JP2008525395A - 方法 - Google Patents

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Abstract

Figure 2008525395

式(1)(式中、Arは置換されていてよいヒドロカルビル基または芳香族部分を含んでいる置換されていてよいヘテロシクリル基を表し;そしてRおよびRは、各々独立に、置換されていてよいヒドロカルビル基または置換されていてよいヘテロシクリル基を表す)の化合物の製造方法であって、該方法は、a)式(2)の化合物を還元して式3の化合物を形成し;b)式(3)の化合物を活性化して式(4)(式中、OXは離脱基を表す)の化合物を形成し;そしてc)式(4)の化合物を式(5)の化合物にカップリングさせて式1の化合物を形成することを含む。ケトンのアルコールへの立体選択的還元も開示される。
【選択図】なし

Description

本発明は、第二炭素中心に結合された第二アミン、特にN−置換ベンジルアミンの製造方法に関する。本発明者は、還元および置換を、達成されたエナンチオマー過剰率を実質的に保ちながら成し遂げることができる方法を見いだした。さらなる利点は、本発明の方法の全3つの工程は中間工程の生成物を単離する必要なしに行えるということである。
米国特許第6,391,865号明細書、およびJR Tagart等のJ. Med. Chem., 44, 3343 (2001)、並びにWO00/66558号明細書は、アルコールをメシラート基で活性化し、次いで、引き続きアミンで置換する方法を開示している。
しかし、その置換工程においては一般にエナンチオマー過剰率に20〜40%の低下が観察される。
本発明によれば、式1:
Figure 2008525395
(式中、
Arは置換されていてよいヒドロカルビル基、または芳香族部分を含んでいる置換されていてよいヘテロシクリル基を表し;そして
およびRは、各々独立に、置換されていてよいヒドロカルビル基または置換されていてよいヘテロシクリル基を表す。)
の化合物の製造方法であって、
a)式2:
Figure 2008525395
の化合物を還元して式3:
Figure 2008525395
の化合物を形成し;
b)式3の化合物を活性化して式4:
Figure 2008525395
(式中、OXは離脱基を表す。)
の化合物を形成し;そして
c)式4の化合物を式5:
Figure 2008525395
の化合物にカップリングさせて式1の化合物を形成する
上記の方法が提供される。
驚くべきことに、本発明者は、式(4)の化合物を式(5)の化合物と反応させるときは、置換工程におけるエナンチオマー過剰率の低下は非常に小さいことを見いだした。これは、あるラセミ化、従って得られるエナンチオマー過剰率の低落に通じる、普通はSN2置換に加えてあるSN1置換が起こるのを促進する良好な離脱基の存在にもかかわらずそうである。
本発明の方法において立体化学の制御、即ちエナンチオマー過剰率の保存は、式(4)の活性化されたアルコール誘導体の立体化学にかかわらず起こる。言い換えると、その制御はRおよびSの両エナンチオマー体について存在するのである。
上記の反応は、各工程でその生成物を単離しながら別々の工程で行ってもよいし、或いは1つまたは2つ以上の工程を中間生成物の単離なしに行うことも可能である。かくして、反応のシーケンスは「ワンポット」手法(’one pot’ procedure)として遂行することができる。「ワンポット」手法はこの方法を実施することの容易さの点から好ましい。廃溶媒、その他の廃物質は、多数の仕上げ(work-up)工程が除かれるから、取り扱いに必要とされるとおりに最小限に抑えられる;これにはプラントの「停止時間」を短縮し、通し収率(through yields)がより高くなるという利点がある。
非常に好ましい態様において、式1(i):
Figure 2008525395
(式中、
Arは置換されていてよいヒドロカルビル基、または芳香族部分を含んでいる置換されていてよいヘテロシクリル基を表し;そして
およびRは、各々独立に、置換されていてよいヒドロカルビル基または置換されていてよいヘテロシクリル基を表す。)
の化合物の製造方法であって、
a)式2:
Figure 2008525395
の化合物を立体選択的還元系により還元して式3(i):
Figure 2008525395
の化合物を形成し;
b)式3(i)の化合物を活性化して式4(i):
Figure 2008525395
(式中、Xは離脱基を表す。)
の化合物を形成し;そして
c)式4(i)の化合物を式5:
Figure 2008525395
の化合物にカップリングさせて式1(i)の化合物を形成する
上記の方法が提供される。
Ar、R、R、式2および5の化合物、並びに立体選択的還元系の好ましいものは、本明細書中で前記されたとおりである。
さらなる好ましい態様においては、式1(ii):
Figure 2008525395
の化合物が、式3(ii)および4(ii):
Figure 2008525395
の対応化合物から、式2の化合物を立体選択的還元系により還元して式3(ii)の化合物を形成し;式3(ii)の化合物を活性化して式4(ii)の化合物を形成し;そして式4(ii)の化合物を式5の化合物にカップリングさせて式1(ii)の化合物を形成することによって同様に製造される。
任意に、化合物1(i)および1(ii)の化合物を、例えばリンゴ酸、酒石酸または樟脳スルホン酸のようなキラル酸を用いるジアステレオマー結晶化を含むさらなる単離工程に付すことができる。
およびRによって独立に表すことができるヒドロカルビル基に、アルキル基、アルケニル基およびアリール基、並びにアラルキル基およびアルカリール基、例えばベンジル基のようなそれらの任意の組み合わせがある。
およびRによって表すことができるアルキル基に、炭素原子を20個まで含む、特に炭素原子を1〜7個、好ましくは炭素原子を1〜5個含む線状および分枝アルキル基がある。アルキル基が分枝しているとき、それら基は10個までの分枝鎖炭素原子、好ましくは4個までの分枝鎖原子を含んでいることが多い。ある特定の態様では、アルキル基は環状であることができ、それは一般にその最大の環の中に3〜10個の炭素原子を含み、そして1個または2個以上の橋かけ環があってよいという特長を備えている(featuring)。RおよびRによって表すことができるアルキル基の例に、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、2−ブチル、t−ブチルおよびシクロヘキシルの各基がある。
およびRによって表すことができるアルケニル基に、C2−20、好ましくはC2−6アルケニル基がある。1個または2個以上の炭素−炭素二重結合が存在することができる。アルケニル基は1個または2個以上の置換基、特にフェニル置換基を持っていることができる。アルケニル基の例を挙げると、ビニル基、スチリル基およびインデニル基がある。
およびRによって表すことができるアリール基は、シクロアルキル環、アリール環または複素環式環を挙げることができる1個の環または2個若しくは3個以上の縮合環を含んでいることができる。RおよびRによって表すことができるアリール基の例を挙げると、フェニル、トリル、フルオロフェニル、クロロフェニル、ブロモフェニル、トリフルオロメチルフェニル、アニシル、ナフチルおよびフェロセニルの各基がある。
、RおよびRによって独立に表すことができるペルハロゲン化ヒドロカルビル基には、ペルハロゲン化されたアルキル基およびアリール基、並びにアラルキル基およびアルカリール基のようなそれらの任意の組み合わせがある。RおよびRによって表すことができるペルハロゲン化アルキル基の例に−CF3および−C2F5がある。
およびRによって独立に表すことができる複素環式基に芳香族環系、飽和および部分不飽和環系があり、そしてシクロアルキル環、アリール環または複素環式環を挙げることができる1個の環または2個若しくは3個以上の縮合環を構成することができる。複素環式基は少なくとも1つの複素環式環を含有するが、その最大のものは、一般に、少なくとも1個の原子が炭素であり、そして少なくとも1個の原子がN、O、SまたはPのどれかである3〜7個の環原子を含む。RおよびRによって表すことができる複素環式基の例を挙げると、ピリジル、ピリミジル、ピロリル、チオフェニル、フラニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、イミダゾリルおよびトリアゾイルの各基がある。
およびRのいずれかが置換ヒドロカルビルまたは複素環式基であるとき、その置換基(1個または複数個)は反応工程または総合プロセスのどの速度または立体選択性にも悪影響を及ぼさないそのような置換基でなければならない。任意の置換基を挙げると、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ヒドロカルビルオキシ、モノまたはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カルバメート、カーボネート、アミド、スルホニルおよびスルホンアミドの各基があり、ここでヒドロカルビル基は上記でRについて定義したとおりである。1個または2個以上の置換基が存在することができる。2個以上の置換基が存在せしめられているRおよびR基の例に−CF3および−C2F5がある。
Arで表すことができる置換されていてよいヒドロカルビル基または芳香族部分を含む置換されていてよいヘテロシクリル基を挙げると、置換されていてよいアリール基若しくはヘテロアリール基、または置換されていてよいアルキル基、好ましくは置換されていてよいアリール基若しくはヘテロアリール基で置換されたC1−4アルキル基がある。アルキルおよびアリール基はRについて定義されたとおりである。ヘテロアリール基は少なくとも1個の芳香族環を含むRについて定義された複素環式基である。置換基にRについて上記で定義したそれら置換基がある。置換基は、一般に、置換されていてよいアルコキシ(好ましくはC1−4アルコキシ)、置換されていてよいアリール(好ましくはフェニル)、置換されていてよいアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、ポリアルキレンオキシド(好ましくはポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド)、カルボキシ、ホスファト、スルホ、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、−SO2F、ヒドロキシ、エステル、−NRaRb、−CORa、−CONRaRb、−NHCORa、−OCONRaRb、カルボキシエステル、スルホンおよび−SO2NRaRbより成る群から選ばれ、ここでRおよびRは、各々独立に、H、置換されていてよいアリール、特にフェニル、または置換されていてよいアルキル(特にC1−4アルキル)であるか、または−NRaRb、−CONRaRb、−OCONRaRbおよび−SO2NRaRbの場合、RおよびRは、また、それらが結合されている窒素原子と一緒になって脂肪族若しくは芳香族の環系またはそれらの組み合わせを表すことができる。
多くの態様において、RはArとは異なる、即ち式2の化合物はプロキラルである。RはC1−4アルキル基を表すことが好ましく、最も好ましくはメチル基である。
多くの特に好ましい態様においては、式2の化合物は式2a:
Figure 2008525395
(式中、Rは各々独立に水素または置換基を表す。)
の化合物である。
好ましいRは全て水素である。
ある特定の態様では、式2の化合物は式2b:
Figure 2008525395
(式中、Rは本明細書で前に定義されたとおりである。)
の化合物である。
式3の化合物は、ヒドロキシ基をアミノ基による置換を受けやすくする、この技術分野で公知の方法を用いることによって活性化することができる。活性化方法の例に、Mitsonubo条件、ホスフィンおよびカルボジイミドの使用がある;例えばLawrence著・PharmaChem、(2002)、1(9)、12−14およびHughes著・Organic Reactions(ニューヨーク)(1992)、42、335−656を参照されたい;両文献に記載されるMitsonubo条件は参照することによって本明細書に含められる。
多くの態様において、式3の化合物は式X−L(式中、Xは離脱基前駆体であり、そしてLはハロ基、特にクロロまたはブロモ基である)の化合物との反応によって活性化される。Xで表すことができる好ましい離脱基前駆体の例を挙げると、アセチル、トリフルオロアセチル、メタンスルホニル、トリフルオロメチルスルホニルおよびトルエンスルホニルの各基があり、そして式X−Lの好ましい化合物は対応するクロロ化合物である。多くの他の態様においては、式3の化合物は式X−O−X(式中、Xは前記のとおりである)の化合物との反応によって活性化される。Xで表すことができる、好ましい離脱基前駆体の例を挙げると、アセチル、トリフルオロアセチル、メタンスルホニル、トリフルオロメチルスルホニルおよびトルエンスルホニルの各基がある。式X−O−Xの非常に好ましい化合物はメタンスルホン酸無水物である。
好ましくは、式3a:
Figure 2008525395
(式中、Rは本明細書で前に定義したとおりである。)
の化合物は、式X−L(式中、Xは前記のとおりである)の化合物との反応によって活性化される。Xで表すことができる好ましい離脱基前駆体の例を挙げると、アセチル、トリフルオロアセチル、メタンスルホニル、トリフルオロメチルスルホニルおよびトルエンスルホニルの各基がある。式X−Lの非常に好ましい化合物はメタンスルホニルクロリドである。
最も好ましくは、式3b:
Figure 2008525395
(式中、Rは本明細書で前に定義したとおりである。)
の化合物は、式X−L(式中、Xはアセチル、トリフルオロアセチル、メタンスルホニル、トリフルオロメチルスルホニルまたはトルエンスルホニルの各基である)の化合物との、式4bの化合物を与える反応によって活性化され、その式4bの化合物は式5の化合物と反応せしめられて式1bの化合物を与える。
式4bの化合物を式5の化合物との反応に先立って単離してもよい。
好ましくは、式5の化合物について、Rは置換されていてよいC1−4アルキル基、置換されていてよいフェニル基または置換されていてよいベンジル基である。さらに好ましくは、RはC1−4アルキル基、フェニル基またはベンジル基である。最も好ましくは、Rはメチル基である。
式2の化合物の還元は立体選択的還元系を用いて成し遂げるのが好ましい。立体選択的還元系には、キラル還元剤の使用、例えば金属水素化物をキラル錯体と共に使用すること、触媒による移動型水素化(transfer hydrogenation:気体水素以外からの水素の付加)プロセスにおけるキラル配位遷移金属の使用、および酵素還元系、例えば完全細胞(whole cell)または単離された酵素に基づく系の使用がある。
立体選択的還元は、キラル配位遷移金属を触媒移動型水素化プロセスにおいて使用すること、または酵素還元系を使用することが最も好ましい。
酵素還元系は完全細胞系または単離酵素の形での酵素の使用を含む。かくして、工程(a)における式(2)の化合物の式(3)の化合物への還元は、ケトンをアルコールに還元するのに適したどんな酵素を用いても行うことができる。特に適した酵素に、オキシドレダクターゼ、レダクターゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼがある。この還元プロセスで使用することができる微生物を挙げると、酵母、細菌、真菌並びに植物および哺乳類の細胞がある。
式(2)の化合物の酵素還元において用いることができる、酵素および酵素を含んでいる微生物の例を挙げると、M J Honman著・Tetrahedron, 60, 789-797(2004)に記載される酵素および微生物、WO 02/086126のゲオトリクム−カンジドゥム BPCC 1118、およびピチア属キャプスラタ(Pichia Capsulata)からのオキシドレダクターゼ(WO04/111083)がある。これら公表文献各々の内容は、それらが酵素および微生物に関する限り、本発明の方法の還元工程で利用されることが特に意図され、かくしてそれらは本発明の主題の一部を構成する。これら公表文献の内容が本出願の主題の一部を構成するとはいえ、その内容は、簡潔さという理由から、またそれらは容易に入手、利用できるのでここでは再現されない。
好ましい立体選択的還元においては、キラル配位遷移金属触媒による移動型水素化プロセスが用いられる。本発明で用いられるこのようなプロセス、並びに触媒、試薬および条件に、国際特許出願公開番号WO97/20789、WO98/42643およびWO02/44111に開示されるものがある。これら公表文献の各々の内容は、それらが反応条件および触媒に関する限り、本発明の方法の還元工程で利用されることが特に意図され、かくしてそれらは本発明の主題の一部を構成する。これら公表文献の内容が本出願の主題の一部を構成するとはいえ、その内容は、簡潔さという理由から、またそれらは容易に入手、利用できるのでここでは再現されない。
本発明の方法で使用するのに好ましい移動型水素化触媒は、一般式(a):
Figure 2008525395
(式中、
は中性の置換されていてよいヒドロカルビル配位子、中性の置換されていてよいペルハロゲン化ヒドロカルビル配位子または置換されていてよいシクロペンタジエニル配位子を表し;
Aは置換されていてよい窒素を表し;
Bは置換されていてよい窒素、酸素、硫黄または燐を表し;
Eは結合基を表し;
Mは移動型水素化を触媒する能力のある金属を表し;
Yはアニオン性基、塩基性配位子または空位を表し;
但し、Yが空位でないとき、AまたはBの少なくとも一方は水素原子を有するものとする。)
を有する。
好ましくは、AまたはBの少なくとも一方は置換された窒素から成り、そしてその置換基は少なくとも1つのキラル中心を有する。
好ましくは、好ましい移動型水素化触媒は、WO97/20789、WO98/42643およびWO02/44111に記載されるタイプの、置換されていてよいジアミン配位子、例えば置換されていてよいエチレンジアミン配位子(ここで、その置換されていてよいジアミン配位子の少なくとも1個の窒素原子は、好ましくはキラル中心を含んでいる基により置換されている)、および中性の芳香族配位子、例えばp−シメン、または置換されていてよいシクロペンタジエン配位子、例えばペンタメチルシクロペンタジエンを含むそれらRu、RhまたはIrの触媒である。
本発明の方法で用いるのに非常に好ましい移動型水素化触媒は一般式(A):
Figure 2008525395
(式中、
は中性の置換されていてよいヒドロカルビル配位子、中性の置換されていてよいペルハロゲン化ヒドロカルビル配位子または置換されていてよいシクロペンタジエニル配位子を表し;
Aは−NR6−、−NR7−、−NHR6、−NR6R7または−NR6R7を表し、ここでRはH、C(O)R8、SO2R8、C(O)NR8R12、C(S)NR8R12、C(=NR12)SR13またはC(=NR12)OR13であり、RおよびRは、各々独立に、置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基または置換されていてよいヘテロシクリル基を表し、そしてR12およびR13は各々独立に水素またはRについて定義された基であり;
Bは−O−、−OH、OR9、−S−、−SH、SR9、−NR9−、−NR10−、−NHR10、−NR9R10、−NR9R11、−PR9または−PR9R11を表し、ここでR10はH、C(O)R11、SO2R11、C(O)NR11R14、C(S)NR11R14、C(=NR14)SR15またはC(=NR14)OR15であり、RおよびR11は、各々独立に、置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基または置換されていてよいヘテロシクリル基を表し、そしてR14およびR15は各々独立に水素またはR11について定義された基であり;
Eは結合基を表し;
Mは移動型水素化を触媒する能力のある金属を表し;そして
Yはアニオン性基、塩基性配位子または空位を表し;
但し、Yが空位でないとき、AまたはBの少なくとも一方は水素原子を有するものとする。)
を持つものである。
AまたはBの少なくとも一方が置換された窒素原子を含む式(A)の移動型水素化触媒が非常に好ましい。AまたはBが置換された窒素原子を含むとき、その置換基は少なくとも1個のキラル中心を有すしていてもよい。
触媒の種は実質的に上記の式で表されるとおりであると考えられる。それは固体担体上に導入することができる。
7−9またはR11−13で表される置換されていてよいヒドロカルビル基に、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基、並びにアラルキル基およびアルカリール基、例えばベンジル基のようなそれらの任意の組み合わせがある。
7−9またはR11−13で表すことができるアルキル基に、1〜20個の炭素原子、特に1〜7個の炭素原子、好ましくは1〜5個の炭素原子を含む線状および分枝アルキル基がある。ある特定の態様では、アルキル基は環状であることができ、それは一般にその最大の環の中に3〜10個の炭素原子を含み、そして1個または2個以上の橋かけ環があってもよいという特長を備えている。R7−9またはR11−13によって表すことができるアルキル基の例に、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、2−ブチル、t−ブチルおよびシクロヘキシルの各基がある。
7−9またはR11−13の1つまたは2つ以上によって表すことができるアルケニル基に、C2−20、好ましくはC2−6アルケニル基がある。1個または2個以上の炭素−炭素二重結合が存在することができる。アルケニル基は1個または2個以上の置換基、特にフェニル置換基を持っていることができる。
7−9またはR11−13の1つまたは2つ以上によって表すことができるアルキニル基に、C2−20、好ましくはC2−10アルキニル基がある。1個または2個以上の炭素−炭素三重結合が存在することができる。アルキニル基は1個または2個以上の置換基、特にフェニル置換基を持っていることができる。アルキニル基の例にエチニル基、プロピル基およびフェニルエチニル基がある。
7−9またはR11−13の1つまたは2つ以上によって表すことができるアリール基は、シクロアルキル環、アリール環または複素環式環を挙げることができる1個の環または2個若しくは3個以上の縮合環または橋かけ環を含んでいることができる。R7−9またはR11−13によって表すことができるアリール基の例を挙げると、フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、トリフルオロメチルフェニル基、アニシル基、ナフチル基およびフェロセニル基がある。
7−9またはR11−13の1つまたは2つ以上によって独立に表すことができるペルハロゲン化ヒドロカルビル基には、ペルハロゲン化されたアルキル基およびアリール基、並びにアラルキル基およびアルカリール基のようなそれらの任意の組み合わせがある。R7−9またはR11−13によって表すことができるペルハロゲン化アルキル基の例に−CF3および−C2F5がある。
7−9またはR11−13の1つまたは2つ以上によって表すことができる複素環式基に芳香族環系、飽和および部分飽和の環系があり、そしてシクロアルキル環、アリール環または複素環式環を挙げることができる1個の環または2個若しくは3個以上の縮合環を含むことができる。複素環式基は少なくとも1つの複素環式環を含有するが、その最大のものは、一般に、少なくとも1個の原子が炭素であり、そして少なくとも1個の原子がN、O、SまたはPのどれかである3〜7個の環原子を含む。R7−9またはR11−13によって表すことができる複素環式基の例を挙げると、ピリジル基、ピリミジル基、ピロリル基、チオフェニル基、フラニル基、インドリル基、キノリル基、イソキノリル基、イミダゾリル基およびトリアゾリル基がある。
7−9またはR11−13の内のどれかが置換ヒドロカルビルまたは複素環式基であるとき、その置換基(1個または複数個)は反応の速度または立体選択性に悪影響を及ぼさないそのような置換基でなければならない。任意の置換基を挙げると、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、アミノ、イミノ、チオール、アシル、ヒドロカルビル、ペルハロゲン化ヒドロカルビル、ヘテロシクリル、ヒドロカルビルオキシ、モノまたはジ−ヒドロカルビルアミノ、ヒドロカルビルチオ、エステル、カルボキシ、カーボネート、アミド、スルホニルおよびスルホンアミドの各基があり、ここでヒドロカルビル基は上記でR7−9またはR11−13について定義したとおりである。1個または2個以上の置換基が存在することができる。R7−9またはR11−13は各々1個または2個以上のキラル中心を含んでいることができる。
によって表すことができる中性の置換されていてよいヒドロカルビル配位子またはペルハロゲン化ヒドロカルビル配位子に、置換されていてよいアリール配位子およびアルケニル配位子がある。
によって表すことができる置換されていてよいアリール配位子は、シクロアルキル環、アリール環または複素環式環が挙げられる1個の環または2個若しくは3個以上の縮合環を含んでいることができる。好ましくは、配位子は6員の芳香族環を含む。アリール配位子の環または複数の環はヒドロカルビル基で置換されていることが多い。置換パターンおよび置換基の数は様々であって、存在する環の数によって影響される可能性があるが、しばしば1〜6個のヒドロカルビル置換基、好ましくは2個、3個または6個のヒドロカルビル基、さらに好ましくは6個のヒドロカルビル基が存在する。好ましいヒドロカルビル置換基に、メチル、エチル、イソプロピル、メンチル、ネオメンチルおよびフェニルがある。特に、アリール配位子が単一環であるとき、その配位子は好ましくはベンゼンまたは置換ベンゼンである。配位子がペルハロゲン化ヒドロカルビルであるとき、それは好ましくはヘキサクロロベンゼンまたはヘキサフルオロベンゼンのようなポリハロゲン化ベンゼンである。ヒドロカルビル置換基がエナンチオマー中心および/またはジアステレオマー中心を含有しているとき、これらのエナンチオマー的におよび/またはジアステレオマー的に精製された形のものが用いられることが好ましい。ベンゼン、p−シミル(p-cymyl)、メシチレンおよびヘキサメチルベンゼンが特に好ましいアリール配位子である。
によって表すことができる置換されていてよいアルケニル配位子に、好ましくは2個または3個以上の炭素−炭素二重結合、好ましくはたった2個の炭素−炭素二重結合を有するC2−30、好ましくはC6−12のアルケンまたはシクロアルケンがある。炭素−炭素二重結合は存在するかもしれない他の不飽和系と共役されていてもよいが、好ましくは互いに共役されている。アルケンまたはシクロアルケンは、好ましくはヒドロカルビル置換基により置換されていることができる。アルケンが二重結合を1個だけ有するとき、置換されていてよいアルケニル配位子は2種の異なるアルケンを含むことができる。好ましいヒドロカルビル置換基にメチル、エチル、イソプロピルおよびフェニルがある。置換されていてよいアルケニル配位子の例にシクロ−オクタ−1,5−ジエンおよび2,5−ノルボルナジエンがある。シクロ−オクタ−1,5−ジエンが特に好ましいアルケニル配位子である。
によって表すことができる置換されていてよいシクロペンタジエニル基に、エタ−5(eta-5)結合する能力のあるシクロペンタジエニル基がある。シクロペンタジエニル基は、1〜5個のヒドロカルビル基、好ましくは3〜5個のヒドロカルビル基、さらに好ましくは5個のヒドロカルビル基により置換されていることが多い。好ましいヒドロカルビル置換基に、メチル、エチルおよびフェニルがある。ヒドロカルビル置換基がエナンチオマーおよび/またはジアステレオマー中心を含んでいるとき、これらの内のエナンチオマー的および/またはジアステレオマー的に精製された形のものが用いられることが好ましい。置換されていてよいシクロペンタジエニル基の例を挙げると、シクロペンタジエニル、ペンタメチルシクロペンタジエニル、ペンタフェニルシクロペンタジエニル、テトラフェニルシクロペンタジエニル、エチルテトラメンチルペンタジエニル、メンチルテトラフェニルシクロペンタジエニル、ネオメンチルテトラフェニルシクロペンタジエニル、メンチルシクロペンタジエニル、ネオメンチルシクロペンタジエニル、テトラヒドロインデニル、メンチルテトラヒドロインデニルおよびネオメンチルテトラヒドロインデニルの各基がある。ペンタメチルシクロペンタジエニルが特に好ましいシクロペンタジエニル配位子である。
AかまたはBかどちらかが−NR6−、−NHR6、−NR6R7、−NR10−、−NHR10または−NR9R10(式中、RおよびRは前記で定義したとおりである)によって表されるアミド基であるとき、そしてRまたはR10が−C(O)R8または−C(O)NR11によって表されるアシル基である場合、RおよびR11は、独立に、線状のまたは分枝したC1−7アルキル、C1−8シクロアルキルまたはアリール、例えばフェニルであることが多い。RまたはR10によって表すことができるアシル基の例に、ベンゾイル、アセチルおよびハロゲノアセチル基、特にトリフルオロアセチル基がある。
AかまたはBかどちらかが−NR6−、−NHR6、−NR6R7、−NR10−、−NHR10または−NR9R10(式中、RおよびRは前記で定義したとおりである)によって表されるスルホンアミド基として存在するとき、そしてRおよびR10が−S(O)2R8または−S(O)2R11によって表されるスルホニル基である場合、RおよびR11は、独立に、線状のまたは分枝したC1−12アルキル、C1−12シクロアルキルまたはアリール、例えばフェニルであることが多い。好ましいスルホニル基を挙げると、メタンスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、さらに好ましくはp−トルエンスルホニル基、ナフチルスルホニル基および樟脳スルホニル基がある。
AかまたはBかどちらかが−NR6−、−NHR6、−NR6R7、−NR10−、−NHR10または−NR9R10(式中、RおよびRは前記で定義したとおりである)によって表される基として存在するとき、そしてRおよびR10がC(O)NR8R12、C(S)NR8R12、C(=NR12)SR13、C(=NR12)OR13、C(O)NR11R14、C(S)NR11R14、C(=NR14)SR15またはC(=NR14)OR15によって表される基である場合、RおよびR11は、独立に、線状のまたは分枝した、メチル、エチル、イソプロピル基のようなC1−8アルキル、C1−8シクロアルキルまたはアリール基、例えばフェニル基であることが多く、そしてR12−15は、各々独立に、水素、またはメチル、エチル、イソプロピル基のような線状のまたは分枝したC1−8アルキル、C1−8シクロアルキルまたはアリール基、例えばフェニル基であることが多い。
Bが−OR9、−SR9、−PR9−または−PR9R11によって表される基として存在するとき、RおよびR11は、独立に、線状のまたは分枝した、メチル、エチル、イソプロピルのようなC1−8アルキル、C1−8シクロアルキルまたはアリール、例えばフェニルであることが多い。
AおよびBの正確な性質は、Aおよび/またはBが金属に正式に結合されているか、また金属に孤立電子対によって配位されているかによって決まることは認められるだろう。
基AおよびBは結合基Eによって連結されている。結合基Eは、AおよびBの両者を金属Mに結合または配位させるようにAおよびBの適切な配座を達成する。AとBとは、一般に、2個、3個または4個の原子を介して結合されている。AおよびBを結合させるE中の原子は、1個または2個以上の置換基を持っていることができる。E中の原子、特にAまたはBに対してアルファ位の原子は、複素環式環、好ましくは飽和した環、特に5、6または7員環を形成するそのような仕方でAおよびBに結合せしめられることができる。このような環は1個または2個以上の他の環に縮合されていてもよい。しばしば、AおよびBを結合させる原子は炭素原子である。好ましくは、AおよびBを結合させる炭素原子の1つまたは2つ以上はAまたはBの外に置換基を有する。置換基には、前記で定義したR7−9またはR11−13を置換することができるものがある。有利には、いかなるそのような置換基も、金属Mとは配位結合しない基となるように選ばれる。好ましい置換基に、前記で定義したハロゲン、シアノ、ニトロ、スルホニル、ヒドロカルビル、ペルハロゲン化ヒドロカルビルおよびヘテロシクリルの各基がある。最も好ましい置換基はC1−6アルキル基およびフェニル基である。最も好ましくは、AおよびBは2個の炭素原子、特に置換されていてよいエチル部分によって結合されている。AおよびBが2個の炭素原子によって結合されるとき、AおよびBを結合させる2個の炭素原子は芳香族基または脂環式基、特に5、6または7員環の一部を構成することができる。このような環は1個または2個以上の他のそのような環に縮合されていてもよい。Eが2つの炭素原子による仕切りを表し、そしてそれら炭素原子の一方または両方が前記で定義された置換されていてよいアリール基を有するか、またはEがフェニル環に縮合されていてもよいシクロペンタン環またはシクロヘキサン環を構成する、2つの炭素原子による仕切りを表す態様が特に好ましい。
Eは少なくとも1個の立体特異性中心を有する化合物の一部を構成するのが好ましい。AとBとを結合している2個、3個または4個の原子のいずれかまたは全てが、これら原子の1個または2個以上の上に少なくとも1個の立体特異性を定めるように置換されている場合、その立体特異性中心の少なくとも1つは、基AかまたはBかいずれかに隣接する原子の所に位置せしめられることが好ましい。少なくとも1個のこのような立体特異性中心が存在するとき、それはエナンチオマー的に精製された状態にあることが有利である。
Bが−O−または−OHを表し、そしてE中の隣接原子が炭素であるとき、Bはカルボキシル基の一部を構成しないことが好ましい。
A−E−Bによって表すことができるか、またはA−E−Bを脱プロトン化によって誘導することができる化合物は、4−アミノアルカン−1−オール、1−アミノアルカン−4−オール、3−アミノアルカン−1−オール、1−アミノアルカン−3−オール、特に2−アミノアルカン−1−オール、1−アミノアルカン−2−オール、3−アミノアルカン−2−オールおよび2−アミノアルカン−3−オール、詳しくは2−アミノエタノールまたは3−アミノプロパノールを含めてアミノアルコール類、或いは1,4−ジアミノアルカン、1,3−ジアミノアルカン、特に1,2−または2,3−ジアミノアルカン、詳しくはエチレンジアミンを含めてジアミン類であることが多い。A−E−Bによって表すことができるさらなるアミノアルコールは、好ましくはフェニル環に縮合されている2−アミノ−シクロペンタノール類および2−アミノシクロヘキサノール類である。A−E−Bによって表すことができるさらなるジアミンは、好ましくはフェニル環に縮合されている1,2−ジアミノシクロペンタン類および1,2−ジアミノシクロヘキサン類である。アミノ基はN−トシル化されているのが有利である。ジアミンがA−E−Bで表されるとき、少なくとも1個のアミノ基がトシル化されているのが好ましい。アミノアルコールまたはジアミンは、C1−4−アルキル基、特にメチル基のような少なくとも1個のアルキル基、または少なくとも1個のアリール基、特にフェニル基によって、特に結合基E上で置換されていることが有利である。
A−E−Bによって表すことができる化合物の特定の例、およびそれらを誘導することができるプロトン化された均等物は:
Figure 2008525395
である。
好ましくは、これら化合物のエナンチオマー的に、および/またはジアステレオマー的に精製された形のものが使用される。例を挙げると、(1S,2R)−(+)−ノルエフェドリン、(1R,2S)−(+)−シス−1−アミノ−2−インダノール、(1S,2R)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、(1S,2R)−(−)−シス−1−アミノ−2−インダノール、(1R,2S)−(−)−ノルエフェドリン、(S)−(+)−2−アミノ−1−フェニルエタノール、(1R,2S)−2−アミノ−1,2−ジフェニルエタノール、N−トシル−(1R,2R)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、N−トシル−(1S,2S)−1,2−ジフェニルエチレンジアミン、(1R,2S)−シス−1,2−インダンジアミン、(1S,2R)−シス−1,2−インダンジアミン、(R)−(−)−2−ピロリジンメタノールおよび(S)−(+)−2−ピロリジンメタノールがある。
Mで表すことができる金属に移動型水素化を触媒する能力のある金属がある。好ましい金属を挙げると,遷移金属、さらに好ましくは周期律表第VIII族の金属、特にルテニウム、ロジウムまたはインジウムがある。金属がルテニウムであるとき、それは原子価状態IIで存在しているのが好ましい。金属がロジウムまたはイリジウムであるとき、それは、Rが中性の置換されていてよいヒドロカルビル配位子または中性の置換されていてよいペルハロゲン化ヒドロカルビル配位子である場合は原子価状態Iで存在しているのが好ましく、またRが置換されていてよいシクロペンタジエニル配位子である場合は原子価状態IIIで存在しているのが好ましい。
M、即ち金属が原子価状態IIIで存在するロジウムであり、そしてRが置換されていてよいシクロペンタジエニル配位子であることが好ましい。
Yで表すことができるアニオン性基に、ヒドリド、ヒドロキシ、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルビルアミノおよびハロゲンの各基がある。好ましくは、ハロゲンがYで表されるとき、ハロゲンはクロリドである。ヒドロカルビルオキシまたはヒドロカルビルアミノ基がYで表されるとき、この基は反応で利用される水素ドナーの脱プロトン化によって誘導することができる。
Yで表すことができる塩基性配位子には、水、C1−4アルコール、C1−8の第一若しくは第二アミン、または反応系中に存在する水素ドナーがある。Yで表される好ましい塩基性配位子は水である。
最も好ましくは、A−E−B、RおよびYは触媒がキラルとなるように選ばれる。このことが事実であるとき、エナンチオマー的におよび/またはジアステレオマー的に精製された形のものが好ましく用いられる。このような触媒は、不斉移動型水素化プロセスで用いられるのが最も有利である。多くの態様において、触媒のキラリティーはA−E−Bの本性に由来する。
好ましい触媒は式B(i−ii)およびC(i−iv):
Figure 2008525395
のものである。式B(i)およびB(ii)の触媒が最も好ましい。
好ましい触媒は、好ましくはキラル二座窒素配位子を、置換シクロペンタジエニル配位子を含んでいるRh(III)金属錯体と化合させることによって現場で調製することができる。この操作では、溶媒が存在するのが好ましい。使用される溶媒は、触媒の形成に悪影響を及ぼさないどんな溶媒であってもよい。これらの溶媒に、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン、メタノール、テトラヒドロフラン、エチルメチルケトン、ジメチルホルムアミドおよびそれらの混合物がある。好ましくは、溶媒はTHFまたはジメチルホルムアミドである。
工程(a)の好ましい態様では適したいかなるレダクタント(reductants)を用いてもよく、そしてこのプロセスで用いることができるレダクタントの例を挙げると水素ドナーがあり、その水素ドナーには水素、第一および第二アルコール、第一および第二アミン、カルボン酸とそれらのエステルおよび塩、容易に脱水素可能な炭化水素、クリーン還元剤(clean reducing agents)およびそれらの任意の組み合わせがある。
工程(a)の好ましい態様において水素ドナーとして用いることができる第一および第二アルコールは、一般に1〜10個の炭素原子、好ましくは2〜7個の炭素原子、さらに好ましくは3個または4個の炭素原子を含む。水素ドナーと表すことができる第一および第二アルコールの例を挙げると、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オール、ブタン−1−オール、ブタン−2−オール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールおよびメントール、特にプロパン−2−オールおよびブタン−2−オールがある。
工程(a)の好ましい態様において水素ドナーとして用いることができる第一および第二アミンは、一般に1〜20個の炭素原子、好ましくは2〜14個の炭素原子、さらに好ましくは3個または8個の炭素原子を含む。水素ドナーとして作用することができる第一および第二アミンの例を挙げると、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、ヘキシルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−イソブチルアミン、ジヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジベンジルアミンおよびピペリジンがある。水素ドナーがアミンであるとき、第一アミン、特に第二アルキル基を含む第一アミン、詳しくはイソプロピルアミンおよびイソブチルアミンが好ましい。
工程(a)の好ましい態様において水素ドナーとして作用することができるカルボン酸およびそれらのエステルは、一般に1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜3個の炭素原子を含む。ある特定の態様においては、カルボン酸はベーターヒドロキシ−カルボン酸であるのが有利である。エステルはカルボン酸とC1−10アルコールから誘導することができる。水素ドナーとして用いることができるカルボン酸の例に、ギ酸、乳酸、アスコルビン酸およびマンデル酸、特にギ酸がある。
ある特定の好ましい態様において、カルボン酸が水素ドナーとして用いられるとき、カルボン酸の少なくとも一部は塩、好ましくはアミン塩、アンモニウム塩または金属塩として存在するのが好ましい。好ましくは、金属塩が存在するとき、金属は周期律表のアルカリ金属またはアルカリ土類金属から選ばれ、そしてさらに好ましくはリチウム、ナトリウムまたはカリウムのようなI族元素から選ばれる。このような塩を形成するために使用することができるアミンに、1〜20個の炭素原子を含む第一、第二および第三アミンがある。環状アミンも、芳香族および非芳香族の両者共に使用することができる。第三アミン、特にトリアルキルアミンが好ましい。塩を形成するために使用することができるアミンの例に、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジ−イソプロピルエチルアミンおよびピリジンがある。最も好ましいアミンはトリエチルアミンである。
カルボン酸の少なくとも一部がアミン塩として存在するとき、特にギ酸とトリエチルアミンとの混合物が用いられるとき、酸対アミンのモル比は1:1〜50:1、好ましくは1:1〜10:1、最も好ましくは約5:2である。カルボン酸の少なくとも一部が金属塩として存在するとき、特にギ酸とI族金属塩との混合物が用いられるとき、存在する金属イオンに対する酸のモル比は、1:1〜50:1、好ましくは1:1〜10:1、最も好ましくは約2:1である。酸対塩のモル比は、反応の進行中に、どちらかの成分の添加によって、しかし、通常は、カルボン酸の添加によって維持することができる。
水素ドナーとして工程(a)で用いることができる容易に脱水素化可能な炭化水素は、芳香族化する性質がある炭化水素、または高度に共役した系を形成する性質がある炭化水素から成る。水素ドナーとして用いることができる容易に脱水素化可能な炭化水素に、シクロヘキサジエン、シクロヘキセン、テトラリン、ジヒドロフランおよびテルペン類がある。
水素ドナーとして作用し得るクリーン還元剤は、高い還元電位を持つ還元剤、特に標準水素電極を基準にして約−0.1eVより大きい、しばしば約−0.5eVより大きい、好ましくは約−1eVより大きい還元電位を有するものから成る。適したクリーン還元剤にヒドラジンおよびヒドロキシルアミンがある。
工程(a)の好ましい態様における好ましい水素ドナーは、プロパン−2−オール、ブタン−2−オール、トリエチルアンモニウムホルメート、およびトリエチルアンモニウムホルメートとギ酸との混合物である。
最も好ましい移動型水素化プロセスは、水素源としてトリエチルアミン−ギ酸を使用する。
水素ドナーが第一または第二アルコールであるとき、移動型水素化プロセスは、特にYが空位でないとき、塩基の存在下で行われるのが好ましい。塩基のpKaは好ましくは少なくとも8.0、特に少なくとも10.0である。都合のよい塩基はアルカリ金属の水酸化物、アルコキシドおよび炭酸塩;第三アミンおよび四級アンモニウム化合物である。好ましい塩基はナトリウム2−プロポキシドおよびトリエチルアミンである。使用される塩の量は、モル数で触媒に対して5.0以下、一般に3.0以下、しばしば2.5以下、特に1.0〜3.5の範囲であることができる。
ガス状水素が存在していてもよいが、このプロセスは、普通は、水素は不必要であると思われるから、ガス状水素の非存在下で操作される。
好ましくは、反応は不活性雰囲気、例えば窒素の下で行われることが多い。さらに好ましくは、反応は不活性ガスによりスパージングされる。
水素ドナーの脱水素化による生成物(1種または複数種)が揮発性であるとき、例えば100℃以下で沸騰するとき、この揮発性生成物を除去することが好ましい。この除去は不活性ガススパージングの利用によって成し遂げることができる。さらに好ましくは、この除去は好ましくは大気圧未満の圧力における蒸留によって成し遂げられる。減圧蒸留が用いられるとき、圧力は多くの場合500mmHg以下、一般的には200mmHg以下、好ましくは5〜100mmHgの範囲、最も好ましくは10〜80mmHgの範囲である。
移動型水素化プロセスは、−78〜150℃の範囲、好ましくは−20〜110℃、さらに好ましくは−5〜+60℃の範囲の温度で行われるのが適切である。基質である式(2)の化合物の初期濃度は、モル基準で0.05〜1.0の範囲にあるのが適切であり、そして都合のよいより大きなスケールでの操作には、同基準で例えば6.0以下、さらに特別には0.75〜2.0であることができる。基質対触媒のモル比は50:1以上であるのが適切であるが、50000:1以下、好ましくは250:1〜5000:1、さらに好ましくは500:1〜2500:1であることができる。水素ドナーは、好ましくは基質に対してモル過剰で、特に5倍まで、多くの場合20倍までのモル過剰で用いられる。水素ドナーが第一または第二アルコールであり、かつそのアルコールが溶媒として用いられるとき、上記モル過剰はさらに大きい、例えば500倍までであることができる。反応時間は、典型的には、1.0分から24時間までの範囲にあり、特に8時間以下、好都合には約3〜6時間である。前記刊行物中に開示される時間より実質的に短い時間が本発明によって実行できるようになると思われる。反応後、反応混合物は標準的な手法で仕上げ処理される。反応溶媒、例えばアセトニトリル、トルエン、メチルt−ブチルエーテル、アルコール類、ハロゲン化炭化水素が、または、都合のよいことに、水素ドナーが反応温度で液体であるときは、特に水素ドナーが第一若しくは第二アルコール、または第一若しくは第二アミンであるときは、その水素ドナーが存在することができる。水の実質的不存在下で操作することが可能であるけれども、このプロセスを2相系として操作するために水および有機溶媒を使用することが好ましい。このような2相系は水素の生成を改善することがある。
本発明の第二の面によれば、式(7):
Figure 2008525395
(式中、
XはOを表し;そして
およびRは、各々独立に、水素原子、置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基若しくは置換されていてよいヘテロシクリル基を表すか、またはRとRとが、置換されていてよい環(1個または複数個)を形成するそのような仕方で随意に結合されている。)
の化合物を製造する式(6):
Figure 2008525395
(式中、
XはOを表し;そして
およびRは、各々独立に、水素原子、置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基若しくは置換されていてよいヘテロシクリル基を表すか、またはRとRとが、置換されていてよい環(1個または複数個)を形成するそのような仕方で結合されていてよい。)
の化合物の移動型水素化方法であって、
式(6)の化合物を、多相系において、移動型水素化触媒の存在下で水素ドナーと反応させることを含む
上記の方法が提供される。
で表すことができる置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基および置換されていてよいヘテロシクリル基は、前記でRについて定義したとおりである。RおよびRは異なることが好ましい。
多相系は2つまたは3つ以上の液相から成るのが好ましい。多相系は水不混和性溶媒相と水性または水の相から成る2相系であるのがさらに好ましい。
水不混和性溶媒相と水性または水の相から成る2相系が用いられるとき、水不混和性溶媒相はこれを連続の水性または水の相中に分散させることができるか、または水性または水の相を連続の水不混和性溶媒相中に分散させることができる。
好ましくは、移動型水素化触媒は水不混和性溶媒相中に可溶性である。好ましくは、水素ドナーは水性または水の相中に可溶性である。
好ましい移動型水素化触媒は、水不混和性溶媒に可溶性である、前記したそのような移動型水素化触媒である。
水不混和性溶媒に可溶性である好ましい移動型水素化触媒は、水溶性を与える置換基を含まないそのような置換されていてよい移動型水素化触媒である。例えば、水溶性を与える置換基にスルホン酸基またはそれらの塩がある。
好ましくは、液体の水不混和性相は式(6)の化合物、および任意に1種または2種以上の不混和性溶媒を含む。好ましい水不混和性溶媒に、前記で述べた、部分的にまたは完全に水不混和性であるそのような極性および非極性有機溶媒がある。好ましい水不混和性溶媒にt−ブチルアセテート、THFがある。ジクロロメタンが非常に好ましい水不混和性溶媒である。
非常に好ましい態様において、式(6)の化合物が、上記方法が操作される温度で液体であり、かつ式(6)の化合物が水不混和性であるか、または部分的な水溶性を有するに過ぎないとき、水不混和性溶媒は用いられない。式(6)の化合物は好ましい態様ではニートオイル(neat oil)として存在することができる。
任意に、相間移動触媒が存在することができる。驚くべきことに、相間移動触媒の使用は反応速度を高め得ることが見いだされた。相間移動触媒の例にハリドおよびスルフェートのような四級アンモニウム塩、例えば(Bu)4N+SO4 -がある。相間移動触媒の使用が好ましい。
本発明は次の実施例によって例証される。
実験
実験1
段階1:
Figure 2008525395
物質
Figure 2008525395
方法
[RhCp*Cl2]2およびS,S-TsDPENをスプリット・ネックド・フラスコ(split necked flask)に加え、この容器を窒素雰囲気下に置いた。この容器に攪拌および窒素パージしながらTHFを周囲温度において加えた。これに3,5−ビス(トリフルオロメチル)アセトフェノンを加え、その内容物を15分間攪拌した。次に、TEAF(トリエチルアミン/ギ酸混合物)を30分にわたり滴下した。この反応混合物を20℃において攪拌し、そして反応をGCによってモニターした(約1時間後に完了)。
NaOH(2M)を加えることによって反応を止め、反応温度が30℃を超えないことを保証した。
上記溶液を30分間激しく攪拌し、そして30分間静置した。下層の有機層を流して取り出し、そしてその分液容器(separating vessel)に新鮮なトルエンを加えた。この溶液を30分間激しく攪拌し、次いで30分間静置し、そして下層の有機層を流して取り出した。それら有機層を合わせ、そして1/3の容積になるまで濃縮した。この溶液を次の段階で直接使用した。(収率:>98%、82%ee)。
段階2:
Figure 2008525395
物質
Figure 2008525395
方法
段階1のトルエン溶液、トリエチルアミンおよびトルエンを窒素で満たしたスプリット・ネックド・フラスコに加え、そして攪拌しながら5℃になるまで冷却した。メタンスルホニルクロリドを滴下し、反応温度が15℃を超えないことを保証した。この反応物を20℃になるまで1時間にわたって加温した。水を注意深く加え、温度を30℃未満に保った。その有機層を水で2回洗浄した。トルエン層を直接次の段階で使用した。(収率:>98%;82%ee)。
段階3:
Figure 2008525395
物質
Figure 2008525395
方法
段階2のトルエン溶液およびメチルアミン水溶液(40重量%溶液)をパル(Parr)反応器に加えた。この容器を密封し、そして50℃になるまで加温した(最大1.8バール)。反応を48時間後に完了させた。その2つの層を分液漏斗に移し、そして分離させた。その有機層を水で2回、そしてブラインで1回(各々1/3容積)洗浄した。(収率:>98%;79%ee)。
段階4:
Figure 2008525395
物質
Figure 2008525395
方法
L−リンゴ酸および2−プロパノールをスプリット・ネックド・フラスコに加え、そのフラスコを窒素ブランケットの下に置いた。その混合物を、その容器を40℃に冷却したとき完全な溶解が観察されるまで60℃に加熱した。段階3のトルエン溶液を加え、その混合物を1/2容積になるまで蒸留する(この蒸留中に若干の固体が形成される)。次に、酢酸エチルを加え、その混合物を75℃まで加熱し、そして30分間保持する。その結果得られた溶液を次に4時間にわたって4℃まで冷却し、そして4時間保持する。その白/黄色結晶を濾過によって集め、そして冷酢酸エチルで2回洗浄して目的生成物を無色の結晶としてもたらした。濾液を1/3容積まで濃縮し、そして0℃まで放冷することによって生成物のさらなる発生物を得ることができる。生成物を真空炉中で40℃において一晩乾燥する。(収量:33.2gのリンゴ酸塩が得られた;99%ee)。
総合収率(4つの段階を通して)=69−80%
実験2−3,5−(ビストリフルオロメチル)フェニルアセトフェノンの二相還元
Figure 2008525395
反応フラスコを窒素でフラッシュし、そしてギ酸ナトリウム(33.1g、0.486モル、5当量)の蒸留水(131.4g、7.3モル、75当量)中溶液を加えた。RhまたはRu金属−二量体(0.39ミリモル、0.004当量のRh2(Cp)2Cl4またはRu2(p-シミル)2Cl4)を添加し、続いて(S,S,S)CsDPEN配位子(0.332g、0.77ミリモル、0.008当量)を添加し、そしてその水性混合物を窒素下で20分間かき混ぜた。
DCM(42.18g、0.497モル、5.1当量)中の3,5−(ビストリフルオロメチル)アセトフェノン(24.94g、97.4ミリモル、1当量)およびビフェニル(0.3g、1.93ミリモル、0.02当量)より成る有機相を調製し、49.4mlの総有機相容積を与えた。この有機溶液をかき混ぜ下でその水系に加えて、よく混合された二相−水性連続相系を形成し、そして反応を規則的間隔でGCサンプリングしながら進行させた。有機添加する(organic addition)とすぐに、その溶液は淡橙色から赤色に変化し、そして低水性溶解性を有するどんな固体も溶解した。反応が先に進むにつれて、その混合物は赤色から暗褐色にゆっくり変化し、pHが7.0から非直線的に上昇して8.5で同レベルになった。反応時間はRh−二量体を用いる反応については45分、Ru−二量体を用いる反応については700分であることが見いだされた。反応混合物を仕上げ処理した;かき混ぜを止め、そして相を分離した。水性相をDCM(2x10ml)で洗浄し、その有機相を合わせ、そして蒸留水(2x10ml)で洗浄し、続いて無水の硫酸ナトリウム上で乾燥し、そして濾過した。次に、その暗褐色の溶液を、その溶液が澄明になるまでシリカで1時間スラリー化し、次いでシリカを濾別し、その溶液を真空中で濃縮して、(3,5−ビストリフルオロメチル)フェニルエタノールを白色結晶性固体(17.15g、66.4ミリモル、68%)として生成させた。エナンチオマー過剰率はRh−二量体を用いたときは83.0%、Ru−二量体では81.5%であることが見いだされた。
(注:ビフェニルはGC結果を定量化するのを助ける内部参照標準として存在する。)
実験3
配位子を予備溶解したことを除いて実験2を繰り返した。反応は上記の通り行われたが、Rh−二量体はホルメート水溶液に加えられ、そして5分間かき混ぜられ、次いでCsDPEN配位子が添加され、DCM(10.0g、118ミリモル、1.2当量)中に予備溶解され、そしてその混合物がさらに15分間かき混ぜられた。次いで、ケトン/標準物質(standard)のDCM(32.18g、379ミリモル、3.9当量)中溶液が加えられ、そして反応がモニターされた。結果は、水素化の速度は同様であるが、転化率が増加することを示している(転化率は90.7%から98.5%に増加した)。
実験4
相間移動触媒添加法を用いて実験2を繰り返した。Ru−触媒を用いて前の通り反応を始め、継続させた。60分後に(Bu4N)2SO4PTC(水中50重量%溶液5.66g、0.05当量)を加えた。反応速度が瞬間的に増大した。増加率はほぼ520%であった。
実験5
ホルメート水溶液中のIr(S,S)TSDPENを用いる3,5−ビス(トリフルオロメチル)アセトフェノンの還元
Figure 2008525395
ギ酸ナトリウムを水に加えて3.7M溶液を作り、その溶液を次いで10℃まで冷却した。Ir二量体を加えて20分間攪拌した。この混合物に次いで(S,S)TSDPENを加え、そして10分間攪拌した後ケトンを加えた。反応は24時間後に完了した。生成物の水溶液中懸濁物をジクロロメタンで2回(2x40ml)抽出した。それらの有機層を合わせ、そしてシリカプラグを2回通過させて触媒を除去し、その後真空中で還元して白色、結晶性の生成物(17.3g、収率69%)を生成させた。上記の合わされた有機層は、生成物を単離する必要なしに直接次の段階で使用することができる。キラルGC(Chiralsil-Dex、25m、0.25i.d.、0.25mmフィルム)による分析は、生成物は90.2%ee(R)であることを示した。
実験6
ゲオトリクム−カンジドゥムBPCC 1118を、グルコース(5g/リットル)、酵母抽出物(2g/リットル)および2−プロパノール(15g/リットル)が補充されたpH7.2の無機塩培養基を含んでいる振盪フラスコ(shake flasks)中で好気的に培養した。培養物をシェーカーで28℃において24時間インキュベートし、そして遠心分離によって細胞を回収した。回収細胞のペレットを10容積のアセトン中に再懸濁させることによって脱水し、その細胞を濾過によって回収し、そしてアセトンで2回以上洗浄し、その後真空下で乾燥してさらさらした粉末を与えた。反応混合物を、DB17カラム(30mx0.32mm)でのGCによって、ある一定温度勾配(初期温度80度C、2.5分間保持される、200度まで20度/分で上昇する)を用いて分析した;出発物質は3.8分において溶離し、また還元生成物は5.2分において溶離した。キラル分析を、Chiraldex CBカラム(25mx0.32mm)を用いるGCによって、ある一定温度勾配(初期温度80度、5分間保持される、180度の最終温度まで10度/分で上昇し、2分間保持される)で行った;(S)−エナンチオマーは12.3分において溶離し、また(R)−エナンチオマーは12.7分において溶離した。3,5−ビス(トリフルオロメチル)−アセトフェノン(20mg)の還元を、アセトン、乾燥ゲオトリクム−カンジドゥム細胞(100mg)、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(1.5mg)および2−プロパノール(2.6mg)を含んでいる、28℃で24時間インキュベートされた2mlの燐酸ナトリウム緩衝液(pH7.5)中で行った;反応転化率は65%、エナンチオマー過剰率は>99%(S)であった。
実験7
トルエン中のR−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン−1−オール(99.9%EE)を容器に加え、その容器を窒素ブランケット下に置いた。この物質は、例えば実施例5および実施例6からトルエン中溶液として単離することなく得ることができる。あるいはまた、その固体を必要とされるとおりにトルエンに溶解させることができる。
Figure 2008525395
トルエン中のR−[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]エタン−1−オール(99.9%EE)の混合物を5℃まで冷却し、そしてトリエチルアミン(1.48当量)を、続いてトルエン・ライン洗浄液(toluene line wash)(0.43当量)を加えた。メシルクロリド(1.08当量)を滴下して温度を15℃未満に維持し、そしてそのラインをトルエン(0.82当量)で洗浄した。その容器を30℃まで加熱し、そして1時間保持して反応を完了点に到達し得るようにした。この結果得られた混合物を室温まで冷却した;この点でトリエチルアミン・HCは水(23.64当量)で1回、続いて10%HCl溶液(1.11当量)および水(23.64当量)で計3回洗浄することによって除去することができる。この結果得られた有機相を40%メチルアミン水溶液(4.98当量)で70℃において約1.5−2.0バールで24時間処理した。その冷却された2相反応混合物を分離し、その有機相を水(19.23当量)で3回洗浄した。その粗遊離アミンを初めにHCl(1.00当量)水溶液中に抽出することによって精製し、そして不純物をトルエン(15.00当量)による逆抽出により除去した。このアミンのHCl塩を次に水酸化ナトリウムで11より大のpHが達成されるまで処理し、次いで有機溶媒(酢酸エチル、トルエンまたはMTBE、15.00当量)中への抽出によって単離し、そして減圧下で濃縮した。この方法論に従うと、高いエナンチオマー過剰率を99.9%EE〜99.5%EEという典型的な低下で維持することができた。97.5%重量/重量を超える純度(assays)および80%を超える通し収率が達成された。

Claims (16)

  1. 式1:
    Figure 2008525395
    (式中、
    Arは置換されていてよいヒドロカルビル基、または芳香族部分を含んでいる置換されていてよいヘテロシクリル基を表し;そして
    およびRは、各々独立に、置換されていてよいヒドロカルビル基または置換されていてよいヘテロシクリル基を表す。)
    の化合物の製造方法であって、
    a)式2:
    Figure 2008525395
    の化合物を還元して式3:
    Figure 2008525395
    の化合物を形成し;
    b)式3の化合物を活性化して式4:
    Figure 2008525395
    (式中、OXは離脱基を表す。)
    の化合物を形成し;そして
    c)式4の化合物を式5:
    Figure 2008525395
    の化合物にカップリングさせて式1の化合物を形成する
    上記の方法。
  2. ArとRとが異なり、そして立体選択的還元系が用いられる請求項1に記載の方法。
  3. 立体選択的還元系がキラル配位遷移金属触媒による移動型移動型水素化プロセスまたは酵素還元系である、請求項2に記載の方法。
  4. キラル配位遷移金属触媒による移動型移動型水素化プロセスが式(a):
    Figure 2008525395
    (式中、
    は中性の置換されていてよいヒドロカルビル配位子、中性の置換されていてよいペルハロゲン化ヒドロカルビル配位子または置換されていてよいシクロペンタジエニル配位子を表し;
    Aは置換されていてよい窒素を表し;
    Bは置換されていてよい窒素、酸素、硫黄または燐を表し;
    Eは結合基を表し;
    Mは移動型移動型水素化を触媒する能力のある金属を表し;そして
    Yはアニオン性基、塩基性配位子または空位を表し;
    但し、AまたはBの少なくとも一方は置換された窒素から成り;そしてYが空位でないとき、AまたはBの少なくとも一方は水素原子を持っているものとする。)
    の移動型移動型水素化触媒を用いる、請求項3に記載の方法。
  5. 移動型移動型水素化触媒が式B(i−iv)または式C(i−Viii):
    Figure 2008525395
    Figure 2008525395
    の遷移金属触媒である、請求項4に記載の方法。
  6. 移動型移動型水素化触媒が式B(i−iv)の遷移金属触媒である、請求項5に記載の方法。
  7. 式2の化合物が式2a:
    Figure 2008525395
    (式中、Rは各々独立に水素または置換基を表す。)
    の化合物である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 式2の化合物が式2b:
    Figure 2008525395
    (式中、Rは各々独立に水素または置換基を表す。)
    の化合物である、請求項7に記載の方法。
  9. が全て水素である、請求項7または8に記載の方法。
  10. Xがアセチル基、トリフルオロアセチル基、メタンスルホニル基、トリフルオロメチルスルホニル基またはトルエンスルホニル基である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 式1の化合物がエナンチオマー過剰で得られる、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
  12. 式(7):
    Figure 2008525395
    (式中、
    XはOを表し;そして
    およびRは、各々独立に、水素原子、置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基若しくは置換されていてよいヘテロシクリル基を表すか、またはRとRとが、置換されていてよい環(1個または複数個)を形成するそのような仕方で結合されていてよい。)
    の化合物を製造する式(6):
    Figure 2008525395
    (式中、
    XはOを表し;そして
    およびRは、各々独立に、水素原子、置換されていてよいヒドロカルビル基、ペルハロゲン化ヒドロカルビル基若しくは置換されていてよいヘテロシクリル基を表すか、またはRとRとが、置換されていてよい環(1個または複数個)を形成するそのような仕方で結合されていてよい。)
    の化合物の移動型移動型水素化方法であって、
    式(6)の化合物を、多相系において、移動型移動型水素化触媒の存在下で水素ドナーと反応させることを含む
    上記の方法。
  13. 多相系が液体の水不混和性相および水性または水の相から成る2相系である、請求項12に記載の方法。
  14. 移動型移動型水素化触媒が水不混和性溶媒相中に可溶であり、そして水素ドナーが水性または水の相中に可溶である、請求項13に記載の方法。
  15. 相間移動触媒が存在する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 式(6)の化合物がニートオイルとして存在する、請求項13〜15のいずれかに記載の方法。
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