発明の分野
[0001]本発明は、概してディスプレイシステムで用いる光源に関する。より詳細には、本発明は、プロジェクションディスプレイシステムにおいて従来の白色光放電ランプに代えて半導体レーザを利用することを目的としている。
発明の背景
[0002]デジタルライトプロセッシング(DLP)は、会議室、家庭用テレビシステム、広告ディスプレイ、自動車のダッシュボードおよびヘッドアップディスプレイおよび他の用途における画像プロジェクション等のプロジェクションディスプレイシステムには興味深いものである。DLPシステムの光エンジンには、光源と、複数の異なる色で光を生成するのに必要なその他のコンポーネントが含まれているのが一般的である。個別の色コンポーネントは空間変調され、選択された色強度を有する個別の画素を生成する。付加的な光学素子が光をディスプレイ上に集束させる。
[0003]DLPシステムは、プロジェクション面で制御された強度を持った画素を生成するために光源を変調する空間光変調器を含むのが一般的である。ライトバルブは素子アレイの全域で光を変調する空間光変調器の一種である。ライトバルブはアレイの全域で光の伝送または反射特性を変調するのが一般的である。例えば、反射型液晶ライトバルブは液晶素子アレイを用いてアレイ全域で反射光の強度を変調する。別の一般的な種類のライトバルブは、ディスプレイ表面上に反射される1画素あたりの光量を変更するために、2つの姿勢間で個別に傾斜可能な可動マイクロミラーアレイを有するデジタルマイクロミラーデバイスチップ(多くの場合「デジタルライトバルブ」として公知である)である。デジタルミラーデバイスは、色シーケンスモードで動作するプロジェクションシステムで単一の空間変調器用いるのに十分な速さで切り替わる。これにより、遅い空間変調器を備える色ごとの変調器設計よりもコストを押さえることが出来る。
[0004]従来は、デジタルプロジェクションシステム用の光源として明るい白色光を用いていた。例えば、明るい白色光源はUltra High Pressure(UHP)アーク放電ランプを用いて実施されることが多いが、これはPhilips Electronicsが開発した非常に高輝度の小型白色光源である。白色光源から赤色、緑色、青色光を分離するのに回転カラーホイールが用いられる。こうして、カラーホイールの赤色フィルタが白色光源に位置合わせされると、赤色光が画素の赤色用の空間変調器上に集束されるが、カラーホイールの緑色および青色フィルタについても同様である。
[0005]従来のDLPシステムにはいくつか欠点がある。第1に、画像が所望の明るさとはならないことがある。従来の白色光源は限られたルーメン数の光しか生成しない。加えて、従来のDLPシステムはかなりの量の光エネルギーを無駄に消費する。第2に、彩度等の表示画像の属性にはカラーホイールによって悪影響を受けるものがあり、これによって表示画像にアーチファクトが入りかねない。第3に、DLPシステムは高価な光学素子を含む。
[0006]発光ダイオード(LED)は白色光源の代替となるものである。しかしながら、従来のLED光源はUHPランプよりも高価になりやすい傾向がある。加えて、表示スクリーンに結合可能な輝度およびルーメン数がUHPランプと比較してLEDは約1/2低いのが一般的である。その結果、LEDにはプロジェクションディスプレイシステムの光源として多くの制約がある。
[0007]半導体レーザは、ディスプレイシステムの光源として数多くの潜在的な利点を有する。半導体レーザは、高輝度、低エタンデュ(etendue)、拡大された色域、および変調能力を有している。例えば、異なる色で光を生成するために数個の異なる色の離散レーザをパッケージ可能である。
[0008]しかしながら、従来技術の半導体レーザは、ディスプレイシステム用の光源としていくつかの欠点を有している。UHP白色光源と比較すると、従来の半導体レーザはコスト競争力がなく、パワーが低い(すなわち全ルーメン数が少ない)。加えて、半導体レーザは、半導体レーザの高いコヒーレンスのために許容できないスペックル特性を有するのが一般的である。ディスプレイシステムに関しては、高度のスペックルが、散乱中心からの建設的および相殺的な干渉のせいで画像全域にわたる明暗パッチを生じさせることになる。
[0009]従来技術では、半導体レーザが多くのプロジェクションディスプレイ用途においてUHPランプに対してコスト競争力がないことが公知である。例えば、リアプロジェクションテレビ(RPTV)については、約100ドル未満の総コストで光源がそれぞれの色に対して300〜600ルーメンの光を提供しなければならないことが公知である。例えば、K.Kincade,“Optoelectronics Applications:Projection Displays:Laser based projector target consumer market”,Lasers Focus World,December 2005を参照のこと(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。レーザベースのシステムについては、300〜600ルーメンの光が各色に対して約3〜5ワットに対応する。しかしながら、従来技術では、必要な輝度と十分なビーム特性を有する市販の半導体レーザがRPTVシステムに要求される100ドルの総価格に合わなかった。
[0010]可視半導体レーザのコストは多くのファクターに左右される。赤色、緑色、および青色(RGB)を生成するのに非線形周波数変換プロセスを用いることができる。しかし、従来のアプローチでは製造が困難な複雑なシステムを生じさせてしまう。従来の可視高出力半導体レーザは、波長制御や偏光制御を維持し、励起光源の周波数変換を行うために様々な光学素子を必要とする。例えば、Sunnyvale,CaliforniaのNovalux,Inc.により開発された可視半導体レーザのProtera(登録商標)製品ラインは、拡大キャビティ面発光レーザ構造に基づいている。可視光を生成するために設計された拡大キャビティレーザは、レーザの耐用期間中の動作条件の範囲にわたって光学特性を安定化するために数多くの光学素子を含む。加えて、励起光源の周波数を二倍化するために非線形結晶を含めんでもよい。光学素子は、まずアラインメントされ適切なアラインメントが保たれなければならないが、これが製造のコストや複雑さを増すことになる。一般的に言えば、高出力可視半導体レーザの製造コストはパッケージされた光学デバイスに追加されるそれぞれの付加的な光学素子とともに増加する。さらに、厳密なアラインメントが要求される各光学素子が最終的なレーザアセンブリに大幅な追加コストをもたらしている。
[0011]加えて、半導体レーザのフォームファクターもプロジェクションディスプレイシステムにおける重要な検討事項である。プロジェクションディスプレイシステムの全体サイズは時を経て劇的に小さくなってきた。例えば、Derraら,“UHP lamp systems for projection display applications,”J.Phys.D:Appl.Phys.38(2005)2995−3010を参照のこと(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。UHPランプの小型化により、UHPランプの反射器サイズが50×50mm2未満または一辺が2インチ未満まで小さくされてきた。30mm径、すなわち一辺が約1インチの正方形領域に対応する面積(設計目的)の反射器を持ったUHPランプも普及している。DLPチップは、1インチ角未満のアクティブ(マイクロミラー)領域を持った約2インチ角のサイズが一般的である(例えば、1辺が約0.55インチ〜0.75インチのDLPチップもある)。よって、UHPランプは、サイズが約1〜2立方インチの小さいフォームファクターに急速に近づいている。マイクロディスプレイ用途によっては、より一層小さい体積(例えば1立方インチ)が望ましい。比較として、Sunnyvale,CaliforniaのNovalux,Inc.により開発された高出力可視拡大キャビティ面発光半導体レーザのProtera(登録商標)製品ラインは、特定色の各レーザについて、約4インチ(101.6mm)の長さ、1.79インチ×1.59インチ(44.5×44.5mm2)の断面積を有する11.6立方インチパッケージから5〜20mWを生成する。このProtera(登録商標)パッケージは、エタロン等の波長制御素子、偏光制御素子、面発光ゲイン素子、周波数二倍化結晶、および他の制御素子用のスペースを含む。しかしながら、プロジェクションディスプレイシステムでは、要求される波長域および総出力を有するようにするためには、Protera(登録商標)レーザのセットの全体積が従来のUHPランプと比較して巨大なものとなってしまうような、数多くの異なる波長のProtera(登録商標)レーザが必要となる。
[0012]従来技術では解決できない別の問題には、半導体レーザを全体的な光エンジン解決法の一部として最適に利用する方法もある。半導体レーザは、UHP白色光ランプとは異なる光学特性を有している。故に、単純にUHPランプを半導体レーザと直接置換するだけでは、プロジェクションディスプレイシステムにおいて半導体レーザの潜在的利点を十分有効に生かすことはできない。
[0013]したがって、上述の問題に鑑みて、本発明の装置、システム、および方法が開発されたのである。
発明の概要
[0014]垂直外部キャビティ型面発光型レーザ(VECSEL)のアレイは、エミッタのアレイを有する利得チップと、端部反射器と、キャビティ内周波数変換用の非線形結晶と、波長制御素子と、偏光制御素子とを含む。パッケージング中に位置合わせされなければならないコンポーネントの数は、VECSELの個々のコンポーネントのうちの少なくとも2つの機能を組み合わせる光学ユニットを形成することによって低減される。
[0015]一実施形態では、体積型ブラッググレーティングは、端部反射器と波長制御素子の両方の機能を有する光学ユニットとしての機能を果たす。非線形結晶又は偏光制御素子などの体積型ブラッググレーティングに他の光学コンポーネントを取り付けることによって、大きな光学ユニットが形成されてもよい。
[0016]別の実施形態では、少なくとも1つのミラー光学素子が、利得チップに取り付けられる。一実施態様では、レンズのアレイが利得チップに取り付けられる。さらに別の実施態様では、偏光制御素子が、利得チップ上に形成される。
[0017]本発明は、添付の図面とともになされる以下の詳細な説明に関連して十分に理解されよう。
発明の詳細な説明
[0059]同様の参照番号は図面の複数の図を通して対応する部分を指す。
I.プロジェクションディスプレイ用拡大キャビティ面発光光源の基本構造
[0060]図1は、ライトプロセッシング(LP)システムが必要とする複数の異なる色で光を生成する光源100を示す側面図である。赤−緑−青(RGB)LPシステムでは、光源が赤色、緑色、および青色光を生成する。半導体レーザの第1のアレイ105は、2個以上の個別のレーザから青色光の複数のビーム107を生成するのに用いられる。半導体レーザの第2のアレイ110は、2個以上の個別のレーザから赤色光の複数のビーム113を生成するのに用いられる。半導体レーザの第3のアレイ115は、2個以上の個別のレーザから青色光の複数のビーム118を生成するのに用いられる。このように、光源100は異なるセットのレーザを含む。2個以上のレーザの個別のセットがLPシステムで用いられる特定の色の光を生成する。しかし、以下でより詳細に述べるように、好ましい実施形態では、スペックルを低減するために、あるセットの個別のレーザが同じセットのレーザに対して略インコヒーレント(例えば非フェーズド(un−phased))になるように設計されている。図1では、各レーザアレイ105、110、および115が4個の個別のレーザエミッタ(図示せず)から4本のビームを生成するとして図示されている。しかし、より一般的には、各レーザアレイ105、110、および115が任意の数の個別のレーザを有していてもよい。
[0061]一実施形態では、光源100の個別のレーザおよび光学素子(図示せず)は、光源100が均一に空間光変調器(図示せず)を照明するようアレイ105、110、および115の個別のビーム107、113、および118が少なくとも部分的に重なるように、配列されているのが好ましい。空間光変調器は、マイクロミラーを有するデジタルミラーライトバルブ(場合によっては「デジタルライトバルブ」として公知である)等のライトバルブ、液晶素子アレイから形成されたライトバルブ、またはliquid crystal on silicon(LCOS)空間変調器等のライトバルブとしてもよい。個別のビーム107、113、および118の初期の重なり合いは、例えば部分的なものだけとし、追加の光学素子(図示せず)により増大させてもよい。
[0062]アレイ105、110、および115のうちの1個以上は、非線形周波数コンバータ120、125、または130を用いて光源発光周波数を異なる周波数の出力色に変換することができる。非線形周波数変換は、1つの光源周波数で放出される光を別の周波数に変換可能とする。例えば、一実施形態では、個別のレーザの半導体ゲイン素子により生成された光源レーザ周波数を周波数二倍化することにより、赤色、青色および緑色波長が生成される。別の実施形態では、赤色レーザが赤色波長域で直接動作するが緑色および青色は周波数二倍化により生成される。あるいは、非線形光学プロセスによりパラメトリックに低周波数変換される緑色レーザのアレイで赤色レーザを構成することができる。非線形周波数コンバータは、それぞれ個別のレーザのレーザキャビティ内に配置してもキャビティ外に配置してもよい。非線形周波数コンバータとして用いてもよい非線形結晶の例には、周期的に分極されたニオブ酸リチウム、周期的に分極されたタンタル酸リチウム、および周期的に分極されたKTPが含まれる。これらの非線形結晶は、酸化マグネシウム等の適切なドーパントを用いてそれらの信頼性および/または分極性を改善することができる。
[0063]光を結合してさらなる周波数安定性をもたらすために、出力カプラ135、140、および145を含めることもできる。例えば、出力カプラ135、140、および145は、光を結合し、個別のサブアレイの周波数制御を行うために体積型ブラッググレーティングを含んでもよい。一実施形態では、例えば、出力カプラの1個以上が体積型ブラッググレーティングを備えている。加えて、各レーザの波長を制御するために1個以上の波長制御素子(図示せず)を含めることもできる。波長制御素子の例には、キャビティ内表面グレーティング、体積型グレーティング、固体エタロン、薄膜コーティングエタロンおよびリオフィルタが含まれる。これらの波長制御素子は、別体としてもよいし、小型化およびコスト削減の理由から他のキャビティ内素子とモノリシックに組み合わされてもよい。
[0064]本発明の一態様は、全体的な光パワーが光源100の全レーザ数にほぼ対応している。具体的な例としては、それぞれが少なくとも1列のレーザを有する3個の異なる半導体ダイから光源100を形成することができる。加えて、アレイ105、110、および115の少なくとも1個に対して2個以上のダイのように、タイル形状に追加のダイを含めることによりパワー出力をさらに上げることができる。パッケージ化された光源100は、例えば、1平方センチメートルオーダーの総面積を有するエミッタアレイを形成することもできる。一実施形態(図示せず)では、2個以上の光源100からの出力が光学的に合成される。加えて、光学技術により同じ色を放出するアレイで個別のアレイ105、110、および115の出力を合成することもできる。2個以上のアレイ105、110、および115または2個以上の光源100の光出力を光学的に合成する技術の例には、ダイクロイック光学系または偏光ビーム合成光学系が含まれる。
[0065]本発明の別の態様は、赤色、緑色または青色アレイ105、110、または115を拡大キャビティ面発光半導体レーザから形成することができる。図2は、例示的な従来技術の拡大キャビティ面発光半導体レーザ200を示す。拡大キャビティ面発光レーザは、端面発光半導体レーザまたは従来の面発光レーザをしのぐ数多くの利点を有する半導体レーザの一種である。拡大キャビティ面発光レーザは、半導体ゲイン素子内に配置された少なくとも1個の反射器を含むのが一般的である。例えば、量子井戸ゲイン領域210の片側で成長させたキャビティ内のブラッグミラー205対が、ファブリーペロー共振器を形成して基本レーザ波長の動作波長を規定する。半導体ゲイン素子と離間した追加の外部反射器215が光共振器の拡大キャビティを画定し、付加的な波長制御をもたらす。量子井戸ゲイン領域210、ブラッグミラー205、および外部反射器215の適切な選択により、基本波長を大きい波長域から選択可能である。次に、光学結晶220の波長二倍化により基本波長が波長二倍化され、所望の色で光を生成することができる。
[0066]光周波数二倍化光学結晶220または他の周波数変換デバイスを含む追加の光学素子を、キャビティ内周波数変換用の拡大キャビティの光共振器に含めることができる。別の例としては、モードロックレーザを形成するために可飽和吸収体(図示せず)を拡大キャビティ(または半導体ゲイン素子内)に含めてもよい。効率的なモードロック拡大キャビティ半導体レーザについては、本願と同日に出願された同時係属中の米国特許出願第11/194,141号“Apparatus,System,and Method for Wavelength Conversion of Mode−Locked Extended Cavity Surface Emitting Semiconductor Lasers”に記載されている(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。
[0067] Sunnyvale,CaliforniaのNovalux,Inc.により開発された拡大キャビティ面発光半導体レーザは、高い光パワー出力、長い動作寿命、正確なレーザ波長の制御、空間光学モードの制御を実証しており、簡便な製造および試験に面発光の利点をもたらし、また赤色、緑色、青色で光を生成するために第二高調波周波数二倍化器等の光周波数変換素子を含めるように適合することができる。加えて、高出力拡大キャビティ面発光レーザのアレイは、光源100が少数の異なる半導体ダイ、周波数コンバータ、および周波数制御素子のみを用いる製造性の高いプロセスにおいて作製できるように、単一のダイ上で作製することができる。その結果、拡大キャビティ面発光アレイを用いる光源100は、赤色、緑色、青色で従来の白色光LPシステムよりも大きい有用なパワー出力を有するように製造することができ、また高い製造性によって手頃な価格で製造することができる。Sunnyvale,CaliforniaのNovalux,Inc.により開発された個別の拡大キャビティ面発光半導体レーザおよび周波数二倍化面発光レーザについて説明する背景情報は、米国特許第6,243,407号、第6,404,797号、第6,614,827号、第6,778,582号、および第6,898,225号に記載されている(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。拡大キャビティ面発光レーザの他の詳細は、米国特許出願第10/745,342号および第10/734,553号に記載されている(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。加えて、例示的な拡大キャビティ面発光半導体レーザに関する詳細については、以下でより詳しく説明する。
[0068]一実施形態では、光源100のレーザがパルスモードで動作されるように設計されている。各アレイ105、110、および115のそれぞれ個別のレーザを駆動する電気コネクタ(図示せず)が設けられている。各レーザアレイ105、110、および115の駆動電流および/または電圧を制御するために、レーザコントローラ180が用いられる。レーザコントローラ180は、個別のレーザアレイ105、110、および115をパルスモードで動作可能とするのが好ましい。一実施形態では、レーザコントローラ180が個別のレーザアレイ105、110、および115を順次、すなわち、ある時間に赤色光を、別の時間に緑色光を、また別の時間に青色光を生成するように動作可能とし、それによってLPシステムにおける光フィルタ用のカラーホイールの必要性をなくす。一実施形態では、個別のレーザおよびサブグループのレーザが独立にレーザコントローラ180によりアドレス可能である。レーザコントローラ180は、選択された出力特性を維持するために、光学モニター(図示せず)からのフィードバックを用いて駆動電流および/または電圧を調整することもできる。例えば、レーザコントローラ180は、LPシステムにおいて所望のグレースケールを維持するために駆動電流またはパルス幅を調整することができる。一実施形態では、製造されたレーザアレイ105、110、および115が、少なくとも1個の余剰レーザを含む。この実施形態では、レーザコントローラ180が各アレイで用いられる最初のセットの動作可能なレーザを決定する。次に、予備に取っておいた余剰レーザが必要に応じて故障したレーザと差替えとなるようオンされ、これによって光源100の有用な寿命が延びる。
[0069]一実施形態では、各レーザアレイ105、110、および115がパルスモードで駆動される。パルスモード動作は放熱の低減を含む数多くの利点をもたらす。加えて、パルスモード動作はパルスパラメータに応じて有益なスペクトル広がりをもたらす。ライトバルブは、反射または透過状態に変化するために必要な特性時間とそれに関連する最小オンタイムを有しているのが一般的である。パルスモード動作において、光パルス間の周期がライトバルブの最小オンタイムと比較して小さくなるように、光源100が高い繰り返しレートを有するパルスを生成するのが好ましい。その結果、高いレートによって、事前に選択された最小数のレーザパルスが最短の可能なオンサイクル中にデジタルライトバルブのマイクロミラーに衝突可能となり、グレースケール解像度が改善する。例示的な繰り返しレートは1MHz程度の速さだが、これはテレビ、ビデオおよびコンピュータグラフィックスに用いられる従来のフレーム繰り返しレートに比べて大幅に速い。より一般的には、繰り返しレートを特定のLPシステムの特性に基づいて選択可能である。例えば、レーザ繰り返しレートは、会議室のプロジェクタおよび家庭用テレビで使用される市販のデジタルミラーライトバルブまたは液晶ライトバルブを用いてフルグレースケールを達成し得るに十分な高さであるのが好ましい。
[0070]光源100は、LPシステムにおけるスペックルを実質的に許容レベルまで低減する、すなわちスペックルをLPシステムで画像を見る人に許容可能な鑑賞経験を与えるレベルまで低減するように設計されるのが好ましい。光学の分野では周知のように、コヒーレント光が散乱中心から反射されるとスペックルが発生する。結果として生じる干渉が斑点のように見える明暗パッチをつくる。スペックルは、スペックルパターンの山から谷までの強度変調、すなわち明暗パッチ間の山から谷までの強度の百分率変化により数値的に特徴付けることができる。LP技術で時として用いられる規則は、許容可能な鑑賞経験を達成するにはLPシステムにおいて約4%以下のスペックル変調が要求されることである。
[0071]レーザで照明されるLPシステムに関して、スペックルはコヒーレント光がLPシステムのライトバルブまたは他の光学素子における散乱中心から反射する際に発生する。スペックルは、プロジェクション画像の光学的品質を低下させる光の不均一状態をつくる。スペックルは、高度にコヒーレントな光を単一のレーザ光源から受け取るLPシステムにおいて特に深刻な問題である。光学の分野では周知のように、コヒーレンスは光波が建設的および相殺的に干渉する能力に関連している。光周波数、位相および空間属性の狭い分布を有する単一のレーザ光源は高度にコヒーレントであるため、スペックルを生じやすい。
[0072]本発明の一実施形態によれば、光源100を用いたLPシステムにおいて、単独または組み合わせて用いることができる複数の異なる手法により光源100の光学属性(例えば、位相やスペクトル幅)の分布を大きくすることによって光源100におけるコヒーレンスを低下することにより、スペックルが低減される。第1に、光源100において互いに対して略インコヒーレントな同色のレーザ数を増やすことにより、スペックルは減る傾向がある。単一のアレイ105、110、および115において各レーザが同色でコヒーレントなレーザ光を放出したとしても、スペックルの原因となる干渉効果については異なる位相を有する同色の非フェーズドレーザが互いにインコヒーレントである。その結果、非フェーズドレーザ数が増えるに従い非フェーズドレーザのアレイ105、110、または115についての全体的な照明均一性が改善するように、スペックルにより誘発される各非フェーズドレーザの強度変動は他のレーザのものとは無関係である。特に、スペックルは同等の振幅を有する同色の非フェーズドレーザ数の平方根に反比例して減少する傾向がある。したがって、各アレイのレーザが互いに対して非フェーズドで動作するように設計される、すなわち個別のアレイ105、110、または115がアレイ中の2個以上のレーザの周波数および位相を互いに大きく連動させるような大きなレーザ間フィードバックを与えないように設計するのが好ましい。第2に、スペクトルの広がりによりスペックルが低減するので、スペクトルを広げるあらゆる動作モードはスペックルを減らす傾向がある。半導体レーザのスペクトルを広げる手法には、スペクトルの広がりをつくるように選択されたパルスパラメーター(例えばオンタイム)でレーザをパルスモードで動作すること、スペクトルの広がりをつくるように選択されたレーザを高周波変調すること、レーザをスペクトルの広がりをつくるようにモードロックすること、およびードロックレーザをパルスモードで動作する等これらを部分的に組み合わせることが含まれる。第3に、アレイ105、110、および115の個別のレーザは、各レーザの周波数、位相、および方向(角度)分布を大きくするために、多数の周波数、軸、または空間モードで動作するように設計することができる。第4に、ビーム107、113、および118の方向、位相、および偏光情報をスクランブルしてコヒーレンスを低減するために光学素子を用いることができる。
[0073]レーザアレイ105、110、および115で用いられる拡大キャビティレーザは、安定した光学特性を有しているのが望ましい。加えて、周波数二倍化を用いる場合には、第二高調波変換プロセスの効率を下げるディフェージング効果を最小限に抑えるのが望ましい。図3は、光学モードを安定化し、周波数二倍化プロセスにおける有害なディフェージングを低減するためのレンズ310を有する拡大キャビティ面発光レーザ300を示す。各レーザゲイン素子305は光学ゲイン領域を含んでおり、1個以上の分布ブラッグ反射器(図示せず)を含んでもよい。一実施形態では、エッチング加工レンズ310が半導体基板315上に形成されている。代替的な実施形態では、エッチング加工レンズ310の代わりに光学ガラス等の従来の光学材料を用いて形成された外部レンズ(図示せず)が用いられる。作製された例示的なエッチング加工レンズ310が詳細な挿入図350に図示されている。非線形光学材料320は、レーザ共振器に含まれている。共振ミラー325は非線形材料上に直接配置されるか、またはグレーティングデバイスとしてもよいが、このいずれもが出力波長を非線形光学材料320の位相整合波長に合わせる制御をするように設計されている。しかしながら、アレイの個別の素子を作製するために他の手法を用いることもできることが理解されよう。
[0074]キャビティ内レンズ310は、反共焦点形態における安定した横モード(好ましくはTEM00モード)を提供するのに用いられる。この配列では、順方向の高調波光がフラット出力カプラ(図示せず)を透過し、基本波長に対して高い透明性ならびに高調波長で高反射性となるようにコーティングされているレンズ310の表面から、逆方向の高調波光が反射される間に、赤外光(すなわち、周波数二倍化される半導体により生成される基本周波数光)が非線形光学材料320内に集束される。このレンズ素子は、高調波光用の凸面鏡として働き、基本波長レーザビームに重なると非線形材料の強度が低くなる。
[0075]非線形光学材料320の基本レーザビームと重なった領域での低下した強度は、全体の非線形変換効率を下げるようなあらゆるディフェージング効果を低減する利点を有することになる。順方向および逆方向波のビーム発散もほぼ同じである。順方向波の高調光のモードウエスト位置は出力ミラー位置に近接しているが、逆方向波では反射ミラーの仮想画像にある。これら2本のビームは同じ方向だが若干異なるビーム角度で伝播する。
[0076]キャビティ内の集束レンズ310は、半導体の表面をエッチングするかガラスまたはバイナリ光学レンズの導入により作成可能であるが、これらの全てをアレイ形式で作成可能である。キャビティ内へのこのようなレンズの導入は、正のdn/dt(温度による屈折率変化)を持った材料を有する大半のレーザシステムに通常存在する熱レンズ効果の様々な効果を低減することになろう。しかしながら、キャビティの空間モードを安定させるためだけに熱レンズに頼る実施形態も本発明の範囲内に含まれる。この場合には、逆方向伝播する第二高調ビームを抽出するより従来型の方法、例えば45度ビームスプリッタを介して用いることが可能である。
[0077]非線形結晶320は、出力ミラー(図示せず)かその付近に配置されるか、直接成膜された、基本波長で高反射性かつ高調波で高透過性であるミラー325を有してもよい。別体の出力ミラーを用いる場合には、それを波長選択用体積形ホログラフィックグレーティングまたは任意の他のレプリカグレーティングまたは共振エタロン反射器等の波長共振反射器で構成することもできる。あるいは、ミラーを従来の広帯域コーティングを施したガラス素子としてもよく、また固体または薄膜成膜エタロン等の波長セレクタを傾斜させた角度でキャビティ内に配置してもよい。このような素子(グレーティングまたはエタロン)は、他の素子と別体でも(小型化およびコスト削減のために)一体でもよい。例えば、従来のグレーティングまたは薄膜干渉フィルタは、非線形結晶のくさび形表面または出力ミラーの第2(キャビティ内のような)表面に成膜される。出力ミラーは、非線形光学材料320が置かれたキャビティ内に中間焦点を与えるように設計された凸面反射器としてもよく、これによって非線形結晶内の有効光路長を二倍化する。
[0078]光源100をライトバルブのほかに異なる型の空間変調器とともに用いるように適合可能であることが理解されよう。一実施形態では、光源100が走査光学系で用いられるシングルビームを生成するように設計された光学レンズ系を有してもよい。走査光学系では、空間変調器がレーザビームをX−Yラスタモーションで走査するのに用いられるミラーを備えている。走査光学系に対しては、アレイ内のビームのそれぞれがほぼ回折限界的であるのが好ましい。
[0079]図4は、本発明の一実施形態によるLPシステム400のブロック図であり、光源100からプロジェクションスクリーン405までの光路の概略レイアウトを示している。光源100からのビームは、ほとんどの場合に矩形である光ガイド410内に集束され、光ガイド410からビームが出た後はライトバルブ420(例えばデジタルライトバルブ)上に集束される。光源100により生成されたビームは、初期の重なりをいくらか有している。しかしながら、ビームの重なりを大きくするように光ガイドを選択することもできる。特に、光ガイド410内でビームをスクランブルするために導波路の内部反射、回折、モード変換、または他の電磁的性質を用いることができる。この場合には、全てのビームがある程度の均一性を持ち、各ビームそれぞれに存在しうる低いスペックルを持って重なり合う。モードロックレーザアレイの場合には、モードロックパルスのスペクトル広がりから付加的なスペックル低減が発生する。複数の空間またはスペクトルモードにおけるチャーピングまたは動作によりスペクトル広がりを有するパルスデバイスもある程度のスペックルを低減する。
[0080]システム400における個別のレーザは非フェーズドとしてよい。パルス動作は個別のレーザのスペクトルを広げる傾向があるため、それらのコヒーレンスの度合いを下げ、スペックルを低減する。単一レンズ430が、互いに平行に進むレーザビームの全てを各ビームの径およびレンズ430の焦点距離により決まる1個の焦点に集束する。各サブアパーチャはレーザビームをアレイのピッチに拡大することによって埋められ、次に単一レンズ430で順次集束されて全てのビームが最小のスポットサイズとなる。入力レーザビームは、ビームをスクランブルする傾向がある光ガイド410内で何度か跳ね返り、出力光がデジタルライトバルブに合わせて均一に埋められた矩形パターンで光ガイド410から出てくる。
[0081]一実施形態では、システム400がレーザアレイを制御するためのレーザコントローラ180とライトバルブを制御するためのライトバルブコントローラ480を含む。この2個のコントローラは互いに通信するためのリンク490を有しているのが好ましい。一実施形態では、レーザコントローラ180が、光源100の繰り返しレート等の動作属性を制御する。レーザコントローラ180がレーザ出力をモニタして出力パワーを制御するためにセンサー(図示せず)を含めてもよい。モードロックレーザの場合には、レーザをモードロックするために用いられる可飽和吸収体の動作をレーザコントローラ180が制御可能としてもよい。
[0082]レーザコントローラ180は、フレーム中の特定の部分の時間に光源100の赤色、緑色、または青色レーザのいずれが発光するかについても決定する。一実施形態では、LPシステム400がカラーフィルタホイールを有していない。その代わりに、光源100の赤色、緑色、および青色レーザを同期させてフレームの異なる時間中にバーストモードで動作することによって、フレームの赤色、緑色、および青色部分が生成される。バーストモードでは、1セットのレーザのみ(例えば、赤色、緑色、または青色レーザ)が一連の光パルスを生成するのに用いられる。よって、表示される各フレームにおいて、レーザコントローラとライトバルブコントローラ480が互いに通信して同期し、画素の赤色部分がライトバルブ420によりプロジェクションされる際には赤色レーザのみをオンにし、画素の緑色部分がライトバルブ420によりプロジェクションされる際には緑色レーザのみをオンにし、画素の青色部分がライトバルブ420によりプロジェクションされる際には青色レーザのみをオンにする。この協働により、単一のデジタルライトバルブチップを備えたシステムがカラーホイールフィルタ無しで済み、信頼性および効率を改善し、表示画像の品質を改善する。
[0083]加えて、実施形態によっては、デジタルライトバルブの個別のミラー等のライトバルブ420の個々の素子の応答時間に相当するように、レーザ反復レートがレーザコントローラ180により調整される。デジタルライトバルブが、マイクロミラーのオン/オフ応答のパルス幅変調によりグレースケールを制御する。デジタルライトバルブの個別のマイクロミラーは、マイクロミラーをオフ状態からオン状態間で回転するのに関連した上昇および下降時間を有する。特定の色(例えば赤)のレーザ光のバーストは一連のパルスである。前述のように、比較的高い公称パルスレートの選択はグレースケールの制御を容易にする。高いパルスレートにより、(バースト中の光パルス数はプロジェクションスクリーンに偏向可能となるので)比較的小さい最小ミラーオンタイムを用いることができる。
[0084]一実施形態では、光源100の各レーザのパルス繰り返しレートは、デジタルライトバルブのマイクロミラーの最も重要な上昇/下降部における光応答を最適化するように調整される。例えば、デジタルライトバルブのミラーは10〜15度等の有限の動作範囲内で傾斜する。しかしながら、傾斜の最後の1〜2度はグレースケールの制御に大きく影響する。マイクロミラーのオン/オフ応答に基づいて繰り返しレートを調整することにより、デジタルライトバルブの光応答を最適化することができる。デジタルライトバルブならびに各レーザアレイ105、110、および115の十分な同期により、マイクロミラーのオンまたはオフ周期に対して正確な時間で一連のパルスを開始または停止するために各レーザアレイバーストのオンおよびオフを有利に合わせることができることも理解されよう。加えて、レーザアレイ105、110、および115のレートをバースト中に変更できることが理解されよう。
[0085]一実施形態では、各アレイ105、110、115を有効パルスレートを増加させるように異なる位相で駆動される別個のサブセクション(「サブアレイ」)に電気的に分割することにより、有効パルスレートが増加する。この実施形態では、単色の異なるサブアレイが互いに対して位相が遅延されたそれぞれ個別のドライバでパルス駆動される。位相差は、例えば各色のパルスの全繰り返しレートを増加するために、サブアレイ数により除算したパルス繰り返しレートの何分の1かになるように選択することができる。これにより、適切なグレースケールを達成し、マイクロミラーのデジタルミラーパルス幅ならびに上昇および下降時間に適合させるために、任意のアレイの個別の素子に対するあらゆるパルスレート限界が克服されるようになる。
[0086]図5は、光源500の各レーザからの光出力をライトバルブ540のプロファイルと一致するプロファイルへと変換するように設計された光学レンズシステム505(市松模様で図示されている)を含むプロジェクションシステムの実施形態を示す。例えば、個別のレーザ素子510は、その出力をライトバルブ540の出力と一致する光出力へと変換する光学素子を有している。同様に、別の個別のレーザ素子520が、その出力をライトバルブ540の出力と一致する光出力へと変換する光学素子を有している。この配列の利点は、ライトバルブ540の表面上の光均一性が光源500のどのレーザ素子が動作するかということとは無関係な点である。つまり、光学レンズシステム505の成果は、各レーザからの出力が同じプロファイルでライトバルブ540と重なることである。よって、1個以上の個別のレーザ素子510または520の故障がライトバルブ540全体の照明均一性に影響を及ぼすことがない。結果として、個別のレーザ素子が故障した場合に照明均一性を変化させることなく他のレーザ素子のパワー出力を増加してパワーの損失を補償することが可能である。さらに、この配列はパワー出力を維持するために必要に応じてオンされる余剰レーザの使用を容易にする。
[0087]一実施形態では、光学レンズシステム505が、光源500のアレイの各レーザビームをデジタルライトバルブ520上に結像される矩形トップハット強度プロファイル510内へと投射する。続いて光源500の各素子からの円形ガウスレーザビームがライトバルブの全領域を効率的にカバーするように方向付けられ、次にフロントまたはリアプロジェクションスクリーン上に結像される矩形トップハット光分布へと変換するのに回折光学素子等の光学素子を用いることができる。このレンズシステムは、反射型、回折型、または透過型のいずれとしてもよく、例えばガラスレンズアレイまたはデジタル光学レンズシステムから作成することができる。デジタル光学レンズシステムはプラスチック等の様々な材料から作成することができる。デジタル光学レンズシステムは、Huntsville,AlabamaのMEMS Optical,Inc.等の様々な業者から入手可能である。一例として、光学レンズシステム505は、円形ガウスレーザビームをそれぞれ生成するレーザアレイに対してトップハット強度分布を生成するように設計された非対称バイナリ光学レンズ配列を備えてもよい。より一般的には、ライトバルブ540上に結像される所望の強度プロファイル、光源500のレーザ配列の選択、光源500の各レーザのビーム特性を考慮したモデリング手法を用いて、光学レンズシステムを設計することができる。
[0088]光学レンズシステム505により、アレイの各レーザがデジタルライトバルブのプロファイルとほぼ一致する光ビームプロファイルを有することが可能となる。光学レンズシステムは、アレイの各レーザがデジタルライトバルブ上に投射されるほぼ同一の矩形トップハット強度プロファイルを有することが好ましい。これによって、各レーザがデジタルライトバルブとほぼ完璧に一致する。さらに、従来の3プリズムダイクロイックレンズシステムをLPシステムからなくすことが可能なため、LPシステムの全体の光学システムは、光学レンズシステム505の追加にもかかわらずコストを低くできる。加えて、個別のレーザの故障は他のレーザのパワーを調整することにより対応可能である。図5のシステムによれば、アレイからの全光パワーを制御可能なことにより、プロジェクションシステムが均一な光強度を有し、この強度をシステムの耐用期間にわたって維持することが可能となる。これは、アレイへの駆動電流を増加することにより、または後になってオンすることができる追加(余剰)のレーザ素子をアレイ内に有することにより達成することができる。
[0089]全ての素子が直列または直列および並列動作の組み合わせとなるように、各面発光レーザアレイ105、110、および115を配線することができる。こうして、少ない電流および少ない抵抗加熱により電源の効率が改善可能となる。加えて、直列配線アレイは、熱散逸を回避するように1つの電流で駆動される。さらに、常にオンされてカラーフィルタホイールを用いてランプからの他の波長を拒否しつつ1色だけを選択するランプとは対照的に、順に1/3の時間だけ各色サブアレイを駆動することが可能である。
[0090]三原色を生成する光源に関して本発明を説明してきたが、レーザアレイの特性および数を選択して所望の出力色のビームを実現することにより、異なる系列の色または4色以上の色を生成するように光源100および500を適合可能であることも理解されよう。このように、本発明が赤色、緑色、および青色(RGB)光源に基づく光プロジェクションシステムでの使用に限定されないことが理解されよう。例えば、光プロジェクションシステムがRGB以外の異なる色のセットを必要とする場合には、光プロジェクションシステムが必要とする異なる色のそれぞれを生成するレーザアレイを含むように、本発明の光源100および500を適合可能である。非線形周波数変換が、周波数を三倍化または四倍化することまで拡大適用されてもよいことは理解されるであろう。
[0091]偏光光と最も効率よく機能する空間変調器には複数種ある。一例として、偏光光を変調するある種の液晶変調器がある。実施形態によっては、偏光光を変調する空間変調器による変調を容易にするように選択された偏光で光源100および500が設計されることが理解されよう。
II.ディスプレイ用途の光源を駆動する方法
[0092]前述したように、半導体レーザは、高輝度、低エタンデュ、拡大された色域、および変調能力等のディスプレイとしての数多くの利点を有する。モーションビデオには固有の変調が必要とされるため、この後者の利点がディスプレイには特に重要である。光源で変調を注意深く用いることがディプレイシステム全体の利点を生じうる。
[0093]さらに、ディスプレイ用半導体レーザ光源は、所望の表示波長を作り出すために非線形光学変換を利用することもできる。これらのプロセス全てがパワーによってス−プラ(supra)線形的に拡大縮小する。結果として、パルス周波数二倍化半導体レーザは、平均入力パワーが不変または低下された場合であっても平均バイアス上で出力または効率を上げることが可能となる。しかしながら、パルス変調の利点を十分に活用するためには、半導体レーザ光源がレーザの駆動パラメータを空間光変調器と合わせる必要がある。
[0094]従来の白色光源を半導体レーザと置換することに関連する問題のいくつかが、白色光源、カラーフィルタ、空間変調器、プロジェクションレンズアセンブリ、およびプロジェクション表面の5個のコンポーネントからなる従来のプロジェクションディスプレイシステムを示す図6に関連して理解されよう。場合によっては、ディスプレイシステムがブラウン管を光源および空間変調器の両方として利用するか、光源が離散色のセットを生成し効果的にカラーフィルタを含む場合等には、光源が1個以上のコンポーネントを組み合わせてもよい。
[0095]ディスプレイシステムが動画の表示に用いられる場合、人間の目が追従可能なよりも速い速度で一連の静止画像を生成する。この速度は融合周波数と呼ばれ、24〜30Hzが一般的である。テレビ用のビデオ信号は、1秒につき60インターレース画像で符号化されるのが一般的である。インターレースは、画像を一連のストライプまたはラインとして表し、1画像につき1ラインおきに交互に表示することによって画像表示速度を上げる方法である。画像ごとに半分のラインしか描画されないので、速度を二倍化することが可能である。通常、このようなディスプレイシステムにおける1個の画像をフレームと呼んでいる。多くのプロジェクションシステムにおいて、画像は少なくとも3色チャネル、通常は赤色、緑色、青色の組み合わせで形成されている。場合によっては、ただ1個の変調器により各色の画像が順次生成される。これをカラーシーケンシャル動作と呼ぶ。
[0096]図7A、7B、7Cは、従来のプロジェクションシステムがどのようにカラーシーケンシャル動作用のカラーホイールを用いるかをより詳細に示している。図7Aは、カラーホイールを有する従来のプロジェクションシステムを示す。白色光源は集光光学系を持ったアークランプであるのが一般的であり、カラーフィルタは、回転軸周りに配置された一連のフィルタとして形成され、通常カラーホイールと呼ばれており、このアセンブリが回転すると、色があるシーケンスで発生するよう(例えば、カラーホイールの回転とともに赤色から緑色そして青色へと)順次に光源が構成要素の色にフィルタされる。このシーケンスの各色が続く最長の時間は、カラーホイールの回転速度およびホイール内のセグメント数によって決まる。この例の空間変調器は、順次各色に作用してスクリーン上に合成された画像を形成する単一の変調器からなる。この全てがビデオ信号の各フレーム中に発生する。このようなフィルタを用いる1つの結果は、フィルタ間の境界の1つが光源を掃引されると混合色の光が作り出されることである。この光がプロジェクション表面に到達するのを防がねばならない。これは、空間変調器を最小透過状態に設定することにより実現されるのが一般的である。故に、これらの時間帯は一般にブランキング時間と呼ばれる。図7Bは、ブランキング時間中のカラーホイール上のビームフットプリントを示す。図7Cは、単色の光がディスプレイ変調器を照明する場合のアクティブ時間中のカラーホイール上のビームフットプリントを示す。したがって、一例として、カラーホイール回転中の例示的な経時シーケンスを第1時間帯に赤色光、ブランキング時間、第2時間帯に緑色光、ブランキング時間、第3時間帯に青色光等とすることができる。具体例として、多くのDLPシステムにおいて、カラーホイールが約120Hzで回転して60Hzの速度で生成されるインターレースフレームをサポートしている。場合によっては、カラーホイールがさらに6個のセグメントに分割されて240Hzの等しい赤−緑−青回転速度を発生させ、高解像度ディスプレイをサポートするとともに視覚的なアーチファクトを低減する。したがって、この例では、完全なR−G−Bシーケンスが120〜240Hzの速度で繰り返されて60Hzで完全なフレームを生成するように、色が順次変化する。カラーホイールの有効回転速度を回転速度またはセグメント数の増加によりいくらか上げることができたとしても、ブランキング時間の有限幅のためにブランキング時間は実際的な制限を有効回転速度に課している。
[0097]従来技術(図示せず)の代替的なアプローチは、カラーホイールを構成要素色を空間的に分離するフィルタシステムと置換して、各色が個別の変調器に衝突するようにすることである。次に、変調された色がスクリーン上に投射される前に再合成される。このシステムでは、構成要素色を平行に処理することにより、カラーシーケンシャル動作に関連する問題のいくつかを取り除く。必要となる追加の変調器および光学系が、この平行配列をカラーシーケンシャルシステムよりも高価にする。したがって、消費者製品ではカラーシーケンシャルシステムがよく使われている。しかしながら、カラーシーケンシャルシステムが必要とするより高速の変調器は他のコスト削減と相殺可能であり、これは、より低速の変調器、例えば高温、ポリシリコン、液晶ベース変調器に基づくシステムが大幅に市場シェアを享受することを意味する。
[0098]特に興味深いプロジェクションシステムの種類は、高速バイナリ型の、すなわち変調器が各画素に対してオンおよびオフの2つの状態のみを有する空間変調器アレイを利用するものである。図8を参照すると、空間変調器800が、特定のスイッチング時間中にまたはオフのいずれかとされるマイクロミラー等の数多くの画素素子805を有している。図9に示すように、特定画素の光強度は、空間変調器800の画素素子805がオン状態とされ、カラーホイールにより特定の単色の光で照明されるフレーム中のスイッチング時間数を決定することにより選択することができる。従来のシステムでは、カラーホイールが次の色の位置まで回転する前に、カラーホイールが多数のスイッチング時間中に1色の光で照明する。したがって、例えば、個別の画素の赤色成分は、空間変調器の画素素子805がオン状態とされカラーホイールを介して赤色光を受け取るフレーム中のスイッチング時間数によって決まる。
[0099]このようなデジタル光変調器の例がTexas InstrumentsのDLP(登録商標)変調器である。これらのデバイスは、単一フレームを一連のサブフレーム(通常nを6〜10として2n個が一般的)へと分割することにより変調深度を達成する。特定の光レベルを達成するには、変調器がフレーム中に特定の画素がオン状態となるサブフレーム数を変更する。フレームの特定画素が表示される色は、変調器の対応する素子が各色に対して「オン」状態となるサブフレーム数によって決まる。所与の画素で必要とされる明るさに応じて、サブフレームの何分の1かについて個別の画素がオンされる。オンおよびオフサブフレームは、フレームの形成中に交互配置されるのが理想的である。留意すべきは、多くの市販システムでは、サブフレームレートが有効なカラーホイールの回転速度よりもずっと高速なことである。
[00100]従来のカラーシーケンシャル動作の1つの欠点は、単一フレームの形成中に光路が、例えば鑑賞者の頭や目の動きにより、またはディスプレイの一部が物理的に閉鎖されることにより遮断された場合に、フレームが1色または2色に強く偏って見えることである。例えば、赤色フィルタが位置合わせされて光路が部分的または全体的に遮断された場合に、フレームは赤色光の強度が下がったせいで緑色および青色に偏ってしまう。加えて、光路の一部のみが閉鎖された場合には、フレームはフレーム全体にわたって色が偏ってしまう。光路の遮断に関連する色の偏りは、従来のプロジェクションディスプレイシステムにおける鑑賞者にとって嫌な経験となりうる。
[00101]本発明による図10を参照すると、従来の白色光源が、赤色、緑色、および青色等の異なる色のレーザのレーザのセット1005を含む光エンジンアセンブリ1000と置き換えられている。光エンジンアセンブリ1000は、レーザのセット1005を空間変調器1010に光学的に結合する。制御エレクトロニクス1020には、レーザコントローラ1025、レーザドライバ1030、および空間変調器コントローラ1035が含まれる。レーザのセット1005は、例えば、本願で説明したレーザアレイのいずれのセットを備えてもよい。
[00102]レーザのセット1005の各色レーザは、別個にパルスモードで駆動可能である。光源にパルスレーザを用いることにより、カラーホイールが必要なくなる。加えて、パルスレートを空間変調器1010の個別のスイッチング時間(サブフレーム)以上の高速とすることができる。制御エレクトロニクス1020は、パルスレーザにより生成されるレーザパルスを空間変調器のスイッチングピリオドに同期させて、1色の整数のレーザパルスが1個のサブフレーム中に発光される。レーザ光源のパルスレートが一般のレーザにおける印加時間スケールまたは熱時間スケールと比較して速い、例えば>1kHzの場合には、通常、レーザ光源を準連続波(QCW)と呼ぶ。QCW半導体レーザは、その平均パワーよりも非常に大きいピークパワーを有する。これは、1つにはパルスモードでレーザを動作することにより、基本周波数での半導体レーザの出力を減少させる加熱効果が制限されるためである。加えて、周波数二倍化素子を含むレーザについては、変換効率も励起レーザパワーに関して非線形的に増加する。結果として、周波数二倍化半導体レーザのパルスモード動作が出力パワーを増加させるのに特に有益である。さらに、パルスモード動作はスペクトル広がりをも生み出してスペックルを低減する。
[00103]図11Aおよび11Bは、キャビティ内周波数二倍化がパルスモードで動作される拡大キャビティレーザについての本願の発明者等による理論的および実験的調査を示す。図11Aは、熱時定数と同程度かより長いパルス長を有するパルス用の電流に対する平均の基本および第2高調波発生(SHG)における変化を示す。平均パワーが多くのパルスの平均であることに留意されたい。デバイスの加熱により、基本パワー出力は個別のパルス中に減少する。図11Bは、パルスの時間の長さが熱時定数よりも大幅に短い例を示す。この場合には、SHG出力が電流とともに電流のより大きい範囲にわたって増加し、より高い平均パワーも生じる。より狭いパルスでSHG出力が改善するのは、第2高調波パワー出力が基本パワーの二乗に依存するためである。この基本パワー出力への二乗依存性の結果は、比較的狭いパルスを選択することにより時間平均の第2高調波発生が劇的に改善されるという状況をもたらしうる。
[00104]好ましい実施形態では、Mooradianによる特許(米国特許第6,243,407号“High power laser devices”、 米国特許第6,404,797号“Efficiency high power laser device”、米国特許第6,614,827号“High power laser”、 米国特許第6,778,582号“Coupled cavity high power semiconductor laser”に記載されたように(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)、レーザからの基本赤外光をディスプレイ用の可視光に変換するために拡大キャビティ中に非線形光学材料を備え、パルスレーザ光源が1個以上の拡大キャビティを持った面発光半導体レーザを備える。別の実施形態では、光源が本願のほかの箇所に記載のレーザのアレイから形成される。
[00105]半導体レーザは、異なる色が任意の2個の連続したサブフレーム間に来るように、サブフレーム速度でカラーシーケンス方式でも駆動可能である。図12の(A)および(B)は、画像の1フレーム形成中に時間の関数として高速バイナリ変調器を持ったシステム用のプロジェクションスクリーンでの単一画素に対する光の例を示す。これらの例では、レーザを駆動するための制御エレクトロニクスが空間変調器用の制御エレクトロニクスと同期される。結果として、整数のレーザパルスが空間光変調器のサブフレームに対応する各時間間隔中に生成される。加えて、制御エレクトロニクスは、カラーシーケンスの時間、すなわちシーケンスが次の色に移る前に何個の連続サブフレームが特定色のレーザパルスにより照明されるかを決定する。図12の(A)は、シーケンスが短時間のサブフレームを有する(例えば色が各新サブフレームを持ったシーケンスで動く「サブフレームカラーシーケンシャル動作」)例を示す。図12の(B)は、シーケンスが長時間のサブフレームを有する(例えば特定色のレーザパルスが、フレームのカラーサブフレームの多くまたは全て等のより大きいサブフレームグループにわたって各サブフレーム用に生成される)例を示す。1個の光エンジンが用途に応じてカラーシーケンスの時間を変更するよう適合可能なように、制御エレクトロニクスが異なる動作モードを有するように設計することができる。
[00106]図12の(A)では、レーザパルスが、従来の白色光源およびカラーホイールで可能なよりも速い速度でグループ化することなくシーケンス形式で表されている。特に、サブフレームレベルに対応するようにシーケンス形式を選択することができる。これにより、システム全体がフレームレベルでなくサブフレームレベルのカラーシーケンス方式で動作可能となる。これは、1フレーム中の光路における遮断がただ1つのサブフレームのカラー偏りレベルをもたらすことを意味する。あるいは、システムが比較的小さい整数のサブフレームのカラーシーケンス方式で動作するようにシーケンス形式を選択することができ、フレーム中の光路の遮断が少数のサブフレームだけにカラー偏りをもたらす。通常は26〜210の可能なサブフレームがあるので(スイッチング時間数に依存する)、偏りの低減は実際には検出不可能な問題を表すように十分でなくてはならない。このように、光路の遮断が強度の減少としてのみ認識されるので、空間変調器1010を1個だけ備えたシステムは、より複雑な多変調器システムと同様に機能するとして考えることが可能である。
[00107]粒状性の良いレベルでシーケンスフォーマットを得るためにカラーホイールを用いるのは実際的ではないことに留意されたい。理論的にはカラーホイールと白色光源を用いてサブフレームレベルでのカラーシーケンシャル動作が可能であろうが、極端に高い回転速度(1MHz程度)または多数のフィルタがそのエッジ周りに配置された複雑なカラーホイールのいずれかが必要となる。この後者のアプローチは、前述のブランキング問題の理由から極端に非効率でもある。多数のフィルタを有するということは、同じだけのブランキング時間数を意味し、これはカラーホイールの効果的な透過を減らして必要な光源からパワーを増やすことになる。
[00108]図12の(B)では、スクリーンに達した特定画素の光が赤色、緑色および青色光の一連のパルスからなり、ここでは色がグループ化されパルスのグループが順次現れる。場合によっては、パルスがスキップされ、スクリーンに達した単一画像用の特定色光全体を変調可能であり、すなわち現れるパルス(オン状態)が多いほど、そのフレームのその画素の特定色が明るくなる。
[00109]図12の(B)に示した動作の方法は、平均パワーレベルを改善する。前述のように、光源が周波数二倍化半導体レーザを備えることができる。赤外レーザの非線形周波数変換の基本的な態様の1つは、入力パワーに対する変換済パワーのスープラ線形依存性である。この結果、基本半導体レーザ励起光源をパルス駆動することにより平均ベースで出力が増大される。このことは、基本光源により供給される平均出力がそのCW平均レベルから低減される場合でも成り立つ。入力パワーと周波数変換パワーとの依存性がある指数n(ここでn>1)まで上げられた入力基本パワーに追従する場合には、CWのパルス駆動についての増大係数が、1/nのパワーまで上げられたCW基本パワーに対するピークパルス基本パワーの比により与えられ、1パルス周期中に基本がオンされる時間分の1が乗算される。したがって、レーザ光源が適正なタイミングで分離可能な各色のQCWモードで動作する場合には、図12の(A)のような動作が平均パワーのうちわずかだけを使用可能とするので、図12の(B)に示した動作モードにより光源の全平均パワーが使用可能となる。したがって、図12の(B)の方法がパルスレーザ光をより高効率で使用可能とする。
[00110]図12の(A)および(B)の両方をサポートする光エンジンの別の利点は、比較的低速の空間変調器を含む異なる型の空間変調器とともにレーザを使用可能なことである。加えて、光エンジンが可能な最高ボリュームで展開可能なように、光エンジンが様々なシステムと互換性があることが望ましい。
[00111]コストや複雑さが低減されたので、カラーシーケンスシステムは非常に普及している。これは、これらのシステムの要件が電子システム等の他の補助システム用に設計されてきたことを意味する。カラーシーケンスシステムで用いられる白色光源と置換するための新たな光源の設計では、これらの要件を認識し、それに従って光源を設計することが重要であり、これにより新たな光源が急速に採用されるようになるだろう。特に、多種多様のディスプレイ用途において光エンジンが従来のUHPランプの一般的な代替品として用いられるように、光源とコントローラを有することが望ましい。
[00112]デジタル空間光変調器を備えた光エンジンは、その高い速度により優れた表示特性を有しているが、光エンジンの全市場を表しているわけではない。結果として、ほぼゼロの反射性(全オフ)から非常に高い反射性(全オン)まで調整可能なliquid crystal on silicon(LCOS)変調器等の、低速だが広範囲の変調を有する光エンジン内で用いるようにレーザ光源を設計することが望ましい。このような空間変調器はフレームまたはサブフレーム中に変調の一定レベルを維持するのが一般的である。設計によっては、1色につき1個の空間変調器が用いられ、変調器は1フレームベースでレベルを変更する。他の設計では、空間変調器が1個だけ用いられ、変調器に衝突する色は順次変更される(カラーシーケンシャル動作)。光源が白色光を発光すると、カラーホイールが光源の順次フィルタリングを行うために用いられる。このようなカラーホイールはもともと異なるフィルタ間に境界を有しており、これらの境界の1つが光源を掃引する間には歪んだ色を鑑賞者に提供しないよう空間変調器をオフしなければならない。これらの時間をブランキング時間と呼ぶ。
[00113]図13は、比較的低速な空間変調器を有する光エンジン設計と互換性のあるカラーシーケンシャル動作用の単一のカラーレーザ光源を駆動する方法を示す。この例では、各色レーザがブランキング時間を除くフレーム時間の約1/3の間オンとなっている。したがって、この例では、多色レーザ光源の各レーザが従来の(比較的低速の)ブランキング時間を含むカラーシーケンスと互換性のあるシーケンスで駆動される。レーザの動作に既存のシステムとの互換性を持たせることにより、光エンジンがLCOS変調器等の比較的低速の非DLP空間変調器とともに用いられる従来の白色光源の代替物として有用となる。DLP(高速デジタル空間変調器)とLCOS(低速空間変調器)の両方がサポートされるデュアルモード動作を有するように、単一のレーザコントローラをプログラム可能であることが理解されよう。比較的低速の空間変調器の場合には、(1個のレーザ色がアクティブな時間が長いため)視覚アーチファクトがより目立つため、動作の方法は、レーザがアクティブになるとほぼすぐに所望のパワーに「パチン」と切り替わるレーザを有するとともに、アクティブ駆動されないレーザの出力を感知できないレベルまで最小限に抑えるべきである。これらの特性により、カラーホールを持たず低速空間変調器を備えたシステムで多色レーザ光源を用いることが可能となる。
[00114]図13を再び参照すると、レーザ光源を用いて比較的低速の空間変調器を照明するカラーシーケンスディスプレイシステムにおいて、レーザ色の1個を除いて全ての出力を他の色が表示されている時間中に感知できないレベルまで下げ、カラーホイールの必要性をなくすのが望ましい。感知できない基準レベルは、色汚染の最大レベル、すなわち赤色が対象とする色である場合に青色および緑色光がどの程度許容可能か等を決定することにより、特定のシステムについて計算することができる。ウォームアップ時間等の問題から各レーザ光源の基準レベル駆動をゼロまで下げるのは望ましくない。その代わりに、駆動スキームは、可視光出力を最小レベルに保持しつつ、すなわちレーザが事前に選択されたしきい値レベル未満で可視光を生成するが依然として熱的には大きいレベルで駆動される光学的には休止しているオフ状態に対応する駆動レベルを維持しつつ、光源のしきい値特徴を用いて駆動レベルを熱的に大きいレベルで保持することが可能である。熱レンズ効果で安定化されるレーザキャビティ等のレーザのしきい値を上げる1個以上の設計要素を組み込むことにより、このスキームを活用するように光源を設計することができる。加えて、可視光が例えば第2高調波発生(SHG)等の非線形プロセスにより生成される場合には、入力駆動と出力光との非線形関係を用いて上記効果を高めることができる。
[00115]図13に示すように、オーバードライブ時間をブランキング時間中に含めることができる。ブランキング時間を用いて、光源の光出力に関係なくレーザ光源を迅速に動作状態にするように駆動することができる。特に、前の項で説明したように、レーザがそのオフ状態(「アンダードライブ」)中に低減した駆動レベルで動作している場合には、ブランキング時間中にレーザが正常な動作温度に戻るようにオーバードライブされ、ブランキング時間が終了する前に正常な駆動レベルに戻される。
[00116]多くの用途において、レーザに対するパワー安定化スキームが提供されるのが望ましい。これを達成する従来の方法は、レーザのパワー−電流特性に基づくフィードバックループを構築することである。駆動変調もレーザアレイとの使用に適合可能であることに留意されたい。例えば、レーザアレイでは、レーザアレイを独立して動作可能な異なるセグメントへと電気的に構成することができる。したがって、特定色のレーザのサブセットを任意の時点でパルス駆動することができる。レーザアレイの異なる空間セグメントでパルス駆動を適用することができる。コヒーレントなロックを低減するためにセグメント化されたパルス駆動を選択することができる。加えて、出力パワーを安定化するためにセグメント化されたパルス駆動を選択することができる。しかしながら、レーザアレイをパルス駆動する好ましい実施形態では、パワー安定化スキームにおける追加の柔軟性が利用可能である。従来のパワー−電流ループの場合には、アレイの追加の利点は、アレイによる平均化によって単一のエミッタよりも安定した均一なパワー−電流関係をもたらすことである。パワーを安定化する別の方法は、固定パルス電流で動作するがパルス幅および/または繰り返しレートを変更することである。パワーを安定化または変更するまた別の方法は、選択的に一部またはアレイから個別の素子をオフするポイントまでもパワーを変更することである。これは、適性に設計された電気的スキームにより達成可能である。
[00117]このようなスキームは、空間変調器が検流計に取り付けられた一対のミラー等の高速ビームスキャナーディスプレイシステム用のレーザ光源の駆動にも使用可能である。これらのシステムは、画素変調レート(1フレームあたりの画素数を乗算したビデオフレームレート)で発生する別個の強度変調を必要とする。半導体レーザ等の直接電気励起レーザ光源は、これらのレートで直接変調可能である。画像の忠実性を維持するためには、正確に所定の強度レベルを生成可能であることが重要である。上述したように、レーザアレイを用いることによって、パワー−電流関係が平均化でより均一になるため、この要件がより容易に満たされる。加えて、パルス幅、パルス繰り返しレート、および個別の素子への電流を変化させることにより変調を達成可能である。好ましい実施形態では、赤外光源が拡大キャビティを備えた面発光半導体レーザまたはレーザアレイであり、非線形材料が拡大キャビティ内に配置されて第2高調波変換用に構成され、レーザまたはレーザアレイが直接電気注入により励起される。
III.非線形周波数変換を用いた垂直拡大キャビティ面発光レーザおよびレーザアレイの改良型周波数安定化
A.薄膜干渉フィルタ
[00118]図14を参照すると、拡大キャビティレーザは、ゲイン素子1405、スペクトルフィルタ1410、および出力カプラ1420を含むことができる。波長(またはこれと等価に周波数)制御がレーザ設計の必須の部分である。レーザ波長の略近傍はレーザシステムの材料ゲイン特性により規定されるが、特定の用途向けにレーザの波長出力を調整するためのさらなる努力を行うことが一般的である。
[00119]最終用途がサブナノメータ波長スペクトルを必要とするのに、半導体材料の光学ゲインは波長空間において通常は数十ナノメータに及んでいるため、半導体レーザの波長制御はレーザ設計者にとって共通の問題である。
[00120]キャビティ内周波数二倍化垂直拡大キャビティ面発光レーザ(VECSEL)は、様々な用途で有用であることが示されてきた。キャビティ内周波数二倍化VECSELは、面発光ゲイン素子1405と面発光レーザから離間されて拡大キャビティを形成する出力カプラ1420を含む。出力カプラ1420は、基本周波数で生成された光を面発光ゲイン素子1405の方向へ反射し返す。キャビティ内周波数二倍化結晶1415は、基本ビームの周波数の2倍に等しい周波数で光を生成する。
[00121]キャビティ内周波数二倍化VECSELの変換効率は、基本周波数でのVECSELの縦モード特性に依存する。第2高調波周波数二倍化等の非線形変換プロセスは、実用的な長さ(例えば数ミリメータ)の大半の非線形結晶について1nm以下程度の典型的な帯域幅で、波長(周波数)依存性であるのが一般的である。結果として、キャビティ内周波数二倍化VECSELでは、基本周波数あたりのレーザ光の周波数および縦モードスペクトルの制御は、周波数二倍化光の高い出力パワーを得るために不可欠である。用途によって、選択された範囲内での周波数制御が非線形変換効率を改善する。光エンジンに関しては、スペックルを低減するためにスペクトルパルス広がりの範囲と一致するように周波数範囲をさらに選択可能である。
[00122]加えて、キャビティ内周波数二倍化VECSELの変換効率は、拡大キャビティ内の光学的損失に大いに依存する。光学的損失がキャビティ内周波数二倍化プロセスの効率を下げることが一般的に知られている。例えば、R.Smith,“Theory of intracavity optical second−harmonic generation,”IEEE Journal of Quantum Electronics,vol.6,p.215,(1970)を参照のこと(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの効果は発生するものの、周波数二倍化プロセスは非線形的に基本波長での循環パワーに依存する。VECSELにおいて基本波長で高い循環パワーを作り出すためには、拡大キャビティにおいて比較的低い損失が必要となる。
[00123]本願の発明者による計算は、高い変換周波数を達成するために周波数二倍化VECSELが特に低損失を必要とすることを示している。特に、本願の発明者による計算は、キャビティ内スペクトルフィルタ1410による面発光ゲイン素子1405の基本波長(周波数)での1%の単一パス損失は、基本波長でのキャビティ内循環パワーの10%を超える損失となり、これが(キャビティ内周波数二倍化用の)第2高調波パワーを15〜20%以上減らす結果となる。
[00124]キャビティ内周波数二倍化を用いたVECSEL用スペクトルフィルタの設計は、いくつかのトレードオフの検討を含む。キャビティ内周波数二倍化VECSELの周波数を制御可能なスペクトルフィルタには、これに伴う光学的損失をもたらす傾向もある。追加の光学素子をキャビティ内周波数二倍化VECSEL内に挿入して周波数を制御することにより、基本周波数の制御により得られる変換周波数の増大と増大した光学的損失に関連するパワーの減少とのトレードオフが生じる。光学的損失が小さい周波数選択性素子のみが、キャビティ内周波数二倍化VECSELの変換周波数の正味の改善をもたらす。一般的には、この場合も光学的損失に対する制約が、典型的な半導体レーザの波長域における周波数選択性素子の選択をコーティングしたエタロンおよび複屈折フィルタへと制限してきており、これが約1%以下の損失となりうる。対比のために、Edmunds Opticsから入手可能な市販のノッチフィルタは、約90%に規定された最大透過を有するが、これはキャビティ内レーザ用途には適さない。エタロンおよび複屈折フィルタについての背景情報は、C.C.Davis,“Lasers and Electro−Optics:Fundamentals and Engineering,”Cambridge University Press,2002,p.73)およびP.J.Valle and F.Moreno,“Theoretical study of birefringent filters as intracavity wavelength selectors,”Applied Optics,v.31,p.528(1992)(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。典型的な配列は、ビーム方向を規定するレーザ光軸に対して角度を持ったレーザキャビティ内に配置されたスペクトルフィルタ(ファブリーペローエタロンまたは複屈折)からなる。この傾斜角度は、不要なフィードバック効果を抑えるため、および/またはスペクトルフィルタを所望のスペクトル性能に角度調整するために用いられるのが一般的である。
[00125]しかしながら、約1%未満の損失となるファブリーペローエタロンおよび複屈折フィルタの両方を選択可能であるが、これらのスペクトルフィルタは周波数の所望の度合いの制御を与えるものではなく、その製造性を制限するような製造上の不利点も有している。一例として、ファブリーペローエタロンはエタロンの光学的厚さおよび光の波長により決まる周期性を有する透過率にピークがある光応答を有している。レーザダイオードのゲインスペクトルに関しては、これが単一のエタロンは動作条件の拡張範囲に対する十分な縦モードの識別を与えるものではないことを意味する。特に、エタロンの数多くの透過ピークは、縦モードが全ての動作条件にロックされないようにレーザダイオードのゲインスペクトル内に位置する。
[00126]拡大キャビティ面発光半導体レーザの周波数をロックするためにエタロンを用いることに関連した問題のいくつかの例として、1064nm中心波長付近の(半値全幅すなわちFWHMとして規定される)0.4nmの帯域幅を持ったエタロンフィルタを設計する実際的事例を検討する。このような帯域幅を、例えば1064nmの波長で両面を約35%の反射率コーティングした300ミクロン厚の溶融シリカエタロンでおおよそ達成可能である。対応する透過曲線を図15に示す。1064nmを中心としたスペクトル透過ピークが0.4nmの所望の帯域幅目標を満たす一方で、中心ピークから約1.3nmに位置する隣接の透過ピーク(エタロンの自由スペクトル領域、すなわちFSR)がレーザ発光に望ましくないスペクトルチャネルを与えることもある。半導体レーザは数十ナノメータにわたって延びるゲインスペクトルを有することもあるので、多くの異なるエタロンピークがレーザのゲインスペクトル内にくるであろうことが図15から理解できる。結果として、エタロンにより与えられる周波数識別は不十分なものとなりうる。
[00127]この問題に対する1つの可能な解決法は、より薄型のエタロンを用いてレーザのゲインスペクトル内にくるエタロンピークが少なくなるようにスペクトル域を大きくすることである。薄いエタロンほど共振ピーク間の間隔が大きくなるが、狭い帯域幅を達成するにはより高い反射率も必要である。しかしながら、高反射率ミラーを備えた薄型エタロンは、傾斜したエタロンを透過するガウスビームについてより高いウォークオフ回折損失を生じさせることもある。加えて、非常に薄型のエタロン(100ミクロン未満)は、製造、コーティング、取扱いがさらに困難になる。
[00128]別の可能な解決法は、合成光応答が狭い帯域幅を有し、透過率のピーク間の間隔が単一エタロンよりも大きくなるように、2個のエタロンを利用することにより達成可能である。2個のエタロンを備えたキャビティ内レーザについては、Amsden,M.K.Liebman,A.V.Shchegrov,およびJ.P.Watsonによる米国特許出願第10/745,342号“Compact Extended Cavity Laser”に記載されている。しかしながら、2エタロンレーザ設計はレーザに複雑さとコストを追加することになる。
[00129]複屈折フィルタは、エタロンの問題と幾分類似した問題を有する。キャビティ内複屈折フィルタに用いられる最も一般的な材料は結晶石英である。0.4nmのFWHMのスペクトルフィルタを作るには、厚い石英片(結晶カットやキャビティ内の角度方向によって1cm以上のオーダー)が必要となるが、これにより小型かつ低コストのキャビティに用いるのは非実用的となりかねない。1つの解決法は、先と同様に数枚の複屈折フィルタプレートを用いることであるが、これはやはり小型かつ低コストのレーザに望ましくない複雑さとコストを追加することになる。
[00130]また別の検討材料は、エタロンおよび複屈折フィルタの両方が、製造したフィルタの共振周波数に大きいばらつきを持った干渉効果に依存することである。例えば、エタロンの正確な共振周波数を推定するには、エタロンの厚さを波長の何分の一以内の精度で製造しなければならなくなる。機械的、熱的または電子光学的チューニングを用いて、エタロンのフィルタ応答における製造ばらつきを非線形材料のピーク波長を持つスペクトルフィルタピークに合わせるように調整可能である。しかし、これらのオプションは所望の平均値からの大きな振れ(例えば角度または熱)を必要とすることが多く、小型化および低コストを目的として設計すべきレーザシステムには望ましくないこともある。
[00131]製造の検討は、様々な方法でエタロンおよび複屈折フィルタの設計を制限する傾向もある。エタロンは、エタロンの厚さに逆依存するスペクトル域(共振ピーク間の間隔)を有する(例えば、上述したように、薄型エタロンは大きいスペクトル域を有する)。しかしながら、薄型エタロンはまたスペクトルフィルタピークの位置に厚いエタロンよりも大きい厚さに応じた百分率変化を有する。エタロンが、エタロンごとに異なる製造公差と、1個のエタロンに沿った厚さに関する製造公差も有することにも留意されたい。結果として、大面積をカバーする面発光レーザのアレイをサポート可能な大面積エタロンを製造するのは困難である。
[00132]上述の問題を鑑みて本発明の装置およびシステムが開発された。本発明の実施形態は、エタロンおよび複屈折フィルタ等の従来の周波数選択性フィルタに取って代わる周波数選択性フィルタを用いて、面発光レーザまたはレーザアレイの周波数を安定化する方法について説明する。これによって潜在的なコスト削減がなされ、製造性が改善され、出力レーザ波長の精密な設計が可能となるが、所望のスペクトル特性を達成するスペクトルフィルタの高価な機械的または熱的チューニングを必要としない。本発明の実施形態は、工学的に作成された周期的分極された非線形材料を用いて第2高調波発生等のキャビティ内非線形周波数変換用に設計された、周波数安定化レーザまたはレーザアレイに特に適している。このような非線形材料が、正確に目標波長で追加の機械的または熱的チューニングせずにレーザを周波数安定化する簡便および低コストアプローチを有する非線形変換用に作成可能であるため、エタロンおよび複屈折フィルタ等の周波数安定化のための他の代替的なアプローチよりも大幅なコスト的利点をもたらすので特に重要である。
[00133]図16は、従来のスペクトルフィルタが薄膜干渉フィルタ1610に置き換えられた本発明の一実施形態によるキャビティ内周波数二倍化を用いたVECSELを示す。VECSELは、基本周波数で光を生成するためのチップ上に配置された面発光半導体ゲイン素子1605を有している。例示的なゲイン素子は、A.Mooradianによる特許(米国特許第6,243,407号“High power laser devices,”第6,404,797号“Efficiency high power laser device”、第6,614,827号“High power laser”、第6,778,582号“Coupled cavity high power semiconductor”)に記載された設計に基づいている(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)。ブラッグミラー構造の変形物および空間固有モードを安定化するための1個のレンズまたは複数のレンズの組み込み等の基本的なゲイン素子1605の無数の変形物が、本発明の範囲内に含まれる。
[00134]非線形結晶1615をオプションで含めることができる。ゲイン素子1605から離間された出力カプラ1620が拡大キャビティを画定する。出力カプラ1620は、例えば基本周波数の光をゲイン素子1605に反射し返すミラーを含んでもよい。
[00135]好ましい実施形態では、ゲイン素子1605が2個のエピタキシャル成長された1/4波長ブラッグミラースタック1601および1603を含んでおり、一方が例えば976nmの設計波長で光反射性とされ、他方がこの波長で部分的に反射性とされている。量子井戸を通常備えるゲイン媒質1607もエピタキシャル成長され、対応する整数の波長の基本波長で光学的厚さを有する領域1609において2個のミラースタック間に挟まれている。共振スペーサ層により離間されたブラッグミラースタック1601および1603の配列によって、ゲイン素子1605が共振周波数とそれに関連する帯域幅を有するようになる。しかし、実用的な用途では、光学ゲインおよび電子ホール対の存在によって屈折率の実数成分と虚数成分がゲイン領域で変動する。結果として、ブラッグミラースタック1601および1603がそれだけでは動作条件の範囲にわたってレーザ波長の十分な制御を行なえない。
[00136]キャビティ内周波数二倍化構成において、拡大キャビティレーザは基本周波数で高密度の光子を形成するように設計されるのが好ましい。例えば、基本周波数の光子がキャビティ内を何度も往復できるような基本周波数付近で極端に高い反射性を有するように、出力カプラ1620を設計することができる。この基本周波数での循環光が、非線形結晶1615の通過ごとに周波数二倍化された周波数の光へと部分的に変換される。しかし、非線形変換プロセスは入力パワー密度に極端に敏感である。結果として、キャビティ内周波数二倍化構成においては、拡大キャビティレーザが、拡大キャビティ内を循環する基本周波数で高い光のパワー密度を有するように設計されるのが望ましい。周波数二倍化された周波数の光はキャビティ外へと結合され、出力カプラを直接通るか追加の結合機構(図示せず)を介してキャビティ外の第2高調波の光と選択的に結合する。
[00137]一実施形態では、追加の周波数制御を行うように選択された薄膜フィルタ1610がブラッグミラー構成を含む。好ましい実施形態では、薄膜干渉フィルタ1610に共振応答を規定するブラッグミラーが含まれるのが好ましい。一実施形態では、薄膜干渉フィルタ1610がゲイン素子1605中のものの光学的類似物である共振応答を有する。特に、ブラッグミラーやブラッグミラー間の離間をゲイン素子1605のブラッグミラーに対する光学的類似物とすることができる。この実施形態では、波長制御機能の一部または全てをゲイン素子1605から分離して外部キャビティ内に移すことが必須である。
[00138]図17は、本発明の一実施形態による例示的な薄膜干渉フィルタ1610をより詳細に示す。従来の成膜手法を用いて基板1720上に薄膜層1701、1703、および1709が形成されている。GaAs等の半導体材料を含む異なる基板も使用可能だが、溶融シリカ等の一般的な光学基板を用いるのが好都合である。半導体材料と比較して優れた制御および安定の屈折率を有するように、基板および薄膜コーティングを選択することができる。例えば、光学層および薄膜の全てを絶縁体および/または金属酸化物等の半導体でない材料から形成することができる。例示的な構造は、1/4波長高および低率層対の2個のスタック1701および1703とミラースタック間の共振スペーサ1709(これも溶融シリカにできる)を含む。ミラー層スタック1701および1703を同じ反射率とし、2個のスタックの同じ反射率を確保するために非共振スペーサ層1711を第2のミラースタック上に成長させることもできる。最後に、この構造の両側の外層を目標波長(ここでは976mm)に対して、また必要に応じて第2高調波(488nm)に対して非反射性となるよう設計する。例えば、所定の厚さまで薄くされ両面を同じ反射性仕様となるようコーティングされた溶融シリカまたはBK7光学ガラスから作製される従来の固体エタロンとは対照的に、本発明の干渉フィルタ設計は目標の最大透過波長の精密な設計を可能にする。
[00139]図18は、干渉フィルタを実施するための薄膜コーティングの例示的なシーケンスをより詳細に示す。この例では、例えばイオンビームスパッタリングを用いて二酸化シリコンおよび酸化タンタルコーティングが溶融シリカ基板上に成膜される。このコーティングは、0.4nmのFWHMで976ナノメータの基本波長に共振透過ピークをつくるために設計されている。薄膜干渉フィルタが488nmの第2高調波でも光を透過することに留意されたい(1/4波長スタックは基本の半分の波長を有する第2高調波周波数に対して1/2波長となるため)。干渉フィルタの両面にデュアルバンド反射防止コーティングを成膜する。
[00140]図19は、薄膜設計ソフトウェアTFCalcでモデル化された図18のフィルタ構造の光透過応答の理論計算を示す。基本目標波長での理論的な透過ピークは0.4nmのFWHMで100%に近づく。
[00141]図20は、図18のシーケンスに類似の層シーケンスを有する作製されたフィルタの実証的研究を示すプロットである。干渉フィルタはイオンビームスパッタリング(IBS)コーティング手法を用いて作製された。次に、このフィルタについての透過測定が波長可変レーザを用いて行われた。FWHMは0.4nmであり、目標波長での透過率は99%超である。数ナノメータよりも大きい拡張された波長域内には1個の共振ピークしかないことにも留意されたい。特に、10ナノメータの波長域にわたってゲインを有することが可能な従来の半導体ゲイン材料の波長域内には1個の共振ピークしかない。したがって、限定されたスペクトル域を有する従来のエタロンとは異なり、共振応答は所望の波長域への周波数のロックを容易にする。
[00142]干渉フィルタの代替的な設計は、反射率を同じにし、「右側」ミラースタックについて第2高調波(488nm)に対して非反射効果を生じさせるよう最適化された構造を持った「左側」および「右側」ブラッグミラースタックに対して、若干異なる製法を用いる。この設計により、非共振スペーサ層をなくし、右側の反射防止コートスタックをより簡便なコーティングにできる。
[00143]上述の型の薄膜干渉フィルタでレーザまたはレーザアレイを安定化することは、本発明で説明した設計が発明者により提案され試験が行われるまでは実用的な解決法として認識されなかった。これにはいくつかの理由がある。第1に、図示した帯域幅を持った狭帯域スペクトルフィルタ(ノッチフィルタとしても知られる)は様々な用途のために設計され市販用に作製されてきたが、それらは概して図19〜20に示したフィルタほど狭帯域ではなく、大幅に高い透過損失を有する。例えば、Edmondsの従来のノッチ干渉フィルタは約90%しか透過がない。対照的に、図19(モデル)および、いくらか意外だが、図20(実験)の両方から分かるように、本発明の教示によって形成された干渉フィルタの透過は1ナノメータ未満のFWHMで99%を超えるが、これが多くの用途向けにキャビティ内レーザが必要とするものである。
[00144]薄膜干渉フィルタ1610は外部キャビティに配置され、ゲイン領域内へのフィードバックを回避する角度とされるのが好ましい。したがって、このようなフィルタは、従来のコーティングされた固体エタロンおよびレーザゲインチップと組み合わされたファブリーペローエタロンの両方に類似の役割を果たし、両方の場合の利点を組み合わせる。周波数二倍化(または、一般には非線形周波数変換)のために適正に選択された非線形結晶1615は、出力カプラ1620により完成された拡大キャビティ内にも配置される。出力カプラコーティングは、基本波長(干渉フィルタの設計波長)で高反射性かつ周波数変換した波長で高透過性となるように優先的に選択される。レーザ設計の技術分野で公知のように設計目標に対して、キャビティ長、結晶長、および出力カプラ1620の曲率が適正に最適化される。好ましい実施形態では、非線形結晶が、周期的に分極されたKTP、LiNbO3、またはLiTaO3等の周期的に分極された非線形結晶である。このような結晶を用いる利点は、それらが高い非線形性を有し、選択波長の非線形周波数変換用に作成可能なことである。
[00145]薄膜干渉フィルタ1610が果たす役割は、レーザ発光を所望の帯域幅まで狭めることである。場合によっては、計測用途で必要とされるように、フィルタの帯域幅はレーザの単一縦モード動作を確実にするのに十分な狭さとされなければならない。これが安定した低ノイズレーザ動作も確実にし、適正に調整されると非線形変換帯域幅のピークでの発光を制限する。他の場合には、所望の周波数帯域を達成するためにレーザが複数の縦モードで動作可能となるように、薄膜干渉フィルタの帯域幅を設計することができる。しかし、非線形結晶1615の非線形変換帯域幅内でこれらのモードを制限するのがさらに望ましい。
[00146]A.V.Shchegrov,A.Umbrasas,J.P.Watson,およびD.Leeによる米国特許出願第10/734,553号“Polarization control of an extended cavity laser”(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように非線形結晶1615を用いて面発光レーザの偏光を制御することができる。
[00147]さらに、レーザの小型化を改善してコストを削減するためには、薄膜干渉フィルタ1610を非線形結晶1615の結晶面の1個に成膜し、2個の素子を1個のユニットに組み合わせるのが望ましい。このような構成がこの発明の別の実施形態である。
[00148]干渉フィルタ1610の設計の重要な一態様は、設計が面発光レーザチップ1605の波長制御素子の光学的類似物とできることである。例えば、基本周波数付近で明確な共振を有する薄膜干渉フィルタ設計を設計する開始点として、面発光レーザチップの層の光学的厚さを用いることが可能である。光学では周知のように、層の光学的厚さは光波長に依存し、光波長は光の周波数および光が通過する媒質の屈折率の関数である。面発光ゲイン素子1605は、通常は基本周波数で共振応答を生成するように設計されたブラッグ反射器1601および1603を有する。共振周波数は関連した帯域幅も有する。面発光ゲイン素子(例えばブラッグスタック内の多数の層)の設計は、拡大キャビティで高い光パワーを達成し、ゲイン素子内の材料損失を低減する等の他の設計条件により部分的に制限される。前述のように、面発光チップ自体はある程度の周波数制御を行うが、それを狭い十分な帯域幅に合わせることにより、周波数変換用の外部キャビティで利用可能なパワーの損失が生じる。一実施形態では、干渉フィルタの設計が面発光レーザチップ(薄膜の実施に変換される)に基づいており、所望の周波数選択に合わせられ、高いピーク透過を持ったキャビティ内スペクトルフィルタとして実施される。明らかに、干渉フィルタとレーザチップの間にはいくつかの大きな差異がある。1つの差異は、干渉フィルタにはゲイン(アクティブ)層がない点である。別の差異は、通常、レーザチップ構造がGaAs、AlAs、GaAlAsのような合成物、その他等の半導体材料に基づいている点である。これは、ゲイン層(量子井戸)を組み込み、ストレス下、すなわちレーザ動作中に確実に機能することができる高品質構造を作り出すために行われる。干渉フィルタについては、これがアクティブ素子ではないためストレスがずっと軽い。その代わりに、主要な設計目的が低損失と特定スペクトル帯域幅となる。このような理由で、薄膜干渉フィルタが好ましくはイオンビームスパッタリング(IBS)法で成膜される誘電体コーティング層で製造されるのが好ましい。これは、最低損失を確実にするために行われる。
[00149]図21は、薄膜干渉フィルタ1610を用いて一般的なチップまたは基板上に形成されるゲイン素子の面発光拡大キャビティレーザアレイを周波数制御する実施形態を示す。レンズアレイが面発光レーザ2105と一体化され、各エミッタについての空間モードを制御してもよい。あるいは、熱レンズ効果を用いて各エミッタについてのキャビティ空間モードを制御することもできる。図21に図示したように、図21に示したコンポーネントはすべて平らな表面を持ったセグメントであるのが好ましく、以下でより詳細に説明するように、これがほとんど厳密なアラインメントなしで低コストアセンブリを容易にする。レーザチップと一体化された部分反射性ミラーは、あってもなくてもよい。このミラーがある場合には、その主要な機能は、ファブリーペローエタロンを光反射性ミラーとの間に設けることによるレーザの周波数選択性ではなく、例えばミラーとゲイン層の両方が成長される基板における損失等の外部キャビティにおける損失からゲイン媒質を分離することである。1個のレンズまたは複数のレンズをチップと一体化しても拡大キャビティ内で離間して配置してもよい。チップと一体化する場合は、レンズを、例えばチップ表面でエッチングされたゲイン領域または電界レンズで発生した熱により生成される熱レンズとしてもよい。このようなレンズをレーザの空間固有モードを安定化する補助としてもよいが、簡略化および/またはコスト面の理由でフラットな出力カプラを持った外部キャビティを設計したい場合には特に望ましい。
[00150]アレイの実施形態については、出力カプラ1620をフラットにするのが好ましく、それがレーザアレイのエミッタ全てについて共通する。しかし、各個別のエミッタについて曲面状の出力カプラを形成するマイクロミラーのアレイを用いることも可能である。同様の非線形結晶1615を用いて基本波長を別の波長第2高調波(基本波長の半分)に変換してもよい。
[00151]低コストアレイアセンブリでは、干渉フィルタを別体の素子として用いても、組み立てたレーザに対する光学的なアラインメントが必須となるコンポーネント数を減らすために非線形結晶1615のように別のコンポーネントに取り付けてもよい。あるいは、干渉フィルタを出力ミラー1620の表面の1個と組み合わせてもよいが、この場合には出力ミラー素子をくさび止めしてフィルタコーティング用に内(キャビティ内)表面を、光反射ミラーコーティング用に外表面を用いるのが好ましい。
[00152]干渉フィルタを唯一のスペクトルフィルタとして用いてもよいが、一般的にはレーザを制御するために干渉フィルタを他のスペクトルフィルタリング素子と組み合わせてもよいことが理解されよう。一例として、干渉フィルタを拡大キャビティの端部ミラーのくさび形の表面上に取り付け、貼り付け、または成膜することができる。
B.周波数制御用体積型ブラッググレーティング
[00153]本発明の一実施形態によれば、体積型ブラッググレーティングをキャビティ内周波数二倍化を用いたVECSEL用のスペクトルフィルタとして利用する。前述のように、キャビティ内周波数二倍化を用いたVECSELは高い変換効率に対するいくつかの要件を有している。第1に、一般的に共振応答が1ナノメータ未満のFWHMを有するように、波長が非線形結晶の約1ナノメータ未満の最適な帯域幅内にロックされなければならない。第2に、スペクトルフィルタは、半導体ゲイン媒質の帯域幅内に二次ピークを持たない、すなわち10ナノメータ域等の数ナノメータの波長域には共振ピークが1個だけとなるのが好ましい。第3に、基本波長でのスペクトルフィルタによる全光学損失は、約1%未満であるのが好ましい。本発明の一実施形態では、VBGをキャビティ内周波数二倍化を用いた面発光レーザアレイの周波数制御に用いる。
[00154]体積型ブラッググレーティング(VBG)は、その中に周期的屈折率変化が書き込まれた特殊なガラスで作成された波長選択性反射素子である。意図的に選択されるウィンドウにおいてレーザのスペクトル制御を補助可能なスペクトル的に狭い光反射率素子を作るように、このような率変化を設計可能である。この数年間、ファイバブラッググレーティングは通信波長(例えば1.55ミクロン)での電気通信レーザ設計用途において公知であったが、それらの体積型対応物(VBG)はかなり最近になって市販されるようになってきたに過ぎない。このようなグレーティング素子の製造の詳細および特性は、O.M.Efimov,L.B.Glebov,V.L.Smirnov,およびL.Glebovaによる第6,586,141号“Process for production of high efficiency volume diffractive elements in photo−thermal refractive glass”、ならびにO.M.Efimov,L.B.Glebov,およびV.L.Smirnovによる第6,673,497号“High efficiency volume diffractive elements in photo−thermal refractive glass”に記載されている。類似のホログラフィック素子も最近作製され、(例えばInPhase Technologiesにより)メディアストレージ技術で用いられており、我々は以下の議論で用語体積型ブラッググレーティング(VBG)を用いるが、このようなホログラフィックグレーティング素子を用いることも本発明の範囲内に含まれるとする。最近では、端面発光レーザおよびレーザアレイの周波数安定化のためにどのようにVBGを用いるかが記載されている(G.Venus,V.Smirnov,L.Glebov,“Spectral Stabilization of Laser Diodes by External Bragg Resonator”,Proceedings of Solid State and Diode Laser Technology Review,Albuquerque,NM,June 2004,B.L.Volodin,V.S.Ban,“Use of volume Bragg gratings for the conditioning of laser emission characteristics”米国特許出願第10/884,524号)。
[00155]体積型ブラッググレーティングは、現在Optigrate(Orland,FL),PD−LD(Pennington,NJ),およびOndax(Monrovia,CA)から市販されている。非線形周波数変換を用いる周波数安定化垂直キャビティ面発光レーザに適しているかを決定するために、市販のVBG実証的研究が行われた。
[00156]本願の発明者による実験的調査は、赤外基本励起波長から緑色および青色光を生成するためにキャビティ内周波数変換を用いるVECSELに有用なFWHMと低損失の組み合わせを有するように、VBGを設計することができることを示している。
[00157]図22は、波長に対する市販のVBGの反射率のプロットである。976nmの目標波長で設計されたVBGについて波長可変レーザで反射率測定を行った。実験結果は、1nm未満のFWHM、すなわち0.6nmを示した。反射率は99%を上回った。実験による反射率はFWHMの外側に若干のむらがあるが、反射率はFWHMより上に衛星ピークを持たずにFWHMで急速に降下する。したがって、実験結果は、従来の半導体ゲイン材料の波長域に主ピークが1つだけあり、10ナノメータの波長域にわたってゲインを得ることが可能であることを示す。したがって、実験結果は、キャビティ内周波数二倍化を用いたVECSELに適した属性の組み合わせを有するVBGを設計可能であることを示す。
[00158]図23は、面発光レーザを周波数安定化するためにVBG2310を利用する、キャビティ内周波数変換(例えば周波数二倍化)を用いるVECSELの実施形態を示す。VBG2310は、出力カプラの反射器素子としても働き、これによって拡大キャビティを画定する。半導体レーザゲイン素子1605および非線形結晶1615は図16に上記図示した実施形態で説明した。
[00159]偏光制御素子が含まれるのが好ましい。一実施形態では、偏光ビームスプリッタ2320が偏光制御機能を果たすとともに、キャビティ外の逆伝播周波数変換ビーム(想像で線2360により図示)の方向を変えるためにも用いられる。これらの機能を行うために、このような偏光ビームスプリッタ2320の2表面がコーティングされて基本レーザ波長での所望の偏光のために高い透過性を与え、表面の一方は周波数変換された波長で高い反射性となるようコーティングされる。代替的な実施形態では、A.V.Shchegrov,A.Umbrasas,J.P.Watson,およびD.Leeによる 米国特許出願第10/734,553号“Polarization control of an extended cavity laser”に記載のように、非線形結晶の複屈折により偏光が制御される。
[00160]用途によっては、920nm、976nm、1064nm、または1260nm等の基本設計波長で最高の反射率となるようVBG2310を設計するのが望ましい。次に、VBGの両面を基本波長および周波数変換波長、例えば460nm、488nm、532nm、または630nmの両方で反射防止コーティング可能である。他の場合には、VBGを主にスペクトル帯域幅目標を達成するように設計し、最大反射率のいくつかを犠牲にするのもやってみる価値があるだろう。高効率キャビティ内非線形変換を得るために、VBGに基本波長での高反射性コーティング2340をコーティングし、キャビティを「閉じ」てキャビティ内循環パワーを最大にする。体積型ブラッググレーティング2310から出てくる周波数変換光を結合するために周波数変換波長で(例えば、周波数二倍化のために第2高調波で)非反射性となるように、コーティング2340を設計することもできる。これによって、基本ビームがVBGに向かって順方向に非線形結晶1615を通過するごとに、VBGから拡大キャビティ内へと反射し返される基本の光が、生じた周波数変換光が偏光ビームスプリッタ2320によりキャビティ外で結合される非線形結晶1615を通って逆方向に進むにもかかわらず、VBGを通ってキャビティを出る周波数変換光が生じる構成が可能となる。
[00161]VBGのスペクトル特性は、特定要素に合わせることもできる。場合によっては、高性能の計測品質レーザのための低ノイズ単一縦モード動作を行うのに十分な狭さにVBGの帯域幅を設計するのが望ましい。他の場合には、複数の縦モードを可能にし、例えば非線形変換プロセスの帯域幅を整合するスペクトル帯域幅内でそれらを制限するのが望ましい。
[00162]図24は、VBGを用いて面発光アレイに対し光学フィードバックおよびスペクトルフィルタリングを行う実施形態を示す。VBGを面発光拡大キャビティレーザアレイの周波数安定化に用いることは、特に有利である。ゲイン素子2105のアレイ全体を周波数安定化するために1個のVBGが用いられ、アレイの全ての面エミッタを周波数二倍化するために1個の非線形結晶1615が用いられる。偏光を規定するために、また必要であれば、キャビティからの周波数変換逆伝播ビームアレイを抽出するために1個のビームスプリッタ2320が用いられる。順伝播周波数変換ビームアレイをVBGを通して抽出することができる。別の場合には、これも本発明の範囲内に含まれるが、周波数変換光に対して高い反射性のダイクロイックコーティングを非線形結晶、VBG、または半導体レーザチップの適切な表面に配置する場合には、順方向および逆方向伝播ビームを同じ方向に集光することができる。適切な光学面上にくさび形を置いたり、適切な光学面上の傾きを利用することにより、エミッタごとに2本の周波数変換ビーム(順方向および逆方向)を空間的に離間することが望ましい。
[00163]多くの用途において、ほぼ同じ周波数で全てのアレイ素子を動作させて非線形変換を最大源かつコストを最小限にするのが望ましい。しかし、場合によっては、異なるエミッタを若干異なる周波数で動作させるのが有利なこともある。これが、異なる素子間のクロストークを低減し、レーザアレイ光源全体のコヒーレンスを低減する補助となりうる場合もあり、このような光源からのスペックルを低減する補助となりうる。
[00164]従来のVBG用途は単一波長であるのが一般的である。しかし、本発明では、酢ステムが基本(励起)波長および周波数変換波長(例えば第2高調波)を含むことを考慮してVBGを修正するのが好ましい。1つの態様は、上述したように、VBG上の光学コーティングの適切な設計である。加えて、本発明のVBGの好ましい設計はダイクロイックである、すなわちVBGが基本レーザ波長で狭スペクトル帯反射性を、第2高調波で非共振高透過性を持たなければならない。一実施形態では、理論および/または実験的モデリングによりVBGのダイクロイック属性が最適化される。例えば、特定用途向けVBGのダイクロイック特性を最適化するために、基本波長および第2高調波波長の特定の選択について複数の異なるVBGグレーティング属性および組成を試験することができる。実験的試験が行われ、非線形周波数変換を用いる面発光レーザの周波数安定化に対して適当なダイクロイック特性を有するようにVBGを最適化可能であることを示した。
[00165]実施形態によっては、VBGと非線形結晶をモノリシック接着することが望ましい。通常は、VBGが約0.01nm/℃のスペクトルチューニングの反射スペクトルの非常に高い温度安定性を有しているのが一般的であるため、これが非設計結晶の位相整合または擬似位相整合熱チューニングに影響を及ぼすことはない。
[00166]前述のレーザ設計はいかなる特定の動作モードに制限されるものではなく、連続波またはパルス、例えば電気的に励起される半導体面エミッタの直流パルス駆動によるパルス駆動としてもよい。加えて、本発明に記載の面発光レーザは可飽和素子を用いてモードロック可能である(例えば、K.Jasim,Q.Zhang,A.V.Nurmikko,A.Mooradian,G.Carey,W.Ha and E.Ippen“Passively modelocked vertical extended cavity surface emitting diode laser”,Electronics Letters,V.39 P.373(2003)を参照のこと)。この場合には、エミッタごとのスペックルを最適化するためにモードロック出力のスペクトル幅を制御して非線形結晶のスペクトル位相整合帯域幅を最適に整合するように、薄膜干渉フィルタまたはVBGを設計可能である。上述した全ての設計が一次元および二次元の両方におけるアレイ構造に合わせて拡大縮小可能だが、それらを単一エミッタレーザに同様に適用可能である。最後に、本発明に記載の方法により周波数安定化された面発光レーザおよびレーザアレイを電気的または光学的に励起することができる。
[00167]本発明の主要な適用実施形態の1つでは、面発光ゲイン素子がプロジェクションディスプレイ用途に対して注目波長の二倍であるRGB波長付近、すなわち約635nm(赤色)、約532nm以下(緑色)、および約460nm(青色)で設計される。
[00168]本発明の別の実施形態は、周波数二倍化レーザまたはレーザアレイを高価なアクティブ温度制御(例えば、熱電冷却器による温度制御)をせずに周囲温度の拡張範囲で動作させるための周波数安定化である。例えばPDA、レーザポインタ等のハンドヘルドデバイスを含む多くの用途において、それらを広範囲の周囲温度、例えば−10℃〜50℃での動作用に設計することが望ましい。従来の解決法は、例えば熱電冷却器によるレーザおよび重要なコンポーネントのアクティブ温度制御を必要とする。本発明は、上記のように、体積型ブラッググレーティングが0.01nm/℃以下でのチューニングする非常に温度安定性が高い素子であるのが一般的であり、温度に対して鈍感となるようさらに設計可能なのを利用することができる。これによって、レーザの波長を所望の値でロックすることが可能となり、パッケージで設計された安価なヒータ素子により非線形結晶をロックしたレーザ波長に合わせることができる。この解決法は、面発光および端面発光半導体レーザおよび固体レーザを含む異なる型のレーザまたはレーザアレイで用いることができ、これを異なる手段により励起することができる。
[00169]周波数安定化レーザまたはレーザアレイを特に役立てることが可能な複数種類の用途がある。それらには、プロジェクションディスプレイ用の可視光レーザまたはレーザアレイ光源としての用途、フローサイトメトリーまたは共焦点顕微鏡等の単一縦モードレーザの計測用途、印刷用途、照明用途、その他がある。
IV.高製造性小型周波数二倍化垂直拡大キャビティ面発光レーザアレイ
[00170]本発明の実施形態は、拡大縮小可能な低コストプラットフォームにおける可視レーザアレイを構築する技術的アプローチを記載するものである。この拡大縮小可能性は、アレイの出力パワーおよび価格の両方で大幅な縮小が可能となる、ウエハースケールの製造に適用される。さらに、この技術的アプローチにより、全ての所望の可視色が類似の方法で得られ、同様にこのようなRGBレーザアレイ製造時のコスト削減をもたらす。
[00171]本発明の一実施形態は、周波数二倍化垂直拡大キャビティ面発光レーザ(VECSEL)の周波数二倍化アレイ向けの低コスト、高製造性設計を記載するものである。VECSELでは、レーザキャビティが、その上に面発光ゲイン素子が形成された面発光レーザチップと端部ミラーにより画定される。レーザチップは、少なくとも1個のエピタキシャル成長ミラーとゲイン領域とを有する。好ましい実施形態では、ゲイン領域が1個または複数の量子井戸を備えている。
[00172]図25は、VECSELアレイの主要コンポーネントを示すブロック図である。面発光レーザゲインチップは、ゲイン素子2510を有している。偏光を制御するために偏光制御素子2520が設けられている。周波数二倍化のために非線形結晶2530が設けられている。波長を制御するために波長制御素子2540が設けられている。光学フィードバックを与え、拡大キャビティを画定するために端部ミラー2550が含まれている。マイクロレンズアレイ2515またはアパーチャアレイ2520等の比較的重要でないコンポーネントが含まれてもよい。
[00173]レーザアレイの製造コストは、コンポーネント総数ならびにコンポーネントをアラインメントおよびパッケージするコストによって決まる。最近では、VECSEL半導体ダイの製造コストが低下し、VECSELの半導体部分の成長および作製が改善されるにつれパッキング密度が増加してきた。発明者等による研究によれば、現在は作製されるデバイスのアラインメントおよびパッケージングのコストがVECSELの主なコスト要因である。従来のキャビティ設計は、個別のレーザに注意深く機械的または熱的アラインメントを行う必要がある。特に、従来は複数の厳密な光学アラインメントが必要とされる。厳密な光学アラインメントには、高いデバイス効率を達成するための適正なアラインメントが必要とされ、また通常は、レーザの耐用期間にわたって厳密な光学アラインメントを維持するためにパッケージング用取付け具にも注意深い設計が要求される。対照的に、本発明のローコスト設計実施形態では、我々はアレイの各個別のエミッタのアラインメントを不要にするが、その代わりに全てのアレイ素子を同時にアラインメントして全てのアレイ素子のゲインおよび非線形変換を同時に最大化することを目的としている。
[00174]1つの態様は、1つの製造ステップで、多数のエミッタ(ゲイン素子)を1個のダイ上に配列して同じヒートシンクに取付け、電気的に配線することが可能である。共通のダイ上に形成された面発光レーザのアレイを利用することによって、数多くのレーザを同時にアラインメントおよびパッケージング可能であり、製造性が改善される。アレイアプローチを用いる別の利点は、アレイには従来のレーザの単一点障害という欠点がないため、信頼性が高くなることである。起こりうるパワーの低下、あるいはアレイ素子のいくつかの完全な故障ですら、光源全体の回復不能な劣化を引き起こすものではなく、従来のレーザシステムでは利用できなかった方法で補償可能である。加えて、パワー密度が同程度のパワーの単一エミッタレーザほど高すぎなければ、非線形光学素子の信頼性が大幅に上がる。その代わりに、各エミッタのパワー密度をある程度低レベルに維持することが可能である。
[00175]一実施形態では、端部ミラーが、端部ミラーと面発光アレイチップ間の簡便なアラインメントプロセスを容易にするために、平面ファセットを備えたセグメントである。光学設計は、平面端部ミラーに対応する設計である。例えば、モードのウエストを規定するためにマイクロレンズアレイを含めてもよい。他の主要な光学コンポーネントは、光学アラインメントを容易にする平面ファセットを備えたセグメントとして実施することもできる。
[00176]本発明の別の態様は、図25の2個以上のコンポーネントを1個の光学アセンブリに組み合わせて(例えば、2個以上のコンポーネントを一緒に1個のユニットにモノリシック接着することにより)さらにアラインメントの複雑さを低減することである。場合によっては、個別のコンポーネントが複数の機能を果たす。他の場合には、個別のコンポーネントが互いに取付けられたコンポーネントのより大きな光学アセンブリに形成されるが、これはコンポーネントを互いに取付けられるような略平らな表面となるように設計することにより容易になる。図26を参照すると、波長制御素子および端部ミラーの機能性が、例えば体積型ブラッググレーティングを利用することにより、光学フィードバックと周波数制御を行うように1個のユニットに組み合わされる。図27を参照すると、非線形結晶、波長制御素子、および端部ミラーの機能性が、例えば体積型ブラッググレーティングを非線形結晶に取付けることにより組み合わされる。図28に示すように、偏光制御素子、非線形結晶、波長制御素子、および端部ミラーの機能性が、例えば偏光制御素子を非線形結晶に取付け、これを体積型ブラッググレーティングに取付けることにより組み合わされる。図29に示すように、比較的重要でないコンポーネントを他の機能ブロックと組み合わせることもできる。例えば、マイクロレンズアレイをドームレンズアレイ等の面発光レーザアレイチップに取付けて、レーザキャビティの空間モードを最適化する補助および/または非設計結晶への光集束を行うこともできる。別の例としては、ドームアレイを基本波長で透過性となり、第2高調波で高度に反射性となるようさらにコーティングすることができ、これによって第2高調波の光が反射されて膨張し、順方向に伝播する第2高調波との空間的な重なりが減る。別の例としては、アパーチャアレイを面発光レーザアレイチップとリソグラフィで一体化することができる。結果として、アラインメントおよび安定した光学アラインメントでパッケージングしなければならない光学コンポーネント数が少なくなる。
[00177]上述の利点を実現するには、数多くの革新的な設計ステップが必要である。これらのステップには、体積型ブラッググレーティング(非常に最近になって市販されたに過ぎない新たな素子)を用いること、簡便で製造可能なキャビティ設計で非線形周波数変換プロセスを最大化するアレイのパルス駆動を用いること、特別に設計された薄膜干渉フィルタを用いること等が含まれるがこれに限定されない。
[00178]図30および31は、2つの主な好ましいキャビティレイアウト実施形態を示す。しかし、キャビティを折り曲げる、モード制御用にレンズおよびアパーチャアレイを追加する、ならびに設計を拡大縮小可能に維持する他のレーザ設計オプションを用いる等のこれらの設計の拡張および修正も本発明の範囲内に含まれる。示した設計の全てがアレイ実施形態を図示するものである。これらのキャビティ設計を単一エミッタ構成、一次元アレイ、および二次元アレイにも同様に用いることが可能であることが示唆されている。
[00179]図30に示したキャビティ設計は、電気的に励起された半導体面発光レーザアレイ2105と偏光ビームスプリッタ2320からなる拡大キャビティ、非線形結晶1615、および体積型ブラッググレーティング2310を備えている。半導体レーザまたはレーザアレイの設計がMooradianによる特許(米国特許第6,243,407号“High power laser devices”、 米国特許第6,404,797号“Efficiency high power laser device”、米国特許第6,614,827号“High power laser”、 米国特許第6,778,582号“Coupled cavity high power semiconductor laser”に記載されたように(この内容は参照により本明細書に組み込まれる))”に記載されている。レンズアレイをチップと一体化しても拡大キャビティ内に別体で配置してもよい。チップと一体化した場合は、レンズをゲイン領域で生じた熱により生成された熱レンズとしても、例えばチップ表面にエッチングされた電界レンズとしてもよい。このようなレンズにより、レーザの空間固有モード安定化を補助することができるが、簡略化および/またはコスト面の理由でフラットな出力カプラを備えた外部キャビティを設計したい場合には特に望ましい。議論の中で前述したように、面発光アレイ構成独自の側面はその拡大縮小可能性である。同じヒートシンク上に取付け可能な同じダイ上に、従来の分散レーザデバイスに必要とされる多くの追加ステップなしで数多くのエミッタを配置可能かつ作製可能である。熱クロストークを最小限に抑えるように、隣接面エミッタ間のピッチが最適化される。実験的またシミュレーションを通して、最小限の熱クロストークで約2.5のピッチおよびゲインアパーチャ径に対するより大きな比を達成可能であり、これによって多くのエミッタを小型のパッケージに収容するパッキング密度が得られる。例えば、プロジェクションディスプレイ用途向け3W単色レーザ光源用の1つの好ましい設計は、約100〜120ミクロンゲイン径の20〜30エミッタを備えた約1mm×7mm断面のダイにより作成可能である。必要に応じて、熱性能を最適化し、面発光アレイチップの中央でエミッタの加熱を低減するために、非周期性(不均一ピッチ)となるようアレイ上のエミッタ配列を選択することができる。
[00180]体積型ブラッググレーティング(VBG)は、その中に周期的な屈折率変化を書き込まれた特殊なガラスで作成された波長選択性素子である。意図的に選択されるウィンドウにおいてレーザのスペクトル制御を補助可能なスペクトル的に狭い光反射率素子を作るように、このような率変化を設計可能である。この数年間、ファイバブラッググレーティングは電気通信レーザ設計用途において公知であったが、それらの体積型対応物(VBG)はかなり最近になって市販されるようになってきたに過ぎない。このようなグレーティング素子の原理は、O.M.Efimov,L.B.Glebov,V.L.Smirnov,およびL.Glebovaによる第6,586,141号“Process for production of high efficiency volume diffractive elements in photo−thermal refractive glass”、ならびにO.M.Efimov,L.B.Glebov,およびV.L.Smirnovによる第6,673,497号“High efficiency volume diffractive elements in photo−thermal refractive glass”に記載されている。以前には、端面発光レーザおよびレーザアレイの周波数安定化のためにどのようにVBGを用いるかが記載されている(G.Venus,V.Smirnov,L.Glebov,“Spectral Stabilization of Laser Diodes by External Bragg Resonator”,Proceedings of Solid State and Diode Laser Technology Review,Albuquerque,NM,June 2004,B.L.Volodin,V.S.Ban,“Use of volume Bragg gratings for the conditioning of laser emission characteristics”米国特許出願第10/884,524号)。体積型ブラッググレーティングは、現在Optigrate(Orland,FL),PD−LD(Pennington,NJ),およびOndax(Monrovia,CA)から市販されている。非線形周波数変換を用いる周波数安定化垂直キャビティ面発光レーザに適しているかを決定するために、市販のVBG実証的研究が行われた。類似のホログラフィック素子も作製され、(例えばInPhase Technologiesにより)メディアストレージ技術で用いられており、我々は以下の議論で用語体積型ブラッググレーティング(VBG)を用いるが、このようなホログラフィックグレーティング素子を用いることも本発明の範囲内に含まれるとする。
[00181]好ましい実施形態では、非線形結晶が、周期的に分極されたKTP、LiNbO3、またはLiTaO3等の周期的に分極された非線形結晶である。このような結晶を用いる利点は、それらが高い非線形性を有し、選択波長の非線形周波数変換用に作成可能なことである。同様に、面発光半導体レーザチップと体積型ブラッググレーティングを同じ波長付近で設計可能である。KTP、LiNbO3、またはLiTaO3等の結晶の非周期的(チャープ)分極は、温度および/または波長空間において非線形変換帯域幅を拡大する。しかし、従来のKTP、LBO、またはKNbO3等のバルク非線形材料その他を用いることもできる。場合によっては、光学的に接触されたこれら結晶のアセンブリを作製するのが望ましく、例えば、2個の薄片を光学的に接触させることにより周期的に分極された材料の厚さを大きくすることができる。
[00182]最後に、非線形周波数変換(第2高調波発生)プロセスを効率的にするレーザの直線偏光を規定するために、キャビティは偏光制御を行う素子を必要とする。図30に示す偏光ビームスプリッタ素子2320は、偏光制御機能を果たすとともに、キャビティ外の逆伝播周波数変換ビームの方向を変えるために用いることができる。これらの機能を行うために、このような偏光ビームスプリッタ2320の2表面がコーティングされて基本レーザ波長での所望の偏光のために高い透過性を識別して与える必要があり、表面の一方は周波数変換された波長で高い反射性となるようコーティングされる必要がある。あるいはは、A.V.Shchegrov,A.Umbrasas,J.P.Watson,およびD.Leeによる 米国特許出願第10/734,553号“Polarization control of an extended cavity laser”(この内容は参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように、この場合も同じように非線形結晶の複屈折により偏光を制御することができる。
[00183]図30に示す設計により、各エミッタの順および逆伝播周波数変換ビームの両方を集光することができる。光を同じ方向にステアリングするために、回転ミラー3005を用いることができる。
[00184]例えば、1064nm前後の波長用に半導体レーザアレイを設計可能である。この例では、エピタキシャル構造をMOCVDまたはMBE等の手法によりGaAsウエハー上に成長させることが可能であり、エピタキシャル成長されたミラーおよび量子井戸を1064nmのターゲットにすることができる。非線形材料の位相整合(または擬似位相整合)帯域幅内にとどまるに十分な狭さのスペクトル帯域幅の1064nmで最大反射となるように、体積型ブラッググレーティングを設計可能である。1064nm〜532nmまでの効率的な第2高調波発生を行うために、非線形材料を適正に選択可能である。このような材料の例には、PPKTP、PPLN(この損傷しきい値を上げるためにMgOドープ可能である)、PPLT、KTP、その他が含まれる。
[00185]図30のキャビティ設計により、2方向に伝播する第2高調波ビームが生成される。半導体チップまたは非線形結晶上のダイクロイックコーティングにより逆伝播ビームを反射することによって、これらのビームを共線的に再合成および重ね合わせることが可能であるが、図30に示すように順方向および逆方向伝播ビームの両方を単に集光するだけで、プロジェクションディスプレイ光源等の用途では許容可能である。加えて、簡略なシステムにより、ビーム合成スキームにおいて相殺的干渉を避けるための複雑な位相制御が回避される。しかし、適正なダイクロイックコーティングを設計して、好ましくは設計された反射の位相シフトで順方向および逆方向伝播ビームを重ね合わせることも本発明の範囲内に含まれる。干渉効果を低減するための再合成前に、順方向および逆方向伝播第2高調波ビームの光路を十分長くなるように選択することができる点に留意されたい。特に、順方向および逆方向伝播ビームを、それらのコヒーレンス長よりも長い光路を進んだ後で再合成することができる。
[00186]レーザ設計の分野で公知の他の方法は、第2高調波光抽出の効率を高めるために用いることができる。これを行う1つの方法(図示せず)は、キャビティをL字型に折り曲げて基本および第2高調波高をそれらの順方向光路に戻すことである。このような設計もアレイプラットフォームに対して拡大縮小可能であり、本発明の範囲内に含まれる。
[00187]順方向および逆方向伝播ビームの共線的再合成を可能にするまた別の拡大縮小可能設計を図31に示す。ここではモノリシック接着した素子3120の好ましい低コスト実施形態が示されるが、別体の光学素子での設計も可能である。第2高調波ビームだけを点線で示す。順方向伝播する第2高調波ビームは体積型ブラッググレーティングを通して抽出される。逆方向伝播する第2高調波ビームはそれらの偏光が90度回転され(相殺干渉および/またはディフェージング効果を回避するため)て、体積型ブラッググレーティングへと反射し返される。
[00188]図31に示す実施形態は、1/4波長板3105(第2高調波波長)を用いて第2高調波光の偏光を回転し、波長板上または面発光チップ上の適正なダイクロイックコーティングにより反射し返す。これによって、逆方向生成ビームが直交偏光された順方向伝播する第2高調波ビームと再合成される。この主のビーム合成は、ビーム間の望ましくない可能性のある相殺干渉の回避を補助する。この実施形態では、第2高調波のいずれの偏光も結果として生じたレーザ光源から集光される。基本波長でレーザの動作に影響を及ぼさないよう基本波長に対しては1/2波長となるように、第2高調波に対して1/4波長の波長板を設計することができる。この種の波長板は市販されている。加えて、ダイクロイックコーティングを互いに対して90度回転された2枚の同一波長板の間に挟むことが可能である。このようなシステムにより、ダイクロイックコーティングから反射された光を任意の度合いだけ変更させる、例えば90度回転させる一方で、透過光に偏光のゼロ変化を受け取らせる。複数の素子をモノリシック接着することができ、最適なレーザ動作を達成するために2個のサブアセンブリだけしか機械的にアラインメントする必要がないので、この設計の別の利点は低コストパッケージング構造である。通常、結晶による最適な非線形変換を達成する必要のある熱アラインメントについては、体積型ブラッググレーティングが0.1nm/℃以下のチューニングレートで温度変動に関して非常に安定しているのが一般的であることにより容易となる。これは、最適な変換を達成するためには、非線形結晶だけを例えば低コスト抵抗ヒータによりチューニングすればよく、他の素子には同様のアクティブ温度制御が必要ないことを意味する。図3に示した好ましい実施形態では、全アレイに対して1個の素子だけをアラインメントすればよい。さらに、この種のキャビティ設計についてのアラインメント公差は、それほど厳しいものではない。例えば、1エミッタあたり約100〜120ミクロンのゲイン径について、可視パワーの約5%以内アラインメントの公差は約1ミリラジアンの傾斜である。
[00189]最後に、図30および31のいずれの設計もかなり小型であり、半導体チップの熱レンズがキャビティを安定化する場合は特に、パッシブな機械的アラインメントステップだけが最適なレーザ動作を達成するのに必要である。
[00190]図31に示す実施形態は、別体の偏光制御素子を必要とする。図30に示したようなビームスプリッタアプローチを用いることも可能だが、設計を簡略に維持して偏光制御機能を既存の光学素子(面発光アレイ、波長板、結晶、およびVBG)のいずれかと一体化するのが好ましい。これを行うための好ましいアプローチは、不要な偏光を除去し、望ましい偏光に対して非常に低い損失を生じさせるために、ワイヤグリッド偏光子をこれらの素子の1個に成膜する。この場合も同様に、このアプローチの意図は、低コスト大量製造のために素子およびアラインメントステップの数を少なくすることである。
[00191]図30および31のいずれの設計もそれを拡張したものも、レーザシステムの低コスト高製造性プラットフォーム向けに最適化される。しかし、低コスト設計により、第2高調波変換プロセスにおける所望のパワーターゲット仕様を達成することが困難となる。第2高調波プロセスの効率を上げる1つの方法は、基本波長のビームを結晶内に位置する小さいウエストを持ったビームへと集束する1個のレンズアレイまたは複数のレンズアレイでキャビティを設計する。このオプションは本発明の範囲内に含まれるが、効率的な周波数二倍化を用いた低コスト構造を達成するための主要なアプローチではない。第2高調波プロセスの効率を高める好ましいアプローチは、基本波長キャビティ内ビームにおけるピークパワーを上げ、第2高調波ビームにおける平均パワーを上げるために、例えば5〜10%の十分大きいデューティ比を持った例えば100nsの短パルスの面発光電気励起レーザアレイを駆動することである。例えば1MHz等の高い繰り返しレートでのパルス動作を連続波動作と同程度に多くの用途で大いに許容可能となるようにすることができる。例えば、ディスプレイ用途では、このような繰り返しレートはパルス動作として人間の目には感知されることはないため、このようなパルス光源は連続波光源と同程度に許容可能である。さらに、パルス動作はディスプレイシステムの設計者に大きな柔軟性を与えるので、それらを望ましくさえすることが可能である。
[00192]電気励起周波数変換レーザアレイ光源の別の利点は、電気駆動を変調することにより、例えば25Hzの高いレートでこれらの光源を直接変調可能なことである。このようなスキャニングベースのレーザディスプレイデバイス等の用途では、変調能力を望ましくすることが可能である。
[00193]本発明の範囲内に含まれる他の設計には、体積型ブラッググレーティング意外の周波数制御素子を用いたレーザアレイが含まれている。このような素子の例は薄膜コーティング干渉フィルタであり、これは基本設計波長での共振狭帯域透過性をもたらすように設計可能である。
[00194]本発明のレーザ光源の実施形態にお主要な用途の1つがプロジェクションディスプレイである。これらの用途については、最高の鑑賞経験のためのフルカラー空間表現を達成するように赤色、緑色、および青色(RGB)を有するのが好ましい。上述の実施形態はいずれかの色向けのものではなく、この発明の一部である、フルRGBレーザアレイ光源を設計するのに使用可能である。例えば、半導体ゲイン材料およびミラースタックを1260nm、1064nm、および920nm付近で設計可能であり、ニオブ酸リチウム等の非線形材料用の適正な分極時間と光学コーティングを選択し、VBGとビームスプリッタまたは波長板をこれらの波長付近で設計することにより、630nm(赤色)、532nm(緑色)、および460nm(青色)のレーザアレイ光源を得る。
[00195]単にアレイ中のエミッタ数を増やすだけで単なる各色のパワーを増減可能である。場合によっては、エミッタの一次元アレイを用いることが望ましい。例えば、多くの周期的に分極された非線形結晶が約0.5mm(この寸法に沿ってエミッタの複数の列をフィットさせるのは難しくなる)の薄い断面を持って作製される。この場合には、単一の寸法でエミッタ数を増減するのが好ましい。あるいは、二次元エミッタアレイを用いることができ、非線形材料の厚さを大きくするのが望ましくない場合には光学的に接触された薄い結晶のサブアセンブリを単結晶の変わりに用いることもできる。
[00196]本発明の用途には、プロジェクションディスプレイ、照明用途、自動車用照明、および他の家電用途向けの光源が含まれる。例えば、コヒーレントレーザ光源に基づくプロジェクションディスプレイシステムは、スペックル効果に悩まされることがある。しかし、スペックル効果はレーザアレイ内でエミッタ数が増やされると低減する。また、本発明の好ましい実施形態であるマルチ縦モード動作は、各エミッタのコヒーレンスを低減することによりスペックルを減らす。レーザのパルス動作により、この利点がさらに推進される。また別の利点は、1個のエミッタの故障が光源全体の故障とはならず、非線形結晶および他の光学素子のパワー密度が、例えばリアプロジェクションディスプレイテレビ用のレーザ光源に望まれる複数ワットレベルの同程度のパワーの単発光レーザにおける場合ほど高くないため、このようなアレイの信頼性が高くなることである。
[00197]これらの設計を用いるレーザは、低コストパッケージングの方法と互換性がある。特に、これらのレーザを小型かつ簡便なアラインメントにすることが可能である。好ましい実施形態では、いずれもフラットなレーザアレイの表面と出力ミラーの間に厳密なアラインメントがなされる。レーザは、このアラインメントの公差がパッシブに、または最小限に満たされ、パッシブなアラインメントは初期のレーシングを達成するのに十分となるような方法で設計され、これは容易に最適化可能である。これによって初期の動作のための調査の必要がなくなる。このような簡単なパッケージを多色パッケージに容易に組み込むこともでき、ディスプレイ用途向けのレーザシステムにおけるさらなる空間削減となる。このようなパッケージの例を、図32A、32B、および32Cに示す。図32Aは、単一アレイ(例えば1色の光用アレイ)のためのパッケージを示す。図32Bは、線3200に沿った断面を示す。図32Cは、赤色、緑色、および青色光を生成するためのセット等のパッケージされたアレイのセットを示す。
[00198]図32A、32B、および32Cに示すパッケージには、システム全体にプラスになるいくつかの素子がある。第1に、このパッケージはアクティブな温度安定化を必要としない。これは、面発光レーザとパッケージの両方を、高い熱伝導とレーザおよびパッケージのベースの間に小さい距離とを有するように作成することによって達成される。第2に、レーザパッケージの高精度基準マークに対するパッシブアラインメントを用いて、アラインメントを行うことが可能である。図32A、32B、および32Cに示すようなシステムは、最新の中央処理装置(CPU)チップと同等の放熱であるのが好ましいので、これらCPU向けに設計された効率的な低コスト冷却解決法のいずれもこのようなレーザに用いることができる。
[00199]第2に、このシステムは最小数の素子で設計される。図32Aおよび32Bに示すユニットの場合には、区別できる素子は、レーザ、偏光子、非設計材料、およびVBGの4個だけである。さらに、VBGのみが厳密なアラインメントを必要とする。したがって、厳密なアラインメントが最小数であるために、パッケージングコストが削減される。加えて、少ないコンポーネント総数により、ユニットの耐用期間中の光学アラインメント維持を容易にする。
[00200]第3に、このシステムは小型となるように設計されている。一実施形態では、各種プロジェクションディスプレイシステムにおいてパッケージレーザをUHPランプの代わりに利用することができるように、パッケージは1.5インチ未満の幅と約2インチ未満の総体積を有している。これは、素子数を制限し、その高い性能によってより厳密なアラインメントが、ひいてはそれらのアラインメントのためのより多くの空間および素子が必要となる単一のレーザの代わりに、簡略かつ小型の共振器を備えたレーザアレイを用いることにより可能となる。
V.ディスプレイシステムにおいてUHPランプに代わる小型高効率高パワーアレイ用VECSEL設計
[00201]本発明のレーザアレイの1つの用途は、プロジェクションディスプレイにおいて用いる従来の白色光源に代わるものである。前述のように、拡大縮小可能で製造可能な構造は、高パワー高信頼性のほぼスペックルゼロ出力を達成するためにVECSEL数を選択可能とする。加えて、実験的なデータが、VECSELアレイを極端に小型化可能であり高効率を有することを示している。実験的なデータは、個別のVECSELがパルスモード周波数二倍化を用いて30〜50mW程度の可視で出力パワーを生成できることを示している。励起レーザのパルス幅が平均パルスSHGパワーにおいて2倍以上の改善を生み出してきた。熱的モデリングは、パルスモード用途について、VECSELが2:1〜3:1程度のパッキング比で密にパック可能であることを示している。
[00202]VECSELゲイン素子は、低い光学損失となるように最適化されるのが好ましい。50〜100ミクロンの基板厚さで100〜400ミクロンのゲイン径を用いると、キャリアゲイン分布がmid E16 n−typeまでの基板ドープレベルに対してほぼトップハット状になる。
[00203]電気的に励起された径が大きくなるにつれてVECSELの効率が上がることが実験的調査によって発見された。VECSELの各ゲイン素子は、例えば陽子注入または他の手法を用いて事前に選択した径に電流を閉じ込めて事前に選択した径への電流注入を制限することができる。実験的研究は、高いパッキング密度のアレイをパルスモードで用いることができ、レーザの半導体部分のコストを削減することを示した。
[00204]図33を参照すると、選択された径に制限された電流注入を用いるVECSELにおいて、量子ゲイン領域が電気的に励起される。しかし、電気的に励起された量域におけるゲインが十分に高く、径が十分な幅である場合、量子井戸の横平面で大きく増幅された自然発光も生じることになる。結果として、図34に示したような光励起された低光学損失の環状領域ができる。これらの効果は、高電流パルスモード動作や80〜150ミクロンの電気的に励起された径を有するような大径VECSELで特に顕著である。この環状横方向励起は、追加の光学ゲインと低損失領域を作り出す。高度に励起された大径デバイスについては、光学パワーの40〜60%が光学的に励起された環状領域内となり得る。環状横方向励起の効果を理解する別の方法は、環状領域において光学モード径が少なくともパワーの一部を回復するように外部キャビティモードが調整される限り、横方向増幅された自然発光からのエネルギー損失が回復されることである。
[00205]実験的研究は、拡大キャビティにおいて基本周波数で数百ワットに近い循環パワーを有する150ミクロン径の電気的に励起されたゲイン領域を持ったVECSELを示している。この高い循環パワー密度は、SHG出力を高めることになる。加えて、比較的大きい電気的に励起された径は、狭い径のVECSELと比較してアラインメント公差を緩和する。あるいは、大径VECSELを理解する別の方法は、横方向光励起によって生じる追加のメリットに加えて、大径は製造ミスアラインメントの特定のレベルに対してより低い光学結合損失をもたらすことである。
[00206]VECSELの高い効率は、放熱も減らし、冷却の要求を低くする。加えて、高い効率と高いパッキング密度により、1または2立方インチの総体積を有する比較的小型のモジュールがRGB等の複数の可視波長で大きなパワーを生成することが可能となる。
[00207]図35は、VECSEL(ECSELの列)、LED、およびUHPランプを比較する表である。本発明の教示に従って製造されたVECSELアレイはUHPランプより優れたパワー、輝度、効率性、コスト特性を持つ。VECSELアレイは極端に小型であり、DLPシステム用のカラーホイールやファンが不要である。3LCDエンジン等の他のディスプレイ用途では、追加の偏光子、カラーフィルタ、回転ミラー、およびフライアイレンズが不要である。結果として、多くのプロジェクションディスプレイ用途においてVECSELアレイはUHPランプの代替として有用である。さらに、コンパクトなサイズにより、比較的小さいマイクロディスプレイへの結合性も高くなる。したがって、本願に記載の光源および動作方法は、従来のLEDおよびUHPランプの代替物として各種の光エンジン構造において使用できる。
VI.その他の最適化
[00208]本発明の実施形態は、各種の最適化とともに実施することができる。非線形結晶の変形物は本発明の範囲内に含まれるとみなされる。非線形結晶は、例えば、周期的に分極されたニオブ酸リチウム(PPLN)、周期的に分極されたタンタル酸リチウム(PPLT)、周期的に分極されたチタンリン酸カリウム(PPKTP)、または周期的に分極されたチタンヒ酸ルビジウム(PPRTA)等の周期的に分極された材料としてよい。非線形結晶は、非線形変換スペクトルおよび温度帯域幅を大きくするために、チャープ非周期パターンで周期的に分極することができる。非線形結晶は、三ホウ酸リチウム(LBO)、チタンリン酸カリウム(KTP)、β−ホウ酸バリウム(BBO)、セシウムリチウムボレート(CLBO)、またはニオブ酸カリウム(KNbO3)等のバルク比設計材料としてもよい。
[00209]ゲイン素子は、GaInAs、GaAlAs、GaInAsN、およびGaN等の各種の半導体材料から形成することができる。
[00210]体積型ブラッググレーティングは、アレイコヒーレンスおよびスペックルを低減するためにチャープ屈折率パターンを持つように設計することができる。
[00211]ファイバブラッググレーティング等の追加の光学素子を周波数制御を行うために含めることができる。
VII.コンビネーションおよびサブコンビネーション
[00212]本発明を様々な例に関して説明してきたが、この様々な例をコンビネーションおよびサブコンビネーションでも使用可能であるができることが理解されよう。
VIII.その他の用途
[00213]プロジェクションディスプレイ用途に関して広範囲に本願の個別のレーザおよびレーザアレイを説明してきたが、それらは他の用途にも利用可能であることも理解されよう。
[00214]先の記載は、説明のために、本発明の徹底的な理解のために特定の術語を用いた。しかしながら、本発明を実施するために具体的な詳細が必要ではないことが当業者には明らかであろう。従って、本発明の特定の実施形態の上記説明は、例証および説明の目的で示された。それらは、本発明を網羅するためでも開示されたそのままの形に制限するよう意図されたものではなく、明らかに、上述の教示に鑑みて多くの変形例や変形物が可能である。実施形態は、本発明の原理およびその実際的な用途を最も良く説明するために選択され説明されたものであり、これによって他の当業者が本発明および各種実施形態を考えられる特定の仕様に適するように様々な修正とともに最も良く利用できるようになる。特許請求の範囲およびそれらの均等物が本発明の範囲を規定するものとして意図されている。
本発明の一実施形態によるプロジェクションディスプレイで用いる光源を示す斜視図である。
例示的な従来技術の拡大キャビティ面発光レーザを示す図である。
本発明の一実施形態による光源に用いる個別の面発光ダイオードレーザゲイン素子を示す図である。
赤色、青色、および緑色または他の色のアレイが光ガイド内に集束され、続いてマイクロディスプレイライトバルブ上に結像され、次にフロントまたはリアプロジェクションディスプレイシステムの何れかのスクリーン上に再結像される、プロジェクションディスプレイシステムを示す図である。
回折光学素子を用いて円形ガウスレーザビームを光源の各レーザ素子から矩形トップハット分布へと変換し、これが続いてライトバルブの全域を効率的にカバーし、次にフロントまたはリアプロジェクションディスプレイシステム上に結像される、プロジェクションディスプレイシステムを示す図である。
従来技術のプロジェクションシステムを示す図である。
カラーホイールを利用する従来技術のプロジェクションシステムを示す図である。
ブランキング時間中の図7Aの従来技術のプロジェクションシステムのカラーホイール上のビームフットプリントを示す図である。
アクティブ時間中の図7Aの従来技術のプロジェクションシステムのカラーホイール上のビームフットプリントを示す図である。
従来技術の空間変調器を示す図である。
図8の空間変調器の素子におけるスイッチング時間を示す図である。
本発明の一実施形態による光エンジンシステムを示す図である。
熱時定数と同程度かそれより長いパルスのピーク電流の関数としてロールオーバーで最大達成可能cwパワーと比較して基本(破線カーブ)および第2高調波(実線カーブ)の両方の平均パワーにおける計算されたパワー変化を示す図である。
熱時定数と同程度かそれより短いパルスのピーク電流の関数としてロールオーバーで最大達成可能cwパワーと比較して基本(破線カーブ)および第2高調波(実線カーブ)の両方の平均パワーにおける計算されたパワー変化を示す図である。
(A)と(B)は本発明の一実施形態によるサブフレームレベルで色を交互配置することによって、3色からなる画像中の単一画素についての強度のバイナリ変調を示す図である。
本発明の一実施形態によるカラーシーケンシャル動作中のアンダードライブおよびオーバードライブで単色レーザ光源を駆動する方法を示す図である。
従来技術によるキャビティ内スペクトルフィルタリングの配列を示す図である。
従来技術による300ミクロン厚エタロンについての波長に対する透過応答を示す図である。
本発明の一実施形態による周波数安定化のためのキャビティ内干渉フィルタを用いた拡大キャビティ面発光レーザを示す図である。
本発明の一実施形態によるレーザ周波数安定化用の薄膜干渉フィルタ構造を示す図である。
本発明の一実施形態による薄膜干渉フィルタを形成するための一連の薄膜層を示す図である。
本発明の一実施形態による薄膜干渉フィルタについての波長に対する理論的透過率を示す図である。
本発明の一実施形態による薄膜干渉フィルタについての波長に対する実験的透過率を示す図である。
本発明の一実施形態による周波数制御用干渉フィルタを利用する面発光拡大キャビティレーザアレイを示す図である。
本発明の一実施形態による体積型ブラッググレーティングについて波長に対する実験的反射率を示す図である。
本発明の一実施形態による体積型ブラッググレーティングを利用する拡大キャビティレーザを示す図である。
本発明の一実施形態による体積型ブラッググレーティングを利用する拡大キャビティレーザアレイを示す図である。
本発明の一実施形態によるキャビティ内周波数二倍化を用いた垂直拡大キャビティ面発光レーザの機能ブロック素子を示す図である。
本発明の一実施形態による、アラインメントの複雑さを低減するために、端部ミラーおよび波長制御素子の機能性が1個の光学ユニットに組み合わされた図25の機能ブロックを示す図である。
本発明の一実施形態による、アラインメントの複雑さを低減するために、端部ミラー、波長制御素子、および非線形結晶の機能性が1個の光学ユニットに組み合わされた図25の機能ブロックを示す図である。
本発明の一実施形態による、アラインメントの複雑さを低減するために、端部ミラー、波長制御素子、非線形結晶、および偏光制御素子の機能性が1個の光学ユニットに組み合わされた図25の機能ブロックを示す図である。
本発明の一実施形態による、アラインメントの複雑さを低減するために、比較的重要でない光学コンポーネントの機能性が他のユニット内に一体化された図25の機能ブロックを示す図である。
本発明の一実施形態による体積型ブラッググレーティングおよび回転ミラーを用いる拡大キャビティ面発光アレイを示す図である。
本発明の一実施形態による体積型ブラッググレーティング、非線形結晶、および波長板を含む光学ユニットを有する拡大キャビティ面発光アレイを示す図である。
本発明の一実施形態による1色の面発光レーザアレイ用のパッケージング設計を示す斜視図である。
図32Aのパッケージの断面図である。
本発明の一実施形態による3個のパッケージされたレーザアレイの斜視図である。
陽子注入により制限された電気駆動電流で周波数二倍化した面発光レーザダイオードの図である。
大径VECSELデバイスについて横方向光励起の効果を示す図である。
プロジェクションディスプレイの光源として従来のLEDおよびUHPを備えた面発光レーザの性能を比較する表である。