素のエナンチオ特異性が、定向進化の使用を通じて修飾されるか、又は触媒抗体が、所望の反応を触媒するように設計されてもよい。MPが(酵素的に若しくは化学縮合によって)作り出された時点で、アミノ基が立体特異的に付加され得る。D-又はL-芳香族酸アミノ基転移酵素のどちらが使用されているかによって、R又はS立体配置のいずれかの炭素4(前記化学構造を参照のこと)が作り出され得る。多くのアミノ基転移酵素がL-異性体に特異的であるが、しかしながら、D-トリプトファン・アミノ基転移酵素が、特定の植物中に存在している(Kohiba及びMito、the 8th International Symposium on Vitamin B6 and Carbonyl Catalysis予稿集、Osaka, Japan 1990年)。そのうえ、D-アラニン・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.21)、D-メチオニン-ピルビン酸・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.41)、及び(R)-3-アミノ-2-メチルプロパノアート・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.61)、(S)-3-アミノ-2-メチルプロパノアート・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.22)の両方、並びにD-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素が、同定された。特定のアミノ基転移酵素は、この反応のために、C2炭素にて特定の立体配置を持つ基質だけを受け入れるかもしれない。それ故に、MPへの変換が立体特異的でない場合であっても、最終生成物の立体化学は、アミノ基転移酵素の適切な選択を通じて制御できる。反応が可逆的であるので、未反応MP(望ましくない異性体)はその構成要素に再生して戻されてもよく、そして、MPのラセミ混合物が再形成されてもよい。
ここで、図面に関して、以下のことに留意すべきである。フローチャートは、モナティンを製造するための経路の例を認定しているが、その図面に示されている経路及び本発明の方法は、別段の記載のない限り、その経路を実施するためのいずれか特定の方法に制限されることはない。例えば、経路は、生体内、生体外、又はそれらの組み合わせにおいて実施されるかもしれない。
更に、本明細書中に開示される経路の1つ以上を利用する本発明の方法の実施は、それぞれ特定された成分(例えば、反応物と酵素)が実施者によって明確に提供されることは必要とせず;むしろ、その経路が潜在的に進展できるように、成分(若しくは成分の起源)及び反応条件が、組成物(若しくは宿主細胞)又は利用可能な他のものの中に存在していことで十分である。言い換えれば、例えば、図面がインドール-3-ピルビン酸をL-トリプトファンから製造し、2-ヒドロキシ2-(インドール-3イルメチル)-4-ケト・グルタル酸(「モナティン前駆体」又は「MP」)をインドール-3-ピルビン酸から製造し、そして、モナティンをMPから製造するステップであって、ここで、各反応が適切な酵素によって促進されるステップを含む、モナティン組成物の製造過程を描く場合に、その経路の実施には、インドール-3-ピルビン酸又はMPもまた明確に提供されることなしに上記反応のそれぞれが起こるのに好適な条件下、L-トリプトファンとα-ケトグルタル酸、及び特定された反応を促進することが想定される酵素を混ぜ合わせるステップが含まれることが想定される。そのような一例において、L-トリプトファンは、α-ケトグルタル酸と反応してインドール-3-ピルビン酸を作り出すことができる。条件及び提供された酵素に依存して、L-トリプトファン反応から製造されたインドール-3-ピルビン酸は、反応してMPを形成するかもしれず、次に、条件及び提供された酵素に依存して、インドール-3-ピルビン酸反応から製造されたMPは、反応してモナティンを形成するかもしれない。
また、認定された出発物質又は酵素が違う方法で既に存在するか又は利用可能であるか、あるいは反応環境において既に存在しているか、又は利用可能である物質から合成できる場合に、本明細書中に開示された経路の1つ以上を利用する本発明の方法の実施が、認定された出発物質又は酵素を明確に提供することを実施者に要求しないことに留意するべきでもある。言い換えれば、出発物質としてL-トリプトファンを認定するいずれかの経路の実施が、L-トリプトファンの製造が起こるのに好適な条件下で、L-トリプトファンを製造できる化合物を準備し、そして、その化合物を、それらの反応が起こるのに好適であるだろう条件下で、説明された一連の反応を促進することができる酵素と混ぜ合わせるステップを含むだろうことが想定される。他の例として、また、認定された経路の実施には、説明した経路に従ってモナティンを産生するように遺伝的に操作された微生物を準備し、そして、発酵工程が起こるのに適切な条件を提供するステップが含まれることも想定される。例えば、多量のL-トリプトファン又はD-トリプトファンを自然に産生する微生物(米国特許番号第5,728,555号を参照のこと)が、モナティンへの経路の中の反応を促進(触媒)するのに使用される酵素の1つ以上を産生するか、又は過剰産生するように遺伝的に操作されてもよく、そして、上記微生物がそれによってモナティンを産生するように、適切な条件が提供されてもよい。
ここで、図1を見ると、示されたフローチャートは、R,R体モナティンを含むモナティン組成物を作製するための本発明による過程を図式的に描く。図1に示されているように、全体的な経路は、インドール-が3-ピルビン酸を形成するためのトリプトファンの反応、MPを製造するためのインドール-3-ピルビン酸の反応、そして、R,R体モナティンを含めたモナティンを製造するためのMPの反応、を伴う。
図1は、モナティンのS,S体、R,S体、及びS,R体を犠牲にして、R,R体モナティンの製造を増強するように設計されたこの全体的な経路の詳しい順列を更に説明する。具体的には、図1は:L-トリプトファン反応で利用されるアミノ基転移酵素が、MP及び4S体モナティンの反応と対比して、その反応に対してより高い活性、及び/又は特異性を有し、あるいは、酸化酵素が、4R体モナティンに対するのと比べて、L-トリプトファンに対してより高い活性、及び/又は特異性を有し;インドール-3-ピルビン酸の反応を促進する酵素が、R体に特異的なアルドラーゼであり;そして、MPの反応を促進する酵素が、広特異性D-酵素、好ましくは、MPのR異性体により効率的に働くように進化させたものである、態様について説明する。
図1は、また、より経済的にR,R体モナティンの製造をするように設計された特定の順列も説明する。例えば、図1において、−D-トリプトファン又はL-及びD-トリプトファンの組み合わせ物とは対照的なものとして−L-トリプトファンが、出発物質として認定された。(トリプトファン反応がキラリティを持たないインドール-3-ピルビン酸を形成するので)トリプトファンの特異的な形態の選択がモナティン組成物の最終的なモナティン化合物のキラリティに影響を与えない一方で、少なくともL-トリプトファンがD-トリプトファンに比べて、一般に高価でなく、且つ、より容易に入手可能であるので、一部の人々は出発物質としてL-トリプトファンを利用することを好むかもしれない。
ここで、図1に示されている最初の反応に注目すると、トリプトファンがインドール-3-ピルビン酸に変換される時に、α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、及び/又はピルビン酸のいずれか1つ以上がトリプトファンと反応してアミノ酸(それぞれ、グルタミン酸、アスパラギン酸、及びアラニン)及びインドール-3-ピルビン酸を形成する。図1は、トリプトファン出発物質がL-トリプトファンであり、そして、α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、及び/又はピルビン酸が、アミノ酸のL-異性体(例えば、それぞれ、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、及び/又はL-アラニン)を作り出す態様を描く。
図1に示されているように、R,R体モナティンの製造を高めるためのアプローチは、MP若しくはモナティンとは対照的に、トリプトファンに対してより高い特異性、より高い活性、又はその両方を有する酵素を用いてL-トリプトファンの反応を促進するステップ、又はD体に特異的な酵素を用いてMPの反応を促進するステップを伴う。WO 03/091396 A2で開示されているように、特定の酵素が、インドール-3-ピルビン酸を製造するためのトリプトファンの反応、及びモナティンを製造するためのMPのアミノ化反応を促進する。アミノ化ステップにおけるL-アミノ基転移酵素の使用はモナティンC4位におけるSキラル中心を作成するのに対して、D体酵素の使用はモナティンC4位においてDキラル中心を作成する。よって、トリプトファン反応を促進するL-アミノ基転移酵素が、また、MP反応においても活性である事例において、存在しているMPの形態によって、R,S体及びS,S体モナティンが形成される。加えて、特定のその他の酵素−L-アミノ酸酸化酵素−は、トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への反応を促進し得るだけではなく、R,R体モナティンの分解のための副次的な活性を持っているかもしれない。いくつかの態様によると、この4Rへの副次的な活性は、最小化されるか、又は排除される。モナティンの4S形態に対する酸化酵素の副次的な活性は、最終生成物からそれらを減少させるか、又は最小限に抑えるため、所望される最終的な組成物によっては望ましいかもしれない。その結果、MP又モナティンと対比して、トリプトファンを選択するL-酵素のより高い特異性、及び/又は活性が、S,S体及びR,S体モナティンと対比して、より大量のR,R体及びS,R体を作り出した。
図1に説明されている態様によると、トリプトファン反応のために好適な酵素には:インドール-3-ピルビン酸を形成するL-トリプトファンの反応を促進することができるL-アミノ基転移酵素であり、且つ、モナティンの4S異性体を形成するR-MPの反応を上回りその反応に対してより高い特異性を持つもの;インドール-3-ピルビン酸を形成するL-トリプトファンの反応を促進することができるL-アミノ酸酸化酵素であり、且つ、MPを形成するモナティンの4R異性体の反応と対比してその反応に対してより高い特異性、及び/又は活性を持つもの、並びに上記のいずれかの機能的な同等物が含まれる。より詳しく述べると、好適な酵素の限定されることのない例は、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.27)、チロシン(芳香族)アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.5)、及びL-アミノ酸酸化酵素(EC 1.4.3.2)、並びにアスパラギン酸アミノ基転移酵素活性を有する酵素由来の突然変異体から選択される。
実施例6は、それぞれ、インドール-3-ピルビン酸、及びL-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、及びL-アラニンを形成するL-トリプトファンと、α-KG、オキサロ酢酸、ピルビン酸、又はその組み合わせ物の反応を促進するのに有用な特異的酵素である、Pro 9のTyrへの置換及びArg 122のGlyへの置換を含む突然変異体HEXaspCポリペプチドを認定する。「制限された」活性を有する他の特異的酵素は、TatA、S.メリロティからのL-トリプトファン・アミノ基転移酵素である。図1に示された経路の好ましい態様によるトリプトファン反応に好適な他の酵素には、以下の特徴:実施例6のように、L-トリプトファンの比率に比べて、1/10以下の比率にてMPをアミノ基転移させる酵素、又は実施例9のように、ラセマーゼと共に使用した時に、90%を超えるモナティンの4R異性体を作り出す酵素、を有するものが含まれる。
MPからモナティンへの変換と比較して、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への変換に対して高度な特異性を持たない酵素の例には:HEXAspC(実施例6)、大形リーシュマニア(Leishmania major)広特異性アミノ基転移酵素(WO 03/091396 A2)、ブタ・アミノ基転移酵素(WO 03/091396 A2)、及びロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)TatA(実施例9)が含まれる。しかしながら、これらの酵素を、トリプトファンと対比して、R-MP、及び/又はR,R体モナティンに対して制限された活性しか持たないように、例えば、突然変異誘発を通して、進化させるかもしれない。
ここで、図1で認定された2番目の反応に注目すると、インドール-3-ピルビン酸からMPへの反応を促進する(又は、触媒する)ための酵素の選択は、製造されたS,R体モナティンと対比したR,R体モナティンの相対量に影響を及ぼす。一般に、(D-酵素がMPからモナティンへの反応を促進する時、)製造されたS-MPと対比したR-MPの相対量が大きいほど、製造されるS,R体モナティンと対比したR,R体モナティンの相対量が大きくなる。この点について有用な酵素には、E.コリ(E. coli)KHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号AAC74920.1)、バチルス(Bacillus)KHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号CAB14127.1)、又はコマモナス・テストステロニProAアルドラーゼ(配列番号1(核酸配列)、配列番号2(アミノ酸配列))のいずれか1つによって促進される時、インドール-3-ピルビン酸とピルビン酸の反応によって製造されたそれに比べて、より高いR-MP:S-MP比を作り出すあらゆる酵素が含まれる。これにより、優先的にR-MPを製造することが所望される場合には、S-MPと比較して、より大量のR-MPを製造することができる1つ以上の酵素が使用される。唯一のモナティン成分としてR,R体のモナティンを含むモナティン組成物が所望される時には、S-MPではなく選択的にR-MPを製造する酵素(「R体に特異的な酵素」)が使用されるべきである。S-MPではなく選択的にR-MPを製造するのに使用されるかもしれないR体に特異的な酵素の例は、配列番号22のアルドラーゼ、及び実施例3に示されている、シノリゾビウム・メリロティHMGアルドラーゼである。
図1は、R体に特異的なアルドラーゼがR-MPを形成するインドール-3-ピルビン酸とピルビン酸の反応を促進する特定の態様を認定している。同様に、R-MPを優先的に製造するインドール-3-ピルビン酸とピルビン酸の反応のためのアルドラーゼ、並びにE.コリKHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号AAC74920.1)、バチルスKHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号CAB14127.1)、又はコマモナス・テストステロニProAアルドラーゼ(配列番号1(核酸配列)、配列番号2(アミノ酸配列))のいずれか1つによって製造されるものに比べて、より高いR-MP:S-MP比で製造するアルドラーゼの使用も、しかしながら、想定されている。加えて、インドール-3-ピルビン酸が異なったC3起源(例えば、セリン若しくはシステイン)と反応してR-MPを形成するかもしれず、その結果、他の酵素(例えば、他のリアーゼ若しくはシンターゼ)がそのような反応を促進するかもしれないこともまた、想定される。ピルビン酸(例えば、オキサロ酢酸など)に容易に変換される他の基質もまた、使用されるかもしれない。実施例3は、優先的に又は選択的にR-MPを製造するかもしれないか、あるいは、E.コリKHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号AAC74920.1)、バチルスKHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号CAB14127.1)、又はコマモナス・テストステロニProAアルドラーゼ(配列番号1(核酸配列)、配列番号2(アミノ酸配列))、例えば、配列番号22のアルドラーゼなどのいずれか1つによって促進される時、インドール-3-ピルビン酸とピルビン酸の反応によって製造されるのと比べて、より高いR-MP:S-MP比を作り出すアルドラーゼ酵素の起源を提供する。実施例5は、また、そのような酵素を認定するためのスクリーニング方法も提供する。また、優先的に又は選択的にR-MPを製造するか、あるいは、E.コリKHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号AAC74920.1)、バチルスKHGアルドラーゼ(ジェンバンク受入番号CAB14127.1)、又はコマモナス・テストステロニProAアルドラーゼ(配列番号1(核酸配列)、配列番号2(アミノ酸配列))のいずれか1つと比べて、より多くのR-MPを製造する酵素を、現実に知られているか、又は発見されたアルドラーゼから進化させることも想定される。野生型酵素と比べて、例えば、所望の特徴を改善するために、−例えば、基質に対する酵素の活性を増大させるためなどの−酵素を進化させるため当該技術分野で知られているあらゆる技術が使用されてもよい。実施例4、5、6、7、9、10、及び11は、酵素を進化させるいくつかの技術を提供する。
ここで、図1で認定された経路の最終段階に注目すると、R,R体モナティンを形成するR-MPの反応は、広特異性D-アミノ基転移酵素、例えば、D-アラニンアミノ基転移酵素(EC 2.6.1.21、また、D-アミノ酸アミノ基転移酵素若しくはD-アスパラギン酸アミノ基転移酵素としても知られている)、又はD-アミノ酸脱水素酵素によって促進されることが示されている。先に議論されているように、MPのモナティンへの変換は、モナティンのC-4炭素にキラル中心を生み出すアミノ化反応である。Rキラル型がC-4位において所望される場合には、アミノ酸内に「R」キラル中心を作り出す酵素が使用されるべきである。限定されることのない代表的な酵素には、以下の:バチルス由来のD-アラニン・アミノ基転移酵素(実施例15-18);バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans)由来のD-アラニン・アミノ基転移酵素(実施例18)、及び立体特異性を修飾した突然変異分枝鎖アミノ基転移酵素(実施例7)が含まれる。
他の代表的な酵素には、混成D-アミノ基転移酵素が含まれる。混成D-アミノ基転移酵素は、2つの異なったアミノ酸トランスアミナーゼからの構造要素を含むことができる。そして、MPからモナティンへの変換の改善された性能のために、混成D-アミノ基転移酵素を(例えば、突然変異誘発若しくは組み換え操作により)更に進化させてもよい。そのような混成D-アミノ基転移酵素の例が、実施例19に示されている。実施例19に説明されている混成D-アミノ基転移酵素には、B.スパエリクス(B. spaericus)からのD-アミノ基転移酵素、及びG.ステアロサーモフィラス(G. stearothermophilus)からのD-アミノ基転移酵素からの要素が含まれている。R,R体モナティンは、このD-アミノ基転移酵素を利用することで製造された(実施例19)。
実施例2は、また、様々なD-アミノ基転移酵素を利用したR,R体モナティンの製造について説明する。
いくつかの態様によると、D-アミノ基転移酵素は、インドール-3-ピルビン酸に対するよりも、基質としてのR-MPに対してより高い特異性、より高い活性、又はその両方を有する。他の特定の態様において、D-アミノ基転移酵素は、基質としてのインドール-3-ピルビン酸に対して制限された活性を有する。そのような特徴を有する酵素を、例えば、実施例6に示されているように、既存の酵素から進化させるか、又は突然変異させるかもしれない。
また、いくつかの態様において、R,R体モナティンを形成するR-MPの反応は、D-アミノ酸脱水素酵素によって促進されてもよい。実施例20は、D-アミノ酸脱水素酵素(D-AADH-101〜108、BioCatalytics)を利用したR-MPからのR,R体モナティンの製造について説明する。これらのD-アミノ酸脱水素酵素を、改善された性能のために(例えば、突然変異誘発又は組み換え操作により)更に進化させるかもしれない。
図2は、R,R体モナティンの製造を標的化するための他のストラテジーを描く。図1の態様において、R-MPを形成するインドール-3-ピルビン酸の反応に使用されるアルドラーゼが、形成されるR,R体:S,R体の比に影響を及ぼすのに対して、図2の態様において、MPからモナティンへの変換を促進するD-酵素が、形成されるR,R体:S,R体の比に影響を及ぼす。図2の態様によると、非立体特異的酵素が、インドール-3-ピルビン酸のMPへの変換を促進するために使用されるかもしれず、そして、その結果、S-MPとR-MPの両方が形成される。R,R体モナティン対S,R体モナティンの所望の比を得るために、S-MPと対比してR-MPに対して適切な立体選択性を有するD-酵素が選択される(又は、それを進化させる)。唯一のモナティン成分としてのR,R体のモナティンを含むモナティン組成物が所望される場合に、S-MPからモナティンと対照的に、R-MPのモナティンへの反応を選択的に促進する酵素が好まれるだろう。例えば、バチルス・ハロデュランスのD-アミノ基転移酵素(実施例18)及びバチルス・スファエリカス(Bacillus sphaericus)とゲオバチルス・ステアロサーモフィラス(Geobacillus stearothermophilus)の両方からの構造要素を含む混成D-アミノ基転移酵素(実施例19)が、R-MPのモナティンへの反応を選択的に促進する酵素として利用されるかもしれない。
図3は、R,R体モナティンに富む組成物の製造のための他の代替経路を説明する。図3の経路は、図1の経路の変法である。図3に示される経路において、インドール-3-ピルビン酸が、L-トリプトファンから、直接的ではなく間接的に製造される。より詳しく述べると、L-トリプトファンがD-トリプトファンに変換され、そして、次に、D-トリプトファンがインドール-3-ピルビン酸に変換される。実施例4は、トリプトファン・ラセマーゼを使用した、R,R体モナティンのL-トリプトファンからの製造について説明する。
L-トリプトファンのD-トリプトファンへの変換は、トリプトファン・ラセマーゼ又はその機能的な同等物によって促進される。実施例4は、トリプトファン・ラセマーゼの見込みのある起源と、そのような酵素を同定するためのスクリーニング法を提供する。実施例4は、L-トリプトファンをD-トリプトファンに変換するのを可能にするトリプトファン・ラセマーゼの例について説明する。これらのトリプトファン・ラセマーゼを、改善された性能のために(例えば、突然変異誘発又は組み換え操作により更に進化させてもよい)。
トリプトファン・ラセマーゼの限定されることのない例には、アミノ酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.-)の相同体又は突然変異体、例えば、セリン・ラセマーゼ、が含まれ、ここで、上記相同体又は突然変異体は、L-トリプトファンをD-トリプトファンに変換できる。アミノ酸ラセマーゼがそれに由来するかもしれない起源の限定されることのない例には、例えば、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・スファエリカス、バチルス・ハロデュランス、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・リケニホルミス(Bacillus licheniformis)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、ビブリオ・コレレ(Vibrio cholerae)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccaroyces pombe)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、エンテロコッカス・ガリナルム(Enterococcus gallinarum)、ペディオコッカス・ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)、バチルス・パミルス(Bacillus pumilus)、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermenti)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、アクイフェックス・ピロフィルス(Aquifex pyrophilus)、乳酸桿菌(Lactobacilli)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、アナベナ種(Anabaena sp.)、シュードモナス・ストリアタ(Pseudomonas striata)、レンチナス・エドデス(Lentinus edodes)、スカファルカ・ブロウートニイ(Scapharca brouhtonii)、デスルフロコッカス種(Desulfurococcus sp.)、サーモコッカス種(Thermococcus sp.)、及びシュードモナス・ストリアタなどの微生物が含まれる。アミノ酸ラセマーゼがそれに由来するかもしれない起源の限定されることのない追加の例には、カイコ、ラットの脳、又はマウスの脳が含まれる。これらのアミノ酸ラセマーゼを、L-トリプトファンのD-トリプトファンへの転換における改善された性能のために(例えば、突然変異誘発若しくは組み換え操作により)進化されるかもしれない。
好適なトリプトファン・ラセマーゼがそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない例には、以下の:例えば、シュードモナス、例えば、シュードモナス・クロロラフィス(Pseudomonas chlororaphis)(シュードモナス・アウレレオファシエンス(Pseudomonas aurereofaciens))(ATCC 15926)、及びバークホルデリア・ピロシナ(Burkholderia pyrrocina)(ATCC 15958)などの微生物が含まれる。好適なトリプトファン・ラセマーゼがそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない追加の例には、例えば、タバコ植物、例えば、ニコチアナ・タバクム(Nicotiana tabacum)など、コムギ植物、例えば、トリティカム・アエスティバム(Triticum aestivum)など、ビート、トマト、シュレロチトン・イリシホリウス(Sclerochiton ilicifolius)などの植物が含まれる。
図3に示されている経路は、R,R体モナティンが所望の生成物である時であっても、生成物としてモナティンを製造する反応のようにインドール-3-ピルビン酸を製造する反応に同じ酵素が使用されることができることを含めて、一定の利益を有する。すなわち、図1で説明されている経路において、L-アミノ基転移酵素(又は、好適なL-酵素)はインドール-3-ピルビン酸を製造する反応を促進するが、D-アミノ基転移酵素はモナティンを製造する反応を促進する。対照的に、図3の経路において、インドール-3-ピルビン酸を製造する反応を促進する特定のD-アミノ基転移酵素は、また、モナティンを製造する反応も促進する。その結果、図3による経路において、モナティンを形成する反応に関して、インドール-3-ピルビン酸を形成する反応と同じ酵素を使用する要望がある時、広特異性D-アミノ基転移酵素が好まれるかもしれない。対照的に、図1、2、4、6、7、及び8による経路において、モナティンの製造は、R-MPと比べて、インドール-3-ピルビン酸に対して制限された活性、及び/又は特異性を有するD-アミノ基転移酵素が選択される時、より効果的であるかもしれない。
図3に図式的に表された経路の他の利益は、インドール-3-ピルビン酸を製造する反応と共役された反応のアミノ酸生成物が、すぐに、モナティンを製造する反応と共役された反応において基質として使用されるということである。すなわち、図1で説明されている経路において、L-トリプトファンが反応して、インドール-3-ピルビン酸を製造し、そして、同時に、オキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸、及び/又はピルビン酸が反応して、L-アミノ酸を製造する。モナティンを形成するR-MPの反応は、基質としてD-アミノ酸を利用する反応と共役されるので、示された条件下、インドール-3-ピルビン酸を形成する反応のL-アミノ酸は、R-MP反応と共役された反応における使用のために再生されない。対照的に、図3で説明されている経路において、インドール-3-ピルビン酸を形成するためのD-トリプトファンの反応は、D-アミノ酸生成物を形成する反応と共役され、そこでD-アミノ酸は、R-MP反応と共役された反応における使用のために再生される。これは、当業者に、ステップ1におけるアミノ・アクセプタの非化学量論量を使用すること、及びステップ3のためのアミノ・ドナーがステップ1で製造されることを許容する。
図4及び5は、図1に示されていた経路の追加の修飾について説明する。これらの修飾は、MPからモナティンへの反応に共役された反応のアミノ酸反応物を用いたL-トリプトファン・アミノ基転移反応と共役された反応によって形成されたアミノ酸生成物を再生することに向けられている。
図4を見ると、再生は、L-アミノ酸のD-アミノ酸への変換を促進する酵素を提供することによって達成され、そして、その逆もまた同様である。より詳しく述べると、図4に示されているように、α-KGが反応してL-グルタミン酸を形成する場合に、L-トリプトファンが反応してインドール-3-ピルビン酸を形成する時に、L-グルタミン酸のD-グルタミン酸への変換を促進し、そして、その逆もまた同様であるグルタミン酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.3)又はその機能的な同等物が提供されてもよい。そのような一例において、インドール-3-ピルビン酸の製造に伴う生成物として形成されるL-グルタミン酸は、D-グルタミン酸への変換によって一部が除去され、次に、L-グルタミン酸の変換から形成されたD-グルタミン酸が、MPからモナティンへの反応と共役された反応のための基質として利用可能である。同様に、D-グルタミン酸の反応で形成されたα-KGが、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への反応と共役された反応のための基質として利用可能である。
グルタミン酸ラセマーゼがそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない例には、ペディオコッカス・ペントサセウス、バチルス・パミルス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ブレビス、E.コリ、アクイフェックス・ピロフィルス、及びバチルス・ズブチリスを含む。より詳しく述べると(同様に、限定されることなく)、グルタミン酸ラセマーゼは、例えば、ペディオコッカス・ペントサセウスmurI遺伝子(ジェンバンク受入番号L22789)又はラクトバチルス・ブレビス・グルタミン酸ラセマーゼなどの核酸から発現されるかもしれない。
オキサロ酢酸が反応してL-アスパラギン酸を形成する場合には、L-アスパラギン酸が反応してインドール-3-ピルビン酸を形成する時に、アスパラギン酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.13)又は機能的な同等物が、L-トリプトファンからD-アスパラギン酸への変換を提供する。そのような一例において、インドール-3-ピルビン酸を製造するのと同じ反応において形成されるL-アスパラギン酸は、D-アスパラギン酸への変換によって一部が除去され、次に、そのD-アスパラギン酸が、MPからモナティンへの反応と共役された反応のための基質として利用可能である。同様に、D-アスパラギン酸の反応で形成されたオキサロ酢酸は、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への反応と共役された反応のための基質の役割を果たすために利用可能である。
アスパラギン酸ラセマーゼ活性を有する好適な酵素の限定されることのない例には、ASPR-101(BioCatalytics, Inc., 129N. Hill Ave, Suite 103, Pasadena, CA 91106-1955)及びL-アスパラギン酸からD-アスパラギン酸への変換を促進することができるアミノ酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.-)の相同体又は突然変異体が含まれる。
アスパラギン酸ラセマーゼがそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない例には、以下の:デスルフロコッカス、サーモコッカス、二枚貝軟体動物であるスカファルカ・ブロウートニイ、アシネトバクター(Acinetobacter)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)、アルカエオグロバス(Archaeoglobus)、バチルス、ボルデテラ(Bordetella)、ブラジリゾビウム(Bradyrhizobium)、ブレヴィオバクテリウム(Brevibacterium)、バークホルデリア、カンピロバクター(Campylobacter)、カンジダ(Candida)、カウロバクター(Caulobacter)、クロストリジウム(Clostridium)、デスルフィトバクテリウム(Desulfitobacterium)、デスルフォタレア(Desulfotalea)、エンテロコッカス、エルビニア(Erwinia)、エシェリキア、フェロプラズマ(Ferroplasma)、ヘリコバクター(Helicobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、ラクトバチルス、マンヘイミア(Mannheimia)、メディカゴ・(Medicago)、メソリゾビウム(Mesorhizobium)、メタノコッカス(Methanococcus)、メタノサルシナ(Methanosarcina)、オーシャノバチルス(Oceanobacillus)、オエノコッカス(Oenococcus)、ペディオコッカス、ポラリバクター(Polaribacter)、シュードモナス、ピロコッカス(Pyrococcus)、ラルソニア(Ralsonia)、シゲラ(Shigella)、シノリゾビウム、サルモネラ(Salmonella)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、サーモアナエロバクター(Thermoanaerobacter)、ビブリオ、ウォリネラ(Wolinella)、キサントモナス(Xanthomonas)、キサントバクター(Xanthobacter)、エルシニア(Yersinia)、及びザイモモナス(Zymomonas)が含まれる。
ピルビン酸が反応してL-アラニンを形成する場合には、L-トリプトファンが反応してインドール-3-ピルビン酸を形成する時に、アラニン・ラセマーゼ又は機能的な同等物が、L-アラニンをD-アラニンに変換するために提供されてもよい。そのような一例において、インドール-3-ピルビン酸を製造するのと同じ反応において形成されるL-アラニンは、D-アラニンへの変換のおかげで除去され、次に、L-アラニンの変換から形成されたD-アラニンが、MPからモナティンへの反応と共役された反応のための基質として機能するように利用可能である。同様に、D-アラニンの反応で形成されたピルビン酸は、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への反応と共役された反応のための基質として機能するように利用可能である。
好適なアラニン・ラセマーゼの限定されることのない例には、実施例4に記載のA8936(Sigma、PO Box 14508, St. Louis, MO, 63178)及びゲオバチルス・ステアロサーモフィラス・アラニン・ラセマーゼが含まれる。
アラニン・ラセマーゼがそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない例には、以下の:ブルセラ・アボルタス(Brucetta abortus)、ストレプトコッカス・フェカリス(Streptococcus faecalis)、サルモネラ・ティフィムリウム、エシェリキア・コリ、バチルス・ズブチリス、シュードモナス・エルギノーサ、ビブリオ・コレレ、シゾサッカロマイセス・ポンベ、バチルス・セレウス、及びレンチナス・エドデスが含まれる。
実施例9及び12は、上記ラセマーゼの使用、所望のモナティン生成物の比率の増加に対するそれらの影響について説明し、且つ、ラセマーゼ酵素の見込みのある起源を提供する。
図5を見ると、立体反転アミノ基転移酵素が、R-MPのモナティンへの反応を促進するために使用されている。通常、R,R体モナティン(又は、S,R体モナティン)を形成するためのR-MP(又は、S-MP)反応は、D-アミノ酸の反応と共役されるが、立体反転アミノ基転移酵素は、L-アミノ酸を使用した、R,R体モナティン(又は、S,R体モナティン)を形成するためのR-MP(又は、S-MP)の共役反応を促進するかもしれない。このように、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素反応のL-アミノ酸生成物は、MPのモナティンへのアミノ基転移のための基質として使用されるかもしれず、そして、MPからモナティンへの反応と共役された反応の生成物(すなわち、オキサロ酢酸、ピルビン酸、及び/又はα-KG)が、L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への反応と共役された反応のための出発物質として使用されてもよい。使用されるかもしれない立体反転アミノ基転移酵素に関する限定されることのない例には、D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.72、また、D-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素としても知られている)由来の突然変異体、D-メチオニン・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.41、また、D-met-アミノ基転移酵素及びD-メチオニン-ピルビン酸アミノ基転移酵素としても知られている)、及びその相同体が含まれる。D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素の突然変異体がそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない例には、例えば、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)LW-4及びシュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)ST-201などのシュードモナスが含まれる。D-メチオニン・アミノ基転移酵素がそれに由来するかもしれない見込みのある起源の限定されることのない例には、カリフラワー及びラッカセイが含まれる。
実施例10及び11は一緒に、立体反転酵素の見込みのある起源、及びそのような酵素の作製方法を提供する。前記実施例は、また、そのような酵素を同定するためのスクリーニング法も提供する。また、そのような酵素を、天然に知られているか、又は発見された立体反転酵素から進化させるかもしれないことも想定される。限定されることのない例として、立体反転アミノ基転移酵素は、D-アミノ酸アミノ基転移酵素の相同体若しくは突然変異体、又はアミノ酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.-)の相同体若しくは突然変異体であってもよい。
図6及び7は、また、図1の経路に対する修飾について図解する。図6及び7において図解された経路は、不可逆反応を用いたトリプトファン反応の副産物を取り除くことによって、そして、場合によっては、MP反応に基質を提供することによって、平衡反応を(すなわち、モナティン製造の方向に向かって)推進する方法を提供する。
図6を見ると、示された経路は、別のL-アミノ酸とCO2に変換することによって、トリプトファン反応と共役された反応のL-アミノ酸生成物を取り除き、次に、新たに形成されたL-アミノ酸をD-アミノ酸に変換することによってMP反応と共役された反応のための基質を提供する。具体的には、L-トリプトファンが、オキサロ酢酸と一緒に反応して、インドール-3-ピルビン酸とL-アスパラギン酸を形成することが示された。アスパラギン酸4-デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.12)又は機能的な同等物が、L-アスパラギン酸のL-アラニンと二酸化炭素への変換を促進するために使用され、そして、アラニン・ラセマーゼ活性を有する酵素が、L-アラニンのD-アラニンへの変換を促進するために使用され、そこで、D-アラニンは、R-MPのモナティンへの変換のためのアミノ・ドナーとしての役割を果たすかもしれない。
図7を見ると、示された経路は、トリプトファン反応と共役された反応のL-アミノ酸生成物を取り除くための追加の方法を図解する。前記図面において示される態様は、例えば、揮発性(例えば、二酸化炭素)により、又は非反応性の最終生成物への自発的な変換によって、逆方向に反応するのに利用できない副産物を製造する。そのようなアプローチの例には、α-KGがL-トリプトファンと一緒に反応してL-グルタミン酸を製造しする態様であって、そして、所望であれば、グルタミン酸脱炭酸酵素(EC 4.1.1.15)又は機能的な同等物が、(副産物としての二酸化炭素を伴う)L-グルタミン酸の4-アミノブタン酸への変換を促進するために提供されてもよい上記態様が含まれる。L-グルタミン酸デカルボキシラーゼがそれに由来する見込みのある起源の限定されることのない例には:クロストリジウム・パーフリンゲンス(Clostridium perfringens)、C.ウェルチ(C. welchii)、又はE.コリが含まれる。
順方向に(モナティン製造の向きに)トリプトファン反応を推進するためのそのようなアプローチに関する他の例には、オキサロ酢酸がL-トリプトファンを利用し、且つ、オキサロ酢酸がL-アスパラギン酸に変換される反応における混合基質として利用される反応であって、所望であれば、アスパラギン酸デカルボキシラーゼ(EC 4.1.1.11)又は機能的な同等物が(副産物としての二酸化炭素を伴う)L-アスパラギン酸のβ-アラニンへの変換を促進するために提供されてもよい上記反応が含まれる。
図8を見ると、示された経路は、トリプトファン反応と共役された反応のL-アミノ酸生成物を、MP反応と共役された反応のための基質に変換するための更に追加の方法を図解している。具体的には、α-KGがL-トリプトファンと同じ反応で利用され、且つ、そこで、α-KGがL-グルタミン酸を形成する場合には、L-アラニン・アミノ基転移酵素活性を有する酵素とピルビン酸が提供されてもよく、ここで、上記L-アラニン・アミノ基転移酵素は、L-アラニンを形成するピルビン酸とL-グルタミン酸の反応を促進する。アラニン・ラセマーゼ又は機能的な同等物は、また、L-アラニンのD-アラニンへの変換を促進するために提供され、そこで、D-アラニンがモナティン及びピルビン酸を形成するためのMPと一緒に基質として使用されてもよい。実施例12を参照のこと。
R,R体モナティンを含めたモナティン、又はR体モナティン前駆体を含めたモナティン前駆体を製造するための生合成経路において必要とされる1つ以上の化合物、及び/又は酵素を含む混合物が、前記の生合成経路、及び以下の実施例に記載されている反応において暗に説明されている。
試験管内における製造について、本明細書中に記載の生合成経路のいずれか若しくは全て、又は本明細書中に記載の経路における個別のステップが、試験管内の溶液中、若しくは生体内、宿主細胞内、連続的に、又は平行して、実施されてもよい。本発明の方法が試験管内において実施される1つ以上の反応を利用する時、試験管内において実施される上記生合成反応は、水性反応媒質又は溶液の状態の混合物により上記反応のための所望の成分を混ぜ合わせることによって実施されてもよい。そのように形成された反応混合物は、合成されるべき所望の生成物に十分な時間、維持される。
更に、1つ以上の酵素の活性が、その1つ以上の酵素の精製中の補助因子の連続的な使用を通して高められてもよい。例えば、B.スファエリカス(B. sphaericus)のD-アラニン・アミノ基転移酵素を精製する時に、ピリドキサール-5’-リン酸が含まれることで高められた活性をもたらす(実施例14)。
本発明の経路の中の反応の1つ以上が試験管内において実施されるべき時に、本明細書中に記載の生合成経路で利用された酵素のいずれか又は全てが、必要に応じて、固体支持体上に固定されてもよい。そのような固体支持体の例には、エポキシ、アルデヒド、キレート剤、又は1級アミン基を含むものが含まれる。好適な固体支持体の具体例には、これだけに制限されることなく、Eupergit(登録商標)C(Rohm and Haas Company, Philadelphia, PA)樹脂ビーズ及びSEPABEADS(登録商標)EC-EP(Resindion)が含まれる。実施例21は、Eupergit(登録商標)C樹脂ビーズ上へのB.スファエリカスのD-アラニン・アミノ基転移酵素の固定化について図解する。実施例22は、Eupergit(登録商標)C樹脂ビーズ上へのシノリゾビウム・メリロティProAアルドラーゼの固定化について図解する。これらの固定化酵素を利用したR,R体モナティンの製造は、実施例23に示されている。
本明細書中に記載の生合成経路に示された個々の反応は、単独の酵素によって、又は同時に作用する複合酵素の混合物によって促進(触媒)されてもよい。
本発明の方法は、所望の割合(%)のR,R体モナティン、又は最低限の所望の割合(%)のR,R体モナティンを含むモナティン組成物を作製するのに使用される。先に説明した反応ステップに加えて、特定の反応ステップが、2つ以上の酵素によって、例えば、酵素の混合物によって、得られた組成物又は調製物が、例えば、最低限の所望の割合(%)のR,R体モナティン若しくは最大限の所望の割合(%)のR,R体モナティンを含めた、所望の割合(%)のR,R体モナティンを含むように触媒されてもよい。あるいは、モナティンは、そのような所望の割合(%)のR,R体モナティンを含む組成物又は調製物の製造と組み合わされた本発明の方法による2つの別々の操作された経路によって作製される。
指定されたクラスの酵素の中の酵素が例として利用される時に、その反応において少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、82%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、及び99%の相同性を有する酵素も利用できると期待される。例えば、配列番号22のアルドラーゼに対して、少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、82%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、及び99%の相同性を有するR体に特異的なアルドラーゼが、R,R体モナティンを得るための先に説明された経路のいずれかにおいて利用できた。
更に、指定されたクラスの酵素の中の酵素が例として利用される時に、同じ活性を持つその酵素の断片もまた、その反応に利用できると期待される。例えば、同様にアルドラーゼとして機能する配列番号22のアルドラーゼの断片を、R,R体モナティンを得るための先に説明した経路のいずれかにおいて利用できた。
本明細書中に開示したポリペプチド又は生合成経路の1つ以上を利用して製造されるモナティンは、通常、製造された総モナティン重量に対して、少なくとも約0.5〜30%のR,R体モナティンが存在する。他の態様において、本明細書中に開示したポリペプチド又は生合成経路の1つ以上を利用して製造されたモナティンは、製造された総モナティン重量に対して30%を超えるR,R体モナティンが存在し;例えば、R,R体モナティンが、製造された総モナティンの40%、50%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%である。あるいは、所望の割合(%)のR,R体モナティンが存在する調製物をもたらすように、様々な量の2種類以上のモナティン調製物が混ぜ合わせられてもよい。例えば、30%のR,R体モナティンが存在するモナティンは調製物は、90%のR,R体モナティンが存在するモナティン調製物と混ぜ合わせられ;等量の30%と90%のR,R体モナティン調製物が混ぜ合わせられた場合、得られたモナティン調製物には60%のR,R体モナティンが存在するだろう。
本明細書中に開示されたポリペプチド又は生合成経路の1つ以上を利用して製造されたモナティン又は(モナティン前駆体を含めた)中間体が、その反応の成分から精製されるかもしれない。1つの態様において、モナティン又は、例えば、モナティン前駆体などの中間体は、単に、そこで合成された酵素調製物から精製されるべき物質を取り除くことによって精製されるかもしれない。
他の態様において、得られた「精製された」組成物又は調製物が総有機化合物の少なくとも約5〜60重量%のモナティンであるように、中間体、モナティン前駆体、又はモナティンは、それが合成された調製物から精製される。他の態様において、モナティン又は、例えば、モナティン前駆体などの中間体は、総有機化合物の少なくとも約70重量%、80重量%、90重量%、95重量%、又は99重量%の純度まで精製されるかもしれない。
本明細書中に開示されたポリペプチド又は生合成経路の1つ以上を利用して製造されたモナティン又は(モナティン前駆体を含めた)中間体は、当業者に知られているいずれかの方法によって反応の成分から精製されるかもしれない。1つの態様において、モナティン又は中間体は、実施例13に記載されているように精製されるかもしれない。最適なことには、精製されたモナティン又は中間体を、所望の純度が達成されるまで繰り返して再結晶させるかもしれない。
実施例1
モナティン、トリプトファン、アラニン、及びグルタミン酸の検出
この実施例は、モナティン、トリプトファン、及びグルタミン酸の存在を検出するのに使用される方法を説明する。それは、また、モナティンの4つの立体異性体の分離及び検出のための方法も説明する。
モナティン及びトリプトファンのLC/MS/MS多重反応モニタリング(「MRM」)分析
生体外若しくは生体内における生化学反応に由来するモナティン及びトリプトファンの混合物の分析を、クロマトグラフとMicromass Quattro Ultima三連四重極質量分析計の間に連続的に配置されたWaters 996フォトダイオード・アレイ(PDA)吸収度モニターを有するWaters 2795液体クロマトグラフを含むWaters/Micromass液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC/MS/MS)装置を使用して実施した。LC分離を、40℃にて、Xterra MS C8逆相クロマトグラフィーカラム、2.1mm×250mmを使用して行った。LC移動相は、a)0.05%(v/v)のトリフルオロ酢酸を含む水、及びB)0.05%(v/v)のトリフルオロ酢酸を含むメタノールから構成された。
勾配溶出は、実行の間に2分の再平衡化時間を伴った、直線的に5%のBから35%のB、0〜4分、直線的に35%のBから60%のB、4〜6.5分、直線的に60%のBから90%のB、6.5〜7分、均一濃度の90%のB、7〜11分、直線的に90%のBから95%のB、11〜12分、直線的に95%のBから5%のB、12〜13分であった。流速は0.25mL/分であり、そして、PDA吸収度を、200nm〜400nmで観察した。ESI-MSに関する全てのパラメーターを、着目の分析物質のプロトン化分子イオン([M+H]+)の発生、及び独特の断片イオンの製造に基づいて最適化及び選択をした。以下の機器パラメータ:キャピラリ:3.5kV;コーン:40V;Hex 1:20V;開口部:0V;Hex 2:0V;ソース温度:100℃;脱溶媒和温度:350℃;脱溶媒和ガス:500L/h;コーン・ガス:50L/h;低質量分解能(Q1):12.0;高質量分解能(Q1):12.0;イオン・エネルギー:0.2;入射口:−5V;コリジョン・エネルギー:8;出口:1V;低質量分解能(Q2):15;高質量分解能(Q2):15;イオン・エネルギー(Q2):3.5;増倍管:650を、モナティン及びトリプトファンのLC/MS/MS多重反応モニタリング(MRM)分析に使用した。5つのモナティンに特異的な親から娘へのMRM遷移を、生体外及び生体内の反応におけるモナティンの特異的な検出のために使用する。観察された遷移は、293.1から158.3へ、293.1から168.2へ、293.1から211.2へ、293.1から230.2へ、293.1から257.2へ、である。トリプトファンを、204.7から146.4へのMRM遷移で観察する。モナティン及びトリプトファンの内部標準定量化について、4つの異なった比率の、各分析物質対d5-トリプトファン及びd5-モナティンを含む4つのキャリブレーション標準を分析する。これらのデータを、線形最小二乗解析にかけて、モナティン及びトリプトファンに関する検量線を形成する。各サンプルに、定量のd5-トリプトファン及びd5-モナティン(d5-モナティンをWO 03/091396 A2からの方法によりd5-トリプトファンから合成した)を加え、そして、応答比(モナティン/d5-モナティン;トリプトファン/d5-トリプトファン)を先に説明した検量線と共に使用して、混合物中のそれぞれの分析物の量を計算した。
モナティンの精密質量測定
高分解能MS分析法を、Applied Biosystems-Perkin Elmer Q-Starハイブリッド四極子/飛行時間型質量分析装置を使用することで行った。プロトン化モナティンについて計測した質量は、内部質量キャリブレーション標準物質としてトリプトファンを使用した。元素組成C14H17N2O5に基づくプロトン化モナティンの理論質量は、293.1137である。実施例2及び3に記載されている生体触媒による過程を使用することで製造されたモナティンは、293.1144の実測質量を示した。これは、酵素的に製造したモナティンの元素組成に関する確証を提供する百万分の2(「ppm」)未満の質量測定誤差である。
モナティンのキラルLC/MS/MS(「MRM」)計測
生体外及び生体内における反応によるモナティンの立体異性体分布の測定を、1-フルオロ-2,4-ジニトロフェニル-5-L-アラニン・アミド(「FDAA」)での誘導体化と、それに続く逆相LC/MS/MS MRM計測によって成し遂げた。
FDAAを用いたモナティンの誘導体化
50μLのサンプル又は標準物質に、200μLのアセトン中、FDAAの1%溶液を加えた。40μLの1.0M重炭酸ナトリウムを加え、そして、時々混合しながら、その混合物を40℃で1時間インキューベートした。サンプルを、取り出し、冷まし、そして、20μLの2.0M HClで中和した(緩衝化された生物学的混合物の中和を達成するためには、より多くのHClが必要とされるかもしれない)。脱気が完了した後に、サンプルをLC/MS/MS分析のために準備した。
生体外及び生体内の反応によるモナティンの立体異性体分布の測定のためのLC/MS/MS多重反応モニタリング
先に説明したLC/MS/MS装置を使用して、分析を実施した。モナティン(具体的にはFDAA-モナティン)の4種類の立体異性体の全てを分離できるLC分離を、40℃にて、Phenomenex Luna 2.0×250mm(3μm)C18逆相クロマトグラフィーカラムにより実施した。LC移動相は、A)0.05%(質量/容量)の酢酸アンモニウムを含む水、及びB)アセトニトリルから構成された。溶離は、実行の間に8分の再平衡化の時間を伴う、13%のBにて均一濃度、0〜2分、直線的に13%のBから30%のB、2〜15分、直線的に30%のBから80%のB、15〜16分、80%のBにて均一濃度、16〜21分、そして、直線的に80%のBから13%のB、21〜22分であった。流速は0.23mL/分であり、そして、PDA吸収度を、200nm〜400nmで観察した。ESI-MSに関する全てのパラメーターを、FDAA-モナティンの脱プロトン化分子イオン([M−H]-)の発生、及び独特の断片イオンの製造に基づいて最適化及び選択した。
以下の機器パラメータ:キャピラリ:2.0kV;コーン:25V;Hex 1:10V;開口部:0V;Hex 2:0V;ソース温度:100℃;脱溶媒和温度:350℃;脱溶媒和ガス:500L/h;コーン・ガス:50L/h;低質量分解能(Q1):12.0;高質量分解能(Q1):12.0;イオン・エネルギー:0.2;入射口:−5V;コリジョン・エネルギー:20;出口:1V;低質量分解能(Q2):12;高質量分解能(Q2):12;イオン・エネルギー(Q2):3.0;増倍管:650を、マイナス・イオンESI/MSモードによるモナティンのLC/MS分析に使用した。3つのFDAA-モナティンに特異的な親から娘への遷移を、生体外及び生体内の反応によるFDAA-モナティンを特異的に検出するために使用する。前記遷移は、543.6から268.2へ、543.6から499.2へ、及び543.6から525.2へ、である。FDAA-モナティン立体異性体の識別は、精製された合成モナティン立体異性体と比較したクロマトグラフィー保持時間、及び質量分析データに基づいている。
グルタミン酸及びアラニンを含めたアミノ酸の液体クロマトグラフィー-ポストカラム蛍光検出
生体外及び生体内の反応におけるグルタミン酸の測定のためのポストカラム蛍光検出を用いた液体クロマトグラフィーを、Waters 474走査型蛍光検出器を併用したWaters 2690 LCシステム又は同等物、及びWatersポストカラム反応モジュールにより実施した。LC分離を、60℃にて、Interaction-Sodiumを充填したイオン交換カラムにより実施した。移動相AはPickering Na 328バッファー(Pickering Laboratories, Inc.;Mountain View, CA)であった。移動相Bは、Pickering Na 740バッファーであった。勾配溶出は、サンプル・マトリックスによって、実行の間に少なくとも8分の再平衡化の時間を伴う、0%のBから100%のB、0〜20分、100%のBにて均一濃度、20〜36分、そして、直線的に100%Bから0%B、36〜37分、であった。移動相の流速は0.5mL/分であった。OPAポストカラム誘導体化溶液の流速は0.5mL/分であった。蛍光検出器の設定は、EX 338nm及びEm 425nmであった。ノルロイシンを、分析の内部標準として利用した。アミノ酸の識別は、精製した標準物質についてのクロマトグラフ保持時間データに基づく。
LC/MS/MSによるL-及びD-アミノ酸の検出
生化学反応実験からのL-及びD-アミノ酸、例えば、トリプトファン、グルタミン酸、及びアスパラギン酸などの混合物を含むサンプルを、最初に、ギ酸で処理して、タンパク質を変性させた。次に、サンプルを、遠心分離し、そして、LC/MS/MS分析の前に0.45μmのナイロン・シリンジ・フイルターを通して濾過した。L-及びD-アミノ酸の識別は、保持時間と質量選択検出に基づいた。LC分離を、Waters 2690液体クロマトグラフィー・システム、及び45℃に設定されたカラム温度のASTEC 2.1mm×250mm Chirobiotic TAGクロマトグラフィー・カラムを使用することによって成し遂げた。LC移動相A及びBは、それぞれ、0.25%の酢酸、及びメタノール中、0.25%の酢酸であった。0.25ml/分の流速を持つ、60%の移動相Aと40%のBから成る均一濃度の溶出を、グルタミン酸に関して設定し;一方で、0.3ml/分の流速を持つ、30%の移動相Aと70%のBを、アスパラギン酸及びトリプトファンに関して設定した。
L-及びD-アミノ酸の分析のための検出システムは、Waters 996フォトダイオード・アレイ(PDA)検出器、及びMicromass Quattro Ultima三連四重極質量分析計を含んでいた。195〜350nmを走査するPDAを、クロマトグラフィー・システムと質量分析計の間に連続的に配置した。陽性エレクトロスプレー・イオン化モード(+ESI)で作動するMicromass Quattro Ultima三連四重極質量分析計のパラメーターを、以下の:キャピラリ:3.0kV;コーン:20V;Hex 1:15V;開口部:1V;Hex 2:0V;ソース温度:100℃;脱溶媒和温度:350℃;脱溶媒和ガス:530L/h;コーン・ガス:30L/h;低質量Q1分解能:12.5;高質量Q1分解能:12.5;イオン・エネルギー1:0.2;入射口:−5;コリジョン:8;出口1:10;低質量Q2分解能:12.5;高質量Q2分解能:12.5;イオン・エネルギー2:0.5;増倍管:650V、のとおり設定した。多重反応モニタリング(MRM)モードによるMS/MS実験を、204.70から146.50、147.8から84.2、147.8から102.1、134.00から74.30、及び134.00から88.2の反応遷移を選択的に観察するために設定した。トリプトファン、グルタミン酸、及びアスパラギン酸の定量化は、それぞれ、m/z=146.5、m/z=102.1、及びm/z=88.2のシグナル応答に基づいた。
標準物質及びアッセイのためのモナティン及びモナティン前駆体(「MP」)の製造
モナティンの製造
R,R体とS,S体モナティンのラセミ体混合物を、米国特許番号第5,128,482号に記載されているように合成によって製造した。
R,R体とS,S体モナティンを、誘導体化及び加水分解ステップによって分離した。簡単に言えば、モナティンのラセミ体混合物を、エステル化し、遊離アミノ基をCbzでブロックし、ラクトンを形成し、そして、そのS,Sラクトンを固定されたプロテアーゼ酵素を使用することで選択的に加水分解した。モナティンもまた、Bassoli, A.ら、Eur. J. Org. Chem., 5:1652-1658ページ(2005年)に記載されているように分離されてもよい。
MPの製造
R-MPを、アミノ・アクセプタとしてピルビン酸ナトリウムを使用して、0.1Mのリン酸カリウム・バッファー中、AT-103広範囲D-アミノ基転移酵素(BioCatalytics)を使用したR,R体モナティンのアミノ基転移によって製造した。S-MPを、アミノ・アクセプタとしてピルビン酸ナトリウムを使用して、0.1Mのリン酸カリウム・バッファー中、AT-102 L-アミノ基転移酵素(BioCatalytics)を使用したS,S体モナティンのアミノ基転移によって製造した。両方の反応を、30℃にて、且つ、約8.0〜8.3のpHにて約20時間、行った。両方の化合物を、水で溶出する、Rohm and Haas(Philadelphia, PA)の疎水性樹脂(XAD(商標)1600)を用いた実験規模のHPLCを使用することで精製した。90%を超える純度のモナティン前駆体を含むサンプルを、回収し、そして、凍結乾燥した。
実施例2
インドール-3-ピルビン酸からのモナティンの製造
AT-103トランスアミナーゼは、BioCatalytics(Pasadena, CA)から購入されたアミノ転移酵素ライブラリーの一部であり、そして、その酵素を、C.テストステロニからのProAアルドラーゼを使用した共役反応におけるモナティンの製造に関して試験した。アルドラーゼを、WO 03/091396 A2に記載されているように調製した。AT-103は、アミノ酸ドナーとしてD-アミノ酸(例えば、D-グルタミン酸、D-アスパラギン酸、又はD-アラニンなど)を必要とするバチルス種からの広特異性D-トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.21)である。酵素及び追加の成分/基質を、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、100mMのアミノ・ドナー、及び0.1mMのピリドキサール-5’-リン酸(「PLP」)を含む、キットにより提供された反応バッファーに直接追加した。1 mLの反応バッファーに対して、以下の:4mgのインドール-3-ピルビン酸、20mgのピルビン酸、細胞抽出物として調製されたProA約50μg、1μLの2M MgCl2、及び2mgのアミノ基転移酵素を加えた。反応を二重反復試験で実施した。反応物を、緩やかに振盪(100rpm)しながら、30℃で一晩、インキューベートした。サンプルを、濾過し、そして、実施例1に記載の逆相LC/MS/MS分析に供した。結果は、約370μg/mLのモナティンがAT-103酵素を使用することで製造されることを示した。クロマトグラフィー分離中に分離される2つの立体異性体プールのピーク面積に基づいたS,R体/R,S体に対するR,R体/S,S体モナティンの比を測定するために、結果を更に分析した。AT-103によって製造された総モナティンに関して、混合異性体と比較して、69%がR,R体/S,S体モナティンであった。この酵素は、D-アミノ酸に対して広特異性を有することが知られているWO 03/091396 A2に記載のバチルス・ズブチリスDAT酵素に相同である。D-アミノ基転移酵素が予想どおりに主にR,R体モナティンを、そして、いくらかのS,R体モナティンを作り出したことを立証した、キラル分析を実施例1に記載のFDAA方法論を使用して実施した。S,S体モナティン又はR,R体モナティン、及び基質としてα-ケトグルタル酸を用いた更なるアミノ基転移実験は、BioCatalytics酵素が予想どおり4位の炭素におけるD-立体配置に対して高度に選択的であることを立証した。これらの実験において、S,S体モナティン及び基質としてのα-ケトグルタル酸を用いた反応において、グルタミン酸は全く検出されなかった。
AT-103(広範囲D-トランスアミナーゼ)とProAアルドラーゼを用いた共役反応における副産物として製造されたS,S体モナティン又はR,S体モナティンの量を減少させるために、アルドラーゼを、製造業者のプロトコール(Novagen, Madison, WI)に従って、His-Bindカートリッジを使用することで精製した。精製酵素は、好ましくは、細胞抽出物に存在する可能性がある野生型L-アミノ基転移酵素活性(例えば、天然のE.コリ AspC若しくはTyrB活性など)を含むべきではない。His-Bind溶出液を、PD-10カラム(G25 Sephadex、Amersham-Pharmacia)を使用して脱塩して、イミダゾールを取り除き、そして、50mMのTris-Cl、pH7中に溶出した。実験を、1mLの容量で二重反復試験によって行われ、そして、それには、100mMのTris-ClバッファーpH7.8、50μgのProAアルドラーゼ、4mgのインドール-3-ピルビン酸、1又は2mgのD-アミノ基転移酵素、200mMのピルビン酸ナトリウム、2mMのMgCl2、3mMのリン酸カリウム、0.1mMのPLP、及び14.7mgのD-グルタミン酸が含まれた。試験管を、緩やかに振盪しながら、30℃でインキューベートした。2時間の時点で取り出し、−20℃ですぐに冷凍した。2時間の時点で、NaOHを使用して、pHを5から7〜8に調整し、そして、アッセイ物を一晩、インキューベートした。サンプルを、濾過し、そして、実施例1で記載されているように、モナティンについて分析した。2時間サンプルには、検出可能な量のモナティンがなかったが、おそらく、低いpHが原因であろう。1mgのD-アミノ基転移酵素を使用した時、一晩サンプルは、約190ng/mLのモナティンを含み、そして、約84%がR,R体モナティンであり、及び16%がS,R体モナティンであった。2mgのD-アミノ基転移酵素を使用した時、540ng/mLのモナティンを製造し、約71%がR,R体モナティンであった。
同様の実験を、100mMのリン酸カリウムpH7.5、0.1mMのPLP、及び100mMのD-グルタミン酸を含むBiocatalyticsアミノ基転移酵素バッファーを使用して行った。固体のインドール-3-ピルビン酸とD-アミノ基転移酵素を、前述のとおり加えた。ProAアルドラーゼ(50μg)、MgCl2、及び50mMのピルビン酸を、原液から加えた。アッセイ物を、前述のとおり処理したが、この場合、pH調節を全く必要としなかった。負の対照を、モナティンを含まないBioCatalyticsによって提供された酵素とバッファーだけを用いて行った。実験結果を表1に示す。
Figure 2008538932
リン酸バッファー中におけるモナティンの製造は、Tris緩衝化した系のそれに比べて明らかに高い。
WO 03/091396 A2からのクローン化B.ズブチリスDATの活性をBioCatalytics酵素(AT-103)と比較するために、追加のアッセイを行った。B.ズブチリスdat遺伝子もまた、pET30a内にサブクローニングして、his-6タグを取り除いた。WO 03/091396 A2に記載されているように、非タグ付与及びタグ付与酵素をBL21(DE3)中で産生させた。細胞抽出物を作製し、そして、総タンパク質アッセイを行って、先に説明したように、タンパク質濃度を推定した。以下の:500μgのD-アミノ基転移酵素、50μgのProAアルドラーゼ、100mMのリン酸カリウムpH7.5、3mMのMgCl2、4mgのインドール-3-ピルビン酸、200mMのピルビン酸ナトリウム、7.35mg(50mM)のD-グルタミン酸、及び0.1mMのPLPを含む、二重反復試験の1mLの反応を行った。サンプルを、30℃で1時間、2時間、及び一晩、インキューベートし、そして、LC/MS/MS分析のために濾過した。サンプルは、実施例1に記載のFDAA誘導体化プロトコールによって測定されるように、モナティンのS,R及びR,R立体異性体だけを含んだ。結果を、以下の表2にまとめる。RRの割合(%)を、逆相クロマトグラフィーによって分離されたピーク面積によって決定した。
Figure 2008538932
HIS-6タグの除去は、B.ズブチリスD-アミノ基転移酵素の活性を改善したように見えるが、しかしながら、BioCatalytics D-アミノ基転移酵素相同体は、明らかに最も高い活性を持っていた。それは、また、R体モナティン前駆体に対するより高い基質優先傾向も示した。増やされたインキュベーション時間は、製造されたR,R体モナティンの鏡像体過剰率を削減するように思える。
バチルスD-アミノ基転移酵素は、アミノ・アクセプタとしてピルビン酸、そして、アミノ・ドナーとしてD-アラニンに対して優先傾向があるので、D-アラニンを、同様の又はより良好な結果を伴って、MPのモナティンへの変換のためのアミノ・ドナーとして利用できると期待した。二重反復試験の、以下の:500μgのD-アミノ基転移酵素、50μgの精製されたProAアルドラーゼ、100mMのリン酸カリウムpH7.5、3mMのMgCl2、4mgのインドール-3-ピルビン酸、100mMのピルビン酸ナトリウム、25mMのD-グルタミン酸若しくはD-アラニン、及び0.1mMのPLPを含む1mL反応を行った。サンプルを、2時間インキューベートし、そして、分析の前に、前述のとおり処理した。D-アラニンをアミノ・ドナーとして使用した時、予想どおり、わずかに高いレベルのモナティンを製造した(23対21ppm)。更に、高濃度のピルビン酸がアミノ基転移ステップを抑制し、これにより、長い時間をかけて、よりわずかな量のピルビン酸を投与することが、モナティン製造の全体的な速度を改善するかもしれないと期待される。当業者は、前記の表に比べて、この場合、半分のピルビン酸しか使用していないにも関わらず、かなり多くのモナティンを製造したことを上記データから理解することができる。文献中のProアルドラーゼが、主としてアルドール縮合生成物のS-鏡像異性体を製造することが報告されていたにも関わらず、この研究で使用されるProAアルドラーゼは、高い割合の(%)のR-MPを明らかに製造し、且つ、共役アッセイにおいて、最大で92%のR,Rモナティンを製造する。高い割合(%)のR,R体モナティンは、実施例19に示されたD-アミノ基転移酵素選択性に起因するものではない。
実施例3
D-トリプトファンからのR,R体モナティンの製造
以下の:約60μgのC.テストステロニのProAアルドラーゼ(WO 03/091396 A2に記載されているように、細胞抽出物により供給される)、4mMのMgCl2、50mMのD-トリプトファン、0.5mgのBioCatalyticsのD-アミノ基転移酵素(AT-103)、100mMのピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5又は100mMの酢酸ナトリウム・バッファーpH8、0.05mMのPLP、3mMのリン酸カリウム(アセテート反応に対してのみ)、及び10mMのα-ケトグルタル酸、を反応混合物1mLあたりに加えた。実験を、二重反復試験で、そして、アルドラーゼを加えなかった負の対照を用いて行った。サンプルを、緩やかに振盪しながら、30℃で一晩(20時間)インキューベートした。酢酸ナトリウム・サンプルの実際のpHは約5であったが、一方で、リン酸緩衝化サンプルの最終的なpHは約7であった。アルドラーゼのいずれもpH5にて顕著な活性を持つように見えず;ProAアルドラーゼを含むサンプルが、負の対照をわずかに上回ったが、おそらく実験誤差を超えていない。リン酸カリウム中、ProAアルドラーゼが、1.7:1のR,R体:S,R体の比を持つ73.4ppmのモナティンを製造した(D-トリプトファンからの〜63%のR,R体)。
バチルスのD-アミノ基転移酵素には、アミノ・アクセプタとしてのピルビン酸、及びアミノ・ドナーとしてのD-アラニンに対して優先傾向があるので、D-トリプトファンからR,R体又はS,R体モナティンを製造する時、α-ケトグルタル酸の追加が不要であることが期待された。前記の実験を、精製されたProAアルドラーゼ(50〜60μg)及び2.5時間のインキュベーション時間を使用して、(100mMのリン酸カリウム・バッファー中で)繰り返した。α-ケトグルタル酸のあり又はなしで二重反復試験を実行した。10mMのα-ケトグルタル酸を加えた時、基質としてD-トリプトファンを使用して、56.1ppmのモナティンを形成した(79.5%のR,R体、20.5%のS,R体)。α-ケトグルタル酸を除いた時、102.5ppmのモナティンを形成した(79%のR,R体、21%のS,R体)。
シノリゾビウム・メリロティ、C.テストステロニからのHMGアルドラーゼ、及び、配列番号22のアルドラーゼに関する総モナティン製造及び異性体分布の比較
AT-103トランスアミナーゼ(広特異性D-アミノ基転移酵素)をBioCatalytics(Pasadena, CA)からを購入し、そして、この酵素、又は実施例18で製造されたB.スファエリカスの組み換え酵素のいずれかを、米国出願公開番号第2005282260号に記載されているように、HMGアルドラーゼとの共役反応に使用して、D-トリプトファンとピルビン酸からモナティンを製造した。
C.テストステロニ(ProA)及びS.メリロティからのHMGアルドラーゼを、米国公開番号第20040063175号及びWO 03091396 A2に記載されているように、調製し、そして、精製した。試験量の配列番号22のアルドラーゼを製造するために、50mLの培養物を、アンピシリン(100μg/mL)を含むルリア-ベルターニ(「LB」)培地中、約0.5のOD600まで培養した。配列番号21の構築物を含む菌株を、200μg/Lのアンヒドロテトラサイクリンで誘導した。その細胞を誘導後5時間、培養し、そして、細胞抽出物を、製造業者のプロトコール(Novagen, Bugbuster reagent)に従って調製した。また、Benzonuclease及びプロテアーゼ・インヒビターも加えた。細胞抽出物中の可溶性タンパク質を、BioRad Laboratories Experion Automated Electrophoresis Stationにより分離し、そして、Experionソフトウェア・バージョン1.1.98.0を使用して濃度及び発現の割合(%)について分析した。配列番号22のアルドラーゼを、以下の反応に未処理(未精製)酵素として使用した。
以下の:約50μgのアルドラーゼ、4mMのMgCl2、50mMのD-トリプトファン、0.5mgの精製されたB.スファエリカスのD-アミノ基転移酵素、200mMのピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、及び0.05mMのPLPを、反応混合物1mLあたりに加えた。実験を、二重反復試験で、そして、アルドラーゼを加えなかった負の対照を用いて実行した。サンプルを、緩やかに振盪しながら30℃で1時間、及び一晩(18時間)インキューベートした。マグネシウム及びリン酸によって触媒された非酵素反応が原因で、少量(<0.5ppm)のモナティンが、一晩の反応により、アルドラーゼなしに製造された。それらの値を以下に示した数から差し引き、そして、平均した結果を示した。これらの方法を使用してモナティンを製造する時、検出された唯一の立体異性体が、R,R体及びS,R体である。R,R体の割合(%)を、以下で列挙し、そして、逆相LCピーク面積によって決定した。
Figure 2008538932
配列番号22のアルドラーゼの18時間サンプルは、また、実施例1で記載されたFDAA誘導体化法によって立体異性分布についても分析し、94.9%のR,R体、及び5.1%のS,R体モナティンの結果を得た。配列番号22のアルドラーゼは、C.テストステロニ及びS.メリロティHMGアルドラーゼと比べて、R-MPの製造に関してより高いエナンチオ特異性がある。
開始基質としてL-トリプトファンを使用し、且つ、米国出願公開番号第2005282260号に記載されているように製造、そして、精製したHexAspC広特異性L-アミノ基転移酵素と、アルドラーゼを共役し、同時に、同じ実験を行った。これらの反応は、主としてS,S体モナティンとR,S体モナティンをもたらすはずである。また、反応には、L-トリプトファンのアミノ基転移のためのアミノ・アクセプタとして10mMのα-ケトグルタル酸も補った。この場合も先と同様に、二重反復試験の結果を、(アルドラーゼのないバックグラウンド・レベルを差し引いた)総モナティンについて以下に平均し、そして、S,S体モナティンの割合(%)を逆相LCのピーク面積に基づいて示す。一部の場合によっては、アルドラーゼが非常にR特異的であり、わずかな総モナティンしか製造しないので、立体異性分布の逆相による推測は、S,S体/R,R体モナティン・ピークと同時に溶出し得るトリプトファン・ピークのテーリングのせいでそれほど正確でない。傾向は、アルドラーゼのR-特異性を比較した時に、それでも有益である。FDAA誘導体化法を使用した更なる分析からの結果は、いくつかのサンプルについて括弧内に示され、そして、より正確である。約400ppmを上回る総モナティン数は、定性的結果もそうであるように、結果の定量に使用される標準物質の尺度の直線領域と比べても高かった。C.テストステロニProAアルドラーゼは、通常、米国出願公開番号第2005282260号に示されているように、95〜100%のS,S体モナティンを製造する。
Figure 2008538932
当業者は、配列番号22のアルドラーゼのR-特異性が、ベンチマークProA酵素と比較して、非常に高いことを理解することができる。このR-特異性は、また、これらの反応におけるS-MPに対するHexAspCアミノ基転移酵素の高度な特異性にもかかわらず、製造された低い割合(%)のS,S体モナティンにも反映される。他の場合と同じように、製造されたS,S体モナティンのレベルに基づいたR-特異性に関して、S.メリロティHMGアルドラーゼは、C.テストステロニProAアルドラーゼと配列番号22のアルドラーゼの間に入る。S,S体モナティン製造対R,R体モナティン製造を比較した時、総モナティン数は、アルドラーゼ活性を示していない。D-アミノ基転移酵素は、MPアミノ基転移反応に関して、特にこれらの反応において存在しているMPの濃度にて、HexAspCほど活性でない。
C.テストステロニからのProA酵素に対する配列番号22のアルドラーゼの更なる比較のために、D-アミノ基転移酵素対アルドラーゼの異なった比を、(これらの実験に関しては二重反復試験サンプルがない)D-トリプトファンから始まる反応に利用した。その反応を、上で説明したように行った。アルドラーゼ濃度を一定に保った反応に、約50μgのアルドラーゼを使用した。D-アミノ基転移酵素の量を一定に保った反応に、0.5mgを使用した。2及び10mg/mLの濃度のD-アミノ基転移酵素には、凍結乾燥酵素を使用した。2つの最も高いD-アミノ基転移酵素濃度に関しては、二重反復試験で実行した。
Figure 2008538932
400ppmを上回るモナティンに関しては、その結果は、検量線の直線領域内にないので、近似値のみである。製造されたR,R体モナティンの最大量は、適切に希釈されると、約1100ppmであった。FDAA立体異性分析を、配列番号22のアルドラーゼに関して、10mg/mLのD-アミノ基転移酵素サンプルを用いて行った。2時間の時に、サンプルは、98.5%のR,R体モナティンを含んでいた。17時間の時に、サンプルは、95.9%のR,R体モナティンを含んでいた。配列番号22のアルドラーゼは、長時間の培養時間、及び大量のアミノ基転移酵素の使用の後でさえ、高い割合(%)のR,R体モナティンを製造した。適当なD-アミノ基転移酵素を供給した場合、配列番号22のアルドラーゼは、類似した特異性活性を示す、C.テストステロニProAアルドラーゼと同じくらい多くの総モナティンを製造する。
Figure 2008538932
アルドラーゼ濃度を変える時、総モナティンの大きな増加はなかった。R,R体の割合(%)は、特に、D-アミノ基転移酵素が制限されている時、時間と共に、そして、さらに、アルドラーゼ濃度と共に減少する。
試験されたアルドラーゼのR-特異性を更に調べるために、実験を、L-トリプトファン、及び米国出願公開番号第2005282260号に記載されているように、製造及び精製されたHexAspCアミノ基転移酵素から開始して、行った。HexAspCはS-MP対R-MPのアミノ基転移に対して強い選択性を示し、これにより、50%を上回るR,S体モナティンの割合(%)は非常に立体特異的なアルドラーゼを示す。10mMのα-ケトグルタル酸を、アミノ・アクセプタとして供給したが;しかしながら、高濃度にて、ピルビン酸もまた、L-アミノ基転移酵素によって利用される。これらの反応において、通常、FDAA誘導体化プロトコールの検出限界の中でS,S体及びR,S体モナティンだけが製造される。
Figure 2008538932
Figure 2008538932
配列番号22などのように高度にR-特異的であるアルドラーゼに関して、より少ない総モナティンが製造され、そして、アルドラーゼの量が増加すると、総モナティン(並びにS,S体の割合(%))が増加する。これらのアルドラーゼは、使用されるL-アミノ基転移酵素に対して好ましい基質であるS-MP基質をよりわずかしか製造しない。例えば、ProAなどのようによりR-特異的でない酵素に関しては、アルドラーゼを増強しても、総モナティン製造、又はS,S体モナティンの割合(%)を顕著に改善することはない。加えるL-アミノ基転移酵素の量を増加させることで、製造されるS,S体モナティンの割合(%)が低下する。
配列番号22のアルドラーゼの活性と特異性を、2種類のバッファー系−先に記載の100mMのリン酸カリウム、及び(3mMのリン酸カリウムを含む)100mMの3-(N-モルフィリノ)プロパンスルホン酸(「MOPS」)、において更に研究した。1mg/mlのAT-103 D-アミノ基転移酵素、及び50mMのD-トリプトファンを使用して、アッセイを前述のとおり実施した。実験を、4.5時間、二重反復試験で行った。配列番号22のアルドラーゼは、リン酸カリウム中、116ppmのモナティン、且つ、99.1%のR,R体モナティンを製造した(FDAA誘導体化法)。MOPS中、配列番号22のアルドラーゼは、75.5ppmのモナティンを製造し、そして、96.2%がR,R体モナティンであった。配列番号22のアルドラーゼなしにMOPS中で製造されたモナティンのバックグラウンド・レベルは、顕著に高く、そして、R,R体の割合(%)は、対照においてでさえ、MOPSについてより低かった。Dアミノ基転移酵素選択性及び活性が、MOPSの存在下で影響を受ける可能がある。
配列番号21のサブクローニング
配列番号21のアルドラーゼ遺伝子をDiversa Corp.から入手した。配列番号21は、アルドラーゼ遺伝子についてDiversa Corp.によってスクリーニングされた環境ライブラリーの一部であった。しかしながら、配列番号21のアルドラーゼ遺伝子は、当業者に知られているいずれかの方法によって再構築されるかもしれない。例えば、配列番号21のアルドラーゼ遺伝子は、実施例10、18、及び19で記載されているように、アッセンブリPCR法を利用することで再構築されるかもしれない。
以下のプライマー:
5’-gaggagctcgagtcagacgtatttcagtcctttttc-3’(配列番号23)及び
5’-agaagacatatgatttatcagccggggac-3’(配列番号24)、
を使用して、アルドラーゼ遺伝子(配列番号21)をPCR増幅した。得られたPCR産物を、XhoI及びNdeIで消化して、プライマー内で操作された部位にて切断した。その断片を、ゲル精製し(QIAquickゲル抽出キット(Qiagen、Velencia, CA))、そして、XhoI及びNdeIで消化し、そして、ゲル精製したpET28bに(T4 DNAリガーゼを使用して)連結した。その連結物を、化学的なコンピテント細胞TOP10F’内に形質転換した。プレート上で増殖したコロニーを、挿入物についてスクリーニングし、そして、挿入物を有するいくつかの単離物をDNA配列解析(Agencourt、Beverly, MA)に供した。
配列番号22のアルドラーゼの精製
確認されたアルドラーゼ・クローンを、BL21(DE3)又はBL21(DE3)pLysSのいずれかの中に形質転換した。適切な抗生物質と一緒に培養した一晩培養物を、新しい培地中に希釈し(通常、1:100)、通気しながら37℃で〜0.6のOD600まで培養した。培養物を、次に、1mMのイソプロピル・チオガラクトシド(「IPTG」)で誘導し、(通気しながら)30℃に移し、そして、インキュベーションを一晩、続けた。細胞を遠心分離によって採集した。細胞ペレットを、通常、凍結解凍サイクルに供して、細胞溶解をしやすくした。その細胞ペレットを、(製造業者のプロトコールに従って)BugBuster及びBenzoase(Novagen、Madison, WI)で溶解した。細胞の破片を、遠心分離によって除去した。未精製タンパク質抽出物を、製造業者のプロトコールに従って調製したHisBindカラム(Novagen、Madison, WI)に適用した。製造業者のプロトコールに従って、カラムを洗浄し、そして、タンパク質を溶出した。精製タンパク質を、PD-10カラム(GE Healthcare、Piscataway, NJ)を用いて脱塩した。交換に使用したバッファーは、50mMのリン酸カリウムpH7.5、100mMのNaCl、4mMのMgCl2であった。精製タンパク質を、Amicon遠心濃縮器(Millipore、Billerica, MA)を用いて濃縮した。
実施例4
(1) トリプトファン・ラセマーゼ
R,R体モナティンを、D-トリプトファンを出発物質として使用した時に、D-アミノ基転移酵素及びアルドラーゼを使用して製造した(実施例3)。それにもかかわらず、L-トリプトファンはいくつかの理由で好ましい出発物質であるかもしれない。例えば、L-トリプトファンは、D-トリプトファンより高価でなく、且つ、より容易に入手可能であるかもしれない。この開示は、活性なトリプトファン・ラセマーゼを得るためのいくつかの方法を説明する。R,R体モナティンの収率は、R体に特異的なアルドラーゼ、すなわち、優先的に又は選択的にR-MPを製造するアルドラーゼ、を使用することによって改善される。図1及び2は、トリプトファン・ラセマーゼ、D-アミノ基転移酵素、及びR体に特異的なアルドラーゼを使用して、L-トリプトファンから立体異性的に富R,R体モナティンを製造する方法を図解する。
トリプトファン・ラセマーゼについての選択を、増殖に活性なラセマーゼを必要とする菌株を構築することによって作り出した。トリプトファン要求性変異株は、最少培地上で増殖する時にL-トリプトファン源を必要とする。培地にD-トリプトファンを補うことは、D-トリプトファンをL-トリプトファンに変換するラセマーゼについて選択するための1つの手段である。トリプトファン要求性変異株を、D-トリプトファンを補った最少培地上における増殖について試験した。Coli Genetic Stock Centerからの菌株CAG18455及びCAG18579、並びにNRRL12264(また、lipA-,λDE3で溶原化され、そして、そのプラスミドを回復した)は、D-トリプトファンを補った時には増殖しなかったが、L-トリプトファンを補った時には増殖した。E.コリを宿主生物として使用するかもしれないが、他の宿主生物体、例えば、酵母、他の細菌、又は他の真核生物なども使用されるかもしれない。トリプトファン要求性変異株(具体的には、NRRL12264(また、liA-,λDE3で溶原化され、そして、そのプラスミドを回復した))は、Dアミノ基転移酵素によって変換された時に、D-トリプトファン上で増殖する。これは、D-トリプトファンを細胞内に輸送するE.コリの能力を裏付ける。
Salcher及びLingensは、シュードモナス・アウレレオファシエンス(ATCC 15926)内のトリプトファン・ラセマーゼの存在について説明した。Salcher, O.及びLingens, F.、J. Gen. Microbiol 727:465-471ページ(1980年)。トリプトファン・ラセマーゼは、また、タバコ、ビート、トマト、及びコムギを含めたいくつかの植物においても説明されており、そして、その酵素は、浸透圧ストレス又は干ばつの状況によって誘導されるらしい。トリプトファン・ラセマーゼは、シュレロチトン・イリシホリウスにおける、天然のモナティン産生経路において役割を担うかもしれない。このラセマーゼ活性を単離するために、発現ライブラリーをATCC 15926(又は、トリプトファン・ラセマーゼ活性を有する他の生物体)から構築し、そして、そのライブラリーをトリプトファン要求性変異株内に形質転換する。トリプトファン源としてD-トリプトファンを使用することで増殖する菌株を選択する。同様の方法もまた、公知のラセマーゼを持つ多くの菌株をスクリーニングするために使用して、D-トリプトファンに対する活性を有するラセマーゼを探した。D-トリプトファンに対する活性を有するかもしれないラセマーゼの例には、アラニン、セリン、及びグルタミン酸ラセマーゼが含まれる。Yoshimura T.及びEsaki, N.、"Amino Acid Racemases:Functions and Mechanisms," Journal of Bioscience and Bioengineering 96, 103-109ページ(2003年)。
アラニン・ラセマーゼは、PLP依存性であり、サルモネラ・ティフィムリウム(dadB遺伝子)からクローン化された。アラニン・ラセマーゼの他の起源は、エシェリキア・コリ、バチルス・ズブチリス、シュードモナス・エルギノーサ、ビブリオ・コレレ、シゾサッカロマイセス・ポンベ、及びバチルス・セレウスである。担子菌キノコ(レンチナス・エドデス)にもまた、広範な活性のアラニン・ラセマーゼが含まれる。
セリン・ラセマーゼもまた、PLP依存性であり、真核生物(例えば、カイコ、ラットの脳、マウスの脳cDNA)、及び細菌(エンテロコッカス・ガリナルム)に見られる。
グルタミン酸ラセマーゼは、PLP非依存性であり、ペディオコッカス・ペントサセウス、バチルス・パミルス、ラクトバチルス・ファーメンタム、ラクトバチルス・ブレビス、E.コリ、アクイフェックス・ピロフィルス、及びバチルス・ズブチリスからクローン化された。一部のグルタミン酸ラセマーゼは、非常に特異的であるため、その結果として、構造的に類似のアミノ酸であるアスパラギン酸、アスパラギン、及びグルタミンさえその酵素の基質にならないかもしれない。
アスパラギン酸ラセマーゼも存在し、そして、PLP非依存性である。アスパラギン酸ラセマーゼは、乳酸桿菌、ストレプトコッカス株、例えば、デスルフロコッカス株及びサーモコッカス株などの一部の古細菌に見られる。二枚貝軟体動物であるスカファルカ・ブロウートニイにもまた、アスパラギン酸ラセマーゼが含まれる。
文献中に見られる他のラセマーゼには、アナベナ種及びシュードモナス・ストリアタ、からのアミノ酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.10)、プロリン・ラセマーゼ、並びに多機能フェニルアラニン・ラセマーゼが含まれる。関連エピメラーゼ又はラセマーゼもまた、試験する。潜在的ラセマーゼを試験して、それらがD-トリプトファン・アミノ基転移酵素でないことを確認した。潜在的ラセマーゼのスクリーニングを、配列解析、及び/又は酵素アッセイによって行う。トリプトファン・ラセマーゼの選択のためのこのスクリーニング法を、トリプトファン・ラセマーゼが説明された他の細菌又は古細菌に、並びに発現を容認するような様式で構築された真核生物のcDNAライブラリーにも使用する。
トリプトファン・ラセマーゼとして試験を通過する酵素を、実施例8で記載されているように、モナティンに対する活性についてスクリーニングする。理想的には、当業者は、トリプトファンに対して非常に特異的であり、且つ、モナティンに対してラセマーゼ活性を持たない酵素を得る。
トリプトファン・ラセマーゼは、また、既存のラセマーゼ、アミノ転移酵素、又はエピメラーゼから(突然変異誘発若しくは組み換え操作により)進化される、及び/又は改善されるかもしれない。更に、アラニン・トランスアミナーゼ(及び他のアミノ基転移酵素)に関して結晶構造が知られているので、これらが、合理的な、構造ベースの突然変異誘発の基礎として使用されるかもしれない。先に説明した過程を、トリプトファン・ラセマーゼ活性についての最初の選択として、そして、改善された活性についてのスクリーニングとして使用する。
(2) トリプトファン・ラセマーゼのライブラリー
ライブラリーの構築:
バークホルデリア・ピロシナ(ATCC 15958)及びシュードモナス・クロロラフィス(ATCC 15926)を、米国基準菌株保存機構(American Type Culture Collection)から入手した。それらを、ATCCによって推薦されるとおりに培養し、そして、ゲノムDNAを、Mekalanos, J.J.、"Duplication and amplification of toxin genes in Vibrio cholerae," Cell 35:253-263ページ(1983年)に記載されている方法に従って調製した。ゲノムDNAを、制限酵素Sau3AIによって部分的に消化した。1〜3Kbpの断片を、Qiagen QIAquickゲル抽出キット(Valencia, CA)を使用して、ゲル精製した。精製したDNAを、前述のとおりBamHIで消化し、そして、精製したpTrc99a(Amersham、Piscataway, NJ)内に連結した。前記連結反応を、挿入物対ベクターの3:1のモル比を使用して、室温にて一晩のインキュベーションにより行った。連結したライブラリーを、TOP10F’化学的コンピテント細胞(Invitrogen、Carlsbad, CA)内に形質転換し、そして、100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地上に播種した。形質転換プレートの一晩のインキュベーション後に、コロニーを、プレートからかき取り、液体LB培地で洗浄し、そして、適切なサイズの細胞ペレットを、Qiagen QIAquick小量調製キット(Valencia, CA)を使用して小量調製した。約3万個のコロニーを、プールし、そして、少量調製した。
プールしたプラスミドを、CAG18455(trpC83::Tn10、rph-1)又はCAG18579(trpC::Tn10kan、rph-1)内に形質転換した。両菌株は、培地にトリプトファンが補われない限り、M9最少培地(Difco)上で増殖しないトリプトファン要求性変異株である。形質転換体を、D-トリプトファンを補ったM9最少培地に蒔いた。これは、D-トリプトファンをL-トリプトファンに変換する菌株について選択する。
ライブラリーの形質転換前に、菌株を、L-又はD-トリプトファンを含む最少培地上での増殖について試験した。菌株を、D-トリプトファンを補った最少培地上での増殖について試験し、そして、増殖がないことを観察した。両菌株を、D-トリプトファンの代わりにL-トリプトファンを補った全く同じ培地上で培養した。更に、NRRL12264(使用される菌株は、他の染色体性にコードされた突然変異(serB、ΔtrpED、tnaA2、aroP)に加えて、トリプトファン・オペロン・プラスミドを回復し、λDE3で溶原化され、そして、lipAを削除した)の誘導体を、バチルス・ズブチリス(WO 03/091396)からのD体に特異的なアミノ基転移酵素によって形質転換した。NRRL12264菌株は、D-トリプトファンを補った最少培地中で増殖できなかったが、D-トリプトファンの代わりにL-トリプトファンを補った全く同じ培地上で増殖した。D-アミノ基転移酵素の発現を、T7プロモーターによって推進した。形質転換した菌株は、D-トリプトファンを補ったM9最少培地上で増殖できた。
D-トリプトファン培地上で増殖するコロニーを、スクリーニングする。プラスミドを単離し、そして、親株(CAG18455又はCAG18579)内に再形質転換して、D-トリプトファン培地上での増殖が宿主変異ではなくプラスミドに依存していることを確認した。トリプトファン要求性を補完するプラスミドのヌクレオチド配列を解析する。トリプトファン・ラセマーゼ遺伝子を含むと判断されるクローンを、更に分析する。
他の組織起源からのトリプトファン・ラセマーゼを、同様に単離する。タバコ組織培養細胞(ニコチアナ・タバクムL.変異体 ウィスコンシン38)(Miura, G.A.及びMills, S.E.、"The conversion of D-tryptophan to L-tryptophan in cell cultures of tobacco," Plant Physiol 47:483-487ページ(1974年))、及び、コムギ(トリティカム・アエスティバム)の未精製タンパク質抽出物(Rekoslavskaya, N. I.ら、"Synthesis and physiological function of D-tryptophan during wheat germination," Russian J. Plant Physiol. 44:196-203ページ(1997年))の両方におけるトリプトファン・ラセマーゼ活性を報告する文献がある。
cDNA発現ライブラリーを、文献に記載されているように、組織から作製し、そして、発現ライブラリーを、先に説明したように、トリプトファン要求性変異株を形質転換するために使用する。
文献に記載されていのと、同じ菌株を使用し、且つ、同じ培養条件を再現する場合には、トリプトファン・ラセマーゼ活性を有する酵素が単離されるか、又はmRNAを単離でき、そして、トリプトファン・ラセマーゼ活性を有する酵素のコード配列を含むだろうcDNA発現ライブラリーを調製することができると期待されるだろう。例えば、特定の生育段階又は特定の培地成分が、トリプトファン・ラセマーゼ活性を有する酵素の細胞による産生を誘導するのに必要であるかもしれない。
(3) トリプトファン・ラセマーゼ・アッセイ
潜在的にトリプトファン・ラセマーゼを持っていると識別されたクローンを、例えば、BL21などの一般的に組み換えタンパク質の発現に使用されるE.コリの菌株内に形質転換する。その細胞を、LB培地中で、0.4〜0.6の600nmの吸光度まで培養する。ラセマーゼの発現を推進するプロモーターをIPTG(0.1mMの終濃度)で誘導する。誘導後に、細胞に、(通気しながら)37℃で1〜3時間、タンパク質を発現させる。細胞を、回収し、そして、フレンチプレス、超音波処理物、又は化学的手段(例えば、BugBuster(Novagen)など)によって溶解させる。溶解細胞を遠心分離して、細胞の破片を取り除く。浄化した抽出物を、アッセイにそのまま使用する。
様々な量の抽出物を、終濃度が50mMのリン酸カリウム(pH7.0)及び2mMのL-トリプトファンになるように、溶液に加える。ピリドキサール-5’-リン酸を、10μMの終濃度にて加える。サンプルを、インキューベートし、次に、LC/MSによって分析する。L-トリプトファンだけが基質として使用されている時、D-トリプトファン・ピークの存在は、陽性の結果を示す。平衡状態に達するまでの時間が延びるに従って、D-トリプトファン濃度が上昇するはずであり、そして、酵素濃度がもはや基質で飽和されないほど十分に高くなるまでタンパク質濃度に従って、速度もまた、高くなるはずである。D-トリプトファンは、また、前述のとおり、L-トリプトファンに変換されるかもしれない。
補完遺伝子は、D-アミノ基転移酵素をコードするかもしれない。このアミノ基転移反応は、アミノ・アクセプタとして、例えば、α-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、又はピルビン酸などのα-ケト酸を必要とする。これらの化合物は、通常、少量で、細胞抽出物中に存在する可能性がある。これらの化合物は、PD-10脱塩カラムを使用することで除去されるかもしれず、そして、アッセイは、まだ、未精製抽出物で実施されるかもしれない。同様に、補完遺伝子は、また、D-アミノ酸酸化酵素又はD-アミノ酸脱水素酵素をコードするかもしれない。これらの酵素は、また、PD-10脱塩カラムによって除去される可能性がある補助因子及び補助基質も必要とする。トリプトファン・ラセマーゼ活性を、従来のカラムクロマトグラフィーを使用することで精製する。最終的に、潜在的なトリプトファン・ラセマーゼとして同定されたオープン・リーディング・フレームを、アフィニティー・タグと一緒に発現ベクター内にクローン化する。潜在的なトリプトファン・ラセマーゼを、次に、アフィニティクロマトグラフィーによって精製する。いずれの場合においても、精製タンパク質を、基本的に先に説明したように、酵素アッセイで使用する。
(4) トリプトファン・ラセマーゼの逆遺伝子操作
トリプトファン・ラセマーゼを、硫安分画及び従来のカラムクロマトグラフィーを含めた従来のタンパク質精製技術によって植物又は微生物起源のいずれかから精製するかもしれない。タンパク質が、スポットが2次元ゲル上で単離され得る程度に精製された時点で、ペプチド・マイクロシークエンシング技術、又は従来のエドマン型のアミノ酸配列法を利用する(インターネットにおいて、この種の作業に通常使用されるプロトコール及び装置の説明について「golgi.harvard.edu/microchem/」を参照のこと)。しかしながら、一部の場合においては、生物体のゲノム配列を、タンパク質精製のためのタンパク質の起源として使用できないが、それは、そのような配列がまだ決定されていないからである。その状況において、縮重プライマーの最初のセットを、タンパク質起源から最も近い既知の類縁体からの利用可能な配列に基づいて設計するかもしれない。次に、縮重PCR及びゲノム・ウォーキングを、確立されたプロトコールに従って実施して、トリプトファン・ラセマーゼのコード配列を単離する。
(5) ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスからのアラニン・ラセマーゼのクローニング
ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスからのアラニン・ラセマーゼ(配列番号41)をクローニングした。G.ステアロサーモフィラス(ATCC 12980D)からのゲノムDNAを、ATCC(Manassas, VA)から購入した。以下のプライマー:
5’-atggacgagtttcaccgcga-3’(配列番号25)及び
5’-ttatgcatcgcttcatccgc-3’(配列番号26)、
をG.ステアロサーモフィラスからのアラニン・ラセマーゼ遺伝子を増幅するために使用した。PCR産物を、Zero Blunt TOPO PCRクローニング・キット(Invitrogen、Carlsbad, CA)を使用してpCR-Blunt-TOPOに連結した。正しいクローンを、配列決定(Agencourt、Beverly, MA)によって確認した。正しいクローンを、その後のPCR反応に鋳型として使用した。
以下のプライマー:
5’-ataataggatcctcatccgcggccaacggcg-3’(配列番号27)及び
5’-gggaaaggtaccgaggaataataaatggacgagtttcaccgcg-3’(配列番号28)、
をアラニン・ラセマーゼを増幅するため使用した。PCR産物を、制限酵素KpnI及びBamHIで消化した。これらの酵素は、プライマー内に設計された部位を切断した。消化したPCR産物を、ゲル精製し、そして、KpnI及びBamHIで消化され、続いてゲル精製されたpTrc99aに連結した。連結物を、化学的コンピテント細胞であるTOP10F’内に形質転換し、そして、50μg/mlのカナマイシンを補ったLBプレート上に蒔いた。分離物を、挿入物についてスクリーニングし、そして、挿入物を有するいくつかの分離物を、配列解析(Agencourt、Beverly, MA)によって正しい配列(配列番号40)を持つことを確認した。
pTrc99a/アラニン・ラセマーゼ構築物を、Stratagene(La Jolla, CA)のQuick-Change Multi Site-Directed Mutagenesisキットを使用した部位特異的突然変異誘発(「SDM」)に供した。突然変異原性プライマーは、以下のとおりであった:
5’-gccggacgacacgcacattnnkgcggtcgtgaaggcgaacgcc-3’(配列番号29)、
5’-gtgaaggcgaacgcctatggannkggggatgtgcaggtggcaagg-3’(配列番号30)、
5’-cctcccgcctggcggttgccnnkttggatgaggcgctcgctttaa-3’(配列番号31)、
5’-caaccaggcgaaaaggtgagcnnkggtgcgacgtacactgcgcag-3’(配列番号32)、
5’-gatcgggacgattccgatcggcnnkgcggacggctggctccgccg-3’(配列番号33)、
5’-gccatttggaaacgatcaacnnkgaagtgccttgcacgatcag-3’(配列番号34)、
(n=あらゆるヌクレオチド、そして、k=g又はt)。
突然変異誘発のための残基を、G.ステアロサーモフィラスのアラニン・ラセマーゼの既存の結晶構造の分析によって選択した。活性部位から5〜10Åに位置している大きなアミノ酸残基は選択した。
製造業者のプロトコールの中の指示どおりに、6つのプライマーの全てをSDM反応に使用した。SDM反応物を、製造業者のプロトコールに従って、XL-10 Gold内に形質転換した。形質転換反応物を、100μg/mlのアンピシリンを補ったLB培地上に蒔いた。LB培地を前記プレートに加え、そして、コロニーをそのプレートからかき取った。再懸濁した細胞を、37℃で数時間、増殖させ、そして、プラスミドを、QIAquick mini-prepキットを使用して少量調製した。そして、得られた突然変異誘発ライブラリー(mutagenized library)を、トリプトファン要求性変異株CAG18455の形質転換に使用した。形質転換物を、グルコース、微量元素、ビタミン、100μg/mlのアンピシリン、100μMのIPTG、及び3mMのD-トリプトファンを補ったM9最少培地上に蒔いた。数日の37℃でのインキュベーション後に、コロニーが増殖した。これらのコロニーを、LB(100μg/mlのアンピシリン)上に画線接種した。プラスミドをこれらの単離物から単離し、そして、CAG18455内に再形質転換した。再形質転換した細胞を、100μg/mlアンピシリンを含むLB上に蒔いた。形成されたコロニーを単離した後に、それらを、先に説明したM9 D-トリプトファン培地上に画線接種した。コロニーは全て、再増殖するように見え、その増殖が突然変異誘発バージョンのラセマーゼによるものであることを示唆した。対照細胞の増殖がないことを観察した。
いくつかの単離物を、試験管内活性についてアッセイした。細胞を、約0.6のOD600まで培養し、そして、100μMのIPTGで誘導した。細胞を、37℃で更に2時間インキューベートし、そして、遠心分離によって採集した。細胞ペレットを、翌日の使用まで−80℃で保存した。細胞ペレットを氷上で解凍した。細胞を、BugBuster(1級アミン不含)細胞溶解試薬とBenzoase(Novagen)で崩壊させた。細胞の破片を、遠心分離(4℃にて30分間、〜10,000×g)によって除去した。上清を、未精製細胞抽出物として保存した。
アッセイ・バッファーは、50mMのリン酸カリウム(pH8.0)、10μMのピリドキサール・リン酸、0.01%のβ-メルカプトエタノール、及び50mMのD-又はL-トリプトファンを含んだ。アッセイ1mLあたり、200μLの抽出物を加えた。0時の時点、並びに30分及び一晩の時点に相当するサンプルを冷凍した。サンプルを、遠心分離にかけ、濾過し、そして、分析のためのSRCに移した。
Figure 2008538932
Figure 2008538932
この単離物中のラセマーゼ遺伝子のDNA配列を決定し(配列番号42)、そして、その単離物が3つの突然変異を持っていることがわかった。対応するタンパク質分離物中の突然変異は、以下のとおりである:M35C、F66E、及びY354A(配列番号43)。追加の突然変異(P197L)を、この突然変異体の中で見つけた。これは、自然突然変異なので、部位特異的突然変異誘発の一部ではなかった。
突然変異体ラセマーゼを、発現及び精製のためにpET30内にクローニングした。以下のプライマー:
5’-gggaaaggtaccgaggaataataaatggacgagtttcaccgcg-3’(配列番号35)及び
5’-gcggcgccatggacgagtttcaccgcg-3’(配列番号36)、
をpTrc99a構築物からのラセマーゼ遺伝子のPCR増幅に使用した。PCR産物を、NcoI及びBamHIで消化し、ゲル精製し、そして、NcoI及びBamHIで消化し、その後でゲル精製したpET30に連結した。連結物を、TOP10化学的コンピテント細胞(Invitrogen、Carlsbad, CA)内に形質転換した。形質転換体からの単離物を、挿入物についてスクリーニングした。挿入物を有するプラスミドを配列解析(Agencourt、Beverly, MA)に供した。正しい配列を持つ単離物を、発現及び精製のためにBL21 λDE3又はBL21 λDE3 pLysS内に形質転換した。新しい構築物を、pET30Trpラセマーゼと名付けた。
(6) トリプトファン・ラセマーゼの精製
pET30Trpラセマーゼ構築物を持つ一晩培養物を、適切な抗生物質(50μg/mlのカナマイシン及び20μg/mlのクロラムフェニコール)を含む新しいLB培地中に継代培養し、(通気をしながら37℃で)〜0.6のOD600まで増殖した。発現を、100μMのIPTGで誘導し、そして、インキュベーションを、通気しながら37℃で2時間、続けた。細胞を、遠心分離によって採集し、そして、使用するまで−80℃で保存した。細胞ペレットを氷上で解凍し、そして、細胞を、BugBuster Primary Amine Free Cell Lysis ReagentとBenzoase Nuclease(Novagen、Madison, WI)を使用して溶解した。細胞の破片は遠心分離によって除去し、そして、上清を、未精製のタンパク質抽出物として使用した。未精製のタンパク質抽出物を、0.45μmシリンジ・フイルターを使用して濾過し、そして、製造業者の指示に従ってあらかじめ平衡化したHisBindカラム(Novagen、Madison, WI)に適用した。製造業者のプロトコールで指示されるとおり、カラムを洗浄し、そして、タンパク質を溶出した。精製タンパク質を、溶出液として50mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのピリドキサール-5’-リン酸(「PLP」)を使用したPD-10カラム(GE Healthcare、Piscataway, NJ)を用いて脱塩した。脱塩したタンパク質を、Amicon遠心濃縮器(Millipore、Billerica, MA)を使用して濃縮した。野生型アラニン・ラセマーゼを、先に説明したように精製した。
(7) トリプトファン・ラセマーゼのアッセイ
精製したラセマーゼを、いくつかのアッセイにより試験した。1つのアッセイにおいて、D-アミノ酸酸化酵素による過酸化水素の産生を、検出システムとして使用した。酸化酵素のためのD-トリプトファン基質は、この実施例において記載されているように単離されたラセマーゼ酵素によりL-トリプトファンから製造した。アッセイには、1アッセイあたり0、1、10、25、50、100、200μgの酵素、50mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのPLP、50mMのL-トリプトファンが含まれた。アッセイを、37℃で1時間、インキューベートした。インキュベーション後に、100mg/mlのD-アミノ酸酸化酵素(AOD-101 BioCatalytics、Pasadena, CA)及び0.5mMのFADを、反応混合物に加えた。過酸化水素の発生を、Amplex赤色試薬キット(Molecular Probes、Eugene, OR)及びPerkin Elmer HTS 7000 Plus BioAssay Reader Fluorometer(Wellesley, MA)を使用して計測した。アッセイデータを、以下の表11及び12にまとめる:
Figure 2008538932
Figure 2008538932
アッセイの結果は、突然変異体ラセマーゼが過酸化水素の産生に必要であることを示唆している。産生された過酸化水素の量は、追加された突然変異体ラセマーゼの量が増えた時に、増加した。
アラニンに対するラセマーゼ(野生型及び突然変異体)の活性を分析した。反応バッファーには、以下の:100mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのPLP、50mMのL-アラニン、12μg/mLの野生型ラセマーゼ又は94μg/mlの突然変異体ラセマーゼが含まれた。反応を、1容量の0.5Mギ酸で止め、そして、実施例1で記載されているように、Chirobioticカラムを使用したLC/MS/MSによって分析した。
アッセイデータを、以下の表13にまとめる。
Figure 2008538932
突然変異体ラセマーゼは、本来の基質であるアラニンに対して活性を保有しているように見える。
突然変異体ラセマーゼの活性を、基質としてL-トリプトファン、D-トリプトファン、L-アラニン、及びD-アラニンの中の1つを使用して試験した。反応バッファーには、以下の:100mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのPLP、50mMの基質、94μg/mlの突然変異体ラセマーゼが含まれた。反応を、1容量の0.5Mギ酸で止め、そして、実施例1で記載されているように、分析した。基質としてアラニンを用いたアッセイを、室温(〜22℃)にてインキューベートし、そして、基質としてトリプトファンを用いたアッセイを、37℃にてインキューベートした。結果を、以下の表14にまとめる。
Figure 2008538932
ラセマーゼ酵素は、両方向に働き、且つ、野生型の活性を保有する。
突然変異体ラセマーゼを、いくつかの基質に対して試験した。アッセイに使用した酵素を、これまで議論したように精製した。アッセイ条件は、以下のとおりである:50mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのPLP、25mMの基質、40μg/mlの突然変異体ラセマーゼ。反応を、1容量の2Mギ酸で止め、そして、実施例1で記載されているように、分析した。アッセイを、37℃でインキューベートした。(L-異性体から製造されたD-異性体のppmによる)結果を、以下の表15にまとめる(nd=検出されず)。
Figure 2008538932
このラセマーゼは、ここで試験されたものに加えて他のアミノ酸をラセミ化する可能性がある。
突然変異ラセマーゼは様々なアミノ酸に対して活性を持っているように見えるが、モナティンに対して少しもラセマーゼ活性があるように見えない。アッセイに使用される酵素を、これまで議論したように精製した。測定条件は、以下のとおりである:100mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのPLP、50mMのモナティン、1mg/mlの突然変異体ラセマーゼ。アッセイを、37℃でインキューベートした。アッセイを、実施例1で記載されているように、FDAA誘導体化によって分析した。アッセイの結果を、以下の表16に示す。
Figure 2008538932
18時間後でさえ、突然変異体ラセマーゼを使用したS,S体モナティンからS,R体モナティンへの、又はR,R体モナティンからR,S体モナティンへの明らかな変換がなかった。
理想的な酵素は、トリプトファンに対して活性を持っているが、他のアミノ酸又はアミノ酸様化合物、特にモナティンに対してほとんど、又は全く活性を持たない。酵素がモナティンに対して顕著な活性を持っている場合、トリプトファン活性を変わりなく維持するか、又はその酵素がモナティン製造において有用であるために十分に高いレベルで維持しながら、モナティン、及び/又はグルタミン酸に対する活性を減少させるように、その酵素に突然変異を誘発するかもしれない。突然変異誘発に使用されるかもしれない技術には、これだけに制限されることなく、エラープローンPCR、部位特異的突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発標的を特定するためのモデル化(基質結合に関与するかもしれない部位)、変異原性菌株の継代、及びDNAシャッフリングが含まれる。
(8) トリプトファン・ラセマーゼ・モナティン製造
以下の:約50μgの配列番号22のアルドラーゼ、16mg/mLの精製トリプトファン・ラセマーゼ、4mMのMgCl2、50mMのL-トリプトファン、0.5mgの(実施例14で記載されているように、バチルス・スファエリカスから精製した)D-アミノ基転移酵素、100mMのピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、及び0.05mMのPLPを反応混合物1mLあたりに加えた。ピルビン酸は広特異性D-アミノ基転移酵素の許容されるアミノ・アクセプタであるので、α-ケトグルタル酸を使用しなかった。D-トリプトファンが開始基質であり、そして、ラセマーゼを全く含まない対照が含まれた。サンプルを、緩やかに振盪しながら30℃にて2時間又は一晩(20時間)インキューベートした。サンプルを、実施例1で記載されているように分析した。アッセイの結果を以下の表17中に示す(nd=検出されず)。
Figure 2008538932
表17は、L-トリプトファン基質をD-トリプトファンに変換するためにトリプトファン・ラセマーゼを使用したR,R体モナティンの製造を示す。トリプトファン・ラセマーゼを使用することのない、D-トリプトファンからのR,R体モナティンの製造を、対照として利用した。製造されたR,R体モナティンの割合(%)は、出発物質としてのL-又はD-トリプトファンのいずれもほとんど同じである。この結果は、ラセマーゼがR,R体モナティンのラセミ化を触媒する際に検出可能な活性を持たないことを示唆している。
(9) 主要なアミノ酸変化の隔離
突然変異アラニン・ラセマーゼのいくつかの復帰細胞を作り出した。復帰細胞を、以下のプライマー:
5’-gccatttggaaacgatcaactatgaagtgccttgcacgatcag-3’(配列番号37)
5’-ctcccgcctggcggttgccttcttggatgaggcgctcgctttaag-3’(配列番号38)
5’-gccggacgacacgcacattatggcggtcgtgaaggcgaacgcc-3’(配列番号39)、
を使用してこれまで説明したとおりQuik Change Multi Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene、La Jolla, CA)を使用した部位特異的突然変異誘発によって作製した。
35位、66位、及び354位(ATCC 12980由来アミノ酸配列に基づいた番号付け)の3つの変異の6つの可能な組み合わせを作製する試みにおいて、プライマーを、個別に、及び組み合わせて使用した。突然変異のいくつかの組み合わせを作り出し、そして、トリプトファン・ラセマーゼ活性について試験した。アッセイ条件は、以下のとおりであった:50mMのリン酸カリウムpH8.0、10μMのPLP、30mMのL-トリプトファン、100μg/mlの酵素。アッセイを、37℃にて指定された時間、インキューベートした。サンプルを、実施例1で記載されているように分析した。
アッセイの結果を、以下の表18にまとめる(nd=検出されず)。
Figure 2008538932
結果は、Y354A突然変異がトリプトファンに対する活性のために必要であることを示唆している。この突然変異が不存在であった時、トリプトファンに対して検出可能な活性は存在しなかった。
アラニン・ラセマーゼは、例えば、変異原性PCR、変異原性菌株の継代などのランダム法、又は当業者に知られている他の方法によってより広い特異性を持つラセマーゼに更に変換されるかもしれない。より注目されているアラニン・ラセマーゼの進化は、Lys129、Met134を含めた活性部位の残基、及びGly283及びTrp288を含めた、及びその間の残基に注目されるかもしれない(ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスにならった番号付け)。
実施例5
組み換えE.コリのピルビン酸アルドラーゼのスクリーニングのための選択法
実施例4(5)、9、及び10(3)に記載の、及び図1〜9に示された過程の大部分は、インドール-3-ピルビン酸とピルビン酸からR-MPを優先的に製造するアルドラーゼで最適に作動する。それ故に、R-MPを優先的に製造するアルドラーゼをコードする核酸を含むクローンを単離し、そして、試験するための方法を説明する。炭素源としてのリボースと一緒に、M9最少培地上で増殖する時にピルビン酸添加を必要とするエシェリキア・コリ菌株について、これまで説明した。Ponce, E.ら、Cloning of the two pyruvate kinase isoenzymes structural genes from Escherichia coli.:The relative roles of these enzymes in pyruvate biosynthesis," J. Bacteriol. 177:5719-5722ページ(1995年)。菌株の関連遺伝子型は、以下のとおりである:ΔpykA、ΔpykF。ダブルノックアウトを、Datsenko及びWanner、Proceed. Natl. Acad. Sci. USA 97:6640-6645ページ(2000年)の方法によって作り出した。これらの菌株は、ピルビン酸を産生するアルドラーゼをスクリーニングするための、及びモナティンの固有の立体異性体、モナティン前駆体の特定の立体異性体、又はモナティン若しくはモナティン前駆体の類似体に対してより活性であるアルドラーゼに関するスクリーニングに対して基礎を形成することができる。モナティン前駆体の類似体には、例えば、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソグルタル酸、4-カルボキシ-4-ヒドロキシ-2-オキソアジピン酸、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソアジピン酸、又はアルドール反応においてピルビン酸に変換される他のカルボキシルに富む化合物などのProAアルドラーゼ又はKHGアルドラーゼの基質として認定された化合物が含まれる。使用され得るモナティンの類似体の例は、試験細胞において天然のアミノ基転移酵素によって4-ヒドロキシ-4-メチル-2-オキソグルタル酸(ProAの基質)に容易にアミノ基転移され得る4-ヒドロキシ-4-メチル・グルタミン酸である。
クローニング
以下のプライマーを、pykAノックアウトを作り出すために使用した:
5’-ATGTCCAGAAGGCTTCGCAGAACAAAAATCGTTACCACGTTAGGTGTA GGCTGGAGCTGCTTC-3’(配列番号3)及び
5’-CTCTACCGTTAAAATACGCGTGGTATTAGTAGAACCCACGGTACCATA TGAATATCCTCCTTAG-3’(配列番号4)。
以下のプライマーを、pykFノックアウトを作り出すために使用した:
5’-AGGACGTGAACAGATGCGGTGTTAGTAGTGCCGCTCGGTACCAGCATA TGAATATCCTCCTTAG-3’(配列番号5)及び
5’-ATGAAAAAGACCAAAATTGTTTGCACCATCGGACCGAAAACCGGTGTA GGCTGGAGCTGCTTC-3’(配列番号6)。
PCR反応を、標準的なプロトコールを使用し、鋳型としてpKD3又はpKD4のいずれかを用いて実施した。PCR産物を、λred相同組み換えシステムを発現するE.コリの菌株内にエレクトポレーション処理した。PCR産物は、pykA又はpykFに対して相同性を持つので、それらの部位において染色体内に再結合した。二重交差が現れた時、得られた子孫は欠失pykA又はpykF遺伝子及び抗生物質耐性マーカーを持っていた。抗生物質耐性マーカーを有する欠失遺伝子を、標準的なP1形質導入技術を使用してE.コリ株(MG1655)内に形質導入した。
菌株の解析
ダブルノックアウトを、Balch’sビタミン溶液、Balch’s改変微量元素溶液(Balch, W.E.ら、"Methanogens:reevaluation of a unique biological group," Microbiol. Rev. 43:260-296ページ(1979年))、及び0.4%のD-リボースを補った最少培地(M9塩)(Difco)上での増殖について試験した。二重変異体に関して、5mMのピルビン酸も培地に含まれない限り増殖は見られなかった。野生型MG1655は、ピルビン酸の存在及び不存在の両方において前記培地上で増殖した。ダブルノックアウトは、リボースよりむしろ0.4%のグルコースを補った先に記載の最少培地上での増殖について試験した。この培地上での増殖は、野生型株で見られたものと類似していた。この培地であれば、ピルビン酸は、ptsI遺伝子産物(ホスホエノールピルビン酸からピルビン酸を作製し、且つ、リン酸からグルコースに変換するホスホトランスフェラーゼ系の酵素)によってグルコースから産生され得る。ダブルノックアウト菌株を、リボースよりむしろ0.4%のL-アラビノース又は0.4%のD-キシロースを補った先に記載の培地を使用して同様に増殖について試験した。ピルビン酸は、これらの5炭素含有(非PTS)基質上での増殖から産生されない。ダブルノックアウトは、5mMのピルビン酸が補われない限り、これらの条件下で増殖しなかったが、野生型株は、ピルビン酸の存在及び不存在の両方で普通に増殖した。
(pET30 Xa/LIC内にクローン化された)WO 03/091396 A2の実施例2に記載のコマモナス・テストステロニからのproAアルドラーゼ遺伝子と、(pET30 Xa/LIC及びpET32内にクローン化された)WO 03/091396 A2の実施例3に記載のaspC/proA遺伝子オペロンを、pBAD TOPO TA発現キット(Invitrogen)を使用してpBAD-TOPO内にサブクローニングした。
これらの構築物において、遺伝子の発現を、誘導性araBADプロモーターによって調節する。アラビノース(例えば、0.4%)及びIPTGの存在下で、遺伝子を発現する。ピルビン酸又はピルビン酸の起源が補われない限り、菌株は最少培地上で増殖しない。培地には、モナティン、モナティン前駆体、又はモナティン若しくはモナティン前駆体の類似体が補われてもよい。文献で使用されている基質の代表的な範囲は、0.5〜5mMである。例えば、ProAアルドラーゼは、モナティン前駆体をピルビン酸に変換することができるので、インドール-3-ピルビン酸が菌株にピルビン酸源を供給し、そして、0.4%のアラビノースを含む最少培地上での増殖を許容する。proA及びaspC遺伝子の両方を発現する構築物は、モナティンをモナティン前駆体に、そして、モナティン前駆体をピルビン酸とインドール-3-ピルビン酸に変換することができる。更に、アミノ基転移酵素は、インドール-3-ピルビン酸をL-トリプトファンに変換するので、トリプトファン要求性を補完する。このシステムは、アルドラーゼについてスクリーニングするため、及びモナティンの特有の立体異性体、モナティン前駆体の特異的な立体異性体、又はモナティン又はモナティン前駆体の類似体に対してより活性なアルドラーゼについてスクリーニングするために使用される。例えば、定向進化がWO 03/091396 A2の実施例2で開示されているアルドラーゼのいずれかに対して実施される場合、得られた変異酵素のエナンチオ特異性を比較するために、R又はS体モナティン前駆体のいずれかを含む培地を利用したプレート・アッセイを使用する。R体モナティン前駆体を含むプレート上で増殖が起き、且つ、S-モナティン前駆体を含むプレート上で増殖がほとんど若しくは全く起こらない場合、アルドラーゼは、反応部位にR-キラリティーを含む基質に特異性がある。
1×Balch’sビタミン溶液及びBalch’s改変微量元素溶液を含むM9最少培地プレートを作製した。Balch, W.E.ら、"Methanogens:reevaluation of a unique biological group." Microbiol Rev. 43:260-296ページ(1979年)。炭素源(0.4%w/v)としてグルコース又はアラビノースが含まれ、そして、プレートには、20mMのリン酸カリウム・バッファー(pH8.0)中に溶解させた5mMのモナティン(R,R;S,Sラセミ体混合物)又はモナティンを含まない等量のリン酸カリウム・バッファーのいずれかを補った。増殖を、以下の表20にまとめている。
Figure 2008538932
ProA及びAspCのレベルの制御、モナティンの取り込みの増強、モナティンに代えてモナティン前駆体の使用(この場合、アミノ基転移酵素が存在する必要がないだろう)、又はより低い疎水性のモナティン類似体、例えば、先に説明したものなどの使用によってスクリーニングが最適化できることが期待される。モナティンの取り込みを増強するための方法には、アミノ酸混合物の追加、特定のアミノ酸の追加、及び細胞壁の透過処理を助ける界面活性剤、抗生物質、抗生物質類似体、若しくは酵素の使用、アルドラーゼが増殖を養うのに十分なピルビン酸を提供できなかった場合に増殖を可能にするための少量のピルビン酸の追加が含まれる。ポリミキシンBノナペプチド(Dixon及びChopra、Antimicrobial Agents and Chemotherapy 29:781-788ページ(1986年))及びミクロシスチンRR(Dixonら、FEMS Microbiology Letters 230:161-170ページ(2004年))は、E.コリの外膜を透過処理する作用物質として説明された。
同等の結果を伴って他のプロモータ系/プラスミドがこのスクリーニング・システムに使用されることが期待される。実施例には、T7プロモーターシステム、並びにIPTG誘導プロモータ、例えば、tac及びlacなどが含まれる。
aspC及びproA遺伝子を、pTrc99a発現ベクター(Amersham、Piscataway, NJ)内にクローニングした。得られたベクターを、トリプトファン要求性変異株CAG18455又はCAG18579内に形質転換した(菌株の説明の関して実施例4を参照のこと)。形質転換体を、0.1mMのIPTG及び5mMのモナティンを含むM9最少培地に蒔いた。37℃にて3日後に、オペロン・プラスミドを持つ菌株がコロニーを形成したのに対して、親株は増殖したように見えなかった。更に、増殖がIPTGの存在に依存しており、オペロンの発現が増殖に必要であったことを示唆した。この補足的研究において、aspC/proAオペロンは、モナティンからMPを形成し、そして、MPからインドール-3-ピルビン酸を形成した。そして、インドール-3-ピルビン酸は、L-トリプトファンに変換されることができ、トリプトファン要求性変異株がM9最少培地上で増殖することを可能にした。
いくつかの潜在的な生物体が、R体に特異的なアルドラーゼを持っているかもしれないので、先に説明したように試験されてもよい。R,R体モナティンの存在が、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)の培養上清中に検出された。これは、R体モナティンを前駆体に作ることができる酵素の存在を示唆している。更に、モナティンの複合異性体の存在が、逆相クロマトグラフィーを使用したシノリゾビウム・メロティの無細胞抽出物中に検出され、アルドラーゼ、又はアミノ基転移酵素の存在が、モナティン前駆体のR立体異性体の作製を可能にすることを再び示唆している。
シュードモナス・ストラミネア(Pseudomonas straminea)(シュードモナス・オクラセア(Pseudomonas ochraceae)NGJI)、シノリゾビウム・メリロティ、スフィンゴモナス種(Sphingomonas sp.)LB126、アルスロバクター・ケイセリ(Arthrobacter keyseri)12B、エルシニア・ペティス(Yersinia pestis)菌株CO92、ブラジリゾビウム・ジャポニクム(Bradyrhizobium japonicum)str. USDA 110、スフィンゴモナス(シュードモナス)パウシモビリス(Sphingomonas (Pseudomonas) paucimobilis)、エルシニア・ペティスKIM、ラルストニア・メタリズランス(Ralstonia metallidurans)CH34、エルシニア・シュードツベルクロ(登録商標)ーシス(Yersinia pseudotuberculosis)IP32953、リゾビウム・レグミノサルム(Rhizobium leguminosarum)次亜種viciae rhiz23g02-p1k_1009_341(サンガー研究所)、ノボスフィンゴビウム・アロマティシボラン(Novosphingobium aromaticivorans)DSM12444、シュードモナス・プチダKT2440、マグネトスピリルム・マグネタクティカム(Magnetospirillum magnetotacticum)MS-1、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)CGA009、キサントモナス・カンペストリス(Xanthomonas campestris)ATCC-33913、キサントモナス・アクソノポディス(Xanthomonas axonopodis)citri 306、及びストレプトマイセス・アベルミチリス(Streptomyces avermitilis)MA-4680には、鋳型としてproA(コマモナス・テストステロニ)を使用したBLAST解析によって発見された相同体がある。米国特許出願番号第20050282260号を参照のこと。これらの生物体を、DNA源として使用し、そして、先に触れたスクリーニングにより試験してもよい。
没食子酸、シリンガ酸、プロトカテク酸、フタル酸、パラヒドロキシ安息香酸、及びフルオレンにより増殖ができる生物体は、モナティンを作るかもしれないアルドラーゼを持つかもしれないので、先に触れたスクリーニングの可能性がある。以下の生物体:ボルデテラ・ブロンキセプティカ(Bordetella bronchiseptica)RB50、ボルデテラ・パラペルツッシス(Bordetella parapertussis)12822、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)MGH78578、マグネトスピリルム・マグネタクティカムMS-1、ロドシュードモナス・パルストリスCGA009、スフィンゴモナス・アロマティシボランF199、キサントモナス・アクソノポディスcitri 306、キサントモナス・カンペストリスATCC 33913は、4,5-ジオキシゲナーゼ経路を通じてプロトカテク酸を代謝するので、有用性のあるものであるかもしれないアルドラーゼを持つかもしれない。
そして、以下の生物体:アシネトバクター・カルコアセティクス(Acinetobacter calcoaceticus)ADP1、アシネトバクター種ATCC 33305、ADP1、アグロバクテリウム・トゥメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)C58、アゾトバクター・ビネランジー(Azotobacter vinelandii)AvOP、ブラジリゾビウム・ジャポニクム str. USDA 110、ブラジリゾビウム・ジャポニクム tr. USDA 438、ブルセラ・アボルタス、ブルセラ・メリテンシス(Brucella melitensis)16M、ブルセラ・メリテンシスsuis 1330、バークホルディア・セパシア(Burkholderia cepacia)J2315、バークホルデリア・フンゴルム(Burkholderia fungorum)LB400、バークホルデリア・シュードマレイ(Burkholderia pseudomallei)K96243、コリネバクテリウム・エフィシエンス(Corynebacterium efficiens)YS-314、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC-13032、メソリゾビウム・ロティMAFF303099、マイコバクテリウム・アビウム亜種パラツベルクロ(登録商標)ーシス(Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis)str. k10、シュードモナス・エルギノーサPAO1、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)Pf0-1、シュードモナス・フルオレッセンスSBW25、シュードモナス・プチダKT2440、シュードモナス・シリンガエ(Pseudomonas syringae)pv. tomato str. DC3000、ラルストニア・ソラナセアルム(Ralstonia solanacearum)、ロドコッカス種(Rhodococcus sp.)菌株I24(IG-15)、シノリゾビウム・メリロティ1021、ストレプトマイセス・アベルミチリスMA-4680、ストレプトマイセス・コエリコロル(Streptomyces coelicolor)A3(2)、キサントモナス・アクソノポディスcitri 306、キサントモナス・カンペストリスATCC-33913は、3,4-ジオキシゲナーゼ経路を通じてプロトカテク酸を分解するので、有用性のあるものであるかもしれないアルドラーゼを持つ。
実施例6
HEXAspCの部位特異的突然変異誘発
実験の概要
E.コリAspCの六つの突然変異(hexamutant)(HEXaspC)が、WO 03/091396 A2の実施例6で記載されているように、S,S体モナティンの製造に関して、AspCと比較した場合に、より良好な活性を持っていることがわかった。Hex(受入番号/AHFA、gi:127190)には、AspC(E.コリの番号付け)からの以下の突然変異:V35L、K37Y、T43I、N64L、T104S、及びN285Sが含まれる。構造解析及び文献報告に基づいて(Rothman, S.及びKirsch, J.、J. Mol Biol 327:593-608ページ(2003年);Rothman, S.ら、Protein Science 73:763-772ページ(2004年))、モナティン製造経路において利用される基質:L-トリプトファン、S-MP、又はその両方、に向けて動的活性が増強されることが期待される5つの更なる突然変異体を作成した。前記突然変異体のうちの2つは、トリプトファン及びS,S体モナティンの両方に関してアミノ基転移速度が増強された。前記突然変異体のうちの2つのは、S,S体モナティンの形成に関して増強された立体選択性を示した一方で、1つは立体選択性がより低かった。これに基づいて、類似した突然変異を有するバチルス種からの広特異性D-アミノ基転移酵素は、図3に示されている、及び実施例4(4)に記載されているR,R体モナティン経路におけるDアミノ基転移酵素として有用であることが期待される。前記突然変異体の中の1つ(HEXaspCP9T/R122G)は、L-トリプトファン・アミノ基転移に関して活性が増強されたが、S,S体モナティン製造又はS,S体モナティン・アミノ基転移における活性は顕著に低下した。これにより、この酵素が、図1、2、4、5、6、7、及び8に示されている、並びに実施例9及び10(3)に記載されているR,R体モナティン製造経路の第1ステップにおいて有用であることが期待される。通常、L-トリプトファンに対するAspCのものと類似した活性、並びにR-MP及びS-MPに対する制限された活性を持つアミノ基転移酵素が、図1、2、4、5、6、7、及び8に表された過程に有用であるだろう。
方法と材料
pUC19内にクローニングしたHEX遺伝子を、J. F. Kirsch教授(Department of Molecular and Cell Biology, University of California, Berkeley, Berkeley, CA 94720-3206)に提供してもらい、そして、pET23a内への遺伝子のクローニングのための鋳型として使用した。Onuffer, J. J.及びKirsch, J. F.、"Redesign of the substrate specificity of Escherichia coli aspartate aminotransferase to that of Escherichia coli tyrosine aminotransferase by homology modeling and site-directed mutagenesis," Protein Science 4:1750-1757ページ(1995年)を参照のこと。また、NCBI受入番号1AHF_A GI:1127190(HEXアミノ酸配列)も参照のこと。以下のプライマー:
HEXaspCプライマー:
N末端:5’-GCGGAACATATGTTTGAGAACATTACCGCC-3’(配列番号7);
C末端:5’-ATAACCGGATCCTTACAGCACTGCCACAATCG-3’(配列番号8)、
をpET23aベクター(Novagen、Madison, WI)内へのHEX遺伝子のクローニングのために設計した。
以下のPCRプロトコールを、遺伝子増幅のために使用した:100μLの反応物中に、50ngのDNA鋳型、1.0μMの各プライマー、0.2mMの各dNTP、1UのPfu Turboポリメラーゼ(Stratagene;LaJolla, CA)、及び1×クローン化Pfuバッファーを加えた。温度サイクル・プログラムは、94℃にて5分間のホットスタート;それに続く25サイクルの94℃(30秒間)の変性ステップ、55℃(1分間)のアニーリング・ステップ、72℃(2分間)の伸長ステップ、そして、最後に72℃(7分間)の仕上げステップを利用した。精製したPCR産物を、BamHIとNdeI(New England Biolabs)制限酵素で消化した。PCR産物を、Roche Rapid DNA連結キットを使用して、同様にNdeIとBamHIで消化したpET23a内に連結した。脱塩した連結物を、製造業者のプロトコールに従って、Bio-Rad Gene Pulser IIシステムを使用してE.コリ DH10B細胞にエレクトポレーション処理した。少量調製したDNAを、Qiagen Spin Miniprepキットを使用して調製し、突然変異誘発反応の鋳型として使用した。プラスミドを、製造業者のプロトコール(Novagen)に従って、E.コリ BL21(DE3)細胞内に形質転換した。
130位のトリプトファン残基は、ピリドキシル環とのスタッキング相互作用に重要であると考えられるが、タンパク質モデリングの観察に基づいてS-モナティン前駆体(「S-MP」)基質との立体障害の原因であるようにも見える。それ故に、より小さい疎水性側鎖を有するアミノ酸(フェニルアラニン)を、トリプトファンを置き換えるために使用した。所望の突然変異の新しい組み合わせを作成したが、残りの突然変異は文献中の動態学的データに基づいた。W130F以外のHEXaspCに対する全ての突然変異を、製造業者の指示に従って、Stratagene Multi-Changeキットを使用して作製した。W130F突然変異を、PCR反応の伸長温度を66℃まで下げたことを唯一の例外として、製造業者の指示に従ってStratagene QuikChangeキットを使用して作製した。multi-changeキットのプライマーを、W130F単一突然変異プライマーを除いて、www.stratagene.com上のQuikChangeマルチ・キット・プライマー設計ツールを使用して設計した。
プライマー配列を、以下の表21に列挙する:
Figure 2008538932
HEXaspC突然変異遺伝子の発現と酵素活性の分析
Novagen Overnight Express(商標)Autoinduction System 2(カタログ番号71366-3;溶液1〜6)の液体培養(5mL)に、以下の菌株:
E.コリBL21(DE3)::HEXaspCpET23a
E.コリBL21(DE3)::HEXaspCW130FpET23a
E.コリBL21(DE3)::HEXaspCT156ApET23a
E.コリBL21(DE3)::HEXaspCP9T/T156ApET23a
E.コリBL21(DE3)::HEXaspCP9T/R122GpET23a
E.コリBL21(DE3)::HEXaspCR122G/T156ApET23a、
の新しいプレート又は冷凍グリセロール・ストックから播種した。培養物を、37℃、230rpmにて6〜8時間、インキューベートした。それぞれの培養物のOD600を、測定し、そして、25mL中、0.03〜0.05のOD600を得るのに必要な培養物の容量を計算した。計算した容量のそれぞれの液体培養物を、25mLの同じ培地の入ったフラスコに移した。Overnight Express(商標) Autoinduction System 2を、細胞増殖の観察を必要としない、誘導剤としてラクトースを使用するIPTG誘導発現系を用いた高レベル発現のための化学的に規定された培地を完備するものである。Overnight Express培養物を、230rpmで振盪しながら、30℃にて18時間、インキューベートした。細胞を、遠心分離によって採集し、そして、冷たい50mMのMOPS、pH7.0で1回洗浄した。次に、細胞を、Novagen推奨のプロトコールに従って、1μL/mLのbenzonaseヌクレアーゼ(Novagenカタログ番号70746-3)、5μL/mLのプロテアーゼ・インヒビター・カクテル・セットII(Novagenカタログ番号539132)、及び0.33μL/10mLのr-リゾチーム(Novagenカタログ番号71110-3)を含むBugbuster(商標)(1級アミン不含)Extraction Reagent(Novagenカタログ番号70923-3)を使用して溶解した。緩やかに振盪しながらの25℃にて15分間のインキュベーション後に、各懸濁液からの細胞の破片を、21,000×g、4℃にて15分間の遠心分離によってペレット化した。上清を、慎重にデカントし、そして、無細胞抽出物として分析した。前記細胞破片画分を30%のBugbuster(商標)(1級アミン不含)Extraction Reagent中に懸濁し、21,000×gで10分間、遠心分離し、遠心分離したペレットを10%のBugbuster(商標)(1級アミン不含)Extraction Reagent中に懸濁し、再び遠心分離して、洗浄したペレットを分離することによって、封入体画分を分離した。
無細胞抽出物と封入体画分を、タンパク質の発現について4〜15%の勾配ゲル(Bio-Rad番号161-1104)によるSDS-PAGEによって分析した。細胞抽出物サンプルに関して、20マイクログラムの可溶性タンパク質を、それぞれのゲル・レーン中に添加した(1×タンパク質添加バッファーとあらかじめ混合し、そして、95℃にて5分間、過熱した)。封入体画分を、1×タンパク質添加バッファー(0.2mL)中に溶解し、95℃にて10分間、加熱し、そして、1つのゲル・レーンあたり5μLの各溶液を添加した。各レーンに添加された総可溶性タンパク質と比較した、それぞれのHEX突然変異体の量を、Labworks Biolmaging ID-gelツール(UVP, Inc.、Upland, CA)を使用したバンド強度解析によって計算し、そして、それを以下の表22に報告する:
Figure 2008538932
ゲルの分析は、HEXaspCR122A/T156A突然変異体が、封入体としてかなりの量で検出された唯一のタンパク質であることを示した。HEXaspCP9T/T156Aタンパク質は、HEXaspCタンパク質に比べて約90%良好な高い発現レベルを与えた。対照的に、W130F、T156A、及びP9T/R122Gタンパク質は、HEXaspCと比べてより低い濃度で発現された。
S,S体モナティンの製造に関するHEXaspC突然変異タンパク質の活性を、以下の反応条件を使用して計測した:50mMのTAPS、pH8.2、4mMのMgCl2、3mMのリン酸ナトリウム、pH8.0、200mMのピルビン酸ナトリウム(pHを8に調整した)、5mMのα-ケトグルタル酸(pHを8に調整した)、50mMのトリプトファン、0.05mMのピリドキサール3-リン酸、50μg/mLのProAアルドラーゼ(む細胞抽出物として添加)、異なった濃度(約50と500μg/mL)のアミノ基転移酵素(無細胞抽出物として添加)、を含むそれぞれ1mLの反応物。脱気水を、原液を調製するため、及び反応混合物の容量を1.0mlに調整するために使用した。ピリドキサールリン酸を、酵素添加の直前に加えた。反応管を、緩やかに振盪しながら、30℃にて4時間、インキューベートした。サンプル(0.01mL)を、酵素添加の1、2、及び4時間後に回収し、濾過し、そして、実施例1で記載されているように、LC/MS/MSによって分析した。モナティン製造を、反応物中に存在しているアミノ基転移酵素の量に基づいて標準化した。
これらのアッセイの条件下、HEXaspC、及びHEXaspCT156Aが、1mgのアミノ基転移酵素のあたり最も多い総モナティンを製造した一方で、P9T/R122Gタンパク質は最少量しか製造せず、HEXaspCW130Fがそれに続いた。HEXaspCW130FとP9T/R122G酵素は、(300μg/mLを超える)高酵素濃度を使用した時でさえ、S-MPに対して最大の立体選択性を示した(98%を超えるS,S-モナティン)。S,S体モナティン生成物の割合(%)は、高濃度にてP9T/T156A酵素を含む酵素反応において90%未満まで低下する。他の突然変異体は、本来のHEXaspC突然変異体(約95%のS,S体モナティン)と非常に類似した生成物立体選択性を示した。実施例1に記載したFDAA誘導体化試薬を使用したHEXaspC酵素を含む反応の生成物の分析は、形成された2番目の立体異性体がR,S体モナティンであることを示した。
トリプトファン及びモナティン・アミノ基転移酵素活性のアッセイ
突然変異体を、基質としてS,S体モナティン及びL-トリプトファンを使用して、アミノ基転移活性について試験した。アミノ基転移酵素活性を、実施例1で記載したとおり、OPA-post-カラム誘導体化を用いたHPLCによって、反応の副産物であるグルタミン酸の形成を追うことで計測した。反応混合物は、1.0mL中、100mMのHEPPSバッファー、pH8.0、20mMのα-ケトグルタル酸、0.08mMのピリドキサールリン酸、25mMのトリプトファン又はS,S体モナティン、及び(2.5mgの細胞抽出タンパク質の状態で提供される)酵素を含む。酵素以外の全ての成分を一緒に混合した。酵素を加えて、反応を開始し、そして、その反応溶液を、(緩やかに振盪しながら)30℃にて90分間、インキューベートした。反応を、酵素を加えなかった負の対照と一緒に、二重反復試験で行った。反応を、10%のギ酸(終濃度)の添加によって止め、混合物を21,000rpmで遠心分離し、そして、上清を、慎重に取り出して濾過した。データを、グルタミン酸のバックグラウンド・レベルについて、及び酸の添加からタンパク質の沈殿までの希釈について修正し、次に、加えた突然変異体アミノ基転移酵素の量によって標準化した。トリプトファンを基質として利用した時、HEXaspCは、1時間あたり1mgのアミノ基転移酵素につき13.0mMのグルタミン酸を製造した。割合(%)として表現される、突然変異体の相対的活性は、以下のとおりである:HEXaspCW130F(156%)、HEXaspCT156A(151%)、HEXaspCP9T/T156A(63.7%)、HEXaspCP9T/R122G(116%)、及びHEXaspCR122G/T156A(107%)。S,S体モナティンを基質として利用した時、HEXaspCは、1時間あたり1mgのアミノ基転移酵素につき7.43mMのグルタミン酸を製造した。割合(%)として表現される、突然変異体の相対的活性は、以下のとおりである:HEXaspCW130F(113%)、HEXaspCT156A(87.7%)、HEXaspCP9T/T156A(67.3%)、HEXaspCP9T/R122G(11.2%)、及びHEXaspCR122G/T156A(114%)。
HEXaspCP9T/R122G突然変異体は、トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸への変換に対する活性を高めたが、S,S体モナティンのアミノ基転移に対する活性を低下させた。トリプトファン対モナティン活性の比は、HEXaspCの1.75と比較して18.2であり、例えば、実施例9及び10(2)に記載されたものなどの、L-アミノ基転移酵素を必要とする経路を使用したR,R体モナティンの製造の望ましい候補になった。そういうものとして、HEXaspCP9T/R122Gもまた、S,S体モナティン並びにMPに対する制限された活性を有するアミノ基転移酵素の例である。
大部分の突然変異が、L-トリプトファン活性を改善したが、2種類の突然変異体だけがL-トリプトファンとS,S体モナティンの両方に対する活性を高めた(HEXaspCW130FとHEXaspCR122G/T156A)。25mMの基質をこれらのアッセイに使用したので、酵素は、飽和された可能性が最も高いので、活性は酵素のkcatを反映したものである。しかしながら、先に記載の、S,S体モナティン製造に関するアッセイを実施した条件下で、S-MPの濃度が酵素を飽和するのに十分であり、これにより、kcatの増大がkmの増大で相殺されるので、S,S体モナティン製造における全体的な増加は存在しなかった。同様の基質について、一部の突然変異がkcatを増大させたが、アミノ酸基質に対する見かけ上のKmもまた増大させたことが報告された。高い濃度の基質が使用された場合に、これらの2種類の突然変異体が、HEXaspCと比較して、S,S体モナティンの製造速度における利益を提供するだろうと期待される。HEXaspCT156A突然変異は、S,S体モナティン製造のための先の条件下、MPアミノ基転移速度に顕著な影響なしに、トリプトファン・アミノ基転移速度を高めるように見える。
HEXaspCと、バチルス属のD-アミノ基転移酵素(Sugio, S.ら、Biochemistry 34:9661-9669ページ(1995年)を参照のこと)の構造の比較によって、AspCのW130F、R122G、T156A、及びHEX突然変異を、D-アミノ基転移酵素構造内の対応する残基にマッピングできた。実施例3で記載されているように、広特異性D-アミノ基転移酵素における類似した突然変異がR,R体モナティンの製造の全体を改善するだろうことが期待される。例えば、AspCにおける130位のトリプトファンによってに提供される機能性は、バチルスD-アミノ基転移酵素において、179〜181位のセリン及び166位のグルタミン酸(YM-1番号付け方式)の側鎖の間の水素結合によって置き換えられる。立体障害を少なくするために、グルタミン酸をアスパラギン酸残基に変異させるかもしれない。一部のD-アミノ基転移酵素は、立体障害を増強するだろう179位のトレオニン残基を持つので、避ける必要がある。B.スファエリカス酵素は、181位のセリンに代わってアラニンを持っており、それは同様に立体障害を低下させるかもしれない。
アスパラギン酸アミノ基転移酵素の研究からの追加の情報は、その上、D-アミノ基転移酵素にも適用することができる。AspC酵素は、ジカルボン酸基質の側鎖と相互作用する活性部位にアルギニンを持っているのに対して、D-アミノ基転移酵素には、Ser240からSer243までループがある。Ser240、Thr242、及びSer243の側鎖は、同じ方向を向いており、そして、無極性若しくは極性基質の両方が相互作用できるような表面を提供するポケットをSer180のヒドロキシル基と共に形成する。Ser180は、PLP結合に関与するが;しかしながら、R-MPに対するD-アミノ基転移酵素の活性を改善するために、当業者は、より大きい基質を受け付けるか、又は陰性荷電基質を好むようにSer240、Thr242、又はSer243残基を修飾する。例えば、側鎖長を短かくするために、Thr242をSerに変異させる。前記残基の1つ、例えば、Ser243などを、リジン又はアルギニンに変異させる。残基(YM-1番号付け)Val30〜Val36は、D-アミノ基転移酵素の活性部位を横切るβ鎖内に位置しているので、同様に、活性にも重要である。Tyr31、Val33、Glu32、及びLys35は、活性部位に面していると考えられる。Tyr31、Glu32、及びVal33は、全てのバチルス相同体において不変である。Roら、FEES Lett 395:141-145ページ(1996年)では、Val33のAlaへの突然変異を誘発し、そして、α-ケトグルタル酸アミノ基転移に関する触媒効率のわずかな増強、及びより大きな基質に対する顕著に改善された触媒効率(より少ない立体障害)を見出した。いくつかの相同体において、Lys35をArgで置き換えているが、立体障害に関係する場合には、Lys残基が望ましいかもしれない。この場合も先と同様に、例えば、MPなどの巨大分子に対するより低い立体障害の理由から、バリン34及び36には、また、例えば、イソロイシンなどの保存的置換も望ましい。実施例15及び16で説明した新規D-アミノ基転移酵素(「4978」)は、B.スファエリカス酵素、及び実施例19で説明した混成DATと比べてより高い活性を有するので、それは、更なる突然変異誘発反応のための当然の選択である。YM-1 D-アミノ基転移酵素の結晶構造解析に基づく前記の考えは、ATCC菌株4978からのD-アミノ基転移酵素に適用することができる。前記の番号付けは、4978のタンパク質配列内の対応するアミノ酸と比べてアミノ酸が1つ足りない。
実施例7
モナティンの製造における分枝鎖アミノ基転移酵素(「BCAT」)の使用
AT-102及びAT-104は、BioCatalytics(Pasadena, CA)から購入された分枝鎖L-トランスアミナーゼ(EC 2.6.1.42)である。前記酵素を、化学的に製造されたS,S体及びR,R体モナティン基質を使用して、アミノ基転移活性について試験した。反応を、0.5mLの全容量で実施し、そして、二重反復試験にて行った。アッセイには、50mMのTris pH7.8、0.08mMのPLP、10mMのα-ケトグルタル酸(「α-KG」)、5mMのモナティン、及び1mg/mLのアミノ基転移酵素が含まれた。負の対照は、外因性のアミノ基転移酵素を含まなかった。サンプルを、100rpmで振盪しながら30℃にて2時間インキューベートした。サンプルを濾過し、そして、実施例1で記載されているLC/MS/MS分析をグルタミン酸レベルを確かめるために実行した。グルタミン酸レベルは、MP製造を用いて化学量論的に補正する必要がある。R,R体を反応基質として使用した時、極めて低レベルのグルタミン酸が負の対照に存在していた。AT-104は、負の対照に比べてわずかに多いグルタミン酸を製造し、R,R体モナティン基質(D-アミノ酸)に対する低レベルの活性を示した。分枝鎖L-アミノ基転移酵素の両方が、S,S体モナティンに対する活性を示した。AT-102は、102μg/mLのグルタミン酸を製造し、そして、AT-104は、64μg/mLのグルタミン酸を製造した。比較のために、広特異性アミノ基転移酵素(AT-101、同様に、BioCatalytics製)は、これらの条件下、75μg/mLを製造した。モナティンは、広特異性又はアスパラギン酸アミノ基転移酵素の基質として正常に機能するジカルボキシルアミノ酸及び芳香族アミノ酸に対して構造的な類似性を持っているので、分枝鎖アミノ基転移酵素が原因の高い活性は少々意外なものである。しかしながら、モナティンのグルタミン酸(glutamatic acid)骨格に起因して、アミノ・ドナーとしてグルタミン酸を利用することができる多くのアミノ基転移酵素は、また、モナティンに対する活性も持つかもしれない。
BCATを使用したインドール-3-ピルビン酸からのモナティンの製造
AT-102及びAT-104を、(WO 03091396 A2に記載されているように製造した)C.テストステロニからのProAアルドラーゼを使用した共役反応におけるモナティンの製造について試験した。酵素及び追加の成分/基質を、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、100mMのL-グルタミン酸、及び0.1mMのPLPを含む、キットで提供された反応バッファーに直接加えた。1mLの反応バッファー:4mgのインドール-3-ピルビン酸、20mgのピルビン酸、約50μgの、細胞抽出物の状態で提供されたProA、1μLの2M MgCl2、及び2mgの試験されるべきアミノ基転移酵素、を加えた。全ての反応を二重反復試験で実施し、そして、負の対照反応を、追加のアミノ基転移酵素なしで実行した。正の対照(AT-101)を比較に利用したが;この酵素は広特異性L-アミノ基転移酵素である。モナティンのバックグラウンド製造は、組み換えProA酵素の細胞抽出物中に存在している天然のE.コリ・アミノ基転移酵素に起因する。反応物を、緩やかに振盪しながら(100rpm)30℃にて一晩、インキューベートした。サンプルを、濾過し、そして、実施例1で記載されているように、逆相LC/MS/MS分析に供した。結果を、以下の表23に示す。
Figure 2008538932
AT-102及びAT-104アミノ基転移酵素は、明らかに、負の対照に比べてより多くのモナティンを製造し、正の対照の約50〜60%程度活性であった。
E.コリからの分枝鎖アミノ基転移酵素は、十分に研究され、そして、結晶構造は詳細に分析されてきた。Okada, K.ら、(1997年)J. Biochem(Tokyo)727:637-641ページ(1997年)。前記酵素は、バチルスのD-アミノ基転移酵素、例えば、実施例2、3、及び6において触れられているものなど、に対して類似した全体的な折り畳み、及び重要な配列の相同性を有する。加えて、バチルスからのBCAT酵素及びD-アミノ基転移酵素が、PLPに対する水素のre表面付加に関する立体特異性を示すたった2タイプのPLP依存性アミノ基転移酵素である。Yoshimura, T.ら、J. Am, Chem. Soc. 775:3897-3900ページ(1993年)。BCATは、α-アミノ酸基質がリン酸基と同じ側にてそのカルボキシル群と結合するものであり、L-アミノ酸に対する特異性をそれでも保持すると同時に、D-アミノ基転移酵素に類似した折り畳み、及び作用機序を持つことを可能にする、唯一の酵素であると考えられる。Peisach, D.ら、Biochemistry 37:4958-4967ページ(1998年)。BCATのL-特異性は、BCATで基質のα-カルボキシル基に位置するD-アミノ基転移酵素の極性アミノ酸側鎖がBCAT内の非極性残基に置き換えられるという事実によってもたらされると思われる。これらの残基の全部、又は一部をバチルスのD-アミノ基転移酵素の対応するアミノ酸に変異させた場合、当業者はBCATをD体に特異的なアミノ基転移酵素に変えることもあり得ることが予想される。以下の突然変異(番号付けは、受入番号gi:14719463に基づく):Phe37をTyrに、Val110をHisに、Met108をArgに、をE.コリのBCATに対して行ってもよい。実施例6で記載されているように、大きなジカルボン酸基質を受け入れるように酵素活性部位を調整するために、他の極性アミノ酸置換を、同じく、これらの部位で行ってもよい。Dアミノ基転移酵素のPLP相互作用を反映させるために、Tyr165を、同じく、Leuに変換する必要があるかもしれず;BCAT酵素内の不正確な方向でのα-カルボキシル基の結合を妨げるように、Arg96(をPheに)、Arg41、及びArg98もまた、変異させる必要があるかもしれない。pro-S立体配置における疎水性側鎖結合の可能性を低下させるために、Trp127もまた、Tyrに変異させてもよく;Tyr32及びTyr130は、BCATの活性部位内のL-グルタミン酸と相互作用するかもしれないので、この相互作用を最小限にするために陰性荷電アミノ酸に変異させてもよい。Goto, M.ら、Biochemistry 42:3725-3733ページ(2003年);Okada, K.、Biochemistry 40:7453-7463ページ(2001年)。
D-アミノ基転移酵素と分枝鎖アミノ基転移酵素の両方がモナティンの製造における活性をもつので、BCATを、R,R体モナティンの製造において活性を持つD-アミノ基転移酵素に変換することができると同時に、実施例の多くに記載されている反応スキームで利用される他の見込まれるD-アミノ基転移酵素を提供することが期待される。前記の結果に基づいて、AT-104酵素が、既にモナティンのD-アミノ立体配置に対して何らかの活性を示すことは起こり得る。
バチルスの分枝鎖アミノ基転移酵素のクローニングと突然変異誘発
バチルス・リケニホルミスは、E.コリ分枝鎖アミノ基転移酵素が関連しているよりも、D-アミノ基転移酵素と密接に関連する推定分枝鎖アミノ基転移酵素を含んでいる。それをD-アミノ基転移活性についてアッセイし、そして、E.コリのBCATに関して先に触れた予測された活性部位残基に基づいて突然変異誘発した。
菌株
B.リチェニフォルミス(B. licheniformis)(ATCC番号14580)を、栄養寒天培地上、30℃にて一晩、培養した。コロニー群を、100μLの滅菌水中に置き、そして、95℃にて10分間、加熱して細胞を崩壊させた。3μLを、その後のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅に使用した。
ポリメラーゼ連鎖反応のプロトコール
NcoI及びSalI部位を使用して、pET28b及びpET30aベクター(Novagen、Madison, WI)、並びにpTRC99a(GE Healthcare Life Sciences)内へのクローニングのためにB.リチェニフォルミス遺伝子(915bp)に対してプライマーを設計した。pET30構築物が、N末端Hisタグ及びS-タグを含むのに対して、pET28構築物はタグ付けされていない。
B.リチェニフォルミスbcatプライマー:
N末端:5’-GGTTAAGGCCATGGGGGACCAGAAAGACCA-3’(配列番号44);及び
C末端:5’-GGCCTTCCGTCGACTCAGCTGACACTTAAGCT-3’(配列番号45)。
コード領域を、以下のPCRプロトコールを使用して増幅した。50μLの反応物中、3μLの鋳型、1μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、3.5UのExpand High Fidelityポリメラーゼ、及びMgを含む1×Expand(商標)バッファー(Roche、Indianapolis, IN)を使用した。使用される温度サイクル・プログラムには、96℃にて5分間のホットスタート、続いて以下のステップ:94℃にて30秒間、50℃にて1分45秒間、そして、72℃にて2分15秒間、の30回の繰り返し、が含まれる。30サイクルの後、次に、サンプルを、72℃にて7分間、維持し、そして、4℃にて保存した。正しいサイズの混じりけのないPCR産物を入手した(約900bp)。
クローニング
PCR産物を、精製し、そして、SalIバッファー(New England Biolabs、Ipswich, MA)中、SalIとNcoIで消化した。消化したベクター(pET28、pET30、pTRC99a)、及び挿入物を、Qiagen QIAquickゲル抽出キットを使用して精製した。連結反応を、Roche Rapid DNA連結キット(Roche)を使用して行い、そして、精製した。連結物を、Bio-Radエレクトロポレーション・マニュアルに記載されているように、0.2cmのキュベットと、Bio-Rad Gene Pulser IIシステムを使用してエシェリキア・コリDH10B内に形質転換した。細胞を、900μLのSOC培地中、225rpm、37℃にて30分間、回復させた。細胞を、カナマイシン(25μg/mL)を含むLB寒天平板上に蒔いた。プラスミドDNAを、Qiagen spin miniprepキットを使用して精製し、そして、SalIとNcoIでの制限消化産物によって正しい挿入物についてスクリーニングした。正しい挿入物を持つと思われるプラスミドの配列を、Agencourt BioScience Corporation(Beverly, MA)にてジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって確認した。配列決定は、受入番号AAU24468 GI:52004526に列挙されるアミノ酸配列を含むタンパク質を作り出すNCBI受入番号CP000002 GI 56160984 2851268.. 2850354に見られるコード配列を確認した。
遺伝子発現とアッセイ
プラスミドDNA(pETベクター)を、pETベクターによる構築物のためのE.コリ発現宿主であるBL21(DE3)(Novagen、Madison, WI)内に形質転換した。培養物を培養し、プラスミドをQiagen miniprepキットを使用して分離し、そして、制限消化産物によって分析して、同一性を確認した。誘導を、通常、カナマイシン(50μg/mL)を含むLB培地で実施した。細胞を、0.4〜0.8のOD600まで37℃にて培養し、0.1mMのIPTG(イソプロピル・チオガラクトシド)で誘導し、そして、誘導の3〜4時間後にサンプリングした。細胞抽出物を、(benzonaseヌクレアーゼを含み、そして、Roche completeプロテアーゼ・インヒビター・カクテルが加えられている)Novagen BugBuster(商標)試薬に添付されたプロトコールに従って調製した。SDS-PAGEで判断されるように、高レベルの可溶性タンパク質を予測された分子量にて得た。細胞抽出物中の可溶性タンパク質を、SDS-PAGEによって分離した。
細胞抽出物を、以下のプロトコールを使用してピルビン酸(又は、α-ケトグルタル酸からのグルタミン酸)とD-トリプトファンからのアラニンの製造によって、D-アミノ基転移酵素活性について分析した。二重反復試験の1mL反応物は、通常、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH7.5)、50μMのピリドキサール・リン酸、25mMのピルビン酸ナトリウム、及び50mMのD-トリプトファン中で行った。反応を、無細胞抽出物、又は精製酵素の添加によって開始し、そして、緩やかに振盪しながら30℃にて15分間、又は一晩、インキューベートした。比較目的のために、ほとんど同じレベルのD-アミノ基転移酵素を各アッセイにおいて加え(通常、約0.5mg)、そして、ベンチマーク酵素として、多くの場合、AT-103における(BioCatalytics)を使用した。ギ酸を、2%の終濃度で加えて反応を止め、そして、沈殿したタンパク質を、遠心分離によって除去した。タンパク質を加えていない対照反応も実施した。0時間の点もまた、負の対照として使用した。アラニンとグルタミン酸を、実施例1で記載されているようにOPA誘導体化を使用して検出した。分枝鎖アミノ基転移酵素は、AT-103及びB.スファエリカス酵素と比較して、低レベルのD-アミノ基転移酵素活性を持っていた。
分枝鎖アミノ基転移酵素を、また、(実施例3のように)D-トリプトファンからモナティンを製造する能力について試験したが、試験した条件下では活性は見られなかった。
pTRC99a構築物を、トリプトファン製造に関して栄養要求性である、エレクトロコンピテントE.コリCAG18455細胞内に形質転換した。細胞を、100mg/LのL-トリプトファン、0.4%のグルコース、及び塩化カルシウムと共にBalch’sビタミンを含むM9最少培地で培養した。細胞は、L-トリプトファンなしでは増殖できなかった。誘導を、0.4のOD600において4.5時間、10、100、及び1000pMのIPTGにて試験した。正しいMWにおけるバンドは、SDS-PAGE上で明白であった。プラスミドに、QuikChange(登録商標)Multi Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene)を使用して突然変異誘発した。以下の表24のプライマーを、製造業者によって説明されるとおり設計した。
Figure 2008538932
アミノ酸突然変異は、E.コリBCAT結晶構造に基づき、そして、前記の表中の番号付けは、E.・コリのタンパク質に関するものである。DNA突然変異の番号付けは、B.リチェニフォルミスbcatの遺伝子に基づいている。
プライマーを、0.1mg/mLに希釈し、50μLの突然変異誘発反応において、通常、約100ngのそれぞれのオリゴヌクレオチド・プライマーを使用し、そして、大きなプライマーに対して、比例してより高い濃度を使用した。同じ鋳型領域にアニーリングするために基本的に競合するオリゴヌクレオチド・プライマーに関して、その領域におけるプライマーのプール全体に、合計100ngを使用することもある。200ngの鋳型(B.lich bcat内のpTRC99a)を、5μLの10×QuikChangeバッファー、2μLのdNTPs、及び2μLの酵素混合物と一緒に、前記反応に使用した。増幅産物を、DpnI制限エンドヌクレアーゼ(Stratagene)(2μL)で37℃にて2時間、処理し、エタノール沈殿のために1.5mL厚肉試験管に移した。再懸濁(濃縮)した反応混合物を、QuikChangeキットに含まれるXL10-Gold Ultracomp細胞内に形質転換した(2.5μL)。いくつかのコロニーを少量調製し、そして、配列決定して、突然変異がランダムであること確認し、且つ、達成された突然変異誘発のレベルを推定した。コロニーを前記プレートから再懸濁し、そして、バルク少量調製を行った。次に、少量調製したDNAを、トリプトファン要求性菌株内に形質転換し、そして、(IPTGを含む)先に説明した最少培地上に蒔かれるか、又は単一窒素源としてD-トリプトファンを含む最少培地を使用した。先のラウンドにおいて十分に組み込まれたように思われなかったプライマーを使用して、バルク少量調製において、第2及び第3のラウンドの突然変異誘発を行った。それぞれの段階にて、最少培地上にすぐに増殖したコロニー(大きなコロニー)を、更なる分析のために確保した。以下の表25に示す突然変異体を、選択プレートから分離した。場合により、これらの同じ突然変異体は、選択培地に2回以上現れた。
Figure 2008538932
突然変異体構築物を、LB培地中で組み換え体タンパク質を作るように誘導し、そして、細胞抽出物を前述のとおり調製した。細胞抽出物中の可溶性タンパク質を、BioRad LaboratoriesのExperion Automated Electrophoresis Stationにより分離し、そして、Experionソフトウェア・バージョン1.1.98.0を使用して濃度と発現の割合(%)について分析した。非常に低いレベルの可溶性組み換えタンパク質を観察し;それ故に、着目のバンドの定量化は不可能であった。アッセイを、50〜250μLの細胞抽出物を使用して、前述のとおりD-トリプトファン・アミノ基転移を試験するために行った。クローン4、6、28、及び32を、アミノ・アクセプタとしてα-ケトグルタル酸及びピルビン酸の両方を使用してアッセイし、30℃にて2時間及び一晩、インキューベートした。細胞抽出物から、存在しているアラニン/グルタミン酸のバックグラウンド・レベルは差し引いた。5-1及び5-2を用いたアッセイに関して、BCATs用のExperionソフトウェアによって推定されたタンパク質濃度は、野生型酵素について275.1ng/μl、BCAT5-1について409.3ng/μl、及びBCAT5-2について148.2ng/μlであった。アッセイの結果を、以下の表26〜28に示す。
Figure 2008538932
Figure 2008538932
Figure 2008538932
大部分のL-アミノ基転移酵素のように、酵素は、アミノ・アクセプタに関してピルビン酸と比べてα-ケトグルタル酸を好むことは明白である。全ての突然変異体は、野生型の親が持つように、D-アミノ基転移酵素活性を持っていた。細胞抽出物からのBCATタンパク質の正確な定量化が不可能だったので、野生型酵素が高い又は低いD-アミノ基転移酵素活性を持つどうかは明らかではない。しかしながら、突然変異酵素が、野生型より低いL-アミノ基転移酵素活性しか持たないことが予想され;これにより、D-対L-アミノ基転移速度の比が改善されている。連続的突然変異誘発が、モナティンに対する経路において代替の酵素を提供できるかもしれない。
実施例8
グルタミン酸及びアスパラギン酸ラセマーゼのクローニング、発現、及び試験
この実施例は、L-グルタミン酸とD-グルタミン酸(又は、L-とD-アスパラギン酸又はL-とD-アラニン)の間で相互変換するために使用されるアミノ酸ラセマーゼ酵素のクローニング及び試験のために使用される方法を説明する。グルタミン酸、アスパラギン酸、又はアラニン・ラセマーゼは、R,R体モナティンを製造するための生合成経路において、その経路のステップがL-アミノ酸(例えば、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、又はL-アラニン)を作り出し、そして、その経路の別のステップがD-アミノ酸(例えば、D-グルタミン酸、D-アスパラギン酸、又はD-アラニン)を消費する時に、有用である。図4は、L-トリプトファンに特異的なアミノ基転移酵素、R体に特異的なアルドラーゼ、D-アミノ基転移酵素、及びグルタミン酸(又はアスパラギン酸若しくはアラニン)ラセマーゼを使用した、L-トリプトファンからR,R体モナティンを製造するための生合成経路について説明する。
遺伝子を、pET28及びpET30ベクター内にクローニングして、非タグ付与タンパク質と、切断可能なN末端HIS6-タグ/T7-タグとの融合タンパク質の両方を製造した。得られたタンパク質を、固定化した金属アフィニティー・クロマトグラフィーを使用して精製した。
実験の概要
ラクトバチルス・ブレビス(ジェンバンク受入番号D29627、核酸配列)及びペディオコッカス・ペントサセウス(murI遺伝子)(ジェンバンク受入番号L22789)からのグルタミン酸ラセマーゼ(EC 5.1.1.3)をコードする遺伝子を、クローニングし、そして、E.コリにより発現させた。抽出物を、L-グルタミン酸からD-グルタミン酸への、及びD-グルタミン酸からL-グルタミン酸への変換における活性について試験した。BioCatalyticsのアスパラギン酸ラセマーゼ酵素(EC 5.1.1.13)もまた、L-とD-アスパラギン酸の間の相互変換について試験した。
クローニングのためのゲノムDNAの分離
L.ブレビスのゲノムDNA(ATCC 8287D)を、米国基準菌株保存機構から入手した。P.ペントサセウス(ATCC 25745)を、ラクトバチルスMRS培地中、37℃にて培養し、そして、2mlを、Mekalanos, J. J.、"Duplication and amplification of toxin genes in Vibrio cholerae" Cell 35:253-263ページ(1983年)の方法を使用したゲノムDNAの分離に使用した。
ポリメラーゼ連鎖反応のプロトコール
プライマーを、pET28及びpET30ベクター(Novagen、Madison, WI)内にクローニングするための5’制限部位及びオーバーハングを考慮して設計した。
L.ブレビス・グルタミン酸ラセマーゼ・プライマー:
N末端:5’-GCGGCGCCATGGAAAATGATCCGATTGGTCTAATG-3’(配列番号15)及び
C末端:5’-GCGGCGGTCGACGCAATTACAATTGTGTTTGTC-3’(配列番号16)。
P.ペントサセウス・グルタミン酸ラセマーゼ・プライマー:
N末端:5’-GCGGCGCCATGGATGTATGTATAATTTTATTTAG-3’(配列番号17):及び
C末端:5’-GCGGCGGTCGACAAATTTCATTATTCATTCTAATTT-3’(配列番号18)。
L.ブレビス由来の遺伝子を、以下のPCRプロトコールを使用して増幅した。50μLの反応物中、0.150μgの鋳型、1.6μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、2.8UのExpand high fidelity(商標)ポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)、0.5UのPfuポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla, CA)、及びMgを含む1×Expand(商標)バッファーを使用した。使用される温度サイクル・プログラムには、96℃にて3分間のホットスタート、以下のステップ:94℃にて30秒間、52℃にて45秒間、そして72℃にて2分間、の8回の反復、続く以下のステップ:94℃にて30秒間、60℃にて45秒間、そして72℃にて2分間、の22回の反復が含まれた。22回の反復の後に、サンプルを、72℃にて7分間、保持し、次に、4℃にて保存した。このPCRプロトコールは、DNAサイズ・マーカーとの比較によって判断されるように、〜830bpの産物を作り出した。
P.ペントサセウス由来の遺伝子を、以下のPCRプロトコールを使用して増幅した。50μLの反応物中、0.15μgの鋳型、1.6μMの各プライマー、0.4mMの各dNTP、2.8UのExpand High Fidelity(商標)ポリメラーゼ、0.5UのPfuポリメラーゼ、及びMgを含む1×Expand(商標)バッファーを使用した。使用される温度サイクル・プログラムには、96℃にて3分間のホットスタート、続く、以下のステップ:94℃にて30秒間、37℃にて45秒間、そして72℃にて2分間、の8回の反復、続く、以下のステップ:94℃にて30秒間、45℃にて45秒間、そして72℃にて2分間、の8回の反復、続く、以下のステップ:94℃にて30秒間、55℃にて45秒間、そして72℃にて2分間、の14回の反復が含まれた。14回の反復の後に、サンプルを、72℃にて7分間、保持し、次に、4℃にて保存した。このPCRプロトコールは、DNAサイズ・マーカーとの比較で判断されるように、〜840bpの産物を作り出した。
クローニング
PCR産物を、Qiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を使用して、0.8%のTAE-アガロースゲルからゲル精製した。PCR産物を、SmartSpec 3000(商標)分光光度計を使用して定量化した。産物を、製造業者の推奨プロトコール(New England Biolabs、Beverly, MA)に従って制限酵素NcoIとSalIで消化し、Qiagenゲル抽出キットを使用して0.8%のTAE-アガロースゲルからゲル精製した。ベクターpET28とpET30を、制限酵素NcoIとSalIで消化することによって調製し、それに続いて、エビ・アルカリ・ホスファターゼで処理し、そして、Qiagenゲル抽出キットを使用して0.8%のTAE-アガロースゲルから精製した。
消化したベクターと挿入物を、Rapid(商標)DNA連結キット(Roche、Indianapolis, IN)を使用して連結した。約50 ngの処理した挿入物、100ngの処理したベクター(挿入物対ベクターの3対1のモル比)、5Uの(Rapid(商標)DNA連結キットに同梱されている)T4 DNAリガーゼ、及び1×連結バッファーを、室温で5分間、インキューベートした。連結反応物を、High Pure PCR Product精製キット(Roche)を使用して精製し、そして、E.コリDH10Bエレクトロコンピテント細胞(Invitrogen、Carlsbad, CA)を形質転換するために使用した。10μLのそれぞれの連結反応物を、40μLのDH10B細胞に加え、そして、それを以下の条件:0.2cmのキュベット中、2.5kV、25μF、200オーム、の下、BioRad Gene Pulser IIを使用したエレクトロポレーションによって形質転換した。その細胞を、1mLの室温SOC中、225rpmで振盪しながら37℃にて1時間、回復させた。その細胞を、カナマイシン(50μg/mL)を含むLBプレート上に蒔いた。
プラスミドDNAを、得られた形質転換体からQiagen spin miniprepキットを使用して精製し、そして、NcoIとSalIでの制限消化によって正しい挿入物についてスクリーニングした。正しい挿入物を持っていると思われるプラスミドの配列を、ジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって実証した。
遺伝子発現とアッセイ
配列解析によって実証したプラスミドDNAを、E.コリ発現宿主BL21(DE3)(Novagen、Madison, WI)内にサブクローニングした。培養物を増殖させ、プラスミドを、Qiagen miniprepキットを使用して分離し、そして、制限消化によって分析して同一性を確認した。
BL21(DE3)における誘導を、pET28(非タグ付与)及びpET30(ヒスチジン・タグ付与)ベクターの両方の中のL.ブレビス及びP.ペントサセウス・グルタミン酸ラセマーゼで最初に実施した。経時変化研究を、カナマイシン(50mg/L)を含む250mLのLB中、0.5〜0.6のOD600まで培養し、100mMのIPTG(イソプロピル・チオガラクトシド)で誘導した培養物を用いて実施し、そして、誘導後0及び3時間にてサンプリングした。600μL(0時間)と275μL(3時間)からの細胞を、40μLの、2-メルカプトエタノールを含むドデシル硫酸ナトリウム・バッファー中に再懸濁し、そして、95℃にて10分間、加熱し、そして、冷ました。これらの総細胞性タンパク質サンプルのアリコートを、4から15%の勾配ゲルを使用したSDS-PAGEによって分析した。
5mLの培養物からの細胞ペレットを、0.625μLのbenzonaseヌクレアーゼ及び3μLのプロテアーゼ・インヒビター・カクテル・セット#3(CalbiochemNovabiochem Corp.、San Diego, CA)を含む0.625mLのNovagen BugBuster(商標)試薬中に、室温で20分間、緩やかに振盪しながら懸濁し、そして、16,000×gにて遠心分離して細胞の破片を取り除くことによって、細胞抽出物を3時間の培養物からも調製した。上清(細胞抽出物)を、細胞可溶性タンパク質の分析のために4から15%の勾配ゲルに添加した。
クローン化したL.ブレビス・グルタミン酸ラセマーゼとP.ペントサセウスグルタミン酸ラセマーゼからの3時間サンプルは、総量、及び正しいサイズ(約31kDa)に相当する可溶性タンパク質の両方を示した。L.ブレビスpET30(ヒスチジン・タグ付与)遺伝子産物は、L.ブレビスpET28(非タグ付与)遺伝子産物、並びに両ベクター内のP.ペントサセウス遺伝子産物と比べて、高レベルで過剰発現され、且つ、より可溶性(>20%の可溶性タンパク質)でもあった。P.ペントサセウス遺伝子産物は、pET28及びpET30ベクターにおいて同等の過剰発現及び溶解性を示し、それはL.ブレビスpET30遺伝子産物に関して観察されたものに比べて顕著に少なかった。
誘導した培養物(250mL)からの細胞を、遠心分離し、そして、0.85%の塩化ナトリウムで1回洗浄した。細胞ペレットを、5μL/mLのプロテアーゼ・インヒビター・カクテル・セット#3(Calbiochem- Novabiochem Corp.、San Diego, CA)及び1μL/mLのbenzonaseヌクレアーゼを含む5mL/g湿細胞重量のBugBuster(商標)(Novagen)試薬中に再懸濁した。サンプルを、オービタルシェイカーにより室温にて20分間、インキューベートした。不溶性の細胞の破片を、16,000×g、4℃にて20分間の遠心分離によって除去した。
細胞抽出物を、以下のプロトコールを使用してグルタミン酸ラセマーゼ活性についてアッセイした。400μLの反応を、10mMのリン酸カリウム(pH8.0)、0.2mMのジチオスレイトール(「DTT」)、及び10mMのL-グルタミン酸又はD-グルタミン酸中で実行した。反応を、20〜100μLの無細胞抽出物の添加によって開始し、そして、それを室温でインキューベートした。サンプル・アリコートを、1分、5分、10分、20分、及び1時間の時間経過にわたって採取した(0分サンプルは対照反応としての役割を果たした)。2Mのギ酸(25μL)を、それぞれ40μLのサンプル・アリコートに加えて反応を止め、そして、沈殿したタンパク質を遠心分離によって除去した。上清を取り出し、それらをLC/MS/MSによって分析するまで−80℃で冷凍した。
100mMのIPTG(3時間)でのpET30誘導からの細胞抽出物からのアッセイ結果は、L.ブレビス(ジェンバンク受入番号BAA06106.1 GI:468450)及びP.ペントサセウス(ジェンバンク受入番号AAA16761.1 GI:349029)酵素が両グルタミン酸異性体に対して顕著なレベルのラセマーゼ活性を持っていることを実証している。P.ペントサセウス・ラセマーゼ(20μLの細胞抽出物)は、いずれかの基質から開始して10〜20分後にはL-及びD-グルタミン酸の間で平衡に達していた。L.ブレビス酵素(20μLの細胞抽出物)もまた、約20分のうちに平衡に達していた。
BioCatalytics, Inc.(Pasadena, CA)から購入した部分的に精製されたアスパラギン酸ラセマーゼ酵素(カタログ番号ASPR-101)を、前記のものに類似したプロトコールを使用して、L-アスパラギン酸とD-アスパラギン酸に対する活性についてアッセイした。市販の酵素は、両異性体に対するラセマーゼ活性を示した。0.5〜1mgの酵素を使用すると、20〜60分で平衡状態に達した。
3つのラセマーゼ(Lブレビス・グルタミン酸ラセマーゼ、P.ペントサセウス・グルタミン酸ラセマーゼ、及びBioCatalyticsアスパラギン酸ラセマーゼ)の全てを、以下のプロトコールを使用して、S,S体モナティンに対する活性についてもアッセイした。400μLの反応を、10mMのリン酸カリウム(pH8.0)、0.2mMのDTT、及び10mMのS,S体モナティン中で実行した。反応を、無細胞抽出物(L.ブレビス及びP.ペントサセウス)、又は精製酵素(BioCatalyticsアスパラギン酸ラセマーゼ)の添加によって開始し、そして、それを室温でインキューベートした。サンプル・アリコートを、1分、5分、10分、20分、及び1時間の時間経過にわたって採取した(酵素を含まないサンプルと同様に、0分サンプルは対照反応として役割を果たした)。2Mのギ酸(25μL)を、それぞれ40μLのサンプル・アリコートに加えて反応を止め、そして、沈殿したタンパク質を遠心分離によって除去した。上清を取り出し、そして、それらをLC/MS/MS(実施例1)によって分析するまで−80℃で冷凍した。S,S体モナティン濃度の減少は時間の経過によっても認められず、S,R体モナティンの増加も一切なかった(酵素を含まない対照においてでさえ、副産物の<5%の混入として最初に現れる)。それ故に、アッセイしたラセマーゼはいずれも、モナティンに対する活性を呈さなかった。
実施例9
アラニン、グルタミン酸、又はアスパラギン酸ラセマーゼを使用したL-トリプトファンからのR,R体モナティンの製造
この実施例は、L-トリプトファン(L-チロシン若しくは芳香族)アミノ基転移酵素、ProAアルドラーゼ、アラニン、グルタミン酸、又はアスパラギン酸ラセマーゼ、及び広特異性D-アミノ酸アミノ基転移酵素を使用した、L-トリプトファンからの立体異性的に富R,R体モナティンの製造方法を説明する。図5は、経路について説明する図表である。立体異性的に富R,R体モナティンの製造のためのこのアプローチは、モナティン前駆体(MP)からのモナティンの製造において低い活性しか持たないステップ1のための酵素を必要とする。以前の結果に基づいて、我々は、WO 03/091396 A2からの実施例1で説明されているシノリゾビウム・メリロティとロドバクター・スフェロイデスtatA遺伝子産物を使用した。
材料と方法
L.ブレビスとP.ペントサセウスからのグルタミン酸ラセマーゼを、実施例8で記載されているようにE.コリにより製造した。場合により、これらの酵素のHis6-タグ付与バージョンを、製造業者のプロトコール(Novagen、Madison, WI)に従ってHis-Bind 900カートリッジを使用して精製し、そして、PD-10カラム(G25 Sephadex、Amersham-Pharmacia)を使用して、脱塩してイミダゾールを取り除いた。酵素を、25mMのリン酸カリウムpH8.0により溶出した。アスパラギン酸ラセマーゼ(ASPR-101)とD-アミノ基転移酵素(AT-103)をBioCatalytics, Inc.から購入し、アラニン・ラセマーゼをSigma(St. Louis, MO)から購入した(カタログ番号A8936)。S.メリロティ及びR.スフェロイデス・チロシン(芳香族)アミノ基転移酵素を、実施例1で記載されているように、WO 03/091396 A2から調製した。コマモナス・テストステロニProAアルドラーゼを、実施例4で記載されているように、WO 03/091396 A2から調製した。全タンパク質アッセイを、製造業者のプロトコール(Hercules, CA)によるBio-Radタンパク質アッセイを利用して実行した。
ラセマーゼを使用して製造されるS,S体モナティン量の削減
反応混合物(1mL容量、二重反復試験で行う)には、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH8)、2mMのMgCl2、0.05mMのピリドキサール-5’-リン酸(「PLP」)、200mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのα-ケトグルタル酸ナトリウム又はオキサロ酢酸、細胞抽出物で供給される約280μg/mLのS.メリロティTatA、、1mg/mLのBioCatalyticsのD-アミノ基転移酵素(AT-103)、100μL/mLのグルタミン酸ラセマーゼ細胞抽出物又は1mg/mLのアスパラギン酸ラセマーゼ、及び細胞抽出物として提供される約100μg/mLのProAアルドラーゼが含まれた。固体トリプトファンを、10.2mg/mlの濃度で加えた。負の対照は、ラセマーゼを含まなかった。サンプルを、(250rpmにて振盪しながら)30℃にて1時間、2時間、又は一晩、インキューベートした。サンプルを、遠心分離して沈殿物を取り除き、シリンジ濾過し、そして、実施例1で記載されているLC/MS/MS法を使用してモナティンについて分析する前に−80℃で保存した。
サンプルの大部分は、細胞抽出物中に存在する天然L-アミノ基転移酵素の量が原因で、>95%のS,S体モナティンが含まれていた。しかしながら、ラセマーゼを含むサンプルは、MPのアミノ基転移にそれほど利用できないL-グルタミン酸を作るラセマーゼ酵素のために、低減された量の総モナティンを持っていた。ラセマーゼがなければ、1545〜2355ppmの(主にS,S体)モナティンを、時間経過中に製造した。ラセマーゼが存在すれば、340〜879ppm(L.ブレビス酵素)、444〜531ppm(P.ペントサセウス酵素)、及び506〜1460ppmのモナティン(アスパラギン酸ラセマーゼ)しか、製造されなかった。これらのデータは、ラセマーゼがモナティンを製造するのに必要とされる反応条件において活性であることを示している。例えば、アスパラギン酸アミノ基転移酵素などの細胞抽出物酵素からのS,S体モナティンの形成を最小限にするために、更なる実験を、精製酵素、及びより高いD-アミノ基転移酵素対L-アミノ基転移酵素の比率の酵素を用いて実行した。
L-トリプトファンから4-R含有モナティン異性体への変換
前記の実験を、約54μgの精製したL-アミノ基転移酵素(S.メリロティ又はR.スフェロイデスTatAのいずれか)、1mgのアスパラギン酸アミノ基転移酵素(BioCatalytics)、1mgのD-アミノ基転移酵素、アミノ・アクセプタとしての5mMのオキサロ酢酸、及び75μgの精製したアルドラーゼを使用して繰り返した。反応を、2時間のサンプリング時間と一晩のインキュベーション時間を有する二重反復試験で実行した。負の対照を、S.メリロティのL-アミノ基転移酵素を含むが、ラセマーゼを含まないもので実行した。逆相クロマトグラフィーに基づくR,R体/S,S体、及びS,R体/R,S体モナティン・ピーク定量の数量化に加えて、それぞれの立体異性体の割合(%)を、実施例1で記載されているFDAA誘導体化技術を使用して測定した。結果を、以下の表29に示している。
Figure 2008538932
明らかに、ラセマーゼの存在が、S.メリロティTatAがL-トリプトファン・アミノ基転移のための酵素として使用された時に製造されたモナティンの総量を増加させた。モナティン・レベルは、2時間でのアッセイにおいて平均6.4から16.5ppmに、そして、一晩でのアッセイにおいて41から73ppmに増加した。更に、形成されたR,R体の割合(%)は、ラセマーゼ酵素を利用することによって、約1%から最大で58%まで増加した。他の強力な甘味料であるモナティンのS,R立体異性体が、もう1つの主要な成分であって、負の対照における0近くから31%まで増加した。R.スフェロイデスTatAは、明らかに、S.メリロティL-トランスアミナーゼに比べて、S-MPに対してより高い活性を持ち、モナティンの4-R異性体が所望の生成物である時に、MPと比べて、L-トリプトファンに対して高い基質特異性を有する酵素を持つことの重要性を実証した。2時間の時点において総モナティンの約10%が4Sであるので、S.メリロティTatAが、MPに対して制限された活性を有するとみなすことができた。
実験を、精製したS.メリロティTatA(54μg)及びL.ブレビス・グルタミン酸ラセマーゼを用いて繰り返した。精製したグルタミン酸ラセマーゼを使用した時、1mLの反応につき約64μgを使用した。グルタミン酸ラセマーゼを含む細胞抽出物もまた、試験し、1.4mgの可溶性タンパク質を使用した。無ラセマーゼの負の対照を再び利用し、そして、全てのサンプルを二重反復試験で実行した。結果を、以下の表30に示している。
Figure 2008538932
この場合も先と同様に、ラセマーゼの添加がL-トリプトファンから製造される総モナティンを増加させ、並びにS,S体モナティンと比べて、モナティンの4R含有異性体の相対量を増加させることは、明らかである。精製したアルドラーゼ、ラセマーゼ、及びL-アミノ基転移酵素の使用は、所望の立体異性体を制御する能力を大いに改善する。L-対D-アミノ基転移酵素の比もまた、最終生成物の立体化学を操る方法である。
実施例2における表1及び2に示されていた結果を、前記条件と同様の反応条件を用いた結果と比較する時、当業者は、約7〜29ppmのモナティンがインドール-3-ピルビン酸から形成され、且つ、形成されたR,R体モナティンの割合(%)が約51〜90%であること理解できる。アスパラギン酸ラセマーゼの使用が、約40〜58%のR,R体の割合(%)を有する、製造されたモナティンの総量を16〜78ppmモナティンまで増加させた。更に、より安定した、それほど高価でない原料(L-トリプトファン)を利用した。実施例3において、約73ppmのモナティンを、約1.7:1のR,R:S,Rの比で、D-トリプトファンから製造した。4R異性体の総量は、総モナティンの>80%であった。R,R体モナティンとR,S-モナティンの両方が強力な甘味料(ショ糖に比べて>1000倍甘い)であるので、高価なD-アミノ酸基質を必要とせずに、これらの異性体を高める能力は重要である。
非特異的又はR体に特異的なアルドラーゼの利用可能性が、反応速度を高め、並びに形成されるR,R体モナティンの割合(%)を高めることを期待される。実施例5を参照のこと。これらのアッセイに使用されるC.テストステロニからのProAアルドラーゼが分裂反応のためにS-立体配置の基質を主に好むと報告されていたが、このProAアルドラーゼは、明らかにR-MPを製造する。これにより、R,R体モナティンが更に高い割合(%)であっても、R-立体配置のMPをより優先的に製造するアルドラーゼは、産生の助けとなり得る。更に、また、モナティン製造のための活性低下があっても、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素の発見が、形成されるS,S体及びR,S体モナティンの量も減少させるだろうことが期待される。最後に、改善をD-アミノ基転移酵素に対して行っても、又はS-MPと対比してR-MPに対して高い基質特異性を有するだろう代替のD-アミノ基転移酵素を使用してもよい。これは、そう所望されるなら、R,R体生成物の形成を増加させるだろう。
アスパラギン酸ラセマーゼの実験を、配列番号22のR体選択性アルドラーゼの活性を、C.テストステロニからのProAアルドラーゼの活性と比較するために繰り返した。約50μgの精製されたL-アミノ基転移酵素(S.メリロティTatA)、1mgのアスパラギン酸ラセマーゼ(BioCatalytics)、1mgのD-アミノ基転移酵素(AT-103、BioCatalytics)、アミノ・アクセプタとしての5mMのオキサロ酢酸、及び50μgの適正な精製されたアルドラーゼ。反応を、二重反復試験で実行し、そして、30℃にて一晩、インキューベートした。それぞれの立体異性体の割合(%)を、実施例1に記載のFDAA誘導体化技術を使用して測定した。結果を、以下に表31中に示している。
Figure 2008538932
C.テストステロニProAの異性体分布は、前記の以前の実験と一致している一方で、配列番号22のR体選択性アルドラーゼを使用した時には、R,R体の割合(%)がはるかに高く、検出できない量のS,S体しか形成されず、且つ、S,R体モナティンの量は少ない。
実施例2及び3に記載されているように、D-アラニンは、MPからモナティンへのアミノ基転移のためのアミノ・ドナーとして機能する。多くのL-アミノ基転移酵素には、アミノ・アクセプタとしてピルビン酸をある程度まで利用して、そして、L-アラニンを製造する能力がある。先に触れた反応は高濃度のピルビン酸を使用するので、一部のピルビン酸がL-アラニンに変換される可能性がある。例えば、L-トリプトファンのアミノ基転移中に、実施例6に記載のHEXAspC酵素は、α-ケトグルタル酸が不存在である場合に、2時間で10〜18%のピルビン酸(50〜200mMの初期濃度)をL-アラニンに変換することがわかっている。前記酵素は、両方のアミノ・アクセプタが高濃度(>50mM)で存在した時に、α-ケトグルタル酸に対する10倍の優先傾向を示した。(WO 03/091396 A2に記載の)AspCもまた、ピルビン酸からのいくらかのL-アラニンを製造した。それ故に、当業者が、前記反応においてα-ケトグルタル酸又はオキサロ酢酸の添加を割愛し、且つ、グルタミン酸又はアスパラギン酸ラセマーゼに代わってアラニン・ラセマーゼ(EC 5.1.1.1)を利用する可能性があると期待された。
アラニン・ラセマーゼ酵素は、最初に、ブルセラ・アボルタスとストレプトコッカス・フェカリスにおいて同定された。Marr, AG.及びWilson, P. W.、Arch. Biochem. Biophys., 49:424-433ページ(1954年);Wood, W. A.及びGunsalus, I.C.、J. Biol Chem. 790:403-416ページ(1951年)。サルモネラ・ティフィムリウムにおけるdadB遺伝子が、アラニン・ラセマーゼ活性の起源として同定され、そして、数百の相同体がゲノミクス・データベース内で発見された。アラニン・ラセマーゼ活性の他の公知の起源は、エシェリキア・コリ、バチルス・ズブチリス、シュードモナス・エルギノーサ、ビブリオ・コレレ、シゾサッカロマイセス・ポンベ、及びバチルス・セレウスである。担子菌キノコであるレンチナス・エドデスもまた、幅広い活性のアラニン・ラセマーゼを含む。バチルス・ステアロサーモフィラスからの熱安定性相同体は、Sigma-Aldrich(カタログ番号A8936)から購買でき、商業用途のために固定化された。Inagaki, K.、Biochemistry 25:3268ページ(1986年)。
アラニン・ラセマーゼを用いたモナティン製造
モナティン製造を、C.テストステロニからのProAアルドラーゼを使用して試験した。約50μgの精製されたL-アミノ基転移酵素(S.メリロティTatA)、1mgのD-アミノ基転移酵素(AT-103、BioCatalytics)、アミノ・アクセプタとしてのピルビン酸、50μgの精製されたアルドラーゼ、及びSigma(St. Louis, MO)から購入した70μgのアラニン・ラセマーゼ(カタログ番号A8936)。反応を、二重反復試験で実行し、そして、一晩、インキューベートした。それぞれの立体異性体の割合(%)を、実施例1に記載のFDAA誘導体化技術を使用して測定した。ラセマーゼを含まない対照を含んだ。結果を、以下の表32に示している。
Figure 2008538932
アラニン・ラセマーゼが存在した時には、アラニン・ラセマーゼを含まないサンプルと比べて、1時間の時点で、3倍多いR,R体モナティンが存在した。この結果は、アラニン・ラセマーゼを使用してR,R体モナティンを製造することが可能であることを示している。製造されるR,R体モナティンの割合(%)は、R体モナティン前駆体を選択的に作り出すアルドラーゼ、R体モナティン前駆体に対して作用しないか若しくは制限された活性しか持たないL-アミノ基転移酵素、及びインドール-3-ピルビン酸に対して作用しないか若しくは制限された活性しか持たないD-アミノ基転移酵素を使用することで改善できた。
実施例10
D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素(D-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素)
図3に示されているように、立体反転アミノ基転移酵素は、モナティンの製造のための生合成経路に有用である。例えば、D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素又はその突然変異体は、アミノ・ドナーとしてL-グルタミン酸を用いてR-MPからR,R体モナティンを製造することができた。
(1) オリゴヌクレオチドプライマーからのP.スタッツェリ4 D-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素のPCR合成
この実施例は、アミノ・ドナーとしてL-グルタミン酸を使用したR体モナティン前駆体をR,R体モナティンに変換するのに使用できる立体反転酵素である4 D-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素を合成するのに使用される方法を説明する。
プライマー設計
シュードモナス・スタッツェリ4 D-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素(4 D-HPG AT)の公開されている配列(ジェンバンク受入番号AY319935、核酸配列;ジェンバンク受入番号AAQ8290、タンパク質配列)を、PCRプライマー設計の鋳型として使用した。あるいは、シュードモナス・プチダからの4-D-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素、(CAD42450(タンパク質)、AX467211(ヌクレオチド))を、配列鋳型として使用する。合計34個の順方向プライマーと35個の逆方向プライマーを設計した;順方向及び逆方向プライマーは、40merであり、重複する20塩基対を共有した。加えて、2つの外側プライマーを、pET28及びpET30ベクター(Novagen、Madison, WI)内にクローニングするための5’制限部位及びオーバーハングを考慮して設計した。
P.スタッツェリ4 D-HPG ATの外側プライマー:N末端(NdeI部位を持つ):
5’-GGCCGGCATATGTCGATCCTTAACGACTACAAACGT-3’(配列番号19)、及び
C末端(XhoI部位を持つ):
5’-GGAAGGCTCGAGTCATGATTGGTTTCCAGACAAATT-3’(配列番号20)。
ポリメラーゼ連鎖反応プロトコール
P.スタッツェリからの遺伝子配列を、以下のプロトコールを使用して増幅した。100μLの一次PCR反応物には、0.05μMのそれぞれの69個の内部プライマー、0.4mMの各dNTP、10UのrTthポリメラーゼXL(Roche、Indianapolis, IN)、0.625UのPfuポリメラーゼ(Stratagene, La Jolla, CA)、1×XLバッファー、及び1mMのMg(OAc)2が含まれる。使用される温度サイクル・プログラムには、94℃にて3分間のホットスタート、以下のステップ:94℃にて30秒間、42℃にて30秒間、そして、68℃にて15秒間、の15回の反復、続いて、以下のステップ:94℃にて30秒間、52℃にて30秒間、そして、68℃にて30秒間、の10回の反復、続いて、以下のステップ:94℃にて30秒間、60℃にて30秒間、そして、68℃にて1分と15秒間、の10回の反復が含まれた。最後の10サイクルの後に、サンプルを、68℃にて7分間、保持し、そして、4℃で保存した。このPCRプロトコールは、0.8%のTAE-アガロースゲル上に〜0.5kbに生成物の尾を引いたバンドを生じた。
二次PCR反応は、鋳型として一次PCR反応物を使用して設定した。100μLの二次のPCR反応には、2.5μLの一次PCR反応物、0.5μMの、それぞれ2つの外側プライマー(NdeI及びXhoI制限部位を有する)、0.4mMの各dNTP、10UのrTthポリメラーゼXL、0.625UのPfuポリメラーゼ、1×XLバッファー、及び1mMのMg(OAc)2が含まれた。使用される温度サイクル・プログラムには、94℃にて3分間のホットスタート、以下のステップ:94℃にて30秒間、52℃にて30秒間、そして、68℃にて1分30秒間、の10回の反復、続いて、以下のステップ:94℃にて30秒間、60℃にて30秒間、そして、68℃にて1分30秒、の15回の反復、が含まれた。15回の反復の後に、サンプルを、68℃にて7分間、保持し、そして、4℃にて保存した。このPCRプロトコールは、0.8%のTAE-アガロースゲル上に〜1.4kbの独特の生成物バンドを生じた。
PCR産物を、0.8%のTAE-アガロースゲルからQiagenゲル抽出キット(Valencia, CA)を使用してゲル精製した。生成物を、TOPOクローン化し、そして、製造業者のプロトコール(Invitrogen、Carlsbad, CA)に従ってTOP10細胞内に形質転換した。プラスミドDNAを、Qiagen spin miniprepキットを使用して、得られた形質転換体から精製し、そして、NdeIとXhdIでの制限消化によって正しい挿入物についてスクリーニングした。正しい挿入物を持つと思われるプラスミドの配列を、汎用M13順方向及びM13逆方向プライマーを用いたジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって実証した。配列決定した10個のクローンのうち、全てが、所望の配列からの少なくとも1つの突然変異を持っていた。最良のクローンには、アミノ酸変化をもたらす1つの塩基対突然変異があった。このクローンの配列を、製造業者の薦めによるQuickChange突然変異誘導プロトコール(Stratagene、La Jolla, CA)を使用して修正した。
修正したTOPOクローンを、製造業者の推奨したプロトコール(New England Biolabs, Beverly, MA)に従って制限酵素のNdeIとXhoIで消化し、そして、Qiagenゲル抽出キットを使用して0.8%のTAE-アガロースゲルからゲル精製した。ベクター制限酵素のNdeIとXhoIで消化し、続いて、エビ・アルカリ・ホスファターゼで処理し、そして、Qiagenゲル抽出キットを使用して0.8%のTAE-アガロースゲルから精製することによって、pET28及びpET30を調製した。
消化したベクターと挿入物を、NEB Quick Ligationキット(Beverly, MA)を使用して連結した。約50ngの処理した挿入物、100ngの処理したベクター(挿入物対ベクターの3対1のモル比)、5UのT4 DNAリガーゼ、及び1×連結バッファーを、室温で5分間インキューベートした。連結混合物を、TOP10F’化学的コンピテント細胞(Invitrogen)内に形質転換した。細胞を、室温の0.25mLのSOC中、225rpmで振盪しながら37℃で1時間、回復させた。細胞を、カナマイシン(50μg/mL)を含むLBプレート上に蒔いた。プラスミドDNAを、得られた形質転換体からQiagen spin miniprepキットを使用して精製し、そして、NdeIとXhoIでの制限消化によって正しい挿入物についてスクリーニングした。
遺伝子発現とアッセイ
プラスミドDNAを、E.コリ発現宿主BL21(DE3)(Novagen、Madison, WI)内に形質転換した。培養物を培養し、そして、プラスミドを、Qiagen miniprepキットを使用して分離し、制限消化によって分析して同一性を確認した。
BL21(DE3)における誘導を、pET28(ヒスチジン・タグ付与)とpET30(非タグ付与)ベクターの両方においてP.スタッツェリD-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素で実施した。経時変化の研究を、カナマイシン(50mg/L)を含む250mLのLB中で0.5〜0.6のOD600まで培養し、100mMのイソプロピルチオガラクトシド(「IPTG」)で誘導し、そして、誘導後0及び3時間でサンプリングした培養物を用いて実施した。適切な容量の、0時間と3時間からの細胞を、40μLの、2-メルカプトエタノールを含むドデシル硫酸ナトリウム・バッファー中に再懸濁し、95℃で10分間、加熱し、そして、冷ました。これらの総細胞タンパク質サンプルのアリコートを、4から15%の勾配ゲルを使用したSDS-PAGEによって分析した。
5mLの培養物からの細胞ペレットを、0.625μLのbenzonaseヌクレアーゼ及び3μLのプロテアーゼ・インヒビター・カクテル・セット番号3(Calbiochem- Novabiochem Corp.、San Diego, CA)を含む0.625mLのNovagen BugBuster(商標)試薬中に、室温で20分間、緩やかに振盪しながら懸濁し、そして、細胞の破片を取り除くために16,000×gにて遠心分離することによって、細胞抽出物を3時間の培養物からも調製した。細胞の可溶性タンパク質の分析のために、上清(細胞抽出物)を4から15%の勾配ゲルに添加した。指摘された時には、前記タンパク質を、製造業者のプロトコール(Novagen、Madison, WI)に従ってHis-Bind 900カートリッジを使用して精製し、そして、PD-10カラム(G25 Sephadex、Amersham-Pharmacia)を使用し脱塩してイミダゾールを取り除いた。
(2) D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素(「DPGAT」)を持つ生物体の分離
立体反転D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素(また、D-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素とも呼ばれる)をもつシュードモナス属及び同類の属の生物体を、以下の様式で単離する。土壌サンプルを、以下の培地:(1リットルあたり)15gの寒天、3.4gのKH2PO4、3.55gのNa2HPO4、0.2gのMgSO4・7H2O、8mgのCaCl2・2H2O、10mgの酵母抽出物、1mlの1000×微量元素溶液(Balch, W.E.ら、"Methanogens:reevaluation of a unique biological group," Microbiol Rev. 43:260-296ページ(1979年))、及び1gのD-フェニルグリシン(D-4-ヒドロキシフェニルグリシン)、と一緒にペトリ皿上でインキューベートする。
単離物を、立体反転アミノ基転移酵素の存在についてPCR法で試験するか(プライマーを既知のD-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素から設計する)、又は以下のとおり、立体反転アミノ基転移酵素の存在を更に高める:プレートからの単離物を、寒天を含まない、前述の液体培地中で、30℃にて振盪しながら、約1.0のOD600まで培養することができるだろう。細胞を、遠心分離によって採集し、そして、0.85%の塩化ナトリウムで2回洗浄する。10mg(湿重量)のサンプルを、1mlのリン酸カリウム・バッファー(pH7.0)及び5mMのD-フェニルグリシン又はD-4-ヒドロキシフェニルグリシン中に懸濁させる。中和した15mMの(アミノオキシ)酢酸を、先に説明したとおり調製した二重反復試験サンプルに加える。D-フェニルグリシン(又はD-4-ヒドロキシグリシン)の消費をHPLCによって計測する。
(アミノオキシ)酢酸の存在下でより遅い速度で分解するものを除いた、D-フェニルグリシン(又は、D-4-ヒドロキシフェニルグリシン)を分解することができる単離物を、更なる分析のために選択する。単離物を、立体反転アミノ基転移酵素の存在についてPCR法で試験する(プライマーを既知のD-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素から設計する)。
先に説明した液体培地中で培養物を培養し、細胞を採集し、そして、無細胞粗抽出物(「CFE」)を作製し、D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素又はD-4-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素の活性を試験することによって、立体反転アミノ基転移酵素の存在を確認する。CFEを、以下の終濃度:0.1Mの3-(シクロヘキシルアミノ)-1-プロパンスルホン酸(「CAPS」)(pH9.5)、60mMのL-グルタミン酸(ナトリウム塩)、5mMのベンゾイルギ酸又は4-ヒドロキシ安息香酸、及び50μMのPLPを有する反応混合物に加える。
逆反応を、以下の濃度:50mMのリン酸カリウム(pH7.0)、60mMのD-フェニルグリシン又はD-4-ヒドロキシフェニルグリシン、5mMのα-ケトグルタル酸、及び50μMのPLP、を有する反応混合物にCFEを加えることによって計測する。アッセイを、35℃にてインキューベートし、そして、時点でアリコートを採取し、2分間、沸騰させることによって止める。生成物は、Gil-Av, E.ら、"Resolution of underivatized amino acids by reversed phase chromatography,” J. Am. Chem. Soc., 702:5115-5117ページ(1980年)のHLPC法によって、又はグルタミン酸形成の測定を対象とした実施例1に記載の方法によって定量される。
PCR法ベースの方法に代わる手段として、立体反転D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素を、硫安分画を含めた従来のタンパク質精製技術、及び従来のカラムクロマトグラフィーによって単離された細菌から精製する。タンパク質を妥当な程度まで精製した時点で、ペプチド・マイクロシークエンシング技術又は従来のエドマン型アミノ酸配列決定法を利用する(プロトコール及びこの種の作業に使用される装置の説明のためにhttp://golgi.harvard.edu/microchem/を参照のこと)。変性プライマーを、そのタンパク質源から最も近い既知の類縁体からの利用可能な配列に基づいて設計する。そして、変性PCR法及びゲノム・ウォーキングを、確立されたプロトコールに従って実行して、立体反転D-フェニルグリシン・アミノ基転移酵素のコード配列を単離する。
(3) DPGATモナティン製造
先の(1)及び(2)に記載のD-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素を、未精製の無細胞タンパク質抽出物で使用するか、又は先の(1)に記載されているとおり精製する。S.メリロティとR.スフェロイデス・チロシン(芳香族)アミノ基転移酵素を、実施例1で記載されているとおり、WO 03/091396 A2から調製する。コマモナス・テストステロニProAアルドラーゼを、実施例4で記載されているとおり、WO 03/091396 A2から調製する。全タンパク質アッセイを、製造業者のプロトコール(Hercules, CA)に従って、Bio-Radタンパク質アッセイを利用して実行する。
反応混合物(1mL容量、二重反復試験で実行する)には、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH8)、2mMのMgCl2、0.05mMのピリドキサール-5’-リン酸(「PLP」)、200mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのα-ケトグルタル酸ナトリウム、約280ng/mLの、細胞抽出物で供給されるS.メリロティTatA、100μL/mLのD-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素細胞抽出物又は1mg/mLの精製したD-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素、及び約100μg/mLの、細胞抽出物として提供されるProAアルドラーゼ、が含まれる。固体のトリプトファンを、10.2mg/mlの濃度で加える。負の対照を、D-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素なしで準備する。サンプルを、緩やかに振盪しながら、30℃にて1時間又は一晩、インキューベートする。サンプルを、遠心分離して沈殿物を取り除き、シリンジ濾過し、そして、実施例1に記載のLC/MS/MS法を使用したモナティンについて分析する前に−80℃にて保存する。
モナティン製造のための改善された活性を有するD-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素を、以下の:変異原性PCR法、変異原性菌株の継代、部位特異的突然変異誘導、エラープローンPCR法、を含めた当業者に知られている突然変異誘導技術を使用して、又は、例えば、DNAシャッフリング若しくは他の指向進化技術などの方法によって作製する。改善されたD-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素を、窒素の起源としてのR,R体モナティンを含む最少培地上での増殖によって選択する。最初は、選択は増殖に基づくが、改善されたアミノ基転移酵素が選択される場合には、スクリーニングは増殖速度に基づく。すなわち、遺伝子の突然変異バージョンを持つ細胞が増殖し、そしてその遺伝子が窒素源としてのR,R体モナティンを含む最少培地で発現される。遺伝子の突然変異バージョンを持つ細胞の増殖速度を、非突然変異バージョンと比較する。より速い増殖速度を有するそれらの細胞を選択し、そして、アミノ基転移酵素を更に分析する。所望の活性を得るまで、そのD-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素を更に突然変異誘導するかもしれない。
(4) DPGATアッセイ
非Hisタグ付与バージョンのDPGATを、前記(1)に記載されているとおり発現させ、そして、抽出物をアッセイに使用した。アッセイを準備し、そして、それには、100mMのリン酸カリウムpH7.0、60mMのD-フェニルグリシン、5mMのα-ケトグルタル酸、及び50μMのピリドキサール-5’-リン酸が含まれた。この実施例において先に記載されているとおり調製した抽出物をアッセイ容量1mlあたり100μL加えることによって、アッセイを開始した。サンプルを、いくつかの時点(0、1、2、5、10、30、60、及び120分)で採取し、等量の2Mギ酸で止めた。一晩のインキュベーション後にもまた、サンプルを採取した(〜1200分)。サンプルを、実施例1に記載のOPA法によってグルタミン酸産生について分析した。結果を、以下の表33にまとめる。
Figure 2008538932
酵素は、D-フェニルグリシンに対して明らかにいくらかの活性を持っている。酵素活性度を、R,R体モナティンに対しても試験した。アッセイを先に説明したとおり準備し、そして、R,R体モナティンを60mMの濃度で含んでいた。結果を、以下の表34中に示す。
Figure 2008538932
R,R体モナティンに対していずれかの検出可能な活性もあるように思われなかった。しかしながら、当該実施例の当該パート(3)に記載したランダム又はSDM法が、R,R体モナティン又はR-MPに対するアミノ基転移活性を改善するのに利用できる可能性があることが期待される。例えば、P.スタッツェリ酵素の結晶化及び予備解析を実行した。Kongsaeree, P.ら、Acta Cryst. D59:953-954ページ(2003年)。構造が確立された時点で、例えば、Accelrysなどのソフトウェアを使用して、ドッキング実験を実行して、立体障害又はイオン反発が、R,R体モナティンがD-ヒドロキシフェニルグリシン基質結合部位に結合するのを妨げているかもしれない場所を決定することができる。D-ヒドロキシフェニルグリシンは、R,R体モナティンのように少々大きなアミノ酸である。両化合物には、疎水領域とヒドロキシル基がある。酵素がジカルボン酸基質を受け入れるように実施例6で記載されているとおり、修飾を結合ポケットに対して行う。例えば、2番目のカルボキシル基に近い残基を、例えば、アルギニンなどの塩基に修飾するかもしれない。更に、パート(1)に記載のP.プチダの遺伝子、及びパート(2)に記載されているとおり単離されるかもしれない付加遺伝子を、遺伝子シャフリングの鋳型として使用してもよい。更に、当該実施例において組み立てられたP.スタッツェリの遺伝子を、オリゴヌクレオチド・シャフリング又は他のランダム突然変異誘導法を使用して突然変異誘導し、そして、先の(3)に記載されているようにスクリーニングしてもよい。
実施例11
D-メチオニン・アミノ基転移酵素遺伝子の発見
背景
D-メチオニン・ピルビン酸アミノ基転移酵素(EC2.6.1.41)は、稀ではあるが、立体反転トランスアミナーゼの別の例であると考えられる。この酵素は、D-メチオニン及びピルビン酸の、L-アラニン及び4-メチルチオ-2-オキソブタン酸への可逆的変換を触媒する。オキサロ酢酸、フェニルピルビン酸、2-オキソ酪酸、2-オキソ吉草酸、2-オキソヘプタン酸、グリオキシル酸、及びオキソグルタル酸もまた、アミノ・アクセプタとして機能する。
D-又はL-メチオニンのアミノ基転移は、高等植物(カリフラワー、トマト、リンゴ、エンドウ茎、バナナ、ラッカセイ)、及び土壌微生物(エシェリキア・コリ、シュードモナス・ピシ(Pseudomonas pisi)、シュードモナス・エルギノーサ、バチルス・ミコイデス(Bacillus mycoides)、アシネトバクター・カルコアセティクス、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)B12E、リゾビウム・トリホリイ(Rhizobium trifolii)N2P7、ペニシリウム・ディジターツム(Penicillium digitatum)、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、コリネバクテリウムD7F)におけるエチレン産生の経路の一部であると考えられる。Billington, D.C.ら、Biochem J. 752:827-836ページ(1978年)。細菌において、L-メチオニンは、エチレン産生研究において基質として通常使用され、且つ、例えば、E.コリからのAspC又はTyrBなどの広特異性酵素は、アミノ基転移に関与すると考えられている。しかしながら、Primrose, S. B.、J. Gen. MicrobioL 95.159-65ページ(1976年)及びPrimrose, S. B.、J. Gen. Microbiol 98:519-528ページ(1977年)には、E.コリ株SPA O(University of Warwick culture collection)が、バッチ培養においてL-メチオニンからとほとんど同じくらい、D-メチオニンから多量のエチレンを産生したことが示されている。広特異性D-アミノ基転移酵素はE.コリにおいて同定されていないので、1つの考えられる解釈は、(dadA遺伝子によってコードされる)E.コリのD-アミノ酸脱水素酵素がD-メチオニンを4-メチルチオ-2-オキソブタン酸に変換するということであるかもしれない。メチオニンラセマーゼがE.コリに存在するということもまた、可能性がある;しかしながら、そのような酵素は文献に記載されていない。
K.コリとは対照的に、カリフラワー小花(ミトコンドリア抽出調製物)及び発芽ラッカセイ種子において、L-メチオニンとピルビン酸と比べて、D-メチオニンとピルビン酸を酵素抽出物に供給した時に、エチレンの産生がより高かった。Mapson, L. W.ら、Biochem J. 775:653-661ページ(1969年);Durham, J. I.ら、Phytochemistry 12:2123-2126ページ(1973年)。それ故に、メチオニン・ラセマーゼとL-アミノ基転移酵素の組み合わせの可能性は、データによって支持されていない。脱水素酵素活性はカリフラワーの細胞抽出物の透析によって排除され;NADはアッセイ混合物中に存在していなかった。酸素消費量が認められなかったので、酸化酵素活性は排除され、且つ、FADに対する必要性がなかった。ラッカセイ組織からのD-メチオニン・アミノ基転移酵素が、精製され、PLPに依存していることが示され、且つ、L-メチオニン・アミノ基転移酵素活性に依存していないことが示された。これらのD-メチオニン-ピルビン酸アミノ基転移酵素が、(実施例2及び3に記載のバチルス酵素と同様に)副産物としてD-アラニンを実際には産生しており、且つ、D-アラニンをL-アラニン(又は類似のアミノ・ドナー)に再生して戻すためのアラニン・ラセマーゼを細胞が含んでいる可能性がある。いずれの場合においても、高等植物からの広特異性D-アミノ基転移酵素の発見が、R,R体モナティン又はS,R体モナティンを製造する過程の開発に有益である。
実験の概要
D-メチオニン・アミノ基転移酵素は、カリフラワー小花及び発芽ラッカセイ胚種から標準的なクロマトグラフィー・プロトコール及びPharmacia AKTA Explorerシステムを使用して部分的に精製される。相同タンパク質のタンパク質配列が、LC/MS/MSフィンガープリント技術とHarvard Microchemistry施設によって実施されたデータベース検索によって決定されている。植物遺伝子のコード領域は、実施例10(1)に記載されているように、標準的なPCRプロトコールを使用したcDNAライブラリーから、又は遺伝子の合成によってクローニングされる。
あるいは、cDNA発現ライブラリーが、D-メチオニンの存在下で培養された(且つ、エチレンを産生する)カリフラワー組織又はラッカセイ種子から構築される(Stratagene、La Jolla, CA)。ライブラリーを、E.コリGenetic Stock Center (Yale)からのE.コリのメチオニン要求性変異株、例えば、菌株RC519又はAB1931などの中に形質転換する。D-メチオニンを含む最少培地上で増殖できる菌株のプラスミドが、着目のコード領域を含んでいる(実施例4(1)、類似したスクリーニング技術、を参照のこと)。
着目のコード領域を得て、そして、それが標準的なE.コリの実験用菌株により発現された時点で、pHが7.5(アミノ基転移酵素のための最適pH)であるのを除いて、D-ヒドロキシフェニルグリシン・アミノ基転移酵素に代わって、実施例10(3)に記載されているとおり、R,R体モナティンの製造に関するアッセイに、得られた遺伝子産物を使用する。D-メチオニン・アミノ基転移酵素がD-アミノ酸ドナー基質に対して厳格な要求がある場合には、その酵素は、実施例2及び3に記載されているようにR,R体モナティンを作製するために使用できる。遺伝子は、実施例10(3)に記載されているように、活性の増強のために突然変異誘導され、そして、スクリーニングされてもよい。
方法
カリフラワーからの分離
400グラムの新たに選ばれたカリフラワー小花を、ブレンダを使用して浸漬と混合を交互に行うことによって、400mLの、4℃のショ糖/緩衝物質溶液(0.4Mのショ糖及び0.1Mのリン酸ナトリウム・バッファーpH7.4)で抽出する。細胞の破片を、チーズクロスを用いた濾過によって除去し、そして、得られた溶液を、40,000×g、4℃にて30分間、遠心分離する。固形物質(ミトコンドリア性細胞小器官を含む)を、20mLの10mMリン酸ナトリウム・バッファーpH7.4中に再懸濁し、そして、酵素を200mLの冷(−30℃)アセトンで抽出する。懸濁液を、再び遠心分離し、そして、沈殿物を、Savant Speed Vac.を使用して乾燥させる。固形物質を10mMのリン酸ナトリウム・バッファーpH7.4中に溶解させ、そして、残留アセトンをPD-10カラムを使用して除去する。
酵素調製物を、0.1Mリン酸ナトリウム・バッファーpH7.4中、5mMのD-メチオニン、1mMのピルビン酸、0.05mMのPLP、及び2mMのEDTAと一緒にインキュベーションすることによって、アミノ基転移酵素活性はアッセイする。アッセイを、25℃にて16時間、実施する。4-メチルチオ-2-オキソブタン酸を、LC/MS(328のm/z)及び実施例1に記載の同様の方法論を使用して、2,4-ジニトロフェニルヒドラゾン誘導体の形成によって計測する。2Mの硫酸中、2,4-ジニトロフェニルヒドラジンの0.4%(w/v)の溶液を調製し、そして、半分容量をインキュベーション後のアッセイ混合物に加える。混合物を緩やかに振盪しながら30℃にて30分間、混合し、そして、沈殿物を、遠心分離によって回収し、LC/MSによって分析する。標準的なクロマトグラフィーによって分離されたタンパク質分画は、同じ様式で活性についてアッセイされるが、副産物のアラニンは、実施例1に記載のOPAポストカラム誘導体化技術によって計測される。
ラッカセイ(アラキア・ヒポゲア(Arachia hypogea)L. cv. Starr)からの分離
(子葉を除いた)発芽ラッカセイ胚種ホモジネートからのD-メチオニン・アミノ基転移酵素を、Durham, J. I.ら、Phytochemistry 12:2123-2126ページ(1973年)の方法に従って精製する。酵素を安定させるために粗抽出物の調製中、還元剤を使用し、そして、細胞の破片を、33,000×gにて遠心分離によって除去する。35〜50%の硫安分画を、低温でインキュベーションし、そして、沈殿によるタンパク質の除去によって更に精製する。上清を、アセトンを使用して更に分画する。そして、活性なプールを、ゲル濾過クロマトグラフィーによって更に精製する(Sephadex 200 G. E. Healthcare、Piscataway, NJ)。
タンパク質分画がアミノ転移酵素タンパク質に富むようになる場合、2Dゲル電気泳動を利用して、マイクロシークエンシングのために着目の酵素を分離する。NCBIにて受託された植物配列内の相同コード領域の解明後に、D-アミノ基転移酵素タンパク質を、標準的な分子生物学技術を使用してエシェリキア・コリにおいて組み換えにより製造する。カリフラワー小花若しくはラッカセイ種子からの細胞抽出物、又は組み換えにより製造された相同酵素が、(立体反転トランスアミナーゼであれば)実施例10(3)又は(広特異性D-アミノ基転移酵素であれば)実施例2及び3に記載されているようなR,R体モナティンの製造に使用されることが期待される。
実施例12
L-アラニン・アミノ基転移酵素/アラニン・ラセマーゼ/D-アラニン・アミノ基転移酵素
図8は、L-アミノ酸アミノ基転移酵素(例えば、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アラニン-アミノ基転移酵素、及び/又はL-トリプトファン-アミノ基転移酵素など)、R体に特異的なアルドラーゼ、アラニン・ラセマーゼ、及びD-アラニン・アミノ基転移酵素を使用した、L-トリプトファンからの立体異性的に強化されたR,R体モナティンを製造するための生合成経路について説明する。
トリプトファンに特異的なアミノ基転移酵素は、実施例6に記載されている。あるいは、S.メリロティ及びR.スフェロイデス・チロシン(芳香族)アミノ基転移酵素を、WO 03/091396 A2で実施例1に記載されているように調製する。コマモナス・テストステロニProAアルドラーゼを、WO 03/091396 A2で実施例4に記載されているように調製する。全タンパク質アッセイを、製造業者のプロトコールに従ってBio-Radタンパク質分析法(Hercules, CA)を利用して実行する。アラニン・ラセマーゼを、Sigma(St. Louis, MO)(カタログ番号A8936)から購入する。D-アラニンアミノ基転移酵素を、BioCatalytics(Pasadena, CA)(カタログ番号AT-103)から購入する。
L-アラニン・アミノ基転移酵素は、真核生物、細菌、及び古細菌に広く分布している。以下の生物体は、(配列相同性に基づいて)L-アラニン・アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.2)を含んでいるとして同定された:アラビドプシス・タリアナ(Arabidopsis thaliana)、アスビア・ゴシピイ(Ashbya gossypii)、アゾトバクター・ビネランジー、ビフィドバクテリウム・ロングム(Bifidobacterium longum)、カエノラブジチス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・グラブラタ(Candida glabrata)、クラミドモナス・レインハルドチイ(Chlamydomonas reinhardtii)、クリプトコッカス・ネオホルマンス(Cryptococcus neoformans)、デバリオミセス・ハンセニイ(Debaryomyces hansenii)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens)、ホルデウム・ブルガレ(Hordeum vulgare)、クルイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、マグナポルト・グリセア(Magnaporthe grisea)、メジカゴ・トムンカツラ(Medicago tmncatula)、ムス・ムスクルス(Mus musculus)、ニューロスポラ・クラッサ(Nenrospora crassa)、オリゼ・サチバ(Oryza sativa)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)、ピヌス・タエダ(Pinus taeda)、シュードモナス・プチダ、ピロコッカス・アビッシ(Pyrococcus abyssi)、ピロコッカス・フリオサス(Pyrococcus furiosus)、ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、ラッツス・ノルベギクス(Rattus norvegicus)、サッカロミセス・セレビシエ、シゾサッカロミセス・ポンベ、タキフグ・ルブリペス(Takifugu rubripes)、トリパノソマ・クルジ(Trypanosoma cruzi)、ビブリオ・コレレ、ビブリオ・パラハエモリチクス(Vibrio parahaemolyticus)、ビブリオ・ブルニフィクス(Vibrio vulnificus)、ヤロウィア・リポリチカ(Yarrowia lipolytica)、及びゼア・マイス(Zea mays)。加えて、多くのアミノ基転移酵素が、低レベルのアラニン・アミノ基転移酵素活性を有し、且つ、所定の高レベルのL-グルタミン酸とピルビン酸が、それをL-アラニンとα-ケトグルタル酸に変換することができる。低い活性しか持たない酵素を、標準的な突然変異誘導技術、例えば、エラープローンPCR法や変異原性菌株の継代など、又は定向進化技術によって改善する。L-アラニン・アミノ基転移酵素の遺伝子を、プライマーを設計するための公的に利用可能な配列を使用して、及び遺伝子/酵素を増幅し、クローニングし、発現させ、そして、精製するための標準的な技術を使用して、クローニングする。
反応混合物(1mL容量、二重反復試験で実行)には、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH8)、2mMのMgCl2、0.05mMのピリドキサール-5’-リン酸(「PLP」)、200mMのピルビン酸ナトリウム、5mMのα-ケトグルタル酸ナトリウム、約280μg/mLの、細胞抽出物で供給されるS.メリロティTatA(又は他のL-トリプトファンに特異的なアミノ基転移酵素)(実施例4(5)項のように)、100μgのL-アラニン・アミノ基転移酵素、100μL/mLのアラニン・ラセマーゼ細胞抽出物又は1mg/mLの精製されたアラニン・ラセマーゼ(Sigma)、約280μg/mLの、細胞抽出物で供給される広特異性D-アラニンアミノ基転移酵素(実施例15及び18には、この反応のために働くことができるD-アミノ基転移酵素に関する実施例がある)、及び約100μg/mLの、細胞抽出物として提供されるProAアルドラーゼ、が含まれる。固体のトリプトファンを、10.2mg/mlの濃度にて加える。負の対照を、アラニン・ラセマーゼなしで準備する。サンプルを、緩やかに振盪しながら30℃にて〜1時間又は一晩、インキューベートする。サンプルを、遠心分離して沈殿物を取り除き、シリンジ濾過し、そして、実施例1に記載のLC/MS/MS法を使用したモナティンの分析の前に−80℃にて保存する。
実施例13
酵素反応混合物からのR,R体モナティンの精製
生成物であるR,R体モナティンを、以下の反応混合物から精製した。0.33リットル中、50mMの重炭酸アンモニウム、pH8.2、4mMのMgCl2、0.05mMのピリドキサール・リン酸(「PLP」)、200mMのピルビン酸ナトリウム、及び50mMのD-トリプトファンを、500mLガラスびんの中で、室温にてトリプトファンが溶解するまで混合した。液体を、数分間、窒素でフラッシュし、次に、3.0mg/mLのBiocatalytics, Inc.(Pasadena, CA)製の広範囲D-トランスアミナーゼ(カタログ番号AT-103)及び0.1mg/mLの精製された配列番号22のアルドラーゼを加えた。反応混合物を、室温にて緩やかに撹拌した。アルドラーゼを、実施例3で記載されているように精製した。50mMのD-トリプトファンの追加アリコートを、その混合物を最初に調製した15時間後と22時間後に固体として加えた。それぞれの添加の後に、ヘッドスペースを窒素でフラッシュした。加えたトリプトファンの全てが溶解するわけではなかったが、濃度を約50mMに維持した。40時間後に、残っている固体トリプトファンを濾別した。ポスト・カラム蛍光検出液体クロマトグラフィー(実施例1を参照のこと)による反応混合物の分析は、その溶液中のトリプトファン濃度が49mMであり、且つ、モナティン濃度が3.9mMであることを示した。
生成物であるモナティンを、2つのイオン交換クロマトグラフィ・ステップを利用して精製した。濾過した反応液を、最初に、BioRad AG50W-X8樹脂(140mL;1.7meq/mLの結合能)のカラムに適用した。カラムを、2×150mLのH2Oで洗浄し、そして、1MのNH4OH(1×450mL、それに続いて3×150mL)で溶出した。NH4OH画分を合わせ、HClで中和し、そして、Whatman(Maidstone, England)ガラス・マイクロファイバー・フィルター及びGelman Sciences(Ann Arbor, ME)0.45μmフィルターを連続して通して濾過した。浄化した溶液を、次に、YM100(MWCO 100kDa)を備えたAmicon(Millipore;Billerica, MA)限外濾過撹拌セル(モデル8200)を使用して限外濾過にかけた。限外濾過からの濾液を、微温浴を備えたroto-エバポレーターを使用して約160mLまで留去した。液体を、再びガラス・マイクロファイバー・フィルターを通して濾過することによって浄化した。
0.5Lの1M NaOH、H2O、及び1.0M 重炭酸アンモニウム、pH8.3で洗浄し、続いてH2Oを使用して追加の洗浄をすることによって、前もって重炭酸形態に変換された1LのFast Flow DEAE Sepharose(Amersham Biosciences)カラムに得られた溶液を適用した。前記溶液を、<2mL/分にて添加し、そして、カラムを、280nmの吸収度が<1になるまで、3〜4mL/分にて水で洗浄した。R,R体モナティンを、50mMの重炭酸アンモニウム、pH8.3(2.5L)で溶出した。この画分を、微温浴を備えたroto-エバポレーターを使用して留去した。得られたシロップを、結晶が形成するまで4℃にて数日間、インキューベートした。結晶を、回収し、100%の冷エタノールで洗浄し、そして、真空乾燥器内で乾燥させた(0.38g)。
FDAA誘導体化とそれに続くLC/MS/MS多段階反応モニタリング(実施例1を参照のこと)を使用した異性体純度に関する固体生成物の分析は、サンプルが96.3%のR,R体モナティン及び3.7%のS,R体モナティンであることを示した。
サンプルを、総モナティン法(実施例1を参照のこと)を使用して、他の有機化合物にていての純度に関して分析した。フォトダイオードアレイ検出器を使用して、UV吸光度を200〜500 nmで読み取った。積分ピーク面積に基づいて、モナティンはその面積の96.1%を占めた(R,R体とS,R体の両方を含んでいる)。
ポスト・カラム蛍光検出液体クロマトグラフィーによるサンプルの分析は、サンプルのアミノ酸組成が、微量のトリプトファン(1.2%)とアラニン(0.02%)を含む98.8%のモナティンであることを示した。
元素分析を、Midwest Microlab, LLC(Indianapolis, IN)において実施した。この分析は、サンプルが1重量%の不燃(無機)物質、及びアンモニウムと重炭酸の残余を含むことを示した。
実施例14
精製中のD-アミノ基転移酵素活性の維持の改善
B.スファエリカスHIS6-D-アラニン・アミノ基転移酵素の精製のための標準的な手順
BL21(DE3)::B.スファエリカスdat pET30a(実施例18)の新しい培養プレート(50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天)から始めて、細胞を、50μg/mlのカナマイシンを含む5mLのLB培地(「LB」)中、37℃、且つ、225rpmにて3〜5時間、培養した。それに続いて、Novagen Overnight Express System IIの溶液1〜6(EMD Bioscience、Madison, WI)に加えて50μg/mLのカナマイシンの入ったフラスコ内に、培養物を0.25%(v/v)となるように移した。細胞を、37℃、且つ、225rpmにて一晩(16〜18時間)、培養した。OD600が約8.0になった時に、細胞を、JS-16.25ローターを備えたBeckman(Fullerton, CA)J25II遠心分離機により10,000rpmにて10分間の遠心分離によって採集した。細胞ペレットを、冷たい50mMのEPPSバッファー(pH8.2)で1回洗浄し、そして、細胞を再び遠心分離した。洗浄した細胞ペレットを採集し、そして、すぐに使用したか、又は精製に必要とされるまで−80℃にて冷凍しておいた。
B.スファエリカスHIS6-D-アラニン・アミノ基転移酵素(HIS6-BsphDAT)タンパク質を含む無細胞抽出物を調製するために、細胞を、3〜4倍量の50mM EPPS、pH8.2中に懸濁し、そして、懸濁液の温度を15℃未満に維持して、Microfluidics(Newton, MA)ホモジナイザ(20,000psi(約138MPa)にて3回通過)を使用して崩壊させた。全てのその後の精製ステップを、4℃にて実施した。細胞抽出物を、15,000×gにて15分間、遠心分離して、細胞の破片を取り除いた。上清を、デカントし、そして、すぐに使用したか、又は−80℃で冷凍した。無細胞抽出物のアリコートを、Novagen HIS-Bindカラム(カタログ番号70971-4)又は前もって200mMの塩化ナトリウムを含む50mMのEPPS、pH8.2で平衡化したGE Healthcare(Piscataway, NJ)Chelating Sepharose(商標)Fast Flow樹脂(ニッケル(II)形態)(1.2〜1.5v/vの比にて)のいずれかに適用した。サンプルを添加した後に、カラムを、3〜5倍量の平衡化バッファー、3〜5倍量の、25mMのイミダゾールを含む平衡化バッファー、3〜5倍量の、100mMのイミダゾールを含む平衡化バッファー、そして、3〜5倍量の、500mMのイミダゾールを含む平衡化バッファー、で連続して洗浄/溶出した。HIS6-BsphDATタンパク質を最後の洗浄液により溶出した。500mMイミダゾール洗浄液を、Ami con(Billerica, MA)Centricon-70又はUltra-15遠心フィルター・デバイス(MWCO 10 kDa)を用いて2〜10×濃縮した。50μMのPLPを含む50mMのEPPS、pH8.2で前もって平衡化した使い捨てのGE Healthcare PD10脱塩カラムを通すことによって、イミダゾール及び塩化ナトリウムを除去した。
脱塩した溶液のタンパク質濃度を、Pierce BCAアッセイ・キット(Rockford, IL)を使用して測定した。それぞれの画分の純度、及び無細胞抽出物画分の発現レベルを、Bio-Rad(Hercules, CA)Experion Pro260マイクロキャピラリー・チップ・システムを使用して、又は4〜15%の勾配ゲルを用いたSDS-PAGEによって測定した。通常、この手順は、Experionソフトウェアによって判断されるように、〜90%純粋である(600mLのOvernight Express II培養物から)300mgを超える酵素を製造する。精製した酵素のアリコート(1〜5 mL)を、使用まで−80℃にて保存した。
改善された手順
無細胞抽出物を、先に説明したように調製した。His6-BsphDATタンパク質を、以下の変更を加えて同様に精製した:細胞破壊及びタンパク質精製に使用される全てのバッファーが、50μMのPLPを含む100mMのリン酸カリウム、pH7.8を含んだ。タンパク質を、GE Healthcare Chelating Sepharose(商標)Fast Flow樹脂(ニッケル(II)形態)を用いて排他的に精製した。
活性のアッセイ
トリプトファン及びピルビン酸からのインドール-3-ピルビン酸及びアラニンの形成を、両精製方法によって調製された酵素を使用してアッセイした。反応混合物には、100mMのリン酸カリウム、pH7.8、0.05mMのピリドキサール・リン酸、100mMのピルビン酸ナトリウム、40mMのD-トリプトファン、及び0.03〜0.1mg/mLの精製した酵素が含まれた。トリプトファンを固体として加えた。酵素を除く全ての成分を、一緒に混合し、そして、30℃にてトリプトファンが溶解するまでインキューベートした。次に、酵素を加え、そして、反応液を室温にてインキューベートした。所定の時点にて、反応物をサンプリングし、そのサンプルを、すぐに冷凍保存し、そして、実施例1に記載のポストカラム蛍光検出液体クロマトグラフィー法によるアラニン分析のために希釈した。以下の表34は、1分あたり1mgの酵素につき形成されたアラニンの濃度として酵素調製物の比活性を一覧表にしている。
Figure 2008538932
表34に示されている結果は、精製工程中のピリドキサール・リン酸の使用が増強された活性をもたらしたことを示唆している。
実施例15
2つの新規バチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素のクローニング
いくつかのバチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.21、また、D-アラニン・アミノ基転移酵素又はD-アスパラギン酸アミノ基転移酵素としても知られている)を、実施例18で記載されているように、R,R体モナティンの製造に関する共役アッセイにおける使用のために組み換えにより製造した。これらの酵素は、モナティンの製造のために先に説明したD-アミノ基転移酵素に相同である(米国公開番号第20040063175号及び米国公開番号第2005282260号)。新規D-アミノ酸アミノ基転移酵素(「DAATs」)を含む候補である可能性がある菌株の選択のために使用されるアプローチは、ATCCに寄託されたB.スファエリカス菌株の一覧を見直し、これまでに異なった種名で寄託されたいくつかを分析することであった。以下の生物体:ATCC 4978--元々、バチルス・ロタンス(Bacillus rotans)として寄託されていたバチルス・スファエリカス、ATCC 7063--元々、バチルス・セロシチジス(Bacillus serositidis)として寄託されていたバチルス・スファエリカス、及びATCC 21538--元々、バチルス・サーキュランス(Bacillus circulans)として寄託されていたバチルス・スファエリカスを、ATCCから取り寄せた。バチルス・スファエリカス、バチルス・ハロデュランス、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラス、バチルス・セレウス、バチルス・ズブチリス、及びバチルス・リケニホルミスからの既知のDAATタンパク質配列を、整列させて、様々なDAATタンパク質内に保存されている配列領域を得た。プライマーを、タンパク質配列保存領域内に設計し、そして、先に触れたATCC菌株からのDAAT遺伝子配列のポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)増幅に使用した。
公開されたバチルスDAAT配列の整列における保存領域に基づいて、5つのPCRプライマーを設計した(図9の整列を参照のこと)。
ポリメラーゼ連鎖反応プロトコール
DAATsの整列における保存領域に基づいて、プライマーを前述のとおり設計した。オリゴヌクレオチド・プライマー配列を以下に示す:
5’ GAAGACCGTGGTTATCAATTT 3’(配列番号65)(順方向プライマー)、
5’ GATGGTATTTACGAAGTAATC 3’(配列番号66)(順方向プライマー)、
5’ AGATTTAATATCACAACGTAAC 3’(配列番号67)(逆方向プライマー)、
5’ GCCAAGTAAAATTTAAGATTTA 3’(配列番号68)(逆方向プライマー)、
5’ ATTTGCTGGGTGCGTATAAAG 3’(配列番号69)(逆方向プライマー)。
予想されるPCR断片のサイズは、プライマー組み合わせと、既知のDAATsとの整列に基づく:配列番号65と配列番号67−約380bp、配列番号65と配列番号68−約395bp、配列番号65と配列番号69−約534bp、配列番号66と配列番号67−約336bp、配列番号66と配列番号68−約346bp、配列番号66と配列番号69−約510bp。
前記プライマーの組み合わせを、以下のATCC菌株:ATCC 4978--元々、バチルス・ロタンスとして寄託されていたバチルス・スファエリカス;ATCC 7063--元々、バチルス・セロシチジスとして寄託されていたバチルス・スファエリカス;及びATCC 21538--元々、バチルス・サーキュランスとして寄託されていたバチルス・スファエリカス、からのコロニーPCR法に使用した。
先に触れた3つの菌株を、寒天培地上で30℃にて培養した。単一コロニーを、プレートからかき採り、そして、25μLの滅菌蒸留水中に再懸濁した。細胞を、96℃にて10分間、溶解させた。PCR法を、以下のとおり実施した: 50μLの反応物あたり、5μLの溶解した細胞、0.8μLの各プライマー、2μLのdNTPs、0.8μLのExpand High Fidelityポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)及び1×Expand(商標)バッファーを加えた。94℃にて3分間のホットスタートを行い、続いて、94℃にて30秒間、40℃にて45秒間、そして、72℃にて2分間を15サイクル行った。45℃に高められたアニーリング温度を用いて、更に15サイクルを行った。最後に、鎖伸長ステップを72℃にて7分間、実行した。いくつかのプライマー組み合わせが、前記の菌株に関して予測されたPCR産物サイズを示した。PCR産物を、製造業者のプロトコール(Invitrogen)に従ってZero Blunt TOPO(登録商標)クローニング・キットを使用してクローニングし、そして、Agencourt BioScience Corporation(Beverly, MA)においてジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって配列決定した。DNA及びアミノ酸レベルの両方の配列を、B.スファエリカスDAAT配列と整列させた。有効なDAAT/DAT配列を、3つの菌株、ATCC 4978、ATCC 7063、及びATCC 21538の全てから得た。2つの特定の菌株、ATCC 4978及びATCC 7063は、翻訳された時に、B.スファエリカスD-アミノ基転移酵素配列と比べると、明確なアミノ酸残基の変化を伴ったタンパク質配列をもたらしたPCR産物を与えた。
ATCC 4978及びATCC 7063菌株に関して完全な遺伝子配列を得るために、ゲノム・ウォーキングを実施した。菌株ATCC 4978を、栄養培地中、30℃にて培養した。菌株ATCC 7063を、栄養寒天培地上で培養した。製造業者のプロトコールに従ってGentra Kit(Gentra Systems、Minneapolis, MN)を使用して、ゲノムDNAを各菌株から調製した。各菌株に関して、4つのライブラリーを、製造業者のプロトコール(BD GenomeWalker(商標) Universalキット、Clontech、www.Clontech.com)に従って構成した。元の生成物と数百個の相同塩基対重複を可能にする、保存的プライマーの組み合わせ(前記を参照のこと)を使用して得られた配列に基づいて、GenomeWalker(商標)の製造業者のプロトコールに従って、遺伝子特異的プライマーを設計した。これらの遺伝子特異的プライマーを、DAT ORFSを完成させるための上流及び下流配列のPCRのためのGenomeWalker(商標)アダプター・プライマーと一緒に使用した。
遺伝子特異的オリゴヌクレオチド・プライマー配列を以下に示す:
4978 DAT GSP1上流 5’ GACATGCTCCTCCGCTGTAAATAATTCACC 3’(配列番号70)
4978 DAT GSP1下流 5’ CCCTGGTGATGAAGTGAAGCCAGTATTAAC 3’(配列番号71)
4978 DAT GSP2上流 5’ ATCGCCAAATTGATAACCACGGTCTTC 3’(配列番号72)
4978 DAT GSP2下流 5’ ACGTCCCGTAGCAAACTTTGAAAAAGGTGT 3’(配列番号73)
7063 DAT GSP1上流 5’ TGCATAGAATCGGTCGATATGTTCAGTAGC 3’(配列番号74)
7063 DAT GSP1下流 5’ GCGGAGAAACGATTACAGAAGGTTCTTCAA 3’(配列番号75)
7063 DAT GSP2上流 5’ GTCACCAAATTGATAACCACGGTCTTC 3’(配列番号76)
7063 DAT GSP2下流 5’ GGTGTACTTTATACGCACCCAGCAAAT 3’(配列番号77)。
アダプター・オリゴヌクレオチド・プライマー配列:
AP1 5’ GTAATACGACTCACTATAGGGC 3’(配列番号78)
AP2 5’ ACTATAGGGCACGCGTGGT 3’(配列番号79)。
一次GenomeWalker(商標)PCRsを、以下のとおり実施した:50μLの反応物あたり、2.5μLのDNAライブラリー、2μLの各プライマー(AP1(配列番号78)と適切なGSP1)、1.5μLのdNTPs、1×XL PCRバッファー、1mMの酢酸マグネシウム、及び1μLのRTTHポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)が加えられた。94℃にて3分間のホットスタート、それに続く、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、そして、68℃にて1分間の10サイクルを実行した。48℃の低いアニーリング温度を用いて、更に20サイクルを実行した。最後に、鎖伸長ステップを、68℃にて7分間、実行した。二次GenomeWalker(商標)PCRsを、以下のとおり実施した:50μLの反応物あたり、1.0μLの(1:50希釈の)一次PCR反応物、2μLの各プライマー(AP2(配列番号79)と適切なGSP2)、1.5μLのdNTPs、1×XL PCRバッファー、1mMの酢酸マグネシウム、及び1μLのRTTHポリメラーゼが加えられた。94℃にて3分間のホットスタート、それに続く、94℃にて30秒間、55℃にて30秒間、そして、68℃にて1分間の10サイクルを実行した。48℃の低いアニーリング温度を用いて、更に15サイクルを実行した。最後に、鎖伸長ステップを、68℃にて7分間、実行した。
いくつかのライブラリーが、〜200bpから〜1.5Kbのサイズの範囲をとるPCR産物を生じさせた。PCR産物を、(前述のとおり)TOPOクローニングし、そして、Agencourt BioScience Corporation(Beverly, MA)におけるジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって配列決定し;これらの新しい配列を、保存的プライマーの組み合わせを使用して得られる元の配列と整列させ、そして、開始及び終止コドンを特定した。このように、DAATの完全なORFsを入手した。新しいプライマーを、ATCC菌株4978と7063のそれぞれからの全DAAT遺伝子のPCRに特異的な完全なDAAT配列に基づいて(クローニングのための制限部位を含めて)設計した。
オリゴヌクレオチド・プライマー配列を、以下に示す:
ATCC 4978 DAAT Nde 1F
5’ GGCCTTGGCATATGAGTTATAGCTTATGGAATGACC 3’(配列番号80)
ATCC 4978 DAAT BamH 1R
5’ GGCCTTAAGGATCCTTATGCGCGAATACCTTTTGGG 3’(配列番号81)
ATCC 7063 DAAT Nde 1F
5’ GGCCTTGGCATATGAGCTACACTTTATGGAATGA 3’(配列番号82)
ATCC 7063 DAAT BamH 1R2a
5’ GGCCAAGGATCCGCTACCCACTAATCATTAGA 3’(配列番号83)。
ATCC 4978及びATCC 7063DAAT遺伝子のコード領域を、以下のPCRプロトコールを使用して増幅した。50μLの反応物中、3μLのゲノムDNA、0.8μLの各プライマー、2μLのdNTPs、0.8μLのExpand High Fidelityポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)、Mgを含む1×Expand(商標)バッファー、0.2μLのPfuポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla, CA)が加えられた。使用された温度サイクル・プログラムには、94℃にて3分間のホットスタート、それに続く、以下のステップ:94℃にて30秒間、50℃にて30秒間、そして、72℃にて90秒間、の8回の反復が含まれた。58℃のアニーリング温度を用いて、その後の22サイクルを実行した。最後に、鎖伸長ステップを72℃にて7分間、実行した。正しいサイズ(約850bp)の、混じりけのないPCR産物を両菌株について入手した。
ATCC 4978及びATCC 7063DAAT遺伝子のPCR産物を、Qiagen QIAquick PCR精製キット(Valencia, CA)を使用して精製し、そして、BamHIバッファー(New England Biolabs、Ipswich, MA)中、NdeI及びBamHIで消化した。NdeI及びBamHIで消化したベクター(pET28及びpET30)、並びに挿入物を、Qiagen QIAquickゲル抽出キットを使用して精製した。連結を、Roche Rapid DNA連結キット(Roche)を使用して実行し、そして、QIAquick PCR精製キットを使用して精製した。連結物を、Bio-Radエレクトロポレーション・マニュアルに記載されているように0.2cmのキュベットとBio-Rad Gene Pulser IIシステムを使用してエシェリキア・コリDH10B内に形質転換した。細胞を、900μLのSOC培地中、225rpm、37℃にて、30分間、回復させた。細胞を、カナマイシン(50μg/mL)を含むLB寒天プレート上に蒔いた。プラスミドDNAを、Qiagen spin miniprepキットを使用して精製し、そして、PCR法及びNdeIとBamHIでの制限消化によって正しい挿入物についてスクリーニングした。正しい挿入物を持っているように見えたプラスミドの配列を、Agencourt BioScience Corporation(Beverly, MA)においてジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって実証した。配列解析は、配列番号84(ATCC 4978DAAT DNA配列)及び配列番号85(ATCC 7063DAAT DNA配列)のDNA配列、並びにと配列番号86(ATCC 4978DAATアミノ酸配列)及び配列番号87(ATCC 7063DAATアミノ酸配列)のアミノ酸配列を製造する、ATCC 4978及びATCC 7063からのDAAT遺伝子のコード配列を実証した。
ATCC 4978及びATCC 7063からの2つの新規DAATsと、(実施例18においてクローニングした)B.スファエリカスDAATの整列を、図10に示した。
我々は、B.スファエリカスD-アミノ基転移酵素と比べた時に、異なったアミノ酸残基の変化があるタンパク質配列を持つ、菌株ATCC 4978及びATCC 7063からの新規D-アミノ基転移酵素を入手した。ATCC 4978及びATCC 7063からのDAATsは、B.スファエリカス(ATCC 10208)からのDAATと、72%及び67%の同一性しかなかった。これらの菌株の両方が、ATCCにおいてB.スファエリカスとして現在一覧に載っていると同時に、それらは、B.ロタンス及びB.セロシチジスとして寄託された。これらの2つの新規DAATsとB.スファエリカスからのDAATの配列整列、及びそれらの間の浮き彫りにされた相違点に基づいて、これらの、並びに他のDAAT配列の中で、R,R体モナティン生合成のためのDAAT活性の増強において(個別の又は組み合わせによる)それらの役割について評価され得る多くの候補残基を特定する。
実施例16
ATCC 4978及びATCC 7063DAATタンパク質に関する遺伝子発現とアッセイ
実施例15に記載のATCC 4987及びATCC 7063からの(pETベクター中の)新規DAATsを、E.コリ発現宿主BL21(DE3)(Novagen、Madison, WI)内に形質転換した。培養物を、先に記載のプロトコールを使用して培養し、プラスミドを、Qiagen miniprepキットを使用して単離し、そして、先に説明したように、制限消化によって分析してプラスミドの同一性を確認した。
DAATの遺伝子の誘導を、通常、カナマイシン(50μg/mL)を含むLB培地において実施した。細胞を、37℃にて0.4〜0.8のOD600まで培養し、0.1mMのIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導し、そして、誘導の3〜4時間後にサンプリングした。(benzonaseヌクレアーゼ及びRoche completeプロテアーゼ・インヒビター・カクテルを含む)Novagen BugBuster(商標)試薬に添付されているプロトコールに従って、細胞抽出物を調製した。pETベクター内のATCC 4978及びATCC 7063の両方の遺伝子産物について、SDS-PAGEによって判断された、予測される分子量にて可溶性タンパク質を得た。高レベルの可溶性タンパク質を、Hisタグなしの構築物(pET30)を使用して観察した。細胞抽出物中の可溶性タンパク質を、BioRad Laboratories Experion Automated Electrophoresis Station(Hercules, CA)により分離し、そして、濃度及び発現の割合(%)についてExperionソフトウェア・バージョン1.1.98.0を使用して分析した。
非タグ付与(pET30)構築物を有する細胞からのタンパク質抽出物を、以下のプロトコールを使用して、ピルビン酸及びDトリプトファン(又はR,R体モナティン)からのアラニンの製造をたどることによって、D-アミノ基転移酵素活性について分析した。二重反復試験の500μLの反応を、別段の指定がない限り、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH7.5)、80μMのピリドキサール・リン酸、25mMのピルビン酸ナトリウム、及び50mMのD-トリプトファン又はR,R体モナティン中で実施した。反応を、無細胞抽出物(4978若しくは7063)又は精製した酵素(B.スファエリカス)の添加によって開始し、そして、それを緩やかに振盪しながら、30℃にて15分間〜2時間、インキューベートした。比較目的のために、各アッセイにおいて、以下に指定がない限り、ほとんど同じレベルの総タンパク質を加えた(1.0mg)。精製したB.スファエリカス(ATCC番号10208)アミノ基転移酵素を、ベンチマーク酵素として使用した。ギ酸を2%の終濃度まで加えて反応を止め、そして、沈殿したタンパク質を遠心分離によって除去した。タンパク質を加えなかった対照反応も実施した。アラニンを、実施例1で記載されているように、OPA誘導体化を使用して検出した。二重反復試験の反応を平均した結果を、以下の表35及び36未満に示す。
Figure 2008538932
Figure 2008538932
これにより、我々は、ATCC 4978及びATCC 7063からのD-アミノ酸アミノ基転移酵素が確かにD-アミノ基転移酵素活性を持っており、そして、R,R体モナティンを作り出す能力があることを立証した。ATCC 4978 DAATの活性は、ATCC 7063 DAATに関して観察されたものに比べて、より高かった。4978が精製されていなかったので、4978とB.スファエリカスの間の定量的な比較はできなかった。
実施例17
ATCC 4978からのDAATを使用したR,R体モナティンの製造
ATCC 4978からのアミノ基転移酵素を、(実施例3のように)D-トリプトファンからモナティンを製造する能力についても試験した。1mLの反応混合物につき、以下の:約50μgのアルドラーゼ(精製された、C.テストステロニProAアルドラーゼ又は配列番号22のアルドラーゼ)、4mMのMgCl2、50mMのD-トリプトファン(固体として供給される)、1.0mgのD-アミノ基転移酵素、100mMのピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、及び0.05mMのPLP、を加えた。実験を、アミノ基転移酵素を加えなかった負の対照を伴った二重反復試験で行った。サンプルを、緩やかに振盪しながら、30℃にて様々な時間の長さでインキューベートした。これらの方法を使用してモナティンを製造する時、検出された唯一の立体異性体が、R,R体とS,R体である。実施例1で記載されているとおりに検出した総モナティン及びR,R体モナティンの割合(%)を、以下の表37〜39で一覧表にした。表37〜39のそれぞれに示される結果は、二重反復試験の反応からの平均値である。
Figure 2008538932
Figure 2008538932
Figure 2008538932
これにより、我々は、ATCC 4978からのD-アミノ酸アミノ基転移酵素が、R,R体モナティンを作り出す能力を持つことを立証した。1グラムのタンパク質あたりのモナティンのmg数に関して総モナティン製造を比較した時に、ATCC 4978 DAATの活性は、B.スファエリカスDAATに関して観察されたものよりも高かった。配列番号22のR体に特異的なアルドラーゼの使用は、製造された総モナティン量と比較して、形成されたR,R体モナティンの割合(%)を明らかに改善した。
実施例18
公開されているバチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素のクローニング
いくつかのバチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素(EC 2.6.1.21、また、D-アラニン・アミノ基転移酵素又はD-アスパラギン酸アミノ基転移酵素としても知られている)を、R,R体モナティンの製造に関する共役アッセイにおける使用のために、組み換えにより製造した。これらの酵素は、これまでモナティンの製造に関して説明したD-アミノ基転移酵素に相同である(米国公開番号第20040063175号及び米国公開番号第2005282260号)。
菌株
B.スファエリカス(ATCC番号10208)及びB.リチェニフォルミス(ATCC 10716)を、栄養寒天培地上、30℃にて一晩、培養した。コロニー群を、100μLの滅菌水中に移し、そして、95℃にて5分間、加熱して細胞を崩壊させた。3μLを、その後のポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)増幅において使用した。B.ハロデュランス(ATCC番号BAA-125D)に関しては、ゲノムDNAを注文し、水中、100ng/μLの濃度に再懸濁した。同様に、バチルス・セレウスのゲノムDNA(ATCC番号1-987D及び14579D)を、クローニングのために取り寄せた。
ポリメラーゼ連鎖反応プロトコール
B.スファエリカスdat遺伝子のためのプライマーを、NcoI及びBamHI部位を使用して、pET28b及びpET30aベクター(Novagen、Madison, WI)内にクローニングするために設計した。pET30構築物には、N末端His-タグ及びS-タグが含まれるのに対して、pET28構築物はタグ付与されない。
バチルス・スファエリカスdatプライマー:
N末端:5’-GATATACCATGGCATACTCATTATGGAATG-3’(配列番号88)及び
C末端:5’-GTTATCGGATCCTTAGGCATTAATTGAAATTG-3’(配列番号89)。
B.リチェニフォルミスのプライマー及びB.ハロデュランスのプライマーを、NdeI及びBamHI部位を使用して、pET28b及びpET30aベクター内にクローニングするために設計した。この場合、pET30構築物にはタグ付与されなかったのに対して、pET28構築物には、小さいN末端His-タグが含まれる。
B.リチェニフォルミスdatプライマー:
N末端:5’-GGCCGGTTCATATGAAAGTTCTTTTTAACGGC-3’(配列番号90)及び
C末端:5’-CCTTCCGGATCCTTAAACCGTTTTGGCTGTCT-3’(配列番号91)
B.ハロデュランス・プライマー:
N末端:5’-GATATACATATGGATTATTGCCTTTACCAA-3’(配列番号92)及び
C末端:5’-GAATCCGGATCCTCACTGCTTCATCGCTGTTTG-3’(配列番号93)。
B.セレウス・コード配列のためにプライマーを設計した。あるプライマー・セットは、受入番号AE016877 gi:29899096 5138634…5139506(873bp)としてNCBIで一覧に示されている配列をもたらした。あるプライマー・セットは、追加の12bp上流を伴った、B.thuringiensisの予測されたdat、NCBI受入番号AE017355 gi:49328240 4965653…4966537(885bp)に類似した産物をもたらした。両プライマー・セットを、N末端領域のNdeI、及びC末端領域のBamHI制限部位を考慮して設計した。プライマーを、pBAD-TOPO TAクローニング内へのクローニングのために設計した。
B.セレウス・プライマー:
N末端 5’-TAAGAGGAATAACATATGGCATACGAAAGATTT-3’(配列番号94)及び
C末端 5’-GAATTCGGATCCTTAAGAAGATGACATATTGG-3’(より短いPCR産物)(配列番号95)
N末端 5’-TAAGAGGAATAACATATGGGATCGAAATTGGCA-3’(より長いPCR産物)(配列番号96)。
B.スファエリカス、B.ハロデュランス、及びB.リチェニフォルミスdat遺伝子のコード領域を、以下のPCRプロトコールを使用して増幅した。50μLの反応物中に、3μLの鋳型(ゲノムDNAについては2μL)、1.6μMの各プライマー、0.25mMの各dNTP、3.5UのExpand High Fidelityポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)、及びMgを含む1×Expand(商標)バッファーが使用される。使用される温度サイクル・プログラムには、94℃にて3分間のホットスタート、それに続く、以下のステップ:94℃にて30秒間、52℃にて30秒間、そして、72℃にて2分間、の8回の反復が含まれた。58℃のアニーリング温度を用いて、その後の22サイクルを実行した。30サイクルの後に、サンプルを72℃にて7分間、維持し、そして、4℃にて保存した。正しいサイズの混じりけのないPCR産物を入手した(dat遺伝子については約850bp)。
受入番号AAA22252(gi:142542)のタンパク質をコードするゲオバチルス・ステアロサーモフィラスdat(受入番号J04460 gi:142541)を、アッセンブリPCR技術を使用して構築した。この遺伝子/タンパク質の起源は、多くの場合、バチルス種、熱安定性バチルス種、又はバチルスYM-1と説明されている。アッセンブリ過程は、以下のとおりである:センスとアンチセンス鎖の間に20塩基対の重複を伴った、先のゲノム配列、及びその相補的DNA配列に基づく43個のオリゴヌクレオチド(40mer)を、IDTから取り寄せた。プライマーを、水中、250μMに希釈し、そして、5μLの各プライマーを、微量遠心管内で一緒に混合した。PCRを以下のとおり実行した:100μLの反応物あたり、1.5μLのプライマー・プール、4μLのdNTPs、1×XL PCRバッファー、1mMの酢酸マグネシウム、2μLのrTthポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)、及び0.25μLのPfuポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla, CA)が加えられた。94℃にて3分間のホットスタートとそれに続く、94℃にて30秒間、40℃にて30秒間、そして、68℃にて15秒間の15サイクルを実行した。44℃の高められたアニーリング温度、及び(68℃にて)30秒間の伸長時間を用いて、更に10サイクルを実行した。48℃のアニーリング温度、及び75秒間の伸長時間を用いて、更に10サイクルを実施した。最後に、鎖伸長ステップを68℃にて7分間、実行した。二次PCRを、NdeI(N末端)及びBamHI(C末端)を用いたクローニングのために設計された以下のプライマーを使用して実行した:
N末端 5’-GGCCTTGGCATATGGGATACACTTTATGGAATGACC-3’(配列番号97)及び
C末端 5’-TTGGAACCGGATCCTTATATATGAAGCGGTTTTGG-3’(配列番号98)。
PCRには、100μLあたり、2.5μLの一次反応物、0.4μLの各プライマー、3μLのdNTPs、1×XL PCRバッファー、1mMの酢酸マグネシウム、2μLのrTthポリメラーゼ、及び0.25μLのPfuポリメラーゼが含まれた。3分間のホットスタートを94℃にて実行し、それに続いて、94℃にて30秒間、42℃にて30秒間、そして、68℃にて90秒間の10サイクルを実行した。48℃の高めされたアニーリング温度を用いて、更に15サイクルを実行し、そして、最後に、鎖伸長ステップを68℃にて7分間、実行した。三次PCR反応を、二次PCRから鋳型を使用し、且つ、二次PCR反応と同じ条件を使用して実行した。約900bpの産物がアガロースゲルにより明らかになった。
クローニング
B.スファエリカスDATのPCR産物を、Qiagen QIAquick PCR精製キット(Valencia, CA)を使用して精製し、そして、BamHIバッファー(New England Biolabs, Ipswich, MA)中、BamHIとNcoIで消化した。消化したベクター(pET28及びpET30)と挿入物を、Qiagen QIAquickゲル抽出キットを使用して精製した。連結を、Roche Rapid DNA連結キット(Roche)を使用して実行し、そして、QIAquick PCR精製キットを使用して精製した。連結物を、Bio-Rad・エレクトロポレーション・マニュアルに記載されているように、0.2cmのキュベットとBio-Rad Gene Pulser IIシステムを使用して、エシェリキア・コリDH10B内に形質転換した。細胞を、900μLのSOC培地中、37℃、225rpmにて30分間、回復させた。細胞を、カナマイシン(25μg/mL)を含むLB寒天プレート上に蒔いた。プラスミドDNAを、Qiagen spin miniprepキットを使用して精製し、そして、BamHIとNcoIを用いた制限消化によって正しい挿入物についてスクリーニングした。正しい挿入物を持っているように見えたプラスミドの配列を、Agencourt BioScience Corporation(Beverly, MA)においてジデオキシ鎖終止DNA配列決定法によって実証した。コード配列が実証された配列は、受入番号AAC33964(gi:3513755)で掲載されているアミノ酸配列を持つタンパク質を生じるNCBI受入番号AF081278の領域134..985(gi:3513754)において見つかった。
B.リチェニフォルミスDAT(〜850bp)及びG.ステアロサーモフィラスのPCR産物を、ゲル精製し、そして、製造業者のプロトコール(Invitrogen)に従ってZero Blunt TOPO(登録商標)クローニング・キットを使用してクローニングした。プラスミドを、一次スクリーニングのためにTOP10化学的コンピテント細胞内に形質転換した。プラスミドDNAを、制限消化によってスクリーニングし、そして、配列を、NCBIで見つけたコード配列に一致することを実証した。B.リチェニフォルミスについて、配列は、429位におけるAからGへの1つのサイレント突然変異を除いて、受入番号P54692(gi:1706292)で掲載されているアミノ酸配列を持つタンパク質を生じる受入番号U26947の領域247.. 1098(gi:857560)に一致した。G.ステアロサーモフィラスについて、配列は、先に挙げた受入番号に一致した。コード領域を、制限消化(NdeI/BamHI)によってサブクローニングし、pETベクター内に連結し、そして、増幅のためにエレクトロコンピテントDH10B細胞内に形質転換した。
B.ハロデュランスDATのPCR産物を、前述のとおり、ゲル精製し、NdeIとBamHIで消化し、そして、pET28及びpET30ベクター内に連結した。ベクターの増幅をDH10B細胞により実行した。少量調製したDNAを、PCR法によってスクリーニングし、そして、配列を実証した。遺伝子配列を、受入番号NP_243677(gi:15615374)で掲載されているアミノ酸配列を持つタンパク質をコードする受入番号NC_002570(gi:57596592)2934903..2935754の中に見つけた。
B.セレウスのコード配列を、代表的なPCRプロトコールを使用して増幅し、そして、製造業者のプロトコール(Invitrogen)に従ってクローニングした。
遺伝子発現とアッセイ
プラスミドDNAをpETベクターによる構築物のために、E.コリ発現宿主BL21(DE3)(Novagen、Madison, WI)内にサブクローニングした。培養物を培養し、プラスミドを、Qiagen miniprepキットを使用して単離し、そして、制限消化によって分析して同一性を確認した。誘導を、通常、カナマイシン(50μg/mL)を含むLB培地中で実施した。細胞を、37℃にて0.4〜0.8のOD600まで培養し、0.1mMのIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導し、そして、誘導の3〜4時間後にサンプリングした。細胞抽出物を、(benzonaseヌクレアーゼ及びRoche completeプロテアーゼ・インヒビター・カクテルを含む)Novagen BugBuster(商標)試薬に添付されているプロトコールに従って調製した。両B.ハロデュランス遺伝子産物、両B.スファエリカス遺伝子産物、両G.ステアロサーモフィラス遺伝子産物、及び非タグ付与B.リチェニフォルミス遺伝子産物について、SDS-PAGEによって判断されるように、予測された分子量にて高レベルの可溶性タンパク質を得た。精製したタンパク質を使用する反応のために、His-タグ付与遺伝子産物を、製造業者のプロトコール(Novagen、Madison, WI)に従って、His-Bindカートリッジを使用して精製した。溶出液画分を、PD-10(Amersham Biosciences、Piscataway, NJ)カラムにより脱塩し、そして、25から100mMのカリウム・リン酸バッファー、pH7.5中に溶出した。全タンパク質アッセイを、Pierce BCAキットを使用して実行し、そして、発現の割合(%)を、SDS-PAGEから推測した。あるいは、細胞抽出物中の可溶性タンパク質をBioRad Laboratories Experion Automated Electrophoresis Stationにより分離し、そして、Experionソフトウェア・バージョン1.1.98.0を使用して濃度及び発現の割合(%)について分析した。B.セレウスの遺伝子を含むpBAD-TOPO構築物を、Invitrogenによって推薦されるとおり発現させたが、DAATsの発現のレベルは、SDS-PAGE分析中に組み換え体タンパク質を、他のタンパク質と区別できないようなものであった。
以下のプロトコールを使用して、ピルビン酸及びD-トリプトファン(又はR,R体モナティン)からのアラニンの製造を追うことによってD-アミノ基転移酵素活性について細胞抽出物を分析した。二重反復試験の1mLの反応を、通常、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH7.5)、50μMのピリドキサール・リン酸、25mMのピルビン酸ナトリウム、及び50mMのD-トリプトファン又はR,R体モナティン中で実施した。反応を、無細胞抽出物又は精製した酵素の添加によって開始し、そして、それを緩やかに振盪しながら、30℃にて15分間〜一晩、インキューベートした。比較目的のために、ほとんど同じレベルのD-アミノ基転移酵素(通常、約0.5mg)を、各アッセイにおいて加えた。AT-103(BioCatalytics)を、正の対照(又はベンチマーク)として使用した。ギ酸を、2%の終濃度まで加えて反応を止め、そして、沈殿したタンパク質を遠心分離によって除去した。タンパク質を加えなかった対照反応も実施した。0時点もまた、負の対照として使用した。アラニンを、実施例1で記載されているようにOPA誘導体化を使用して検出した。
アミノ基転移酵素もまた、(実施例3のように)D-トリプトファンからモナティンを製造するそれらの能力について試験した。1mLの反応混合物あたり、以下の:50〜100μgのアルドラーゼ(通常、C.テストステロニProAアルドラーゼ、精製されている)、4mMのMgCl2、50mMのD-トリプトファン(固体として供給される)、0.5〜2mgのD-アミノ基転移酵素、200mMのピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、及び0.05mMのPLPを加えた。実験を、アミノ基転移酵素を加えなかった負の対照を伴って、二重反復試験で実行した。サンプルを、緩やかに振盪しながら、30℃にて1時間、2時間、及び一晩(17〜20時間)インキューベートした。これらの方法を使用してモナティンを製造した時、検出された唯一の立体異性体は、R,R体とS,R体である。R,R体の割合(%)を、以下に一覧として示し、そして、逆相LCピーク面積によって測定した。1時間後の、B.スファエリカス、B.リチェニフォルミス、及びB.ハロデュランスD-アミノ基転移酵素のアミノ基転移活性の結果を、以下の表40に示している。データを、1mlあたり0.5mgのD-アミノ基転移酵素に標準化した。
Figure 2008538932
B.スファエリカス、B.リチェニフォルミス、及びB.ハロデュランスのD-アミノ基転移酵素を使用したモナティンの製造を、以下の表41に示している。それぞれの反応には、約90ngのC.テストステロニProAが含まれていた。製造された総モナティンのデータを、0.5mgのD-アミノ基転移酵素の使用に対して標準化した。
Figure 2008538932
B.スファエリカスのD-アミノ基転移酵素(非タグ付与)には、D-トリプトファンからのモナティンの製造に対して最も高い活性があったが、B.ハロデュランス酵素には、他の酵素と比べて、R-MP対S-MPに関してはるかに高い選択性があり、R,R体モナティンのより高い立体純度をもたらした。B.セレウス細胞抽出物には、試験した条件下、検出可能な活性量がなかったが、選ばれた宿主において遺伝子が発現されていなかったのかもしれない。
G.ステアロサーモフィラスDAT(非タグ付与、良好に発現されている)を、前述のとおりアッセイし、そして、精製されたB.スファエリカスDAT及びAT-103(BioCatalytics)と比較した。結果を、以下の表42及び43に示す。G.ステアロサーモフィラス、AT-103、及びB.スファエリカスのD-アミノ基転移酵素のアミノ基転移活性を、1mLあたり0.5mgのD-アミノ基転移酵素を使用して試験した(表42)。
Figure 2008538932
Figure 2008538932
天然のGステアロサーモフィラス酵素は、AT-103及びB.スファエリカスの酵素と比べて、モナティンのアミノ基転移に関して活性が明らかに低い。
実施例19
ハイブリッドD-アミノ基転移酵素の作成
いくつかのバチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素を、実施例18及び15で記載した。G.ステアロサーモフィラス酵素はモナティンに対して低いアミノ基転移活性しか持っておらず、より少ない、D-トリプトファンから製造される総モナティンしかもたらさないが、それは着目の構造要素をまだ持ち、且つ、それは熱安定酵素である。それ故に、ハイブリッド・タンパク質を、より高い活性の酵素(B.スファエリカス)とゲオバチルス酵素の間で作成した。
ハイブリッドDATコード配列のアッセンブリ
設計された標的タンパク質配列は、配列番号99である。
配列番号99に相当するコード配列である配列番号100を、E.コリのコドン使用頻度に基づいて設計した。
ハイブリッドDATを、アッセンブリPCR技術を使用して構築した。アッセンブリ過程は、以下のとおりである:前記の遺伝子配列及び相補的DNA配列に基づき、センス及びアンチセンス鎖の間に20塩基対の重複を伴った、43個のオリゴヌクレオチド(40mer)をIDTから取り寄せた。プライマーを、水中、250μMに希釈し、そして、5μLの各プライマーを、微量試験管内で一緒に混合した。PCRを、以下のとおり実施した:100μLの反応物中、1.5μLのプライマー・プール、4μLのdNTPs、1×XL PCRバッファー、1mMの酢酸マグネシウム、2μLのrTthポリメラーゼ(Roche、Indianapolis, IN)、及び0.25μLのPfuポリメラーゼ(Stratagene、La Jolla, CA)が加えられた。3分間のホットスタートを94℃にて実行し、それに続いて、94℃にて30秒間、40℃にて15秒間、そして、68℃にて30秒間の15サイクルを実行した。44℃の高められたアニーリング温度と30秒間の延ばされたアニーリング時間を用いて、10サイクルを実行した。48℃のアニーリング温度と75秒の伸長時間を用いて、更に10サイクルを実施した。最後に、鎖伸長ステップを68℃にて7分間、実行した。二次PCRを、NdeI(N末端)とBamHI(C末端)を用いたクローニングのために設計した以下のプライマーを使用して実行した:
N末端 5’-GGCCTTGGCATATGGGATACACTTTATGGAATGACCA-3’(配列番号101)及び
C末端 5’-TTGGAACCGGATCCTTAGCTGTTAAGGCTCAGTGGAA-3’(配列番号102)
前記PCRには、100μLあたり、2.5μLの一次反応、3μLのdNTPs、1×XL PCRバッファー、1mMの酢酸マグネシウム、2μLのrTth、及び0.25μLのPfuポリメラーゼが含まれた。3分間のホットスタートを94℃にて実行し、それに続いて、94℃にて30秒間、42℃にて30秒間、そして、68℃にて75秒間の10サイクルを実行した。48℃の高められたアニーリング温度を用いて、更に15サイクルを実行し、そして、最後に、鎖伸長ステップを68℃にて7分間、実行した。約850bpの産物が、アガロースゲルにより明らかになった。
クローニング
PCR産物を、Qiagen QIAquickゲル抽出キット(Valencia, CA)を使用してゲル精製し、そして、製造業者のプロトコール(Invitrogen)に従ってZero Blunt TOPO(登録商標)クローニング・キットを使用してクローニングした。PCR法による一次スクリーニングのために、プラスミドをTOP10化学的コンピテント細胞内に形質転換した。プラスミドDNAを制限消化によってスクリーニングし、そして、DNA配列を実証した。
プラスミド少量調製物を、BamHIとNdeI(New England Biolabs、Ipswich, MA)で消化した。消化したベクター(pET28とpET30)及び挿入物を、Roche Rapid DNA連結キット(Roche)を使用して連結し、そして、Roche High-Pure PCR産物精製キットを使用して精製した。連結物を、Bio-Radエレクトロポレーション・マニュアルに記載されているとおり、0.2cmのキュベットとBio-Rad Gene Pulser IIシステムを使用してエシェリキア・コリDH10B内に形質転換した。細胞を、900μLのSOC培地中、37℃、225rpmにて30分間、回復させた。細胞を、カナマイシン(25μg/mL)を含むLB寒天プレート上に蒔いた。プラスミドDNAを、Qiagen spin miniprepキットを使用して精製し、そして、BamHIとNdeIを用いた制限消化によって、正しい挿入物についてスクリーニングした。
遺伝子発現とアッセイ
プラスミドDNAを、製造業者のプロトコール(Novagen、Madison, WI)に従って、E.コリ発現宿主BL21(DE3)内に形質転換した。培養物を培養し、そして、プラスミドを、Qiagen miniprepキットを使用して単離し、そして、PCR法によって分析して同一性を確認した。誘導を、カナマイシン(50μg/mL)を含むLB培地において実施した。細胞を、37℃にて0.5のOD600まで培養し、0.1mMのIPTG(イソプロピルチオガラクトシド)で誘導し、誘導の3時間後にサンプリングした。細胞抽出物を、(benzonaseヌクレアーゼとRoche completeプロテアーゼ・インヒビター・カクテルが加えられている)Novagen BugBuster(商標)試薬に添付されたプロトコールに従って調製した。高レベルの総タンパク質を、両遺伝子産物についてSDS-PAGEによって判断される、予測された分子量にて得た。しかしながら、タンパク質の可溶性のレベルは低かった。遺伝子産物の非タグ付与バージョンは、良好に発現していたので、それを細胞抽出物としてアッセイした。細胞抽出物の可溶性タンパク質を、BioRad Laboratories Experion Automated Electrophoresis Stationにより分離し、そして、Experionソフトウェア・バージョン1.1.98.0を使用して濃度及び発現の割合(%)について分析して、比較アッセイに使用されるD-アミノ基転移酵素の量を標準化した。
細胞抽出物を、以下のプロトコールを使用して、ピルビン酸及びD-トリプトファン(又はR,R体モナティン)からのアラニンの製造を追うことによってD-アミノ基転移酵素活性について分析した。(別段の言及がない限り)二重反復試験の1mLの反応を、100mMのリン酸カリウム・バッファー(pH7.5)、50μMのピリドキサール・リン酸、25mMのピルビン酸ナトリウム、及び50mMのD-トリプトファン又はR,R体モナティン中で実施した。反応を、無細胞抽出物又は精製した酵素の添加によって開始し、そして、緩やかに振盪しながら、30℃にて15分〜一晩、インキューベートした。(別段の言及のない限り)比較目的のために、ほとんど同じレベルのD-アミノ基転移酵素を、各アッセイに加えた(0.5mg)。AT-103(BioCatalytics)又はB.スファエリカスのD-アミノ基転移酵素(実施例18)を、ベンチマーク酵素として使用した。ギ酸を、2%の終濃度まで加えて反応を止め、そして、沈殿したタンパク質を遠心分離によって除去した。タンパク質を加えていない対照反応もまた実施した。0時点もまた、負の対照として使用した。アラニンを、実施例1で記載されているように、OPAポストカラム誘導体化を使用して検出した。1mL反応容量あたり0.5mgのD-アミノ基転移酵素を使用した反応の結果を、以下の表44に示している。
Figure 2008538932
アミノ基転移酵素を、(実施例3のように)D-トリプトファンからモナティンを製造するそれらの能力についても試験した。1mLの反応混合物あたり、以下の:約50〜100μgの精製したC.テストステロニProAアルドラーゼ、4mMのMgCl2、50mMのD-トリプトファン(固体として供給される)、0.5〜2mgのD-アミノ基転移酵素、200mMのピルビン酸ナトリウム、100mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、及び0.05mMのPLPを加えた。実験を、アミノ基転移酵素が加えられていない負の対照を伴って、二重反復試験で実行した。サンプルを、緩やかに振盪しながら、30℃にて1時間、2時間、及び一晩(17〜20時間)インキューベートした。これらの方法を使用してモナティンを製造した時、検出された唯一の立体異性体が、R,R体とS,R体であった。R,R体の割合(%)を、以下の表45に一覧として載せ、そして、それを逆相LCピーク面積によって測定した。低いモナティン濃度において、R,R体の割合(%)は、RPLCピーク面積で判断されるほど正確でない。それ故に、いくつかのサンプルを、実施例1で記載されているFDAA誘導体化法によって更に分析した。それらの結果からの数値を表中の括弧内に示している。
Figure 2008538932
ハイブリッドDATは、G.ステアロサーモフィラス酵素より多くのモナティンを作るが、ハイブリッドDATのモナティン・アミノ基転移速度は低い。(低いMP濃度が存在する)モナティン製造の条件下、ハイブリッドは、もしかすると、低いKmに起因してより良く機能することがあり得る。ハイブリッドDATは、親酵素のいずれと比べても、より高いR,R体の割合(%)も同様にもたらす。この酵素は、親酵素に比べて、R-MPに対するより高い対掌体選択性を有すると考えられる。同じアッセイを、ハイブリッドDATと一緒に実施例3に記載のシノリゾビウム・アルドラーゼを使用して実行した(4時間のインキュベーション時間)。ハイブリッドDATは、前述と同じような量のモナティンを製造したが、代替アルドラーゼを使用して、C.テストステロニProAアルドラーゼを用いた80%に対して、(FDAA誘導体化による)95%のR,R体を製造した。
ハイブリッドDATを、(実施例1で記載されているように調製される)R-MP対S-MPのアミノ基転移活性についても試験した。2時間と一晩のアッセイを、30℃にて、10mMのR-MP又はS-MP、50mMのD-アラニン、100mMのリン酸カリウムpH7.5、0.5mg/mLのD-アミノ基転移酵素、及び50μMのPLPを使用して行った。実験を、二重反復試験で実行し、そして、MPサンプルからモナティンのバックグラウンド・レベルを差し引いた。各基質から製造されたモナティンの比を、両D-アミノ基転移酵素について以下の表46中に報告する。同様の傾向は、(製造された)ピルビン酸の比をプロットした時に観察された。ハイブリッドDATが、選択的であるとは思えないAT-103 D-アミノ基転移酵素に比べて、R-MPに対してより選択的であることは明らかである。
Figure 2008538932
ハイブリッドDAT活性を更に改善するための取り組みにおいて、部位特異的突然変異誘導を実行した。プライマーを、QuikChange Multi Site-Directed Mutagenesisキット(Stratagene)に示されるとおり設計した。2つの異なる突然変異体:ハイブリッドDAT2及びハイブリッドDAT3を作製した。ハイブリッドDAT2には、153位のアミノ酸のアラニンからアルギニンへの突然変異、及びセリン181の欠失が含まれる。アラニンからアルギニンへの突然変異を、AspC L-アミノ基転移酵素内に存在していることが示されたように、モナティン前駆体基質内の2番目のカルボキシル基を配位結合するのを助けるように設計した。セリンの欠失は、より大きなモナティン前駆体分子がより容易に活性部位に到達するように、いくらか立体障害を取り除く試みであった。ハイブリッドDAT3には、1つのアルギニンによって置き換えられたセリン180〜182の欠失が含まれる。それぞれ、153alaからargへの突然変異又はセリンの欠失しか持たない2つの追加の突然変異体を作製した。欠失を含んでいる3つの突然変異体は全て、可溶性タンパク質を作らなかったが、それらは非常に高い濃度で過剰発現した。明らかに、この領域内のアミノ酸を除去しないことが構造的に重要である。ala 153 arg突然変異体は、(前述の)試験された条件下でモナティンを製造しなかった。180〜182領域における欠失のない状態ではモナティン前駆体基質をうまくはめ込むことをより困難にするだろうかなりの量の立体障害が153位付近に存在する。セリンから、例えば、グリシン又はアラニンなどのより小さいアミノ酸に変異させることは、特に、ala 153 arg突然変異と組み合わせた時に、モナティン前駆体に対する活性を改善するだろうことが期待される。
実施例20
市販のD-アミノ酸脱水素酵素酵素の使用
D-アミノ酸脱水素酵素は、BioCatalytics(Pasadena, CA)から購入されたライブラリーの一部であった。
MPとモナティンの間の相互変換
モナティンを形成するためのMPのアミノ化は、アミノ基転移酵素によるか、又は補助因子、例えば、NADH若しくはNADPHなどの還元を必要とする脱水素酵素によって触媒されてもよい。これらの反応は、可逆的であり、どちらの方向においても計測できる。脱水素酵素を使用する時、方向性はアンモニウム塩の濃度によって主に制御される可能性がある。
市販の脱水素酵素を使用したモナティンのMP(モナティン前駆体)への変換
モナティンの酸化的脱アミノ反応を、NAD+がより多くの発色団NADHに変換された場合の、340nmの吸光度の増大を追うことによって観察した。
アッセイ混合物には、0.2mL中に、100mMの重炭酸ナトリウム、pH9、10mMのNAD+、20mg/mLのD-アミノ酸脱水素酵素(D-AADH-101〜108、BioCatalytics)、及び50mMのR,R体モナティン(一カリウム塩)が含まれた。アッセイを、二重反復試験で、紫外線透過性マイクロタイタープレート内、30℃でのインキュベーションを用いて実施した。終点吸光度を、Molecular Devices SpectraMax Plusプレートリーダーを使用して計測した。負の対照を、酵素の添加なしで実施した。一晩反応についての吸光度の変化は、以下のとおりであった:無酵素対照、0.05;D-AADH-101、0.865;D-AADH-102、1.075;D-AADH-103、0.94;D-AADH-104、0.335;D-AADH-105、0.78;D-AADH-106、0.745;D-AADH-107、0.925;及びD-AADH-108、1.06。
脱水素酵素を使用したMPからのモナティンの製造
このアッセイの基質として使用されるR-MPを、アミノ・アクセプタとしてピルビン酸を使用し、リン酸カリウム・バッファー中、AT-103広範囲D-アミノ基転移酵素(BioCatalytics)を使用したR,R体モナティンのアミノ基転移によって製造した。S-MPを、アミノ・アクセプタとして2-オキソグルタル酸を使用し、リン酸カリウム・バッファー中、AT-102 L-アミノ基転移酵素(BioCatalytics)を使用したS,S体モナティンのアミノ基転移によって製造した。両化合物を、実験規模のHPLCを使用して精製した。
アッセイ混合物には、0.25mL中に、200mMのギ酸アンモニウム、50mMのリン酸カリウムpH7.5、5mMのNADH、20mg/mLのD-アミノ酸脱水素酵素(D-AADH-101〜108、BioCatalytics)、及び10mMのMP(カリウム塩)が含まれた。半分のアッセイに、2mg/mLのギ酸脱水素酵素(「FDH」)を加えた(FDH-101、BioCatalytics、4.8U/mg)。サンプルを、30℃にて16時間、インキューベートした。サンプルを、LC/MS/MSを使用してモナティンについて分析し、そして、異性体分布を、実施例1に記載のFDAA法を使用して測定した。無D-アミノ酸脱水素酵素対照のバックグラウンド・レベルを、差し引いてMP中に存在するモナティン混入を明らかにした。
R-MPからのR,R体モナティンの製造に関して、酵素活性度は、以下のとおりであった:D-AADH-103 > D-AADH-101 > D-AADH-107 > D-AADH-106 > D-AADH-108 > D-AADH-105。D-AADH-102によって製造されたモナティンの量はかなり少なく、そして、D-AADH-104は、R-MPからモナティンを製造しているように見えなかった。約43ppmのR,R体モナティンが、ギ酸脱水素酵素の不存在下の反応中にD-AADH-103によって製造された。FDHの添加は、活性を持っている全ての酵素に関してモナティンの製造を改善した。改善は、2.4倍高いモナティン〜10.1倍高いモナティン(D-AADH-103)の範囲に及んだ。D-AADH-103は、約434ppmのR,R体モナティンを製造した。
S-MPを反応基質として使用し、S,R体モナティンの製造を追った時、酵素活性は、以下のとおりであった:D-AADH-106 > D-AADH-107 > D-AADH-105 > D-AADH-101 > D-AADH-102 > D-AADH-103 > D-AADH-108。D-AADH-104は、アッセイにおいてS,R体モナティンを製造したように見えなかった。約15ppmのS,R体モナティンがD-AADH-106によって製造され、FDH酵素も使用された時には、26ppm製造された。
インドール-3-ピルビン酸からのモナティンの製造
配列番号22のアルドラーゼと共役させたBioCatalyticsアミノ酸脱水素酵素酵素を使用した、インドール-3-ピルビン酸及びピルビン酸からのモナティンの製造を、以下の条件下でアッセイした:1mg/mLの脱水素酵素、10mMのNADH、500μg/mLのアルドラーゼ(精製した)、50mMのリン酸カリウム・バッファーpH7.5、4mMのMgCl2、20mg/mLのインドール-3-ピルビン酸、200mMのギ酸アンモニウム、及び200mMのピルビン酸を、30℃、100rpmにて20時間、インキューベートした。負の対照には、アミノ酸脱水素酵素が含まれなかった。実験を、二重反復試験で実施した。脱水素酵素のいずれも、負の対照と比較して、(実施例1で記載されているとおりLC/MS/MSによって計測された場合に)インドール・ピルビン酸とピルビン酸から定量可能な量のモナティンを製造したように見えなかった。しかしながら、大量のアラニンとトリプトファンを製造した。アルドラーゼ対脱水素酵素の比を高めることでモナティン製造が改善されると期待される。定向進化アプローチが、MP対ピルビン酸とインドール-3-ピルビン酸に対する還元的アミノ化活性の比を改善するのに使用され得るとも期待される。
実施例21
B.スファエリカスD-アラニン・アミノ基転移酵素の固定化
バチルス・スファエリカスD-アラニン・アミノ基転移酵素を、実施例14で記載されているように、HIS6-タグ付与タンパク質として精製した。
酵素を、Mateo, C,ら、Biotechnology Progress 75:629-634ページ(2002年)の手順に従ってEupergit(登録商標)C樹脂ビーズ上に固定した。精製した酵素(6.0mg/mLにて4mL)を、Pierce Slide-A-Lyzer Dialysis Cassette(7K MWCO;カタログ番号66370;Rockford, IL)を使用して、0.4Lの0.5Mリン酸カリウム、pH7.8中、外気温にて1時間、透析した。バッファーを交換し、そして、1時間、透析を続けた。ピリドキサール・リン酸(「PLP」)を0.05mMの終濃度まで加え、そして、得られた溶液をSigma-Aldrichから購入した0.2gのEupergit(登録商標)C樹脂(Flukaカタログ番号46115;St. Louis, MO)と混合した。酵素-樹脂懸濁液を、緩やかに混合しながら、外気温にて一晩、インキューベートした。樹脂ビーズを、4000×gにて5分間の遠心分離によって酵素溶液から分離した。上清を取り除き、そして、樹脂を、3×3mLの、0.05mMのPLPを含む100mMのリン酸カリウム、pH7.8で洗浄した。洗浄の間に、混合物を3000×gにて5分間、遠心分離した。樹脂に結合したタンパク質量を、各上清のタンパク質量を計測し、そして、その合計を固定されるべき元のタンパク質量から差し引くことによって測定した。タンパク質濃度を、基準としてウシ血清アルブミンを用いたPierce BCA(商標)タンパク質アッセイ・キットを使用して測定した(カタログ番号23225;Rockford, IL)。洗浄した固定化酵素ビーズを、最終的に、4mLの、0.05mMのPLPを含む100mMのリン酸カリウム、pH7.8中に懸濁した。固定化酵素ビーズの未反応エポキシ基を、緩やかに混合しながら、外気温にて1.9Mのアラニンと一緒にインキュベートすることによってブロックした。24時間後に、ビーズを、先に記載したように洗浄して余分なアラニンを取り除き、そして、最終的に、0.05mMのPLPを含む100mMのリン酸カリウム、pH7.8中に再懸濁した。固定化酵素の終濃度は、1gの樹脂ビーズあたり118mgのタンパク質であった。
実施例22
S.メリロティProAアルドラーゼの固定化
シノリゾビウム・メリロティHMGアルドラーゼ(「proA」)を、HIS6-タグ付与B.スファエリカスD-アラニン・アミノ基転移酵素について実施例14で記載されていたものと同様の手順を使用して、HIS6-タグ付与タンパク質として精製した。
BL21(DE3)::S.メリロティproA pET30(Xa/LIC)の新しい培養プレート(50μg/mLのカナマイシンを含むLB寒天)から開始して、細胞を、50μg/mlのカナマイシンを含む5mlのLB培地(「LB」)中、37℃、225rpmにて一晩、培養した。続いて、培養物を、0.5〜0.6%(v/v)にて、50μg/mlのカナマイシンを含む800mLのLB培地を含むフラスコ内に移した。細胞を、37℃、225rpmにてOD600が0.6〜0.7に達するまで培養した。遺伝子発現を、0.2mMのIPTGの添加によって誘導した。培養物を、225rpm、30℃にて更に4時間、インキューベートし、次に、JS-16.25ローターを備えたBeckman(Fullerton, CA)J25II遠心分離機により10,000rpmにて10分間、遠心分離することによって採集した。細胞ペレットを、冷たい50mMのEPPSバッファー、pH8.2で1回洗浄し、そして、細胞を再び遠心分離した。洗浄した細胞ペレットを採集し、そして、そのまま使用した。S.メリロティHIS6-proAアルドラーゼ(HIS6-SmelproA)タンパク質を含む無細胞抽出物を調製するために、細胞を、100mMのNaClを含む3〜4倍量の50mM EPPS、pH8.2中に懸濁し、次に、懸濁液の温度を15℃未満に維持して、Microfluidics(Newton, MA)ホモジナイザ(20,000psi(約138MPa)にて3回通過)を使用して崩壊させた。その後の精製ステップの全てを4℃にて実施した。細胞抽出物を、15,000×gにて15分間、遠心分離して細胞の破片を取り除いた。それぞれに15〜20mgの可溶性タンパク質が含まれる無細胞抽出物のアリコートを、前もってNovagen Bindバッファーで平衡化されたNovagen HIS-Bindカラム(カタログ番号70971-4)に適用した。カラムを、2×10mLのNovagen Bindバッファーで、そして、Bindバッファーで1:1に希釈した1×10mLのNovagen洗浄バッファーで洗浄した。HIS6-SmelproAを、各カラムから5mLのNovagen溶出バッファーで溶出した。各カラムからの溶出分画を、合わせ、そして、Amicon(Billerica, MA)Ultra-15遠心濾過機デバイス(MWCO 10kDa)を用いて2倍に濃度した。前もって100mMのNaClを含む50mMのEPPS、pH8.2で平衡化した使い捨てGE Healthcare PD10脱塩カラム(カタログ番号17-0851-01)を通過させることによって、バッファーを交換した。
脱塩した溶液のタンパク質濃度を、Pierce BCA(商標)Proteinアッセイ・キット(カタログ番号23225;Rockford, IL)を使用して測定した。それぞれの画分の純度、及び無細胞抽出物画分の発現レベルを、Bio-Rad Protean II minigelシステム(Hercules, CA)、及び4から15%の勾配ゲルを用いたSDS-PAGEによって測定した。通常、この手順は、〜90%の純度で、3200mLのLB培養物から約60〜70mgの酵素を製造した。精製した酵素のアリコート(1〜5mL)を、使用まで−80℃にて保存した。
酵素を、Mateo, C.ら、(2002年)Biotechnology Progress 18:629-634ページ(2002年)、及び固定の間、バッファー中に0.05mMのPLPの代わりに4mMの塩化マグネシウムが存在することを除いて、B.スファエリカスD-アラニン・アミノ基転移酵素についての実施例21に記載のような手順に従ってEupergit(登録商標)C樹脂ビーズ上に固定した。グリシンを用いたブロックの後に、洗浄した固定化酵素を、4mMの塩化マグネシウムを含む100mMのリン酸カリウム、pH7.8中に懸濁した。S.メリロティproAアルドラーゼの終濃度は、1gの樹脂ビーズあたり52mgタンパク質であった。
実施例23
固定化酵素を使用したR,R体モナティンの製造
B.スファエリカスHIS6-タグ付与D-アラニン・アミノ基転移酵素とR.メリロティHIS6-タグ付与proAアルドラーゼを、実施例21及び22で記載されているように、精製い、そして、固定した。
100mMのリン酸カリウム、pH7.8中、50mMのピルビン酸ナトリウム、40mMのD-トリプトファン、4mMのMgCl2、及び50μMのPLPの溶液を、スクリューキャップを備えた15mL容ポリプロピレン試験管内に調製した。これらの溶液のそれぞれに、4mLの終量まで両方の固定化酵素を加えた。得られた懸濁液を、緩やかに混合しながら、室温にて最長で24時間、インキューベートした。それぞれの反応の経過を、D-トリプトファン、D-アラニン、R,R体モナティン、及びピルビン酸を計測するHPLC、及び/又はLC-MS分析によって追った。生成物であるモナティンの異性体純度を、キラルLC/MS/MSを使用して測定した。全ての解析法が、実施例1で記載されている。固定化酵素を使用した実験からの代表的な結果を、以下の表47に示す。反応中に形成されたモナティンの異性体純度の分析は、酵素反応の生成物が74〜80%のR,R体であったことを示した。
Figure 2008538932
本発明によるL-トリプトファンからR,R体モナティンを製造するための酵素的過程の例を示すフローチャートである。この例において、前記過程には、R-MPに対するよりも基質としてのL-トリプトファンに対して高い特異性、及び/又は選択性を有する、L-トリプトファンの反応における、L-アミノ基転移酵素(その例には、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アスパラギン酸アミノ基転移酵素、及びL-アラニン・アミノ基転移酵素が含まれる)、並びに/あるいは、基質としてのR,R体モナティンに対して制限された活性、及び/又は特異性を有するL-アミノ酸酸化酵素を使用するステップが含まれる。 本発明によるR,R体モナティンを製造するための他の過程の例を示すフローチャートである。この例において、その過程には、R-MPに対して立体選択的である、R-MPをモナティンに変換するための酵素を使用するステップが含まれる。 本発明によるL-トリプトファンからR,R体モナティンを製造するための更に他の過程の例に示すフローチャートである。この例において、その過程には、トリプトファン・ラセマーゼを使用してL-トリプトファンをD-トリプトファンに変換し、そして、R,R体モナティンを形成する反応と共役された反応において、基質としてのインドール-3-ピルビン酸を形成する反応と共役された反応におけるD-アミノ酸生成物を使用するステップが含まれる。 本発明によるL-トリプトファンからR,R体モナティンを製造するための更に他の過程の例を示すフローチャートである。この例において、その過程には、L-トリプトファン反応と共役された反応において形成されたL-アミノ酸をD-アミノ酸に変換するステップが含まれ;このD-アミノ酸は、R-MPがR,R体モナティンに変換される反応のためのアミノ・ドナーとしての役割を果たす。 本発明によるL-トリプトファンからR,R体モナティンを製造するための更に他の過程の例を示すフローチャートである。この例において、その過程には、L-トリプトファン反応と共役させた反応によって形成されたL-アミノ酸が、R-MPからR,R体モナティンへの反応に共役させた反応のための基質として使用されることができるように、立体反転酵素を使用した、R-MPのRR体モナティンへの変換が酵素的に促進されるステップが含まれる。 本発明によるR,R体モナティンを製造するための更に他の過程の例を示すフローチャートである。この例において、その過程には、一連の変換反応を通じてR,R体モナティンを形成する反応においてR-MPとの反応物として使用されるD-アミノ酸を用いたインドール-3-ピルビン酸を形成する反応において製造されたL-アミノ酸を再生するステップが含まれる。 本発明によるR,R体モナティンを製造するための更に他の過程の例を示すフローチャートである。この例において、その過程には、その反応のL-アミノ酸副産物を他の生成物に変換することによってL-トリプトファン反応を押し進める(すなわち、インドール-3-ピルビン酸の製造に向かって反応を推進する)ステップが含まれる。この例において、前記L-アミノ酸であるL-アスパラギン酸副産物は、デカルボキシラーゼを使用した不可逆反応においてL-アラニンに変換される。 本発明によるR,R体モナティンを製造するための更に他の過程の例を示すフローチャートである。この例において、その過程には、一連の変換反応を通してR-MP反応のアミノ酸反応物を用いたL-トリプトファン反応のアミノ酸副産物を再生するステップが含まれる。 種々の公になったバチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素(「DAATs」)のアミノ酸配列整列を示す。下線部のアミノ酸は相同性の領域を示す。5つのPCRプライマーが、保存領域に基づいて設計された。そのPCRプライマーは、以下のとおりである:5’ GAAGACCGTGGTTATCAATTT 3’(配列番号65)(順方向プライマー、図9AにF1と表示される)、5’ GATGGTATTTACGAAGTAATC 3’(配列番号66)(順方向プライマー、図9AにF2と表示される)、5’ AGATTTAATATCACAACGTAAC 3’(配列番号67)(逆方向プライマー、図9AにR1と表示される)、5’ GCCAAGTAAAATTTAAGATTTA 3’(配列番号68)(逆方向プライマー、図9AにR2と表示される)、5’ ATTTGCTGGGTGCGTATAAAG 3’(配列番号69)(逆方向プライマー、図9BにR3と表示される)。 種々の公になったバチルスD-アミノ酸アミノ基転移酵素(「DAATs」)のアミノ酸配列の整列を示す。下線部のアミノ酸は相同性の領域を示す。5つのPCRプライマーが、保存領域に基づいて設計された。そのPCRプライマーは、以下のとおりである:5’ GAAGACCGTGGTTATCAATTT 3’(配列番号65)(順方向プライマー、図9AにF1と表示される)、5’ GATGGTATTTACGAAGTAATC 3’(配列番号66)(順方向プライマー、図9AにF2と表示される)、5’ AGATTTAATATCACAACGTAAC 3’(配列番号67)(逆方向プライマー、図9AにR1と表示される)、5’ GCCAAGTAAAATTTAAGATTTA 3’(配列番号68)(逆方向プライマー、図9AにR2と表示される)、5’ ATTTGCTGGGTGCGTATAAAG 3’(配列番号69)(逆方向プライマー、図9BにR3と表示される)。 B.スファエリカスのDAAT(実施例18においてクローニングされた)と、ATCC 4978及びATCC 7063からの2種類の新規DAATsのアミノ酸配列のアラインメントを示す。非相同的なアミノ酸に下線を引いた。 B.スファエリカスのDAAT(実施例18においてクローニングされた)と、ATCC 4978及びATCC 7063からの2種類の新規DAATsのアミノ酸配列のアラインメントを示す。非相同的なアミノ酸に下線を引いた。

Claims (52)

  1. 以下のステップ:L-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、上記インドール-3-ピルビン酸から少なくともR体モナティン前駆体(「R-MP」)を含むモナティン前駆体(「MP」)を製造し、そして、上記モナティン前駆体からモナティンを製造する、を含む経路を経てモナティン又はその塩を製造する段階を含む方法であって、ここで、上記モナティンが少なくともR,R体モナティンを含み、且つ、ここで、L-トリプトファンからのインドール-3-ピルビン酸の製造が、上記モナティン前駆体、モナティン、又はその両方に比べて、L-トリプトファンに対してより高い活性、より高い特異性、又はその両方を有する1種類以上の酵素によって促進される前記方法。
  2. 前記1種類以上の酵素が、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アスパラギン酸アミノ基転移酵素、L-アミノ酸酸化酵素、及びその組み合わせ物の中から選択される、請求項1に記載の方法。
  3. 前記1種類以上の酵素が、シノリゾビウム・メリロティTatA、HEXAspCP9T/R122G、及びその組み合わせ物の中から選択される、請求項1に記載の方法。
  4. 前記1種類以上の酵素が、前記モナティン前駆体、モナティン、又はその両方に対して制限された活性、制限された特異性、又はその両方を有する、請求項2に記載の方法。
  5. 前記R体モナティン前駆体からのR,R体モナティンの製造が、D-アミノ基転移酵素及びD-アミノ酸脱水素酵素の中から選択される1種類以上の酵素によって促進される、請求項4に記載の方法。
  6. 前記D-アミノ基転移酵素が、バチルス・ハロデュランスD-アミノ基転移酵素、ハイブリッドD-アミノ基転移酵素、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスD-アミノ基転移酵素、バチルス・リケニホルミスD-アミノ基転移酵素、ATCC 4978のD-アミノ基転移酵素、ATCC 7063のD-アミノ基転移酵素、D-アミノ基転移酵素活性を有するバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、及びその相同体の中から選択される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記バチルス・ハロデュランスD-アミノ基転移酵素が、受入番号NP-243677で掲載されているアミノ酸配列又はその相同体を含む、請求項6に記載の方法。
  8. 前記のD-アミノ基転移酵素活性を有するバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素が、E.コリF37Yに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリY96Fに対応する突然変異をもったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリY165Lに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL127Kに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリR98Yに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL108Rに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL110Hに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL127Yに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリR41Kに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、及びその相同体の中から選択される、請求項6に記載の方法。
  9. 前記ハイブリッドD-アミノ基転移酵素が、配列番号99又はその相同体である、請求項6に記載の方法。
  10. 前記ATCC 4978のD-アミノ基転移酵素が、配列番号86又はその相同体である、請求項6に記載の方法。
  11. 前記ATCC 7063のD-アミノ基転移酵素が、配列番号87又はその相同体である、請求項6に記載の方法。
  12. 前記D-アミノ基転移酵素が、ピリドキサール-5’-リン酸の存在下で精製される、請求項5に記載の方法。
  13. 前記D-アミノ酸脱水素酵素が、D-AADH-101、D-AADH-102、D-AADH-103、D-AADH-105、D-AADH-106、D-AADH-107、D-AADH-108、及びその相同体の中から選択される、請求項5に記載の方法。
  14. 前記製造されたR,R体モナティンが、製造された総モナティンの少なくとも約60重量%である、請求項4に記載の方法。
  15. インドール-3-ピルビン酸からの前記モナティン前駆体の製造が、R体に特異的なアルドラーゼ活性を有する1種類以上の酵素によって促進される、請求項1に記載の方法。
  16. 前記のR体に特異的なアルドラーゼ活性を有する1種類以上の酵素が、シノリゾビウム・メリロティHMGアルドラーゼ、配列番号22のアルドラーゼ、及びその相同体の中から選択されるアルドラーゼである、請求項15に記載の方法。
  17. 前記R,R体モナティンを総有機化合物の少なくとも約60重量%の純度まで精製する、少なくとも1つの精製ステップを更に含む、請求項1に記載の方法。
  18. 前記のD-アミノ基転移酵素及びD-アミノ酸脱水素酵素の中から選択される1種類以上の酵素が、S-α-ケト酸モナティン又はインドール-3-ピルビン酸と比べて、R体モナティン前駆体に対してより高い活性、より高い特異性、又はその両方を有する、請求項5に記載の方法。
  19. 前記のD-アミノ基転移酵素及びD-アミノ酸脱水素酵素の中から選択される1種類以上の酵素が、S-α-ケト酸モナティン又はインドール-3-ピルビン酸に対して制限された活性、制限された特異性、又はその両方を有する、請求項18に記載の方法。
  20. 前記のL-トリプトファン・アミノ基転移酵素、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アスパラギン酸アミノ基転移酵素、及びL-アミノ酸酸化酵素の中から選択される1種類以上の酵素が、モナティン前駆体、モナティン、又はその両方に対して制限された活性、制限された特異性、又はその両方を有し、且つ、前記のD-アミノ基転移酵素及びD-アミノ酸脱水素酵素の中から選択される1種類以上の酵素が、S-α-ケト酸モナティンに対して制限された活性、制限された特異性、又はその両方を有する、請求項18に記載の方法。
  21. 以下のステップ:L-トリプトファンからD-トリプトファンを製造し、D-トリプトファンからインドール-3-ピルビン酸を製造し、インドール-3-ピルビン酸からR体モナティン前駆体を製造し、そして、R体モナティン前駆体からR,R体モナティンを製造する、を含む経路を経てR,R体モナティン又はその塩を製造する段階を含む方法であって;ここで、上記のL-トリプトファンからD-トリプトファンの製造が、トリプトファン・ラセマーゼ、トリプトファン・ラセマーゼの活性を有するラセマーゼ、及びその組み合わせ物の中から選択される1種類以上の酵素によって促進される前記方法。
  22. 前記のトリプトファン・ラセマーゼ活性を有するラセマーゼが、アラニン・ラセマーゼ、グルタミン酸ラセマーゼ、又はアスパラギン酸ラセマーゼに由来する、請求項21に記載の方法。
  23. 前記のトリプトファン・ラセマーゼ活性を有するラセマーゼが、配列番号43のアラニン・ラセマーゼ、M35C突然変異を持った配列番号41に相当するアラニン・ラセマーゼ、F66E突然変異を持った配列番号41に相当するアラニン・ラセマーゼ、Y354A突然変異を持った配列番号41に相当するアラニン・ラセマーゼ、P197L突然変異を持った配列番号41に相当するアラニン・ラセマーゼ、及びその相同体の中から選択される、請求項22に記載の方法。
  24. 前記のD-トリプトファンからのインドール-3-ピルビン酸の製造が1種類以上の酵素によって促進され、そして、前記のR体モナティン前駆体からのR,R体モナティンの製造が、前記のR体モナティン前駆体からR,R体モナティンの製造を促進する同じ1種類以上の酵素によって促進される、請求項21に記載の方法。
  25. α-ケト酸基質が対応するD-アミノ酸に変換される、前記L-トリプトファンと共役した反応が更に含まれる、請求項1に記載の方法。
  26. 前記α-ケト酸基質が、それぞれ、L-グルタミン酸、L-アスパラギン酸、L-アラニンの中から選択される1種類以上の対応する生成物に変換されるα-ケトグルタル酸、オキサロ酢酸、及びピルビン酸の中から選択される1種類以上の基質であり;ここで、上記対応する生成物が、D-アミノ酸への変換を促進するラセマーゼを利用して、それぞれ、D-グルタミン酸、D-アスパラギン酸、及びD-アラニンの中から選択される対応するD-アミノ酸に変換される、請求項25に記載の方法。
  27. 前記ラセマーゼが、アラニン・ラセマーゼ、グルタミン酸ラセマーゼ、及びアスパラギン酸ラセマーゼの中から選択される、請求項26に記載の方法。
  28. 前記アラニン・ラセマーゼが、バチルス・ステアロサーモフィラスからのアラニン・ラセマーゼ及びゲオバチルス・ステアロサーモフィラスからのアラニン・ラセマーゼの熱安定性相同体の中から選択され、且つ、前記グルタミン酸ラセマーゼが、L.ブレビス・グルタミン酸ラセマーゼ及びP.ペントサセウス・グルタミン酸ラセマーゼの中から選択され、そして、前記アスパラギン酸ラセマーゼが、BioCatalytics製のASPR-101である、請求項27に記載の方法。
  29. 前記のR体モナティン前駆体からのR,R体モナティンの製造が、立体反転アミノ基転移酵素によって促進される、請求項1に記載の方法。
  30. 以下のステップ:L-トリプトファンが反応してインドール-3-ピルビン酸を形成する時に、α-ケトグルタル酸からL-グルタミン酸を製造し、そして、グルタミン酸デカルボキシラーゼを使用してL-グルタミン酸から4-アミノブタン酸を製造する、を更に含む、請求項1に記載の方法。
  31. 以下のステップ:L-トリプトファンが反応してインドール-3-ピルビン酸を形成する時に、オキサロ酢酸からL-アスパラギン酸を製造し、そして、アスパラギン酸デカルボキシラーゼを使用してL-アスパラギン酸からβ-アラニンを製造する、を更に含む、請求項1に記載の方法。
  32. 以下のステップ:L-トリプトファンが反応してインドール-3-ピルビン酸を形成する時に、オキサロ酢酸からL-アスパラギン酸を製造し、アスパラギン酸4-デカルボキシラーゼを使用してL-アスパラギン酸からL-アラニンを製造し、そして、アラニン・ラセマーゼを使用してL-アラニンからD-アラニンを製造する、を更に含む、請求項1に記載の方法。
  33. 前記R,R体モナティンを、D-アラニンとR体モナティン前駆体の反応によってR体モナティン前駆体から形成する、請求項32に記載の方法。
  34. 以下のステップ:
    (a) L-トリプトファン反応と共役されるα-ケトグルタル酸の反応によってL-グルタミン酸を製造し;
    (b) L-アラニン・アミノ基転移酵素を使用した上記L-グルタミン酸とピルビン酸の反応によってL-アラニンを製造し;
    (c) アラニン・ラセマーゼを使用して上記L-アラニンからD-アラニンを製造する、
    を更に含み、ここで、前記R,R体モナティンを、上記D-アラニンを用いた前記R体モナティン前駆体のアミノ基転移反応によって前記R体モナティン前駆体から製造する、請求項1に記載の方法。
  35. 前記1種類以上の酵素を固体支持体に固定する、請求項2に記載の方法。
  36. D-トリプトファンと、バチルス・ハロデュランスD-アミノ基転移酵素、ハイブリッドD-アミノ基転移酵素、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスD-アミノ基転移酵素、バチルス・リケニホルミスD-アミノ基転移酵素、ATCC 4978のD-アミノ基転移酵素、ATCC 7063のDアミノ基転移酵素、及びその相同体の中から選択される1種類以上のD-アミノ基転移酵素を反応させるステップを含む、モナティン又はその塩の製造方法。
  37. 製造されたモナティンの少なくとも約75%がR,R体モナティンである、請求項36に記載の方法。
  38. モナティン前駆体と、バチルス・ハロデュランスD-アミノ基転移酵素、ハイブリッドD-アミノ基転移酵素、ゲオバチルス・ステアロサーモフィラスD-アミノ基転移酵素、バチルス・リケニホルミスD-アミノ基転移酵素、ATCC 4978のD-アミノ基転移酵素、ATCC 7063のD-アミノ基転移酵素、D-アミノ基転移酵素活性を有するバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、及びその相同体の中から選択される1種類以上のD-アミノ基転移酵素を反応させるステップを含む、モナティン又はその塩の製造方法。
  39. ピリドキサール-5’-リン酸の存在下でD-アミノ基転移酵素を精製するステップを含む方法。
  40. 前記D-アミノ基転移酵素が、バチルス・スファエリカスD-アラニン・アミノ基転移酵素である、請求項39に記載の方法。
  41. R体モナティン前駆体、L-トリプトファン、D-アミノ酸、及びモナティン前駆体又はモナティンのいずれかと比べてL-トリプトファンに対してより高い活性、より高い特異性、又はその両方を有する1種類以上の酵素を含む組成物。
  42. 前記1種類以上の酵素が、L-トリプトファン・アミノ基転移酵素、L-芳香族アミノ基転移酵素、L-アスパラギン酸アミノ基転移酵素、及びL-アミノ酸酸化酵素の中から選択される、請求項41に記載の組成物。
  43. 前記1種類以上の酵素が、立体反転アミノ基転移酵素である、請求項41に記載の組成物。
  44. 前記組成物が、D-アミノ基転移酵素及びD-アミノ酸脱水素酵素の中から選択される酵素を更に含む、請求項41に記載の組成物。
  45. 前記組成物が、R体に特異的なアルドラーゼ活性を有する1種類以上の酵素を更に含む、請求項41に記載の組成物。
  46. 前記組成物が、アラニン・ラセマーゼ、グルタミン酸ラセマーゼ、及びアスパラギン酸ラセマーゼの中から選択される1種類以上の酵素を更に含む、請求項41に記載の組成物。
  47. 配列番号99を含むハイブリッドD-アミノ基転移酵素、又はその相同体。
  48. 配列番号86を含むATCC 4978のD-アミノ基転移酵素、又はその相同体。
  49. 配列番号87を含むATCC 7063のD-アミノ基転移酵素、又はその相同体。
  50. E.コリF37Yに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリY96Fに対応する突然変異をもったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリY165Lに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL127Kに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリR98Yに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL108Rに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL110Hに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリL127Yに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、E.コリR41Kに対応する突然変異を持ったバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素、及びその相同体から選択されるD-アミノ基転移酵素活性を有するバチルス・リケニホルミス分枝鎖アミノ基転移酵素。
  51. 配列番号43を含むラセマーゼ、又はその相同体。
  52. ピリドキサール-5’-リン酸の存在下で精製されたD-アミノ基転移酵素であって、ピリドキサール-5’-リン酸の存在下で精製されなかった同じD-アミノ基転移酵素と比較して改善された活性を示すもの。
JP2008515698A 2005-04-26 2006-04-26 モナティンの立体異性体及びそれらの前駆体の製造のためのポリペプチド及び生合成経路 Expired - Fee Related JP5336182B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US67493205P 2005-04-26 2005-04-26
US60/674,932 2005-04-26
PCT/US2006/015930 WO2007133184A2 (en) 2005-04-26 2006-04-26 Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008538932A true JP2008538932A (ja) 2008-11-13
JP5336182B2 JP5336182B2 (ja) 2013-11-06

Family

ID=38694337

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2008515698A Expired - Fee Related JP5336182B2 (ja) 2005-04-26 2006-04-26 モナティンの立体異性体及びそれらの前駆体の製造のためのポリペプチド及び生合成経路

Country Status (8)

Country Link
EP (3) EP2361976B1 (ja)
JP (1) JP5336182B2 (ja)
CN (1) CN101365787B (ja)
AU (1) AU2006341528A1 (ja)
BR (1) BRPI0609876A2 (ja)
CA (1) CA2638896C (ja)
ES (1) ES2587572T3 (ja)
WO (1) WO2007133184A2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012147674A1 (ja) * 2011-04-25 2012-11-01 味の素株式会社 モナティンの製造方法
WO2013073679A1 (ja) * 2011-11-17 2013-05-23 味の素株式会社 (2r,4r)モナティン多価金属塩結晶の製造方法

Families Citing this family (13)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8372989B2 (en) 2002-04-23 2013-02-12 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of monatin and its precursors
US7572607B2 (en) 2002-04-23 2009-08-11 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of monatin and its precursors
US7582455B2 (en) * 2005-04-26 2009-09-01 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors
BRPI0708673A2 (pt) 2006-03-07 2011-06-07 Cargill Inc método para fabricação de polipeptìdeos com atividade de aldolase e polinucleotìdeos que codificam estes polipeptìdeos
CA2653054A1 (en) 2006-05-24 2007-12-06 Cargill, Incorporated Methods and systems for increasing production of equilibrium reactions
US8076107B2 (en) * 2007-10-01 2011-12-13 Cargill, Incorporated Production of monatin stereoisomers
US8367847B2 (en) 2007-10-01 2013-02-05 Cargill, Incorporated Production of monatin enantiomers
US8003361B2 (en) 2007-10-01 2011-08-23 Cargill Incorporated Production of monatin enantiomers
CN102741406A (zh) 2010-10-14 2012-10-17 味之素株式会社 用于产生莽那亭的方法
US8771997B2 (en) 2011-04-20 2014-07-08 Ajinomoto Co., Inc. Method for producing monatin using an L-amino acid aminotransferase
US9587229B2 (en) 2011-06-24 2017-03-07 Merck Sharp & Dohme Corp. Immobilized transaminases and process for making and using immobilized transaminase
CN105073983B (zh) 2013-02-28 2018-09-18 默沙东公司 固定化转氨酶和制备及使用固定化转氨酶的方法
EP2970927A4 (en) 2013-03-15 2016-10-12 Merck Sharp & Dohme IMMOBILIZED KETOREDUCTASES AND METHODS OF MAKING AND USING IMMOBILIZED KETOREDUCTASE

Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002060382A (ja) * 2000-08-22 2002-02-26 Ajinomoto Co Inc モナティンの立体異性体及びその使用、並びにモナティン類の製造方法及びそのための中間体
JP2003171365A (ja) * 2001-11-30 2003-06-20 Ajinomoto Co Inc モナティン類及びその製造中間体の製造方法並びに新規中間体
JP2003292484A (ja) * 2002-04-01 2003-10-15 Ajinomoto Co Inc γ−ヒドロキシアミノ酸誘導体及びモナティン類の製造方法
WO2003091396A2 (en) * 2002-04-23 2003-11-06 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways
JP2004222657A (ja) * 2003-01-24 2004-08-12 Ajinomoto Co Inc 2r−モナティンの製造方法
WO2005001105A1 (ja) * 2003-06-26 2005-01-06 Ajinomoto Co., Inc. モナティンの製造方法
WO2005016022A1 (en) * 2003-08-14 2005-02-24 Cargill, Incorporated Chewing gum compositions comprising monatin and methods of making same
WO2005020721A1 (en) * 2003-08-25 2005-03-10 Cargill, Incorporated Beverage compositions comprising monatin and methods of making same

Family Cites Families (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
GB2240105B (en) 1990-01-19 1993-06-09 Technology Finance Corp Process for the production of 3-(1-amino-1,3-dicarboxy-3-hydroxy-but-4-yl) indole
US5728555A (en) 1996-09-30 1998-03-17 Monsanto Company Preparation of d-amino acids by direct fermentative means
EP1637160A3 (en) 1999-05-07 2006-05-03 Genentech, Inc. Treatment of autoimmune diseases with antagonists which bind to B cell surface markers
EP2460884A3 (en) * 2001-12-27 2013-03-27 Ajinomoto Co., Inc. Process for preparing monatin
US7572607B2 (en) 2002-04-23 2009-08-11 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of monatin and its precursors
DE602004031444D1 (de) * 2003-10-21 2011-03-31 Cargill Inc Herstellung von monatin und monatinvorstufen
US7582455B2 (en) * 2005-04-26 2009-09-01 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors

Patent Citations (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002060382A (ja) * 2000-08-22 2002-02-26 Ajinomoto Co Inc モナティンの立体異性体及びその使用、並びにモナティン類の製造方法及びそのための中間体
JP2003171365A (ja) * 2001-11-30 2003-06-20 Ajinomoto Co Inc モナティン類及びその製造中間体の製造方法並びに新規中間体
JP2003292484A (ja) * 2002-04-01 2003-10-15 Ajinomoto Co Inc γ−ヒドロキシアミノ酸誘導体及びモナティン類の製造方法
WO2003091396A2 (en) * 2002-04-23 2003-11-06 Cargill, Incorporated Polypeptides and biosynthetic pathways
JP2004222657A (ja) * 2003-01-24 2004-08-12 Ajinomoto Co Inc 2r−モナティンの製造方法
WO2005001105A1 (ja) * 2003-06-26 2005-01-06 Ajinomoto Co., Inc. モナティンの製造方法
WO2005016022A1 (en) * 2003-08-14 2005-02-24 Cargill, Incorporated Chewing gum compositions comprising monatin and methods of making same
WO2005020721A1 (en) * 2003-08-25 2005-03-10 Cargill, Incorporated Beverage compositions comprising monatin and methods of making same

Non-Patent Citations (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6012064556; Database Genbank , 200501, NP_243677 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012147674A1 (ja) * 2011-04-25 2012-11-01 味の素株式会社 モナティンの製造方法
WO2013073679A1 (ja) * 2011-11-17 2013-05-23 味の素株式会社 (2r,4r)モナティン多価金属塩結晶の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
EP1883697A2 (en) 2008-02-06
CA2638896A1 (en) 2007-11-22
BRPI0609876A2 (pt) 2010-05-11
EP1883697A4 (en) 2010-05-05
EP3168299A2 (en) 2017-05-17
CN101365787B (zh) 2014-03-05
AU2006341528A1 (en) 2007-12-06
AU2006341528A8 (en) 2009-01-08
EP3168299A3 (en) 2017-07-05
WO2007133184A3 (en) 2008-08-28
WO2007133184A2 (en) 2007-11-22
EP2361976A3 (en) 2012-08-01
EP2361976B1 (en) 2016-05-25
JP5336182B2 (ja) 2013-11-06
ES2587572T3 (es) 2016-10-25
CN101365787A (zh) 2009-02-11
CA2638896C (en) 2015-01-27
EP2361976A2 (en) 2011-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5336182B2 (ja) モナティンの立体異性体及びそれらの前駆体の製造のためのポリペプチド及び生合成経路
US7582455B2 (en) Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors
AU2007342275B2 (en) Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors
JP4988803B2 (ja) ポリペプチド及び生合成経路
CA2606178C (en) Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of monatin and its precursors
AU2004286207B2 (en) Production of monatin and monatin precursors
AU2012201740B2 (en) Polypeptides and biosynthetic pathways for the production of stereoisomers of monatin and their precursors

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090424

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100416

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20111004

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20111228

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20120111

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120404

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20121211

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20130308

A602 Written permission of extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A602

Effective date: 20130315

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130610

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130702

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130801

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5336182

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees