JP2008519077A - 帯電防止剤の製造方法 - Google Patents

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Abstract

下記一般式(1)のホスホニウムスルホネート塩の製造方法であって、水性媒質中で下記一般式(2)の化合物を下記一般式(3)の化合物と化合させる段階、及び水性媒質から式(1)のホスホニウムスルホネートを分離する段階を含んでなる方法が開示される。また、ホスホニウムスルホネート(1)を含んでなる帯電防止性組成物及びそれで製造した物品も開示される。
【化1】
Figure 2008519077

(式中、各Xはハロゲンと水素とのモル比が約0.90を超えることを条件にして独立にハロゲン又は水素であり、q+rが8未満であると共に、pが1であればrが0を超えることを条件にして、pは0又は1であり、q及びrは0〜約7の整数であり、各Rは1〜約18の炭素原子を含む同一の又は相異なる炭化水素基である。)
【化2】
Figure 2008519077

(式中、MはKであり、X、q、p及びrは上記に定義した通りである。)
【化3】
Figure 2008519077

(式中、Zはハロゲンであり、Rは上記に定義した通りである。)
【選択図】 なし

Description

本発明は帯電防止剤の製造方法に関する。
熱可塑性樹脂は、自動車部品から電子装置にまでわたる広範囲の用途のための物品及び部材の製造に有用である。特に電子装置での幅広い使用のため、熱可塑性樹脂に帯電防止剤を添加することが望ましい。多くのポリマー又はポリマーブレンドは比較的非導電性であり、ポリマーの加工及び使用中に静電荷の蓄積をもたらすことがある。例えば、帯電した成形品は小さい粉塵粒子を引き付けることがあり、例えば物品の透明度の低下を引き起こすことで平滑な表面外観を損なうことがある。加えて、静電荷はかかるポリマーの製造プロセスにおいて重大な障害となることがある。
帯電防止剤は、ポリマーが静電荷を獲得する傾向を低下させるため、又は電荷が存在する場合にはかかる電荷の消散を促進するため、ポリマーに添加される物質である。有機帯電防止剤は、通常は親水性又はイオン性である。ポリマー材料の表面に存在する場合、それは電子の移動を容易にし、それによって静電荷の蓄積を排除する。帯電防止剤はまた、さらに物品に加工する前のポリマー組成物にも添加されてきたが、これは「内部適用」といわれることがある。このようにして適用される有用な帯電防止剤は、熱的に安定であると共に、加工中に表面に移行し得る。
主成分として界面活性剤を含む多数の帯電防止剤が検討され試用されてきた。多くは、(一様な分散性を妨げる)ポリマーとの相容性の欠如、不良な熱安定性及び/又は不良な帯電防止特性のような1以上の欠点を有している。特に不良な熱安定性は、芳香族ポリカーボネートのようなエンジニアリングサーモプラスチックの光学的性質に悪影響を及ぼすことがある。
しかし、ある種のスルホン酸の特定のホスホニウム塩は有用な帯電防止剤であると証明された。米国特許第4,943,380号には、ポリカーボネート90〜99.9重量%及び下記の一般式を有する耐熱性ホスホニウムスルホネート0.1〜10重量%を含む帯電防止性組成物を用いてポリカーボネート樹脂上の静電荷を低減させることが開示されている。
Figure 2008519077
式中、Rは1〜18の炭素原子を有する直鎖又は枝分れアルキル基であり、R、R及びRは同一であって、各々が1〜8の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基又は6〜12の炭素原子を有する芳香族炭化水素基であり、Rは1〜18の炭素原子を有する炭化水素基である。
米国特許第6,194,497号には、熱可塑性ポリマー及び四置換ホスホニウムカチオンのハロゲン化中鎖又は短鎖アルキルスルホン酸塩を含んでなる帯電防止性樹脂組成物(特に透明樹脂組成物)が開示されている。そこに記載された帯電防止剤を製造するためには、ハロアルキルスルホン酸カリウムのイオン交換で対応する酸を生成させる。次いで、ハロアルキルスルホン酸を水酸化テトラブチルホスホニウムと反応させて帯電防止剤を生成させる。
この合成法の利点は、合成中にイオン交換段階を使用することで、非常に純粋な(即ち、最終的にポリカーボネートのような樹脂の劣化を引き起こすことがあるハロゲン化化合物をほとんど又は全く含まない)生成物が得られることである。しかし、所期の目的には適するものの、この特定の合成法もいくつかの欠点を有している。例えば、イオン交換段階の使用はプロセスの経費を増加させると共に、処分手続きを必要とする廃棄物の生成をもたたらすことがある。また、この合成法は出発原料としてカリウム塩を使用するが、これは対応するスルホニルフルオリドから製造される。ペルアルキルスルホン酸カリウムの溶解度は比較的低い(例えば、20℃で5%程度)ので、イオン交換段階では水/エタノール混合物が必要とされる。エタノールの可燃性は、合成中に顕著な安全対策の実施を要求する。加えて、適切な水/エタノール比を選択することも重要である。過剰のアルコールは最終生成物を反応溶媒に可溶にすることがある結果、生成物の単離のために追加の抽出段階が必要になることがある。
したがって、当技術分野では、ホスホニウムスルホネート帯電防止剤を製造するための一層効率的な方法(特に一段階法)、並びにこれらの帯電防止剤を混入した熱可塑性樹脂組成物に対する要望が今なお存在している。さらに、かかる方法はプロセスの安全性及び/又は生成物の純度に有害な影響を及ぼすことなしに良好な収率で帯電防止剤を製造することも望ましいであろう。
米国特許第4,943,380号公報 米国特許第6,194,497号公報 米国特許第6,765,112号公報
当業技術の上記その他の欠点は、下記式(1)のホスホニウムスルホネート塩の製造方法によって解消される。
Figure 2008519077
(式中、各Xはハロゲンと水素とのモル比が約0.90を超えることを条件にして独立にハロゲン又は水素であり、q+rが8未満であると共に、pが0でなければrが0を超えることを条件にして、pは0又は1であり、q及びrは0〜約7の整数であり、各Rは1〜約18の炭素原子を含む同一の又は相異なる炭化水素基である。)
この方法は、水性媒質中で下記式(2)の化合物を下記式(3)の化合物と化合させる段階、及び水性媒質から式(1)の生成物を分離する段階を含んでなる。
Figure 2008519077
(式中、MはKであり、X、q、p及びrは上記に定義した通りである。)
Figure 2008519077
(式中、Zはハロゲンであり、Rは上記に定義した通りである。)
別の実施形態では、式(1)のホスホニウムスルホネート塩の製造方法は、水性媒質中で下記式(4)の化合物を水酸化カリウム及び下記一般式(3)の化合物の化学量論的過剰量と化合させる段階、及び水性媒質から式(1)の生成物を分離する段階を含んでなる。
Figure 2008519077
Figure 2008519077
(式中、X、q、p、r及びRは式(1)中と同じ意味を有し、Zはハロゲンである。)
別の実施形態は、上述の方法の1つで製造される式(1)の帯電防止剤からなる。
別の実施形態では、熱可塑性ポリマー及び上述の方法の1つで製造される帯電防止剤を含んでなる熱可塑性樹脂組成物が提供される。
本発明者らは意外にも、帯電防止剤として使用するのに適したホスホニウムハロアルキルスルホネート塩を対応するテトラアルキルホスホニウムハロゲン化物及びハロアルキルスルホン酸カリウム塩から水性媒質中において一段階で容易に製造できることを見出した。ホスホニウムハロアルキルスルホネート塩は、約15〜約100℃で実施される方法で生成できる。別法として、ホスホニウムハロアルキルスルホネート塩は対応するテトラアルキルホスホニウムハロゲン化物、ハロアルキルスルホニルフルオリド及び水酸化カリウムから水性媒質中において一段階で製造することもできる。この場合、ハロアルキルスルホン酸カリウムはインサイチュで製造できる。反応体は容易に入手でき、反応溶媒としての水の使用は生成物の単離を容易にする。このように、極めて有利で意外な特徴として、本発明者らは、反応体を単に混合するだけで目標の帯電防止性分子を高い収率で沈殿させ得ることを見出した。
一般に、ホスホニウムハロアルキルスルホネート塩は下記の一般式(1)を有する。
Figure 2008519077
式中、Xはハロゲンと水素とのモル比が約0.90を超えることを条件にしてハロゲン及び水素から独立に選択される。ハロゲンは、臭素、塩素、フッ素及びヨウ素から独立に選択し得る。具体的には、ハロゲンはフッ素である。
さらに式(1)中では、q+rが8未満であると共に、pが0でなければrが0を超えることを条件にして、pは0又は1であり、q及びrは0〜約7の整数である。一実施形態では、pは0である。
式(1)中の各Rは、独立に1〜約18の炭素原子を含む炭化水素基である。即ち、各Rは同一のもの又は相異なるものであり、1〜約8の炭素原子を含む直鎖又は枝分れ脂肪族炭化水素基或いは6〜約18の炭素原子を含む芳香族炭化水素基であり得る。本明細書中で使用する「芳香族基」は、全芳香族基、アラルキル基及びアルカリール基を包含する。一実施形態では、有機ホスホニウムカチオン中の3つのR基は1〜約8の炭素原子を含む同一の脂肪族炭化水素基又は6〜約12の炭素原子を含む同一の芳香族炭化水素基である一方、第四のR基は1〜約18の炭素原子を含む炭化水素基であり得る。
かくして本帯電防止剤は、有機スルホネートアニオン及び四置換有機ホスホニウムカチオンを含む高ハロゲン化ホスホニウムスルホネート塩であり得る。その具体例は過フッ素化塩である。過フッ素化塩は、フッ素化方法(電気分解)のため、部分的にしかフッ素化されていない化合物も含み得ることを理解すべきである。
好適な有機スルホネートアニオンの具体例には、ペルフルオロメタンスルホネート、ペルフルオロエタンスルホネート、ペルフルオロプロパンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネート、ペルフルオロペンタンスルホネート、ペルフルオロヘキサンスルホネート、ペルフルオロヘプタンスルホネート及びペルフルオロオクタンスルホネートがある。上述のものの組合せも使用できる。
特定のホスホニウムカチオンの例には、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラ−n−プロピルホスホニウム、テトライソプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウリルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、トリフェニルベンジルホスホニウム及びトリブチルベンジルホスホニウムのようなカチオンがある。上述のものの組合せも使用できる。
一実施形態では、式(1)のホスホニウムスルホネートの製造方法であって、水性媒質中において約50〜約100℃の高温で下記式(2)の化合物を下記式(3)の化合物の化学量論的過剰量と化合させる段階、及び式(1)の生成物を分離する段階を含んでなる方法が提供される。
Figure 2008519077
式中、Mはカリウムであり、X、q、p及びrは上記に定義した通りである。
Figure 2008519077
式中、Zはハロゲンであり、Rは上記に定義した通りである。具体的には、Zは臭素又は塩素であり得る。
一進行手順によれば、本方法は、式(2)のペルハロアルキルスルホン酸カリウム塩を水性媒質に溶解することを含み得る。意外にも、式(2)のカリウム塩は約85℃の水に完全に可溶であり、共溶媒の必要はないことが判明した。したがって、水性媒質は、例えばエタノールのような共溶媒を実質的に含まないものであり得る。本明細書中で使用する「水性媒質」は、水に対するペルハロアルキルスルホン酸塩の溶液、分散液又は懸濁液を意味する。さらに、本明細書中で使用する「共溶媒を実質的に含まない」水性媒質は、約1体積%未満、詳しくは約0.5体積%未満、さらに詳しくは約0.1体積%未満の共溶媒を含む水性媒質を意味する。共溶媒の使用は可能であるが、共溶媒を実質的に含まない水を使用すれば、高純度の生成物が得られると共に、揮発性溶媒の使用に起因する安全上の問題が回避される。使用する場合、好適な共溶媒はスルホン酸アルカリ塩の溶解を助けることができ、メタノール、エタノールなどの低級アルコール及びジクロロメタンなどの塩素化溶媒を包含する。共溶媒の混合物も使用できる。
次いで、ペルハロアルキルスルホン酸アルカリ塩を含む水性媒質を四置換ホスホニウムハロゲン化物と反応させることができる。添加の順序は重要と思われない。即ち、例えば、四置換ホスホニウムハロゲン化物を水性媒質に溶解し、次いでペルハロアルキルスルホン酸アルカリ塩を添加すること、反応体を同時に溶解して混合すること、反応体を別々に溶解してから混合することなどでも反応を実施できる。ここで得られるホスホニウムスルホネート塩は、ペルハロアルキルスルホン酸カリウム塩及び四置換ホスホニウムハロゲン化物の混合物を用いて得ることもできる。
本方法は広範囲の温度及び反応時間で実施でき、これらは使用する特定の反応体、反応体の化学量論的関係、共溶媒(存在する場合)、所望の収率、所望の純度、製造のコストや便宜性や容易性、及び類似の考慮事項に依存する。例えば、各種の方法に関する温度は一般に約10〜約100℃、詳しくは約20〜約95℃、さらに詳しくは約30〜約90℃であり得る。一実施形態では、反応は高温で実施され、これは一般に50〜約100℃、さらに詳しくは約75〜約95℃であり得る。別の実施形態では、反応は室温又は周囲温度で実施され、これは一般に約10〜50℃(ただし、50℃を含まない)、さらに詳しくは約15〜約30℃であり得る。同様に、反応時間は様々に変化し得るが、一般に約5分〜約1日、詳しくは約30分〜約12時間、さらに詳しくは約60分〜約4時間であり得る。当業者であれば、これらの温度及び時間を大幅に変化させると共に決定することができる。
四置換ホスホニウムハロゲン化物は、ペルハロアルキルスルホン酸塩に対して少なくとも等モル量で使用できる。さらに詳しく言えば、式(2)のペルハロアルキルスルホン酸塩と式(3)の四置換ホスホニウムハロゲン化物とのモル比は、約1:1.001〜約1:1.5、詳しくは約1:1.002〜約1:1.1、さらに詳しくは約1:1.005〜約1:1.015であり得る。最適比は特定の反応体、温度、共溶媒(存在する場合)及び時間に応じて変化し得るが、当業者ならば容易に決定できる。
別の実施形態では、式(2)のペルハロアルキルスルホン酸塩と式(3)の四置換ホスホニウムハロゲン化物とのモル比は、約1.001:1〜約1.5:1、詳しくは約1.002:1〜約1.1:1、さらに詳しくは約1.005:1〜約1.015:1であり得る。最適比は特定の反応体、温度、共溶媒(存在する場合)及び時間に応じて変化し得るが、当業者ならば容易に決定できる。
極めて有利な特徴として、反応体及び水性媒質は、ホスホニウムスルホネート塩(1)が高い純度で水性媒質から沈殿すると共に、簡単な濾過及び洗浄で不純物(特にハロゲン含有不純物)及び反応体から単離できるように選択される。ハロゲン含有不純物(例えば、四置換ホスホニウム臭化物及び/又は塩化物)はポリカーボネートのような樹脂を劣化させることが知られているので、特にかかる不純物を除去することが望ましい。かかる不純物は水に可溶である一方、所望生成物は可溶でないので、不純物の除去は水洗によって容易かつ効率的に達成される。
他の効率的な不純物除去手段は、ホスホニウムスルホネート塩(1)を高温(詳しくは約70〜約100℃)の水性媒質に溶解し、水性媒質を冷却し、水性媒質から沈殿又は晶出する精製ホスホニウムスルホネート(1)を捕集し、残留水性媒質を除去することからなる。この精製手段では、共溶媒、特に水性媒質と混和可能であってホスホニウムスルホネート塩(1)の溶解度に影響を及ぼす共溶媒の使用が所望されることがある。
別の実施形態では、式(1)のホスホニウムスルホネート塩の製造方法であって、水性媒質中で式(4)のスルホニルフルオリド、式(3)の四置換ホスホニウムハロゲン化物、及びアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩基を化合させる段階、並びに水性媒質から式(1)のホスホニウムスルホネートを分離する段階を含んでなる方法が提供される。詳しくは、この場合に好適な水性媒質は、溶媒を実質的に含まない脱イオン水である。水酸化カリウムが好ましい塩基である。一実施形態では、反応体及び水性媒質、反応体の化学量論的関係、並びに反応時間は、ホスホニウムスルホネート塩が水性媒質から沈殿するように選択される。
この場合にも、添加の順序は重要と思われない。即ち、成分は同時に混合することができ、或いは四置換ホスホニウムハロゲン化物(3)を塩基の水性溶液/分散液に添加し、この媒質/分散液をスルホニルフルオリド(4)の溶液/分散液に添加することができる。さらに別の実施形態では、スルホニルフルオリド(4)及び塩基を混合し、スルホン酸アルカリ塩(2)を生成するのに有効な時間だけ反応させる。次いで、ホスホニウムハロゲン化物(3)を媒質に添加することで、スルホン酸アルカリ塩(2)を単離せずに生成物を生成させる。この方法は簡単であり、効率的であり、時間及び材料を最小限に抑える。別法として、スルホン酸カリウム塩(2)を単離し、共溶媒の使用又は不使用下で再溶解してから、ホスホニウムハロゲン化物(3)を添加することができる。
広範囲の反応時間、温度及び他のプロセス条件を使用できるが、製造の容易性の点で約25℃(室温)ないし約100℃が好ましい。最適の反応体比は当業者ならば容易に決定でき、例えば上述のようなものであり得る。
本明細書中に記載される方法で製造できるホスホニウムスルホネート塩は、下記の一般式(6)を有するものを包含する。
Figure 2008519077
式中、Fはフッ素であり、nは0〜約7の整数であり、Sは硫黄であり、各Rは1〜約18の炭素原子を含む同一の又は相異なる脂肪族炭化水素基或いは6〜約18の炭素原子を含む芳香族炭化水素基である。一実施形態では、有機ホスホニウムカチオン中の3つのR基は1〜約8の炭素原子を含む同一の脂肪族炭化水素基又は6〜約12の炭素原子を含む同一の芳香族炭化水素基であり得る一方、第四のR基は1〜約18の炭素原子を含む炭化水素基であり得る。式(6)のフッ素化ホスホニウムスルホネートを主成分として含む帯電防止性組成物は、その帯電防止特性、相容性及び耐熱性を利用するため(例えば、かかる帯電防止特性を熱可塑性樹脂に付与するため)に多くの様々なやり方で使用できる。好適な熱可塑性樹脂には、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエステル、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレンブレンド、ポリアミド、ポリケトン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、又は上述のポリマーの1種以上を含む組合せがある。ホスホニウムスルホネート塩は低融点の半固体物質であり、したがって溶融液体として取り扱うことができる。本発明の若干の実施形態は、室温(約15〜約25℃)で固体の結晶性物質であり、秤量、取扱い、及び上述の熱可塑性樹脂への添加が容易である。
熱可塑性樹脂に加え、熱可塑性樹脂組成物はこの種の樹脂組成物中に通常混入される各種の添加剤を含み得る。添加剤の混合物も使用できる。かかる添加剤は、組成物を形成するための成分の混合中の適当な時点で混合できる。好適な添加剤の例は、耐衝撃性改良剤、充填材、熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、離型剤、UV吸収剤、潤滑剤、顔料、染料、着色剤、発泡剤、滴下防止剤及び難燃剤である。
本方法を実施するための通常のやり方は、ポリマー製造時又は加工時において帯電防止剤を熱可塑性樹脂に直接添加し、それを混合することである。それは、押出し、射出成形、圧縮成形又はキャスティングをはじめとする通常の手段で加工できる。熱可塑性樹脂組成物は、当技術分野で一般に利用可能な方法で製造できる。例えば一実施形態では、一進行手順によれば、まず粉末熱可塑性樹脂、帯電防止剤及び/又は他の任意成分を、任意にはチョップトガラスストランド又は他の充填材と共に、ヘンシェル高速ミキサー内でブレンドする。このブレンディングは、特に限定されないが、手混合をはじめとする他の低剪断法でも達成できる。次いで、ホッパーを介してブレンドを二軸押出機のスロートに供給する。別法として、スロート及び/又は下流側のサイドスタッファーを介して押出機に直接供給することでも、1種以上の成分を組成物中に混入できる。かかる添加剤を所望のポリマー樹脂と共にマスターバッチ中に配合し、押出機に供給することもできる。押出機は一般に、組成物を流動させるために必要な温度より高い温度で運転される。押出物は直ちに水浴中で急冷され、ペレット化される。押出物を切断することで製造されるペレットは、所望に応じて1/4インチ以下の長さを有し得る。かかるペレットは、以後の成型、造形及び成形のために使用できる。
熱可塑性樹脂に添加されるホスホニウムスルホネート塩の量は、静電荷を低減又は排除するために有効な量であり、ある範囲にわたって変化し得る。樹脂に添加される帯電防止性の置換ホスホニウムスルホネート塩が少なすぎると、該樹脂から製造された物品上に静電荷が蓄積する傾向はなお存続し得ることが判明している。帯電防止性添加剤が多すぎれば、かかる量の添加は不経済であり、あるレベルで樹脂の他の性質に悪影響を及ぼし始めることもある。帯電防止性の向上した熱可塑性樹脂は、帯電防止剤及びポリマーの総重量を基準にして約0.01〜約10重量%(wt%)、詳しくは約0.2〜約2.0wt%、さらに詳しくは約0.5〜約1.5wt%の帯電防止剤を、約90〜約99.99wt%、詳しくは約99〜約99.8wt%、さらに具体的には約98.5〜約99.5wt%のポリマーと共に用いて得ることができる。一実施形態では、透明ポリカーボネートグレードに対してかかる内部適用法を用いて好ましい結果を得るためには、帯電防止剤は一般に成形組成物に対して約0.01〜約3.0wt%、詳しくは約0.1〜約1.5wt%、さらに詳しくは約0.4〜約0.8wt%の量で使用される。本発明で提供される帯電防止剤は、通常のイオン性界面活性剤(例えば、ホスホニウムアルキルスルホネート)より熱に対する抵抗性が強く、少ない量で添加できる。しかも、樹脂組成物は良好な透明度及び機械的性質を有している。
上述のホスホニウム塩は、さらに、向上した熱安定性を有する熱可塑性ポリマー組成物を製造するためにも使用できる。一実施形態では、上述の方法の1つで製造された帯電防止剤を含むポリカーボネート組成物は、130℃で936時間の老化後、約15未満、詳しくは約10未満、さらに詳しくは約8未満、さらに一段と詳しくは約6未満の黄色度指数を有する。
帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂組成物は、例えば、モニター用ハウジングのようなコンピューター用及び事務器用ハウジング、携帯電話用ハウジングのようなハンドヘルド電子装置ハウジング、電気コネクター、及び照明器具の部材、装飾品、家庭用具、屋根、温室、サンルーム、水泳プールの囲い、半導体パッケージ材料用キャリヤーテープ、自動車部品などの物品を形成するために使用できる。
熱可塑性樹脂組成物は、フィルム及びシート押出し、射出成形、ガスアシスト射出成形、押出成形、圧縮成形並びに吹込成形のようなプロセスを用いて物品に加工できる。フィルム及びシート押出しプロセスは、特に限定されないが、メルトキャスティング、吹込フィルム押出し及びカレンダー掛けを含み得る。共押出し及びラミネーションプロセスを用いて、複合多層フィルム又はシートを形成することもできる。耐引っかき性、耐紫外線性、美的外観などの追加の性質を付与するため、単層又は多層基体に単一又は複数のコーティング層をさらに適用することもできる。コーティングは、ロール塗り、吹付け、浸し塗り、はけ塗り又は流し塗りのような塗布技術で適用できる。フィルム又はシートは、別法として、適当な溶媒中での熱可塑性樹脂組成物の溶液又は懸濁液を基体、ベルト又はロール上に流延し、次いで溶媒を除去することでも製造できる。
吹込フィルム押出しにより、又は通常の延伸技術を用いてキャストフィルム又はカレンダードフィルムを熱変形温度付近で延伸することにより、配向フィルムを製造できる。例えば、多軸同時延伸のために半径方向延伸パントグラフを使用でき、平面内x−y方向の同時又は逐次延伸のためにx−y方向延伸パントグラフを使用できる。一軸及び二軸延伸を達成するためには、逐次一軸延伸セクションを備えた装置、例えば、機械方向の延伸のための異速度ロールセクション及び横断方向の延伸のためのテンターフレームセクションを備えた機械を使用することもできる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、第一の面及び第二の面を有する第一のシートと、第一の面及び第二の面を有する第二のシートとを含んでなる多層シートに加工することもできる。この場合、第一のシートは熱可塑性ポリマーからなり、第一のシートの第一の面は複数のリブの第一の面上に配設されている一方、第二のシートは熱可塑性ポリマーからなり、第二のシートの第一の面は複数のリブの第二の面上に配設されており、複数のリブの第一の面は複数のリブの第二の面の反対側にある。
上述のフィルム及びシートはさらに、例えば、熱成形、真空成形、加圧成形、射出成形及び圧縮成形をはじめとする成形及び成型プロセスで造形物品に熱可塑的に加工できる。また、単層若しくは多層フィルム又はシート基体上に熱可塑性樹脂を射出成形することで多層造形物品を形成することもできる。例えば、スクリーン印刷又は転写染料を用いて、表面上に1以上の色を任意に有する単層又は多層熱可塑性樹脂基体を用意する段階、基体を三次元形状に合わせて成形及びトリミングするなどして基体を型形状に適合させ、次いで基体の三次元形状に整合する表面をもった型の内部に基体を嵌め込む段階、基体背後の型穴に熱可塑性樹脂を注入することで、(i)一体に永久結合された三次元製品を製造するか、或いは(ii)印刷基体から注入樹脂にパターン又は美的効果を転写してから印刷基体を取り除き、かくして成形樹脂に美的効果を付与する段階によって上記の目的を達成できる。
また、特に限定されないが、ヒートセット、テクスチャリング、エンボシング、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理及び/又は真空蒸着をはじめとする公知の硬化及び表面改質プロセスを上記物品に施すことで、物品の表面外観を変化させると共に物品に追加の機能性を付与し得ることも当業者には認められよう。
したがって、本発明の別の実施形態は、上記の熱可塑性樹脂組成物から製造される物品、シート及びフィルムに関する。
上記の方法は、ホスホニウム塩(1)を迅速にかつ高い純度で生成させるために使用できる。一実施形態では、イオン不純物の総量は約650ppm未満、さらに詳しくは約500ppm未満、さらに一段と詳しくは約100ppm未満、さらに詳しくは約50ppm未満、最も詳しくは約10ppm未満である。別の実施形態では、生成物は約5ppm未満、好ましくは約4ppm未満のアルカリ金属を含む。別の実施形態では、生成物は約500ppm未満、好ましくは約100ppm未満、さらに好ましくは約50ppm未満、最も好ましくは約10ppm未満のハロゲン化物を含む。他のイオン夾雑物(例えば、リン酸又は硫酸イオン)は、個々に約100ppm未満、好ましくは約50ppm未満、最も好ましくは約10ppm未満の量で存在する。
以下の非限定的な実施例によって本方法をさらに例証する。
例中の融点は、試料を10℃/分の走査速度で50℃から100℃まで走査することで実施される示差走査熱量測定法(DSC)を用いて測定した。塩のイオン含有量は、イオンクロマトグラフィー(IC)で測定した。
以下の例では、「MQ水」はMilliQ(登録商標)システムを通して脱イオン及び処理を施した水をいう。(MilliQ(登録商標)はMillipore Corporationの商標である。)例中に実証されるテトラアルキルホスホニウムハロアルキルスルホネート化合物は、下記例1〜10に記載される方法に従って様々な出発原料から製造した。下記表1は、例中の製造に際して使用した化学物質及びそれによって得られた化学物質のリストである。該当する場合には、これらの化学物質の対応する略語を示す。
Figure 2008519077

ペルフルオロブタンスルホン酸のカリウム塩(K Rimar)の溶解度を表2に示す。
Figure 2008519077

K Rimarは、高温では高い濃度で可溶であるが、20℃(RT)では(約0.5g未満の)比較的低い濃度で可溶である。
比較例1
85℃のEtOH/HO中でペルフルオロブタンスルホニルフルオリド及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるテトラブチルホスホニウムペルフルオロブタンスルホネート(TBPPBS)の製造。100mLの二つ口丸底フラスコ内に5.00グラム(16.55mmol)のPFSFの一部を入れ、85℃で撹拌した。50wt%KOH水溶液(4.46グラム、39.72mmolのKOH)をゆっくりと添加した。添加中に白色の固体が生成した。得られた反応混合物を85℃でさらに1時間撹拌した。透明な溶液を得るため、75mlのEtOH/MQ水混合物(EtOH:MQ水の体積比=3:4)を添加した。次に、5.56グラム(16.38mmol)のTBPBrを25mlのMQ水に溶解した。TBPBr溶液を撹拌しながら反応混合物中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、撹拌を85℃でさらに15分間続けた。次いで、反応混合物を室温(20℃)に冷却し、目標生成物を75mlのジクロロメタンで抽出した。ジクロロメタン抽出液を50mlのMQ水で3回洗った。有機相溶媒を回転蒸発(50℃、125mbar)で除去し、得られた白色固体を減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は65.4%であり、融点は73.6℃であった。
実施例2
85℃のHO中でペルフルオロブタンスルホニルフルオリド及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造。100mLの二つ口丸底フラスコ内にPFSFの(5.00グラム、16.55mmol)の一部を入れ、85℃で撹拌した。50wt%KOH水溶液(4.46グラム、39.72mmolのKOH)をゆっくりと添加した。添加中に白色の固体が生成した。得られた反応混合物を85℃でさらに1時間撹拌した。透明な溶液を得るため、50mlのMQ水を添加した。次に、5.56グラム(16.38mmol)のTBPBrを25mlのMQ水に溶解した。TBPBr溶液を撹拌しながら反応混合物中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、撹拌を85℃でさらに15分間続けた。次いで、反応混合物を室温(20℃)に冷却し、沈殿した白色固体を集め、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は44.9%であり、融点は74.3℃であった。
比較例3
RT(20℃)のEtOH/HO中でペルフルオロブタンスルホニルフルオリド及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造。K Rimar(6.06グラム、17.9mmol)の一部を75mlのEtOH/MQ水混合物(EtOH:MQ水の体積比=3:4)に室温(20℃)で溶解した。別に、TBPBr(6.01グラム、17.7mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながらK Rimarの溶液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。目標生成物を75mlのジクロロメタンで抽出し、これを50mlのMQ水で3回洗った。有機相溶媒を回転蒸発(50℃、125mbar)で除去し、得られた白色固体を減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は89.1%であり、融点は75.6℃であった。
実施例4
85℃のHO中でペルフルオロブタンスルホネートカリウム塩(K Rimar)及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造。K Rimar(6.06グラム、17.9mmol)の一部を30mlのMQ水に85℃で溶解した。別に、TBPBr(6.01グラム、17.7mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながら85℃のK Rimarの溶液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。次いで、反応混合物を室温(20℃)に冷却し、沈殿した白色固体を集め、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は92.0%であり、融点は75.2℃であった。
実施例5
RT(20℃)のHO中でペルフルオロブタンスルホネートカリウム塩(K Rimar)及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造。K Rimar(6.06グラム、17.9mmol)の一部を30mlのMQ水中に室温(20℃)で分散させた。別に、TBPBr(6.01グラム、17.7mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながらK Rimar塩の分散液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。得られた白色固体を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は61.3%であり、融点は75.5℃であった。
実施例6
RT(20℃)のHO中でペルフルオロブタンスルホネートカリウム塩(K Rimar)及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造。K Rimar(3.03グラム、8.95mmol)の一部を30mlのMQ水中に室温(20℃)で分散させた。別に、TBPBr(6.01グラム、17.7mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながらK Rimar塩の分散液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。得られた白色固体を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は57.6%であり、融点は75.7℃であった。
実施例7
RT(20℃)のHO中でペルフルオロブタンスルホネートカリウム塩(K Rimar)及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造([K Rimar]/[TBPBr]=1:0.9)。K Rimar(6.06グラム、17.9mmol)の一部を30mlのMQ水中に室温(20℃)で分散させた。別に、TBPBr(5.47グラム、16.1mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながらK Rimar塩の分散液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。得られた白色固体を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は86.7%であり、融点は75.5℃であった。
実施例8
RT(20℃)のHO中でペルフルオロブタンスルホネートカリウム塩(K Rimar)及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造([K Rimar]/[TBPBr]=1:1)。K Rimar(6.06グラム、17.9mmol)の一部を30mlのMQ水中に室温(20℃)で分散させた。別に、TBPBr(6.08グラム、17.9mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながらK Rimar塩の分散液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。得られた白色固体を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は70.5%であり、融点は75.6℃であった。
実施例9
RT(20℃)のHO中でペルフルオロブタンスルホネートカリウム塩(K Rimar)及びテトラブチルホスホニウムブロミドを用いるTBPPFSの製造([K Rimar]/[TBPBr]=1.0:1.1)。K Rimar(6.06グラム、17.9mmol)の一部を30mlのMQ水中に室温(20℃)で分散させた。別に、TBPBr(6.69グラム、19.7mmol)を25mlのMQ水に溶解し、次いで撹拌しながらK Rimar塩の分散液中に徐々に注ぎ込んだ。添加後、反応混合物をさらに15分間撹拌した。得られた白色固体を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。
追加の精製を行うため、単離した白色粉末を100mlのMQ水中に分散させ、分散液を撹拌しながら80℃まで加熱した。撹拌を5分間続けると、濁りを帯びた溶液が認められた。次いで、分散液を室温(20℃)に冷却したところ、固体白色物質が晶出した。この白色物質を単離し、減圧下で50℃で1晩乾燥した。収率は65.9%であり、融点は75.7℃であった。
実施例10
比較目的のため、(Dupont社からZonyl(登録商標)FASP−1の商品名で入手した)ペルフルオロブタンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩の市販試料を分析した。溶媒の選択、反応温度、及びK RimarとTBPBrとの比(使用する場合)に関し、例1〜10の製造における一般的な相違点を下記表1にまとめて示す。加えて、単離生成物の融点及び収率もまとめて示す。
Figure 2008519077

残留イオンの量(ppm)で測定した例1〜10の純度を表4に示す。
Figure 2008519077

上述したすべての例に従って帯電防止剤を合成することが可能である。不純物は、帯電防止剤を80℃の水で洗うことで容易に除去できる。その温度では、帯電防止剤は溶融状態になり、固体として水に投入した場合でも水に接触する大きい表面積を有する。実施例4は簡単な合成段階からなることに加えて高い収率及び(融点で証明される)高い純度の両方を与えるので、この例に従った合成は特に有利である。
単数形で記載したものであっても、前後関係から明らかでない限り、複数の場合も含めて意味する。同一の特性を記載しているすべての範囲の端点は結合可能であり、記載された端点を含んでいる。すべての参考文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
以上、例示を目的として典型的な実施形態を説明してきたが、上記の記載は本発明の技術的範囲を限定するものと解すべきでない。したがって、当業者には、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなしに様々な修正例、適合例及び代替例が想起できよう。

Claims (28)

  1. 下記一般式(1)のホスホニウムスルホネート塩の製造方法であって、
    Figure 2008519077
    (式中、各Xはハロゲンと水素とのモル比が約0.90を超えることを条件にして独立にハロゲン又は水素であり、q+rが8未満であると共に、pが1であればrが0を超えることを条件にして、pは0又は1であり、q及びrは0〜約7の整数であり、各Rは1〜約18の炭素原子を含む同一の又は相異なる炭化水素基である。)
    水性媒質中で下記一般式(2)の化合物を下記一般式(3)の化合物と化合させる段階、及び
    Figure 2008519077
    (式中、MはKであり、X、q、p及びrは上記に定義した通りである。)
    Figure 2008519077
    (式中、Zはハロゲンであり、Rは上記に定義した通りである。)
    水性媒質から式(1)のホスホニウムスルホネートを分離する段階
    を含んでなる方法。
  2. 水性媒質が共溶媒を実質的に含まない、請求項1記載の方法。
  3. 化合物(2)及び化合物(3)が水性媒質と共に溶液を形成する、請求項2記載の方法。
  4. 化合が50〜約100℃の温度で実施される、請求項1記載の方法。
  5. 化合が約10〜50℃(ただし、50℃を含まない)の温度で実施される、請求項1記載の方法。
  6. 式(1)のホスホニウムスルホネート塩が過フッ素化有機スルホネートアニオン及び有機ホスホニウムカチオンを含む、請求項1記載の方法。
  7. 過フッ素化有機スルホネートアニオンが、ペルフルオロメタンスルホネート、ペルフルオロエタンスルホネート、ペルフルオロプロパンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネート、ペルフルオロペンタンスルホネート、ペルフルオロヘキサンスルホネート、ペルフルオロヘプタンスルホネート、ペルフルオロオクタンスルホネート、及び上述の過フッ素化有機スルホネートアニオンの1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
  8. 有機ホスホニウムカチオンが、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウリルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、及びテトラフェニルホスホニウムやトリフェニルメチルホスホニウムやトリフェニルベンジルホスホニウムやトリブチルベンジルホスホニウムのような芳香族ホスホニウム、並びに上述の有機ホスホニウムカチオンの1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項6記載の方法。
  9. 式(2)の化合物と式(3)の化合物とのモル比が約1:1.001〜約1:1.5である、請求項1記載の方法。
  10. Xがフッ素である、請求項1記載の方法。
  11. ZがBr又はClである、請求項1記載の方法。
  12. 請求項1記載のホスホニウムスルホネートを含んでなる帯電防止性組成物。
  13. 請求項1記載のホスホニウムスルホネート及び熱可塑性ポリマーを含んでなる帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
  14. 請求項1記載のホスホニウムスルホネートを含んでなる物品。
  15. 下記一般式(1)のホスホニウムスルホネート塩の製造方法であって、
    Figure 2008519077
    (式中、Xはハロゲンと水素とのモル比が約0.90を超えることを条件にしてハロゲン及び水素から独立に選択され、q+rが8未満であると共に、pが0でなければrが0を超えることを条件にして、pは0又は1であり、q及びrは0〜約7の整数であり、各Rは1〜約8の炭素原子を含む同一の又は相異なる脂肪族炭化水素基或いは約6〜約12の炭素原子を含む同一の又は相異なる芳香族炭化水素基である。)
    水性媒質中で水酸化カリウムを下記一般式(4)の化合物と化合させ、この化合の生成物に下記一般式(3)の化合物の化学量論的過剰量を添加する段階、及び
    Figure 2008519077
    Figure 2008519077
    (式中、Zはハロゲンであり、Rは上記に定義した通りである。)
    水性媒質から一般式(1)の沈殿生成物を分離する段階
    を含んでなる方法。
  16. 水性媒質が共溶媒を実質的に含まない、請求項15記載の方法。
  17. 水酸化カリウム、化合物(3)及び化合物(4)が水性媒質と共に溶液を形成する、請求項16記載の方法。
  18. 式(1)のホスホニウムスルホネート塩が過フッ素化有機スルホネートアニオン及び有機ホスホニウムカチオンを含む、請求項15記載の方法。
  19. 過フッ素化有機スルホネートアニオンが、ペルフルオロメタンスルホネート、ペルフルオロエタンスルホネート、ペルフルオロプロパンスルホネート、ペルフルオロブタンスルホネート、ペルフルオロペンタンスルホネート、ペルフルオロヘキサンスルホネート、ペルフルオロヘプタンスルホネート、ペルフルオロオクタンスルホネート、及び上述の過フッ素化有機スルホネートアニオンの1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項18記載の方法。
  20. 有機ホスホニウムカチオンが、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、トリエチルメチルホスホニウム、トリブチルメチルホスホニウム、トリブチルエチルホスホニウム、トリオクチルメチルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、トリメチルオクチルホスホニウム、トリメチルラウリルホスホニウム、トリメチルステアリルホスホニウム、トリエチルオクチルホスホニウム、及びテトラフェニルホスホニウムやトリフェニルメチルホスホニウムやトリフェニルベンジルホスホニウムやトリブチルベンジルホスホニウムのような芳香族ホスホニウム、並びに上述の過フッ素化有機ホスホニウムカチオンの1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項18記載の方法。
  21. 式(4)の化合物と式(3)の化合物とのモル比が約1:2.01〜約1:3である、請求項15記載の方法。
  22. Xがフッ素である、請求項15記載の方法。
  23. ZがBr又はClである、請求項15記載の方法。
  24. 水酸化カリウムと一般式(4)の化合物の水溶液との化合の生成物が対応するスルホン酸カリウム塩(2)である、請求項15記載の方法。
  25. さらに、一般式(3)の化合物の添加に先立って塩(2)を単離する段階を含む、請求項24記載の方法。
  26. 請求項15記載のホスホニウムスルホネートを含んでなる帯電防止性組成物。
  27. 請求項15記載のホスホニウムスルホネート及び熱可塑性ポリマーを含んでなる帯電防止性熱可塑性樹脂組成物。
  28. 請求項15記載のホスホニウムスルホネートを含んでなる物品。
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