JP2008531672A - 医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

生分解性ポリマー、免疫原性一本鎖リボ核酸(ssRNA)物質、生物学的に活性な巨大分子及び安定化剤を含むミクロ粒子が開示される。ここで生成ミクロ粒子の外側表面には吸着分子は存在しない。前記組成物は、特にIFN-αの産生増加を刺激することによって、樹状突起細胞の免疫応答の提供に有効である。前記ミクロ粒子から誘導される医薬組成物の製造方法及び医薬としての使用方法もまた本発明に含まれ開示される。
【選択図】 なし

Description

発明の詳細な説明
本発明は、哺乳動物細胞で免疫応答を刺激する、安定で免疫原性を有する微小被包化一本鎖リボ核酸(RNA)を含むミクロ粒子(microparticle)及び医薬組成物に関する。そのような医薬組成物の製造方法及び免疫療法における使用方法もまた、本発明に含まれ開示される。
哺乳動物の免疫系は、侵入微生物の存在をいち早く感知し前記に対する応答を始動させるために、検出装置パネルの形で“早期警報システム”をもっている。種々の“トール様(toll-like)レセプター”(TLR)は、多細胞生物では見出されないが病原体には保存されている多様な構造及び化学物質を認識する。その適切なアゴニストによるTLRの刺激は、特定の前炎症性及び/又は抗ウイルス性サイトカインの産生をもたらすシグナリング経路の活性化を生じる。ある種のTLRアゴニスト(例えばCpGオリゴデオキシヌクレオチド)を免疫療法及びワクチンのアジュバントとして使用することに今や大きな関心が向けられている(例えば以下を参照されたい:Nature Reviews Immunology 2004, 4:248-257及び512-520)。
感染により誘発されるサイトカインの中で、I型インターフェロン(IFN-α及びIFN-β)は抗ウイルス性応答におけるその重要性のために注目に値する。I型インターフェロンは、先天的免疫応答の非常に初期に必要とされ、感染後の抗ウイルス性状態の迅速な確立に必須である。I型インターフェロンはまた、ウイルスに対するその後の一切の適応応答(樹状突起細胞相互プライミングの助長及び細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の誘発)を調節する。
形質細胞様樹状突起細胞は、極めて高レベル(通常の細胞よりも1000倍まで)のI型インターフェロンを産生することができる。形質細胞様樹状突起細胞は、多くのウイルス感染に対する全身的インターフェロン応答に必要であると考えられている。ある種のCpGオリゴヌクレオチドによる形質細胞様樹状突起細胞の刺激は、高レベルのインターフェロンαの産生をもたらす。CpG DNAはエンドソーム区画内でTLR9と相互作用すると考えられている。最近になって、ネズミの形質細胞様樹状突起細胞は、高グアニジン及びウラシル一本鎖RNA配列(ssRNA)による刺激後に、高レベルのIFN-αを産生することができることが示された(。Diebold et al. Science, 2004, 303:1529)。前記の作用は(マウスでは)TLR7によって仲介されることを示す良好な証拠が存在する。TLR9と同様に、TLR7は、エンドソーム区画内で病原体関連分子型と相互作用すると考えられる。TLR7の細胞内分布(すなわちエンドソーム区画における分布)は、細胞質ゾル中の“自己”ssRNAによる活性化を妨げる。しかしながら、ssRNA単独では形質細胞様樹状突起細胞からのIFN-α産生を効率的に刺激することができないことは一般的に容認されている。これは、ssRNAはヌクレアーゼ攻撃に特に感受性を有し、さらにまたssRNAの形質膜からの取り込みは特に貧弱であるためである。
したがって、そのようなssRNA分子が免疫療法での使用に適切であるように、それらを安定化させる手段を提供することが希求されている。ssRNAを安定化させるための手段は、ssRNAの免疫刺激特性を維持しながらヌクレアーゼ攻撃から前記RNAを保護しなければならない。さらにまた、ssRNAを安定化させるための手段は、理想的には、ssRNAによって誘引される一般的な免疫応答が投与又は同時投与され得るいずれの特定の治療法も妨害することがないように、免疫原性化合物をデリバーする時点で存在している手段と相互に補足しあう形態でなければならない。
今や、本発明者らは、安定化剤の存在下で微小被包化したssRNAを含むある種の処方物はssRNAを安定化及び保護することができ、さらに他の一般的な治療薬よりも増強されたサイトカイン応答を刺激することができることを見出すにいたった。特に、本発明の組成物はIFN-α及びIL-12レベルを刺激し、前記レベルは、一般的に用いられるin vitroトランスフェクション試薬(例えばポリエチレンイミン(以下では“PEI”))を用いて濃縮したssRNAによって刺激されるレベルよりも(優れていないとしても)少なくとも等価である。このタイプの組成物はin vivo投与について以下のような具体的な利点を有する:本ssRNAは比較的低レベルの安定化剤を含むので、伝統的な方法で安定化された上記で述べたssRNAよりもおそらく毒性が低い。さらにまた、ミクロ粒子化処方物の粒子サイズは、要求される投与ルートに応じて最適化することができる。例えば本発明のミクロ粒子は、下気道へのデリバリーのために最適であろうと考えられる範囲内の平均粒子サイズ(すなわち1−10μm)を提供するように生成することができる。
本発明のミクロ粒子及び医薬組成物は、宿主細胞内でサイトカインの産生を刺激することができ、したがって広範囲の症状及び感染のための一般的免疫療法として用いることができる。このことは、具体的な治療が不明であるか又は利用不能であるときには特に有利である。本発明のさらに別の利点は、本組成物は場合によって特定の治療薬を含み、それによって前記組成物が投与される抵抗力減弱個体で一般的及び特定の免疫応答を誘引することができるということである。本発明のミクロ粒子組成物は、生物学的潜在能力を失うことなく、より長期にわたって(少なくとも数ヶ月)乾燥粉末として保存することができるという点で更なる利点を有する。貯蔵後、本組成物は、乾燥粉末として例えば吸入によって直接投与するか、又は当分野で公知のように、医薬的に許容される溶媒又は緩衝液に再水和し、必要に応じて非経口的に投与することができる。
本発明の組成物はまた細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の誘引に有用であり得る。前記応答は細胞内病原体及び癌性細胞の除去に特に重要である。本組成物のこの特色は、CTL応答の誘発におけるIFN-αの重要性を考慮すれば、本組成物はCTL応答を誘発することができるワクチンデリバリー系を提供することができるので、本発明の特有の利点を際立たせる。そのようなワクチンデリバリー系は腫瘍の免疫療法にとって特に適切である。
本発明にしたがえば、生分解性ポリマー、免疫原性一本鎖リボ核酸(以下では“ssRNA”)物質、生物学的に活性な巨大分子(macro molecule)及び安定化剤を含むミクロ粒子組成物が提供される。本ミクロ粒子組成物では、前記生物学的に活性な巨大分子、一本鎖リボ核酸(ssRNA)及び安定化剤は、生分解性ポリマーの内側及び/又は内部(inside and/or within)に被包化され、前記ミクロ粒子の自由な外側表面(free outer surface)が提供される。本ミクロ粒子の外側表面には被包化されている成分は本質的に存在しないが、ssRNA、生物学的に活性な巨大分子及び安定化剤の各々のわずかな割合がミクロ粒子の表面に存在することは避けがたいということは当業者には理解されよう。しかしながら、本明細書に記載されるとおり、ミクロ粒子の外側表面には前記捕捉した成分は実質的に存在しない。したがって、本明細書で用いられる、“自由な外側表面”とは、生成直後に吸着された成分を含まないミクロ粒子の外側表面に合致する。しかしながら、そのような自由な外側表面をもつミクロ粒子は、前記粒子に吸着させられた他の物質、例えば医薬化合物、巨大分子及び核酸を生じるプロセスに付すことができる。本明細書で用いられる、“吸着成分”とは、ミクロ粒子形成プロセスの結果としてミクロ粒子表面に部分的に存在し得る捕捉された物質に合致し、さらに“吸着成分”はミクロ粒子が形成された後、前記ミクロ粒子の外側表面に吸着される物質に合致する。
本明細書で用いられる、“ミクロ粒子”という用語は、直径が約10nmから約100μm、好ましくは200nmから30μmの範囲、より好ましくは直径が500nmから10μmの範囲の粒子を指す。ミクロ粒子サイズは、当分野で公知の技術、例えばレーザー回折測定法又は走査電子顕微鏡検査によって容易に決定され、一般的に平均直径として示される。粒子、微粒子、ミクロ粒子、ミクロ微粒子及びミクロスフェアという用語は相互に用いられ、いずれも上記のミクロ粒子の定義に包含される。
生体適合性であるいずれの生分解性ポリマーも本発明のミクロ粒子の生成に用いることができるが、哺乳動物組織で分解することが判明し、さらに医薬としての投与に適したポリマーを用いるのが好ましい。そのような生分解性ポリマーの例には、脂肪族ポリエステル、ポリ(α-オキシ酸) 由来のポリマー、例えばポリ(ラクチド)(“PLA”)、又はD, L-ラクチド及びグリコリド又はグリコール酸のコポリマー、例えばポリ(D, L-ラクチド-コ-グリコリド)(“PLG”又は“PLGA”)又はポリグリコリド、ポリカプロラクトン及びそのコポリマーが含まれるが、ただしこれらに限定されない。生分解性ポリマーはポリ(ラクチド)であることが好ましい。
ミクロ粒子内部に被包化されるssRNAは、特に前炎症性サイトカイン、例えば腫瘍壊死因子(TNF-α)及び/又は抗ウイルス性サイトカイン、例えばINF-α、INF-β又はIL-12の産生を刺激することによって免疫応答を刺激又は増強することができる任意の一本鎖RNA配列であり得る。ssRNAはINF-αの産生及び分泌を刺激するのが好ましい。INF-αは多くのメカニズムによって産生され得ることは当業者には理解されているところであるが、本ssRNAは、哺乳動物宿主の樹状突起細胞のトール様レセプター(TLR)と相互作用しこれを刺激することによってサイトカインの産生を刺激することができるように選択されるのが好ましい。さらにまた、種々のTLRがINF-αの分泌を促進することができることは当業者には理解されるところであるが、本ssRNAはTLR-7及び/又はTLR-8を刺激するのが好ましい(TLR-7及びTLR-8はおそらくヒトのサイトカイン発現に必要とされる)。
適切なssRNA配列は、単一種の塩基(single base)を高い割合で含む配列、すなわち、A、U、C又はGのいずれかに富む領域を含む配列である。前記ssRNAは、G-富裕、又はU-富裕配列を有するのが好ましい。ssRNAの好ましい例にはポリウリジル酸及びポリグアニル酸が含まれる。ssRNAはポリウリジル酸であることがより好ましい。
ssRNAの微小被包化は、好ましくは生物学的に活性な巨大分子の存在下で実施される。そのような巨大分子には、一般的な免疫応答を誘引することが判明している治療薬、例えばオリゴデオキシヌクレオチド、CpGオリゴヌクレオチド、ポリペプチド及びタンパク質、さらにまた特定の治療効果を提供することができる物質、例えば既知の病原体に対して特異的な免疫効果を誘引する物質、例えば病原体特異的抗原、又は別には腫瘍若しくは癌性細胞上で発現される抗原に対して特異的な免疫効果を誘引する物質が含まれる。
本明細書で用いられる、“抗原”という用語は、前記抗原が存在するときに宿主の免疫系を刺激して抗原特異的免疫応答を生じるか、又は液性抗体応答を誘引することができる1つ以上のエピトープを含む分子を指す。抗原という用語は、サブユニット抗原並びに死滅、弱毒化又は不活化させた細菌、ウイルス及び他の微生物を指す。抗原又は抗原決定基を模倣することができる抗体又は抗体フラグメントもまた抗原の定義に含まれる。
好ましい実施態様では、ミクロ粒子組成物は、細菌性病原体、例えば炭疽菌(Bacillus anthracis)の組換え防御抗原(rPA)又はペスト菌(Yersinia pestis)のF1及び/又はV抗原を含むが、任意の既知の抗原を本ミクロ粒子組成物内に取り込んで処方することができることは当業者には理解されよう。この実施態様は、細菌感染(例えば炭疽病、ペスト、類鼻疽、鼻疽、クラミジアなど)の治療に特に有用であるがまた、適切な抗原又は抗原模倣物が利用可能であることを前提にしてウイルス、菌類及び寄生虫感染の治療にも有用である。
本ミクロ粒子処方物の安定化剤は当該技術分野で公知の広範囲の安定化剤から選択される任意のものでよい。安定化剤には、洗剤、界面活性剤、分散剤、懸濁剤及びエマルジョン安定化剤が含まれるが、ただしこれらに限定されない。安定化剤の好ましい例には脂質及び界面活性剤が含まれる。しかしながら、選択される安定化剤は、in vivoで投与されたとき毒性を有する可能性がある安定化剤を回避することができるように、医薬的に許容される薬剤であることが好ましい。さらにまた、安定化剤はssRNAと複合体を形成することができることが好ましい。そのような複合体は、例えば縮合反応の結果として安定化剤とssRNAとの共有結合による直接的結合によって形成され得るか、また別に複合体は静電気的、イオン性、又は疎水性相互反応によって形成されてもよい。安定化剤は、ssRNAとの静電気的相互反応を生じるように陽性に荷電されることがより好ましい。そのような安定化剤の適切な例は、陽イオン性ポリマー及び/又は陽イオン性脂質である。好ましい例は陽イオン脂質、例えばセチルトリメチルアンモニウムブロミド(以下では“CTAB”)、ジメチルジオクトデシルアンモニウムブロミド(“DDA”)及びN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(“DOTAP”)などである。
安定化剤の適量は当業者によって日常的に決定され得るが、ssRNA対生分解性ポリマー対安定化剤の質量比は、約1:8:6から約1:15:12の範囲であり、より好ましくは成分の質量比は約2:25:18である。
本発明者らは、安定化剤の選択及び量は前記安定化剤の存在下で形成されるミクロ粒子の全体的荷電に影響を及ぼし、それによって医薬組成物が正味の陰性又は陽性荷電を有し得ることを見出した。本医薬組成物は、適切な荷電測定装置によって測定したとき正味の陽性荷電を有することが好ましい。前記装置は例えばZetasizer(商標)であり、前記はゼータ電位を測定する(ゼータ電位は全ての固体と液体の境界面の間に存在する電気的ポテンシャルである)。さらに、生成組成物の測定ゼータ電位が約0から10mVの範囲、より好ましくは20から80mVの範囲、さらに好ましくは30から60mVの範囲であることが好ましい。本発明者らは、ほぼ50mVのゼータ電位をもつ医薬組成物がIFN-α産生の刺激に特に効果的であることを見出した。
本ミクロ粒子組成物は、理想的には効率的な投与及び免疫系への輸送を可能にするサイズ、さらに特に吸入投与に適したサイズを有するミクロ粒子を含む。ミクロ粒子は、0.1から5μmの範囲、より好ましくは0.2から4μmの平均直径を有することが好ましい。ミクロ粒子はほぼ1μmの平均直径を有することがもっとも好ましい。そのようなミクロ粒子は、前記ミクロ粒子を医薬的に許容されるアジュバント及び/又は賦形剤(例えば結合剤、充填剤、稀釈剤、滑沢剤、着色料、甘味料、分散剤など)と一緒に混合することによって医薬組成物として適切に処方される。
医薬組成物は、ミクロ粒子を別の治療薬又はアジュバントとともに同時投与する手段を提供するために処方することができる。ミクロ粒子の自由な外側表面は、さらに別の治療薬、例えばまた別の抗原、免疫原性タンパク質及びポリペプチド、核酸(例えばCpGオリゴヌクレオチド及びDNAベクター)の吸着のための都合のよい場所を提供する。そのようなまた別の治療薬を用いてミクロ粒子の自由な外側表面を修飾し、免疫応答の強化を提供することができる。
本発明の第二の特徴にしたがえば、そのようなミクロ粒子及び医薬組成物の製造方法が提供される。前記方法は以下の工程を含む:
(a)生分解性ポリマー溶液を調製する工程:
(b)免疫原性ssRNA及び生物学的に活性な巨大分子を含む溶液を(a)の溶液に添加し、エマルジョンを生成する工程;
(c)安定化剤を含む溶液に工程(b)のエマルジョンを添加し、二重エマルジョンを生成する工程;
(d)前記溶媒を除去する工程;及び
(e)得られたミクロ粒子を収集する工程。
本方法で使用されるssRNAは、本明細書に既に記載したリストから選択され、水性溶液(例えば蒸留水又は水性緩衝液)に都合よく溶解され、さらに生分解性ポリマーは水に非混和性の溶媒、例えば有機溶媒(たとえばジクロロメタン)に溶解されるが、ただし、それらを混合したときにエマルジョンを形成することができることを条件として、任意の溶媒の組合せを用いることができることは当業者には理解されよう。生分解性ポリマーは本明細書で既に提供された選択肢リストから都合よく選択される。さらにまた、安定化剤も既に上記に記載した安定化剤から選択することができ、さらに、安定化剤の溶液を第一の溶液(すなわち工程(b)で生成したエマルジョン)に添加したときに二重エマルジョンが生成されるように任意の溶媒に溶解させることができることは理解されよう。したがって、工程(c)で安定化剤を溶解させるために、水性又は水に混和性の溶媒を用いることが好ましい。そのような組合せは、水-油-水(w-o-w)二重エマルジョンを生成するが、油-水-油(o-w-o)二重エマルジョンも同等に適切であり得ることは理解されよう。第一のエマルジョン(すなわち工程(b)で生成されたエマルジョン)は、工程(c)の安定化剤溶液に添加される。添加はこの順序で実施されることが好ましいが、安定化剤の溶液を工程(b)のエマルジョンに添加することによって適切な二重エマルジョン(及びしたがってミクロ粒子)を生成することも可能である。工程(b)のエマルジョンを安定化剤の溶液に攪拌しながら添加することが好ましい。なぜならば、本発明者らはこれによってより良好なミクロ粒子が提供されることを見出したからである。工程(b)のエマルジョンは激しく攪拌しながら安定化剤の溶液に滴々と添加するのがより好ましい。溶媒除去工程(c)は、任意の通常的手段(例えば定常的攪拌、真空又は加熱蒸発)によって実施し、さらに生成ミクロ粒子は、例えばろ過又は遠心によって収集することができる。ミクロ粒子は超遠心によって収集されるのがより好ましい。続いて、ミクロ粒子を収集して直接使用するか、又は更なる処理、加工又は処方に付し、例えば医薬的に許容される化合物と一緒にして医薬組成物を生成することができる。更なる加工はいくつかの応用については望ましいかもしれないが、ほとんどの事例で更なる加工は不要であろう。なぜならば生成ミクロ粒子は更なる加工を加えずに用いられるときに有効なサイズを有するからである。
本発明の方法にしたがって調製したミクロ粒子組成物は、長期にわたって乾燥粉末として保存することができるようにさらに凍結乾燥工程に付すことができる。本発明者らは、そのような凍結乾燥組成物は数ヶ月間安定であり、さらに、例えば通常の吸入装置による粘膜投与のために、乾燥粉末として直接それらを用いることができるという利点を有することを見出した。また別には、乾燥粉末は、必要に応じて及び必要なときに再水和させることができ、このことは非経口投与に適した組成物の調製に特に有利である。
本発明は、これから添付の図面を参照しながら例示によって詳細に説明されるであろう。
実施例1:ポリビニルアルコール安定化ポリラクチドミクロ粒子へのポリ-U被包化
ポリウリジル酸(ポリ-U)(Sigma, Dorset, UK)をポリラクチドミクロ粒子に被包化した。簡単に記せば、10mgのポリ-Uを0.5mLのポリビニルアルコール(PVA)13−23kDaの水溶液(1.5%w/v)(Sigma, Dorset, UK)に懸濁し、9mLのジクロロメタン(DCM)(Sigma, Dorset, UK)に溶解した125mgのポリラクチド(PLA)と一緒にシルバーソン(Silverson)ホモジナイザー(Silverson, Bucks, UK)を用いて激しく攪拌した。生成されたエマルジョンを3.0%(w/v)のPVA(13−23kDa )を含む激しく攪拌されている二次水相に滴々と添加した。溶媒を蒸発させた後、硬化したポリマーミクロ粒子を凍結乾燥の前に超遠心によって採集した(Edwards, Crawley, UK)。
実施例2:N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)安定化ポリラクチドミクロ粒子へのポリ-U被包化
10mgのポリ-Uを0.5mLの体積の蒸留水に溶かした。前記を、9mLのDCM(Sigma, Dorset, UK)に溶解した125mgのPLAとシルバーソン・ホモジナイザー(Silverson, Bucks, UK)を用いて激しく混合した。生成エマルジョンを0.1%(w/v)のDOTAPを含む激しく攪拌されている二次水相に滴々と添加した。溶媒を蒸発させた後、硬化したポリマーミクロ粒子を1%(w/v)のトレハロース(Sigma, Dorset, UK)中での凍結乾燥(Edwards, Crawley, UK)の前に超遠心によって採集した。
実施例3:DOTAP安定化ポリラクチドミクロ粒子へのポリ-U及び卵白アルブミン(OVA)の被包化
0.5mLの蒸留水中の5mgのOVA及び10mgのポリ-Uを一緒に添加することによって、実施例2で述べたポリラクチドミクロ粒子に卵白アルブミン(OVA)(Sigma, Dorset, UK)が被包化された。
上記の実施例では、NanoDrop技術によって確認したとおり、RNAはPVA-及びDOTAP-安定化ミクロ粒子の両方から抽出することができた(結果は示されていない)。
実施例4:卵白アルブミン(OVA)ミクロ粒子の調製
ポリ-Uの非存在下で微小被包化OVAを実施例3で述べたように調製した。
実施例5:N-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)安定化ポリラクチドミクロ粒子表面へのポリ-Uの吸着
改変した単一エマルジョン溶媒蒸発法を用いて陽イオン性ミクロ粒子を調製した。9mLのDCM(Sigma, Dorset, UK)に溶解した125mgのPLAを90mLの体積の0.1%(w/v)DOTAPと、シルバーソン・ホモジナイザー(Silverson, Bucks, UK)を用いて激しく混合した。溶媒を蒸発させた後、硬化したポリマーミクロ粒子を凍結乾燥(Edwards, Crawley, UK)の前に超遠心によって採集した。続いて使用直前に、5%のw/w積載量でポリ-Uを前記ミクロ粒子に吸着させた。
実施例6:OVA充填ミクロ粒子表面へのCpG DNAの吸着
卵白アルブミンを充填したミクロ粒子(実施例3に記載したように調製)に、その表面にCpGを吸着させることによってCpG(MWG-BIOTECH Ltd, Bucks, UK)で “修飾”した。滅菌食塩水中のCpG DNA溶液(800μg/mL)の0.7mLに7mgのOVA充填ミクロ粒子を懸濁させた。前記溶液中で20分間室温にて粒子をインキュベートした。
実施例7:レーザー回折解析を用いたミクロ粒子のサイズ分布の決定
上記の実施例1、2、3及び4で述べたように調製したミクロ粒子のサイズをマスターサイズ(Mastersize)2000(Malvern Instruments, Malvern, UK)を用いて測定した。レーザー回折測定によって、充填ポリラクチドミクロ粒子は、図1に示すようにほぼ1μmのサイズ分布を有することが明らかになった。PVA安定化(図1A)及びDOTAP安定化(図1B)処方物の両方が同様なサイズ分布を有していた。
実施例8:走査電子顕微鏡検査
走査電子顕微鏡検査(Hitachi S800)を用いてミクロ粒子サイズ及び形態を精査した。画像をプロ・プラス(Pro Plus)画像解析ソフトを用いて解析した。図2は、PVA安定化(図2A)及びDOTAP安定化(図2B)処方物の両方が同様なサイズ分布及び形態を有することを示している。
実施例9:ミクロ粒子表面荷電の解析
実施例1、2、3及び4にしたがって調製したミクロ粒子のゼータ電位測定は、ゼータマスター(Zetamaster)(Malvern Instruments, Malvern, UK)を用いて実施した。結果は下記の表1に要約した。表1は、DOTAP安定化ミクロ粒子は、安定化剤としてPVAを用いて調製したミクロ粒子(-9.0)と比較して顕著に高い陽性ゼータ電位(+41.81)を有することを示している。
表1:安定化剤としてポリビニルアルコール(PVA)又はN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)を用いて調製した、空及びRNA充填ミクロ粒子のゼータ電位測定
Figure 2008531672
実施例10:ポリエチレンイミン(PEI)によるポリ-Uの複合化
150mMのNaCl中の20mMポリエチレンイミン(2kDのPEI)(Aldrich)の30μLと20μgのポリ-Uを、上記の実施例1、2及び5に記載したように調製した微小被包化ポリ-Uとの比較実験で使用する直前に混合した。
実施例11:Flt3-L増殖骨髄由来樹状突起細胞の単離及び培養
骨髄由来形質細胞様及び骨髄細胞様樹状突起細胞(BMDC)を含む大量培養を文献(Gillet et al. J Experimental Medicine, 2002, 195:953)から適応させた方法を用いて作成した。簡単に記せば、6−8週齢の雌のC57/BL6(Charles River, UK)を頸部脱臼により殺した(Animal (Scientifc Procedures) Act 1986にしたがう)。後肢から脛骨及び腓骨を取り出し、続いてII級微生物防御キャビネットへ輸送するために滅菌培養液(RPMI-1640(Sigma, UK))中に静置した。前記培養液には以下が補強されていた:10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)(Sigma, UK)、1%ペニシリン/ストレプトマイシン/グルタミン(Sigma, UK)及び50μMの2-メルカプトエタノール(2-ME)(Sigma, UK)。続いて25ゲージの注射針を用いて勢いよく骨軸に補強培養液を通して骨髄を放出させた。細胞を洗浄し、続いて1mLの培養液に再懸濁し、生存細胞数を測定した。細胞濃度を2x106/mLに調節し、培養液をさらに100ng/mLのネズミFms-様チロシンキナーゼレセプター3リガンド因子(Flt3L)(R&D Systems, Oxford, UK)で補強した。細胞を6ウェル組織培養プレート(Sterilin, Stone, UK)に播種し、5%CO2下の十分に湿潤な環境で37℃にてインキュベートした。5日後に培養液の半分を除去し、新しいFlt3L補強培養液と交換した。10日後に、細胞を洗浄し、無菌的平底96ウェル組織培養プレート(Sterilin, Stone, UK)に2x106/mLで再播種した。
実施例12:樹状突起細胞活性化アッセイ:ポリ-U充填ミクロ粒子
実施例11で述べたように調製した、C57BL/6 Flt3L BMDCの大量培養を、無菌的96ウェル平底プレートでポリ-Uの用量を上昇させながらポリ-Uと一緒に培養した。さらにまたDCを実施例1及び2に記載したポリラクチドミクロ粒子被包化ssRNAの用量を増加させながら一緒に培養した。培養に添加した微小被包化ポリ-Uの質量は、遊離ssRNAの用量と同じであった(理論的充填効率100%で;すなわち処方プロセスで用いたssRNAの100%が取り込まれたと仮定して)。空のポリラクチドミクロ粒子をその量を増加させながら細胞とインキュベートする影響もまた調べた。さらにまた、実施例10で述べたように調製したPEI濃縮ssRNAの用量を増加させながらDCを一緒に培養した。陽性コントロールとして、1nmolのK-型(通常型)CpG(ODN1668:tccatgacgttcctgatgct)及びA/D型CpG(D19:ggTGCATCGATGCAgggggG)を用いた。細胞は種々の刺激物質と18時間一緒に培養された。細胞及び処方物を10分間10000rpmで遠心することによって培養上清を採取した。ポリ-U及びCpGで刺激したDC培養を、市販のELISAキット(R&D systems, Oxford, UK)を用いて定量した。
結果:
Flt3L増殖骨髄由来樹状突起細胞の大量培養によるサイトカイン分泌の規模は刺激物質の性質及び用量に応じて相違した。期待したように、CpG DNAは、図3に示すように高レベルのIFN-αの産生を刺激した。最近になって、Dieboldら(Science 2004, 303:1529)は、PEI複合化ポリ-Uを用いて、効果的に形質細胞様樹状突起細胞を刺激してI型インターフェロンを分泌させることができることを記載した。図3に提示した結果は前記を確認したが、さらにまた適切に処方されたssRNA含有ポリマー(ポリラクチド)ミクロ粒子を用いて形質細胞様樹状突起細胞のIFN-α分泌を刺激することができることを示した。この目的にとって、ポリ-U充填ポリラクチドミクロ粒子(安定化剤としてDOTAPを使用して調製)はIFN-α産生の強力な刺激物質であった。DOTAP安定化ポリ-U充填ミクロ粒子によって刺激されたIFN-αのレベルは、処方されていない(遊離)ポリ-Uに暴露されたDCと比較して顕著に高く(P<0.001)、さらにPEI濃縮ポリ-Uの刺激によって生じるレベルに匹敵した。対照的に、DCと安定化剤としてPVAを用いて調製したポリ-U充填ポリラクチドミクロ粒子との同時培養は低レベルのIFN-α産生をもたらした。DCと“空”のポリラクチドミクロ粒子との同時培養は、処方の過程で用いられた安定化剤のタイプとは関係なく、IFN-α産生を刺激することができなかった。さらにまた、ポリ-U付加陽性荷電ポリラクチドミクロ粒子表面によるDCの刺激は、DCによるIFN-α産生に関しては効果を示さなかった。
遊離ポリ-U及びポリラクチドミクロ粒子被包化ポリ-Uは、図4に示したようにFlt3L増殖骨髄由来樹状突起細胞の大量培養によるTNF-α産生を刺激した。もっとも高レベルのTNF-αが、安定化剤としてPVAを用いて調製したポリ-U充填ポリラクチドミクロ粒子による刺激によって誘発された。比較すると、安定化剤としてDOTAPを用いて調製したポリ-U充填ポリラクチドミクロ粒子は、TNF-α産生の刺激物質として有効性は低かった。PEIで濃縮したポリ-Uは有意なレベルのTNF-α産生を引き出すことができなかった。
Flt3L増殖骨髄由来樹状突起細胞の大量培養によるIL-12 p40の産生は、図5に示したように広範囲の刺激に続いてもたらされた。遊離ポリ-Uは、高い刺激用量(1−100μg)で相当なレベルのIL-12 p40の分泌の誘発に有効であった。しかしながら、低刺激用量(1−100ng)では、DOTAP安定化ポリ-U被包化ミクロ粒子が、IL-12 p40産生のもっとも強力な刺激物質であった(他の全てのポリ-U処理群と比較したときP<0.05)。
実施例13:樹状突起細胞活性化アッセイ:OVA充填ミクロ粒子
C57BL/6 Flt3L増殖骨髄由来樹状突起細胞(BMDC)の大量培養を実施例11に記載したように調製し、OVA含有又は1μgポリ-U同時被包化OVA含有ミクロ粒子処方物と一緒に培養した。さらにまた細胞をCpG修飾OVA充填ミクロ粒子並びにOVA及びCpGの溶液で刺激した。タンパク質及び核酸の充填値は、最大理論値の充填値の100%であると仮定した。したがって、細胞は、被包化/吸着プロセスが100%有効であった等価のミクロ粒子処理群に理論的に存在するであろうOVA及びCpGの最大量と等価の投与量で刺激された。細胞を等価の量の空のポリラクチドミクロ粒子とインキュベートすることの影響もまた調べた。細胞を種々の刺激物質と18時間一緒に培養した。細胞及び処方物を10分間10000rpmで遠心することによって培養上清を採取した。上清のサイトカインレベルを市販のELISAキット(R&D systems, Oxford, UK)を用いて定量した。統計的相違は、ANOVA及びスチューデント-ニューマン-ケウルス検定を用いて確立した。
結果
Flt3L増殖BMDCの大量培養は、フローサイトメトリーを用いて確認したとおりCD11bHiB220Low(骨髄細胞様)及びCD11bLowB220Hi(形質細胞様)タイプのDCを含んでいた(データは示されていない)。Flt3L増殖BMDCの大量培養によるサイトカイン分泌の規模及びパターンは、刺激物質の性質にしたがって異なっていた。図6は、CpG DNAと混合したOVAは高レベルのインターフェロン-アルファ(INF-α)の産生を刺激した。しかしながら、IFN-α分泌は、細胞をCpG修飾OVA充填ミクロ粒子で刺激したときさらに高かった(P<0.05)。ポリ-U含有又はポリ-U及びOVA含有ミクロ粒子は、より高レベルのIFN-αを刺激した(P<0.05)。
上清のTNF-αレベルは、細胞をOVA充填CpG修飾ミクロ粒子で刺激したときもっとも高かった(P<0.05)。可溶性抗原及びCpGによる細胞の刺激は、他の処理と比較して有意のTNF-α産生をもたらした(P<0.05)。
培養上清のIL-12 p40の濃度は、BMDCをCpG表面修飾OVA充填ミクロ粒子、又は溶液CpG及びOVAで刺激したとき最大であった。OVA充填ミクロ粒子で刺激した培養と比較して、(OVAを含む又は含まない)ポリ-U含有ミクロ粒子はIL-12 p40分泌レベルの増強をもたらした(P<0.05)。
溶液中の“裸”のポリ-UによるFlt3L増殖BMDCの大量培養の刺激は、極めて微量のIFN-α、TNF-α及びIL-12 p40を誘発した(結果は示されていない)。ポリ-U“修飾”ミクロ粒子もまた、検査した全ての濃度(10μg−0.001ng)においてIFN-α又はIL-12 p40の産生を全く刺激しなかった。
実施例14:in vivo免疫実験
全ての実験で1986年のScientific Procedure Actが厳密に順守された。6−8週齢の雌のC57/BL6(Charles River, UK)マウスの大腿部領域に実験0、14及び28日目に皮下注射することによって免疫を施した。ミクロ粒子充填量は、最大理論値の充填値の100%であると仮定した。したがって、可溶性抗原/TLRアゴニストを投与されたマウスは、ミクロ粒子物質で免疫したマウスと比較して同じか又はより高い用量を与えられた。
マウスは、以下のいずれかを含む100μLの無菌的食塩水の注射が与えられた:(1)40μgのOVAを含む1mgのミクロ粒子、(2)40μgのOVA及び80μgのポリ-Uを含む1mgのミクロ粒子、(3)40μgのOVA及び80μgの表面吸着CpGを含む1mgのミクロ粒子、(4)40μgのOVA及び80μgのCpG、(5)40μgのOVA及び80μgのポリ-Uを含む溶液。6番目の群はナイーブコントロールとして機能した。
実施例15:血清抗OVA抗体レベルの決定
実施例14にしたがって免疫したマウスを32日目に採血して血清を得た。標準的なELISAによる方法を用いて、血清を抗OVA抗体について調べた。簡単に記せば、個々の血清サンプルから少量を、OVA(PBS中に5μg/mL)で予備被覆したマイクロタイタープレートに加えた。血清中の抗体の結合をマウスIgG1及びIgG2に対するペルオキシダーゼ標識二次抗体(Harlan-SeraLab, Crawley Down, UK)を用いて検出した。各サブクラス特異的コンジュゲートがそのサブクラスの分子と均等に反応しないかもしれないので、1つのサブクラス力価とまた別のサブクラスの力価との比較を容易にするために、各サブクラス抗体の標準溶液(0.2−50.0ng/mLの範囲にある)(Harlan-SeraLab, Crawley Down, UK)をアッセイした。作成した標準曲線は、種々の処理群から得られた血清中の各IgGサブクラスの平均濃度の決定を可能にした。統計検査(Dunnett)を用いて、免疫処理のいずれかがコントロール(ナイーブ)動物と比較して高いレベルの特異的抗体を刺激したか否かを確認した。
結果
図7に示されるように、ナイーブマウスと比較することによって、CpG修飾OVA充填ミクロ粒子で免疫したマウスは有意な抗OVA抗体力価を有するが、OVA及びポリ-U含有ミクロ粒子を注射したマウスは幅の広い抗体応答を示した。セロコンバージョンを示したマウスでは、IgG1が検出された優勢な抗OVA抗体であった。OVA充填ミクロ粒子又はCpG混合可溶性OVAによるマウスの注射によって、特異的な血清抗OVA IgG1応答が幾匹かのマウスで誘発されたが、しかし群内変動のためにこの効果はナイーブ動物と比較して統計的に有意ではないと考えられた。ポリ-Uと混合したOVAの溶液の注射は、極めてわずかなレベルの血清抗OVA IgGしか誘発しなかった。抗OVA IgG2aは、CpG又はポリ-Uと一緒に処方された抗原で免疫したマウスでのみ検出された。
実施例16:細胞応答の分析:ELISPOT分析
実施例14にしたがって免疫したマウスを35日目に殺し、個々の(プールしない)脾臓を取り出した。単一細胞懸濁物を補強RPMI-1640中で調製した。
IFN-γ及びIL-4 ELISPOTキット(BD Biosciences, Oxford UK)を製造業者の指示にしたがって用いた。簡単に記せば、ニトロセルロース底の96ウェルプレートを100μLの捕捉抗体(PBS中で5μg/mL)で被覆し、4℃にて一晩インキュベートした。自由な結合部位は200μLの補強RPMIで2時間ブロッキングした。脾細胞濃度は、2.5x106細胞/mLに調節し、該当するウェルに加えた。分析は常に各処理群の個々のマウスから得られた細胞で実施した。細胞を以下のいずれかによりトリプリケートで一晩刺激した:補強RPMI1640中の5μg/mLのOVA、陰性コントロールとして補強RPMI1640のみ、又は陽性コントロールとして2.5μg/mLのコンカナバリンA(Sigma, Dorset, UK)。細胞は、最初蒸留水で、続いて0.05%トゥイーン-20を含むPBSで洗浄することによって取り出した。サイトカイン分泌部位は、ビオチン標識抗マウスサイトカイン抗体及びセイヨウワサビペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジンを用いて検出した。酵素反応は3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)基質試薬セット(Sigma, Dorset, UK)を用いて開始させた。解剖用光学顕微鏡(Zeiss Stemi 2000)を用いてスポット形成細胞数を決定し、播種した1x106細胞に対して表した。統計的相違はANOVA及びスチューデント-ニューマン-ケウルス検定を用いて確立した。
結果
図8に示すように、OVA充填ミクロ粒子の注射は、ELISPOTを用いて検出したとき、IFN-γ分泌細胞よりもはるかに多くの数のOVA特異的IL-4分泌脾臓細胞を誘発した(前記プロフィルはTh2型応答を示す)。この傾向は、マウスにOVA及びssRNAの両方を含むミクロ粒子を注射した場合に逆転した。実際、OVA及びssRNAの同時被包化物の注射は、他のいずれの処理群と比較してもはるかに多くのOVA特異的IFN-γ分泌細胞数をもたらした(P<0.05)。CpGはTh1応答を促進するという定説と合致して、OVA充填CpG修飾ミクロ粒子又はCpGを含む溶液OVAは相当数のOVA特異的IFN-γ分泌T細胞を誘発した(P<0.05)。OVA充填CpG修飾ミクロ粒子又はCpGを含む溶液OVAで免疫したマウスのOVA特異的IL-4分泌細胞数は、OVA充填ミクロ粒子又はOVAとポリ-U充填ミクロ粒子で免疫した動物よりも有意に低かった(P<0.05)。ポリ-U混合OVA溶液の注射は、極めてわずかな数のOVA特異的IL-4及びIFN-γ分泌脾細胞を生じただけであった。
実施例17:細胞応答の分析:リンパ節細胞のテトラマー染色及びFACS分析
実施例14にしたがって免疫したマウスを35日目に殺し、個々の(プールしない)脾臓を取り出した。注射部位をドレインする鼠径部リンパ節を取り出しテトラマー分析のためにプールした。単一細胞懸濁液を補強RPMI-1640で調製した。リンパ節の単一細胞懸濁液をOVA(50μg/mL)で72時間37℃にて湿潤な5%CO2環境で刺激した。刺激後に、細胞を培養プレートから単離し、iTAg(商標)MHCクラスIネズミテトラマー-SA-PEキット(Beckman Coulter, Immunomics, France)を用いて染色した。テトラマー染色に加えて、FITC結合CD3(Pharminogen, BD Biosciences, UK)及びCy 5.5結合CD8(Pharminogen, BD Biosciences, UK)抗体もまた細胞の染色に用いた。全ての染色及び固定操作は製造業者の指示にしたがって実施した。固定後に、細胞をBD FACScanフローサイトメトリーで分析した。対応するアイソタイプコントロールを用いて分析のための象限及び/又は領域を確立した。分析はCell Quest Proフローサイトメトリー解析ソフトを用いて実施した。
結果
免疫マウス由来のリンパ節細胞のテトラマー染色によって、同時微小被包化OVA及びポリ-Uの注射は、図9に示すように抗原特異的CD8+ T細胞を生じることができることが明らかになった。同時微小被包化OVA及びポリ-Uで免疫したマウス(図9A)は、FL2シグナルの増加によって実証されるように、結合テトラマーをもつCD8細胞の数が増した。図9Bはナイーブマウスから得られたプロフィルを示している。
レーザー回折測定を利用して決定した、安定化剤としてN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)を用いて調製した、RNA充填ミクロ粒子の粒子サイズ分布グラフを示す。データは3つの別個の実験の典型的なものである。 安定化剤としてポリビニルアルコール(PVA)又はN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)を用いて調製した、ポリ-Uを充填したポリラクチドミクロ粒子の走査電子顕微鏡写真を示す。 溶液ポリ-U(Poly-U FREE)、ポリラクチドミクロ粒子内被包化ポリ-U(Poly-U in MS)、空のポリラクチドミクロ粒子(Empty MS)及びPEI濃縮ポリ-U(Poly-U PEI)の一連の濃度により一晩刺激した後の樹状突起細胞に由来するFlt3L増殖骨髄大量培養の上清中のインターフェロンアルファレベルを示す。ポリラクチドミクロ粒子は、安定化剤としてN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)又はポリビニルアルコール(PVA)を用いて調製した。比較のために、細胞はまた1nmolのCpGと同時培養された。データはトリプリケートのミクロ粒子の平均(±SD)であり、3つの別個の実験の典型的なものである。 溶液ポリ-U(Poly-U FREE)、ポリラクチドミクロ粒子内被包化ポリ-U(Poly-U in MS)、空のポリラクチドミクロ粒子(Empty MS)及びPEI濃縮ポリ-U(Poly-U PEI)の一連の濃度により一晩刺激した後の樹状突起細胞に由来するFlt3L増殖骨髄大量培養の上清中のTNF-アルファレベルを示す。ポリラクチドミクロ粒子は、安定化剤としてN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)又はポリビニルアルコール(PVA)を用いて調製した。比較のために、細胞はまた1nmolのCpGと同時培養された。データはトリプリケートのミクロ粒子の平均(±SD)であり、3つの別個の実験の典型的なものである。 溶液ポリ-U(Poly-U FREE)、ポリラクチドミクロ粒子内被包化ポリ-U(Poly-U in MS)、空のポリラクチドミクロ粒子(Empty MS)及びPEI濃縮ポリ-U(Poly-U PEI)の一連の濃度による一晩刺激した後の樹状突起細胞に由来するFlt3L増殖骨髄大量培養の上清中のIL-12 p40レベルを示す。ポリラクチドミクロ粒子は、安定化剤としてN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)又はポリビニルアルコール(PVA)を用いて調製した。比較のために、細胞はまた1nmolのCpGと同時培養された。データはトリプリケートのミクロ粒子の平均(±SD)であり、3つの別個の実験の典型的なものである。 微小被包化OVA、微小被包化ポリ-U、同時微小被包化OVA+ポリ-U、CpG表面吸着微小被包化OVA、溶液CpG及びOVA、又は培養液のみで、Flt3L増殖骨髄樹状突起細胞(BMDC)を一晩刺激した後のサイトカイン分泌を示す。結果は3つの別個の実験の平均(±SD)である。*は、微小被包化OVA処理と比較して統計的に有意な相違(P<0.05)を示す。 微小被包化OVA、同時微小被包化OVA+ポリ-U、CpG表面吸着微小被包化OVA、溶液CpG+OVA、又は溶液ポリ-U+OVAで、BALB/cマウスを皮下免疫した後の血清抗OVA IgG力価を示す。結果は、各処理群につき6匹のマウスの平均(±SD)である。*は、ナイーブコントロールと比較して統計的に有意な相違(P<0.05)を示す。 微小被包化OVA、同時微小被包化OVA+ポリ-U、CpG表面吸着微小被包化OVA、溶液CpG+OVA、又は溶液ポリ-U+OVAで、BALB/cマウスを皮下免疫した後のOVA特異的IFN-γ及びIL-4のELISPOTSを示す。結果は、各処理群につき6匹のマウスの平均(±SD)である。*は、ナイーブコントロールと比較して統計的に有意な相違(P<0.05)を示す。**は他の全ての処理と比較して有意な相違を示す(P<0.05)。 同時微小被包化OVA+ポリ-U(上段パネル)で免疫した6匹のマウス又はナイーブマウス(下段パネル)からプールしたテトラマー染色リンパ節細胞のFACS分析を示す。同時微小被包化OVA+ポリ-U(上段パネル)で免疫したマウスは、FL2シグナルの増加によって実証されるように、より多数の結合テトラマーを有するCD8細胞を含む。

Claims (30)

  1. 以下を含むミクロ粒子組成物:
    (a)生分解性ポリマー;
    (b)免疫原性一本鎖リボ核酸(ssRNA);
    (c)生物学的に活性な巨大分子;及び
    (d)安定化剤;
    ここで前記生物学的に活性な巨大分子、一本鎖リボ核酸(ssRNA)及び安定化剤は生分解性ポリマーの内側及び/又は内部に被包化されて、前記ミクロ粒子の自由な外側表面を提供する。
  2. 前記生分解性ポリマーが生体適合性であり、さらに哺乳動物組織で分解する、請求項1に記載のミクロ粒子組成物。
  3. 前記生分解性ポリマーが脂肪族ポリエステルである、請求項1又は2のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  4. 前記生分解性ポリマーがポリラクチドである、請求項1から3のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  5. 前記免疫原性ssRNAが、前炎症性及び/又は抗ウイルス性サイトカインの産生を刺激することができる、請求項1から4のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  6. 前記ssRNAが抗ウイルス性サイトカインの産生を刺激する、請求項5に記載のミクロ粒子組成物。
  7. 前記抗ウイルス性サイトカインがIFN-α及び/又はINF-β及び/又はIL-12である、請求項6に記載のミクロ粒子組成物。
  8. 前記ssRNAが宿主細胞のトール様レセプター(TLR)を刺激することができる、請求項1から7のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  9. 前記ssRNAがTLR-7及び/又はTLR-8を刺激する、請求項8に記載のミクロ粒子組成物。
  10. 前記ssRNAが、主に単一種の塩基に富む配列を有する、請求項1から9のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  11. 前記ssRNA配列が主にグアニジン及び/又はウラシルで構成される、請求項10に記載のミクロ粒子組成物。
  12. 前記ssRNAがポリウリジル酸である、請求項10又は11に記載のミクロ粒子組成物。
  13. 前記生物学的に活性な巨大分子がオリゴデオキシヌクレオチド又は病原体に特異的な抗原である、請求項1から12のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  14. 前記生物学的に活性な巨大分子が細菌病原体又はウイルス病原体に特異的な抗原である、請求項13に記載のミクロ粒子組成物。
  15. 前記生物学的に活性な巨大分子が炭疽菌の組換え防御抗原(rPA)である、請求項13又は14に記載のミクロ粒子組成物。
  16. 前記生物学的に活性な巨大分子が腫瘍細胞上で発現される抗原である、請求項1から15に記載のミクロ粒子組成物。
  17. 前記安定化剤が、前記ssRNAと複合体を形成することができる医薬的に許容される化合物である、請求項1から16のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  18. 前記安定化剤が陽イオンポリマー又は陽イオン脂質である、請求項17に記載のミクロ粒子組成物。
  19. 前記安定化剤がN-[1-(2,3-ジオレオイルオキシ)プロピル]-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリドである、請求項17又は18に記載のミクロ粒子組成物。
  20. 前記組成物が全体として正味の陽性荷電を有する、請求項1から19のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  21. 前記組成物が、0から100mVの範囲、好ましくは20から80mVの範囲、さらに好ましくは30から60mVの範囲のゼータ電位を有する、請求項20に記載のミクロ粒子組成物。
  22. 前記生成ミクロ粒子が、0.1から5μmの範囲、さらに好ましくは0.2から4μmの範囲の平均直径を有する、請求項1から21のいずれかに記載のミクロ粒子組成物。
  23. 前記ミクロ粒子が約1μmの平均直径を有する、請求項22に記載のミクロ粒子組成物。
  24. 以下の工程を含む、請求項1から23のいずれかに記載のミクロ粒子組成物を製造する方法:
    (a)生分解性ポリマー溶液を調製する工程:
    (b)免疫原性ssRNA及び生物学的に活性な巨大分子を含む溶液を(a)の溶液に添加し、エマルジョンを生成する工程;
    (c)安定化剤を含む溶液に工程(b)のエマルジョンを添加し、二重エマルジョンを生成する工程;
    (d)前記溶媒を除去する工程;及び
    (e)生成ミクロ粒子を収集する工程。
  25. 前記ミクロ粒子がさらに凍結乾燥工程に付される、請求項24に記載の方法。
  26. 請求項1から23のいずれかに記載のミクロ粒子組成物及び医薬的に許容されるアジュバント及び/又は賦形剤を含む、医薬組成物。
  27. 医学分野で使用するための、請求項26に記載の医薬組成物。
  28. 病原体感染の治療を目的とする医薬の製造における、請求項26に記載の医薬組成物の使用。
  29. 宿主細胞のトール様レセプターの刺激を目的とする医薬の製造における、請求項26に記載の医薬組成物の使用。
  30. 癌の治療を目的とする医薬の製造における、請求項26に記載の医薬組成物の使用。
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