本発明は、甘味、うま味および苦味を、Gタンパク質共役味覚受容体を通して調節する目的で、味覚細胞中のRGS21タンパク質の活性を調節する化合物を同定するための方法を提供する。具体的には、本発明は、RGS21遺伝子発現、RGS21タンパク質発現および/またはRGS21のGαタンパク質との相互作用を特異的に調節し、味覚細胞中において、RGS21のGAP活性等のRGS21の活性に対する調節効果をもたらし、それによって、甘味感受性の味覚細胞のシグナル伝達を増強する化合物のライブラリーをスクリーニングするための方法および/または生化学的アッセイを提供する。
本明細書で使用する場合、化合物のライブラリーは、生理活性作用物質であり、例として、天然に存在する化合物、生体分子、タンパク質、ペプチド、オリゴペプチド、多糖、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである。代わりとしては、化合物は、小型分子である。本明細書で使用する場合、「味蕾細胞」または「味覚細胞」は互換的に使用され、舌の味蕾、例えば、葉状、茸状および有郭の細胞を形成する群に組織化される神経上皮細胞を包含する(Roperら,1989,Ann.Rev.Neurosci.12:329−353)。また、味覚細胞は、口蓋、ならびに食道、腸および胃等、その他の組織においても見い出される。
本明細書で使用する場合、「調節の」、「調節」、「調節物質」、「阻害性の」、「阻害する」、「阻害剤」、「活性化する」および「活性化剤」は、それらの種々の文法上の形態を包含し、RGS21タンパク質を調節、阻害および/または活性化する分子、例えば、リガンド、アゴニスト、アンタゴニストならびにRGS21遺伝子もしくはRGS21タンパク質に影響を及ぼすそれらの相同体および模倣物質、あるいは生物学的に活性な部分を含むそれらの断片を指すために互換的に使用される。調節物質として、例えば、RGS21遺伝子もしくはRGS21タンパク質、または生物学的に活性な部分を含むそれらの断片と、Gαタンパク質およびGPCRシグナル伝達におけるその他のエフェクターとの相互作用を変化させる物質;ならびにRGS21遺伝子またはRGS21タンパク質を、停止させる、不活性化するおよび脱感作させる物質が挙げられる。調節物質は、変化した活性を有するRGS21遺伝子またはRGS21タンパク質の遺伝子改変体、ならびに天然に存在するおよび合成のリガンド、アンタゴニスト、アゴニスト、小型化学分子等を包含することができる。「調節効果」は、阻害の上方制御、誘発、刺激、増強、減弱および/または軽減、ならびに阻害および/または下方制御もしくは抑制を指す。阻害剤は、例えば、RGS21遺伝子またはタンパク質と結合して、部分的または全体的に刺激を遮断し、減少させ、阻止し、活性化を遅延し、不活性化し、脱感作し、または下方制御する物質、例えば、アンタゴニストである。活性化剤は、例えば、RGS21遺伝子またはRGS21タンパク質と結合して、それを刺激し、増加させ、開放し、活性化し、促進し、その活性化を増強し、感作し、または上方制御する物質、例えば、アゴニストである。
本明細書で使用する場合、「RGS」または「RGSタンパク質」という用語は、現在知られているかまたは今後記載されるGタンパク質シグナル伝達調節因子タンパク質を包含し、これらは、Gαiクラスのタンパク質またはその他のGαタンパク質を阻害するかまたはそれに結合することができる。そのようなRGSタンパク質として、これらに限定されないが、GAIP、RGSz1、RGS1、RGS2、RGS3、RGS4、RGS5、RGS6、RGS7、RGS8、RGS9、RGS10、RGS11、RGS13、RGS14、RGS16、RGS17、RGS21、D−AKAP2、p115RhoGEF、PDZ−RhoGEF、bRET−RGS、AxinおよびmCONDUCTIN、ならびに任意の現在知られているかまたは今後記載されるアイソフォームまたは相同体が挙げられる。さらに、本明細書で使用する場合、「RGSタンパク質」という用語は、RGSボックスドメイン、非RGSボックスドメイン、または1つもしくは複数の変異、欠失または挿入を有するかまたは有しない、任意のその他の機能性ドメイン/モチーフをはじめとする、RGSコアドメインを含有する、現在知られているかまたは今後記載されるタンパク質も包含する。1つの好ましい実施形態では、RGSタンパク質は、RGS21タンパク質、そのアイソフォームまたは相同体を指す。さらに別の好ましい実施形態では、RGS21タンパク質のコアドメインは、野生型RGS21タンパク質のコアドメインに対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上相同である。本明細書で使用する場合、RGS21タンパク質のコアドメインは、そのタンパク質の生物学的に活性な部分を含む。
本明細書で使用する場合、RGSタンパク質、好ましくは、RGS21タンパク質の「生物学的に活性な部分」は、そのタンパク質のアミノ酸配列に対して十分に相同な、またはそのタンパク質のアミノ酸配列に由来するアミノ酸配列を含むタンパク質の断片を包含し、この部分は、完全長のタンパク質より少ないアミノ酸を包含し、完全長のタンパク質の少なくとも1つの活性を示す。典型的には、生物学的に活性な部分は、そのタンパク質の少なくとも1つの活性を有するドメインまたはモチーフを含む。タンパク質の生物学的に活性な部分は、長さが、例えば、10、25、50、100または200個以上のアミノ酸であるポリペプチドであることができる。一実施形態では、RGS21タンパク質の生物学的に活性な部分を、RGS21のGαタンパク質との相互作用を調節する薬剤を開発するための標的として使用することができる。
本発明は、これらに限定されないが、細菌、酵母、昆虫および哺乳動物の細胞をはじめとする、宿主細胞中で、RGS21タンパク質ならびに対応するおよび/または適切なGαタンパク質を組換え発現させて、精製するための方法を提供する。1つの好ましい実施形態では、この方法は、RGS21タンパク質および適切なGαiタンパク質のそれぞれをコードするcDNAをクローン化および単離することから開始する。次いで、RGS21タンパク質および適切なGαiタンパク質をコードする、単離したcDNAのそれぞれを、発現ベクター内にクローン化し、さらに、組換えのRGS21タンパク質およびGαiタンパク質を産生させるために、宿主細胞中に形質転換して発現させる。
本明細書で使用する場合、「組換えの」は、合成された、またはそうでなければin vitroで操作されたポリヌクレオチド(例えば、「組換えポリヌクレオチド」)、細胞もしくはその他の生物学的な系中で遺伝子産物を産生するために組換えのポリヌクレオチドを使用する方法、または組換えのポリヌクレオチドがコードするポリペプチド(「組換えタンパク質」)に適用される。また、「組換えの」は、異なる供給源からの、種々のコード領域もしくはドメインまたはプロモーター配列を有する核酸を、発現用(例えば、本発明の転座ドメインおよび本発明のプライマーを使用して増幅した核酸配列を含む融合タンパク質の誘導性または構成的発現用)の、発現カセットまたはベクター内に連結することも含む。
本明細書で使用する場合、「Gα」または「Gαタンパク質」という用語は、現在知られているかまたは今後記載されるGαiクラスの全てのメンバーを包含し、メンバーとして、これらに限定されないが、Gαi1−3、Gαz、Gαo、Gαs、Gαolf、Gαt、Gαq、Gα11−14およびGα16が挙げられる。本明細書で使用する場合、「対応するおよび/または適切なGαタンパク質」は、使用する細胞、スクリーニングアッセイまたは系において、対象とするRGSタンパク質、例えば、RGS21タンパク質に接触することができるGαタンパク質を意味する。特定の実施形態では、Gαタンパク質は、1つまたは複数の変異、欠失または挿入を含有する場合がある。そのような実施形態では、Gαタンパク質は、野生型Gαタンパク質に対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%以上相同である。本明細書で使用する場合、「対応するおよび/または適切なGαタンパク質」という用語は、使用する細胞、スクリーニングアッセイまたは系において、RGSタンパク質、例えば、RGS21タンパク質に接触することができるGαタンパク質を意味する。より好ましくは、適切なGαタンパク質は、RGS21に接触することができる。また、対応するGαタンパク質は、使用する細胞、スクリーニングアッセイまたは系において、GPCRに共役し、および/またはGTPに結合し、その結果、Gαタンパク質は、GPCRおよび/またはGTPに接触することができるか、GPCRに結合したアゴニストに応答して、シグナルを伝達することができる。本明細書で使用する場合、「GPCRに結合したアゴニスト」という用語は、GPCRに結合して応答を惹起する、任意の分子または薬剤を包含する。
本明細書で使用する場合、「cDNA」という用語は、細胞中に存在するmRNA分子に相補的であるDNA、または逆転写酵素等の酵素を用いてcDNAに変換することができる、生物体のmRNAに相補的であるDNAを包含する。1つの好ましい実施形態では、RGS21をコードするcDNAを、ヒト味蕾細胞のmRNAから、当技術分野で周知のRT−PCR法を使用して単離する。
本明細書では、「ポリヌクレオチド」、「核酸/ヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は、互換的に使用され、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらの類似体のいずれかの、任意の長さのヌクレオチドの高分子の形態を包含する。ポリヌクレオチドは、任意の三次元構造を有することができ、既知または未知の任意の機能を果たすことができる。以下は、ポリヌクレオチドの非限定的な例である:遺伝子または遺伝子の断片、エクソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボゾームRNA、リボザイム、DNA、cDNA、ゲノムDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐したポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離したDNA、任意の配列の単離したRNA、核酸プローブおよびプライマー。ポリヌクレオチドは、天然に存在するもの、合成、組換え、またはそれらの任意の組合せであってよい。ポリヌクレオチドは、改変されたヌクレオチド、例として、メチル化されたヌクレオチドおよびヌクレオチドの類似体を含んでよい。ヌクレオチド構造に改変を存在させる場合には、改変を起こすのは、高分子に組み立てる前でも、後でもよい。ヌクレオチド配列を、非ヌクレオチドの成分が中断する場合がある。ポリヌクレオチドは、重合後に、標識成分の結合によって等、さらに改変することができる。この用語はまた、二本鎖および一本鎖の両方の分子も包含する。別段の記載または要求がない限り、本発明のいずれの実施形態でも、ポリヌクレオチドは、二本鎖の形態も、二本鎖の形態を作り上げることが知られているかまたは予測される、2本の相補的な一本鎖の形態のそれぞれも包含する。
本明細書で使用する場合、「ポリヌクレオチド配列」という用語は、ポリヌクレオチド分子のアルファベット表示である。ポリヌクレオチドは、アデニン(A);シトシン(C);グアニン(G);チミン(T);およびポリヌクレオチドがRNAである場合には、チミンに代わるウラシル(U)の4つのヌクレオチド塩基の特異的な配列から構成される。このアルファベット表示は、コンピュータ中のデータベースに入力して、例えば機能ゲノム解析および相同性検索等のバイオインフォマティクスの適用に向けて使用することができる。
本明細書で使用する場合、「単離したポリヌクレオチド/cDNA分子」という用語は、当該ポリヌクレオチドの天然の供給源中に存在するその他のポリヌクレオチド分子から分離したポリヌクレオチド分子を包含する。例えば、ゲノムDNAに関しては、「単離した」という用語は、ゲノムDNAが天然では結合している染色体から分離したポリヌクレオチド分子を包含する。好ましくは、「単離した」ポリヌクレオチドは、当該ポリヌクレオチドが由来する生物体のゲノムDNA中で、当該ポリヌクレオチドに天然では隣接する配列(すなわち、対象とするポリヌクレオチドの5’末端および3’末端に位置する配列)を有しない。例えば、種々の実施形態では、本発明の単離したポリヌクレオチド分子、または本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド分子は、当該ポリヌクレオチドが由来する細胞のゲノムDNA中で、当該ポリヌクレオチド分子に天然では隣接する、約5kb、4kb、3kb、2kb、1kb、0.5kbまたは0.1kb未満のヌクレオチド配列を含有することができる。さらに、cDNA分子等の「単離した」ポリヌクレオチド分子は、組換え技術によって産生された場合には、その他の細胞物質もしくは培地を実質的に有しないものであることができ、または化学的に合成された場合には、化学的前駆体およびその他の化学物質を実質的に有しないものであることができる。
本明細書で使用する場合、「遺伝子」は、後に転写および翻訳される特定のポリペプチドまたはタンパク質をコードすることができる、少なくとも1つのオープンリーディングフレームを含有するポリヌクレオチドを包含する。また、本明細書に記載する任意のポリヌクレオチド配列を使用して、当該ポリペプチドが関連する遺伝子のより大きな断片または全長コード配列を同定することができる。より大きな断片の配列を単離する方法は、当業者には既知である。本明細書で使用する場合、「天然に存在する」ポリヌクレオチド分子として、例えば、天然に存在する(例えば、天然のタンパク質をコードする)ヌクレオチド配列を有するRNA分子またはDNA分子が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「ポリペプチド」または「タンパク質」という用語は、互換的に使用され、2つ以上のサブユニットのアミノ酸、アミノ酸類似体またはペプチド模倣物質の化合物を包含する。サブユニットは、ペプチド結合によって連結することができる。別の実施形態では、サブユニットは、その他の結合、例えば、エステル、エーテル等によって結合することができる。本明細書で使用する場合、「アミノ酸」という用語は、グリシンおよびDまたはLの両方の光学異性体をはじめとする、天然および/または非天然あるいは合成のいずれかのアミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣物質を包含する。3つ以上のアミノ酸のペプチドは、通例、オリゴペプチドと呼ばれる。4つ以上のアミノ酸のペプチド鎖は、ポリペプチドまたはタンパク質と呼ばれる。
好ましい実施形態では、本明細書で使用するRGSタンパク質は、味覚細胞および/または宿主細胞中で、天然におよび/または組換えによって発現するRGSタンパク質を指す。より好ましくは、RGS21タンパク質またはRGS21ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、味覚細胞および/または宿主細胞中で、天然におよび/または組換えによって発現する。本明細書で使用する場合、「発現する」または「発現」は、ポリヌクレオチドがRNAに転写される過程および/またはポリペプチドに翻訳される過程を包含する。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、適切な真核細胞の宿主を選択する場合には、RNAのスプライシングを包含してよい。発現のために要求される調節エレメントは、RNAポリメラーゼに結合するプロモーター配列、およびリボゾーム結合のための転写開始配列を包含する。例えば、細菌の発現ベクターは、lacプロモーター等のプロモーター、ならびに転写開始のためのシャイン・ダルガノ配列および開始コドンAUGを包含する。同様に、真核細胞の発現ベクターは、RNAポリメラーゼIIのための異種または同種のプロモーター、下流のポリアデニル化シグナル、開始コドンAUG、およびリボゾームの脱離のための終止コドンを包含する。そのようなベクターは、市販品として入手しても、または当技術分野で周知の方法、例えば、一般的なベクターを構築するための以下に記載する方法に記載されている配列によって組み立ててもよい。本明細書で使用する場合、「ベクター」という用語は、挿入したポリヌクレオチドを、宿主細胞内および/または宿主細胞間に移入する、自己複製の核酸分子を包含する。この用語は、主として核酸分子を細胞内へ挿入するために機能するベクター、主として核酸の複製のために機能する複製ベクター、ならびにDNAまたはRNAの転写および/または翻訳のために機能する発現ベクターを包含することを意図する。複数の上記機能をもたらすベクターも意図される。
本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は、ベクターのための、あるいは外因性のポリヌクレオチドおよび/またはポリペプチドの組み込みのための、レシピエントとなることができるかまたはレシピエントである、任意の個々の細胞または細胞培養物を包含することを意図する。また、単一の細胞の子孫も包含することを意図する。子孫は、天然の、偶然のまたは意図的な変異によって、元々の親細胞とは、(形態において、またはゲノムDNAもしくは全DNAの相補性において)必ずしも完全に同一でなくてもよい。細胞は、原核生物であっても、または真核生物であってもよく、細胞として、これらに限定されないが、細菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、動物細胞および、これらに限定されないが、マウス、ラット、サルまたはヒトの細胞をはじめとする、哺乳動物細胞が挙げられる。また、本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は、遺伝子改変細胞も包含する。「遺伝子改変細胞」という用語は、外来性または外因性の遺伝子またはポリヌクレオチド配列を含有および/または発現する細胞を包含し、それによって、細胞または細胞の子孫の遺伝子型または表現型が改変される。また、「遺伝子改変した」は、細胞内に導入されている遺伝子またはポリヌクレオチド配列を、含有または発現する細胞も包含する。例えば、この実施形態では、遺伝子改変細胞には、細胞にとって内因性でもある遺伝子がすでに導入されている。また、「遺伝子改変した」という用語は、細胞の内因性のヌクレオチドに対する、任意の付加、欠失または破壊も包含する。本明細書で使用する場合、「宿主細胞」は味覚細胞も包含する。1つの好ましい実施形態では、味覚細胞は、ヒトの味覚細胞である。好ましい実施形態では、味覚細胞は、ヒトの味蕾細胞に由来する。別の好ましい実施形態では、味覚細胞は、STC−1細胞、NCI−H716細胞、またはHuTu−80細胞等の味覚細胞モデルである。
より好ましくは、本明細書で使用するRGS21タンパク質は、RGS21タンパク質をコードするポリヌクレオチドに、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるRGSタンパク質を包含する。本明細書で使用する場合、「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドが反応して、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合を介して安定化した複合体を形成する反応を包含する。水素結合は、ワトソン・クリック塩基対、ホーグスタイン(Hoogstein)結合、または任意のその他の配列特異的な様式によって生じることができる。複合体は、二本鎖構造を形成する2本の鎖、複数鎖の複合体を形成する3本以上の鎖、単一の自己ハイブリダイズする鎖、またはこれらの任意の組合せを含むことができる。ハイブリダイゼーション反応は、PCR反応の開始、またはポリヌクレオチドのリボザイムによる酵素的な切断等の、より広範な過程におけるステップを構成する場合がある。
ハイブリダイゼーション反応は、異なるストリンジェントな条件下で行うことができる。本発明は、低いストリンジェントな条件、より好ましくはストリンジェントな条件、および最も好ましくは高いストリンジェントな条件の下で、本明細書に記載するRGS21タンパク質をコードするポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドを包含する。本明細書で使用する場合、「ストリンジェントな条件」という用語は、10×デンハルト溶液、6×SSC、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中、60℃での一晩のハイブリダイゼーションを指す。ブロットを、3×SSC/0.1%SDS、次に1×SSC/0.1%SDS、および最後に0.1×SSC/0.1%SDS中で、62℃で各回30分間順次洗浄する。また本明細書で使用する場合、好ましい実施形態では、「ストリンジェントな条件」という語句は、6×SSC溶液中、65℃でのハイブリダイゼーションも指す。別の実施形態では、「高いストリンジェントな条件」は、10×デンハルト溶液、6×SSC、0.5%SDSおよび100μg/ml変性サケ精子DNA中、65℃での一晩のハイブリダイゼーションを指す。ブロットを、3×SSC/0.1%SDS、次に1×SSC/0.1%SDS、および最後に0.1×SSC/0.1%SDS中で、65℃で各回30分間順次洗浄する。核酸のハイブリダイゼーションのための方法は、MeinkothおよびWahl,1984,Anal.Biochem.138:267−284;Current Protocols in Molecular Biology,第2章,Ausubelら編,Greene Publishing and Wiley−Interscience,New York,1995;ならびにTijssen,1993,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology:Hybridization with Nucleic Acid Probes,パートI,第2章,Elsevier,New York,1993に記載されている。したがって、本明細書で使用する核酸によってコードされるRGS21タンパク質は、配列番号2に記載するアミノ酸配列を有するRGS21タンパク質をコードする配列番号1に記載するポリヌクレオチド配列に対して、少なくとも60%相同であり、好ましくは75%相同であり、より好ましくは85%相同であり、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、96%、97%、98%、99%相同である核酸を包含する。
さらに、本明細書で使用するRGS21タンパク質はまた、キメラタンパク質または融合タンパク質であることができる。本明細書で使用する場合、「キメラタンパク質」または「融合タンパク質」は、第1のポリペプチドを含み、これは、第2のポリペプチドに動作可能に連結している。キメラタンパク質は、第1または2のポリペプチドに動作可能に連結している第3、4もしくは5、またはその他のポリペプチドを場合によっては含むことができる。キメラタンパク質は、2つ以上の異なるポリペプチドを含むことができる。キメラタンパク質は、同一のポリペプチドの複数のコピーを含むことができる。また、キメラタンパク質は、ポリペプチドのうちの1つまたは複数において、1つまたは複数の変異を含んでもよい。キメラタンパク質を作製するための方法は、当技術分野では周知である。本発明の一実施形態では、キメラタンパク質は、RGS21タンパク質のその他のRGSタンパク質とのキメラである。本発明のさらに別の実施形態では、キメラタンパク質は、Gαiタンパク質とその他のGαタンパク質とのキメラである。
本発明は、味覚シグナル伝達を調節するための、RGS21タンパク質と選択的かつ特異的に相互作用する複数の化合物をスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、RGS21タンパク質を宿主細胞から単離および精製するステップと;精製したRGS21タンパク質の試験化合物との結合をin vitroで決定するステップと;精製したRGS21タンパク質と結合する試験化合物の存在下で、精製したRGS21タンパク質の精製したGαタンパク質との結合を決定するステップと;さらに、精製したRGS21タンパク質と結合して、精製したRGS21タンパク質の精製したGαタンパク質との結合を調節する試験化合物の存在下で、精製したGαタンパク質に対するRGS21タンパク質の活性を決定するステップと;精製したRGS21タンパク質と結合して、精製したRGS21タンパク質の精製したGαタンパク質との結合を変化させ、RGS21タンパク質の活性をさらに調節する試験化合物を同定するステップとを含む。一実施形態では、RGS21タンパク質の活性は、RGS21のGAP活性である。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、宿主細胞中でRGS21遺伝子の発現を阻害する複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、RGS21遺伝子を選択的に発現する宿主細胞を提供するステップと;当該宿主細胞中で、試験化合物の非存在下および存在下、RGS21遺伝子の発現を測定するステップと;当該宿主細胞中でRGS21遺伝子の発現を阻害する化合物を同定するステップとを含む。RGS21遺伝子の発現は、(von Buchholtzら.,2004,Eur.J.Neurosci.,19,1535−1544)に記載されている逆転写酵素PCRを使用して測定することができる。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、宿主細胞中でRGS21タンパク質の発現を阻害する複数の化合物についてスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、RGS21タンパク質を選択的に発現する宿主細胞を提供するステップと;当該宿主細胞中で、試験化合物の非存在下および存在下、RGS21タンパク質の発現を測定するステップと;当該宿主細胞中でRGS21タンパク質の発現を阻害する化合物を同定するステップとを含む。
本明細書で使用する場合、「単離した」または「精製した」タンパク質、ポリヌクレオチドまたは分子は、それらが天然に存在する環境から取り出したこと、または細胞物質、例として、当該タンパク質のポリヌクレオチドもしくは分子が由来する細胞もしくは組織の供給源からの、その他の混入タンパク質を実質的に有しないこと、または化学合成された場合には、化学的前駆体もしくはその他の化学物質を実質的に有しないことを意味する。「細胞物質を実質的に有しない」という言葉は、それを単離または組換えにより産生または合成した細胞の細胞成分から分離した調製物を包含する。一実施形態では、「細胞物質を実質的に有しない」という言葉は、約30%(乾燥重量)未満のその他のタンパク質(本明細書では「混入タンパク質」とも呼ばれる)、より好ましくは約20%未満、さらにより好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満のその他のタンパク質を有する、対象とするタンパク質の調製物を包含する。タンパク質またはポリヌクレオチドを組換えによって産生する場合、これはまた、培地を実質的に有しないことが好ましく、すなわち、培地は、対象とするタンパク質の調製物の約20%未満、より好ましくは約10%未満、および最も好ましくは約5%未満の容量に相当する。
さらに、本発明は、RGS21のGAP活性を測定する方法を提供する。本明細書で使用する場合、「GAP」という用語は、GTPアーゼ活性化タンパク質を指す。RGS21タンパク質をはじめとする、全てのRGSタンパク質は、ヘテロ三量体Gタンパク質のGiおよび/またはGqのクラスのアルファサブユニットに関するGAPである。RGSのGAP活性を測定するための方法は、当技術分野では周知であり、RGSのGAP活性が、ホスファチジン酸(PA)、リゾホスファチジン酸(LPA)およびホスファチジルイノシトール3,4,5−三リン酸(PIP3)によって阻害されるが、その他のリン脂質、ホスホイノシチドおよびジアシルグリセロールによっては阻害されないことが報告されている。
1つの好ましい実施形態では、RGS21のGAP活性を、GTPの加水分解を測定することによってin vitroで測定する。本発明によれば、GTPに結合しているGαiタンパク質に精製したRGS21を添加すると、GTPの加水分解の速度が増加する。したがって、本発明は、GTPの加水分解をin vitroで測定するための方法を提供する。GTPの加水分解をin vitroで測定するための方法は、当技術分野では周知である。好ましい実施形態の1つでは、本発明は、膜結合性のGαタンパク質からの放射活性の喪失から、GTPの加水分解の尺度が得られるという条件で、放射活性のある結合GTPの加水分解を提供する。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、RGSドメインのGTPアーゼ促進活性についての蛍光に基づいた直接的なアッセイを提供する(Willardら,2005,Anal Biochem.15;340(2):341−51)。この方法は、リボゾーム結合型蛍光グアニン・ヌクレオチド類似体であるBODIPYFL−GTPを、分光学的なプローブとして使用して、内因性の、RGSタンパク質が触媒するGαによるヌクレオチドの加水分解を測定する(Willardら,2005,Anal Biochem.15;340(2):341−51)。本発明によれば、RGS21添加時のGαタンパク質からのBODIPY蛍光放出の喪失から、GTPの加水分解の尺度が得られる。さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、GαとRGS21との相互作用に関する時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(TR−FRET,time−resolved fluorescence resonance energy transfer)アッセイを提供する(Leifertら,Anal.Biochem.印刷中)。TR−FRETアッセイは、キナーゼ活性の定量化のための、高感度かつ強力な高スループットスクリーニング(HTS)の代表的な方法である(Moshinskyら,2003,J.Biomol.Scre.8(4):447−452)。本発明によれば、GαとRGS21との相互作用を阻害する調節化合物が、TR−FRETシグナルを減少させる。さらに、本発明によれば、GTPの加水分解を測定することによるRGS21のGAP活性を測定するための方法は、本明細書に提示する方法に限定されるわけではなく、GTPの加水分解を測定するための、その他の周知の方法もまた、RGS21のGAP活性によるGTPの加水分解を検出するために適用することができる。
さらに、本発明は、RGS21のGAP活性を調節する化合物のライブラリーについてスクリーニングする方法も提供する、すなわち、本発明は、RGS21タンパク質に関する調節物質を同定するための方法またはスクリーニングアッセイを提供する。RGS21タンパク質に関する調節物質は、(a)上記で定義したRGS21遺伝子もしくはRGS21タンパク質に結合する、または(b)RGS21タンパク質の、天然の基質のうちの1種もしくは複数(例えば、Gαi)との相互作用に対して調節効果を有する、または(c)上記で定義したRGS21遺伝子またはRGS21タンパク質の発現に対して阻害効果を有する部分(例えば、ペプチド、ペプチド模倣物質、ペプトイド、ポリヌクレオチド、小型分子またはその他の薬物)を含む、化合物または薬剤を包含する。そのようなアッセイは、典型的には、RGS21遺伝子またはRGS21タンパク質と1種または複数のアッセイ成分との間の反応を含む。その他の成分は、試験化合物自体であっても、または試験化合物とRGS21遺伝子またはRGS21タンパク質の結合パートナーとの組合せであってもよい。
本発明の試験化合物は、一般に、小型分子または生理活性作用物質のいずれかである。1つの好ましい実施形態では、試験化合物は、小型分子である。別の好ましい実施形態では、試験化合物は、生理活性作用物質である。生理活性作用物質として、これらに限定されないが、哺乳動物中で生理活性を有する天然に存在するかまたは合成の化合物または分子(「生体分子」)、ならびにタンパク質、ペプチド、オリゴペプチド、多糖、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが挙げられる。好ましくは、生理活性作用物質は、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは生体分子である。当業者であれば、試験化合物の性質が、RGS21遺伝子によってコードされるタンパク質または上記で定義したタンパク質の性質によって変化する場合があることを理解するであろう。本発明の試験化合物は、天然および/または合成の化合物の系統的なライブラリーをはじめとする、任意の入手可能な供給源から得ることができる。
一般に、タンパク質の阻害剤または活性化剤についてスクリーニングするための方法および組成物、ならびにin vitroおよび/またはin vivoでのタンパク質対タンパク質およびタンパク質対リガンドの結合研究は、当技術分野で既知であり、本発明の方法と組み合わせて使用することができる。一実施形態では、本発明は、RGS21タンパク質とGαタンパク質との結合を阻害することができる試験化合物について、試験化合物と、単離および/または精製したRGS21タンパク質と、単離および/または精製したGαタンパク質とを一緒にして組み合わせて、試験化合物の存在下で、RGS21タンパク質とGαタンパク質との結合が、生じるかおよび/または変化するかを決定することによってスクリーニングする方法を提供する。試験化合物は、小型分子または生理活性作用物質のいずれかであってよい。以下に議論するように、試験化合物は、当技術分野で周知の多様なライブラリーから提供することができる。さらに別の実施形態では、本発明は、RGS21タンパク質のGαタンパク質への結合を阻害する、試験化合物の能力を検出することを伴うスクリーニングアッセイを提供する。さらに別の実施形態では、RGS21の発現、活性または結合能の阻害剤/調節物質もまた、RGS21が制御する味覚シグナル伝達を調節するために、本発明において提供される。
さらに別の実施形態では、本発明は、RGS21タンパク質とGαタンパク質との結合を妨げることができる試験化合物についてスクリーニングする方法を提供する。この方法は、単離および/または精製したRGS21タンパク質と、試験化合物と、単離および/または精製したGαタンパク質とを組み合わせるステップと;RGS21タンパク質とGαタンパク質との結合を決定するステップと;試験化合物の結合を妨げる能力を相関させるステップとを包含し、試験化合物の非存在下と比較して、試験化合物の存在下でのRGS21タンパク質とGαとの結合が低下することは、試験化合物が、結合を阻害することができることを示す。好ましい実施形態の1つでは、単離および/または精製したGαiタンパク質ならびにRGS21タンパク質あるいは上記で定義したRGS21タンパク質の生物学的に活性な部分を含むRGS21タンパク質の機能性断片との培養物に、試験化合物を、in vitroで、同時、またはTR−FRETが平衡に達した後のいずれかに添加する。次いで、TR−FRETのシグナルを測定する。本発明によれば、GαとRGS21との相互作用を阻害する調節化合物は、TR−FRETのシグナルを減少させる。
また、本発明は、上記で定義したRGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質の活性または発現を阻害することができる試験化合物について高スループットスクリーニングを実施する方法も提供する。一実施形態では、高スループットスクリーニングの方法では、適切なGαタンパク質の存在下で、試験化合物と、RGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質とを組み合わせて、試験化合物のRGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質に対する効果を、上記で議論した機能アッセイを使用して検出することを伴う。当技術分野で周知の、多様な高スループット機能アッセイを組み合わせて使用して、異なる種類の活性化試験化合物の反応性をスクリーニングおよび/または研究することができるが、共役系はしばしば、予測することが困難であることから、広い範囲の共役機構を検出するためには、いくつかのアッセイを構成する必要がある場合がある。多様な蛍光に基づいた技術が、当技術分野では周知であり、活性を高スループットおよび超高スループットでスクリーニングすることができる。大きな容量のかつ多様な試験化合物を、良好な感度でスクリーニングすることができるので、有望なRGS21阻害剤の解析が可能となる。本発明は、RGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質の活性を阻害する能力について、高スループット・アッセイ、または当技術分野で既知の蛍光に基づいたアッセイにおいて、試験化合物と、遺伝子および/またはタンパク質とを組み合わせることによって、試験化合物を高スループットでスクリーニングするための方法を提供する。一実施形態では、高スループットスクリーニングアッセイは、RGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質に結合する、複数の試験化合物の能力を検出する。別の実施形態では、高スループットスクリーニングアッセイは、RGS21タンパク質の結合パートナー(Gαタンパク質等)がRGS21タンパク質に結合するのを阻害する、複数の試験化合物の能力を検出する。さらに別の実施形態では、高スループットスクリーニングアッセイは、味覚受容体シグナル伝達を通して味覚シグナル伝達を調節する、複数の試験化合物の能力を検出する。
さらに別の好ましい実施形態では、本発明は、甘味の増強について複数の化合物をスクリーニングする方法を提供する。そのような方法は、RGS21タンパク質の活性を阻害する化合物(RGS21タンパク質の阻害剤)を同定するステップと、甘味物質単独の場合および化合物(RGS21タンパク質の阻害剤)と組み合わせた場合の、甘味物質受容体によって活性化された甘味シグナル伝達を決定するステップと、当該甘味物質の甘味シグナル伝達を増加させる化合物(RGS21タンパク質の阻害剤)を同定するステップとを含む。
さらに、本発明は、味覚細胞中での、RGS21のGAP活性に対する、上記で同定した調節化合物の効果を決定するための方法を提供する。好ましい実施形態では、甘味物質受容体の活性化をモニターする標準的なシグナル伝達アッセイを使用する。そのような測定として、これらに限定されないが、a)セカンドメッセンジャー(例えば、カルシウム、IP3、DAG、PIP2、cAMP、cGMP等)の変化、b)タンパク質キナーゼ活性(例えば、PKA、PKC、GRK、ERK、Akt、Src、RTK等)の変化、c)甘味物質受容体の局在化の変化、およびd)味覚細胞膜電位の変化の決定が挙げられる。本明細書で使用する場合、「甘味物質受容体」は、味覚シグナル伝達経路に関与する、現在知られているおよび今後発見される受容体タンパク質を指し、こうした受容体タンパク質として、これらに限定されないが、GPCRのT1RファミリーおよびGPCRのT2Rファミリー、それらのアイソフォームおよび相同体が挙げられる。
本明細書で使用する場合、「甘味物質」として、a)これらに限定されないが、スクロース、グルコース、フルクトース、HFCS、HFSS、D−タガトース、トレハロース、D−ガラクトース、ラムノースをはじめとする、炭水化物甘味物質;b)これらに限定されないが、アスパルテーム、ネオテーム、アセスルファムK、スクラロース、チクロ、サッカリン、ネオヘスペリジン・ジヒドロカルコンをはじめとする、合成の強力な甘味物質;c)これらに限定されないが、レバウジオシドA、レバウジオシドB、レバウジオシドC、レバウジオシドD、レバウジオシドE、ダルコシドA、ダルコシドB、ルブソシド、ステビオシド、モグロシドIV、モグロシドV、モナチン、クルクリン、グリシリジン、タウマチン、モネリン、マビンリン、ブラゼイン、モナチン、ヘルナンズルチン(Hernandulcin)、フィロズルチ(Phyllodulci)をはじめとする、天然の強力な甘味物質;d)これらに限定されないが、エリスリトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、ラクチトール、キシリトール、イソマルトをはじめとする、ポリオール、およびe)これらに限定されないが、グリシン、D−またはL−アラニン、D−トリプトファン、アルギニン、セリン、スレオニンをはじめとする、アミノ酸が挙げられる。
具体的には、上記で定義した甘味物質の、これらのシグナル伝達の「計測値」に対する効果を、推定上のRGS21の調節化合物と組み合わせた甘味物質の効果と比較する。本発明によれば、RGS21タンパク質の阻害剤は、甘味物質の観察される効果を増加させる。例えば、甘味物質単独で、細胞内カルシウムの放出が増加する場合には、その甘味物質とRGS21阻害剤との組合せによって、カルシウムの放出が、甘味物質単独の場合を上回って増加するはずである。別の好ましい実施形態では、本発明はまた、うま味および苦味を調節する、RGS21タンパク質の阻害剤および調節物質についてスクリーニングするための方法を提供する。
さらに、本発明は、ヒトにおいて、ヒトの甘味感覚、ならびにうま味および苦味の感覚に対するRGS21の調節物質の効果を検証するための方法も提供する。1つの好ましい実施形態では、本発明は、試験甘味物質自体で試験した場合に認識された甘さと、試験甘味物質とRGS21の調節化合物とを組み合わせた場合に認識された甘さとの比較を提供する。本発明によれば、RGS21の阻害剤は、試験甘味物質の認識される甘さを増強し、一方、RGS21の増強物質は、試験甘味物質の認識される甘さを低下させる。
さらに、本発明は、味覚細胞中で、RGS21タンパク質と特異的に相互作用して、それを阻害する、複数の化合物をスクリーニングするための方法を提供する。そのような方法は:T1R2/T1R3等の甘味物質受容体を含む、味覚シグナル伝達のための1種または複数のタンパク質を天然に発現する味覚細胞、アルファサブユニットであるα−ガストデューシンを含有する対応するGタンパク質、PLCβ2等のエフェクター、およびRGS21タンパク質を提供するステップと;RGS21タンパク質を当該味覚細胞から単離および精製するステップと;精製したRGS21タンパク質の試験化合物との結合をin vitroで決定するステップと;精製したRGS21タンパク質と結合する試験化合物の存在下で、精製したRGS21タンパク質の精製したGαタンパク質との結合を決定するステップと;さらに、精製したRGS21タンパク質と結合して、精製したRGS21タンパク質の精製したGαタンパク質との結合を調節する試験化合物の存在下で、精製したGαタンパク質に対するRGS21タンパク質の活性を決定するステップと、精製したRGS21タンパク質と結合して、精製したRGS21タンパク質の精製したGαタンパク質との結合を調節し、RGS21タンパク質の活性をさらに調節する試験化合物を同定するステップとを含む。1つの好ましい実施形態では、RGS21タンパク質の活性は、GAP活性である。別の好ましい実施形態では、味覚細胞は、ヒトの味蕾細胞に由来する。別の好ましい実施形態では、味覚細胞は、STC−1細胞、NCI−H716細胞またはHuTu−80細胞等の味覚細胞モデルである。
さらに、本発明は、甘味シグナル伝達を増強するための、RGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質の阻害剤および/または調節化合物を含む組成物も提供する。また、本発明は、甘味だけでなく、うま味および苦味も調節するための、RGS21遺伝子および/またはRGS21タンパク質の阻害剤および/または調節化合物を含む組成物も提供する。
本発明のこれらおよび多くの他の変形形態および実施形態が、付随する説明および実施例を精査することによって、当業者には明らかとなるであろう。
RGS21タンパク質およびGαタンパク質の組換え発現
RGS21をコードするcDNA(GenBank受託番号:NM_001039152)を、ヒト味蕾mRNAから、von Bucholtzら(2004,Eur.J.Neurosci.19:1535−44)に記載されているRT−PCRを使用して単離する。完全長RGS21タンパク質(配列番号2をコードする配列番号1)をコードするcDNAまたはRGS21のRGSボックスをコードする(配列番号2のアミノ酸21位から137位をコードする)cDNA配列のいずれかを、Willardら(2005,Anal.Biochem.340:341−51)によって記載されている、適切なpGEXベクター(GE Healthcare製)等の組換えタンパク質の発現および精製に適したベクター内にクローン化する。この実施例では、大腸菌中で、タンパク質の精製を促進するためにN末端グルタチオンSトランスフェラーゼタグを付けて、組換えRGS21を発現させる。
適切なGαiタンパク質(例えば、α−ガストデューシン、Gαi2等)をコードするcDNAを、Willardら(2005,Anal.Biochem.340:341−51)によって記載されているpPROEXHTb真核細胞発現ベクター(Invitrogen,Inc.製)内にクローン化する。切断可能なヘキサヒスチジンタグ(His6)を、Gαタンパク質のN末端上に付けて、タンパク質の精製を促進する。
BL21細菌を、上記の発現プラスミドを用いて形質転換して、RGS21タンパク質およびGαタンパク質を産生するために使用する。形質転換した細菌を、30〜37℃で増殖させ、イソプロピルβ−D−チオガラクトピラノシドと共にインキュベートして、タンパク質の発現を誘導する。His6−Gαタンパク質を、Ni2+−ニトリロ三酢酸クロマトグラフィー(HiTrap Chelating HP、Amersham製)、アニオン交換クロマトグラフィー(Source 15Q、Amersham製)および分子ふるいクロマトグラフィー(HiPrep 26/60 Sephacryl S200、Amersham製)によって、順次精製する。GST−RGS21を、グルタチオンアガロースクロマトグラフィーおよび分子ふるいクロマトグラフィーを使用して精製する(Willardら,2005,Anal.Biochem.340:341−51)。
RGS21タンパク質およびGαタンパク質を、別法として、バキュロウイルス発現ベクターを用いて感染させたSf9昆虫細胞(von Buchholtzら,2004,Eur.J.Neurosci.19:1535−44)、または適切な発現プラスミドを用いて形質転換した酵母細胞(Leifertら.,2006,Anal.Biochem.355,201−212)中で発現させる。全ての場合において、組換えタンパク質を、誘導した細胞の可溶化液から、上記のクロマトグラフィーのスキームを使用して単離する。
RGS21のGAP活性のin vitroにおける測定、およびRGS21の調節化合物のスクリーニング
精製したRGS21の、GTPに結合したGαiタンパク質との相互作用は、GTPの加水分解を増加させる。GTPの加水分解を、以下の方法を使用して測定する。
方法1.放射活性のある結合型GTPの加水分解:
GαのGTPアーゼ活性を、Snowら(1998,J.Biol.Chem.,273:17749−55)に記載されているように溶液中で決定する。手短にいうと、GTPを取り込んだGαi1−3およびGαガストデューシンは、[γ−32P]−GTP(500cpm/ピコモル)の存在下で、以下の緩衝液中、20℃で3時間Gαタンパク質をインキュベートすることによって生成する:(最終容量:150μl):10mM GTP、5.5mM CHAPS、50mM HEPESナトリウム、pH7.5、1mM DTT、1mM EDTA、0.1mg/mlウシ血清アルブミン、30mM (NH2)2SO4および4%グリセロール。取込みの後、反応混合液を、Sephadex G−25クロマトグラフィーによって、1mM CHAPS、50mM HEPES、pH7.5、1mM DTT、1mM EDTA、0.018mg/mlウシ血清アルブミンに交換する。次いで、タンパク質の溶離液を、氷冷したOG緩衝液(0.1%オクチルグルコピラノシド、20mM HEPESナトリウム、pH7.5、80mM NaCl、1mM DTT、1mM EDTA、0.01mg/mlウシ血清アルブミンおよび1mM GTP)中で4倍に希釈する。
GAP活性を、推定上のRGS21の調節化合物の存在下または非存在下のRGS21タンパク質試料および(9mM MgSO4を補った)OG緩衝液に、Gα−GTPを添加することによって開始する。時間を決めて、100μlの一定分量を取り出して、50mM NaH2PO4中の5%(w/v)Norit A活性炭スラリー、900mlを用いて反応を停止する。活性炭をペレット化して、32Piを含有する上清を計数する。上清中の増加した32Piは、増加したGTPアーゼの活性を示す。
方法2.BODIPYFL−GTPの蛍光分光法:
BODIPYFL−GTPは、Gαタンパク質との結合時には、ベースラインから200%の蛍光放出の増加を示すが、一方、加水分解によって生成したBODIPYFL−GDPは、Gαタンパク質と結合した場合、ベースラインからわずか27%の蛍光放出の増加を示すに過ぎない(Willardら,2005,Anal.Biochem.340:341−51)。RGS21添加時のGαタンパク質からのBODIPYの蛍光放出の喪失から、GTPの加水分解の尺度が得られる。Willardら(2005,Anal.Biochem.340:341−51)によって記載されている、単一ヌクレオチド結合および代謝回転アッセイの形成を使用して、RGS21の調節化合物をスクリーニングする(図4)。
方法3.GαとRGS21との相互作用についての時間分解FRETアッセイ:
RGS21タンパク質は、GTPアーゼの活性を刺激するためには、Gαiと物理的に結合する必要がある(NeubigおよびSiderovski,2002,Nat.Rev.Drug Discov.1:187−97)。このアッセイは、時間分解FRET(TR−FRET)を使用して、RGS21タンパク質とGαタンパク質との物理的な結合をモニターする。His6タグ付きRGS21タンパク質およびHis6タグ付きGαiタンパク質を、Alexa546蛍光およびテルビウムクリプテート(Tb)キレートをそれぞれ使用して、タンパク質に対して5倍モル過剰の蛍光を使用して蛍光標識する(Leifertら,2006,Anal.Biochem.355:201−12)。Ni−NTAカラム上に固定化した、組換えのRGS21タンパク質およびGαタンパク質を、Alexa546マレイミドまたはテルビウムクリプテートマレイミドのいずれかと共に、室温で2〜3時間インキュベートする。インキュベートした後、Gαタンパク質を含有するカラムを、5mMイミダゾールおよび300mM NaCl(pH8.0)を含有する緩衝液A(20mM Hepes、10mM NaCl、1mM MgCl2、10mM β−メルカプトエタノール、0.5%(w/v)ポリオキシエチレン−10−ラウリルエーテルおよび10μM GDP、pH8.0)で洗浄して、未結合のAlexa546またはテルビウムを除去する。標識Gαタンパク質を、カラムから、緩衝液B(20mM Hepes、pH8.0、50mM NaCl、10mM βメルカプトエタノール、10μM GDP、1%(w/v)コール酸、50mM MgCl2、150mMイミダゾール、10mM NaFおよび30μM AlCl3)を使用して溶出する。His6−Gαタンパク質を含有する溶出画分を、プールして、溶出用緩衝液(20mM Hepes、pH8.0、3mM MgCl2、10mM NaCl、10mM β−メルカプトエタノール、1μM GDPおよび0.1%(w/v)コール酸)に対して透析する。標識His6−RGS21タンパク質を、カラムから、(100mM NaCl、300mMイミダゾール、2mM 2−メルカプトエタノール、50mM NaH2PO4、pH 6.0)を用いて溶出する。His6−RGS21を含有する溶出画分を、プールして、溶出用緩衝液に対して透析する。
Alexa546−RGS21を、マルチウエルプレート(例えば、96ウエル等)中で、推定上の調節化合物と共に、室温で少なくとも10分間あらかじめインキュベートする。平行して、Tb−Gαiタンパク質を、FRET緩衝液(50mM Tris、pH8.0、100mM NaCl、1mM MgCl2および1mM DTT)中の30μM AlCl3および10mM NaFと共に、少なくとも10分間インキュベートして、Tb−Gαi・GDP・AlF4 −の遷移状態の「活性化された」複合体を形成させる。TR−FRET反応を、TR−FRET測定システムを備えた蛍光プレートリーダー内において、活性化されたTb−Gαi・GDP・AlF4 −を、(50mM Tris、pH8.0、100 mM NaCl、1mM MgCl2、30μM AlCl3、10mM NaFおよび1mM DTT)中のAlexa546−RGS21タンパク質と、100μlの反応容量で混合することによって開始し、0〜30分間インキュベートする。以下の装置の設定で、時間分解蛍光測定を実施する:励起:340nm、放出:572nm、遅延:50μ秒、および計数期間:900μ秒。読取りは、蛍光放出が安定するまで行う。その時点で、未標識のGαタンパク質またはRGS21等のその他の成分を添加し、次いで、蛍光の読取りを、蛍光が再び安定するまで続ける。バックグランドの蛍光は、適切な濃度のテルビウム標識タンパク質を、インキュベーション用緩衝液に添加して、同一のTR−FRET条件に暴露することによって決定する。バックグランドの蛍光を、全てのデータから差し引くと、動態学的パラメータが測定可能になる。いずれの調節化合物も存在しない状態では、結合の平衡は、この時間枠内に達成され、時間の関数としてのFRETシグナルのプラトーとして観察される(Leifertら,2006,Anal.Biochem.355:201−12)。GαとRGS21との相互作用を阻害する調節化合物は、TR−FFRTシグナルを減少させ、一方、GαとRGS21との相互作用を増強する調節化合物は、TR−FFRTシグナルを増加させるであろう。
RGS21の活性を、味覚受容体の活性化/脱感作を変化させることによって調節する化合物を同定するための、細胞に基づいたアッセイ
完全な細胞中で推定上のRGS21の調節化合物の効果を決定するために、標準的なシグナル伝達アッセイを使用して、甘味、うま味および苦味の受容体をはじめとする、Gタンパク質共役受容体のシグナル伝達をモニターする。本明細書で使用する、好ましい標準的なシグナル伝達アッセイは、a)セカンドメッセンジャー(例えば、カルシウム(Ca2+)、環状ヌクレオチド、脂質の種/代謝産物等)の変化、b)タンパク質キナーゼ活性(例えば、PKA、PKC、GRK、MAPキナーゼ、Akt、Src、受容体型チロシン・キナーゼ等)の変化、c)味覚受容体の局在化の変化、およびd)神経伝達物質(例えば、ATP、GLP−1、CCK、セロトニン、PYY等)の放出の測定からなる群から選択することができる。これらの標準的な手順は、当技術分野では周知であり、以下に詳細に記載する。以下に記載する細胞に基づいた技術は、組換えのT1R2およびT1R3の味覚受容体を異種発現する細胞(例えば、HEK293細胞、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、HeLa細胞等)に適用することができ、また、T1R2およびT1R3を天然に発現する細胞(例えば、培養した味蕾細胞、マウスSTC−1腸内分泌細胞、ヒトNCI−H716腸内分泌細胞およびヒトHuTu−80腸内分泌細胞等)にも適用することができる。
基本的な実験計画では、これらのシグナル伝達の「計測値」に対する甘味物質の効果を、推定上のRGS21の調節化合物と組み合わせた甘味物質の効果と比較する。RGS21タンパク質の阻害剤は、甘味物質の観察される効果の増加を示す。例えば、甘味物質単独で、細胞内カルシウムの放出が増加する場合には、その甘味物質とRGS21の阻害剤との組合せによって、カルシウムの放出が、甘味物質単独の場合に見られるレベルを上回って増加する。
A.細胞内セカンドメッセンジャーの、細胞に基づいたアッセイ:
環状ヌクレオチドの測定:cAMPおよびcGMP等の環状ヌクレオチドの変化を、細胞抽出物中のそれらの量を、市販の非放射性のAlphascreen cAMPアッセイ(Perkin−Elmer製)を使用することにより定量化することによって測定することができる。AlphaScreen cAMPアッセイは、アデニル酸シクラーゼ活性の調節時にGPCRにより産生したcAMPのレベルを直接測定するように設計されている。アッセイは、内因性のcAMPと外因性の添加したビオチン化cAMPとの間の競合に基づく。cAMPの捕捉は、アクセプター(Acceptor)ビーズに結合させた特異的な抗体を使用することによって達成する。アッセイは、GαiおよびGαsに共役したGPCRに対するアゴニストおよびアンタゴニストの両方の活性を測定するのに効率的である。GPCRのT1RおよびT2Rのファミリーは、GαiファミリーのGタンパク質であるガストデューシンを活性化する。
味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)を、マルチウエルプレート中に、刺激用緩衝液、pH7.4(0.5mM IBMX、5mM HEPES、0.1% BSAを含有するPBS)中で、抗cAMP抗体結合受容体ビーズと共に蒔く。次いで、30分かけてその最大能力の50%でcAMPを産生する、経験的に決定したフォルスコリンの濃度で、細胞を処理する。各種の濃度の味物質(例えば、スクロース、アスパルテーム等)を、フォルスコリンおよび推定上のRGS21の調節化合物と一緒に添加する。細胞を、暗所で30分間インキュベートし、次いで、細胞可溶化用緩衝液中のビオチン化cAMPに結合したストレプトアビジンでコートしたビーズ(0.25U/μl)の混合物と共に、暗所で4時間インキュベートする。蛍光シグナルを、Perkin−Elmer製Envisionプレートリーダー中で測定する。この実験系では、味物質の濃度が増加すると、Alphascreenのシグナルが、ビオチン化cAMPおよび抗cAMP抗体ビーズとの競合に利用可能な細胞性のcAMPを減少させるアデニリルシクラーゼの阻害によって増加することが予想される。
別法として、モデル味覚細胞に、cAMP応答エレメント(CRE)を含有するプロモーター配列のコントロール下にある転写性レポータータンパク質(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等)をコードする遺伝子を含むプラスミドDNAを安定にトランスフェクトする。このアッセイは、cAMP感受性転写因子である、cAMP応答エレメント結合タンパク質(CREB)のよる転写の活性化をモニターする。したがって、トランスフェクトした細胞は、転写性レポータータンパク質を、細胞中の利用可能なcAMPの量に比例して発現する。味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)を、24ウエル・プレート中に蒔き、これに、CRE−ルシフェラーゼ(ホタル)レポータープラスミド(0.4μg)およびpRL−Tk(0.1μg)を同時トランスフェクトする。pRL−Tkは、(Nguyenら,2004,Cellular Signaling 16:1141−51;Leeら,2004,Mol.Endocrin.18:1740−55)に記載されているように、Lipofectamine試薬(Invitrogen製)を使用して、ウミシイタケルシフェラーゼを、トランスフェクションの効率に関する対照として、構成的に発現する。次いで、その最大能力の50%でcAMPを産生する、経験的に決定した、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中のフォルスコリンの濃度で、5〜12時間細胞を処理する。各種の濃度の味物質の(例えば、スクロース、アスパルテーム等)を、フォルスコリンおよび推定上のRGS21の調節化合物と一緒に、5〜12時間添加する。細胞を可溶化し、ホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの活性を、市販のDual Luciferaseアッセイ・キット(Promega製)を使用して、製造者の指示に従って決定する。ホタルルシフェラーゼの活性を、ウミシイタケルシフェラーゼの活性で割って、トランスフェクションの効率の変動について規準化し、味物質の濃度のlog10の関数としてプロットする。
細胞内カルシウムの測定:細胞内カルシウムの変化を、モデル味覚全細胞中で、カルシウム感受性色素(例えば、FURA−2、Fluo−3等)の蛍光の強度および放出の変化をモニターすることによって測定することができる。これらの色素は市販されている。手短にいうと、味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)を、96ウエル・プレート中で、24時間増殖させ、次いで、HEPES(pH7.4)、1.26mM CaCl2、0.5mM MgCl2、0.4mM MgSO4および0.1%BSAを補ったHanks平衡塩類溶液(GIBCO−BRL製)(Ca++緩衝液と呼ばれる)で2回すすぎ、1.0μM fura2−AMを有する、1mlの同一の緩衝液中、37℃で15分間インキュベートする。次いで、培養物を、Ca++緩衝液で3回洗浄し、推定上のRGS21の調節化合物の存在下または非存在下で、各種の濃度の味物質の(例えば、スクロース、デナトニウム等)と共に、20から30秒間インキュベートしてから、Perkin−Elmer製蛍光プレートリーダー中で、蛍光応答(480nmの励起および535nmの放出)を平均化する。データを、化合物の添加前に測定したバックグランドの蛍光について補正し、次いで、カルシウム・イオノフォアであるイオノマイシン(1μM、Calbiochem製)に対する応答に対して規準化する。
別法として、細胞内カルシウムの放出の変化を、味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)に、カルシウム感受性蛍光タンパク質であるエクオリンをコードするプラスミドをトランスフェクトすることによって測定することができる。エクオリンの蛍光放出は、基質であるセレンテラジンの存在下で、カルシウム結合時に増加する。エクオリンのカルシウムに対する親和性は、低いマイクロモルの範囲にあり、この酵素の活性は、生理的範囲のカルシウム濃度(50nMから50μM)に比例する(Briniら,1995,J.Biol.Chem.270:9896−9903;Rizzutoら,1995,Biochem.Biophys.Res.Commun.126:1259−1268)。
ホスホイノシチドの従来のアプローチによる測定:甘味物質は、モデル味覚細胞中で、酵素PLC−β2の活性化をもたらす。この酵素は、ホスファチジルイノシトール二リン酸(PIP2)を、セカンドメッセンジャーであるイノシトール三リン酸(IP3)とジアシルグリセロール(DAG)とに切断する。放射性標識ホスホイノシチドの加水分解を、アニオン交換クロマトグラフィーを使用して定量化することによって、PIP2の変化をモニターすることができる(Paingら,2002,J.Biol.Chem.277:1292−1300)。味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)を、[3H]標識ミオ−D−イノシトールを用いて24時間標識し、細胞の培地を、1mg/ml BSAを含有する10mM HEPES緩衝液および20mM塩化リチウムで交換する。次いで、細胞を、種々の濃度の味物質(2〜3log単位超)を用いて、37℃で、最長30分間刺激し、50mMギ酸を用いて、室温で45分間抽出し、次いで、150mM NH4OHで中和する。次いで、細胞抽出物を、アニオン交換AG I−X8樹脂(100〜200メッシュのサイズ、Bio−Rad製)カラム上に直接載せ、H2O、次いで50mMギ酸アンモニウムで洗浄し、1.2mMギ酸アンモニウム、0.1mMギ酸を用いて溶出する。このアッセイ中で溶出したイノシトール一、二および三リン酸を、シンチレーション測定によって定量化する。
別法として、上記のcAMPのAlphascreenアッセイに類似する、IP3のalphascreenアッセイを使用して、IP3の産生を測定することができる。IP3のalphascreenアッセイは、細胞性のIP3の能力を測定する。細胞性のIP3は、甘味物質受容体のPLC−β2を介する活性化に応答して生成して、IP3結合タンパク質を含有する受容体ビーズに結合するビオチン化IP3ビーズと競合する。したがって、甘味物質の濃度が増加すると、IP3の細胞濃度が増加すると予想され、次いで、この濃度の増加から、alphascreenシグナルの用量依存性の減少を生じる。96ウエル・プレート中で増殖させた味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)を、推定上のRGS21の調節化合物の存在下または非存在下で、増加させた各濃度の味物質(例えば、スクロース、デナトニウム等)とともに30秒間インキュベートする(PBS/Hepes、pH7.4中)。次いで、細胞を、可溶化し、alphascreen試薬と共に、製造者の指示に従ってインキュベートして、蛍光シグナルを、PerkinElmer製蛍光プレートリーダーで測定する。
B.タンパク質キナーゼ活性の、細胞に基づいたアッセイ
甘味物質受容体の活性化が、セリン/スレオニン・キナーゼであるERK1および2を、Giシグナル伝達経路を介して活性化することが示されている(Ozeckら,2004,Eur.J.Pharm.489:139−49)。ERKに加えて、Akt等のセリン/スレオニン・キナーゼ、および上皮成長因子受容体(EGF−R)チロシン・キナーゼ等の受容体型チロシン・キナーゼをはじめとする、多くのその他のキナーゼもまた、Giシグナル伝達経路を介して活性化される。多くのキナーゼの活性化における主要なステップは、キナーゼ自体のリン酸化であり、これを、実験的に決定することができる。例えば、ERK1および2の活性化の程度を決定する最も一般的な方法は、免疫測定法または免疫ブロット法のいずれかによる、ERKのリン酸化された、したがって、活性化された形態に特異的な抗体の使用である。
したがって、甘味物質受容体の活性化の、ERK1、ERK2、Akt、MEKおよびEGF−Rの活性に対する効果を測定するために、処理したモデル味覚細胞からの細胞抽出物を、リン酸化されたキナーゼに対する抗体を使用して、プレート免疫測定法中でまたは免疫ブロット法によってのいずれかで解析する。甘味物質を用いて処理されているモデル味覚細胞から調製した細胞抽出物中で検出されるリン酸化されたキナーゼの量は、甘味物質の濃度に直接比例する。したがって、この系はまた、推定上のRGS21の調節化合物の甘味物質受容体の活性化に対する効果を、甘味物質および推定上のRGS21の調節化合物の両方を用いてモデル味覚細胞を処理し、次いで、得られた細胞抽出物中のリン酸化されたキナーゼの量を、リン酸化されたキナーゼに特異的な抗体を使用して検出することによって決定するのに有用でもある。
C.味覚受容体の局在化の変化の測定
β2−アドレナリン受容体、グルカゴン様ペプチド受容体およびGABA(B)受容体等、大部分のGPCRのアゴニストによる刺激は、エンドサイトーシスを介する、細胞内へのそれらの内在化を引き起こし(Mooreら,2007,Annu.Rev.Physiol.,69:451−482)、受容体の内在化は、受容体の活性化の尺度として広く使用されている。T1R2/T1R3の内在化を、多様な技術、例として、蛍光顕微鏡法に基づいた画像法、エンドソームの細胞下分画および細胞表面の受容体の特異的生化学的修飾(differential biochemical modification)(例えば、細胞表面のビオチン化、放射性ヨウ素を用いたヨウ素化等)を使用して測定することができる。
味覚受容体の局在化の蛍光顕微鏡法による測定:蛍光顕微鏡法に基づいた画像法アプローチの例として、T1R2および/またはT1R3を、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)、またはそのような蛍光タンパク質のうちのいくつかのスペクトル変異体(例えば、黄色蛍光タンパク質、青色蛍光タンパク質等))に融合させる。次いで、遺伝子改変したT1R2/T1R3の受容体の対を、適切な哺乳動物細胞(例えば、HEK293、CHO、HeLa、COS、MDCK、HepG2等)中で異種発現させる。これらの細胞を、顕微鏡用のスライドまたはカバーガラス上で増殖させ、次いで、推定上のRGS21の調節化合物の存在下または非存在下で、甘味物質を用いて、37℃で0〜3時間刺激する。蛍光標識したT1R2および/またはT1R3の局在化を、生存細胞または固定細胞のいずれかの蛍光顕微鏡法を使用して決定する。未刺激の細胞中では、T1R2/T1R3は、細胞膜に主に局在化し、これは、多様な蛍光色素(例えば、FMI−43等)で標識することができる。甘味物質による刺激後は、T1R2/T1R3は、エンドソームに再分布し、これは、蛍光標識トランスフェリンで、生存細胞を10〜30分間インキュベートして標識することができる。
別法として、細胞表面のT1R2および/またはT1R3のいずれかを、蛍光標識プローブ(例えば、抗体、リガンド等)で標識する。このアプローチは、T1R2/T1R3を異種発現する細胞またはT1R2/T1R3を天然に発現する細胞に適用することができる。この場合、細胞を、顕微鏡用のスライドまたはカバーガラス上で培養し、蛍光標識プローブと共に、4℃で0〜60分間インキュベートする。次いで、細胞を、推定上のRGS21の調節化合物の存在下または非存在下で、甘味物質と共に、37℃まで、0〜3時間加温する。蛍光標識されたT1R2および/またはT1R3の局在化を、生存細胞または固定細胞のいずれかの蛍光顕微鏡法(例えば、落射蛍光、共焦点等)を使用して決定する。未刺激の細胞中では、T1R2/T1R3は、細胞膜に主に局在化し、これは、多様な蛍光色素(例えば、FMI−43等)で標識することができる。甘味物質による刺激後は、T1R2/T1R3は、エンドソームに再分布し、これは、蛍光標識トランスフェリンで、生存細胞を10〜30分間インキュベートして標識することができる。
味覚受容体の局在化の、細胞下分画による測定:一実施形態では、T1R2/T1R3のエンドソームへの局在化を、細胞下分画を使用して測定する。この場合、T1R2/T1R3を発現する細胞(例えば、異種発現または自然な発現)を、機械的なせん断によって破壊し、可能であれば、密度マトリックス(例えば、スクロース、フィコール等)の使用も併用して、高速および低速を組み合わせた遠心分離によって分離する。画分を、遠心チューブから収集し、T1R2タンパク質および/またはT1R3タンパク質の存在について、SDS−PAGEおよび免疫ブロット法によって解析する。
細胞表面の受容体の特異的化学的修飾による、味覚受容体の局在化の測定:一実施形態では、推定上のRGS21の調節化合物の添加または未添加で、甘味物質と共にインキュベートする前(0時)および後(0〜3時間)の両方で、細胞表面のT1R2受容体/T1R3受容体を、細胞を透過しない化学薬剤(例えば、官能性をもたせたビオチン架橋剤、放射性ヨウ素化、標識された甘味物質等)を用いて直接標識する。T1R2受容体/T1R3受容体を、免疫沈降法等の技術により単離し、標識された味覚受容体の存在量について解析する。休止細胞中では、味覚受容体は、細胞表面に主に存在し、したがって、これらの細胞は、最大存在量の標識された表面の味覚受容体を含有することが予想される。甘味物質による刺激時の味覚受容体の内在化により、細胞表面の味覚受容体の量が減少し、休止細胞(0時)から得たシグナルと、甘味物質を用いて処理した細胞から得たシグナルとの間の差が、受容体の内在化の尺度を提供する。
蛍光標識β−アレスチンの細胞膜への移行のモニター:大部分のGPCRは、脱感作し、細胞内シグナル伝達をさらに刺激することができない(Mooreら,2007,Annu.Rev.Physiol.,69:451−482)。2つの主なステップ、すなわち、受容体のリン酸化、および多機能性足場タンパク質であるβ−アレスチンとの結合が、GPCRの脱感作を促進する。休止細胞においては、β−アレスチンは、細胞の細胞質に主に存在するが、アゴニストによる刺激の数分以内に、細胞膜に移行して、リン酸化されたGPCRと結合する。β−アレスチンの細胞膜へのこの移行を、蛍光標識β−アレスチン(例えば、β−アレスチン−GFPのキメラタンパク質)を発現する細胞中で、可視化することができる。一実施形態では、T1R2/T1R3を発現する細胞(例えば、これらの味覚受容体を発現するHEK293細胞、培養した味蕾細胞、培養したヒトTuHu−80腸内分泌細胞等)に、β−アレスチン−GFPをコードするプラスミドを安定にトランスフェクトする。そのような細胞を、顕微鏡用のスライドまたはカバーガラス上で増殖させ、推定上のRGS21の調節化合物の存在下または非存在下で、甘味物質を用いて、0〜3時間刺激する。β−アレスチンの局在化を、生存細胞または固定細胞中で、蛍光顕微鏡法を使用して決定する。β−アレスチン−GFPの細胞質から細胞膜への移行が、甘味物質受容体の活性化の尺度として使用される。
D.神経伝達物質および神経ペプチドの放出の測定
味覚細胞および、腸内分泌細胞等のその他の細胞型が、味物質に応答して、ATPに加えて、GLP−1、CCK、PYYおよびセロトニンをはじめとする、神経ペプチドを放出することが実証されている。ATPの分泌は、ルシフェリン/ルシフェラーゼの発光アッセイ系を使用して定量化する。神経ペプチドの分泌は、ELISA/RIAの競合アプローチを使用して定量化し、以下に、例として、GLP−1について記載する。
ATPの分泌の測定:味覚細胞シグナル伝達の最終的かつ最も重要なステップは、神経伝達物質の放出であり、これは、求心性神経線維をさらに刺激する。Kinnamonらは、ATPが、決定的な「神経伝達物質」であり、これは、味覚細胞から分泌され、神経線維上の特異的なプリン作動性のATPに結合する受容体と相互作用することを示している(Fingerら,2005,Science 310:1495−99)。味覚受容体およびRGS21を発現する細胞(例えば、ヒトHuTu−80腸内分泌細胞、味蕾細胞、トランスフェクトしたHEK細胞等)を、96ウエル・プレート中で増殖させ、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中ですすぎ、同一の緩衝液中で、推定上のRGS21の調節化合物の存在下および非存在下で、種々の濃度の味物質(2〜3log単位超)を用いて、37℃で0〜30分間刺激する。刺激した細胞の培地の試料を収集し、ATPの濃度を、市販のATPのための発光アッセイ(例えば、ATPliteアッセイ、Perkin−Elmer製)を使用して決定する。
消化管ペプチドの分泌の測定:HuTu−80細胞等の腸内分泌細胞は、味覚受容体の刺激に応答して、消化管ペプチド(例えば、ペプチドYY(PYY)、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、胃インスリン分泌性ペプチド(GIP)等)を分泌することが知られている(Rozengurt、2006、Am.J.Physiol Gastrointest Liver Physiol.291:G171−G177)。GIペプチドのHuTu−80細胞からの分泌を測定するために、競合的なELISAまたはRIAを使用することができる。例として、GLP−1の分泌を、市販の競合的酵素免疫測定法(例えば、Cosmo Bio Co.,Ltd.製)を使用して測定することができる。手短にいうと、HuTu−80細胞を、マルチウエル・ディッシュ(例えば、6ウエル、12ウエル等)中で増殖させ、10mM HEPESおよび0.1%BSAを含有するPBS、pH7.4中ですすぎ、同一の緩衝液中で、推定上のRGS21の調節化合物の存在下および非存在下で、種々の濃度の味物質(2〜3log単位超)を用いて、37℃で0〜30分間刺激する。刺激したHuTu−80細胞の培地の試料を、収集して、ヤギ抗GLP−1抗体でコートした96ウエル・プレートに、ビオチン化GLP−1標準物質およびウサギ抗GLP−1抗体と一緒に添加する。プレートを、暗所、4℃で、一晩、16〜18時間インキュベートする。ウエルを、PBS、pH7.4ですすぎ、ストレプトアビジン−HRPと共に、暗所、室温で、1時間インキュベートする。ストレプトアビジン−HRPを除去した後、PBS、pH7.4ですすぎ、o−フェニレンジアミン塩酸塩の基質溶液を添加して、反応を、暗所、室温で、30分間展開する。反応を停止させ、ウエルの光学的吸収を492nmで測定する。分泌されたGLP−1の量は、組換えGLP−1の既知の量を用いて平行して求めた標準曲線との比較によって決定する。
RGS21の活性を、RGS21のタンパク質対タンパク質の相互作用を破壊することによって調節する化合物を同定するための、細胞に基づいたアッセイの使用
味覚受容体、Gαタンパク質およびβγタンパク質の相互作用の、FRETを使用した測定:タンパク質対タンパク質の相互作用を、生存細胞中で、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)のアプローチを使用してモニターすることができる。FRETの基礎は、適切なFRETの供与体フルオロフォアおよび受容体フルオロフォア(例えば、YFPおよびCFP)を含有する、2つのタンパク質が、相互に結合するか、または相互に10〜100Å以内に存在する場合、フルオロフォア間に照射性のエネルギー転移が存在し、それによって、供与体フルオロフォア(例えば、CFP)からの放出エネルギーが、受容体フルオロフォア(例えば、YFP)を励起させる。その結果として、供与体フルオロフォア(例えば、CFP)による励起に応答した受容体フルオロフォア(例えば、YFP)からの蛍光放出が観察される。したがって、正のFRETシグナルは、2つのタンパク質間の密接な相互作用を示す。RGS21は、活性化されたGαタンパク質と相互作用して、GTPの加水分解を促進するはずであることから、FRETを使用して、RGS21とGαの活性型との間の相互作用をモニターすることができる。
一実施形態では、それぞれがFRET解析のための適切なフルオロフォアを有する、タンパク質の相互作用パートナーの対(例えば、Gα−YFP+RGS21−GFP等)を、適切な細胞系(例えば、HEK293、CHO、HeLa、COS、BHK、Sf9昆虫細胞、酵母等)中で同時発現させる。当技術分野で既知の標準的な分子生物学の方法を使用して、キメラタンパク質を生み出し、それによって、YFPをGαガストデューシンに融合させ、CFPをRGS21に融合させて、これらのキメラタンパク質を、適切なタンパク質発現ベクター(例えば、pcDNA3.1等)内にクローン化する。タンパク質の対を、宿主細胞内に安定にトランスフェクトする。Gαガストデューシン−YFP+RGS21−CFPの場合、休止細胞は、低いFRETシグナルを示すことが予想される。これは、Gα−ガストデューシンは、GDP結合状態にあり、したがって、RGS21との結合ではなく、Gβ3Gγ13との結合を形成するはずであるからである。味物質またはAlF4 −のいずれかを用いて刺激した細胞は、FRETシグナルの増加を示すことが予想される。
Gαガストデューシン−YFP+Gβ3−CFP+Gγ13を、顕微鏡用スライドまたはマルチウエル・ディシュ上で増殖させ、推定上のRGS21の調節化合物と共に、37℃で、少なくとも10分間あらかじめインキュベートする。次いで、細胞を、推定上のRGS21の調節化合物の存在下および非存在下で、30μM AlCl3および10mM NaF(AlF4−)、または種々の濃度の味物質(2〜3log単位超)を用いて刺激する。単一細胞の解析のために、生存細胞を、FRETを測定するのに適切な光学フィルターを備える蛍光顕微鏡中で試験し、FRETが生成した蛍光シグナルを、適切な画像解析ソフトウエアによってコントロールされている冷却CCDカメラを用いて測定することによって、FRETシグナルを定量化する。中から高のスループットの化合物スクリーニングのためには、マルチウエル・ディッシュ(例えば、96ウエル等)中で増殖させた細胞を、蛍光プレートリーダー中で解析する。
味覚受容体、Gαタンパク質およびβγタンパク質の相互作用の、酵母の2ハイブリッドアッセイ中での測定:別の実施形態では、GαガストデューシンとGβ13γ13との相互作用を、酵母細胞中で、酵母の2ハイブリッドアッセイを使用して測定することができる(Youngら,2004,Methods Enzymol,389:277−301)。一実施例では、通常であれば、酵母のGαサブユニットであるGpa1を不活性化する、内因性の酵母のRGSタンパク質であるSst2を欠く、酵母の菌株(例えば、S.cerevisiae)内に、RGS21のcDNAを挿入する。この菌株の酵母はまた、当技術分野では周知の分子生物学の技術を使用することにより、FUS1プロモーターのコントロール下にあるウミシイタケルシフェラーゼのレポーター遺伝子を発現するように工学的に作製されている。この系では、酵母フェロモンシグナル伝達経路の、酵母α因子受容体であるGPCRを介しての活性化が、シグナル伝達経路の刺激をもたらし、これは、FUS1が促進するルシフェラーゼタンパク質の発現を促進する。Sst2を欠失する親株との比較により、フェロモンによる刺激時に親株中では観察されたルシフェラーゼ活性化抑制の解除を鈍らせる、RGS21が与えた抑制のレベルを示す。したがって、RGS21およびFUS1−ルシフェラーゼのDNAコンストラクトを発現する細胞を、推定上のRGS21の調節化合物(例えば、化学物質ライブラリー、天然産物ライブラリー等)と共にインキュベートし、次いで、アルファ因子フェロモンを用いて刺激する。RGS21の阻害剤は、フェロモンによるルシフェラーゼの誘発の阻害を軽減することが予想される。
別の実施形態では、RGS21を、Ga14転写活性化ドメインに融合させ、Gαガストデューシンの恒常的に活性な変異体(Q204L)を、Ga14のDNA結合ドメインに融合させる。これらのDNAコンストラクトを、発現が基本プロモーターおよびいくつかの上流のGa14結合部位によってコントロールされるレポーター遺伝子(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ、CAT等)を発現する酵母の菌株内に安定に組み込む。GαガストデューシンQ204Lは、RGS21と恒常的な結合を形成し、したがって、高レベルのレポーター遺伝子の活性を得ることが予想される。したがって、レポーター遺伝子の活性を低下させる任意の化合物は、RGS21の阻害剤であることが予想される。
ヒトの味覚テストにおけるRGS21の調節化合物の効果の検証
試験味物質(例えば、甘味物質、風味物質または苦味物質)自体で認識された強度を、試験味物質とRGS21の調節化合物とを組み合わせて認識された強度と比較する。RGS21の増強物質の候補は、試験味物質の認識される強度を減少させ、一方、RGS21阻害剤は、試験味物質の認識される強度を増強させることが予想される。ある特定の実施形態では、一連の査定者を使用して、試験味物質溶液の強度を測定する。手短にいうと、一連の査定者(一般に、8〜12人)を訓練して、味覚強度の認識を評価させ、強度を、試料を最初に口に入れた時から、試料を吐き出す3分後までのいくつかの時点で測定する。統計的解析を使用して、結果を、添加物を含有する試料と、添加物を含有しない試料との間で比較する。試料が口から除去された後に測定した時点のスコアの減少は、味物質の認識の低下が存在していることを示す。
一連の査定者を、当技術分野で周知の手順を使用して訓練することができる。ある特定の実施形態では、一連の査定者を、SPECTRUM Descriptive Analysis Method(Meilgaardら,Sensory Evaluation Techniques,第3版,第11章)を使用して訓練することができる。望ましくは、訓練の焦点は、基本の味;具体的には、甘味、塩味、酸味、うま味および苦味の認識および測定でなければならない。結果の正確さおよび再現性を確保するために、各査定者は、味物質の強度の測定を、1つの試料あたり、約3回から約5回まで繰り返す必要があり、少なくとも5分間の休憩を、繰り返す度および/または試料の度にとり、水で十分にすすいで口をきれいにする。
一般に、味物質の強度を測定する方法は、10mLの試料を口に入れるステップと、試料を口の中に5秒間保ち、試料を口の中で穏やかに回すステップとを含む。認識された味物質の強度を、5秒後にランク付けし、試料を吐き出し(試料を吐き出した後には飲み込まない)、口を一口分の水ですすぎ(例えば、うがい液のときのように水を口の中で激しく動かす)、すすぎ水は吐き出す。認識された味物質の強度を、すすぎ水を吐き出した直後に、45秒後待って、およびこの45秒の間にランク付けし、認識された味覚の最大強度の時を同定し、その時点でのこの強度をランク付けする(口を普通に動かし、必要であれば、飲み込む)。試料間では、5分間の休憩をとり、水で十分にすすいで口をきれいにする。
付録
RGS21のヌクレオチド配列(配列番号1)(GenBank受託番号:NM_001039152)
RGS21のアミノ酸配列(配列番号2)(GenBank受託番号:NM_001034241)