JP2008538278A - Gタンパク質共役受容体rcc356の天然リガンドおよびその使用 - Google Patents

Gタンパク質共役受容体rcc356の天然リガンドおよびその使用 Download PDF

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Abstract

本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)RCC356の天然リガンドとしてのイソ吉草酸の同定に関する。RCC356受容体の活性を調節する薬剤のスクリーニングアッセイの基礎として、本発明にはRCC356ポリペプチドとイソ吉草酸との相互作用の利用が含まれる。本発明には、診断およびスクリーニングアッセイの実施用キットの他、RCC356/イソ吉草酸の相互作用に基づいて実施される診断および他のアッセイも含まれる。
【選択図】なし

Description

本発明は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)RCC356の天然リガンドの同定およびその使用に関する。
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は、細胞内でのシグナル伝達に関与するタンパク質である。GPCRは通常7つの膜貫通ドメインを有する。GPCRの細胞外部分または断片へのリガンドの結合時、細胞の生物学的特性または生理学的特性もしくは挙動を変化させるシグナルを細胞内に伝達する。GPCRは、Gタンパク質およびエフェクター(Gタンパク質によって調節される細胞内酵素およびチャンネル)と並んで、細胞内セカンドメッセンジャーの状態と細胞外入力とを結びつけるモジュラーシグナル伝達系の構成要素である。
GPCR遺伝子および遺伝子産物は、様々な生理的過程を調節可能であり、病原因子となりうる。GPCRは、中枢神経系および末梢の生理的過程のいずれに対しても極めて重要と考えられる。
GPCRタンパク質スーパーファミリーは5つのファミリーに代表される:ファミリーI ロドプシンおよびβ2‐アドレナリン受容体が典型例である受容体であり、現在200以上の固有の一員によって代表される。ファミリーII 副甲状腺ホルモン/カルシトニン/セクレチン受容体ファミリー。ファミリーIII 代謝型グルタミン酸受容体ファミリー。ファミリーIV 走化性およびD.discoideumの発生に重要なCAMP受容体ファミリー。ファミリーV STE2などの真菌性接合フェロモン受容体。
Gタンパク質は、α、β、γサブユニットを含むヘテロ三量体タンパク質ファミリーであり、グアニンヌクレオチドと結合する。これらのタンパク質は通常、シグナル伝達のために細胞表面の受容体(7つの膜貫通ドメインを含む受容体)と結合している。実際に、リガンドがGPCRに結合後、構造変化がGタンパク質に伝えられて、これはαサブユニットの結合GDP分子とGTP分子を交換して、βγサブユニットから解離させる。
α、β、γサブユニットのGTP結合型は通常エフェクター調節成分として機能しており、cAMP(例、アデニルシクラーゼの活性化による)、ジアシルグリセロール、イノシトールリン酸などのセカンドメッセンジャーの産生をもたらす。
ヒトにおいて20種類以上の様々なαサブユニットが知られている。これらのサブユニットは、β、γサブユニットの小プールに結合する。哺乳動物のGタンパク質の例として、Gi、Go、Gq、Gs、G−olf、Gtが挙げられる。Gタンパク質については、Lodish ら, Molecular Cell Biology(Scientific American Books Inc., New York, N. Y., 1995; Downes and Gautam, 1999, The G-Protein Subunit Gene Families. Genomics 62:544-552)において広範に記述されており、すべての内容は参照により本明細書に援用したものとする。
既知の特徴づけされてないGPCRは、現在、薬物の作用および開発の主な標的となっている。一部のGPCRについては、考えられる生理学的役割が割り当てられてきたが、前記受容体を調節可能なリガンドは未同定である。潜在的な予防ならびに治療的特性を有する新規アゴニストおよびアンタゴニストのスクリーニングに利用可能な新しいGタンパク質共役受容体の同定の取り組みが続いている。
今日まで300以上のGPCRがクローニングされている。機構的に、臨床的に関連する全ての薬剤の約50−60%が、様々なGPCRの機能を調節することで作用する(Cudemann ら, J. Mol. Med., 73:51-63)。
嗅覚は無脊椎動物から哺乳動物までの生命体と環境との化学的コミュニケーションを可能にしている。嗅覚を通じて数千のにおい物質が知覚、識別される。このような化学的シグナル伝達は、例えば、家族や仲間の識別、食物の位置決め、もしくは縄張りの認識をにおい化合物に依存する大半の動物種の社会的行動を調節しうる。嗅覚能力は、最初に嗅上皮のニューロン、嗅覚の感覚ニューロン(OSN)によって決定される。そこで、におい分子は嗅覚受容体タンパク質(OR)(別名、におい受容体)に結合する。これらのORは、Gタンパク質共役受容体(GPCR)スーパーファミリーの一員である。これらは最大の遺伝子ファミリーによってコード化される。げっ歯類において1300もの様々なOR遺伝子が同定されており、約800のOR遺伝子がヒトゲノム中において同定されている。各嗅覚ニューロンが1種類のみのORを発現して、嗅覚ニューロンによるにおいの識別の細胞学的基礎を成すと考えられる。それらは小胞体内で合成されて、輸送され、最終的には樹状突起先端の繊毛の細胞表面膜に集結する。同様に、ORはOSNの軸索末端において認められる。それらはOR特異的な嗅球部位を軸索が目指す際に役割を果たすと推測される。
大半の哺乳動物が第二の嗅覚システムである鋤鼻システムを有する。鋤鼻器官は鼻腔内に局在しており、部分的に鋤鼻感覚ニューロンからできている。このシステムは、フェロモン受容体の活性化を通じたフェロモンの検出に関与しうる。しかし、フェロモンが鋤鼻感覚ニューロンを通じてのみ検出され、鋤鼻感覚ニューロンがフェロモンのみを検出することを確認した証拠はない。フェロモン受容体は7TM タンパク質でもあるが、しかしそれらはORスーパーファミリーとは全く異なる。フェロモン受容体はGPCRスーパーファミリーの一員であるが、これらの受容体と共役したGタンパク質は依然として同定されていない。今日までにフェロモン受容体の2つのファミリー(V1R、V2Rファミリー)が記述されている。いずれのファミリーの受容体もマウスにおいては同定されているが(300以上)、ヒトではV1Rファミリーのわずか5つの受容体のみである。
味覚は化学感覚の一部でもある。それはヒトの舌と口蓋上に局在する味覚受容体の活性化に依存する。それらは味蕾の味覚受容体細胞(TCR)部分で発現する。これらの細胞はニューロンと接触する特別な上皮細胞であり、これらは次に脳に情報を伝える。従って、OSNとは異なり、TCRは神経細胞ではない。嗅覚受容体と同様に、味覚受容体はGPCRスーパーファミリーの一員である。今日、2つのファミリー(T1R、T2Rファミリー)が同定されている。ヒトのT1Rファミリーは3つの受容体(T1R1、T1R2、T1R3)を含むが、T2Rファミリーはヒトにおいて25の推定受容体を含む。T2R受容体は苦味の検出に関与しており、単量体で機能しうる。一方、T1R受容体は二量体で機能すると考えられている。二量体化によって受容体に特異性がもたらされうる。T1R1/T1R3 のヘテロ二量体は「うまみ」味覚を検出し、T1R2/T1R3ヘテロ二量体は甘味化合物によって活性化される。これら2つのファミリーに加えて、他のタンパク質は、潜在的なチャンネルであるTRMP5、うまみ受容体として機能しうるmGluR4、酸味受容体であるASIC2、塩味受容体であるENaC、辛味受容体であるVN1、または冷たい味覚の受容体であるTMP8などの味覚受容体と考えられる。
嗅覚、味覚、フェロモンは、常に動物と人間の個別行動に影響を及ぼす。このため、前記認識のメカニズムを理解することは非常に重要である。特に、認識に影響を及ぼす方法の決定が重要となる。嗅覚、味覚、フェロモンシステムが、1リガンド/1受容体の法則に従わないことが既に知られている。数種のリガンドによって同じ受容体が活性化されることが文献において記述されている。したがって、前記感覚システムは、恐らく、異なる受容体が同じリガンドによって活性化される可能性があり、また1つの受容体が異なるリガンドによって調節される可能性のある、システムの一部である。
RCC356(別名、PHOR−1)が過去に特性付けされており、前立腺癌においてアップレギュレートされている新しい前立腺特異的GPCRと記載されている(米国特許第6,790,631号、米国特許第2004/0248088号)。RCC356のヒトのポリヌクレオチド配列が図1aに、RCC356のヒトのアミノ酸配列が図1bに示されている。前記アミノ酸配列は、1つ以上のGPCR配列記号および嗅覚受容体記号を示している。したがって、RCC356は嗅覚受容体(OR)と考えることができる。このORが前立腺に特異的な機能を持ちうることは、例外的ではない。実際に、OR遺伝子は嗅上皮以外の組織でも発現していることが判明しており、このクラスの化学感覚受容体の別の潜在的な生物学的役割を示唆している。特に、RCC356以外のORが、生殖細胞、精巣、インスリン分泌ベータ細胞、脾臓、特定の脳部位、心臓でも発現していることが過去に示されている(Parmentierら. 1992, Nature, 355: 453-455; Thomasら. 1996, Gene, 178:1-5; Nef and Nef 1997, Pro., Nathl. Acad. Sci. USA, 94 : 4766-4771 ; Blacheら. 1998, Biochem. Biophys. Res. Commun., 142 :669-672; Drutelら, 1995, Receptors Channels 3 :33-40; Ferrandら. 1999, J.Mol.Cell.Cardiol. 31:1137-1142; Ramingら, 1998, Receptors Channels 6 : 141 -151)。さらに、脳で発現しているラットの嗅覚受容体(別名、RA1c)(Raming ら, 1998, Receptor Channels 6:141)が PHOR−01と最も相同性の高い配列を有している。PHOR−1とRA1cとの同一性は59.9%であり、299個の残基が重複している。恐らくはRA1cのヒトのホモログであるHPRAAJ70もPHOR−01と同程度の相同性を示す。HPRAAJ70タンパク質は前立腺特異的GPCR (米国特許第5,756,309号、国際公開第96/39435号)であると報告されており、米国特許第6,790,631号記載の知見を確認している。米国特許第6,790,631号においても、PHOR−01が、前立腺癌、腎臓癌、子宮癌、子宮頸癌、胃癌、直腸癌の他、正常な前立腺に限局していると記載されている。PHOR−01は他の癌でも発現している可能性がある。細胞増殖および形質転換の調節におけるそれらの役割も示唆されている。例えば、米国特許第6,790,631号に示されるように、PHOR1が細胞増殖において極めて重要な役割を果たす可能性がある。この文脈において、米国特許第6,790,631号では、PHOR−01を発現する様々な癌、特に前立腺癌の管理に有用な、診断、治療方法、組成物でのPHOR−01の使用が提案されている。潜在的な生理学的役割がRCC356に割り当てられているが[RCC356を過剰発現している細胞での倍加時間の短縮(米国特許第6,790,631号)]、今日までリガンドによって該受容体が調節される可能性は示されていない。
イソ吉草酸は、ヒトおよび動物の分泌物、特に汗の悪臭形成の一部を形成する、不快なにおいのする有機酸である。ヒトの汗の別の成分は3−メチル−2−ヘキセン酸、酷い悪臭の成分はプロピオン酸、ペットの悪臭成分はヘキセン酸である。前記化合物は、嗅覚受容体の亜属によって識別されると過去に記載されている(米国特許第2003/0207337号)。嗅覚受容体は、Gタンパク質共役受容体(GPCR)として知られている7回膜貫通型の受容体スーパーファミリーに属する(Buckら, Cell 65:175-87, 1991)。GPCRは、内分泌機能、外分泌機能、心拍数、脂肪分解、糖質代謝、神経伝達、視力、味覚受容などの多くの生理学的機能を制御する膜貫通シグナル伝達を媒介する。嗅覚受容体は、特定の嗅覚を引き起こす分子を特異的に認識する。これらの分子は「におい物質」とも呼ばれている。嗅覚受容体をコードする遺伝子は主に嗅覚ニューロン内で活性化している(Axel, Sci. Amer. 273:154-59, 1995)。個々の嗅覚受容体のサブタイプが、嗅上皮の別の部分に分布している細胞の一部で発現している(Breer, Semin. Cell Biol., 5:25-32, 1994)。しかし、上記のとおり、ORの発現は嗅上皮に限定されていない。多くの研究所において、前立腺、脳、肺、肝臓、腎臓、子宮頸、乳房などの組織におけるORの発現が証明されている。
米国特許第6,790,631号明細書 米国特許第2004/0248088号明細書 米国特許第5,756,309号明細書 国際公開第96/39435号パンフレット 米国特許第2003/0207337号明細書 国際公開第102551号パンフレット 米国特許第5,888,819号明細書 米国特許第6,004,744号明細書 米国特許第6,013,431号明細書 米国特許第4,873,191号明細書 仏国特許出願公開第2,593,827号明細書 Lodish ら, Molecular Cell Biology(Scientific American Books Inc., New York, N. Y., 1995 Downes and Gautam, 1999, The G-Protein Subunit Gene Families. Genomics 62:544-552 Cudemann ら, J. Mol. Med., 73:51-63 Parmentierら. 1992, Nature, 355: 453-455 Thomasら. 1996, Gene, 178:1-5; Nef and Nef 1997, Pro., Nathl. Acad. Sci. USA, 94 : 4766-4771 Blacheら. 1998, Biochem. Biophys. Res. Commun., 142 :669-672 Drutelら, 1995, Receptors Channels 3 :33-40 Ferrandら. 1999, J.Mol.Cell.Cardiol. 31:1137-1142 Ramingら, 1998, Receptors Channels 6 : 141 -151 Buckら, Cell 65:175-87, 1991 Axel, Sci. Amer. 273:154-59, 1995 Breer, Semin. Cell Biol., 5:25-32, 1994 Tajib ら, 2000, Nature Biotechnology 18: 649-654 PilpelおよびLancet, Protein Science 8:969-977、1999 Zozulya ら, Genome Biology 2001 2(6) research0018.1-0018.12 Hubbard & Cohn, 1975, J. Cell Biol.64: 461-479 Salamon ら, 1996, Biophys.J.71 :283-294 Kjelsberg ら, 1992, J. Biol. Chem. 267:1430 McWhinney ら, 2000. J. Biol. Chem. 275:2087 Ren ら, 1993, J. Biol. Chem. 268:16483 Samama ら, 1993, J. Biol. Chem 268:4625 Parma ら, 1993, Nature 365:649 Parma ら, 1998, J. Pharmacol. Exp. Ther. 286:85 Parent ら, 1996, J. Biol. Chem. 271 :7949 Salamon ら, 1996, Biophys J. 71 : 283-294 Salamon ら, 2001 , Biophys. J. 80: 1557-1567 Salamon ら, 1999, Trends Biochem. Sci.24: 213-219 Sarrio ら, 2000, Mol. Cell. Biol. 20: 5164-5174 Traynor and Nahorski, 1995, MoI.Pharmacol.47: 848-854 Stables ら, 1997, Anal.Biochem.252:115-126;Detheux ら, 2000, J. Exp.Med., 192 1501-1508 Kenimer & Nirenberg, 1981, Mol.Pharmacol.20: 585-591 Solomon ら, 1974, Anal.Biochem.58: 541-548 Horton & Baxendale, 1995, Methods Mol.Biol.41:91-105 Ian M. Bird.Totowa(NJ1 Humana Press)編集、Phospholipid Signaling Protocols(1998年) Rudolph ら, 1999, J. Biol.Chem.274: 11824-11831 Kikkawa ら, 1982, J. Biol.Chem.257: 13341 Pinna & Ruzzene (1996, Biochem.Biophys.Acta 1314: 191-225 Verma ら, 1987, Cell 51: 513-514 Fink ら, 1988, Proc.Natl.Acad.Sci.85:6662-6666 Montminy ら, 1986, Proc.Natl.Acad.Sci.8.3:6682-6686 Comb ら, 1986, Nature 323:353-356 Short ら, 1986, J. Biol.Chem.261: 9721-9726 Lee ら, 1987, Nature 325: 368-372 Lee ら, 1987, Cell 49: 741-752 Hiscott ら, 1993, MoI.Cell.Biol.13: 6231-6240 Shakhov ら, 1990, J. Exp.Med.171 : 35-47 Liu ら, 1998, AIDS Res.Hum.Retroviruses 14: 1509-1519 Pan & McEver, 1995, J. Biol.Chem.270: 23077-23083 Matsui ら, 1998, J. Immunol.161 : 3469-3473 Schreck & Baeuerle, 1990, Mol.Cell.Biol.10: 1281-1286 Haskill ら, 1991, Cell 65: 1281-1289 Hafner,2000, Biosens.Bioelectron.15:149-158 BBRC 2003, Vanti ら.305:67-71 Epilepsia,2004 45:1338-43 Antibodies: A Laboratory Manual ed. by Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press: 1988 Costagliola ら, 2000, J. Clin.Invest.105:803-811 Kohler and Milstein, (1975) Nature, 256: 495-497 Kozbar ら, (1983) Immunology Today, 4: 72 Cole ら, (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. pp.77-96 Palmiter and Brinster, 1986, Ann.Rev.Genet, 20:465-499 Huszar ら, 1997, Cell, 88:131 Ohki-Hamazaki ら, 1997, Nature, 390:165 Marth, 1996, Clin.Invest.97: 1999 Sauer, 1998, Methods, 14:381 Wagner ら, 1997, Nucleic Acids Res., 25:4323
本発明は、RCC356 GPCR(Gタンパク質共役受容体)の天然リガンドとしてのイソ吉草酸(IVA)の同定に関する。RCC356受容体の活性を調節する薬剤のスクリーニングアッセイの基礎として、本発明にはRCC356ポリペプチドとイソ吉草酸との相互作用の利用が含まれる。
本発明には、診断およびスクリーニング方法の実施用キットの他、RCC356/イソ吉草酸の相互作用に基づく診断などの方法も含まれる。特に、本発明では、癌の進行および/または発生にイソ吉草酸が関連していることが示されている。また、本発明では、RCC356がにおい認識および神経活動において役割を果たしうることが示されている。
本発明にはRCC356に結合する薬剤の同定方法が含まれ、前記方法は、a)前記イソ吉草酸と前記RCC356ポリペプチドとの結合を可能にする条件下での、候補調節因子の存在下または非存在下におけるRCC356ポリペプチドとイソ吉草酸とが接触すること、およびb)前記RCC356ポリペプチドと前記イソ吉草酸との結合を測定することからなる。ここで、前記候補調節因子の存在しない場合の結合と比較して、前記候補調節因子が存在する場合の結合の低下によって、RCC356の機能を調節する薬剤としての前記候補調節因子が同定される。
本発明にはさらにサンプル中でRCC356に結合する薬剤のサンプル中での存在の検出方法が含まれ、前記方法が、a)イソ吉草酸とRCC356ポリペプチドとの結合を可能にする条件下での、前記サンプルの存在下または非存在下における前記RCC356ポリペプチドと前記イソ吉草酸とが接触すること、およびb)前記RCC356ポリペプチドと前記イソ吉草酸との結合を測定することからなる。ここで、前記候補調節因子の非存在下における結合と比較して、前記サンプルの存在下における結合の低下は、前記サンプル中でRCC356の機能を調節する薬剤の存在を示している。
本発明にはさらにRCC356の機能を調節する薬剤の同定方法を含まれ、前記方法が、a)イソ吉草酸によるRCC356ポリペプチドの活性化を可能にする条件下での、候補調節因子の存在下または非存在下におけるRCC356ポリペプチドとイソ吉草酸とが接触すること、およびb)前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定することからなる。ここで、前記候補調節因子の非存在下における活性と比較して、前記候補調節因子の存在下における活性の変化によって、RCC356の機能を調節する薬剤として前記候補調節因子が同定される。
本発明はさらにRCC356の機能を調節する薬剤の同定方法であり、前記方法が、a)RCC356ポリペプチドと候補調節因子とが接触すること、b)前記候補調節因子の存在下において、前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定すること、およびc)前記RCC356ポリペプチドをEC50のイソ吉草酸と接触させているサンプル中において測定された前記活性と、前記候補調節因子の存在下で測定された前記活性とを比較することからなる。ここで、該候補調節因子の存在下で測定された活性量は、EC50の前記イソ吉草酸による誘導量の少なくとも10%である場合、前記候補調節因子はRCC356の機能を調節する薬剤として同定される。本発明によると、候補調節因子の存在下で測定された活性は、EC50のイソ吉草酸の誘導量の15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%以上でありうる。該当する場合、本発明ではさらに、好ましくはEC50のイソ吉草酸が本発明の方法において使用されることが示されている。しかし、本発明の方法において、RCC356の活性化が検出されうる他の濃度でイソ吉草酸が使用されうる。
本発明ではさらにサンプル中においてRCC356の機能を調節する薬剤の存在を検出する方法を含み、前記方法が、a)前記サンプルの存在下、または非存在下においてRCC356ポリペプチドとイソ吉草酸とが接触すること、b)前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定すること、およびc)前記サンプルを含まず、RCC356およびイソ吉草酸を含む反応で測定された前記活性と、RCC356、イソ吉草酸、前記サンプルを含む反応液中で測定された前記活性とを比較することからなる。ここで、前記サンプルの存在しない場合の活性と比較して、前記サンプルの存在する場合の前記活性変化は、前記サンプル中においてRCC356の機能を調節する薬剤が存在することを示唆している。
本発明はさらにサンプル中のRCC356の機能を調節する薬剤の存在を検出する方法を含み、前記方法が、a)RCC356ポリペプチドと前記サンプルとが接触すること、b)前記サンプルの存在下における、前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定すること、およびc)前記RCC356ポリペプチドをEC50のイソ吉草酸と接触させている反応液中において測定された前記活性と、前記サンプルの存在下で測定された前記活性とを比較することからなる。ここで、前記サンプルの存在下において測定された前記活性量が、EC50の前記イソ吉草酸による誘導量の少なくとも10%である場合、RCC356の機能を調節する薬剤は検出される。
本発明によると、結合法を利用した場合、イソ吉草酸を検出可能なように標識できる。前記方法において、イソ吉草酸は、ラジオアイソトープ、フルオロフォア、蛍光クエンチャーからなる群から選択される成分によって検出可能なように標識できる。または、イソ吉草酸をNMRで検出可能な成分で検出可能なように標識できる。
前述の方法のいずれでも一実施態様では、前記接触は前記RCC356ポリペプチを発現する細胞内、または細胞上で行われる。本発明によると、前記細胞は、ヒトの胚腎臓細胞(Hek293)、チャイニーズハムスター細胞(CHO)、サルの細胞(COS)、初代嗅細胞、アフリカツメガエル細胞、昆虫細胞、酵母、細菌でありうるが、これらに限定されない。
前述の方法のいずれでも別の実施態様では、合成リポソーム内、または前記リポソーム上(Tajib ら, 2000, Nature Biotechnology 18: 649-654、参照により本明細書に援用されている)、もしくはRCC356ポリペプチドを含むウイルス誘発性発芽膜内、または前記膜上で接触が行われる(国際公開第102551号、2001年、参照により本明細書に援用されている)。
前述の方法のいずれでも別の実施態様では、前記RCC356ポリペプチドを発現する細胞からの膜画分を用いて前記方法が行われる。
前述の方法のいずれかの好ましい実施態様では、タンパク質チップ上で該方法が行われる。
前述の方法のいずれかの好ましい別の実施態様では、ラベル置換、表面プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光クエンチング、蛍光偏光から選択される方法を利用して該測定が行われる。
前述の方法のいずれかの好ましい別の実施態様では、前記薬剤が、ペプチド、ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片、脂質、糖質、核酸、有機低分子(発臭成分およびフェロモンを含むが、これらに限定されない)からなる群から選択される。
本発明によると、機能アッセイを利用する場合、RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定する段階がセカンドメッセンジャーレベルにおける変化の検出を含む。
別の実施態様では、シグナル活性を測定する段階が、グアニンヌクレオチド結合/連結または交換、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、プロテインキナーゼC活性、プロテインキナーゼA活性、 ホスファチジルイノシトールの分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、カルシウム流束、 アラキドン酸、MAPキナーゼ活性、チロシンキナーゼ活性、メラニンアッセイ、受容体内在化アッセイまたはリポーター遺伝子発現の測定を含む。Gタンパク質結合/連結または交換を測定する場合、可能な全てのGaサブユニットのうち、好ましくはGTP結合タンパク質Gタンパク質アルファ-olfサブユニット(嗅覚)(別名、G−olf)の挙動を研究する。ヒトのG−olfサブユニットの配列は、既に受託番号L10665でジーンバンクに登録されている。しかし、他の種類のG−olfサブユニットを使用して、研究可能である。
好ましい一実施態様では、シグナル活性の測定には、蛍光または発光アッセイの使用が含まれる。蛍光、発光アッセイは、fluo3、Fluo4、Fura(分子プローブ)、Ca3−キットファミリー(Molecular Device)、エクオリンなどのCa2+感受性フルオロフォアの使用を含みうる。さらに、該アッセイでは、FDSS (Hamamatsu)またはFLIPR(Molecular Device)などの蛍光または発光性リーダーを適用しうる。
本発明ではさらに細胞内におけるRCC356ポリペプチドの活性を調節する方法を含み、前記方法は、RCC356の活性を調節できるように、RCC356ポリペプチドの活性を調節するイソ吉草酸を前記細胞内に輸送する段階を含む。
前述の方法のいずれでも別の実施態様では、方法はハイスループットスクリーニングである。
前述の方法のいずれでも別の実施態様では、薬剤が化学ライブラリーまたは動物器官の抽出物の一部である。動物器官の抽出物が、前立腺癌、血液、脳から調製された抽出物でありうるが、これらに限定されない。
本発明は前述の方法のいずれかによって同定または検出されたイソ吉草酸関連の薬剤を含んでいる。イソ吉草酸関連の前記薬剤が、RCC356に対するアゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニストでありうる。
本発明は前述のいずれかによって同定または検出されたイソ吉草酸と関連する薬剤を含む組成も含んでいる。
本発明によると、前述の方法のいずれかによって同定または検出された薬剤、または前述の薬剤を含む組成は、医薬品の調製に使用できる。または、これらはにおい物質またはにおい物質のアンタゴニストの調製に使用されうる。例えば、RCC356アゴニストは、防虫剤、つまりデオドラントとしてのRCC356アンタゴニストとして使用されうる。
好ましい一実施態様では、前述の薬剤または組成が、疾患または障害が好ましくは癌または腫瘍の転移からなる群から選択される、RCC356関連疾患またはRCC356関連障害の治療用医薬品の調製に使用されうる。本発明によると、前記疾患または障害が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌からなる群から選択されうる。
好ましい別の一実施態様では、前記薬剤または組成が、前記疾患または障害が好ましくはCNS障害または疾患である、RCC356関連の疾患またはRCC356関連の障害の治療用医薬品の調製に使用されうる。本発明によると、前記CNS疾患または障害がてんかんでありうる。
本発明は、分離されたRCC356ポリペプチドおよびイソ吉草酸を含む組成も含む。
本発明は、分離されたRCC356ポリペプチドおよび前記酸を含む組成の製造用のイソ吉草酸の使用にも関する。
本発明はさらに、RCC356シグナル伝達を調整する薬剤のスクリーニング用キットの製造、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患の診断または予後診断用キットの製造、もしくはにおい物質またはにおい物質のアンタゴニストのスクリーニング用キットの製造におけるRCC356との併用における、イソ吉草酸の使用に関する。
また、本発明は、RCC356のリガンドとしてのイソ吉草酸の使用を含む。
本発明はさらに医薬品調製のためのイソ吉草酸の使用を含む。本発明によると、前記疾患または障害が好ましくは癌または腫瘍の転移からなる群から選択される、RCC356関連疾患またはRCC356関連障害の治療用に前記医薬品が使用される。特に、前記医薬品が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌の治療に使用できる。
または、前記医薬品は、疾患または障害が好ましくはCNS障害または疾患である、RCC356関連疾患またはRCC356関連障害の治療用に使用される。 特に、該医薬品はてんかん治療に使用されうる。
本発明は、IVA/RCC356複合体またはその断片を認識する抗体とも関連する。
本発明の別の一実施態様は、CNS障害または疾患の治療用医薬品の調製のための、RCC356断片またはRCC356を認識する抗体またはIVA/RCC356複合体を認識する抗体の使用法と関連する。前記CNS疾患または障害はてんかんでありうる。
本発明の別の一実施態様は、イソ吉草酸関連の嗅覚異常の治療用医薬品の調製のための、RCC356断片またはRCC356を認識する抗体またはIVA/RCC356複合体を認識する抗体の使用に関する。
または、癌または腫瘍の転移の治療用医薬品の調製のための、IVA/RCC356複合体を認識する抗体が使用されうる。
本発明はさらに、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法を含み、前記方法が、a)組織サンプルとイソ吉草酸とが接触すること、b)前記酸の前記組織サンプルへの結合を検出すること、およびc)段階(b)で検出する結合と前記標準品とを比較することからなる。ここで、標準品と比較して結合の違いは、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に使用する。
本発明はさらに、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法であり、前記方法が、a)組織サンプルとイソ吉草酸に対して特異的な抗体またはIVA/RCC356複合体に対して特異的な抗体とが接触すること、b)前記抗体の前記組織サンプルへの結合を検出すること、およびc)段階(b)で検出する結合と前記標準品を比較することからなる。ここで、標準品と比較した結合の違いは、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に使用する。
本発明はさらに RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法を含み、前記方法が、a)組織サンプルとRCC356ポリペプチドに対して特異的な抗体およびイソ吉草酸に対して特異的な抗体またはIVA/RCC356複合体に対して特異的な抗体とが接触すること、b)前記抗体の前記組織サンプルへの結合を検出すること、およびc)段階(b)で検出する結合と前記標準品を比較することからなる。ここで、標準品と比較したいずれか一方または両方の抗体の結合の違いは、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に使用する。
本発明は、さらにRCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法であり、前記方法が、a)組織サンプルのイソ吉草酸含量を定量すること、およびb)段階(a)で定量する前記酸の量と標準品を比較することからなる。ここで、前記標準品と比較したイソ吉草酸の量の違いは、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に使用する。
本発明の方法を利用して診断または予後診断されるRCC356関連疾患またはRCC356関連障害が、癌および腫瘍の転移(これらに限定されない)からなる群から選択されうる。特に、前記疾患または障害が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌からなる群から選択される。
または、本発明の方法を利用して診断または予後診断されるRCC356関連疾患またはRCC356関連障害が、CNS障害または疾患でありうる。例えば、前記CNS疾患または障害はてんかんでありうる。
本発明ではさらに、IVA/RCC356複合体に対して特異的な抗体を使用して、CNS疾患または障害、もしくはイソ吉草酸関連の嗅覚異常を診断または予後診断しうることが示されている。上記の通り、前記CNS疾患または障害がてんかんでありうる。
本発明は、イソ吉草酸関連の嗅覚異常またはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断の方法も含み、前記方法が、a)組織サンプルのRCC356含量を定量すること、およびb)段階(a)で定量する前記受容体の量を標準品と比較することからなる。ここで、標準品と比較したRCC356の量の違いは、嗅覚異常の診断または予後診断、もしくはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断に使用する。本発明によると、前記CNS関連疾患または障害がてんかんでありうる。前記方法では、RCC356抗体、IVA/RCC356抗体、またはイソ吉草酸を使用して定量が行われる。
本発明はさらにイソ吉草酸関連の嗅覚異常またはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断の方法を含み、前記方法が、a)RCC356をコードするmRNAを定量すること、および/または組織サンプル中の野生型RCC356の配列と比較して、該RCC356配列の正確性を検証すること、およびb)段階(a)で定量または決定した前記核酸の量および/または正確性を標準品と比較することからなる。ここで、標準品と比較した前記量またはRCC356配列の違いは、イソ吉草酸関連の嗅覚異常の診断または予後診断、もしくはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断に使用する。前記方法では、該CNS関連疾患または障害はてんかんでありうる。
本発明は、癌または腫瘍の転移を診断または予後診断する方法も含み、前記方法が、a)IVA/RCC356抗体を使用した組織サンプルのRCC356含量を定量すること、およびb)段階(a)での前記受容体の量と標準品とを比較することからなる。ここで、前記標準品と比較したRCC356の前記量の違いは、嗅覚異常の診断または予後診断、もしくは癌または腫瘍の転移の診断または予後診断に使用する。
本発明にはさらに、分離されたRCC356ポリペプチド、イソ吉草酸、これらのためのパッケージング材料からなるキット、RCC356ポリペプチドをコードする分離されたポリヌクレオチド、イソ吉草酸、これらのためのパッケージング材料からなるキット、RCC356ポリペプチドを発現する細胞またはその膜、イソ吉草酸、これらのためのパッケージング材料からなるキットを含む。前記細胞は、前記RCC356をコードするポリヌクレオチドで形質転換されうる。
本発明によると、上記のキットはいくつかの目的で使用されうる。例えば、前記キットは、におい物質または抗におい物質剤のスクリーニング、または腫瘍化合物またはCNS障害または疾患の治療用化合物のスクリーニング向けの、RCC356のシグナル伝達を調節する薬剤のスクリーニングに使用されうる。抗腫瘍化合物の探索時には、特に前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌が標的となり、CNS障害の治療用化合物の探索時には、特にてんかん治療が標的となる。
また、本発明は、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断用のイソ吉草酸を含むキットの用にも関する。
さらに、本発明は、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断用のイソ吉草酸抗体を含むキットの使用に関する。本発明によると、前記疾患または障害は癌でありうる。
本発明は、CNS関連疾患の診断または予後診断用のRCC356を含むキットの使用を含む。前記キットが、イソ吉草酸関連の嗅覚異常の診断または予後診断にも使用されうる。
本発明は、癌の進行および/または治療に及ぼすイソ吉草酸の効果を研究するためのRCC356またはそのオルソログのトランスジェニック動物の使用法も含む。進行および/または治療が研究される癌は、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌でありうる。オルソログという用語は、進化上関連する種において、RCC356と類似の機能を有する遺伝子を意味する。
本発明は、CNS障害または疾患の進行および/またはイソ吉草酸関連の嗅覚異常の治療を研究するためのRCC356またはそのオルソログのトランスジェニック動物の使用も含む。進行および/または治療が研究されるCNS障害または疾患は、てんかんでありうる。
本発明によると、癌の進行および/または治療を研究するために、イソ吉草酸を過剰生産するトランスジェニック動物が使用されうる。動物での過剰生産は、例えばIVA分解の抑制を介して誘発されうる。
または、イソ吉草酸関連の嗅覚異常の進行に及ぼすRCC356の効果を研究するためのRCC356ノックアウトトランスジェニック動物(ヒトは含まず)が使用されうる。また、CNS障害または疾患の進行に及ぼすRCC356の効果を研究するためのRCC356ノックアウトトランスジェニック動物が使用されうる。本記載において、RCC356は、選択された動物モデルに従ったRCC356のオルソログとして理解されうる。
本発明での上記の全ての方法、薬剤、使用法、組成、キットにおいて、図1bに示されているRCC356ポリペプチドに特異的に結合して、そのシグナル伝達活性を活性化させる、イソ吉草酸等価体または前記等価体に対する抗体が使用、参照、適用、もしくは組み込まれうる。イソ吉草酸の前記等価体がプロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、 イソヘキサン酸、 ヘプタン酸、 イソヘプタン酸、オクタン酸、 イソオクタン酸、ノナン酸、 イソノナン酸、バルプロ酸、イソバレルアミド、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリル酸、ヘキサヒドロ安息香酸、ペラルゴン酸、5−ヘキセン酸からなる群から選択されうる。特に、前記等価体が、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリル酸、ヘキサヒドロ安息香酸、ペラルゴン酸、5−ヘキセン酸からなる群から選択される。
また、本発明での上記の全ての方法、薬剤、使用法、組成、キットにおいて、RCC356ポリペプチドが、図1bに示されるポリペプチドと少なくとも20%の同一性、または25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、さらに100%といったより高い同一性を有するが、前記RCC356ポリペプチドと同等の活性を有しうる。当業者であれば、使用されたアッセイに左右される該活性の評価方法を知っている。
また、本発明での上記の全ての方法、薬剤、使用法、組成、キットにおいて、該RCC356ポリペプチドがキメラまたはその活性フラグメントでありうる。
本明細書において用いられる用語「RCC356 ポリペプチド」は2つの必須の特性を有する:1)RCC356ポリペプチドが、図1bに示される配列と少なくとも20%、好ましくは80%、90%、95%以上(100%を含む)のアミノ酸の同一性を有する、および2)RCC356がRCC356活性を有する(つまり、該ポリペプチドがイソ吉草酸またはその等価体と結合する)。前記相同性は、ポリペプチド全体またはCDRドメイン(受容体のリガンド結合ドメイン)などのポリペプチドの一部と関連しうる。PilpelおよびLancet (Protein Science 8:969-977、1999)によると、GPCRのCDRドメインは、公表されている表示(TM3−#4、TM3−#8、TM3−#11、TM3−#12、TM3−#15、TM4−#11、TM4−#15、TM4−#19、TM4−#22、TM4−#23、TM4−#26、TM5−#3、TM5−#6、TM5−#7、TM5−#10、TM5−#11、TM5−#13)に従って定義され、TMxは前記受容体の膜貫通領域を示し、#は前記領域内のアミノ酸の位置を示す。好ましくは、「RCC356ポリペプチド」は、本明細書で定義されるRCC356のシグナル伝達活性も有する。しかし、7TM受容体のCDRの同定は全く運任せであり、TMの定義に適用されるアルゴリズムに左右される。さらに、PilpelおよびLancet によれば、RCC356は4つのTMしか有し得ない。上記のとおり、該RCC356ポリペプチドは、RCC356のオルソログも含む。
本明細書において用いられる用語「RCC356ポリヌクレオチド」は、本明細書で定義されるRCC356ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを意味する。
本明細書において用いられる用語「RCC356活性」は、RCC356ポリペプチドによる、イソ吉草酸またはその等価体の特異的結合を意味する。
本明細書において用いられる用語「RCC356シグナル伝達活性」は、RCC356ポリペプチドによる、シグナル伝達の開始または伝搬を意味する。RCC356シグナル伝達活性は、以下のうちの1つ以上の測定による、シグナル伝達カスケードにおいて検出可能な段階の測定によってモニターされる:Gタンパク質、特にG−olfにおけるGDPとGTPの交換の促進、アデニル酸シクラーゼ活性の変化、プロテインキナーゼCの調節、プロテインキナーゼAの調節、ホスファチジルイノシトールの分解(セカンドメッセンジャーであるジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸の生成)、細胞内カルシウムの流出、MAPキナーゼの活性化、チロシンキナーゼの調節、内在化アッセイ、遺伝子またはリポーター遺伝子活性の調節、メラニンアッセイ。本明細書において後述されるRCC356活性アッセイのいずれか1つと比較した、イソ吉草酸の実質的な非存在下において確立されるベースラインより10%以上、もしくは10%以下の測定可能な活性の変化がある場合、シグナル伝達カスケードの検出可能な段階が開始または媒介されると考えられる。測定可能な活性は、例えば、cAMPまたはジアシルグリセロール濃度の測定のように、直接的に測定可能である。または、測定可能な活性は、例えばリポーター遺伝子アッセイのように、間接的に測定可能である。これらのアッセイの大半について、市販のキットが利用できる。
本明細書において用いられる用語「検出可能な段階」は、直接的(例、セカンドメッセンジャーの測定または変性(例、リン酸化)タンパク質の検出)、または間接的に(例、該段階の下流への効果のモニタリング)測定可能な段階を意味する。例えば、アデニル酸シクラーゼの活性化は、cAMPの生成をもたらす。アデニル酸シクラーゼの活性は、直接的(例、アッセイにおいてcAMPの産生をモニターするアッセイ)、または間接的に(例、cAMPおよび/またはカルシウム流束の実際のレベルの測定)測定可能である。
本明細書において用いられる用語「分離された」は、分子の集団(例、異なる性質の分子の混在が、50%未満(重量)、好ましくは40%未満、最も好ましくは2%未満のポリペプチド、ポリヌクレオチド、組成)を意味する。「分離された」という用語がRCC356ポリペプチドに適用される場合、脂質膜に結合した、または脂質膜に埋め込まれたRCC356ポリペプチドを含むことを特に意味する。
本明細書において用いられる用語「イソ吉草酸」は、熟練した化学者には既知の化学分子を意味する。または、イソ吉草酸は、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、イソカプロン酸、イソエナンチル酸、イソカプリル酸、イソペラルゴン酸、ヘキサヒドロ安息香酸、5−ヘキセン酸、バルプロ酸、イソバレルアミド、またはこれらの派生物などの同等の分子も意味するが、これらに限定されない。全ての前記酸は、RCC356ポリペプチドに対して特異的に結合して、そのシグナル伝達活性を活性化させうる。「特異的に結合する」という用語は、イソ吉草酸のEC50、IC50、Kが1mM未満であることを意味する。派生物は、それが派生する化合物と比較して、少なくとも1つの部位が異なる、類似の化合物でありうる。「イソ吉草酸等価体」のための一般的な化学式は(CH−(CH−(CH)−COOHでありうる。また、アミン、ケトン、エステル、エーテル、アルコールを含めた(これらに限定されない)、様々な化学的機能を有する様々なラジカルが一般的な該化学式にグラフトされうる。
本明細書において用いられる用語「候補化合物」と「候補調節因子」は、RCC356ポリペプチドへのリガンド結合の調節能、またはRCC356ポリペプチドの活性の調節能が評価される組成を意味する。候補調節因子は、例えば、動物、植物、細菌、カビの細胞からの「ならし培地」の他、該細胞の抽出物に含まれる低分子、化合物を含めた、天然または合成化合物でありうる。
本明細書において用いられる用語「低分子」は、分子量3000ダルトン未満、好ましくは2000または1500ダルトン未満、より好ましくは1000ダルトン未満、最も好ましくは600ダルトン未満の化合物を意味する。「有機低分子」は、炭素を含む低分子である。
本明細書において用いられる用語「結合の変化」または「活性の変化」、および同義語で「結合の差」または「活性の差」は、特定のアッセイにおける結合またはシグナル伝達活性の少なくとも10%が、上昇または低下することを意味する。
本明細書において用いられる用語「イソ吉草酸とRCC356ポリペプチドとの結合を可能にする条件」は、例えば、イソ吉草酸がRCC356に結合する、温度、塩濃度、pH、タンパク質濃度の条件を意味する。厳密な結合条件は、アッセイの性質(例、アッセイにおいて生存細胞、もしくは細胞の膜画分のいずれが使用されるか)によって変動しうる。しかし、RCC356は細胞表面タンパク質であり、イソ吉草酸は通常細胞表面上のRCC356と相互作用するため、好ましい条件には通常、生理学的塩濃度(90mM)およびpH(約7.0−8.0)が含まれる。結合の温度は4℃から37℃まで変動しうるが、好ましくは室温および約37℃の間である。結合反応においてイソ吉草酸およびRCC356ポリペプチドの濃度も変動するが、好ましくは約10μM(例、放射性標識トレーサーイソ吉草酸との反応で、濃度は通常K未満)から1mM(例、競合因子としてのイソ吉草酸)である。実施例として、RCC356発現細胞および精製済み標識イソ吉草酸を使用した結合アッセイにおいて、10μM 標識イソ吉草酸、1mM 冷イソ吉草酸、および50mM HEPES (pH7.4)、1mM CaCl、脂肪酸不含0.5%BSAを含む27℃の結合バッファー250μL中の細胞25,000個を使用して結合を行った。
本明細書において用いられる用語「サンプル」は、RCC356ポリペプチドへの結合、またはRCC356ポリペプチドのシグナル伝達活性を調節する薬剤の存在について試験される分子の源を意味する。サンプルは、環境サンプル、動物、植物、酵母、または細菌の細胞または組織の天然抽出物、臨床サンプル、合成サンプル、組換え細胞の「ならし培地」、発酵工程でありうる。「組織」は、生物内において特定の機能を果たす細胞の集合体である。本明細書において用いられる用語「組織」は、特定の生理的領域からの細胞物質を意味する。特定組織の細胞は、いくつかの異なった細胞種類を含みうる。この一例は、限定はされないが、毛細血管内皮細胞および血球の他、さらにニューロンおよびグリア細胞から構成される脳組織があり、全てが特定の組織切片またはサンプル中に含まれる。固形組織に加えて、「組織」という用語は、血液などの非固形組織も含むこととなっている。
本明細書において用いられる用語「膜画分」は、RCC356ポリペプチドを含む細胞の脂質膜の調製物を意味する。該用語が本明細書において用いられるように、「膜画分」は、非膜結合細胞成分の少なくとも一部(少なくとも10%、好ましくはそれ以上)が除去されている点で、細胞ホモジネートとは異なる。「膜結合」という用語は、脂質膜に取り込まれた、もしくは脂質膜に取り込まれた成分と物理的に結合した細胞成分を意味する。
本明細書において用いられるように、「結合の低下」は、本明細書に記載の結合アッセイ中において測定される、RCC356ポリペプチドに対するイソ吉草酸または他のアゴニストの結合が、少なくとも10%の低下することを意味する。
本明細書において用いられるように、「セカンドメッセンジャー」という用語は、GPCRからのシグナル伝達に関与するGタンパク質共役受容体の活性化によって生じる、もしくは濃度が変動する分子を意味する。セカンドメッセンジャーの例としては、これらに限定されないが、cAMP、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウムが挙げられる。「セカンドメッセンジャーレベルの変化」は、候補調節因子の非存在下で実施されるアッセイにおける検出量と比較した、特定のセカンドメッセンジャーの検出レベルの少なくとも10%の上昇または低下を意味する。
本明細書において用いられるように、「エクオリンアッセイ(aequorin-based assay)」という用語は、活性化GPCRによって誘発される細胞内カルシウム流束を測定するGPCR活性アッセイを意味しており、細胞内カルシウム流束が、細胞内で発現される発光またはエクオリンによって測定される。
本明細書において用いられるように、「結合」という用語は、リガンド(例、イソ吉草酸)と受容体(例、RCC356)との物理的結合を意味する。本明細書において該用語が用いられるように、100nM未満、通常は100μMから1000μMのEC50またはKで結合が生じる場合、結合は「特異的」である。におい物質機能アッセイを利用して、認められたEC50は通常10、100、さらには1mMであり、前記シグナルは特異的と見なされうる(図3参照)。EC50またはKが、1000μM、950μM、900μM、850μM、800μM、750μM、700μM、650μM、600μM、550μM、500μM、450μM、400μM、350μM、300μM、250μM、200μM、150μM、100μM、75μM、50μM、25μMまたは10μM、1μM、950nM、900nM、850nM、800nM、750nM、700nM、650nM、600nM、550nM、500nM、450nM、400nM、350nM、300nM、250nM、200nM、150nM、100nM、75nM、50nM、25nMまたは10nM、1nM、950pM、900pM、850pM、800pM、750pM、700pM、650pM、600pM、550pM、500pM、450pM、400pM、350pM、300pM、250pM、200pM、150pM、100pM、75pM、50pM、25pMまたは10pM以下の場合、におい物質結合は特異的と見なされうる。
本明細書において用いられるように、「EC50」という用語は、イソ吉草酸などのリガンドの結合などの任意の活性およびRCC356ポリペプチドの機能活性が、同じアッセイを利用して測定可能なRCC356活性の最高値の50%となる薬剤の濃度を意味する。換言すると、「EC50」は、100%活性がより多量のアゴニストの添加によって上昇しない活性量と定められる場合に、50%の活性化をもたらす薬剤の濃度である。「イソ吉草酸等価体のEC50」は、酸の同一性に伴って変動し、例えば、同等のイソ吉草酸分子のEC50値は、イソ吉草酸以上、未満、または同程度であることに注意する必要がある。したがって、イソ吉草酸等価体を使用する場合、当業者であれば従来の方法に従ってEC50を測定可能である。任意のイソ吉草酸等価体のEC50は、少なくともRCC356応答が飽和状態となる、もしくは最高に達するまで増量させたイソ吉草酸等価体の存在下で一定量のRCC356ポリペプチドの活性測定を実施して、測定したRCC356活性と使用した酸の濃度をプロットすることで測定される。
本明細書において用いられるように、「K」は、解離定数、つまり受容体の半数が平衡状態でリガンドと結合するリガンドの濃度である。
本明細書において用いられるように、「IC50」という用語は、RCC356受容体の最高活性を50%低下させるアンタゴニストまたはインバースアゴニストの濃度である。
本明細書において用いられるように、「検出可能なように標識」という用語は、分子の特性を意味する(例、構造的変化を受けたイソ吉草酸またはその等価体)。前記変化は、官能基の取り込み、または付加によって導入される。前記官能基(標識)は容易に検出可能である。検出可能な標識として、蛍光化合物、同位体化合物、発光化合物、量子ドットラベルが挙げられるが、これらに限定されない。イソ吉草酸または等価体の構造に付加可能な放射性同位体の例として125I、35S、14C、Hがありうる。イソ吉草酸または等価体の構造に取り込み可能な放射性同位体の例としてH、14Cがありうる。多様な検出方法として、分光学的、光化学的、放射化学的、生化学的、免疫化学的、化学的方法が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書において用いられるように、「アフィニティタグ」という用語は、目的の分子(例、RCC356ポリペプチド)に付ける標識を意味しており、これによって標識に結合する試薬が特異的に標識分子に結合できる。親和性タグとして、抗体に対するエピトープ(別名「エピトープタグ」)、ビオチン、6XHis、Myc、FLAG、GSTが挙げられるが、これらに限定されない。親和性タグは、標識種の精製の他、検出に使用可能である。
本明細書において用いられるように、「結合の低下」は、既知の、もしくは予測される調節因子のないアッセイ中で検出される結合量と比較して、既知の、もしくは予測されるRCC356の調節因子を有する任意のアッセイ中で検出される結合量が、少なくとも10%の減少することを意味する。
本明細書において用いられるように、「送達」という用語は、薬物や薬剤に関して使用される場合、アッセイの混合液、もしくは細胞培養への薬物または薬剤の添加を意味する。該用語は動物への薬物または薬剤の投与も意味する。該投与は、例えば、注射(例えば生理食塩水や水まどの適当な溶媒中)、吸入、経口、経皮、直腸、膣内などの通常の薬物投与経路が可能である。
本明細書において用いられるように、「Gタンパク質共役受容体」または「GPCR」という用語は、7つのαヘリックス膜貫通ドメインを有する膜結合型ポリペプチドを意味する。 機能的なGPCRはリガンドまたはアゴニストと結合し、またGタンパク質とも結合して、これを活性化させる。RCC356はGPCRである。
本明細書において用いられるように、「嗅覚受容体」という用語は、Zozulya ら, Genome Biology 2001 2(6) research0018.1-0018.12.で定義される通り、OR記号を伴うGPCRである。 該参考文献は、参照により本明細書に援用されている。
本明細書において用いられるように、「RCC356ポリペプチドの機能を調節する薬剤」という用語は、イソ吉草酸またはその等価体の結合を変化させる化合物、およびRCC356の下流のシグナル伝達活性を変化させる化合物を含む、RCC356活性を上昇または低下させる分子または化合物である。
本明細書において用いられるように、「トランスジェニック動物」という用語は、該技術分野では周知のトランスジェニック技術などの人為的な方法によって、動物の1つ以上の細胞が、導入された外来の核酸を含んでいる、動物、好ましくはヒト以外の哺乳動物、鳥類、魚類、両生類を意味する。該核酸は、前駆細胞内への導入、マイクロインジェクションなどの計画的な遺伝子操作、組換えウイルスの感染によって、直接的または間接的に細胞内に導入される。遺伝子操作という用語には、古典的な異種交配や体外受精は含まれず、組換えDNAの導入を目的としている。この分子は染色体中に組み込まれるか、もしくは染色体外で複製するDNAとなりうる。本明細書に記載の典型的なトランスジェニック動物においては、導入遺伝子によって、細胞が目的のポリペプチドの組換え型(アゴニスト型またはアンタゴニスト型)を発現する。一方、例えば、後述のFLPまたはCREリコンビナーゼ依存性コンストラクトなど、組換え遺伝子がサイレントであるトランスジェニック動物も検討される。さらに、「トランスジェニック動物」には、遺伝子組換えおよびアンチセンス技術などの、人為的方法によって1つ以上の遺伝子が破壊された遺伝子組換え動物が含まれる。
本明細書において用いられるように、「抗体」という用語は、目的のポリペプチドの1つとも特異的に反応する免疫グロブリン分子の断片の他、従来の免疫グロブリン分子である。抗体は従来技術を利用して断片化可能であり、該断片の可用性は、本明細書で後述されている完全な抗体のための同様の方法でスクリーニングされる。例えば、抗体をペプシン処理することでF(ab)断片を生成可能である。結果として得られるF(ab)断片を処理して、ジスルフィド架橋を還元させ、Fab断片を生成可能である。本発明の抗体はさらに、該抗体の少なくとも1つのCDR領域によって与えられる、ポリペプチドに対する親和性を有する二重特異性、単鎖、キメラ、ヒト化分子を含むことを目的とする。好ましい実施態様では、抗体はさらに該抗体に付着した検出可能な標識を含む(例、標識は放射性同位体、蛍光化合物、化学発光化合物、酵素、補酵素でありうる)。
本明細書において用いられるように、用語「抗腫瘍化合物」は、癌の発生または進行を停止または抑制させる任意の化合物を意味する。上記の通り、前記抗腫瘍化合物で治療されうる癌は、任意の癌または腫瘍の転移でありうる。さらに、前記化合物は、細胞増殖の抑制または停止、もしくは増殖中の細胞の生存に作用するが、他の細胞活動にも影響を及ぼしうる。
本明細書において用いられるように、「抗におい物質剤」という用語は、動物によるにおい知覚を止める、または抑制する任意の薬剤を意味する。前記知覚は、インビボでにおい知覚を促進する、または示す動物試験、エクスビボ試験、またはインビトロ試験を利用してアッセイされうる。におい知覚の例には、アルデヒド、フルーティーライト、フルーティーダーク、甘い芳香植物、バルサム、芳香属スパイス、タバコ、 ツノマタゴケ、革、動物、琥珀、樹木、針葉樹、ハーブ系スパイス、薬草、緑黄色野菜、柑橘類でありうるが、これらに限定されない。
「RCC356活性の異常調節」という表現は、前記受容体が存在する正常な条件と比較して、RCC356が活性化されないことを意味する。前記異常調節は、RCC356受容体がRCC356に特異的リガンドによって正常に刺激されない条件、もしくは野生型RCC356受容体と比較して、RCC356刺激がシグナル伝達分子に異なる様式で伝達される条件に起因しうる。
「診断方法」という表現は、疾患または障害が検出される方法を意味しており、前記状況下では、患者における前記疾患または障害の存在および(または)発生に関する測定可能な指標または徴候が既に存在する。
「予後診断方法」という表現は、疾患または障害が発生する可能性を測定する方法を意味しており、前記状況下では、患者における前記疾患または障害の存在および/または発生に関する測定可能な指標または徴候は存在しないか、ほとんど見えない。
「イソ吉草酸等価体」は、イソ吉草酸と同じ、または同等の効果を有する分子を意味する。該等価体の例が先に記載されているが、該化合物に限定されない。該記載は、一般的な周知の知見とともに、十分な情報を提供しているため、当業者であれば、任意の化合物がイソ吉草酸の等価体と見なされうるか否かを判断できる。このような「イソ吉草酸等価体」の一般的な化学式は(CH−(CH−(CH)−COOHでありうる。また、アミン、ケトン、エステル、エーテル、アルコールを含めた(これらに限定されない)、様々な化学的機能を有する様々なラジカルが一般的な該化学式にグラフトされうる。
発明の詳細な説明
本発明は、イソ吉草酸が該RCC356 GPCRの天然リガンドであるとの発見と関連している。相互作用は、該相互作用、ひいてはRCC365の機能を調節する薬剤のスクリーニングアッセイに有用である。既知のリガンドおよびその受容体との相互作用は、無調節な前記受容体の活性などの状態の診断法も提供する。
I. RCC356の活性を調節する薬剤を同定するためのアッセイ
RCC356の活性を調節する薬剤は、前記受容体とイソ吉草酸との相互作用を上手く利用した多数の方法で同定可能である。例えば、インビトロ、細胞培養、またはインビボにおいてRCC356/イソ吉草酸の結合を再構成する能力によって、該結合を破壊する薬剤の同定における標的が与えられる。結合破壊に基づくアッセイによって、有機低分子のライブラリーまたは集合から有機低分子などの薬剤の同定が可能となる。または、該アッセイによって、植物、真菌、細菌の抽出物またはヒトの組織サンプルなどの天然材料からのサンプルまたは抽出物における薬剤の同定が可能となる。次に、該受容体を介した下流のシグナル伝達を測定する結合アッセイまたは機能アッセイを利用して、RCC356/イソ吉草酸の結合の調節因子をスクリーニング可能である。結合アッセイおよび機能アッセイのいずれもイソ吉草酸を使用して検証される。
RCC356の機能を調節する薬剤をより直接的に同定するためのRCC356/イソ吉草酸の相互作用を利用した別の方法では、候補薬剤または候補調節因子によって誘発されるRCC356の下流のシグナル伝達における変化が測定される。これらの機能アッセイは、分離した細胞膜画分または表面上に受容体を発現している細胞上で実施可能である。
以下の説明では、RCC356とイソ吉草酸との相互作用に基づく結合アッセイおよび機能アッセイの方法を提供している。
A.RCC356ポリペプチド
RCC356とイソ吉草酸との相互作用を利用したアッセイでは、RCC356ポリペプチドの材料が必要となる。ヒトのRCC356のポリヌクレオチドとポリペプチドの配列を本明細書の図1に示している。ヒトのRCC356ポリヌクレオチドの配列は、GenBank受託番号AR581085.1でも入手可能であり、米国特許第6,790,631号で報告されており、参照により本明細書に援用されている。RCC356ポリペプチド配列は、Swissprotデータベース受託番号sp/Q8TCB6/oxe1ヒトにも記録されている。関連する配列としては、NM_152430、NP_689643、AY775731、AAV54110.1、AB065787、BAC06006、BK004369、DAA04767、AC090719、AL833127、AY698056、AAU07996が挙げられる。
当業者であれば、既知の配列から設計されたプライマーまたはプローブを利用した基本的なPCRおよび分子クローニング技術によって、該タンパク質をコードするmRNAを含むサンプルからRCC356配列を容易に増幅できる。また、OR遺伝子はイントロンを含まない遺伝子であるため、当業者であればゲノムDNAからRCC356配列を増幅できる。
組換えポリペプチドの発現は、該技術分野においては周知である。当業者であれば、本発明に従って、真核細胞または原核細胞において有用なRCC356ポリペプチドの発現のためのベクターおよび発現制御配列を容易に選択できる。結合機能またはシグナル伝達機能を有するには、RCC356は、細胞膜または合成リポソームのような界面活性剤と結合する必要がある。 細胞膜画分の調製方法は、該技術分野においては周知であり(例、Hubbard & Cohn, 1975, J. Cell Biol.64: 461-479において報告されている方法)、参照により本明細書に援用されている。RCC356を含む膜を調製するためには、内因的に、もしくは組換え技術によってRCC356を発現している細胞に該技術を適用するだけでよい。または、膜を含まないRCC356は、ポリペプチドの界面活性剤液の希釈によって膜調製物中に組み込まれる(Salamon ら, 1996, Biophys.J.71 :283-294を参照。この文献は参照により本明細書に援用されている)。
B.イソ吉草酸
イソ吉草酸の構造は当業者には周知である。また、当業者であれば、前記構造から容易に同等の酸を生じさせて、前記等価体がRCC356受容体に結合および/または調節可能あるか否かを容易に試験できる。イソ吉草酸およびその等価体は、天然試料または化学合成されたサンプルから分離できる。
前記酸の定量に利用可能な方法として、a)抽出および精製には、溶媒抽出、油抽出、蒸気抽出、CO超臨界抽出、液体クロマトグラフィー、蒸留、ガスクロマトグラフィー、b)定量には、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、質量分析が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、該方法の実施方法を知っている。
イソ吉草酸またはその等価体は、精製して、もしくは組成物として使用されうる。本発明の任意の結合アッセイまたは機能アッセイに必要な酸の量はアッセイに応じて変わるが、通常、1回のアッセイ当たり標識済みの酸0.1μmから100μM、および未標識の酸10μMから1mMを使用する。RCC356に対する修飾イソ吉草酸分子の親和性およびEC50は元のイソ吉草酸とは変わるため、所与のアッセイにおいて必要な量は正常値に応じて調整できる。所与のアッセイにおいて必要な場合、上記の通りに、放射線標識ラベルの取り込みまたは添加によってイソ吉草酸を標識可能である。
C.RCC356活性の調節因子を同定するためのアッセイ
イソ吉草酸がRCC356受容体のリガンドであるとの発見によって、受容体活性のアゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニストを同定するためのスクリーニングアッセイが可能となる。スクリーニングアッセイには通常2つのアプローチが存在する。
1)RCC356発現細胞、該細胞の膜抽出物、RCC356を含む固定化脂質膜を標識イソ吉草酸および候補化合物に暴露させるリガンド結合アッセイ。インキュベーション後、反応混合物における標識イソ吉草酸とRCC356受容体との特異的結合を測定する。標識イソ吉草酸を妨げる、もしくは置換する化合物は、RCC356活性のアゴニスト、アンタゴニスト、またはインバースアゴニストでありうる。機能アッセイを実施して、陽性化合物がこれらのどれに分類されるかを判定可能である。
化合物の結合は3つの主なカテゴリー(競合的結合、非競合的結合、不競合的結合)に分類できる。競合的結合化合物は二次(対照)化合物と似ており、標的分子(ここでは受容体)の同じ結合ポケットに結合する。添加時、競合的結合化合物は、前記標的から前記二次化合物を置換する。非競合的結合化合物は、二次(対照)化合物として標的分子の同じ結合ポケットに結合することはないが、前記標的分子上で前記二次化合物の作用と相互作用しうる。非競合的結合化合物の添加時、二次化合物は置換されない。二次化合物が既に結合している場合、不競合的結合化合物は標的分子に結合する。共同的結合は、任意の化合物が、対照化合物となりうる別の化合物の結合を促進することを意味する。このように、共同的効果は、前記他の化合物のKアッセイにおいて認められる。
2)RCC356のシグナル伝達活性を測定する機能アッセイ
a)アゴニストのスクリーニングにおいて、RCC356発現細胞または該細胞から調製された膜を候補化合物とインキュベーションさせて、RCC356シグナル伝達活性を測定する。イソ吉草酸をアゴニストとして使用してアッセイを検証し、受容体活性を調節する化合物によって誘発される活性をイソ吉草酸によって誘発される活性と比較する。アゴニストおよび部分的アゴニストは、該アゴニストおよび部分的アゴニストが100(0)μM以下で存在する場合、イソ吉草酸の2、5、10倍以上の活性を含め、イソ吉草酸の最高活性の少なくとも10%、好ましくは、50%、75%、100%に相当する最高生物活性を有する。
b)アンタゴニストまたはインバースアゴニストのスクリーニングでは、RCC356発現細胞または該細胞から分離した膜について、候補化合物を伴う、もしくは伴わない、イソ吉草酸の存在下におけるシグナル伝達活性をアッセイした。アンタゴニストまたはインバースアゴニストは、アンタゴニストまたはインバースアゴニストを欠く反応と比較して、イソ吉草酸によって刺激された受容体活性のレベルを少なくとも10%低下させる。
c)インバースアゴニストのスクリーニングでは、候補化合物の存在下および非存在下において受容体活性を測定する機能アッセイにおいて、構成的RCC356発現細胞または該細胞から分離した膜を使用する。インバースアゴニストは受容体の構成的活性を少なくとも10%低下させる化合物である。RCC356の過剰発現は、構成的活性化をもたらしうる。RCC356は、強力な構成的プロモーター(例、CMV初期プロモーター)の制御下に置かれることで過剰発現させることができる。または、保存されたGPCRのアミノ酸またはアミノ酸ドメインにおけるある種の突然変異が構成的活性化を招く傾向がある。 例えば、Kjelsberg ら, 1992, J. Biol. Chem. 267:1430; McWhinney ら, 2000. J. Biol. Chem. 275:2087; Ren ら, 1993, J. Biol. Chem. 268:16483; Samama ら, 1993, J. Biol. Chem 268:4625; Parma ら, 1993, Nature 365:649; Parma ら, 1998, J. Pharmacol. Exp. Ther. 286:85; Parent ら, 1996, J. Biol. Chem. 271 :7949を参照されたい。
リガンド結合および置換アッセイ:
イソ吉草酸とRCC356との結合を抑制する化合物をスクリーニングするために、イソ吉草酸とともに、細胞上で発現しているRCC356ポリペプチド、または受容体ポリペプチドを含む分離膜を利用可能である。結合またはイソ吉草酸の置換のみを測定するアッセイにおいて同定された場合、それらを機能試験にかけて化合物がアゴニスト、アンタゴニスト、インバースアゴニストのいずれとして作用するかを判定する必要がある。
置換実験において、RCC356ポリペプチド発現細胞(通常、1回のアッセイまたは膜抽出物1〜100μg当たり細胞25,000個)を、漸増濃度の候補調節因子の存在下または非存在下において、標識イソ吉草酸と一緒に、結合バッファー(例、50mM Hepes pH 7.4、1mM CaCl2、脂肪酸を含まない0.5%ウシ血清アルブミン(BSA)、0.5mM MgCl2)中で1.5時間(例えば27℃で)インキュベートさせる。アッセイを検証して、較正するために、漸増濃度の未標識イソ吉草酸を使用した対照の競合反応を実施可能である。インキュベーション後、細胞を十分に洗浄して、結合した標識イソ吉草酸の特定の標識をそれぞれに見合った方法(例、シンチレーション計数、酵素アッセイ、蛍光など)で測定する。候補調節因子の存在下における標識イソ吉草酸の結合量の少なくとも10%の低下は、候補調節因子による結合の置換を示している。仮に候補調節因子が100μM以下の濃度(つまり、EC50が100μM以下)で標識イソ吉草酸(飽和量未満のイソ吉草酸)の50%を置換する場合、該調節因子は該アッセイまたは本明細書に記載の他のアッセイにおいて特異的に結合すると考えられる。
または、結合または結合の置換は、表面プラズモン共鳴(SPR)によってモニター可能である。表面プラズモン共鳴アッセイは、水層からセンサー上の膜内に固定されたRCC356ポリペプチドへのイソ吉草酸の結合または結合の喪失によって生じる固定化センサー付近での質量変化による、2つの分子間での結合の定量的測定法として使用可能である。この質量変化は、イソ吉草酸または候補調節因子の注入または除去後での時間に対する共鳴単位として測定され、Biacore Biosensor(Biacore AB)を使用して測定される。RCC356は、Salamonらの記述した方法に従って、薄膜脂質膜内のセンサーチップ(例、研究グレードのCM5チップ;Biacore AB)上に固定可能である。(Salamon ら, 1996, Biophys J. 71 : 283-294; Salamon ら, 2001 , Biophys. J. 80: 1557-1567; Salamon ら, 1999, Trends Biochem. Sci.24: 213-219。これらの各文献は参照により本明細書に援用されている)。Sarrioらは、チップ上の脂質層内に固定化したGPCR A(1)アデノシン受容体へのリガンド結合を検出するために、SPRを使用可能であることを実証した(Sarrio ら, 2000, Mol. Cell. Biol. 20: 5164-5174。文献は参照により本明細書に援用されている)。SPRアッセイにおいてイソ吉草酸がRCC356に結合する条件は、開始点として、Sarrioらが報告した条件を利用して、当業者によって微調整可能である。
SPRでは、少なくとも2つの方法で結合する調節因子をアッセイできる。第一に、イソ吉草酸を固定化RCC356ポリペプチドに前もって結合させた後、流速約10μL/分、濃度1nMから1000μM、好ましくは約100μMで候補調節因子を注入可能である。結合したイソ吉草酸の置換を定量して、調節因子の結合の検出を可能にする。または、膜結合RCC356ポリペプチドを候補調節因子と事前にインキュベーションして、イソ吉草酸で攻撃できる。調節因子への暴露前のチップ上でのイソ吉草酸の結合と比較した、調節因子に暴露後のRCC356へのイソ吉草酸の結合における差によって、結合が実証される。いずれかのアッセイにおいても、候補調節因子の非存在下におけるイソ吉草酸の結合量と比較した、候補調節因子の存在下におけるイソ吉草酸の結合量の10%以上の低下は、該候補調節因子はRCC356とイソ吉草酸との相互作用を抑制していることを示唆している。Biacoreシステムは、質量分析またはガスクロマトグラフィーなど、候補調節因子を同定するシステムに接続可能である。
RCC356へのイソ吉草酸の結合の抑制を測定するもう1つの方法では、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)が利用される。FRETは、蛍光ドナー(D)の放出スペクトルと蛍光アクセプター(A)の励起スペクトルが重なる場合、互いに隣接した(通常、間隔が100A未満)DとAの間に生じる量子力学的現象である。被験分子(例、イソ吉草酸、RCC356ポリペプチド)は、ドナーとアクセプターのフルオロフォアの相補的対合で標識される。RCC356:イソ吉草酸の相互作用に起因して互いに隣接している間、ドナーのフルオロフォアの励起時に放出される蛍光は、分子が結合していない時にその励起波長に反応して放出される蛍光とは異なる波長を有しており、各波長での発光強度の測定によって結合ポリペプチド対未結合ポリペプチドが定量される。標的分子を標識するためのフルオロフォアのドナー:アクセプターは該技術分野において周知である。
FRETにおける変化では、分子間相互作用をモニターするために蛍光クエンチングが利用される。相互作用対の一方の分子をフルオロフォアで標識可能であり、他方は、隣接して付加した場合にフルオロフォアの蛍光をクエンチングさせる分子で標識可能である。励起時の蛍光変化は、フルオロフォア:クエンチャー対のタグを付けた分子結合における変化を示唆する。通常、標識RCC356ポリペプチドの蛍光の増大は、クエンチャーの付いたイソ吉草酸が置換されていることを示唆する。クエンチングアッセイにおいて、候補調節因子を含まないサンプルと比較した、候補調節因子を含むサンプル中での蛍光発光強度の10%以上の増大は、候補調節因子が、RCC356:イソ吉草酸との相互作用を阻害していることを示唆する。
生物発光共鳴エネルギー移動(BRET)は、インビボでの分子内相互作用をモニターするシステムである。アッセイは、ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc)の含む融合タンパク質と、例えば黄色蛍光タンパク質(YPF)または緑色蛍光タンパク質(GFP)との間の非放射エネルギー移動に基づいている。BRETシグナルは、コエレンテラジン派生物基質の酸化によって生じる。該システムでは、アクセプターとして、細胞透過性、非毒性コエレンテラジン派生物基質であるDeepBleuC(商標)(DBC)および緑色蛍光タンパク質(GFP)の変異体が適用されうる。ドナーとアクセプターが近傍にある場合、DBCの接触分解から生じるエネルギーが、RlucからGFPに移され、固有の波長の蛍光を放つ。この方法によって、フルオロフォアの角度とは無関係に、2つの被験分子間の距離が増大される。
表面プラズモン共鳴およびFRET/BRET法に加えて、蛍光偏光測定はイソ吉草酸-受容体結合の定量に有用である。蛍光タグ付き分子の蛍光偏光度は、回転相関またはタンブリング速度に左右される。蛍光標識されたイソ吉草酸とRCC356との結合によって形成される複合体などのタンパク質複合体の偏光度は、複合体を形成しないイソ吉草酸の偏光度よりも高い。RCC356:イソ吉草酸の相互作用の候補抑制剤を含むことで、候補阻害剤がRCC356とイソ吉草酸との相互作用を破壊または抑制する場合、候補抑制剤を含まない混合物と比較して、蛍光偏光は低下する。蛍光偏光は、ポリペプチドまたはタンパク質複合体の形成を破壊する低分子の同定に適切である。候補調節因子を含まないサンプル中での蛍光偏光と比較した、候補調節因子を含むサンプル中での蛍光偏光における10%以上の低下は、候補調節因子がRCC356:イソ吉草酸の相互作用を抑制することを示唆している。
RCC356:イソ吉草酸の相互作用をモニタリングするためのもう1つの代替法では、バイオセンサーアッセイを利用する。ICSバイオセンサーについてはAMBRIによって記載されている(Australian Membrane Biotechnology Research Institute; http//www.ambri.com.au/)。この技術において、RCC356やイソ吉草酸などの分子の結合は、浮遊膜二重層のグラミシジン促進イオンチャンネルの閉鎖、ひいてはバイオセンサーのアドミタンス(インピーダンスと類似)における測定可能な変化と関連している。このアプローチは、6桁のアドミタンス変化量に及んで線形であり、低分子のコンビナトリアルライブラリーの大規模ハイスループットスクリーニングには理想的に適合する。候補調節因子を含まないサンプルのアドミタンスと比較した、候補調節因子を含むサンプルでのアドミタンスにおける10%以上の変化(上昇または低下)は、候補調節因子がRCC356とイソ吉草酸との相互作用を阻害することを示している。
酸−タンパク質間での相互作用のアッセイでは、該相互作用の調節因子が、物理的に相互作用するタンパク質のドメインと必ずしも直接的に相互作用しなくても構わないことに注意することが重要である。調節因子は、酸‐タンパク質の相互作用部位とは離れた場所で相互作用して、例えば、RCC356ポリペプチド内の構造変化を起こすことも可能である。それでも、この様式で作用する調節因子(阻害剤またはアゴニスト)は、RCC356の活性を調節する薬剤として興味深い。
サンプル(例、RCC356受容体に結合する、もしくは該受容体へのイソ吉草酸の結合に影響を及ぼす組織サンプル)中での薬剤の存在を判定するために、記載されているいずれの結合アッセイも利用できる。この目的のために、該サンプルの存在下または非存在下において、RCC356ポリペプチドをイソ吉草酸または別のリガンドと反応させて、利用した結合アッセイに応じた方法によってイソ吉草酸またはリガンドの結合を測定する。イソ吉草酸または他のリガンドの結合における10%以上の低下は、該サンプルが受容体ポリペプチドへのイソ吉草酸またはリガンドの結合を調節する薬剤を含んでいることを示唆する。
タンパク質チップ
本発明の方法はタンパク質チップに適用できる。前記タンパク質チップは、ガラススライドまたはニトロセルロース膜でありうるが、これらに限定されない。タンパク質チップ用のアレイ法は、該技術分野において周知である。
受容体活性の機能アッセイ
i.GTPase/GTP結合アッセイ
RCC356などのGPCRについて、受容体活性の測定は、受容体を含む細胞膜によるGTPの結合である。参照により本明細書に援用されている、Traynor and Nahorski, 1995, MoI.Pharmacol.47: 848-854に記述の方法では、基本的に、標識GTPの結合を測定することでGタンパク質の膜への結合を測定する。GTP結合アッセイにおいては、受容体を発現する細胞の分離膜を20mM HEPES pH7.4、100mM NaCl、10mM MgCl、80pM 35S−GTPγS、3μM GDPを含むバッファー中でインキュベートさせる。アッセイ混合物を30℃で60分間インキュベートさせ、その後、未結合の標識GTPをGF/Bフィルター上でのろ過によって除去する。結合標識GTPは液体シンチレーション計数で測定する。イソ吉草酸によって誘発された RCC356活性の調節をアッセイするために、RCC356ポリペプチドを発現する細胞から調製された膜をイソ吉草酸と混合して、RCC356活性の候補調節因子の存在下および非存在下においてGTP結合アッセイを実施する。候補調節因子を含まないアッセイと比較した、該候補調節因子を含むこの種のアッセイでのシンチレーション計数によって測定された標識GTP結合における10%以上の低下は、候補調節因子がRCC356活性を抑制することを示唆する。
イソ吉草酸を含まない同様のGTP結合アッセイを実施して、アゴニストとして作用する化合物を同定できる。この場合、イソ吉草酸によって促進されたGTP結合が標準として使用される。化合物が1mM以下存在する際、該化合物がイソ吉草酸によって誘発されるGTP結合レベルの少なくとも50%を誘発させる、また好ましくはイソ吉草酸によって誘発される以上のレベルを誘発する場合、化合物はアゴニストと見なされる。
γ32P−GTP標識RCC356ポリペプチドを含む膜をインキュベーションさせてGTPase活性を測定する。活性型GTPaseは無機リン酸として標識を放出させ、これは20mM HPO中の5%活性炭浮遊液における遊離の無機リン酸の分離によって検出され、シンチレーション計数にかけられる。候補化合物で起こり得る非特異的作用を除外するために、対照にはRCC356非発現細胞(mock導入)からの分離膜を使用したアッセイが含まれる。
RCC356によって制御されるGTPase活性に及ぼす候補調節因子の作用をアッセイするために、該調節因子を含む、もしくは含まないイソ吉草酸と一緒に膜サンプルをインキュベートさせた後、GTPaseアッセイを実施する。調節因子を含まないサンプルと比較した、GTP結合またはGTPase活性のレベルにおける10%以上の変化(上昇または低下)は、候補調節因子によるRCC356調節を示唆する。
ii 下流経路の活性化アッセイ:
a.カルシウム流束− エクオリンアッセイ
エクオリンアッセイでは、GPCRの活性化によって誘発される細胞内でのカルシウム流束またはカルシウム流束(入口)に対するミトコンドリアまたは細胞質のアポエクオリンに対する反応性を上手く利用する(Stables ら, 1997, Anal.Biochem.252:115-126;Detheux ら, 2000, J. Exp.Med., 192 1501-1508; いずれの文献も参照により本明細書に援用されている)。簡単に説明すると、ミトコンドリアまたは細胞質のアポエクリオンおよびGα16またはG−olfを同時発現するように、RCC356を表現するクローンにトランスフェクションする。細胞を5μMコエレンテラジンHまたは派生物(Molecular Probes)と一緒に4時間室温でインキュベートさせて、DMEM−F12培養液で洗い、濃度0.5×10細胞個/mLに再浮遊させる。次に細胞を試験アゴニストのペプチドと混合させて、エクオリンによる発光を発光計で30秒間記録する。結果を相対的な光単位(RLU)で表す。候補化合物で起こり得る非特異的作用を除外するために、対照にはC356非発現細胞(mock導入)からの分離膜を使用したアッセイが含まれる。
C356ポリペプチドを発現しているが、候補調節因子では処理されていない細胞サンプル、またはRCC356ポリペプチドを発現していないが、候補調節因子で処理された細胞サンプル(mock導入細胞)と比較して、RCC356ポリペプチドを発現しており、候補調節因子で処理された細胞サンプル中での光強度が10%以上上昇または低下した場合、エクオリン活性または細胞内カルシウム濃度は「変化」している。
イソ吉草酸の非存在下で実施される場合、アッセイを利用して、RCC356活性のアゴニストまたはインバースアゴニストを同定可能である。イソ吉草酸の存在下でアッセイを実施する場合、該アッセイをアンタゴニストのアッセイに利用可能である。
1)a Fluo3、4、Fura2、Calcium3(Molecular Device)アッセイ
蛍光アッセイでは、受容体の活性化によって引き起こされるカルシウム流束(例えば、CNGを介したカルシウム流束入または小胞体からのカルシウム放出)を上手く利用している。これらに限定されないが、Fluo3、Fluo4、Fura2(Molecular Probes)、Calcum3キットシリーズ(Molecular Device)などの一部のフルオロフォアがカルシウムと結合することが知られている。このようなフルオロフォア-カルシウム複合体は、それぞれに固有の周波数で蛍光を発する。これによって、Gタンパク質共役受容体の活性化の際、小胞体から放出された、もしくはCNGを介して進入したカルシウムがフルオロフォアに結合して、固有の蛍光を発する。RCC356を過剰発現している細胞を1−8μMのフルオロフォア溶液と37℃で30−60分間インキュベートさせる。生理食塩水での十分な洗浄後、細胞(6〜1536)を含む各ウェルに同バッファー50μLを分注する。次に、該添加細胞上に試験済みアゴニストを注入して、RCC356の活性化後に蛍光を測定する。
C356ポリペプチドを発現しているが、候補調節因子では処理されていない細胞サンプル、またはRCC356ポリペプチドを発現していないが、候補調節因子で処理された細胞サンプル(mock導入細胞)と比較して、RCC356ポリペプチドを発現しており、候補調節因子で処理された細胞サンプル中での蛍光強度が10%以上上昇または低下した場合、細胞内カルシウム濃度は「変化」している。
2)脱分極/過分極膜アッセイ(例、DiBacフルオロフォア)
該アッセイの原理は、細胞膜の脱分極に従うはずである。陰イオン性プローブDiBAC(3)は、膜電位依存的に細胞内、細胞外区画に分かれる。膜電位の上昇(脱分極)に伴い、プローブはさらに細胞内に分かれて、蛍光を増大させる。逆に、過分極は、染料の押し出しのために蛍光を減弱させる。
DiBAC(3)プローブは波長488nmで励起され、波長540nmで発光する。
実験当日、アッセイバッファー(生理食塩水バッファー)に最終濃度10mMのグルコースおよび最終濃度5μMのDiBAC(3)プローブを添加する。アッセイバッファーを37℃に維持する。細胞培養液を除いて、RCC356過剰発現細胞を含む各ウェルを予め加熱したアッセイバッファー200μLで2回洗い流す。DiBAC(3)を含むアッセイバッファー180μLを加えて、適当な温度で細胞を30分間インキュベートする。30分後には細胞プレートはアッセイに使用できる。添加2分前にベースラインを収集する。適当なウェルに候補調節因子20μLを添加して、さらに25分間のデータを収集する。
C356ポリペプチドを発現しているが、候補調節因子では処理されていない細胞サンプル、またはRCC356ポリペプチドを発現していないが、候補調節因子で処理された細胞サンプル(mock導入細胞)と比較して、RCC356ポリペプチドを発現しており、候補調節因子で処理された細胞サンプル中での蛍光強度が10%以上上昇または低下した場合、膜分極は「変化」している。
3)メラノフォアアッセイ メラノフォアアッセイは色によるアッセイである。基本的に、このアッセイに使用される細胞は、アフリカツメガエルの皮膚に由来している。これらの不死化細胞はメラニン小体を含んでおり、メラニン小体は黒色色素を含む細胞小器官である。アデニル酸シクラーゼまたはホスホリパーゼCの活性化を引き起こす内因性または組換えGPCRの活性化は、メラニン小体を分散させて、細胞を黒くする。または、アデニル酸シクラーゼまたはホスホリパーゼCを抑制するGPCRは細胞の色を薄くする。これによって、セカンドメッセンジャーの濃度測定の代わりに、細胞の色の変化を観察することでヒットを容易に特定できる。この色の変化は、650nMでの吸光度を測定するマイクロリーダーで、もしくはビデオ画像システムでの検査によって容易に定量化できる。
b.アデニル酸シクラーゼ
アデニル酸シクラーゼ活性のアッセイについては、Kenimer & Nirenberg, 1981, Mol.Pharmacol.20: 585-591に記述されており、この文献は参照により本明細書に援用されている。このアッセイは、Solomon ら、 1974、 Anal.Biochem.58: 541-548で説明されているアッセイの変法であり、この文献は参照により本明細書に援用されている。簡単に説明すると、100μLの反応液は、50mM Tris−HCl(pH 7.5)、5mM MgCl、20mM クレアチンリン酸(ジナトリウム塩)、クレアチン、ホスホキナーゼ10ユニット(タンパク質71μg)、1mM α−32P−ATP (四ナトリウム塩2μCi)、0.5mM cAMP、GH標識cAMP(約10,000cpm)、0.5mM Ro20−1724、0.25%エタノール、被験タンパク質ホモジネート(RCC356ポリペプチド発現/未発現、イソ吉草酸処理/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞のホモジネート)50〜200μgを含んでいる。 通常、反応混合物を37℃で6分間インキュベートする。インキュベーション後、反応混合物に6%冷三塩化酢酸0.9mLを添加してタンパク質を除去する。チューブを1800xgで20分間遠心分離にかけて、各上精をDowex AG50W−X4カラムに加える。カラムからのcAMP画分を4mLの0.1mMイミダゾール−HCl(pH7.5)でカウンターバイアル内に溶出させる。アッセイは3回行う。RCC356ポリペプチドを発現しない細胞のタンパク質ホモジネートを使用して対照反応も行う必要がある。
RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子による非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
本発明によると、候補調節因子では処理されていない細胞サンプル、またはRCC356ポリペプチドを発現していないが、候補調節因子で処理された細胞サンプル(mock導入細胞)と比較して、RCC356活性の候補調節因子で処理された細胞サンプル中でアデニル酸シクラーゼ活性が10%以上上昇または低下した場合、アデニル酸シクラーゼ活性は「変化」している。または、対照化合物で処理されたサンプル中におけるRCC356の候補調節因子による10%以上の活性低下を試験できる。
c.cAMPアッセイ:
cAMPラジオイムノアッセイ(RIA)を利用して細胞内cAMPを、もしくは該技術分野において周知の方法に従ってcAMP結合タンパク質を測定する。例えば、Horton & Baxendale, 1995, Methods Mol.Biol.41:91-105においてcAMPに関するRIAについて記述されており、この文献は参照により本明細書に援用されている。
LJL BiosystemsおよびNEN Life Science Productsが販売しているHigh Efficiency Fluorescence Polarization-based homogeneous assayなどの多くのcAMP測定用キットが市販されている。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子による非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
候補調節因子で処理されていない同様の細胞におけるcAMPと比較して、上記のHorton & Baxendale(1995)のRIAアッセイを利用して、RCC356ポリペプチドを発現しているRCC356活性の候補調節因子で処理された細胞(またはその抽出物)で検出されるcAMP濃度が10%以上上昇または低下した場合、cAMP濃度は「変化」している。
d.リン脂質の分解、DAG産生、イノシトール三リン酸濃度:
リン脂質の分解、および結果としてもたらされるセカンドメッセンジャーであるDAGおよび/またはイノシトール三リン酸(IP)の産生をモニタリングすることで、既知の、もしくは予想されるRCC356調節因子の活性に起因する変化について、リン脂質の分解を活性化させる受容体をモニターできる。これらの各測定方法は、Ian M. Bird.Totowa(NJ1 Humana Press)が編集したPhospholipid Signaling Protocols(1998年)に記載されており、この文献は参照により本明細書に援用されている。本明細書において援用される、ホスファチジルイノシトールのアッセイについても記述しているRudolph ら, 1999, J. Biol.Chem.274: 11824-11831も参照されたい。RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
本発明によると、RCC356ポリペプチドを発現しているが、候補調節因子で処理されていない細胞サンプル(mock導入細胞)と比較して、RCC356ポリペプチドを発現しており、イソ吉草酸の存在下または非存在下において候補調節因子で処理された細胞サンプル中においてホスファチジルイノシトール分解、およびジアシルグリセロールおよび(または)イノシトール三リン酸濃度が少なくとも10%以上上昇または低下した場合、それらは「変化」している。
e.PKC活性化アッセイ:
増殖因子の受容体であるチロシンキナーゼは、リン脂質、カルシウムで活性化されるプロテインキナーゼのファミリーであるプロテインキナーゼC(PKC)の活性化を含む経路を介してシグナル伝達を行う傾向がある。PKC活性化は、最終的には、c−fos、c−myc、c−junなどの一連のプロトオンコジーン転写因子、コラゲナーゼI型およびプラスミノゲンアクチベータインヒビターなどのプロテアーゼおよびプロテアーゼインヒビター、そして細胞内接着分子I(ICAM I)などの接着分子をコードする遺伝子の転写をもたらす。PKCによって誘発される遺伝子産物の増加を検出するように設計されたアッセイを利用して、PKC活性化、ひいては受容体活性をモニターできる。また、PKCを介してシグナル伝達を行う受容体の活性は、PKC活性化によって活性化される遺伝子の制御配列によって促進されるレポーター遺伝子の利用によってモニター可能である。このタイプのリポーター遺伝子アッセイについては、以下で詳述されている。
PKC活性のより直接的な測定には、参照により本明細書に援用されている、Kikkawa ら、 1982、 J. Biol.Chem.257: 13341に記述されている方法を利用可能である。このアッセイによって、PKC基質ペプチドのリン酸化が測定され、これはその後ホスホセルロースペーパーへの結合によって分離される。このPKCアッセイ系を利用して、精製キナーゼの活性、または細胞粗抽出物における活性を測定できる。プロテインキナーゼCサンプルは、アッセイ直前に20mM HEPES/2mM DTTで希釈可能である。
アッセイ用基質は、ミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質タンパク質(MARCKS)由来のペプチドAc−FKKSFKL−NH2(配列番号:2)である。このペプチドに対する酵素のKは約50μMである。該技術分野において周知の他の塩基性のプロテインキナーゼC選択的ペプチドも、Kの少なくとも2〜3倍の濃度で使用可能である。アッセイに必要な補因子としてカルシウム、マグネシウム、ATP、ホスファチジルセリン、ジアシルグリセロールが含まれる。使用者の目的に応じて、存在するPKC量(活性化条件)または存在する活性型PKC量(非活性化条件)を測定するためにアッセイを実施可能である。本発明の大半の目的のために、活性化可能なPKCの測定ではなく、分離時にサンプル中で活性であるPKCを測定するために、非活性化条件を利用する。非活性化条件では、EGTAを使用するために、アッセイにおいてカルシウムを除外する。
20mM HEPES pH 7.4、1−2mM DTT、5mM MgCl、100μM ATP、〜1μCiγ−32P−ATP、100μg/mLペプチド基質(〜100μM)、140μM/3.8μMホスファチジルセリン/ジアシルグリセロール膜、100μMカルシウム(好ましくは500μM EGTA)を含む混合物中でアッセイを実施する。20mM HEPES pH 7.4、2mM DTTで希釈した48μLサンプルを最終反応量80μLで使用した。30℃で5〜10分間、反応を行い、25μLの100mM ATP、100mM EDTA pH 8.0を添加して反応を停止させた。
反応停止後、各反応の一部(85μL)をWhatman P81セルロースリン酸フィルター上にスポットして、0.4%リン酸500mL中で4回(5〜10分間/回)、そして最後に95%EtOH500mL中で2〜5分間洗う。結合している放射活性をシンチレーション計数によって測定する。標識ATPの比放射能(cpm/nmol)は、P81ペーパー上に反応サンプルをスポットして、洗浄せずに計数することで測定される。1分間に転移したリン酸(nmol)で定義される、PKC活性の単位を以下のように計算する:
活性単位(nmol/分)=(ペーパー上のcpm) x (計105μL/スポット85μL)(アッセイ時間、分)(ATPの比放射能cpm/nmol)
PanVera社が販売しているProtein Kinase C Assay Kit(カタログ番号P2747)を使用して、代わりのアッセイを実施可能である。
RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
本発明によると、候補調節因子で処理されていない同様のサンプルで実施された反応と比較して、候補調節因子で処理されたRCC356発現細胞の抽出物において上記のいずれかのアッセイによって測定されるPKC単位が少なくとも10%以上上昇または低下した場合、PKC活性は「変化」している。
f.PKA活性化アッセイ
PKA活性は、例えば、Molecular Device社のIMAP PKAアッセイキットまたはPromega社のProFluor PKAアッセイキットなど、市販のいくつかのキットを使用してアッセイ可能である。
RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
候補調節因子で処理されていない同様のサンプルでのPKAキナーゼ活性と比較して、候補調節因子で処理されたRCC356ポリペプチド発現細胞のサンプルにおいて活性レベルが少なくとも10%以上上昇または低下した場合、PKA活性は「変化」している。
g.キナーゼアッセイ
例えば、New England Biolabs社が販売しているp38 MAP Kinaseアッセイキット(カタログ番号9820)またはPerkin-Elmer Life Sciences社が販売しているFlashPlate(商標) MAP Kinaseアッセイキットなど、市販のいくつかのキットを使用してMAPキナーゼ活性のアッセイが可能である。
RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
候補調節因子で処理されていない同様のサンプルでのMAPキナーゼ活性と比較して、候補調節因子で処理されたRCC356ポリペプチド発現細胞のサンプルにおいて活性レベルが少なくとも10%以上上昇または低下した場合、MAPキナーゼ活性は「変化」している。
既知の合成または天然のチロシンキナーゼ基質および標識リン酸を使用したチロシンキナーゼの直接アッセイは周知であり、他の種類のキナーゼ(例、Ser/Thrキナーゼ)に対する同様のアッセイも周知である。RCC356ポリペプチドを発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞の精製キナーゼおよび粗抽出物のいずれを使用してもキナーゼアッセイを実施可能である。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。基質は、完全長のタンパク質または基質を示す合成ペプチドのいずれでも可能である。Pinna & Ruzzene (1996, Biochem.Biophys.Acta 1314: 191-225、参照により本明細書に援用されている)には、キナーゼ活性の測定に有用な多数のリン酸化基質部位が掲載されている。多数のキナーゼ基質が市販されている。特に有用な基質は、「Src関連ペプチド」(シグマから入手可能なRRLIEDAEYAARG(配列番号:1)#A7433)であり、これは多くの受容体および非受容体チロシンキナーゼの基質である。後述のアッセイではペプチド基質のフィルターへの結合が必要であるため、ペプチド基質が正味の正電荷を有しており、結合を促進させる必要がある。通常、ペプチド基質は少なくとも2つの塩基性残基および遊離のアミノ末端を有する必要がある。反応では通常、ペプチド濃度0.7〜1.5mMが利用される。
通常、5μLの5Xキナーゼバッファー(5mg/mL BSA、150mM Tris−Cl(pH 7.5)、100mM MgCl;アッセイされる正確なキナーゼに応じて、MgClの代わりに、もしくは追加でMnClを使用可能である)、5μLの1.0mM ATP(最終濃度0.2mM)、γ−32P−ATP(100〜500cpm/pmol)、3μLの10mMペプチド基質(最終濃度1.2mM)、被験キナーゼを含む細胞抽出物(キナーゼアッセイに使用する細胞抽出物はホスファターゼ阻害剤(例、0.1〜1mMオルトバナジウム酸ナトリウム)を含む必要がある)、HO(25μLにする)を含む25μL量でアッセイを実施する。反応は30℃で実施して、細胞抽出物の添加によって開始させる。
キナーゼ反応を30秒間から約30分間実施後、氷冷10%トリクロロ酢酸(TCA)45μLを添加する。サンプルを2分間微量遠心機にかけて、35μLの上精をWhatman P81セルロースリン酸フィルターサークル上にスポットする。フィルターを0.5%冷リン酸500mLで3回洗った後、室温のアセトン200mLで5分間1回洗う。フィルターを乾燥させて、取り込まれた32Pをシンチレーション計数によって測定する。キナーゼ反応中のATPの比放射能(例、cpm/pmol)は、 少量の反応サンプル(2〜5μL)をP81フィルターサークル上にスポットして、洗わずに直接計数して測定する。次に、キナーゼ反応(ブランクマイナス)において得られたcpmを比放射能で割って、反応中に転移したリン酸のモル数を決定する。
RCC356を発現する、イソ吉草酸処理済/未処理、候補調節因子含有/不含の細胞または細胞抽出物を使用してアッセイを行う必要がある。一部の候補調節因子によって起こり得る非特異的作用を除外するために、mock移入細胞またはその抽出物を使用して対照反応を行う必要がある。
候補調節因子で処理されていない同様のサンプルでのチロシンキナーゼ活性と比較して、候補調節因子で処理されたRCC356ポリペプチド発現細胞のサンプルにおいて活性レベルが少なくとも10%以上上昇または低下した場合、チロシンキナーゼ活性は「変化」している。
h.下流経路の活性化に関する転写リポーター:
受容体に対するアゴニスト(例、RCC356)の結合によって開始される細胞内シグナルが細胞内事象のカスケードで機能しており、この最終的な結末は1つ以上の遺伝子における転写および/または翻訳の急速かつ検出可能な変化である。したがって、受容体の活性は、RCC356活性化に応答する制御配列によって促進されるレポーター遺伝子の発現の測定によってモニター可能である。
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、基本プロモーターだけでなく、受容体によって制御される発現に必要な任意のエンハンサーまたは転写因子結合部位も含めた、受容体を介した遺伝子発現の制御に必要な転写調節エレメントに関する。アゴニストの結合に起因する細胞内シグナルに応答性のプロモーターの選択、および転写、翻訳、または最終的な活性が容易に検出かつ測定可能なレポーター遺伝子への選択されたプロモーターの機能的な連結によって、転写レポーターアッセイにおいて特定の受容体が活性化されたか否かが迅速に示される。
ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、βラクタマーゼ、βガラクトシダーゼなどのレポーター遺伝子が該技術分野において周知であり、これらの産物の検出アッセイも周知である。
受容体活性のモニタリングに特に適した遺伝子は「前初期」遺伝子であり、これらは通常、受容体とエフェクタータンパク質またはリガンドとの接触後数分以内に迅速に誘導される。前初期遺伝子の転写誘導には、調節タンパク質の新たな合成は必要とされない。リガンド結合への迅速な反応性に加えて、レポーターコンストラクトの作成に有用な好ましい遺伝子の特性として、静止細胞内での低い、または検出不可能な発現、一過性であり、新たなタンパク質合成に依存しない誘導、その後の転写の停止における新たなタンパク質合成の必要性、これらの遺伝子から転写されるmRNAの短い半減期が挙げられる。有用であるために、転写調節エレメントがこれらの特性の全てを有することが好ましいが、必要ではない。
様々な刺激に応答性の遺伝子の一例は、c−fos癌原遺伝子である。c−fos遺伝子は、増殖因子、ホルモン、分化特異的な薬剤、ストレス、他の既知の細胞表面タンパク質の誘導因子により、タンパク質合成非依存的に活性化される。c−fosの発現誘導は極めて迅速であり、受容体刺激から数分以内に生じることが多い。この特性のため、受容体活性化のレポーターとしての使用においてc−fos調節領域は特に魅力的となっている。
c−fos調節エレメントとして以下が挙げられる(Verma ら, 1987, Cell 51: 513-514参照):TATAボックスは転写開始に必要である;基本転写のための2つの上流エレメント、エンハンサーは、二分子対称のエレメントを含み、かつホルボールエステル12−O−テトラデカノイルホルボール−β−アセテート(TPA)、血清、上皮細胞増殖因子(EGF)、PMAによる誘導に必要とされる。
c−fos mRNAキャップ部位の上流−317〜−298 bpに位置する20 bpのc−fos転写エンハンサーエレメントは、血清飢餓NIH3T3細胞における血清誘導に必須である。2つの上流エレメントの1つは−63〜−57に位置しており、cAMP調節のコンセンサス配列と類似している。
転写調節因子CREB(cAMP応答配列結合蛋白)は、名前が示すように、細胞内cAMP濃度に応答する。したがって、cAMP濃度の調節を介してシグナル伝達を行う受容体の活性化は、転写因子の結合、もしくはCREB結合エレメント(CREまたはcAMP応答エレメントと呼ぶ)と連結されたレポーター遺伝子の発現のいずれかの測定によってモニター可能である。CREのDNA配列はTGACGTCAである。CREB結合活性に応答性のレポーターコンストラクトは、米国特許第5,919,649号に記載されている。
c−fosエレメントおよびCREB応答コンストラクトに加えて、他のプロモーターおよび転写調節エレメントとして、血管活性腸管ペプチド(VIP)遺伝子プロモーター(cAMP応答性; Fink ら, 1988, Proc.Natl.Acad.Sci.85:6662-6666)、ソマトスタチン遺伝子プロモーター(cAMP応答性; Montminy ら, 1986, Proc.Natl.Acad.Sci.8.3:6682-6686)、プロエンケファリンプロモーター(cAMP、ニコチンアゴニスト、ホルボールエステル応答性; Comb ら, 1986, Nature 323:353-356)、ホスホエノールピルビン酸カルボキシキナーゼ(PEPCK)遺伝子プロモーター(cAMP応答性; Short ら, 1986, J. Biol.Chem.261: 9721-9726)が挙げられる。
GPCR活性の変化に応答する転写調節エレメントと別の例として、AP−1転写因子応答性エレメントおよびNF−κB活性応答性エレメントが挙げられるが、これらに限定されない。コンセンサスAP−1結合部位は回文配列TGA(C/G)TCAである(Lee ら, 1987, Nature 325: 368-372; Lee ら, 1987, Cell 49: 741-752)。AP−1部位は、ホルボールエステル12−O−テトラデカノイルホルボール−β−アセテート(TPA)などの腫瘍プロモーターによる誘導媒介にも関与しており、このためTRE(TPA応答性エレメント)と呼ばれこともある。AP−1は、増殖刺激に対する細胞の初期応答に関与する多数の遺伝子を活性化させる。AP−1応答遺伝子の例として、FosおよびJun(これら自体がAP−1活性を形成するタンパク質である)、Fos関連抗原(Fra)1および2、IκBα、オルニチンデカルボキシラーゼ、アネキシンIおよびIIが挙げられるが、これらに限定されない。
NF−κB結合エレメントはコンセンサス配列GGGGACTTTCC(配列番号:3)を有する。NF−κB応答性として多数の遺伝子が同定されており、これらの調節エレメントをレポーター遺伝子に連結させてGPCR活性をモニター可能である。NF−κB応答性遺伝子の小サンプルとして、IL−1β(Hiscott ら, 1993, MoI.Cell.Biol.13: 6231-6240)、 TNF−α(Shakhov ら, 1990, J. Exp.Med.171 : 35-47)、CCR5(Liu ら, 1998, AIDS Res.Hum.Retroviruses 14: 1509-1519)、P−セレクチン(Pan & McEver, 1995, J. Biol.Chem.270: 23077-23083)、Fasリガンド(Matsui ら, 1998, J. Immunol.161 : 3469-3473)、GM−CSF(Schreck & Baeuerle, 1990, Mol.Cell.Biol.10: 1281-1286)、IκBα(Haskill ら, 1991, Cell 65: 1281-1289)をコードする遺伝子が挙げられる。これらの各文献は参照により本明細書に援用されている。NF−κB応答性レポーターをコードするベクターは、該技術分野において周知であるか、もしくは、例えば合成NF−κBエレメントおよび最小プロモーターを使用して、またはNF−κBによる調節を受けることが判明している遺伝子のNF−κB応答性配列を使用して、当業者が容易に作成できる。さらに、NF−κB応答性レポーターは、例えばCLONTECH社などから販売されている。
任意のプロモーターコンストラクトについては、該コンストラクトを移入したRCC356発現細胞をイソ吉草酸に暴露させて試験する必要がある。イソ吉草酸に反応したレポーター発現の少なくとも2倍の増加は、該レポーターがRCC356活性の指標であることを示している。
イソ吉草酸応答性転写レポーターコンストラクトを用いてRCC356活性をアッセイするために、RCC356ポリペプチドを安定発現する細胞にレポーターコンストラクトを安定的にトランスフェクションする。アゴニストをスクリーニングするために、未処理細胞を候補調節因子に暴露させるか、もしくはイソ吉草酸に暴露させて、レポーターの発現を測定する。イソ吉草酸で処理した培養物は、既知のアゴニストで誘導される転写レベルの標準として役立つ。調節因子の非存在下におけるレポーターの発現と比較した、候補調節因子の存在下におけるレポーターの発現の少なくとも10%の増大は、候補がRCC356活性の調節因子であることを示唆する。アゴニストは、イソ吉草酸と少なくとも同量、好ましくは同量以上のレポーター発現を誘導する。部分的アゴニストは、イソ吉草酸と比較して、受容体の活性化は低い可能性がある。このアプローチは、イソ吉草酸または他のアゴニストの非存在下においてレポーターの基礎活性が上昇するようなレベルのRCC356ポリペプチドを細胞が発現する場合、インバースアゴニストのスクリーニングにも利用可能である。候補調節因子の非存在下と比較して、候補調節因子の存在下における10%以上のレポーター活性の低下は、該化合物がインバースアゴニストであることを示唆している。
アンタゴニストをスクリーニングするために、RCC356を発現しており、レポーターコンストラクトを有する細胞を候補調節因子の存在下および非存在下においてイソ吉草酸(または他のアゴニスト)に暴露させる。候補調節因子の非存在下と比較した、候補調節因子の存在下におけるレポーター発現の10%以上の低下は、該候補がRCC356活性のアンタゴニストであることを示唆している。
転写アッセイにおける対照として、プロモーターを持たないレポーターコンストラクトの他、RCC356を発現していないが、レポーターコンストラクトを有する細胞が挙げられる。RCC356によって制御される転写の調節因子として同定される化合物についても、それらの活性の特異性およびスペクトルを決定するために分析して、それらが他の制御配列および他の受容体によって促進される転写に影響を及ぼすか否かを判断する必要がある。
転写性リポーターアッセイおよび大半の細胞アッセイは、RCC356活性を調節する化合物の化学ライブラリーのスクリーニングに適している。ライブラリーは、例えば、天然材料由来のライブラリー(例、植物、動物、細菌など)であるか、もしくは無作為または系統的にイソ吉草酸等価体を含むライブラリーでありうる。
i.受容体内在化
カルシウム流束、膜分極、メラノフォアアッセイ、GTP結合、GTPase、アデニル酸シクラーゼ、cAMP、リン脂質分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、PKC、PKA、キナーゼ、受容体内在化、転写レポーターアッセイなど、受容体活性のアッセイを利用して、サンプル(例、RCC356受容体分子の活性に影響を及ぼす組織サンプル)中の薬剤の存在を判定できる。この目的のために、サンプルまたはサンプルの抽出物の存在下および非存在下におけるRCC356ポリペプチドの活性をアッセイする。 サンプルの非存在下と比較した、サンプルの存在下におけるRCC356活性の上昇は、サンプルが受容体活性のアゴニストを含むことを示している。イソ吉草酸のみの存在下における受容体活性と比較して、イソ吉草酸または他のアゴニストとサンプルの存在下における受容体活性の低下は、サンプルがRCC356活性のアンタゴニストを含むことを示している。必要に応じて、次にサンプルを画分して、さらに試験してアゴニストまたはアンタゴニストを分離または精製できる。サンプルが調節因子を含んでいると言えるために必要な活性の測定値における上昇または低下は、利用したアッセイの種類に左右される。通常、サンプルの非存在下において実施したアッセイと比較した、10%以上の変化(上昇または低下)は、サンプル中の調節因子の存在を示唆する。1つの例外は転写レポーターアッセイであり、このアッセイにおいてサンプルが調節因子を含んでいると言えるには少なくともシグナルの2倍の上昇または10%の低下が必要である。アゴニストが少なくとも50%、好ましくは75%または100%以上(イソ吉草酸の2倍、5倍、10倍以上)に刺激することが好ましい。
他の機能アッセイとして、例えば、マイクロフィジオメーター(microphysiometer)またはバイオセンサーアッセイが含まれる(Hafner,2000, Biosens.Bioelectron.15:149-158;参照により本明細書に援用されている)。
II.RCC356とイソ吉草酸の相互作用に基づいた診断アッセイ:
イソ吉草酸は不快な臭いを有する有機酸であり、ヒトや動物の分泌物、特に汗の悪臭形成の一部である。前記酸および他のにおいは、RCC356受容体を調節することが見出されており、本発明では、恐らくRCC356が嗅覚機能を有することを示唆している。本発明では、このように、特にイソ吉草酸およびその同等な酸を介したにおい認識が、RCC356の調節を通じて調節されうることを示唆している。このように、イソ吉草酸などのRCC356を認識するリガンドの使用は、少なくともイソ吉草酸と関連するにおい知覚に影響を及ぼしうる。前記知見に基づいて、診断アッセイを設定して、におい認識の喪失を招く、異常機能しているRCC356受容体が被験者において存在するか否かを判定できる。
GPCRを通じたシグナル伝達は、多数の疾患および障害の病理に役立つ。RCC356は前立腺などの多くの組織で発現しており、該組織における癌の進行の指標として作用することが示されている(米国特許第6,790,631号)。前記癌は、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌でありうる。したがって、嗅覚におけるその役割の他、 RCC356は癌の進行において役割を果たす可能性が高い。前記癌の進行および/または治療は、本発明の方法を利用して研究されうる。例えば、本発明に記載のアッセイは、イソ吉草酸、イソ吉草酸等価体、イソ吉草酸‐抗体を使用して組み立てられる。
RCC356が脳内で発現しているとの証拠がある(BBRC 2003, Vanti ら.305:67-71)。しかし、CNS障害または疾患におけるその役割は依然として明らかになっていない。また、イソ吉草酸がてんかんに関与しうることが過去に示唆されている(Epilepsia,2004 45:1338-43)。実際に、バレリアン抽出物、特に粉末バレリアン根は抗けいれん薬として周知である。さらに、イソ吉草酸がそのような粉末の成分であることが示されている。このように、イソ吉草酸が抗けいれん作用を有することが推測される。イソ吉草酸がRCC356の天然リガンドであるとの本発明における知見に基づいて、本発明では、RCC356がCNS障害、特にてんかんの治療の標的と見なされうることが示唆されている。一方で、前記受容体が、片頭痛、嘔吐、精神および神経障害(不安、統合失調症、躁うつ病、うつ病、せん妄、認知症、重度の知能低下症など)、神経変性疾患(アルツハイマー病またはパーキンソン病など)、運動異常症候群(ハンチントン病またはジルドラトゥレット症候群など)、他の関連疾患にも関与しうることを、本発明は除外していない。RCC356のリガンドとしてのイソ吉草酸の提供は、該役割の解明に有用となりうる。また、本発明は、CNS関連の疾患、特にてんかんを診断するために、RCC356を定量する、またはRCC356を研究するための試薬を含むキットの使用法と関連している。
RCC356とイソ吉草酸との相互作用は、RCC356シグナル伝達が関与する疾患、障害、過程の診断またはモニタリングのアッセイの基礎として利用可能である。RCC356関連の疾患または障害の診断アッセイにはいくつかの異なる型がありうる。
第一に、診断アッセイによって組織サンプル中のイソ吉草酸の定量が可能となる。第二に、アッセイによって、組織サンプル中でのイソ吉草酸のRCC356への結合における差が評価可能となる。第三に、イソ吉草酸またはイソ吉草酸/RCC356複合体を認識する特異的抗体を使用して、サンプル中のイソ吉草酸の存在を測定(定量的または定性的)できる。この抗体の使用は、RCC356を特異的に認識する抗体と併用されうる。該方法を利用して、CNS障害または疾患および癌の進行を診断して、そしてそれらを治療できる。
また、本発明では、RCC356がにおい感知およびCNS障害において役割を果たしうることが初めて示唆されている。嗅覚異常またはCNS障害を診断またはモニターするためのアッセイにはいくつかの種類がありうる。
第一に、RCC356、イソ吉草酸または関連する酸、イソ吉草酸/RCC356複合体に対する抗体を結合アッセイにおいて使用し、組織中でのRCC356ポリペプチド含量を測定する。第二に、RCC356 mRNAレベルが測定され、RCC356遺伝子の発現レベルが示される。最後に、mRNAまたはRCC356をコードするゲノムDNAを増幅させて、野生型RCC356メッセンジャーまたは遺伝子と比較した、配列の変化が確認されうる。 変化の存在は、嗅覚異常またはCNS障害の存在または素因を示唆しうる。
本発明によると、前記RCC356ポリペプチドは、図1bに示されるポリペプチドと少なくとも20%の同一性、もしくは25%、30%、35%、40%、45%、55%、65%、75%、85%、95%、100%などより高い同一性を有するポリペプチドでありうる。または、前記RCC356ポリペプチドは、前記配列の完全長ポリペプチドの断片であり、該断片が少なくとも50%の結合活性、およびイソ吉草酸が誘発するシグナル伝達活性のレベルを保持しうる。本発明によると、イソ吉草酸に対する同様の結合特性を有する限り、前記RCC356ポリペプチドは、野生型の配列と比較して、1つ以上の付加、挿入、欠失、置換を含みうる。該RCC356ポリペプチドは切断RCC356ポリペプチドでありうる。前記RCC356ポリペプチドは、RCC356融合タンパク質を形成する追加配列を含み、前記追加配列は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例、6XHis以上)、またはアフィニティタグ(例、Mycタグ、FLAGタグ)配列からなる群から選択されうる。
A.有機低分子の定量アッセイ
前記酸の定量に使用可能な方法は、a)抽出および精製:溶媒抽出、油抽出、蒸気抽出、CO2超臨界抽出、液体クロマトグラフィー、蒸留、ガスクロマトグラフィー、b)定量:ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、質量分析でありうるが、これらに限定されない。当業者であれば、該方法の実施方法を知っている。
B.RCC356の量または変化の測定アッセイ
サンプル中での異常レベルの前記受容体の存在を判定するために、RCC356レベルを測定して、標準と比較できる(標準組織以上または以下は、RCC356シグナル伝達の異常調節を示す)。例えば、ポリペプチド特異的な抗体を使用した免疫組織化学によって、ポリペプチドレベルを測定する。RCC356活性を特徴とする疾患または障害の罹患が疑われる個人から分離されたサンプルをRCC356に対する抗体と接触させて、該技術分野において周知の通りに(例、二次抗体に結合させた酵素の活性測定)抗体の結合を測定する。
RCC356ポリペプチドレベル測定の別のアプローチでは、罹患組織からの細胞のフローサイトメトリー分析が利用される。フローサイトメトリーの方法として、該技術分野において周知のRCC356特異的な抗体の蛍光標識が挙げられる。他のアプローチとして、ラジオイムノアッセイまたはELISAが挙げられる。これらのそれぞれのための方法は、該技術分野において周知である。
検出された結合量と、健常人、もしくは罹患者の罹患していない部位からの同様の組織のサンプルにおける結合とを比較する。標準比較した10%以上の増加は、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断となる。
RCC356発現は、組織サンプル中で該ポリペプチドをコードするmRNA量の測定によっても測定可能である。mRNAは、定量的または半定量的PCRによって定量可能である。「定量的」増幅の方法は、該技術分野において周知であり、RCC356増幅用プライマーの配列が本明細書において開示されている(米国特許第6,790,631号)。 定量的PCRに共通の方法としては、同じプライマーを使用して既知量の対照配列を同時に増幅させることが挙げられる。これによってPCR反応の較正に利用可能な内部標準が与えられる。定量的PCRの詳細なプロトコルが「PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications', lnnis ら, Academic Press, Inc.N.Y.,(1990)」にあり、この文献は参照により本明細書に援用されている。健常人の組織サンプル、または罹患者の非罹患部位の組織サンプルにおける発現量と比較した、サンプル中におけるRCC356をコードするmRNA量の10%以上の増加は、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断に用いられる。
C.定量アッセイ
RCC356ポリペプチドまたはそれをコードするmRNAが野生型であるか否か、もしくは診断に利用可能か否かを評価するアッセイ。RCC356の調節異常を特徴とする嗅覚障害またはCNS障害または疾患をこの方法で診断するために、サンプルから分離されたRNAをRCC356のPCR増幅用テンプレートとして使用する。次に標準方法を利用して増幅配列の配列を直接決定するか、もしくはまずベクターにクローニング後、配列を決定する。野生型RCC356の配列と比較した、コード化されるアミノ酸を1つ以上変化させる配列上の変化は、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断に利用可能である。サンプルにおいてコード配列の変化が同定される場合、その変異受容体またはリガンドを発現させて、その活性を野生型RCC356の活性と比較することが有効となりうる。他の利点として、このアプローチによって、構成的に活性化しているヌル変異体などの新しい変異体がもたらされる。
標準的な配列決定方法に加えて、例えば、野生型と変異型の配列を区別する分子指標のハイブリダイゼーションを利用して、特定の変異の存在について増幅配列をアッセイ可能である。わずか1個のヌクレオチドの変化に基づいて区別するハイブリダイゼーションアッセイは、該技術分野において周知である。または、例えば、米国特許第5,888,819号、第6,004,744号、第6,013,431号(参照により本明細書に援用されている)に記載の多数の「ミニ配列」アッセイを実施可能である。これらのアッセイおよび該技術分野において周知の他のアッセイによって、任意のサンプル中における既知の多型を伴う核酸の有無を判定可能である。
必要に応じて、アレイまたはマイクロアレイ法を利用して、RCC356配列の発現または突然変異の有無を分析可能である。ミニ配列決定および核酸発現の定量のためのアレイ法は、該技術分野において周知である。
D.機能アッセイ
イソ吉草酸と関連する嗅覚異常またはCNS疾患または障害の診断は、機能アッセイを利用して実施することも可能である。この目的のための、組織サンプルから調製した細胞膜または細胞抽出物が、本明細書に記載のRCC356活性アッセイ(例、リガンド結合アッセイ、カルシウム流束アッセイ、膜分極アッセイ、メラノフォアアッセイ、GTP結合アッセイ、GTPaseアッセイ、アデニル酸シクラーゼアッセイ、cAMPアッセイ、リン脂質分解/ジアシルグリセロール/イノシトール三リン酸アッセイ、PKCまたはPKA活性化アッセイ、キナーゼアッセイ、受容体内在化アッセイ)に使用される。検出された活性を、健常人、または罹患者の非罹患部位から採取された標準サンプルの活性と比較する。代わりの方法として、サンプルまたはサンプル抽出物をRCC356発現細胞に適用後、標準サンプルとの比較でRCC356シグナル伝達活性を測定可能である。標準の活性と比較した、これらのアッセイで測定された活性における10%以上の差は、イソ吉草酸と関連する嗅覚異常またはCNS疾患または障害の診断に用いられる。
本発明の細胞内で発現されたRCC356活性の調節
RCC356のリガンドとしてのイソ吉草酸の発見は、細胞内で発現しているRCC356ポリペプチドの活性の調節方法をもたらす。RCC356ポリペプチドの機能を調整する薬剤を細胞に送達することで、RCC356活性は細胞内で調節される。該調節は、さらなる調節薬剤の同定のためのアッセイの一環として、培養細胞内、もしくは、例えば、ヒトを含む動物において実施可能である。薬剤としては、イソ吉草酸およびその等価体が挙げられる。
薬剤を培養液に添加することで、細胞に送達可能である。送達量は、該薬剤の同一性および送達の目的に応じて変動する。例えば、RCC356活性のアンタゴニストを同定するための培養アッセイにおいて、好ましくは受容体を最高の半分(例、EC50程度)まで活性化させ、好ましくは受容体の飽和状態に必要な用量を超えない量のイソ吉草酸を添加する。イソ吉草酸量の滴定によって該用量を決定して、イソ吉草酸を追加してもRCC356活性に付加的効果を及ぼさない点を決定できる。
疾患または障害の治療のために、医薬品としてRCC356活性の調節因子を動物に投与した場合、当業者であれば目的の転帰に応じて投与量を調節できる。治療前の測定可能な病気の測定値(例、腫瘍細胞の増殖、炎症細胞の蓄積、嗅覚、CNS活性)と比較して、1つ以上の該値が10%以上変化した場合、治療は成功となる。
本発明の有用な候補調節因子
合成または天然化合物の大規模ライブラリーから候補調節因子をスクリーニング可能である。現在、様々な種類の化合物のランダム合成または指向性合成において多数の方法が利用されている。合成化合物ライブラリーは多数の企業から市販されている:例、Maybridge Chemical Co.(英国コーンウォール州Trevillet)、Comgenex(ニュージャージー州プリンストン)、Brandon Associates(ニューハンプシャー州メリマク)、Microsource(コネチカット州ニューミルフォード)。 希少化学ライブラリーがAldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から入手可能である。有機低分子のコンビナトリアルライブラリーを利用可能であり、また調製可能である。または、細菌、真菌、植物、動物の抽出物中の天然化合物ライブラリーが、例えばPan Laboratories(ワシントン州ボセル)やMycoSearch(ノースカロライナ州)から入手可能であるか、もしくは該技術分野において周知の方法によって容易に製造可能である。また、天然/合成のライブラリーおよび化合物は、従来の化学的、物理的、生化学的方法によって容易に修飾される。
本明細書において先に述べた通り、候補調節因子はイソ吉草酸の変異体または等価体でありうる。したがって、イソ吉草酸関連の化合物ライブラリーが使用されうる。本発明の結果(図3)に示されるように、イソ吉草酸(イソ構造)および吉草酸(線形構造)が同程度のEC50をもたらし、4〜9の炭素鎖が試験され、それらの全てがRCC356の活性化を引き起こした。したがって、本発明は、IVAの変異体(または等価体)が作成され、RCC356に対するIVAと同程度の活性を有する化合物が導かれることを示唆している。特に、本発明では、例えば炭素2−12の脂肪族鎖長の操作、イソ対線形構造の操作、イソ型の各ラジカル連鎖の操作、分子のイソ/線形型の両方の官能基(カルボン酸基、アルデヒド基、アルコール基、エステル基、エーテル基…)の操作、イソおよび線形構造の両方の官能基の位置操作による変化の可能性が示唆される。
本発明での有用な抗体
本発明は、RCC356、イソ吉草酸、イソ吉草酸/RCC356複合体に対する抗体の特定の使用法に関する。抗体は、該技術分野において既知の標準プロトコルを利用して作成可能である(Antibodies: A Laboratory Manual ed. by Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press: 1988)参照)。マウス、ハムスター、ヤギ、ヒツジ、ウサギなどの哺乳動物、または鶏などの鳥に免疫原性RCC356ペプチド(例、RCC356ポリペプチドまたは抗体反応を引き起こすことの可能な抗原断片、本明細書における先述の融合タンパク質)、イソ吉草酸、イソ吉草酸/RCC356複合体を免疫可能である。抗体作成用の免疫原は、アジュバントと化合物(例、分離した組換えポリペプチドまたは合成ペプチド)を混合させて調製する。または、RCC356ポリペプチドまたはペプチドから、融合タンパク質として、より大きな免疫原性タンパク質が作成される。ポリペプチドは、キーホールリンペットヘモシアニンなどのより大きな他の免疫原性タンパク質と共有結合させることができる。前記ペプチドと前記酸との化学結合によってイソ吉草酸の免疫原性を高めることができる。または、RCC356またはこれらのタンパク質の断片をコードするプラスミドまたはウィルスベクターを使用して、ポリペプチドを発現させて、動物において免疫反応を起こすことができる(Costagliola ら, 2000, J. Clin.Invest.105:803-811、本文献は参照により本明細書に援用されている)。抗体を作成するために、通常、免疫原をウサギ、ヒツジ、マウスなどの実験動物の皮内、皮下、筋肉内に投与する。上述の抗体に加えて、一本鎖抗体などの遺伝子組換え抗体の派生物を作成可能である。該組換え抗体はファージディスプレイライブラリーとして維持できる。RCC356、イソ吉草酸および/またはイソ吉草酸/RCC356複合体を認識する組換え抗体は、このようにしてBiacore技術などの結合アッセイを利用して該ライブラリーから分離可能である。
予防接種の進行は、血漿または血清中の抗体価の検出によってモニター可能である。抗原として免疫原と一緒に、標準的ELISA、フローサイトメトリー、他のイムノアッセイを使用しても抗体レベルを評価可能である。抗体は簡単に免疫接種動物の血清から調製可能であり、もしくは必要に応じて、例えば固定免疫原を使用した親和性クロマトグラフィーによって血清からポリクローナル抗体を分離可能である。
モノクローナル抗体を作成するために、抗体産生中の脾細胞を免疫接種動物から回収して、標準的な体細胞融合法によって骨髄腫細胞などの不死化細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を作成する。このような技術は該技術分野において周知であり、例えばヒトモノクローナル抗体を作成するための、ハイブリドーマ技術(Kohler and Milstein, (1975) Nature, 256: 495-497において本来開発された)、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbar ら, (1983) Immunology Today, 4: 72)、EBV‐ハイブリドーマ技術(Cole ら, (1985) Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc. pp.77-96)が挙げられる。イソ吉草酸または同等の酸、RCC356ペプチドまたはポリペプチド、またはイソ吉草酸/RCC356複合体と特異的に反応する抗体の産生のために、ハイブリドーマを免疫化学的にスクリーニング可能であり、該ハイブリドーマ細胞を含む培養液からモノクローナル抗体を分離する。
RCC356に特異的な抗体の産生については米国特許第6,790,631号に記載されている。イソ吉草酸に対する抗体は、上記の先行技術の方法の1つを利用して容易に作成可能である。
本発明での有用なトランスジェニック動物
RCC356またはその変異体を発現しているトランスジェニック動物は、RCC356の活性を調節する薬物または薬剤の研究の他、RCC356を介したシグナル伝達の研究にも有用である。トランスジェニック動物は、その遺伝物質の一部にトランス遺伝子と呼ばれる少なくとも1つの外来遺伝子を含むヒト以外の動物である。好ましくは、前記トランス遺伝子が動物の子孫に伝えられるように、それは動物の生殖細胞系列に含まれる。受精卵の前核へのトランス遺伝子のマイクロインジェクションおよびES細胞の操作など(これらに限定されない)、動物の遺伝物質へのトランス遺伝子の導入には多数の技術が利用されうる(WagnerおよびHoppeによる米国特許第4,873,191号;Palmiter and Brinster, 1986, Ann.Rev.Genet, 20:465-499; 1987年8月公開の仏国特許出願第2,593,827号、これら全ての文献は参照により本明細書に援用されている)。トランスジェニック動物は全ての細胞にトランス遺伝子を有するか、もしくは遺伝的にモザイクである。
従来の遺伝子組換え方法によれば、正常遺伝子または改変遺伝子の追加コピーが受精卵の雄性前核に注入されて、受容マウスのゲノムDNA内に組み込まれる。トランス遺伝子は確立されたトランスジェニック系統においてメンデルの法則によって伝えられる。トランス遺伝子は、構成的、組織特異的、もしくはテトラサイクリンなどの外来性薬剤に応答性に発現可能である。1つのトランス遺伝子を発現するトランスジェニック動物を、第二のトランス遺伝子を発現する第二のトランスジェニック動物と交配させて、子孫が両方のトランス遺伝子を持ち、また発現することができる。
ノックアウト動物
RCC356またはその変異体をコードする染色体配列中にホモ接合性欠失を有する動物を使用して、受容体の機能の研究が可能である。イソ吉草酸の産生および/または異化に関与する遺伝子(IVDHaseなど)のノックアウトが、特に癌またはCNS障害について異なる表現型を有するか否かが特に興味深く、これはイソ吉草酸がRCC356に結合する唯一のリガンドであるか否か、またはそれがファミリーの一員であるか否かを指摘しうる。特定の生理学的および/または病理学的な過程におけるRCC356/イソ吉草酸の特定の役割を特定することはさらに興味深い。
i.標準的なノックアウト動物
ノックアウト動物はヒト以外の動物であり、相同的組換えによる遺伝子欠失の作成方法によって作出される。この技術は、胚由来で、培養で維持されており、宿主の胚盤胞内に導入された場合に動物の全ての組織の発生に関与する能力を有する胚性幹(ES)細胞の開発に基づいている。ノックアウト動物が、ES細胞内の特定の標的遺伝子に相同組換えを導き、該遺伝子のヌル対立遺伝子を作成することで作出される。ノックアウト動物の作成技術は詳細に説明されている(例、Huszar ら, 1997, Cell, 88:131;Ohki-Hamazaki ら, 1997, Nature, 390:165参照。これらのいずれの文献も参照により本明細書に援用されている)。当業者であれば、イソ吉草酸産生および(または)異化に関与する1つ以上の遺伝子のノックアウトを伴うホモ接合性RCC356ノックアウト動物または動物遺伝子を作成可能である(例、マウス)。
ii.組織特異的ノックアウト
標的相同組換え方法は、バクテリオファージP1部位特異的レコンビナーゼCreに基づく部位特異的組換え系の開発によって改良されている。バクテリオファージP1由来のCre−loxP部位特異的DNAリコンビナーゼは、特定の組織または発生段階に限定した遺伝子ノックアウトを作成するために、トランスジェニックマウスアッセイにおいて使用される。全体的な遺伝子ノックアウトと対照的に、部位を限定した遺伝子欠失では、表現型が特定の細胞/組織に起因しうることを上手く利用する(Marth, 1996, Clin.Invest.97: 1999)。Cre−loxPシステムでは、loxP部位が目的遺伝子の1つ以上のエキソンの両側を挟むように、1つのトランスジェニックマウス系統が改変される。このいわゆる「floxed遺伝子」のホモ接合体は、細胞/組織タイプ転写プロモーターの制御下でCre遺伝子を発現する第二のトランスジェニックマウスと交配させる。次に、Creタンパク質はloxP認識配列間のDNAを切り出して、効果的に標的遺伝子の機能を取り除く(Sauer, 1998, Methods, 14:381)。例えば、乳房組織特異的遺伝子の誘導性不活性化など、現在、この方法には多くのin vivoでの実施例が存在する(Wagner ら, 1997, Nucleic Acids Res., 25:4323)。したがって、当業者であれば、選択された組織または細胞種において上記のRCC356またはイソ吉草酸と関連する遺伝子がホモ接合的に除去された組織特異的ノックアウト動物の作成が可能である。
本発明での有用なキット
本発明は、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断に有用なキットの他、RCC356活性の調節因子のスクリーニングに有用なキットを提供する。本発明での有用なキットとして、分離RCC356ポリペプチド(膜または細胞結合RCC356ポリペプチド、例、RCC356を発現する分離膜、細胞、またはSPRチップ)および分離イソ吉草酸が挙げられる。細胞が含まれる場合、前記RCC356をコードするポリヌクレオチドを前記細胞に形質転換させうる。別の実施態様では、本発明のキットは、RCC356ポリペプチドおよびイソ吉草酸をコードするポリヌクレオチドを含みうる。本発明の全てのキットは、定められた品目または品目の組み合わせ、およびそれらの包装材料を含む。キットは使用説明書も含みうる。
本キットによると、前記イソ吉草酸は、イソ吉草酸と類似の、RCC356受容体との結合能および(または)調節能を有するイソ吉草酸関連の薬剤でありうる。前記関連薬剤は、例えば、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、イソヘキサン酸、ヘプタン酸、イソヘプタン酸、オクタノン酸、イソオクタノン酸、ノナン酸、イソノナン酸、バルプロ酸、イソバレルアミド、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリル酸、ヘキサヒドロベンゼン酸、ペラルゴン酸、5‐ヘキセン酸でありうる。
本発明によると、前記RCC356ポリペプチドは、図1bに示されるポリペプチドと、少なくとも20%の同一性、または25%、35%、45%、55%、65%、75%、85%、95%、100%などより高い同一性を有するポリペプチドであり、これらはイソ吉草酸または同等の酸に特異的に結合する。または、前記RCC356ポリペプチドは、図1bに示される完全長のポリペプチドの断片であり、前記断片が、イソ吉草酸を使用した場合の結合活性およびシグナル伝達活性の少なくとも50%を保持する。本発明によると、前記RCC356ポリペプチドは、図1bに示される配列と比較して、1つ以上の付加、挿入、欠失、置換を含みうる。前記RCC356ポリペプチドは切断RCC356ポリペプチドでありうる。前記RCC356ポリペプチドはRCC356融合タンパク質を形成する追加配列を含み、前記追加配列は、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)、アルカリホスファターゼ、チオレドキシン、緑色蛍光タンパク質(GFP)、ヒスチジンタグ(例、6XHis以上)、または親和性タグ(例、Mycタグ、FLAGタグ)配列からなる群から選択されうる。
実施例1:RCC356における80種のにおい物質のスクリーニング
補体不含FBSを添加したMEM中においてHek293細胞を37℃、5%CO、湿度90%で増殖させた。スクリーニングの2日前、細胞を96ウェルプレート上に播種した(PDLコーティング済みプレート、Becton-Dickinson)。翌日、蛍ルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼをそれぞれコードする2つのプラスミドと一緒にRCC356ポリペプチドをコードするプラスミドを細胞にトランスフェクションした。蛍ルシフェラーゼの転写はCREB応答性エレメント(CRE)を含む最小プロモーターによって促進させて、ウミシイタケルシフェラーゼは強力な構成的プロモーターであるCMVプロモーターによって促進させた。トランスフェクションは、Lipofectamine 2000試薬を使用して実施した(Invitrogen)。トランスフェクションした細胞を標準的な培養条件下でさらに24時間静置して、機能アッセイのために処理した。
におい物質を1M DMSO溶液として溶解させた。次にそれらを200μMのHBSS(Cambrex)溶液として96ウェルプレートに播種した。したがって、DMSOは1%(v/v)以下のにおい物質溶液を示す。ホルスコリンなどの陽性対照がにおい物質プレートに含まれた。ホルスコリンはcAMP産生を活性化させて、次にCREB転写因子への結合を介して、システムのレポーター遺伝子である蛍ルシフェラーゼの産生を引き起こす。したがって、各ウェルで検出されたルシフェラーゼ活性は、ホルスコリン応答の百分率で表され、ルシフェラーゼ活性に関する標準化が可能となる。
使用説明書(Promega)に従い、Dual−Gloルシフェラーゼアッセイキットを使用して機能アッセイを実施した。
図2には、RCC356ポリペプチドを過剰発現するHek293での80種のにおい物質に関する2回の独立したスクリーニングで得られた結果を示している。イソ吉草酸、吉草酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、 カプリン酸、ペラルゴン酸など、多くのにおい物質がRCC356を活性化すると思われる。これらの潜在的なヒットのうち、イソ吉草酸と吉草酸のみがいずれのスクリーニングでも認められた。
実施例2:RCC356ポリペプチドを過剰発現するHek293細胞に対する7種のにおい物質に関する濃度反応分析
RCC356を過剰発現するHek293細胞に対する80種のにおい物質のスクリーニング中に見出されるヒットをさらに検証するために、濃度反応分析を実施している。補体不含FBSを添加したMEM中においてHek293細胞を37℃、5%CO、湿度90%で増殖させた。スクリーニングの2日前、細胞を96ウェルプレート上に播種した(PDLコーティング済みプレート、Becton-Dickinson)。翌日、蛍ルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼをそれぞれコードする2つのプラスミドと一緒にRCC356ポリペプチドをコードするプラスミドを細胞にトランスフェクションした。蛍ルシフェラーゼの転写はCREB応答性エレメント(CRE)を含む最小プロモーターによって促進させて、ウミシイタケルシフェラーゼは強力な構成的プロモーターであるCMVプロモーターによって促進させた。トランスフェクションは、Lipofectamine 2000試薬を使用して実施した(Invitrogen)。トランスフェクションした細胞を標準的な培養条件下でさらに24時間静置して、機能アッセイのために処理した。
まず、におい物質(イソ吉草酸、吉草酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリン酸、ペラルゴン酸)を1M DMSO溶液として溶解した。次にそれらを0.1μM−1mMの様々な濃度のHBSS(Cambrex)溶液として96ウェルプレートに播種した。したがって、DMSOは1%(v/v)以下のにおい物質溶液を示す。ホルスコリンなどの陽性対照がにおい物質プレートに含まれた。ホルスコリンはcAMP産生を活性化させて、次にCREB転写因子への結合を介して、システムのレポーター遺伝子である蛍ルシフェラーゼの産生を引き起こす。したがって、各ウェルで検出されたルシフェラーゼ活性は、ホルスコリン応答の百分率で表され、ルシフェラーゼ活性に関する標準化が可能となる。
使用説明書(Promega)に従い、Dual−Gloルシフェラーゼアッセイキットを使用して機能アッセイを実施した。
図3Aは、RCC356活性化に対する同定された様々なリガンドの効率を示している。図3B−Dは、RCC356を過剰発現しているHek293細胞に対する、クエン酸、酪酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ヘキサヒドロ安息香酸、5−ヘキセン酸を用いて実施された濃度反応分析の結果を示している。試験された各ヒットが、RCC356のリガンドであることを確認している。試験されたにおい物質において、イソ吉草酸が最も効率的なRCC356ポリペプチドのリガンドである。イソ吉草酸は、EC50 25μMでRCC356の活性化を引き起こす。吉草酸、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリン酸、ペラルゴン酸、ヘキサヒドロ安息香酸、5−ヘキセン酸もそれぞれ97μM、91μM、260μM、329μM、643μM、104μM、EC50 485μMでRCC356の活性化を導く。
実施例3:RCC356ポリペプチドを過剰発現するHek293細胞について実施した単一細胞カルシウムイメージングアッセイ
単一細胞カルシウムイメージングアッセイでは、実験の48時間前に96ウェルプレートに細胞を播種して、カルシウムイメージングアッセイの20時間前、使用説明書に従って、Lipofectamine(Invitrogen Inc.)を使用して嗅覚受容体のcDNAをトランスフェクションさせた。4μg/mL Fluo4−AM (Molecular Probe)を含む生理食塩水バッファー中での37℃、1時間の培養後、細胞をFluo4−AM不含生理食塩水バッファーで洗い流した。各ウェルに生理食塩水バッファー50μLを添加した。蛍光検出器を備えたZeiss Axiovert 200 Mot顕微鏡により、倍率20倍でカルシウム動員を記録した。60秒間1秒毎に同じ視野の画像を1枚撮影した。記録開始から10秒後、生理食塩水バッファーに溶解した2倍濃度のリガンド50μLを注入した。試験されたリガンドは、イソ吉草酸(図4)、酪酸(図5)、ペラルゴン酸(図6)であった。
図1:RCC356の配列。RCC356の全長のコード領域のcDNA配列および翻訳されたアミノ酸配列が示されている。前記配列は、米国特許第6,790,631号において過去に開示されている。 図2:Hek293T内で過剰発現させたRCC356上で試験された80のリガンドでのスクリーニング結果。結果はホルスコリンの活性化の百分率で表されている。 図3:RCC356を過剰発現しているHek293Tを受容体の様々なアゴニストで処理した後に得られた濃度反応曲線。 図3:RCC356を過剰発現しているHek293Tを受容体の様々なアゴニストで処理した後に得られた濃度反応曲線。 図3:RCC356を過剰発現しているHek293Tを受容体の様々なアゴニストで処理した後に得られた濃度反応曲線。 図3:RCC356を過剰発現しているHek293Tを受容体の様々なアゴニストで処理した後に得られた濃度反応曲線。 図4A:fluo4−AM、カルシウムトレーサーを添加したRCC356発現細胞に対して250μMのイソ吉草酸を注入した際に誘発された蛍光変化の記録。細胞を倍率20Xで観察した。時間スケールは秒で表している。記録開始後10秒目にイソ吉草酸を注入した。B:蛍光測定 グラフ上の各トレースは、観察視野の1個の細胞において測定された蛍光強度を示している。10秒目に引かれた縦棒は注入時間を示している。 図5A:fluo4−AM、カルシウムトレーサーを添加したRCC356発現細胞に対して250μMの酪酸を注入した際に誘発された蛍光変化の記録。細胞を倍率20Xで観察した。時間スケールは秒で表している。記録開始後10秒目に酪酸を注入した。B:蛍光測定 グラフ上の各トレースは、観察視野の1個の細胞において測定された蛍光強度を示している。10秒目に引かれた縦棒は注入時間を示している。 図6A:fluo4−AM、カルシウムトレーサーを添加したRCC356発現細胞に対して500μMのペラルゴン酸を注入した際に誘発された蛍光変化の記録。細胞を倍率20Xで観察した。時間スケールは秒で表している。記録開始後10秒目にペラルゴン酸を注入した。B:蛍光測定 グラフ上の各トレースは、観察視野の1個の細胞において測定された蛍光強度を示している。10秒目に引かれた縦棒は注入時間を示している。

Claims (80)

  1. RCC356に結合する薬剤の同定方法であって、
    a)イソ吉草酸とRCC356ポリペプチドとの結合を可能にする条件下で、候補調節因子の存在下または非存在下において前記RCC356ポリペプチドと前記イソ吉草酸とが接触すること、および
    b)前記候補調節因子の非存在下における結合と比較して、前記候補調節因子の存在下における結合の低下によって、RCC356の機能を調節する薬剤としての前記候補調節因子が同定される、前記RCC356ポリペプチドと前記イソ吉草酸との結合を測定することを含む方法。
  2. サンプル中でRCC356に結合する薬剤のサンプル中での存在を検出する方法であって、a)前記イソ吉草酸と前記RCC356ポリペプチドとの結合を可能にする条件下で、前記サンプルの存在下または非存在下においてRCC356ポリペプチドとイソ吉草酸とが接触すること、および
    b)前記候補調節因子の非存在下において結合と比較して、前記サンプルの存在下において結合の低下が、前記サンプル中でRCC356の機能を調節する薬剤の存在を示す、前記RCC356ポリペプチドと前記イソ吉草酸との結合を測定することを含む方法。
  3. RCC356の機能を調節する薬剤の同定方法であって、
    a)候補調節因子の存在下または非存在下において、すなわちイソ吉草酸により前記RCC356ポリペプチドを活性化させる条件下で、RCC356ポリペプチドとイソ吉草酸とが接触すること、
    および
    b)前記候補調節因子の非存在下における活性と比較して、前記候補調節因子の存在下における活性の変化によって、RCC356の機能を調節する薬剤として前記候補調節因子が同定される、前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定することを含む方法。
  4. RCC356の機能を調節する薬剤の同定方法であって、
    a)RCC356ポリペプチドと候補調節因子とが接触すること、
    b)前記候補調節因子の存在下における、前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定すること、
    および
    c)前記候補調節因子の存在下で測定された活性が、EC50の前記イソ吉草酸による誘導量の少なくとも10%である場合、前記候補調節因子がRCC356の機能を調節する薬剤として同定される、前記RCC356ポリペプチドをEC50のイソ吉草酸と接触させているサンプル中において測定する前記活性と、前記候補調節因子の存在下で測定する前記活性とを比較することを含む方法。
  5. サンプル中においてRCC356の機能を調節する薬剤の存在を検出する方法であって、
    a)前記サンプルの存在下、または非存在下において、RCC356ポリペプチドとイソ吉草酸とが接触すること、
    b)前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定すること、
    および
    c)前記サンプルの非存在下における活性と比較して、前記サンプルの存在下における前記活性の変化が、前記サンプル中においてRCC356の機能を調節する薬剤の存在を示唆する、前記サンプルを含まない、RCC356およびイソ吉草酸を含む反応液中において測定された前記活性と、RCC356、イソ吉草酸、前記サンプルを含む反応液中において測定された前記活性を比較することを含む方法。
  6. RCC356の機能を調節する薬剤の存在を検出する方法であって、
    a)RCC356ポリペプチドと前記サンプルとが接触すること、
    b)前記サンプルの存在下において、前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定すること、
    および
    c)前記サンプルの存在下において測定された前記活性が、EC50の前記イソ吉草酸による誘導量の少なくとも10%である場合、RCC356の機能を調節する薬剤が検出される、前記RCC356ポリペプチドをEC50のイソ吉草酸と接触させている反応液中において測定された前記活性と、前記サンプルの存在下で測定された前記活性とを比較することを含む方法。
  7. 前記イソ吉草酸が、検出可能なように標識された、請求項1または2に記載の方法。
  8. 前記酸が、ラジオアイソトープ、フルオロフォア、蛍光クエンチャー、NMRで検出可能な成分からなる群から選択される成分によって検出可能なように標識されている、請求項7に記載の方法。
  9. 前記接触が、前記RCC356ポリペプチドを発現する細胞内、または細胞上で行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 合成リポソーム内、または前記リポソーム上で前記接触が行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  11. 前記接触が、RCC356ポリペプチドを含むウイルス誘発性発芽膜内、または前記膜上で行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  12. 前記方法が、前記RCC356ポリペプチドを発現する細胞からの膜画分を用いて行われる、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  13. 前記方法が、プロテインチップ上で行われる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 前記測定が、ラベル置換、表面プラズモン共鳴、蛍光共鳴エネルギー転移、蛍光クエンチング、蛍光偏光から選択される方法を利用して行われる、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 前記薬剤が、ペプチド、ポリペプチド、抗体またはその抗原結合断片、脂質、糖質、核酸、におい物質およびフェロモンを含有するが、これらに限定されることのない有機低分子からなる群から選択される、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 前記RCC356ポリペプチドのシグナル活性を測定する前記段階が、セカンドメッセンジャーレベルにおける変化を検出することからなる、請求項3〜6および9〜15のいずれかに記載の方法。
  17. シグナル活性を測定する該段階が、グアニンヌクレオチド結合/共役または交換、アデニル酸シクラーゼ活性、cAMP、プロテインキナーゼC活性、プロテインキナーゼA活性、 ホスファチジルイノシトールの分解、ジアシルグリセロール、イノシトール三リン酸、細胞内カルシウム、カルシウム流束、アラキドン酸、MAPキナーゼ活性、チロシンキナーゼ活性、メラニンアッセイ、受容体内在化アッセイまたはリポーター遺伝子発現を測定することからなる、請求項3〜6および9〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 前記シグナル活性を蛍光または発光アッセイによって測定する、請求項17に記載の方法。
  19. 細胞内におけるRCC356ポリペプチドの活性の調節方法であって、RCC356の活性を調節できるように、RCC356ポリペプチドの活性を調節するイソ吉草酸を前記細胞内に輸送する段階を含む方法。
  20. 前記方法がハイスループットスクリーニングである、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
  21. 前記薬剤が化合物ライブラリーまたは動物器官の抽出物の一部である、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
  22. 請求項1〜21のいずれかに記載の方法によって同定または検出されるイソ吉草酸関連薬剤。
  23. 請求項22の薬剤を含む組成物。
  24. 医薬品の調製のための、請求項22または23に記載の薬剤または組成物の使用。
  25. におい物質またはにおい物質のアンタゴニストの調製のための、請求項22または23に記載の薬剤または組成物の使用。
  26. 前記疾患または障害が好ましくは癌または腫瘍の転移からなる群から選択される、RCC356関連疾患またはRCC356関連障害の治療用医薬品の調製のための、請求項24に記載の薬剤または組成物の使用。
  27. 前記疾患または障害が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌からなる群から選択される、請求項26に記載の薬剤または組成の使用。
  28. 前記疾患または障害が好ましくはCNS障害または疾患である、RCC356関連の疾患またはRCC356関連の障害の治療用医薬品の調製のための、請求項24に記載の薬剤または組成の使用。
  29. 前記CNS疾患または障害がてんかんである、請求項28に記載の薬剤または組成物の使用。
  30. 分離されたRCC356ポリペプチドおよびイソ吉草酸を含む組成物。
  31. 分離されたRCC356ポリペプチドおよび該酸を含む組成の製造用のイソ吉草酸の使用。
  32. RCC356シグナル伝達を調整する薬剤のスクリーニング用キットの製造、RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患の診断または予後診断用キットの製造、もしくはにおい物質またはにおい物質のアンタゴニストのスクリーニング用キットの製造におけるRCC356との併用における、イソ吉草酸の使用。
  33. RCC356のリガンドとしてのイソ吉草酸の使用。
  34. 医薬品調製のためのイソ吉草酸の使用。
  35. 前記疾患または障害が好ましくは癌または腫瘍の転移からなる群から選択される、RCC356関連疾患またはRCC356関連障害の治療用に前記医薬品が使用される、請求項34に記載の使用。
  36. 前記疾患または障害が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌である、請求項35に記載の使用。
  37. IVA/RCC356複合体またはその断片を認識する抗体。
  38. CNS障害または疾患の治療用医薬品の調製のための、RCC356断片、RCC356を認識する抗体、またはIVA/RCC356複合体を認識する抗体の使用。
  39. 前記CNS疾患または障害がてんかんである、請求項38に記載の使用。
  40. イソ吉草酸関連の嗅覚異常の治療用医薬品の調製のための、RCC356断片、RCC356を認識する抗体、またはIVA/RCC356複合体を認識する抗体の使用。
  41. 癌または腫瘍の転移の治療用医薬品の調製のための、IVA/RCC356複合体を認識する抗体の使用。
  42. RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法であって、
    a)組織サンプルとイソ吉草酸とが接触すること、
    b)前記酸の前記組織サンプルへの結合を検出すること、
    および、
    c)前記標準品と比較した結合の違いが、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に用いられる、段階(b)で検出される結合と標準品とを比較することを含む方法。
  43. RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法であって、
    a)組織サンプルとイソ吉草酸に特異的な抗体またはIVA/RCC356複合体に対する特異的な抗体とが接触すること、
    b)前記抗体の前記組織サンプルへの結合を検出すること、
    および、
    c)前記標準品と比較して結合の違いが、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に用いられる、段階(b)で検出される結合と標準品とを比較することを含む方法。
  44. RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法であって、
    a)組織サンプルとRCC356ポリペプチドに対して特異的な抗体およびイソ吉草酸に対して特異的な抗体またはIVA/RCC356複合体に対する特異的な抗体が接触すること、
    b)前記抗体の前記組織サンプルへの結合を検出すること、
    および、
    c)前記標準品と比較していずれか一方または両方の抗体の結合の違いが、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に用いられる、段階(b)で検出される結合と標準品とを比較することを含む方法。
  45. RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断の方法であって、
    a)組織サンプルのイソ吉草酸含量を定量すること、
    および
    b)前記標準品と比較してイソ吉草酸の前記量の違いが、RCC356の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断に用いられる、段階(a)で定量される前記酸の量と標準品とを比較することを含む方法。
  46. 前記疾患または障害が、癌または腫瘍の転移からなる群から選択されるRCC356関連疾患またはRCC356関連障害である、請求項42〜45のいずれかに記載の方法。
  47. 前記疾患または障害が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌からなる群から選択される、請求項46に記載の方法。
  48. IVA/RCC356複合体に特異的な抗体が使用され、疾患または障害が、イソ吉草酸関連の嗅覚異常またはCNS障害または疾患である、請求項42〜45のいずれかに記載の方法。
  49. 前記CNS疾患または障害がてんかんである、請求項48に記載の方法。
  50. イソ吉草酸関連の嗅覚異常またはCNS関連障害または疾患の診断方法または予後診断方法であって、
    a)組織サンプルのRCC356含量を定量すること、
    および
    b)標準品と比較してRCC356の量における違いが、嗅覚異常の診断または予後診断、もしくはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断に用いられる、段階(a)で定量される受容体の量と標準品とを比較することを含む方法。
  51. 該CNS関連疾患または障害がてんかんである、請求項50に記載の方法。
  52. RCC356抗体、IVA/RCC356抗体、またはイソ吉草酸を使用して定量が行われる、請求項50または51に記載の方法。
  53. イソ吉草酸関連の嗅覚異常またはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断の方法であって、
    a)RCC356をコードするmRNAの定量、および/または組織サンプルにおける野生型RCC356の配列と比較した、前記RCC356配列の正確性を検証すること、
    および
    b)標準品と比較して量またはRCC356配列における違いが、イソ吉草酸関連の嗅覚異常の診断または予後診断、もしくはCNS関連障害または疾患の診断または予後診断に用いられる、段階(a)で定量または決定された前記核酸の量および/または正確性の標準品とを比較することを含む方法。
  54. CNS関連疾患または障害がてんかんである、請求項53に記載の方法。
  55. 癌または腫瘍の転移を診断または予後診断する方法であって、
    a)IVA/RCC356抗体を使用した組織サンプルのRCC356含量を定量すること、
    および
    b)標準品と比較したRCC356の量の違いが、嗅覚異常の診断または予後診断、あるいは癌もしくは腫瘍の転移の診断または予後診断に用いられる、段階(a)で定量された前記受容体の量と標準品とを比較することを含む方法。
  56. 分離されたRCC356ポリペプチド、イソ吉草酸、そしてこれらのパッケージング材料を含むキット。
  57. RCC356ポリペプチドをコードする分離されたポリヌクレオチド、イソ吉草酸、そしてこれらのパッケージング材料を含むキット。
  58. RCC356ポリペプチドを発現する細胞またはその膜、イソ吉草酸、そしてこれらのパッケージング材料を含むキット。
  59. 前記RCC356をコードするポリヌクレオチドを前記細胞に形質転換させる、請求項58に記載の該キット。
  60. RCC356のシグナル伝達活性を調節する薬剤のスクリーニング用の、請求項56〜59のいずれかに記載のキットの使用。
  61. におい物質または抗におい物質剤のスクリーニング用の、請求項56〜59のいずれかに記載のキットの使用。
  62. 抗腫瘍化合物またはCNS障害または疾患の治療用化合物のスクリーニング用の、請求項請求項56〜59のいずれかに記載のキットの使用。
  63. 前記癌が、前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌からなる群から選択され、前記CNS障害または疾患がてんかんである、請求項62に記載のキットの使用。
  64. RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断用のイソ吉草酸を含むキットの使用。
  65. RCC356シグナル伝達の異常調節を特徴とする疾患または障害の診断または予後診断用のイソ吉草酸抗体を含むキットの使用。
  66. 前記疾患または障害が癌である、請求項64または65記載の使用。
  67. CNS関連疾患の診断または予後診断用のRCC356を含むキットの使用。
  68. イソ吉草酸関連の嗅覚異常の診断または予後診断用のRCC356を含むキットの使用。
  69. 癌の進行および/または治療に及ぼすイソ吉草酸の効果を研究するためのRCC356またはそのオルソログのトランスジェニック動物の使用。
  70. 前立腺癌、子宮頸癌、子宮癌、直腸癌、胃癌、腎臓癌の進行および/または治療が研究される、請求項69に記載の使用。
  71. CNS障害または疾患の進行および/またはイソ吉草酸関連の嗅覚異常の治療を研究するためのRCC356またはそのオルソログのトランスジェニック動物の使用。
  72. てんかんの進行および/または治療が研究される、請求項71に記載の使用。
  73. 癌の進行および/または治療を研究するための、イソ吉草酸を過剰生産するトランスジェニック動物の使用。
  74. イソ吉草酸関連の嗅覚異常の進行に及ぼすRCC356の効果を研究するためのRCC356ノックアウトの使用。
  75. CNS障害または疾患の進行に及ぼすRCC356の効果を研究するためのRCC356ノックアウトの使用。
  76. 請求項1〜21、42〜55のいずれかに記載の方法、請求項22に記載の薬剤、請求項24〜29、31〜36、38〜41、60〜75のいずれかに記載の使用法、請求項37に記載の抗体、請求項23または30に記載の組成物、もしくは図1bに示されているRCC356ポリペプチドに特異的に結合して、そのシグナル伝達活性を活性化させる、イソ吉草酸等価体が使用され、参照され、適用され、もしくは組み込まれる、請求項56〜59のいずれかに記載のキット。
  77. 前記等価体が、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、ヘキサン酸、 イソヘキサン酸、 ヘプタン酸、 イソヘプタン酸、オクタン酸、 イソオクタン酸、ノナン酸、 イソノナン酸、バルプロ酸、イソバレルアミド、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリル酸、ヘキサヒドロ安息香酸、ペラルゴン酸、5−ヘキセン酸からなる群から選択される、請求項76に記載の方法、薬剤、使用、組成物、またはキット。
  78. 前記等価体が、酪酸、吉草酸、カプロン酸、オエナンチル酸、カプリル酸、ヘキサヒドロ安息香酸、ペラルゴン酸、5−ヘキセン酸からなる群から選択される、請求項76に記載の方法、薬剤、使用、組成物、またはキット。
  79. 請求項1〜21、42〜55のいずれかに記載の方法、請求項24〜29、31〜36、38〜41、60〜75のいずれかに記載の使用法、請求項23または30記載の組成、請求項56〜59のいずれかに記載のキット、もしくはRCC356ポリペプチドが、図1bに示されるポリペプチドと少なくとも20%の同一性、または25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、さらに100%といったより高い同一性を有するが、該RCC356ポリペプチドと同等の活性を有する、請求項76〜78のいずれかに記載の方法、使用、組成物、またはキット。
  80. 前記RCC356ポリペプチドがキメラまたはその活性フラグメントである、請求項79に記載の方法、使用、組成物、またはキット。
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